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特開2024-146752樹脂組成物、硬化物、樹脂フィルム、プリプレグ、積層体、及びプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146752
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物、樹脂フィルム、プリプレグ、積層体、及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20241004BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241004BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241004BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08L53/02
C08L101/00
H05K1/03 610H
H05K1/03 610T
C08J5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024013227
(22)【出願日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2023058384
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】服部 剛樹
(72)【発明者】
【氏名】松岡 裕太
(72)【発明者】
【氏名】草ノ瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】池田 和希
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AB09
4F072AB28
4F072AD02
4F072AD03
4F072AD05
4F072AG03
4F072AH02
4F072AH21
4F072AL13
4J002AA00Y
4J002BD12Y
4J002BH02Y
4J002BP01W
4J002BP01X
4J002CC28Y
4J002CD00Y
4J002CD02Y
4J002CD05Y
4J002CD06Y
4J002CD07Y
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4J002CF00Y
4J002CF16Y
4J002CF18Y
4J002CH07Y
4J002CM04Y
4J002EF007
4J002EJ007
4J002EK026
4J002EK036
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4J002EL137
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4J002EN077
4J002EQ016
4J002EQ017
4J002ER007
4J002ER027
4J002EU027
4J002EU187
4J002EV027
4J002EV177
4J002EW027
4J002EW177
4J002FD010
4J002FD147
4J002FD206
4J002GF00
4J002GQ00
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】低誘電率、低誘電正接で、寸法安定性にも優れた硬化物が得られる樹脂組成物を得る。
【解決手段】ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位を有する共重合体(A)、(B)と、成分(I)~(III)の少なくとも一種を含有し、共重合体(A)がMn30000以下であり、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを少なくとも一つ有し、共重合体(B)がビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを少なくとも一つ有し、共重合体(B)がMn50000以上であり、共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位の含有量(Sa)と、共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位の含有量(Sb)との差(ΔS)がΔS=|Sa-Sb|≦25質量%で、共重合体(A)及び(B)のビニル芳香族単量体単位の含有量の平均値が50質量%以上である樹脂組成物。
(I):硬化樹脂
(II):ラジカル開始剤
(III):硬化剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位を有する共重合体(A)と、
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位を有する共重合体(B)と、
下記成分(I)~(III)からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分と、
を、含有し、
下記<条件(1)>~<条件(6)>を全て満たす、
樹脂組成物。
成分(I):硬化樹脂(共重合体(A)及び共重合体(B)を除く)
成分(II):ラジカル開始剤
成分(III):硬化剤(成分(I)を除く)
<条件(1)>:
前記共重合体(A)の数平均分子量が30,000以下である。
<条件(2)>:
前記共重合体(A)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを少なくとも一つ有する。
<条件(3)>:
前記共重合体(B)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを少なくとも一つ有する。
<条件(4)>:
前記共重合体(B)の数平均分子量が50,000以上である。
<条件(5)>:
前記共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位の含有量(Sa)(質量%)と、
前記共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位の含有量(Sb)(質量%)との差(ΔS)が、
下記の関係を満たす。
ΔS=|Sa-Sb|≦25
<条件(6)>:
前記共重合体(A)及び前記共重合体(B)の、ビニル芳香族単量体単位の含有量の平均値が50質量%以上である。
【請求項2】
前記共重合体(A)及び前記共重合体(B)中に含まれる共役ジエン化合物に由来する不飽和二重結合の平均水添率(H)(%)と、平均ビニル結合量(V)(%)が、
下記の関係式を満たす、
請求項1に記載の樹脂組成物。
V+10≦H
【請求項3】
前記共重合体(B)が、一般構造:a1-b1-a2-c1、a1-b1-a2-b2、a1-c1-a2-c2、a1-c1-a2-b1のいずれかで表されるブロック共重合体であり、
a1ブロック及びa2ブロックが、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、
b1ブロック及びb2ブロックがビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム重合体ブロックであり、
c1ブロック及びc2ブロックが、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記共重合体(A)の数平均分子量(Mna)に対する、前記共重合体(B)の数平均分子量(Mnb)の比(Mnb/Mna)が4より大きい、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記共重合体(A)の共役ジエンに由来する不飽和二重結合の水添率が、55%以上95%以下である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記共重合体(B)の共役ジエンに由来する不飽和二重結合の水添率が、55%以上95%以下である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記共重合体(A)が一般構造式:d-fで表されるブロック共重合体であり、
dが、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、
fが、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化物を含む、プリント配線板。
【請求項10】
請求項8に記載の硬化物を含む、樹脂フィルム。
【請求項11】
基材と、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の樹脂組成物と、
の複合体である、プリプレグ。
【請求項12】
基材と、
請求項8に記載の硬化物と、
の複合体である、プリプレグ。
【請求項13】
前記基材がガラスクロスである、
請求項11に記載のプリプレグ。
【請求項14】
前記基材がガラスクロスである、
請求項12に記載のプリプレグ。
【請求項15】
請求項10に記載の樹脂フィルムの硬化物と、
金属箔と、
を有する積層体。
【請求項16】
請求項11に記載のプリプレグの硬化物と、
金属箔と、
を有する積層体。
【請求項17】
請求項12に記載のプリプレグの硬化物と、
金属箔と、
を有する積層体。
【請求項18】
請求項10に記載の樹脂フィルムを含む、プリント配線板。
【請求項19】
請求項13に記載のプリプレグを含む、プリント配線板。
【請求項20】
請求項14に記載のプリプレグを含む、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、硬化物、樹脂フィルム、プリプレグ、積層体、及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報ネットワーク技術の著しい進歩、及び情報ネットワークを活用したサービスの拡大に伴い、電子機器には、情報量の大容量化、及び処理速度の高速化が求められている。
これらの要求に応えるため、プリント基板やフレキシル基板等の、各種基板用材料には、誘電損失の小さい材料が求められている。
【0003】
従来から誘電損失の小さい材料を得るため、低誘電率及び低誘電正接であり、強度、耐熱性等の機械物性に優れたエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリフェニレンエーテル系樹脂等の熱可塑性樹脂を主成分とした樹脂硬化物が検討され、開示されている。
しかしながら、従来開示されている材料は、低誘電率及び低誘電正接の観点から未だ改良の余地があり、これらをプリント基板に用いた場合、情報量及び処理速度が限定される、という問題点を有している。
【0004】
かかる問題点を改良する目的で、従来から、上述したような熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂の改質剤として、各種のゴム成分が提案されている。
例えば、特許文献1には、ポリフェニレンエーテル樹脂の低誘電正接化及び低誘電率化のための改質剤として、ビニル芳香族化合物とオレフィン系アルケン化合物とのブロック共重合体及びその水素添加物、及びビニル芳香族化合物の単独重合体からなる群より選ばれる、少なくとも1種のエラストマーが開示されている。
また、特許文献2には、エポキシ樹脂の低誘電正接化及び低誘電率化のための改質剤として、スチレン系エラストマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-147486号公報
【特許文献2】特開2020-15861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に開示されている改質剤を用いた樹脂組成物は、未だ低誘電率化、低誘電正接化が十分ではなく、また、改質剤の添加によって熱線膨張係数が悪化し、寸法安定性が低下するという問題点を有している。
【0007】
そこで本発明においては、低誘電率及び低誘電正接であり、熱膨張係数が小さく寸法安定性にも優れた硬化物が得られる樹脂組成物、前記樹脂組成物を用いた硬化物、樹脂フィルム、プリプレグ、積層体、及びプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物の共重合体であり、所定の構造を有する共重合体(A)、共重合体(B)と、硬化樹脂、ラジカル開始剤及び硬化剤のうち少なくとも一つを含む樹脂組成物によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0009】
〔1〕
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位を有する共重合体(A)と、
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位を有する共重合体(B)と、
下記成分(I)~(III)からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分と、
を、含有し、
下記<条件(1)>~<条件(6)>を全て満たす、
樹脂組成物。
成分(I):硬化樹脂(共重合体(A)及び共重合体(B)を除く)
成分(II):ラジカル開始剤
成分(III):硬化剤(成分(I)を除く)
<条件(1)>:
前記共重合体(A)の数平均分子量が30,000以下である。
<条件(2)>:
前記共重合体(A)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを少なくとも一つ有する。
<条件(3)>:
前記共重合体(B)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを少なくとも一つ有する。
<条件(4)>:
前記共重合体(B)の数平均分子量が50,000以上である。
<条件(5)>:
前記共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位の含有量(Sa)(質量%)と、
前記共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位の含有量(Sb)(質量%)との差(ΔS)が、下記の関係を満たす。
ΔS=|Sa-Sb|≦25
<条件(6)>:
前記共重合体(A)及び前記共重合体(B)の、ビニル芳香族単量体単位の含有量の平均値が50質量%以上である。
〔2〕
前記共重合体(A)及び前記共重合体(B)中に含まれる共役ジエン化合物に由来する不飽和二重結合の平均水添率(H)(%)と、平均ビニル結合量(V)(%)が、
下記の関係式を満たす、前記〔1〕に記載の樹脂組成物。
V+10≦H
〔3〕
前記共重合体(B)が、一般構造:a1-b1-a2-c1、a1-b1-a2-b2、a1-c1-a2-c2、a1-c1-a2-b1のいずれかで表されるブロック共重合体であり、
a1ブロック及びa2ブロックが、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、
b1ブロック及びb2ブロックが、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム重合体ブロックであり、
c1ブロック及びc2ブロックが、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである、
前記〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕
前記共重合体(A)の数平均分子量(Mna)に対する、前記共重合体(B)の数平均分子量(Mnb)の比(Mnb/Mna)が4より大きい、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の樹脂組成物。
〔5〕
前記共重合体(A)の共役ジエンに由来する不飽和二重結合の水添率が、55%以上95%以下である、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の樹脂組成物。
〔6〕
前記共重合体(B)の共役ジエンに由来する不飽和二重結合の水添率が、55%以上95%以下である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の樹脂組成物。
〔7〕
前記共重合体(A)が一般構造式:d-fで表されるブロック共重合体であり、
dが、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、
fが、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである、
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の樹脂組成物。
〔8〕
前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載の樹脂組成物の硬化物。
〔9〕
前記〔8〕に記載の硬化物を含む、プリント配線板。
〔10〕
前記〔8〕に記載の硬化物を含む、樹脂フィルム。
〔11〕
基材と、
前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載の樹脂組成物と、
の複合体である、プリプレグ。
〔12〕
基材と、
前記〔8〕に記載の硬化物と、
の複合体である、プリプレグ。
〔13〕
前記基材がガラスクロスである、前記〔11〕に記載のプリプレグ。
〔14〕
前記基材がガラスクロスである、前記〔12〕に記載のプリプレグ。
〔15〕
前記〔10〕に記載の樹脂フィルムの硬化物と、
金属箔と、
を有する積層体。
〔16〕
前記〔11〕に記載のプリプレグの硬化物と、
金属箔と、
を有する積層体。
〔17〕
前記〔12〕に記載のプリプレグの硬化物と、
金属箔と、
を有する積層体。
〔18〕
前記〔10〕に記載の樹脂フィルムを含む、プリント配線板。
〔19〕
前記〔13〕に記載のプリプレグを含む、プリント配線板。
〔20〕
前記〔14〕に記載のプリプレグを含む、プリント配線板。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低誘電率、低誘電正接であり、熱線膨張係数が小さく寸法安定性にも優れた硬化物が得られる、樹脂組成物、前記樹脂組成物を用いた硬化物、樹脂フィルム、プリプレグ、積層体、及びプリント配線板が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではなく、本発明はその要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
〔樹脂組成物〕
本実施形態の樹脂組成物は、
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位を有する共重合体(A)と、
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位を有する共重合体(B)と、
下記成分(I)~(III)からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分と、
を、含有し、下記<条件(1)>~<条件(6)>を全て満たす、樹脂組成物である。
成分(I):硬化樹脂(共重合体(A)及び共重合体(B)を除く)
成分(II):ラジカル開始剤
成分(III):硬化剤(成分(I)を除く)
<条件(1)>:
前記共重合体(A)の数平均分子量が30,000以下である。
<条件(2)>:
前記共重合体(A)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを少なくとも一つ有する。
<条件(3)>:
前記共重合体(B)が、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを少なくとも一つ有する。
<条件(4)>:
前記共重合体(B)の数平均分子量が50,000以上である。
<条件(5)>:
前記共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位の含有量(Sa)(質量%)と、
前記共重合体(B))のビニル芳香族単量体単位の含有量(Sb)(質量%)との差(ΔS)が、下記の関係を満たす。
ΔS=|Sa-Sb|≦25
<条件(6)>:
前記共重合体(A)及び前記共重合体(B)の、ビニル芳香族単量体単位の含有量の平均値が50質量%以上である。
【0013】
本実施形態の樹脂組成物は、上記の構成を備えることにより、低誘電率及び低誘電正接であり、熱線膨張係数が小さく、基板を作製する際に基板の反りが生じにくく、寸法安定性に優れる。
なお、本明細書中、重合モノマーが重合体の構成要素に組み込まれた場合「単量体単位」と記載し、重合体の構成要素となる前のモノマーの状態の場合「化合物」と記載する。
【0014】
(共重合体(A))
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、共重合体(A)を含有する。
共重合体(A)は、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位を有する共重合体である。
共重合体(A)は、数平均分子量(Mna)は30,000以下であり、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを少なくとも一つ有する。
【0015】
<ビニル芳香族化合物>
共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位を形成するビニル芳香族化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン等のビニル芳香族化合物が挙げられる。
これらの中でも、入手性及び生産性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレンが好ましい。
これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
<共役ジエン化合物>
共重合体(A)の共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン化合物としては、共役二重結合を有するジオレフィンであればよく、以下に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、ファルネセン等が挙げられる。
これらの中でも、入手性及び生産性の観点から、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
<条件(1)>
共重合体(A)の数平均分子量(Mna)は30,000以下であり、5,000以上30,000未満が好ましく、5,000以上25,000未満がより好ましい。
共重合体(A)の数平均分子量(Mna)が30,000以下であることで、共重合体(A)のワニスに対する溶解性が良好となる傾向にある。
共重合体(A)の数平均分子量(Mna)は、標準ポリスチレンを検量線としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと記載)で測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定できる。
共重合体(A)の数平均分子量(Mna)は、重合工程における単量体添加量、重合開始剤添加量等の条件を調整することにより上記数値範囲に制御することができる。
【0018】
<条件(2)>
共重合体(A)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを少なくとも一つ有する。
共重合体(A)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを少なくとも一つ有することで、共重合体(A)のワニスに対する溶解性が向上する傾向にある。
【0019】
なお、本明細書において、「主体とする」とは、対象の単量体単位を対象の重合体ブロック中に、70質量%を超えて100質量%以下含むことをいい、好ましくは80質量%以上100質量%以下、より好ましくは90質量%以上100質量%以下含むことを言う。
本明細書中、「ビニル結合量」とは、水素添加前の共役ジエンの1,2-結合、3,4-結合及び1,4-結合の結合様式で組み込まれているうちの、1,2-結合及び3,4-結合で組み込まれているものの割合を意味する。
ビニル結合量は核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)によって測定できる。
ビニル結合量は、後述する極性化合物等の使用によって任意に制御することが可能である。
【0020】
共重合体(A)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量(BSa)が、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。
共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量(BSa)が10質量%以上であることにより、共重合体(A)のワニスに対する溶解性が向上する傾向にある。
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量は、NMRによって測定することが可能である。具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定できる。
共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量(BSa)は、重合工程におけるモノマーの添加量、添加のタイミング、重合時間等を調整することにより、上記の数値範囲に制御できる。
【0021】
共重合体(A)は、構造は限定されないが、例えば、下記一般式で表されるような構造を有することが好ましい。
d-e
d-f
(d-e)n
(d-f)n
d-e-d
d-f-d
e-f
d-e-f
d-f-e
(d-e)m-Z
(d-f)m-Z
(d-e-f)m-Z
(d-f-e)m-Z
上式において、d、e、fはそれぞれ重合体ブロック(d)、(e)、(f)を示す。
ただし、生産性の観点から、(d-e)n、(d-f)nが好ましく、d-e、d-fがさらに好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物の耐クラック性の観点から、共重合体(A)がd-fであることがより好ましい。
共重合体(A)がd-fである場合、本実施形態の樹脂組成物の靭性が向上する傾向にあり、耐クラック性が良好になる傾向にある。
また、共重合体(A)は、前記一般式で表される構造を複数種類、任意の割合で含む混合物でもよい。
【0022】
上述した共重合体(A)を表す各一般式において、dはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、eはビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム共重合ブロック、fは共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである。
nは、1以上の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは1~5の整数である。
mは、2以上の整数、好ましくは2~11の整数、より好ましくは2~8の整数である。
Zは、カップリング剤残基を表す。
ここで、カップリング剤残基とは、重合体ブロック(e)間及び重合体ブロック(f)間において結合させるために用いられるカップリング剤の結合後の残基を意味する。
カップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、後述するポリハロゲン化合物や酸エステル類等が挙げられる。
【0023】
重合体ブロック(e)中のビニル芳香族単量体単位は均一に分布していても、テーパー状に分布していてもよい。
さらに、ビニル芳香族単量体単位は均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個存在していてもよい。さらに、上記重合体ブロック(f)には、ビニル芳香族単量体単位の含有量が異なる部分が複数個共存していてもよい。
【0024】
共重合体(A)中の共役ジエン単量体単位に由来する二重結合の水素添加率(水添率ともいう)は55%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、65%以上がさらに好ましい。共重合体(A)中の共役ジエン単量体単位に由来する二重結合の水素添加率が55%以上であれば、硬化樹脂と共重合体(A)の反応性を制御することができ、本実施形態の樹脂組成物の半田耐熱性が向上する傾向にある。
また、共重合体(A)中の共役ジエン単量体単位に由来する二重結合の水素添加率は95%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、85%以下がさらに好ましい。共重合体(A)中の共役ジエン単量体単位に由来する二重結合の水素添加率が95%以下であれば、共重合体(A)の架橋性が向上し、本実施形態の樹脂組成物の半田耐熱性が向上する傾向にある。
共重合体(A)中の共役ジエン単量体単位に由来する二重結合の水素添加率は、NMRにより測定でき、具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定できる。
共重合体(A)中の共役ジエン単量体単位に由来する二重結合の水素添加率は、水添触媒の種類、添加量、水素添加量、水添時間を調整することにより、上記数値範囲に制御できる。
【0025】
(共重合体(B))
共重合体(B)はビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位を有する共重合体である。
共重合体(B)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを少なくとも一つ有し、数平均分子量(Mnb)が50,000以上である。
【0026】
<ビニル芳香族化合物>
共重合体(B)を構成するビニル芳香族単量体単位を形成するビニル芳香族化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン等のビニル芳香族化合物が挙げられる。
これらの中でも、入手性及び生産性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレンが好ましい。
これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
<共役ジエン化合物>
共重合体(B)を構成する共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン化合物としては、共役二重結合を有するジオレフィンであればよく、以下に限定されず、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、ファルネセン等が挙げられる。
これらの中でも、入手性及び生産性の観点から、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
共重合体(B)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを少なくとも一つ有する。
共重合体(B)がビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを有する場合、共重合体(B)のワニスに対する溶解性が向上する傾向にある。
【0029】
共重合体(B)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量(BSb)が10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。
共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量(BSb)が10質量%以上である場合、共重合体(B)のワニスに対する溶解性が向上する傾向にある。
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量は、NMRによって測定することが可能である。具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定できる。
共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量(BSb)は、重合工程におけるモノマーの添加量、添加のタイミング、重合時間等を調整することにより、上記の数値範囲に制御できる。
【0030】
共重合体(B)の数平均分子量(Mnb)は、50,000以上であり、60,000以上が好ましく、80,000以上がより好ましく、100,000以上がさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物が共重合体(A)及び共重合体(B)を含有することで、本実施形態の樹脂組成物の低誘電率性及び低誘電正接性が向上する傾向にある。一方において、共重合体(A)及び共重合体(B)の熱膨張係数は、硬化樹脂の熱膨張係数よりも高い。共重合体(B)の数平均分子量(Mnb)を50,000以上とすることにより共重合体(B)の添加による樹脂組成物の熱線膨張係数の上昇を抑制できるため、寸法安定性の観点から好ましい。すなわちこのような共重合体(B)の添加により寸法安定性と誘電性能のバランスが改善する傾向にある。
共重合体(B)の数平均分子量(Mnb)の上限は、生産性の観点から、500,000以下が好ましく、300,000以下がより好ましく、200,000以下がさらに好ましい。
共重合体(B)の数平均分子量(Mnb)は、GPCで測定することができる。
共重合体(B)の数平均分子量(Mnb)は、重合工程における単量体添加量、重合開始剤添加量等の条件を調整することにより上記数値範囲に制御することができる。
【0031】
共重合体(B)は、以下に限定されないが、例えば、下記一般式で表されるような構造を有することが好ましい。
(a1-b1)o
(a1-c1)o
a1-b1-a2
a1-c1-a2
a1-b1-c1
a1-b1-b2
a1-c1-c2
a1-c1-b1
a1-b1-c1-a2
a1-c1-b1-a2
a1-b1-c1-b2
a1-b1-a2-b2
a1-b1-a2-c1
a1-c1-a2-b1
a1-c1-a2-c2
[(a1-b1)o]p-Z
[(a1-c1)o]p-Z
(a1-b1-c1)p-Z
(a1-c1-b1)p-Z
【0032】
共重合体(B)は、一般構造:a1-b1-a2-c1、a1-b1-a2-b2、a1-c1-a2-c2、a1-c1-a2-b1のいずれかで表されるブロック共重合体であるとさらに好ましい。
共重合体(B)が、一般構造:a1-b1-a2-c1、a1-b1-a2-b2、a1-c1-a2-c2、a1-c1-a2-b1のいずれかで表されるブロック共重合体である場合、本実施形態の樹脂組成物は、銅接着性に優れる傾向にある。
上記式において、a1、a2、b1、b2、c1、c2はそれぞれ重合体ブロック(a1)、(a2)、(b1)、(b2)、(c1)、(c2)を示す。
oは、1以上の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは1~5の整数である。
pは、2以上の整数、好ましくは2~11の整数、より好ましくは2~8の整数である。
Zは、カップリング剤残基を表す。ここで、カップリング剤残基とは、重合体ブロック(b)間及び重合体ブロック(c)間において結合させるために用いられるカップリング剤の結合後の残基を意味する。
【0033】
共重合体(B)は、逐次重合によって重合されたものであることが好ましい。「逐次重合によって重合された」とは、最終的に目標とするポリマー構造の片側の末端から、反対側の末端まで逐次重合していくことを意味し、カップリング反応を用いずに重合することをいう。
共重合体(B)中にカップリング剤残基を含まないことが好ましい。これにより、意図しない未カップリング物等の混入を防ぐことができる。
【0034】
重合体ブロック(b)中のビニル芳香族単量体単位は均一に分布していても、テーパー状に分布していてもよい。さらに、ビニル芳香族単量体単位は均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個存在していてもよい。さらに、前記重合体ブロック(b)には、ビニル芳香族単量体単位の含有量が異なる部分が複数個共存していてもよい。
【0035】
上述した共重合体(B)を表す各一般式において、(a1)及び(a2)はビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックである。(b1)及び(b2)はビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム共重合ブロックである。(c1)及び(c2)は共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである。
【0036】
共重合体(B)中の共役ジエン単量体単位に由来する二重結合の水素添加率(水添率ともいう)は55%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、65%以上がさらに好ましい。
共重合体(B)中の共役ジエン単量体単位に由来する二重結合の水素添加率が55%以上であれば、成分(I):硬化樹脂と、共重合体(B)の反応性を制御することができ、本実施形態の樹脂組成物の半田耐熱性が向上する傾向にある。
共重合体(B)中の共役ジエン単量体単位に由来する二重結合の水素添加率は95%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、85%以下がさらに好ましい。
共重合体(B)中の共役ジエン単量体単位に由来する二重結合の水素添加率が95%以下であれば、共重合体(B)の架橋性が向上し、本実施形態の樹脂組成物の半田耐熱性が向上する傾向にある。
共重合体(B)中の共役ジエン単量体単位に由来する二重結合の水素添加率は、NMRにより測定でき、具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定できる。
共重合体(B)中の共役ジエン単量体単位に由来する二重結合の水素添加率は、水添触媒の種類、添加量、水素添加量、水添時間を調整することにより、上記数値範囲に制御できる。
【0037】
(共重合体(A)及び共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位の含有量の関係)
<条件(5)>
本実施形態の樹脂組成物においては、共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位の含有量(Sa)(質量%)と、共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位の含有量(Sb)(質量%)の差(ΔS)が以下の関係を満たす。
ΔS=|Sa―Sb|≦25
また、ΔSは20以下が好ましく、15以下がより好ましい。
前記ΔSが上記の関係式を満たす場合、共重合体(A)及び共重合体(B)のワニスに対する溶解性を担保できる。
共重合体(B)は、比較的高分子量であるため、分子量や構造によっては単独ではワニスに溶解しにくい場合が有るが、ΔSを小さく設定することで、ワニスに溶解しにくい状態を防ぐことができる。これは、共重合体(A)は低分子量で、ワニスに対する溶解性が高い傾向にあるところ、|Sa-Sb|≦25を満たし、共重合体(A)及び共重合体(B)の相容性を良好にすることで、共重合体(A)が相容化剤のように働いて共重合体(B)のワニスへの溶解性を高めることに寄与するためである。
ΔSは、共重合体(A)及び共重合体(B)の重合工程におけるモノマーの添加量、及び重合時間を調整することにより、上述した数値範囲に制御できる。
【0038】
(共重合体(A)及び共重合体(B)の数平均分子量の関係)
共重合体(A)の数平均分子量(Mna)に対する前記共重合体(B)の数平均分子量(Mnb)の比(Mnb/Mna)は、4より大きいことが好ましく、5以上がより好ましく、6以上がさらに好ましい。
(Mnb/Mna)が4以上である場合、本実施形態の樹脂組成物は、熱線膨張係数が低下し、寸法安定性が向上する傾向にある。
【0039】
(共重合体(A)及び共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位の含有量)
<条件(6)>
共重合体(A)及び共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位の含有量の平均値は、50質量%以上である。50質量%~90質量%が好ましく、50質量%~85質量%がより好ましく、55質量%~85質量%がさらに好ましく、60質量%~80質量%がさらにより好ましい。
共重合体(A)及び共重合体(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量の平均値が50質量%以上であると、本実施形態の樹脂組成物は、ワニスに対する溶解性が向上する傾向にある。特に、本実施形態の樹脂組成物を硬化樹脂組成物とする際に、硬化樹脂(成分(I))にマレイミドを使用した場合でも、ワニスに対する溶解性が向上するため、寸法安定性に優れた樹脂組成物を得られる傾向にある。
共重合体(A)と共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位の含有量は、同じでもよいし、異なってもよい。異なる場合、共重合体(A)と共重合体(B)を合わせた状態ではビニル芳香族単量体単位の含有量(平均のビニル芳香族単量体単位の含有量)は50質量%以上になるように両者を設定すればよく、分子量と混合比を加味した加重平均で50質量%以上になるように両重合体のビニル芳香族単量体単位の含有量が設定されていればよい。
共重合体(A)と共重合体(B)ビニル芳香族単量体単位の含有量、ビニル結合量、及び水添率は、両共重合体の相容性を高める観点では、差が小さいことが好ましい。
共重合体(A)及び共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位の含有量の平均値は、共重合体(A)及び共重合体(B)の重合工程におけるモノマーの添加量を調整することにより、上述した数値範囲に制御できる。
【0040】
(共重合体(A)及び共重合体(B)のビニル結合量)
共重合体(A)及び共重合体(B)の共役ジエン単量体単位のビニル結合量(V)は、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。
共重合体(A)及び共重合体(B)の共役ジエン単量体単位のビニル結合量(V)が20%以上であると、本実施形態の樹脂組成物は、銅接着性が向上する傾向にある。
【0041】
共重合体(A)及び共重合体(B)の共役ジエン単量体単位のビニル結合量(V)は85%以下が好ましく、75%以下がより好ましく、65%以下がさらに好ましい。
共重合体(A)及び共重合体(B)の共役ジエン単量体単位のビニル結合量(V)が85%以下であると、本実施形態の樹脂組成物は、長期保存安定性に優れる傾向にある。
共重合体(A)と共重合体(B)のビニル結合量は同じでもよいし、異なってもよい。異なる場合、共重合体(A)と共重合体(B)を合わせた状態では好ましいビニル結合量になるように両重合体のビニル結合量を設定すればよい。
【0042】
(共重合体(A)及び共重合体(B)の平均ビニル結合量(V)、平均水添率(H))
共重合体(A)及び共重合体(B)は水添共重合体であることが好ましく、共重合体中に含まれる共役ジエン化合物に由来する不飽和二重結合の平均水添率(H)(%)と共重合体(A)及び共重合体(B)に含まれる共役ジエン単量体単位の平均ビニル結合量(V)(%)が、以下の関係式を満たすことが好ましい。
V+10≦H
ここで、平均水添率(H)とは、共重合体(A)と共重合体(B)の平均水添率であり、NMR測定の結果から下記式により算出できる。
平均水添率(H)=(共重合体(A)の水添率)×(共重合体(A)の質量比率)+(共重合体(B)の水添率)×(共重合体(B)の質量比率)
平均ビニル結合量(V)は、共重合体(A)と共重合体(B)の平均ビニル結合量であり、NMR測定から下記式により算出できる。
平均ビニル結合量(V)=(共重合体(A)のビニル結合量)×(共重合体(A)の質量比率)+(共重合体(B)のビニル結合量)×(共重合体(B)の質量比率)
共重合体(A)及び共重合体(B)の平均水添率(H)が上述の式を満たす場合、本実施形態の樹脂組成物は、長期保存安定性に優れる傾向にある。
【0043】
共重合体(A)及び共重合体(B)の平均水添率(H)は、例えば、水素添加時の触媒量によって制御することができ、水素添加速度は、例えば、水素添加時の触媒量、水素フィード量、圧力及び温度等によって制御することができる。
共重合体(A)及び共重合体(B)の平均水添率(H)は、核磁気共鳴装置(NMR)により測定できる。
共重合体(A)及び共重合体(B)の平均ビニル結合量(V)は、例えば、第3級アミン化合物やエーテル化合物の添加量、重合温度により制御することができる。
共重合体(A)及び共重合体(B)の平均ビニル結合量(V)は、核磁気共鳴装置(NMR)により測定できる。
【0044】
共重合体(A)、共重合体(B)がビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位のランダム共重合ブロックを有する場合、ランダム共重合ブロック中に含まれるビニル芳香族単量体単位の質量割合(RS)は、70質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
共重合体(A)、共重合体(B)のランダム共重合ブロック中に含まれるビニル芳香族単量体単位の質量割合(RS)が70質量%以下である場合、ランダム共重合ブロックを有する共重合体、前記共重合体を含む樹脂組成物及びその硬化物は、銅接着性に優れる傾向にある。
【0045】
(共重合体(A)及び(B)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの分子量の関係)
共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの分子量(MnS1)と、共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの分子量(MnS2)の比(MnS1/MnS2)は、0.9以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.7以下であることがさらに好ましい。
(MnS1/MnS2)が0.9以下である場合、本実施形態の樹脂組成物は、銅接着性に優れる傾向にある。
なお、(MnS1)及び(MnS2)は重合時の単量体の添加量を調整することによって制御することができる。
MnS1及びMnS2は下記の方法で算出する。
MnS1=Mn1×BS1
MnS2=Mn2×BS2÷f
・BS1:プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)によって求めた前記共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量(質量%)
・BS2:プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)によって求めた前記共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量(質量%)
・f:粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法によって求めた共重合体(B)の分岐度
(Mn1)及び(Mn2)はGPCにより標準ポリスチレンを検量線として測定することができる。
(BS1)及び(BS2)はNMRにより測定することができる。
(f)は粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法により測定することができる。
なお、具体的な測定法については後述する。
【0046】
ランダム重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の質量割合(RS1)及び(RS2)、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量(BS1)及び(BS2)を測定する方法を、NMR法を適用し、ビニル芳香族化合物をスチレン、共役ジエン化合物を1,3-ブタジエンとした場合を例に挙げて具体的に説明する。
共重合体(A)及び共重合体(B)30mgをそれぞれ重水素化クロロホルム1gに溶解した試料を用いて1H-NMRを測定し、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(この場合、スチレンブロックとなる)の含有量(BS)を全積算値に対する化学シフト6.9ppm~6.3ppmの積算値の比率から求めた。
スチレンブロック強度(b-St強度)
=(6.9ppm~6.3ppmの積算値)/2
ランダムスチレン強度(r-St強度)
=(7.5ppm~6.9ppmの積算値)-3×(b-St)
エチレン・ブチレン強度(EB強度)
=全積算値-3×{(b-St強度)+(r-St強度)}/8
スチレンブロック含有量(BS)
=104×(b-St強度)
/[104×{(b-St強度)+(r-St強度)}+56×(EB強度)]
ランダム重合体ブロック中のスチレンの質量割合(RS)
=104×(r-St強度)/{104×(r-St強度)+56×(EB強度)}
【0047】
(共重合体(B)の分岐度(f))
共重合体(B)の分岐度(f)は、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法によって測定できる。
共重合体(B)を試料として、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定を実施し、標準ポリスチレンに基づいて、光散乱検出器とRI検出器結果から絶対分子量(M)を、RI検出器と粘度検出器の結果から固有粘度([η])を求める。
続いて、基準とする固有粘度([η]0)を、下記式にて算出する。
[η]0=a×Mb
a=-0.788+0.421×(共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位の含有量)
-0.342×(RS2)-0.197×(BS2)
b=1.601-0.081×(共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位の含有量)
+0.064×(RS2)+0.039×(BS2)
RS2:共重合体(B)のランダム重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の質量割合
BS2:プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)によって求めた共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量
M:共重合体(B)の絶対分子量
続いて、共重合体(B)の固有粘度([η])と基準とする固有粘度([η]0)の比として収縮因子gを算出する。
収縮因子(g)=[η]/[η]0
その後、得られた収縮因子(g)を用いて、g=f/[(f+1)(f+2)](f≧2)と定義される分岐度(f)を算出する。
【0048】
(共重合体(A)及び共重合体(B)の製造方法)
共重合体(A)及び共重合体(B)の製造方法としては、以下に限定されないが、例えば、特公昭36-19286号公報、特公昭43-17979号公報、特公昭46-32415号公報、特公昭49-36957号公報、特公昭48-2423号公報、特公昭48-4106号公報、特公昭51-49567号公報、特開昭59-166518号公報、等に記載された方法が挙げられる。
【0049】
また、共重合体(A)、及び共重合体(B)の製造方法としては、以下に限定されないが、(1)共重合体(A)及び共重合体(B)をそれぞれ溶液重合し、重合体を含む溶液を混合する方法、(2)共重合体(A)及び共重合体(B)をそれぞれ脱溶剤・脱触媒したのちに混合する方法、(3)重合反応時、重合開始剤を2段階に分けて添加する方法、(4)重合反応中に前記リビング末端に反応する変性剤、又は、重合停止剤としてアルコール等のプロトン性試薬をリビング末端に対して不足するモル量を添加し、一部のリビング末端の反応を停止する方法、(5)重合反応後に変性剤、又は、重合停止剤としてアルコール等のプロトン性試薬をリビング末端に当モル量添加し、全てのリビング末端の反応を停止した後、その溶液に新たに、重合開始剤及び、モノマーを添加し、重合を行う方法等が挙げられる。
前記(1)の方法では、共重合体(A)及び共重合体(B)の水添反応前の重合溶液を混合した後に水添反応を実施する方法、共重合体(A)及び共重合体(B)を、それぞれ水添反応を行った後にそれぞれの溶液を混合する方法のいずれの方法も適用できる。また、共重合体(A)及び共重合体(B)の混合比率は、それぞれの重合溶液の濃度と溶液の混合量の調整により制御できる。
前記(3)の方法では、共重合体(A)及び共重合体(B)の混合比率は、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物のフィード速度、2段階添加する重合開始剤の量、重合開始剤の二段目の添加のタイミング等を調整することにより任意に制御することができる。
前記(4)の方法では、共重合体(A)及び共重合体(B)の混合比率及び構造は、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物のフィード速度及びフィード組成、途中添加する変性剤又は重合停止剤の量及び添加のタイミング等を調整することにより任意に制御することができる。
共重合体(A)は低分子量体であり、分子の絡み合いが小さい。そのため、前記(1)、(3)、(4)、及び(5)の方法のように脱溶剤前に混合した方が、脱溶剤・仕上げ工程を高レートで行うことが可能となる。
前記(3)及び(4)の方法は、共重合体(A)と共重合体(B)を同時に生産することができ、共重合体(A)と共重合体(B)を別々に生産した場合と比べ、生産工程を減らすことができるため、生産効率を向上させることができる。
【0050】
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器を使用し、スチレンとブタジエンの共重合体をバッチ重合で製造する場合、ブロック構造を共重合体(A)がd-e、共重合体(B)がa1-b-a2-cとすると、cブロックとeブロックは同一構造かつ同一分子量であることが好ましく、a2ブロックとdブロックは同一のビニル芳香族化合物で構成されることが好ましく、a2ブロックの分子量がdブロックの分子量より大きいことが好ましい。
また、前記(3)の方法で重合を行う場合は、二段階目の開始剤の添加のタイミングは、a2ブロックとdブロックの分子量の比率に依存しており、a2ブロックのビニル芳香族化合物の重合転化率が100×(dブロックの分子量)/(a2ブロックの分子量)(%)になったタイミングが好ましい。
【0051】
<共重合体(A)と共重合体(B)の区分>
本実施形態の樹脂組成物は、共重合体(A)と共重合体(B)の2成分を含むため、GPCチャートは二つ以上のピークを有する。
このうち、共重合体(A)とは数平均分子量が30,000以下の全ての成分である。
【0052】
水素添加前の共重合体は、以下に限定されないが、例えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の重合開始剤を用いて、所定の単量体を用い、リビングアニオン重合を行う方法等により得られる。
炭化水素溶媒としては、特に限定されず、例えば、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
【0053】
重合開始剤としては、一般的に、共役ジエン化合物及びビニル芳香族化合物に対しアニオン重合活性があることが知られている有機アルカリ金属化合物を用いることができる。
例えば、炭素数1~20の脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、炭素数1~20の芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、炭素数1~20の有機アミノアルカリ金属化合物等が挙げられる。
重合開始剤に含まれるアルカリ金属としては、以下に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
なお、アルカリ金属は、1分子中に1種、又は2種以上含まれていてもよい。
重合開始剤としては、以下に限定されないが、例えば、n-プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ペンチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec-ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec-ブチルリチウムと少量の1,3-ブタジエンの反応生成物等が挙げられる。
さらにまた、米国特許5,708,092号明細書に開示されている1-(t-ブトキシ)プロピルリチウム及びその溶解性改善のために1~数分子のイソプレンモノマーを挿入したリチウム化合物、英国特許2,241,239号明細書に開示されている1-(t-ブチルジメチルシロキシ)ヘキシルリチウム等のシロキシ基含有アルキルリチウム、米国特許5,527,753号明細書に開示されているアミノ基含有アルキルリチウム、ジイソプロピルアミドリチウム及びヘキサメチルジシラジドリチウム等のアミノリチウム類も使用することができる。
【0054】
重合開始剤としてのリチウム化合物の使用量は、目的とする共重合体の分子量によるが、0.005~6.4phm(単量体100質量部当たりに対する質量部)が好ましく、0.005~2.6phmがより好ましい。
【0055】
有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物を共重合する際に、共重合体に組み込まれる共役ジエン単量体単位中のビニル結合(1,2-結合又は3,4-結合)の含有量の調整や、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合性の調整を行うために、第3級アミン化合物やエーテル化合物を添加することができる。
【0056】
第3級アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式で示される化合物が挙げられる。
R1R2R3N
(式中、R1、R2、及びR3は、炭素数1~20の炭化水素基又は第3級アミノ基を有する炭化水素基である。)
このような化合物としては、以下に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N-エチルピペリジン、N-メチルピロリジン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラエチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N',N'',N''-ペンタメチルエチレントリアミン、N,N'-ジオクチル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。これらの中でもN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンが好ましい。
【0057】
また、エーテル化合物としては、直鎖状エーテル化合物や環状エーテル化合物等を用いることができる。
直鎖状エーテル化合物としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物等が挙げられる。
また、環状エーテル化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2,5-ジメチルオキソラン、2,2,5,5-テトラメチルオキソラン、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン、フルフリルアルコールのアルキルエーテル等が挙げられる。
【0058】
第3級アミン化合物又はエーテル化合物の使用量は、前記有機アルカリ金属化合物の重合開始剤に対し、好ましくは0.1~4(モル/アルカリ金属1モル)、より好ましくは0.2~3(モル/アルカリ金属1モル)である。
【0059】
共重合体(A)及び、共重合体(B)の製造工程において、共重合を行う際に、ナトリウムアルコキシドを共存させてもよい。
ナトリウムアルコキシドは、以下に限定されないが、例えば、下記式で示される化合物が挙げられる。特に、炭素原子数3~6のアルキル基を有するナトリウムアルコキシドが好ましく、ナトリウムt-ブトキシド、ナトリウムt-ペントキシドがより好ましい。
NaOR
(式中、Rは炭素原子数2~12のアルキル基である。)
共重合体(A)、(B)の重合工程におけるナトリウムアルコキシドの使用量は、ビニル結合量調整剤(第3級アミン化合物又はエーテル化合物)に対し、好ましくは0.01以上0.1未満(モル比)であり、より好ましくは0.01以上0.08未満(モル比)、さらに好ましくは0.03以上0.08未満(モル比)、さらにより好ましくは0.04以上0.06未満(モル比)である。
ナトリウムアルコキシドの量がこの範囲にあると、ビニル結合量が高い共役ジエン単量体単位を含む共重合体ブロックと、分子量分布が狭いビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを有し、かつ分子量分布が狭い共重合体を高生産率で製造できる傾向にある。
【0060】
有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物を共重合する方法は、特に限定されず、バッチ重合であっても連続重合であっても、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。
重合温度は、特に限定されないが、通常は0~180℃であり、好ましくは30~150℃である。
重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、好ましくは0.1~10時間である。
また、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で重合することが好ましい。
重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されない。
【0061】
さらに、重合終了時に2官能基以上のカップリング剤を必要量添加してカップリング反応を行ってもよい。
2官能基以上のカップリング剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
2官能基カップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。
3官能基以上の多官能カップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、1,1,1,2,2-ペンタクロロエタン,パークロロエタン、ペンタクロロベンゼン、パークロロベンゼン、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物、2~6官能のエポキシ基含有化合物、カルボン酸エステル、ジビニルベンゼンなどのポリビニル化合物、式R1(4-n)SiXn(ここで、R1は炭素数1~20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3又は4の整数を表す)で表されるハロゲン化珪素化合物、及びハロゲン化錫化合物、が挙げられる。
ハロゲン化珪素化合物としては、以下に限定されないが、例えば、メチルシリルトリクロリド、t-ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素、及びこれらの臭素化物等が挙げられる。
ハロゲン化錫化合物としては、以下に限定されないが、例えば、メチル錫トリクロリド、t-ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物等が挙げられる。また、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等も使用可能である。
【0062】
共重合体(A)、及び共重合体(B)は、上述のような方法で得たブロック共重合体のリビング末端に、官能基含有原子団を生成する変性剤を付加反応させたものであってもよい。
官能基含有原子団としては、以下に限定されないが、例えば、水酸基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボキシル基、チオカルボキシル酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シラノール基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、アルコキシスズ基、及びフェニルスズ基からなる群より選ばれる官能基を少なくとも1種含有する原子団等が挙げられる。
【0063】
官能基含有原子団を生成する変性剤としては、以下に限定されないが、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、4-メトキシベンゾフェノン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、N,N'-ジメチルプロピレンウレア、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
変性剤の付加量は、変性前の共重合体100質量部に対し、0.01~20質量部が好ましく、より好ましくは0.1~15質量部、さらに好ましくは0.3~10質量部である。
変性剤の付加反応温度は、好ましくは0~150℃、より好ましくは20~120℃である。
変性反応に要する時間は、変性反応条件によって異なるが、好ましくは24時間以内であり、より好ましくは0.1~10時間である。
【0064】
共重合体(A)は、上述した重合工程後、又は上述した変性工程後に、水添工程を実施して製造することが好ましい。
共重合体(A)を製造するために用いられる水添触媒としては、特に限定されず、例えば、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特公昭63-4841号公報、特公平1-37970号公報、特公平1-53851号公報、特公平2-9041号公報等に記載された水添触媒を使用することができる。
好ましい水添触媒としては、チタノセン化合物及び/又は還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。
チタノセン化合物としては、特に限定されないが、例えば、特開平8-109219号公報に記載された化合物等が挙げられ、具体的には、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル構造、インデニル構造、及びフルオレニル構造を有する配位子を少なくとも1つ以上持つ化合物等が挙げられる。
還元性有機金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、有機亜鉛化合物等が挙げられる。
水添反応の反応温度は、通常0~200℃、好ましくは30~150℃である。
水添反応に使用される水素の圧力は、好ましくは0.1~15MPa、より好ましくは0.2~10MPa、さらに好ましくは0.3~5MPaである。
水添反応の反応時間は、通常3分~10時間、好ましくは10分~5時間である。
なお、水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、あるいはそれらの組み合わせのいずれも用いることができる。
【0065】
共重合体(B)は、上述した重合工程後、又は上述した変性工程後に、水添工程を実施して製造することが好ましい。
共重合体(B)を製造するために用いられる水添触媒としては、特に限定されず、例えば、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特公昭63-4841号公報、特公平1-37970号公報、特公平1-53851号公報、特公平2-9041号公報等に記載された水添触媒を使用することができる。
好ましい水添触媒としては、チタノセン化合物及び/又は還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。
チタノセン化合物としては、特に限定されないが、例えば、特開平8-109219号公報に記載された化合物等が挙げられ、具体的には、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル構造、インデニル構造、及びフルオレニル構造を有する配位子を少なくとも1つ以上持つ化合物等が挙げられる。
還元性有機金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、有機亜鉛化合物等が挙げられる。
水添反応の反応温度は、通常0~200℃、好ましくは30~150℃である。
水添反応に使用される水素の圧力は、好ましくは0.1~15MPa、より好ましくは0.2~10MPa、さらに好ましくは0.3~5MPaである。
水添反応の反応時間は、通常3分~10時間、好ましくは10分~5時間である。
なお、水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、あるいはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0066】
水添工程後の反応溶液から、必要に応じて触媒残査を除去してもよい。
水添共重合体をアニオンリビング重合で製造する際の重合開始剤、前述した水素添加反応における水添触媒中の金属原子を含む化合物は、脱溶剤工程等で、空気中の水分等と反応し、所定の金属化合物を生成して水添共重合体中に残存する傾向にある。これら化合物が本実施形態の樹脂組成物及びその硬化物中に含まれると、誘電率及び誘電正接が増大する傾向にあり、さらには電子材料用途においてはイオンマイグレーションが生じやすい傾向にある。
残存した金属化合物としては、重合開始剤、水添触媒に含まれる金属の化合物、例えば、酸化チタン、非晶性酸化チタン、オルトチタン酸やメタチタン酸、水酸化チタン、水酸化ニッケル、一酸化ニッケル、酸化リチウム、水酸化リチウム、酸化コバルト、水酸化コバルト等の各原子の酸化物、チタン酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ニッケル、ニッケル・鉄酸化物等の各原子と異種金属との複合酸化物が挙げられる。
前述の低誘電率化、低誘電正接化、及びイオンマイグレーションが生じにくくする観点から、共重合体(A)、(B)中の金属化合物の残存量は、残金属量として、150ppm以下が好ましく、より好ましくは130ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、さらにより好ましくは90ppm以下である。詳細な残金属としては、一般的にTi、Ni、Li、Co等が挙げられる。
【0067】
本実施形態の樹脂組成物及びその硬化物中の残金属量を低減する方法としては、従来公知の方法を適用でき、特に限定されるものではない。例えば、共重合体(A)、(B)の水素添加反応後に、水と炭酸ガスを添加し、水素添加触媒残渣を中和する方法;水、炭酸ガスに加えて酸を添加し、水素添加触媒残渣を中和する方法が挙げられる。具体的には、特願2014-557427に記載された方法を適用することができる。これらの金属の除去方法を使用しても、金属化合物の水酸化物を含んだ水が共重合体(A)、(B)の脱溶剤工程で混入するため、1~15ppm程度含まれることが一般的である。よって、共重合体(A)、(B)中に添加した金属の量に対して、20%以上を除去することが好ましく、より好ましくは30%以上除去、さらに好ましくは40%以上除去、さらにより好ましくは50以上%除去、よりさらに好ましくは60%以上除去を行う。
【0068】
また、添加する重合開始剤及び水素添加触媒量そのものを低減することによっても、共重合体(A)、(B)中の残金属量を低減することが可能であるが、重合開始剤量の低減を行うと共重合体(A)、(B)の分子量が高くなり、上述した本実施形態の樹脂組成物を構成する共重合体(A)、(B)の分子量の要件の範囲外となると硬化物の耐熱性が低下する傾向にある。また、水素添加反応を行う際は、水素添加触媒量を低減すると水素添加反応時間の長時間化、水素添加反応温度の高温化が生じ、生産性が著しく低下する傾向にある。
【0069】
共重合体(A)、(B)と溶媒を分離する方法としては、以下に限定されないが、例えば、共重合体(A)、(B)の溶液に、アセトン又はアルコール等の共重合体(A)、(B)に対して貧溶媒となる極性溶媒を加えて、共重合体(A)、(B)を沈澱させて回収する方法、あるいは、共重合体(A)、(B)の溶液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、共重合体(A)、(B)の溶液を直接加熱することによって溶媒を留去する方法等が挙げられる。
【0070】
共重合体(A)、共重合体(B)には、例えば、製造中に酸化防止剤を添加するなどして、その表面及び/又は内部に酸化防止剤を含ませてもよい。
なお、後述する本実施形態の樹脂組成物にも下記の酸化防止剤を添加してもよい。
【0071】
酸化防止剤としては、以下に限定されないが、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。
具体的には、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチル-フェニル)プロピオネート、テトラキス-〔メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン]、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4'-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス-〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウムとポリエチレンワックス(50%)の混合物、オクチル化ジフェニルアミン、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ブチル酸、3,3-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)エチレンエステル、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、2-t-ブチル-6-(3'-t-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニル-アクリレート、及び2-〔1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)-エチル〕-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
また、絶縁信頼性の観点から、上記の酸化防止剤をペレットブロッキング防止剤として使用してもよい。
【0072】
重合停止剤としては、以下に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2-エチルヘキサノール、ヘプタノール等の各種アルコール、及びこれらの混合物等のアルコール等が挙げられる。
【0073】
共重合体(B)及び/又は共重合体(A)は、ペレット化してもよい。
これらは各々単独でペレット化してもよく、混合物の形態でペレット化してもよい。
ペレット化の方法としては、例えば、一軸又は二軸押出機から共重合体(B)及び/又は共重合体(A)をストランド状に押出して、ダイ部前面に設置された回転刃により、水中で切断する方法;一軸又は二軸押出機から共重合体(A)及び/又は(B)をストランド状に押出して、水冷又は空冷した後、ストランドカッターにより切断する方法;オープンロール、バンバリーミキサーにより溶融混合した後、ロールによりシート状に成形し、さらに当該シートを短冊状にカットした後に、ペレタイザーにより立方状ペレットに切断する方法等が挙げられる。
なお、共重合体(B)及び/又は共重合体(A)のペレットの大きさ、形状は特に限定されない。
共重合体(B)及び/又は共重合体(A)は、必要に応じて前記ペレットに、ペレットブロッキングの防止を目的としてペレットブロッキング防止剤を配合してもよい。
ペレットブロッキング防止剤としては、以下に限定されないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビスステアリルアミド、タルク、アモルファスシリカ等が挙げられる。
ペレットブロッキング防止剤としては、イオンマイグレーションの観点から、EBS、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
ペレットブロッキング防止剤の好ましい配合量としては、共重合体(A)及び/又は(B)に対して500~6000ppmであり、より好ましい量としては、1000~5000ppmである。
ペレットブロッキング防止剤は、ペレット表面に付着した状態で配合されていることが好ましいが、ペレット内部にある程度含むこともできる。
【0074】
(共重合体(A)、共重合体(B)の分子量分布)
共重合体(A)の分子量分布(Mwa/Mna)は、好ましくは1.01~8.0、より好ましくは1.01~6.0、さらに好ましくは1.01~5.0である。分子量分布が上記範囲内にあれば、本実施形態の樹脂組成物は、寸法安定性が良好になる傾向にある。
なお、GPCにより測定した共重合体(A)の分子量分布の形状は特に限定されず、ピークが二ヶ所以上存在するポリモーダルの分子量分布を持つものでもよいし、ピークが一つであるモノモーダルの分子量分布を持つものでもよい。
共重合体(A)の分子量分布はモノモーダルである方が好ましい。
共重合体(A)の分子量分布がモノモーダルであると、耐熱性に優れる傾向にある。
なお、共重合体(A)の重量平均分子量(Mwa)及び分子量分布〔Mwa/Mna;重量平均分子量(Mwa)の数平均分子量(Mna)に対する比〕は、後述する実施例に記載の方法でGPCによって測定したクロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めることができる。
【0075】
共重合体(B)の分子量分布(Mwb/Mnb)は、好ましくは1.01~8.0、より好ましくは1.01~6.0、さらに好ましくは1.01~5.0である。分子量分布が上記範囲内にあれば、本実施形態の樹脂組成物は、寸法安定性が良好になる傾向にある。
なお、GPCにより測定した共重合体(B)の分子量分布の形状は特に限定されず、ピークが二ヶ所以上存在するポリモーダルの分子量分布を持つものでもよいし、ピークが一つであるモノモーダルの分子量分布を持つものでもよい。
共重合体(B)の分子量分布はモノモーダルである方が好ましい。
共重合体(B)の分子量分布がモノモーダルであると、耐熱性に優れる傾向にある。
なお、共重合体(B)の重量平均分子量(Mwb)及び分子量分布〔Mwb/Mnb;重量平均分子量(Mwb)の数平均分子量(Mnb)に対する比〕は、後述する実施例に記載の方法でGPCによって測定したクロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めることができる。
【0076】
(共重合体(A)と、共重合体(B)との質量比)
本実施形態の樹脂組成物において、前記共重合体(A)と、共重合体(B)の、含有量の質量比(A)/(B)は、生産性の観点から、5/95~70/30が好ましく、10/90~60/40がより好ましく、15/85~50/50であることがさらに好ましい。
【0077】
(共重合体(A)及び共重合体(B)の含有量)
本実施形態における樹脂組成物における、共重合体(A)と共重合体(B)の合計含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物の樹脂固形分100質量部に対して5質量部以上60質量部以下が好ましい。
また、共重合体(A)と共重合体(B)の合計含有量の下限は本実施形態の樹脂組成物の柔軟性付与の効果を出すという観点から、より好ましくは6質量部以上、さらに好ましくは8質量部以上である。
さらに、共重合体(A)と共重合体(B)の合計含有量の上限は、本実施形態の樹脂組成物のガラス転移温度の低下抑制、べたつき悪化抑制の観点から、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。
樹脂固形分とは樹脂組成物からフィラーと溶剤を除いた成分を指す。
【0078】
(樹脂組成物を構成する成分)
本実施形態の樹脂組成物は、上述した共重合体(A)と共重合体(B)と、下記成分(I)~(III)から成る群より選ばれる少なくとも1種の成分を含む。
成分(I):硬化樹脂(共重合体(A)及び共重合体(B)を除く)
成分(II):ラジカル開始剤
成分(III):硬化剤(成分(I)を除く)
【0079】
<成分(I):硬化樹脂(共重合体(A)及び共重合体(B)を除く)>
本実施形態の樹脂組成物は、硬化物の誘電性能を損なわない範囲で、耐熱性、基板との接着性等の性能を付与する目的で、前記成分(I)硬化樹脂(共重合体(A)及び共重合体(B)を除く)を含有していてもよい。成分(I)硬化樹脂は、本実施形態の樹脂組成物において、架橋することによって強度や耐熱性を向上する効果を有する。硬化樹脂が極性基を有することで、本実施形態の樹脂組成物及び硬化物は、耐熱性に優れる傾向にある。
成分(I):硬化樹脂(共重合体(A)及び共重合体(B)を除く)としては、本実施形態の樹脂組成物の耐熱性、接着性の観点から、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、液晶ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂から成る群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、より好ましくはエポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂である。
成分(I):硬化樹脂を含むワニスを調製する工程において、硬化樹脂がポリイミド系樹脂の時、構造によっては共重合体(A)、(B)が溶解しにくい場合が有るが、共重合体(A)及び共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位の含有量の平均値が50質量%以上であることにより、共重合体(A)、(B)のワニスへの溶解性が高く、好ましい。すなわち、成分(I)がポリイミド系樹脂の場合や、エポキシ系樹脂とポリイミド系樹脂の併用の場合に、ワニスへの溶解性を担保する目的で、共重合体(A)及び共重合体(B)からなる共重合体のビニル芳香族単量体単位の含有量の平均値が50質量%以上である本実施形態の樹脂組成物は好ましい態様である。
【0080】
本実施形態の樹脂組成物の耐熱性の観点から、成分(I)としてのポリイミド系樹脂は、繰り返し単位にイミド結合を有し、ポリイミド樹脂と称される範疇に属するものであればよい。以下に限定されないが、例えば、テトラカルボン酸又はその二無水物とジアミンを重縮合(イミド結合)して得られる一般的なポリイミドの構造が挙げられ、硬化性の観点から前述のポリイミド構造の末端に不飽和基を有することが好ましい。前記末端に不飽和基を有するポリイミド樹脂としては、例えば、マレイミド型ポリイミド樹脂、ナジイミド型ポリイミド樹脂、アリルナジイミド型ポリイミド樹脂等が挙げられる。
前記テトラカルボン酸又はその二無水物としては、以下に限定されないが、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記ジアミンとしては、以下に限定されないが、例えば、ポリイミドの合成に通常用いられる芳香族ジアミン類、脂環式ジアミン類、脂肪族ジアミン類等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記テトラカルボン酸又はその二無水物、ジアミンの少なくとも一方において、本実施形態の樹脂組成物の硬化物の低誘電率化及び低誘電正接化の観点でフッ素基、トリフルオロメチル基、水酸基、スルホン基、カルボニル基、複素環、長鎖アルキル基、アリル基等からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を1つ又は複数有していてもよい。
また、成分(I)は、市販のポリイミド系樹脂を用いてもよく、例えば、ネオプリム(登録商標)C-3650(三菱ガス化学(株)製、商品名)、同C-3G30(三菱ガス化学(株)製、商品名)、同C-3450(三菱ガス化学(株)製、商品名)、同P500(三菱ガス化学(株)製、商品名)、BT(ビスマレイミド・トリアジン)レジン(三菱ガス化学(株)製)、JL-20(新日本理化製、商品名)(これらのポリイミド樹脂のワニスには、シリカが含まれていてもよい)、新日本理化社製のリカコートSN20、リカコートPN20、I.S.T.社製のPyre-ML、宇部興産社製のユピア―AT、ユピア-ST、ユピア-NF、ユピア-LB、日立化成社製のPIX-1400、PIX-3400、PI2525、PI2610、HD-3000、AS-2600、昭和電工株式会社製のHPC-5000、HPC-5012、HPC-1000、HPC-5020、HPC-3010、HPC-6000、HPC-9000、HCI-7000、HCI-1000S、HCI-1200E、HCI-1300、大和化成工業株式会社製のBMI-2300、新日本化薬株式会社製のMIR-3000が挙げられる。
【0081】
成分(I)としてのポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリフェニレンエーテル樹脂と称される範疇に属するものであればよく、フェニレンエーテル単位を繰り返し構造単位として含む。フェニレンエーテル単位を有する単独重合体でもよく、また、フェニレンエーテル単位以外のその他の構成単位を含む重合体であってもよい。
前記フェニレンエーテル単位を有する単独重合体としては、フェニレン単位中のフェニレン基は、置換基を有するかは特に制限されないが、置換基としては、例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等のアクリル基、シクロへキシル基等の環状アルキル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、1-ペンテニル基、p-ビニルフェニル基、p-イソプロペニルフェニル基、m-ビニルフェニル基、m-イソプロペニルフェニル基、o-ビニルフェニル基、o-イソプロペニルフェニル基、p-ビニルベンジル基、p-イソプロペルベンジル基、m-ビニルベンジル基、m-イソプロペニルベンジル基、o-ビニルベンジル基、o-イソプロペニルベンジル基、p-ビニルフェニルエテニル基、p-ビニルフェニルプロペニル基、p-ビニルフェニルブテニル基、m-ビニルフェニルエテニル基、m-ビニルフェニルプロペニル基、m-ビニルフェニルブテニル基、o-ビニルフェニルエテニル基、o-ビニルフェニルプロペニル基、o-ビニルフェニルブテニル基、メタクリル基、アクリル基、2-エチルアクリル基、2-ヒドロキシメチルアクリル基等の不飽和結合含有置換基、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボン酸基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シラノール基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、ボロン酸基、ホウ素含有基、ボロン酸塩基、アルコキシスズ基、及びフェニルスズ基等の官能基含有置換基が挙げられるが、本実施形態の樹脂組成物の硬化性の観点から、ラジカル反応性及び/又は後述する成分(III):硬化剤との反応性の観点から、所定の極性基を有することが好ましい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂の分子量は、本実施形態の樹脂組成物の硬化性の観点から100000以下が好ましく、より好ましくは50000以下、さらに好ましくは10000以下である。
また、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、直鎖状であってもよく、架橋又は分岐構造であってもよい。
【0082】
成分(I)としての液晶ポリエステル系樹脂は、異方性溶融相を形成するポリエステルであり、液晶ポリエステル樹脂と称される範疇に属するものであればよい。
例えば、イーストマンコダック社製「X7G」、ダートコ社製Xyday(ザイダー)、住友化学社製エコノール、セラニーズ社製ベクトラ等が挙げられる。
【0083】
成分(I)としてのエポキシ系樹脂としては、エポキシ樹脂と称される範疇に属するものであればよく、本実施形態の樹脂組成物の強度の観点から1分子中に2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。
エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等;が挙げられる。
【0084】
また、反応性の観点で成分(I)としてエポキシ樹脂を用いる場合は、本実施形態の樹脂組成物は、後述する成分(III):硬化剤を含有していることが好ましい。成分(III):硬化剤が有する極性基としては、例えば、カルボキシ基、イミダゾール基、水酸基、アミノ基、メルカプタン基、ベンゾオキサジン基、カルボジイミド基が挙げられ、反応性の観点からカルボキシ基、イミダゾール基、水酸基、ベンゾオキサジン基、カルボジイミド基が好ましく、本実施形態の樹脂組成物及び硬化物の低誘電率性、低誘電正接性の観点から、水酸基、カルボキシ基、イミダゾール基、ベンゾオキサジン基、カルボジイミド基がより好ましく、さらに好ましくは水酸基、カルボキシ基、カルボジイミド基である。
【0085】
また、成分(I)としてラジカル反応性が異なる極性樹脂を2種以上使用してもよく、この場合は、本実施形態の樹脂組成物の硬化性の観点から、後述する成分(II):ラジカル開始剤、及び後述する成分(III):硬化剤を単独で使用、または、併用することもできる。
例えば、成分(I)としてラジカル反応性に優れるマレイミド型ポリイミド樹脂及びラジカル反応性を有さないビスフェノールAエポキシ樹脂を用いる場合、本実施形態の樹脂組成物の硬化性の観点から成分(II):ラジカル開始剤、及び成分(III):硬化剤を併用して添加することができる。
【0086】
また、成分(I)として、高融点及び高剛性の極性樹脂を使用する場合は、後述する成分(III):硬化剤を含まなくてもよい。
高融点及び高剛性の樹脂としては、液晶ポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂が挙げられる。
成分(I)が高融点及び高剛性であることで、後述する成分(III):硬化剤を含有しない場合でも本実施形態の樹脂組成物は実用上必要な耐熱性及び/又は強度を有することができる傾向にある。
【0087】
本実施形態の樹脂組成物における成分(I)の含有量は、本実施形態の樹脂組成物の樹脂固形分100質量部に対して、耐熱性の観点から、10質量部~90質量部であることが好ましく、15質量部~85質量部であることがより好ましく、20質量部~80質量部であることがさらに好ましい。
樹脂固形分とは樹脂組成物からフィラーと溶剤を除いた成分を指す。
【0088】
<成分(II):ラジカル開始剤>
成分(II):ラジカル開始剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、熱ラジカル開始剤が好ましいものとして挙げられる。
熱ラジカル開始剤としては、以下に限定されないが、例えば、ジイソピルベンゼンハイドロパーオキサイド(パークミルP)、クメンハイドロパーオキサイド(パークミルH)、t-ブチルハイドロパーオキサイド(パーブチルH)等のハイドロパーオキサイド類;、α,α-ビス(t-ブチルペルオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン(パーブチルP)、ジクミルパーオキサイド(パークミルD)、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B)、t-ブチルクミルパーオキサイド(パーブチルC)、ジ-t-ブチルパーオキサイド(パーブチルD)、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3(パーヘキシン25B)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーブチルO)等のジアルキルパーオキサイド類;、ケトンパーオキサイド類;n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート(パーヘキサV)等のパーオキシケタール等;ジアシルパーオキサイド類;パーオキシジカーボネート類;パーオキシエステル等の有機過酸化物;2,2-アゾビスイソブチルニトリル、1,1’-(シクロヘキサン―1-1カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等を挙げることができる。
これらは、1種単独で使用してもよく2種以上を使用してもよい。
【0089】
上述した成分(I):硬化樹脂が、ラジカル反応性を有する樹脂の場合、反応性に応じて任意に成分(II):ラジカル開始剤の量を調整又は添加しないことができる。
成分(I)としてのラジカル反応性を有する樹脂とは、例えば、重合体に少なくとも一つのビニル基及び/又はハロゲン元素が含有されている化合物の単独重合体及び/又は任意の化合物との共重合体が挙げられ、本実施形態の樹脂組成物及び硬化物の低誘電率性、及び低誘電正接性の観点から、前記単独重合体及び/又は共重合体はビニル基を有することが好ましい。ビニル基を有するとは、ビニル基を有する繰り返し単位から成る重合体でもよく、ビニル基及び極性基を有する化合物と極性基を有する樹脂の各極性基が反応することで得られたビニル基を有するポリマーであってもよい。
前記ビニル基及び極性基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸(本明細書において「(メタ)アクリル」とは「メタクリルあるいはアクリルを意味する」)、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマー、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン基含有ビニルモノマー、ヒドロキシスチレン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有ビニルモノマー、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、フェニル-2-アクリロイロキシエチルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルホスホン酸等のリン酸基含有ビニルモノマー、ヒドロキシスチレン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、1-ブテン-3-オール等のヒドロキシ基含有ビニルモノマー、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有ビニルモノマー、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド等のアミド基含有ビニルモノマー、(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレート等のニトリル期含有ビニルモノマー、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、p-ビニルフェニルフェニルオキサイド等のエポキシ基含有ビニルモノマー、ウレトジオン、イソシアヌレート等のポリイソシアネート基含有ビニルモノマーが挙げられる。
ハロゲン元素含有モノマーとしては、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0090】
成分(I):硬化樹脂のラジカル反応性が低い又は有しない場合、反応性の観点から、本実施形態の樹脂組成物は、後述する成分(III):硬化剤を含有することが好ましい。成分(III):硬化剤は、通常成分(I)硬化樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。成分(I)と成分(III)の硬化剤が「反応」するとは、各成分の極性基同士が共有結合性を持つことを意味する。極性基同士が反応するとき、例えばカルボキシル基のOHが脱離すると、元の極性基が変化したり無くなったりするが、これによって共有結合が形成する場合には、極性基同士が「反応性」を示すという定義に含まれる。
【0091】
本実施形態の樹脂組成物における成分(II)の含有量は、本実施形態の樹脂組成物の樹脂固形分100質量部に対して、耐熱性の観点から、0.01質量部~5質量部であることが好ましく、0.02質量部~4質量部であることがより好ましく、0.03質量部~3質量部であることがさらに好ましい。
樹脂固形分とは樹脂組成物からフィラーと溶剤を除いた成分を指す。
【0092】
<成分(III):硬化剤(成分(I)を除く)>
成分(III)の硬化剤は、成分(I):硬化樹脂の官能基と反応し得る極性基を1分子鎖中に少なくとも2個以上有することが硬化機能の観点で好ましい。
成分(III)は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用して用いてもよい。
成分(I)及び成分(III)が有する極性基の種類としては特に限定されないが、例えば、
エポキシ基とカルボキシ基、カルボニル基、エステル基、イミダゾール基、水酸基、アミノ基、メルカプタン基、ベンゾオキサジン基、カルボジイミド基;
アミノ基とカルボンキシ基、カルボニル基、水酸基、酸無水物基、スルホン酸、アルデヒド基;
イソシアネート基と水酸基、カルボン酸;
酸無水物基とヒドロキシ基;
シラノール基とヒドロキシ基、カルボン酸基;
ハロゲンとカルボン酸基、カルボン酸エステル基、アミノ基、フェノール基、チオール基;
アルコキシ基とヒドロキシ基、アルコキシド基、アミノ基;
マレイミド基とシアネート基;
等が挙げられる。
これらの極性基は、成分(I):硬化樹脂、成分(III):硬化剤のいずれの極性基であるかは任意に選択できる。
【0093】
また、成分(I)が持つ極性基と成分(III)の極性基が直接反応しない場合に、触媒等の硬化促進剤を添加することで反応し得る場合も「反応性」を示すという定義に含まれる。
例えば、成分(I)がエポキシ基を有する樹脂であり、成分(III)が酸無水物基を有する硬化剤である場合、通常、エポキシ基と酸無水物基の反応性は非常に低いが、アミノ基を有する化合物を硬化促進剤として添加することで成分(I)のエポキシ基とアミノ基が反応し、成分(III)のエポキシ基の一部又はすべてが水酸基となる。前記水酸基と成分(III)の硬化剤の酸無水物基が反応することで本実施形態の樹脂組成物が硬化する。
【0094】
成分(I)が極性基を有する硬化樹脂の場合、前記成分(I)と、成分(III)の硬化剤の量比は、反応性の観点から極性基のmol比率で、(成分(I)の極性基のmоl量):(成分(III)の極性基のmоl量)=1:0.01~1:20が好ましく、より好ましくは1:0.05~1:15、さらに好ましくは1:0.1~1:10である。
以下、成分(III):硬化剤の具体例を挙げる。
エステル基を有する硬化剤としては、例えば、DIC社製のEXB9451、EXB9460、EXB、9460S、HPC8000-65T、HPC8000H-65TM、EXB8000L-65TM、EXB8150-65T、EXB9416-70BK、三菱ケミカル社製のYLH1026、DC808、YLH1026、YLH1030、YLH1048が挙げられる。
【0095】
水酸基を有する硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、MEH-7700、MEH-7810、MEH-7851、日本化薬社製のNHN、CBN、GPH、新日鉄住金化学社製のSN170、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN-495V、SN375、DIC社製のTD-2090、LA-7052、LA-7054、LA-1356、LA-3018-50P、EXB-9500等が挙げられる。
【0096】
ベンゾオキサジン基を有する硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、JFEケミカル社製のODA-BOZ、昭和高分子社製のHFB2006M、四国化成工業社製のP-d、F-aが挙げられる。
【0097】
イソシアネート基を有する硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;等が挙げられる。市販品としては、ロンザジャパン社製のPT30、PT60、ULL-950S、BA230、BA230S75等が挙げられる。
【0098】
カルボジイミド基を有する硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、日清紡ケミカル社製のV-03、V-07が挙げられる。
【0099】
アミノ基を有する硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、ジフェニルジアミノスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、等が挙げられる。市販品としては、日本化薬社製のKAYABOND C-200S、KAYABOND C-100、カヤハードA-A、カヤハードA-B、カヤハードA-S、三菱ケミカル社製のエピキュアW等が挙げられる。
また、反応性の観点からアミノ基を有する硬化剤としては第1級アミン及び/又は第2級アミンが好ましく、より好ましくは第1級アミンである。
【0100】
酸無水物基を有する硬化剤としては、以下に限定されないが、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂等のポリマー型の酸無水物等が挙げられる。
【0101】
また、前述のラジカル反応性を有する構造を少なくとも2つ有する化合物も成分(I)と反応して、本実施形態の樹脂組成物を硬化させる機能を有するため、成分(III):硬化剤として使用可能である。
ラジカル反応性を有する構造を少なくとも2つ有する化合物としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(三菱ケミカル社製 タイク)、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、フマル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、クエン酸トリアリル、ヘキサヒドロフタル酸ジアリル等のアリルモノマー等が挙げられる。
【0102】
本実施形態の樹脂組成物における成分(III)の含有量は、本実施形態の樹脂組成物の樹脂固形分100質量部に対して、耐熱性の観点から、10質量部~90質量部であることが好ましく、15質量部~85質量部であることがより好ましく、20質量部~80質量部であることがさらに好ましい。
樹脂固形分とは樹脂組成物からフィラーと溶剤を除いた成分を指す。
【0103】
<成分(IV):添加剤>
本実施形態の樹脂組成物は、さらに成分(IV)として、硬化促進剤、フィラー、難燃剤、及びその他の添加剤を含んでいてもよい。
また、共重合体(A)及び共重合体(B)の添加剤として含まれるものも前記樹脂組成物の成分(IV)と同義である。
【0104】
硬化促進剤としては、前述の各成分間の反応性を促進する目的で添加され、従来公知のものが使用できる。硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。
硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
リン系硬化促進剤としては、以下に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0106】
アミン系硬化促進剤としては、以下に限定されないが、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0107】
イミダゾール系硬化促進剤としては、以下に限定されないが、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製のP200-H50等が挙げられる。
【0108】
グアニジン系硬化促進剤としては、以下に限定されないが、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-nオクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0109】
金属系硬化促進剤としては、以下に限定されないが、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。
有機金属錯体としては、例えば、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。
有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0110】
フィラーとしては、以下に限定されないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、グラファイト、酸化チタン、チタン酸カリウムウイスカー、炭素繊維、アルミナ、カオリンクレー、ケイ酸、ケイ酸カルシウム、石英、マイカ、タルク、クレー、ジルコニア、チタン酸カリウム、アルミナ、金属粒子等の無機充填剤;木製チップ、木製パウダー、パルプ、セルロースナノファイバー等の有機フィラーが挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらフィラーの形状としては、鱗片状、球状、粒状、粉体、不定形状等のいずれでもよく、特に制限は無い。
本実施形態の樹脂組成物及び硬化物の低誘電率性、及び低誘電正接性の観点からフィラーとしてはシリカが好ましく、シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。
【0111】
難燃剤としては、以下に限定されないが、例えば、臭素化合物等のハロゲン系難燃剤、芳香族化合物等のリン系難燃剤、金属水酸化物、アルキルスルホン酸塩、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエタン、4,4-ジブロモビフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の芳香族臭素化合物を含む難燃剤等が挙げられる。
これらの難燃剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
上記難燃剤の中には、それ自身の難燃性発現効果は低いが、他の難燃剤と併用することで相乗的により優れた効果を発揮する、いわゆる難燃助剤も含まれる。
【0112】
フィラー、難燃剤は、シランカップリング剤等の表面処理剤であらかじめ表面処理を行ったタイプを使用することもできる。
表面処理剤としては、以下に限定されないが、例えば、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0113】
その他の添加剤としては、樹脂組成物及び/又は硬化物の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。
当該その他の添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料及び/又は着色剤;ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤;離型剤;有機ポリシロキサン、フタル酸エステル系やアジピン酸エステル化合物、アゼライン酸エステル化合物等の脂肪酸エステル系、ミネラルオイル等の可塑剤;ヒンダードフェノール系、リン系熱安定剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;帯電防止剤;有機充填剤;増粘剤;消泡剤;レベリング剤;密着性付与剤等の樹脂添加剤;その他添加剤あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
【0114】
本実施形態の樹脂組成物及び硬化物の低誘電率性及び低誘電正接性の観点から、顔料、着色剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤が含有されないことが好ましい傾向にある。
【0115】
本実施形態の樹脂組成物は、各成分を溶融混錬したものであってもよく、各成分を溶解可能な溶媒に溶解させ撹拌したもの(以下、「ワニス」)であってもよいが、取り扱性の観点からワニスが好ましい。
溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられる。
有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0116】
〔硬化物〕
本実施形態の硬化物は、本実施形態の樹脂組成物の硬化物であり、本実施形態の樹脂組成物を任意の温度及び時間で硬化反応させることにより得られる。本実施形態の硬化物とは、完全に硬化したものの他、一部の樹脂組成物のみを硬化して未硬化成分を含む態様(半硬化)を包含する概念である。
後述する積層体の製造過程では、硬化物をさらに硬化する工程を実施してもよい。
本実施形態の硬化物の硬化工程の反応温度は80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。
反応時間としては、10~240分が好ましく、20~230分がより好ましく、30~220分がさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物がワニスの場合、溶剤を除去後に硬化反応を行うことが好ましい。乾燥方法としては、加熱、熱風吹つけ等の従来公知の方法により実施してもよく、硬化反応温度より低温で行うことが好ましい。樹脂組成物中の溶媒量に関しては、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。
【0117】
〔樹脂フィルム〕
本実施形態の樹脂フィルムは、本実施形態の樹脂組成物からなる。
また、本実施形態の樹脂フィルムは、本実施形態の硬化物を含む。
本実施形態の樹脂フィルムは、本実施形態の樹脂組成物からなるワニスを、適当な支持体の上で均一な薄膜状に伸ばし、前述の通り乾燥処理を行い、溶媒を除去することにより得られる。かかる樹脂フィルムは、ロール状に巻き取って保存することが可能である。
本実施形態の樹脂フィルムは、所定の保護フィルムが積層された構成としてもよく、かかる場合は、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
支持体としては、例えば、プラスチック材料から成るフィルム、金属箔、離形紙等が挙げられる。
支持体であるプラスチック材料から成るフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられ、入手性、コストの観点からポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
また、支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理、離形処理を施してあってもよい。
【0118】
〔プレプリグ〕
本実施形態に係るプリプレグは、基材と、この基材に含浸又は塗布された本実施形態の樹脂組成物又はその硬化物とを含む。すなわち、本実施形態のプリプレグは、本実施形態の樹脂組成物又は硬化物と基材との複合体である。
プリプレグは、例えば、ガラスクロス等の基材を、本実施形態の樹脂組成物であるワニスに含浸させた後、前述の乾燥方法により溶剤を除去することにより得られる。
基材としては、例えば、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマット等の各種ガラスクロス;アスベスト布、金属繊維布、及びその他の合成若しくは天然の無機繊維布;全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維等の液晶繊維から得られる織布又は不織布;綿布、麻布、フェルト等の天然繊維布;カーボン繊維布、クラフト紙、コットン紙、紙-ガラス混繊糸から得られる布等の天然セルロース系基材;ポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルム等が挙げられるが、誘電性能の観点からガラスクロスが好ましい。
これらの基材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
プリプレグ中の本実施形態の樹脂組成物よりなる固形分の割合は、30~80質量%であることが好ましく、40~70質量%であることがより好ましい。上記割合が30質量%以上であることにより、プリプレグを電子基板用等に用いた場合に絶縁信頼性に一層優れる傾向にある。上記割合が80質量%以下であることにより、電子基板等の用途において、剛性等の機械特性に一層優れる傾向にある。
【0119】
〔積層体〕
本実施形態の積層体は、上述した樹脂フィルムと金属箔とを有する。
また、本実施形態の積層体は、上述したプリプレグの硬化物と金属箔とを有する。
本実施形態の積層体は、例えば、基材に本実施形態の樹脂組成物よりなる樹脂フィルムを積層して樹脂層を形成してプリプレグを得る工程(a)と、前記樹脂層を加熱・加圧して平坦化し、プリプレグの硬化物を得る工程(b)と、前記樹脂層上に、金属箔よりなる所定の配線層をさらに形成する工程(c)等を経て製造することができる。
前記工程(a)において、基材上に樹脂フィルムを積層する方法は特に限定されないが、例えば、多段プレス、真空プレス、常圧ラミネーター、真空下で加熱加圧するラミネーターを用いて積層する方法等が挙げられ、真空下で加熱加圧するラミネーターを用いる方法が好ましい。このラミネーターを用いる方法によれば、目的とする電子回路基板が表面に微細配線回路を有していてもボイドがなく回路間を樹脂で埋め込むことができる。また、ラミネートはバッチ式であってもよく、ロール等での連続式であってもよい。
なお、本実施形態の積層体を構成するプリプレグは、基材と樹脂組成物の硬化物を有する形態であってもよい。
【0120】
上述した積層体の基材としては、上述したプリプレグを構成する基材の他、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、ポリフェニレンエーテル系基板、フッ素樹脂基板等が挙げられる。基材の樹脂層が積層される面は予め粗化処理されていてもよく、基材層数は限定されない。
【0121】
前記工程(b)では、前記工程(a)で積層した樹脂フィルムと基材を加熱下加圧し、平坦化する。条件は、基板の種類や樹脂フィルムの組成で任意に調整することができるが、例えば、温度100~300℃、圧力0.2~20MPa、時間30~180分の範囲が好ましい。
前記工程(c)では、樹脂フィルムと基材を加熱下加圧して作製した樹脂層上にさらに金属箔よりなる所定の配線層を形成する。形成方法としては、特に限定されず、従来公知の方法が挙げられるが、例えば、サブトラクティブ法等のエッチング法、セミアディティブ法等が挙げられる。
サブトラクティブ法は、金属層の上に、所望のパターン形状に対応した形状のエッチングレジスト層を形成し、その後の現像処理によって、レジストの除去された部分の金属層を薬液で溶解し除去することによって、所望の配線を形成する方法である。
セミアディティブ法は、無電解めっき法により樹脂層の表面に金属被膜を形成し、金属被膜上に所望のパターンに対応した形状のめっきレジスト層を形成し、次に、電解めっき法によって金属層を形成した後、不要な無電解めっき層を薬液等で除去し、所望の配線層を形成する方法である。
【0122】
また、樹脂層には、必要に応じてビアホール等のホールを形成してもよく、ホールの形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を使用することができる。ホールの形成方法としては、例えば、NCドリル、炭酸ガスレーザー、UVレーザー、YAGレーザー、プラズマ等を使用できる。
【0123】
〔金属張積層板〕
上述した本実施形態の積層体は、板状であってもよいし可撓性を有するフレキシブルな積層体であってもよい。
本実施形態の積層体は、金属張積層板であってもよい。
金属張積層板は、本実施形態の樹脂組成物又は本実施形態のプリプレグと、金属箔とを積層し、硬化することにより得られ、金属張積層板から金属箔の一部が除去されている構成を有しているものとする。
金属張積層板は、プリプレグの硬化物(「硬化物複合体」ともいう。)と金属箔とが積層して密着している形態を有することが好ましく、電子回路基板用の材料として好適に用いられる。
【0124】
金属箔としては、例えば、アルミ箔、及び銅箔が挙げられ、これらの中でも銅箔は電気抵抗が低いため好ましい。
金属箔と組合せるプリプレグの硬化物は、1枚でも複数枚でもよく、用途に応じて硬化物複合体の片面又は両面に金属箔を重ねて積層板に加工する。
前記積層板の製造方法としては、例えば、本実施形態の樹脂組成物と基材とから構成されるプリプレグを形成し、これを金属箔と重ねた後、樹脂組成物を硬化させることにより、プリプレグの硬化物と金属箔とが積層されている積層板を得る方法が挙げられる。
前記積層板の特に好ましい用途の1つはプリント配線板である。プリント配線板は、金属張積層板から金属箔の少なくとも一部が除去されていることが好ましい。
本実施形態のプリント配線板は、上述した本実施形態のプリプレグを用いて、加圧加熱成型する方法により作製できる。基材としてはプリプレグに関して前述したものと同様のものを用いることができる。前記プリント配線板は、本実施形態の樹脂組成物を含むことにより、優れた強度及び電気特性(低誘電率、及び低誘電正接)を有し、さらには、環境変動に伴う電気特性の変動を抑制可能であり、かつ優れた絶縁信頼性、及び機械特性を有する。
【0125】
〔プリント配線板〕
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の樹脂組成物の硬化物を含む。
本実施形態のプリント配線板は、上述した本実施形態の樹脂組成物及び/又はワニスを用いて作製できる。
本実施形態のプリント配線板は、上述した樹脂組成物の硬化物、本実施形態の樹脂組成物又をその硬化物を含む樹脂フィルム、及び基材と樹脂組成物又は硬化物との複合体であるプリプレグからなる群より選ばれる少なくともいずれかを含む。
本実施形態のプリント配線板は樹脂付金属箔を具備する形態として利用できる。
【実施例0126】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本実施形態について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
先ず、実施例及び比較例に適用した、評価方法及び物性の測定方法について下記に示す。
【0127】
〔共重合体(A)及び共重合体(B)の構造の特定方法、物性の測定方法〕
((1)共重合体のビニル芳香族単量体単位(スチレン)の含有量)
水添前の共重合体を用い、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)法により測定した。
測定機器は、JNM-LA400(JEOL製)を用い、溶媒は重水素化クロロホルムを用い、サンプル濃度は50mg/mL、観測周波数は400MHz、化学シフト基準にテトラメチルシランを用い、パルスディレイ2.904秒、スキャン回数64回、パルス幅45°、及び測定温度26℃で行った。
スチレン含有量は、スペクトルの6.2~7.5ppmにおける総スチレン芳香族シグナルの積算値を用いて算出した。
【0128】
((2)共重合体(A)及び共重合体(B)のビニル結合量)
水添前の共重合体を用い、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)法によりビニル結合量を測定した。
測定条件及び測定データの処理方法は上記(1)と同様とした。
共重合体(A)および共重合体(B)それぞれのビニル結合量は、1,4-結合及び1,2-結合に帰属されるシグナルの積分値から各結合様式の1Hあたりの積分値を算出し、1,2-結合の積分値を1,4-結合と1,2-結合(1,2-結合はブタジエンの場合であって、イソプレンの場合ならば3,4-結合になる)の積分値の合計値で除した値である。
【0129】
((3)ランダム重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の質量割合(RS)と、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量(BS))
なお、以下のように定義する。
BSa:共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量
BSb:共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量
RSa:共重合体(A)のランダム重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の質量割合
RSb:共重合体(B)のランダム重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の質量割合
水添ブロック共重合体(A)、水添共重合体(B)を測定サンプルとし、プロトン核磁気共鳴法(1H-NMR、JOEL RESONABCE社製ECS400)により、それぞれに含まれるビニル芳香族単量体単位を、「ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック」に由来するものと、「ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物からなるランダム共重合構造」に由来するものに区別した。
溶媒に重水素化クロロホルムを用い、サンプル濃度は50mg/mL、観測周波数は400MHz、化学シフト基準にテトラメチルシランを用い、パルスディレイ2.904秒、スキャン回数256回及び測定温度23℃で行った。
芳香族に帰属されるシグナルの積分強度から各結合様式の1Hあたりの積分値からランダム性とブロック性の芳香族単量体単位の量を算出した後、全スチレン含有量を算出し、ランダム重合体ブロック中のスチレン質量割合(以降、ランダムスチレン量と記載)(RSa)(RSb)と、共重合体中のスチレンブロック含有量(BSa)(BSb)を算出した。計算法は以下の通りである。
スチレンブロック強度(b-St強度)
=(6.9ppm~6.3ppmの積算値)/2
ランダムスチレン強度(r-St強度)
=(7.5ppm~6.9ppmの積算値)-3×(b-St)
エチレン・ブチレン強度(EB強度)
=全積算値-3×{(b-St強度)+(r-St強度)}/8
スチレンブロック含有量(BS)
=104×(b-St強度)
/[104×{(b-St強度)+(r-St強度)}+56×(EB強度)]
ランダムスチレン量(RS)
=104×(r-St強度)/{104×(r-St強度)+56×(EB強度)}
【0130】
((4)数平均分子量(Mn))
共重合体(A)及び共重合体(B)の数平均分子量を、GPC〔装置:東ソーHLC8220、カラムTSKgel SuperH-RC×2本〕を用いて測定した。
溶媒にはテトラヒドロフランを用いた。
測定条件は、温度35℃で行った。重量平均分子量が既知の市販の標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を使用し、ポリスチレン換算した数平均分子量を求めた。
ここで、表中、共重合体(A)の数平均分子量を(Mna)とし、共重合体(B)の数平均分子量を(Mnb)とする。
【0131】
((5)の共重合体(A)及び共重合体(B)の質量比率)
GPC〔装置:東ソーHLC8220、カラムTSKgel SuperH-RC×2本〕を用いて共重合体(A)及び共重合体(B)の混合物を用いて、共重合体(A)及び共重合体(B)の比率の測定を行った。
溶媒にはテトラヒドロフランを用いた。
測定条件は、温度35℃で行った。共重合体(A)及び共重合体(B)に由来するピークの面積比より、共重合体(A)及び共重合体(B)の質量比率を算出した。
【0132】
((6)水添率)
核磁気共鳴装置(BRUKER社製、DPX-400)により共重合体(A)及び共重合体(B)の水素添加率を測定した。
水素添加後の共重合体である水添共重合体を用いて、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)により測定した。
具体的には、4.5~5.5ppmの残存二重結合に由来するシグナル及び水素添加された共役ジエンに由来するシグナルの積分値を算出し、その比率を算出した。
【0133】
((7)平均水添率H(%)、平均ビニル結合量(V)(%)の算出)
平均水添率(H)及び平均ビニル結合量(V)は下記式にて算出した。
平均水添率(H)=(共重合体(A)の水添率)×(共重合体(A)の質量比率)+(共重合体(B)の水添率)×(共重合体(B)の質量比率)
平均ビニル結合量(V)=(共重合体(A)のビニル結合量)×(共重合体(A)の質量比率)+(共重合体(B)のビニル結合量)×(共重合体(B)の質量比率)
【0134】
(共集合体(X)の構成成分である共重合体(A)、共重合体(B)の分取)
樹脂組成物を、GPC〔装置:Waters社ACQUITY UPLC H-Class、カラム:Waters社ACQUITY APC XT900(2.5μm,4.6×150mm)、Waters社ACQUITY APC XT200(2.5μm,4.6×75mm)、Waters社ACQUITY APC XT125(2.5mm,4.6×75mm)直列〕を用いて低分子成分である共重合体(A)と高分子成分である共重合体(B)に分取した。
溶媒はクロロホルムを使用した。
GPC測定チャートをもとに、低分子ピークと高分子ピークのそれぞれの成分に分取した。
【0135】
〔ブロック共重合体、樹脂組成物の材料〕
(水添触媒の調製)
後述する実施例及び比較例において、ブロック共重合体を作製する際に用いる水添触媒を、下記の方法により調製した。
攪拌装置を具備する反応容器を窒素置換しておき、これに、乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込んだ。
次に、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加した。これを十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn-ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。これにより水添触媒を得た。
【0136】
(共重合体(A)及び共重合体(B))
共重合体(A1)~(A20)、共重合体(B1)~(B20)、及び共重合体(X1)を、下記のようにして製造した。
【0137】
<製造例1:共重合体(A1)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.493質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加し、70℃で15分重合した。
続いて、スチレン48質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン32質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、45分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)20質量%、スチレン含有量(Sa)68質量%、ランダムスチレン量(RSa)60質量%、スチレンブロック含有量(BSa)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)3000、数平均分子量(Mna)1.5万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A1)を得た。
【0138】
<製造例2:共重合体(A2)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.291質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加し、70℃で15分重合した。
続いて、スチレン48質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)、ブタジエン32質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、45分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)20質量%、スチレン含有量(Sa)68質量%、ランダムスチレン量(RSa)60質量%、スチレンブロック含有量(BSa)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)5000、数平均分子量(Mna)2.5万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A2)を得た。
【0139】
<製造例3:共重合体(A3)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して1.07質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン48質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)、ブタジエン32質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、45分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)20質量%、スチレン含有量(Sa)68質量%、ランダムスチレン量(RSa)60質量%、スチレンブロック含有量(BSa)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)1400、数平均分子量(Mna)0.7万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A3)を得た。
【0140】
<製造例4:共重合体(A4)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン60質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.641質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.6モル添加し、70℃で50分重合した。
続いて、ブタジエン40質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、30分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)60質量%、スチレン含有量(Sa)60質量%、ランダムスチレン量(RSa)0質量%、スチレンブロック含有量(BSa)60質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)7200、数平均分子量(Mna)1.2万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A4)を得た。
【0141】
<製造例5:共重合体(A5)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.582質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.6モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン24質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン56質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、45分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)20質量%、スチレン含有量(Sa)44質量%、ランダムスチレン量(RSa)30質量%、スチレンブロック含有量(BSa)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)3000、数平均分子量(Mna)1.5万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A5)を得た。
【0142】
<製造例6:共重合体(A6)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.712質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.9モル添加し、70℃で10分重合した。
続いて、スチレン56質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン24質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、45分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)20質量%、スチレン含有量(Sa)76質量%、ランダムスチレン量(RSa)70質量%、スチレンブロック含有量(BSa)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)2000、数平均分子量(Mna)1万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A6)を得た。
【0143】
<製造例7:共重合体(A7)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン60質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.641質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加し、70℃で45分重合した。
続いて、ブタジエン40質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、30分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)60質量%、スチレン含有量(Sa)60質量%、ランダムスチレン量(RSa)0質量%、スチレンブロック含有量(BSa)60質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)7200、数平均分子量(Mna)1.2万であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A7)を得た。
【0144】
<製造例8:共重合体(A8)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン60質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.641質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加し、70℃で45分重合した。
続いて、ブタジエン40質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、30分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)60質量%、スチレン含有量(Sa)60質量%、ランダムスチレン量(RSa)0質量%、スチレンブロック含有量(BSa)60質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)7200、数平均分子量(Mna)1.2万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行い、途中で水添反応を停止した。
得られた水添共重合体の水添率は70%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A8)を得た。
【0145】
<製造例9:共重合体(A9)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.291質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン48質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)及び、ブタジエン32質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、45分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)20質量%、スチレン含有量(Sa)68質量%、ランダムスチレン量(RSa)60質量%、スチレンブロック含有量(BSa)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)5000、数平均分子量(Mna)2.5万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A9)を得た。
【0146】
<製造例10:共重合体(A10)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン60質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン40質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.534質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加し、70℃で60分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)20質量%、スチレン含有量(Sa)60質量%、ランダムスチレン量(RSa)0質量%、スチレンブロック含有量(BSa)0質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)0、数平均分子量(Mna)1.5万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A10)を得た。
【0147】
<製造例11:共重合体(A11)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.183質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加し、70℃で10分重合した。
続いて、スチレン48質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン32質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、45分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)20質量%、スチレン含有量(Sa)68質量%、ランダムスチレン量(RSa)60質量%、スチレンブロック含有量(BSa)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)8000、数平均分子量(Mna)4万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A11)を得た。
【0148】
<製造例12:共重合体(A12)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.582質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.5モル添加し、70℃で10分重合した。
続いて、スチレン24質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン56質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、45分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)20質量%、スチレン含有量(Sa)44質量%、ランダムスチレン量(RSa)30質量%、スチレンブロック含有量(BSa)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)3000、数平均分子量(Mna)1.5万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A12)を得た。
【0149】
<製造例13:共重合体(A13)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.356質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加し、70℃で10分重合した。
続いて、スチレン56質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン24質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、45分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)20質量%、スチレン含有量(Sa)68質量%、ランダムスチレン量(RSa)60質量%、スチレンブロック含有量(BSa)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)4000、数平均分子量(Mna)2万であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A13)を得た。
【0150】
<製造例14:共重合体(A14)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.356質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加し、70℃で10分重合した。
続いて、スチレン56質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン24質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、45分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)20質量%、スチレン含有量(Sa)68質量%、ランダムスチレン量(RSa)60質量%、スチレンブロック含有量(BSa)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)4000、数平均分子量(Mna)2万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A14)を得た。
【0151】
<製造例15:共重合体(A15)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.712質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加し、70℃で10分重合した。
続いて、スチレン56質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン24質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、45分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)20質量%、スチレン含有量(Sa)68質量%、ランダムスチレン量(RSa)60質量%、スチレンブロック含有量(BSa)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)2000、数平均分子量(Mna)1万であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A15)を得た。
【0152】
<製造例16:共重合体(B1)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.061質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン42質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン28質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60分重合した。
続いて、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
続いて、スチレン6質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン4質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)20質量%、スチレン含有量(Sb)68質量%、ランダムスチレン量(RSb)60質量%、スチレンブロック含有量(BSb)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)12000、数平均分子量(Mnb)12万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B1)を得た。
【0153】
<製造例17:共重合体(B2)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.080質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン42質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン28質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60分重合した。
続いて、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
続いて、ブタジエン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)30質量%、スチレン含有量(Sb)62質量%、ランダムスチレン量(RSb)53質量%、スチレンブロック含有量(BSb)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)12000、数平均分子量(Mnb)12万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B2)を得た。
【0154】
<製造例18:共重合体(B3)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン30質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.128質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加し、70℃で30分重合した。
続いて、ブタジエン30質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
続いて、スチレン30質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、30分重合した。
続いて、ブタジエン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、10分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)60質量%、スチレン含有量(Sb)60質量%、ランダムスチレン量(RSb)0質量%、スチレンブロック含有量(BSb)60質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)6000、数平均分子量(Mnb)6万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率(H)は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B3)を得た。
【0155】
<製造例19:共重合体(B4)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.075質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン21質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン49質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60分重合した。
続いて、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
続いて、スチレン3質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン7質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)20質量%、スチレン含有量(Sb)52質量%、ランダムスチレン量(RSb)40質量%、スチレンブロック含有量(BSb)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)12000、数平均分子量(Mnb)12万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B4)を得た。
【0156】
<製造例20:共重合体(B5)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.046質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して1.1モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン49質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン21質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60分重合した。
続いて、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
続いて、スチレン7質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン3質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)20質量%、スチレン含有量(Sb)76質量%、ランダムスチレン量(RSb)70質量%、スチレンブロック含有量(BSb)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)15000、数平均分子量(Mnb)15万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B5)を得た。
【0157】
<製造例21:共重合体(B6)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン30質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.128質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して1モル添加し、70℃で40分重合した。
続いて、ブタジエン30質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、30分重合した。
続いて、スチレン30質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、40分重合した。
続いて、ブタジエン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、10分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)60質量%、スチレン含有量(Sb)60質量%、ランダムスチレン量(RSb)0質量%、スチレンブロック含有量(BSb)60質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)6000、数平均分子量(Mnb)6万であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B6)を得た。
【0158】
<製造例22:共重合体(B7)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン30質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.128質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して1モル添加し、70℃で40分重合した。
続いて、ブタジエン30質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、30分重合した。
続いて、スチレン30質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、40分重合した。
続いて、ブタジエン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)60質量%、スチレン含有量(Sb)60質量%、ランダムスチレン量(RSb)0質量%、スチレンブロック含有量(BSb)60質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)6000、数平均分子量(Mnb)6万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行い、途中で水添反応を停止した。
得られた水添共重合体の水添率は70%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B7)を得た。
【0159】
<製造例23:共重合体(B8)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.061質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン48質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン32質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60分重合した。
続いて、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、10分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)20質量%、スチレン含有量(Sb)68質量%、ランダムスチレン量(RSb)60質量%、スチレンブロック含有量(BSb)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)12000、数平均分子量(Mnb)12万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B8)を得た。
【0160】
<製造例24:共重合体(B9)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.083質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン42質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン28質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60分重合した。
続いて、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
続いて、スチレン6質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン4質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)20質量%、スチレン含有量(Sb)68質量%、ランダムスチレン量(RSb)60質量%、スチレンブロック含有量(BSb)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)9000、数平均分子量(Mnb)9万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行い、途中で水添反応を停止した。
得られた水添共重合体の水添率は50%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B9)を得た。
【0161】
<製造例25:共重合体(B10)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン30質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.061質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加し、70℃で40分重合した。
続いて、ブタジエン30質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、30分重合した。
続いて、スチレン30質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、40分重合した。
続いて、ブタジエン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、10分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)60質量%、スチレン含有量(Sb)60質量%、ランダムスチレン量(RSb)0質量%、スチレンブロック含有量(BSb)60質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)9000、数平均分子量(Mnb)9万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B10)を得た。
【0162】
<製造例26:共重合体(B11)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン60質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン40質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.065質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加し、70℃で80分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)20質量%、スチレン含有量(Sb)60質量%、ランダムスチレン量(RSb)60質量%、スチレンブロック含有量(BSb)0質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)0、数平均分子量(Mnb)12万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率(H)は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B11)を得た。
【0163】
<製造例27:共重合体(B12)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.183質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加し、70℃で10分重合した。
続いて、スチレン42質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン28質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60分重合した。
続いて、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、10分重合した。
続いて、スチレン6質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン4質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)20質量%、スチレン含有量(Sb)68質量%、ランダムスチレン量(RSb)60質量%、スチレンブロック含有量(BSb)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)4000、数平均分子量(Mnb)4万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率(H)は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B12)を得た。
【0164】
<製造例28:共重合体(B13)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.107質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.6モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン48質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン32質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60分重合した。
続いて、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)20質量%、スチレン含有量(Sb)68質量%、ランダムスチレン量(RSb)60質量%、スチレンブロック含有量(BSb)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)7000、数平均分子量(Mnb)7万であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B13)を得た。
【0165】
<製造例29:共重合体(B14)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.107質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.6モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン48質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン32質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60分重合した。
続いて、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)20質量%、スチレン含有量(Sb)68質量%、ランダムスチレン量(RSb)60質量%、スチレンブロック含有量(BSb)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)7000、数平均分子量(Mnb)7万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B14)を得た。
【0166】
<製造例30:共重合体(B15)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.107質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.6モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン42質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン28質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60分重合した。
続いて、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
続いて、スチレン6質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン4質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)20質量%、スチレン含有量(Sb)68質量%、ランダムスチレン量(RSb)60質量%、スチレンブロック含有量(BSb)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)7000、数平均分子量(Mnb)7万であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B15)を得た。
【0167】
<製造例31:共重合体(X1)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン7.4質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.053質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加し、70℃で10分重合した。
続いて、スチレン29.4質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン19.6質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60分重合した。
続いて、スチレン4.8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
続いて、スチレン7.7質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)とn-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.153質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.6モルを投入し、20分重合した。
続いて、スチレン18.6質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン12.4量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体を低分子成分(共重合体(A))と高分子成分(共重合体(B))にクロマトグラフィーにより分取しそれぞれ分析したところ、共重合体(A)はビニル結合量(Va)20質量%、スチレン含有量(Sa)68質量%、ランダムスチレン量(RSa)60質量%、スチレンブロック含有量(BSa)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)3000、数平均分子量(Mna)1.5万であった。共重合体(B)はビニル結合量(Vb)20質量%、スチレン含有量(Sb)68質量%、ランダムスチレン量(RSb)60質量%、スチレンブロック含有量(BSb)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)12000、数平均分子量(Mnb)15万であった。
また、共重合体(A)と共重合体(B)の含有量の比は、(A)/(B)=30/70であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
得られた水添共重合体の水添率(H)は98%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A)及び共重合体(B)の混合物である共重合体(X1)を得た。
【0168】
<製造例32:共重合体(A16)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.493質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して1.2モル添加し、ナトリウムt-ペントキシドをn-ブチルリチウム1モルに対して0.02モル添加し、70℃で15分重合した。
続いて、スチレン48質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)、ブタジエン32質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、45分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)40質量%、スチレン含有量(Sa)68質量%、ランダムスチレン量(RSa)60質量%、スチレンブロック含有量(BSa)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)3000、数平均分子量(Mna)1.5万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行い、途中で水添反応を停止した。
得られた水添共重合体の水添率は75%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A16)を得た。
【0169】
<製造例33:共重合体(A17)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.493質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して1.2モル添加し、ナトリウムt-ペントキシドをn-ブチルリチウム1モルに対して0.02モル添加し、70℃で15分重合した。
続いて、スチレン48質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)、ブタジエン32質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、45分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)40質量%、スチレン含有量(Sa)68質量%、ランダムスチレン量(RSa)60質量%、スチレンブロック含有量(BSa)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)3000、数平均分子量(Mna)1.5万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行い、途中で水添反応を停止した。
得られた水添共重合体の水添率は90%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A17)を得た。
【0170】
<製造例34:共重合体(A18)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.493質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して1.2モル添加し、ナトリウムt-ペントキシドをn-ブチルリチウム1モルに対して0.02モル添加し、70℃で15分重合した。
続いて、スチレン48質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)、ブタジエン32質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、45分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)40質量%、スチレン含有量(Sa)68質量%、ランダムスチレン量(RSa)60質量%、スチレンブロック含有量(BSa)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)3000、数平均分子量(Mna)1.5万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行い、途中で水添反応を停止した。
得られた水添共重合体の水添率は60%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A18)を得た。
【0171】
<製造例35:共重合体(A19)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン60質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して1.07質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加し、70℃で45分重合した。
続いて、ブタジエン40質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、30分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)60質量%、スチレン含有量(Sa)60質量%、ランダムスチレン量(RSa)0質量%、スチレンブロック含有量(BSa)60質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)4200、数平均分子量(Mna)0.7万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行い、途中で水添反応を停止した。
得られた水添共重合体の水添率は70%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A19)を得た。
【0172】
<製造例36:共重合体(A20)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン40質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.8質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.7モル添加し、70℃で45分重合した。
続いて、ブタジエン60質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、30分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Va)60質量%、スチレン含有量(Sa)40質量%、ランダムスチレン量(RSa)0質量%、スチレンブロック含有量(BSa)40質量%、スチレンブロック分子量(MnSa)4800、数平均分子量(Mna)1.2万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行い、途中で水添反応を停止した。
得られた水添共重合体の水添率は70%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(A20)を得た。
【0173】
<製造例37:共重合体(B16)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.061質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して1.2モル添加し、ナトリウムt-ペントキシドをn-ブチルリチウム1モルに対して0.02モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン42質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン28質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60分重合した。
続いて、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
続いて、スチレン6質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン4質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)40質量%、スチレン含有量(Sb)68質量%、ランダムスチレン量(RSb)60質量%、スチレンブロック含有量(BSb)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)12000、数平均分子量(Mnb)12万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行い、途中で水添反応を停止した。
得られた水添共重合体の水添率は75%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B16)を得た。
【0174】
<製造例38:共重合体(B17)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.061質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して1.2モル添加し、ナトリウムt-ペントキシドをn-ブチルリチウム1モルに対して0.02モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン42質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン28質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60分重合した。
続いて、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
続いて、スチレン6質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン4質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)40質量%、スチレン含有量(Sb)68質量%、ランダムスチレン量(RSb)60質量%、スチレンブロック含有量(BSb)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)12000、数平均分子量(Mnb)12万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行い、途中で水添反応を停止した。
得られた水添共重合体の水添率は90%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B17)を得た。
【0175】
<製造例39:共重合体(B18)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.061質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して1.2モル添加し、ナトリウムt-ペントキシドをn-ブチルリチウム1モルに対して0.02モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン42質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン28質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60分重合した。
続いて、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
続いて、スチレン6質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン4質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)40質量%、スチレン含有量(Sb)68質量%、ランダムスチレン量(RSb)60質量%、スチレンブロック含有量(BSb)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)12000、数平均分子量(Mnb)12万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行い、途中で水添反応を停止した。
得られた水添共重合体の水添率は60%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B18)を得た。
【0176】
<製造例40:共重合体(B19)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.080質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン42質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン28質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60分重合した。
続いて、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
続いて、ブタジエン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)30質量%、スチレン含有量(Sb)62質量%、ランダムスチレン量(RSb)53質量%、スチレンブロック含有量(BSb)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)12000、数平均分子量(Mnb)12万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行い、途中で水添反応を停止した。
得られた水添共重合体の水添率は70%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B19)を得た。
【0177】
<製造例41:共重合体(B20)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積10L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.078質量部と、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.6モル添加し、70℃で20分重合した。
続いて、スチレン35質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン35質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60分重合した。
続いて、スチレン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
続いて、ブタジエン10質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、20分重合した。
その後、メタノールを添加し、重合反応を停止した。
上記のようにして得られた重合体は、ビニル結合量(Vb)30質量%、スチレン含有量(Sb)55質量%、ランダムスチレン量(RSb)44質量%、スチレンブロック含有量(BSb)20質量%、スチレンブロック分子量(MnSb)12000、数平均分子量(Mnb)12万であった。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行い、途中で水添反応を停止した。
得られた水添共重合体の水添率は70%であった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、共重合体(B20)を得た。
【0178】
<製造例42:ポリフェニレンエーテル(PPE)>
極性樹脂として、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)を以下の通り重合した。
反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1.5リットルのジャケット付き反応器に、0.2512gの塩化第二銅2水和物、1.1062gの35%塩酸、3.6179gのジ-n-ブチルアミン、9.5937gのN,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミン、211.63gのメタノール及び493.80gのn-ブタノール、5モル%の2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンを含む2,6-ジメチルフェノール180.0gを入れた。使用した溶媒の組成質量比はn-ブタノール:メタノール=70:30であった。
次いで激しく攪拌しながら反応器へ180ml/minの速度で酸素をスパージャーより導入を始めると同時に、重合温度は40℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。
重合液は次第にスラリーの様態を呈した。
ポリフェニレンエーテルが所望の数平均分子量に達した時、酸素含有ガスの通気をやめ、得られた重合混合物を50℃に温めた。次いでハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を少量ずつ添加し、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで、50℃での保温を続けた。
次いで6.5質量%の36%塩酸を含むメタノール溶液720gを添加し、濾過して更にメタノールで繰り返し洗浄し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。次いで、100℃で真空乾燥し、乾燥ポリフェニレンエーテルを得た。ηsp/cは0.103dl/g、収率は97%、であった。
ηsp/cの測定は、前述のポリフェニレンエーテルを0.5g/dlのクロロホルム溶液として、ウベローデ粘度管を用いて30℃における還元粘度(ηsp/c)を求めた。単位はdl/gである
得られたポリフェニレンエーテルを以下の通り変性した。
ポリフェニレンエーテル152.5g及び、トルエン152.5g及びを混合して約85℃に加熱した。次いでジメチルアミノピリジン2.1gを添加した。固体がすべて溶解した時点で、無水メタクリル酸18.28gを徐々に添加した。得られた溶液を連続混合しながら85℃に3時間維持した。次いで、溶液を室温に冷却して、メタクリレート封鎖ポリフェニレンエーテルのトルエン溶液を得た。得られたトルエン溶液を、撹拌にホモジナイザーを備えた円筒状3LのSUS容器に10℃のメタノールを1000mL、少量ずつ滴下した。
得られた粉体をろ過し、メタノールで洗浄し、85℃窒素下で18時間乾燥させた。
【0179】
〔硬化樹脂としてマレイミド樹脂を使用した場合の実施例及び比較例〕
((実施例1~28)、(比較例1~9))
上述した成分に加え、さらに下記の成分用いて、以下の調製方法に従って、樹脂組成物を調製した。
<成分(I):硬化樹脂>
[ポリイミド系樹脂]
ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI-70)(ケイ・アイ化成株式会社製)
4,4'-ビスマレイミドジフェニルメタン(BMI-H)(ケイ・アイ化成株式会社製)
<成分(III):硬化剤>
シアン酸エステル系硬化剤 2,2-ビス(4-シアネートフェニル)プロパン(東京化成株式会社製)
【0180】
なお、共重合体(A)及び共重合体(B)の配合量は共重合体(A)と共重合体(B)の合計量(100質量%)に対する質量分率(質量%)である。
また、成分(I)~(III)の配合量は、共重合体(A)と共重合体(B)の合計量を100質量部としたときの質量部である。
【0181】
実施例及び比較例に用いた成分の比、及びそれぞれの物性を、下記表に示す。
まず、硬化樹脂であるポリイミド系樹脂とシアン酸エステル系硬化剤を、下記表の配合割合で160℃に溶解させ、撹拌しながら6時間反応させ、ビスマレイミド・トリアジン樹脂オリゴマーを得た。
得られたビスマレイミド・トリアジン樹脂オリゴマーを、トルエンに溶解させ、残りの成分を添加し、撹拌、溶解させ、濃度20質量%~50質量%のワニスを調製した。
前記樹脂組成物のワニスを、ガラス基材(L2116、#2116タイプ、「Lガラス」、旭化成株式会社製)に含浸させた後、130℃で50分間加熱乾燥することによりプリプレグを得た。
得られたプリプレグを6枚重ねて積層し、昇温速度5℃/minで温度200℃まで昇温し、200℃、2時間、圧力3MPaの条件で加熱加圧することにより、0.7mmの厚みのプリプレグの硬化物を得た。
【0182】
(実施例1~28及び比較例1~9の評価基準)
<(1)ワニス溶解性>
下記表に示す配合で作製した樹脂組成物を、それぞれ固形分濃度が20質量%及び50質量%になるようにトルエンを加え、40℃で120分撹拌した。
それらの溶液を評価サンプルとし、下記の三段階で評価した。
[評価基準]
〇:固形分濃度が20質量%及び50質量%の溶液のどちらでも、溶け残りがない。
△:固形分濃度が20質量%の溶液のみ溶け残りがない。
×:どちらの溶液でも溶け残りが存在する。
【0183】
<(2)ワニス保存安定性>
前述のようにして調製した実施例及び比較例の樹脂組成物のワニスを、30℃/50%RH下で静置した際の状態を観察し、層分離の発生及び/又はゲル状成分の析出までの日数及び有無を、下記の基準で評価した。
なお、表中、「-」はワニスの作成時に溶け残りが生じたため評価できないことを意味する。
[評価基準]
◎:720時間以上(析出無含む)
○:360~720時間未満
△:24~360時間
×:24時間未満
【0184】
<(3)誘電特性>
得られたプリプレグを10GHzでの誘電正接を、空洞共振法にて測定した。
測定装置としてネットワークアナライザー(N5230A、AgilentTechnologies社製)、及び関東電子応用開発社製の空洞共振器(Cavity Resornator CPシリーズ)を用い、測定サンプルは前記の調製方法に記されているプリプレグの硬化物から幅2.6mm×長さ80mmの試験片を切り出し測定した。
共重合体(A)及び共重合体(B)を含まない比較例9と、各実施例又は比較例の、誘電正接及び誘電率の差(比較例9-実施例又は比較例)で評価した。
なお、表中、「-」はワニスの作成時に溶け残りが生じたため評価できないことを意味する。
[評価基準]
誘電正接(Df)
◎:0.001以上
○:0.0007以上、0.001未満
△:0.0005以上、0.0007未満
×:0.0005未満
誘電率(Dk)
◎:0.1以上
○:0.07以上、0.1未満
△:0.04以上、0.07未満
×:0.04未満
【0185】
<(4)CTE測定(熱線膨張係数)>
樹脂組成物の50~250℃の温度範囲における厚み方向と直交する方向のCTEを測定した。
測定はIPC TM650 2.4.41に基づき、TMA法(Thermal mechanical analysis method)で行った。
共重合体(A)及び共重合体(B)を含まない比較例9と、各実施例又は比較例のCTEの比率(実施例又は比較例÷比較例9)で評価した。
なお、表中、「-」はワニスの作成時に溶け残りが生じたため評価できないことを意味する。
[評価基準]
◎:110%未満
○:110%以上、115%未満
△:115%以上、120%未満
×:120%以上
【0186】
<(5)銅箔との接着性(ピール強度)>
ポリイミドフィルムに後述する各樹脂組成物を塗布し、溶剤を乾燥除去後、35μm厚さの銅箔を重ね、100℃、1MPaで2min間加熱圧着し、銅箔をラミネートし、ポリイミドフィルム-樹脂組成物-銅箔から成る積層体を作製した。
前記積層体を180℃で1時間加熱することによって樹脂組成物を硬化させ、硬化後の積層体を接着性サンプルに供した。
前記積層体に幅1cmの切り込みを入れ、銅箔を90°方向に引張速度50mm/minで引き剥がし試験を行い、ピール強度を測定した。ピール強度の値が高い程、高い接着性を意味する。
測定結果を下記の基準で評価した。
なお、表中、「-」はワニスの作成時に溶け残りが生じたため評価できないことを意味する。
[評価基準]
◎:0.8N/mm以上
○:0.6N/mm以上、0.8N/mm未満
△:0.4N/mm以上、0.6N/mm未満
×:0.4N/mm未満
【0187】
<(6)クラック発生の有無>
前記で得られた樹脂組成物のワニスを、厚さ0.069mmの低誘電ガラスクロスに含浸塗工し、乾燥機(耐圧防爆型スチーム乾燥機、(株)高杉製作所製))を用いて165℃、5分加熱乾燥し、樹脂組成物の含有量が30質量%のプリプレグを得た。
このプリプレグを、2枚を重ね、両面に12μm銅箔(3EC-M3-VLP、三井金属鉱業(株)製)を配置し、圧力30kg/cm2、温度210℃で、150分間真空プレスを行い、厚さ0.2mmの銅張積層板(金属箔張積層板)を得た。
【0188】
得られた銅張積層板を2枚重ねたものの上に厚さ0.1mmのアルミニウム箔、下に厚さ1.5mmの紙基材フェノール樹脂積層板(フタムラ化学社製、FL-101)を配置し、径0.2mm(日立ビアメカニクス社製 ND-1V212)のドリルを用い、回転数:160krpm、送り速度:2m/分、チップロード12.5μm/revの条件下で、任意の箇所に5個ビアホールを作製し、SEM観察によりクラックの発生の有無を評価した。
【0189】
[クラック発生の有無]
5個のビアホールの底部にクラックが発生しているか、SEM画像から観測した。
クラックが少ない方が穴あけ加工性が良好であるものとし、下記の通り評価した。
なお、表中、「-」はワニスの作成時に溶け残りが生じたため評価できないことであることを意味する。
〇:クラックなし
△:わずかにクラックは残るが、共重合体(A)及び共重合体(B)を含まない比較例9に比べてクラックの数が減少した。
×:クラックがあり、共重合体(A)及び共重合体(B)を含まない比較例9と同等又はそれ以上のクラックの数が見られた。
【0190】
<(7)半田耐熱性>
前記で得られた銅張積層板を288℃の半田浴に浸漬してから、銅張積層板に膨れ、剥がれ等の外観以上が発生するまでに要した時間を計測し、以下の評価基準に則って評価した。
なお、表中、「-」はワニスの作成時に溶け残りが生じたため評価できないことを意味する。
〇:浸漬後、30秒未満で外観以上を生じる。
△:浸漬後、30秒以上1分未満で外観以上を生じる。
×:浸漬後、1分以上外観以上が生じない。
【0191】
実施例1~28、比較例1~9の評価結果を下記表に示す。
下記表中、ブロック構造を以下に示す。
a、d:ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック
b1、b2、e:ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム重合体ブロック
c1、c2、f:共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック
【0192】
【表1】
【0193】
【表2】
【0194】
【表3】
【0195】
【表4】
【0196】
【表5】
【0197】
〔硬化樹脂としてPPEを使用した場合の実施例及び比較例〕
((実施例29~34)、(比較例10~11))
樹脂組成物はさらに下記の成分を用いて、以下の調製方法にしたがって調製した。
<共重合体(A)>
製造例1~4で作製した、共重合体(A1)~(A4)
<共重合体(B)>
製造例16~18で作製した共重合体(B1)~(B3)
<成分(I):硬化樹脂>
製造例42で作製した、PPE
<成分(II):ラジカル開始剤>
パーブチルP(日油株式会社製)
<成分(III):硬化剤>
トリアリルイソシアヌレート(TAICTM)(三菱ケミカル社製)
【0198】
なお、共重合体(A)及び共重合体(B)の配合量は共重合体(A)と共重合体(B)の合計量(100質量%)に対する質量分率(質量%)である。
また、成分(I)~(III)の配合量は、共重合体(A)と共重合体(B)の合計量を100質量部としたときの質量部である。
【0199】
<樹脂組成物の作製、及びワニスの調製>
前述の共重合体(A)及び共重合体(B)を用い、かつ、前述の成分(I)、成分(II)、成分(III)を用いて、下記表に示す配合で、各成分を容器に測り取り、トルエン(和光純薬社製)で溶解し、攪拌させ、樹脂組成物を含むワニスを調製した。
フィルムを作製する際には、トルエンの添加量により粘度調整を行った。
その際、樹脂組成物のワニス中の濃度を40~60質量%に調整した。
【0200】
<ワニスを用いたプリプレグ、及びプリプレグの硬化物の作製>
下記表に示す配合で作製樹脂組成物のワニスを、ガラス基材(L2116、#2116タイプ、「Lガラス」、旭化成株式会社製)に含浸させた後、130℃で50分間加熱乾燥することによりプリプレグを得た。
得られたプリプレグを6枚重ねて積層し、昇温速度5℃/minで温度200℃まで昇温し、200℃、2時間、圧力3MPaの条件で加熱加圧することにより、0.7mmの厚みのプリプレグの硬化物を得た。
【0201】
(実施例29~34及び比較例10~11の評価基準)
<(1)ワニス溶解性>
下記表に示す配合で作製樹脂組成物をそれぞれ固形分濃度が20質量%及び50質量%になるようにトルエンを加え、40℃で120分撹拌し、溶液を得た。
それらの溶液を三段階で評価した。
なお、表中、「-」はワニスの作成時に溶け残りが生じたため評価できないことを意味する。
[評価基準]
〇:固形分濃度が20質量%及び50質量%の溶液のどちらでも、溶け残りがない。
△:固形分濃度が20質量%の溶液のみ溶け残りがない。
×:どちらの溶液でも溶け残りが存在する。
【0202】
<(2)誘電特性>
得られたプリプレグを10GHzでの誘電正接を、空洞共振法にて測定した。測定装置としてネットワークアナライザー(N5230A、AgilentTechnologies社製)、及び関東電子応用開発社製の空洞共振器(Cavity Resornator CPシリーズ)を用い、測定サンプルは前記の調整方法に記されている硬化物フィルムから幅2.6mm×長さ80mmの試験片を切り出し測定した。
共重合体(A)及び共重合体(B)を含まない比較例11と、各実施例又は比較例の、誘電正接及び誘電率の差(比較例11-実施例又は比較例)で評価した。
なお、表中、「-」はワニスの作成時に溶け残りが生じたため評価できないことを意味する。
[評価基準]
誘電正接(Df)
◎:0.0013以上
○:0.0011以上、0.0013未満
△:0.0009以上、0.0011未満
×:0.0009未満
誘電率(Dk)
◎:0.20以上
○:0.15以上、0.20未満
△:0.10以上、0.15未満
×:0.10未満
【0203】
((3)CTE測定(熱線膨張係数))
樹脂組成物の50~250℃の温度範囲における厚み方向と直交する方向のCTEを測定した。
測定はIPC TM650 2.4.41に基づき、TMA法(Thermal mechanical analysis method)で行った。
共重合体(A)及び共重合体(B)を含まない比較例11と、各実施例又は比較例のCTEの比率(実施例又は比較例÷比較例11)で評価した。
なお、表中、「-」はワニスの作成時に溶け残りが生じたため評価できないことを意味する。
[評価基準]
◎:110%未満
○:110%以上、115%未満
△:115%以上、120%未満
×:120%以上
【0204】
下記表中、ブロック構造を以下に示す。
a、d:ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック
b1、b2、e:ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム重合体ブロック
c1,c2、f:共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック
【0205】
【表6】
【0206】
【表7】
【0207】
実施例の共重合体(A)および共重合体(B)を併用した硬化物は、誘電性能、耐熱性のバランスに優れていることが明らかとなった。本発明の硬化物は、ガラスクロス、金属積層板を用いたプリント配線板用として好適であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0208】
本発明の樹脂組成物及び硬化物は、フィルム、プリプレグ、電子回路基板、次世代通信用基板の材料として産業上の利用可能性を有している。