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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146790
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】泡立て器
(51)【国際特許分類】
   A47J 43/10 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
A47J43/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024034159
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2023059213の分割
【原出願日】2023-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】小林 甫
(72)【発明者】
【氏名】仲村 聡弥
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 俊介
(72)【発明者】
【氏名】臼田 雅史
【テーマコード(参考)】
4B053
【Fターム(参考)】
4B053AA01
4B053BA14
(57)【要約】
【課題】簡易な構成を用いつつ、ユーザの好みに合わせた状態まで生クリームを撹拌可能な泡立て器を提供する。
【解決手段】本発明の泡立て器(1)は、生クリームを撹拌する撹拌部(110)と、撹拌に要する必要電力を検知するセンサ(120)と、撹拌部の動作を制御する制御部(100)と、生クリームの目標固さを選択的に設定する設定部(140)と、使用者により操作可能な操作部(130)と、を備える。制御部(100)は、センサ(120)で検知された必要電力に基づいて、生クリームの固さが目標固さに達したと判断されるときに撹拌部(110)の動作を停止し、使用者により操作部(130)が操作されたときは、センサ(120)で検知された必要電力にかかわらず撹拌部(110)を動作させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生クリームを攪拌する泡立て器であって、
前記生クリームが入れられるコンテナと、
モーター及び前記モーターによって回動されるウィスクを含み、前記コンテナ内の前記生クリームを撹拌する撹拌部と、
前記モーターが動作する際の電圧及び電力から、前記生クリームの撹拌に要する必要電力を検知するセンサと、
前記撹拌部の動作を制御する制御部と、
使用者により操作可能な操作部と、
前記泡立て器の状態を光、画像、または音声で通知する通知部と、
前記泡立て器に動作のための電力を供給する、充電可能な蓄電池と、を備え、
前記制御部は、
前記センサで検知された前記必要電力が所定の閾値以上となったときに、前記生クリームの固さが所定の固さに達したと判断して前記撹拌部の動作を停止し、
使用者により前記操作部が操作されたときは、前記センサで検知された前記必要電力にかかわらず前記撹拌部を動作させる、
泡立て器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、生クリームを撹拌して泡を立てる泡立て器に関する。
【背景技術】
【0002】
スイーツ等に生クリームを加えて食されることがあるが、このような生クリームは、泡立てがなされた状態で、冷凍またはスプレー缶タイプで提供されるものが主流である。泡立て前の生クリームも流通しており、このような生クリームは、泡立てしてスイーツ等に利用されることが多い。
【0003】
一方、電力を用いて生クリームを自動で撹拌し泡を立てる泡立て器があるが、撹拌動作の停止タイミングについては、手動で、または時間経過で自動的に、撹拌が停止される機能を有するものがある。特許文献1には、簡単に精度よくホイップ状態を検知するため、ホイップドクリームの製造におけるミキサートルク値、体積増加率、及び食品物性値を用いる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-132434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、冷凍またはスプレー缶タイプで提供されるクリームは、所定の固さで使用せざるを得ず、ユーザの好みに合わせた固さにすることが困難であった。また、家庭で泡立て器を用いて生クリームを撹拌して泡立てすることもできるが、手動で泡立てすることは煩雑であり、日々の食生活の中において気軽に泡立てされた生クリームを利用することは容易ではなかった。
【0006】
一方、上記のように、電力を用いて自動で生クリームを撹拌する泡立て器があった。しかし、従来の手動で撹拌を停止する泡立て器では、撹拌対象物である生クリームの状態を観察しながら撹拌する必要があり煩雑であった。また、時間経過で自動的に撹拌が停止される泡立て器では、生クリームの量、温度、特性及び味を変えるために添加物を追加するなど、生クリームの状態によっては、期待した固さにならない場合が少なくなかった。
【0007】
特許文献1に記載の方法では、撹拌中のクリーム容器の振動値やモーターの消費電力値ではなく、撹拌子に直接掛かるミキサートルク値をトルク計測器で測定して食品物性値を算出し、目的とする食品物性値になるよう撹拌を制御している。しかしながら、撹拌子に直接掛かるミキサートルク値を測定するトルク計測器は安価な構成ではないし、食品物性値の算出には複雑な処理が必要になっていた。そのため、機器が大きくなり、日常的に生クリームを使用するには適さないという虞が生じる。また、撹拌対象物となる生クリームを予め定められた最適な状態にするという観点では有用である可能性がある一方で、ユーザ毎に異なる好みに対応するという観点では十分とはいえない部分があった。
【0008】
一方、SDGsの目標12の「つくる責任つかう責任」における12.3では、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。」ことが挙げられている。このような観点からも、出願人は、調理対象の食材のロスを可能な限り減少可能な調理道具を提供するための商品開発を行っている。
【0009】
上記のような観点から、本発明は、簡易な構成を用いつつ、ユーザの好みに合わせた状態まで生クリームを撹拌可能な泡立て器を提供することなどを目的とする。また、食品ロスを減少させることができる泡立て器を提供することも目的のひとつである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、次のような手段を提供する。なお、以下の説明において、発明の理解を容易にするために図面中の符号等を括弧書きで付記する場合があるが、本発明の各構成要素はこれらの具体的な構成に限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0011】
本発明の一態様の泡立て器(1)は、生クリームを撹拌する撹拌部(110)と、撹拌に要する必要電力を検知するセンサ(120)と、撹拌部の動作を制御する制御部(100)と、生クリームの目標固さを選択的に設定する設定部(140)と、使用者により操作可能な操作部(130)と、を備える。制御部(100)は、センサ(120)で検知された必要電力に基づいて、生クリームの固さが目標固さに達したと判断されるときに撹拌部(110)の動作を停止し、使用者により操作部(130)が操作されたときは、センサ(120)で検知された必要電力にかかわらず撹拌部(110)を動作させる。
【0012】
上記構成の泡立て器によれば、トルクセンサのような複雑な構成を用いず、簡易な電力センサを用いることで、生クリームを所望の固さまで撹拌することができる。また、撹拌対象物の生クリームを、ユーザの好みに合わせ選択的に設定可能な目標固さまで撹拌することができる。また、目標固さにかかわらず、ユーザが撹拌を継続したい場合には任意に撹拌を継続することができるため、用途に合わせて撹拌具合を容易に調整することなどができる。
【0013】
さらに、ユーザの好みの量で好みの固さの泡立てされた生クリームを作ることができるため、日々の食生活が少量だけ使用する「ちょっと使い」のような態様で泡立てされた生クリームを使用できる。このように「ちょっと使い」ができるため、スイーツ以外にも、ソースやドレッシング等に泡立てされた生クリームを加えるなど、様々な食材に手軽に泡立てされた生クリームを加えることができるようになり、泡立てされた生クリームをより生活に身近な存在にすることができる。また、一度開封した生クリームは傷みやすく、一度で使い切れずに余らせると廃棄に繋がる場合もあるが、このような「ちょっと使い」が可能になることで生クリームを無駄なく使いきることができ、食品ロスの削減が可能となる。また、生クリームに、抹茶またはココアなどを添加した場合には、生クリームをユーザの好みの固さまで撹拌することが容易ではないが、上記泡立て器によれば、このような場合でもユーザの好みの固さに撹拌することができる。
【0014】
上記泡立て器において好ましくは、制御部(100)は、センサ(120)で検知された必要電力の時間変化が所定の閾値以上となったときに撹拌部(110)の動作を停止する。
【0015】
発明者らの調査によれば、撹拌に要する必要電力の時間変化と、撹拌対象物である生クリームの固さとの間に相関関係があることが判明した。したがって、上記構成の泡立て器によれば、生クリームが所定の固さになったときに撹拌部の動作を停止することができるため、生クリームの量に影響を受けることなく、所望の固さになるよう撹拌することができる。
【0016】
上記泡立て器において好ましくは、制御部(100)は、センサ(120)で検知された必要電力が所定の閾値以上となったときに撹拌部(110)の動作を停止する。
【0017】
発明者らの調査によれば、撹拌に要する必要電力と、撹拌対象物である生クリームの固さとの間に相関関係があることが判明した。したがって、上記構成の泡立て器によれば、生クリームが所定の固さになったときに撹拌部の動作を停止することができるため、複雑な計算を必要とせず、バッテリー駆動のような電力が安定しない電源構成であっても、確実に生クリームが所望の固さになるよう撹拌することができる。
【0018】
本発明の一態様の泡立て器(1)は、生クリームを撹拌する撹拌部(110)と、撹拌に要する必要電力を検知するセンサ(120)と、撹拌部の動作を制御する制御部(100)と、生クリームの目標固さを選択的に設定する設定部(140)と、を備える。制御部(100)は、センサで検知された必要電力に基づいて、生クリームの固さが目標固さに達したと判断されるときに撹拌部(110)の動作を停止する。
【0019】
上記構成の泡立て器によれば、トルクセンサのような複雑な構成を用いず、簡易な電力センサを用いることで、生クリームを所望の固さまで撹拌することができる。また、撹拌対象物の生クリームを、ユーザの好みに合わせ選択的に設定可能な目標固さまで撹拌することができる。
【0020】
本発明の一態様の泡立て器(1)は、生クリームを撹拌する撹拌部(110)と、撹拌に要する必要電力を検知するセンサ(120)と、撹拌部の動作を制御する制御部(100)と、使用者により操作可能な操作部(130)と、を備える。制御部(100)は、センサ(120)で検知された必要電力に基づいて、生クリームの固さが所定の固さに達したと判断されるときに撹拌部(110)の動作を停止し、使用者により操作部が操作されたときは、センサ(120)で検知された必要電力にかかわらず撹拌部(110)を動作させる。
【0021】
上記構成の泡立て器によれば、トルクセンサのような複雑な構成を用いず、簡易な電力センサを用いることで、生クリームを所望の固さまで撹拌することができる。また、目標固さにかかわらず、ユーザが撹拌を継続したい場合には任意に撹拌を継続することができるため、用途に合わせて撹拌具合を容易に調整することなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、設置状態の泡立て器の外観斜視図である。
図2図2は、泡立て器の機能的構成を示すブロック図である。
図3図3は、生クリームの撹拌に要する必要電力の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一形態の泡立て器は、撹拌により固さが変化する生クリームを撹拌対象とし、生クリームが所望の固さになるまで撹拌可能にするための種々の構成を備える。
【0024】
以下、本発明の一形態の泡立て器について、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態及び実施例はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0025】
[泡立て器1の構成の概要]
図1は、設置状態の泡立て器1の外観を示す斜視図である。図1に示されるように、泡立て器1は、コンテナ2、本体部3、及びウィスク4を含んで構成される。設置状態では、コンテナ2が下側に位置し設置面に接しており、その上に本体部3が連結して配置される。本体部3とコンテナ2とは螺合している。コンテナ2から本体部3を取り外す際には、使用者はコンテナ2を固定しつつ本体部3を回動することで螺合が解除され、本体部3を上側に取り外すことができる。
【0026】
コンテナ2は透明であって、320mlの容量を有し、100mlの生クリームを入れることができる。100mlの生クリームを泡立てると、生クリームの容量が320ml以下まで増加する。一般的に販売されている生クリームは、1パックあたり200mlのものが多いが、一度に200mlを使おうとするとやや多く感じる場合が多い。そこで、本実施形態の泡立て器1では、コンテナ2の容量を、100mlの生クリームを泡立てたときの容量である320mlにして、撹拌して泡立てた生クリームを使い切りやすくする構成としている。
【0027】
本体部3にはモーター(図示省略)が内蔵されており、このモーターの軸にウィスク4が連結している。モーターが回動するとウィスク4も回動し、これによってコンテナ2に入れられた生クリームが撹拌される。ウィスク4は本体部3から取り外し可能であり、使用者は本体部3からウィスク4を取り外して洗浄することができる。
【0028】
本体部3の上面には、操作スイッチ31、LED表示部32、及び端子33が設けられる。操作スイッチ31は、使用者によって操作可能なスイッチである。LED表示部32は、例えば異なる色の複数のLED素子で構成され、表示色、表示数、並びに点滅及び点灯の発光状態などで使用者に種々の通知を行う。端子33は、外部から電力が入力される端子であり、入力される電力により蓄電池に充電が行われ、蓄電池から出力される電力で泡立て器1を動作させる。端子33から入力された電力は、充電されずにそのまま泡立て器1を動作させるための電力として用いられる構成であってもよい。
【0029】
図2は、泡立て器1の機能的構成を示すブロック図である。図2に示すように、泡立て器1は、制御部100、撹拌部110、センサ120、操作部130、設定部140、及び通知部150を含んで構成される。
【0030】
[撹拌部110]
撹拌部110は、泡立て器1のモーター及びウィスク4を含み、撹拌により固さが変化する生クリームを撹拌する。撹拌部110は、制御部100によってその撹拌動作が制御される。
【0031】
[センサ120]
センサ120は、撹拌部110が生クリームの撹拌に要する必要電力を検知する。具体的には、センサ120は、ウィスク4を回動させるモーターが動作する際の電圧及び電流から電力値を検知する。センサ120は、本体部3に搭載される。
【0032】
[操作部130]
操作部130は、使用者により操作可能なスイッチまたはタッチパネルなどである。操作部130は、使用者による操作内容に応じた情報を制御部100に送信する。操作部130は、本体部3に設けられた操作スイッチ31を含む。
【0033】
[設定部140]
設定部140は、使用者の操作に応じて泡立て器1の動作に関する情報である動作情報を設定し、この動作情報を記憶する。記憶された動作情報は、制御部100によって泡立て器1の動作に利用される。設定部140は、例えば、生クリームの目標固さを、使用者の操作に応じて複数段階で設定する。生クリームの目標固さは、例えば、「8分立て」、「6分立て」、及び「とろみ」の3段階とすることができるが、このような設定可能な目標固さは任意に選択可能である。設定部140は、本体部3に設けられた設定記憶用のメモリ(図示省略)で構成される。
【0034】
[通知部150]
通知部150は、使用者に対して泡立て器1の状態を光、画像、または音声で通知する。通知部150は、本体部3に設けられたLED表示部32を含む。通知部150は、例えば、LED表示部32の表示色、表示数、並びに点滅及び点灯の発光状態によって、設定部140に設定された目標固さ、泡立て器1の充電の状態などを使用者に視認可能にして通知する。通知部150は、LED表示部32に限定されず、液晶表示装置または音声出力部などに置き換えられてもよい。
【0035】
[制御部100]
制御部100は、泡立て器1の撹拌部110、センサ120、操作部130、設定部140、及び通知部150を制御する。制御部100は、本体部3に搭載されたマイコンまたはCPUなどの情報処理装置であり、ハードウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにより構成される。以下、制御部100により制御される泡立て器1の動作について具体的に説明する。
【0036】
撹拌対象物となる生クリームの撹拌は、予め設定部140に設定された目標固さ、センサ120で検知された生クリームの撹拌に要する必要電力、及び使用者による操作部130の操作に基づく、制御部100による撹拌部110の動作制御により行われる。以下の説明では、センサ120で検知された生クリームの撹拌に要する必要電力を、単に「必要電力」という。
【0037】
発明者らは、本実施形態の泡立て器1を開発するにあたり、生クリームの撹拌時間に応じた必要電力の変化と、生クリームの固さの関係について調査を行った。
【0038】
図3は、撹拌対象物である生クリームの撹拌に要する必要電力の時間変化を示したグラフである。グラフに示されるように、撹拌時間が110秒に達するまでは必要電力は8Wから12Wまで緩やかに上昇する。撹拌時間が110秒を超えると、必要電力の上昇率が高くなる。すなわち、撹拌時間が110秒を超えると、単位時間当たりの必要電力の変化が大きくなる。
【0039】
図3において、撹拌開始から110秒経過後のT1の時点以前における生クリームの状態は、ほぼ液体のままであった。撹拌開始から120秒が経過したT2の時点では、必要電力は14Wまで上昇し、生クリームはある程度のとろみを有する状態であった。撹拌開始から125秒が経過したT3の時点では、必要電力は17Wまで上昇し、生クリームは6分立ての状態となっていた。撹拌開始から130秒が経過したT4の時点では、必要電力は22Wまで上昇し、生クリームは8分立ての状態となっていた。
【0040】
上記のように、発明者らの調査によれば、生クリームを撹拌する必要電力は生クリームが固くなることで上昇するが、生クリームの固さは必要電力の時間変化により判定可能であることが判った。すなわち、本実験によれば、10秒当たりの必要電力の変化が12Wから14Wまでの2W上昇したT2の時点では、生クリームはとろみを有する状態であると判断される。5秒当たりの必要電力の変化が14Wから17Wまでの3W上昇したT2の時点では、生クリームは6分立ての状態であると判断される。5秒当たりの必要電力の変化が17Wから22Wまでの5W上昇したT2の時点では、生クリームは8分立ての状態であると判断される。これはあくまで一例であるが、他の生クリームを用いた場合であっても、必要電力の時間変化に基づいて生クリームの状態を判定可能であることが判った。
【0041】
泡立て器1では、設定部140は、使用者の操作に応じて、撹拌対象の生クリームの目標固さを「とろみ」、「6分立て」、及び「8分立て」の3段階に設定可能としている。制御部100は、これらの設定に応じて、撹拌部110の動作を停止する閾値を決定する。閾値は、必要電力の時間変化とすることができる。
【0042】
具体的には、目標固さが「とろみ」の場合には5秒当たりの必要電力の変化の閾値を1Wとし、目標固さが「6分立て」の場合には5秒当たりの必要電力の変化の閾値を3Wとし、目標固さが「8分立て」の場合には5秒当たりの必要電力の変化の閾値を5Wとする。制御部100は、センサ120で検知された必要電力が所定の閾値以上となったら撹拌部110の動作を停止する。具体的には、制御部100はモーターに対する電力の供給を停止してモーター及びウィスク4の回動を停止させる。
【0043】
また、使用者によって操作部130が操作され、必要電力にかかわらず撹拌を行うことを要求されたら、制御部100はセンサ120により検知された必要電力にかかわらず撹拌部110を動作させて撹拌を行う。具体的には、制御部100はモーターに対して電力を供給してモーター及びウィスク4を回動させる。
【0044】
なお、制御部100は、閾値を、必要電力の時間変化に代えて、検知時点での必要電力の値としてもよい。具体的には、目標固さが「とろみ」の場合には必要電力の閾値を14Wとし、目標固さが「6分立て」の場合には必要電力の閾値を17Wとし、目標固さが「8分立て」の場合には必要電力の閾値を22Wとしてよい。
【0045】
上記の閾値はあくまで一例に過ぎず、モーターの種類、ウィスク4の形状及び種類、並びにコンテナ2の容量及び形状などに応じて任意に変更してよい。
【0046】
[泡立て器1のサイズ等]
本実施形態の泡立て器1は、業務用ではなく家庭用として、日々の食生活で少量だけ泡立てされた生クリームが使用されることを想定している。そのため、本体のサイズを、高さを200mm、本体部3及びコンテナ2を上から見たときの直径を80mmとし、手のひらにも載せられる小型のサイズとしている。また、上記のようにコンテナ2の容量を、100mlの生クリームを泡立てたときの容量である320mlとして、少量の生クリームを撹拌するのに適したサイズとしている。また、重さを420g程度として、家庭のキッチンで簡単に収納したり取り出したりしやすくしている。さらに、充電式の構成とすることで、電源のある場所ではなく、家庭の食卓に持ち出して「ちょっと使い」するのに適した構成としている。
【0047】
[変形例]
本発明の泡立て器1は、上記の実施形態で説明した形状に限定されず、実施形態の形状に対して発明の趣旨を逸脱しない範囲で一部が変形されてもよい。
【0048】
実施形態では主に生クリームを例に挙げて説明したが、生クリーム以外の、撹拌により固さが生クリームと同様に変化する食品であっても、泡立て器1は利用可能である。
【0049】
泡立て器1の形状は、図1で示したものに限定されるものではなく、例えば装置の上側にコンテナ2が配置され、下側に本体部3が配置された構成としてもよい。また、コンテナ2の容量は任意に変更してよい。
【0050】
[泡立て器1の特徴]
泡立て器1は、生クリームを撹拌する撹拌部110と、撹拌に要する必要電力を検知するセンサ120と、撹拌部の動作を制御する制御部100と、生クリームの目標固さを選択的に設定する設定部140と、使用者により操作可能な操作部130とを備える。制御部100は、センサ120で検知された必要電力に基づいて、生クリームの固さが目標固さに達したと判断されるときに撹拌部110の動作を停止し、使用者により操作部130が操作されたときは、センサ120で検知された必要電力にかかわらず撹拌部110を動作させる構成とする。
【0051】
上記の泡立て器1では、使用者が操作することでセンサ120で検知された必要電力にかかわらず撹拌部110を動作させる操作部130は必須の構成ではない。
【0052】
また、上記の泡立て器1では、撹拌対象の生クリームの目標固さを選択的に設定する設定部140は必須の構成ではない。この場合、制御部100は、生クリームが予め決められた所定の固さに達したと判断される場合に撹拌部110の動作を停止する。
【0053】
泡立て器1を用いれば、トルクセンサのような複雑な構成を用いず、センサ120として簡易な電力センサを用いることで、生クリームを所望の固さまで撹拌することができる。また、ユーザの好みに合わせ選択的に設定可能な目標固さまで生クリームを撹拌することができる。また、目標固さにかかわらず、ユーザが撹拌を継続したい場合には任意に撹拌を継続することができるため、用途に合わせて生クリームの撹拌具合を容易に調整することなどができる。
【0054】
また、本発明の泡立て器1は、生クリームに粉末が添加され、または生クリームがごく少量であったとしても、所定の固さまで自動で容易に撹拌することが可能となる。また、一度開封した生クリームは傷みやすく、一度で使い切れずに余らせると廃棄に繋がる場合もあるが、このように少量の生クリームが使用可能となることで生クリームを無駄なく使いきることができ、食品ロスの削減が可能となる。また、使用者の好みの固さの生クリームを、普段の食事に少しだけトッピングするなどの使い方が可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1…泡立て器
2…コンテナ
3…本体部
31…操作スイッチ
32…LED表示部
33…端子
4…ウィスク
100…制御部
110…撹拌部
120…センサ
130…操作部
140…設定部
150…通知部
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生クリームを攪拌する泡立て器であって、
前記生クリームが入れられるコンテナと、
モーター及び前記モーターによって回動されるウィスクを含み、前記コンテナ内の前記生クリームを撹拌する撹拌部と、
前記モーターが動作する際の電圧及び電流から、前記生クリームの撹拌に要する必要電力を検知するセンサと、
前記撹拌部の動作を制御する制御部と、
使用者により操作可能な操作部である1つの操作スイッチと、
前記泡立て器の状態を光、画像、または音声で通知する通知部と、
前記泡立て器に動作のための電力を供給する、充電可能な蓄電池と、を備え、
前記制御部は、
前記センサで検知された前記必要電力の時間変化が所定の閾値以上となったときに、前記生クリームの固さが所定の固さに達したと判断して前記撹拌部の動作を停止し、
使用者により前記操作スイッチ押し続けられたときは、前記センサで検知された前記必要電力にかかわらず前記撹拌部を動作させる、
泡立て器。