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特開2024-146817二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物、二酸化炭素吸収性ゲル、二酸化炭素吸収体、及び二酸化炭素吸収装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146817
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物、二酸化炭素吸収性ゲル、二酸化炭素吸収体、及び二酸化炭素吸収装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20241004BHJP
   C09K 23/52 20220101ALI20241004BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20241004BHJP
   C07D 233/58 20060101ALI20241004BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20241004BHJP
   C08F 220/54 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C09K3/00 103L
C09K23/52
B01J13/00 D
C07D233/58
C08F220/18
C08F220/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043450
(22)【出願日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2023058307
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹田 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】満保 章泰
【テーマコード(参考)】
4D077
4G065
4J100
【Fターム(参考)】
4D077AA10
4D077BA02
4D077BA07
4D077DC39X
4D077DC39Y
4D077DD18X
4D077DD19X
4G065BA09
4G065CA14
4G065DA10
4G065EA01
4G065EA02
4J100AL01P
4J100AL08P
4J100AL10P
4J100AM14Q
4J100AM15Q
4J100AM17Q
4J100AM19Q
4J100BA02P
4J100BA08P
4J100BC54P
4J100CA03
4J100DA01
4J100EA03
4J100FA03
4J100FA19
4J100GC26
4J100JA15
(57)【要約】
【課題】簡便な手順でイオン液体が漏洩しないゲルを形成することができ、保存安定性が高いゲル形成用組成物を提供する。
【解決手段】グリシジル基を有する化学式量が500以下である(メタ)アクリル酸エステル(a1)、及び化学式量が500以下である(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)を必須構成単量体とする共重合体(A)と、アニオン及び有機カチオンからなる常温溶融塩(B)とを含む二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物であり、前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)は、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、N,N-二置換(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミドである二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリシジル基を有する化学式量が500以下である(メタ)アクリル酸エステル(a1)、及び化学式量が500以下である(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)を必須構成単量体とする共重合体(A)と、
アニオン及び有機カチオンからなる常温溶融塩(B)とを含み、
前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)は、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、及びN,N-二置換(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミドである二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物。
【請求項2】
前記有機カチオンが一般式(1)で表されるカチオンである請求項1に記載の二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物。
【化1】

[一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基を表し、R、R及びRは、水素原子を表す。]
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル(a1)が、グリシジル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルからなる群より選ばれる一種以上であり、前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)が、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN-ベンジル(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる一種以上である請求項1に記載の二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステル(a1)及び前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)の合計重量を基準とした前記(メタ)アクリル酸エステル(a1)の重合割合が5~30重量%である請求項1に記載の二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物。
【請求項5】
前記常温溶融塩(B)の重量が、前記共重合体(A)及び前記常温溶融塩(B)の合計重量に対して、80重量%以上95重量%以下である請求項1に記載の二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物を反応してなる二酸化炭素吸収性ゲル。
【請求項7】
請求項6に記載の二酸化炭素吸収性ゲルを含む二酸化炭素吸収体。
【請求項8】
請求項7に記載の二酸化炭素吸収体を含む二酸化炭素吸収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物、二酸化炭素吸収性ゲル、前記ゲルを含む二酸化炭素吸収体、及び前記二酸化炭素吸収体を含む二酸化炭素吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に伴う気候変動が問題となっている。
地球温暖化に最も大きな影響を及ぼす温室効果ガスは二酸化炭素であると言われており、二酸化炭素を回収する技術について研究が盛んに行われている。
【0003】
二酸化炭素を回収する技術として、二酸化炭素吸収量に優れることからイオン液体(常温溶融塩ともいう)が注目を集めている。
【0004】
例えば、特許文献1では、イオン液体とポリビニルアルコールの水溶液との混合物を加熱乾燥することで得られる気体分離ゲル膜が提案されている。簡便な操作で混合物からゲル膜が得られるものの、ゲル膜中のイオン液体の濃度が高い場合に、形成されるゲル膜からイオン液体が漏洩する問題があった。
【0005】
また、特許文献2では、末端に異なる官能基を有する2種の化合物がアミド結合で架橋することで得られるハイドロゲルを乾燥脱水して得られる脱水物を、イオン液体に浸漬することで得られるゲル状組成物が提案されている。しかしながら、2種の化合物を混合するとすぐに反応が始まるため、2種の化合物の混合物を塗工または成形する前、並びに塗工または成形している最中に反応が進みすぎて増粘ゲル化してしまい、所望面積の膜形成が出来ない、膜厚のバラツキが生じる、所望の成形物に出来ない等の不具合が生じる恐れがある。またハイドロゲルを乾燥脱水して脱水物を形成させる工程や脱水物をイオン液体に浸漬する工程があり、イオン液体ゲルを得ることが容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許5877961号公報
【0007】
【特許文献2】特開2013-60504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、簡便な手順でイオン液体の漏洩がない二酸化炭素吸収性ゲルを形成することができ、保存安定性に優れた二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、以下の通りである。
[1]グリシジル基を有する化学式量が500以下である(メタ)アクリル酸エステル(a1)、及び化学式量が500以下である(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2) を必須構成単量体とする共重合体(A)と、アニオン及び有機カチオンからなる常温溶融塩(B)とを含む二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物であり、前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)は、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、N,N-二置換(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミドである二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物。
[2]前記有機カチオンが一般式(1)で表されるカチオンである[1]に記載の二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
[一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基を表し、R、R及びRは、水素原子を表す。]
[3]前記(メタ)アクリル酸エステル(a1)が、グリシジル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルからなる群より選ばれる一種以上であり、前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)が、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN-ベンジル(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる一種以上である[1]又は[2]に記載の二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物。
[4]前記(メタ)アクリル酸エステル(a1)及び前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)の合計重量を基準とした前記(メタ)アクリル酸エステル(a1)の重合割合が5~30重量%である[1]~[3]のいずれか1項に記載の二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物。
[5]前記常温溶融塩(B)の重量が、前記共重合体(A)及び前記常温溶融塩(B)の合計重量に対して、80重量%以上95重量%以下である[1]~[4]のいずれか1項に記載の二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物。
[6][1]~[5]のいずれか1項に記載の二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物を反応してなる二酸化炭素吸収性ゲル。
[7][6]に記載の二酸化炭素吸収性ゲルを含む二酸化炭素吸収体。
[8][7]に記載の二酸化炭素吸収体を含む二酸化炭素吸収装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便な手順でイオン液体の漏洩がない二酸化炭素吸収性ゲルを形成することができ、保存安定性に優れた二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物を提供することができる。そのため、二酸化炭素吸収性能に優れる二酸化炭素吸収体及び二酸化炭素吸収装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物(以下「ゲル形成用組成物」とする)]
本発明のゲル形成用組成物は、グリシジル基を有する化学式量が500以下である(メタ)アクリル酸エステル(a1)、及び化学式量が500以下である(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)を必須構成単量体とする共重合体(A)と、アニオン及び有機カチオンからなる常温溶融塩(B)を含むゲル形成用組成物であり、前記(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)は、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、N,N-二置換(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミドであるゲル形成用組成物である。ここで、(メタ)アクリル酸エステルとは、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルを意味し、(メタ)アクリルアミドとは、メタクリルアミド及び/又はアクリルアミドを意味する。また、常温溶融塩とはアニオンとカチオンとから形成された有機塩であって、融点が100℃以下である塩を意味し、イオン液体とも呼ばれる。
【0014】
本発明のゲル形成用組成物は、グリシジル基を有する化学式量が500以下である(メタ)アクリル酸エステル(a1)と化学式量が500以下である(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)との共重合体(A)とアニオン及び有機カチオンからなる常温溶融塩(B)を含む。
本発明のゲル形成用組成物は、加熱により、共重合体(A)が持つグリジシル基同士が架橋反応し、共重合体(A)同士の架橋反応で生じた3次元網目構造の内部に常温溶融塩(B)を保持することでゲルを形成する。本発明のゲル形成用組成物を反応してなるゲルは、共重合体(A)が有するアミド基と常温溶融塩(B)とがクーロン力により引き合うため、常温溶融塩(B)をゲル内に効率よく担持することができ、常温溶融塩(B)が容易に染み出すことがないので、長期に渡り使用できる二酸化炭素吸収体が得られる。
【0015】
<(メタ)アクリル酸エステル(a1)>
(メタ)アクリル酸エステル(a1)は、グリシジル基を有する化学式量が500以下である(メタ)アクリル酸エステルである。グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、1分子内に1つ以上のアクリロイル基と1以上のグリシジル基とを有する化合物であればよく、アクリロイル基とグリシジル基とを1つずつ有する化合物であってもよいし、2つ以上のアクリロイル基と2つ以上のグリシジル基とを有する化合物であってもよい。例えば、2つのアクリロイル基を有するジアクリレートや、2つのグリシジル基を有するジグリシジルエーテルであってもよく、特に限定されるものではない。
【0016】
グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a1)としては、グリシジル(メタ)アクリレート{化学式量:128(142)}、グリシジルオキシアルキル(メタ)アクリレート[2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:172(186)}、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:186(200)}、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:186(200)}、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:200(214)}、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:200(214)}、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:214(228)}、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:228(242)}、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:214(228)}等]、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:278(292)}、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:354(398)}、下記の一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル、及び下記の一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。なお、化合物名に続けて、アクリレートの化学式量と、メタクリレートの化学式量とを続けて記載し、このうちのメタクリレートの化学式量は括弧内に記載した。
【0017】
CH=CR-C(O)O-(RO)-X (2)
【0018】
一般式(2)において、RはH又はCHであり、RとしてはHが好ましい。
【0019】
はグリシジル基を示す。
【0020】
は炭素数2~3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基(CHCH)及び1,2-プロピレン基[CH(CH)CH又はCHCH(CH)]であり、nは1以上の整数であり、Rが1分子中に2つ以上ある場合、Rは全て同じであっても、異なっていても良い。
【0021】
一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルは化学式量が500以下であることから、Rが全てエチレン基である場合、nの上限は8であり、Rが全て1,2-プロピレン基である場合、nの上限は6である。Rとしてエチレン基とメチルエチレン基の両方を含む場合、エチレン基の数は3~7であり、かつ1,2-プロピレン基の数は1~5個であり、エチレン基と1,2-プロピレン基との合計であるnは8以下である。
【0022】
がエチレン基である場合、ROで表される基はエチレンオキサイドを開環付加して得られる基[以下、エチレンオキシ基とも言う]であり、Rが1,2-プロピレン基である場合、ROで表される基はプロピレンオキサイドを開環付加して得られる基[以下、プロピレンオキシ基とも言う]である。
としてエチレン基と1,2-プロピレン基とを含む場合、ROで表されるエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の結合の態様に制限はなく、規則性をもって結合(ブロック結合、および交互結合等)していてもランダムに結合していても良く、ランダムに結合していることが好ましい。
【0023】
一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基をそれぞれ1つ又は2つ有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(RO)としてエチレンオキシ基のみを有し、nが1又は2である(メタ)アクリル酸エステルが更に好ましい。
【0024】
CH=CR-C(O)O-(RO)-[R10O]-X (3)
【0025】
一般式(3)において、RはH又はCHであり、RとしてはHが好ましい。
【0026】
はグリシジル基を示す。
【0027】
はエチレン基である。nは1以上3以下の整数である。
nとしては1又は2が好ましい。
【0028】
10はブチレン基である。mは1以上3以下の整数である。
mとしては1又は2が好ましい。
【0029】
一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステルとしては、グリシジルエーテルジエチレングリコール(メタ)アクリレート{化学式量:216、(230)}、グリシジルエーテルトリエチレングリコール(メタ)アクリレート{化学式量:260、(274)}、グリシジルエーテルジプロピレングリコール(メタ)アクリレート{化学式量:244、(258)}、及びグリシジルエーテルトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート{化学式量:302、(316)}等が挙げられる。なお、化合物名に続けて、アクリレートの化学式量と、メタクリレートの化学式量とを続けて記載し、このうちのメタクリレートの化学式量は括弧内に記載した。
【0030】
一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステルとしては、グリシジルエーテルブチレングリコールエチレングリコールエーテル(メタ)アクリレート{化学式量:244、(258)}、グリシジルエーテルジブチレングリコールエチレングリコールエーテル(メタ)アクリレート{化学式量:316、(330)}、及びグリシジルエーテルブチレングリコールジエチレングリコールエーテル(メタ)アクリレート{化学式量:288、(302)}等が挙げられる。なお、化合物名に続けて、アクリレートの化学式量と、メタクリレートの化学式量とを続けて記載し、このうちのメタクリレートの化学式量は括弧内に記載した。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステル(a1)の化学式量はゲルからの常温溶融塩(B)の染み出し抑制の観点から、128~500が好ましく、128~400が更に好ましい。
【0032】
ゲルからの常温溶融塩(B)の染み出し抑制の観点から、(メタ)アクリル酸エステル(a1)としては、グリシジル(メタ)アクリレート、{化学式量:128(142)}、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:172(186)}、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:186(200)}、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:186(200)}、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:200(214)}、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル{化学式量:200(214)}、及び、一般式(2)で表される化合物が好ましく、グリシジル(メタ)アクリレート{化学式量:128(142)}及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルが更に好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(a1)としては、1種類を単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0033】
<(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)>
(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)は、化学式量が500以下である(メタ)アクリルアミドである。
【0034】
(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)としては、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、及びN,N-二置換(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の(メタ)アクリルアミドが含まれる。
【0035】
N-置換(メタ)アクリルアミドとしては、次の一般式(4)で示すことができる化合物等が挙げられる。
【0036】
CH=CR11-C(O)-NH(R12) (4)
【0037】
一般式(4)中、R11はH又はCH、R12は炭素数が1~28個のアルキル基、炭素数が6~28のアリール基又は炭素数が6~28のアリールアルキル基を示す。
【0038】
12で表される炭素数が1~28のアルキル基としては、メチル基、エチル基、炭素数3~28の直鎖アルキル基、及び炭素数3~28の分岐アルキル基等があげられ、直鎖アルキル基としてプロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基等があげられ、分岐アルキル基としてはイソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、及び2,2-ジメチルプロピル基等があげられる。中でもメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基、及び炭素数が3~6の分岐アルキル基等がゲルからの常温溶融塩(B)の染み出し抑制の観点から好ましく、メチル基、エチル基、及びイソプロピル基等が更に好ましい。
【0039】
12で表される炭素数が6~28のアリール基としては、フェニル基、フェニル基が有する5つの水素原子のうち少なくとも1つの水素原子を水素原子以外の1価の原子または1価の原子団で置換した基(以下、置換フェニル基という)、2つ以上のフェニル基を有する炭化水素基(フェニル基及び置換フェニル基を除く)、及び縮合多環芳香族炭化水素基が挙げられ、置換フェニル基としては、メチルフェニル基、及びジメチルフェニル基等が挙げられ、2つ以上のフェニル基を有する炭化水素基としては、ビフェニル基、及びトリフェニルメチル基が挙げられ、縮合多環芳香族炭化水素基としては、ナフチル基、及びフェナントレン基が挙げられる。中でもフェニル基、及び炭素数が6~12の置換フェニル基等がゲルからの常温溶融塩(B)の染み出し抑制の観点から好ましく、フェニル基、及びメチルフェニル基等が更に好ましい。R12で表される炭素数が6~28のアリールアルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。
【0040】
一般式(4)で示すことができる化合物としては、N-メチル(メタ)アクリルアミド{化学式量:85、(99)}、N-エチル(メタ)アクリルアミド{化学式量:99、(113)}、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド{化学式量:113、(127)}、及びN-ベンジル(メタ)アクリルアミド{化学式量:161、(175)}等があげられる。なお、化合物名に続けて、アクリレートの化学式量と、メタクリレートの化学式量とを続けて記載し、このうちのメタクリレートの化学式量は括弧内に記載した。
【0041】
N,N-二置換(メタ)アクリルアミドとしては、次の一般式(5)で示すことができる化合物等が挙げられる。
【0042】
CH=CR13-C(O)-NR14(R15) (5)
【0043】
一般式(5)中、R13はH又はCH、R14及びR15は炭素数が1~28個のアルキル基、炭素数が6~28のアリール基又は炭素数が6~28のアリールアルキル基であり、R14の炭素数とR15の炭素数との合計は2~28個である。
【0044】
14及びR15で表される炭素数が1~28のアルキル基としては、それぞれ、メチル基、エチル基、炭素数3~28の直鎖アルキル基、及び炭素数3~28の分岐アルキル基等があげられ、直鎖アルキル基としてプロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基等があげられ、分岐アルキル基としてはイソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、及び2,2-ジメチルプロピル基等があげられる。中でもメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基、及び炭素数が3~6の分岐アルキル基等がゲルからの常温溶融塩(B)の染み出し抑制の観点から好ましく、メチル基、エチル基、及びイソプロピル基等が更に好ましい。
【0045】
14及びR15で表される炭素数が6~28のアリール基としては、フェニル基、置換フェニル基、2つ以上のフェニル基を有する炭化水素基(フェニル基及び置換フェニル基を除く)、及び縮合多環芳香族炭化水素基が挙げられ、置換フェニル基としては、メチルフェニル基、及びジメチルフェニル基等が挙げられ、2つ以上のフェニル基を有する炭化水素基としては、ビフェニル基、及びトリフェニルメチル基が挙げられ、縮合多環芳香族炭化水素基としては、ナフチル基、及びフェナントレン基が挙げられる。中でもフェニル基、及び炭素数が6~12の置換フェニル基等がゲルからの常温溶融塩(B)の染み出し抑制の観点から好ましく、フェニル基、及びメチルフェニル基等が更に好ましい。R14及びR15で表される炭素数が6~28のアリールアルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。
【0046】
一般式(5)で示すことができる化合物としては、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド{化学式量:99、(113)}、及びN,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド{化学式量:127、(141)}等があげられる。なお、化合物名に続けて、アクリレートの化学式量と、メタクリレートの化学式量とを続けて記載し、このうちのメタクリレートの化学式量は括弧内に記載した。
【0047】
(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)の化学式量はゲルからの常温溶融塩(B)の染み出し抑制の観点から、71~500が好ましく、71~400が更に好ましい。
【0048】
化学式量が500以下である(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)としては、ゲルからの常温溶融塩(B)の染み出し抑制の観点から、(メタ)アクリルアミド{化学式量:71、(85)}、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド{化学式量:113、(127)}、N-ベンジル(メタ)アクリルアミド{化学式量:161、(175)}及びN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド{化学式量:99、(113)}が好ましく、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド{化学式量:99、(113)},N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド{化学式量:113、(127)}及びN-ベンジル(メタ)アクリルアミド{化学式量:161、(175)}が更に好ましい。
(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)としては、1種類を単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0049】
<共重合体(A)>
共重合体(A)は、グリシジル基を有する化学式量が500以下である(メタ)アクリル酸エステル(a1)、及び化学式量が500以下である(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)を必須構成単量体とする。また、共重合体(A)を構成する単量体の結合の順番に制限はなく、ブロック重合体でもよく、ランダム重合体でもよい。
【0050】
共重合体(A)は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル(a1)と少なくとも1種の(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)を単量体として用いていればよく、(メタ)アクリル酸エステル(a1)及び(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)は、それぞれ2種以上を用いてもよい。
【0051】
共重合体(A)の単量体として他の化合物(a3)を含んでいてもいい。他の化合物(a3)として好ましいものとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、及び(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
【0052】
本発明の共重合体(A)において、(メタ)アクリル酸エステル(a1)及び(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)の合計重量を基準とした(メタ)アクリル酸エステル(a1)の重合割合は、ゲルからの常温溶融塩(B)の染み出し抑制の観点から、好ましくは5~30重量%であり、更に好ましくは15~20重量%である。
【0053】
(メタ)アクリル酸エステル(a1)及び(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)の合計重量を基準とした(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)の重合割合は、ゲルからの常温溶融塩(B)の染み出し抑制の観点から、好ましくは70~95重量%であり、更に好ましくは80~85重量%である。
【0054】
他の化合物(a3)を含む場合、他の化合物(a3)の重量割合は、(メタ)アクリル酸エステル(a1)、(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)及び他の化合物(a3)の合計重量を基準として0.1~10重量%が好ましい。
【0055】
共重合体(A)としては、ポリ(N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド-co-グリシジル(メタ)アクリレート)、ポリ(N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド-co-グリシジル(メタ)アクリレート)、ポリ((メタ)アクリルアミド-co-グリシジル(メタ)アクリレート)、ポリ(N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド-co-4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル)、ポリ(N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド-co-4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル)、及びポリ((メタ)アクリルアミド-co-4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル)等が挙げられる。ゲルからの常温溶融塩(B)の染み出し抑制の観点から、共重合体(A)としては、好ましくは、ポリ(N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド-co-グリシジル(メタ)アクリレート)、ポリ(N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド-co-グリシジル(メタ)アクリレート)、ポリ((メタ)アクリルアミド-co-グリシジル(メタ)アクリレート)、ポリ(N-ベンジル(メタ)アクリルアミド-co-グリシジル(メタ)アクリレート)、ポリ(N-ベンジル(メタ)アクリルアミド-co-4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル)、及びポリ(N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド-co-4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル)であり、より好ましくは、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド-co-グリシジルメタクリレート)、ポリ(N-イソプロピルメタクリルアミド-co-グリシジルメタクリレート)、ポリ(N-ベンジルアクリルアミド-co-グリシジルメタクリレート)及びポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド-co-4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル)である。
【0056】
共重合体(A)がポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド-co-グリシジルメタクリレート)である場合、(メタ)アクリル酸エステル(a1)であるグリシジルメタクリレートの重量割合は、N,N-ジメチルアクリルアミドとグリシジルメタクリレートとの合計重量に基づいて、5~30重量%であることが好ましい。
【0057】
本発明の共重合体(A)の重量平均分子量は、ゲルからの常温溶融塩(B)の染み出し抑制の観点から、好ましくは50,000~5,000,000であり、更に好ましくは100,000~2,000,000である。共重合体(A)の重量平均分子量は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができ、実施例においてもGPCにより下記測定条件でMwを求めた。
【0058】
<共重合体(A)重量平均分子量(Mw)の測定条件>
装置:「HLC-8320」[東ソー(株)製]
カラム:「TSK GEL α-M」[東ソー(株)製]
測定温度:40℃
試料溶液:0.25重量%のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(不溶解分をグラスフィルターでろ別したもの)
溶液注入量:100μl
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、9,100、18,100、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0059】
共重合体(A)は、公知の方法により製造することができ、溶液重合法が好ましい。
【0060】
溶液重合法としては、例えば酢酸エチル等の溶剤中に単量体組成物((メタ)アクリル酸エステル(a1)及び(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2) 並びに必要により用いる他の化合物(a3)を含む単量体組成物)と重合開始剤[アゾビスイソブチロニトリル、及び2,2’アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等]とを滴下して重合する方法が挙げられる。重合温度は、グリシジル基保護の観点から、好ましくは60~230℃、さらに好ましくは70~180℃である。
【0061】
<常温溶融塩(B)>
本発明のゲル形成用組成物は、常温溶融塩(B)を含む。
常温溶融塩(B)は、アニオン及び有機カチオンからなる。
【0062】
有機カチオンは、一般式(1)で表されるカチオンが好ましい。
【0063】
【化2】
【0064】
一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基を表し、R、R及びRは、それぞれ水素原子を表す。
【0065】
及びRで表される炭素数1~6のアルキル基としては、炭素数1~6の直鎖アルキル基、及び炭素数3~6の分岐アルキル基等があげられ、直鎖アルキル基としてメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基等があげられ、分岐アルキル基としてはイソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、及び2,2-ジメチルプロピル基等が挙げられる。中でもメチル基、エチル基、及び炭素数が3~4の分岐アルキル基が二酸化炭素吸収量の観点から好ましく、メチル基、及びエチル基が更に好ましい。
【0066】
上記カチオンとしては、1-メチル-3-イミダゾリウムカチオン、1-エチルイミダゾリウムカチオン、1-プロピルイミダゾリウムカチオン、1-ブチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジメチル-イミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチル-イミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、及び、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
二酸化炭素吸収量の観点から、カチオンとして好ましくは、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジメチル-イミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチル-イミダゾリウムカチオン及び、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンであり、更に好ましくは、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンである。
【0067】
アニオンは、有機カチオンと組み合わせて常温溶融塩を形成するものであれば特に制限はない。
【0068】
アニオンとしては、PF 、BF 、BF(CF、F、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、NO 、(NC)、(FSO、(CFSO、(CFCFSO、(CFSO、CHCOO、CHCHCOO、(CHCCOO、(CHO)CHCOO、CFCOO、CFCFCFCOO、CFSO 、CF(CFSO 、AsF 、及びSbF 等が挙げられる。
【0069】
アニオンは二酸化炭素吸収量の観点から、好ましくはBF 、(NC)、(FSO、(CFSO、(CFCFSO、(CFSO、CHCOO、CHCHCOO、(CHCCOO、及び(CHO)CHCOOであり、更に好ましくは、BF [テトラフルオロボレート]、(FSO[ビス(フルオロスルホニル)イミド]、(NC)[ジシアナミド]及びCHCHCOO[プロピオネート]である。
【0070】
常温溶融塩(B)としては、二酸化炭素吸収量の観点から、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド及び1-エチル-3-メチルイミダゾリウムプロピオネートが好ましい。
本発明の酸性ガス吸収用組成物は、2種以上の常温溶融塩(B)を含んでも良い。
【0071】
常温溶融塩(B)は、公知の方法により製造することができ、例えば、ハロゲン化アルキル法、炭酸ジアルキル法、及び直接アルキル化法等により製造することができる。
【0072】
<その他の成分(C)>
本発明のゲル形成用組成物は、共重合体(A)及び常温溶融塩(B)以外の成分[以下、その他の成分(C)]を含んでも良い。その他の成分(C)とは例えば、架橋剤、増粘剤、架橋反応触媒及び溶媒が挙げられる。なお、ここでいう架橋剤とは2つ以上のグリシジル基と反応する多官能化合物である。
【0073】
架橋剤としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、及びドデカン二酸等が挙げられる。架橋剤として好ましくは、ゲルからの常温溶融塩(B)の染み出し抑制の観点から、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミンであり、さらに好ましくは、ペンタエチレンヘキサミンである。
【0074】
増粘剤としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びキサンタンガム等が挙げられる。
【0075】
架橋反応触媒としては、サリチル酸、グリコール酸、及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等が挙げられる。
【0076】
溶媒としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール及び1-ブタノール等が挙げられる。溶媒として好ましくは、ゲル形成用組成物の溶媒への溶解性の観点から、酢酸エチル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、及び1-ブタノールであり、さらに好ましくは、酢酸エチル、2-プロパノール、及びメタノールである。
【0077】
本発明のゲル形成用組成物において、常温溶融塩(B)の重量は、共重合体(A)及び常温溶融塩(B)の合計重量に対して、80重量%以上95重量%以下であることが好ましい。
本発明のゲル形成用組成物において、共重合体(A)の重量は、共重合体(A)、常温溶融塩(B)及びその他の成分(C)の合計重量に対して、1重量%以上20重量%以下であることが好ましい。
本発明のゲル形成用組成物において、その他の成分(C)の重量は、共重合体(A)、常温溶融塩(B)及びその他の成分(C)の合計重量に対して、90重量%以下であることが好ましい。
【0078】
本発明のゲル形成用組成物は、室温下(好ましくは10~40℃)において共重合体(A)、常温溶融塩(B)及びその他の成分(C)を均一液状になるまでマグネチックスターラー等の撹拌機を用いて混ぜ合わせることで製造できる。
【0079】
[二酸化炭素吸収性ゲル]
本発明の二酸化炭素吸収性ゲルは、前記の二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物を加熱し、反応することにより得られるゲルであり、常温溶融塩(B)と加熱によってゲル形成用組成物に含まれる共重合体(A)が持つグリシジル基同士、又はグリシジル基と架橋剤が反応して得られる架橋重合体(D)とを構成成分とする複合体である。
前記のゲル形成用組成物を加熱する方法は公知の方法でよく、公知の加熱装置(熱風循環式加熱炉、乾燥機、及びホットプレート等)を用いて、60℃~200℃の温度下で1分~3時間加熱する方法があげられる。操作上の簡便性の観点から、ゲル形成用組成物を任意の基材に所望の膜厚に塗工した後に熱風循環式加熱炉、及びホットプレート等を用いて加熱する方法が好ましく、80℃~150℃の温度下で3分~2時間加熱することが好ましい。基材に塗工する好ましい膜厚は、加熱時間とゲルの膜強度の観点から、1μm~20μmである。また、ゲル形成用組成物を所望の形状の型に流し込み加熱する方法によってもゲルを製造することも出来る。
ゲルが製造できたことは、加熱後の反応物生成物から常温溶融塩(B)の染み出しがないことを目視及び指触によって確認することで、本発明の二酸化炭素吸収性ゲルが得られたことを判断することができる。
【0080】
また、本発明のゲルの製造において、ゲル形成用組成物の反応終点は、共重合体(A)が有するグリシジル基の反応率が70%~100%であることが好ましい。70%以上であるとゲルから常温溶融塩(B)が染み出し難くなり、好ましい。
グリシジル基の反応率は、ゲルのFT-IRスペクトルを測定することで計算することができる。共重合体(A)が有するグリシジル基由来の914cm-1付近に現れるピーク強度PIgは、架橋反応の進行と共に小さくなるが、共重合体(A)が有する(メタ)アクリルアミド系モノマー(a2)に含まれるアミド基由来の1625cm-1の強度PIaは変化しない。そのため、架橋反応前後のアミド基由来のピーク強度に対するグリシジル基由来のピーク強度の比を比較することによって、どの程度反応が進んでいるのかを計算することが出来る。
具体的には、914cm-1付近に現れるグリシジル基由来のピーク強度が変化しなくなった時のアミド基由来のピーク強度PIa1に対するグリシジル基のピーク強度PIg1の比の値を反応率100%のピーク強度比R1とする。また、架橋反応前のアミド基由来のピーク強度PIa0に対するグリシジル基のピーク強度PIg0の比(PIg0/PIa0)の値を反応率0%のピーク強度比R0とする。
形成したゲルのFT-IRスペクトル測定で得られた、アミド基由来のピーク強度PIaに対するグリシジル基由来のピーク強度PIgの比(PIg/PIa)の値をRxとする。
反応率は、前記の各ピーク強度比を計算式:100×(反応率0%のピーク強度比R0-形成したゲルのピーク強度比Rx)/(反応率0%のピーク強度比R0-反応率100%のピーク強度比R1)に当てはめることで計算することができる。
【0081】
ゲルの製造に用いるゲル形成用組成物に溶媒が含まれている場合は、加熱により溶媒を気化させる等して溶媒を除去することが好ましい。加熱による溶媒の除去を行う場合、ゲルを形成するための加熱時に行っても良いし、形成されたゲルを更に加熱して行っても良い。ゲル形成性用組成物の加熱又は溶媒除去のための加熱を行った後のゲルを、室温下に静置する等して室温まで冷却することで、本発明のゲルを得てもよい。
【0082】
本発明のゲルにおいて、常温溶融塩(B)の重量は、ゲルの合計重量に対して、80重量%以上95重量%以下であることが好ましい。常温溶融塩(B)のゲルの合計重量に対する重量は、常温溶融塩(B)が任意の割合で溶解する溶媒(メタノール等)にゲルを浸漬してゲルから常温溶融塩(B)を溶媒中に抽出し、溶媒に溶解しなかった抽出残渣物を乾燥し、ゲルの重量から抽出残留物の乾燥重量を引くことで測定できる。
【0083】
本発明のゲルは、初期(作製直後)のゲル1g当たりの25℃、100kPaの二酸化炭素圧力環境下における二酸化炭素吸収量が、1.0kPa/g以上であることが好ましく、2.0kPa/g以上であることが更に好ましい。上記初期のゲル1g当たりの25℃、100kPaの二酸化炭素圧力環境下における二酸化炭素吸収量が2.0kPa/g以上であれば、十分な二酸化炭素の吸収性能を有すると判断することができる。
【0084】
二酸化炭素の吸収量は、例えば、以下の方法により測定することができる。
(1)ゲル形成用組成物30gをニードルバルブ付きのSUS容器に入れ、次いでSUS容器を密閉可能な蓋をSUS容器にセットしてその合計重量(SUS容器、蓋、およびSUS容器内のゲル形成用組成物の合計重量)を測定する。
(2)SUS容器から蓋を外し、開放した状態で、80℃で60分間温調し、その後150℃で60分間加熱してゲル形成用組成物の反応を行い、ゲルを形成する。合計120分間の加熱を終えたら室温まで冷却し、SUS容器に含まれたゲルとSUS容器との合計重量を測定する。なお、ゲル形成用組成物が溶媒を含む場合は、含まれる全ての溶媒が揮発するまで、80℃で60分間および150℃で60分間の加熱操作を繰り返す。溶媒の揮発量は、(1)で測定した合計重量と120分間の加熱を終えた後に測定した合計重量との差を計算することで確認することが出来る。
(3)(2)で得られたゲルが入ったSUS容器に再び蓋をセットしてSUS容器を密閉し、25℃に温調する。蓋の中央部に圧力センサを差し込み、SUS容器内に圧力センサが露出するように圧力センサをネジで固定して取り付ける。ニードルバルブの先を油回転真空ポンプに接続し、バルブを開けてSUS容器内の空気を排気した後、バルブを閉じて油回転真空ポンプを取り外す。次いで、二酸化炭素を充填したガス捕集バルーンをニードルバルブに接続し、バルブを開けてSUS容器内に二酸化炭素を入れる。続いて、ニードルバルブを閉じて、直ぐにSUS容器内の初期圧力を測定する。
(4)圧力センサを取り付けたまま、初期圧力の測定から60分間静置した後に、再びSUS容器内の圧力を読み取る。その後、60分おきにSUS容器内の圧力を読み取り、60分間の圧力変化が1kPa以下になるまで繰り返し、最後の値を最終圧力とする。
(5)初期圧力と、最終圧力との差を計算し、ゲルの二酸化炭素吸収量とする。この圧力の差が大きい程、ゲルによる二酸化炭素吸収量が高い。
【0085】
本発明のゲルは、加熱環境下、減圧環境下、及び二酸化炭素以外のガスが供給される環境下等において二酸化炭素をゲルから脱離させることが出来る。
【0086】
二酸化炭素の脱離量は、二酸化炭素をゲルから脱離させた後、前記の二酸化炭素の吸収量を測定する方法により、ゲルの二酸化炭素吸収量を測定し、初期(ゲルを作製直後)の二酸化炭素吸収量との差を算出する方法により測定することができる。初期(ゲルを作製直後)の二酸化炭素吸収量との差が小さい程、二酸化炭素の脱離量は大きい。
【0087】
二酸化炭素の吸収及び脱離によってゲルの劣化は生じないため、何度も二酸化炭素の吸収と脱離を繰り返すことが可能である。
【0088】
[ゲルを含む二酸化炭素吸収体]
本発明の二酸化炭素吸収体は、前記の二酸化炭素吸収性ゲルを含んでなる。
【0089】
本発明の二酸化炭素吸収体は、特に限定されない形状であり、シート状、粒子状、塊状の他、適宜利用しやすい形状に形成することが出来、幾つかの二酸化炭素吸収体を複合させた集合体を形成してもよい。
【0090】
[二酸化炭素吸収体を含む二酸化炭素吸収装置]
本発明の二酸化炭素吸収装置は前記の二酸化炭素吸収体を含む装置である。
【0091】
本発明の二酸化炭素吸収装置は、前記の二酸化炭素吸収体を含み、二酸化炭素の吸収及び分離等に用いられる装置であれば特に制限は無く、ガス田、油田、工場及び発電所等の二酸化炭素発生源に設置される装置、及び焼却設備等に設置する装置等が含まれる。
【実施例0092】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部を意味する。
【0093】
<製造例1 共重合体(A-1)の製造>
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素導入口を備えた反応容器に、酢酸エチル140部を仕込み、撹拌下、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、加熱還流した。次に、N,N-ジメチルアクリルアミド89.3部、グリシジルメタクリレート15.7部、酢酸エチル112部、および2,2’アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.1部を混合したものを、3時間かけて滴下して重合を行った。さらに加熱還流したまま2時間反応を継続した。さらに、減圧下、脱溶剤を行い、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド-co-グリシジルメタクリレート)(重量平均分子量:約100万)が得られた。
【0094】
<製造例2 共重合体(A-2)の製造>
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素導入口を備えた反応容器に、酢酸エチル140部を仕込み、撹拌下、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、加熱還流した。次に、N,N-ジメチルアクリルアミド84部、グリシジルメタクリレート21部、酢酸エチル112部、および2,2’アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.1部を混合したものを、3時間かけて滴下して重合を行った。さらに加熱還流したまま2時間反応を継続した。さらに、減圧下、脱溶剤を行い、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド-co-グリシジルメタクリレート)(重量平均分子量:約100万)が得られた。
【0095】
<製造例3 共重合体(A-3)の製造>
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素導入口を備えた反応容器に、酢酸エチル140部を仕込み、撹拌下、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、加熱還流した。次に、N,N-ジメチルアクリルアミド95部、グリシジルメタクリレート10部、酢酸エチル112部、および2,2’アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.1部を混合したものを、3時間かけて滴下して重合を行った。さらに加熱還流したまま2時間反応を継続した。さらに、減圧下、脱溶剤を行い、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド-co-グリシジルメタクリレート)(重量平均分子量:約100万)が得られた。
【0096】
<製造例4 共重合体(A-4)の製造>
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素導入口を備えた反応容器に、酢酸エチル140部を仕込み、撹拌下、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、加熱還流した。次に、N-イソプロピルメタクリルアミド89.3部、グリシジルメタクリレート15.7部、酢酸エチル112部、および2,2’アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.1部を混合したものを、3時間かけて滴下して重合を行った。さらに加熱還流したまま2時間反応を継続した。さらに、減圧下、脱溶剤を行い、ポリ(N-イソプロピルメタクリルアミド-co-グリシジルメタクリレート)(重量平均分子量:約100万)が得られた。
【0097】
<製造例5 共重合体(A-5)の製造>
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素導入口を備えた反応容器に、酢酸エチル140部を仕込み、撹拌下、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、加熱還流した。次に、N-ベンジルアクリルアミド89.3部、グリシジルメタクリレート15.7部、酢酸エチル112部、および2,2’アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.1部を混合したものを、3時間かけて滴下して重合を行った。さらに加熱還流したまま2時間反応を継続した。さらに、減圧下、脱溶剤を行い、ポリ(N-ベンジルアクリルアミド-co-グリシジルメタクリレート)(重量平均分子量:約100万)が得られた。
【0098】
<製造例6 共重合体(A-6)の製造>
温度計、攪拌機、還流冷却器、窒素導入口を備えた反応容器に、酢酸エチル140部を仕込み、撹拌下、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した後、加熱還流した。次に、N,N-ジメチルアクリルアミド84部、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル21部、酢酸エチル112部、および2,2’アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.1部を混合したものを、3時間かけて滴下して重合を行った。さらに加熱還流したまま2時間反応を継続した。さらに、減圧下、脱溶剤を行い、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド-co-4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル)(重量平均分子量:約100万)が得られた。
【0099】
<製造例7 常温溶融塩(B-4)の製造>
撹拌装置、温度計、滴下ロート、還流冷却器、及び窒素ガス導入管を取り付けた反応フラスコに、グリオキザール(40重量%水溶液)18重量部、ホルマリン(37重量%水溶液)10重量部の混合物を仕込み、撹拌しながら均一溶液にし、窒素ガスを僅かに流しながら40℃に昇温した。その後反応温度を35~45℃に保ちながら滴下ロートからエチルアミン(70重量%水溶液)64重量部とアンモニア(28重量%水溶液)61重量部の混合液を滴下した。
次に、エチルアミンとアンモニアの混合液を滴下し始めて35分後に、別の滴下ロートからグリオキザール(40重量%水溶液)127重量部とホルマリン(37重量%水溶液)71重量部の混合液を4時間かけて滴下した。エチルアミンとアンモニアの混合液は4時間35分かけて滴下し、エチルアミンとアンモニアの混合液の滴下終了と同時にグリオキザールとホルマリンの混合液の滴下を終了させるように滴下開始時間をずらして行った。滴下が終了したのち、40℃でさらに1時間反応させた。次に、温度80℃、常圧から徐々に減圧度5.3kPaまで減圧し脱水を行い、粗1-エチルイミダゾールを得た。続いて、温度100℃、減圧度0.7kPaの条件で単蒸留により精製し、1-エチルイミダゾールを得た。
次に、還流コンデンサ付きステンレス製オートクレーブに、得られた1-エチルイミダゾール96重量部、ジメチル炭酸135重量部、及びメタノール192重量部を仕込み均一に溶解させた。次いで、150℃まで昇温した。圧力約0.8MPaで70時間反応を行い、反応物を得た。反応物のH-NMR分析を行ったところ1-エチル-3-メチルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩が生成していることが分かった。
得られた反応物423重量部(塩純分44重量%)をフラスコに取り、撹拌下にプロピオン酸74重量部を室温下約30分かけて徐々に滴下した。滴下に伴い、炭酸ガスの泡が発生した。滴下終了後、泡の発生がおさまった後、反応液をロータリーエバポレーターに移し、溶媒を全量留去した。フラスコ内に無色透明の液体184重量部を得た。
この液体をH-NMR分析した結果、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムプロピオネートであった。
【0100】
<実施例1~12、比較例1~2:ゲル形成用組成物及びゲルの製造、評価>
(ゲル形成用組成物の製造)
室温下で、表1及び表2に記載の共重合体(A)、常温溶融塩(B)及びその他の成分(C)を、表1に記載の割合で容量200mLのガラス容器に入れ、均一液状になるまでマグネチックスターラーを用いて攪拌した後、実施例1~12及び比較例1~2に係るゲル形成用組成物を得た。
各例のゲル形成用組成物の一部を用いて、下記の方法で保存安定性の評価試験を行った。残りのゲル形成用組成物については、後述の方法で二酸化炭素吸収性ゲルを作成し評価試験を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0101】
(ゲル形成用組成物の保存安定性の評価)
各例のゲル形成用組成物を作製後、25℃で3週間静置した後の組成物におけるゲル化の有無を以下の方法で確認した。
(1)ゲル形成用組成物30gを、作製後すぐに容量50mLのガラス容器に入れて密閉し、恒温器内において25℃で3週間静置した。
(2)静置後、静置の次の日から毎日ゲル形成用組成物のゲル化有無を目視により観察し、以下の評価基準により評価した。
〇:ゲル化無し
×:ゲル化あり
【0102】
(二酸化炭素吸収性ゲルの製造及びゲルからの常温溶融塩の漏洩有無の評価)
(1)各例のゲル形成用組成物30gを室温下で12時間静置した後、厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム[東洋紡(株)製コスモシャインA4300]に、膜厚100μmとなるように、アプリケーターを用いて1g塗布し、80℃で60分間加熱し、その後さらに150℃で60分間加熱し、室温まで冷却することで二酸化炭素吸収性ゲルを得た。ゲルの厚さは20μmであった。
(2)ゲルの塗膜の上部に2cm角のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の板を乗せた。板の上部に4080gの荷重を負荷することで、100kPaの圧力でゲルを5分間圧縮した。
(3)圧縮後、ゲルからの常温溶融塩の漏洩有無を目視により観察し以下の評価基準により評価した。
〇:漏洩無し
×:漏洩あり
【0103】
(100kPaの二酸化炭素圧力環境下でのゲルによる二酸化吸収量の算出)
(1)各例のゲル形成用組成物を室温下で12時間静置した。その後、ゲル形成用組成物30gを測りとり、容量40mLのニードルバルブ付きのSUS容器に入れ、SUS容器とその内容物であるゲル形成用組成物との合計重量(以下、加熱前の重量という)を測定した。
(2)SUS容器を開放した状態で、80℃で60分間加熱し、その後さらに150℃で60分間加熱し、ゲル形成用組成物の反応を行った。その後、室温まで冷却した後、SUS容器とその内容物の合計重量(以下、加熱後の重量という)を測定した。
(3)(1)で測定した加熱前の重量と(2)で測定した加熱後の重量との差がゲル形成用組成物に含まれていた溶媒の量(24g)と同じになるまで、(2)の操作を繰り返し行い、二酸化炭素吸収性ゲルを得た。
(4)(3)で得られたゲルの入ったSUS容器に蓋をセットしてSUS容器を密閉し、25℃に温調した。蓋の中央部に圧力センサ(共和電業製、PHL-A-5MP-B)を差し込み、SUS容器内に圧力センサが露出するように圧力センサをネジで固定して取り付けた。ニードルバルブの先に油回転真空ポンプを接続し、バルブを開けてSUS容器内の空気を排気し、バルブを閉じて油回転真空ポンプを取り外し、続いて二酸化炭素を充填したガス捕集バルーンをニードルバルブの先に接続し、バルブを開けてSUS容器内に二酸化炭素を入れた。続いて、ニードルバルブを閉じて、ガス捕集バルーンを取り外した。
(5)直ぐに、SUS容器内の圧力を測定し、初期圧力とした。初期圧力は100kPaであった。
(6)SUS容器に圧力センサを取りつけたまま初期圧力の測定から60分間静置後に、再びSUS容器内の二酸化炭素圧力を測定した。その後、60分おきにSUS容器内の圧力を読み取り、60分間の圧力変化が1kPa以下になるまでこの操作を繰り返した。
(7)SUS容器内の二酸化炭素の初期圧力(100kPa)と、(6)の最後の圧力との差をゲル6g当たりの二酸化炭素吸収量とした。算出した二酸化炭素吸収量をSUS容器内のゲルの重量(6g)で割り、ゲル1g当たりの二酸化炭素吸収量を算出した。二酸化炭素吸収量は多いほうが好ましい。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
製造例1~7以外に、実施例及び比較例で用いた材料としては以下のものを用いた。
<常温溶融塩(B)>
・常温溶融塩(B―1):1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(東京化成工業(株)製)
・常温溶融塩(B―2):1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(関東化学(株)製)
・常温溶融塩(B―3):1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド(東京化成工業(株)製)
<その他の成分(C)>
・架橋剤:ペンタエチレンヘキサミン(東京化成工業(株)製)
・添加剤:ポリビニルアルコール(メルク社製)
・溶媒:酢酸エチル(東京化成工業(株)製)、メタノール(東京化成工業(株)製)、2-プロパノール(東京化成工業(株)製)、水(イオン交換水を使用)
【0107】
表1及び2に示した通り、実施例に係るゲルは、圧縮試験後のゲルからの常温溶融塩の漏洩がなかったが、比較例に係るゲルは漏洩があった。また、実施例に係るゲルは、100kPaの二酸化炭素圧力環境下でのゲルによる二酸化吸収量が、比較例に係るゲルと比べ多かった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物、二酸化炭素吸収性ゲル、ゲルを含む二酸化炭素吸収体及び二酸化炭素吸収装置によれば、簡便な手順で、イオン液体が漏洩しないゲルを形成することができる。また、本発明によれば保存安定性が高い二酸化炭素吸収性ゲル形成用組成物を提供することができる。その結果、本発明によれば二酸化炭素吸収量に優れる二酸化炭素吸収体を効率よく提供することができる。よって、本発明の組成物、二酸化炭素吸収性ゲル、二酸化炭素吸収体は、化学工場や製鉄所等の排気ガス中に含まれる二酸化炭素等の酸性ガスの分離、脱二酸化炭素によるエネルギー資源(天然ガス、バイオガス、合成ガス)の製造、自動車等の分散型排出源における脱二酸化炭素等に好適に利用することができる。なお、本発明の組成物、二酸化炭素吸収性ゲル、二酸化炭素吸収体の用途は、前記例示の分野に限定されない。