(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146773
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ポリエチレンパウダー、成型体及び二次電池用セパレータ
(51)【国際特許分類】
C08F 10/02 20060101AFI20241004BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20241004BHJP
【FI】
C08F10/02
H01M50/417
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026736
(22)【出願日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2023057176
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】四方 和也
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 夏海
(72)【発明者】
【氏名】平見 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】沖津 直哉
(72)【発明者】
【氏名】大久保 智聡
(72)【発明者】
【氏名】堀池 則子
(72)【発明者】
【氏名】水谷 渡
【テーマコード(参考)】
4J100
5H021
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100CA01
4J100DA09
4J100EA09
4J100FA09
4J100FA10
4J100FA22
4J100JA43
5H021BB20
5H021EE04
5H021HH01
5H021HH03
(57)【要約】
【課題】高速成型した場合においても機械的強度と熱収縮率のバランスに優れる成型体を得ることのできる、ポリエチレンパウダー等を提供する。
【解決手段】
ISO1628-3(2010)に準拠して測定された極限粘度IVが、1.5dL/g以上15.0dL/g以下であり、
非晶部厚みが、5.3nm以上12.0nm以下であり、
反射法X線回折法により得られる結晶子サイズが、13.9nm以上18.0nm以下である、ポリエチレンパウダー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ISO1628-3(2010)に準拠して測定された極限粘度IVが、1.5dL/g以上15.0dL/g以下であり、
非晶部厚みが、5.3nm以上12.0nm以下であり、
反射法X線回折法により得られる結晶子サイズが、13.9nm以上18.0nm以下である、ポリエチレンパウダー。
【請求項2】
反射法X線回折法により得られる、単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率が、単斜晶(010)面回折ピーク強度/斜方晶(110)面回折ピーク強度として、1.0以上2.6以下である、請求項1に記載のポリエチレンパウダー。
【請求項3】
Ti含有量が、10ppm以下であり、かつ、Al含有量が、20ppm以下である、請求項1又は2に記載のポリエチレンパウダー。
【請求項4】
篩分法により求められる平均粒子径D50が、80μm以上である、請求項1又は2に記載のポリエチレンパウダー。
【請求項5】
α-オレフィンの含有量が、0.03mol%未満である、請求項1又は2に記載のポリエチレンパウダー。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のポリエチレンパウダーを含む、成型体。
【請求項7】
請求項6に記載の成型体を含む、二次電池用セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンパウダー、成型体及び二次電池用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンパウダーは、シート、フィルム及びその他の形状に成型する等して、様々な用途に使用されており、二次電池のセパレータの原料は、その重要な用途の一つである。セパレータとは、電池内部において正極と負極の直接的な接触による短絡を防ぎ、イオンのみを透過させることを主目的として使用される成型体(典型的には微多孔膜)である。
【0003】
二次電池用セパレータは、上記のとおり、電池の安全性担保に非常に重要な役割を担っており、機械的強度が高いことや熱収縮率が小さいことが求められる。
熱収縮率の観点からは、例えば、特許文献1において、ポリエチレンパウダーの重合に活性点密度を飽和させた触媒を用いることで、熱収縮率の小さい成型体を得られるポリエチレンパウダーが提案されている。
また、機械的強度の観点からは、例えば、特許文献2において、ポリエチレンパウダーの重合に2種類以上の触媒を用い、その活性点密度を変化させて分子の絡み合いの程度を調整することで、高い機械的強度の微多孔膜を得られるポリエチレンパウダーが提案されている。
なお、ポリエチレンは結晶性高分子であり、ポリエチレンの結晶構造はポリエチレンからなる成型体の物性に寄与することが知られている。このような観点からは、例えば、特許文献3において、リチウムイオン二次電池用微多孔膜の機械的強度を向上させるために、超高分子量ポリエチレンパウダーのラメラの厚みを調整する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/241411号
【特許文献2】国際公開第2021/153520号
【特許文献3】特許第6868355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリエチレンパウダーを用いて得られる二次電池用セパレータには、高機械的強度と低熱収縮率の両立が重要である。二次電池用セパレータの機械的強度と熱収縮率は、各々、原料の選定や製膜条件の調整により制御が可能であるが、両者はトレードオフの関係にあり、双方を同時に良好な状態にすることは従来技術において困難である。
例えば、特許文献1に記載のポリエチレンパウダーにより得られる二次電池用セパレータは、熱収縮率が優れているが、機械的強度とのバランスの調整はなされておらず、改善の余地がある。
また、特許文献2に記載のポリエチレンパウダーにより得られる二次電池用セパレータは、機械的強度が優れているが、熱収縮率とのバランスの調整はなされておらず、改善の余地がある。
さらに近年では、二次電池用セパレータの生産効率を上げるため、高速成型の検討が進められている。二次電池用セパレータを高速成型するためには、セパレータの製造工程における延伸工程で延伸速度を高める必要がある。ここで、高い延伸速度はセパレータに高い残留応力を与えるため、セパレータの熱収縮率が悪化する傾向にある。
例えば、特許文献1、2のポリエチレンパウダーでは高速成型した場合の機械的強度と熱収縮率のバランスの調整はなされておらず、改善の余地がある。
また、特許文献3に記載のポリエチレンパウダーは、結晶構造を調整することで、得られる成型体の物性が優れるとされているが、前記ポリエチレンパウダーから得られる微多孔膜の機械的強度と熱収縮率のバランス向上のための調整はなされておらず、また、高速成型した場合の機械的強度と熱収縮率のバランスの調整についても検討されておらず、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高速成型した場合においても機械的強度と熱収縮率のバランスに優れる成型体を得ることのできる、ポリエチレンパウダー等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、ポリエチレンパウダーの極限粘度IV、非晶部厚み及び結晶子サイズを特定の範囲に制御することで、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]
ISO1628-3(2010)に準拠して測定された極限粘度IVが、1.5dL/g以上15.0dL/g以下であり、
非晶部厚みが、5.3nm以上12.0nm以下であり、
反射法X線回折法により得られる結晶子サイズが、13.9nm以上18.0nm以下である、ポリエチレンパウダー。
[2]
反射法X線回折法により得られる、単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率が、単斜晶(010)面回折ピーク強度/斜方晶(110)面回折ピーク強度として、1.0以上2.6以下である、[1]に記載のポリエチレンパウダー。
[3]
Ti含有量が、10ppm以下であり、かつ、Al含有量が、20ppm以下である、[1]又は[2]に記載のポリエチレンパウダー。
[4]
篩分法により求められる平均粒子径D50が、80μm以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のポリエチレンパウダー。
[5]
α-オレフィンの含有量が、0.03mol%未満である、[1]~[4]のいずれかに記載のポリエチレンパウダー。
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載のポリエチレンパウダーを含む、成型体。
[7]
[6]に記載の成型体を含む、二次電池用セパレータ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高速成型においても機械的強度と熱収縮率のバランスに優れる成型体を得ることのできる、ポリエチレンパウダー等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
[ポリエチレンパウダー]
本実施形態のポリエチレンパウダー(以下、単に「パウダー」ともいう。)は、ISO1628-3(2010)に準拠して測定された極限粘度IVが、1.5dL/g以上15.0dL/g以下であり、非晶部厚みが、5.3nm以上12.0nm以下であり、反射法X線回折法により得られる結晶子サイズが、13.9nm以上18.0nm以下である。
本実施形態のポリエチレンパウダーは、上記のように構成されているため、高速成型した場合においても機械的強度と熱収縮率のバランスに優れる成型体を得ることができる。
また、本実施形態のポリエチレンパウダーは、上記のように構成されているため、従来公知の典型的な成型条件においても、機械的強度と熱収縮率のバランスに優れる成型体を得ることができる傾向にある。
【0012】
本実施形態のポリエチレンパウダーの極限粘度IVは、1.5dL/g以上である。極限粘度IVが上記範囲であることにより、成型体の強度がより向上する傾向にある。また、本実施形態のポリエチレンパウダーは、極限粘度IVが15.0dL/g以下である。本実施形態のポリエチレンパウダーは、極限粘度IVが上記範囲であることにより、成型性がより向上する傾向にある。
上記観点から、上記極限粘度IVは、好ましくは2.0dL/g以上である。また、上記観点から、上記極限粘度IVは、好ましくは14.0dL/g以下であり、より好ましくは13.5dL/g以下である。このように、上記極限粘度IVは、好ましくは2.0dL/g以上14.0dL/g以下であり、より好ましくは2.0dL/g以上13.5dL/g以下である。
【0013】
極限粘度IVを上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、エチレンを単独重合する際、又は、エチレンと共重合可能なオレフィンとを共重合する際の反応器の重合温度を変化させることが挙げられる。極限粘度IVは、重合温度を高温にするほど低くなる傾向にあり、重合温度を低温にするほど高くなる傾向にある。また、極限粘度IVを上記範囲にする別の方法としては、特に限定されないが、例えば、エチレンを単独重合する際、又は、エチレンと共重合可能なオレフィンとを共重合する際に使用する助触媒としての有機金属化合物種を変更することが挙げられる。更に、極限粘度IVを上記範囲にする別の方法としては、特に限定されないが、例えば、エチレンを単独重合する際、又は、エチレンと共重合可能なオレフィンとを共重合する際に連鎖移動剤を添加することが挙げられる。連鎖移動剤を添加することにより、同一重合温度でも生成するポリエチレンの極限粘度IVが低くなる傾向にある。連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、水素等が挙げられる。
なお、本実施形態において、極限粘度IVは、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0014】
[非晶部厚みと結晶子サイズ]
本明細書において、非晶部厚みは、ポリエチレンパウダーを反射法X線回折に供して得られた結晶化度と透過法広角X線散乱法により得られた結晶長周期を用いて、以下の式から求められる。
非晶部厚み=(1-結晶化度)×結晶長周期
また、本明細書において、結晶子サイズは、ポリエチレンパウダーを反射法X線回折法に供して得られる(110)面の結晶子サイズを意味する。
【0015】
本実施形態のポリエチレンパウダーの非晶部厚みは、5.3nm以上12.0nm以下である。
本実施形態のポリエチレンパウダーは、非晶部厚みが上記の範囲にあることで、微多孔膜に成型した場合に観測され得るシシ-ケバブ構造におけるシシ部が長くなるためケバブ部が少なくなり、延伸時の延伸負荷が小さくなり、その結果、熱収縮率が良化する傾向にある。さらに、高速成型においても延伸時の延伸負荷が小さいため、その結果、熱収縮率が良化する傾向にある。
上記観点から、上記非晶部厚みは、好ましくは7.0nm以上12.0nm以下であり、より好ましくは9.0nm以上12.0nm以下である。
【0016】
本実施形態のポリエチレンパウダーの結晶子サイズは、13.9nm以上18.0nm以下である。
本実施形態のポリエチレンパウダーは、結晶子サイズが上記の範囲にあることで、微多孔膜の体積当たりのシシ-ケバブ構造の数が少ないため、シシ部の配向度が高くなり、その結果、強度が向上する傾向にある。
上記観点から、上記結晶子サイズは、好ましくは14.5nm以上18.0nm以下であり、より好ましくは15.0nm以上18.0nm以下である。
【0017】
非晶部厚みと結晶子サイズを上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、強く絡み合ったポリエチレン成分を含有させることで、折り畳み構造の発現を抑制することや、ポリエチレンパウダーをアニールし結晶を成長させた後、ポリエチレンパウダーを急冷する方法などが挙げられる。
具体的には、強く絡み合ったポリエチレン成分を含有させるために温度と圧力が高い環境で重合を行い、その後、重合直後のポリエチレンパウダーに対して冷却処理を行う方法がある。ここで強く絡み合ったポリエチレン成分を含有させるための重合温度としては84℃以上が好ましく、86℃以上がさらに好ましい。また、強く絡み合ったポリエチレン成分を含有させるための重合圧力としては0.4MPa以上が好ましく、0.5MPa以上がさらに好ましい。また、冷却処理の条件としては、40℃以下の環境にポリエチレンパウダーを暴露することが好ましく、10℃以下の環境にポリエチレンパウダーを暴露することがさらに好ましい。冷却処理は、ポリエチレンの製造工程において、重合工程の直後に実施されるものであり、例えば脱気工程の温度を調整する方法がある。
また、非晶部厚みをさらに好ましい範囲に制御する方法としては、前記の方法に加え、強く絡み合ったポリエチレン成分を含有させるために重合に際して活性点密度の高い触媒を使う方法がある。活性点密度は触媒を調製する際のチタン化合物の使用量により調整することができ、担体に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.2以上が好ましく、0.3以上がさらに好ましく、0.4以上が特に好ましい。
また、非晶部厚みと結晶子サイズをさらに好ましい範囲に制御する方法としては、ポリエチレンパウダーに対して仕上げ熱処理を行う方法がある。ここで仕上げ熱処理とは、一定の時間高温の環境に晒したのちに、直ちに低温環境に晒す処理をいう。高温環境としては、80℃以上が好ましく、100℃以上がさらに好ましい。高温環境に晒す時間としては、30分以上が好ましく、1時間以上がさらに好ましい。低温環境としては、0℃以下が好ましく、-70℃以下がさらに好ましい。
また、非晶部厚みと結晶子サイズをさらに好ましい範囲に制御する方法としては、活性点密度の高い触媒により重合されたポリエチレンパウダーに対して前記仕上げ熱処理を行う方法がある。
また、非晶部厚みと結晶子サイズをさらに好ましい範囲に制御する方法としては、温度と圧力が高い環境で重合を行い、その後、重合直後のポリエチレンパウダーに対して冷却処理を行うことで得られたポリエチレンパウダーに対して仕上げ熱処理を行う方法がある。
また、非晶部厚みと結晶子サイズをさらに好ましい範囲に制御する方法としては、活性点密度の高い触媒を用いて温度と圧力が高い環境で重合を行い、その後、重合直後のポリエチレンパウダーに対して冷却処理を行うことで得られたポリエチレンパウダーに対して仕上げ熱処理を行う方法がある。
なお、本実施形態において、非晶部厚みと結晶子サイズは、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0018】
[単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率]
本明細書において、ポリエチレンパウダーの単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率とは、反射法X線回折法により得られる回折ピーク強度比率のことをいい、単斜晶(010)面回折ピーク強度/斜方晶(110)面回折ピーク強度として求めることができる。
本実施形態のポリエチレンパウダーの単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率は、1.0以上2.6以下であることが好ましい。
本実施形態のポリエチレンパウダーは、単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率が上記の範囲にあることで、単斜晶より融点の高い斜方晶の割合が多くなり、熱固定温度をより高くすることが可能となり、熱収縮率を低下することができる。
上記観点から、上記比率は、より好ましくは1.0以上2.2以下であり、さらに好ましくは1.0以上1.8以下である。
【0019】
単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率を上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンパウダーに熱をかけ、単斜晶からより安定な斜方晶へ変化させる方法が考えられる。
単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率を上記範囲に制御する方法としては、具体的には、温度と圧力が高い環境で重合を行い、その後、重合直後のポリエチレンパウダーに対して冷却処理を行う方法がある。ここで重合温度としては84℃以上が好ましく、86℃以上がさらに好ましい。また、重合圧力としては0.4MPa以上が好ましく、0.5MPa以上がさらに好ましい。また、冷却処理の条件としては、40℃以下の環境にポリエチレンパウダーを暴露することが好ましく、10℃以下の環境にポリエチレンパウダーを暴露することがさらに好ましい。冷却処理は、ポリエチレンの製造工程において、重合工程の直後に実施されるものであり、例えば脱気工程の温度を調整する方法がある。
また、単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率をさらに好ましい範囲に制御する方法としては、ポリエチレンパウダーに対して仕上げ熱処理を行う方法がある。ここで仕上げ熱処理とは、一定の時間高温の環境に晒したのちに、直ちに低温環境に晒す処理をいう。高温環境としては、80℃以上が好ましく、100℃以上がさらに好ましい。高温環境に晒す時間としては、30分以上が好ましく、1時間以上がさらに好ましい。低温環境としては、0℃以下が好ましく、-70℃以下がさらに好ましい。
また、単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率をさらに好ましい範囲に制御する方法としては、温度と圧力が高い環境で重合を行い、その後、重合直後のポリエチレンパウダーに対して冷却処理を行うことで得られたポリエチレンパウダーに対して仕上げ熱処理を行う方法がある。
なお、本実施形態において、単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率は、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0020】
本実施形態のポリエチレンパウダーは、例えば、極限粘度や分子量分布等が異なる複数のポリエチレンを含む混合物であってもよい。
【0021】
本実施形態のポリエチレンパウダーは、エチレンの単独重合体(以下、単に「単独重合体」ともいう。)を含んでいてもよく、エチレンと共重合可能なオレフィン(以下、「コモノマー」ともいう)とエチレンとの共重合体(以下、単に「共重合体」ともいう。)を含んでいてもよい。共重合体は、3元ランダム共重合体であってもよい。
コモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、炭素数3以上15以下のα-オレフィン、炭素数3以上15以下の環状オレフィン、式CH2=CHR1(ここで、R1は炭素数6~12のアリール基である。)で表される化合物、及び炭素数3以上15以下の直鎖状、分岐状又は環状のジエン等が挙げられる。コモノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、好ましくは炭素数3以上15以下のα-オレフィンである。
上記α-オレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン等が挙げられる。
本実施形態のポリエチレンパウダーは、α-オレフィン含有量が0.03mol%未満であることが好ましい。この場合、本実施形態のポリエチレンパウダーから得られる微多孔膜等の成型体の機械的強度がより向上する傾向にある。なお、本実施形態において、ポリエチレンパウダー中のα-オレフィンを含むコモノマーの含有量が0.03mol%未満である場合、当該ポリエチレンパウダーは、単独重合体で構成されるものと評価することができる。ポリエチレンパウダー中のα-オレフィン含有量は、具体的には、後述する実施例に記載の方法に基づいて測定することができる(α-オレフィン以外のコモノマーの含有量も同様)。
【0022】
本実施形態のポリエチレンパウダーには、必要に応じてポリエチレンパウダーの製造に使用され得る公知の添加剤等が含まれていてもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、中和剤、酸化防止剤、結晶核剤、及び耐光安定剤等が挙げられる。
【0023】
中和剤は、ポリエチレン中に含まれる塩素のキャッチャー、又は成形加工助剤等として使用される。中和剤としては、以下に限定されないが、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属のステアリン酸塩が挙げられる。
本実施形態のポリエチレンパウダーにおける中和剤の含有量は、特に限定されないが、ポリエチレンパウダー全量に対し、好ましくは5,000ppm以下、より好ましくは4,000ppm以下、さらに好ましくは3,000ppm以下である。
本実施形態のポリエチレンパウダーが、例えば、メタロセン触媒を用いてスラリー重合法により得られたエチレン重合体である場合には、触媒構成成分中からハロゲン成分を除外することが可能であるため、かかる場合には、上述のような中和剤は使用されない傾向にあり、したがって本実施形態のポリエチレンパウダーにおける中和剤の含有量は検出限界以下となる傾向にある。
【0024】
酸化防止剤としては、以下に限定されないが、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリスチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
本実施形態のポリエチレンパウダーにおける酸化防止剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは5,000ppm以下、より好ましくは4,000ppm以下、さらに好ましくは3,000ppm以下である。
【0025】
耐光安定剤としては、以下に限定されないが、例えば、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系耐光安定剤;ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)セバケート、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系耐光安定剤等が挙げられる。
本実施形態のポリエチレンパウダーにおける耐光安定剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは5,000ppm以下、より好ましくは4,000ppm以下、さらに好ましくは3,000ppm以下である。
【0026】
結晶核剤としては、以下に限定されないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。また、結晶核剤が配合されたポリエチレン樹脂マスターバッチとしては、例えば「リケマスター」(理研ビタミン社製)等が商業的に入手可能である。
本実施形態のポリエチレンパウダーにおける結晶核剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは5,000ppm以下、より好ましくは4,000ppm以下、さらに好ましくは3,000ppm以下である。
【0027】
本実施形態のポリエチレンパウダー中に含まれ得る添加剤の含有量は、ポリエチレンパウダー中の添加剤を、テトラヒドロフラン(THF)を用いてソックスレー抽出により6時間抽出し、抽出液を液体クロマトグラフィーにより分離、定量することにより求めることができる。
【0028】
[ポリエチレンパウダー中のチタン含有量及びアルミニウム含有量]
本実施形態のポリエチレンパウダーのチタン(Ti)含有量は10ppm以下であり、かつ、アルミニウム(Al)含有量は20ppm以下であることが好ましい。
チタンおよびアルミニウムは、典型的には、重合触媒の残渣に由来するものであり、これが小さいことは、ポリエチレンパウダーの中の重合触媒に由来する金属分の含有量が少ないことを意味するため、本実施形態のポリエチレンパウダーに含まれるチタン含有量及びアルミニウム含有量が上記範囲にある場合、リチウムイオン二次電池用セパレータの原料として好ましく適用できる傾向にある。
上記観点から、上記チタン含有量は、好ましくは5ppm以下であり、より好ましくは2ppm以下である。また、上記観点から、上記アルミニウム含有量は、好ましくは10ppm以下であり、より好ましくは4ppm以下である。
チタン含有量及びアルミニウム含有量の下限は、特に限定されないが、例えば、検出限界値であってもよい。
チタン含有量及びアルミニウム含有量を上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、単位触媒あたりのポリエチレンパウダーの生産性を調整することにより制御することが可能である。
ポリエチレンパウダーの生産性を調整する具体的な方法は、例えば、製造する際の反応器の重合温度を高くすること、重合圧力を高くすること、およびスラリー濃度を高くすることが挙げられる。
使用する触媒としては、特に限定されず、例えば一般的なチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒を使用することが可能であるが、後述する触媒を使用することが好ましい。
上記チタン含有量及びアルミニウム含有量は、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0029】
[平均粒子径D50]
本実施形態のポリエチレンパウダーの平均粒子径D50は80μm以上であることが好ましい。
本実施形態のポリエチレンパウダーは、平均粒子径D50が上記の範囲にあることで、ハンドリング性がより一層優れ、成形工程内のトラブルが低減される傾向にある。
上記観点から、上記平均粒子径D50は、より好ましくは115μm以上であり、さらに好ましくは140μm以上であり、よりさらに好ましくは180μm以上であり、一層好ましくは200μm以上であり、より一層好ましくは205μm以上である。
平均粒子径D50を上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合系内の条件(重合温度、エチレン圧力等)を適宜調整する方法がある。具体的には、重合温度及び/又は重合圧力を高くすることが挙げられる。
また、本実施形態のポリエチレンパウダーの平均粒子径D50は、400μm以下であることが好ましい。
本実施形態のポリエチレンパウダーは、平均粒子径D50が上記の範囲にあることで、溶媒(例えば、流動パラフィン)に対する溶融性がより一層良好となり、分子鎖の分布がより均一で配向性の高いゲルが得られるため、機械的強度の優れたリチウムイオン二次電池用セパレータを製造できる傾向にある。
上記観点から、上記平均粒子径D50は、より好ましくは350μm以下であり、さらに好ましくは300μm以下である。
平均粒子径D50を上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合系内の条件(重合温度、エチレン圧力等)を適宜調整する方法がある。具体的には、重合温度及び/又は重合圧力を低くすることが挙げられる。
なお、本実施形態において、D50は、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
【0030】
[ポリエチレンパウダーの製造方法]
(触媒)
本実施形態に係るポリエチレンパウダーの製造に使用される触媒としては特に限定されないが、例えば、一般的なチーグラー・ナッタ触媒が挙げられる。チーグラー・ナッタ触媒としては、固体触媒[A]及び有機金属化合物成分[B]からなる触媒であって、固体触媒[A]が、下記式1で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(以下、「(A-1)」ともいう。)と、下記式2で表されるチタン化合物(以下、「(A-2)」ともいう。)とを反応させることにより製造されるオレフィン重合用触媒であるものが好ましい。
【0031】
(A-1):(M1)α(Mg)β(R2)a(R3)b(Y1)c ・・・式1
(式中、M1は周期律表第12族、第13族及び第14族からなる群に属する金属原子であり、R2及びR3は炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、Y1はアルコキシ基、シロキシ基、アリロキシ基、アミノ基、アミド基、-N=C-R4、R5、-SR6(ここで、R4、R5及びR6は炭素数1以上20以下の炭化水素基を表す。cが2の場合には、Y1はそれぞれ異なっていてもよい。)、β-ケト酸残基のいずれかであり、α、β、a、b及びcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0≦c、0<a+b、0≦c/(α+β)≦2、nα+2β=a+b+c(ここで、nはM1の原子価を表す。))
【0032】
(A-2):Ti(OR7)dX1
(4-d) ・・・式2
(式中、dは0以上4以下の実数であり、R7は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、X1はハロゲン原子である。)
【0033】
なお、(A-1)と(A-2)との反応に使用する不活性炭化水素溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;及びシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。
【0034】
まず、(A-1)について説明する。(A-1)は、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示され、ジヒドロカルビルマグネシウム化合物及びこの化合物と他の金属化合物との錯体のすべてを包含するものである。記号α、β、a、b、cの関係式nα+2β=a+b+cは、金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
【0035】
式1において、R2及びR3表される炭素数2以上20以下の炭化水素基としては、特に限定されないが、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。このなかでも、好ましくはアルキル基である。α>0の場合、金属原子M1としては、周期律表第12族、第13族及び第14族からなる群に属する金属原子が使用でき、例えば、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられる。このなかでも、アルミニウム、亜鉛が好ましい。
【0036】
金属原子M1に対するマグネシウムの比β/αには特に限定されないが、0.1以上30以下であることが好ましく、0.5以上10以下であることがより好ましい。また、α=0である所定の有機マグネシウム化合物を用いる場合、例えば、R2が1-メチルプロピル等の場合には不活性炭化水素溶媒に可溶であり、このような化合物も本実施形態に好ましい結果を与える。式1において、α=0の場合のR2、R3は次に示す3つの群(1)、群(2)、群(3)のいずれか1つを満たすものであることが推奨される。
群(1):R2、R3の少なくとも一方が炭素原子数4以上6以下である二級又は三級のアルキル基であること、好ましくはR2、R3がともに炭素原子数4以上6以下のアルキル基であり、少なくとも一方が二級又は三級のアルキル基であること。
群(2):R2とR3とが炭素原子数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはR2が炭素原子数2又は3のアルキル基であり、R3が炭素原子数4以上のアルキル基であること。
群(3):R2、R3の少なくとも一方が炭素原子数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR2、R3に含まれる炭素原子数を加算すると12以上になるアルキル基であること。
【0037】
以下これらの基を具体的に示す。群(1)において炭素原子数4以上6以下である二級又は三級のアルキル基としては、具体的には、例えば、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基、2-メチルブチル基、2-エチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、2-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2-メチル-2-エチルプロピル基等が挙げられる。このなかでも1-メチルプロピル基が特に好ましい。
また、群(2)において炭素原子数2又は3のアルキル基としては、具体的には、例えば、エチル、1-メチルエチル、プロピル基等が挙げられる。このなかでもエチル基が特に好ましい。また、炭素原子数4以上のアルキル基としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。このなかでも、ブチル基、ヘキシル基が特に好ましい。
更に、群(3)において炭素原子数6以上の炭化水素基としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、2-ナフチル基等が挙げられる。炭化水素基の中ではアルキル基が好ましく、アルキル基の中でもヘキシル基、オクチル基が特に好ましい。
一般に、アルキル基に含まれる炭素原子数が増えると不活性炭化水素溶媒に溶けやすくなる傾向にあるが、溶液の粘度が高くなる傾向にある。そのため適度な長鎖のアルキル基を用いることが取り扱い上好ましい。なお、上記有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶媒で希釈して使用することができるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のルイス塩基性化合物が含有され、又は残存していても差し支えなく使用できる。
【0038】
次にY1について説明する。式1においてY1はアルコキシ基、シロキシ基、アリロキシ基、アミノ基、アミド基、-N=C-R4,R5、-SR6(ここで、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に炭素数2以上20以下の炭化水素基を表す。)、β-ケト酸残基のいずれかである。
式1においてR4、R5及びR6で表される炭化水素基としては、炭素原子数1以上12以下のアルキル基又はアリール基が好ましく、3以上10以下のアルキル基又はアリール基が特に好ましい。特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、1-メチルエチル基、ブチル基、1-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、2-エチルペンチル基、2-エチルヘキシル基、2-エチル-4-メチルペンチル基、2-プロピルヘプチル基、2-エチル-5-メチルオクチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。このなかでも、ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルペンチル基及び2-エチルヘキシル基が特に好ましい。
また、式1においてY1はアルコキシ基又はシロキシ基であることが好ましい。アルコキシ基としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、1-メチルエトキシ基、ブトキシ基、1-メチルプロポキシ基、1,1-ジメチルエトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、2-メチルペントキシ基、2-エチルブトキシ基、2-エチルペントキシ基、2-エチルヘキソキシ基、2-エチル-4-メチルペントキシ基、2-プロピルヘプトキシ基、2-エチル-5-メチルオクトキシ基、オクトキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基であることが好ましい。このなかでも、ブトキシ基、1-メチルプロポキシ基、2-メチルペントキシ基及び2-エチルヘキソキシ基であることがより好ましい。シロキシ基としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ヒドロジメチルシロキシ基、エチルヒドロメチルシロキシ基、ジエチルヒドロシロキシ基、トリメチルシロキシ基、エチルジメチルシロキシ基、ジエチルメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基等が好ましい。このなかでも、ヒドロジメチルシロキシ基、エチルヒドロメチルシロキシ基、ジエチルヒドロシロキシ基、トリメチルシロキシ基がより好ましい。
【0039】
本実施形態において(A-1)の合成方法には特に制限はなく、例えば、式R2MgX1、及び式R2Mg(R2は前述の意味であり、X1はハロゲン原子である。)からなる群に属する有機マグネシウム化合物と、式M1R3
n及びM1R3
(n-1)H(M1、及びR3は前述の意味であり、nはM1の原子価を表す。)からなる群に属する有機金属化合物とを不活性炭化水素溶媒中、25℃以上150℃以下で反応させ、必要な場合には続いて式Y1-H(Y1は前述の意味である。)で表される化合物を反応させる、又はY1で表される官能基を有する有機マグネシウム化合物及び/又は有機アルミニウム化合物を反応させることにより合成することが可能である。このうち、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物と式Y1-Hで表される化合物とを反応させる場合、反応の順序については特に制限はなく、例えば、有機マグネシウム化合物中に式Y1-Hで表される化合物を加えていく方法、式Y1-Hで表される化合物中に有機マグネシウム化合物を加えていく方法、又は両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。
本実施形態において、(A-1)における全金属原子に対するY1のモル組成比c/(α+β)は0≦c/(α+β)≦2であり、0≦c/(α+β)<1であることが好ましい。全金属原子に対するY1のモル組成比が2以下であることにより、(A-2)に対する(A-1)の反応性が向上する傾向にある。
【0040】
次に、(A-2)について説明する。(A-2)は式2で表されるチタン化合物である。
(A-2):Ti(OR7)dX1
(4-d) ・・・式2
(式中、dは0以上4以下の実数であり、R7は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、X1はハロゲン原子である。)
上記式2において、dは0以上1以下であることが好ましく、0であることが更に好ましい。また、式2においてR7で表される炭化水素基としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、アリール基等の脂肪族炭化水素基;シクロヘキシル基、2-メチルシクロヘキシル基、シクロペンチル基等の脂環式炭化水素基;フェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。このなかでも、脂肪族炭化水素基が好ましい。X1で表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。このなかでも、塩素が好ましい。本実施形態において、(A-2)は四塩化チタンであることが特に好ましい。本実施形態においては上記から選ばれた化合物を2種以上混合して使用することが可能である。
【0041】
次に、(A-1)と(A-2)との反応について説明する。該反応は、不活性炭化水素溶媒中で行われることが好ましく、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒中で行われることが更に好ましい。該反応における(A-1)と(A-2)とのモル比については特に限定されないが、(A-1)に含まれるMg原子に対する(A-2)に含まれるTi原子のモル比(Ti/Mg)が0.1以上10以下であることが好ましく、0.3以上3以下であることがより好ましい。反応温度については、特に限定されないが、-80℃以上150℃以下の範囲で行うことが好ましく、-40℃以上100℃以下の範囲で行うことが更に好ましい。(A-1)と(A-2)の添加順序には特に制限はなく、(A-1)に続いて(A-2)を加える、(A-2)に続いて(A-1)を加える、(A-1)と(A-2)とを同時に添加する、のいずれの方法も可能であるが、(A-1)と(A-2)とを同時に添加する方法が好ましい。本実施形態においては、上記反応により得られた固体触媒[A]は、不活性炭化水素溶媒を用いたスラリー溶液として使用される。
【0042】
本実施形態において使用されるチーグラー・ナッタ触媒の他の例としては、固体触媒[C]及び有機金属化合物成分[B]からなり、固体触媒[C]が、式3で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(以下、「(C-1)」ともいう。)と式4で表される塩素化剤(以下、「(C-2)」ともいう。)との反応により調製された担体(以下、「(C-3)」ともいう。)に、式5で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(以下、「(C-4)」ともいう。)と式6で表されるチタン化合物(以下、「(C-5)」ともいう。)を担持することにより製造されるオレフィン重合用触媒が好ましい。
【0043】
(C-1):(M2)γ(Mg)δ(R8)e(R9)f(OR10)g ・・・式3
(式中、M2は周期律表第12族、第13族及び第14族からなる群に属する金属原子であり、R8、R9及びR10はそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、γ、δ、e、f及びgは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<δ、0≦e、0≦f、0≦g、0<e+f、0≦g/(γ+δ)≦2、kγ+2δ=e+f+g(ここで、kはM2の原子価を表す。))
【0044】
(C-2):HhSiCliR11
(4-(h+i)) ・・・式4
(式中、R11は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、hとiは次の関係を満たす実数である。0<h、0<i、0<h+i≦4)
【0045】
(C-4):(M1)α(Mg)β(R2)a(R3)bY1
c ・・・式5
(式中、M1は周期律表第12族、第13族及び第14族からなる群に属する金属原子であり、R2及びR3は炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、Y1はアルコキシ、シロキシ、アリロキシ、アミノ、アミド、-N=C-R4,R5、-SR6(ここで、R4、R5及びR6は炭素数1以上20以下の炭化水素基を表す。cが2の場合には、Y1はそれぞれ異なっていてもよい。)、β-ケト酸残基のいずれかであり、α、β、a、b及びcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0≦c、0<a+b、0≦c/(α+β)≦2、nα+2β=a+b+c(ここで、nはM1の原子価を表す。))
【0046】
(C-5):Ti(OR7)dX1
(4-d) ・・・式6
(式中、dは0以上4以下の実数であり、R7は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、X1はハロゲン原子である。)
【0047】
まず、(C-1)について説明する。(C-1)は、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、ジヒドロカルビルマグネシウム化合物及びこの化合物と他の金属化合物との錯体のすべてを包含するものである。式3の記号γ、δ、e、f及びgの関係式kγ+2δ=e+f+gは金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
上記式中、R8ないしR9で表される炭化水素基は、特に限定されないが、具体的には、それぞれアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。このなかでも、好ましくはR8及びR9は、それぞれアルキル基である。α>0の場合、金属原子M2としては、周期律表第12族、第13族及び第14族からなる群に属する金属原子が使用でき、例えば、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられる。このなかでも、アルミニウム、亜鉛が特に好ましい。
金属原子M2に対するマグネシウムの比δ/γには特に限定されないが、0.1以上30以下であることが好ましく、0.5以上10以下であることが更に好ましい。また、γ=0である所定の有機マグネシウム化合物を用いる場合、例えば、R8が1-メチルプロピル等の場合には不活性炭化水素溶媒に可溶であり、このような化合物も本実施形態に好ましい結果を与える。式3において、γ=0の場合のR8、R9は次に示す3つの群(1)、群(2)、群(3)のいずれか1つであることが推奨される。
群(1):R8、R9の少なくとも一方が炭素数4以上6以下である二級又は三級のアルキル基であること、好ましくはR8、R9がともに炭素数4以上6以下であり、少なくとも一方が二級又は三級のアルキル基であること。
群(2):R8とR9とが炭素数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはR8が炭素数2又は3のアルキル基であり、R9が炭素数4以上のアルキル基であること。
群(3):R8、R9の少なくとも一方が炭素数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR8、R9に含まれる炭素数の和が12以上になるアルキル基であること。
【0048】
以下、これらの基を具体的に示す。群(1)において炭素数4以上6以下である二級又は三級のアルキル基としては、具体的には、例えば、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基、2-メチルブチル基、2-エチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、2-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2-メチル-2-エチルプロピル基等が用いられる。このなかでも、1-メチルプロピル基が特に好ましい。
また、群(2)において炭素数2又は3のアルキル基としては、例えば、エチル、1-メチルエチル、プロピル基等が挙げられる。このなかでも、エチル基が特に好ましい。また炭素数4以上のアルキル基としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。このなかでも、ブチル、ヘキシル基が特に好ましい。
更に、群(3)において炭素数6以上の炭化水素基としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、2-ナフチル基等が挙げられる。炭化水素基の中ではアルキル基が好ましく、アルキル基の中でもヘキシル基、オクチル基が特に好ましい。
一般に、アルキル基に含まれる炭素原子数が増えると不活性炭化水素溶媒に溶けやすくなる傾向にあり、溶液の粘度が高くなる傾向にある。そのため、適度な長鎖のアルキル基を用いることが取り扱い上好ましい。なお、上記有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶液として使用されるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のルイス塩基性化合物が含有され、或いは残存していても差し支えなく使用できる。
【0049】
次にアルコキシ基(OR10)について説明する。R10で表される炭化水素基としては、炭素原子数1以上12以下のアルキル基又はアリール基が好ましく、3以上10以下のアルキル基又はアリール基が特に好ましい。R10としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、1-メチルエチル基、ブチル基、1-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、2-エチルペンチル基、2-エチルヘキシル基、2-エチル-4-メチルペンチル基、2-プロピルヘプチル基、2-エチル-5-メチルオクチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。このなかでも、ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルペンチル基及び2-エチルヘキシル基が特に好ましい。
【0050】
本実施形態においては、(C-1)の合成方法には特に限定しないが、式R8MgX1及び式R8Mg(R8は前述の意味であり、X1はハロゲン原子である。)からなる群に属する有機マグネシウム化合物と、式M2R9
k及び式M2R9
(k-1)H(M2、R9及びkは前述の意味)からなる群に属する有機金属化合物とを不活性炭化水素溶媒中、25℃以上150℃以下の温度で反応させ、必要な場合には続いてR9(R9は前述の意味である。)で表される炭化水素基を有するアルコール又は不活性炭化水素溶媒に可溶なR9で表される炭化水素基を有するアルコキシマグネシウム化合物、及び/又はアルコキシアルミニウム化合物と反応させる方法が好ましい。
このうち、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとを反応させる場合、反応の順序については特に制限はなく、有機マグネシウム化合物中にアルコールを加えていく方法、アルコール中に有機マグネシウム化合物を加えていく方法、又は両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。本実施形態において不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとの反応比率については特に限定されないが、反応の結果、得られるアルコキシ基含有有機マグネシウム化合物における、全金属原子に対するアルコキシ基のモル組成比g/(γ+δ)は0≦g/(γ+δ)≦2であり、0≦g/(γ+δ)<1であることが好ましい。
【0051】
次に、(C-2)について説明する。(C-2)は式4で表される、少なくとも一つはSi-H結合を有する塩化珪素化合物である。
(C-2):HhSiCliR11
(4-(h+i)) ・・・式4
(式中、R11は炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、hとiは次の関係を満たす実数である。0<h、0<i、0<h+i≦4)
【0052】
式4においてR11で表される炭化水素基は、特に限定されないが、具体的には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、1-メチルエチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。このなかでも、炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、1-メチルエチル基等の炭素数1以上3以下のアルキル基が更に好ましい。また、h及びiはh+i≦4の関係を満たす0より大きな数であり、iが2以上3以下であることが好ましい。
これらの化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、HSiCl3、HSiCl2CH3、HSiCl2C2H5、HSiCl2(C3H7)、HSiCl2(2-C3H7)、HSiCl2(C4H9)、HSiCl2(C6H5)、HSiCl2(4-Cl-C6H4)、HSiCl2(CH=CH2)、HSiCl2(CH2C6H5)、HSiCl2(1-C10H7)、HSiCl2(CH2CH=CH2)、H2SiCl(CH3)、H2SiCl(C2H5)、HSiCl(CH3)2、HSiCl(C2H5)2、HSiCl(CH3)(2-C3H7)、HSiCl(CH3)(C6H5)、HSiCl(C6H5)2等が挙げられる。これらの化合物又はこれらの化合物から選ばれた2種類以上の混合物からなる塩化珪素化合物が使用される。この中でも、HSiCl3、HSiCl2CH3、HSiCl(CH3)2、HSiCl2(C3H7)が好ましく、HSiCl3、HSiCl2CH3がより好ましい。
【0053】
次に(C-1)と(C-2)との反応について説明する。反応に際しては(C-2)を予め、不活性炭化水素溶媒、1,2-ジクロルエタン、o-ジクロルベンゼン、ジクロルメタン等の塩素化炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系媒体;又はこれらの混合媒体、を用いて希釈した後に利用することが好ましい。このなかでも、触媒の性能上、不活性炭化水素溶媒がより好ましい。(C-1)と(C-2)との反応比率には特に限定されないが、(C-1)に含まれるマグネシウム原子1molに対する(C-2)に含まれる珪素原子が0.01mol以上100mol以下であることが好ましく、0.1mol以上10mol以下であることが更に好ましい。
【0054】
(C-1)と(C-2)との反応方法については特に制限はなく、(C-1)と(C-2)とを同時に反応器に導入しつつ反応させる同時添加の方法、(C-2)を事前に反応器に仕込んだ後に(C-1)を反応器に導入させる方法、又は(C-1)を事前に反応器に仕込んだ後に(C-2)を反応器に導入させる方法のいずれの方法も使用することができる。このなかでも、(C-2)を事前に反応器に仕込んだ後に(C-1)を反応器に導入させる方法が好ましい。上記反応により得られる担体(C-3)は、ろ過又はデカンテーション法により分離した後、不活性炭化水素溶媒を用いて充分に洗浄し、未反応物又は副生成物等を除去することが好ましい。
【0055】
(C-1)と(C-2)との反応温度については特に限定されないが、25℃以上150℃以下であることが好ましく、30℃以上120℃以下であることがより好ましく、40℃以上100℃以下であることが更に好ましい。(C-1)と(C-2)とを同時に反応器に導入しつつ反応させる同時添加の方法においては、あらかじめ反応器の温度を所定温度に調節し、同時添加を行いながら反応器内の温度を所定温度に調節することにより、反応温度を所定温度に調節することが好ましい。(C-2)を事前に反応器に仕込んだ後に(C-1)を反応器に導入させる方法においては、該塩化珪素化合物を仕込んだ反応器の温度を所定温度に調節し、該有機マグネシウム化合物を反応器に導入しながら反応器内の温度を所定温度に調節することにより、反応温度を所定温度に調節することが好ましい。(C-1)を事前に反応器に仕込んだ後に(C-2)を反応器に導入させる方法においては、(C-1)を仕込んだ反応器の温度を所定温度に調節し、(C-2)を反応器に導入しながら反応器内の温度を所定温度に調節することにより、反応温度を所定温度に調節することが好ましい。
【0056】
次に、有機マグネシウム化合物(C-4)について説明する。(C-4)としては、前述の式5(C-4)で表されるものが好ましい。
【0057】
(C-4):(M1)α(Mg)β(R2)a(R3)bY1
c ・・・式5
(式中、M1は周期律表第12族、第13族及び第14族からなる群に属する金属原子であり、R2及びR3は炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、Y1はアルコキシ、シロキシ、アリロキシ、アミノ、アミド、-N=C-R4,R5、-SR6(ここで、R4、R5及びR6は炭素数1以上20以下の炭化水素基を表す。cが2の場合には、Y1はそれぞれ異なっていてもよい。)、β-ケト酸残基のいずれかであり、α、β、a、b及びcは次の関係を満たす実数である。0≦α、0<β、0≦a、0≦b、0<a+b、0≦c/(α+β)≦2、nα+2β=a+b+c(ここで、nはM1の原子価を表す。))
【0058】
(C-4)の使用量は、(C-5)に含まれるチタン原子に対する(C-4)に含まれるマグネシウム原子のモル比で0.1以上10以下であることが好ましく、0.5以上5以下であることがより好ましい。
(C-4)と(C-5)との反応の温度については特に限定されないが、-80℃以上150℃以下であることが好ましく、-40℃以上100℃以下の範囲であることがより好ましい。
(C-4)の使用時の濃度については特に限定されないが、(C-4)に含まれるチタン原子基準で0.1mol/L以上2mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上1.5mol/L以下であることがより好ましい。なお、(C-4)の希釈には不活性炭化水素溶媒を用いることが好ましい。
(C-3)に対する(C-4)と(C-5)の添加順序には特に制限はなく、(C-4)に続いて(C-5)を加える、(C-5)に続いて(C-4)を加える、(C-4)と(C-5)とを同時に添加する、のいずれの方法も可能である。このなかでも、(C-4)と(C-5)とを同時に添加する方法が好ましい。(C-4)と(C-5)との反応は不活性炭化水素溶媒中で行われるが、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒を用いることが好ましい。かくして得られた触媒は、不活性炭化水素溶媒を用いたスラリー溶液として使用される。
【0059】
次に(C-5)について説明する。本実施形態において、(C-5)は前述の式6で表されるチタン化合物である。
(C-5):Ti(OR7)dX1
(4-d) ・・・式6
(式中、dは0以上4以下の実数であり、R7は炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、X1はハロゲン原子である。)
【0060】
式6においてR7で表される炭化水素基としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、アリール基等の脂肪族炭化水素基;シクロヘキシル基、2-メチルシクロヘキシル基、シクロペンチル基等の脂環式炭化水素基;フェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。このなかでも、脂肪族炭化水素基が好ましい。X1で表されるハロゲン原子としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。このなかでも、塩素が好ましい。上記から選ばれた(C-5)を、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して使用することが可能である。
(C-5)の使用量としては特に限定されないが、担体(C-3)に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.2以上20以下が好ましく、0.3以上10以下がさらに好ましく、0.4以上5以下が特に好ましい。
(C-5)の反応温度については、特に限定されないが、-80℃以上150℃以下であることが好ましく、-40℃以上100℃以下の範囲であることが更に好ましい。
本実施形態においては、(C-3)に対する(C-5)の担持方法については特に限定されず、(C-3)に対して過剰な(C-5)を反応させる方法や、第三成分を使用することにより(C-5)を効率的に担持する方法を用いてもよいが、(C-5)と有機マグネシウム化合物(C-4)との反応により担持する方法が好ましい。
【0061】
次に、本実施形態に用いる有機金属化合物成分[B]について説明する。本実施形態に用いる固体触媒[A]又は固体触媒[C]は、有機金属化合物成分[B]と組み合わせることにより、高活性な重合用触媒となる。有機金属化合物成分[B]は「助触媒」と呼ばれることもある。有機金属化合物成分[B]としては、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族からなる群に属する金属を含有する化合物であることが好ましく、特に有機アルミニウム化合物及び/又は有機マグネシウム化合物が好ましい。
有機アルミニウム化合物としては、下記式7で表される化合物を単独又は混合して使用することが好ましい。
【0062】
AlR12
jZ1
(3-j) ・・・式7
(式中、R12は炭素数1以上20以下の炭化水素基、Z1は水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ、アリロキシ、シロキシ基からなる群に属する基であり、jは2以上3以下の数である。)
【0063】
上記の式7において、R12で表される炭素数1以上20以下の炭化水素基は、特に限定されないが、具体的には、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素を包含するものであり、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリ(2-メチルプロピル)アルミニウム(又は、トリイソブチルアルミニウム)、トリペンチルアルミニウム、トリ(3-メチルブチル)アルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ビス(2-メチルプロピル)アルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド等のハロゲン化アルミニウム化合物、ジエチルアルミニウムエトキシド、ビス(2-メチルプロピル)アルミニウムブトキシド等のアルコキシアルミニウム化合物、ジメチルヒドロシロキシアルミニウムジメチル、エチルメチルヒドロシロキシアルミニウムジエチル、エチルジメチルシロキシアルミニウムジエチル等のシロキシアルミニウム化合物及びこれらの混合物が好ましい。このなかでも、トリアルキルアルミニウム化合物が特に好ましい。
【0064】
有機マグネシウム化合物としては、前述の式3で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物が好ましい。
【0065】
(M2)γ(Mg)δ(R8)e(R9)f(OR10)g ・・・式3
(式中、M2は周期律表第12族、第13族及び第14族からなる群に属する金属原子であり、R8、R9及びR10はそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、γ、δ、e、f及びgは次の関係を満たす実数である。0≦γ、0<δ、0≦e、0≦f、0≦g、0<e+f、0≦g/(γ+δ)≦2、kγ+2δ=e+f+g(ここで、kはM2の原子価を表す。))
【0066】
この有機マグネシウム化合物は、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、ジアルキルマグネシウム化合物及びこの化合物と他の金属化合物との錯体の全てを包含するものである。γ、δ、e、f、g、M2、R8、R9、OR10についてはすでに述べたとおりであるが、この有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶媒に対する溶解性が高いほうが好ましいため、δ/γは0.5以上10以下の範囲にあることが好ましく、またM2がアルミニウムである化合物が更に好ましい。
なお、固体触媒[A]又は固体触媒[C]及び有機金属化合物成分[B]の組み合わせ比率は特に限定されないが、固体触媒[A]又は固体触媒[C]1gに対し有機金属化合物成分[B]は1mmol以上3,000mmol以下であることが好ましい。
【0067】
(重合条件)
本実施形態のポリエチレンパウダーを製造する際の重合方法としては、以下に限定されないが、例えば、スラリー重合法、気相重合法、溶液重合法等が挙げられる。これらの中でも、重合熱を効率的に除熱できるスラリー重合法が好ましい。
スラリー重合法においては、媒体として不活性炭化水素媒体を用いることができ、さらにオレフィン自身を媒体として用いることもできる。前記不活性炭化水素媒体としては、以下に限定されないが、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチルクロライド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;及び、これらの混合物等を挙げることができる。
【0068】
本実施形態のポリエチレンパウダーの製造方法における重合温度は、80℃以上であることが好ましく、より好ましくは84℃以上である。重合温度が80℃以上であることにより、工業的により効率的な製造ができる傾向にある。さらに重合温度が84℃以上であることにより、強く絡み合ったポリエチレン成分を含有し、非晶部厚み及び結晶子サイズが大きく、かつ単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率が小さくなる傾向にある。
また、上記重合温度は、100℃以下であることが好ましい。重合温度が100℃以下であることにより、連続的により安定した運転ができる傾向にある。
また、本実施形態のポリエチレンパウダーの極限粘度IVの制御因子の1つとして、重合温度を考慮することもできる。すなわち、本実施形態のポリエチレンパウダーの極限粘度IVは、重合温度を高温にするほど低くなる傾向にあり、重合温度を低温にするほど高くなる傾向にある。
【0069】
また、本実施形態のポリエチレンパウダーの製造方法における重合圧力は、0.3MPa以上、好ましくは0.4MPa以上である。重合圧力が0.3MPa以上であることにより、工業的により効率的な製造ができる傾向にある。さらに重合圧力が0.4MPa以上であることにより、強く絡み合ったポリエチレン成分を含有し、非晶部厚み及び結晶子サイズが大きく、かつ単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率が小さくなる傾向にある。
また、上記重合圧力は、1.5MPa以下であることが好ましい。重合圧力が1.5MPa以下であることにより、触媒導入時の急重合反応による部分的な発熱を抑制することができ、ポリエチレンを安定的に生産できる傾向にある。
【0070】
本実施形態のポリエチレンパウダーの製造方法における重合反応は、回分式(バッチ式)、半連続式、連続式のいずれの方法において行なうことができる。
また、重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行なうことも可能である。
なお、本実施形態では、上記のような各成分以外にもポリエチレンの製造(重合)に有用な他の公知の成分(前述した添加剤等)を用いることができる。
【0071】
(冷却処理)
本実施形態のポリエチレンパウダーは重合工程の直後に冷却処理をすることで非晶部厚みを制御することができる。ここで冷却処理とは、一定の時間低温の環境に晒す処理をいう。低温環境としては、40℃以下が好ましく、10℃以下がさらに好ましい。低温環境に晒す時間としては、30分以上が好ましく、1時間以上がさらに好ましい。
冷却処理は、ポリエチレンパウダーの工業的な生産プロセスにおいては、重合工程の次に実施される脱気処理工程において実施されることが好ましい。
具体的な冷却処理の方法としては、この限りではないが、例えば、重合直後のポリエチレンパウダーを、重合溶媒であるヘキサンと共に10℃に調整した脱気槽に導き、30分間保持する方法がある。
前記冷却処理をすることで非晶部厚みが制御される理由としては、重合工程により高温環境下に晒されたポリエチレンパウダーを急冷することで、非晶部厚みが大きくなるためと考えられる。
【0072】
(仕上げ熱処理)
本実施形態のポリエチレンパウダーは仕上げ熱処理をすることで非晶部厚みと結晶子サイズを制御することが出来る。ここで仕上げ熱処理とは、一定の時間高温の環境に晒したのちに、直ちに低温環境に晒す処理をいう。高温環境としては、80℃以上が好ましく、100℃以上がさらに好ましい。高温環境に晒す時間としては、30分以上が好ましく、1時間以上がさらに好ましい。低温環境としては、0℃以下が好ましく、-70℃以下がさらに好ましい。低温環境に晒す時間としては、30分以上が好ましく、1時間以上がさらに好ましい。
仕上げ熱処理は、ポリエチレンパウダーの工業的な生産プロセスにおいては、乾燥工程よりも後、かつ包装工程よりも前に実施されることが好ましい。
具体的な仕上げ熱処理の方法としては、この限りではないが、例えば、ポリエチレンパウダーをオーブンで100℃に30分間加熱し、直後にポリエチレンパウダーを、ドライアイス-エタノール浴に浸漬させることで-70℃以下の温度に30分間晒す方法がある。
前記仕上げ熱処理をすることで非晶部厚みと結晶子サイズが制御される理由としては、ポリエチレンの融点以下でアニールすることでポリエチレンパウダーの結晶が成長し、アニールしたポリエチレンパウダーを急冷することで非晶部厚みが大きくなるためと考えられる。
【0073】
[成型体]
本実施形態の成型体は、本実施形態のポリエチレンパウダーを含む。ここで、「本実施形態のポリエチレンパウダーを含む」とは、「本実施形態のポリエチレンパウダーを成型して得られる」と換言することができる。本実施形態の成型体としては、本実施形態のポリエチレンパウダーを含む限り特に限定されないが、例えば、シート、フィルム、ペレット及びその他の形状を有するもの等が挙げられる。本実施形態の成型体としては、微多孔膜やそれを熱固定した熱固定膜等が挙げられ、これらは二次電池用セパレータとして好ましく適用することができる。
なお、本実施形態の成型体は、本実施形態のポリエチレンパウダーを単独で成型加工に供して得られるものでもよく、本実施形態のポリエチレンパウダーに本実施形態のポリエチレンパウダーとは異なる成分を組み合わせた上で成型加工に供して得られるものであってもよい。
【0074】
[二次電池用セパレータ]
本実施形態の二次電池用セパレータは、本実施形態の成型体を含む。本実施形態の成型体が、微多孔膜やそれを熱固定した熱固定膜である場合、本実施形態の二次電池用セパレータにおけるセパレータ基材として好ましく適用することができる。そのようなセパレータ基材を単独で本実施形態の二次電池用セパレータとすることもできるし、当該セパレータ基材上に塗工層を形成したものを本実施形態の二次電池用セパレータとすることもできる。本実施形態における二次電池としては、特に限定されないが、例えば、リチウムイオン二次電池等が挙げられる。
【実施例0075】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0076】
〔測定方法及び条件〕
実施例及び比較例のポリエチレンパウダーの物性を下記の方法で測定した。
【0077】
(1)極限粘度IV
実施例及び比較例で得られたポリエチレンパウダーの極限粘度IVは、ISO1628-3(2010)に準拠し測定した。
溶媒としては、真空ポンプで脱気し窒素で置換した20mLのデカヒドロナフタレン(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールを1g/L加えたもの)を使用した。
粘度管としては、キャノン-フェンスケ型粘度計(柴田科学器械工業社製:製品番号-100)を用いた。
【0078】
(2)結晶構造解析
ポリエチレンパウダーの結晶化度、結晶子サイズ((110)面結晶子サイズ)、及び単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率は、反射法X線回折法により得られる結果から算出した。また、非晶部厚みを算出するために使用する結晶長周期は、透過法広角X線散乱法により得られた結果を解析することで得た。
【0079】
(反射法X線回折測定)
リガク社製X線回折装置Ultima-IVを用いてXRD測定を行った。Cu-Kα線を試料に入射し、リガク社製検出器D/tex Ultraにより回折光を検出した。試料-検出器間距離285mm、励起電圧40kV及び電流40mAの条件下で測定を行った。光学系としては集中光学系を採用し、DS=1/2°、SS=解放及び縦スリット=10mmというスリット条件下で測定を行った。なお、測定時には1s-1で試料を回転させた。
【0080】
(透過法X線散乱測定)
リガク社製NANOPIXを用い、透過法の小角X線散乱測定を行った。前処理として、粒子表面由来の散乱を低減するため、試料に対してプロピレングリコールを含侵したものに対して測定を行った。Cu-Kα線を試料に照射し、半導体検出器Hypix-6000により散乱を検出した。試料-検出器間距離は1312mm、出力は40kV、30mAの条件で測定を行った。光学系はポイントフォーカスを採用し、スリット径は1st slit:φ=0.55mm、2nd slit:open、guard slit:φ=0.35mmの条件で行った。
【0081】
(結晶回折ピーク及び非晶回折ピークのピーク分離方法)
得られたXRDプロフィールの2θ=9.7°から2θ=29.0°までの範囲を直線でベースラインを引き、斜方晶(110)面回折ピークと斜方晶(200)面回折ピークと単斜晶(010)面回折ピークと非晶ピークの4つに分離した。(110)面回折ピークと(200)面回折ピークはVoight関数で近似し、(010)面回折ピークと非晶ピークはgauss関数で近似した。なお、フィッティングは以下の手順で実施した。まず、非晶ピークのピーク位置を、2θ=19.6°、半値全幅を6.3°で固定し、単斜晶(010)面回折ピークを含めず、斜方晶由来の回折ピークのピーク位置と半値全幅を特に固定せずピーク分離を行った。その後、非晶ピークの強度を固定した状態で、単斜晶(010)面回折ピークのピーク位置を2θ=19.4°で固定し、ピーク分離を行った。
【0082】
(単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率)
ピーク分離により算出された、斜方晶(110)面回折ピークの強度および、単斜晶(010)面回折ピークの強度から以下の式により、単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率を求めた。
単斜晶(010面)と斜方晶(110面)の比率=単斜晶(010)面回折ピーク強度/斜方晶(110)面回折ピーク強度
【0083】
(結晶子サイズ、結晶化度)
ピーク分離により算出されたポリエチレンの斜方晶(110)面回折ピークの半値全幅より、シェラーの式(下式)に従って、結晶子サイズ((110)面結晶子サイズ)を算出した。また、結晶化度は、分離した斜方晶由来の結晶ピークと非晶ピークの和を、斜方晶由来の結晶ピークの面積を割算したパーセント値として得た。
D(110)=Kλ/(βcosθ)
D(110):結晶子サイズ(nm)
K:0.9 (定数)
λ:X線の波長(nm)
β:(β1
2-β2
2)0.5
β1:ピーク分離の結果算出された(hkl)ピークの半値全幅(rad)
β2:入射ビームの広がりの半値全幅(rad)
θ:ブラッグ角
【0084】
(非晶部厚み)
HyPix-6000から得られたX線散乱パターンに対して、円環平均によりSAXSプロフィールI(q)を得た。得られた1次元プロフィールI(q)のLinear-Linearプロットにおいて0.1nm-1<q<0.6nm-1範囲で直線のベースラインを引き、Gauss関数でフィッティングを行った。最大強度となっている位置を結晶長周期由来のピーク位置qmとして以下の式から結晶長周期を計算した。
d=2π/qm
d(nm):結晶長周期
qm(mm-1):SAXSプロフィール中のラメラ由来のピーク位置
【0085】
反射法X線回折により得られた結晶化度と透過法広角X線散乱法により得られた結晶長周期を用いて、以下の式から非晶部厚みを算出した。
非晶部厚み=(1-結晶化度)×結晶長周期
【0086】
(3)Ti含有量及びAl含有量
実施例及び比較例で得られたポリエチレンパウダーのTi、Al含有量は、JIS K 0133に準拠して、高周波プラズマ質量分析により評価した。試料の調製は、マイクロウェーブ分解装置(型式ETHOS TC、マイルストーンゼネラル社製)を用いて硝酸で加圧分解することで実施した。調製した試料について、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析装置、型式Xシリーズ X7、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて内標準法によりチタン(Ti)の元素濃度及びアルミニウム(Al)の元素濃度を測定し、それぞれ、Ti含有量及びAl含有量とした。
【0087】
(4)平均粒子径D50
ポリエチレンパウダーをJIS Z8801規格に準拠したふるいで分級した。ふるいの目開きは710μm、500μm、425μm、355μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、及び53μmのものを使用した。各分画毎に回収されたパウダーの質量を測定した。分級前のパウダー合計質量に対する各分画の分率(質量%)から積算篩下割合(質量%)を算出した。積算篩下割合が50%となる粒子径を平均粒子径D50とした。
【0088】
(5)α-オレフィン含有量
ポリエチレンパウダー中のα-オレフィン含有量の測定は、G.J.RayらのMacromolecules, 10, 773 (1977)に開示された方法に準じて行い、13C-NMRスペクトルにより観測されるメチレン炭素のシグナルを用いて、その面積強度より算出した。
測定装置:日本電子製ECS-500
観測核:13C
観測周波数:100.53MHz
パルス幅:45°(7.5μsec)
パルスプログラム:single pulse dec
PD:5s
測定温度:130℃
積算回数:30,000回以上
基準:PE(-eee-)シグナルであり29.9ppm
溶媒:オルトジクロロベンゼン-d4
試料濃度:5~10wt%
溶解温度:130~140℃
得られたα-オレフィン含有量から、以下の評価基準により、ポリエチレンパウダーが単独重合体に該当する又は共重合体(α-オレフィン共重合体)に該当するものと評価した。なお、α-オレフィン以外に、エチレンと共重合可能なオレフィンの存在は、いずれの例においても確認されなかった。
(評価基準)
単独重合体:α-オレフィン含有量が0.03mol%未満
共重合体:α-オレフィン含有量が0.03mol%以上
【0089】
(6)成型体(熱固定膜)の強度と熱収縮の評価
ポリエチレンパウダーと流動パラフィンとの合計を100質量部としたときに、30質量部のポリエチレンパウダーと70質量部の流動パラフィン(株式会社MORESCO製流動パラフィン(製品名:スモイルP-350P))と、更に1質量部の酸化防止剤(グレートレイクスケミカル日本(株)製テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマート)]メタン(製品名:ANOX20))とを配合し、撹拌することでスラリー状液体を調製した。
【0090】
得られたスラリー状液体を(株)東洋精機製作所製ラボプラストミル(本体型式:4C150)に投入し、200℃一定、10分間、スクリュー回転数50rpmで混練した後、180℃、1MPaで3分間熱プレスし、更に10MPaで2分間熱プレスした後、25℃、10MPaで5分間冷却プレスすることで、ゲルシートを成形した。なお、厚み1.0mmの金枠を使用することで、ゲルシートの厚みを1.0mmに調整した。
【0091】
ゲルシートを成形した24時間後に、ブルックナー社製バッチ式二軸延伸機 KARO Vを用いて以下の条件にてゲルシートを延伸した。
(延伸条件)
ゲルシートサイズ:95mm×95mm
クリップ圧力:4.5MPa
予熱・延伸温度:120℃
ファン風量:50%
予熱時間:45秒
延伸速度:16mm/s
延伸倍率:7倍
延伸方式:同時二軸
【0092】
延伸されたゲルシートをヘキサン中に浸漬して、流動パラフィンを抽出除去し、その後ヘキサンを乾燥除去し微多孔膜を得た。
ブルックナー社製バッチ式二軸延伸機 KARO Vを用いて以下の条件にて微多孔膜に熱固定処理を施し、熱固定膜を得た。なお、熱固定温度は、熱固定膜の気孔率が35%となる温度に設定した。
(熱固定処理条件)
微多孔膜サイズ:280mm×280mm
クリップ圧力:2MPa
ファン風量:50%
予熱時間:0秒
延伸速度:16.2%/s
緩和速度:6.2%/s
TD最大倍率:1.97倍
TD緩和率:0.812倍
【0093】
熱固定膜の気孔率は次のように評価した。10cm×10cm角の試料を熱固定膜から切り取り、その膜厚(cm)と目付(g/cm2)を求め、それらとポリエチレンパウダーの真密度(g/cm3)より、次式を用いて算出した。
気孔率(%)=(1-目付/(膜厚×真密度))×100
ここで、ポリエチレンパウダーの真密度としては0.95g/cm3を適用した。
熱固定膜を得た24時間後に、目付換算突刺強度と熱収縮率の評価を行った。
【0094】
(目付換算突刺強度の評価)
カトーテック(株)製のハンディー圧縮試験器「KES-G5」を用いて、まず、開口部の直径10mmの試料ホルダーで熱固定膜を固定した。次に、固定された熱固定膜の中央部に対して、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度10mm/minで突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重として突刺強度(gf)を得た。得られた突刺強度(gf)を目付(g/m2)で除することで目付換算突刺強度(gf/(g/m2))を算出した。なお、この操作を3枚の熱固定膜で3回実施し、それらの平均値を目付換算突刺強度(gf/(g/m2))とした。
【0095】
(熱収縮率の評価)
熱固定膜から切り取った6cm×6cm角の試料を封筒に入れ、ヤマト科学社製送風低温恒温器DKM600を用いて120℃で1時間加熱した。その後、室温で15分冷却し、試料の辺の長さ(周長)を曲尺で測定し、加熱前の周長からの収縮率を下記式により計算することで、熱収縮率を算出した。なお、この操作を3枚の熱固定膜で3回実施し、3回の平均値を熱収縮率(%)とした。
(熱収縮率)
熱収縮率(%)=(1-L/24)×100
L:加熱後の試料の周長(cm)
得られた目付換算突刺強度と熱収縮率から、以下の評価基準により目付換算突刺強度と熱収縮率の値から性能バランスを評価した。
(評価基準)
◎:熱収縮率≦0.0625×目付換算突刺強度-0.3750
〇:0.0625×目付換算突刺強度-0.3750<熱収縮率≦0.1875×目付換算突刺強度-5.1250
△:0.1875×目付換算突刺強度-5.1250<熱収縮率≦0.2500×目付換算突刺強度-6.5000
×:0.2500×目付換算突刺強度-6.5000<熱収縮率
【0096】
(7)高速延伸をした場合の成型体(熱固定膜)の強度と熱収縮の評価
ゲルシートを延伸する際の延伸速度を32mm/sとした以外は上記(6)と同様の方法で熱固定膜を作成し、目付換算突刺強度と熱収縮率を評価した。
得られた目付換算突刺強度と熱収縮率から、以下の下記の評価基準により目付換算突刺強度と熱収縮率の値から性能バランスを評価した
(評価基準)
◎:熱収縮率≦0.1250×目付換算突刺強度-1.7500
〇:0.1250×目付換算突刺強度-1.7500<熱収縮率≦0.2500×目付換算突刺強度-6.5000
△:0.2500×目付換算突刺強度-6.500<熱収縮率≦0.3125×目付換算突刺強度-6.8750
×:0.3125×目付換算突刺強度-6.8750<熱収縮率
【0097】
〔触媒合成方法〕
〔触媒[A]〕
(1)原料[a-1]の合成
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに1mol/LのMg6(C4H9)12Al(C2H5)3のヘキサン溶液2,000mL(マグネシウムとアルミニウムで2000mmol相当)を仕込み、50℃で撹拌しながら、5.47mol/Lのn-ブタノールヘキサン溶液146mLを3時間かけて滴下し、終了後ラインを300mLのヘキサンで洗浄した。さらに、50℃で2時間かけて撹拌を継続した。反応終了後、常温まで冷却したものを原料[a-1]とした。原料[a-1]はマグネシウムの濃度で0.704mol/Lであった。
【0098】
(2)原料[a-2]の合成
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに1mol/LのMg6(C4H9)12Al(C2H5)3のヘキサン溶液2,000mL(マグネシウムとアルミニウムで2000mmol相当)を仕込み、80℃で撹拌しながら、8.33mol/Lのメチルハイドロジエンポリシロキサン(信越化学工業社製)のヘキサン溶液240mLを圧送し、さらに80℃で2時間かけて撹拌を継続させた。反応終了後、常温まで冷却したものを原料[a-2]とした。原料[a-2]はマグネシウムとアルミニウムの合計濃度で0.786mol/Lであった。
【0099】
(3)[A-1]担体の合成
充分に窒素置換された8Lステンレス製オートクレーブに1mol/Lのヒドロキシトリクロロシランのヘキサン溶液1,000mLを仕込み、65℃で原料[a-1]の有機マグネシウム化合物のヘキサン溶液1340mL(マグネシウム943mmol相当)を3時間かけて滴下し、さらに65℃で1時間撹拌しながら反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、1,800mLのヘキサンで4回洗浄し、[A-1]担体を得た。この担体を分析した結果、固体1g当たりに含まれるマグネシウムは7.5mmolであった。
【0100】
(4)触媒[A]の調製
上記[A-1]担体110gを含有するヘキサンスラリー1,970mLに10℃で撹拌しながら、1mol/Lの四塩化チタンのヘキサン溶液400mLと原料[a-2]131mLを同時に3時間かけて添加した。添加後、10℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、ヘキサンで4回洗浄することにより、未反応原料成分を除去し、固体の触媒[A]を調製した。
【0101】
〔触媒[B]〕
上記[A-1]担体110gを含有するヘキサンスラリー1,970mLに10℃で撹拌しながら、1mol/Lの四塩化チタンのヘキサン溶液103mLと原料[a-2]131mLを同時に3時間かけて添加した。添加後、10℃で1時間反応を継続させた。反応終了後、上澄み液を除去し、ヘキサンで4回洗浄することにより、未反応原料成分を除去し、固体の触媒[B]を調製した。
【0102】
〔触媒[C]〕
固体の触媒[C]として、メタロセン系触媒であって、以下のシリカ担体[C1]、遷移金属化合物成分[D]及び活性化剤[E]から構成されるものを用いた。
【0103】
(シリカ担体[C1]の調製)
シリカ担体[C1]の前駆体として、平均粒径7μm、比表面積660m2/g、細孔容積1.4mL/g、圧縮強度7MPaのシリカを用いた。窒素置換した容量8Lオートクレーブに加熱処理後のシリカ(130g)をヘキサン2500mL中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーに、撹拌下20℃にて、ルイス酸性化合物であるトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液(濃度1M)を195mL加えた。その後、2時間撹拌し、トリエチルアルミニウムとシリカの表面水酸基とを反応させて、トリエチルアルミニウムを吸着させたシリカ担体[C1]のヘキサンスラリー2695mLを調製した。
【0104】
(遷移金属化合物成分[D]の調製)
遷移金属化合物(D-1)として、[(N-t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)ジメチルシラン]チタニウム-1,3-ペンタジエン(以下、「錯体1」と略称する)を使用した。また、有機マグネシウム化合物(D-2)として、組成式Mg(C2H5)(C4H9)(以下、「Mg1」と略称する)を使用した。200mmolの錯体1をイソパラフィン炭化水素(エクソンモービル社製アイソパーE)1000mLに溶解し、これにMg1のヘキサン溶液(濃度1M)を40mL加え、更にヘキサンを加えて錯体1の濃度を0.1Mに調整し、遷移金属化合物成分[D]を得た。
【0105】
(活性化剤[E]の調製)
ボレート化合物(E-1)として、ビス(水素化タロウアルキル)メチルアンモニウム-テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(以下、「ボレート」と略称する)17.8gをトルエン156mLに添加して溶解し、ボレートの100mmol/Lトルエン溶液を得た。このボレートのトルエン溶液に(E-2)としてエトキシジエチルアルミニウムの1mol/Lヘキサン溶液15.6mLを室温で加え、さらにトルエンを加えて溶液中のボレート濃度が70mmol/Lとなるように調整した。その後、室温で1時間撹拌し、ボレートを含む活性化剤[E]を調製した。
【0106】
(触媒[C]の調製)
上記操作により得られたシリカ担体[C1]のスラリー2695mLに、25℃にて400rpmで撹拌しながら、上記操作により得られた活性化剤[E]219mLと、遷移金属化合物成分[D]175mLと、を別のラインから定量ポンプを用い、同時に添加し、添加時間30分で、その後、3時間反応を継続することにより、固体の触媒[C]を調製した。
【0107】
(液体成分[F]の調製)
有機マグネシウム化合物[F1]として、組成式AlMg6(C2H5)3(C4H9)12(以下、「Mg2」と略称する)を使用した。200mLのフラスコに、ヘキサン40mLとMg2を、MgとAlの総量として38.0mmolを撹拌しながら添加し、20℃でメチルヒドロポリシロキサン(25℃における粘度20センチストークス)2.27g(37.8mmol)を含有するヘキサン40mLを撹拌しながら添加し、その後80℃に温度を上げて3時間、撹拌下で反応させることにより、液体成分[F]を調製した。
【0108】
(水添触媒[G]の調製)
窒素置換した撹拌機付の容量2.0LのSUSオートクレーブに、チタノセンジクロライド37.3gをヘキサン1Lで導入した。500rpmで撹拌しながら、トリイソブチルアルミニウムとジイソブチルアルミニウムハイドライドの(9:1)の混合物0.7mol/L、429mLを室温で、1時間かけてポンプで添加した。添加後71mLのヘキサンでラインを洗浄した。1時間撹拌を継続し、濃青色の均一な100mM/Lの水添触媒[G]を得た。
【0109】
[実施例1]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、86℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.476MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.500MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[A]を10.0mg添加した。内温を86℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.500MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を8℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
その後、ポリエチレンパウダーをオーブンで110℃に30分間加熱し、直後にポリエチレンパウダーを、ドライアイス-エタノール浴に浸漬させることで-70℃以下の温度に30分間晒すことで、仕上げ熱処理を行った。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり13,600gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0110】
[実施例2]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、86℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.493MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.500MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[A]を10.0mg添加した。内温を86℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.500MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を8℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
その後、ポリエチレンパウダーをオーブンで110℃に30分間加熱し、直後にポリエチレンパウダーを、ドライアイス-エタノール浴に浸漬させることで-70℃以下の温度に30分間晒すことで、仕上げ熱処理を行った。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり19,400gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0111】
[実施例3]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、86℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.490MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.500MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[B]を10.0mg添加した。内温を86℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.500MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を8℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
その後、ポリエチレンパウダーをオーブンで110℃に30分間加熱し、直後にポリエチレンパウダーを、ドライアイス-エタノール浴に浸漬させることで-70℃以下の温度に30分間晒すことで、仕上げ熱処理を行った。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり18,600gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0112】
[実施例4]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、86℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.480MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.500MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[B]を10.0mg添加した。内温を86℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.500MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を8℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
その後、ポリエチレンパウダーをオーブンで110℃に30分間加熱し、直後にポリエチレンパウダーを、ドライアイス-エタノール浴に浸漬させることで-70℃以下の温度に30分間晒すことで、仕上げ熱処理を行った。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり16,700gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0113】
[実施例5]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、84℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.396MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.400MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[B]を10.0mg添加した。内温を84℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.400MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を35℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
その後、ポリエチレンパウダーをオーブンで110℃に30分間加熱し、直後にポリエチレンパウダーを、ドライアイス-エタノール浴に浸漬させることで-70℃以下の温度に30分間晒すことで、仕上げ熱処理を行った。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり12,000gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0114】
[実施例6]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、84℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.374MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.386MPaになるように1-ブテンを加え、さらに、内圧が0.400MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[B]を10.0mg添加した。内温を84℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.400MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を35℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
その後、ポリエチレンパウダーをオーブンで110℃に30分間加熱し、直後にポリエチレンパウダーを、ドライアイス-エタノール浴に浸漬させることで-70℃以下の温度に30分間晒すことで、仕上げ熱処理を行った。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり12,700gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0115】
[実施例7]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、86℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.491MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.500MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[A]を10.0mg添加した。内温を86℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.500MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を8℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
その後、ポリエチレンパウダーをオーブンで110℃に30分間加熱し、直後にポリエチレンパウダーを、ドライアイス-エタノール浴に浸漬させることで-70℃以下の温度に30分間晒すことで、仕上げ熱処理を行った。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり15,800gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0116】
[実施例8]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、80℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.289MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.300MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[A]を10.0mg添加した。内温を80℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.300MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を50℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
その後、ポリエチレンパウダーをオーブンで110℃に30分間加熱し、直後にポリエチレンパウダーを、ドライアイス-エタノール浴に浸漬させることで-70℃以下の温度に30分間晒すことで、仕上げ熱処理を行った。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり16,500gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0117】
[実施例9]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、80℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.286MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.300MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[B]を10.0mg添加した。内温を80℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.300MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を50℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
その後、ポリエチレンパウダーをオーブンで110℃に30分間加熱し、直後にポリエチレンパウダーを、ドライアイス-エタノール浴に浸漬させることで-70℃以下の温度に30分間晒すことで、仕上げ熱処理を行った。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり16,000gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0118】
[実施例10]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、86℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.498MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.500MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[A]を10.0mg添加した。内温を86℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.500MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を8℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
その後、ポリエチレンパウダーをオーブンで110℃に30分間加熱し、直後にポリエチレンパウダーを、ドライアイス-エタノール浴に浸漬させることで-70℃以下の温度に30分間晒すことで、仕上げ熱処理を行った。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり22,000gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0119】
[実施例11]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、86℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.49985MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.500MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[A]を10.0mg添加した。内温を86℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.500MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を8℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
その後、ポリエチレンパウダーをオーブンで110℃に30分間加熱し、直後にポリエチレンパウダーを、ドライアイス-エタノール浴に浸漬させることで-70℃以下の温度に30分間晒すことで、仕上げ熱処理を行った。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり25,900gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表2に示す。
【0120】
[実施例12]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、86℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.495MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.500MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[A]を10.0mg添加した。内温を86℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.500MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を8℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
その後、ポリエチレンパウダーをオーブンで110℃に30分間加熱し、直後にポリエチレンパウダーを、ドライアイス-エタノール浴に浸漬させることで-70℃以下の温度に30分間晒すことで、仕上げ熱処理を行った。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり17,700gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表2に示す。
【0121】
[実施例13]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、86℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.342MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.500MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[A]を10.0mg添加した。内温を86℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.500MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を8℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
その後、ポリエチレンパウダーをオーブンで110℃に30分間加熱し、直後にポリエチレンパウダーを、ドライアイス-エタノール浴に浸漬させることで-70℃以下の温度に30分間晒すことで、仕上げ熱処理を行った。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり15,600gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表2に示す。
【0122】
[実施例14]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、86℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.489MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.494MPaになるように1-ブテンを添加し、さらに、内圧が0.500MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[A]を10.0mg添加した。内温を86℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.500MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を8℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり24,100gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表2に示す。
【0123】
[実施例15]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、86℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.476MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.500MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[B]を10.0mg添加した。内温を86℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.500MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を8℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり16,200gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表2に示す。
【0124】
[比較例1]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、80℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.282MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.300MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[B]を10.0mg添加した。内温を80℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.300MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を50℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり6,800gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表2に示す。
【0125】
[比較例2]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、80℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.295MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.300MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[A]を10.0mg添加した。内温を80℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.300MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を50℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり18,100gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表2に示す。
【0126】
[比較例3]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、86℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.500MPaになるようにエチレンを加えた。さらに、前記触媒[A]を10.0mg添加した。内温を86℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.500MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を8℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
その後、ポリエチレンパウダーをオーブンで110℃に30分間加熱し、直後にポリエチレンパウダーを、ドライアイス-エタノール浴に浸漬させることで-70℃以下の温度に30分間晒すことで、仕上げ熱処理を行った。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり25,900gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表2に示す。
【0127】
[比較例4]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、86℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.219MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.500MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[A]を10.0mg添加した。内温を86℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.500MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を8℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
その後、ポリエチレンパウダーをオーブンで110℃に30分間加熱し、直後にポリエチレンパウダーを、ドライアイス-エタノール浴に浸漬させることで-70℃以下の温度に30分間晒すことで、仕上げ熱処理を行った。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり16,700gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表2に示す。
【0128】
[比較例5]
充分に窒素置換された1.5Lステンレス製オートクレーブ重合反応器を使用して、下記に示す方法でポリエチレンパウダーの重合を行った。
まず、80℃に加熱した重合反応器に溶媒としてヘキサン800mLを仕込み、0.4mmolの原料[a-2]を加えた。次に、内圧が0.285MPaになるようにエチレンを加え、さらに、内圧が0.300MPaになるように水素を添加した。さらに、前記触媒[B]を10.0mg添加した。内温を80℃に保ち、撹拌速度1000rpmで撹拌しながら、60分重合した。重合の間、エチレンを随時供給することで内圧を0.300MPaに保った。重合終了後、重合反応器から反応混合物(ポリマーのスラリー)を抜き出し、メタノールで触媒を失活させた。
その後、反応混合物を50℃に冷却し、30分間保持することで冷却処理を行った。
その後、反応混合物を濾過、風乾し、ポリエチレンパウダーを得た。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり10,300gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ステアリン酸カルシウムとステアリン酸カリウムをそれぞれ1,000ppm添加した後にポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表2に示す。
【0129】
[比較例6]
撹拌装置が付いたベッセル型300L重合反応器に、下記の溶媒、原料及び触媒を供給した。重合温度はジャケット冷却により75℃に保った。溶媒としてノルマルヘキサンを60L/時間で供給した。触媒[C]を生産速度が10kg/時間となるように供給した。液体成分[F]をMgとAlの総量として6mmol/時間で供給した。水素は触媒[C]のフィード配管に2NL/時間で供給した。このフィード配管に、別途水添触媒[G]を反応器内濃度が0.3μmol/Lとなるように供給した。重合温度75℃、重合圧力0.8MPa、平均滞留時間2.2時間の条件で、エチレンを供給し連続重合を行った。重合反応器内の重合スラリーは、重合反応器内のレベルが一定に保たれるよう圧力0.05MPaG、温度60℃のフラッシュタンクに導き、未反応のエチレン、水素を分離した。このようにして得られた超高分子量エチレン系重合体のスラリーは、フラッシュタンクからポンプにより連続的に遠心分離機に送り、ポリマーと溶媒を分離し、分離された超高分子量エチレン系重合体のパウダーは、80℃に制御された乾燥機に送り、窒素ブローしながら乾燥させた。
重合反応器における重合活性は、触媒1g当たり13,000gであった。
425μmの目開きを有するふるいを用いてスケールや極端な粗粉を除去し、ポリエチレンパウダーの物性評価を実施した。評価結果を表2に示す。
【0130】
【0131】
本発明のポリエチレンパウダーは、機械的強度と熱収縮率のバランスに優れ、さらに高速成型した場合においても機械的強度と熱収縮率のバランスに優れる、微多孔膜等の成型体等を提供することができ、産業上の利用可能性を有する。