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  • 特開-光学積層体及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146762
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】光学積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20241004BHJP
   C09D 11/107 20140101ALI20241004BHJP
   C09D 11/104 20140101ALI20241004BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20241004BHJP
【FI】
G02B5/22
C09D11/107
C09D11/104
C09D11/102
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024019369
(22)【出願日】2024-02-13
(62)【分割の表示】P 2023097565の分割
【原出願日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2023057015
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中井 祐樹
【テーマコード(参考)】
2H148
4J039
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA05
2H148CA09
2H148CA14
4J039AD09
4J039AE04
4J039AE05
4J039AE06
4J039BE01
4J039BE16
4J039BE22
4J039CA07
4J039FA02
4J039GA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の目的は、波長850nm~2500nm以の近赤外領域における透過性に優れ、黒色であり、照射した光と可視光線領域の透過光とが同色である光学積層体を提供することである。
【解決手段】基材の少なくとも一方の面上に、光学機能層を有する光学積層体であって、前記光学機能層が、複数種の顔料を含む着色剤、及び、バインダー樹脂を含み、前記光学積層体は、波長350nm~750nmの平均分光透過率が25%以下であり、波長850nm~2500nmの平均分光透過率が85%以上であり、
波長350nm以上460nm未満の最大分光透過率をT1、波長460nm以上570nm未満の最大分光透過率をT2、波長570以上nm750nm以下の最大分光透過率をT3とした場合、下記式(1)及び(2)を満たす、光学積層体。
1≦T1/T2≦10・・・(1)
2≦T3/T2≦20・・・(2)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面上に光学機能層を有する光学積層体であって、
前記光学機能層が、複数種の顔料を含む着色剤、及び、バインダー樹脂を含み、
前記光学積層体は、
波長350nm~750nmの平均分光透過率が25%以下であり、
波長850nm~2500nmの平均分光透過率が85%以上であり、
波長350nm以上460nm未満の最大分光透過率をT1、波長460nm以上570nm未満の最大分光透過率をT2、波長570nm以上750nm以下の最大分光透過率をT3とした場合、下記式(1)及び(2)を満たす、光学積層体。
1≦T1/T2≦10 ・・(1)
2≦T3/T2≦20・・・(2)
【請求項2】
複数種の顔料を含む着色剤が、黄顔料、紅顔料及び藍顔料、又は、紅顔料、藍顔料及び緑顔料、又は、黄顔料、藍顔料及び紫顔料、を含む、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
複数種の顔料を含む着色剤が、黄顔料、紅顔料及び藍顔料を含む、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項4】
透過視認用である、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項5】
光学機能層が、分散剤を含む、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項6】
バインダー樹脂が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項7】
基材上に、複数種の顔料を含む着色剤、及び、バインダー樹脂を含む黒色インキを塗工して光学機能層を形成する工程を含む光学積層体の製造方法であって、
前記光学積層体は、
波長350nm~750nmの平均分光透過率が25%以下であり、
波長850nm~2500nmの平均分光透過率が85%以上であり、
波長350nm以上460nm未満の最大分光透過率をT1、波長460nm以上570nm未満の最大分光透過率をT2、波長570nm以上750nm以下の最大分光透過率をT3とした場合、下記式(1)及び(2)を満たす、光学積層体の製造方法。
1≦T1/T2≦10・・・(1)
2≦T3/T2≦20・・・(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な光学系機器において、特定波長の光を選択的に透過又は遮蔽させるといった光学特性を制御する技術が求められている。この技術はダイクロックミラー、バンドパスフィルター、ARコート、UVカットフィルター、IRカットフィルター、UVIRカットフィルター等の積層体に使用される。主に用いられる赤外線センサーの光源としては、赤外線領域の波長が使用されることが多く、極大波長が850nm、905nm、940nmのLEDが使用されている。極大波長850nmのLED光は、一部可視光線も含んでいるため、センサー精度向上のため、当該可視光線を遮断し、赤外線のみを透過する積層体技術が求められている。
【0003】
センサー用積層体の利用例として赤外線でドライバーの動きを検知するドライバーモニタリングシステムがある。これは、自動車パネルに内蔵されたLEDからドライバーに対して赤外線を照射し、ドライバーの状態を検知するシステムである(特許文献1)。また、近年では赤外線センサーに加えて、自動車パネルの表示灯となる各色LEDを内蔵し、積層体の後方からバックライトとしてLEDの表示灯を点灯させることで、自動車パネルの意匠性を向上させることが期待されている。
【0004】
一方、光学部材の外観の観点から、積層体のセンサー感知部位を、周辺部材の黒色と同調色の積層体とすることが好ましい。つまり、この積層体は赤外線透過性であり、かつ、黒色外観の積層体である必要がある。また、周辺部材と同調色とするため、上記光学積層体の外観は黒色であるが、前述したように自動車パネルの表示灯を光学積層体から透かして見る必要がある。しかし、例えば、積層体の後方からバックライトとして白色LEDの表示灯を点灯して当該表示をドライバーが視認した際、理想的には白色として視認されることが好ましいが、赤外線透過層を含む積層体の透過光は着色してしまうことが多く、視認性、意匠性(デザイン性)を著しく低下させる課題があった。
【0005】
このため、赤外線領域における透過性に優れ、照射した光と可視光線領域の透過光とが同色である光学積層体の開発が切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-170958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、赤外線の透過性に優れ、黒色であり、照射した光と可視光線領域の透過光とが同色である光学積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究した結果、以下の光学積層体によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、基材の少なくとも一方の面上に光学機能層を有する光学積層体であって、
前記光学機能層が、複数種の顔料を含む着色剤、及び、バインダー樹脂を含み、前記光学
積層体は、
波長350nm~750nmの平均分光透過率が25%以下であり、
波長850nm~2500nmの平均分光透過率が85%以上であり、
波長350nm以上460nm未満の最大分光透過率をT1、波長460nm以上570nm未満の最大分光透過率をT2、波長570nm以上750nm以下の最大分光透過率をT3とした場合、下記式(1)及び(2)を満たす、光学積層体に関する。
1≦T1/T2≦10 ・・(1)
2≦T3/T2≦20・・・(2)
【0010】
また、本発明は、複数種の顔料を含む着色剤が、黄顔料、紅顔料及び藍顔料、又は、紅顔料、藍顔料及び緑顔料、又は、黄顔料、藍顔料及び紫顔料、を含む、前記光学積層体に関する。
【0011】
また、本発明は、複数種の顔料を含む着色剤が、黄顔料、紅顔料及び藍顔料を含む、前記光学積層体に関する。
【0012】
また、本発明は、透過視認用である、前記光学積層体に関する。
【0013】
また、本発明は、光学機能層が、分散剤を含む、前記光学積層体に関する。
【0014】
また、本発明は、バインダー樹脂が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、前記光学積層体に関する。
【0015】
基材上に、複数種の顔料を含む着色剤、及び、バインダー樹脂を含む黒色インキを塗工して光学機能層を形成する工程を含む光学積層体の製造方法であって、
前記光学積層体は、
波長350nm~750nmの平均分光透過率が25%以下であり、
波長850nm~2500nmの平均分光透過率が85%以上であり、
波長350nm以上460nm未満の最大分光透過率をT1、波長460nm以上570nm未満の最大分光透過率をT2、波長570nm以上750nm以下の最大分光透過率をT3とした場合、下記式(1)及び(2)を満たす、光学積層体の製造方法に関する。
1≦T1/T2≦10・・・(1)
2≦T3/T2≦20・・・(2)
【発明の効果】
【0016】
本発明により、赤外線の透過性に優れ、黒色であり、照射した光と可視光線領域の透過光とが同色である光学積層体を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1の光学積層体の波長320nm~800nmの透過スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0020】
本発明は、基材の少なくとも一方の面上に、光学機能層を有する光学積層体であって、
前記光学機能層が、複数種の顔料を含む着色剤、及び、バインダー樹脂を含み、
前記光学積層体は、
波長350nm~750nmの平均分光透過率が、25%以下であり、
波長850nm~2500nmの平均分光透過率が85%以上であり、
波長350nm以上460nm未満の最大分光透過率をT1、波長460nm以上570nm未満の最大分光透過率をT2、波長570nm以上750nm以下の最大分光透過率をT3とした場合、下記式(1)及び(2)を満たす、光学積層体に関する。
1≦T1/T2≦10・・・(1)
2≦T3/T2≦20・・・(2)
【0021】
前記光学機能層が複数種の顔料を含むことで、単独では吸収できない可視光を補い合いながら吸収することができ、かつ、波長350nm~750nmの平均分光透過率を25%以下とすることで、黒色度が高い積層体が得られ、光学積層体を用いる周辺部材と同調色とすること(シームレス化)が可能になる。また、記式(1)および(2)を満たすことで、透過光が光源の色をそのまま再現する(光源として白色光を用いた場合は透過光が白色として視認され、緑色の光源が用いられた場合は緑色として視認される)ことが可能になる。さらに、波長850nm~2500nmの平均分光透過率を85%以上とすることで、赤外線センサー感度を損ねることなく、赤外線光源や受信部を覆う同調色化が可能である。
【0022】
本明細書において、光学積層体は単に「積層体」と略記する場合があるが同義である。また、本明細書に挙げる「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0023】
<光学積層体>
本発明の光学積層体は、少なくとも、基材及び光学機能層を有する。本発明の光学積層体は、波長350nm~750nmの平均分光透過率が25%以下であり、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。25%以下であることで、光学積層体のOD値(光学濃度)が高くなり、黒色の外観が得られる。
また、波長850nm~2500nmの平均分光透過率は85%以上であり、87%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。85%以上であることで、赤外線センサー用の加飾部材として使用する際、赤外線発信及び受信の阻害を最小限に抑えることができ、センサー感度向上につながる。
【0024】
本発明の光学積層体は、350nm以上460nm未満の最大分光透過率をT1、460nm以上570nm未満の最大分光透過率をT2、570nm以上750nm以下の最大分光透過率をT3とした場合、
下記式(1)及び(2)を満たす。
1≦T1/T2≦10・・・(1)
2≦T3/T2≦20・・・(2)
T1、T2、T3が上記範囲を満たすことで、青色、緑色、赤色の光を好適なバランスで透過させることができ、照射した光と可視光線領域の透過光とが同色になる。T1、T2、T3は、
1.2≦T1/T2≦7
2.5≦T3/T2≦15
であることが好ましく、
1.5≦T1/T2≦5
3≦T3/T2≦10
であることがより好ましい。
【0025】
<光学機能層>
光学機能層は、複数種の顔料を含む着色剤、及び、バインダー樹脂を含む黒色インキから形成されることが好ましい。例えば、光学機能層は、前記複数種の顔料を含む着色剤、及び、バインダー樹脂を含む黒色インキを基材に塗工、乾燥することで得られ、得られた印刷物が光学積層体となる。
光学機能層の膜厚は、その目的及び用途に合わせて適宜調整できるが、一実施形態としては3~20μmであることが好ましく、5~15μmであることがより好ましく、5~10μmであることが更に好ましい。可視光領域の遮光性が良好になり、より黒色の外観が得られるためである。
【0026】
(黒色インキ)
黒色インキは複数種の顔料を含む着色剤、及び、バインダー樹脂を含む。
【0027】
<着色剤>
本発明に用いる着色剤としては、種々の有機顔料、無機顔料、染料等をあげることができる。顔料は、発色性が高く、且つ耐熱性の高い顔料が好ましく、有機顔料が好ましい。有機顔料の中でも、黄顔料、紅顔料、藍顔料の組み合わせ、紅顔料、藍顔料、緑顔料の組み合わせ、黄顔料、藍顔料、紫顔料の組み合わせ、等を挙げることができ、可視光領域における均一な遮蔽性の観点から、黄顔料、紅顔料、及び藍顔料を含むことが好ましい。他に、本発明の効果を妨げない範囲で、橙顔料、緑顔料、紫顔料、等を用いてもよい。上記顔料は、複数種を混合して用いる。複数種の顔料を含むことで外観の黒色度が確保されるため、周辺部材との同色デザインによるシームレス化が可能になり、意匠性が付与できる。
【0028】
以下に、着色剤として使用可能な有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
【0029】
黄顔料としては、C.I.ピグメント イエロー 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、198、199、213、214、218、219、220、221、231等を好適に用いることができる。
【0030】
紅顔料としては、C.I.ピグメント レッド 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、57:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、97、122、123、146、149、150、168、169、176、177、178、180、184、185、187、192、200、202、208、209、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、246、254、255、264、268、270、272、273、274、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287等を好適に用いることができる。
【0031】
藍顔料としては、C.I.ピグメント ブルー 1、1:2、1:3、2、2:1、2:2、3、8、9、10、10:1、11、12、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、19、22、24、24:1、53、56、56:1、57、58、59、60、61、62、64等を好適に用いることができる。
【0032】
橙顔料としては、C.I.ピグメント オレンジ 36、38、43、51、55、59、61、71、73等を好適に用いることができる。
【0033】
緑顔料としては、C.I.ピグメント グリーン 7、10、36、37、58、62、
63等を好適に用いることができる。
【0034】
紫顔料としては、C.I.ピグメント バイオレット 1、19、27、29、30、32、37、40、42、50等を好適に用いることができる。
【0035】
無機顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、アルミニウムペースト、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒等が挙げられる。また、体質顔料としては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、沈降性バリウム等が挙げられる。無機顔料は、彩度と明度のバランスを取りつつ良好な塗布性、感度、現像性等を確保するために、有機顔料と組合せて用いることも好ましい。
【0036】
本発明の光学機能層中、着色剤の含有量は、10~45質量%であることが好ましく、15~40質量%であることがより好ましく、20~35質量%であることが更に好ましい。上記範囲にあることで、遮光性が良好となり、より黒色の外観が得られる。
【0037】
本発明の光学積層体において、上記透過率を満たすためには、黄顔料、紅顔料及び藍顔料の組み合わせの場合は、光学機能層の総質量中、黄顔料を0.1~10質量%、紅顔料を0.1~10質量%、及び藍顔料を0.1~10質量%含むことが好ましく、黄顔料を0.1~4質量%、紅顔料を0.1~8質量%、及び藍顔料を0.1~8質量%を含むことがなお好ましく、黄顔料を0.1~3質量%、紅顔料を0.1~6質量%、及び藍顔料を0.1~6質量%を含むことがさらに好ましい。
顔料の配合比としては、顔料の総量に対する質量比が黄顔料/紅顔料/藍顔料=5~40/5~60/5~60であることが好ましく、10~30/10~50/10~50であることがより好ましく、10~30/25~50/25~50であることが更に好ましい。
黄顔料としてC.I.ピグメント イエロー 139を用い、紅顔料としてC.I.ピグメント レッド 264を用い、藍顔料としてC.I.ピグメント ブルー 15:6を用いると可視光領域において優れた遮蔽性を示すことができるため好ましい。
【0038】
紅顔料、藍顔料、緑顔料の組み合わせの場合は、光学機能層の総質量中、紅顔料を0.1~10質量%、藍顔料を0.1~10質量%、及び緑顔料を0.1~10質量%含むことが好ましく、紅顔料を0.1~8質量%、藍顔料を0.1~4質量%、及び緑顔料を0.1~8質量%を含むことがなお好ましく、紅顔料を0.1~6質量%、藍顔料を0.1~3質量%、及び緑顔料を0.1~6質量%を含むことがさらに好ましい。
顔料の配合比としては、顔料の総量に対する質量比が紅顔料/藍顔料/緑顔料=5~60/5~40/5~60であることが好ましく、10~50/10~30/10~50であることがより好ましく、30~50/20~30/30~50であることが更に好ましい。
紅顔料としてC.I.ピグメント レッド 264を用い、藍顔料としてC.I.ピグメント ブルー 15:6を用い、緑顔料としてC.I.ピグメント グリーン 7を用いることが好ましい。
【0039】
また、黄顔料、藍顔料、紫顔料の組み合わせの場合は、光学機能層の総質量中、黄顔料を0.1~10質量%、藍顔料を0.1~10質量%、及び紫顔料を0.1~10質量%含
むことが好ましく、黄顔料を0.1~8質量%、藍顔料を0.1~4質量%、及び紫顔料を0.1~8質量%を含むことがなお好ましく、黄顔料を0.1~6質量%、藍顔料を0.1~3質量%、及び紫顔料を0.1~6質量%を含むことがさらに好ましい。
顔料の配合比としては、顔料の総量に対する質量比が黄顔料/藍顔料/紫顔料=5~60/5~40/5~60であることが好ましく、10~50/10~30/10~50であることがより好ましく、30~50/20~30/30~50であることが更に好ましい。
黄顔料としてC.I.ピグメント イエロー 139を用い、藍顔料としてC.I.ピグメント ブルー 15:6を用い、紫顔料としてC.I.ピグメント バイオレット 23を
用いることが好ましい。
【0040】
また、黄顔料、紅顔料、紫顔料の組み合わせの場合は、光学機能層の総質量中、黄顔料を0.1~10質量%、紅顔料を0.1~10質量%、及び紫顔料を0.1~10質量%含むことが好ましく、黄顔料を0.1~8質量%、紅顔料を0.1~4質量%、及び紫顔料を0.1~8質量%を含むことがなお好ましく、黄顔料を0.1~6質量%、紅顔料を0.1~3質量%、及び紫顔料を0.1~6質量%を含むことがさらに好ましい。
顔料の配合比としては、顔料の総量に対する質量比が黄顔料/紅顔料/紫顔料=5~60/5~40/5~60であることが好ましく、10~50/10~30/10~50であることがより好ましく、30~50/20~30/30~50であることが更に好ましい。
黄顔料としてC.I.ピグメント イエロー 139を用い、紅顔料としてC.I.ピグメント レッド 264を用い、紫顔料としてC.I.ピグメント バイオレット 23を用
いることが好ましい。
【0041】
<バインダー樹脂>
本発明の光学機能層は、バインダー樹脂を含む。本発明において、バインダー樹脂とは着色インキ中で結着剤として機能し得る樹脂を指し、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂として、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン系樹脂、ロジン系樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、ダンマル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、これらの樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で併用してもよい。
【0042】
本発明の光学機能層は、基材への密着性の観点から、熱可塑性樹脂の中でも、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種以上を含むことが好ましく、アクリル樹脂を含むことがより好ましい。
【0043】
本発明の光学機能層がアクリル樹脂を含む場合、アクリル樹脂の酸価は、20mgKOH/g以下であることが好ましく、15mgKOH/g以下であることがより好ましく、10mgKOH/g以下であることが更に好ましく、5mgKOH/g以下であることがなお好ましく、1mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
【0044】
また、本発明の光学機能層がアクリル樹脂を含む場合、アクリル樹脂の水酸基価は、1mgKOH/g以上であることが好ましく、10mgKOH/g以上であることがより好ましく、20mgKOH/g以上であることが更に好ましく、25mgKOH/g以上であることが特に好ましい。
【0045】
また、本発明の光学機能層がアクリル樹脂を含む場合、アクリル樹脂の反応性官能基価(上記酸価と水酸基価との和)は、1~50mgKOH/gであることが好ましく、5~
40mgKOH/gであることがより好ましく、10~35mgKOH/gであることが更に好ましい。
【0046】
バインダー樹脂の重量平均分子量は、5000~120000であることが好ましく、20000~100000であることがより好ましく、30000~80000であることが更に好ましい。印刷適性が向上するためである。
【0047】
バインダー樹脂の含有量は、光学機能層中、40~80質量%であることが好ましく、45~75質量%であることがなお好ましく、50~70質量%であることが更に好ましい。分散安定性が向上するためである。
【0048】
光学機能層中、着色剤の総量とバインダー樹脂との質量比率は、着色剤総量/バインダー樹脂=85/15~60/40が好ましく、80/20~65/35がより好ましくい。上記比率あることで、遮光性が良好となり、より黒色の外観が得られる。
【0049】
<分散剤>
本発明における光学機能層は、分散剤を含有することが好ましい。分散剤は、光学機能層を形成する黒色インキ中で、顔料凝集を抑制し、分散安定性を向上させる作用を有し、くし型構造であるとより好ましい。本発明において「くし型構造」とは、主鎖に対して側鎖として繰り返し単位が結合した(共)重合体の構造を指す。分散剤がくし型構造であることにより、分散安定性が向上する。
【0050】
分散剤は、酸性基を有することが好ましく、酸価が0.1~100mgKOH/gであることがより好ましい。分散剤が酸性基を有することにより、可視領域の光の透過が無く、優れた遮蔽性を示すことができる。
【0051】
分散剤の含有量は、光学機能層中(黒色インキの固形分中)、1~25質量%であることが好ましく、2~20質量%であることがより好ましく、3~15質量%であることが更に好ましい。上記範囲にあることで、バインダー樹脂との相溶性が保て、塗膜の濁りが発生せず塗膜透明性を維持できる。
【0052】
分散剤の重量平均分子量は、10000~100000であることが好ましく、10000~50000であることがより好ましく、10000~30000であることが更に好ましい。上記重量平均分子量が10000以上であると、分散安定性に寄与する立体反発が得られ、顔料の凝集を防ぐことができる。上記重量平均分子量が100000以下であると、溶剤との相溶性を保つことができ、顔料の分散安定性が維持できる。
【0053】
(有機溶剤)
黒色インキは、有機溶剤を含んでもよい。有機溶剤としては、グリコールエーテル系有機溶剤、エステル系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤、芳香族系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、環状ケトン系有機溶剤等を挙げることができ、中でも、印刷適性が良好なことから、環状ケトン系有機溶剤が好ましい。
【0054】
(消泡剤)
黒色インキは、消泡剤を含有することが好ましい。消泡剤の含有量は、黒色インキの総質量に対して、0.1~5質量%であることが好ましく、0.3~4質量%であることがより好ましい。
【0055】
<光学機能層の形成>
本発明の光学機能層は、上記黒色インキを用いて、基材上に、スクリーン印刷、ロールコーター、ディスペンサー塗工、ディップコート、刷毛塗り等の方法で塗工することで形成される。中でも、スクリーン印刷、ディスペンサー塗工、ディップコートのいずれかが好
ましい。印刷機としては、シリンダープレス印刷機や半自動印刷機を使用し、刷版としては、ナイロンやポリエステル等の樹脂素材、ステンレス等の樹脂素材を使用することが好ましい。
【0056】
<基材>
本発明において、光学積層体を形成するために用いられる基材は特に限定されるものではなく、透明の基材が好ましい。例えば、ガラス等の無機基材、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル基材、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニルその他のポリオレフィン基材、ポリアミド等のナイロン基材、ポリメチルメタクリレート等のアクリル基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリカーボネート基材、ポリウレタン基材、エポキシ基材、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィン共重合体(COC)等の環状オレフィン基材等の樹脂基材が挙げられる。これらの積層体であってもよい。また、シリカ、アルミナ、アルミニウム等の無機化合物を当該基材に蒸着した蒸着基材も用いることができ、更に蒸着処理面がポリビニルアルコール等によるコート処理を施されていてもよい。また、コロナ処理やフレーム処理、延伸処理が施されていてもよい。以上のうち、ガラス等の無機材料基材、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル基材、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル基材、ポリカーボネート基材であることが好ましい。
【0057】
<スクリーン印刷>
スクリーン印刷とは、版にポリエステル、ナイロン等の化学繊維やステンレス製のスクリーンを利用し、版上に感光性乳剤を用いてインキが透過する箇所と透過しない箇所をパターニングした後、インキをスキージと呼ばれるヘラ状のゴム板でスクリーンの内面を加圧・移動させることで、インキを基材に転写させる技法である。基材面側に塗布された上記感光性乳剤の膜厚により、印刷されるインキの膜厚を調整することができる。
印刷後は、熱風オーブンを用いて、インキ中の溶剤を揮発させることで、インキを基材に定着させることができる。
【0058】
<光学積層体の製造方法>
本発明の光学積層体は、基材上に、複数種の顔料を含む着色剤、及び、バインダー樹脂を含む黒色インキを塗工して光学機能層を形成する工程を含む製造方法によって製造される。また、前記光学積層体は、波長350nm~750nmにおける平均分光透過率が25%以下であり、波長850nm~2500nmの平均分光透過率が85%以上であり、波長350nm以上460nm未満の最大分光透過率をT1、波長460nm以上570nm未満の最大分光透過率をT2、波長570nm以上750nm以下の最大分光透過率をT3とした場合、下記式(1)及び(2)を満たす、光学積層体の製造方法である。
1≦T1/T2≦10・・・(1)
2≦T3/T2≦20・・・(2)
【0059】
当該黒色インキの製造方法例としては、着色剤、バインダー樹脂、及び、有機溶剤を撹拌機にて均一に撹拌した後、ビーズミルにて分散、フィルターにてろ過する手法が挙げられる。
黒色インキの塗工方法としてはスクリーン印刷、ディスペンサー塗工、ディップコートが好ましく、印刷機としてシリンダープレス印刷機や半自動印刷機、刷版としてナイロンやポリエステル等の樹脂素材、ステンレス等の樹脂素材を使用した印刷条件であることが好ましい。
【0060】
<光学積層体の使用形態>
本発明の光学積層体の用途は光学系機器であれば特に限定されず、自動車の内装部材、家電用部材等が挙げられる。また、スマートフォン等の赤外線センサーに用いられる光学
フィルターとしても好適である。特に、透過視認用の部材に好適に用いることができ、本明細書において透過視認とは、光学積層体に照射された光を、光学積層体を挟んで光源と反対側から視認すること意味する。
【0061】
(光源)
本発明の光学積層体に照射する光源としては、特に限定されないが、白熱電球、有機ELなどのELランプ、発光ダイオード(LED)を用いることが好ましい。
【実施例0062】
以下、実施例として本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。本発明において、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は、「質量%」をそれぞれ表す。
【0063】
<合成例>
(合成例1)[アクリル樹脂1の合成]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、メチルエチルケトン(MEK)300gを入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度でメタクリル酸メチル(MMA)38g、メタクリル酸ブチル(BMA)53g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)16g、スチレン(St)13g、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.8gの混合物を1時間かけて滴下して重合反応を行った。滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、2,2'-アゾビ
スイソブチロニトリル1.2部をイソホロン100gに溶解させたものを添加し、80℃で1時間反応させて、アクリル樹脂1を得た(重量平均分子量40000、酸価0.3mgKOH/g、水酸基価30mgKOH/g)。
【0064】
<黒色インキの作製>
<調整例1>(黒色インキS1)
下記の各色微細化顔料、分散樹脂、イソホロンを均一になるように撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM-250 MKII」)で5時間分散した後、5μmのフィルターでろ過し、混色顔料分散体を得た。
黄色微細化顔料C.I.ピグメントイエロー139
(LIONOGEN YELLOW 1090) 2部
紅色微細化顔料C.I.ピグメントレッド 264
(Cinilex DPP Rubine SR6T) 4部
藍色微細化顔料C.I.ピグメントブルー 15:6
(LIONOGEN BLUE 7703) 4部
分散剤
(日油社製「マリアリムSC-1015F」、くし型構造、重量平均分子量20000)5部
イソホロン 35部
【0065】
上記で得られた混色顔料分散体に、アクリル樹脂1溶液 49部(樹脂/イソホロン=24/25)、消泡剤(ビックケミー・ジャパン社製「BYK-054」)1部を加え、ミキサー回転式撹拌機を用いて均一に混合し、黒色インキS1を調製した。
【0066】
<調整例2~14、比較調整例1~7>(黒色インキS2~S14、T1~T7の調製)
調整例1と同様の方法により、表1、表2に記載の原料、配合比にて、黒色インキをそれぞれ調製した。
【0067】
【表1】
【表2】
【0068】
表1、表2中の略称を以下に示す。また、表中の数値は、特に断りのない限り「部」を表し、空欄は使用していないことを表す。
【0069】
(顔料)
C.I.ピグメントイエロー 139
(トーヨーカラー社製 製品名 LIONOGEN YELLOW 1090)
C.I.ピグメントレッド 264
(キクチカラー社製 製品名 Cinilex DPP Rubine SR6T)
C.I.ピグメントブルー 15:6
(トーヨーカラー社製 製品名 LIONOGEN BLUE 7703)
C.I.ピグメントバイオレット 23
(トーヨーカラー社製 製品名 LIONOGEN VIOLET FG-6240)
C.I.ピグメント グリーン 7
(トーヨーカラー社製 製品名 LIONOGEN GREEN 8944)
C.I.ピグメントブラック 10
(三菱ケミカル社製 製品名 三菱カーボンブラック MA8)
【0070】
(バインダー樹脂)
ポリエステル樹脂:VYLON GK250(東洋紡株式会社製、数平均分子量10000、酸価<2mgKOH/g、水酸基価11mgKOH/g)。
エポキシ樹脂:JER1010(三菱ケミカル株式会社製、数平均分子量5000、酸価<2mgKOH/g)
ウレタン樹脂:ポリライトOD-X-2523(DIC株式会社製、分子量3500、酸価0.5mgKOH/g、水酸基価32mgKOH/g)
【0071】
<実施例1>(光学積層体のSS1の作製)
基材としてMICRO SLIDE GLASS(松浪硝子社製、大型スライドガラスS9213)を使用し、この基材上に上記黒色インキS1をスクリーン刷版(NBCメッシュテック社製、L-SCREEN、250-015/255PW)を用いてパターンをスクリーン印刷することで膜厚7μmの光学機能層を形成し、光学積層体SS1を作製した。
【0072】
<実施例2~14、比較例1~7>(光学積層体SS2~SS14、TT1~TT7の作製)
実施例1で使用した黒色インキS1を、表1、表2に記載した黒色インキに変更した以外は、実施例1と同様の方法によって光学積層体を作製した。
【0073】
<光学積層体の分光透過率>
分光透過率は、島津製作所社製UV3600紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定し、表1及び表2に示した。表中の数値は下記の通りである。
(波長350nm~750nmの平均分光透過率)
3|10%以下
2|10%を超え、25%以下
1|25%を超える
(波長850nm~2500nmの平均分光透過率)
3|90%以上
2|85%以上、90%未満
1|85%未満
(T1/T2の値)
3|1.5≦T1/T2≦5
2|1≦T1/T2<1.5、5<T1/T2≦10
1|T1/T2<1、 10<T1/T2
(T3/T2の値)
3|3≦T3/T2≦10
2|2≦T3/T2<3、 10<T3/T2≦20
1|T3/T2<2、 20<T3/T2
【0074】
<光学積層体の評価>
上記実施例及び比較例で得られた光学積層体について以下の評価を行った。評価結果は表1及び表2に示した。
【0075】
<OD値(光学濃度)>
透過濃度計Gretag Macbeth TD-931を用いて、可視光領域のOD値を測定した。評価基準を下記に示す。尚、OD値が高いほど黒色が濃く、2以上であれば実用レベルである。
3|OD値1.4以上
2|OD値1以上、1.4未満
1|OD値1未満
【0076】
<透過光の色>
積層体に対し白色光、または緑色光を照射し、透過光の色を目視で評価した。評価基準を下記に示す。尚、2以上であれば実用レベルである。
3|照射光と同色(変色しない)
2|照射光とやや異なる色(わずかに変色する)
1|照射光と異なる色(変色する)
【0077】
本発明により、OD値が高い黒色であり、赤外領域の透過性に優れ、照射した光と可視光線領域の透過光とが同色である(白色光照射時の透過光が白色である)光学積層体を提供することが可能となった。
【0078】
波長350nm~750nmの平均分光透過率が25%を超える比較例1では、OD値が低い結果となった。T1/T2及びT3/T2が本発明の範囲外である比較例2~6では、照射した光と可視光線領域の透過光とが同色にはならず視認性が劣る結果となった。カーボンブラックを使用した比較例7では、可視光はほぼ透過せずに透過光の色が確認できず、更に赤外線透過性が劣る結果となった。
図1