(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146780
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/04 20060101AFI20241004BHJP
B60K 26/02 20060101ALI20241004BHJP
F16H 59/12 20060101ALI20241004BHJP
F16H 59/18 20060101ALI20241004BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20241004BHJP
B60W 10/11 20120101ALI20241004BHJP
F02D 29/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B60W10/00 106
B60K26/02
F16H59/12
F16H59/18
B60W10/06
B60W10/11
F02D29/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024028739
(22)【出願日】2024-02-28
(31)【優先権主張番号】202310336518.1
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】森川 政紀
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 一也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徳明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 菜月
【テーマコード(参考)】
3D037
3D241
3G093
3J552
【Fターム(参考)】
3D037EB03
3D037EB16
3D241AA23
3D241AB01
3D241AC01
3D241AC15
3D241AD10
3D241AE12
3D241AE14
3D241AE30
3G093AA05
3G093AA07
3G093BA19
3G093CA06
3G093CB07
3G093DA06
3G093EA01
3G093EB03
3J552MA01
3J552RA28
3J552RB12
3J552SB02
3J552VD01W
3J552VD16W
3J552VD17W
(57)【要約】
【課題】ドライバーの意思で惰性走行モードの起動と解除を行える車両の制御装置を提供する。
【解決手段】車両の制御装置1は、エンジン2で発生した動力を駆動軸7へと伝達しない惰性走行モードに切り換え可能である。この車両の制御装置1は、車両の減速度を変更可能な複数の減速段を有する減速部と、操舵部11に設けられ、ドライバーの操作に応じて惰性走行モードが選択可能な操作部10と、を備え、操作部10の操作により惰性走行モードが選択された場合に、惰性走行モードに移行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源で発生した動力を駆動軸へと伝達しない惰性走行モードに切り換え可能な車両の制御装置であって、
前記車両の減速度を変更可能な複数の減速段を有する減速部と、
操舵部に設けられ、ドライバーの操作に応じて前記惰性走行モードが選択可能な操作部と、を備え、
前記操作部の操作により前記惰性走行モードが選択された場合に、前記惰性走行モードに移行する、車両の制御装置。
【請求項2】
前記操作部は、前記複数の減速段を変更可能なシフト装置であり、
前記シフト装置は、
現在選択されている減速段の減速度よりも減速度の小さな減速段に切り換え可能な第1操作部と、
現在選択されている減速段の減速度よりも減速度の大きな減速段に切り換え可能な第2操作部と、を有し、
前記第1操作部及び前記第2操作部のどちらか一方の操作により前記惰性走行モードに移行する、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
ドライバーの操作に基づいて前記複数の減速段を切り換え可能な固定変速モードと、
前記車両の走行状態に基づいて前記複数の減速段を切り換え可能な自動変速モードと、を有する車両の制御装置であって、
前記シフト装置は、パドルシフトであり、
前記第1操作部の操作状態が第1所定時間継続する場合に、前記自動変速モード且つ前記惰性走行モードに移行し、
前記第1操作部の操作状態が前記第1所定時間より長い第2所定時間継続する場合に、前記固定変速モード且つ前記惰性走行モードに移行する、請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記第2操作部の操作により前記惰性走行モードが解除される、請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記自動変速モード且つ前記惰性走行モードの場合にドライバーによるアクセル操作子の操作を検出するアクセル操作検出部を備え、
前記アクセル操作検出部がドライバーによるアクセル操作子の操作を検出した場合に、前記惰性走行モードが解除される、請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記複数の減速段は、前記惰性走行モードの場合に選択される減速段の減速度よりも減速度の大きな第1減速段を含み、
前記惰性走行モードの場合において、前記第2操作部の操作状態が前記第1所定時間継続するときに、前記第1減速段に切り換えられる、請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記車両が前記第1減速段で走行している場合において、前記第1操作部及び前記第2操作部のいずれか一方の操作状態が前記第2所定時間継続するときに、前記固定変速モードと前記自動変速モードを切り換える、請求項6に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能且つ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する燃費向上に関する研究開発が行われている。
【0003】
例えば、燃費向上を目的として、コースティング走行モード(惰性走行モードともいう)を搭載した車両が知られている。このコースティング走行モードは、アクセルペダルの踏み込みを解除すると自動的にクラッチが切れ、エンジンがアイドリング状態になり、緩やかに速度が落ちる機能を有する。
【0004】
コースティング走行モードを使用する道の種類としては、緩やかな坂・高速道路等であり、エンジンブレーキをあまり効かせたくない、すなわち緩やかに速度を落としたいシチュエーションに有効である。このため、車両、具体的にはECU等に設けた走行モード設定部が道路状態を含む走行状況を自動で判断して、コースティング走行モードを起動し又は解除する。
【0005】
例えば、特許文献1は、車両が惰性走行許可条件を判定し、エンジンの出力軸と変速機の入力軸を接続するクラッチを自動で断接して惰性走行を行っている技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1が開示している技術は、車両、具体的にはECU等に設けた走行モード設定部が自動でコースティング走行モードの起動と解除を選択して実施しているため、ドライバーの意思でコースティング走行モードの起動と解除を行えない点で改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、ドライバーの意思で惰性走行モードの起動と解除を行える車両の制御装置を提供することを目的とする。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る車両の制御装置(例えば、後述する車両の制御装置1)は、動力源(例えば、後述するエンジン2)で発生した動力を駆動軸(例えば、後述する駆動軸7)へと伝達しない惰性走行モードに切り換え可能な車両の制御装置であって、前記車両の減速度を変更可能な複数の減速段を有する減速部(例えば、後述するECU9,モータ15)と、操舵部(例えば、後述する操舵部11)に設けられ、ドライバーの操作に応じて前記惰性走行モードが選択可能な操作部(例えば、後述する操作部10)と、を備え、前記操作部の操作により前記惰性走行モードが選択された場合に、前記惰性走行モードに移行する。
【0010】
(1)の発明に係る車両の制御装置によれば、ドライバーが任意のタイミング且つ一操作で(手動で)惰性走行モードに移行することができる。より詳しくは、ドライバーが任意のタイミング且つ一操作で(手動で)、コースティング走行の開始、及びコースティング走行への切り換え予約に移行することができるため、操作負荷を低減できるシーンやできないシーンはドライバーが判断するドライバー主体の走行となり、商品性が向上する。また、操舵部(ハンドル)に操作部が設けられていることで、ドライバーが走行中であっても惰性走行モードに切り換えることが容易であるため、操作性が向上する。
【0011】
(2) (1)の車両の制御装置において、前記操作部は、前記複数の減速段を変更可能なシフト装置であり、前記シフト装置は、現在選択されている減速段の減速度よりも減速度の小さな減速段に切り換え可能な第1操作部(例えば、後述するプラスパドル10a)と、現在選択されている減速段の減速度よりも減速度の大きな減速段に切り換え可能な第2操作部(例えば、後述するマイナスパドル10b)と、を有し、前記第1操作部及び前記第2操作部のどちらか一方の操作により前記惰性走行モードに移行することが好ましい。
【0012】
(2)の発明に係る車両の制御装置によれば、ドライバーが任意のタイミング且つ一操作で(手動で)惰性走行モードに移行することができ、操作負荷を低減できるシーンやできないシーンはドライバーが判断するドライバー主体の走行となり、商品性が向上する。また、シフト装置(パドルシフト・トグルスイッチ等)による操作を行うため、ドライバーが直感的に操作することができる。
【0013】
(3) (2)の車両の制御装置は、ドライバーの操作に基づいて前記複数の減速段を切り換え可能な固定変速モードと、前記車両の走行状態に基づいて前記複数の減速段を切り換え可能な自動変速モードと、を有する車両の制御装置であって、前記シフト装置は、パドルシフトであり、前記第1操作部の操作状態が第1所定時間継続する場合に、前記自動変速モード且つ前記惰性走行モードに移行し、前記第1操作部の操作状態が前記第1所定時間より長い第2所定時間継続する場合に、前記固定変速モード且つ前記惰性走行モードに移行することが好ましい。
【0014】
(3)の発明に係る車両の制御装置によれば、第1操作部(プラスパドル)を操作することで、固定変速モード且つ惰性走行モード、及び自動変速モード且つ惰性走行モードのいずれかに切り換えることができ、商品性が向上する。また、第1操作部の操作に基づいてドライバーの意図に沿った減速部(自動変速機)のモードに切り換えることができ、商品性が向上する。
【0015】
(4) (1)~(3)いずれかの車両の制御装置において、前記第2操作部の操作により前記惰性走行モードが解除されることが好ましい。
【0016】
(4)の発明に係る車両の制御装置によれば、惰性走行モードに切り換えるための第1操作部(プラスパドル)ではなく、第2操作部(マイナスパドル)を操作することで惰性走行モードが解除されるため、ドライバーは操作を直感的に行うことができ、商品性が向上する。
【0017】
(5) (1)~(3)いずれかの車両の制御装置において、前記自動変速モード且つ前記惰性走行モードの場合にドライバーによるアクセル操作子(例えば、後述するアクセル操作子14)の操作を検出するアクセル操作検出部(例えば、後述するアクセル操作検出部13)を備え、前記アクセル操作検出部がドライバーによるアクセル操作子の操作を検出した場合に、前記惰性走行モードが解除されることが好ましい。
【0018】
(5)の発明に係る車両の制御装置によれば、アクセル操作子を操作することで惰性走行モードが解除されるため、ドライバーは操作を直感的に行うことができ、商品性が向上する。
【0019】
(6) (4)の車両の制御装置において、前記複数の減速段は、前記惰性走行モードの場合に選択される減速段の減速度よりも減速度の大きな第1減速段を含み、前記惰性走行モードの場合において、前記第2操作部の操作状態が前記第1所定時間継続するときに、前記第1減速段に切り換えられることが好ましい。
【0020】
(6)の発明に係る車両の制御装置によれば、惰性走行モードに切り換えるための第1操作部(プラスパドル)ではなく、第2操作部(マイナスパドル)を操作することで第1減速段に切り換えられてシフトアップするため、ドライバーは操作を直感的に行うことができ、商品性が向上する。
【0021】
(7) (6)の車両の制御装置は、前記車両が前記第1減速段で走行している場合において、前記第1操作部及び前記第2操作部のいずれか一方の操作状態が前記第2所定時間継続するときに、前記固定変速モードと前記自動変速モードを切り換えることが好ましい。
【0022】
(7)の発明に係る車両の制御装置によれば、操作部の操作状態が第2所定時間継続するときに、固定変速モード及び自動変速モードを相互に切り換えることができる。これにより、ドライバーは操作を直感的に行うことができ、商品性が向上する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ドライバーの意思で惰性走行モードの起動と解除を行える。延いてはエネルギーの効率化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の制御装置の構成を示す概略図である。
【
図2】複数の減速段の遷移を説明する概略図である。
【
図3】走行モードの現在状態と、操作と、振る舞いと、の関係を示す一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
まず、
図1を用いて、本発明の実施形態に係る車両の制御装置1の構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の制御装置1の構成を示す概略図である。
【0027】
図1に示す車両の制御装置1は、通常の走行時に用いられる走行モードであるDレンジから、エンジン2で発生した動力を左右一対の駆動軸7へと伝達しない惰性走行モードに切り換え可能である。この車両の制御装置1は、ドライバーの操作に基づいて複数の減速段を切り換え可能な固定変速モードと、車両の走行状態に基づいて複数の減速段を切り換え可能な自動変速モードと、を有する。
【0028】
具体的に、車両の制御装置1は、エンジン(動力源)2と、クラッチ3と、自動変速機(減速部)4と、油圧回路5と、差動機構6と、左右一対の駆動軸7と、左右一対の駆動輪8と、ECU(Electric Control Unit)9と、プラスパドル10a及びマイナスパドル10bを有する操作部(シフト装置、パドルシフト)10と、操舵部11と、走行状態検出部12と、アクセル操作検出部(アクセル操作検出部)13と、アクセル操作子14と、モータ15と、バッテリ16と、等を備える。
【0029】
エンジン2は、車両の動力を発生させる動力源である。本実施形態では、エンジン2に加えてモータ15が組み合わされたハイブリッドエンジンが採用されているが、これに限定されない。ハイブリッドエンジンで発生した動力は、クラッチ3、自動変速機4及び差動機構6を介して、左右一対の駆動輪8が取り付けられた左右一対の駆動軸7に伝達される。
【0030】
クラッチ3は、油圧回路5から供給される作動油による圧力(油圧)に応じて、ハイブリッドエンジンで発生し左右一対の駆動軸7に伝達される動力の伝達経路を切断する。このクラッチ3は、惰性走行モードに切り換えられた場合に、ハイブリッドエンジンで発生し左右一対の駆動軸7に伝達される動力の伝達経路を切断する。
【0031】
自動変速機4は、油圧回路5から供給される作動油による圧力(油圧)に応じて、変速比を調整する。
【0032】
油圧回路5は、ECU9による制御に基づいて、クラッチ3及び自動変速機4に作動油の圧力(油圧)を供給する。
【0033】
差動機構6は、ハイブリッドエンジンで発生しクラッチ3及び自動変速機4を介して伝達される動力を左右一対の駆動軸7に分配する。左右一対の駆動軸7には、それぞれ、左右一対の駆動輪8が取り付けられている。左右一対の駆動輪8は、左右一対の駆動軸7を介して伝達された動力を車両の推進力に変換する。
【0034】
ECU9は、操作部10、走行状態検出部12及びアクセル操作検出部13等からの入力に基づいて、エンジン2、モータ15、バッテリ16及び油圧回路5等を制御する。このECU9は、メモリ(図示省略)に格納されたコンピュータプログラムを読み出して実行することによって、各種処理を実施する。
【0035】
ECU9及びモータ15は、本実施形態の減速部を構成する。本実施形態の減速部は、車両の減速度を変更可能な複数の減速段を有する。複数の減速段は、惰性走行モードの場合に選択される減速段の減速度よりも減速度の大きな第1減速段を含む。
【0036】
ここで、モータ15は、ドライバーがアクセル操作子14(アクセルペダル)を踏んで加速するときには駆動力を生成する一方で、ドライバーがアクセル操作子14から足を離して減速するときには逆の力が働いて発電機になる。この発電に要する力が、駆動輪8の回転の抵抗になって回生ブレーキとして機能するところ、本実施形態の減速部は、ECU9によってモータ15の回転を制御することにより、この回生ブレーキの強さを段階的に分けて変更可能である。具体的には、後述する減速セレクターと呼ばれるプラスパドル10a及びマイナスパドル10bに対するドライバーの操作に応じて、本実施形態の減速部は車両の減速度を段階的に変更可能である。
【0037】
操作部10は、操舵部11に設けられ、ドライバーの操作に応じて惰性走行モードが選択可能である。操作部10の操作により惰性走行モードが選択された場合に、惰性走行モードに移行する。
【0038】
この操作部10は、複数の減速段を変更可能なシフト装置である。シフト装置である操作部10は、プラスパドル(第1操作部)10aと、マイナスパドル(第2操作部)10bと、を有する。プラスパドル10aは、現在選択されている減速段の減速度よりも減速度の小さな減速段に切り換え可能である。マイナスパドル10bは、現在選択されている減速段の減速度よりも減速度の大きな減速段に切り換え可能である。プラスパドル10aの操作により惰性走行モードに移行する。
【0039】
シフト装置である操作部10は、パドルシフトである。プラスパドル10aの操作状態が第1所定時間継続する場合に、自動変速モード且つ惰性走行モードに移行する。プラスパドル10aの操作状態が第1所定時間より長い第2所定時間継続する場合に、固定変速モード且つ惰性走行モードに移行する。
【0040】
また、マイナスパドル10bの操作により、惰性走行モードが解除される。
【0041】
惰性走行モードの場合において、マイナスパドル10bの操作状態が第1所定時間継続するときに、第1減速段に切り換えられる。
【0042】
車両が第1減速段で走行している場合において、プラスパドル10a及びマイナスパドル10bのいずれか一方の操作状態が、第1所定時間より長い第2所定時間継続するときに、固定変速モードと自動変速モードを切り換える。
【0043】
走行状態検出部12は、車両の走行状態を検出する。この走行状態検出部12は、検出した車両の走行状態について、その検出信号をECU9に入力する。
【0044】
アクセル操作検出部13は、自動変速モード且つ惰性走行モードの場合にドライバーによるアクセル操作子14の操作を検出する。このアクセル操作検出部13は、アクセル操作子14の操作を検出した場合に、その検出信号をECU9に入力する。アクセル操作検出部13がドライバーによるアクセル操作子14の操作を検出した場合に、惰性走行モードが解除される。
【0045】
モータ15は、エンジン2の動力により回転させられて発電を行う。その一方で、モータ15は、バッテリ16の電力を利用して車両の動力を発生させる動力源を兼ねる。
【0046】
バッテリ16は、モータ15により発電した電力を充電する。
【0047】
次に、
図2及び
図3を用いて、本実施形態の減速部における複数の減速段及びその遷移について説明する。
図2は、複数の減速段の遷移を説明する概略図である。
図3は、走行モードの現在状態と、操作と、振る舞いと、の関係を示す一覧表である。
【0048】
図2に示すように、複数の減速段は、惰性走行モード(コースティング走行モード)の場合に選択される減速段である第0減速段と、惰性走行モードの場合に選択される減速段である第0減速段の減速度よりも減速度の大きな第1減速段と、第1減速段の減速度よりも減速度の大きな第2減速段と、第2減速段の減速度よりも減速度の大きな第3減速段と、第3減速段の減速度よりも減速度の大きな第4減速段と、第4減速段の減速度よりも減速度の大きな第5減速段と、第5減速段の減速度よりも減速度の大きな第6減速段と、を含む。
【0049】
図2及び
図3に示すように、通常の走行時に用いられる走行モードであるDレンジの場合において、プラスパドル10aの操作状態が第1所定時間継続する「+パドル引き」が行われたときに、スマートコースティングが起動して、自動変速モード且つ惰性走行モード(コースティング走行モード)に、すなわち自動変速モードの第0段に切り換えられる。
【0050】
なお、スマートコースティングの使用想定シーンは、遠くの目標物までの距離調整時である。具体的には、例えば、前走車との距離があるため穏やかに減速し車間を調整したい時や、交差点まで距離があるため穏やかに減速し距離や車速を調整したい時等である。この時、プラスパドル10aで減速力を抜いて穏やかに減速し、後述するように、再加速時は自動でDレンジに復帰する。
【0051】
Dレンジの場合において、プラスパドル10aの操作状態が第1所定時間より長い第2所定時間継続する「+パドル長引き」が行われたときに、固定コースティングが起動して、固定変速モード且つ惰性走行モード(コースティング走行モード)に、すなわち固定変速モードの第0段に切り換えられる。
【0052】
なお、固定コースティングの使用想定シーンは、アクセル操作子14による減速コントロール範囲を拡大し、加速度コントロール性を向上させたい時である。具体的には、例えば、渋滞での追従走行で車間が狭いため穏やかに減速し車間を調整したい時や、一定から加速降坂で勾配の影響により車両が加減速せずに楽に走行したい時等である。
【0053】
スマートコースティングの場合において、マイナスパドル10bの操作状態が第1所定時間継続する「-パドル引き」が行われたときに、惰性走行モードが解除されて自動変速モードの第2減速段に切り換えられる。
【0054】
スマートコースティングの場合において、マイナスパドル10bの操作状態が第2所定時間継続する「-パドル長引き」が行われたときに、惰性走行モードが解除されると共に、自動変速モードから固定変速モードに切り換えられ、固定変速モードの第2段に遷移する。
【0055】
スマートコースティングの場合において、アクセル操作検出部13がドライバーによるアクセル操作子14の操作を検出したときに、惰性走行モードが解除されてDレンジに遷移する。
【0056】
固定コースティングの場合において、マイナスパドル10bの操作状態が第1所定時間継続する「-パドル引き」が行われたときに、惰性走行モードが解除されて固定変速モードの第1段に切り換えられる。
【0057】
固定コースティングの場合において、マイナスパドル10bの操作状態が第2所定時間継続する「-パドル長引き」が行われたときに、惰性走行モードが解除されると共に、固定変速モードから自動変速モードに切り換えられ、自動変速モードの第1段に遷移する。
【0058】
車両の制御装置1によれば、ドライバーが任意のタイミング且つ一操作で(手動で)惰性走行モードに移行することができる。より詳しくは、ドライバーが任意のタイミング且つ一操作で(手動で)、コースティング走行の開始、及びコースティング走行への切り換え予約に移行することができるため、操作負荷を低減できるシーンやできないシーンはドライバーが判断するドライバー主体の走行となり、商品性が向上する。また、操舵部(ハンドル)11に操作部10が設けられていることで、ドライバーが走行中であっても惰性走行モードに切り換えることが容易であるため、操作性が向上する。
【0059】
ドライバー主体とは、例えば、ワインディング路を自分の意思で積極的に加減速操作して走行するシチュエーションでは、コースティング走行に移行しない走行モードとして、車両を操る楽しさを優先し、低燃費走行をしたいシチュエーションでは、コースティング走行する惰性走行モードに切り換え可能とすることで、ドライバーの意思に応じた運転環境を提供できる。
【0060】
また、車両の制御装置1によれば、ドライバーが任意のタイミング且つ一操作で(手動で)惰性走行モードに移行することができ、操作負荷を低減できるシーンやできないシーンはドライバーが判断するドライバー主体の走行となり、商品性が向上する。また、シフト装置(パドルシフト(プラスパドル10a、マイナスパドル10b)・トグルスイッチ等)である操作部10による操作を行うため、ドライバーが直感的に操作することができる。
【0061】
また、車両の制御装置1によれば、プラスパドル(第1操作部)10aを操作することで、固定変速モード且つ惰性走行モード、及び自動変速モード且つ惰性走行モードのいずれかに切り換えることができ、商品性が向上する。また、プラスパドル(第1操作部)10aの操作に基づいてドライバーの意図に沿った自動変速機(減速部)4のモードに切り換えることができ、商品性が向上する。
【0062】
また、車両の制御装置1によれば、惰性走行モードに切り換えるためのプラスパドル(第1操作部)10aではなく、マイナスパドル(第2操作部)10bを操作することで惰性走行モードが解除されるため、ドライバーは操作を直感的に行うことができ、商品性が向上する。
【0063】
また、車両の制御装置1によれば、アクセル操作子14を操作することで惰性走行モードが解除されるため、ドライバーは操作を直感的に行うことができ、商品性が向上する。
【0064】
また、車両の制御装置1によれば、惰性走行モードに切り換えるためのプラスパドル(第1操作部)10aではなく、マイナスパドル(第2操作部)10bを操作することで第1減速段に切り換えられてシフトアップするため、ドライバーは、操作を直感的に行うことができ、商品性が向上する。
【0065】
また、車両の制御装置1によれば、操作部10の操作状態が第2所定時間継続するときに、固定変速モード及び自動変速モードを相互に切り換えることができる。これにより、ドライバーは操作を直感的に行うことができ、商品性が向上する。
【0066】
最後に、ドライバーの操作によって手動で惰性走行モード(コースティング走行モード)への切り換えを実施する車両の制御装置1における惰性走行モードの特徴を以下に纏める。
【0067】
まず、本実施形態に係る車両の制御装置1における惰性走行モードは、ドライバーの操作により起動し、又は解除する。本実施形態の惰性走行モードは、操作負荷の低減を目的とし、操作負荷を低減できるシーンやできないシーンは、ドライバーが判断する。
【0068】
また、本実施形態の惰性走行モードのドライバーによる操作は、プラスパドル10aの一操作とする。惰性走行モードは、必要な時に素早く安全に起動させ、運転中に一操作で操舵部(ステアリング)11から手を離すことなく操作ができる。
【0069】
また、本実施形態の惰性走行モードは、自動変速モード及び固定変速モード共に設定する。交差点等は一時的に惰性走行モードで走行させ、長い降坂時は断続的に惰性走行モードで走行させる等、走行シーンに応じて自動変速モード及び固定変速モードを使い分けることができる。
【0070】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0071】
上記実施形態では、プラスパドル10aの操作により惰性走行モードに移行する場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、プラスパドル10a及びマイナスパドル10bのどちらか一方の操作により惰性走行モードに移行するものであればよい。すなわち、本発明は、マイナスパドル10bの操作により惰性走行モードに移行するものであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 車両の制御装置
2 エンジン(動力源)
3 クラッチ
4 自動変速機
5 油圧回路
6 差動機構
7 駆動軸
8 駆動輪
9 ECU(変速部)
10 操作部(シフト装置、パドルシフト)
10a プラスパドル(第1操作部)
10b マイナスパドル(第2操作部)
11 操舵部
12 走行状態検出部
13 アクセル操作検出部
14 アクセル操作子
15 モータ(変速部)
16 バッテリ