(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146816
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電力供給装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241004BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043335
(22)【出願日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2023057981
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】谷口 智勇
(72)【発明者】
【氏名】土居 弘宜
(72)【発明者】
【氏名】河野 雅樹
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770GA06
5H770GA17
5H770HA03W
5H770JA07Z
5H770JA08Z
5H770JA09X
5H770JA09Z
5H770JA11W
5H770JA13W
5H770JA14Z
5H770JA16Z
5H770JA17Z
5H770JA18W
5H770LA01W
5H770LA08W
(57)【要約】
【課題】電源が立ち上がるときに生じる共振電圧によって発生する過電圧に対して十分な保護を行う電力供給装置を提供する。
【解決手段】第1直流母線11と第2直流母線12の間に接続されている過電圧保護回路5は、半導体スイッチ52を含んでいる。過電圧保護回路5は、半導体スイッチ52がオンしたときに回路装置であるインバータ回路6を過電圧から保護する動作をする。駆動回路9は、半導体スイッチ52を駆動する回路である。駆動回路9は、電源端子PTへの電力供給により駆動電力が供給され、電源端子PTへの電力供給開始にともなう直流電圧の上昇開始から電源200及びコンデンサ4及びインダクタ3を含む閉回路CLに発生する共振の2分の1周期までの第1期間に、半導体スイッチ52をオンすることができる駆動可能状態となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が印加される第1直流母線(11)及び前記第1直流母線よりも低電位の第2直流母線(12)と、前記第1直流母線と前記第2直流母線の間に接続されているコンデンサ(4)とを備え、前記第1直流母線と前記第2直流母線に供給される電力を変換して負荷に電力を供給する電力供給装置であって、
電源から電力が供給される電源端子(PT)と、
前記電源端子から前記第1直流母線及び前記第2直流母線までの配線経路に挿入されているインダクタ(3)と、
前記第1直流母線と前記第2直流母線の間に接続されている回路装置(6)と、
前記第1直流母線と前記第2直流母線の間に接続され、半導体スイッチ(52)を含み、前記半導体スイッチがオンしたときに前記回路装置を過電圧から保護する動作をする過電圧保護回路(5)と、
前記半導体スイッチを駆動する駆動回路(9)と
を備え、
前記駆動回路は、前記電源端子への電力供給により駆動電力が供給され、前記電源端子への電力供給開始にともなう前記直流電圧の上昇開始から前記電源及び前記コンデンサ及び前記インダクタを含む閉回路に発生する共振の2分の1周期までの第1期間に、前記半導体スイッチをオンすることができる駆動可能状態となる、電力供給装置(1)。
【請求項2】
前記駆動回路は、前記第1直流母線と前記第2直流母線の間の線間電圧を、安定時における前記線間電圧よりも高い閾値電圧と比較して、前記線間電圧が前記閾値電圧を超えたときに、前記半導体スイッチをオンする、
請求項1に記載の電力供給装置(1)。
【請求項3】
前記回路装置は、前記第1直流母線と前記第2直流母線の間に接続され、半導体素子を含むインバータ回路(6)である、
請求項1または請求項2に記載の電力供給装置(1)。
【請求項4】
前記電源端子への電力供給にともない、前記第1期間を含む所定期間に前記駆動回路に電力を供給する第1電源回路(301)を備え、
前記第1電源回路は、前記第1期間内に前記第1電源回路の第1出力電圧が前記駆動可能状態を満足する電圧となる、
請求項1または請求項2に記載の電力供給装置(1)。
【請求項5】
前記所定期間後の第2期間に前記駆動回路に電力を供給する第2電源回路(302)を備え、
前記第2電源回路は、前記第1期間以降かつ所定期間終了までに前記第2電源回路の第2出力電圧が前記駆動可能状態を満足する電圧となる、
請求項4に記載の電力供給装置(1)。
【請求項6】
前記第1電源回路は、前記第2電源回路の前記第2出力電圧が前記駆動可能状態を満足する電圧となった後に停止する、
請求項5に記載の電力供給装置(1)。
【請求項7】
前記第1電源回路は、前記第2電源回路よりも電力容量が小さい、
請求項5に記載の電力供給装置(1)。
【請求項8】
前記第2電源回路の前記第2出力電圧が印加されるアノードと、前記第1電源回路の前記第1出力電圧が印加されるカソードとを有するダイオード(D4)を備え、
前記駆動回路は、前記ダイオードの前記カソードから電力の供給を受けるように構成されている、
請求項5に記載の電力供給装置(1)。
【請求項9】
前記第1電源回路は、ツェナーダイオード(Z2)と電流制限素子(R14)または電流制限回路(307)とを含み、
前記電流制限素子または前記電流制限回路は、前記ツェナーダイオードに流れる電流を制限する、
請求項4に記載の電力供給装置(1)。
【請求項10】
前記電流制限回路は、定電流回路(307)である、
請求項9に記載の電力供給装置(1)。
【請求項11】
前記電源は交流電源であり、前記電源端子から前記第1直流母線及び前記第2直流母線までの配線経路に該交流電源の交流電圧を前記直流電圧に整流する整流器(2)が挿入されている、
請求項1または請求項2に記載の電力供給装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
負荷に電力を供給する電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2020-124104号公報)には、負荷に電力を供給する電力供給装置の一種である電力供給装置が開示されている。特許文献1の電力供給装置においては、平滑コンデンサとしての電解コンデンサを用いずに、電解コンデンサに比べて容量の小さいフィルムコンデンサが用いられる場合がある。電力供給装置に設けられる過電圧保護回路では、電源投入時から過電圧保護回路を駆動する駆動回路が過電圧保護回路の半導体スイッチをオンオフできる状態になるまでの期間が、コンデンサの両端に発生するLC共振電圧の1/2周期に比べて長くなる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電源投入時から駆動回路が過電圧保護回路をオンオフすることができる状態になるまでの期間が、LC共振周期の1/2に比べて長くなると、電力供給装置の電源が立ち上がって過電圧になる時点で過電圧保護回路が動作できない場合がある。特に、駆動回路の駆動電力を供給する電源が電力供給装置に電力を供給する電源と共通である構成において、過電圧状態に対して過電圧保護回路の動作が間に合わない場合がある。
【0004】
電力供給装置には、電源が立ち上がるときに生じる共振電圧によって発生する過電圧に対して十分な保護を行うという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点の電力供給装置は、直流電圧が印加される第1直流母線及び第1直流母線よりも低電位の第2直流母線と、第1直流母線と第2直流母線の間に接続されているコンデンサとを備え、第1直流母線と第2直流母線に供給される直流電力を変換して負荷に電力を供給する電力供給装置である。電力供給装置は、電源端子と、インダクタと、回路装置と、過電圧保護回路と、駆動回路とを備えている。インダクタは、電源から電力が供給される電源端子と、電源端子から第1直流母線及び第2直流母線までの配線経路に挿入されている。回路装置は、第1直流母線と第2直流母線の間に接続されている。過電圧保護回路は、第1直流母線と第2直流母線の間に接続され、半導体スイッチを含み、半導体スイッチがオンしたときに回路装置を過電圧から保護する動作をする。駆動回路は、半導体スイッチを駆動する回路である。駆動回路は、電源端子への電力供給により駆動電力が供給され、電源端子への電力供給開始にともなう直流電圧の上昇開始から電源及びコンデンサ及びインダクタを含む閉回路に発生する共振の2分の1周期までの第1期間に、半導体スイッチをオンすることができる駆動可能状態となる。
【0006】
第1観点の電力供給装置では、直流電圧の上昇開始から閉回路に発生する共振の2分の1周期までの第1期間に、半導体スイッチをオンすることができる駆動可能状態となる駆動回路によって過電圧保護回路が駆動される。その結果、直流電圧が立ち上がるときの共振によって回路装置が過電圧となる前に、過電圧保護回路の半導体スイッチをオンして回路装置に過電圧が掛かるのを抑制し、電力供給装置に対する過電圧保護の信頼性を向上させることができる。
【0007】
第2観点の電力供給装置は、第1観点の電力供給装置であって、駆動回路は、第1直流母線と第2直流母線の間の線間電圧を、安定時における線間電圧よりも高い閾値電圧と比較して、線間電圧が閾値電圧を超えたときに、半導体スイッチをオンする。
【0008】
第3観点の電力供給装置は、第1観点または第2観点の電力供給装置であって、回路装置は、第1直流母線と第2直流母線の間に接続され、半導体素子を含むインバータ回路である。
【0009】
第4観点の電力供給装置は、第1観点から第3観点のいずれかの電力供給装置であって、電源端子への電力供給にともない、第1期間を含む所定期間に駆動回路に電力を供給する第1電源回路を備え、第1電源回路は、第1期間内に第1電源回路の第1出力電圧が駆動可能状態を満足する電圧となる。
【0010】
第5観点の電力供給装置は、第4観点の電力供給装置であって、所定期間後の第2期間に駆動回路に電力を供給する第2電源回路を備え、第2電源回路は、第1期間以降かつ所定期間終了までに第2電源回路の第2出力電圧が駆動可能状態を満足する電圧となる。
【0011】
第5観点の電力供給装置では、第1電源回路よりも高効率な電源回路を第2電源回路に用いることで、電源回路の損失を削減することができる。
【0012】
第6観点の電力供給装置は、第5観点の電力供給装置であって、第1電源回路は、第2電源回路の第2出力電圧が駆動可能状態を満足する電圧となった後に停止する。
【0013】
第6観点の電力供給装置では、第2電源回路の第2出力電圧が駆動可能状態を満足する電圧となった後に第1電源回路を停止することで、第1電源回路での消費電力を削減することができる。
【0014】
第7観点の電力供給装置は、第5観点または第6観点の電力供給装置であって、第1電源回路は、第2電源回路よりも電力容量が小さい。
【0015】
第7観点の電力供給装置では、第1電源回路の電力容量を小さくすることで、第1電源回路のコストおよびサイズを小さくできる。その結果、第1電源回路と第2電源回路を組み合わせた電源システムのコストおよびサイズの増加を低く抑えることができる。
【0016】
第8観点の電力供給装置は、第5観点から第7観点のいずれかの電力供給装置であって、第2電源回路の第2出力電圧が印加されるアノードと、第1電源回路の第1出力電圧が印加されるカソードとを有するダイオードを備え、駆動回路は、ダイオードのカソードから電力の供給を受けるように構成されている。
【0017】
第9観点の電力供給装置は、第5観点から第8観点のいずれかの電力供給装置であって、第1電源回路は、ツェナーダイオードと電流制限素子または電流制限回路とを含み、電流制限素子または電流制限回路は、ツェナーダイオードに流れる電流を制限する。
【0018】
第10観点の電力供給装置は、第9観点の電力供給装置であって、電流制限回路は、定電流回路である。
【0019】
第11観点の電力供給装置は、第1観点から第10観点のいずれかの電力供給装置であって、電源は交流電源であり、電源端子から第1直流母線及び第2直流母線までの配線経路に該交流電源の交流電圧を直流電圧に整流する整流器が挿入されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る電力供給装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る電力供給装置の構成の他の例を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態に係る電力供給装置の構成の他の例を示す模式図である。
【
図4】第1実施形態に係る電力供給装置の構成の他の例を示す模式図である。
【
図5】第1実施形態に係る電力供給装置の構成の他の例を示す模式図である。
【
図6】第2実施形態に係る電力供給装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】第3実施形態に係る電力供給装置の構成の一例を示す回路図である。
【
図8】
図7の電圧検出回路、比較器用電源回路及び直流部電圧比較器の回路図である。
【
図9】
図7の第1電源回路、第2電源回路及び電源切換部の回路図である。
【
図10】第1電源回路の他の例を示す回路図である。
【
図11】第1電源回路の他の例を示す回路図である。
【
図12】第1電源回路の他の例を示す回路図である。
【
図13】第1電源回路の他の例を示す回路図である。
【
図14】第1電源回路の他の例を示す回路図である。
【
図15】スイッチング電源の一例を示す回路図である。
【
図16】第1電源回路と第2電源回路の選択のための他の構成例を示すブロック図である。
【
図17】
図7の駆動回路の一例を示す回路図である。
【
図18】第1電源回路の第1出力電圧、第2電源回路の第2出力電圧及び停止信号の一例を示すタイミングチャートである。
【
図19】第4実施形態に係る電力供給装置の過電圧保護回路と駆動回路の一例を説明するための回路図である。
【
図20】第4実施形態に係る電力供給装置の過電圧保護回路と駆動回路の他の例を説明するための回路図である。
【
図21】第4実施形態に係る電力供給装置の過電圧保護回路と駆動回路の他の例を説明するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
(1)全体構成
図1には、第1実施形態に係る電力供給装置1の構成の一例が示されている。
図1の電力供給装置1は、電源200から電力が供給される電源端子PT、並びに直流電圧が印加される第1直流母線11及び第2直流母線12を備える。第2直流母線12は、第1直流母線よりも低電位である。また、電力供給装置1は、第1直流母線11と第2直流母線12の間に接続されているコンデンサ4とを備えている。電力供給装置1は、第1直流母線11と第2直流母線12に供給される電力を変換して負荷100に電力を供給する。
【0022】
第1直流母線11及び第2直流母線12に直流電圧を印加するため、例えば、
図1の電力供給装置1のように、電源200に交流電源を用い、電源端子PTから第1直流母線11と第2直流母線12までの配線経路に電源200の交流電圧を直流電圧に整流する整流器2が挿入される。ただし、電源200は交流電源には限られない。例えば、電源200は直流電源であってもよい。電源200が直流電源である場合には、例えば、整流器2は省かれる。
【0023】
電力供給装置1は、電源端子PTから第1直流母線11及び第2直流母線12までの配線経路に挿入されているインダクタ3を備えている。電力供給装置1が備えるインダクタ3は、単数であっても複数であってもよい。
図1に示されている電力供給装置1では、インダクタ3が第1直流母線11に直列に挿入されている。インダクタ3が電源端子PTから第1直流母線11及び第2直流母線12までの配線経路に挿入されている例が
図2から
図5に示されている。例えば、整流器2が単相交流を整流するブリッジ整流回路であり、インダクタ3が第1直流母線11に直列に挿入されている例が
図2に示されている。
図2に示されているインダクタ3の挿入位置は、単相交流を整流するブリッジ整流回路の直流電圧の出力側である。例えば、整流器2が三相交流を整流するブリッジ整流回路であり、インダクタ3が第1直流母線11に直列に挿入されている例が
図3に示されている。
図3に示されているインダクタ3の挿入位置は、三相交流を整流するブリッジ整流回路の直流電圧の出力側である。
図2及び
図3に示されているのは、インダクタ3が、電源端子PTよりも第1直流母線11に近い位置にある整流器2から第1直流母線11までの配線経路に挿入されている例である。なお、
図2及び
図3には、インダクタ3が、第1直流母線11に挿入されている例を示したが、インダクタ3は、ブリッジ整流回路の直流電圧の出力側であって且つ第2直流母線12に挿入されてもよい。さらに、インダクタ3は、ブリッジ整流回路の交流電圧の入力側と直流電圧の出力側の両方に挿入されてもよい。
【0024】
例えば、整流器2が単相交流を整流するブリッジ整流回路であり、インダクタ3が電源端子PTと単相交流を整流するブリッジ整流回路の間に配置されている例が
図4に示されている。
図4に示されているインダクタ3の挿入位置は、単相交流を整流するブリッジ整流回路の交流電圧の入力側である。例えば、整流器2が三相交流を整流するブリッジ整流回路であり、インダクタ3が電源端子PTと三相交流を整流するブリッジ整流回路の間に配置されている例が
図4に示されている。
図4に示されているインダクタ3の挿入位置は、三相交流を整流するブリッジ整流回路の交流電圧の入力側である。
図4及び
図5に示されているのは、インダクタ3が、第1直流母線11よりも電源端子PTに近い位置にある整流器2と電源端子PTとの間の配線経路に挿入されている例である。なお、
図4には、一方の電源端子PTと整流器2との間にインダクタ3が挿入されている例を示したが、2つのインダクタ3が、各電源端子PTと整流器2の間にそれぞれ挿入されてもよい。さらに、インダクタ3は、ブリッジ整流回路の交流電圧の入力側と直流電圧の出力側の両方に挿入されてもよい。
【0025】
図1に示されている電力供給装置1は、回路装置であるインバータ回路6、過電圧保護回路5,及び駆動回路9をさらに備えている。回路装置であるインバータ回路6は、第1直流母線11と第2直流母線12の間に接続されている。ここでは、回路装置として、インバータ回路6が例として挙げられているが、回路装置はインバータ回路6には限られず、第1直流母線11と第2直流母線12の間に印加される線間電圧が与えられる回路装置であれば、インバータ回路6以外のものであってもよい。
【0026】
過電圧保護回路5は、第1直流母線11と第2直流母線12の間に接続されている。過電圧保護回路5は、半導体スイッチ52を含んでいる。過電圧保護回路5は、半導体スイッチ52がオンしたときに、回路装置(
図1においてはインバータ回路6)を過電圧から保護する動作をする。駆動回路9は、半導体スイッチ52を駆動する。過電圧保護回路5は、過電圧保護を行わない所定電圧以下では半導体スイッチ52をオフして、電流を流さない。ここで、過電圧とは、回路装置が正常に動作することができない、または回路装置が壊れる電圧である。そのため、上記所定電圧は、過電圧よりも小さく、かつ安定時における第1直流母線11と第2直流母線12の間の線間電圧よりも大きい電圧となる。なお、過電圧から保護する対象は、コンデンサ4あるいは整流器2であってもよい。
【0027】
駆動回路9は、電源端子PTへの電力供給により駆動電力が供給される。駆動回路9は、電源端子PTへの電力供給開始にともなう直流電圧の上昇開始から閉回路CLに発生する共振の2分の1周期までの第1期間に、半導体スイッチ52をオンすることができる駆動可能状態となる構成である。閉回路CLは、電源200及びコンデンサ4及びインダクタ3を含む閉回路である。
図1に二点鎖線で閉回路CLが示されている。
【0028】
電源端子PTへの電力の供給が開始されると、
図1の電力供給装置1では、整流器2が直流電圧を、第1直流母線11と第2直流母線12に印加し始める。しばらく電源端子PTへの電力の供給を停止していたためにコンデンサ4に蓄えられている電荷量が少なくなっていた場合、電源端子PTへの電力の供給が開始されると、第1直流母線11と第2直流母線12の間の線間電圧Vbは、零または非常に小さな電圧から上昇を開始する。このように第1直流母線11と第2直流母線12に印加されている直流電圧が変化すると、閉回路CLにおいて直列に接続されているコンデンサ4の容量成分とインダクタ3のインダクタンス成分に起因する直列共振が発生する。コンデンサ4とインダクタ3以外にも、閉回路CLには容量成分、インダクタンス成分及び抵抗成分が存在するが、閉回路CLにコンデンサ4とインダクタ3が直列に配置されていることで直列共振は発生する。
【0029】
駆動回路9は、第1直流母線11と第2直流母線12から電力の供給を受けている。そのため、第1直流母線11と第2直流母線12の間の直流電圧が零または非常に小さくて零に近い場合には、駆動回路9は、半導体スイッチ52をオンすることができない。このような状態は、駆動可能状態ではないといえる。
【0030】
電源端子PTへの電力供給開始にともなって閉回路CLで発生する直列共振は、直流電圧の上昇開始から共振周期の2分の1周期でピークに達する。そのため、直流電圧の上昇開始から閉回路CLに発生する共振の2分の1周期までの第1期間に、駆動回路9が駆動可能状態となれば、直列共振によって重畳される電圧がピークに達する前に半導体スイッチ52をオンにすることができる。その結果、直流電圧が立ち上がるときの共振によって回路装置であるインバータ回路6が過電圧となる前に、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52をオンしてインバータ回路6に過電圧が掛かるのを抑制することができる。このように構成された電力供給装置1は、過電圧保護回路5による過電圧保護の信頼性を向上させることができる。
【0031】
なお、電源200が交流電源である場合、電源が立ち上がるタイミングの線間電圧位相及び電源周波数により、過電圧となりやすい条件がある。位相の条件については、交流電源電圧を整流した電圧が最大となる位相付近であり、単相交流電源では90°または270°付近となる。さらに、電源周波数が共振周波数と比較してより低い程、これらの位相付近において過電圧になりやすくなる。なお、三相交流電源では相電圧位相が30°,90°,150°,210°,270°,330°付近において過電圧になりやすくなる。
【0032】
(2)駆動回路9の動作
駆動回路9は、第1直流母線11と第2直流母線の間の線間電圧Vbを、安定時における線間電圧Vbよりも高い第1閾値電圧Vt1と比較して、線間電圧Vbが第1閾値電圧Vt1を超えたときに、半導体スイッチ52をオンする。ここで、安定時とは、閉回路CLで発生した共振による直流電圧の振動が収束している時である。
【0033】
(3)回路装置の例
回路装置は、第1直流母線11と第2直流母線12の間に接続され、半導体素子Qを含むインバータ回路6である。
【0034】
(4)コンデンサ4
コンデンサ4は、整流器2に起因して第1直流母線11と第2直流母線12生じる電圧変動を平滑化するような容量ではなく、インバータ回路6のスイッチングによって生じる電圧変動を抑制するような容量を有する。換言すると、コンデンサ4は、通常の電解コンデンサのような平滑コンデンサとしてではなく、インバータ回路6で生じる高周波成分を除去するために設けられる。そのため、コンデンサ4が持っている容量は小さい。コンデンサ4の容量の上限は、例えば、整流器2が整流する交流が単相である場合、コンデンサ4の両端電圧の最大値が最小値の2倍以上となるような容量である。また、整流器2が整流する交流が三相である場合、整流器2が整流する電源200の電源電圧をVac、インバータ回路6が出力する交流電力の最大電力をPmaxとすると、コンデンサ4の容量Cの上限は、C≦350×10-6×(Pmax/Vac2)で与えられる。
【0035】
但し、コンデンサ4の容量が非常に小さいと、インバータ回路6のスイッチングにより非常に大きな電圧リプルがコンデンサ4に発生する。そのため、電圧リプルをある程度の範囲に抑えるための容量は必要となる。目安としては、インバータ回路6のスイッチング動作により生じるコンデンサ電圧のリプルが、コンデンサ平均電圧の1/10以下となる程度の容量以上とする。
【0036】
(5)駆動回路9を駆動可能状態とするまでの時間の決め方
電源投入時に第1直流母線11と第2直流母線12の間の線間電圧を実測し、発生する共振現象の共振周期の2分の1を測定して、その測定された共振周期の2分の1よりも短い時間を、駆動回路9を駆動可能状態とするまでの時間と決定することができる。
【0037】
また、通常は、電源端子PTと電源200の間に寄生インダクタンス成分が存在する。このような寄生インダクタンス成分が存在する場合の共振周期は、インダクタ3とコンデンサ4のみを有する閉回路の共振周期よりも長くなる。そこで、インダクタ3が有するインダクタンスの値とコンデンサ4が有する容量の値から共振周期を計算して、計算された共振周期の2分の1以下となるように駆動回路9を駆動可能状態とするまでの時間を決定してもよい。このように決定すれば、上述のように実測により決定した時間よりも短い時間で駆動回路9を駆動可能状態とすることになるが、それは安全性を高める方向であるので問題はない。
【0038】
例えば、電源200が単相交流を電源端子PTに供給する場合の共振周期Tは、T=2π(LC)1/2の式で与えられる。
【0039】
例えば、電源200が三相交流を電源端子PTに供給する場合は、
図5のように整流器2の交流側に配置した各相のインダクタ3のインダクタンスをL1、L2、L3とする。電源投入時にコンデンサ4を充電する回路は、第1直流母線11と第2直流母線12の間の線間電圧が最大となる2相を電流経路とする閉回路になる。この2相のインダクタ3のインダクタンスがL1、L2であり、コンデンサ4の容量がCである場合、インダクタ3とコンデンサ4により発生する共振の周期Tは、T=2π((L1+L2)・C)
1/2で与えられる。
【0040】
<第2実施形態>
(6)全体構成
図6には、第2実施形態に係る電力供給装置1の構成の一例が示されている。
図6の電力供給装置1は、電源200から電力が供給される電源端子PT、直流電圧が印加される第1直流母線11及び第2直流母線12、インダクタ3、コンデンサ4、回路装置であるインバータ回路6、過電圧保護回路5、並びに駆動回路9を備える。
図6に示されている第2実施形態のこれらの構成は、
図1に示されている第1実施形態の構成と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0041】
第2実施形態の電力供給装置1は、第1電源回路301と第2電源回路302を備えている。第1電源回路301及び第2電源回路302は、第1直流母線11と第2直流母線12から直流電力の供給を受けて動作する回路である。第1電源回路301は、電源端子PTへの電力供給にともない、第1期間を含む所定期間に駆動回路9に電力を供給する。第2電源回路302は、所定期間後の第2期間に駆動回路9に電力を供給する。言い換えると、電力供給装置1は、所定期間までは第1電源回路301から駆動回路9に電力を供給し、所定期間後は第2電源回路302から駆動回路9に電力を供給するように切り替える。
【0042】
第1電源回路301は、駆動回路9に出力する第1出力電圧が、第1期間内に駆動可能状態を満足する電圧となるように構成されている。第2電源回路302は、駆動回路9に第2出力電圧を出力する。第1電源回路301は、第2電源回路302の第2出力電圧が駆動可能状態を満足する電圧となった後に停止する。第1電源回路301は、第2電源回路302よりも電力容量が小さい。第1電源回路301は、少なくとも駆動回路9を含む、半導体スイッチ52のオンオフを行うために必要な最小限の回路に電力を供給する専用電源回路である。それに対し、第2電源回路302は、駆動回路9に電力を供給するが、半導体スイッチ52のオンオフを行うために必要な回路以外にも電力を供給する多用途の電源回路である。第1電源回路301は、上述の必要最小限の回路に電力を供給する専用電源回路であるため、第1出力電圧を高速で立ち上げ易くなる。
【0043】
第2実施形態のように第1電源回路301を設けずに、第1電源回路301と第2電源回路302の機能を兼ねる1つの電源回路だけで構成することも可能である。しかし、その場合には、その一つの電源回路は、駆動回路9に出力する第1出力電圧が第1期間内に駆動可能状態を満足する電圧となるように構成され、且つ所定期間の後に駆動回路9以外の回路にも電力を供給するように構成される。そのため、その一つの電源回路は、大規模で高性能な消費電力の大きな回路にならざるを得なくなる。
【0044】
(7)詳細構成
(7-1)第1電源回路301と第2電源回路302の切り換え
図6の電力供給装置1は、第1電源回路301と第2電源回路302の切り換えを行うための電源切換部303を備えている。電源切換部303は、第2電源回路302の第2出力電圧が駆動可能状態を満足する電圧となった後に、第1電源回路301を停止させる停止信号を出力する。第1電源回路301は、電源切換部303から停止信号を受けると、第1出力電圧の出力を停止する。
【0045】
電源切換部303が第1電源回路301の停止のタイミングを決定するために、
図6の電力供給装置1は、電源回路電圧比較器304を備えている。第2電源回路302の第2出力電圧が電源切換部303及び電源回路電圧比較器304に与えられている。第2出力電圧が駆動可能状態を満足する電圧となるので、電源切換部303は第2電源回路302の第2出力電圧で動作することが可能である。電源回路電圧比較器304は、切換用閾値と第2出力電圧を比較する。第2出力電圧が切換用閾値以上になれば、第2出力電圧が駆動可能状態を満足する電圧になっている。電源回路電圧比較器304は、第2出力電圧が切換用閾値以上になると、第1電源回路301の第1出力電圧の出力を停止させるための信号を出力する。
【0046】
電力供給装置1は、電源回路電圧比較器304及び直流部電圧比較器306に電力を供給する比較器用電源回路305を備えている。比較器用電源回路305は、第1電源回路301と第2電源回路302から電力の供給を受ける。比較器用電源回路305は、初めに第1電源回路301の第1出力電圧で動作し、次に第2電源回路302の第2出力電圧で動作して、電源回路電圧比較器304に電力を供給する。そのため、電源回路電圧比較器304は、第1電源回路301の第1出力電圧を用いずに、第2電源回路302の第2出力電圧でのみで動作する場合に比べて、比較的速く動作可能になる。
【0047】
(7-2)駆動回路9のオンとオフの切り換え
図6に示されている電力供給装置1は、電圧検出回路8を備えている。電圧検出回路8は、第1直流母線11と第2直流母線12の間に接続されている。電圧検出回路8は、第1直流母線11と第2直流母線12の間に直列に接続されている抵抗81,82を有している。抵抗81,82は、第1直流母線11と第2直流母線12の間の線間電圧を分割する。線間電圧を分割した抵抗81の両端電圧が直流部電圧比較器306に出力される。直流部電圧比較器306は、安定時における線間電圧よりも高い第1閾値電圧Vt1と比較する。第1閾値電圧Vt1よりも線間電圧が高くなると、直流部電圧比較器306は、半導体スイッチ52をオンにするための信号を駆動回路9に出力する。線間電圧が第1閾値電圧Vt1以下のときには、直流部電圧比較器306は、半導体スイッチ52をオフにするための信号を駆動回路9に出力する。
【0048】
(7-3)過電圧保護回路5
過電圧保護回路5は、互いに直列に接続されている抵抗51と半導体スイッチ52とを備えている。抵抗51の一端が第1直流母線11に接続され、抵抗51の他端が半導体スイッチ52の一端に接続されている。半導体スイッチ52の他端は第2直流母線12に接続されている。半導体スイッチ52は、自在にオンオフをすることができる半導体スイッチであり、例えばトランジスタである。半導体スイッチ52に適用できるトランジスタとして、例えば、バイポーラトランジスタ(BJT)、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、電界効果型トランジスタ(FET)がある。半導体スイッチ52がNチャネル型のIGBTである場合、エミッタが第2直流母線12に接続され、コレクタが抵抗51の他端に接続される。絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのゲートには、駆動回路9から、過電圧保護回路5のオンとオフを切り替える電圧信号が出力される。過電圧保護回路5においては、主に電力を消費するのは抵抗51であるため、ツェナーダイオードを用いるような過電圧保護回路と比較すると、電力容量の小さい半導体素子を用いることができる。
【0049】
<第3実施形態>
(8)全体構成
図7には、第3実施形態に係る電力供給装置1の構成の一例が示されている。
図7の電力供給装置1は、電源200から電力が供給される電源端子PT、直流電圧が印加される第1直流母線11及び第2直流母線12、インダクタ3、コンデンサ4、回路装置であるインバータ回路6、過電圧保護回路5,並びに駆動回路9を備える。
図6に示されている第3実施形態のこれらの構成は、
図1に示されている第1実施形態の構成と同様である。
【0050】
図7に示されている第3実施形態の電力供給装置1は、電圧検出回路8、第1電源回路301、第2電源回路302、電源切換部303、電源回路電圧比較器304、比較器用電源回路305、直流部電圧比較器306を備えている。
図7に示されている第3実施形態のこれらの構成は、
図6に示されている第2実施委形態の構成と同様である。
【0051】
(8-1)第1直流母線11及び第2直流母線12への直流電力の供給
図7に示されている第1直流母線11及び第2直流母線12には、整流器2から直流電圧が印加されている。
図7に示されている整流器2は、電源200から三相交流で電力が供給されている。
図7の整流器2は、三相交流を整流する整流回路である。整流器2を構成している整流回路は、6つのダイオードD1からなる三相ブリッジ整流回路である。ここでは、整流器2として、三相ブリッジ整流回路を例に挙げているが、整流器2は、三相ブリッジ整流回路に限られるものではない。整流器2には、例えば、単相ブリッジ整流回路を用いることもできる。
【0052】
図7に示されている第1直流母線11には、インダクタ3が直列に挿入されている。インダクタ3は、第1直流母線11と第2直流母線12からなる直流リンクに生じる高調波を低減するために設けられている。なお、インダクタ3が挿入される位置については、第1実施形態で説明したものと同様に、他の箇所、例えば、インダクタ3が第2直流母線12に設けられてもよく、電源200と整流器2との間に設けられてもよい。
【0053】
図7の電力供給装置1の第1直流母線11においては、整流器2、インダクタ3、コンデンサ4の一端、電圧検出回路8の一端、過電圧保護回路5の一端、インバータ回路6の上アームUAの順に並んでいる。
図7の電力供給装置1の第2直流母線12においては、整流器2、コンデンサ4の他端、電圧検出回路8の他端、過電圧保護回路5の他端、インバータ回路6の下アームDAの順に並んでいる。第1直流母線11と第2直流母線12によって、コンデンサ4の一端と他端の間に直流電圧が印加されている。また、第1直流母線11と第2直流母線12によって、電圧検出回路8の一端と他端の間に直流電圧が印加され、過電圧保護回路5の一端と他端の間に直流電圧が印加され、インバータ回路6の上アームUAと下アームDAの間に直流電圧が印加される。
【0054】
(8-2)インバータ回路6
図7に示されているインバータ回路6は、第1直流母線11と第2直流母線12に供給される直流電力を変換して負荷100に三相交流電力を供給する。
図7に示されている負荷100は、誘導負荷である。
図7では、誘導負荷の例として、三相交流モータが示されている。
図7に示されているインバータ回路6は、第1直流母線11と第2直流母線12に供給される直流電力を三相交流電力に変換して三相交流電力を供給する回路である。
【0055】
上アームUAは、3つの半導体スイッチを備えている。上アームUAは、半導体スイッチとして、例えば3つのトランジスタを備えている。トランジスタは、例えば、
図7のようなNチャネル型の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタQup,Qvp,Qwpである。以下、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタをIGBTと略して記載する場合がある。IGBTQup,Qvp,Qwpは、それぞれ、コレクタが第1直流母線11に接続され、エミッタが負荷100に接続され、ゲートがゲートドライバ21に接続されている。IGBTQup,Qvp,Qwpには、それぞれ、還流ダイオードDup,Dvp,Dwpが逆並列に接続されている。換言すると、還流ダイオードDup,Dvp,DwpのそれぞれのカソードがIGBTQup,Qvp,Qwpのそれぞれのコレクタに接続され、還流ダイオードDup,Dvp,DwpのそれぞれのアノードがIGBTQup,Qvp,Qwpのそれぞれのエミッタに接続されている。
【0056】
下アームDAは、3つの半導体スイッチを備えている。下アームDAは、半導体スイッチとして、例えば3つのトランジスタを備えている。トランジスタは、例えば、
図2のように、Nチャネル型の絶縁ゲート型バイポーラトランジスタQun,Qvn,Qwnである。IGBTQun,Qvn,Qwnは、それぞれ、エミッタが第2直流母線12に接続され、コレクタが負荷100に接続され、ゲートがゲートドライバ21に接続されている。IGBTQun,Qvn,Qwnには、それぞれ、還流ダイオードDun,Dvn,Dwnが逆並列に接続されている。換言すると、還流ダイオードDun,Dvn,DwnのそれぞれのカソードがIGBTQun,Qvn,Qwnのそれぞれのコレクタに接続され、還流ダイオードDun,Dvn,DwnのそれぞれのアノードがIGBTQun,Qvn,Qwnのそれぞれのエミッタに接続されている。負荷100のU相に、IGBTQupのエミッタとIGBTQunのコレクタからの出力が与えられる。負荷のV相に、IGBTQvpのエミッタとIGBTQvnのコレクタからの出力が与えられる。負荷100のW相に、IGBTQwpのエミッタとIGBTQwnのコレクタからの出力が与えられる。
【0057】
(8-3)電圧検出回路8
電圧検出回路8は、第1直流母線11と第2直流母線12の間に生じる電圧を検出するための回路である。電圧検出回路8は、コンデンサ4とインバータ回路6との間において、第1直流母線11と第2直流母線12の間に生じる線間電圧を検出する。電圧検出回路8は、第1直流母線11と第2直流母線12の間に直列に接続されている抵抗81,82を含む回路である。電圧検出回路8は、抵抗81の両端の電圧を直流部電圧比較器306に出力する。直流部電圧比較器306は、第1閾値電圧Vt1と比較する。
【0058】
(8-4)過電圧保護回路5の基本構成
図7に示されている過電圧保護回路5は、基本的には、第1直流母線11と第2直流母線12の間に直列に接続されている半導体スイッチ52と抵抗51を含む回路である。
図2では、抵抗51の一端が第1直流母線11に接続されている。抵抗51の他端は半導体スイッチ52の一端に接続されている。半導体スイッチ52の他端は第2直流母線12に接続されている。
図7では、抵抗51が第1直流母線11に接続され、半導体スイッチ52が第2直流母線12に接続されているが、これら抵抗51と半導体スイッチ52の位置を入れ替えて過電圧保護回路5を構成することもできる。
図7の電力供給装置1においては、半導体スイッチ52は、Nチャネル型のIGBTである。コレクタが抵抗51の他端に接続されており、エミッタが第2直流母線12に接続され、ゲートが駆動回路9に接続されている。過電圧保護回路5では、半導体スイッチ52がオンしているときに第1電流経路CP1に電流が流れる。第1電流経路CP1に電流を流すことで、抵抗51によって電力を消費させ、過電圧からインバータ回路6を保護する。
【0059】
(8-4-1)過電圧保護回路5の詳細構成
図7に示されている過電圧保護回路5は、抵抗51に対して逆並列に接続されているダイオード53をさらに含んでいる。第1直流母線11にダイオード53のカソードが接続され、アノードが半導体スイッチ52の一端に接続されている。半導体スイッチ52がオフしたときに、第1電流経路(抵抗51と半導体スイッチ52)に流れていた電流が遮断される。過電圧保護回路5を含む回路にインダクタンス成分が存在していると、抵抗51の両端に電圧を発生させるような起電力が発生する。半導体スイッチ52がオフすることによって抵抗51の両端に大きな電圧が発生しないように、ダイオード53が抵抗51の両端に生じる電圧をクランプする。
図7では、過電圧保護回路5にダイオード53を設けているが、このようなダイオード53を省いた過電圧保護回路5を、電力供給装置1に用いてもよい。
【0060】
(8-4-2)過電圧保護回路5による過電圧保護
第1直流母線11と第2直流母線12の間に生じている線間電圧は、直流部電圧比較器306で、第1閾値電圧Vt1と比較される。線間電圧が第1閾値電圧Vt1を超えると、直流部電圧比較器306から駆動回路9に半導体スイッチ52をオンにする信号が送信される。過電圧保護回路5の半導体スイッチ52がオンになると、第1電流経路CP1(抵抗51と半導体スイッチ52)に電流が流れて過電圧が抑制され、インバータ回路6が保護される。線間電圧が第1閾値電圧Vt1よりも低い第2閾値電圧Vt2以下になると、半導体スイッチ52がオフになり、過電圧保護回路5は動作を停止する。
【0061】
(8-4-3)比較器用電源回路305
図8には、比較器用電源回路305の回路構成の一例が示されている。比較器用電源回路305は、抵抗R1、R2,R3とシャントレギュレータU1とを有している。後ほど説明するが、第1電源回路301及び第2電源回路302の少なくとも一方が動作しているとき、第1電源回路301及び第2電源回路302の少なくとも一方から抵抗R1の一端に電圧が印加される。例えば、第1直流母線11と第2直流母線12に直流電圧の印加が開始されると、先に第1電源回路301から第1出力電圧が印加され、次に第2電源回路302から第2出力電圧が印加される。シャントレギュレータU1のカソードに抵抗R1の他端が接続され、アノードに共通線COMに接続されている。共通線COMの電位は、第2直流母線12と同じ電位になっている。また、シャントレギュレータU1のリファレンスには、抵抗R1の他端と共通線COMの間に互いに直列に接続されている抵抗R2,R3により分割された電圧が与えられる。シャントレギュレータU1の両端(カソードとアノードの間)には、一定の電圧が発生する。シャントレギュレータU1の両端に発生する定電圧の値は、抵抗R2,R3で決定される。抵抗R1の他端とシャントレギュレータU1のカソードの接続点から電源回路電圧比較器304と直流部電圧比較器306に駆動用の電圧が出力される。なお、比較器用電源回路には、シャントレギュレータの代わりにツェナーダイオード、三端子レギュレータ等を用いてもよい。
【0062】
(8-4-4)電圧検出回路8
図8には、電圧検出回路8の回路構成の一例が示されている。
図8に示されている電圧検出回路8は、既に説明した抵抗81,82のほかに、コンデンサC1を備えている。コンデンサC1は、抵抗81,82の接続点と第2直流母線12の間に接続されている。コンデンサC1は、例えば、抵抗81,82の接続点に生じる高周波ノイズを除去する機能を有する。
【0063】
(8-4-5)直流部電圧比較器306
図8には、直流部電圧比較器306の回路構成の一例が示されている。
図8に示されている直流部電圧比較器306は、オペアンプU2を用いたヒステリシスコンパレータである。なお、ここでは、オペアンプU2を用いる例について説明するが、オペアンプU2に代えてコンパレータを用いて直流部電圧比較器306を構成することもできる。直流部電圧比較器306は、オペアンプU2と、抵抗R5,R6,R7,R8,R9と、コンデンサC2,C3とを備えている。抵抗R5と抵抗R9の一端がシャントレギュレータU1と抵抗R1の接続点に接続されている。言い換えると、抵抗R5,R9の一端に、比較器用電源回路305から一定の電圧(比較器用電源電圧)が印加される。抵抗R5,R6は、互いに直列に接続されており、抵抗R5の他端に抵抗R6の一端が接続され、抵抗R6の他端が共通線COMに接続されている。抵抗R5,R6の接続点とオペアンプU2の非反転入力端子(+)の間に抵抗R7が接続されている。その結果、比較器用電源回路305の出力電圧を抵抗R5,R6で分割された電圧が、非反転入力端子(+)に与えられる。
【0064】
また、オペアンプU2の非反転入力端子(+)と共通線COMの間にコンデンサC2が接続されている。さらに、オペアンプU2の反転入力端子(-)に抵抗81,82の接続点が接続されている。オペアンプU2の出力端子と非反転入力端子(+)との間に抵抗R8が接続され、抵抗R8と並列にコンデンサC3が接続されている。オペアンプU2の出力端子には、抵抗R9の他端が接続されている。なお、コンデンサC3は、オペアンプU2の非反転入力端子(+)の電圧がヒステリシス動作により変化する際、電圧の過渡的な波形を調整するためのものであり、必要に応じて有無を選択する。
【0065】
直流部電圧比較器306は、非反転入力端子(+)の電圧が抵抗81,82の接続点の電圧よりもさらに所定値だけ高くなると、ハイレベルの信号を駆動回路9に出力する。また、直流部電圧比較器306は、非反転入力端子(+)の電圧が抵抗81,82の接続点の電圧よりもさらに所定値だけ低くなると、ローレベルの信号を駆動回路9に出力する。非反転入力端子(+)の電圧よりも所定値だけ高い電圧が、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52をオンするか否かを決定するための第1閾値電圧Vt1になる。非反転入力端子(+)の電圧よりも所定値だけ低い電圧が、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52をオフするか否かを決定するための第2閾値電圧Vt2になる。
【0066】
(8-4-6)電源切換部303
図9には、電源切換部303の回路構成の一例が示されている。
図9に示されている電源切換部303は、抵抗R10と、フォトカプラPh1と、スイッチ部SW1とを備えている。電源切換部303では、抵抗R10とフォトカプラPh1の発光ダイオードとスイッチ部SW1が、第2電源回路302の出力端子と共通線COMの間に直列に接続されている。スイッチ部SW1には、電源回路電圧比較器304が出力する信号が与えられている。電源回路電圧比較器304の出力信号は、電源切換部303に停止信号を出力させるための信号である。
【0067】
電源回路電圧比較器304の出力信号がハイレベルになると、スイッチ部SW1がオンして、抵抗R10とフォトカプラPh1の発光素子に電流が流れる。電源回路電圧比較器304の出力信号がローレベルになるとスイッチ部SW1オフして、発光素子には電流が流れない。発光素子に電流が流れるとフォトカプラPh1の受光素子(2つの出力端子の間)が導通する。フォトカプラPh1の受光素子が導通することにより、第1電源回路301が停止する。
【0068】
(8-4-7)第1電源回路301
図9には、第1電源回路301の回路構成の一例が示されている。
図9に示されている第1電源回路301は、定電流回路307と、動作電圧制限用のツェナーダイオードZ1と、コンデンサC4と、ゲート駆動電源用のツェナーダイオードZ2とを備えている。定電流回路307にはフォトカプラPh1の出力端子が接続されている。フォトカプラPh1が導通しているときには、定電流回路307が動作せず、フォトカプラPh1が非導通のときに定電流回路307が動作し、第1電源回路301から第1出力電圧が出力される。
【0069】
第1直流母線11と第2直流母線12の間に、定電流回路307とツェナーダイオードZ1とツェナーダイオードZ2が直列に接続されている。ツェナーダイオードZ2には、コンデンサC4が並列に接続されている。ツェナーダイオードZ1,Z2はカソードがアノードに対して高電位となるように接続されている。定電流回路307は、ツェナーダイオードZ1,Z2に流れる電流を制限する電流制限回路である。定電流回路307とツェナーダイオードZ1,Z2は互いに直列に接続されている。定電流回路307が動作しているときに、ツェナーダイオードZ1のアノードとツェナーダイオードZ2のカソードの接続点から第1出力電圧が出力される。ツェナーダイオードZ2のカソードが駆動回路9に接続されている。
【0070】
ここで、ツェナーダイオードZ2の降伏電圧VZ2が駆動可能状態となる第1電源回路の第1出力電圧となる。電源投入時のコンデンサC4の電圧が零である場合、コンデンサC4の電圧がVZ2となるまでに要する時間Δt1は、定電流回路の電流をIC1、コンデンサC4の静電容量をCC4とすると、Δt1=CC4・VZ2/IC1の関係で表される。そのため、静電容量CC4を駆動回路に必要な最小限の容量とすることで、第1出力電圧の起動時間または必要な電流を小さくすることができる。
【0071】
(8-4-7-1)定電流回路307の一構成例
図9には、定電流回路307の回路構成の一例が示されている。
図9に示されている定電流回路307は、抵抗R11,R12と、シャントレギュレータU3と、MOSトランジスタTr1と、ダイオードD2とを備えている。抵抗R11の一端が第1直流母線11に接続され、抵抗R11の他端にシャントレギュレータU3のカソードが接続されている。シャントレギュレータU3のアノードがツェナーダイオードZ1のカソードに接続されている。MOSトランジスタTr1のドレインが第1直流母線11に接続され、MOSトランジスタのソースが抵抗R12の一端に接続されている。抵抗R12の他端は、シャントレギュレータU3のアノード(ツェナーダイオードZ1のカソード)に接続されている。シャントレギュレータU3のリファレンスは、MOSトランジスタTr1のソースに接続されている。MOSトランジスタTr1のゲートは、シャントレギュレータU1のアノードに接続されている。ダイオードD2のカソードはMOSトランジスタTr1のドレインに接続され、ダイオードD2のアノードはMOSトランジスタTr1のソースに接続されている。フォトカプラPh1の2つの出力端子は、シャントレギュレータU3のアノードとカソードに接続されている。
【0072】
フォトカプラPh1の2つの出力端子が非導通の状態では、シャントレギュレータU3のアノードとカソードの間に生じる電圧がMOSトランジスタTr1のゲート-ソース間に印加され、MOSトランジスタTr1がオン状態となる。導通状態となっているMOSトランジスタTr1のドレイン-ソース間に一定の電流が流れ、ドレイン-ソース間に流れる電流は、抵抗R12を通して、ツェナーダイオードZ1のカソードに流れ込む。
【0073】
フォトカプラPh1の2つの出力端子が導通状態になると、シャントレギュレータU3のアノードとカソードの間には電圧を生じないので、MOSトランジスタTr1がオフ状態になる。そのため、MOSトランジスタTr1を通る定電流が遮断される。抵抗R1とフォトカプラPh1の出力端子を通して、ツェナーダイオードZ1のカソードが第1直流母線11に接続される。しかし、抵抗R11の抵抗値は、抵抗R12の抵抗値に比べて非常に大きく、抵抗R11を通して流れる電流は極めて小さい。そのため、ツェナーダイオードZ2の両端から供給される第1電源回路301の出力電力も極めて小さくなり、動作停止状態となる。
【0074】
(8-4-7-2)第1電源回路301の他の構成例
図10には、第1電源回路301の回路構成の他の例が示されている。
図10に示されている抵抗14と、ツェナーダイオードZ1と、コンデンサC4と、ゲート駆動電源用のツェナーダイオードZ2とを備えている。第1直流母線11と第2直流母線12の間に、抵抗R14とツェナーダイオードZ1とツェナーダイオードZ2が直列に接続されている。ツェナーダイオードZ2には、コンデンサC4が並列に接続されている。ツェナーダイオードZ1,Z2は逆方向に接続されている。抵抗14は、ツェナーダイオードZ1,Z2に流れる電流を制限する電流制限素子である。抵抗14とツェナーダイオードZ1,Z2は互いに直列に接続されている。ツェナーダイオードZ1のアノードとツェナーダイオードZ2のカソードの接続点から第1出力電圧が出力される。ツェナーダイオードZ2のカソードが駆動回路9に接続されている。
【0075】
(8-4-7-3)第1電源回路301の他の構成例
図11には、第1電源回路301の回路構成の他の例が示されている。
図11に示されている第1電源回路301は、
図9に示されている第1電源回路301と同様に、定電流回路307と、ツェナーダイオードZ1と、コンデンサC4と、ゲート駆動電源用のツェナーダイオードZ2とを備えている。
図11の第1電源回路301が、
図9の第1電源回路301と異なる点は、シャントレギュレータU3に代えて、ツェナーダイオードZ3を用いている点である。ツェナーダイオードZ3のカソードが抵抗R11の他端とMOSトランジスタTr1のゲートに接続されている。ツェナーダイオードZ3のアノードが抵抗R12の他端とツェナーダイオードZ1のカソードに接続されている。ツェナーダイオードZ3の両端に生じる定電圧によってMOSトランジスタTr1と抵抗R12を通って定電流が流れる。電源切換部303のフォトカプラPh1の2つの出力端子が導通状態になると、定電流回路307が動作を停止し、出力端子が非導通状態のときに定電流回路307が動作するのは、
図9の第1電源回路301と同様である。
【0076】
なお、
図12、
図13及び
図14に示されているように、第1電源回路301は、
図9、
図10及び
図11に示した第1電源回路301から、ツェナーダイオードZ1を取り外してツェナーダイオードZ1を取り外した箇所を配線により接続してもよい。ただし、ツェナーダイオードZ1が無い場合には、ツェナーダイオードZ1がある場合と比較して、直流電圧のより低い状態から第1電源回路301に電流が流れることになり、第1電源回路301の消費電力が大きくなる。
図12、
図13及び
図14に示されている第1電源回路301を構成する各部について、
図9、
図10及び
図11に示した第1電源回路301と同じ符号で示した部分は同じものである。
【0077】
(8-4-8)第2電源回路302
図9には、第2電源回路302の回路構成の一例が示されている。
図9に示されている第2電源回路302は、ダイオードD3と、抵抗R13と、電解コンデンサC5と、スイッチング電源SMとを備えている。ダイオードD3と抵抗R13と電解コンデンサC5が、第1直流母線11と第2直流母線12の間に直列に接続されている。ダイオードD3と抵抗R13と電解コンデンサC5は、スイッチング電源の一次側回路を構成している。ダイオードD3のアノードが第1直流母線11に接続され、ダイオードD3のカソードが抵抗R13の一端に接続されている。抵抗13の他端が電解コンデンサC5の一端に接続され、電解コンデンサC5の他端が第2直流母線12に接続されている。電解コンデンサC5の両端に生じる電圧がスイッチング電源SMに与え、スイッチング電源SMは、第2直流母線12と出力端子SMoとの間に第2出力電圧を発生させる。なお、ダイオードD3については、直流電圧の変動がスイッチング電源SMの動作にとって問題とならない場合は、ダイオードD3を省いて抵抗R13を第1直流母線11に直接接続してもよい。また、抵抗R13は、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタでもよい。
【0078】
(8-4-8-1)スイッチング電源SM
図15には、スイッチング電源SMの回路構成の一例が示されている。
図15に示されているスイッチング電源SMは、フライバックコンバータである。スイッチング電源SMは、トランスT1と制御回路CC1とスイッチ部SW2とダイオードD5と電解コンデンサC6とを備えている。トランスT1の一次側は、電解コンデンサC5とスイッチ部SW2を含む閉回路が形成されている。スイッチ部SW2をオンオフすることで、パルス電圧を生じさせて、トランスの2次側に交流電圧を生じさる。
【0079】
図15には、半導体スイッチ52をオンオフするために必要な電源出力のみをトランスT1の2次側に示しているが、インバータ回路6用のゲートドライバ401等、過電圧保護に必要な回路以外への電源として、複数の電源出力を持たせても良い。
【0080】
(8-4-9)第1電源回路301と第2電源回路302の出力の選択
図9には、第1電源回路301と第2電源回路302の出力を選択するための回路構成の一例が示されている。第1電源回路301と第2電源回路302の出力を選択するための回路は、ダイオードD4で構成されている。ダイオードD4は、第2電源回路302の第2出力電圧が印加されるアノードと、第1電源回路301の第1出力電圧が印加されるカソードとを有する。駆動回路9は、ダイオードD4のカソードから電力の供給を受ける。1つのダイオードD4という簡単な構成で第1電源回路301と第2電源回路302の出力を選択して駆動回路9に与えるため、第1電源回路301の第1出力電圧と第2電源回路302の第2出力電圧は、次のように設定されている。第1電源回路301が動作しているときには、第1電源回路の第1出力電圧が第2電源回路302の第2出力電圧よりも大きくなるように設定されている。そのため、第1電源回路301が動作しているときには、ダイオードD4が逆バイアスされるので、駆動回路9に第1電源回路301の第1出力電圧が印加される。第1電源回路301の動作が停止しているとき、換言すると定電流回路307が停止しているときには、第2電源回路302の第2出力電圧の方が第1電源回路301の第1出力電圧よりも大きくなる。そのため、第1電源回路301の動作が停止しているときには、ダイオードD4が順バイアスされるので(第2出力電圧が第1出力電圧より大きくなるので)、駆動回路9に第2電源回路302の第2出力電圧が印加される。
【0081】
なお、電源回路の選択については、
図16に示されているように、第1電源回路301と第2電源回路302を切り替えるセレクトスイッチSSWにより行ってもよい。セレクトスイッチSSWは、電源が投入されていないときには、第1電源回路301と駆動回路9を接続する。また、セレクトスイッチSSWは、第2電源回路302より駆動回路9に電力を供給する期間は、第2電源回路302と駆動回路9を接続する。セレクトスイッチSSWの切り替えに用いる電源は、第2電源回路302の第2出力電圧でもよいし、第2電源回路302の他の出力電圧でもよい。ただし、セレクトスイッチSSWで第1電源回路301と第2電源回路302を切り替えるように構成した場合には、第2電源回路302と駆動回路9を接続しているときにも第1電源回路301が動作するため、第1電源回路301を停止した場合と比較して、損失が大きくなる。
【0082】
トランスT1の2次側には、ダイオードD5と電解コンデンサC6を含む閉回路が形成されている。ダイオードD5によってトランスT1の二次側に発生する交流電圧を半波整流して、電解コンデンサC6で平滑にする。電解コンデンサC6の両端の電圧が、第2電源回路302の第2出力電である。
【0083】
(8-4-10)コントローラ400とゲートドライバ401
図7に示されて電力供給装置1は、コントローラ400とゲートドライバ401とを備えている。ゲートドライバ401は、IGBTQup,Qvp,Qwp,Qun,Qvn,Qwnのゲートにドライブ信号を出力する回路である。コントローラ400は、既に説明した電源回路電圧比較器304と、直流部電圧比較器306と、マイクロコンピュータ320を含んでいる。ゲートドライバ401は、マイクロコンピュータ320によって制御される。また、マイクロコンピュータ320は駆動回路9を制御する。マイクロコンピュータ320は、制御演算装置と記憶装置とを備える。制御演算装置には、CPU等のプロセッサを使用できる。制御演算装置は、記憶装置に記憶されているプログラムを読み出し、このプログラムに従って所定の装置・回路の制御、データの演算を行う。さらに、制御演算装置は、プログラムに従って、演算結果を記憶装置に書き込んだり、記憶装置に記憶されている情報を読み出したりすることができる。
【0084】
(8-4-11)駆動回路9
図17には、駆動回路9の回路構成の一例が示されている。
図17に示されている駆動回路9は、ゲートドライバ集積回路U4と、抵抗R18,R19とを備えている。ゲートドライバ集積回路U4のVDD端子には、第1電源回路301の第1出力電圧または第2電源回路302の第2出力電圧が印加される。ゲートドライバ集積回路U4のGND端子は、共通線COMに接続されている。
【0085】
ゲートドライバ集積回路U4の出力端子は、抵抗R18の一端に接続され、抵抗R18の他端が半導体スイッチ52に接続されている。また、抵抗R18の他端と共通線COMの間には抵抗R19が接続されている。直流部電圧比較器306のオンオフ信号がローレベルのときには、ゲートドライバ集積回路U4の出力端子がハイレベルになり、半導体スイッチ52がオンする。直流部電圧比較器306のオンオフ信号がハイレベルのときには、ゲートドライバ集積回路U4の出力端子がローレベルになり、半導体スイッチ52がオフする。なお、ゲートドライバ集積回路U4の出力端子がハイレベルであるとき、出力電圧はおおよそVDD端子と同じ電圧となる。そのため、半導体スイッチ52をオンするときのゲート電圧は、おおよそVDD端子と同じ電圧となる。
【0086】
(8-4-12)電源切換部303が出力する停止信号
図18には、電源切換部303が出力する停止信号と、第1電源回路301の第1出力電圧と、第2電源回路302の第2出力電圧とが示されている。なお、
図9及び
図17に示されているように、第1電源回路301の出力と第2電源回路302の出力がダイオードD4を介して接続されている。そのため、第1電源回路301が動作を停止しても、第1電源回路301の第1出力電圧は、第2電源回路302の第1出力電圧よりも低くならない。
【0087】
図18において、時刻t1に電源が投入されて電源200から電源端子PTへの電力の供給が開始されている。電源200から電源端子PTへの電力供給の開始に伴って、第1電源回路301の第1出力電圧及び第2電源回路302の第2出力電圧が上昇を開始する。第1電源回路301の第1出力電圧は、急激に立ち上がり、時刻t2に、駆動回路9を、半導体スイッチ52をオンすることができる駆動可能状態にできる電圧になる。しかし、このときはまだ、第2電源回路302の第2出力電圧は、駆動回路9を駆動可能状態にできる電圧には達していない。しばらくして時刻t3になると、第2電源回路302の第2出力電圧は、駆動回路9を駆動可能状態にできる電圧には達する。電源切換部303は、時刻t3より後の第2出力電圧が駆動回路9を駆動可能状態にできる電圧を十分超えた時刻t4に停止信号を第1電源回路301に出力する。
【0088】
第3実施形態では、ゲートドライバ集積回路U4のVDD端子に、第1電源回路301の第1出力電圧または第2電源回路302の第2出力電圧が与えられ、ゲートドライバ集積回路U4のハイレベルの電圧として出力される。さらに、ゲートドライバ集積回路U4から出力された電圧は、半導体スイッチ52のゲートに印可される。半導体スイッチ52がNチャネル型のIGBTである場合、ゲートに印可される電圧は、IGBTがオンすることで流れたコレクタ電流によりコレクタ-エミッタ間の電圧が過大にならない大きさでなければならない。ゲート電圧が不足すると、コレクタ-エミッタ間の電圧が大きくなり、損失が大きくなることで半導体スイッチの熱破壊につながる。そのため、第3実施形態では、駆動回路9を駆動可能状態にできる電圧とは、半導体スイッチを熱破壊することなくオンできる電圧と言い換えることができる。
【0089】
<第4実施形態>
(9)全体構成
図19には、第4実施形態に係る電力供給装置1の構成の一例が示されている。
図19の電力供給装置1は、電源200から電力が供給される電源端子PT、直流電圧が印加される第1直流母線11及び第2直流母線12、インダクタ3、コンデンサ4、回路装置であるインバータ回路6、過電圧保護回路5、並びに駆動回路9を備える。第4実施形態の電力供給装置1の構成において、電源200から電力が供給される電源端子PT、直流電圧が印加される第1直流母線11及び第2直流母線12、インダクタ3、コンデンサ4並びにインバータ回路6については、第1実施形態の電力供給装置1と同様に構成されるので、ここではこれらについての説明を省略する。
【0090】
(10)詳細構成
(10-1)過電圧保護回路5
図19に示されている第4実施形態の過電圧保護回路5は、抵抗R20とNPN型のバイポーラトランジスタ(BJT)Tr2とを備えている。過電圧保護回路5は、抵抗R20とバイポーラトランジスタTr2の直列回路である。抵抗R20の一端は第1直流母線11に接続され、抵抗R20の他端はバイポーラトランジスタTr2のコレクタに接続されている。バイポーラトランジスタTr2のエミッタは第2直流母線12に接続され、ベースはツェナーダイオードZ4のアノードに接続されている。
図19の過電圧保護回路5では、バイポーラトランジスタTr2が半導体スイッチ52である。
【0091】
(10-2)駆動回路9
図19に示されている第4実施形態の駆動回路9は、抵抗R21とツェナーダイオードZ4とを備えている。駆動回路9は抵抗R21とツェナーダイオードZ4の直列回路である。抵抗R21の一端は第1直流母線11に接続され、抵抗R21の他端はツェナーダイオードZ4のカソードに接続されている。ツェナーダイオードZ4のアノードが過電圧保護回路5の出力端子になる。駆動回路9の出力端子は、バイポーラトランジスタTr2のベースに接続されている。
【0092】
ツェナーダイオードZ4のツェナー電圧が、過電圧保護時に半導体スイッチ52であるバイポーラトランジスタTr2をオンするしきい値電圧になる。駆動回路9の抵抗R21は、過電圧保護時に半導体スイッチ52のバイポーラトランジスタTr2に必要な電流が流れるように選定される。
【0093】
直流部(第1直流母線11及び第2直流母線12)の電圧上昇に応じて、バイポーラトランジスタTr2を閉回路CLの1/2共振周期までに駆動可能状態にすることができ、過電圧保護を実施できる。また、電流制限素子である抵抗R21は、
図9、
図11に示した定電流回路307に置き換えてもよい(
図20参照)。
図20の定電流回路307において、
図9に示した定電流回路307と同じ符号で示した部分は同じものである。さらに、安定時には第2電源回路302を用いた駆動回路9を設けることで、消費電力を抑えた駆動が可能となる(
図21参照)。
図21の駆動回路9において、
図9に示した電源切換部303及び定電流回路307と同じ符号で示した部分は同じものである。バイポーラトランジスタTr2には、ダイオードD6を通して第2電源回路302から電圧が与えられる。また、抵抗R10の一方の端子には第2電源回路302が接続され、抵抗R10の他方の端子にはフォトカプラPh1が接続されている。この場合、電流制限素子(抵抗R20)または定電流回路307とツェナーダイオードZ4により駆動電流を供給する回路が第1電源回路301と同様の機能を果たす。
【0094】
(11)特徴
(11-1)
第1実施形態から第3実施形態の電力供給装置1では、駆動回路9が、第1直流母線11と第2直流母線12に印加される直流電圧の上昇開始から閉回路CL(
図1参照)に発生する共振の2分の1周期までの第1期間に、半導体スイッチ52をオンすることができる駆動可能状態となる。電力供給装置1では、このような駆動回路9によって過電圧保護回路5が駆動される。第1直流母線11と第2直流母線12に印加されている直流電圧が立ち上がるときの共振によって回路装置であるインバータ回路6が過電圧となる前に、過電圧保護回路5の半導体スイッチ52をオンすることができる。その結果、インバータ回路6に過電圧が掛かるのを抑制し、電力供給装置1に対する過電圧保護の信頼性を向上させることができる。
【0095】
(11-2)
第2実施形態または第3実施形態の電力供給装置1は、所定期間後の第2期間に駆動回路9に電力を供給する第2電源回路302を備えている。
図18においては、第2電源回路302の第2出力電圧が駆動可能状態を満足する電圧となった後の時刻t4に、第1電源回路301が停止する。
図18において、所定期間は、時刻t2から時刻t4までの期間である。時刻t4以降が第2期間であり、時刻t4以降は、実質的に、第2電源回路302が駆動回路9に電力を供給している。第2電源回路302の第2出力電圧が駆動可能状態を満足する電圧となった後に第1電源回路301を停止することで、第1電源回路301での消費電力を削減することができる。特に、
図9のような構成を有する電力供給装置1では、第1電源回路301の消費電力を必要最小限にとどめることができる。
【0096】
(11-3)
第2実施形態または第3実施形態の電力供給装置1では、駆動回路9の専用の第1電源回路301の電力容量は、第2電源回路の電力容量よりも小さい。第1電源回路301の電力容量を小さくすることで、第1電源回路301の第1出力電圧が駆動可能状態を満足する電圧になるまでの期間を短くすることができている。
【0097】
(11-4)
第3実施形態の電力供給装置1では、
図9に示されているようにダイオードD4を介して第1電源回路301の出力と第2電源回路302の出力が接続されているので、第1期間において第1電源回路301が駆動可能状態となるまでの期間の長さが、第2電源回路302の出力側の電解コンデンサC6(
図15参照)の影響を受けないようにできる。具体的には、第3実施形態の電力供給装置1は、コンデンサC4に加えて電解コンデンサC6を充電することによる第1電源回路301の出力電圧の立ち上がり時間増加を防ぐことができる。
【0098】
(12)変形例
(12-1)変形例A
上記第3実施形態では、
図10に示されているように、電流制限素子に抵抗R14を用いる場合について説明した。しかし、電流制限素子は、抵抗には限られない。電流制限素子には、例えば、バリスタまたはPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタを用いることができる。
【0099】
(12-2)変形例B
上記第3実施形態では、
図9及び
図11に示されているように、電流制限回路に定電流回路307を用いる場合について説明した。しかし、電流制限回路は、定電流回路には限られない。電流制限回路には、例えば、電流クランプ回路がある。
【0100】
(12-3)変形例C
上記第1実施形態から第3実施形態では、回路装置としてインバータ回路6を例に挙げて説明した。しかし、回路装置は、インバータ回路6には限られない。回路装置には、例えば、DC-DCコンバータがある。この場合、負荷は直流負荷となる。
【0101】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0102】
1 電力供給装置
2 整流器
3 インダクタ
4 コンデンサ
5 過電圧保護回路
6 インバータ回路(回路装置の例)
9 駆動回路
11 第1直流母線
12 第2直流母線
52 半導体スイッチ
301 第1電源回路
302 第2電源回路
307 定電流回路(電流制限回路の例)
D4 ダイオード
PT 電源端子
R14 抵抗(電流制限素子の例)
Z1,Z2 ツェナーダイオード
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が印加される第1直流母線(11)及び前記第1直流母線よりも低電位の第2直流母線(12)と、前記第1直流母線と前記第2直流母線の間に接続されているコンデンサ(4)とを備え、前記第1直流母線と前記第2直流母線に供給される電力を変換して負荷に電力を供給する電力供給装置であって、
電源から電力が供給される電源端子(PT)と、
前記電源端子から前記第1直流母線及び前記第2直流母線までの配線経路に挿入されているインダクタ(3)と、
前記第1直流母線と前記第2直流母線の間に接続されている回路装置(6)と、
前記第1直流母線と前記第2直流母線の間に接続され、半導体スイッチ(52)を含み、前記半導体スイッチがオンしたときに前記回路装置を過電圧から保護する動作をする過電圧保護回路(5)と、
前記半導体スイッチを駆動する駆動回路(9)と
前記電源端子への電力供給にともない、前記第1期間を含む所定期間に前記駆動回路に電力を供給する第1電源回路(301)と、
前記所定期間後の第2期間に前記駆動回路に電力を供給する第2電源回路(302)と、
を備え、
前記駆動回路は、前記電源端子への電力供給により駆動電力が供給され、前記電源端子への電力供給開始にともなう前記直流電圧の上昇開始から前記電源及び前記コンデンサ及び前記インダクタを含む閉回路に発生する共振の2分の1周期までの第1期間に、前記半導体スイッチをオンすることができる駆動可能状態となり、
前記第1電源回路は、前記第1期間内に前記第1電源回路の第1出力電圧が前記駆動可能状態を満足する電圧となり、
前記第2電源回路は、前記第1期間以降かつ所定期間終了までに前記第2電源回路の第2出力電圧が前記駆動可能状態を満足する電圧となる、
電力供給装置(1)。
【請求項2】
前記駆動回路は、前記第1直流母線と前記第2直流母線の間の線間電圧を、安定時における前記線間電圧よりも高い閾値電圧と比較して、前記線間電圧が前記閾値電圧を超えたときに、前記半導体スイッチをオンする、
請求項1に記載の電力供給装置(1)。
【請求項3】
前記回路装置は、前記第1直流母線と前記第2直流母線の間に接続され、半導体素子を含むインバータ回路(6)である、
請求項1または請求項2に記載の電力供給装置(1)。
【請求項4】
前記第1電源回路は、前記第2電源回路の前記第2出力電圧が前記駆動可能状態を満足する電圧となった後に停止する、
請求項1に記載の電力供給装置(1)。
【請求項5】
前記第1電源回路は、前記第2電源回路よりも電力容量が小さい、
請求項1に記載の電力供給装置(1)。
【請求項6】
前記第2電源回路の前記第2出力電圧が印加されるアノードと、前記第1電源回路の前記第1出力電圧が印加されるカソードとを有するダイオード(D4)を備え、
前記駆動回路は、前記ダイオードの前記カソードから電力の供給を受けるように構成されている、
請求項1に記載の電力供給装置(1)。
【請求項7】
前記第1電源回路は、ツェナーダイオード(Z2)と電流制限素子(R14)または電流制限回路(307)とを含み、
前記電流制限素子または前記電流制限回路は、前記ツェナーダイオードに流れる電流を制限する、
請求項1に記載の電力供給装置(1)。
【請求項8】
前記電流制限回路は、定電流回路(307)である、
請求項7に記載の電力供給装置(1)。
【請求項9】
前記電源は交流電源であり、前記電源端子から前記第1直流母線及び前記第2直流母線までの配線経路に該交流電源の交流電圧を前記直流電圧に整流する整流器(2)が挿入されている、
請求項1または請求項2に記載の電力供給装置(1)。