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特開2024-146809光沢性塗材、表面仕上げ方法および天板
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  • 特開-光沢性塗材、表面仕上げ方法および天板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146809
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】光沢性塗材、表面仕上げ方法および天板
(51)【国際特許分類】
   C09D 1/08 20060101AFI20241004BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241004BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241004BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20241004BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20241004BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241004BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20241004BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C09D1/08
C09D7/61
C09D201/00
E04F13/02 A
B05D1/28
B05D7/24 303B
B05D7/24 301G
B05D5/06 C
B05D3/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024039595
(22)【出願日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2023057640
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】722013416
【氏名又は名称】四国化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145229
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(72)【発明者】
【氏名】山下 功太郎
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AC57
4D075BB03Z
4D075CA02
4D075CA18
4D075CB04
4D075DA06
4D075DA10
4D075DB12
4D075DB14
4D075DC02
4D075DC03
4D075DC05
4D075DC38
4D075EA06
4D075EA13
4D075EA14
4D075EB03
4D075EB04
4D075EB13
4D075EB14
4D075EB22
4D075EC01
4D075EC02
4D075EC03
4D075EC04
4D075EC05
4D075EC11
4D075EC13
4D075EC24
4D075EC33
4D075EC37
4D075EC43
4D075EC53
4D075EC54
4D075EC60
4J038AA011
4J038EA011
4J038HA216
4J038HA286
4J038HA446
4J038HA491
4J038HA536
4J038KA02
4J038KA07
4J038KA08
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA01
4J038PA18
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】天板等の被対象面にも使用可能な硬度を備えつつも光沢性を有する光沢性塗材、表面仕上げ方法および天板を提供する。
【解決手段】光沢性塗材は、30~65重量%の骨材と、10~40重量%のセメント材料と、2~10重量%の合成樹脂と、水と、を含有し、骨材が、モース硬度が6より大きい粉体およびモース硬度が4より小さい粉体を含み、モース硬度が6より大きい粉体の平均粒径がモース硬度が4より小さい粉体の平均粒径よりも大きい。また、表面仕上げ方法は、光沢性塗材を被対象面に押しつけながら塗布する工程と、光沢性塗材が硬化して形成された仕上げ層の表面を研磨材で研磨する工程と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
30~65重量%の骨材と、
10~40重量%のセメント材料と、
2~10重量%の合成樹脂と、
水と、を含有し、
前記骨材が、モース硬度が6より大きい粉体およびモース硬度が4より小さい粉体を含み、前記モース硬度が6より大きい粉体の平均粒径が前記モース硬度が4より小さい粉体の平均粒径よりも大きい、
ことを特徴とする光沢性塗材。
【請求項2】
前記モース硬度が6より大きい粉体が珪砂であり、前記モース硬度が4より小さい粉体がタルク、炭酸カルシウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選択される1種以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光沢性塗材。
【請求項3】
前記モース硬度が6より大きい粉体と前記モース硬度が4より小さい粉体との平均粒径の比が1.4:1~600:1である、
ことを特徴とする請求項2に記載の光沢性塗材。
【請求項4】
前記モース硬度が6より大きい粉体の平均粒径が100~600μmであり、前記モース硬度が4より小さい粉体の平均粒径が1~70μmである、
ことを特徴とする請求項3に記載の光沢性塗材。
【請求項5】
前記モース硬度が6より大きい粉体と前記モース硬度が4より小さい粉体との配合比が重量比で3:1~6:1である、
ことを特徴とする請求項2に記載の光沢性塗材。
【請求項6】
前記モース硬度が6より大きい粉体と前記モース硬度が4より小さい粉体との配合比が重量比で3:1~6:1である、
ことを特徴とする請求項4に記載の光沢性塗材。
【請求項7】
天板用の前記光沢性塗材である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光沢性塗材。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の光沢性塗材を被対象面に押しつけながら塗布する工程と、
前記光沢性塗材が硬化して形成された仕上げ層の表面を研磨材で研磨する工程と、
を備える、
ことを特徴とする表面仕上げ方法。
【請求項9】
前記研磨材が取り付けられたサンダーを用いて研磨する、
ことを特徴とする請求項8に記載の表面仕上げ方法。
【請求項10】
仕上げ層を有する天板であって、
前記仕上げ層は、
30~65重量%の骨材、10~40重量%のセメント材料、2~10重量%の合成樹脂および水を含有し、前記骨材が、モース硬度が6より大きい粉体およびモース硬度が4より小さい粉体を含むとともに、前記モース硬度が6より大きい粉体の平均粒径が前記モース硬度が4より小さい粉体の平均粒径よりも大きな光沢性塗材を塗布、硬化した後に研磨剤で研磨されることによって形成されており、
前記仕上げ層の表面はJISK5600-5-4に規定する引っかき硬度が7H以上である、
ことを特徴とする天板。
【請求項11】
前記仕上げ層の上にコーティング層を有する、
ことを特徴とする請求項10に記載の天板。
【請求項12】
30~70重量%の骨材と、
10~40重量%のセメント材料と、
2~10重量%の合成樹脂と、
水と、を含有し、
前記骨材が、モース硬度が6より大きい粉体およびモース硬度が4より小さい粉体を含み、前記モース硬度が6より大きい粉体の平均粒径が前記モース硬度が4より小さい粉体の平均粒径よりも大きい、
ことを特徴とする光沢性塗材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光沢性塗材、表面仕上げ方法および天板に関する。
【背景技術】
【0002】
壁や床等のほか、建具や家具、天板などの被対象面に、塗材を塗布、硬化(乾燥)することで種々の機能を持たせた仕上げ層を形成することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1のように、光沢性を有する高い意匠性を持たせた光沢性壁面用塗材がある。また、特許文献2のように、柔軟性や塗膜強度、高靱性を持たせた無機系及び有機系ハイブリッド型不燃塗料などがある。また、特許文献3のように、剥がれや膨れなどの経年変化が少なく、不燃性で木目柄調の化粧材がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-115293号公報
【特許文献2】特開2013-43891号公報
【特許文献3】特開2009-101607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、光沢性を有するものの天板へ適用できる硬度を有していない。また、特許文献2、3では、不燃性で機械的強度に優れるものの、光沢性を有するものではない。
【0006】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、天板等の被対象面にも使用可能な硬度を備えつつも光沢性を有する光沢性塗材、表面仕上げ方法および天板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係る光沢性塗材は、
30~65重量%の骨材と、
10~40重量%のセメント材料と、
2~10重量%の合成樹脂と、
水と、を含有し、
前記骨材が、モース硬度が6より大きい粉体およびモース硬度が4より小さい粉体を含み、前記モース硬度が6より大きい粉体の平均粒径が前記モース硬度が4より小さい粉体の平均粒径よりも大きい、
ことを特徴とする。
【0008】
また、前記モース硬度が6より大きい粉体が珪砂であり、前記モース硬度が4より小さい粉体がタルク、炭酸カルシウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0009】
また、前記モース硬度が6より大きい粉体と前記モース硬度が4より小さい粉体との平均粒径の比が1.4:1~600:1であることが好ましい。
【0010】
また、前記モース硬度が6より大きい粉体の平均粒径が100~600μmであり、前記モース硬度が4より小さい粉体の平均粒径が1~70μmであることが好ましい。
【0011】
また、前記モース硬度が6より大きい粉体と前記モース硬度が4より小さい粉体との配合比が重量比で3:1~6:1であることが好ましい。
【0012】
また、天板用の前記光沢性塗材であってもよい。
【0013】
本発明の第2の観点に係る表面仕上げ方法は、
本発明の第1の観点に係る光沢性塗材を被対象面に押しつけながら塗布する工程と、
前記光沢性塗材が硬化して形成された仕上げ層の表面を研磨材で研磨する工程と、
を備える、
ことを特徴とする。
【0014】
また、前記研磨材が取り付けられたサンダーを用いて研磨してもよい。
【0015】
本発明の第3の観点に係る天板は、
仕上げ層を有する天板であって、
前記仕上げ層は、
30~65重量%の骨材、10~40重量%のセメント材料、2~10重量%の合成樹脂および水を含有し、前記骨材が、モース硬度が6より大きい粉体およびモース硬度が4より小さい粉体を含むとともに、前記モース硬度が6より大きい粉体の平均粒径が前記モース硬度が4より小さい粉体の平均粒径よりも大きな光沢性塗材を塗布、硬化した後に研磨剤で研磨されることによって形成されており、
前記仕上げ層の表面はJISK5600-5-4に規定する引っかき硬度が7H以上である、
ことを特徴とする。
【0016】
また、前記仕上げ層の上にコーティング層を有していてもよい。
【0017】
本発明の第4の観点に係る光沢性塗材は、
30~70重量%の骨材と、
10~40重量%のセメント材料と、
2~10重量%の合成樹脂と、
水と、を含有し、
前記骨材が、モース硬度が6より大きい粉体およびモース硬度が4より小さい粉体を含み、前記モース硬度が6より大きい粉体の平均粒径が前記モース硬度が4より小さい粉体の平均粒径よりも大きい、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、天板等の被対象面にも使用可能な硬度を備えつつも光沢性を有する光沢性塗材、表面仕上げ方法および天板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(A)~(C)は、表面仕上げ方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<光沢性塗材>
光沢性塗材は、テーブルや机の天板、壁、床面等の被対象面への塗布、硬化により仕上げ層になる。光沢性塗材は、骨材と、セメント材料と、合成樹脂と、水と、を含有する。
【0021】
骨材は、モース硬度が6より大きい粉体およびモース硬度が4より小さい粉体を含む。モース硬度が6より大きい粉体は、仕上げ層の機械的強度を高める機能を果たし、特に硬度を高める。また、モース硬度が4より小さい粉体は、光沢性を高める機能を果たす。なお、モース硬度とは、材質の硬さの指標であり、あるもので引っ掻いたときの傷の付き難さを1~10で示したものである。本発明のモース硬度が6より大きい粉体は、モース硬度が6.5~10の粉体であることが好ましく、モース硬度が7~8の粉体であることがより好ましい。また、本発明のモース硬度が4より小さい粉体は、モース硬度が0.5~3.5の粉体であることが好ましく、モース硬度が1~3の粉体であることがより好ましい。
【0022】
モース硬度が6より大きい粉体の平均粒径は、モース硬度が4より小さい粉体の平均粒径よりも大きい。これにより、仕上げ層において、モース硬度が6より大きい粉体同士の隙間を埋めるように、モース硬度が4より小さい粉体が位置することになる。骨材同士が密接することで、結合強度が高まり、仕上げ層の機械的強度の向上につながる。また、モース硬度が4より小さい粉体が仕上げ層の表面に露出しやすくなり、後述の表面仕上げ方法で説明するように、仕上げ層の光沢性を十分に発揮することになる。なお、本発明の平均粒径は、次のようにして測定することが出来る。目開きの異なるふるいと受け皿を用いて、受け皿の上に目開きの大きいふるいが上段になるように積み重ねる。最上部のふるいの上から試料を入れ、受け皿の上に目開きの大きいふるいが上段になるように積み重ねる。重ねたふるいをふるい振とう機にセットし、10分間振とうし、ふるい分けを行う。ふるい振とう機は振動数3600回/分で振幅1mmの条件で使用してよい。粒度分布の測定にはJISZ8815やJISZ8801に記載された方法や器具(ふるい)を用いても良い。
【0023】
モース硬度が6より大きい粉体とモース硬度が4より小さい粉体との平均粒径の比は、仕上げ層においてモース硬度が6より大きい粉体同士の隙間を十分にモース硬度が4より小さい粉体が埋め、モース硬度が4より小さい粉体が仕上げ層の表面に露出可能な比であればよく、例えば、1.4:1~600:1であり、6:1~450:1であることが好ましく、10:1~450:1であることがより好ましく、15:1~70:1であることがさらに好ましい。
【0024】
モース硬度が6より大きい粉体として、上記機能を発揮可能な素材であればよく、具体的には、珪砂が挙げられる。モース硬度が6より大きい粉体の平均粒径は、形成させる仕上げ層の厚みに応じて設定されればよく、例えば、100~600μmであり、200~450μmであることが好ましい。
【0025】
モース硬度が4より小さい粉体として、上記機能を発揮可能な素材であればよく、具体的には、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、石膏、マイカ、クレー、カリオンなどが挙げられる。これら内、タルク、炭酸カルシウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選択される1種以上のものが好ましい。モース硬度が4より小さい粉体の平均粒径は、モース硬度が6より大きい粉体の平均粒径より小さく、例えば、1~70μmであり、1~30μmであることが好ましく、1~20μmであることがより好ましい。モース硬度が4より小さい粉体の平均粒径が上記範囲より大きい場合、十分な光沢が得られなくなる。原因は明らかではないが、平均粒径が上記範囲より大きい場合、仕上げ層内のモース硬度が4より小さい粉体が均一に配置され難いことから、光の反射が散乱してしまい、面反射になりにくいためと考えられる。
【0026】
光沢性塗材中、骨材の含有量は、30~65重量%または30~70重量%であり、30~65重量%であることがより好ましく、45~65重量%であることがさらに好ましい。骨材の含有量が上記範囲より少ない場合、光沢性塗材の粘度が足りず、光沢性塗材を被対象面に塗布した際に垂れやすく、鏝離れも悪くなる。そのため、塗布作業性が悪くなってしまう。また、下地を隠蔽することができず、下地が透けてしまい、美観を損ねるおそれもある。一方、上記範囲より多い場合には、光沢性塗材がザラついて一定の厚みに塗布することが難しく、塗布作業性が悪化するとともに、相対的にセメント材料、合成樹脂の含有量が少なくなり、仕上げ層の強度が低下してしまう。
【0027】
また、モース硬度が6より大きい粉体とモース硬度が4より小さい粉体との配合比は、重量比で3:1~6:1であることが好ましい。
【0028】
セメント材料は、無機質バインダーとして機能し、後述の合成樹脂とともに骨材を集合、連結させる。セメント材料を含有することにより、機械的強度を高めるとともに、仕上げ層の耐火性、耐クリープ性等を向上させ得る。セメント材料として、普通ポルトランドセメント、ホワイトセメント、フライアッシュセメントなどが挙げられる。後述の着色顔料を使用する場合、着色顔料の発色性の観点からホワイトセメントを用いることが好ましい。光沢性塗材中、セメント材料の含有量は、10~40重量%であり、17~35重量%であることが好ましい。
【0029】
合成樹脂は、有機質バインダーとして機能し、塗膜形成能を発揮する。合成樹脂は、水溶解性であっても水分散性であってもよく、上記機能を発揮するものであれば特に制限なく、従来公知ものを使用できる。合成樹脂として、例えば、アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、メラミン系樹脂等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。また、これらの合成樹脂は、例えば、ウレタン変性アクリル樹脂のように変性されていてもよく、又はグラフト重合されたものであってもよく、或いは分散粒子の形態であってもよい。また、仕上げ層の耐水性を高めるべく、合成樹脂としてアクリル系樹脂が好ましい。なお、アクリル系樹脂として、アクリル酸エステル、アクリルメタクリル共重合体、アクリルスチレン共重合体、アクリル樹脂エチレン酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0030】
また、光沢性塗材中、合成樹脂の含有量は、2~10重量%であり、4~6重量%であることがより好ましい。合成樹脂の含有量が上記範囲よりも少ない場合、仕上げ層の耐水性が低下してしまう。一方、合成樹脂の含有量が上記範囲よりも多い場合、硬化速度が速くなり過ぎること、また、鏝離れが悪くなることから、塗布作業性の悪化を招くとともに、骨材の含有量の相対的な低下によって、下地を隠蔽できなくなり、下地が透けて見栄えが悪くなるおそれがある。
【0031】
なお、合成樹脂が合成樹脂エマルションの形態で用いられていてもよい。この場合において、光沢性塗材における合成樹脂エマルション中の固形分(合成樹脂)の含有量が、上記の合成樹脂の含有量の範囲となる。
【0032】
光沢性塗材における水の含有量は凡そ10~20重量%である。なお、合成樹脂が合成樹脂エマルションとして用いられている場合、合成樹脂エマルション中の水分量を含めた総水分量が上記水の含有量の範囲である。
【0033】
光沢性塗材は、上記の成分のほか、必要に応じ、増粘剤、分散剤、消臭剤、防腐剤、防かび剤、消泡剤、防凍剤、ホルムアルデヒド吸着分解剤、表面皮張り防止剤、撥水剤、硬化遅延剤、空気連行剤(AE剤)、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、起泡剤、発泡剤、レベリング剤、pH調整剤などの添加剤を含有していてもよい。添加剤を含有する場合、光沢性塗材における添加剤の含有量は、0.001~2重量%であり、0.01~1重量%であることがより好ましい。
【0034】
撥水剤として、n-プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン、ジメチルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フェニル変性ポリシロキサン、ポリエステル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンを変性した変性シリコンなどのシリコン系撥水剤;
パラフィンワックス等のパラフィン系撥水剤;
ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ジルコニウム、ステアラミドメチルピリジウムクロライドなどのピリジニウム塩型、メチロールアラミド型、エチレンウレア型などのステアリン系撥水剤などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0035】
硬化遅延剤として、クエン酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、酒石酸、リンゴ酸、ポリリン酸等の有機酸類又はそのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムなどの無機塩類;
グルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、キシロース、アラビノース、リボース、オリゴ糖、デキストランなどの糖類又はその誘導体;
ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子類;
ヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体;
リグノスルホン酸ナトリウム、リグノスルホン酸カルシウムなどのリグニンスルホン酸塩;
アミノ酸又はアミノ酸塩;
ペプチド化合物;
ホウ酸又はメタホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、ペンタホウ酸カリウム等のホウ酸塩;
酸化亜鉛、塩化亜鉛、炭酸化亜鉛、一酸化鉛、リン酸塩、ケイフッ化物、ケイフッ化塩およびリン酸塩の複合物;
水酸化銅;
ホウ砂;
マグネシア塩などが挙げられ、これらはそれぞれ単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0036】
また、光沢性塗材には、更に、着色顔料を含有していてもよい。着色顔料は、光沢性塗材を使用する前に、光沢性塗材に添加、混合して使用する形態、即ち、光沢性塗材と着色顔料とのセットの形態であってもよい。このようにすることで、単一種の光沢性塗材と複数種の着色顔料を準備しておくことにより、使用現場で適宜所望の色を呈する着色顔料を選択し、光沢性塗材に添加して用いることで、種々の色彩の仕上げ層を形成することができ、利便性に優れる。
【0037】
<表面仕上げ方法>
表面仕上げ方法は、まず、施工する天板や壁面、床面等の被対象面に上述した光沢性塗材を塗布する。光沢性塗材の塗布は、鏝等、被対象面に光沢性塗材を押しつけながら塗布できる塗布器具を用いることが好ましい。
【0038】
光沢性塗材を押さえつけずに塗布した場合では、図1(A)に示すように、モース硬度が6より大きい粉体が上層に浮いた状態になる。この状態で硬化(乾燥)させ、後述の研磨材による研磨を行っても十分な光沢が生じない。
【0039】
一方、塗布器具で光沢性塗材を被対象面に押しつけながら塗布することで、図1(B)に示すように、モース硬度が6より大きい粉体が下層に沈み込むことになる。この状態で光沢性塗材を硬化(乾燥)させることにより、仕上げ層を形成する。なお、仕上げ層の表面は、この段階では光沢性が十分でない。
【0040】
そして、形成した仕上げ層の表面を研磨材で研磨する。図1(C)に示すように、仕上げ層を研磨した箇所の平滑度が高くなるとより光沢を放つようになる。具体的には、モース硬度が4より小さい粉体が表面に露出して研磨されて平滑度が高まると、モース硬度が4より小さい粉体によってより光沢を放つようになる。このようにして、表面が光沢性を有する仕上げ層に仕上げることができる。
【0041】
研磨材は、紙等の基材に研磨粒が接着剤によって塗装されたもの、たとえば、研磨紙、耐水研磨紙、研磨布のほか、砥石など、仕上げ層に含まれるモース硬度が4より小さい粉体、合成樹脂およびセメント材料を研磨可能なものであれば制限なく用いることができる。
【0042】
また、仕上げ層の研磨は研磨材が取り付けられ電動サンダーなどの電動工具を用いて研磨することができる。したがって、作業者の熟練した作業が要求されないので、誰でも短時間で容易に光沢を放つ仕上げ層に仕上げることができる。
【0043】
光沢性塗材を塗布して形成された仕上げ層はJISK5600-5-4の硬度7H以上を満たす。仕上げ層は、硬度7H以上であるため、食器や筆記具等によって引っ掻き傷等が生じにくい。このため、特にテーブルや机等の天板の仕上げ層として有用である。
【0044】
また、被対象面に下地用塗材を塗布し、硬化(乾燥)させて下地層を形成した後、この下地層の表面に、光沢性塗材を上塗りして塗布してもよい。下地用塗材は、被対象面の凹凸を埋めて滑らかに処理するためのものであり、骨材として炭酸カルシウムや水酸化アルミニウムを使用したものなど、従来公知の下地用塗材を用いることができる。
【0045】
更に、上述したように光沢性塗材に種々の色を呈する着色顔料を添加して行い、種々の色彩の仕上げ層を形成することもできる。
【0046】
また、種々の模様付けをすることもできる。例えば、光沢性塗材を凹凸ができるように塗布する。鏝作業により凹凸を形成してもよいし、塗布した光沢性塗材が硬化(乾燥)する前に、表面に凹凸を有するローラを転がすことにより凹凸を形成してもよい。そして、光沢性塗材を硬化(乾燥)させて表面に凹凸を有する仕上げ層を形成した後、凸部のみを研磨して平滑度を高くすることで、凸部が光沢性を有する光沢面になり、一方、凹部は光沢性を有しないことになる。このようにすることで、光沢部と非光沢部によって表される模様を有する仕上げ層が得られる。
【0047】
更に、仕上げ層の表面に上塗り塗材を塗布してもよい。無色のアクリル系、ウレタン系の上塗り塗材を塗布することでコーティング層を形成させ、防汚性や耐水性、耐熱性等を持たせることができる。これらの機能により、仕上げ層の光沢性を長期に渡って維持することができる。
【0048】
<天板>
天板は、テーブルや机等の天板であって、表面に上述した光沢性塗材による仕上げ層が形成されている。仕上げ層は、JISK5600-5-4に規定する引っかき硬度が7H以上であるため、食器や筆記具等による引っかき傷が生じにくいとともに、光沢性を有しており、高い意匠性も併せ持つ。また、天板の仕上げ層の上に、上述した上塗り塗材によるコーティング層を有していてもよい。コーティング層により、防汚性や耐水性、耐熱性等が高められる。これにより、天板の上に高温の液体等がこぼれたりしても天板が保護される。また、コーティング層の上に付着した汚れは容易に落とすこともできるので、長期に渡って仕上げ層は光沢を放つことになる。
【実施例0049】
以下のようにして、各塗材(実施例1~11、比較例1~2)を調製した。使用した原料を以下に示す。
<骨材>
・珪砂(平均粒径:600μm、篠澤珪砂工業株式会社)
・珪砂(平均粒径:350μm、東海機工株式会社)
・珪砂(平均粒径:100μm、篠澤珪砂工業株式会社)
・寒水石(平均粒径:270μm、製品名:K-1(1厘)、三共精粉株式会社)
・タルク(平均粒径:5μm、製品名:CL-100、有限会社田村滑石工業所)
・炭酸カルシウム(平均粒径:5μm、製品名:#100、三共精粉株式会社)
・炭酸カルシウム(平均粒径:20μm、三共精粉株式会社)
・炭酸カルシウム(平均粒径:65μm、製品名:G-100、三共精粉株式会社)
・水酸化アルミニウム(平均粒径:18μm、製品名:B-316、アルモリックス株式会社)
<セメント材料>
・ホワイトセメント(太平洋セメント株式会社)
<増粘剤>
・カラギーナン(製品名:GENUVISCO carrageenan type J-J、三晶株式会社)
<撥水剤>
・ステアリン酸アルミニウム(川村化成工業株式会社)
・変性シラン/シロキサン(製品名:Sitren P750、SKWイーストアジア株式会社)
<硬化遅延剤>
・クエン酸(扶桑化学工業株式会社)
・アミノ酸塩およびペプチド化合物(製品名:Rベース、丸専化学株式会社)
<着色顔料>
・SKセレクトカラー(製品名)(四国化成建材株式会社)
<合成樹脂>
・アクリル系エマルション(製品名:ポリゾール(登録商標)AE-820、株式会社レゾナック)
【0050】
表1~3に示す組成にて、水に増粘剤、着色顔料を加え、攪拌して均一化した後、骨材、セメント材料、撥水剤、硬化遅延剤、合成樹脂を加え、攪拌して均一化し、実施例1~11、比較例1~2の各塗材を調製した。なお、表1~3に示す各骨材の()内の数値は、各骨材の平均粒径を表す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
垂直に配置された石膏ボード(製品名:タイガーボード、吉野石膏株式会社)の表面に実施例1~11、比較例1~2の各塗材をそれぞれ鏝で押さえつけながら塗布した。
【0055】
各塗材を硬化させてそれぞれの仕上げ層を形成した後、仕上げ層の表面を、研磨材(サンドペーパー)を取り付けた電動サンダーで研磨した。なお、研磨は、サンドペーパーの番手を240番、400番、1000番、2000番の順に代えつつ行った。
【0056】
そして、それぞれについて、表面硬度、光沢性及び塗布作業性について、以下の評価手法により評価した。評価結果を表4、5に示す。
・表面硬度の評価(JISK5600-5-4に準じた評価)
○:硬度7H以上
×:硬度7H未満
・光沢性の評価
○:研磨後に高い光沢がある
△:研磨後にやや光沢がある
×:研磨後に光沢がない
・塗布作業性の評価
○:作業時に塗材垂れがなく、鏝離れもよい
△:作業時に塗材垂れがない
×:作業時に塗材垂れがある
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
実施例1~4、8~11においては、いずれも硬度7Hを満たしており、光沢性、塗布作業性も良好であった。また、実施例5、6においては、硬度7H以上を満たし、光沢性も良好であったが、塗布作業性がやや劣った。また、実施例7においては、硬度7H以上を満たしたが、光沢性、塗布作業性がやや劣った。一方、比較例1~2においては、光沢性及び塗布作業性は良好であったものの、硬度7Hを満たさなかった。
図1