(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146789
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】誘導型角度位置センサ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20241004BHJP
G01D 5/12 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01D5/20 110E
G01D5/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024033076
(22)【出願日】2024-03-05
(31)【優先権主張番号】18/194,215
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】300057230
【氏名又は名称】セミコンダクター・コンポーネンツ・インダストリーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベルタン, ジャック ジャン
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA24
2F077FF03
2F077FF16
2F077TT82
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可動素子の角度を測定する誘導型センサを提供する。
【解決手段】誘導型センサは、電力が失われても回転を正しく追跡できるように、バッテリ電源を使用して誘導型センサを動作させることが望ましい。エネルギーを浪費せずに高速測定が可能な非共振ドライバや、デジタル化や複雑な処理を必要とせずに範囲内で角度を推定できる差分エンコーダなど、電力を節約する回路が含まれている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導型センサであって、
励磁器コイルと、
前記励磁器コイルに結合された非共振ドライバであって、前記励磁器コイルを電圧源の正端子と負端子との間で交互に切り替えて前記励磁器コイル内に励磁電流を発生させるように構成され、前記励磁電流が三角形状の振幅を有する、非共振ドライバと、
複数の受信機コイルと、
可動素子に機械的に結合されたロータコイルであって、ロータコイルと複数の受信機コイルとの間の角度依存性誘導結合に従って、前記励磁電流によって生成された磁場を複数の受信機コイルに結合するように構成され、前記磁場が、前記複数の受信機コイルで複数のコイル電圧を生成する、ロータコイルと、
前記複数のコイル電圧を比較して前記可動素子の角度測定を決定するように構成された差分エンコーダと、を備える、誘導型センサ。
【請求項2】
測定期間の開始時に、前記非共振ドライバが、スリープ状態から作動して前記励磁器コイルを前記正端子と前記負端子との間で交互に切り替え、前記非共振ドライバが、作動した直後に、前記複数のコイル電圧を測定する準備ができている、請求項1に記載の誘導型センサ。
【請求項3】
前記非共振ドライバが、前記励磁電流の共振周波数に基づかないスイッチング周波数で、前記励磁器コイルを前記電圧源の前記正端子と前記負端子との間で交互に切り替えるように構成されている、請求項1に記載の誘導型センサ。
【請求項4】
第1の受信機コイルであって、前記第1の受信機コイルに結合された前記磁場が前記第1の受信機コイルで第1のコイル電圧が生成される、第1の受信機コイルと、
第2の受信機コイルであって、前記第2の受信機コイルに結合された前記磁場が前記第2の受信機コイルで第2のコイル電圧が生成される、第2の受信機コイルと、
第3の受信機コイルであって、前記第3の受信機コイルに結合された前記磁場が前記第3の受信機コイルで第3のコイル電圧が生成される、第3の受信機コイルと、
前記第1のコイル電圧と前記第2のコイル電圧との第1の比較を生成するように構成された第1のコンパレータと、
前記第2のコイル電圧と前記第3のコイル電圧との第2の比較を生成するように構成された第2のコンパレータと、
前記第3のコイル電圧と前記第1のコイル電圧との第3の比較を生成するように構成された第3のコンパレータと、
前記第1の比較、前記第2の比較、及び前記第3の比較に基づいて角度状態を決定するように構成された状態機械であって、前記角度状態が前記可動素子の前記角度測定に対応している、状態機械と、を更に備える、請求項1に記載の誘導型センサ。
【請求項5】
前記誘導型センサが、前記状態機械の経時的な角度状態遷移を検出して、回転数を調整するか、又は、前記角度測定のサンプリングレートに対する前記可動素子の速度を推定するようなソフトウェア命令によって構成されたプロセッサを更に含む、請求項4に記載の誘導型センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2023年3月31日に出願された米国特許出願第18/194,215号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、誘導型角度位置センサ、より具体的には誘導型角度位置センサの角度及び/又は回転数を追跡するように構成されたトランスデューサインターフェースに関する。
【背景技術】
【0003】
誘導型角度位置センサは、旋回する素子とともに移動するロータコイルと静止コイルの間の磁気結合(誘導結合)の変化を検知することにより、旋回する素子の角度位置を測定するために使用することができる。誘導結合の変化に対応する信号は、旋回する素子が移動するにつれて繰り返されることがある。したがって、誘導型センサは、旋回する素子の測定を一定間隔で行って運動を測定するように構成することができる。これらの測定には、旋回する素子が完了した回旋の数に基づく回転数が含まれ得る。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、他のアプローチよりも速く、より少ない消費電力を可能にするアプローチを使用して、可動素子の角度を測定し、回転を検出するためのシステム、装置、及び方法を説明する。開示されたアプローチは、バッテリ電力で動作している間の誘導型センサの動作寿命を増加させるなど、一部の技術的利点を提供する可能性がある。
【0005】
一部の態様では、本明細書で説明される技術は、励磁器コイルと、励磁器コイルに結合された非共振ドライバであって、励磁器コイルを電圧源の正端子と負端子との間で交互に切り替えて励磁器コイル内に励磁電流を発生させるように構成され、励磁電流が三角形状の振幅を有する、非共振ドライバと、複数の受信機コイルと、可動素子に機械的に結合されたロータコイルであって、ロータコイルと複数の受信機コイルとの間の角度依存性誘導結合に従って、励磁電流によって生成された磁場を複数の受信機コイルに結合するように構成され、磁場が、複数の受信機コイルで複数のコイル電圧を生成する、ロータコイルと、複数のコイル電圧を比較して可動素子の角度測定を決定するように構成された差分エンコーダと、を備える、誘導型センサに関する。
【0006】
一部の態様では、本明細書で説明される技術は、角度を測定する方法であって、トランスデューサのロータコイルをある角度に移動させることと、非共振ドライバを使用して、測定期間中にトランスデューサの励磁器コイルを電圧源の正端子と負端子との間で交互に切り替えて、非正弦波振幅を有する励磁電流を生成することと、ロータコイル複数の受信機コイルの1つの各々との間の角度依存性誘導結合に基づいて、複数の受信機コイルで複数のコイル電圧を生成することと、差分エンコーダを使用して複数のコイル電圧を比較して角度を測定することと、を含む方法に関する。
【0007】
一部の態様では、本明細書で説明される技術は、コントローラと、通信チャネルと、電源から電力が供給されていない間、バッテリ電源を使用して低電力モードで角度測定を捕捉するように構成された誘導型センサであって、低電力モードで、励磁器コイルを電圧源の正端子と負端子との間で交互に切り替えて、励磁器コイル内に励磁電流を生成することと、ロータコイルの位置に対応する複数のコイル電圧を複数の受信機コイルで受信することと、複数のコイル電圧を比較して、複数の比較を決定することと、複数の比較に基づいて状態機械の角度状態を決定することであって、角度状態は、ロータコイルに機械的に結合された可動素子の角度測定に対応する、決定することと、を行うように構成されている、誘導型センサと、を含む、角運動を測定するためのシステムに関する。
【0008】
前述の例解的な概要、並びに本開示の他の例示的な目的及び/又は利点、並びにそれらが達成される様式は、以下の詳細な説明及びその添付図面内で更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の可能な実装形態による、角度測定システムを例解している。
【
図2】本開示の可能な実装形態による、トランスデューサの上面図である。
【
図3】
図2に示すトランスデューサの回路モデルを概略的に例解している。
【
図4】本開示の可能な実装形態による、非共振ドライバの概略図である。
【
図5】本開示の可能な実装形態による、トランスデューサインターフェースにおける信号のグラフを含む。
【
図6】本開示の可能な実装形態による、経時的な角度測定の態様を例解している。
【
図7】本開示の可能な実装形態による、ある角度範囲の受信機コイル電圧を例解している。
【
図8】本開示の可能な実装形態による、差分エンコーダの概略図である。
【
図9A】本開示の可能な実装形態による、可動素子の異なる速度に対する状態機械の角度状態遷移を例解している。
【
図9B】本開示の可能な実装形態による、可動素子の異なる速度に対する状態機械の角度状態遷移を例解している。
【
図9C】本開示の可能な実装形態による、可動素子の異なる速度に対する状態機械の角度状態遷移を例解している。
【
図10】本開示の可能な実装形態による、可動素子の角度測定を行う方法のフローチャートである。
【0010】
図面の構成要素は、必ずしも互いに対して一定の縮尺ではない。複数の図面を通して、同様の参照番号は対応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
誘導型角度位置センサ(すなわち、誘導型センサ)は、移動するコイル(すなわち、ロータコイル)と少なくとも1つの静止コイル(すなわち、受信機コイル(複数可))の相互インダクタンスに基づいて角度(すなわち、θ)の測定を生成する。例えば、2つの同一の受信機コイルを機械的に配設して、それらの信号がロータコイルの角度の三角関数(すなわち、正弦関数、余弦関数)を形成することができる。一部の実装形態では、3つの受信機コイルを機械的に配設して、信号が互いに位相角(例えば、120°)になるようにすることができる。この配置では、追加の受信機コイルがコイル信号からの角度の計算に役立つ(例えば、その分解能を増加させる)場合がある。
【0012】
誘導型センサは、増分角度測定(例えば、θが、最後の度から+/-1度である)又は絶対測定角度測定(例えば、θが、0~360度の範囲にある)を生成することができる。角度を絶対値で測定するように構成された誘導型センサの特徴の1つは、回転数(N)をカウントすることである。これは、誘導型センサに電源が供給されていない間に運動が発生する場合があるため、誘導型センサがその角度を継続的に監視する必要があり得る。例えば、モータを監視する誘導型センサは、モータとセンサの電源がオフに切り替わった後(例えば、節電のため)でも、モータの慣性により、モータが回転し続けることがある。したがって、誘導型センサは、電源がオフのときに測定した電力を供給するためのバッテリを含み得る。例えば、誘導型センサは、バッテリにより電力を供給されている間は低電力モードで動作し、電源により電力を供給されている間は高電力モードで動作し得る。本開示は、低電力モードで動作するように構成された誘導型センサを説明する。
【0013】
低電力モードで動作している間は、バッテリの寿命(すなわち、誘導型センサの動作寿命)を延ばすために電力効率の高い測定が望ましい場合がある。これまでのアプローチでは、角度測定のためにセンサ内のコイルを駆動するために共振回路を使用してきた。これらの共振測定アプローチでは、測定を行う前に共振回路を完全に充電する(すなわち、エネルギーを蓄える)必要がある。測定が行われた後、充電された共振回路は放電され(例えば、共振回路の抵抗によって)、それによって蓄積されたエネルギーが消散される(そして浪費する)。この浪費されたエネルギーは、誘導型センサの動作寿命を低減する場合がある。
【0014】
本開示は、共振測定アプローチよりも速く、より電力効率の良い角度を測定できる非共振測定アプローチについて説明する。開示されたアプローチは、(低電力)アナログ回路を使用して計算できる、各受信機コイルからのコイル電圧間の差に基づいて測定を計算することによって更にエネルギーを節約する。したがって、角度測定のため開示されたアプローチは、誘導型センサが低電力モードで動作できる時間を増加させ得る。
【0015】
図1は、本開示の可能な実装形態による、角度測定システムを例解している。角度測定システム100は、誘導型センサ110のトランスデューサ200内の少なくとも1つのロータコイル(すなわち、ロータコイル220)を移動(すなわち、旋回)するように構成されている可動素子101(例えば、モータシャフト)を含む。示されるように、トランスデューサ200は、トランスデューサインターフェース120から受信した励磁電流201を、トランスデューサインターフェース120に送り返される複数のコイル信号(例:コイル電圧202)に変換し得る。複数のコイル電圧202は各々、可動素子101が旋回するにつれて正弦波的に変化する振幅を有する102。したがって、可動素子101の角度位置の測定(すなわち角度測定)は、コイル電圧202に基づいて決定され得る。
【0016】
誘導型センサ110は、電源105と結合したときに高電力モードで動作し、(示されるように)電源105から脱結合されたときに低電力モードで動作し得る。高電力モードでは、角度位置の測定(すなわち、角度測定)は低電力モードよりも正確になり得る。低電力モードでの角度測定の理由の1つは、角度位置の測定に基づいて回転数(N)を追跡することである。このため、高精度の角度測定は必要ない場合がある。しかしながら、角度測定が行われる速度は、出力を過度に浪費することなく回転を検出するのに十分である必要がある。本開示は、低電力モードで動作する誘導型センサ110が可動素子101の角度と回転数を粗く測定するために必要な動作及び回路の詳細を提供する。
【0017】
図1に示すように、電源105は誘導型センサ110から脱結合されている。この状態では、誘導型センサは、バッテリ150からのエネルギーを使用して低電力モードで電気的に動作することができる。したがって、誘導型センサ110は、脱結合を検出し(図示せず)、角度測定の高電力モード用の回路(図示せず)から角度測定の低電力モード用の回路(図示せず)に切り替えるための回路を含み得る(
図1に示されるように)。
【0018】
誘導型センサ110は、トランスデューサインターフェース120から信号を受信するように設定されたプロセッサ130を更に含む。信号は可動素子101の角度に従って符号化されたアナログ信号であり得る。したがって、プロセッサ130は、アナログ信号をデジタル化するためのアナログ-デジタルコンバータ(analog-to-digital converter、ADC)を含み得る。プロセッサは、動作及び角度測定に関連付けられるプロセスを実施するために、非一時的ではないンピュータ読み取り可能メディア(すなわち、メモリ140)から呼び出されるソフトウェア命令によって構成され得る。例えば、動作及びプロセスは、角度を決定すること、回転数を決定すること、運動の方向を決定すること、及び/又は運動の速度を決定することを含むことができる。
【0019】
誘導型センサ110によって決定される角度測定は、可動素子101に対応する角度の範囲を含み得、この範囲は、誘導型センサの角度分解能である。角度測定は、可動素子101が旋回したとき102に完了した完全な旋回の数(すなわち、回旋)に基づく回転数を更に含み得る。誘導型センサ110は、回転数をメモリ140に保存するように構成し得る。1つの可能な実装形態では、電源105を誘導型センサ110に再結合した後、保存された回転数を呼び出して、可動素子101の角度測定を決定するために使用され得る。
【0020】
誘導型センサ110は、誘導型センサ110の角度測定を他のデバイスに報告(通信)するように構成された通信インターフェース160を含み得る。角度測定は、メモリ140に保存され、通信リンク170(例えば、有線又は無線)を介して通信チャネル195(例えば、バス)に通信され得る。通信チャネル195は、誘導型センサを、角度測定を使用して可動素子101を監視及び制御するように構成することができるコントローラ190に通信的に接続することができる。通信チャネルは、他の誘導型センサ180をコントローラ190に更に通信的に結合することができる。例えば、コントローラ190は、ロボットアームの複数の関節の複数の角度を測定する複数の誘導型センサを用いてロボットアームを制御し得る。この例では、各誘導型センサがその位置をコントローラ190に通信し、これは、ロボットアームの全体的な位置を計算することができる。コントローラ190は次に、この全体的な位置に基づいてロボットアームを制御し得る。
【0021】
可能な実装形態では、誘導型センサ110のプロセッサ130は、以前の角度測定に基づいて角度測定プロセスの態様を制御するように更に構成され得る。例えば、プロセッサ130は、トランスデューサインターフェース120が受信機コイルからの信号を捕捉して符号化するレート(サンプリングレート)を制御し得る。この制御では、現在のサンプリングレートに対する可動素子101の(旋回)速度が決定され得る。例えば、サンプリングレートで回転を捕捉するために速度が高すぎると判断された場合、その後の角度測定でサンプリングレートが(自動的に)増加され得る。同様に、サンプリングレートに対して速度が低すぎて電力が浪費されていると判断された場合、その後の角度測定でサンプリングレートが(自動的に)減少され得る。
【0022】
図2は、本開示の可能な実装形態による、トランスデューサの上面図である。基本的な動作の説明を簡単にするために、トランスデューサ200の励磁器コイル1個、ロータコイル1個、及び受信機コイル1個のみを示す。
【0023】
トランスデューサ200の励磁器コイル210は、トランスデューサ200の軸211を中心とする内部を画定する平坦ループにすることができる。励磁器コイル210は励磁電流201を受信するように構成され、これは、励磁器コイル210の内部に軸211の方向に沿って磁場を発生させる。内部の磁場は円形対称性を呈するため、ロータコイル220はどの角度212(θ)でも同じ磁場を受けることができる。励磁器コイル210(及び受信機コイル230)は、第1の平面に位置することができるが、ロータコイル220は第2の平面に位置する。第1の平面及び第2の平面は、空隙(z)によって間隔を空けて配置されている(すなわち、分離されている)。
【0024】
トランスデューサ200のロータコイル220は平坦で、軸211を中心にしている。ロータコイルは、ローブによって識別される多数の平坦な回転を含み得る。
図2は、ロータコイルの最大半径まで延在するロータコイルの一部としてのローブ221を例解している。
図2に示すように、ロータコイル220は、4つのローブを含む。ロータコイル220は機械的に(例えば、可動素子101によって)軸211の周りに旋回させることができる。励磁器コイル210によって生成された磁場は、ロータコイル220に電流を生成し、この電流が受信機コイル230に誘導結合される磁場を生成する可能性がある。言い換えれば、ロータコイル220は、励磁電流201によって発生した磁場を受信機コイルに誘導結合するように構成することができる。
【0025】
トランスデューサの受信機コイル230は、ロータコイルの複製バージョンであり得る。言い換えれば、受信機コイルは、平坦であり、軸211を中心とし、ロータコイル220と同じ数の平坦な回転(すなわちローブ)を含むことができる。上述したように、受信機コイル及びロータコイルは、軸211の方向に空隙によって分離されてもよい。ロータが軸211を中心に旋回すると、ロータコイル220のローブと受信機コイル230のローブが位置合わせして出入りする。位置合わせの量は、コイル間の誘導結合の量に対応し得る。例えば、ロータコイル220のローブが受信機コイル230のローブと完全に位置合わせされたとき、誘導結合は最大であり得る。ロータコイルのローブが受信機コイル230のローブと完全に位置合わせされていないとき、誘導結合は最小になり得る。
【0026】
図3は、
図2に示すトランスデューサの回路モデルを概略的に例解している。励磁器コイル210は励磁器インダクタンス(Lx)として表され、ロータコイル220はロータインダクタンス(Lt)としてモデル化され、受信機コイルは受信機インダクタンス(Lr)としてモデル化される。励磁器コイル及びロータコイルは、励磁器-ロータ相互インダクタンス(Mxt)を介して誘導結合される。励磁器コイル及び受信機コイルは、励磁器-受信機相互インダクタンス(Mxr)を介して誘導結合され、これは小さく、(角度に対して)一定であるので、無視することができる。ロータコイル及び受信機コイルは、ロータ-受信機相互インダクタンス(Mtr)を介して誘導結合される。コイル電圧(Vr)は、以下の式によって励磁電流(Ix)に関連付けることができる。
【0027】
【0028】
上記の式において、コイル電圧(Vr)は、空隙(z)及び角度(θ)の関数である。第1の近似では、ロータ-受信機相互インダクタンス(Mtr)は、空隙(F(z))の第1の関数と角度(M(θ))の第2の関数の積であり、第2の関数は純粋な正弦又は余弦である。したがって、コイル電圧235(Vr)は、角度212を有する正弦関数であってもよい。
【0029】
正弦波コイル電圧は、ロータコイルが1回旋を完了すると、複数のサイクルを通して進行し得る。
図2に示される例では、コイル電圧235は、1つの機械的回旋ごとに4つの電気サイクルを有する。したがって、1つのコイル電圧から角度を決定することできない場合がある。その結果、実際の誘導型センサは、複数の受信機コイルを含むことができる。
【0030】
複数の受信機コイルを含むトランスデューサ内の受信機コイルは、同一形状(例えば、同じ数のローブ)であり、共通の中心(すなわち、軸211)を中心に対称であり、共通の平面(すなわち、上記の説明の第1の平面)上で平坦であり得る。受信機コイルは、互いに対して機械的に旋回させ得る。例えば、3つの受信機コイルを実装する場合、各受信機コイルは、他の2つのコイルから120度(旋回で)のプラス/マイナスに機械的に位置決めされ得る。
【0031】
図1に戻ると、トランスデューサインターフェース120は、測定期間(すなわち、サンプリング期間)中に、トランスデューサ200の励磁器コイル210に励磁電流201を出力するように構成された非共振ドライバ400を含む。示されるように、非共振ドライバ400には、励磁器コイルの励磁器インダクタンス(Lx)に結合されたコンデンサ(C)は含まれていない。したがって、測定を行うことができる前にキャパシタンスを充電するのに必要な始動時間はない。付加的に、コンデンサに蓄えられたエネルギーがないため、測定期間の終了時(蓄えられたエネルギーが抵抗によって放電されるため)に浪費されるエネルギーはほとんどない(例えば何もない)。付加的に、コンデンサによって引き起こされる励磁電流に共振がないため、非共振ドライバを制御するスイッチング信号(又は信号)のスイッチング周波数は制約されず、(例えば等しい)共振周波数に基づくのではなく、ユーザに適合する範囲で選択することができる。
【0032】
図4は、本開示の可能な実装形態による、非共振ドライバの概略図である。非共振ドライバ400は、励磁器コイル210を電圧源430の正端子431と負端子432との間で交互に切り替えて励磁器電流(Ix)を生成するように(例えば、スイッチング信号によって)構成することができる。示されるように、非共振ドライバ400は、Hブリッジ回路として実装することができる。Hブリッジ回路は、電圧源430の正端子431と励磁器コイル210の第1の端子410との間に結合された第1のスイッチ401(例えば、PMOSトランジスタ)を含む。Hブリッジ回路は、励磁器コイル210の第2の端子420と電圧源430の負端子432の間に結合された第2のスイッチ402(例えば、NMOSトランジスタ)を更に含む。Hブリッジ回路は、励磁器コイル210の第2の端子420と電圧源430の正端子431の間に結合された第3のスイッチ403(例えば、PMOSトランジスタ)を更に含む。Hブリッジ回路は、電圧源430の負端子432と励磁器コイル210の第1の端子410の間に結合された第4のスイッチ404(例えば、NMOSトランジスタ)を更に含む。
【0033】
Hブリッジ回路は非共振であり、これは、第1の端子410と負端子432の間に結合されたコンデンサは含まれず、第2の端子420と負端子432との間に結合されたコンデンサは含まれないことを意味する。コンデンサがないため、測定期間後に励磁器コイル210の小さな自己抵抗(rx)によって放散されるため、浪費されるエネルギーはない。
【0034】
Hブリッジ回路は、第1のスイッチ構成(a)と第2のスイッチ構成(b)との間で交互に動作する。第1のスイッチ構成(a)では、第1のスイッチ401及び第2のスイッチ402は、オン(すなわち、通電)であるが、第3のスイッチ403及び第4のスイッチ404は、オフ(すなわち、通電なし)である。第1のスイッチ構成(a)では、励磁電流(Ix)は第1の経路(実線で示す)に沿って流れる。第2のスイッチ構成(b)では、第3のスイッチ403及び第4のスイッチ404はオンであるが、第1のスイッチ401及び第2のスイッチ402はオフである。第2のスイッチ構成(b)では、励磁電流(Ix)は、第2の経路(点線で示す)に沿って流れる。
【0035】
図5は、本開示の可能な実装形態による、トランスデューサインターフェースにおける信号のグラフを含む。信号は時間に対してプロットされ、グラフは時間で相関される。グラフは、角度測定の測定期間を例解する。可動素子の角度測定は、各測定期間中に誘導型センサによって生成される。
【0036】
図6は、本開示の可能な実装形態による、経時的な角度測定の態様を例解している。示されるように、測定期間601は、経時的に間隔を置いて繰り返すことができる。例えば、測定期間は、サンプリングレート(すなわち、サンプリング周波数)で生じ得る。言い換えれば、各測定期間601は、サンプリング期間602によって時間的に間隔を置かれ得る。各測定期間601中、トランスデューサインターフェース120(すなわち、非共振ドライバ、差分エンコーダ)がアクティブ状態であり得る。測定期間601の間(すなわち、スリープ期間603中)、トランスデューサインターフェース120はスリープ状態にあってもよい。スリープ状態では、トランスデューサインターフェース120は、アクティブ状態(すなわち、測定期間601)時に消費するより少ない電力(例えば、電力なし)を消費することができる。言い換えれば、トランスデューサインターフェース120は、各測定期間601の開始604において電気的にウェイクし得る。また、各測定周期601の間に、非共振ドライバにおける(すなわち、アクティブ状態における)スイッチは、スイッチング周波数における構成の間に切り替えることができる。示されるように、開示されたアプローチは、トランスデューサインターフェース120がスリープ状態でより多くの時間を費やすように、測定期間601を時間的に低減する(例えば、最小化する)ことができる。また、示されるように、開示されている方法は、可動素子101が旋回している速度に応じてサンプリング期間を調整することを可能にするができる。これらの技術はどちらも、誘導型センサ110の電力効率の高い動作を可能にする。
【0037】
図5に戻ると、第1のグラフ501は、可能な測定期間中の時間に対してプロットされた励磁電流(Ix)を示す。第1のグラフ501は、測定期間中に第1のスイッチ構成(a)と第2のスイッチ構成(b)が発生したことを更に示している。示されるように、第1のスイッチ構成(a)では、励磁電流が増加し、第2のスイッチ構成(b)では、励磁電流が減少する。励磁電流は非正弦波である。励磁電流は、第1及び第2のスイッチ構成の間で区分的線形である。励磁電流は三角形状である。例えば、励磁電流は三角波である。
【0038】
第2のグラフ502は、第1のグラフ501内の励磁電流(Ix)から生じる受信機コイルにおけるコイル電圧(Vr)を示す。コイル電圧は、以下の式に示すように、励磁電流の導関数である。
【0039】
【0040】
したがって、受信機コイル電圧(すなわち、コイル電圧)は、ロータコイルと受信機コイル間の角度依存性誘導結合に対応する振幅510を有する矩形波であり得る。振幅510は、可動素子の角度に対応する。3つの受信機コイルトランスデューサ200では、ロータコイルと各受信機コイルとの間の誘導結合が異なる可能性があるため、可動素子の特定の角度に対する各受信機コイルの振幅が異なる場合がある。振幅510は、測定期間601の開始直後に到達する。言い換えれば、非共振ドライバがスリープ状態から起動された直後にコイル電圧(Vr)は、測定の準備ができている。
【0041】
Vr(すなわち、振幅510))の測定は、交流振幅が振幅510で直流(direct current、DC)電圧になるようにコイル電圧を整流することを含み得る。第3のグラフ503は、整流された受信機コイル電圧(Vr_rect)を示し、これは、第2のグラフ502に示されている受信機コイル電圧(Vr)の整流バージョンである。
【0042】
整流後、整流された受信機コイル電圧(すなわち、整流電圧)上に高周波ノイズ520(すなわち、スパイク、グリッチ、過渡など)が存在する可能性がある。したがって、コイル電圧(Vr)の測定は、高周波ノイズを低減(例えば、排除)するために、整流電圧(Vr_rect)をフィルタリング(例えば、ローパスフィルタリング)することを更に含み得る。整流及びフィルタリングは、トランスデューサインターフェース120の差分エンコーダ800によって実行されてもよい。
【0043】
上述したように、トランスデューサ200は、3つの受信機コイル、すなわち、第1の受信機コイル(すなわち、第1のコイル(C1))、第2の受信機コイル(すなわち、第2のコイル(C2))、及び第3の受信機コイル(すなわち、第3のコイル(C3))を含むことができる。3つの受信機コイル(C1、C2、C3)は、同一平面上にあり、同一形状であってもよい。コイルは、(i)ロータコイル220と第1の受信機コイル(C1)との間の角度依存性誘導結合は、ロータコイル220と第2の受信機コイル(C2)との間の角度依存性誘導結合とは-120度位相がずれており(すなわち、位相がずれている)、(ii)ロータコイル220と第1の受信機コイル(C1)との間の角度依存性誘導結合は、ロータコイルと第3の受信機コイル(C3)との間の角度依存性誘導結合と+120度位相がずれている(すなわち、位相がずれている)ように互いに機械的角度を持って配設され得る。その結果、これらのコイルの各々からのコイル電圧は、可動素子の角度ごとに異なる場合がある。
【0044】
誘導型センサ110のトランスデューサ200は、2つのタイプ:電気的及び機械的の旋回を有することができる。電気的旋回は、位相角の完全なサイクルを移動するときのコイル電圧の変化に対応する(すなわち、0~360度-電気角)。機械的旋回は、機械的角度の完全な旋回を移動するときの可動素子101の位置の変化に対応する(すなわち、0~360度-機械角)。ロータコイル上のローブの数と受信機コイル上のローブの数は、機械的旋回に対する電気的旋回の比率を定義する。
【0045】
図7は、本開示の可能な実装形態による、ある角度範囲の受信機コイル電圧を例解している。示されるように、3つの受信機コイル(C1、C2、C3)のコイル電圧は、上で説明のように配設され、様々なロータコイル角度(θ)に対して示されている。観察できるように、コイルで測定された電圧は、ロータコイルが旋回するにつれて互いに相対的に位相がずれている正弦波波形をトレースする。この特徴は、様々な角度状態がコイル電圧間の差に基づいて定義されることを可能にする。例えば、第1の角状態(A1)では、第1のコイル(C1)電圧は、常に最高のコイル電圧であり、第2のコイル(C2)電圧は、常に最低のコイル電圧であり、第3のコイル(C3)電圧は、常に第1のコイル(C1)と第2のコイル(C2)の間にある。したがって、6つの異なる角度状態(A1、A2、A3、A4、A5、A6)は、ロータコイルの1回の完全な旋回(すなわち、θ=360度)に対して定義することができる。その結果、コイル電圧間の相対的な差を符号化することにより、角度測定を決定することができる。角度測定の分解能は、各角度状態に対する角度の範囲(例えば、60度)である。符号化は、トランスデューサインターフェース120の差分エンコーダ800によって実行されてもよい。
【0046】
図8は、本開示の可能な実装形態による、差分エンコーダの概略図である。差分エンコーダ800は3つの入力を含み、各々はトランスデューサ200のそれぞれの受信機コイル(C1、C2、C3)に結合される。第1の入力は、第1の受信機コイル(C1)から第1のコイル電圧(Vr_C1)を受信し、第2の入力は、第2の受信機コイル(C2)から第2のコイル電圧(Vr_C2)を受信し、第3の入力は、第3の受信機コイル(C3)から第3のコイル電圧(Vr_C3)を受信する。
【0047】
差分エンコーダ800は、第1のコイル電圧(Vr_C1)を第2のコイル電圧(Vr_C2)と比較するように構成された第1のコンパレータ831と、第2のコイル電圧(Vr_C2)を第3のコイル電圧(Vr_C3)と比較するように構成された第2のコンパレータ832と第3のコイル電圧(Vr_C3)を第1のコイル電圧(Vr_C1)と比較するように構成された第3のコンパレータ833と、を更に含む。第1のコンパレータ831は、第1のコイル電圧と第2のコイル電圧との第1の比較を生成するように構成され得、第2のコンパレータ832は、第2のコイル電圧と第3のコイル電圧との第2の比較を生成するように構成され得、第3のコンパレータ833は、第1のコイル電圧に対する第3のコイル電圧の第3の比較を生成するように構成され得る。
【0048】
図7に示すように、第1のコンパレータ831の出力は、C1の電圧がC2の電圧よりも大きい(C1>C2?)という質問に対するTRUE/FALSEの回答に対応するデジタル信号であり得る。
図7に示すように、第2のコンパレータ832の出力は、C2の電圧がC3の電圧よりも大きい(C2>C3?)という質問に対するTRUE/FALSEの回答に対応するデジタル信号であり得る。
図7に示すように、第3のコンパレータ833の出力は、C3の電圧がC1の電圧よりも大きい(C3>C1?)という質問に対するTRUE/FALSEの回答に対応するデジタル信号であり得る。コンパレータ830の出力は、
図7に示される角度状態(A1、A2、A3、A4、A5、A6)のうちの1つに集合的に対応し得る。条件(TRUE、TRUE、TRUE)及び条件(FALSE、FALSE、FALSE)が存在することができないので、コンパレータの全ての出力が一致するときに故障状態が発生する可能性がある。
【0049】
図8に示されるように、差分エンコーダ800は、整流ステージ810を更に含むことができる。整流ステージ810は、非共振ドライバ400のスイッチ条件(a、b)に従う各コンパレータのためのスイッチのセットを含む。各コンパレータのスイッチのセットは、各コンパレータへの入力の極性を制御して、コイル電圧が交番するときにそれらが交番するようにし(
図5参照)、それによって受信機コイル電圧を効果的に整流する。
【0050】
差分エンコーダ800は、フィルタリングステージ820を更に含むことができる。
図8に示すように、フィルタリングステージは、高周波ノイズ520がコンパレータ830によって行われる比較に影響を及ぼすのを低減するように構成されたコンデンサを含むことができる。フィルタリングステージは、符号化の精度を改善することができる。
【0051】
差分エンコーダ800の出力は、角度測定を決定するために処理され得る。処理は、回路、ハードウェア、ファームウェア(すなわち、ハードコードされた)、ソフトウェア、又はそれらのいくつかの組み合わせで実装され得る。例えば、差分エンコーダ800の出力は、状態機械として(ソフトウェア命令によって)構成されたプロセッサ130に結合され得る。説明したように、コンパレータ830の出力は、状態機械における状態(A1、A2、A3、A4、A5、A6)を定義することができる。言い換えれば、状態機械は、差分エンコーダ800の第1の比較、第2の比較、第3の比較に基づいて角度状態(状態)を決定するように構成でき、角度状態は可動素子の角度測定に対応し得る。例えば、表1は、本開示の一実装形態による様々な状態についての角度測定を例解する。
【0052】
【0053】
プロセッサ130は、可動素子の旋回に伴って複数の測定期間(すなわち、時間経過)にわたって状態間の遷移(角度-状態遷移)を検出するために、ソフトウェア命令によって更に構成され得る。角度状態遷移は、回転数(N)を調整する(例えば、加算する、減算する)ために追跡され得る。更に、角度状態遷移は、サンプリングレートに対する可動素子の速度を推定するために追跡され得る。
【0054】
図9A~
図9Cは、異なる速度における状態機械の角度状態遷移を例解する。各図において、可能な角度状態遷移は矢印として示されている。
図9Aは、サンプリングレートと比較して低い速度についての角度状態遷移を示す。示されるように、サンプリングレートは、角度状態間の遷移が(いずれかの方向に)順次である速度と比較して十分に高く、複数の測定期間にわたって1つの状態にとどまることがある。
【0055】
図9A~
図9Cに示すように、A1とA6との間の遷移は、回転数遷移として指定される。角度状態がA6からA1に遷移するとき、回転数は、正の増分(例えば、+1)によって調整され得、角度状態がA1からA6に遷移するとき、回転数は、負の増分(例えば、-1)によって調整され得る。
【0056】
図9Bは、サンプリングレートと比較して高いが、回転をカウントするには高すぎない速度に対する角度状態遷移を例解する。示されるように、角度状態の相対サンプリングレートは、角度状態間の連続的な運動を捕捉するには低すぎる。結果として、角度状態遷移は、状態をスキップし得る。例えば、A1はA3に遷移してもよく、A3はA5に遷移してもよい(逆もまた同様)。スキップされる状態の数は、可動素子の速度の推定値を計算するために使用され、状態間の運動の方向は、可動素子の旋回の方向を計算するために使用され得る。回転数遷移910(すなわち、A1からA6、A6からA1)が検出される(すなわち、交差する)可能性があるため、回転数は更に調整され得る。したがって、角度状態がA5からA1、又はA6からA2に遷移する場合、回転数は正の増分(例えば+1)によって調整され、角度状態がA1からA5又はA2からA6に遷移する場合、回転数は負の増分(例えば-1)によって調整され得る。
【0057】
図9Cは、サンプリングレートと比較して高く、回転をカウントするには高すぎる速度に対する角度状態遷移を例解する。示されるように、角度状態の相対サンプリングレートは、角度状態間の連続的な運動を捕捉するには低すぎる。結果として、角度状態遷移は、複数の状態をスキップし得る。例えば、A1はA4に遷移してもよく、A4はA1に遷移してもよい。回転数遷移(すなわち、A1からA6、A6からA1)が角度状態遷移によって交差されないので、回転数は調整されない。
【0058】
図10は、角度を測定するための方法のフローチャートである。方法1000は、トランスデューサのロータコイルをある角度に移動させること1010を含む。可能な実装形態では、ロータコイルは、ロータコイルの角度が可動素子の角度に対応する(例えば、等しい)ように可動素子に結合される。方法1000は、非共振ドライバを使用してトランスデューサの励磁器コイルにおいて非正弦波(例えば、三角波)励磁電流を生成すること1020を更に含む。非共振ドライバは、いかなるエネルギー(例えば、コンデンサなし)の貯蔵も必要としないため、測定を行うことができる前に充電時間がほとんど(例えば、何もない)必要とせず、測定を行った後にエネルギーの放電がほとんど(例えば、何もない)無駄にならない。方法1000は、ロータコイルと各受信機コイルとの間の角度依存性誘導結合に基づいて、トランスデューサの複数の受信機コイルでコイル電圧を生成すること1030を更に含む。方法1000は、角度を測定するために差分エンコーダを使用してコイル電圧を比較すること1040を更に含む。
【0059】
可能な実装形態では、コイル電圧は、複数の比較(すなわち、比較)を生成するために比較され得る。次いで、比較を状態機械に適用して、比較に対応する角度状態を決定することができる。角度状態は、角度がその範囲内にある(すなわち、角度状態が角度測定であり得る)角度の範囲を表し得る。上述のプロセスは、サンプリングレートで繰り返すことができる。更に、角度状態間の運動を経時的に分析して、方向運動、運動速度、及び/又は回転数を決定することができる。可能な実装形態では、角度測定のサンプリングレートは、移動速度に基づいて調整され得る。この調整により、回転を検出できるロータコイルの可能な旋回速度の範囲を増加させ得る(調整なしと比較して)。
【0060】
以下では、本開示のいくつかの例が説明される。
【0061】
実施例1.誘導型センサであって、励磁器コイルと、励磁器コイルに結合された非共振ドライバであって、励磁器コイルを電圧源の正端子と負端子との間で交互に切り替えて励磁器コイル内に励磁電流を発生させるように構成され、励磁電流が三角形状の振幅を有する、非共振ドライバと、複数の受信機コイルと、可動素子に機械的に結合されたロータコイルであって、ロータコイルと複数の受信機コイルとの間の角度依存性誘導結合に従って、励磁電流によって生成された磁場を複数の受信機コイルに結合するように構成され、磁場が、複数の受信機コイルで複数のコイル電圧を生成する、ロータコイルと、複数のコイル電圧を比較して可動素子の角度測定を決定するように構成された差分エンコーダと、を備える、誘導型センサに関する。
【0062】
実施例2.非共振ドライバが、測定期間中、励磁器コイルを電圧源の正端子と負端子との間で交互に切り替えるように構成され、差分エンコーダが、複数のコイル電圧を比較して、測定期間中の任意の時点で可動素子の角度測定を決定するように構成されている、実施例1に記載の誘導型センサ。
【0063】
実施例3.測定期間の開始時に、非共振ドライバが、スリープ状態から作動して励磁器コイルを正端子と負端子との間で交互に切り替え、非共振ドライバが、作動した直後に、複数のコイル電圧を測定する準備ができている、実施例1又は2に記載の誘導型センサ。
【0064】
実施例4.非共振ドライバが、励磁電流の共振周波数に基づかないスイッチング周波数で、励磁器コイルを電圧源の正端子と負端子との間で交互に切り替えるように構成されている、実施例1~3のいずれか一項に記載の誘導型センサ。
【0065】
実施例5.可動素子の角度測定が決定された後に、励磁器コイル内の励磁電流の実質的に全てが、電圧源に戻される。実施例1~4のいずれか一項に記載の誘導型センサ。
【0066】
実施例6.非共振ドライバが、Hブリッジ回路であって、電圧源の正端子と励磁器コイルの第1の端子との間に結合された第1のスイッチと、電圧源の負の端子と励磁器コイルの第2の端子との間に結合された第2のスイッチと、第1のスイッチ及び第2のスイッチは、スイッチング信号によってオン状態に鋼製されて励磁器コイル内の励磁電流を増加させ、電圧源の正端子と励磁器コイルの第2の端子との間に結合された第3のスイッチと、電圧源の負の端子と励磁器コイルの第1の端子との間に結合された第4のスイッチと、を含み、第3のスイッチ及び第4のスイッチは、スイッチング信号によってオン状態に構成されて励磁器コイルの励磁電流を減少させる、Hブリッジ回路である、実施例1~5のいずれか一項に記載の誘導型センサ。
【0067】
実施例7.Hブリッジ回路が、励磁器コイルの第1の端子又は第2の端子に結合されたコンデンサを含まない、実施例6に記載の誘導型センサ。
【0068】
実施例8.複数の受信機コイルが、第1の受信機コイルであって、第1の受信機コイルに結合された磁場は、第1の受信機コイルに第1のコイル電圧を生成する、第1の受信機コイルと、第2の受信機コイルであって、第2の受信機コイルに結合された磁場が、第2の受信機コイルに第2のコイル電圧を生成する第2の受信機コイルと、第3の受信機コイルであって、第3の受信機コイルに結合された磁場が、第3の受信機コイルに第3のコイル電圧を生成する、第3の受信機コイルと、を含む、実施例1~7のいずれか一項に記載の誘導型センサ。
【0069】
実施例9.第1の受信機コイル、第2の受信機コイル、及び第3の受信機コイルが、同一形状であり、共通の中心に対して対称であり、共通の平面上で平坦であり、第1の受信機コイル、第2の受信機コイル、及び第3の受信機コイルが、共通の中心の周りで互いに対してある角度で旋回される、実施例8に記載の誘導型センサ。
【0070】
実施例10.ロータコイルと第1の受信機コイルとの間の角度依存性誘導結合が、ロータコイルと第2の受信機コイルとの間の角度依存性誘導結合とは-120度位相がずれており、ロータコイルと第1の受信機コイルとの間の角度依存性誘導結合は、ロータコイルと第3の受信機コイルとの間の角度依存性誘導結合と+120度位相がずれている、実施例9に記載の誘導型センサ。
【0071】
実施例11.差分エンコーダが、第1のコイル電圧と第2のコイル電圧との第1の比較を生成するように構成された第1のコンパレータと、第2のコイル電圧と第3のコイル電圧との第2の比較を生成するように構成された第2のコンパレータと、第3のコイル電圧と第1のコイル電圧との第3の比較を生成するように構成された第3のコンパレータと、を含む、実施例8~10のいずれか一項に記載の誘導型センサ。
【0072】
実施例12.誘導型センサが、第1の比較、第2の比較、及び第3の比較に基づいて角度状態を決定するように構成された状態機械であって、角度状態が可動素子の角度測定に対応している、状態機械、を更に含む、実施例11に記載の誘導型センサ。
【0073】
実施例13.誘導型センサが、状態機械の経時的な角度状態遷移を検出して、回転数を調整するようなソフトウェア命令によって構成されたプロセッサを更に含む、実施例12に記載の誘導型センサ。
【0074】
実施例14.誘導型センサが、状態機械の経時的な角度状態遷移を検出して、角度測定のサンプリングレートに対する可動素子の速度を推定するようなソフトウェア命令によって構成されたプロセッサを更に含む、実施例12又は13に記載の誘導型センサ。
【0075】
実施例15.プロセッサが、可動素子の速度に基づいて角度測定のサンプリングレートを調整するようなソフトウェア命令によって更に構成されている、実施例14に記載の誘導型センサ。
【0076】
実施例16.角度を測定する方法であって、トランスデューサのロータコイルをある角度に移動させることと、非共振ドライバを使用して、測定期間中にトランスデューサの励磁器コイルを電圧源の正端子と負端子との間で交互に切り替えて、非正弦波振幅を有する励磁電流を生成することと、ロータコイルと複数の受信機コイルの各々との間の角度依存性誘導結合に基づいて、複数の受信機コイルで複数のコイル電圧を生成することと、差分エンコーダを使用して複数のコイル電圧を比較して角度を測定することと、を含む、方法。
【0077】
実施例17.複数の受信機コイルが、第1の受信機コイル、第2の受信機コイル、及び第3の受信機コイルを含み、差分エンコーダを使用して複数のコイル電圧を比較して角度を測定することが、第1のコンパレータを使用して、第1の受信機コイルにおける第1のコイル電圧と第2の受信機コイルにおける第2のコイル電圧との第1の比較を生成することと、第2のコンパレータを使用して、第2の受信機コイルにおける第2のコイル電圧と第3の受信機コイルにおける第3のコイル電圧との第2の比較を生成することと、第3のコンパレータを使用して、第3の受信機コイルにおける第3のコイル電圧と第1の受信機コイルにおける第1のコイル電圧との第3の比較を生成することと、を含む、実施例16に記載の方法。
【0078】
実施例18.第1の比較、第2の比較、及び第3の比較に基づいて状態機械の角度状態を決定することであって、角度状態が角度に対応している、決定すること、を更に含む、実施例17に記載の方法。
【0079】
実施例19.サンプリングレートで角度の繰り返された測定を行うことと、繰り返された測定に基づいて状態機械の角度状態遷移を検出することと、角度状態遷移に基づいて、サンプリングレートに対するロータコイルの速度を推定することと、ロータコイルの速度に基づいてサンプリングレートを調整することと、を更に含む、実施例18に記載の方法。
【0080】
実施例20.サンプリングレートで角度の繰り返された測定を行うことと、繰り返された測定に基づいて状態機械の角度状態遷移を検出することと、角度状態遷移に基づいて回転数を調整することと、を更に含む、実施例18又は19に記載の方法。
【0081】
実施例21.非正弦波振幅が三角形であり、かつ区分的線形である、実施例16~20のいずれか一項に記載の方法。
【0082】
実施例22.角運動を測定するためのシステムであって、コントローラと、通信チャネルと、電源から電力が供給されていない間、バッテリ電源を使用して低電力モードで角度測定を捕捉するように構成された誘導型センサであって、低電力モードで、励磁器コイルを電圧源の正端子と負端子との間で交互に切り替えて、励磁器コイル内に励磁電流を生成することと、ロータコイルの位置に対応する複数のコイル電圧を複数の受信機コイルで受信することと、複数のコイル電圧を比較して、複数の比較を決定することと、複数の比較に基づいて状態機械の角度状態を決定することであって、角度状態は、ロータコイルに機械的に結合された可動素子の角度測定に対応する、決定することと、を行うように構成されている、誘導型センサと、を含む、角運動を測定するためのシステム。
【0083】
実施例23.低電力モードにおいて、誘導型センサが、時間の経過に伴う状態機械の角度状態遷移を検出することと、経時的な角度状態遷移に基づいて、角度測定のサンプリングレートに対する可動素子の速度を推定することと、可動素子の速度に基づいて角度測定のサンプリングレートを調整することと、を行うように更に構成されている、実施例22に記載の角運動を測定するためのシステム。
【0084】
実施例24.低電力モードにおいて、誘導型センサが、時間の経過に伴う状態機械の角度状態遷移を検出することと、角度状態遷移に基づいて回転数を調整することと、を行うように更に構成されている、実施例22又は23に記載の角運動を測定するためのシステム。
【0085】
実施例25.励磁電流が、非正弦波振幅を有する、実施例22~24のいずれか一項に記載の角運動を測定するためのシステム。
【0086】
説明された実装形態の特定の特徴を、本明細書において説明されるとおりに例解してきたが、ここで、当業者は、多くの修正、代用、変更、及び、均等物を着想するであろう。それ故、添付の特許請求の範囲は、そのような修正及び変更の全てを実装形態の範囲内に収まるよう網羅することを意図することが、理解されるであろう。これらは、限定ではなく、単なる例示として提示されており、形態及び細部に様々な変更がなされ得ることを、理解されたい。本明細書において説明される装置及び/又は方法のいずれの部分も、相互に排他的な組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わされ得る。本明細書において説明される実装形態は、説明される異なる実装形態の機能の様々な組み合わせ及び/又は部分組み合わせ、構成要素及び/又は特徴を含み得る。
【0087】
上述の明細書において、素子が、別の素子上にある、接続する、電気的に接続する、結合する、又は、電気的に結合すると言及される場合、素子は、他の素子上に直接あるか、接続するか、又は、結合することができるか、あるいは1つ以上の介在素子が存在し得ることが、理解されよう。一方、素子が、別の素子上に直接あるか、直接接続するか、又は、直接結合すると言及される場合、介在素子は、存在しない。本発明の詳細な説明を通じて、直接ある、直接接続する、又は、直接結合するという用語が使用されないこともあるが、直接ある、直接接続している、又は、直接結合しているものとして図示される要素は、そのようなものとして言及され得る。本出願の特許請求の範囲(含まれている場合)は、本明細書において説明される、又は、図面に示される例示的な関係を述べるように補正され得る。
【0088】
本明細書において使用される際、単数形は、文脈の観点において、特定の事例を明確に示さない限り、複数形を含み得る。空間的相対性を示す用語(例えば、全体にわたって、上、上方、下、下側、下方、下位など)は、図面で描示する配向に加えて、使用中、又は、操作中のデバイスの異なる配向を包含することを意図している。一部の実装形態では、上及び下という相対的な用語はそれぞれ、垂直方向に上及び垂直方向に下を含むことができる。一部の実装形態では、隣接するという用語は、横方向に隣接するか、又は、水平方向に隣接することを含むことができる。
【0089】
一部の実装形態は、様々な半導体処理及び/又はパッケージング技術を使用して実装され得る。一部の実装形態は、例えば、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)、及び/又はそれらなどを含むが、それらに限定されない半導体基板に関連付けられた様々なタイプの半導体処理技術を使用して実装され得る。
【外国語明細書】