(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146758
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】光学ガラス、導光板、画像表示装置および光学素子
(51)【国際特許分類】
C03C 3/068 20060101AFI20241004BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20241004BHJP
G02C 11/00 20060101ALN20241004BHJP
【FI】
C03C3/068
G02B1/00
G02C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016057
(22)【出願日】2024-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2023058567
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522503632
【氏名又は名称】豪雅光電科技(威海)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勇人
【テーマコード(参考)】
2H006
4G062
【Fターム(参考)】
2H006CA00
4G062AA04
4G062BB01
4G062DA03
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4G062MM02
4G062NN02
4G062NN29
4G062NN34
(57)【要約】
【課題】屈折率が高い光学ガラスであって、導光板材料に適した光学ガラスを提供すること。
【解決手段】厚み10mmで分光透過率5%となる波長λ5が370nm超410nm未満であり、厚み10mmで分光透過率70%となる波長λ70とλ5との差(λ70-λ5)が70nm以下であり、かつ屈折率ndが2.00000以上である光学ガラス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み10mmで分光透過率5%となる波長λ5が370nm超410nm未満であり、
厚み10mmで分光透過率70%となる波長λ70とλ5との差(λ70-λ5)が70nm以下であり、かつ
屈折率ndが2.00000以上である光学ガラス。
【請求項2】
B2O3を含む、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
SiO2、B2O3、TiO2、Nb2O5、Y2O3、La2O3およびGd2O3を含む、請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる導光板。
【請求項5】
画像表示素子と、
前記画像表示素子から出射した光を導光する導光板と、
を含み、
前記導光板が請求項4に記載の導光板である、画像表示装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、導光板、画像表示装置および光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、屈折率が高い光学ガラスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、画像表示装置の構成部材である導光板を光学ガラスから作製することが行われている。屈折率が高い光学ガラスによれば、広視野角の導光板を作製することができる。
【0005】
本発明の一態様は、屈折率が高い光学ガラスであって、導光板材料に適した光学ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、厚み10mmで分光透過率5%となる波長λ5が370nm超410nm未満であり、厚み10mmで分光透過率70%となる波長λ70とλ5との差(λ70-λ5)が70nm以下であり、かつ屈折率ndが2.00000以上である光学ガラスからなる導光板によれば、視野角を広域化することができ、かつ鮮明な画像が得られることを新たに見出した。
【0007】
本発明の一態様は、以下の通りである。
[1]厚み10mmで分光透過率5%となる波長λ5が370nm超410nm未満であり、
厚み10mmで分光透過率70%となる波長λ70とλ5との差(λ70-λ5)が70nm以下であり、かつ
屈折率ndが2.00000以上である光学ガラス(以下、単に「光学ガラス」または「ガラス」とも記載する。)。
[2]B2O3を含む、[1]に記載の光学ガラス。
[3]SiO2、B2O3、TiO2、Nb2O5、Y2O3、La2O3およびGd2O3を含む、[1]に記載の光学ガラス。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の光学ガラスからなる導光板。
[5]画像表示素子と、
上記画像表示素子から出射した光を導光する導光板と、
を含み、
上記導光板が[4]に記載の導光板である、画像表示装置。
[6][1]~[3]のいずれかに記載の光学ガラスからなる光学素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、屈折率が高く、導光板材料に適した光学ガラスを提供することができる。
また、本発明の一態様によれば、上記光学ガラスからなる導光板およびこの導光板を含む画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】画像表示素子と導光板とを含む画像装置の一例(ヘッドマウントディスプレイ)の概略構成図である。
【
図2】
図1に示すヘッドマウントディスプレイ1の構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[光学ガラス]
<屈折率nd>
上記光学ガラスの屈折率ndは、視野角の広域化の観点から、2.00000以上であり、2.01000以上であることが好ましく、2.02000以上であることがより好ましく、2.03000以上、2.04000以上、2.05000以上、2.06000以上、2.07000以上、2.08000以上の順に更に好ましい。上記光学ガラスの屈折率ndは、例えば、2.20000以下、2.15000以下、2.14000以下、2.13000以下、2.12000以下、2.11000以下t2.10000以下であることができる。本発明および本明細書において、「屈折率」は、「屈折率nd」を意味する。
【0011】
<λ5、λ70-λ5>
「λ5」とは、紫外域から可視域にかけて、厚み10mmのガラスの分光透過率(表面反射損失を含む)が5%となる波長を表す。「λ70」とは、紫外域から可視域にかけて、厚み10mmのガラスの表面反射損失を含む分光透過率(即ち外部透過率)が70%となる波長を表す。以下に記載する分光透過率も、表面反射損失を含む分光透過率である。
後述の実施例の項に示すλ5およびλ70は、250~700nmの波長域において測定された値である。分光透過率とは、例えばより詳しくは、10.0±0.1mmの厚みに研磨された互いに平行な平面を有するガラス試料を用い、上記研磨された面に対して垂直方向から光を入射して得られる分光透過率、すなわち、上記ガラス試料に入射する光の強度をIin、上記ガラス試料を透過した光の強度をIoutとしたときのIout/Iinのことである。測定対象のガラスの厚みが10.0±0.1mmの厚みではない場合には、公知の方法によって厚み10mmでの値に換算する。例えば、内部透過率(表面反射損失を含まない)がτ(%)であるガラスについては、下記式:
logτ=(logT1-logT2)/Δd×10
を用いて、厚み10mmでの外部透過率(表面反射損失を含む)を求めることができる。式中、T1(%)は、試料厚d1(mm)で得られる透過率(表面反射損失を含む)であり、T2(%)は、試料厚d2で得られる透過率(表面反射損失を含む)であり、Δdは試料厚の差(d2-d1)である。
λ70とλ5との差(λ70-λ5)が70nm以下である光学ガラスは、幅広い波長域で高い透過率特性を示す光学ガラスである。例えば、AR(Augmented Reality:拡張現実)用の画像表示装置の導光板には、導光板を通して周囲の環境を把握するために幅広い波長域で高い透過率特性が求められる。加えて、光源から導光板中を伝搬する光の損失を低減させるためにも、高い透過率特性が求められる。したがって、λ70とλ5との差(λ70-λ5)が70nm以下である光学ガラスは、導光板材料として好ましい。
波長λ5が370nm超410nm未満である光学ガラスは、紫外線は遮断し可視光は透過する光学ガラスである。短波長側の光が目へ照射される場合、白内障等のリスクにつながるおそれがある。そのため、短波長側においては必要以上に高い透過率特性を有することは好ましくない。この点から、波長λ5が370nm超410nm未満である光学ガラスは、導光板材料として好ましい。
【0012】
上記光学ガラスのλ70とλ5との差(λ70-λ5)は、70nm以下であり、68nm以下であることが好ましく、66nm以下であることがより好ましく、64nm以下、62nm以下、60nm以下、58nm以下、56nm以下、54nm以下、52nm以下、50nm以下の順に更に好ましい。70とλ5との差(λ70-λ5)は、例えば、10nm以上、20nm以上、30nm以上または40nm以上であることができる。
【0013】
上記光学ガラスのλ5は、370nm超であり、371nm以上であることが好ましく、372nm以上であることがより好ましく、373nm以上、374nm以上、375nm以上の順により好ましい。また、上記光学ガラスのλ5は、410nm未満であり、408nm以下であることが好ましく、405nm以下であることがより好ましく、403nm以下、400nm以下、398nm以下、395nm以下、393nm以下、390nm以下、388nm以下、385nm以下、380nm以下の順に更に好ましい。
【0014】
上記光学ガラスのλ70は、λ70とλ5との差(λ70-λ5)が上記範囲内であればよく、特に限定されるものではない。一形態では、上記光学ガラスのλ70は、400nm超480nm未満であることができる。
【0015】
<ガラス組成>
本発明および本明細書では、ガラス組成を、酸化物基準のガラス組成で表示する。ここで「酸化物基準のガラス組成」とは、ガラス原料が熔融時にすべて分解されてガラス中で酸化物として存在するものとして換算することにより得られるガラス組成をいうものとする。また、特記しない限り、ガラス組成は質量基準(質量%、質量比)で表示するものとする。
本発明および本明細書におけるガラス組成は、例えばICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)等の方法により求めることができる。定量分析は、ICP-AESを用い、各元素別に行われる。その後、分析値は酸化物表記に換算される。ICP-AESによる分析値は、例えば、分析値の±5%程度の測定誤差を含んでいることがある。したがって、分析値から換算された酸化物表記の値についても、同様に±5%程度の誤差を含んでいることがある。
また、本発明および本明細書において、構成成分の含有量が0%、0.00%、0.000%または含まないもしくは導入しないとは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、この構成成分の含有量が不純物レベル程度以下であることを指す。不純物レベル程度以下とは、例えば、0.01%未満であることを意味する。
【0016】
一形態では、上記光学ガラスは、ホウ酸系ガラスであることができ、B2O3を含むことができる。また、一形態では、上記光学ガラスは、必須成分として、SiO2、B2O3、TiO2、Nb2O5、Y2O3、La2O3およびGd2O3を含むことができる。
【0017】
以下、上記光学ガラスのガラス組成について、更に詳細に説明する。ただし、上記光学ガラスは、屈折率nd、λ5およびλ70とλ5との差(λ70-λ5)が上記範囲内であればよく、以下に記載のガラス組成を有する光学ガラスに限定されるものではない。
【0018】
SiO2含有量に対するB2O3含有量の質量比(B2O3/SiO2)は、ガラスの表面失透を抑制する観点および後述するTlを低下させる観点から、3.000未満であることが好ましく、2.800以下であることがより好ましく、2.600以下、2.400以下、2.200以下、2.000以下、1.800以下、1.600以下、1.400以下、1.200以下、1.000以下、1.000未満、0.980以下、0.960以下、0.950以下、0.920以下、0.900以下の順に更に好ましい。質量比(B2O3/SiO2)は、例えば、0.100以上、0.200以上、0.300以上、0.400以上、0.500以上または0.600以上であることができる。
【0019】
Y2O3、La2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量に対するY2O3含有量の質量比(Y2O3/(Y2O3+La2O3+Gd2O3+Yb2O3))は、表面失透を抑制する観点およびTlを低下させる観点から、0.010以上であることが好ましく、0.010超であることがより好ましく、0.011以上、0.012以上、0.013以上、0.014以上、0.015以上、0.016以上、0.017以上、0.018以上、0.019以上、0.020以上、0.020超、0.021以上、0.022以上、0.023以上、0.024以上、0.025以上の順に更に好ましい。質量比(Y2O3/(Y2O3+La2O3+Gd2O3+Yb2O3))は、例えば、0.100以下、0.090以下、0.080以下、0.070以下、0.060以下、0.050以下であることができる。
【0020】
上記光学ガラスは、必須成分として、SiO2、B2O3、TiO2、Nb2O5、Y2O3、La2O3およびGd2O3を含むことができる。
【0021】
SiO2は、網目形成酸化物であり、ガラス安定性の維持、熔融ガラスの成形に適した粘性の維持および化学的耐久性の改善に寄与し得る成分である。ガラス安定性を高めることは、ガラスの表面失透を抑制することにつながるため好ましい。上記光学ガラスのSiO2含有量は、0.10%以上であることが好ましく、0.50%以上であることがより好ましく、1.00%以上、2.00%以上、3.00%以上、4.00%以上、5.00%以上の順に更に好ましい。屈折率の低下抑制およびガラス熔融性の維持の観点からは、SiO2含有量は、30.00%以下であることが好ましく、20.00%以下であることがより好ましく、15.00%以下、10.00%以下、8.00%以下、6.00%以下の順に更に好ましい。
【0022】
B2O3は、網目形成酸化物であり、ガラス熔融性の維持およびガラス安定性の向上に寄与し得る成分である。上記光学ガラスのB2O3含有量は、0.10%以上であることが好ましく、0.50%以上であることがより好ましく、1.00%以上、2.00%以上、3.00%以上、4.00%以上、5.00%以上の順に更に好ましい。屈折率の低下抑制および化学的耐久性の低下抑制の観点からは、B2O3含有量は、30.00%以下であることが好ましく、20.00%以下であることがより好ましく、15.00%以下、10.00%以下、8.00%以下、6.00%以下の順に更に好ましい。
【0023】
ガラス安定性の向上の観点からは、SiO2とB2O3との合計含有量(SiO2+B2O3)は、1.00%以上であることが好ましく、3.00%以上であることがより好ましく、5.00%以上、8.00%以上、10.00%以上の順に更に好ましい。ガラスの屈折率を高める観点からは、合計含有量(SiO2+B2O3)は、30.00%以下であることが好ましく、20.00%以下であることがより好ましく、15.00%以下、13.00%以下、12.00%以下の順に更に好ましい。
【0024】
TiO2は、ガラスの屈折率を高め、化学的耐久性の改善に寄与し得る成分である。上記光学ガラスのTiO2含有量は、1.00%以上であることが好ましく、3.00%以上であることがより好ましく、5.00%以上、8.00%以上、10.00%以上、13.00%以上、15.00%以上、18.00%以上、20.00%以上の順に更に好ましい。ガラス安定性の低下を抑制する観点からは、TiO2含有量は、50.00%以下であることが好ましく、45.00%以下であることがより好ましく、40.00%以下、35.00%以下、30.00%以下、28.00%以下、26.00%以下の順に更に好ましい。
また、TiO2含有量が上記範囲であることは、λ5を先に記載した範囲に制御する観点からも好ましい。
【0025】
SiO2とB2O3との合計含有量に対するTiO2含有量の質量比(TiO2/(SiO2+B2O3))は、ガラスの屈折率を高める観点から、1.500以上であることが好ましく、1.550以上であることがより好ましく、1.600以上、1.650以上、1.700以上、1.750以上、1.800以上、1.850以上、1.900以上、1.950以上、1.960以上、1.970以上、1.980以上、1.990以上、2.000以上の順に更に好ましい。ガラス安定性の向上の観点からは、10.000以下であることが好ましく、8.000以下であることがより好ましく、5.000以下、3.000以下、2.800以下、2.500以下の順に更に好ましい。
【0026】
Nb2O5は、ガラスの屈折率を高め、化学的耐久性の改善に寄与し得る成分である。上記光学ガラスのNb2O5含有量は、1.00%以上であることが好ましく、2.00%以上であることがより好ましく、3.00%以上、4.00%以上、5.00%以上、6.00%以上の順に更に好ましい。ガラス安定性の低下を抑制する観点からは、Nb2O5含有量は、30.00%以下であることが好ましく、20.00%以下であることがより好ましく、15.00%以下、10.00%以下、8.00%以下の順に更に好ましい。
【0027】
上記光学ガラスのWO3含有量は、0.00%、0.00%以上または0.00%超であることができる。WO3は、ガラスの屈折率を高め、化学的耐久性の改善に寄与し得る成分である。WO3含有量は、例えば、8.00%以下、7.00%以下、6.00%以下または5.00%以下であることができる。
【0028】
TiO2、Nb2O5およびWO3の合計含有量(TiO2+Nb2O5+WO3)は、ガラスの屈折率を高め、化学的耐久性を改善する観点からは、10.00%以上であることが好ましく、15.00%以上であることがより好ましく、20.00%以上、25.00%以上、28.00%以上、30.00%以上の順に更に好ましい。ガラス安定性の向上の観点からは、合計含有量(TiO2+Nb2O5+WO3)は、60.00%以下であることが好ましく、55.00%以下であることがより好ましく、50.00%以下、45.00%以下、40.00%以下、38.00%以下、35.00%以下の順に更に好ましい。
【0029】
Y2O3は、ガラスの屈折率を高め、低分散性を維持し、化学的耐久性を改善することに寄与し得る成分である。上記光学ガラスのY2O3含有量は、0.10%以上であることが好ましく、0.30%以上であることがより好ましく、0.50%以上、0.80%以上、1.00%以上の順に更に好ましい。ガラス安定性の低下抑制およびTlの上昇抑制の観点からは、Y2O3含有量は、10.00%以下であることが好ましく、8.00%以下であることがより好ましく、5.00%以下、3.00%以下の順に更に好ましい。
【0030】
La2O3も、ガラスの屈折率を高め、低分散性を維持し、化学的耐久性を改善することに寄与し得る成分である。上記光学ガラスのLa2O3含有量は、10.00%以上であることが好ましく、15.00%以上であることがより好ましく、20.00%以上、25.00%以上、30.00%以上、35.00%以上の順に更に好ましい。ガラス安定性の低下抑制およびTlの上昇抑制の観点からは、La2O3含有量は、60.00%以下であることが好ましく、55.00%以下であることがより好ましく、50.00%以下、45.00%以下、40.00%以下の順に更に好ましい。
【0031】
Gd2O3も、ガラスの屈折率を高め、低分散性を維持し、化学的耐久性を改善することに寄与し得る成分である。上記光学ガラスのGd2O3含有量は、1.00%以上であることが好ましく、2.00%以上であることがより好ましく、3.00%以上、4.00%以上、5.00%以上、6.00%以上の順に更に好ましい。ガラス安定性の低下抑制およびTlの上昇抑制の観点からは、Gd2O3含有量は、30.00%以下であることが好ましく、20.00%以下であることがより好ましく、15.00%以下、10.00%以下、8.00%以下の順に更に好ましい。
【0032】
Yb2O3含有量は、0.00%、0.00%以上または0.00%超であることができる。Yb2O3も、ガラスの屈折率を高め、低分散性を維持し、化学的耐久性を改善することに寄与し得る成分である。上記光学ガラスのYb2O3は、例えば、5.00%以下、4.00%以下、3.00%以下、2.00%以下、1.00%以下、0.50%以下または0.10%以下であることができる。
【0033】
Y2O3、La2O3、Gd2O3およびYb2O3の合計含有量(Y2O3+La2O3+Gd2O3+Yb2O3)は、ガラスの屈折率を高め、低分散性を維持し、化学的耐久性を改善する観点からは、10.00%以上であることが好ましく、15.00%以上であることがより好ましく、20.00%以上、25.00%以上、30.00%以上、35.00%以上、40.00%以上、43.00%以上、45.00%以上の順に更に好ましい。ガラス安定性の低下抑制およびTlの上昇抑制の観点からは、合計含有量(Y2O3+La2O3+Gd2O3+Yb2O3)は、70.00%以下であることが好ましく、65.00%以下であることがより好ましく、60.00%以下、55.00%以下、53.00%以下、50.00%以下の順に更に好ましい。
【0034】
Li2O、Na2O、K2OおよびCs2Oのそれぞれの含有量は、0.00%、0.00%以上、0.00%超、0.05%以上または0.10%以上であることができる。また、Li2O、Na2O、K2OおよびCs2Oのそれぞれの含有量は、例えば、5.00%以下、4.00%以下、3.00%以下、2.00%以下または1.00%以下であることができる。
Li2O、Na2O、K2OおよびCs2Oは、いずれもガラスの熱的安定性を改善する働きを有するが、これらの含有量が多くなると、屈折率および化学的耐久性が低下する傾向がある。そのため、Li2O、Na2O、K2OおよびCs2Oの含有量は、それぞれ上記範囲であることが好ましい。
【0035】
MgO、CaO、SrOおよびBaOのそれぞれの含有量は、0.00%、0.00%以上、0.00%超、0.05%以上または0.10%以上であることができる。また、MgO、CaO、SrOおよびBaOのそれぞれの含有量は、例えば、5.00%以下、4.00%以下、3.00%以下、2.00%以下または1.00%以下であることができる。
MgO、CaO、SrOおよびBaOは、いずれもガラスの熱的安定性を改善する働きを有するが、これらの含有量が多くなると、屈折率および化学的耐久性が低下する傾向がある。そのため、MgO、CaO、SrOおよびBaOの含有量は、それぞれ上記範囲であることが好ましい。
【0036】
ZnO含有量は、0.00%、0.00%以上、0.00%超、0.10%以上または0.10%以上であることができる。また、ZnO含有量は、例えば、5.00%以下、4.00%以下、3.00%以下または2.00%以下であることができる。
ZnOは、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有するが、ZnOの含有量が多くなると、比重が上昇する傾向がある。そのため、ZnOの含有量は、上記範囲であることが好ましい。
【0037】
ZrO2含有量は、0.00%、0.00%以上、0.00%超、1.00%以上、3.00%以上または5.00%以上であることができる。また、ZrO2含有量は、例えば、10.00%以下または8.00%以下であることができる。
ZrO2は、ガラスの屈折率を高める働きを有するが、ZrO2の含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性が低下する傾向がある。そのため、ZrO2の含有量は、上記範囲であることが好ましい。
【0038】
Ta2O5含有量は、0.00%、0.00%以上、0.00%超、0.10%以上または0.10%以上であることができる。また、Ta2O5含有量は、例えば、5.00%以下、4.00%以下、3.00%以下または2.00%以下であることができる。
Ta2O5は、ガラスの屈折率を高める働きを有するが、Ta2O5の含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性が低下する傾向がある。そのため、Ta2O5の含有量は、上記範囲であることが好ましい。
【0039】
上記光学ガラスは、更に、上記成分に加えて、P2O5、Al2O3等の一種以上を含むこともできる。
P2O5含有量は、0.00%以上であることができ、好ましくは10.00%以下であり、8.00%以下、6.00%以下、4.00%以下、2.00%以下、1.00%以下、0.50%以下の順により好ましい。
Al2O3含有量は、0.00%以上であることができ、好ましくは10.00%以下であり、8.00%以下、6.00%以下、4.00%以下、2.00%以下、1.00%以下、0.50%以下の順により好ましい。
【0040】
上記光学ガラスにおいて、白金Ptの含有量は、10ppm以下であることが好ましく、8ppm以下であることがより好ましく、7ppm以下、5ppm以下の順に更に好ましい。白金含有量の下限は、特に限定されず、例えば0.001ppm以上であることができる。Ptの含有量を上記範囲とすることで、Ptに起因するガラスの着色を低減することができる。この点は、λ70とλ5との差(λ70-λ5)を小さくするうえで好ましい。白金含有量は、ガラスの総質量に対する質量基準の含有率であって、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により定量することができる。
【0041】
Pb、As、Cd、Tl、Be、Seは、それぞれ毒性を有する。そのため、これらの元素を含有させないこと、すなわち、これら元素をガラス成分としてガラス中に導入しないことが好ましい。
U、Th、Raはいずれも放射性元素である。そのため、これらの元素を含有させないこと、すなわち、これら元素をガラス成分としてガラス中に導入しないことが好ましい。
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr,Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Ceは、ガラスの着色を増大させたり、蛍光の発生源となり、光学素子用のガラスに含有させる元素としては好ましくない。そのため、これらの元素を含有させないこと、すなわち、これら元素をガラス成分としてガラス中に導入しないことが好ましい。
【0042】
Sb、Snは清澄剤として機能する任意に添加可能な元素である。
Sbの添加量は、Sb2O3に換算し、Sb2O3以外のガラス成分の含有量の合計を100質量%としたとき、0.000~0.100質量%の範囲にすることが好ましく、0.000~0.020質量%の範囲にすることがより好ましく、0.000~0.010質量%の範囲にすることがより好ましく、0.000~0.005質量%の範囲にすることが更に好ましい。
Snの添加量は、SnO2に換算し、SnO2以外のガラス成分の含有量の合計を100質量%としたとき、0.000~0.100質量%の範囲にすることが好ましく、0.000~0.020質量%の範囲にすることがより好ましく、0.000~0.010質量%の範囲にすることがより好ましく、0.000~0.005質量%の範囲にすることが更に好ましい。
【0043】
<ガラス物性>
【0044】
(アッベ数νd)
アッベ数νdは分散性に関する性質を表す値であり、d線、F線、C線における各屈折率nd、nF、nCを用いてνd=(nd-1)/(nF-nC)と表される。光学素子用材料および導光板材料としての有用性の観点から、上記光学ガラスのアッベ数νdは、20.00以上であることが好ましく、21.00以上であることがより好ましく、22.00以上、23.00以上の順に更に好ましい。同様の観点から、アッベ数νdは、30.00以下であることが好ましく、28.00以下であることがより好ましく、26.00以下、25.00以下、24.00以下の順に更に好ましい。
【0045】
(ガラス転移温度Tg)
上記光学ガラスのガラス転移温度Tgは、機械加工性の観点からは、好ましくは560℃以上である。ガラス転移温度が高いガラスは、切断、切削、研削、研磨等のガラスの機械加工を行う際に破損しにくい傾向があり好ましい。機械加工性の観点からは、ガラス転移温度Tgは、570℃以上であることがより好ましく、580℃以上、590℃以上、600℃以上の順に更に好ましい。一方、アニール炉や成形型への負担軽減の観点からは、ガラス転移温度Tgは、800℃以下であることが好ましく、790℃以下、780℃以下、770℃以下、760℃以下、750℃以下の順により好ましい。
【0046】
ガラス転移温度Tgは、次のようにして求められる。示差走査熱量測定において、ガラス試料を昇温すると比熱の変化に伴う吸熱挙動、即ち、吸熱ピークが現れ、更に昇温すると発熱ピークが現れる。示差走査熱量分析では横軸を温度、縦軸を試料の発熱吸熱に対応する量とする示差走査熱量曲線(DSC(Differential Scanning Calorimetry)曲線)が得られる。この曲線でベースラインから吸熱ピークが現れる際に傾きが最大になる点における接線と上記ベースラインの交点をガラス転移温度Tgとする。ガラス転移温度Tgの測定は、ガラスを乳鉢等で十分粉砕したものを試料とし、示差走査熱量計を使用して、昇温速度を10℃/分として行うことができる。
【0047】
(温度Tl)
本発明者は、上記示差走査熱量測定においてメルトに切り替わる温度Tlが低いガラスは表面失透を生じ難いことを新たに見出した。表面が失透したガラスは、導光板等に加工する際に失透部分を取り除かなければならない。したがって、表面失透は歩留まりの低下の原因となる。また、表面が失透したガラスはガラス表面に曇りが生じているため、ガラス内部の品質検査を行うことは困難である。したがって、表面失透を生じ難いガラスは好ましい。上記光学ガラスのTlは、1300℃以下であることが好ましく、1295℃以下であることがより好ましく、1290℃以下、1285℃以下、1280℃以下、1275℃以下、1270℃以下、1265℃以下、1260℃以下、1255℃以下、1250℃以下、1247℃以下、1246℃以下、1245℃以下、1244℃以下、1243℃以下、1242℃以下、1241℃以下、1240℃以下の順に更に好ましい。上記光学ガラスのTlは、例えば、1200℃以上、1210℃以上または1220℃以上であることができる。ただし、表面失透抑制の観点からはTlは低いほど好ましいため、上記光学ガラスのTlは、上記範囲を下回ってもよい。
【0048】
温度Tlは、DSC曲線から、融解による吸熱ピークのトップからベースラインにかけて傾きが最大になる点における接線と上記ベースラインとの交点の温度として求められる。上記交点の温度は、「NEW GLASS, Vol.28, No.110 2013」の
図5においてhとなる温度である。
【0049】
(比重)
光学系を構成する光学素子では、光学素子を構成するガラスの屈折率と光学素子の光学機能面(制御しようとする光線が入射、出射する面)の曲率によって、屈折力が決まる。光学機能面の曲率を大きくしようとすると、光学素子の厚みも増加する。その結果、光学素子が重くなる。これに対し、屈折率の高いガラスを使用すれば、光学機能面の曲率を大きくしなくても大きな屈折力を得ることができる。
以上より、ガラスの比重の増加を抑えつつ、屈折率を高めることができれば、一定の屈折力を有する光学素子の軽量化が可能となる。
また、導光板を構成するガラスについても、低比重であることは、導光板の軽量化および画像表示装置の軽量化の観点から好ましい。
以上の観点から、上記光学ガラスの比重は、5.30以下であることが好ましく、5.20以下であることがより好ましく、5.10以下であることが更に好ましい。比重が低いほど光学素子の軽量化の観点から好ましいため、上記光学ガラスの比重について、下限は特に限定されない。一形態では、比重は、4.00以上、4.40以上または4.800以上であることができる。
【0050】
(T460)
「T460」は、厚みの異なる一対の試料のそれぞれの分光透過率を用いて求められる、波長460nmにおける厚み10mmの内部透過率である。分光透過率は、先に記載した通り、表面反射損失を含む。内部透過率τ(%)は、先に示した以下の式:
logτ=(logT1-logT2)/Δd×10
を用いて求めることができる。
上記光学ガラスのT460は、導光板中を伝搬する青色の波長の光の損失を低減させる観点からは、90.0%以上であることが好ましく、92.5%以上であることがより好ましく、95.0%以上であることがより好ましく、96.0%以上であることがより好ましく、97.0%以上であることが更に好ましい。
【0051】
(β-OH)
以下の式(1)によって求められるβ-OHは、水酸基に起因する吸光度を意味する。したがって、β-OHによって、ガラスにおける水(および/または水酸化物イオン、以下、単に「水」という。)の含有量を評価することができる。すなわち、ガラスのβ-OHが高いことは、ガラスにおける水の含有量が高いことを意味する。
β-OH=-[ln(B/A)]/t…(1)
上記式(1)中、tは分光透過率の測定に用いるガラスの厚み(mm)を表し、Aはガラスに対してその厚み方向と平行に光を入射した際の波長2500nmにおける分光透過率(%)を表し、Bはガラスに対してその厚み方向と平行に光を入射した際の波長2900nmにおける分光透過率(%)を表す。式(1)中、lnは自然対数である。β-OHの単位はmm-1である。ガラスのβ-OHの値を高めることは、λ70とλ5との差(λ70-λ5)を小さくすることにつながるため、好ましい。上記光学ガラスのβ-OHは、0.50mm-1以上であることが好ましく、0.60mm-1以上であることがより好ましく、0.70mm-1以上であることがより好ましく、0.80mm-1以上であることがより好ましく、0.90mm-1以上であることが更に好ましい。上記光学ガラスのβ-OHは、例えば、1.50mm-1以下または1.25mm-1以下であることができる。
【0052】
以上説明した上記光学ガラスは、導光板用のガラス材料として有用であり、光学素子用のガラス材料としても有用である。
【0053】
<ガラスの製造方法>
上記光学ガラスは、以下の方法によって得ることができる。目的のガラス組成が得られるように、原料である酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物等を秤量、調合し、十分に混合して混合バッチとする。かかる混合バッチを、熔融容器内で加熱、熔融し、脱泡、撹拌を行い均質かつ泡を含まない熔融ガラスを作る。具体的には公知の熔融法を用いて溶融ガラスを作ることができる。こうして得られた熔融ガラスを成形することによって、上記光学ガラスを得ることができる。
【0054】
例えば、熔解工程において、目的のガラス組成が得られるようにガラス原料を調合し、十分混合してバッチ原料とし、バッチ原料を白金坩堝中に入れて粗熔解する。熔解工程において、ガラス原料に還元剤を添加することができる。還元剤としては、特に限定されるものではなく、例えばAl、Si、Ti、W、H2、CO、C等の還元性を示す物質が挙げられる。より具体的には、還元性を示す物質としては、炭素化合物や活性炭Cを例示することができる。ガラス原料に還元剤を添加することで、ガラス原料がガラス化の際に発生する反応活性の高い酸素と還元剤とが反応し、白金坩堝由来の白金の酸化反応が抑制される。その結果、ガラス中の白金含有量を低減できる。白金含有量を低減することは、λ70とλ5との差(λ70-λ5)を小さくすることにつながるため、好ましい。
【0055】
ガラスの熔解工程における熔融雰囲気は、非酸化性雰囲気であることが好ましい。熔解工程を非酸化性雰囲気で行うことにより、熔融雰囲気中の酸素分圧が低減され、白金坩堝由来の白金の酸化が抑制されて、熔融ガラスに溶け込む白金量を低減できる。
【0056】
非酸化性雰囲気としては、特に限定されるものではなく、例えば、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気や水蒸気付加雰囲気が挙げられる。最終的に得られるガラスのβ-OHを高めるためには、水蒸気付加雰囲気が好ましい。
【0057】
熔融雰囲気に水蒸気を付加することにより、最終的に得られるガラスのβ-OHを高めることができる。また、溶融雰囲気に水蒸気を付加することにより、ガラスへの白金等の溶け込みを有効に防止できる。更に、溶融雰囲気に水蒸気を付加することにより、ガラスに十分な溶存ガスを供給することができ、その結果、ガラスの脱泡性および清澄性を改善できる。
【0058】
熔融雰囲気に水蒸気を付加する方法は、特に限定されるものではない。熔融雰囲気に水蒸気を付加する方法としては、例えば、熔融装置に設けた開口部から連結パイプを坩堝内へ挿入し、必要に応じてこのパイプを通して水蒸気を坩堝内の空間へと供給する方法等が挙げられる。
【0059】
熔解工程では、熔融物の撹拌を目的として、バブリングを伴うこともできる。熔解時のバブリングは、調合材料を熔融した後も継続してもよい。溶解工程において熔融物を撹拌することにより、ガラス成分の酸化が進行する。一方で、溶解工程において熔融物を撹拌することにより、白金坩堝由来の白金の酸化が抑制される。これは、ガラス成分には、白金よりも酸化されやすい傾向があるためである。その結果、ガラス成分の還元反応が抑制されて還元色が低減される。更には、白金の熔融物への溶け込みが抑制されて白金由来の着色も低減される。この点は、λ70とλ5との差(λ70-λ5)を小さくすることにつながるため、好ましい。
【0060】
バブリングに用いるガスは、特に限定されるものではなく、公知のガスを用いることができる。例えば、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス、空気、およびこれらのガスに水蒸気を付加したガスが挙げられる。
【0061】
バブリングに用いるガスとして水蒸気を含むガスを用いることで、最終的に得られるガラスのβ-OHを高めることができる。また、バブリングに用いるガスとして水蒸気を含むガスを用いることで、ガラスへの白金の溶け込みを有効に防止できる。更に、バブリングに用いるガスとして水蒸気を含むガスを用いることで、十分な溶存ガスをガラスに供給することができ、その結果、ガラスの脱泡性および清澄性を改善できる。
【0062】
このような水蒸気を含むガス中の水蒸気の含有量は、10体積%以上であることが好ましく、20体積%以上であることがより好ましく、30体積%以上、40体積%以上、50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上、80体積%以上、90体積%以上の順に更に好ましい。水蒸気の含有量は、高いほど好ましく、上記範囲とすることで、最終的に得られるガラスのβ-OHを高めることができる。
【0063】
例えば、粗熔解によって得られた熔融物を急冷、粉砕してカレットを作製する。更にカレットを白金坩堝中に入れて加熱、再熔融(リメルト)して熔融ガラスとし、更に清澄、均質化した後に熔融ガラスを成形し、徐冷してガラス成形体を得ることができる。熔融ガラスの成形および徐冷には、公知の方法を適用すればよい。
【0064】
上記溶融においてガラスに含まれる成分の一部が還元されることによって、ガラス成形体に着色(以下、「還元色」と記載する。)が生じる場合がある。還元色が生じた場合には、ガラス成形体に熱処理を施すことによって還元色を低減することができる。ガラス成形体の熱処理は、酸化性雰囲気中で、例えばガラス転移温度程度の温度で行うことができる。熱処理温度が高ければ熱処理時間を短縮できる。また、酸化性雰囲気中の酸素分圧を高めても熱処理時間を短縮できる。このように熱処理時間は、熱処理温度および酸化性雰囲気中の酸素分圧により変わるため、ガラスの着色を十分に低減できるように設定すればよい。熱処理時間は、例えば0.1時間~100時間程度とすることができる。酸化性雰囲気は、酸素を含む雰囲気であればよく、例えば大気雰囲気であってもよい。
【0065】
[導光板、画像表示装置]
本発明の一態様は、
上記光学ガラスからなる導光板;
画像表示素子と、上記画像表示素子から出射した光を導光する導光板と、を含み、上記導光板が上記光学ガラスのいずれかの光学ガラスからなる導光板である画像表示装置、
に関する。画像表示装置の具体的形態については後述する。
【0066】
[プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、およびそれらの製造方法]
本発明の他の一態様は、
上記光学ガラスからなるプレス成形用ガラス素材;
上記光学ガラスからなる光学素子ブランク、
に関する。
【0067】
本発明の他の一態様によれば、
上記光学ガラスをプレス成形用ガラス素材に成形する工程を備えるプレス成形用ガラス素材の製造方法;
上記光学ガラスプレス成形用ガラス素材を、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子ブランクを作製する工程を備える光学素子ブランクの製造方法;
上記光学ガラスガラスを光学素子ブランクに成形する工程を備える光学素子ブランクの製造方法、
も提供される。
【0068】
光学素子ブランクとは、目的とする光学素子の形状に近似し、光学素子の形状に研磨しろ(研磨により除去することになる表面層)、必要に応じて研削しろ(研削により除去することになる表面層)を加えた光学素子母材である。光学素子ブランクの表面を研削、研磨することにより、光学素子が仕上げられる。一態様では、上記ガラスを適量熔融して得た熔融ガラスをプレス成形する方法(ダイレクトプレス法と呼ばれる。)により、光学素子ブランクを作製することができる。他の一態様では、上記ガラスを適量熔融して得た熔融ガラスを固化することにより光学素子ブランクを作製することもできる。
【0069】
また、他の一態様では、プレス成形用ガラス素材を作製し、作製したプレス成形用ガラス素材をプレス成形することにより、光学素子ブランクを作製することができる。
【0070】
プレス成形用ガラス素材のプレス成形は、加熱して軟化した状態にあるプレス成形用ガラス素材をプレス成形型でプレスする公知の方法により行うことができる。加熱、プレス成形は、ともに大気中で行うことができる。プレス成形後にアニールしてガラス内部の歪を低減することにより、均質な光学素子ブランクを得ることができる。
【0071】
プレス成形用ガラス素材は、そのままの状態で光学素子ブランク作製のためのプレス成形に供されるプレス成形用ガラスゴブと呼ばれるものに加え、切断、研削、研磨等の機械加工を施してプレス成形用ガラスゴブを経てプレス成形に供されるものも含む。切断方法としては、ガラス板の表面の切断したい部分にスクライビングと呼ばれる方法で溝を形成し、溝が形成された面の裏面から溝の部分に局所的な圧力を加えて、溝の部分でガラス板を割る方法や、切断刃によってガラス板をカットする方法等がある。また、研削、研磨方法としてはバレル研磨等が挙げられる。
【0072】
プレス成形用ガラス素材は、例えば、熔融ガラスを鋳型に鋳込みガラス板に成形し、このガラス板を複数のガラス片に切断することにより作製することができる。または、適量の熔融ガラスを成形してプレス成形用ガラスゴブを作製することもできる。プレス成形用ガラスゴブを、再加熱、軟化してプレス成形して作製することにより、光学素子ブランクを作製することもできる。ガラスを再加熱、軟化してプレス成形して光学素子ブランクを作製する方法は、ダイレクトプレス法に対してリヒートプレス法と呼ばれる。
【0073】
[光学素子およびその製造方法]
本発明の他の一態様は、
上記光学ガラスからなる光学素子
に関する。
上記光学素子は、上記光学ガラスを用いて作製される。上記光学素子において、ガラス表面には、例えば、反射防止膜等の多層膜等、一層以上のコーティングが形成されていてもよい。
【0074】
また、本発明の一態様によれば、
上述の光学素子ブランクを研削および/または研磨することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法、
も提供される。
【0075】
上記光学素子の製造方法において、研削、研磨は公知の方法を適用すればよく、加工後に光学素子表面を十分洗浄、乾燥させる等することにより、内部品質および表面品質の高い光学素子を得ることができる。このようにして、上記ガラスからなる光学素子を得ることができる。光学素子としては、球面レンズ、非球面レンズ、マイクロレンズ等の各種のレンズ、プリズム等を例示することができる。
【0076】
また、上記光学ガラスからなる光学素子は、接合光学素子を構成するレンズとしても好適である。接合光学素子としては、レンズ同士を接合したもの(接合レンズ)、レンズとプリズムを接合したもの等を例示することができる。例えば、接合光学素子は、接合する2つの光学素子の接合面を形状が反転形状となるように精密に加工(例えば、球面研磨加工)し、接合レンズの接着に使用される紫外線硬化型接着剤を塗布し、貼り合わせてからレンズを通して紫外線を照射し接着剤を硬化させることで作製することができる。このように接合光学素子を作製するために、上記ガラスは好ましい。接合する複数個の光学素子を、アッベ数νdが相違する複数種のガラスを用いてそれぞれ作製し、接合することにより、色収差の補正に好適な素子とすることができる。
【実施例0077】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に示す実施形態に限定されるものではない。
【0078】
[実施例1、比較例1]
まず、ガラスの構成成分に対応する酸化物、水酸化物、炭酸塩および硝酸塩を原材料として準備し、得られる光学ガラスのガラス組成が以下の表に示す各組成となるように上記原材料を秤量および調合して、原材料を十分に混合した。こうして得られた調合原料(バッチ原料)を、調合原料100質量%に対して以下の表に示す量(単位:質量%)の還元剤とともに白金坩堝に投入し、1250℃~1400℃で2時間加熱して熔融して熔融ガラスとし(熔解工程)、1300~1400℃で1~2時間撹拌して均質化し、清澄した(均質化・清澄工程)。熔融ガラスを適当な温度に予熱した金型に鋳込んだ。鋳込んだガラスを、ガラス転移温度Tgで30分間熱処理し、炉内で室温まで放冷することにより、ガラス成形体を得た。得られた成形体を大気雰囲気中でガラス転移温度Tgまで昇温し、この温度で48時間保持して熱処理した。こうしてガラスサンプルを得た。
以下の表中、含有量の単位は質量%である。Sb2O3含有量は、Sb2O3以外のガラス成分の含有量の合計を100質量%としたときの含有量である。
【0079】
熔解工程、均質化・清澄工程では、下記の操作を行った。
【0080】
熔融炉外から白金製パイプを炉内に配置した白金製坩堝内に挿入し、この白金製パイプを通して、水蒸気を白金製坩堝内の空間へと供給した。供給した水蒸気の流量は、以下の表に示す流量とした。
【0081】
また、上記白金製パイプを通して窒素を白金製坩堝内の空間へと供給するとともに、坩堝の下部に設置した管から、熔融物中に水蒸気をバブリングした。供給した窒素および水蒸気の流量は、窒素30L/min、水蒸気5.0cc/minとした。
【0082】
こうして、実施例1のNo.1~10の各光学ガラスのガラスサンプルおよび比較例1の光学ガラスのガラスサンプルを得た。
【0083】
[比較例2、3]
以下の表中の比較例2はHOYA株式会社製TAFD55-Wであり、比較例3はHOYA株式会社製E-FDS3-Wである。
【0084】
実施例および比較例の各光学ガラスの諸物性を以下の表に示す。光学ガラスの諸物性は、以下に示す方法により測定した。
【0085】
[光学ガラスの物性評価]
(1)λ5、λ70、T460
互いに対向する2つの光学研磨された平面を有する厚み10±0.1mmのガラス試料を用い、分光光度計により、研磨された面に対して垂直方向から強度Iinの光を入射し、ガラス試料を透過した光の強度Ioutを測定し、分光透過率Iout/Iinを算出し、分光透過率が5%になる波長をλ5とし、分光透過率が70%になる波長をλ70として求めた。求められたλ5およびλ70から、λ70とλ5との差(λ70-λ5)を算出した。
【0086】
(2)T460
厚みの異なる一対の試料のそれぞれの分光透過率(表面反射損失を含む)を用いて、波長460nmにおける厚み10mmの内部透過率T460を求めた。
【0087】
(3)屈折率nd、アッベ数νd
降温速度-30℃/時間で降温して得られたガラスについて、日本光学硝子工業会規格の屈折率測定法により、屈折率ndおよびアッベ数νdを測定した。
【0088】
(4)ガラス転移温度Tg、温度Tl
ガラスを乳鉢で十分粉砕したものを試料とし、NETZSCH社製の示差走査熱量分析装置(DSC3300SA)を使用し、昇温速度を10℃/分にしてDSC測定を行い、DSC曲線を得た。得られたDSC曲線から、先に記載したようにガラス転移温度Tgおよびメルトに切り替わる温度Tlを求めた。
【0089】
(4)比重
アルキメデス法により比重を測定した。
【0090】
(5)β-OH
上記ガラスサンプルを、厚み1mmで、互いに平行かつ光学研磨された平面を有する板状ガラス試料に加工した。この板状ガラス試料の研磨面に垂直方向から光を入射して、波長2500nmにおける分光透過率Aおよび波長2900nmにおける分光透過率Bを、分光光度計を用いてそれぞれ測定し、先に示した式(1)により、β-OHを算出した。
【0091】
実施例1のNo.1~10の各光学ガラスのPt含有量を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により定量したところ、0.001ppm~10ppmの範囲であった。
【0092】
実施例1のNo.1~10の各光学ガラスを目視観察した。その結果、実施例1の各光学ガラスのガラスブロックには表面失透は見られなかった。
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
(実施例2)
図1は、画像表示素子と導光板とを含む画像装置の一例であるヘッドマウントディスプレイの概略構成図である。
図1に示す構成を有するヘッドマウントディスプレイ1を、以下の方法によって作製した。
実施例1の各光学ガラスおよび比較例1~3の光学ガラスを長さ50mm×幅20mm×厚み1.0mmの矩形薄板状に加工して、導光板10を得た。
この導光板を、
図1に示すヘッドマウントディスプレイ1(以下、「HMD1」と略記する。)に取り付けた。
図1(a)は、HMD1の正面側斜視図であり、
図1(b)は、HMD1の背面側斜視図である。
図1(a)および
図1(b)に示すように、使用者の頭部に装着される眼鏡型フレーム2の正面部には、眼鏡レンズ3が取り付けられる。眼鏡型フレーム2の取付部2aには、画像を照明するためのバックライト4が取り付けられる。眼鏡型フレーム2のツル部分には、画像を映し出すための信号処理機器5および音声を再生するスピーカー6が設けられている。信号処理機器5の回路から引き出された配線を構成するFPC(Flexible Printed Circuits)7が、眼鏡型フレーム2に沿って配線されている。表示素子ユニット(例えば液晶表示素子)20は、FPC7によって使用者の両眼中央位置まで配線され、かつバックライト4の光軸線上に表示素子ユニット20の略中心部が配置するように保持される。表示素子ユニット20は、導光板10の略中央部に位置するように、導光板10に対して相対的に固定される。また、使用者の眼前に位置する箇所にはHOE(Holographic Optical Element)32R、32L(第1光学素子)が、それぞれ接着等により導光板10の第1面10a上に密着固定されている。導光板10を挟んで表示素子ユニット20と対向する位置には、HOE52R、52Lが導光板10の第2面10b上に積層されている。
図2は、
図1に示すHMD1の構成を模式的に示す側面図である。なお、
図2においては、図面を明瞭化するため、主要部のみを示しており、眼鏡型フレーム2等は図示を省略している。
図2に示すように、HMD1は、画像表示素子24と導光板10の中心を結ぶ中心線Xを挟み左右対称の構造を有している。また、画像表示素子24から導光板10に入射された各波長の光は、後述するように二分割されて使用者の右眼、左眼のそれぞれに導光される。各眼に導光される各波長の光の光路も中心線Xを挟み略左右対称である。
図2に示すように、バックライト4は、レーザ光源21、拡散光学系22、およびマイクロレンズアレイ23を有する。表示素子ユニット20は、画像表示素子24を有する画像生成ユニットであり、例えばフィールドシーケンシャル(FieldSequential)方式で駆動する。レーザ光源21は、B(波長436nm)、G(波長546nm)、R(波長633nm)の各波長に対応したレーザ光源を有し、各波長の光を高速で順次照射する。各波長の光は、拡散光学系22、マイクロレンズアレイ23に入射され、光量ムラのない均一な高指向性の平行光束に変換されて、画像表示素子24の表示パネル面に垂直に入射される。
画像表示素子24は、例えばフィールドシーケンシャル方式で駆動する透過型液晶(LCDT-LCOS)パネルである。画像表示素子24は、各波長の光に、信号処理機器5の画像エンジン(図示せず)が生成する画像信号に応じた変調をかける。画像表示素子24の有効領域の画素で変調された各波長の光は、所定の光束断面(上記有効領域と略同じ形状)をもって導光板10に入射される。なお、画像表示素子24は、例えばDMD(DigitalMirrorDevice)や反射型液晶(LCOS)パネル、MEMS(MicroElectroMechanicalSystems)、有機EL(Electro-Luminescence)、無機EL等の他の形態の表示素子に置換することも可能である。
表示素子ユニット20は、フィールドシーケンシャル方式の表示素子に限らず、同時式の表示素子(射出面前面に所定の配列のRGBカラーフィルタを有する表示素子)の画像生成ユニットとしてもよい。この場合、光源には、例えば白色光源が使用される。
図2に示すように、画像表示素子24により変調された各波長の光は、第1面10aから導光板10内部に順次入射される。導光板10の第2面10b上には、HOE52Rと52L(第2光学素子)が積層されている。HOE52Rおよび52Lは、例えば矩形状を有する反射型の体積位相型HOEであって、R、G、Bの各波長の光に対応する干渉縞が各々に記録されたフォトポリマーを三枚積層した構成を有する。すなわち、HOE52Rおよび52Lは、R、G、Bの各波長の光を回折しそれ以外の波長の光を透過する波長選択機能を有するように構成されている。
HOE32Rおよび32Lも反射型の体積位相型HOEであり、HOE52Rおよび52Lと同一の層構造を有する。HOE32Rおよび32Lと52Rおよび52Lは、例えば干渉縞パターンのピッチが略同一であってもよい。
HOE52Rと52Lは、互いの中心が一致し、かつ干渉縞パターンが180(deg)反転された状態で積層されている。そして、積層された状態でその中心が中心線Xと一致するように導光板10の第2面10b上に接着等により密着固定されている。HOE52R、52Lには、画像表示素子24により変調された各波長の光が導光板10を介して順次入射される。
HOE52R、52Lはそれぞれ、順次入射される各波長の光を右眼、左眼に導くため所定の角度を付与して回折する。HOE52R、52Lにより回折された各波長の光はそれぞれ、導光板10と空気との界面で全反射を繰り返して導光板10内部を伝搬しHOE32R、32Lに入射される。ここで、HOE52R、52Lは、各波長の光に同一の回折角を付与する。そのため、導光板10に対する入射位置が略同一の(または別の表現によれば、画像表示素子24の有効領域内の略同一座標から射出された)すべての波長の光は、導光板10内部の略同一の光路を伝搬して、HOE32R、32L上の略同位置に入射する。別の観点によれば、HOE52R、52Lは、画像表示素子24の有効領域に表示された画像の該有効領域内における画素位置関係がHOE32R、32L上で忠実に再現されるようにRGBの各波長の光を回折する。
このように本実施例においては、HOE52R、52Lは、それぞれ、画像表示素子24の有効領域内の略同一座標から射出されたすべての波長の光をHOE32R、32L上の略同位置に入射させるように回折する。または、HOE52R、52Lは、画像表示素子24の有効領域内で相対的にずらされた本来同一画素をなすすべての波長の光をHOE32R、32L上の略同位置に入射させるように回折するように構成されてもよい。
HOE32R、32L上に入射された各波長の光は、HOE32R、32Lにより回折されて導光板10の第2面10bから外部に略垂直に順次射出される。このように略平行光として射出された各波長の光はそれぞれ、画像表示素子24により生成された画像の虚像Iとして使用者の右眼網膜、左眼網膜に結像する。また、使用者が拡大画像の虚像Iを観察できるように、HOE32R、32Lにコンデンサ作用を付与してもよい。すなわち、HOE32R、32Lの周辺領域に入射された光ほど瞳の中心に寄るように角度をもって射出され使用者の網膜に結像するようにしてもよい。または、使用者に拡大画像の虚像Iを観察させるために、HOE52R、52Lは、HOE32R、32L上での画素位置関係が画像表示素子24の有効領域に表示された画像の該有効領域内における画素位置関係に対して拡大された相似形状をなすようにRGBの各波長の光を回折するようにしてもよい。
導光板10内を進む光の空気換算光路長が、屈折率が高いほど短くなるため、屈折率が高い上記各光学ガラスを使用することにより、画像表示素子24の幅に対する見かけの視野角を大きくすることができる。更に、屈折率が高いものの比重が低く抑えられているため、軽量でありながら上記効果が得られる導光板を提供することができる。
このようにして得られた導光板10を、HMD1に組み込み、アイポイントの位置で画像を評価した。実施例の各光学ガラスからなる導光板を組み込んだHMD1では、広い視野角で、高輝度かつ高コントラストな画像を観察することができた。実施例の各光学ガラスからなる導光板を組み込んだHMD1では、比較例1~3の各光学ガラスからなる導光板を組み込んだHMD1と比べて、より鮮明な画像が得られた。
なお、実施例の各光学ガラスからなる導光板は、シースルーである透過型のヘッドマウントディスプレイや非透過型のヘッドマウントディスプレイ等に使用することができる。
これらヘッドマウントディスプレイは、導光板が高屈折率のガラスからなることによって、広視野角による没入感が優れており、情報端末と組み合わせて使用したり、AR(Augmented Reality:拡張現実)等の提供用として使用したり、映画鑑賞やゲームやVR (Virtual Reality:仮想現実)等の提供用として使用する画像表示装置として好適である。
本実施例では、ヘッドマウントディスプレイを例にとり説明したが、その他の画像表示装置に上記導光板を取り付けてもよい。
【0097】
(実施例3)
実施例1で得られた各種ガラスを使用し、プレス成形用ガラス塊(ガラスゴブ)を作製した。このガラス塊を大気中で加熱、軟化し、プレス成形型でプレス成形し、レンズブランク(光学素子ブランク)を作製した。作製したレンズブランクをプレス成形型から取り出し、アニールし、研磨を含む機械加工を行い、実施例1の各光学ガラスからなる球面レンズを作製した。
【0098】
(実施例4)
実施例1において作製した熔融ガラスを所望量、プレス成形型でプレス成形し、レンズブランク(光学素子ブランク)を作製した。作製したレンズブランクをプレス成形型から取り出し、アニールし、研磨を含む機械加工を行い、実施例1の各光学ガラスからなる球面レンズを作製した。
【0099】
(実施例5)
実施例1において作製した熔融ガラスを固化して作製したガラス塊(光学素子ブランク)アニールし、研磨を含む機械加工を行い、実施例1の各光学ガラスからなる球面レンズを作製した。
【0100】
(実施例6)
実施例3~5において作製した球面レンズを、他種のガラスからなる球面レンズと貼り合せ、接合レンズを作製した。
【0101】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、上記に例示されたガラス組成に対し、明細書に記載の組成調整を行うことにより、本発明の一態様にかかる光学ガラスを得ることができる。
また、明細書に例示または好ましい範囲として記載した事項の2つ以上を任意に組み合わせることは、もちろん可能である。