(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146792
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】極性基含有グラフトポリオレフィン組成物、および積層体
(51)【国際特許分類】
C08F 255/00 20060101AFI20241004BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241004BHJP
C08F 8/12 20060101ALN20241004BHJP
【FI】
C08F255/00
B32B27/00 D
C08F8/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024035177
(22)【出願日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2023058371
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 勝好
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 悠介
(72)【発明者】
【氏名】志賀 綾平
(72)【発明者】
【氏名】市川 達也
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏和
【テーマコード(参考)】
4F100
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK03A
4F100AK17B
4F100AK17C
4F100AK18B
4F100AK18C
4F100AK42B
4F100AK42C
4F100AK45B
4F100AK45C
4F100AK74B
4F100AK74C
4F100AL04A
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CB00A
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4F100JK06
4F100JL11A
4F100YY00A
4J026AA11
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4J026BA06
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4J026BB10
4J026DB05
4J026DB09
4J026DB15
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4J026EA03
4J026EA05
4J026EA08
4J026FA08
4J026GA01
4J026GA10
4J100CA03
4J100HA08
4J100HB25
4J100HB39
4J100HC09
4J100HE07
4J100HE08
4J100HG09
4J100JA03
4J100JA05
4J100JA58
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特にフッ素含有樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリカーボネート樹脂に対する接着樹脂を構成し得るグラフト共重合体の提供。
【解決手段】ポリオレフィンからなる主鎖部と、グラフト部とを有し、前記グラフト部は一般式(1)で示される芳香族モノマーに由来するか、または式(1)で示される芳香族モノマーにおけるヒドロキシ基を保護基で保護したモノマーを前記主鎖部にグラフト共重合し、グラフト共重合後に前記ヒドロキシ基を脱保護して形成されるグラフト共重合体。
(式中、*は前記主鎖部にグラフト可能な不飽和基を含む基;rは0~2の整数;nは2以上の整数;R
Tは水素原子等である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン(A)からなる主鎖部と、グラフト部とを有し、
前記グラフト部は下記一般式(1)で示される芳香族モノマー(B)に由来するか、または下記一般式(1)で示される芳香族モノマー(B)におけるヒドロキシ基を保護基で保護したモノマーを前記主鎖部にグラフト共重合し、グラフト共重合後に前記ヒドロキシ基を脱保護して形成される
グラフト共重合体(X)。
【化1】
(式(1)中、*は前記主鎖部にグラフト可能な不飽和基を含む基であり、
rは0~2の整数であり、
nは、r=0のときは2~5の整数、r=1のときは2~7の整数、r=2のときは2~9の整数であり、
R
Tは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~30のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~30のアルケニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシ基、またはチオール基である。アルキル基、アリール基およびアルケニル基は、芳香環に、酸素原子を介して結合していてもよく、直接結合していてもよい。
R
Tは、複数個存在する場合には、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、ヒドロキシ基の少なくとも2つは、芳香環上の隣り合った位置に存在している。)
【請求項2】
前記グラフト部の量が0.01~1.5mmol/g-Pである〔但し、mmol/g-Pはグラフト共重合体(X)1g当たりのグラフト部の物質量を表す〕、請求項1に記載のグラフト共重合体(X)。
【請求項3】
前記芳香族モノマー(B)が、ビニルカテコールである、請求項1または2に記載のグラフト共重合体(X)。
【請求項4】
接着樹脂を含むフィルムと、前記接着樹脂以外の樹脂を含むフィルムとを含み、前記接着樹脂は請求項1に記載のグラフト共重合体(X)を含む、積層体。
【請求項5】
前記接着樹脂以外の樹脂が、フッ素含有樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂またはポリカーボネート樹脂である、請求項4に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性基含有グラフトポリオレフィン組成物、および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の接着樹脂は、接着性官能基として酸無水物またはエポキシ基などを有している。
これらの接着樹脂は、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)およびポリアミド等の極性樹脂に高い親和性を示すため、極性樹脂に対しては高い接着性および相溶性を示す。
【0003】
自然界に目を向けると、ムール貝が産出するタンパク質は、ベンゼン環のオルト位にヒドロキシ基が2個隣接したカテコール構造を有し、それによりムール貝は水中でも岩などの表面に強固に付着することが知られている。したがって、カテコール誘導体の接着剤分野への応用が期待されている。例えば、特許文献1には、湿潤面に対しても十分な粘着力を有する、カテコール誘導体を含むアクリル系樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の接着樹脂は、フッ素含有樹脂(PTFE、ETFE等)、スチレン系樹脂(ABS樹脂等)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂等)およびポリカーボネート樹脂などの疎水性樹脂に対しては親和性が低い。実際、これらの樹脂に接着性を有する接着樹脂は、依然として開発されていない。
【0006】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、疎水性樹脂に対する接着樹脂、具体的にはフッ素含有樹脂およびABS樹脂の両方の樹脂に対する接着樹脂、特にフッ素含有樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリカーボネート樹脂に対する接着樹脂を構成し得るグラフト共重合体の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の様態を有する。
[1]
ポリオレフィン(A)からなる主鎖部と、グラフト部とを有し、
前記グラフト部は下記一般式(1)で示される芳香族モノマー(B)に由来するか、または下記一般式(1)で示される芳香族モノマー(B)におけるヒドロキシ基を保護基で保護したモノマーを前記主鎖部にグラフト共重合し、グラフト共重合後に前記ヒドロキシ基を脱保護して形成される
グラフト共重合体(X)。
【0008】
【0009】
(式(1)中、*は前記主鎖部にグラフト可能な不飽和基を含む基であり、
rは0~2の整数であり、
nは、r=0のときは2~5の整数、r=1のときは2~7の整数、r=2のときは2~9の整数であり、
RTは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~30のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~30のアルケニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシ基、またはチオール基である。アルキル基、アリール基およびアルケニル基は、芳香環に、酸素原子を介して結合していてもよく、直接結合していてもよい。
RTは、複数個存在する場合には、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、ヒドロキシ基の少なくとも2つは、芳香環上の隣り合った位置に存在している。)
【0010】
[2]
前記グラフト部の量が0.01~1.5mmol/g-Pである〔但し、mmol/g-Pはグラフト共重合体(X)1g当たりのグラフト部の物質量を表す〕、[1]に記載のグラフト共重合体(X)。
【0011】
[3]
前記芳香族モノマー(B)が、ビニルカテコールである、[1]または[2]に記載のグラフト共重合体(X)。
【0012】
[4]
接着樹脂を含むフィルムと、前記接着樹脂以外の樹脂を含むフィルムとを含み、前記接着樹脂は[1]~[3]のいずれかに記載のグラフト共重合体(X)を含む、積層体。
【0013】
[5]
前記接着樹脂以外の樹脂が、フッ素含有樹脂またはABS樹脂である、[4]に記載の積層体。
【発明の効果】
【0014】
本発明のグラフト共重合体は、疎水性樹脂に対する接着樹脂、具体的にはフッ素含有樹脂およびABS樹脂の両方の樹脂に対する接着樹脂、特にフッ素含有樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリカーボネート樹脂に対する接着樹脂を構成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
[グラフト共重合体(X)]
本発明に係るグラフト共重合体(X)は、ポリオレフィン(A)からなる主鎖部と、グラフト部とを有し、前記グラフト部は前記一般式(1)で示される芳香族モノマー(B)に由来するか、または前記一般式(1)で示される芳香族モノマー(B)におけるヒドロキシ基を保護基で保護したモノマーを前記主鎖部にグラフト共重合し、グラフト共重合後に前記ヒドロキシ基を脱保護して形成される。
【0016】
<主鎖部>
本発明に用いるポリオレフィン(A)としては、種々公知のオレフィン系重合体を使用し得る。前記ポリオレフィン(A)としては、例えば、炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構造単位を主な構造単位として含むオレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。なお、主な構造単位として含むとは、前記ポリオレフィン(A)が有するすべての構造単位のモル数に対して、炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構造単位を51モル%以上含むことを意味する。
【0017】
なお、本発明に用いるポリオレフィン(A)は、バイオマスオレフィンから得られたポリオレフィンを含んでいてもよい。
炭素数2~20のα-オレフィンは、直鎖状のα-オレフィンであってもよいし、分岐状のα-オレフィンであってもよい。
【0018】
炭素数2~20の直鎖状のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および1-エイコセンが挙げられる。これらα-オレフィンの中でも炭素数2~10のα-オレフィンが好ましい。
【0019】
炭素数3~20の分岐状のα-オレフィンとしては、例えば、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、トリメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、メチルエチルペンテン-1、ジエチルブテン-1、およびプロピルペンテン-1が挙げられる。分岐状のα-オレフィンの炭素数は5~20であることが好ましく、5~10であることがより好ましい。
【0020】
前記ポリオレフィン(A)は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセンまたは1-オクテンに由来する構造単位を主な構造単位とすることが好ましく、エチレン、プロピレンまたは1-ブテンに由来する構造単位を主な構造単位とすることがより好ましく、エチレンまたはプロピレンに由来する構造単位を主な構造単位とすることがさらに好ましい。
【0021】
前記ポリオレフィン(A)は、炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構造単位を、前記ポリオレフィン(A)が有するすべての構造単位のモル数に対して51モル%以上有し、好ましくは60モル%以上有し、より好ましくは70モル%以上有する。なお、炭素数2~20のα-オレフィンに由来する構造単位の量の上限は特に規定されず、100モル%とすることができる。
【0022】
前記ポリオレフィン(A)は、これらの炭素数2~20のα-オレフィン以外の他の化合物に由来する構造単位を主鎖中に有していてもよい。他の化合物としては、例えば、(ヘテロ原子を含まない)炭化水素化合物が挙げられる。前記炭化水素化合物としては、例えば、炭素数21以上のα-オレフィン、スチレンなどを含む芳香族ビニル化合物、ジエン、およびポリエンが挙げられる。
【0023】
前記ポリオレフィン(A)は、エチレンに由来する構造単位を主な構造単位とする重合体(以下、単に「エチレン系重合体」ともいう。)またはプロピレンに由来する構造単位を主な構造単位とする重合体(以下、単に「プロピレン系重合体」ともいう。)であることが好ましい。
【0024】
エチレン系重合体は、エチレンに由来する構造単位を、エチレン系重合体が有するすべての構造単位のモル数に対して51モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上有する。エチレンに由来する構造単位の量の上限は、特に規定されず、100モル%(エチレン単独重合体)であってもよい。
【0025】
プロピレン系重合体は、プロピレンに由来する構造単位を、プロピレン系重合体が有するすべての構造単位のモル数に対して51モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上有する。プロピレンに由来する構造単位の量の上限は特に規定されず、100モル%(プロピレン単独重合体)であってもよい。
【0026】
前記ポリオレフィン(A)のASTM D1238による190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01~500g/10分、より好ましくは0.05~200g/10分、さらに好ましくは0.1~100g/10分である。前記ポリオレフィン(A)のMFRがこの範囲にあると、グラフト共重合体(X)のMFRも同程度となることから、グラフト共重合体(X)はハンドリング性に優れる。
【0027】
グラフト共重合に用いる前記ポリオレフィン(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定した重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100,000~700,000、さらに好ましくは150,000~500,000である。前記ポリオレフィン(A)の重量平均分子量(Mw)がこの範囲にあると、グラフト共重合体(X)はハンドリング性に優れる。
【0028】
また前記ポリオレフィン(A)における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とから求められる分子量分布(Mw/Mn)の値は、好ましくは1.5~6.0、より好ましくは1.5~5.8、さらに好ましくは1.5~5.6の範囲にある。なお、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた値である。GPCの測定条件としては、後述する条件を採用することができる。
【0029】
前記ポリオレフィン(A)は、従来公知の方法によって製造でき、例えば、チタン系触媒、バナジウム系触媒、またはメタロセン触媒などを用いて重合を行うことで製造できる。
また、前記ポリオレフィン(A)の構造は、アイソタクチック構造およびシンジオタクチック構造のいずれでもよい。前記ポリオレフィン(A)の立体規則性についても特段の制限はない。前記ポリオレフィン(A)としては、市販のポリオレフィンをそのまま利用することも可能である。
【0030】
<グラフト部>
本発明に係るグラフト共重合体(X)は、下記一般式(1)で示される芳香族モノマー(B)に由来するグラフト部、または下記一般式(1)で示される芳香族モノマー(B)におけるヒドロキシ基を保護基で保護したモノマーを前記主鎖部にグラフト共重合し、グラフト共重合後に前記ヒドロキシ基を脱保護して形成される、グラフト部を含む。
【0031】
【0032】
(式(1)中、*は前記主鎖部にグラフト可能な不飽和基を含む基であり、
rは0~2の整数であり、
nは、r=0のときは2~5の整数、r=1のときは2~7の整数、r=2のときは2~9の整数であり、
RTは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1~30のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有してもよい炭素数2~30のアルケニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボキシ基、またはチオール基である。アルキル基、アリール基およびアルケニル基は、芳香環に、酸素原子を介して結合していてもよく、直接結合していてもよい。
RTは、複数個存在する場合には、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、ヒドロキシ基の少なくとも2つは、芳香環上の(具体的には、1つのベンゼン環上の)隣り合った位置に存在している。
*、RTおよびヒドロキシ基は、それぞれいずれのベンゼン環に結合していてもよい。)
【0033】
なお、置換基を有してもよいとは、置換基を有するか、または置換基を有さないことを意味する。前記炭素数には、置換基中の炭素原子の数も含まれる。
【0034】
一般式(1)で示される芳香族モノマー(B)に由来するグラフト部は、下記一般式(1')で表される構造を有する。
【0035】
【0036】
(式(1')中、**は主鎖部との結合部を表し、r、nおよびRTは、式(1)中のr、nおよびRTと同義である。)
【0037】
前記主鎖部にグラフト可能な不飽和基を含む基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基(プロパ-1-エン-1-イル基)、シクロヘキセニル基、iso-プロペニル基(プロパ-1-エン-2-イル基)、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基(ブタ-2-エン-1-イル基)、ブタ-3-エン-2-イル基、メタリル基(2-メチルアリル基)、ペンタ-4-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-2-エン-1-イル基、iso-ペンテニル基(3-メチルブタ-3-エン-1-イル基)、2-メチルブタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-2-イル基、およびプレニル基(3-メチルブタ-2-エン-1-イル基)などの直鎖状または分岐状であるアルケニル基が挙げられ、これらの中でもビニル基が好ましい。
【0038】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、1-ノニル基、1-デカニル基、1-ウンデカニル基、1-ドデカニル基、1-エイコサニル基、iso-プロピル基、sec-ブチル(ブタン-2-イル)基、tert-ブチル(2-メチルプロパン-2-イル)基、iso-ブチル(2-メチルプロピル)基、ペンタン-2-イル基、2-メチルブチル基、iso-ペンチル(3-メチルブチル)基、ネオペンチル(2,2-ジメチルプロピル)基、tert-ペンチル(1,1-ジメチルプロピル)基、シアミル(1,2-ジメチルプロピル)基、ペンタン-3-イル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、iso-ヘキシル(4-メチルペンチル)基、1,1-ジメチルブチル(2-メチルペンタン-2-イル)基、3-メチルペンタン-2-イル基、4-メチルペンタン-2-イル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、テキシル(2,3-ジメチルブタ-2-イル)基、3-メチルペンタン-3-イル基、3,3-ジメチルブタ-2-イル基、ヘキサン-3-イル基、2-メチルペンタン-3-イル基、ヘプタン-4-イル基、2,4-ジメチルペンタン-3-イル基、3-エチルペンタン-3-イル基、4,4-ジメチルペンチル基、4-メチルヘプタン-4-イル基、4-プロピルヘプタン-4-イル基、2,3,3-トリメチルブタン-2-イル基、および2,3,4-トリメチルペンタン-3-イル基などの直鎖状または分岐状であるアルキル基が挙げられる。
【0039】
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、α-またはβ-ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ベンジルフェニル基、ピレニル基、アセナフチル基、フェナレニル基、アセアントリレニル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基およびビフェニリル基が挙げられる。
【0040】
前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基(プロパ-1-エン-1-イル基)、シクロヘキセニル基、iso-プロペニル基(プロパ-1-エン-2-イル基)、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基(ブタ-2-エン-1-イル基)、ブタ-3-エン-2-イル基、メタリル基(2-メチルアリル基)、ペンタ-4-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-2-エン-1-イル基、iso-ペンテニル基(3-メチルブタ-3-エン-1-イル基)、2-メチルブタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-2-イル基、およびプレニル基(3-メチルブタ-2-エン-1-イル基)などの直鎖状または分岐状であるアルケニル基が挙げられる。
【0041】
酸素原子を介して芳香環に結合するアルキル基、アリール基およびアルケニル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1-プロポキシ基、1-ブトキシ基、iso-プロポキシ基、sec-ブトキシ基、アリルオキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、プレニルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、トルイルオキシ基、iso-プロピルフェノキシ基、iso-ブトキシ基、アリルフェノキシ基、tert-ブチルフェノキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシフェノキシ基、ビフェニルオキシ基、ビナフチルオキシ基、および1-アダマンチルオキシ基が挙げられる。
【0042】
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。
前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、およびリン含有基が挙げられる。また、前記アルキル基および前記アルケニル基が有し得る置換基としては、前記アリール基も挙げられる。
【0043】
前記ハロゲン原子としては、例えば、前述したハロゲン原子が挙げられる。
前記ハロゲン含有基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、およびヘキサクロロアンチモン酸アニオンが挙げられる。
【0044】
前記ケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-iso-プロピルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、およびトリメチルシリルメチル基が挙げられる。
【0045】
前記酸素含有基としては、例えば、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、アリルオキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ベンジルオキシ基、メトキシメトキシ基、フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,6-ジ-iso-プロピルフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェノキシ基、カルボニル基、アセチル基、アセトキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、およびトリフルオロアセトキシ基が挙げられる。
【0046】
前記硫黄含有基としては、例えば、チオール基、メシル(メタンスルフォニル)基、フェニルスルホニル基、トシル(p-トルエンスルホニル)基、トリフリル(トリフルオロメタンスルホニル)基、ノナフリル(ノナフルオロブタンスルホニル)基、メシラート(メタンスルホナート)基、トシラート(p-トルエンスルホナート)基、トリフラート(トリフルオロメタンスルホナート)基、およびノナフラート(ノナフルオロブタンスルホナート)基が挙げられる。
【0047】
前記窒素含有基としては、例えば、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アリルアミノ基、ジアリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基、ピロリル基、およびビストリフリルイミド基が挙げられる。
【0048】
前記ポリオレフィン(A)に対して前記芳香族モノマー(B)を導入することで前記グラフト共重合体(X)を得てもよいし、前記ポリオレフィン(A)に対して前記一般式(1)で示される芳香族モノマー(B)におけるヒドロキシ基を保護基で保護したモノマーをグラフト共重合し、グラフト共重合後に前記ヒドロキシ基を脱保護することで前記グラフト共重合体(X)を得てもよい。
【0049】
前記一般式(1)を満たす芳香族モノマー(B)としては、例えば、4-ビニルカテコール、3-ビニルカテコール、5-ビニルベンゼン-1,2,3-トリオール、5-ビニルベンゼン-1,2,3,4-テトラオール、4-ビニルベンゼン-1,2,3-トリオール、3-メチル-5-ビニルベンゼン-1,2-ジオール、4-ビニルナフタレン-1,2,8-トリオール、および7,8-ジメチル-4-ビニルナフタレン-1,2-ジオールが挙げられる。
【0050】
前記一般式(1)を満たす芳香族モノマー(B)は、好ましくは前記一般式(1)においてr=0である芳香族モノマーであり、より好ましくはr=0かつn=2である芳香族モノマーであり、さらに好ましくは4-ビニルカテコールまたは3-ビニルカテコールであり、特に好ましくは4-ビニルカテコールである。
【0051】
なお、前記グラフト共重合体(X)を含む樹脂がフッ素含有樹脂に対して接着性を有する理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
フッ素含有樹脂に対して、前記芳香族モノマー(B)におけるヒドロキシ基とフッ素含有樹脂におけるフッ素原子とが水素結合を形成し、前記グラフト共重合体(X)とフッ素含有樹脂とが接近しやすくなる。また、フッ素含有樹脂と前記グラフト共重合体(X)を含む樹脂とを接着させるためにホットメルト処理を行う際、グラフト部(すなわち、グラフトされた前記芳香族モノマー(B))がグラフト共重合体(X)間に架橋構造を形成する。さらに、架橋構造を有する前記グラフト共重合体(X)がフッ素含有樹脂表面の凹凸に入り込んで固定化される(アンカー効果)ため、グラフト共重合体(X)を含む樹脂はフッ素含有樹脂に対して接着性を発現する。
【0052】
また、フッ素含有樹脂に含まれるポリオレフィンと前記グラフト共重合体(X)に含まれるポリオレフィン(A)とが親和性を有することも、接着性発現に寄与する。なお、主鎖部であるポリオレフィン(A)およびフッ素含有樹脂は疎水性であるため、前記芳香族モノマー(B)におけるヒドロキシ基は疎水環境に置かれる。したがって、フッ素含有樹脂とグラフト共重合体(X)との間の水素結合などの相互作用が働きやすくなっていると推察される。
【0053】
前記ポリオレフィン(A)に対して、前記一般式(1)で示される芳香族モノマー(B)におけるヒドロキシ基を保護基で保護したモノマーをグラフト共重合し、グラフト共重合後に前記ヒドロキシ基を脱保護することで前記グラフト共重合体(X)を得る場合、前記ヒドロキシ基の脱保護を行うために加熱することで、前記ヒドロキシ基が酸化して、キノン類が生じる可能性がある。前記キノン類は、ヒドロキシ基を有する芳香族モノマー(B)と反応してグラフト共重合体(X)間に架橋構造を形成する可能性がある。
【0054】
脱保護工程を伴って製造されたグラフト共重合体(X)においても前記同様に、グラフト部におけるヒドロキシ基とフッ素含有樹脂におけるフッ素原子との水素結合、およびホットメルト処理によるアンカー効果のために、グラフト共重合体(X)を含む樹脂はフッ素含有樹脂に対して接着性を発現すると本発明者らは推察する。
【0055】
前記保護基としては、従来公知の保護基が挙げられ、例えば、アセチル基、トリアルキルシリル基、テトラヒドロピラニル基、およびモノメトキシメチル基が挙げられる。
前記グラフト共重合体(X)は、前記ホットメルト処理および脱保護工程における加熱処理などをする際にグラフト共重合体間に架橋構造を形成する可能性がある。
【0056】
前記芳香族モノマー(B)および前記一般式(1)で示される芳香族モノマー(B)におけるヒドロキシ基を保護基で保護したモノマーは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0057】
前記芳香族モノマー(B)および前記一般式(1)で示される芳香族モノマー(B)におけるヒドロキシ基を保護基で保護したモノマーは、従来公知の製造方法で製造可能である。前記芳香族モノマー(B)の中でも4-ビニルカテコールの製造方法としては、例えば、カフェ酸をDMFに溶解させ、トリエチルアミンと反応させる製造方法が挙げられる。
【0058】
前記一般式(1)で示される芳香族モノマー(B)におけるヒドロキシ基を保護基で保護したモノマーとしては、例えば、3,4-ジアセトキシスチレンが挙げられる。3,4-ジアセトキシスチレンの製造方法としては、例えば、カフェ酸をDMFに溶解させ、トリエチルアミンと反応させて4-ビニルカテコールを製造した後、無水酢酸と反応させる製造方法が挙げられる。
【0059】
<グラフト共重合体(X)>
前記ポリオレフィン(A)と、前記芳香族モノマー(B)または前記一般式(1)で示される芳香族モノマー(B)におけるヒドロキシ基を保護基で保護したモノマーとのグラフト共重合方法については特に限定されない。前記グラフト共重合方法としては、ラジカル開始剤の存在下で行う溶液法および溶融混練法など、従来公知のグラフト重合法が挙げられる。
【0060】
脱保護工程を伴って前記グラフト共重合体(X)を製造する場合、脱保護の方法としては従来公知の方法を採用することができる。また、保護基の種類に応じて酸性条件、塩基性条件などの反応条件を定めることができる。
【0061】
前記グラフト共重合体(X)は、グラフト部を好ましくは0.01~1.5mmol/g-P含有し、より好ましくは0.02~1.2mmol/g-P含有し、さらに好ましくは0.03~1.0mmol/g-P含有し、特に好ましくは0.03~0.3mmol/g-P含有する。但し、mmol/g-Pはグラフト共重合体(X)1g当たりのグラフト部の物質量を表す。なお、グラフト共重合体(X)におけるグラフト部の量を、グラフト量とも称する場合がある。
【0062】
グラフト部を0.01mmol/g-P以上含む前記グラフト共重合体(X)は、疎水性樹脂、具体的にはフッ素含有樹脂およびABS樹脂の両方の樹脂、特にフッ素含有樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリカーボネート樹脂に対する接着性が高い。グラフト部を1.5mmol/g-P以下含む前記グラフト共重合体(X)は、ホットメルト処理を行う際の流動性が高い。
【0063】
前記グラフト量は、実施例の欄に記載の条件で1H-NMRまたはIRスペクトルを測定することにより算出できる。
前記グラフト共重合体(X)の密度は、好ましくは0.85~1.05g/cm3、より好ましくは0.88~1.00g/cm3、さらに好ましくは0.90~0.98g/cm3である。
【0064】
前記グラフト共重合体(X)のASTM D1238による190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1~30g/10分、より好ましくは0.1~20g/10分、さらに好ましくは0.1~15g/10分である。
【0065】
前記グラフト共重合体(X)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定した重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100,000~700,000、さらに好ましくは150,000~500,000である。重量平均分子量(Mw)がこの範囲にあるグラフト共重合体(X)は、ハンドリング性に優れる。
【0066】
また前記グラフト共重合体(X)における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量分子(Mn)とから求められる分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.5~6.0、より好ましくは1.5~5.8、さらに好ましくは1.5~5.6の範囲にある。なお、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた値である。
【0067】
前記Mw、MnおよびMw/Mnは、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)(例えば、東ソー社製のHLC-8321GPC/HT型ゲル浸透クロマトグラフ(GPC))を用いて以下のように測定できる。分離カラムとして、TSKgel GMH6-HT(2本)とGMH6-HTL(2本)(いずれも7.5mmI.D.×30cm、東ソー社製)を用い、カラム温度を140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)を用い、展開速度を1.0mL/分とし、試料濃度を0.1%(w/v)とし、試料注入量を0.4mLとし、検出器として示差屈折計を用いる。装置の較正は、単分散ポリスチレン(東ソー社製、#3std set)を用いて実施する。分子量分布(Mw/Mn)は、前記測定法により測定したMwを、同じく前記測定法により測定したMnで除して算出する。
【0068】
[積層体]
本発明に係る積層体は、接着樹脂を含むフィルムと、前記接着樹脂以外の樹脂を含むフィルムとを含み、前記接着樹脂は、本発明に係るグラフト共重合体(X)を含む。
以下、前記接着樹脂を含むフィルムをシーラントフィルムと呼称する場合があり、前記接着樹脂以外の樹脂を含むフィルムを基材フィルムと呼称する場合がある。
【0069】
〈シーラントフィルム〉
前記シーラントフィルムは、好ましくは前記グラフト共重合体(X)のみを含む接着樹脂を含む。
【0070】
前記シーラントフィルムの厚さは特に限定されないが、用途適性の観点から、好ましくは2μm以上1000μm以下であり、より好ましくは5μm以上800μm以下である。
【0071】
前記シーラントフィルムは、好ましくは延伸フィルムまたは無延伸フィルムであり、より好ましくは延伸フィルムである。
延伸フィルムは、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれでもよいが、流れ方向および垂直方向の強度および剛性のバランスの観点から、好ましくは二軸延伸フィルムである。
【0072】
前記シーラントフィルムは、好ましくはフィルムとして形成された後、延伸処理を施された延伸フィルムである。シーラントフィルムが延伸フィルムであると、剛性に優れた積層体を提供できる。
【0073】
前記シーラントフィルムの延伸方法としては、延伸フィルムを製造する公知の方法を用いることができる。シーラントフィルムの延伸方法としては、例えば、ロール延伸、テンター延伸、チューブラー延伸、および前記延伸方法の組み合わせが挙げられる。
【0074】
〈基材フィルム〉
前記基材フィルムが含む前記接着樹脂以外の樹脂としては、例えば、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート樹脂、フッ素含有樹脂、およびABS樹脂が挙げられる。
【0075】
前記フッ素含有樹脂としては、例えば、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、およびポリビニリデンフルオライド(PVDF)樹脂が挙げられる。
【0076】
前記接着樹脂以外の樹脂としては、前記グラフト共重合体(X)を含むシーラントフィルムとの接着性の観点から、好ましくはフッ素含有樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂またはポリカーボネート樹脂であり、より好ましくはフッ素含有樹脂またはABS樹脂である。
前記接着樹脂以外の樹脂は、前記グラフト共重合体(X)を含まない。
前記基材フィルムは、前記接着樹脂以外の樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0077】
前記積層体を作製する方法としては、ホットメルト処理を伴う従来公知の方法が挙げられ、例えば、前記シーラントフィルムと前記基材フィルムとを重ね合わせ、ヒートシールする方法が挙げられる。
【0078】
前記積層体は、前記基材フィルムを1層のみ含んでいてもよいし、2層以上含んでいてもよい。
前記シーラントフィルムおよび前記基材フィルムの製造方法としては、特に限定されず、例えば、押出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、およびインフレーション法等従来使用されている製膜化法、ならびに2種以上の樹脂を使用した多層共押出し製膜化法が挙げられる。
【0079】
前記積層体を構成する各フィルムには、接着用積層フィルムに通常配合されることのある添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、滑剤、結晶核剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、または充填剤が、本発明の効果を阻害しない範囲において含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。
【実施例0080】
以下において、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0081】
[実施例1~4、比較例1~3]
下記実施例1~4および比較例1~3で製造したグラフト共重合体1~7の接着性を、下記接着評価1~2に記載の方法により評価した。
[接着評価1]
〈プレスシート、接着シート作製〉
下記実施例等で合成したグラフト共重合体を、温度160℃、圧力100kPa、余熱時間7分、加圧時間4分の条件でプレス成形し、その後20℃に設定したプレス成形機にて急冷することにより、厚さ300μm、長さ80mm、幅80mmのプレスシートを得た。離型フィルムは、テフロン(登録商標)シート(0.2mm厚)を用いた。前記プレスシートを幅20mmに切り、接着シート(L)とした。
【0082】
〈接着方法)
基材層として、厚さ50μm、長さ80mm、幅20mmのエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)樹脂シート(アズワン社製)(Q)を用いた。
【0083】
ETFE樹脂シート(Q層)、接着シート(L層)、ETFE樹脂シート(Q層)の順に重ね、その3層積層体をテフロン(登録商標)(PTFE)シート(厚さ:100μm)で挟み、上下のプレス板をともにヒートシール温度:260℃、ヒートシール時間:10秒、ヒートシール圧力:0.1MPaの条件でヒートシール試験機を用いてヒートシールを行い、ETFE樹脂シートおよび接着シートからなる3層積層構造体(T)を作製した。
【0084】
〈剥離試験〉
前記積層構造体について、一方のQ層とL層との平均剥離強度を、剥離速度300mm/分、ピール幅15mmの条件でT型剥離して求めた。4~5回の剥離試験で得られた剥離強度の平均値および標準誤差を表1に示した。
【0085】
[接着評価2]
基材層として厚さ50μm、長さ80mm、幅20mmのABS樹脂シート(テクノUMG(株)製、UMG ABS EX18A)を用いた以外は接着評価1と同様にして、プレスシート作製、接着シート作製、3層積層構造体作製、および剥離試験を行った。剥離試験で得られた剥離強度の平均値および標準誤差を表2に示した。
【0086】
[合成例]
〈グラフトモノマー〉
<4-ビニルカテコール>
窒素置換した200mLガラス容器中で、カフェ酸5.0g(28mmol)をDMF18mLに溶解させ、トリエチルアミン11.7mL(84mmol)を加え、100℃に加熱し、1時間撹拌した。放冷後、氷浴で4℃に冷却し、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)50mg(0.23mmol)を加え、溶液のpHが2.8~3.1程度になるまで1mol/Lの塩酸を加えた(約100mL)。
【0087】
その溶液を500mLの分液ロートに移し、酢酸エチル150mLを加えて、分液操作を実施した。有機相を約0.001mol/Lの塩酸150mLで分液、純水150mLで分液(2回)し、有機相にBHT50mg(0.23mmol)を加え、30℃で溶剤を減圧留去した。室温、窒素流通下で、12時間減圧乾燥をすることにより、4-ビニルカテコール3.8g(28mmol)を得た。
【0088】
<3,4-ジアセトキシスチレン>
窒素置換した200mLガラス容器中で、カフェ酸5.0g(28mmol)をDMF18mLに溶解させ、トリエチルアミン11.7mL(84mmol)を加え、100℃に加熱し、1時間撹拌した。放冷後、氷浴で4℃に冷却し、無水酢酸5.3mL(56mmol)を内温が10℃を超えないように少しずつ滴下した。その後室温で2時間撹拌をした後、約1mol/Lの塩酸50mLをゆっくり加えた。
【0089】
その溶液を500mLの分液ロートに移し、ジエチルエーテル100mLを加え、分液操作を実施した。その後、有機相を約1mol/Lの塩酸100mLで分液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mLで分液(2回)、純水100mLで分液(2回)し、室温で溶剤を減圧留去した。得られた液体を室温、窒素流通下で、12時間減圧乾燥することにより、3,4-ジアセトキシスチレン5.2g(24mmol)を得た。
【0090】
<3,4-ビス(トリエチルシリル)オキシスチレン>
窒素置換した200mLガラス容器中で、カフェ酸5.0g(28mmol)をDMF39mLに溶解させ、トリエチルアミン11.7mL(84mmol)を加え、100℃に加熱し、1時間撹拌した。放冷後、氷浴で4℃に冷却し、トリエチルシリルクロリド9.3mL(56mmol)を内温が15℃を超えないように少しずつ滴下した。その後室温で19時間撹拌し、析出している固体を除いた後、n-ヘキサン200mLを加えた。
【0091】
その溶液を500mLの分液ロートに移し、約0.1mol/Lの塩酸200mLで分液操作を実施した。その後、有機相を約0.1mol/Lの塩酸200mLで分液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200mLで分液(2回)、純水200mLで分液(2回)し、35℃で溶剤を減圧留去した。
【0092】
得られた液体を室温、窒素流通下で、12時間減圧乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲル60 N 38~100μm、カラム径70mm、カラム長さ120mm、展開溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=90/10(v/v))で精製し、3,4-ビス(トリエチルシリル)オキシスチレン5.2g(14mmol)を得た。
【0093】
〈グラフト共重合体〉
[実施例1]
<グラフト共重合体1>
窒素流通下、500mLガラス容器に、ベースポリマー(LLDPE)(プライムポリマー社製 エボリューSP-2040)を25.0g、トルエンを110mL装入し、内温を110℃に昇温し、ベースポリマーを溶解させた。2-ブタノン3mLに溶解させた4-ビニルカテコール1.9g(14mmol)を加えた後、すぐにトルエン10mLで希釈したパーブチルI(t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート)0.97g(5.5mmol)をゆっくり滴下した。
【0094】
シングルアンカー翼を用いて撹拌速度400rpmで5時間撹拌をした。その後、トルエンを250mL加え、110℃に再昇温し、300rpmで50℃まで降温し、グラフト共重合体1を析出させた。析出したグラフト共重合体1の懸濁液を400mLのアセトンを入れた1000mLビーカーに移し、20分撹拌後、ろ過した。さらにアセトン400mLで20分洗浄する操作を2回繰り返し、得られたグラフト共重合体1を窒素流通下、室温で12時間減圧乾燥させた。
【0095】
得られたグラフト共重合体1の色は、淡いピンク色であった。得られたグラフト共重合体1の1H-NMR(溶媒:1,1,2,2-テトラクロロエタン、測定温度:120℃)を測定し、グラフトモノマーの芳香環のシグナルの積分値から、グラフト量0.034mmol/g-Pを算出した。また、IRスペクトル測定により、グラフトモノマーのO-H伸縮振動(3580cm-1)を観測した。
【0096】
[実施例2]
<グラフト共重合体2>
窒素流通下、500mLガラス容器に、実施例1と同様のベースポリマー(LLDPE)を25.0g、キシレンを110mL装入し、内温を110℃に昇温し、ベースポリマーを溶解させた。2-ブタノン3mLに溶解させた4-ビニルカテコール1.9g(14mmol)を加えた後、すぐにキシレン10mLで希釈したパーブチルI(t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート)3.9g(22mmol)をゆっくり滴下した。
【0097】
シングルアンカー翼を用いて撹拌速度400rpmで3時間撹拌をした(反応開始30分後にキシレン150mLを追添加した。)。その後、キシレンを50mL加え、120℃に再昇温し、300rpmで50℃まで降温した。グラフト共重合体2の懸濁液を400mLのアセトンを入れた1000mLビーカーに移し、超音波処理を30分間実施し、ろ過した。さらにアセトン500mLを用いた30分間の超音波処理を3回繰り返し、得られたグラフト共重合体2を窒素流通下、室温で12時間減圧乾燥させた。
IRスペクトル測定により、グラフトモノマーのO-H伸縮振動(3580cm-1)を観測し、グラフト量0.038mmol/g-Pを算出した。
【0098】
[実施例3]
<グラフト共重合体3>
(グラフト共重合工程)
窒素流通下、500mLガラス容器に、実施例1と同様のベースポリマー(LLDPE)を25.0g、キシレンを110mL装入し、内温を120℃に昇温し、ベースポリマーを溶解させた。3,4-ジアセトキシスチレン3.1g(14mmol)を加えた後、すぐにキシレン10mLで希釈したパーブチルI(t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート)0.39g(2.2mmol)をゆっくり滴下した。
【0099】
シングルアンカー翼を用いて撹拌速度400rpmで3時間撹拌をした。その後、キシレンを200mL加え、120℃に再昇温し、300rpmで60℃まで降温し、グラフト共重合体を析出させた。析出したグラフト共重合体の懸濁液を400mLのアセトンを入れた1000mLビーカーに移し、20分撹拌後、ろ過した。さらにアセトン400mLで有機相を20分洗浄する操作を2回繰り返し、得られたグラフト共重合体を窒素流通下、90℃で12時間減圧乾燥させた。
【0100】
得られたグラフト共重合体の1H-NMR(溶媒:1,1,2,2-テトラクロロエタン、測定温度:120℃)を測定し、グラフトモノマーの芳香環のシグナルおよびアセチル基のシグナルの積分値から、グラフト量0.17mmol/g-Pを算出した。また、IRスペクトル測定により、グラフトモノマーのアセトキシ基のC=O伸縮振動(1775cm-1)を観測した。
【0101】
(脱保護工程)
続いて、このグラフト共重合体7.5gとトルエン750mLとを窒素流通下、1000mLの4つ口フラスコに入れ、80℃に昇温し、溶解させた。この溶液に、エタノール270mLに溶解させたKOH0.42g(7.5mmol)を加えた。
【0102】
シングルアンカー翼を用いて撹拌速度400rpmで6時間撹拌をした。その後、45℃まで降温し、メタノール2Lを入れた5Lビーカーにポリマー懸濁液を注ぎ、20分撹拌後ろ過した。続いて、5%HCl/メタノール溶液2L、純水2L、アセトン2Lで20分洗浄し、得られた固体のグラフト共重合体3を窒素流通下、室温で12時間真空乾燥させた。
【0103】
得られたグラフト共重合体3の質量は7.4gで、色は灰茶色であった。IRスペクトル測定により、3374cm-1付近にグラフトモノマーのO-H伸縮振動と思われるシグナルを観測し、グラフト量0.076mmol/g-Pを算出した。
【0104】
[実施例4]
<グラフト共重合体4>
(グラフト共重合工程)
前記実施例3のグラフト共重合工程において、3,4-ジアセトキシスチレン3.1g(14mmol)の代わりに3,4-ビス(トリエチルシリル)オキシスチレン3.8g(14mmol)を使用した以外は実施例3と同様にして、グラフト共重合体を得た。
【0105】
得られたグラフト共重合体の色は白色であった。得られたグラフト共重合体の1H-NMR(溶媒:1,1,2,2-テトラクロロエタン、測定温度:120℃)を測定し、グラフトモノマーの芳香環のシグナルの積分値から、グラフト量0.18mmol/g-Pを算出した。また、IRスペクトル測定により、グラフトモノマーのトリエチルシリル基のSi-C2H5対称変角振動(1250cm-1)および900-1000cm-1付近にSi-O-C6H4振動を観測した。
【0106】
(脱保護工程)
続いて、このグラフト共重合体5.0gとトルエン500mLとを窒素流通下、1000mLの4つ口フラスコに入れ、78℃に昇温し、溶解させた。この溶液に、エタノール100mLで希釈した35%濃塩酸11mLを加えた。
【0107】
シングルアンカー翼を用いて撹拌速度400rpmで3時間撹拌をした。その後、60℃まで降温し、メタノール1.5Lを入れた3Lビーカーにグラフト共重合体の懸濁液を注ぎ、20分撹拌後ろ過した。続いて、アセトン500mLで20分洗浄し、得られた固体のグラフト共重合体4を窒素流通下、室温で12時間真空乾燥させた。
【0108】
得られたグラフト共重合体4の質量は4.8gで、色は淡いピンク色であった。得られたグラフト共重合体4の1H-NMR(溶媒:1,1,2,2-テトラクロロエタン、測定温度:120℃)を測定し、グラフトモノマーの芳香環および水酸基のシグナルの積分値から、グラフト量0.060mmol/g-Pを算出した。一方、IRスペクトル測定により、3550cm-1付近にグラフトモノマーのO-H伸縮振動と思われるシグナルを観測した。
【0109】
[比較例1]
<グラフト共重合体5>
窒素流通下、500mLガラス容器に、実施例1と同様のベースポリマー(LLDPE)を25.0g、キシレンを110mL装入し、内温を120℃に昇温し、ベースポリマーを溶解させた。無水マレイン酸1.1g(11mmol)を加えた後、すぐにキシレン10mLで希釈したパーブチルI(t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート)0.13g(0.77mmol)をゆっくり滴下した。
【0110】
シングルアンカー翼を用いて撹拌速度400rpmで3時間撹拌をした。その後、キシレンを200mL加え、120℃に再昇温し、300rpmで60℃まで降温し、グラフト共重合体を析出させた。析出したグラフト共重合体の懸濁液を400mLのアセトンを入れた1000mLビーカーに移し、20分撹拌後、ろ過した。さらにアセトン400mLで有機相を20分洗浄する操作を2回繰り返し、得られたグラフト共重合体を窒素流通下、90℃で12時間減圧乾燥させた。
【0111】
得られたグラフト共重合体の1H-NMR(溶媒:1,1,2,2-テトラクロロエタン、測定温度:120℃)を測定し、グラフトモノマーの無水マレイン酸環のシグナル積分値から、グラフト量0.050mmol/g-Pを算出した。
【0112】
[比較例2]
<グラフト共重合体6>
脱保護工程を行わなかったこと以外は実施例3と同様にして、グラフト共重合体6を得た。
【0113】
[比較例3]
<グラフト共重合体7>
脱保護工程を行わなかったこと以外は実施例4と同様にして、グラフト共重合体7を得た。
【0114】
【0115】
【0116】
実施例のグラフト共重合体は、ETFE樹脂に対する平均剥離強度が高く、フッ素含有樹脂によく接着していた。
一方、接着樹脂に従来用いられる酸無水物を用いた比較例1のグラフト共重合体は、ETFE樹脂に接着しなかった。また、脱保護工程を行わずに、芳香族モノマーのヒドロキシ基が保護基で保護されている比較例2および比較例3のグラフト共重合体は、ETFE樹脂に対する接着性が低かった。
【0117】
ABS樹脂に対しては、実施例のグラフト共重合体は、比較例のグラフト共重合体と同程度の接着性を示した。
したがって、実施例のグラフト共重合体は、ETFE樹脂およびABS樹脂の両方の樹脂に対して、高い接着性を有する。
【0118】
[実施例5、比較例4]
下記実施例5および比較例4で製造したグラフト共重合体8~9の接着性を、下記接着評価3~6に記載の方法により評価した。
【0119】
[実施例5]
<グラフト共重合体8>
(4-ビニルカテコール製造工程)
窒素置換した200mLガラス容器中で、カフェ酸5.0g(28mmol)をDMF18mLに溶解させ、トリエチルアミン11.7mL(84mmol)を加え、100℃に加熱し、1時間撹拌した。放冷後、氷浴で4℃に冷却し、溶液のpHが6程度になるまで1mol/Lの塩酸を加えた。
その溶液を500mLの分液ロートに移し、ジエチルエーテル150mLを加えて、分液操作を実施した。有機相を約0.001mol/Lの塩酸150mLで分液、純水150mLで分液(2回)し、30℃で溶剤を減圧留去した後、残留物をシリカゲルカラムで精製し、4-ビニルカテコール3.0g(22mmol)を得た。
【0120】
(グラフト共重合工程)
窒素流通下、500mLガラス容器に、実施例1と同様のベースポリマー(LLDPE)を25.0g、キシレンを110mL装入し、内温を110℃に昇温し、ベースポリマーを溶解させた。上記で得られた4-ビニルカテコール1.9g(14mmol)を、2-ブタノン3mLに溶解させガラス容器に加えた後、キシレン10mLで希釈したパーブチルI(t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート)3.9g(22mmol)をゆっくり滴下した。
シングルアンカー翼を用いて撹拌速度400rpmで3時間撹拌をした(反応開始30分後にキシレン150mLを追添加した。)。その後、キシレンを50mL加え、120℃に再昇温し、300rpmで50℃まで降温した。グラフト共重合体8の懸濁液を400mLのアセトンを入れた1000mLビーカーに移し、超音波処理を30分間実施し、ろ過した。さらにアセトン500mLを用いた30分間の超音波処理を3回繰り返し、得られたグラフト共重合体を窒素流通下、室温で12時間減圧乾燥させた。
IRスペクトル測定により、グラフトモノマーのO-H伸縮振動(3580cm-1)を観測し、グラフト量0.083mmol/g-Pを算出した。
【0121】
[比較例4]
<グラフト共重合体9>
窒素流通下、500mLガラス容器に、実施例1と同様のベースポリマー(LLDPE)を25.0g、キシレンを110mL装入し、内温を120℃に昇温し、ベースポリマーを溶解させた。無水マレイン酸2.2g(22mmol)を加えた後、すぐにキシレン10mLで希釈したパーブチルI(t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート)0.26g(1.54mmol)をゆっくり滴下した。
【0122】
シングルアンカー翼を用いて撹拌速度400rpmで3時間撹拌をした。その後、キシレンを200mL加え、120℃に再昇温し、300rpmで60℃まで降温し、グラフト共重合体を析出させた。析出したグラフト共重合体の懸濁液を400mLのアセトンを入れた1000mLビーカーに移し、20分撹拌後、ろ過した。さらにアセトン400mLで有機相を20分洗浄する操作を2回繰り返し、得られたグラフト共重合体を窒素流通下、90℃で12時間減圧乾燥させた。
【0123】
得られたグラフト共重合体の1H-NMR(溶媒:1,1,2,2-テトラクロロエタン、測定温度:120℃)を測定し、グラフトモノマーの無水マレイン酸環のシグナル積分値から、グラフト量0.10mmol/g-Pを算出した。
【0124】
[接着評価3]
〈プレスシート、接着シート作製〉
グラフト共重合体8~9を、温度170℃、圧力4MPa、余熱時間8分、加圧時間3分の条件でプレス成形し、その後3分かけて20℃に設定したプレス成形機にて急冷することにより、厚さ500μm、長さ80mm、幅80mmのプレスシートを得た。離型フィルムは、テフロン(登録商標)シート(0.2mm厚)を用いた。前記プレスシートを幅20mmに切り、接着シート(L)とした。
【0125】
〈接着方法)
基材層として、厚さ50μm、長さ80mm、幅20mmのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂シート(三井化学(株)製、三井PET J005PC)(Q)を用いた。
【0126】
PET樹脂シート(Q層)、接着シート(L層)、PET樹脂シート(Q層)の順に重ね、その3層積層体をテフロン(登録商標)(PTFE)シート(厚さ:100μm)で挟み、上下のプレス板をともにヒートシール温度:200℃、ヒートシール時間:3~10秒、ヒートシール圧力:0.15MPaの条件でヒートシール試験機を用いてヒートシールを行い、PET樹脂シートおよび接着シートからなる3層積層構造体(T)を作製した。
【0127】
〈剥離試験〉
前記積層構造体について、一方のQ層とL層との平均剥離強度を、剥離速度300mm/分、ピール幅15mmの条件でT型剥離して求めた。4~5回の剥離試験で得られた剥離強度の平均値および標準誤差を表3に示した。
【0128】
【0129】
[接着評価4]
基材層を厚さ100μm、長さ80mm、幅20mmのABS樹脂シート(テクノUMG(株)製、UMG ABS EX18A)に変更し、ヒートシール温度を230℃に変更し、ヒートシール時間を5~20秒に変更した以外は接着評価3と同様にして、プレスシート作製、接着シート作製、3層積層構造体作製、および剥離試験を行った。剥離試験で得られた剥離強度の平均値および標準誤差を表4に示した。
【0130】
【0131】
[接着評価5]
基材層を厚さ50μm、長さ80mm、幅20mmのETFE樹脂シート(アズワン社製)に変更し、ヒートシール温度を260℃に変更し、ヒートシール時間を10~30秒に変更した以外は接着評価3と同様にして、プレスシート作製、接着シート作製、3層積層構造体作製、および剥離試験を行った。剥離試験で得られた剥離強度の平均値および標準誤差を表5に示した。
【0132】
【0133】
[接着評価4]
基材層を厚さ100μm、長さ80mm、幅20mmのポリカーボネート樹脂シート(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製、NOVAREX 7025IR)に変更し、ヒートシール温度を270℃に変更し、ヒートシール時間を5~20秒に変更した以外は接着評価3と同様にして、プレスシート作製、接着シート作製、3層積層構造体作製、および剥離試験を行った。剥離試験で得られた剥離強度の平均値および標準誤差を表6に示した。
【0134】