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特開2024-146808粘着シート付き偏光フィルム、光学積層体及び画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146808
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】粘着シート付き偏光フィルム、光学積層体及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241004BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241004BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20241004BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241004BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J11/06
C09J133/00
B32B27/00 M
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024039513
(22)【出願日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2023059589
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟士
(72)【発明者】
【氏名】木村 智之
(72)【発明者】
【氏名】久野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】形見 普史
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB13
2H149BA02
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA63
2H149FD22
2H149FD23
2H149FD25
2H149FD47
4F100AH03A
4F100AH06A
4F100AK21B
4F100AK25A
4F100AR00B
4F100BA02
4F100CB05A
4F100EH46
4F100GB41
4F100JA07A
4F100JB14A
4F100JL13A
4F100JN10B
4F100YY00A
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004DB02
4J004FA08
4J040DF061
4J040HD32
4J040JA09
4J040JB09
4J040LA01
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】光硬化型の粘着シートを備えながらも、高温環境に曝されうる画像表示装置への使用に適した粘着シート付き光学フィルムを提供する。
【解決手段】提供される粘着シート付き光学フィルムは、光硬化型の粘着シートと、光学フィルムと、を備える。粘着シートは、窒素原子含有単量体に由来する構成単位を有する重合体を含む。重合体は(メタ)アクリル重合体であってもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化型の粘着シートと、光学フィルムと、を備え、
前記粘着シートは、窒素原子含有単量体に由来する構成単位を有する重合体を含む、粘着シート付き光学フィルム。
【請求項2】
前記重合体は(メタ)アクリル重合体である、請求項1に記載の粘着シート付き光学フィルム。
【請求項3】
前記重合体は、カルボキシル基含有単量体に由来する構成単位をさらに有する、請求項1に記載の粘着シート付き光学フィルム。
【請求項4】
前記重合体の重量平均分子量が60万以上であり、前記粘着シートにおける前記重合体の重合率が98%以上である、請求項1に記載の粘着シート付き光学フィルム。
【請求項5】
前記粘着シートは、シランカップリング剤を含む、請求項1に記載の粘着シート付き光学フィルム。
【請求項6】
前記粘着シートの厚さが30μm以下である、請求項1に記載の粘着シート付き光学フィルム。
【請求項7】
前記粘着シートにおける溶剤の含有率が5重量%以下である、請求項1に記載の粘着シート付き光学フィルム。
【請求項8】
前記粘着シートと、前記光学フィルムとが接している、請求項1に記載の粘着シート付き光学フィルム。
【請求項9】
前記光学フィルムが偏光フィルムである、請求項1に記載の粘着シート付き光学フィルム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の粘着シート付き光学フィルムを備える光学積層体。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の粘着シート付き光学フィルムを備える画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート付き偏光フィルム、光学積層体及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置及びエレクトロルミネセンス(EL)表示装置に代表される各種の画像表示装置は、一般に、偏光フィルム等の光学フィルムと粘着シートとを含む光学積層体を備えている。光学積層体に含まれる光学フィルム間の接合や、光学積層体と画像表示パネルとの接合には、通常、粘着シートが使用される。粘着シートとしては、アクリル単量体やシリコーン単量体等を含む単量体群を重合及び架橋により硬化させたシートが典型的である。特許文献1には、光硬化性組成物から形成された粘着シート(以下、光硬化型粘着シートと記載)と、光学フィルムとして偏光フィルムと、を備えた粘着シート付き偏光フィルムが開示されている。光硬化型とは異なる粘着シートのタイプとしては、粘着剤組成物及び溶剤を含む層を熱により硬化させて形成した熱硬化型の粘着シートがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-56510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光硬化型の粘着シートを粘着シート付き光学フィルムに使用した場合、高温環境に曝されうる画像表示装置において画像の品質に問題が生じる傾向にある。
【0005】
本発明は、光硬化型の粘着シートを備えながらも、高温環境に曝されうる画像表示装置への使用に適した粘着シート付き光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
光硬化型の粘着シートと、光学フィルムと、を備え、
前記粘着シートは、窒素原子含有単量体に由来する構成単位を有する重合体を含む、粘着シート付き光学フィルム、
を提供する。
【0007】
さらに本発明は、
上記の粘着シート付き光学フィルムを備える光学積層体を提供する。
【0008】
さらに本発明は、
上記の粘着シート付き光学フィルムを備える画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光硬化型の粘着シートを備えながらも、高温環境に曝されうる画像表示装置への使用に適した粘着シート付き光学フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の粘着シート付き光学フィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の粘着シート付き光学フィルムが備えうる粘着シートを形成する方法の一例を説明するための模式図である。
図3】本発明の光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図6】本発明の画像表示装置の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1態様にかかる粘着シート付き光学フィルムは、
光硬化型の粘着シートと、光学フィルムと、を備え、
前記粘着シートは、窒素原子含有単量体に由来する構成単位を有する重合体を含む。
【0012】
本発明の第2態様において、例えば、第1態様にかかる粘着シート付き光学フィルムでは、前記重合体は(メタ)アクリル重合体である。
【0013】
本発明の第3態様において、例えば、第1又は第2態様にかかる粘着シート付き光学フィルムでは、前記重合体は、カルボキシル基含有単量体に由来する構成単位をさらに有する。
【0014】
本発明の第4態様において、例えば、第1から第3態様のいずれか1つの態様にかかる粘着シート付き光学フィルムでは、前記重合体の重量平均分子量が60万以上であり、前記粘着シートにおける前記重合体の重合率が98%以上である。
【0015】
本発明の第5態様において、例えば、第1から第4態様のいずれか1つの態様にかかる粘着シート付き光学フィルムでは、前記粘着シートは、シランカップリング剤を含む。
【0016】
本発明の第6態様において、例えば、第1から第5態様のいずれか1つの態様にかかる粘着シート付き光学フィルムでは、前記粘着シートの厚さが30μm以下である。
【0017】
本発明の第7態様において、例えば、第1から第6態様のいずれか1つの態様にかかる粘着シート付き光学フィルムでは、前記粘着シートにおける溶剤の含有率が5重量%以下である。
【0018】
本発明の第8態様において、例えば、第1から第7態様のいずれか1つの態様にかかる粘着シート付き光学フィルムでは、前記粘着シートと、前記光学フィルムとが接している。
【0019】
本発明の第9態様において、例えば、第1から第8態様のいずれか1つの態様にかかる粘着シート付き光学フィルムでは、前記光学フィルムが偏光フィルムである。
【0020】
本発明の第10態様にかかる光学積層体は、第1から第9態様のいずれか1つの態様にかかる粘着シート付き光学フィルムを備える。
【0021】
本発明の第11態様にかかる画像表示装置は、第1から第9態様のいずれか1つの態様にかかる粘着シート付き光学フィルムを備える。
【0022】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0023】
[粘着シート付き光学フィルム]
本実施形態の粘着シート付き光学フィルムの一例を図1に示す。図1の粘着シート付き光学フィルム11は、粘着シート1と光学フィルム2とを備える。粘着シート1と光学フィルム2とは接している。粘着シート1は、光硬化性組成物から形成された光硬化型の粘着シートである。粘着シート1は、窒素原子含有単量体に由来する構成単位を有する重合体Aを含む。
【0024】
本発明者らの検討によれば、高温環境に曝されることによる画像品質の劣化は、光学積層体における粘着シートとこれに接する被着体(粘着対象物)とが高温下で剥がれやすくなることが要因の一つであると判明した。また、粘着シートに残存した単量体が高温下で発泡することによる視認性の悪化も要因となりうる。重合体Aを含む光硬化型の粘着シート1は、形成時における重合率の向上に適すると共に、その応力緩和特性及び凝集力のバランスが高温下での上記剥がれの抑制に適していると推定される。重合体Aは、窒素原子含有単量体を含む光硬化性組成物の光重合により形成される。窒素原子含有単量体が光重合系に存在すると、例えば照射光の積算光量が小さい場合においても、重合率が向上すると共に重合体の分子量が増大する傾向が見られる。上記傾向には、水素結合の生成による重合系の粘度上昇によって重合体の成長末端同士の停止反応が抑制され、単量体が成長鎖の末端に滞留し易くなることが寄与している可能性がある。また、分子量の増大は、応力緩和特性及び凝集力の優れたバランスに寄与すると推定される。なお、重合率の向上を目的として、光重合開始剤の配合量を増加させたり、光の照度を大きくして積算光量を大きくしたりした場合には、同時に生じるラジカルが多くなることで分子量は増大し難くなる。また、熱硬化型の粘着剤組成物では、溶剤中に単量体が分散して存在するために水素結合が生じにくく、溶剤へのラジカルの連鎖移動も多く生じることから、窒素原子含有単量体による上記の作用は見られない。
【0025】
<粘着シート>
(光硬化性組成物)
粘着シート1は、光硬化性組成物から形成される。光硬化性組成物は、通常、単量体群及び/又は当該単量体群の部分重合物を含む。光硬化性組成物に光を照射することで、単量体群及び/又は部分重合物から重合体Aが生成し、粘着シート1が形成される。単量体群は、(メタ)アクリル系単量体を含んでいてもよい。光硬化性組成物における(メタ)アクリル系成分、すなわち(メタ)アクリル系単量体及びその部分重合物、の含有率は、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、さらには80重量%以上であってもよく、この場合、(メタ)アクリル重合体を主成分とするアクリル系の粘着シートを形成できる。換言すれば、重合体Aは(メタ)アクリル重合体であってもよい。ただし、窒素原子含有単量体を含む限り、光硬化性組成物は上記例に限定されない。本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルを意味する。(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。本明細書において主成分とは、含有率の最も大きな成分を意味する。主成分の含有率は、例えば50重量%以上であり、60重量%以上、70重量%以上、さらには80重量%以上であってもよい。
【0026】
(メタ)アクリル系単量体の例は、炭素数1~20のアルキル基を側鎖に有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。アルキル基の炭素数は、7以下、6以下、5以下、さらには4以下であってもよい。アルキル基は、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート及びオクタデシル(メタ)アクリレートである。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、n-ブチル(メタ)アクリレートであってもよい。
【0027】
単量体群における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率は、例えば40重量%以上であり、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、さらには95重量%以上であってもよい。なお、含有率の計算にあたり、部分重合物の重量は、重合前の各単量体としての重量に換算する。
【0028】
単量体群は、カルボキシル基含有単量体を含んでいてもよい。この場合、重合体Aは、カルボキシル基含有単量体に由来する構成単位をさらに有する。カルボキシル基含有単量体は、窒素原子含有単量体と共に存在することで、光重合系の粘度向上に寄与する。カルボキシル基含有単量体は(メタ)アクリル系単量体であってもよく、換言すれば、(メタ)アクリル系単量体がカルボキシル基含有単量体を含んでいてもよい。カルボキシル基含有単量体の例は、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸及びクロトン酸である。単量体群におけるカルボキシル基含有単量体の含有率は、例えば10重量%以下であり、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5.5重量%以下、さらには5重量%以下であってもよい。含有率の下限は、例えば0.1重量%以上であり、0.5重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上、2重量%以上、2.5重量%以上、3重量%以上、3.5重量%以上、4重量%以上、さらには4.5重量%以上であってもよい。単量体群は、カルボキシル基含有単量体を含んでいなくてもよい。
【0029】
単量体群は、ヒドロキシ基含有単量体を含んでいてもよい。この場合、重合体Aは、ヒドロキシ基含有単量体に由来する構成単位をさらに有する。ヒドロキシ基含有単量体は(メタ)アクリル系単量体であってもよく、換言すれば、(メタ)アクリル系単量体がヒドロキシ基含有単量体を含んでいてもよい。ヒドロキシ基含有単量体の例は、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル及び(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレートである。ヒドロキシ基含有単量体は、好ましくは、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルである。単量体群におけるヒドロキシ基含有単量体の含有率は、例えば10重量%以下であり、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.8重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、さらには0.1重量%以下であってもよい。含有率の下限は、例えば0.01重量%以上であり、0.03重量%以上、さらには0.05重量%以上であってもよい。単量体群は、ヒドロキシ基含有単量体を含んでいなくてもよい。
【0030】
単量体群は、窒素原子含有単量体を含む。窒素原子含有単量体とは、分子内(1分子内)に窒素原子を少なくとも1つ有する単量体を意味する。なお、本明細書において、分子内にヒドロキシ基及び窒素原子を有する単量体は、窒素原子含有単量体に分類する。分子内にカルボキシル基及び窒素原子を有する単量体は、カルボキシル基含有単量体に分類する。
【0031】
窒素原子含有単量体としては、N-ビニル環状アミド、(メタ)アクリルアミド等が好ましい。なお、窒素原子含有単量体は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
N-ビニル環状アミドは、下記式(A)で表されるものが好ましい。
【化1】
【0033】
式(A)において、R1は、2価の有機基であり、好ましくは2価の飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基であり、より好ましくは2価の飽和炭化水素基(例えば、炭素数3~5のアルキレン基等)である。なお、式(A)は、NとR1が単結合により直接結合して環構造を形成していることを表している。
【0034】
式(A)で表されるN-ビニル環状アミドとしては、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン等が好ましく、より好ましくはN-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-カプロラクタムであり、さらに好ましくはN-ビニル-2-ピロリドンである。
【0035】
(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。N-アルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド等が挙げられる。N-アルキル(メタ)アクリルアミドには、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのようなアミノ基を有する(メタ)アクリルアミドも含まれる。
【0036】
N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(t-ブチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリルアミドには、例えば、各種のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドも含まれる。N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリルアミドには、例えば、各種のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドも含まれる。N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0039】
N-ビニル環状アミド、(メタ)アクリルアミド以外の窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等のアミノ基含有単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有単量体;(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルピラジン、N-ビニルモルホリン、N-ビニルピラゾール、ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルオキサゾール、ビニルイソオキサゾール、ビニルチアゾール、ビニルイソチアゾール、ビニルピリダジン、(メタ)アクリロイルピロリドン、(メタ)アクリロイルピロリジン、(メタ)アクリロイルピペリジン、N-メチルビニルピロリドン等の複素環含有単量体;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド等のイタコンイミド系単量体、N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系単量体等のイミド基含有単量体;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有単量体等が挙げられる。
【0040】
単量体群における窒素原子含有単量体の含有率は、例えば40重量%以下であり、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、18重量%以下、15重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、さらには11重量%以下であってもよい。含有率の下限は、例えば5重量%以上であり、7重量%以上、8重量%以上、9重量%以上、さらには10重量%以上であってもよい。
【0041】
単量体群は、カルボキシル基含有単量体をさらに含むことが好ましい。
【0042】
光硬化性組成物において、上述した各単量体は部分重合物として含まれていてもよい。部分重合物は、単一重合体及び共重合体のいずれであってもよい。光硬化性組成物は、部分重合物を含まなくてもよい。
【0043】
光硬化性組成物は、通常、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤の例は、光の照射によりラジカルを発生する光ラジカル発生剤である。光重合開始剤では、波長340nmの光に対する吸光係数が、例えば0.1L/(g・cm)以上であり、0.5L/(g・cm)以上、1.0L/(g・cm)以上、3.0L/(g・cm)以上、さらには5.0L/(g・cm)以上であってもよい。この吸光係数の上限は、特に限定されず、例えば50L/(g・cm)以下である。光重合開始剤の吸光係数は、光路長1cmの石英セルを用いて、可視-紫外分光光度計により測定した0.01mg/mLのメタノール溶液の吸光度からの算出値である。
【0044】
光重合開始剤の例は、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾインエーテル類;アニソールメチルエーテル等の置換ベンゾインエーテル;2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等の置換アセトフェノン;1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-2,2’-ジメチル-1,1’-[メチレンビス(4,1-フェニレン)]ビス(プロパン-1-オン)等のα-ヒドロキシアルキルフェノン;2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン等の置換アルファーケトール;2-ナフタレンスルホニルクロライド等の芳香族スルホニルクロライド;1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシム等の光活性オキシム;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペロニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン等のトリアジン系化合物;1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、O-(アセチル)-N-(1-フェニル-2-オキソ-2-(4’-メトキシ-ナフチル)エチリデン)ヒドロキシルアミン等のオキシムエステル系化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィン系化合物;9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等のキノン系化合物;ボレート系化合物;カルバゾール系化合物;イミダゾール系化合物;並びにチタノセン系化合物である。光硬化性組成物は、1種又は2種以上の光重合開始剤を含んでいてもよい。なお、α-ヒドロキシアルキルフェノンは、波長340±10nmの光の吸収が大きい傾向がある。
【0045】
光重合開始剤の別の一例は、以下の式(1)に示す化学構造(以下、化学構造Xと記載)を分子内に有する化合物である。
【化2】
【0046】
前記式(1)のR1及びR2は、互いに独立して、C1~C8のアルキル基;-OH、C1~C4のアルコキシ基、-CN、-COOR51、-OOCR52、若しくは-NR5354によって水素原子が置換されているC1~C4のアルキル基;C3~C6のアルケニル基;又は、-CH2-C64-R55である。R1及びR2は、互いに結合して、C2~C9のアルキレン基、又は、C3~C6のオキシアルキレン基、若しくはアザアルキレン基を構成していてもよい。R51は、C1~C8のアルキル基である。R52は、C1~C4のアルキル基である。R53及びR54は、互いに独立して、水素原子、C1~C12のアルキル基;-OH、C1~C4のアルコキシ基、-CN及び-COOR59からなる群から選択される少なくとも1つの基によって水素原子が置換されているC2~C4のアルキル基;C3~C5のアルケニル基;又は、シクロヘキシル基である。R53及びR54は、互いに結合して、-O-又は-N(R60)-によって中断されていてもよいC3~C9のアルキレン基であってもよい。R55は、C1~C4のアルキル基である。R59は、C1~C4のアルキル基である。R60は、水素原子、C1~C4のアルキル基、アリル基、C1~C4のヒドロキシアルキル基、-CH2CH2-COOR61又は-CH2CH2CNである。R61は、C1~C4のアルキル基である。
【0047】
Xは、-OR56、又は、-NR5758である。R56は、水素原子、-SiR62 3、C1~C8のアルキル基、又は、C3~C6のアルケニル基である。R57及びR58は、C1~C12のアルキル基;-OH、C1~C4のアルコキシ基、-CN及び-COOR63からなる群から選択される少なくとも1つの基によって水素原子が置換されているC2~C4のアルキル基;C3~C5のアルケニル基;又は、シクロヘキシル基である。R57及びR58は、互いに結合して、-O-又は-N(R64)-によって中断されていてもよいC3~C9のアルキレン基であってもよい。R62は、C1~C6のアルキル基である。R63は、C1~C4のアルキル基である。R64は、水素原子、C1~C4のアルキル基、アリル基、C1~C4のヒドロキシアルキル基、-CH2CH2-COOR65又は-CH2CH2CNである。R65は、C1~C4のアルキル基である。
【0048】
化学構造Xは、式(1)において*で示された炭素原子を介して水素原子又は水素原子の置換構造と結合しうる。
【0049】
式(1)の説明において記載しているアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキレン基、オキシアルキレン基、アザアルキレン基、及び、ヒドロキシアルキル基は、いずれも、非分岐鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、式(1)の説明を含め、本明細書における「Cn1~Cn2」との記載(n1及びn2は自然数)は、炭素数がn1~n2の範囲にあることを意味する。
【0050】
1及びR2は、互いに独立して、C1~C8のアルキル基、又は、C3~C6のアルケニル基であってもよく、C1~C8のアルキル基であってもよい。R1及びR2は、互いに独立して、C1~C4のアルキル基であってもよく、C1~C3のアルキル基、C1~C2のアルキル基であってもよい。R1及びR2は、メチル基であってもよい。
【0051】
1及びR2は、同一であってもよい。
【0052】
Xは、-OR56であってもよい。R56は、水素原子、又は、C1~C8のアルキル基であってもよく、水素原子であってもよい。換言すれば、Xは、-OHであってもよい。
【0053】
1、R2及びXは、上記好ましい例を任意の組み合わせでとりうる。
【0054】
化学構造Xは、以下の式(2)に示す構造であってもよい。式(2)の化学構造Xでは、*で示された炭素原子に水素原子の置換構造が結合した場合、当該置換構造と、式(2)における-COCR1XR2基とは、化学構造Xが有するベンゼン環に対してパラ位の関係にある。
【化3】
【0055】
光重合開始剤は、2以上の化学構造Xを1分子内に有する化合物であってもよい。
【0056】
光重合開始剤は、以下の式(3)に示す化合物であってもよい。式(3)の化合物は、2つの化学構造Xを1分子内に有する。2つの化学構造Xは、光重合開始剤の分子の双方の末端に各々位置している。より具体的には、2つの化学構造Xは、-A-によって、上記*で示されたフェニレン基の炭素原子にて互いに結合されている。
【化4】
【0057】
式(3)のR1’及びR2’は、互いに、及び、R1及びR2とは独立して、R1及びR2としてとりうる基である。R1’及び/又はR2’は、R1及び/又はR2と同一であってもよい。R1、R2、R1’及びR2’は、全て同一であってもよい。
【0058】
式(3)のX’は、式(1)のXとは独立して、Xしてとりうる基である。X’及びXは、同一であってもよい。
【0059】
Aは、-O-、-CYR3-、又は、-C(CH3)R4である。
【0060】
Yは、水素原子、-Cl、-Br、-O-R71、-NR7273、又は、-S-R74である。R3は、水素原子、C1~C8のアルキル基、C3~C6のアルケニル基、ベンジル基、-CH2-C64-R75、又は、フェニル基である。R4は、C1~C6のアルキル基又はアルキレン基であって、このアルキレン基は、式(3)の化合物が有するフェニレン基の炭素原子に結合している。
【0061】
71は、水素原子、-Si(R763、C1~C12のアルキル基、C2~C18のアシル基、-CO-NH-R77、C2~C20のヒドロキシアルキル基、C2~C20のメトキシアルキル基、3-R78-2-ヒドロキシ-プロピル基、3-〔1,3,3,3-テトラメチル-1-〔(トリメチルシリル)オキシ〕ジシロキサニル〕-プロピル基、2,3-ジヒドロキシ-プロピル基、又は、1~9個の酸素原子によって炭素鎖が中断されているC2~C21のヒドロキシアルキル基、若しくはC3~C25のアルキル基である。R72及びR73は、互いに独立して、C1~C12のアルキル基;-OH、C1~C4のアルコキシ基、-CN、及び-COOR79からなる群から選択される少なくとも1つの基によって水素原子が置換されているC2~C4のアルキル基;C3~C5のアルケニル基;シクロヘキシル基;又は、C7~C9のフェニルアルキル基である。R72及びR73は、互いに結合して、-O-又は-N(R80)-によって中断されていてもよいC3~C9のアルキレン基であってもよい。R74は、C1~C18のアルキル基、ヒドロキシエチル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基、C1~C12のアルキルフェニル基、-CH2-COOR81-CH2CH2-COOR82、又は、-CH(CH3)-COOR83である。R75は、C1~C4のアルキル基である。R76は、C1~C6のアルキル基である。R77は、C1~C12のアルキル基である。R78は、C1~C18のアルコキシ基である。R79は、C1~C4のアルキル基である。R80は、水素原子、C1~C4のアルキル基、アリル基、ベンジル基、C1~C4のヒドロキシアルキル基、-CH2CH2-COOR84、又は、-CH2CH2CNである。R81、R82及びR83は、互いに独立して、C1~C18のアルキル基である。R84は、C1~C4のアルキル基である。
【0062】
式(3)の説明において記載しているアルキル基、アルケニル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、メトキシアルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基におけるアルキル基の部分、アルキレン基は、いずれも、非分岐鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0063】
式(3)のR1、R2、R1’及びR2’の好ましい例は、式(1)の説明において上述したR1及びR2の好ましい例と同じである。式(3)のX’の好ましい例は、式(1)の説明において上述したXの好ましい例と同じである。Aは、-CYR3-であってもよい。Yは水素原子であってもよい。R3は水素原子であってもよい。Aが-CYR3-であると共に、Y及びR3は、共に水素原子であってもよい。換言すれば、Aは、-CH2-であってもよい。
【0064】
式(3)のR1、R2、R1’、R2’、X、X’、Aは、上記好ましい例を任意の組み合わせでとりうる。
【0065】
光重合開始剤は、以下の式(4)に示す化合物であってもよい。式(4)の化合物は、式(3)の化合物の1種である。
【化5】
【0066】
光重合開始剤の具体例を以下の式(5)~(9)に示す。光重合開始剤は、式(5)~(9)からなる群から選択される少なくとも1つの式に示された化合物であってもよく、式(5)~(8)からなる群から選択される少なくとも1つの式に示された化合物であってもよく、式(5)~(7)からなる群から選択される少なくとも1つの式に示された化合物であってもよく、式(5)に示された化合物であってもよい。なお、式(8)の化合物は、化学構造Xを側鎖に有するビニル化合物に由来する。より具体的には、当該ビニル化合物のオリゴマーである。
【0067】
【化6】
【0068】
【化7】
【0069】
【化8】
【0070】
【化9】
【0071】
【化10】
【0072】
式(5)~(9)に示す光重合開始剤は、それぞれ、Omnirad127、Esacure KIP160、Esacure one、Esacure KIP150、Omnirad1173(いずれもIGM Resins製)として市販されている。光重合開始剤は、これらの群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0073】
具体的な光重合開始剤の例は、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、及び、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)2-メチルプロパン-1-オンである。この中では、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)2-メチルプロパン-1-オンが好ましい。上記各光重合開始剤は、それぞれ、Omnirad184、Omnirad819及びOmnirad127として市販されている(いずれもIGM Resin社製)。
【0074】
光硬化性組成物における光重合開始剤の配合量は、単量体群及びその部分重合物の合計100重量部に対して、例えば20重量部以下であり、10重量部以下、5.0重量部以下、3.0重量部以下、1.0重量部以下、0.5重量部以下、0.3重量部以下、0.25重量部以下、さらには0.2重量部以下であってもよい。光重合開始剤の配合量の下限は、単量体群及びその部分重合物の合計100重量部に対して、例えば0.01重量部以上であり、0.03重量部以上、0.05重量部以上、さらには0.06重量部以上であってもよい。
【0075】
光硬化性組成物は、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤の例は、1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能単量体である。多官能単量体は(メタ)アクリル系単量体であってもよい。多官能単量体の例は、1分子中に2以上のC=C結合を有する単量体、及び1分子中に1以上のC=C結合と、1以上のエポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、ヒドラジン基、メチロール基等の重合性官能基とを有する単量体である。多官能単量体は、好ましくは、1分子中に2以上のC=C結合を有する単量体である。
【0076】
多官能単量体の例は、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2-エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート(NDDA)、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート(多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物等);アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートである。多官能単量体は、好ましくは、多官能アクリレートであり、より好ましくは、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートである。
【0077】
架橋剤の配合量は、分子量や官能基数等により異なるが、単量体群及びその部分重合物の合計100重量部に対して、例えば5重量部以下であり、3重量部以下、2重量部以下、1重量部以下、0.5重量部以下、0.3重量部以下、0.2重量部以下、さらには0.15重量部以下であってもよい。配合量の下限は、例えば0.01重量部以上であり、0.03重量部以上、0.05重量部以上、0.06重量部以上、0.08重量部以上、さらには0.1重量部以上であってもよい。光硬化性組成物は、架橋剤を含んでいなくてもよい。
【0078】
光硬化性組成物は、上述した以外の添加剤を含んでいてもよい。添加剤の例は、連鎖移動剤、シランカップリング剤、粘度調整剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤及び紫外線吸収剤である。光硬化性組成物は、添加剤を含んでいなくてもよい。
【0079】
シランカップリング剤の例は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤である。
【0080】
シランカップリング剤は、オリゴマー型のシランカップリング剤であってもよい。オリゴマー型シランカップリング剤は、通常、一分子内に複数のアルコキシシリル基を有している。オリゴマー型シランカップリング剤の具体例は、信越シリコーン社製の商品名「X-41-1053」、「X-41-1056」、「X-41-1059A」、「X-41-1805」、「X-41-1810」、「X-41-1818」、「X-40-2651」及び「X-24-9591F」である。オリゴマー型シランカップリング剤は、反応性官能基を有しうる。反応性官能基の例は、エポキシ基、メルカプト基、酸無水物基及びアミノ基である。なかでも、エポキシ基を有するものが好ましく、一分子内に複数のエポキシ基を有するものがより好ましい。エポキシ基を有するオリゴマー型シランカップリング剤の例は、上記「X-41-1053」、「X-41-1056」及び「X-41-1059A」である。メルカプト基を有するオリゴマー型シランカップリング剤の例は、上記「X-41-1805」、「X-41-1810」及び「X-41-1818」である。酸無水物基を有するオリゴマー型シランカップリング剤の例は、上記「X-24-9591F」である。アミノ基を有するオリゴマー型シランカップリング剤の例は、上記「X-40-2651」である。
【0081】
シランカップリング剤は、アセトアセチル基含有シランカップリング剤(例えば、綜研化学社製、商品名「A-100」)であってもよい。
【0082】
光硬化性組成物がシランカップリング剤を含む場合、その配合量は、単量体群及びその部分重合物の合計100重量部に対して、例えば5重量部以下であり、3重量部以下、1重量部以下、0.5重量部以下、0.2重量部以下、0.1重量部以下、さらには0.05重量部以下であってもよい。光硬化性組成物は、シランカップリング剤を含まなくてもよい。
【0083】
光硬化性組成物の粘度は、好ましくは、5~100ポイズである。上記範囲の粘度を有する光硬化性組成物は、粘着シート1の形成に特に適している。
【0084】
光硬化性組成物における溶剤の含有率は、例えば5重量%以下であり、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、さらには0.5重量%以下であってもよい。光硬化性組成物は、溶剤を実質的に含まなくてもよい。溶剤を実質的に含まないとは、添加剤等に由来する溶剤等を、例えば0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下の含有率で許容する趣旨である。また、粘着シート1における溶剤の含有率が上記範囲にあってもよい。粘着シート1は、溶剤を実質的に含まなくてもよい。
【0085】
(粘着シートの製法)
粘着シート1は、例えば、基材シート21、光硬化性組成物を含む塗布層22及びはく離ライナー23をこの順に含む第1の積層体20に光24を照射して形成できる(図2参照)。塗布層22は、光24の照射を受けて硬化し、粘着シート1となる。光24の照射は、典型的には、基材シート21の側から実施する。このとき、光24は、基材シート21を透過して塗布層22に到達し、塗布層22を硬化させる。ただし、光24の照射は、はく離ライナー23の側から実施してもよいし、はく離ライナー23及び基材シート21の双方の側から実施してもよい。
【0086】
形成された粘着シート1は、はく離ライナー23が剥離されるまでは、基材シート21及びはく離ライナー23によって挟持されて、第2の積層体27の一部を構成している。第2の積層体27からはく離ライナー23を剥離することによって、基材シート21及び粘着シート1を含む第3の積層体25が得られる。第3の積層体25では、粘着シート1の表面が外部に露出している。露出した粘着シート1の表面に対して、直接又は他の層を介して、光学フィルムを積層できる。
【0087】
光24は、例えば、波長450nmよりも短い波長を有する可視光又は紫外線である。光は、光硬化性組成物が含む光重合開始剤の吸収波長と同じ領域の波長の光を含んでいてもよい。波長300nm以下の短波長光をフィルター等でカットした光を照射してもよく、短波長光をカットすることは、光24による基材シート21及び/又ははく離ライナー23の劣化の抑制に適している。光24の光源28は、例えば紫外線照射ランプを備える光照射装置である。紫外線照射ランプの例は、紫外光LED、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、マイクロウエーブ励起水銀灯、ブラックライトランプ、ケミカルランプ、殺菌ランプ、低圧放電水銀ランプ、エキシマレーザーである。2以上の紫外線照射ランプが組み合わされていてもよい。紫外光LEDによれば、照射する紫外線の帯域を他の光源を用いた場合に比べて狭くできる。
【0088】
光源28は、LEDであってもよい。LEDは、ブラックライト光源と比べて、照度を容易に調整できるだけでなく、光源寿命が長い傾向がある。水銀を利用しているブラックライト光源と比べて、LEDは、環境負荷を低減する観点からも優れていると言える。紫外光LEDを光源に使用する場合、325~350nmにピーク波長を有するLEDを選択してもよい。本発明者らの検討によれば、325~350nmにピーク波長を有するLEDの使用は、例えばブラックライト光源を使用する場合に比べて、粘着シート1における単量体群の重合率の向上、重合体Aの分子量の向上、及び、光重合開始剤の残存量の低減から選ばれる少なくとも1つに寄与する可能性がある。さらに、ピーク波長が325nm~350nmの光14を放射するLEDは、ピーク波長が365nm程度の光を放射するLEDと比べて、発熱しにくく、塗布層22の温度を制御しやすい傾向がある。なお、本発明者らの知る限り、ピーク波長が325nm~350nmである光を放出するLEDを用いて、粘着シートを作製した例はこれまで報告されていない。
【0089】
325~350nmにピーク波長を有するLEDとして、340±10nmにピーク波長を有するLED(以下、LED340と記載)を選択してもよい。
【0090】
光24のピーク波長に着目すると、第1の積層体20(詳細には塗布層22)に照射される光24のピーク波長は、325nm~350nmであってもよい。光24のピーク波長は、好ましくは340±10nm(330nm~350nm)であり、340±5nm(335nm~345nm)であってもよく、340±2nm(338nm~342nm)であってもよく、340nmであってもよい。ピーク波長とは、光24の波長と強度の関係を示すスペクトルにおいて、強度が極大値となる波長を意味する。光24は、325nm~350nm以外の他の波長域において、ピーク波長をさらに有していてもよいが、有さないことが好ましい。
【0091】
第1の積層体20(詳細には塗布層22)に照射する光24の照度は、例えば2.0~30mW/cm2である。照度は、2.5mW/cm2以上、3.0mW/cm2以上、3.5mW/cm2以上、4.0mW/cm2以上、5.0mW/cm2以上、6.0mW/cm2以上、7.0mW/cm2以上、8.0mW/cm2以上、9.0mW/cm2以上、さらには10mW/cm2以上であってもよい。照度の上限は、例えば25mW/cm2以下であり、20mW/cm2以下、さらには15mW/cm2以下であってもよい。
【0092】
第1の積層体20(詳細には塗布層22)に光24を照射する時間は、例えば10秒~1000秒であり、60秒以上、100秒以上、150秒以上、200秒以上、250秒以上、さらには300秒以上であってもよい。時間の上限は、例えば800秒以下であり、600秒以下、500秒以下、400秒以下、350秒以下、300秒以下、さらには250秒以下であってもよい。光24の照射は、連続的であっても断続的であってもよい。
【0093】
第1の積層体20(詳細には塗布層22)に対する光24の積算光量は、例えば25mJ/cm2以上であり、100mJ/cm2以上、250mJ/cm2以上、500mJ/cm2以上、750mJ/cm2以上、850mJ/cm2以上、1000mJ/cm2以上、1250mJ/cm2以上、さらには1500mJ/cm2以上であってもよい。積算光量の上限は、特に限定されず、例えば3000mJ/cm2以下であり、2500mJ/cm2以下、2000mJ/cm2以下、1750mJ/cm2以下、1500mJ/cm2以下、1250mJ/cm2以下、さらには1000mJ/cm2以下であってもよい。粘着シート1は低い積算光量での形成に適しており、したがって、粘着シート付き光学フィルム11は生産性に優れている。
【0094】
はく離ライナー23の基材(以下、「ライナー基材」)の例は、樹脂フィルムである。ライナー基材に含まれうる樹脂の例は、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル、アセテート樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート、並びにポリフェニレンサルファイドである。樹脂は、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルである。
【0095】
はく離ライナー23は、ライナー基材以外の層を備えていてもよい。はく離ライナー23は、離型層を備えていてもよい。はく離ライナー23は、例えば、ライナー基材と、ライナー基材の一方の面に形成された離型層とを備える。このはく離ライナー23は、離型層が塗布層22の側となるように使用できる。離型層は、典型的には、離型剤を含む離型剤組成物の硬化層である。離型剤には、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、長鎖アルキル系離型剤、脂肪酸アミド系離型剤、シリカ粉等の種々の離型剤を使用できる。
【0096】
はく離ライナー23は、枚葉状であっても長尺状であってもよい。
【0097】
基材シート21の例は、樹脂フィルムである。基材シート21に含まれる樹脂の例は、ライナー基材に含まれうる樹脂の例と同じである。
【0098】
基材シート21の厚さは、例えば10~200μmであり、25~150μmであってもよい。
【0099】
基材シート21は、塗布層22の側の面に離型層を備えていてもよい。基材シート21が備えうる離型層の例は、はく離ライナー23が備えうる離型層の例と同じである。はく離ライナー23及び基材シート21の双方が離型層を備えていてもよい。
【0100】
基材シート21には、通常、粘着シート1との剥離力がはく離ライナー23に比べて大きなシートを選択できる。
【0101】
基材シート21は、枚葉状であっても長尺状であってもよい。
【0102】
第1の積層体20は、例えば、基材シート21(又ははく離ライナー23)の上に塗布層22を形成し、形成した塗布層22の上にはく離ライナー23(又は基材シート21)を配置して形成できる。また、互いの主面が向き合うように所定の間隔に保持された基材シート21及びはく離ライナー23の間の空間に光硬化性組成物を流しこむように塗布して第1の積層体20を形成してもよい。
【0103】
塗布層22の形成には、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコート等の各種の塗布方法を適用できる。
【0104】
塗布層22の厚さは、目的とする粘着シート1の厚さに応じて調整でき、例えば5~100μmであり、5~50μm、5~25μm、さらには5~20μmであってもよい。
【0105】
第1の積層体20は、長尺状の基材シート21、長尺状の塗布層22及び長尺状のはく離ライナー23を含んでいてもよく、換言すれば、長尺状であってもよい。長尺状の第1の積層体20は、例えば、巻回体から繰り出した基材シート21及びはく離ライナー23を搬送しながら両者の間に塗布層22を形成して得ることができる。
【0106】
粘着シート1に含まれる重合体AのMwは、例えば60万以上であり、65万以上、70万以上、75万以上、80万以上、85万以上、90万以上、95万以上、100万以上、110万以上、120万以上、130万以上、さらには140万以上であってもよい。Mwの上限は、特に限定されず、例えば300万以下である。重合体AのMwは、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値から求められる。
【0107】
粘着シート1における単量体群の重合率は、97.5%以上、98%以上、さらには98.5%以上であってもよい。重合率の上限は、例えば、99.99%以下である。高い重合率は、例えば、粘着シート1の臭気の抑制に寄与しうる。
【0108】
粘着シート1では、重合体の分子量及び単量体群の重合率を共に高めうる。粘着シート1に含まれる重合体の重量平均分子量(Mw)が60万以上であり、粘着シート1における単量体群の重合率が98%以上であってもよい。Mw及び重合率は、それぞれ、上述した数値範囲にあってもよい。
【0109】
粘着シート1のゲル分率は、例えば55%以上であり、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、78%以上、80%以上、80%超、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、さらには85%以上であってもよい。ゲル分率の上限は、95%以下、94%以下、93%以下、92%以下、91%以下、90%以下、さらには89%以下であってもよい。
【0110】
粘着シート1のゲル分率は、以下のように評価できる。粘着シート1から約0.1gの試験片を採取し、ポリテトラフルオロエチレン多孔質シート(平均孔径0.2μm、商品名「NTF1122」、日東電工社製)に包んだ後、凧糸で縛って測定サンプルを得る。次に、得られた測定サンプルの重量(浸漬前重量C)を測定する。浸漬前重量Cは、試験片、ポリテトラフルオロエチレン多孔質シート及び凧糸の総重量である。これとは別に、ポリテトラフルオロエチレン多孔質シート及び凧糸の合計重量である包袋重量Bを測定しておく。次に、測定サンプルを酢酸エチルで満たした容積50mLの容器に収容し、23℃で7日間静置する。静置後、容器から測定サンプルを取り出して、アルミニウム製カップに移し、乾燥機を用いた130℃及び2時間の乾燥によって酢酸エチルを除去する。乾燥後の測定サンプルの重量(浸漬後重量A)を測定する。以下の式から算出した値を粘着シート1のゲル分率として特定する。
ゲル分率(%)=(A-B)/(C-B)×100
【0111】
粘着シート1の厚さは、例えば2~70μmである。厚さは50μm以下であってもよく、40μm以下、30μm以下、25μm以下、さらには20μm以下であってもよい。厚さの下限は、5μm以上、10μm以上、さらには15μm以上であってもよい。薄い粘着シート1、例えば厚さ30μm以下の粘着シート1、は、光硬化による形成時に環境中の酸素による重合阻害を受けやすい。一方、粘着シート1は低い積算光量での形成に適しており、換言すれば、短時間での光硬化による形成に適している。このため、薄い場合においても重合阻害による影響を抑制できる。また、粘着シート1は、例えば30μm以下の厚さとしたときにおいても、高温環境下での発泡や被着体からの剥がれの抑制に適している。被着体は、例えば、ガラス基板である。
【0112】
<光学フィルム>
光学フィルム2の例は、偏光フィルム、位相差フィルム、並びに偏光フィルム及び/又は位相差フィルムを含む積層フィルムである。ただし、光学フィルム2は、上記例に限定されない。光学フィルム2は、ガラス製のフィルムを含んでいてもよい。
【0113】
光学フィルム2が偏光フィルムであり、粘着シート1は偏光フィルムに接していてもよい。偏光フィルムは、光学フィルムのなかでも、熱による寸法変化が大きい傾向にある。偏光フィルムの寸法変化は、粘着フィルムとの剥がれの要因となりうる。このため、光学積層体が偏光フィルムをさらに備える場合に、本発明は特に有利である。
【0114】
偏光フィルムは、偏光子を含む。偏光フィルムは、典型的には、偏光子及び保護フィルム(透明保護フィルム)を含む。保護フィルムは、例えば、偏光子の主面(最も広い面積を有する表面)に接して配置されている。偏光子は、2つの保護フィルムの間に配置されていてもよい。保護フィルムは、偏光子の少なくとも一方の面に配置されていてもよい。
【0115】
偏光子としては、特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素、二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの;ポリビニルアルコールの脱水処理物、ポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。偏光子は、典型的には、ポリビニルアルコール系フィルム(ポリビニルアルコール系フィルムには、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムが含まれる)、及び、ヨウ素等の二色性物質からなる。
【0116】
偏光子の厚さは、特に限定されず、例えば80μm以下であり、50μm以下、30μm以下、25μm以下、さらには20μm以下であってもよい。偏光子の厚さの下限は、特に限定されず、例えば1μm以上であり、5μm以上、10μm以上、さらには15μm以上であってもよい。薄型の偏光子(例えば、厚さ20μm以下)は、寸法変化が抑制されており、光学積層体の耐久性、特に高温下の耐久性、の向上に寄与しうる。
【0117】
保護フィルムの材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、及び、これらの混合物が挙げられる。保護フィルムの材料は、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂であってもよい。偏光フィルムが2つの保護フィルムを有する場合、2つの保護フィルムの材料は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、偏光子の一方の主面に対して、接着剤を介して、熱可塑性樹脂で構成された保護フィルムが貼り合わされ、偏光子の他方の主面に対して、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化型樹脂で構成された保護フィルムが貼り合わされていてもよい。保護フィルムは、任意の添加剤を1種類以上含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤等が挙げられる。
【0118】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄膜性等の点より5~200μm程度である。
【0119】
偏光子と保護フィルムとは通常、水系接着剤等を介して密着している。水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス、水系ポリウレタン、水系ポリエステル等を例示できる。上記の接着剤以外の他の接着剤としては、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等が挙げられる。電子線硬化型偏光フィルム用接着剤は、各種の保護フィルムに対して、好適な接着性を示す。接着剤は、金属化合物フィラーを含んでいてもよい。
【0120】
偏光フィルムでは、保護フィルムに代えて、位相差フィルム等を偏光子上に形成することもできる。保護フィルム上には、さらに別の保護フィルムを設けること、位相差フィルム等を設けること等もできる。
【0121】
保護フィルムについて、偏光子と接着している表面と対向する表面には、ハードコート層が設けられていてもよく、反射防止、スティッキング防止、拡散、アンチグレア等を目的とした処理を施すこともできる。
【0122】
偏光フィルムは、円偏光フィルムであってもよい。
【0123】
偏光フィルムの厚さは、例えば500μm以下であり、300μm以下、200μm以下、100μm以下、さらには60μm以下であってもよい。厚さの下限は、例えば10μm以上であり、25μm以上、さらには40μm以上であってもよい。
【0124】
位相差フィルムは、面内方向及び/又は厚さ方向に複屈折を有するフィルムである。位相差フィルムは、例えば、延伸された樹脂フィルム、液晶材料を配向及び固定化させたフィルムである。
【0125】
位相差フィルムは、λ/4板、λ/2板、反射防止用位相差フィルム(例えば特開2012-133303号公報の段落0221,0222,0228参照)、視野角補償用位相差フィルム(例えば特開2012-133303号公報の段落0225,0226参照)、視野角補償用の傾斜配向位相差フィルム(例えば特開2012-13303号公報の段落0227参照)であってもよい。位相差フィルムは、面内方向及び/又は厚さ方向に複屈折を有する限り、上記例に限定されない。位相差フィルムの位相差値、配置角度、3次元複屈折率、単層であるか多層であるか等についても限定されない。位相差フィルムには、公知のフィルムを使用可能である。
【0126】
光学フィルム2の厚さは、例えば1~200μmである。
【0127】
光学フィルム2は、単層であっても、2以上の層から構成される積層フィルムであってもよい。光学フィルム2が積層フィルムである場合、各層の接合に粘着シート1を使用してもよい。
【0128】
粘着シート付き光学フィルム11は、粘着シート1及び光学フィルム2以外の他の層を備えていてもよい。粘着シート1と光学フィルム2との間に他の層が配置されていてもよいが、粘着シート1と光学フィルム2とが接していることが好ましい。
【0129】
粘着シート付き光学フィルム11は、例えば、光学積層体や画像表示装置に使用できる。ただし、粘着シート付き光学フィルム11の用途は、上記例に限定されない。
【0130】
[光学積層体]
本実施形態の光学積層体の一例を図3に示す。図3の光学積層体30Aは、本実施形態の粘着シート付き光学フィルム11を備える。光学積層体30Aは、はく離ライナー3、粘着シート1及び光学フィルム2がこの順に積層された積層構造を有する。光学積層体30Aは、はく離ライナー3を剥離することで、粘着シート付き光学フィルム11として使用できる。
【0131】
はく離ライナー3は、典型的には、樹脂フィルムである。はく離ライナー3を構成する樹脂の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、ポリアミド、並びにポリイミドである。はく離ライナー3における粘着シート1と接する面には、剥離処理がなされていてもよい。剥離処理は、例えばシリコーン化合物による処理である。ただし、はく離ライナー3は上記例に限定されない。はく離ライナー3は、光学積層体30Aの使用時、例えば画像形成層への貼付時、には剥離される。
【0132】
本実施形態の光学積層体の別の一例を図4に示す。図4の光学積層体30Bは、本実施形態の粘着シート付き光学フィルム11を備える。光学積層体30Bは、はく離ライナー3、粘着シート4、位相差フィルム2B、粘着シート1、及び偏光フィルム2Aがこの順に積層された積層構造を有する。光学積層体30Bは、はく離ライナー3を剥離した後、例えば画像形成層に貼付して使用できる。
【0133】
粘着シート4には、公知の粘着シートを使用できる。粘着シート1を粘着シート4に使用してもよい。
【0134】
本実施形態の光学積層体の別の一例を図5に示す。図5の光学積層体30Cは、本実施形態の粘着シート付き光学フィルム11を備える。光学積層体30Cは、はく離ライナー3、粘着シート4、位相差フィルム2B、粘着シート1、偏光フィルム2A、及び保護フィルム5がこの順に積層された積層構造を有する。光学積層体30Cは、はく離ライナー3を剥離した後、例えば画像形成層に貼付して使用できる。
【0135】
保護フィルム5は、光学積層体30Cの流通及び保管時、並びに光学積層体30Cを画像表示装置に組み込んだ状態において、最外層である光学フィルム2(偏光フィルム2A)を保護する機能を有する。また、画像表示装置に組み込んだ状態において、外部空間へのウィンドウとして機能する保護フィルム5であってもよい。保護フィルム5は、典型的には、樹脂フィルムである。保護フィルム5を構成する樹脂は、例えば、PET等のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル、シクロオレフィン、ポリイミド、並びにポリアミドであり、ポリエステルが好ましい。ただし、保護フィルム5は上記例に限定されない。保護フィルム5は、ガラス製のフィルム、又はガラス製のフィルムを含む積層フィルムであってもよい。保護フィルム5には、アンチグレア、反射防止、帯電防止等の表面処理が施されていてもよい。
【0136】
保護フィルム5は、任意の粘着剤によって光学フィルム2に接合されていてもよい。粘着シート1による接合も可能である。
【0137】
本実施形態の光学積層体は、上述した層以外の任意の層を備えていてもよい。本実施形態の光学積層体は、粘着シート付き光学フィルム11を備える限り、任意の構成を有しうる。
【0138】
本実施形態の光学積層体は、例えば、帯状の光学積層体を巻回した巻回体として、あるいは枚葉状の光学積層体として、流通及び保管が可能である。
【0139】
本実施形態の光学積層体は、典型的には、画像表示装置に用いられる。画像表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及び無機ELディスプレイ等のELディスプレイである。
【0140】
[画像表示装置]
本実施形態の画像表示装置の一例を図6に示す。図6の画像表示装置31は、基板7、画像形成層(例えば有機EL層又は液晶層)6、粘着シート4、位相差フィルム2B、粘着シート1、偏光フィルム2A及び保護フィルム5がこの順に積層された積層構造を有している。画像表示装置31は、図1の粘着シート付き光学フィルム11、及び、図3~5の光学積層体30A,30B,30Cを備えている(ただし、はく離ライナー3を除く)。基板7及び画像形成層6は、公知の画像表示装置が備える基板及び画像形成層と、それぞれ同様の構成を有していればよい。
【0141】
図6の画像表示装置31は、有機ELディスプレイであってもよく、液晶ディスプレイであってもよい。ただし、画像表示装置31はこの例に限定されない。画像表示装置31は、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)等であってもよい。画像表示装置31は、家電用途、車載用途、パブリックインフォメーションディスプレイ(PID)用途等に用いてもよい。
【0142】
画像表示装置31は、粘着シート付き光学フィルム11及び/又は本実施形態の光学積層体を備える限り、任意の構成を有しうる。
【実施例0143】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0144】
[光硬化性組成物の作製]
(モノマーシロップA1)
n-ブチルアクリレート(BA)99.0重量部、及び4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)1.0重量部と、光重合開始剤としてOmnirad184(IGM Resin社製)0.16重量部及びOmnirad819(IGM Resin社製)0.04重量部とを4つ口フラスコに投入した。次に、フラスコ内の液体に対して窒素雰囲気下で紫外線を照射することによって、単量体を部分的に光重合させたモノマーシロップA1を得た。紫外線の照射は、フラスコ内の液体の粘度(計測条件:BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が20Pa・sになるまで実施した。
【0145】
(モノマーシロップA2~A4)
単量体及び光重合開始剤を表1のように変更したことを除き、モノマーシロップA1と同じ方法によって、モノマーシロップA2~A4を調製した。
【0146】
【表1】
【0147】
表1中の略称は以下のとおりである。
BA:n-ブチルアクリレート
HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
AA:アクリル酸
Omnirad184:1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン(Omnirad184、IGM Resin社製)
Omnirad819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(Omnirad819、IGM Resins社製)
Omnirad127:2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)2-メチルプロパン-1-オン(Omnirad127、IGM Resin社製)
【0148】
(光硬化性組成物C1~C10)
次に、以下の表2に示す組成となるように、モノマーシロップ、単量体、架橋剤及びシランカップリング剤を混合して、光硬化性組成物C1~C10を得た。
【0149】
【表2】
【0150】
表2中の略称は以下のとおりである。
AA:アクリル酸
NVP:N-ビニル-2-ピロリドン
NDDA:1,9-ノナンジオールジアクリレート
KBM403::3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、商品名「KBM-403」)
X-41-1056:エポキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤(信越シリコーン社製、商品名「X-41-1056」)
【0151】
各光硬化性組成物に含まれる単量体の最終組成を以下の表3に示す。
【0152】
【表3】
【0153】
[粘着シートの作製]
<実施例1>
(はく離ライナーの作製)
付加反応硬化型シリコーン(ヘキセニル基含有ポリオルガノシロキサンを含むLTC761、30重量%トルエン溶液、東レ・ダウコーニング製)30重量部、剥離コントロール剤(未反応性シリコーン樹脂を含むBY24-850、東レ・ダウコーニング製)0.9重量部、及び硬化触媒(白金触媒を含むSRX212、東レ・ダウコーニング製)2重量部、及び希釈溶媒としてトルエン/ヘキサン混合溶媒(体積比1:1)を混合して、シリコーン系離型剤組成物を得た。離型剤組成物におけるシリコーン固形分の濃度は、1.0重量%であった。次に、ライナー基材(ポリエステルフィルムであるルミラーXD500P、厚さ75μm)の片面に離型剤組成物をワイヤーバーにより塗布し、130℃で1分間加熱して、離型層(厚さ60nm)を片面に備えるはく離ライナーを作製した。
【0154】
(粘着シートの作製)
基材シート(PETセパレータ、三菱樹脂製、MRF38)の片面に、モノマーシロップC1をアプリケーターにより塗布し、塗布層(厚さ20μm)を形成した。次に、形成した塗布層の上にはく離ライナーを配置して第1の積層体を得た。はく離ライナーは、離型層が塗布層に接するように配置した。次に、第1の積層体における基材シートの側から、照度8.8mW/cm2及び照射時間60秒の条件で光を照射した(積算光量は528mJ/cm2)。光源にはLEDを使用し、照射した光のピーク波長は340nmであった。これにより、塗布層が光硬化し、基材シート及びはく離ライナーに挟持された実施例1の粘着シート(厚さ20μm)を得た。なお、光の照度は、照度計(トプコンテクノハウス社製、UD-T3040T2)を用い、基材シートにおける紫外線の入射面の近傍にあたる位置での照度を測定した。
【0155】
<実施例2~8、比較例1~2>
使用する光硬化性組成物及び光の照射条件を表3に示すように変更したことを除き、実施例1と同じ方法によって、実施例2~8及び比較例1~2の粘着シートを得た。
【0156】
[評価方法]
<重合体のMw>
架橋剤を含まないことを除き、実施例1~8及び比較例1~2で用いた光硬化性組成物と同じ組成を有する試料を準備した。試料に対して、対応する実施例及び比較例の条件で光を照射した。これにより、試料に含まれる単量体群が重合し、重合体が形成された。この重合体についてMwを測定した。Mwは、GPCにより測定した。測定装置及び測定条件は、以下のとおりとした。なお、測定装置及び測定条件は、NVP含有組成及びNVP非含有組成で異なるものとした。
【0157】
(NVP非含有組成)
・分析装置:東ソー社製、HLC-8320GPC
・カラム:東ソー社製、TSKgel GMH-H(S)×2
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計60cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.5mL/min
・注入量:100μL
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0158】
(NVP含有組成)
・分析装置:アジレント・テクノロジー製、Agilent 1200
・カラム:東ソー社製、TSKgel SuperAWM-H+superAW4000+superAW2500
・カラムサイズ:各6.0mmφ×15cm 計45cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.4mL/min
・注入量:40μL
・溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0159】
<ゲル分率>
実施例及び比較例の各粘着シートのゲル分率は、上記の方法により測定した。
【0160】
<単量体群の重合率>
実施例及び比較例の各粘着シートの重合率は、130℃及び2時間の加熱乾燥の前後における粘着シートの重量の変化より算出した。具体的には、基材シート及びはく離ライナーを剥離した直後の粘着シートの重量をW0(乾燥前重量)とし、上記加熱の後、常温(23℃)で約20分冷却した時点での粘着シートの重量をW1(乾燥後重量)として、式:重合率(%)=W1/W0×100により求めた。また、求めた重合率に基づき、以下の判定を実施した。
A:重合率98.5%以上
B:重合率98.0%以上98.5%未満
C:重合率97.5%以上98.0%未満
D:重合率97.5%未満
【0161】
<信頼性試験>
(偏光フィルムの作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、温度30℃、濃度0.3%のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。次に、濃度4%でホウ酸を含み、かつ濃度10%でヨウ化カリウムを含む、温度60℃の水溶液中に0.5分間浸漬しながら、総合延伸倍率が6倍になるまで延伸した。次に、濃度1.5%でヨウ化カリウムを含む、温度30℃の水溶液中に10秒間浸漬させて洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行うことによって、厚さ28μmの偏光子を得た。当該偏光子の片面に、ラクトン環構造を有する変性アクリル系ポリマーからなる厚さ30μmの透明保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せた。さらに、偏光子の他方の面に、トリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ製、商品名「KC4UY」)にハードコート層(HC)を形成した厚さ47μmの透明保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せた。70℃に設定されたオーブン内で5分間加熱乾燥させることによって偏光フィルムを作製した。さらに、変性アクリル系ポリマーからなる透明保護フィルム側の偏光フィルムの表面に対して、放電量63W/m2・minでコロナ処理を行った。
【0162】
(粘着シート付き偏光フィルムの作製)
実施例及び比較例で作製した各粘着シートの露出面に、上述の偏光フィルムを配置することによって粘着シート付き偏光フィルムを作製した。なお、偏光フィルムは、変性アクリル系ポリマーからなる透明保護フィルム側の表面が粘着シートに接するように配置した。
【0163】
<信頼性試験(85℃)>
作製した粘着シート付き偏光フィルムについて、次の方法によって信頼性(85℃信頼性)を評価した。まず、粘着シート付き偏光フィルムを縦228mm×横128mmの短冊状に切り出して試験片とした。次に、厚さ0.7mmの無アルカリガラス(コーニング社製、商品名「EG-XG」)の表面に試験片を粘着シートにより貼り付けた。無アルカリガラスへの試験片の貼り付けは、ラミネーターを用いて行った。試験片を貼り付けた後、50℃及び0.5MPaのオートクレーブ内に15分収容して無アルカリガラスと粘着シートとの接合を均質化させ、粘着シートを無アルカリガラスに密着させた。次に、試験片について、大気圧下、85℃で500時間加熱処理を行った。試験片の端部付近を光学顕微鏡で観察し、試験片の端部からの剥がれ及び端部付近における発泡の有無を確認した。
A:画像表示に影響を与える剥がれ及び発泡は確認されない
B:端部にわずかな発泡があるが、画像表示に影響を与えるレベルではない
C:端部に複数の気泡があるが、画像表示に影響を与えるレベルではない
D:画像表示に影響を与える剥がれ及び/又は発泡がある
E:画像表示に著しい影響を与える剥がれ及び/又は発泡がある
【0164】
<信頼性試験(95℃)>
加熱処理の温度を85℃から95℃に変更したことを除き、85℃信頼性と同じ方法によって95℃信頼性を評価した。評価項目の分類A~Eは、85℃信頼性と同一とした。
【0165】
<糊ずれ量(85℃)>
信頼性試験の評価において作製した粘着シート付き偏光フィルムを縦228mm×横128mmの短冊状に切り出して試験サンプルとした。次に、試験サンプルを85℃及び500時間の加熱試験に供した後、偏光フィルムの端面からの粘着シートのはみ出し量を、20倍の対物レンズを用いた光学顕微鏡による観察に基づいて測定し、これを糊ずれ量(85℃)とした。観察にあたっては、透過光を0(ゼロ)とし、反射光のみとなるように調整した。
【0166】
評価結果を以下の表4に示す。なお、重合率については、A~Dの判定結果と共に、その数値を示す。
【0167】
【表4】
【0168】
表4に示すように、実施例の粘着シートでは、比較例の粘着シートに比べて重合率を向上できると共に、高温環境下における信頼性を向上できた。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明の粘着シート付き光学フィルムは、光学積層体及び画像表示装置に利用できる。
【符号の説明】
【0170】
1 粘着シート
2 光学フィルム
2A 偏光フィルム
11 粘着シート付き光学フィルム
30A,30B,30C 光学積層体
31 画像表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6