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特開2024-14678ロボットハンド、ワーク搬送装置、及びワーク搬送プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014678
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ロボットハンド、ワーク搬送装置、及びワーク搬送プログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/02 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
B25J17/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002276
(22)【出願日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2022115561
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000132231
【氏名又は名称】株式会社スター精機
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】水野 耕治
(72)【発明者】
【氏名】大國 哲也
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS02
3C707BS03
3C707BT18
3C707EV17
3C707FS01
3C707FT02
3C707FT06
3C707HS27
3C707HT02
3C707KS03
3C707KS36
3C707NS02
3C707NS28
(57)【要約】
【課題】ワークに対して吸着部を適切に当接させることができるロボットハンド、ワーク搬送装置、及びワーク搬送プログラムを提供すること。
【解決手段】ハンド部20は、液体、粉状体、又は粒状体が収容された袋体であるワークWを吸着して、吊り上げて前記ワークを搬送するワーク搬送装置10に用いられる。ハンド部20は、負圧を発生させてワークWの表面を吸着する吸着面25aを有する吸着パッド25と、ワーク搬送装置10に接続される接続部24と、接続部24と吸着パッド25の間に配置され、ワークWの表面に対して吸着パッド25の吸着面25aを追従させるフローティング機構80と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体、粉状体、又は粒状体が収容された袋体であるワークを吸着して、吊り上げて前記ワークを搬送するワーク搬送装置に用いられるロボットハンドであって、
負圧を発生させて前記ワークの表面を吸着する吸着面を有する吸着部と、
前記ワーク搬送装置に接続される接続部と、
前記接続部と前記吸着部の間に配置され、前記ワークの表面に対して前記吸着部の吸着面を追従させるフローティング機構と、を備えるロボットハンド。
【請求項2】
前記フローティング機構は、
前記接続部に固定される第1プレートと、
前記吸着部が固定され、前記第1プレートに対向する第2プレートと、
前記第2プレートに立てて設けられているシャフトと、
前記第1プレートと前記第2プレートの間に配置され、それらが離間する方向に弾性力を加える弾性体と、を備え、
前記第1プレートは、前記第2プレートに向かって小径となるテーパ孔を備え、
前記シャフトの先端には、前記テーパ孔の形状に対応するテーパ面を有するテーパ部が設けられ、
前記シャフトは、前記テーパ孔に対して出し入れ可能、かつ、揺動可能に構成されるとともに、前記テーパ部は、前記テーパ孔に収容され、前記テーパ孔に対して係止可能に構成される請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記シャフトの外径は、前記テーパ孔の小径部分の直径に比較して小さく構成され、
前記テーパ孔の上下方向の長さ寸法は、前記テーパ部の上下方向の長さ寸法に比較して長く、前記テーパ孔の大径部分の大きさは、前記テーパ部の大径部分の大きさに比較して大きく形成されている請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記弾性体は、前記シャフトの外側に装着されるコイルバネであり、前記コイルバネの両端部のうち少なくとも前記第2プレート側の端部には、前記コイルバネ用のバネ受け部が設けられ、
前記バネ受け部は、前記シャフトが挿通される筒状部と、前記筒状部の外周に設けられた鍔部とを有し、
前記コイルバネの前記第2プレート側の端部は、前記筒状部の外側に装着され、前記鍔部を介して前記第2プレートに圧接し、
前記筒状部の外径は、前記テーパ孔の小径部分の直径よりも大きく形成されている請求項3に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記コイルバネの両端部のうち前記第1プレート側の端部には、前記コイルバネ用のバネ受け部が設けられ、
前記コイルバネの前記第1プレート側の端部は、前記第1プレート側の前記バネ受け部の前記筒状部の外側に装着され、当該バネ受け部の前記鍔部を介して前記第1プレートに当接し、
前記第1プレート側の前記バネ受け部の内径は、前記シャフトの直径に比較して大きく形成されている請求項4に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記第1プレート側の前記バネ受け部は、前記第1プレートに対してスライド移動可能に当接している請求項5に記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記シャフトは、3本以上設けられ、一直線に配列されていない請求項2~6のうちいずれか1項に記載のロボットハンド。
【請求項8】
前記シャフトは、3本設けられ、各々の前記シャフト間の間隔がそれぞれ等間隔となるように配置され、かつ、全ての前記シャフトが前記ワークの表面領域内に収まるように配置されている請求項2~6のうちいずれか1項に記載のロボットハンド。
【請求項9】
液体、粉状体、又は粒状体が収容された袋体であるワークを吸着して、吊り上げて前記ワークを搬送するワーク搬送装置であって、
ロボットハンドと、
前記ロボットハンドを上下方向に移動させる第1駆動部と、
前記ロボットハンドを水平方向に移動又は回転させる第2駆動部と、
前記第1駆動部及び前記第2駆動部を制御する駆動制御部と、を備え、
前記ロボットハンドは、
負圧を発生させて前記ワークの表面を吸着する吸着面を有する吸着部と、
前記ワーク搬送装置に接続される接続部と、
前記接続部と前記吸着部の間に配置され、前記ワークの表面に対して前記吸着部の吸着面を追従させるフローティング機構と、を備え、
前記駆動制御部は、
前記第1駆動部により前記ロボットハンドを下降させ、前記ワークの表面に前記吸着面を当接させる際、前記ロボットハンドに対して水平方向のうちいずれかの方向においてトルクを発生させないフリー状態を設定するように前記第2駆動部を制御するワーク搬送装置。
【請求項10】
前記第2駆動部は、水平方向において予め決められたX軸方向に前記ロボットハンドを移動させるX軸モータ、水平方向においてX軸方向に直交するY軸方向に前記ロボットハンドを移動させるY軸モータ、及び水平方向において前記ロボットハンドを回転させる回転軸モータのうち少なくともいずれか1つを備え、
前記駆動制御部は、前記第1駆動部を制御して前記ロボットハンドを下降させ、前記ワークの表面に前記吸着面を当接させる際、前記X軸モータ、前記Y軸モータ、及び前記回転軸モータのうち少なくともいずれか1つのモータへの電流を遮断することにより、前記フリー状態を設定する請求項9に記載のワーク搬送装置。
【請求項11】
前記駆動制御部は、
前記ロボットハンドの下降を開始させてから前記ワークの表面に前記吸着面を当接させる前までに、前記X軸モータ、前記Y軸モータ、及び前記回転軸モータのうち少なくともいずれか1つを前記フリー状態に設定し、
前記吸着部による前記ワークの吸着後、前記ロボットハンドの上昇を開始させてから当該上昇が完了し、水平方向において前記ロボットハンドを移動又は回転させる時までに当該フリー状態を解除する請求項10に記載のワーク搬送装置。
【請求項12】
前記フローティング機構は、
前記接続部に固定される第1プレートと、
前記吸着部が固定され、前記第1プレートに対向する第2プレートと、
前記第2プレートに立てて設けられているシャフトと、
前記第1プレートと前記第2プレートの間に配置され、それらが離間する方向に弾性力を加える弾性体と、を備え、
前記第1プレートは、前記第2プレートに向かって小径となるテーパ孔を備え、
前記シャフトの先端には、前記テーパ孔の形状に対応するテーパ面を有するテーパ部が設けられ、
前記シャフトは、前記テーパ孔に対して出し入れ可能、かつ、揺動可能に構成されるとともに、前記テーパ部は、前記テーパ孔に収容され、前記テーパ孔に対して係止可能に構成される請求項9~11のうちいずれか1項に記載のワーク搬送装置。
【請求項13】
液体、粉状体、又は粒状体が収容された袋体であるワークを吸着して、吊り上げて前記ワークを搬送するワーク搬送装置のワーク搬送プログラムであって、
前記ワーク搬送装置は、
ロボットハンドと、
前記ロボットハンドを上下方向に移動させる第1駆動部と、
前記ロボットハンドを水平方向に移動又は回転させる第2駆動部と、
前記第1駆動部及び前記第2駆動部を制御する駆動制御部と、を備え、
前記ロボットハンドは、
負圧を発生させて前記ワークの表面を吸着する吸着面を有する吸着部と、
前記ワーク搬送装置に接続される接続部と、
前記接続部と前記吸着部の間に配置され、前記ワークの表面に対して前記吸着部の吸着面を追従させるフローティング機構と、を備え、
前記第1駆動部により前記ロボットハンドを下降させ、前記ワークの表面に前記吸着面を当接させる際、前記ロボットハンドに対して水平方向のうちいずれかの方向においてトルクを発生させないフリー状態を設定するように前記第2駆動部を制御するフリー制御ステップを前記駆動制御部に実施させるワーク搬送プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド、ワーク搬送装置、及びワーク搬送プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、パレタイジングロボットやハンドリングロボットを利用することによって、袋体などのデパレタイジング作業(又はパレタイジング作業、以下同じ)の自動化が実施されている。このようなデパレタイジング作業の自動化に用いるロボットハンドとしては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のロボットハンドは、吸着パッドをデパレタイジングすべきワークに当接させたのちに、吸着パッドに対してこれが連結されたチャンバを介して真空吸引力を作用させることにより、ワークを吸着パッドで吸着して吊り上げ、その吊り上げた状態で運ぶようになっている。
【0004】
ところで、米や穀物などを収容した袋体などのワークは、特定の実体がない変形し易いものである。このため、パレット上に積み上げられたときに、パレタイジング作業(積み上げ作業)時の積み卸し位置の誤差や運搬時の振動等によって内側に倒れ込むように荷崩れすることや、或いは外側に荷が割れて崩れる状態となっていることがある。すなわち、全てのワークが規則正しく積み上げられていない場合がある。そして、吸着パッドがワークの中央部に当接するようにロボットハンドの位置制御ができなかった場合には、ワークWの中央部からずれた箇所を偏心吸着して吊り上げることになる。そして、ずれによりワークに発生するモーメントの大きさが吸着パッドによるワークへの吸着力を上回った場合には、デパレタイジング作業中においてワークが吸着パッドから外れて落下することがある。
【0005】
そこで、特許文献2のロボットハンドでは、吸着パッドで吸着されたワークの偏心によって生じるモーメントを検出するモーメント検出手段を設け、このモーメント検出手段が検出したモーメントによって、吸着パッドのワークへの吸着位置を変更させる制御部を設けた。これにより、吸着パッドはワークの重心の部分を確実に吸着することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-80370号公報
【特許文献2】特開平9-262786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、袋体などのワークは、位置ずれするだけではなく、上面が水平になっていない場合がある。すなわち、米や穀物などを収容した袋体などのワークは、内容物の動きにより形状が変化し、上面が水平面に対して傾斜している場合がある。
【0008】
この場合、ワークに対して、吸着パッドを鉛直方向下方に押し当てても、ワークの上面が傾斜しているため、隙間が生じ、吸着力が低下し、安定的に吸着できない場合があるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワークの姿勢にバラツキがある場合でも、ワークに対して吸着部を適切に当接させることができるロボットハンド、ワーク搬送装置、及びワーク搬送プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためのロボットハンドは、
液体、粉状体、又は粒状体が収容された袋体であるワークを吸着して、吊り上げて前記ワークを搬送するワーク搬送装置に用いられるロボットハンドであって、
負圧を発生させて前記ワークの表面を吸着する吸着面を有する吸着部と、
前記ワーク搬送装置に接続される接続部と、
前記接続部と前記吸着部の間に配置され、前記ワークの表面に対して前記吸着部の吸着面を追従させるフローティング機構と、を備える。
【0011】
これにより、ワークの姿勢にバラツキがある場合でも、ワークの表面に対して吸着部を適切に当接させ、安定的に吸着させることができる。
【0012】
上記課題を解決するためのワーク搬送装置は、
液体、粉状体、又は粒状体が収容された袋体であるワークを吸着して、吊り上げて前記ワークを搬送するワーク搬送装置であって、
ロボットハンドと、
前記ロボットハンドを上下方向に移動させる第1駆動部と、
前記ロボットハンドを水平方向に移動又は回転させる第2駆動部と、
前記第1駆動部及び前記第2駆動部を制御する駆動制御部と、を備え、
前記ロボットハンドは、
負圧を発生させて前記ワークの表面を吸着する吸着面を有する吸着部と、
前記ワーク搬送装置に接続される接続部と、
前記接続部と前記吸着部の間に配置され、前記ワークの表面に対して前記吸着部の吸着面を追従させるフローティング機構と、を備え、
前記駆動制御部は、
前記第1駆動部により前記ロボットハンドを下降させ、前記ワークの表面に前記吸着面を当接させる際、前記ロボットハンドに対して水平方向のうちいずれかの方向においてトルクを発生させないフリー状態を設定するように前記第2駆動部を制御する。
【0013】
これにより、ワークの姿勢にバラツキがある場合でも、ワークの表面に対して吸着部を適切に当接させ、安定的に吸着させることができる。
【0014】
上記課題を解決するためのワーク搬送プログラムは、
液体、粉状体、又は粒状体が収容された袋体であるワークを吸着して、吊り上げて前記ワークを搬送するワーク搬送装置のワーク搬送プログラムであって、
前記ワーク搬送装置は、
ロボットハンドと、
前記ロボットハンドを上下方向に移動させる第1駆動部と、
前記ロボットハンドを水平方向に移動又は回転させる第2駆動部と、
前記第1駆動部及び前記第2駆動部を制御する駆動制御部と、を備え、
前記ロボットハンドは、
負圧を発生させて前記ワークの表面を吸着する吸着面を有する吸着部と、
前記ワーク搬送装置に接続される接続部と、
前記接続部と前記吸着部の間に配置され、前記ワークの表面に対して前記吸着部の吸着面を追従させるフローティング機構と、を備え、
前記第1駆動部により前記ロボットハンドを下降させ、前記ワークの表面に前記吸着面を当接させる際、前記ロボットハンドに対して水平方向のうちいずれかの方向においてトルクを発生させないフリー状態を設定するように前記第2駆動部を制御するフリー制御ステップを前記駆動制御部に実施させる。
【0015】
これにより、ワークの姿勢にバラツキがある場合でも、ワークの表面に対して吸着部を適切に当接させ、安定的に吸着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ワーク搬送装置の斜視図。
図2】上方から見たロボットハンドの斜視図。
図3】下方から見たロボットハンドの斜視図。
図4】ロボットハンドの正面図。
図5】ロボットハンドの側面図。
図6】フローティング機構の上面図。
図7】フローティング機構のA-A線断面図。
図8】ハンド部の動作態様を示す一部断面図。
図9】フローティング機構の拡大断面図。
図10】ハンド部の動作態様を示す一部断面図。
図11】変形例のフローティング機構の断面図。
図12】第2実施形態において制御装置の構成を示すブロック図。
図13】第2実施形態の搬送処理のフローチャート。
図14】第2実施形態におけるハンド部の動作態様を示す一部断面図。
図15】第2実施形態におけるハンド部の動作態様を示す一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる「ロボットハンド」を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態及び変形例において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。また、実施形態及び変形例の説明において、明示している構成の組み合わせだけでなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、実施形態及び変形例を組み合わせることも可能である。
【0018】
(第1実施形態)
図1に示すように、ワーク搬送装置10は、ワークWを供給場所から順次搬送して、予め決められた位置に設置された可搬式のパレットP上に整列させて積載する装置、すなわち、パレタイズを実施する装置である。なお、ワーク搬送装置10は、予め決められた位置に設置された可搬式のパレットP上に整列させて積載されたワークWを、所定の排出場所に順次搬送する装置、すなわち、デパレタイズを実施する装置でもある。デパレタイズを実施する場合には、基本的に、パレタイズを実施する場合の逆の動作を行えばよいため、本実施形態では、パレタイズについて主に説明する。
【0019】
図10等に示すように、ワークWは、米や穀物などを収容した袋体である。なお、袋の中に収容される物体は、液体、粉状体、又は粒状体であってもよく、例えば、粒状体で構成されているプラスチックの原材料等や、小麦粉などであってもよい。
【0020】
ワークWは、外部の搬送設備(ベルトコンベヤなど)から、ワーク搬送装置10に設けられているローラコンベヤ1に供給される。そして、供給されたワークWは、ローラコンベヤ1に設けられたストッパ(図示略)により、所定の静止位置に位置決めされて静止する。ワーク搬送装置10は、ローラコンベヤ1上に位置決めされて静止しているワークWをセンサなどで検出し、吊り上げて搬送するように構成されている。
【0021】
なお、デパレタイズを実施する場合には、上述したパレタイズの逆の動作が行われる。つまり、ワークWは、ワーク搬送装置10によりパレットPから吊り上げられて、ローラコンベヤ1等を介して外部の搬送設備に排出されることとなる。
【0022】
次に、ワーク搬送装置10の構成について詳しく説明する。図1に示すように、ワーク搬送装置10は、ワークWを把持するロボットハンドとしてのハンド部20と、ハンド部20を移動させる搬送機構30と、搬送機構30が固定される直方体の枠体70と、を備える。また、ワーク搬送装置10は、ハンド部20及び搬送機構30の動作を制御する制御装置100と、各種情報を入出力可能な情報端末としてのコントローラ(図示略)と、を備える。
【0023】
本実施形態において、枠体70の長手方向をX軸方向とし、短手方向(X軸に直交する方向)をY軸方向とし、X軸方向及びY軸方向に垂直となる方向をZ軸方向と示す。なお、ワーク搬送装置10は、通常、平面に設置されるため、Z軸方向が上下方向(鉛直方向)に相当する。また、X軸方向及びY軸方向が、水平方向に相当する。
【0024】
搬送機構30は、枠体70に固定され、Z軸方向に沿って伸びるように形成されている柱部50と、柱部50に固定され、Y軸方向に沿って伸びるように形成されているアーム部60と、を有する。
【0025】
枠体70には、X軸ガイドレール51がX軸方向に沿って設けられており、柱部50は、X軸ガイドレール51に対して、X軸方向に沿って移動可能に固定されている。柱部50は、枠体70の底部に配置されるX軸サーボモータ91の出力軸に対して歯付きベルト等を介して駆動連結されている。すなわち、柱部50は、X軸サーボモータ91の駆動力に基づき、X軸ガイドレール51に沿ってX軸方向に往復移動するように構成されている。
【0026】
柱部50には、Z軸ガイドレール61がZ軸方向に沿って設けられており、アーム部60は、Z軸ガイドレール61に対して、Z軸方向に沿って移動可能に固定されている。アーム部60は、柱部50に設けられているZ軸サーボモータ93の出力軸に対して歯付きベルト等を介して駆動連結されている。すなわち、アーム部60は、Z軸サーボモータ93の駆動力に基づき、Z軸ガイドレール61に沿ってZ軸方向に往復移動するように構成されている。
【0027】
アーム部60には、Y軸ガイドレール21がY軸方向に沿って設けられており、ハンド部20は、Y軸ガイドレール21に対して、Y軸方向に沿って移動可能に固定されている。ハンド部20は、アーム部60に設けられているY軸サーボモータ92の出力軸に対して歯付きベルト等を介して駆動連結されている。すなわち、ハンド部20は、Y軸サーボモータ92の駆動力に基づき、Y軸ガイドレール21に沿ってY軸方向に往復移動するように構成されている。
【0028】
以上に説明したように、搬送機構30は、ハンド部20を水平方向において直交する2方向(X軸方向及びY軸方向)、及び上下方向(Z軸方向)に直動可能に構成されている。
【0029】
図1に示すように、ハンド部20は、旋回部としての回転機構23を介してアーム部60に固定されている。回転機構23は、内蔵する旋回軸サーボモータ94の駆動力に基づき、回転機構23を中心としてZ軸周り(図1において矢印Rの方向)にハンド部20を旋回可能に構成されている。
【0030】
図2及び図3に示すように、ハンド部20は、回転機構23に接続され、固定される接続部24と、吸着部としての吸着パッド25と、接続部24と吸着パッド25との間に配置されるフローティング機構80と、を有する。吸着パッド25は、その吸着面25aを下方に向けて設けられている。吸着パッド25は、図示しないエア配管を介してエジェクタが接続されている。エジェクタの動作によって吸着パッド25の内部は、負圧となり、これによりワークWの上面を吸着させることが可能となっている。なお、吸着パッド25の接触部分は、ゴム製又はスポンジ製となっており、ワークWにおける表面の凸凹をある程度吸収可能に構成されている。
【0031】
フローティング機構80は、ワークWの表面(本実施形態では上面)に対して吸着パッド25の吸着面25aを追従させるためのものであり、詳しくは後述する。
【0032】
次に制御装置100について説明する。制御装置100は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えた電子制御装置である。制御装置100は、前述した各種サーボモータ91~94を駆動させるための駆動回路を備えており、駆動回路を介して各種サーボモータ91~94の動作を制御可能に構成されている。
【0033】
この制御装置100は、各種センサ、各種サーボモータ91~94及びコントローラ等と接続されており、各種情報を取得可能に構成されている。また、制御装置100は、各種機能を備え、取得した各種情報に基づき、各種機能を実行する。これらの機能は、制御装置100が備える記憶装置(記憶用メモリ)に記憶されたプログラムが実行されることで、各種機能が実現される。なお、各種機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよく、あるいは、少なくとも一部をソフトウェア、すなわちコンピュータ上で実行される処理によって実現されてもよい。
【0034】
各種機能の中には、例えば、ワークWを搬送し、パレットPに積載するパレタイズ機能が存在する。パレタイズ機能について簡単に説明すると、制御装置100は、センサなどでワークWの位置を検出して、ワークWをハンド部20により吊り上げて、ワークWごとハンド部20を搬送機構30によりパレットP上に移動させ、解放することにより、ワークWを積載する機能である。この機能により、ワークWは、パレットP上に、上下方向(Z軸方向)に複数段に亘って積み重ねられる。その際、各段において、所定方向(X軸方向又はY軸方向)に複数の列となるように整列させて積載されてもよい。
【0035】
なお、各種機能の中には、例えば、パレットPに積載されているワークWを1つずつ搬送するデパレタイズ機能が存在してもよい。デパレタイズ機能について簡単に説明すると、パレットPに積載されている各ワークWの位置をセンサなどで検出し、位置を検出したワークWをハンド部20により吊り上げて、パレットPから所定の排出場所に搬送する機能である。
【0036】
ところで、本実施形態のワークWは、前述したように、米や穀物などを収容した袋体である。このため、ワークWは、袋によりある程度の形状を保っているものの、内容物の動きにより形状が変化し、上面が水平面に対して傾斜している場合がある。この場合、従来のロボットハンドでは、ワークWに対して、吸着パッドを水平方向に対して垂直となるように押し当てても、ワークWの上面が傾斜しているため、隙間が生じ、吸着力が低下し、安定的に吸着できない可能性がある。
【0037】
そこでは、本実施形態のハンド部20では、接続部24と吸着パッド25との間に、ワークWの表面(本実施形態では上面)に対して吸着パッド25の吸着面25aを追従させるフローティング機構80を設けた。以下、図2図7を参照して、フローティング機構80について詳しく説明する。
【0038】
図2図4に示すように、フローティング機構80は、接続部24に固定される第1プレート81と、吸着パッド25が固定され、第1プレート81に対して(図4において上下方向)に対向する第2プレート82と、第2プレート82に立てて設けられているシャフト83a~83cと、第1プレート81と第2プレート82の間に配置され、それらが離間する方向に弾性力を加える弾性体としてのコイルバネ84と、を備える。
【0039】
第1プレート81は、図6に示すように円盤状に構成されている。図2図4に示すように、第1プレート81は、鉛直方向(Z軸方向)においてハンド部20の上側に配置され、その上面に接続部24が取り付けられている。
【0040】
また、図7に示すように、第1プレート81は、図7において上下方向に第1プレート81を貫通するテーパ孔81a~81cを備える。テーパ孔81a~81cは、第2プレート82に向かって(つまり、下方に向かって)小径となるテーパ面を有している。テーパ孔81a~81cのテーパ面の傾斜角度α(水平方向に対する仰角、図7参照)は、45~60度の範囲内で設定されており、本実施形態では、45度とされている。また、図6に示すように、テーパ孔81a~81cは、3か所設けられており、テーパ孔81a~81cの中心間の距離が、それぞれ等間隔となるように配置されている。つまり、テーパ孔81a~81cの中心が正三角形の各頂点に位置するように、テーパ孔81a~81cが配置されている。
【0041】
図2などに示すように、第2プレート82は、長板状に構成されており、上下方向において第1プレート81の下側に配置され、第1プレート81に対して上下方向に対向する。第2プレート82の下面に、吸着パッド25が固定され、第2プレート82の上面に、シャフト83a~83cが立設している。
【0042】
図2図6に示すように、シャフト83a~83cは、3本設けられており、第1プレート81のテーパ孔81a~81cにそれぞれ対応する位置に配置されている。すなわち、シャフト83a~83cの中心間の距離が、それぞれ等間隔となり、かつ、テーパ孔81a~81cの中心間の距離と同じとなるように配置されている。つまり、シャフト83a~83cの中心軸が正三角形の各頂点に位置するように、シャフト83a~83cが配置されている。
【0043】
図4図7に示すように、シャフト83a~83cは、それぞれ棒状に形成されており、第2プレート82の上面に対して垂直となるように固定されている。つまり、第2プレート82が第1プレート81に対して対向配置された場合、シャフト83a~83cは、第2プレート82から第1プレート81の側に延びるような形状となっている。そして、シャフト83a~83cの先端(第2プレート82とは反対側の端部)は、第1プレート81のテーパ孔81a~81cに挿入されている。
【0044】
図7に示すように、テーパ孔81a~81cに挿入されるシャフト83a~83cの先端には、テーパ孔81a~81cの形状に対応するテーパ面を有する略円錐台形状のテーパ部85が設けられている。このテーパ部85は、テーパ孔81a~81cの内部に収容されており、テーパ孔81a~81cに係止可能に設けられている。
【0045】
詳しく説明すると、テーパ部85は、第2プレート82に向かって小径となるように、すなわち、第2プレート82から離れるほど大径となるように、形成されている。また、テーパ部85の小径部分(下側部分)の外径は、テーパ孔81a~81cの小径部分の直径R3以上となっている。本実施形態では、テーパ部85の小径部分の外径は、テーパ孔81a~81cの小径部分の直径R3に対して、わずかに大きくなるように設定されている。また、テーパ部85の大径部分(上側部分)の外径R2は、少なくともテーパ孔81a~81cの小径部分の直径R3よりも大きく形成されている。このため、テーパ部85は、テーパ孔81a~81cによって係止されることとなる。
【0046】
また、前述したようにテーパ孔81a~81cの形状に対応するテーパ面を有しているため、テーパ部85のテーパ面の傾斜角度αは、テーパ孔81a~81cのテーパ面の傾斜角度αと同じとされている。すなわち、本実施形態におけるテーパ部85のテーパ面の傾斜角度αは、45度とされている。このため、図7に示すように、シャフト83a~83cの方向が上下方向に沿う場合、テーパ部85は、テーパ孔81a~81cに対して面接触することとなる。したがって、テーパ部85は、テーパ孔81a~81cに対して係止される場合、安定的に係止される。
【0047】
また、テーパ部85の上下方向の長さ寸法L1は、テーパ孔81a~81cの上下方向の長さ寸法L2に比較して短く、本実施形態では、半分程度の長さ寸法とされている。また、テーパ部85の大径部分の外径R2は、テーパ孔81a~81cの大径部分の直径R4よりも小さく構成されている。すなわち、テーパ部85がテーパ孔81a~81cに対して係止される場合、テーパ部85の上方に隙間(クリアランス)が設けられていることとなる。したがって、シャフト83a~83cが、第1プレート81に対して上下方向に移動可能となり、テーパ孔81a~81cに対して出し入れ可能に構成されていることとなる。
【0048】
また、シャフト83a~83cの直径R1は、図7に示すように、テーパ孔81a~81cの小径部分の直径R3よりも小さく形成されている。具体的には、シャフト83a~83cの直径R1は、テーパ孔81a~81cの小径部分の直径R3の半分程度の大きさとなっている。そして、シャフト83a~83cの先端に取り付けられたテーパ部85は、第2プレート82から離れるほど大径となるテーパ孔81a~81cに収容されている。
【0049】
以上のことから、テーパ部85が、第1プレート81の側(第2プレート82とは反対側)に押し込まれた状態において、シャフト83a~83cは、水平方向に所定距離移動可能となる。加えて、図9に示すように、テーパ部85が、第1プレート81の側に押し込まれた状態において、シャフト83a~83cは、所定角度(図9では角度βで示す)傾くことが可能となっている。すなわち、テーパ部85が、第1プレート81の側に押し込まれた場合、シャフト83a~83cは、第1プレート81に対して揺動可能に構成されている。
【0050】
次にコイルバネ84について説明する。図2図7に示すように、コイルバネ84は、第1プレート81と第2プレート82の間に配置される圧縮コイルバネであり、それらが離間する方向に弾性力を加える。コイルバネ84は、シャフト83a~83cに対して、それぞれ外側に装着されている。すなわち、コイルバネ84の内側にシャフト83a~83cが配置されている。
【0051】
図7に示すように、コイルバネ84の両端部のうち第2プレート82側の端部には、コイルバネ用のバネ受け部86が設けられている。バネ受け部86は、筒状部87と、筒状部87の外周に設けられた鍔部88とを有する。筒状部87の内側には、シャフト83a~83cが挿通される。そして、筒状部87は、シャフト83a~83cに沿って移動とされている。また、コイルバネ84の第2プレート82側の端部は、筒状部87の外側に装着され、鍔部88を介して第2プレート82に当接(圧接)する。なお、筒状部87の外径は、コイルバネ84の内径とほぼ同じとなっている。このため、コイルバネ84の端部は、筒状部87に対して横方向(つまり、外側)にずれないようになっている。
【0052】
そして、鍔部88の外径は、コイルバネ84よりも大きく形成されている。これにより、コイルバネ84は、第2プレート82に対してバネ受け部86の鍔部88を介して、弾性力を第2プレート82に対して発揮する。このとき、コイルバネ84の端部は、筒状部87に対して横方向にずれないようになっているため、シャフト83a~83cが延びる方向、すなわち、第2プレート82に対して垂直方向に弾性力を付与することとなる。
【0053】
一方、コイルバネ84の両端部のうち少なくとも第1プレート81側の端部は、第1プレート81に直に接触しており、第1プレート81に対して直に弾性力を発揮する。このとき、コイルバネ84は、シャフト83a~83cが延びる方向に沿って弾性力を付与することとなるが、前述したように、シャフト83a~83cは、第1プレート81に対して傾斜可能となっている。図8図9に示すように、シャフト83a~83cは、第1プレート81に対して傾斜した場合、第1プレート81と第2プレート82との距離は短くなることから、コイルバネ84の弾性力も大きくなる。この結果、テーパ部85が、テーパ孔81a~81cと係止し、第1プレート81と第2プレート82とが平行となるように、コイルバネ84は、弾性力を発揮することとなる。
【0054】
なお、コイルバネ84の内径は、テーパ孔81a~81cの小径部分の径よりも大きく形成されている。そして、コイルバネ84の第2プレート82の側の端部は、バネ受け部86によりシャフト83a~83cに対して横方向にずれることがないことから、コイルバネ84の第1プレート81の側の端部も、シャフト83a~83cに対して横方向にあまりずれることがない。このため、図9に示すように、シャフト83a~83cが第1プレート81に対して傾斜しても、コイルバネ84がテーパ孔81a~81cに入り込むことが抑制される。
【0055】
次に、ワークWを、ハンド部20によって吊り上げる際におけるフローティング機構80の動作態様について図8図10を参照して説明する。なお、前提として搬送対象のワークWの上面は、水平方向に対して傾斜しているものとして説明する。また、図8図10では、フローティング機構80を断面で示す。また、説明の都合上、吸着パッド25を簡略化して図示し、接続部24の図示を省略している。
【0056】
制御装置100は、ワークWを検出した後、ハンド部20を鉛直方向(Z軸方向)において下方に移動させて、ワークWに対して吸着パッド25の吸着面25aを押し当てる。すなわち、水平状態の吸着面25aを、水平方向に対して傾斜するワークWの上面に対して押し当てる。
【0057】
このとき、ワークWの姿勢に応じて、図8及び図9に示すように、シャフト83a~83cの一部又は全部が第1プレート81のテーパ孔81a~81cに押し込まれる。なお、コイルバネ84の弾性力が第1プレート81と第2プレート82とが離間する方向に発揮するため、一部のシャフト83a~83cが押し込まれても、それに従って、全てのシャフト83a~83cが同じように押し込まれることはない。これにより、シャフト83a~83cが第1プレート81に対して傾斜し、第2プレート82が傾斜する。それに伴い、第2プレート82が固定される吸着パッド25の吸着面25aが、ワークWの上面に応じて傾斜する。つまり、吸着面25aが、ワークWの上面に対して追従し、隙間なく、当接することとなる。
【0058】
制御装置100は、当接させた後、負圧を発生させて、吸着パッド25によりワークWを吸着させる。制御装置100は、吸着させた後、ハンド部20を上方に移動させる。図10に示すように、ハンド部20を上方に移動させると、ワークWの重み、及びコイルバネ84の弾性力により、テーパ部85が、テーパ孔81a~81cに係止されるまで、シャフト83a~83cがテーパ孔81a~81cから引き出される。シャフト83a~83cが引き出されて、テーパ部85がテーパ孔81a~81cに係止されると、第2プレート82は、水平状態となり、吊り上げられるワークWも水平状態となる。
【0059】
制御装置100は、ハンド部20を上方に移動させた後、水平方向に移動させる。このとき、テーパ部85は、テーパ孔81a~81cに対して面接触することとなるので、ワークWを水平方向に移動させても、振動が抑制され、水平状態に保たれる。このため、安定的に水平方向に移動させることが可能となる。
【0060】
上記実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0061】
接続部24と吸着パッド25の間に、ワークWの表面に対して吸着パッド25の吸着面25aを追従させるフローティング機構80を備えた。これにより、ワークWの姿勢にバラツキがある場合でも、ワークWの表面に対して吸着パッド25を適切に当接させ、安定的に吸着させることができる。
【0062】
シャフト83a~83cは、テーパ孔81a~81cに対して出し入れ可能、かつ、揺動可能に構成されるとともに、第1プレート81と第2プレート82が離間する方向に弾性力を加えるコイルバネ84を備える。これにより、ハンド部20を下方に移動させて、ワークWに対して吸着パッド25を押し当てると、ワークWの表面の傾斜に応じて、シャフト83a~83cの一部又は全部をテーパ孔81a~81cに押し込むことができる。これにより、吸着パッド25の吸着面25aを、ワークWの上面に応じて傾斜させることができる。なお、コイルバネ84の弾性力が第1プレート81と第2プレート82とが離間する方向に発揮するため、一部のシャフト83a~83cが押し込まれても、それに従って、全てのシャフト83a~83cが同じように押し込まれることはなく、ワークWの上面に応じて適切に傾斜させることができる。
【0063】
また、シャフト83a~83cの先端に、テーパ孔81a~81cの形状に対応するテーパ面を有するテーパ部85を設け、テーパ孔81a~81cに収容している。これにより、吸着させた後、ハンド部20を上方に移動させると、ワークWの重み、及びコイルバネ84の弾性力により、テーパ部85をテーパ孔81a~81cに係止させて、第2プレート82及びワークWを水平状態にすることができる。したがって、安定した状態で、ワークWを水平方向に移動させることができる。なお、テーパ部85をテーパ孔81a~81cに係止させた場合、面接触するため、振動を抑えて、安定した状態に保つことができる。
【0064】
テーパ孔81a~81cの上下方向の長さ寸法L2を、テーパ部85の上下方向の長さ寸法L1に比較して長くし、テーパ孔81a~81cの大径部分の大きさ(直径R4)を、テーパ部85の大径部分の大きさ(外径R2)に比較して大きく形成した。これにより、テーパ孔81a~81cにシャフト83a~83cを押し込むことにより、テーパ孔81a~81c内の隙間に、テーパ部85を移動させることができる。このとき、テーパ部85を、テーパ孔81a~81cの範囲内で、水平方向において移動させることができる。その結果、シャフト83a~83cを第1プレート81に対して揺動させることが可能となる。
【0065】
また、シャフト83a~83cの直径R1を、テーパ孔81a~81cの小径部分の直径R3に比較して小さく構成しているため、シャフト83a~83cがテーパ孔81a~81cと接触するまでに余裕ができ、シャフト83a~83cの傾斜可能な角度を大きくすることができる。
【0066】
コイルバネ84の両端部のうち第2プレート82側の端部に、コイルバネ用のバネ受け部86を設けた。そして、このコイルバネ84の筒状部87の外径を、コイルバネ84の内径とほぼ同じとし、コイルバネ84の端部が、筒状部87に対して横方向にずれないようにした。これにより、コイルバネ84の第1プレート81の側の端部が、シャフト83a~83cに対して横方向にずれることを抑制することができる。したがって、シャフト83a~83cが第1プレート81に対して傾斜しても、コイルバネ84がテーパ孔81a~81cに入り込むことを抑制できる。
【0067】
シャフト83a~83cを、3本設け、一直線に配列しないようにした。このため、第2プレート82をX軸の回転方向及びY軸の回転方向に傾斜させることが容易となる。
【0068】
シャフト83a~83cを、3本設け、各シャフト83a~83c間の間隔がそれぞれ等間隔となるように配置した。これにより、シャフト83a~83cを4本以上設けた場合に比較して、傾斜角度を大きくすることができる。また、全てのシャフト83a~83cをワークWの表面領域内に収まるように配置した。これにより、小型化しつつ、傾斜角度を大きくすることができる。
【0069】
(変形例)
以下、上記実施形態におけるフローティング機構80の一部を変更した変形例について説明する。
【0070】
・上記実施形態において、図11に示すように、コイルバネ84の両端部のうち第1プレート81の側の端部には、コイルバネ用のバネ受け部101が設けられていてもよい。このバネ受け部101は、バネ受け部86と同様に、筒状部102と、筒状部102の外周に設けられた鍔部103とを有する。筒状部102の内側には、シャフト83a~83cが挿通される。ただし、筒状部102の内径R3は、第2プレート82の側のバネ受け部86の筒状部87の内径に比較して大きくなっている。そして、筒状部102の内径R10は、シャフト83a~83cの直径R1に比較して十分大きく構成されている。このため、シャフト83a~83cは、筒状部102に対して横方向に移動可能に隙間が設けられている。
【0071】
したがって、図11(b)に示すように、シャフト83a~83cがテーパ孔81a~81cに押し込まれた場合、筒状部102に対してシャフト83a~83cが傾斜することができる。つまり、バネ受け部101が、シャフト83a~83cの傾斜に対して邪魔となることがない。
【0072】
なお、バネ受け部101の外径形状は、バネ受け部86とほぼ同じとされている。これにより、コイルバネ84は、第1プレート81に対してバネ受け部101の鍔部103を介して、弾性力を第1プレート81に対して発揮する。また、鍔部103の外径形状は、テーパ孔81a~81cの小径部分の外径よりも大きく構成されているため、コイルバネ84がテーパ孔81a~81cに入り込むことを確実に防止できる。
【0073】
また、第1プレート側のバネ受け部101は、第1プレート81に対してスライド移動可能に当接している。つまり、バネ受け部101は、図11において矢印Tの方向にスライド移動可能に構成されている。このため、シャフト83が傾斜した場合、バネ受け部101がスライド移動することにより、バネ受け部101の筒状部102に干渉することがなくなり、傾斜角度を大きくすることができる。
【0074】
・上記実施形態において、図11に示すように、テーパ孔81a~81c及びテーパ部85におけるテーパ面の傾斜角度を60度に変更してもよい。
【0075】
・上記実施形態において、シャフト83a~83c及びテーパ孔81a~81cの数及び配置は、任意に変更してもよい。
【0076】
(第2実施形態)
上記第1実施形態の一部を変更した第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態においてワーク搬送装置10の機械構成は、第1実施形態と同じであるため、同じ符号を付して説明を省略する。第2実施形態では、制御装置100による処理内容及び制御内容を中心に説明する。
【0077】
図12に示すように、制御装置100は、各種サーボモータ91~94やエジェクタ95と接続されている。制御装置100は、各種サーボモータ91~94の駆動制御を実施することにより、ハンド部20をX軸方向、Y軸方向、又はZ軸方向に沿って移動させることや、旋回軸(回転軸)を中心としてハンド部20を旋回(回転)させることができる。このため、本実施形態では、制御装置100は、駆動制御部として機能する。また、本実施形態では、Z軸サーボモータ93が、ハンド部20を上下方向に移動させる第1駆動部を構成する。また、X軸サーボモータ91、Y軸サーボモータ92、及び旋回軸サーボモータ94が、ハンド部20を水平方向に移動又は回転させる第2駆動部を構成する。
【0078】
また、制御装置100は、エジェクタ95の動作を制御することにより、吸着パッド25に、ワークWの上面を吸着させることや、吸着を解除させることが可能となっている。なお、図示はしないが、制御装置100は、各種センサと接続されており、各種センサからの検出結果に基づいてワークWの位置を把握して、各種サーボモータ91~94の駆動制御や、エジェクタ95の動作制御を実施する。
【0079】
次に、ワークWを、ハンド部20によって吊り上げる際における制御装置100の処理内容について説明する。制御装置100は、制御装置100が備える記憶装置96に記憶されたワーク搬送プログラム97を実施することにより、図13に示す搬送処理を実施する。以下、搬送処理について詳しく説明する。
【0080】
搬送処理を実施すると、制御装置100は、各種センサの検出結果から搬送対象となるワークWの位置を確認し、ワークWの上方にハンド部20が配置されるように、ハンド部20を水平方向に移動させる(ステップS101)。詳しくは、ステップS101において、制御装置100は、X軸サーボモータ91を駆動制御して、X軸方向においてワークWとハンド部20の位置が一致するように、ハンド部20をX軸方向に移動させる。また、制御装置100は、Y軸サーボモータ92を駆動制御して、Y軸方向においてワークWとハンド部20の位置が一致するように、ハンド部20をY軸方向に移動させる。また、制御装置100は、旋回軸サーボモータ94を駆動制御して、ワークWの長手方向にハンド部20の長手方向が沿うように、ハンド部20を回転させる。
【0081】
次に、制御装置100は、ハンド部20をワークWに向かって下降させるように、Z軸サーボモータ93を駆動制御する(ステップS102)。そして、制御装置100は、ワークWの表面に吸着パッド25の吸着面25aを当接させる際に、ハンド部20に対して水平方向のうちいずれかの方向においてトルクを発生させないサーボフリー状態(フリー状態)を設定する(ステップS103)。具体的には、制御装置100は、X軸サーボモータ91(X軸モータ)、Y軸サーボモータ92(Y軸モータ)、及び旋回軸サーボモータ94(回転軸モータ)への電流を遮断することにより、水平方向におけるトルクを発生させないように、サーボフリー状態を設定する。本実施形態のステップS103が、フリー制御ステップに相当する。
【0082】
サーボフリー状態は、サーボモータ91,92,94のトルクにより水平方向の移動又は回転が規制されることなく、外力によりハンド部20(より詳しくは第1プレート81側の部分)が水平方向に任意に移動又は回転可能な状態であればよい。このため、トルクを発生させないのであれば、サーボモータ91,92,94への電流遮断を必ずしも行う必要はない。
【0083】
また、サーボフリー状態を設定するタイミング、すなわち、ステップS103の開始タイミングは、ハンド部20の下降を開始させてから(すなわち、ステップS102の開始後)、ワークWの表面に吸着パッド25の吸着面25aを当接させる前までの任意のタイミングであればよい。例えば、測距センサにより、ハンド部20とワークWまでの距離を測定し、当該距離が所定距離以下である場合に、サーボフリー状態を設定してもよい。また、下降開始してから、所定時間経過後に、サーボフリー状態を設定してもよい。また、下降開始直後に、サーボフリー状態を設定してもよい。
【0084】
制御装置100は、ワークWの表面に吸着パッド25の吸着面25aを当接させた後、ワークWを吸着させるように、エジェクタ95の動作を制御する(ステップS104)。吸着後、制御装置100は、ワークWを吸着したハンド部20を上昇させるように、Z軸サーボモータ93の駆動制御を行う(ステップS105)。ワークWを吸着したハンド部20を上昇させた後、制御装置100は、サーボフリー状態を解除する(ステップS106)。なお、サーボフリー状態を解除するタイミングは、吸着部による前記ワークの吸着後、ハンド部20の上昇を開始させてから当該上昇が完了し、水平方向においてハンド部20を移動又は回転させる時までの任意のタイミングであればよい。例えば、上昇を開始してから所定時間経過後に、サーボフリー状態を解除して、ハンド部20が水平方向に移動又は回転しないようにしてもよい。
【0085】
上昇完了後、制御装置100は、所定位置(パレットP上やローラコンベヤ1上の搬送先)に移動させるように、ハンド部20を水平方向に移動させる(ステップS107)。すなわち、制御装置100は、X軸サーボモータ91等を駆動制御して、ハンド部20を移動させる。制御装置100は、所定位置にハンド部20を移動させた後、ハンド部20を下降させ、吸着を解除し、ワークWの搬送を完了する(ステップS108)。そして、搬送処理を終了する。
【0086】
サーボフリー状態を設定することによる作用について図14及び図15を参照して説明する。なお、前提として図14及び図15に示す搬送対象のワークWの上面は、図8に示すワークWの上面に比較して、より傾斜しているものとして説明する。また、図14図15では、フローティング機構80を断面で示す。また、説明の都合上、吸着パッド25を簡略化して図示し、接続部24の図示を省略している。
【0087】
制御装置100は、ワークWを検出した後、ハンド部20を下降させて、ワークWに対して吸着パッド25の吸着面25aを押し当てる。このとき、ワークWの姿勢に応じて、図14に示すように、シャフト83a~83cの一部又は全部が第1プレート81のテーパ孔81a~81cに押し込まれる。なお、コイルバネ84の弾性力が第1プレート81と第2プレート82とが離間する方向に発揮するため、一部のシャフト83a~83cが押し込まれても、それに従って、全てのシャフト83a~83cが同じように押し込まれることはない。
【0088】
これにより、シャフト83a~83cが第1プレート81に対して傾斜し、第2プレート82が傾斜する。ある程度までシャフト83a~83cが傾斜すると、テーパ部85が、テーパ孔81a~81cの傾斜面に接触し、若しくは、シャフト83a~83cがテーパ孔81a~81cの小径部分と接触することとなる。
【0089】
このとき、上記第1実施形態では、ハンド部20、より詳しくは第1プレート81側の部分は、サーボモータ91,92,94のトルクにより、水平方向の移動及び回転が規制されていたため、シャフト83a~83cとテーパ孔81a~81cとが係合し、それ以上傾斜することはなかった。
【0090】
しかしながら、第2実施形態では、各サーボモータ91,92,94に対して、サーボフリー状態が設定されている。このため、シャフト83a~83cがある程度傾斜すると、テーパ孔81a~81cと干渉することにより、もしくはコイルバネ84の弾性力により、図15の矢印に示すように、第1プレート81側の部分が水平方向に移動する。これにより、シャフト83a~83cは、さらに傾斜することが可能となっている。
【0091】
それに伴い、第2プレート82及びそれに固定される吸着パッド25も、第1プレート81に対してさらに傾斜する。このため、吸着面25aを、ワークWの上面の傾斜に対してより追従させて、隙間なく当接させることができる。
【0092】
上記第2実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0093】
制御装置100は、ハンド部20を下降させ、ワークWの表面(上面)に吸着面25aを当接させる際、ハンド部20に対して水平方向においてトルクを発生させないサーボフリー状態を設定する。これにより、フローティング機構80において、傾斜角度を大きくすることができる。したがって、吸着面25aを、ワークWの上面の傾斜に対してより追従させて、隙間なく当接させることができる。
【0094】
制御装置100は、ワークWの上面に吸着面25aを当接させる際、サーボモータ91,92,94への電流を遮断することにより、サーボフリー状態を設定する。このため、簡単な制御、かつ、消費電力の少ない制御で、サーボフリー状態を設定することができる。また、X軸方向及びY軸方向への移動、並びに回転を許容するため、ワークWの上面がどのような姿勢であっても追従させることができる。
【0095】
制御装置100は、ワークWの上面に吸着面25aを当接させる前までに、サーボフリー状態を設定する。また、吸着パッド25によるワークWの吸着後、サーボフリー状態を解除する。このため、シャフト83a~83cが傾斜する際、サーボモータ91,92,94のトルクにより邪魔されることなく、確実に第1プレート81側の部分を移動可能な状態とすることができる。
【0096】
シャフト83a~83cは、テーパ孔81a~81cに対して出し入れ可能、かつ、揺動可能に構成されるとともに、第1プレート81と第2プレート82が離間する方向に弾性力を加えるコイルバネ84を備える。このため、ワークWの上面の傾斜角度が大きい場合に、コイルバネ84の弾性力により、第1プレート81側の部分を円滑にスライド移動させ、シャフト83a~83cを簡単に傾斜させることができる。
【0097】
また、サーボフリー状態の設定、及びフローティング機構80の構成により、吸着面25aをワークWの上面に追従させるように傾斜させている。このため、傾斜させるために、電力を消費することなく、また、特別な制御を行う必要もない。
【0098】
なお、第2実施形態で説明した制御装置100による搬送処理及びワーク搬送プログラム97は、上記第1実施形態又は変形例に組み合わせて適用してもよい。
【0099】
・上記第2実施形態において、X軸サーボモータ91、Y軸サーボモータ92、旋回軸サーボモータ94のすべてについてサーボフリー状態を設定したが、いずれか1つだけサーボフリー状態を設定するようにしてもよい。すなわち、水平方向のうちいずれかの方向においてトルクを発生させないサーボフリー状態を設定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0100】
10…ワーク搬送装置、20…ハンド部、24…接続部、25…吸着パッド、25a…吸着面、80…フローティング機構、81…第1プレート、81a~81c…テーパ孔、82…第2プレート、83a~83c…シャフト、84…コイルバネ、85…テーパ部、86…バネ受け部、91…X軸サーボモータ、92…Y軸サーボモータ、93…Z軸サーボモータ、94…旋回軸サーボモータ、95…エジェクタ、96…記憶装置、97…ワーク搬送プログラム、100…制御装置、W…ワーク。
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