(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146818
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法及び堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮装置
(51)【国際特許分類】
C02F 11/123 20190101AFI20241004BHJP
C02F 11/147 20190101ALI20241004BHJP
【FI】
C02F11/123 ZAB
C02F11/147
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043791
(22)【出願日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2023056873
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000156581
【氏名又は名称】日鉄環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 絢
(72)【発明者】
【氏名】大島 佑介
(72)【発明者】
【氏名】大友 功
(72)【発明者】
【氏名】坂口 朝一
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA09
4D059AA10
4D059AA11
4D059BE09
4D059BE57
4D059BE59
4D059CB02
4D059DB11
4D059EB01
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】大量の水を含む無機系スラッジの堆積物混合水等を、堆積物混合水等が生じる現場で、該混合水等の水切り及び濃縮処理を、簡便に且つ短時間に行うことができる水切り濃縮処理方法及び水切り濃縮装置の開発。
【解決手段】水路内等からポンプ又は吸上車で吸引した主成分が無機系スラッジの堆積物と水との混合物である堆積物混合水や泥土泥水を濃縮処理物とし、該濃縮処理物の供給用のポンプと該ポンプに接続した移送管とを利用して、添加した高分子凝集剤と濃縮処理物を均一に混合して凝集させ、該凝集した状態を崩すことなく重力式のベルト型ろ過濃縮機の通水性ベルト面上に供給して固液分離を行い、水切りして堆積物又は泥土を濃縮する工程を有する堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法及び堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮装置。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分が無機系スラッジである堆積物を水中に含む堆積物混合水、又は、泥土泥水を水切りして堆積物又は泥土を濃縮するための処理方法であって、
前記堆積物混合水が、水路内或いは水槽内或いは池内からポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた前記堆積物と水とを含むものであり、
前記泥土泥水が、ポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた、土木工事で発生する水と泥土の混合物、或いは、水害後の水と泥土との混合物のいずれかであり、
重力式の高速固液分離装置であるベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面上に、濁水濃度が0.5w/v%以上、20w/v%以下である前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を供給して固液分離を行って、水を切って前記堆積物又は前記泥土を濃縮する固液分離工程と、
前記堆積物混合水又は前記泥土泥水が前記通水性のベルト面上に供給される直前までに前記堆積物混合水又は前記泥土泥水に高分子凝集剤を添加する高分子凝集剤の添加工程を有し、且つ、該高分子凝集剤の添加工程で、添加された高分子凝集剤と前記堆積物混合水又は前記泥土泥水とを撹拌混合させることができる機能と、撹拌混合させた前記高分子凝集剤と前記堆積物混合水又は前記泥土泥水とを前記ベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面に供給することができる機能とを有してなる供給用ポンプと、該供給用ポンプに接続された移送管とを用いて、前記高分子凝集剤が前記堆積物混合水又は前記泥土泥水と混ざり合う状態になるようにすることを特徴とする堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【請求項2】
主成分が無機系スラッジである堆積物を水中に含む堆積物混合水、又は、泥土泥水を水切りして堆積物又は泥土を濃縮するための処理方法であって、
前記堆積物混合水が、水路内或いは水槽内或いは池内からポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた状態の前記堆積物と水とを含むものであり、
前記泥土泥水が、ポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた、土木工事で発生する水と泥土の混合物、或いは、水害後の水と泥土との混合物のいずれかであり、
重力式の高速固液分離装置であるベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面上に前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を供給するための、前記ベルト面の幅と同様の幅を有する出口と、該出口に向かって前記堆積物混合水又は前記泥土泥水が、前記ベルト面の幅と同様の幅で前記出口まで緩やかに流れる領域とを有してなる投入口から、該領域に移送管で送られてきた濁水濃度が0.5w/v%以上、20w/v%以下である前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を自重で流下させ、該流下後に前記通水性のベルト面に向けて流れていく堆積物混合水又は泥土泥水を前記通水性のベルト面上に供給して、該通水性のベルト面上で固液分離を行って、水を切って前記堆積物又は前記泥土を濃縮する固液分離工程と、
前記堆積物混合水又は前記泥土泥水が前記通水性のベルト面上に供給される直前までに前記堆積物混合水又は前記泥土泥水に高分子凝集剤を添加する高分子凝集剤の添加工程を有し、且つ、該高分子凝集剤の添加工程で、添加された高分子凝集剤を前記堆積物混合水又は前記泥土泥水と撹拌混合しながら前記通水性のベルト面まで供給するための供給用ポンプと、該供給用ポンプの吸い込み側と吐出側にそれぞれ接続された前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を前記投入口に送るための前記移送管とを用いて、前記投入口を構成する前記出口の位置までに、前記高分子凝集剤が前記堆積物混合水又は前記泥土泥水と混ざり合った状態になるように構成することを特徴とする堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【請求項3】
さらに、前記流下した堆積物混合水又は泥土泥水が前記通水性のベルト面上に供給されるまでの間で、且つ、該ベルト面に至る直前の位置に堰を設けて、前記供給用ポンプによって送られてくる前記堆積物混合水又は前記泥土泥水の流れを調節した状態にしてから前記ベルト面に供給するように構成した請求項2に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【請求項4】
さらに、前記ポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を撹拌機能を有する濃度調整槽に導入し、該濃度調整槽で前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を濁水濃度が0.5w/v%以上、20w/v%以下になるように調整する請求項1又は2に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【請求項5】
前記濁水濃度が1w/v%以上、15w/v%以下である請求項1又は2に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【請求項6】
前記ベルト型ろ過濃縮機が、車載されて移動可能に構成されている請求項1又は2に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【請求項7】
前記通水性のベルトが、織物構造を有してなり、且つ、目開きが1000μm以下である請求項1又は2に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【請求項8】
前記堆積物混合水及び前記泥土泥水の比重が1.0よりも大きい請求項1又は2に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【請求項9】
前記無機系スラッジが、工場系スラッジである請求項1又は2に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【請求項10】
さらに、前記固液分離工程で固液分離された水を切って濃縮された前記堆積物又は前記泥土を含む前記ベルト面上の残留物を剥ぎ落して取り除いた後、該通水性のベルト面を水で洗浄するための洗浄工程を有し、該洗浄工程で洗浄した後の通水性のベルト面上に前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を供給して連続処理をする請求項1又は2に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【請求項11】
さらに、前記固液分離工程で固液分離された水を切って濃縮された前記堆積物又は前記泥土を含む前記ベルト面上の残留物を剥ぎ落して取り除き、該取り除いた残留物を、脱水するための脱水工程及び/又は乾燥するための乾燥工程を有する請求項1又は2に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【請求項12】
水路内或いは水槽内或いは池内からポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた主成分が無機系スラッジである堆積物を水中に含む堆積物混合水、又は、ポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた、土木工事で発生する水と泥土の混合物、或いは、水害後の水と泥土との混合物、のいずれかの泥土泥水を水切りして前記堆積物又は前記泥土を濃縮する際に用いられる水切り濃縮装置であって、
重力式の高速固液分離装置であるベルト型ろ過濃縮機と、該ベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面上に前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を供給するための投入口と、前記ポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を前記通水性のベルト面まで供給するための供給用ポンプと、該供給用ポンプの吸い込み側と吐出側にそれぞれ接続された前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を前記投入口に送るための前記移送管とを有してなり、
前記投入口が、前記ベルト面の幅と同様の幅を有する出口と、該出口に向かって前記堆積物混合水又は前記泥土泥水が、前記ベルト面の幅と同様の幅で前記出口まで緩やかに流れる領域とを有してなり、該領域が緩い角度で傾斜した幅広の水路を有し、且つ、前記出口が、該出口に向かって流れてくる前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を自重で流下させる構造を有してなることを特徴とする堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮装置。
【請求項13】
さらに、前記出口から流下した前記堆積物混合水又は前記泥土泥水が流れて、前記通水性のベルト面上に供給されるまでの間で、且つ、該通水性のベルト面に至る直前の位置に流れを調節するための堰が設けられている請求項12に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮装置。
【請求項14】
前記通水性のベルトが、織物構造を有してなり、且つ、目開きが1000μm以下である請求項12又は13に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮装置。
【請求項15】
前記ベルト型ろ過濃縮機が車載されて移動可能に構成されている請求項12又は13に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮装置。
【請求項16】
前記堆積物混合水及び前記泥土泥水の比重が1.0よりも大きい請求項12又は13に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の濃縮装置。
【請求項17】
さらに、前記通水性のベルト面上に供給されて水切りされて濃縮された前記堆積物混合水又は前記泥土泥水の残留物が剥ぎ落されて取り除かれた状態の前記ベルト面を水で洗浄する洗浄機構を有してなる請求項12又は13に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路内や水槽内等における、主成分が無機系スラッジである堆積物と大量の水を含む堆積物混合水を濃縮するための、或いは、大量の水を含む泥土泥水を濃縮するための簡便な水切り濃縮処理方法に関する。詳しくは、いずれも大量の水を含む、堆積物混合水又は泥土泥水の水切り処理及び濃縮処理を、高分子凝集剤の添加・混合を巧みに利用し、且つ、通水性の簡易なベルト型ろ過濃縮機を用いることで、広い作業場や大規模な設備を必要とせずに、現場での処理(オンサイト処理)が可能で、従来方法に比べて極めて短時間に且つ簡便に、堆積物や泥土の水切り濃縮処理を効果的に行うことを実現できる、汎用性の高い有用な堆積物又は泥土の水切り濃縮処理の新規な技術に関する。本発明で問題としている堆積物や泥土は、例えば、粒径が0.4μm~800μm程度の大きさの無機系スラッジを多く含む汚泥状、泥漿状のものであり、大量の水の中にこれらを含んだ状態で存在しているが、本願発明では、特に濁水濃度が0.5w/v%以上、20w/v%以下である堆積物混合水又は泥土泥水を水切り濃縮処理の対象としている。
【背景技術】
【0002】
例えば、製造工場では大量の工業用水が冷却水等として使用されており、通常、一度取水された水は、使用後に回収して循環使用することが行われている。さらに、下記に述べるように、水を再利用可能にする際に、使用済みの冷却水等の中に含まれる無機系の懸濁物質は、該懸濁物質を含む大量の堆積物(無機系スラッジ)となって、廃棄されるか、必要に応じて堆積物に含まれる各種の成分を有効利用されている。具体的には、例えば、微細なスケール、ダストなどの懸濁物質を含む使用後の冷却水やガス洗浄水を水槽内に導入して、水中の懸濁物質を、自然沈殿、凝集沈殿するなどして堆積物として分離し、水を再利用することが行われている。潤滑油などの油分を含んだ水は、油分を取り除き、回収した油は燃料油等として再利用し、油分を取り除いた後の水から、上記したような方法でスケール等の懸濁物質を堆積物として分離している。また、例えば、自動車工場や金属加工工場などから発生する、めっき工程から出るクロム(Cr)や亜鉛(Zn)のような金属を含んだ水では、金属を凝集沈殿して堆積物にして分離している。また、例えば、半導体工場で発生するフッ素(F)を含む排水では、フッ素をカルシウム(Ca)と反応させてフッ化カルシウム(CaF2)として排水中に析出させて、堆積物として分離することが行われている。
【0003】
上記したように、各種の製造工場では、各工程で使用されて無機系の懸濁物質を含む状態になった大量の工業用水を、固液分離することで再利用可能な状態の水に戻して循環使用することが行われている。その際、先述したように、工業用水中の懸濁物質を自然沈殿や凝集沈殿させて、堆積物と水とに分離することが行われている。上記に限らず、懸濁物質を含む使用後の冷却水等が水路内を流れていく間に、懸濁物質が水路内に堆積することも起こる。上記した状況から、工場内の水路や水槽などの底には、大量の堆積物(無機系スラッジ)が存在する堆積箇所が多く生じている。
【0004】
上記したような水中の堆積物を分離して除去等する方法としては、従来より下記のような作業が行われている。例えば、水路内の堆積物に対しては、水路に注入する水を塞き止めて水を抜いた後、作業者が機材を用いて水路の底や側壁に溜まった堆積物を掻き出す作業が行われている。掻き出した堆積物は水を含むことから、別の場所に運搬して移動して濃縮場に貯溜して堆積物を濃縮した後、濃縮物を乾燥場で乾燥して廃棄処分や再利用されている。
【0005】
製造工場では、使用後の無機系の懸濁物質を含む大量の工業用水を水槽内に貯溜して、長時間かけて懸濁物質を自然沈降させて上澄みを水抜きし、水抜き後の堆積物(無機系スラッジ)を処理することが行われている。その場合、堆積物は水槽内に塊となって残る。この塊状になった堆積物(無機系スラッジ)の処理は、ショベルカーなどで掻き出して処理する場合もあるが、水槽の壁が高くショベルカーなどで堆積物を掻き出す作業ができない現場や、周囲の作業スペースが狭くショベルカーなどが近づけない現場もある。これらの現場では、バキューム車等の吸上車(本発明ではバキューム車を代表例とする)や送液ポンプ、サンドポンプなどで堆積物を吸引して処理する以外、方法(手段)がない場合も多い。その際、堆積物の塊の状態ではバキューム車で吸引できないため、高圧水で塊を崩して流動性を与えながら、堆積物と水との混合物をバキューム車に搭載し、該バキューム車で工場内に別途設けられている濃縮場へと運び、該濃縮場で堆積物と水との混合物を濃縮することが行われている。濃縮物はダンプカーに搭載して別に設けられている乾燥場に運び、乾燥場で乾燥させて、廃棄或いは再利用されている。上記した堆積物の処理方法は、製造工場等の敷地内で、堆積した無機系のスラッジを含む堆積物の処理として実際に行われている。
【0006】
沈積した汚泥の処理としては、下記のような提案がされている。特許文献1には、下水道や工場廃液処理槽等に沈積した汚泥を採取清掃する方法として、バキューム車で吸い上げた水分を含有する汚泥を、遠隔地に設けられている汚泥投棄場所に輸送する輸送コストの低減を目的とした移動式汚泥脱水処理方法についての提案がされている。この技術では汚泥の沈積現場において脱水処理し、含水率の低い脱水ケーキにするようにした汚泥脱水車の考案に対し、該汚泥脱水車は比較的大きく密集市街地の狭い道路等に駐車して作業をすることができない点を特有の課題としている。そして、上記課題に対して、考案された汚泥脱水車に、さらに移動可能な可搬式汚泥槽を備えた構成にしたことで全体の処理を合理化できるとしている。具体的には、バキューム車で下水等から収集した水分を含む汚泥を、適当な空き地や駐車場等に駐車している汚泥脱水車に備えられた可搬式汚泥槽に排出し、排出された汚泥を可搬式汚泥槽から汚泥脱水車に吸い上げて「ろ過分離脱水」することで、下水道等に還元する液体と含水率の低い半固形状汚泥ケーキとを得、この半固形状汚泥ケーキをダンプカーに積み込んで遠隔地の汚泥投棄場所に運搬するとした一連の処理で、全体の汚泥脱水処理を合理化している。
【0007】
なお、上記従来技術でいう「脱水」は、特許文献1にある「含水率の低い半固形状汚泥ケーキを得た」とした記載からも明らかなように、汚泥の含水率を低減させることを目的とした、汚泥を加圧或いは遠心分離して汚泥に含まれる水を絞り出す、活性汚泥処理で発生する余剰汚泥に対して行われている通常の脱水処理である。このため上記の従来技術では、汚泥のろ過を行うための装置と、これとは別に上記「脱水」を行うための装置を必要としており、これらの2種類の装置を用いることで、最終的に汚泥を、含水率の低い半固形状汚泥ケーキとして取り出している。一方、本発明は、下水処理場における余剰汚泥のような有機系のスラッジを処理対象としたものではない。本発明が処理対象としている堆積物混合水及び泥土泥水の比重は、下水汚泥のような有機系のスラッジと異なり1.0よりも大きく、本発明者らの検討によれば、例えば、1.3~4.5であり、多くが2.0~4.2の比重の大きいものである。
【0008】
無機系の懸濁物質を含む大量の堆積物(無機系スラッジ)の処理について、先の説明では各種の製造工場の無機系スラッジを例にとった。しかし、大量の無機系の懸濁物質を含む堆積物が水路内や水槽内などに発生する状況は、上記の場合に限らず下記に示すような場合も同様である。例えば、製造工場以外でも、水路内や貯水槽内や池内など(以下、水路内等と呼ぶ場合もある)に、主成分が無機系物質である汚泥が自然に堆積して生じる無機系スラッジの堆積物がある。また、大量の水を使用して行う建設工事や土木工事で大量に発生する泥土泥水に起因する無機系スラッジの堆積物や、場合によっては、大雨で流れ出した大量の泥土などに起因する無機系スラッジの堆積物などが挙げられる。上記したいずれの場合も、各種の製造工場のスラッジの場合と同様に、放置すると堆積物によって水路内や水槽内や池内が閉塞するおそれがある。泥土泥水に起因する無機系スラッジの処理については、下記のような提案がされている。
【0009】
特許文献2では、地中掘削推進工事や地中連続壁構築工事で発生する泥土泥水の処理に関し、礫、粘土、砂等を取り除いた残液に、凝集剤を添加しスラッジをフロックとして凝集し、フロック沈殿槽にてそのフロックを沈殿させ、上澄みを上澄み水水槽に移し、上澄み水中に残留するフロックをさらに沈降分離するといった方法が提案されている。
【0010】
また、特許文献3には、無機質汚泥を含む被処理水の処理方法に関し、無機質汚泥を含む被処理水に、該被処理水の固形分に対して、特定量のフライアッシュ、砂、及びセメントを添加し、その後に高分子凝集剤を添加して脱水処理をして、低コストで且つ硬い脱水ケーキを得ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭50-115179号公報
【特許文献2】特開2008-155188号公報
【特許文献3】特開2010-240519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
無機系スラッジを含む水路内等の堆積物に対して行われている従来技術の回収方法は、水路の水を塞き止める必要や、場合によっては水路内の水を抜く必要があるため、特に製造工場等にとっては操業への影響が大きく、回収の作業を実施できるタイミングが限られて計画的に堆積物の除去が行えないといった重大な問題がある。さらに、上記の回収方法は、人手による多大な労力を必要とし、非効率であることに加えて、広い作業スペースの確保も必要である。まず、水路内等の底から掻き出した直後の堆積物には大量の水分が含まれるため、濃縮場への運搬量が嵩増しされる、或いは、堆積物の流動性が高くダンプカーの荷台に積載できないなどの問題があり、これらの点でも堆積物の回収作業は非効率になる。また、その後に行う濃縮場での堆積物の濃縮は、濃縮速度が遅く滞留時間が長くなるため、次に掻き出した堆積物の置き場がないといったことが生じることもある。一方、堆積物の置き場を確保する目的で濃縮が十分でない堆積物を乾燥場に移動させた場合は、乾燥速度が遅く乾燥場における滞留時間が長くなるので、より広大な濃縮場を用意する必要が生じる。しかし、工場敷地内に、より広大な濃縮のための作業スペースを設けることは現実的ではない。
【0013】
また、先述した製造工場で行われている、無機系スラッジの懸濁物質を含む使用後の工業用水を水槽内に貯溜し、懸濁物質を自然沈降させ、上澄みを水抜きして堆積物と水とを分離し、その後に分離した堆積物を乾燥処理する方法は、下記のように処理効率に劣るという課題があった。まず、水槽を設けるための敷地が必要であり、加えて水槽内で懸濁物が沈降する速度が遅く、懸濁物が堆積して少なくとも上澄みの水抜きができる状態になるまでに数時間かかるという問題がある。さらに、下記に述べるように、堆積物と水との混合物の濃縮処理では、広い場所と、長い処理時間が必要になるという問題がある。具体的には、堆積物を水との混合体としてバキューム車で別途設けた濃縮場に運び、濃縮場で十分に濃縮させる必要があるので、広い濃縮場が必要である。さらに、濃縮場での十分な濃縮には長時間かかるため、堆積物が大量であると、濃縮場への堆積物と水との混合物の運搬が滞り、堆積物の処理が停滞することが起こり、このことに起因して操業に影響するような問題が生じる場合がある。
【0014】
また、上記した処理では、水槽内から水抜きした堆積物が塊状になってバキューム車で吸引できないことも多く、その場合は、高圧水で塊を崩して流動性を与えながら堆積物と水との混合物をバキューム車に搭載し、該バキューム車で堆積物と水との混合物を濃縮場へと運搬している。このため、バキューム車への搭載に手間と時間がかかり、また、通常のバキューム車は容量が小さく10m3程度であるので、多くの場合は、バキューム車で何度も往復して堆積物と水との混合物を運搬する必要がある。通常、濃縮場では、沈殿槽を用いており、堆積物と水との混合物を静置して自然沈降させて濃縮スラッジと分離水に分離しており、濃縮には数日かかる。濃縮場の沈澱槽で分離された分離水は上澄として除去される。一方、濃縮場で濃縮されたスラッジは、人手によって沈殿槽から掻き出すなどしてダンプカーに積み込んで、乾燥場に運ばれる。この際には、濃縮物を掻き出す作業が必要になることに加えて、バキューム車の場合と同様、堆積物が大量である場合には、ダンプカーで往復して濃縮したスラッジを運搬する必要がある。このように、上記した従来の堆積物の処理方法は、広い作業場を必要とし、濃縮処理に時間がかかり、しかも作業者への負担も大きく、効率のよい処理方法ではなかった。
【0015】
上記した従来の堆積物処理の実情に鑑みて、本発明者らは、従来技術のような、堆積物と水との混合物を濃縮するための広い作業場を必要とすることなく、大規模な設備や大掛かりな装置や、セメント等の固化剤などを使用することがなく、水を塞き止めて堆積物を回収した場合における作業者への多大な手間や、水を塞き止めて堆積物を回収した際に生じる操業への影響などを生じることなく、大量の水を含む堆積物混合水中や泥土泥水中の堆積物又は泥土の水切り処理及び濃縮処理を、できるだけ短時間で簡便にすることができる経済的な方法を開発することが急務であるとの認識をもった。そのためには、堆積物が生じている現場で簡便に堆積物を処理することができる、いわゆるオンサイト処理の技術が確立できれば極めて有用である。
【0016】
したがって、本発明の目的は、大量の水を含んだ状態の、主成分が無機系スラッジである堆積物混合水又は泥土泥水を処理する場合に、水路内等の水を塞き止めたり、水抜きすることなく、好ましくは堆積物混合水又は泥土泥水が生じている現場で、堆積物混合水又は泥土泥水の水切り処理及び濃縮処理を、簡便に、且つ、従来行われている処理に比べて格段に短時間に行うことが実現できる、有用な水切り濃縮処理技術を新たに開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記した目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、下記の堆積物又は泥土の水切り濃縮処理方法を提供する。
主成分が無機系スラッジである堆積物を水中に含む堆積物混合水、又は、泥土泥水を水切りして堆積物又は泥土を濃縮するための処理方法であって、
前記堆積物混合水が、水路内或いは水槽内或いは池内からポンプで吸い上げた状態の前記堆積物と水とを含むものであり、
前記泥土泥水が、ポンプで吸い上げた、工事用の水と地中の泥土の混合物、或いは、水害後の水と泥土との混合物のいずれかであり、
重力式の高速固液分離装置であるベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面上に、前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を供給して固液分離を行って、水を切って堆積物又は泥土を濃縮する固液分離工程を有し、且つ、
前記堆積物混合水又は前記泥土泥水が、前記通水性のベルト面上に供給される直前までに、前記堆積物混合水又は前記泥土泥水に高分子凝集剤を添加することを特徴とする堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【0018】
上記において、高分子凝集剤の添加をポンプで堆積物と水とを吸い上げる時点から、通水性のベルト面上に堆積物混合水又は泥土泥水が供給される直前までに行う構成にすること、また、通水性のベルト面上に堆積物混合水又は泥土泥水を導入する際に、前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を、前記ベルト型ろ過濃縮機に設けられた、堆積物混合水又は泥土泥水を前記通水性のベルト面上に広範囲に供給するための投入口までポンプで送る構成とすることが好ましい。
【0019】
本発明では、上記した基本構成を具体化した下記の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法を提供する。
[1]主成分が無機系スラッジである堆積物を水中に含む堆積物混合水、又は、泥土泥水を水切りして堆積物又は泥土を濃縮するための処理方法であって、
前記堆積物混合水が、水路内或いは水槽内或いは池内からポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた前記堆積物と水とを含むものであり、
前記泥土泥水が、ポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた、土木工事で発生する水と泥土の混合物、或いは、水害後の水と泥土との混合物のいずれかであり、
重力式の高速固液分離装置であるベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面上に、濁水濃度が0.5w/v%以上、20w/v%以下である前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を供給して固液分離を行って、水を切って前記堆積物又は前記泥土を濃縮する固液分離工程と、
前記堆積物混合水又は前記泥土泥水が前記通水性のベルト面上に供給される直前までに前記堆積物混合水又は前記泥土泥水に高分子凝集剤を添加する高分子凝集剤の添加工程を有し、且つ、該高分子凝集剤の添加工程で、添加された高分子凝集剤と前記堆積物混合水又は前記泥土泥水とを撹拌混合させることができる機能と、撹拌混合させた前記高分子凝集剤と前記堆積物混合水又は前記泥土泥水とを前記ベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面に供給することができる機能とを有してなる供給用ポンプと、該供給用ポンプに接続された移送管とを用いて、前記高分子凝集剤が前記堆積物混合水又は前記泥土泥水と混ざり合う状態になるようにすることを特徴とする堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【0020】
また、本発明では、上記基本構成を上記した[1]よりもさらに具体化した下記の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法を提供する。
[2]主成分が無機系スラッジである堆積物を水中に含む堆積物混合水、又は、泥土泥水を水切りして堆積物又は泥土を濃縮するための処理方法であって、
前記堆積物混合水が、水路内或いは水槽内或いは池内からポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた状態の前記堆積物と水とを含むものであり、
前記泥土泥水が、ポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた、土木工事で発生する水と泥土の混合物、或いは、水害後の水と泥土との混合物のいずれかであり、
重力式の高速固液分離装置であるベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面上に前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を供給するための、前記ベルト面の幅と同様の幅を有する出口と、該出口に向かって前記堆積物混合水又は前記泥土泥水が、前記ベルト面の幅と同様の幅で前記出口まで緩やかに流れる領域とを有してなる投入口から、該領域に移送管で送られてきた濁水濃度が0.5w/v%以上、20w/v%以下である前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を自重で流下させ、該流下後に前記通水性のベルト面に向けて流れていく堆積物混合水又は泥土泥水を前記通水性のベルト面上に供給して、該通水性のベルト面上で固液分離を行って、水を切って前記堆積物又は前記泥土を濃縮する固液分離工程と、
前記堆積物混合水又は前記泥土泥水が前記通水性のベルト面上に供給される直前までに前記堆積物混合水又は前記泥土泥水に高分子凝集剤を添加する高分子凝集剤の添加工程を有し、且つ、該高分子凝集剤の添加工程で、添加された高分子凝集剤を前記堆積物混合水又は前記泥土泥水と撹拌混合しながら前記通水性のベルト面まで供給するための供給用ポンプと、該供給用ポンプの吸い込み側と吐出側にそれぞれ接続された前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を前記投入口に送るための前記移送管とを用いて、前記投入口を構成する前記出口の位置までに、前記高分子凝集剤が前記堆積物混合水又は前記泥土泥水と混ざり合った状態になるように構成することを特徴とする堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【0021】
上記した[2]の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法の好ましい形態としては、下記[3]の方法が挙げられる。
[3]さらに、前記流下した堆積物混合水又は泥土泥水が前記通水性のベルト面上に供給されるまでの間で、且つ、該ベルト面に至る直前の位置に堰を設けて、前記供給用ポンプによって送られてくる前記堆積物混合水又は前記泥土泥水の流れを調節した状態にしてから前記ベルト面に供給するように構成した上記[2]に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【0022】
上記した[1]又は[2]の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法の好ましい形態としては、下記の方法が挙げられる。
[4]さらに、前記ポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を撹拌機能を有する濃度調整槽に導入し、該濃度調整槽で前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を濁水濃度が0.5w/v%以上、20w/v%以下になるように調整する上記[1]~[3]のいずれか1に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
[5]前記濁水濃度が1w/v%以上、15w/v%以下である上記[1]~[4]のいずれか1に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【0023】
[6]前記ベルト型ろ過濃縮機が、車載されて移動可能に構成されている上記[1]~[5]のいずれか1に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
[7]前記通水性のベルトが、織物構造を有してなり、且つ、目開きが1000μm以下である上記[1]~[6]のいずれか1に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
[8]前記堆積物混合水及び前記泥土泥水の比重が1.0よりも大きい上記[1]~[7]のいずれか1に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
[9]前記無機系スラッジが、工場系スラッジである上記[1]~[8]のいずれか1に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【0024】
[10]さらに、前記固液分離工程で固液分離された水を切って濃縮された前記堆積物又は前記泥土を含む前記ベルト面上の残留物を剥ぎ落して取り除いた後、該通水性のベルト面を水で洗浄するための洗浄工程を有し、該洗浄工程で洗浄した後の通水性のベルト面上に前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を供給して連続処理をする上記[1]~[9]のいずれか1に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
[11]さらに、前記固液分離工程で固液分離された水を切って濃縮された前記堆積物又は前記泥土を含む前記ベルト面上の残留物を剥ぎ落して取り除き、該取り除いた残留物を、脱水するための脱水工程及び/又は乾燥するための乾燥工程を有する上記[1]~[10]のいずれか1に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法。
【0025】
また、本発明は別の実施形態として、下記の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮装置を提供する。
[12]水路内或いは水槽内或いは池内からポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた主成分が無機系スラッジである堆積物を水中に含む堆積物混合水、又は、ポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた、土木工事で発生する水と泥土の混合物、或いは、水害後の水と泥土との混合物、のいずれかの泥土泥水を水切りして前記堆積物又は前記泥土を濃縮する際に用いられる水切り濃縮装置であって、
重力式の高速固液分離装置であるベルト型ろ過濃縮機と、該ベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面上に前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を供給するための投入口と、前記ポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を前記通水性のベルト面まで供給するための供給用ポンプと、該供給用ポンプの吸い込み側と吐出側にそれぞれ接続された前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を前記投入口に送るための前記移送管とを有してなり、
前記投入口が、前記ベルト面の幅と同様の幅を有する出口と、該出口に向かって前記堆積物混合水又は前記泥土泥水が、前記ベルト面の幅と同様の幅で前記出口まで緩やかに流れる領域とを有してなり、該領域が緩い角度で傾斜した幅広の水路を有し、且つ、前記出口が、該出口に向かって流れてくる前記堆積物混合水又は前記泥土泥水を自重で流下させる構造を有してなることを特徴とする堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮装置。
【0026】
上記した堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮装置の好ましい形態としては、下記が挙げられる。
[13]さらに、前記出口から流下した前記堆積物混合水又は前記泥土泥水が流れて、前記通水性のベルト面上に供給されるまでの間で、且つ、該通水性のベルト面に至る直前の位置に流れを調節するための堰が設けられている上記[12]に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮装置。
[14]前記通水性のベルトが、織物構造を有してなり、且つ、目開きが1000μm以下である上記[12]又は[13]に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮装置。なお、本発明では、通水性のベルトとして、SUS製又は樹脂製のものを用いることができる。
[15]前記ベルト型ろ過濃縮機が車載されて移動可能に構成されている上記[12]~[14]のいずれか1に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮装置。
[16]前記堆積物混合水及び前記泥土泥水の比重が1.0よりも大きい上記[12]~[15]のいずれか1に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮装置。
[17]さらに、前記通水性のベルト面上に供給されて水切りされて濃縮された前記堆積物混合水又は前記泥土泥水の残留物が剥ぎ落されて取り除かれた状態の前記ベルト面を水で洗浄する洗浄機構を有してなる上記[12]~[16]のいずれか1に記載の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮装置。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、大量の水を含んだ状態の、主成分が無機系スラッジである堆積物混合水又は泥土泥水を処理した場合に、堆積物混合水又は泥土泥水の水切り及び濃縮を、堆積物混合水又は泥土泥水が生じている現場や、現場近くの適宜な場所など(以下、代表して現場と呼ぶ)で、簡便に且つ従来の処理に比べて格段に短時間で行うことが実現できる、極めて有用な水切り濃縮処理方法が提供される。すなわち、本発明によれば、従来技術と異なり、堆積物混合水又は泥土泥水の濃縮のための広い作業場を必要とすることなく、大規模な設備や大掛かりな装置や、セメント等の固化剤などを使用することなく、また、水を塞き止めて堆積物を回収する場合の作業者における多大な手間や、堆積物を回収した際に生じる操業への影響などの問題を生じることがなく、従来の処理に比べて極めて短時間に、大量の水を含む堆積物混合水や泥土泥水の水切り及び濃縮を現場で簡便にすることが実現可能になる、堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法が提供される。また、該濃縮処理方法に効果的に適用できる機動力にも優れる堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮装置が提供される。本発明の水切り濃縮処理方法によれば、重力式の高速固液分離装置であるベルト型ろ過濃縮機に投入した堆積物混合水又は泥土泥水を、短時間に、通水性のベルトによって分離(脱離)して水と濃縮汚泥とに固液分離できる。そして、ベルト面上の残留物は、ベルト面から容易に剥離するので回収が容易であるため、ベルト型ろ過濃縮機で連続処理することが可能である。このため、本発明の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法によれば、大量の堆積物等を現場で処理できるという顕著な効果が奏される。さらに、本発明の水切り濃縮処理方法は、製造工場や加工工場等の工場敷地内の水路内等で問題となっている無機系スラッジを含む堆積物をはじめとして、各種建造物の基礎やトンネルを埋設する土木工事において行われる、大量の水を使用して行う掘削工事や、資材の搬入のために船が接岸する護岸工事などにおいて生じる、泥や海砂を含む泥土泥水、さらには、大雨で生じる泥土泥水等に広く適用できる、実用上極めて有用な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法を、水路内の堆積物に適用した一例の概略を説明するための模式フロー図である。
【
図2】本発明の水切り濃縮処理方法を、水槽内の堆積物に適用した模擬実施例の概略を説明するための模式フロー図である。
【
図3】本発明の水切り濃縮処理方法の検討試験で行った、ベルト型ろ過濃縮機を構成する通水性のベルト面上に高分子凝集剤を添加した堆積物混合水を供給してベルト面の残留物と分離水の性状を確認する試験の概略を説明するための模式図である。
【
図4a】
図3の検討試験で、SUS製の通水性のベルト面上に残留した堆積物と分離水の様子を示す写真の図である。
【
図4b】
図3の検討試験で、樹脂製の通水性のベルト面上に残留した堆積物と分離水の様子を示す写真の図である。
【
図5a】
図3の検討試験で使用したで、SUS製の通水性のベルト面の構造の概略を説明するための模式図である。
【
図5b】
図3の検討試験で使用したで、樹脂製の通水性のベルト面の構造の概略を説明するための模式図である。
【
図6】本発明の水切り濃縮処理方法で使用するベルト型ろ過濃縮機を構成する通水性のベルト面の例を示す図である。
【
図7】水路内の堆積物を水と共にポンプで採取し、採取物を濃縮場の沈澱槽に導入する前に高分子凝集剤を添加し、濃縮場の沈澱槽で水抜き濃縮した濃縮物を回収してダンプカーで運搬する模擬比較例2の処理方法の概略を説明するための模式フロー図である。
【
図8】水槽内を水抜きし、水槽内に残った塊状の堆積物を高圧水で崩しながらバキューム車に導入し、導入された堆積物と水との混合物を濃縮場の沈澱槽に導入し、濃縮場の沈澱槽で濃縮処理をして濃縮した濃縮物を回収してダンプカーで運搬する模擬比較例1の処理方法の概略を説明するための模式フロー図である。
【
図9】実際の水路内の堆積物に適用した、本発明の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法を実施するために作製した小型の試験設備の一例の概略を説明するための模式フロー図である。
【
図10】
図9に示した堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法の構成に、さらに濃度調整槽を配置した小型の試験設備の一例の概略を説明するための模式フロー図である。
【
図11】
図9及び
図10の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法で使用した小型の試験設備における投入口と、堰の概略と堰の位置の一例を説明するための模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、好ましい実施形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。本発明者らは、先に説明した従来技術の現状に対して、製造工場等で生じる無機系スラッジを含む大量の堆積物の処理を、堆積物が存在している現場で処理することが可能であり、しかも、簡便な方法で短時間に処理することができる技術を開発すべく鋭意検討を行った。本発明者らは、上記で説明した処理に苦慮し、処理に時間や場所や人手がかかっている要因は、処理対象とする堆積物や泥土が、粒径が0.4μm~800μm程度の大きさの無機系スラッジを大量に含む汚泥状、泥漿状のものであり、容易にろ過できるものでなく、しかも水路内等に存在しているため、そのまま採取すると大量の水を含む状態になり、処理対象が膨大になる点にあることに注目した。そして、処理対象の堆積物混合水又は泥土泥水はろ過が困難である一方、水切りをして減容化する必要があることから、水を抜いての回収作業や、濃縮場での濃縮処理が行われている点に注目した。
【0030】
本発明者らは、堆積物が存在している水路内等の現場の状況と、従来行われている水路内等の堆積物の処理方法から、重要なことは、無機系スラッジを含む堆積物を大量の水と一緒に採取した状態の堆積物混合水を、大量の水を含む状態のままで濃縮処理することができ、特に、処理する際に、上記堆積物混合水が存在している現場で、短時間に水と堆積物を固液分離でき、分離水(脱離水)を、採取した水路内等に戻し、一方、堆積物を、廃棄や、再利用に十分な程度及び状態に濃縮することができる簡便な方法を開発することであるとの結論に至った。
【0031】
まず、水路内の水を塞き止めたり、水路内や水槽内の水を抜いて水底の堆積物を回収する方法は、操業への影響が大きいため、無機系スラッジを含む堆積物を大量の水と一緒に採取して、採取したままの状態で処理できる方法(すなわち、堆積物混合水を処理する方法)の開発が望まれる。従来技術で行われている濃縮場で行う濃縮処理の方法は、広い作業場と長い処理時間を必要とするので、現場での処理には使用できない。また、現場に濃縮場を設置することができたとしても、堆積物混合水は大量の水を含み、しかも、処理対象の堆積物や泥土が、粒径が0.4μm~800μm程度の大きさの無機系スラッジを大量に含む汚泥状、泥漿状のものであるので沈降分離(水と脱離)しにくく、水切りに時間がかかり極めて処理効率に劣り、この点でも有効な手段ではない。
【0032】
上記した従来の処理の実情に鑑みて本発明者らは、水路内等から採取した大量の水を含む堆積物混合水を、現場で、そのままの状態で処理を行うことができ、しかも、水と堆積物に、効率よく、且つ、廃棄や再利用に十分な状態に固液分離することができる簡便な手段を見出すことが重要であるとの認識をもった。ここで、有機系スラッジである余剰汚泥を濃縮及び脱水する装置として、ベルト型ろ過濃縮機或いはベルト濃縮機と呼ばれているものが知られており、活性汚泥を用いた水処理場等で広く使用されている。先に述べたように、余剰汚泥の処理では、最終的に余剰汚泥をより含水率の低い半固形状汚泥ケーキとしているため、上記した濃縮機においても、より含水率を低くすることが求められている。このため、例えば、内圧を加えて汚泥を圧搾脱水するベルト型ろ過濃縮機なども知られている。
【0033】
本発明者らは、本発明の目的を達成するための検討過程で、この余剰汚泥を濃縮・脱水する際に用いられているベルト型ろ過濃縮機の利用について検討を行った。その結果、ベルト型ろ過濃縮機と高分子凝集剤とを巧みに利用することで、本発明が処理対象としている、水路内等に大量に存在する無機系スラッジを含む堆積物混合水中の堆積物や、掘削工事や水害等の際に大量に発生する泥土泥水中における泥土からの、水の脱離性の向上を実現することによって短時間で水切りを可能にすることができ、堆積物や泥土の濃縮が、本発明の目的を達成できる程度に速やかに、且つ、十分に効果的にできることを見出して本発明に至った。
【0034】
上記した検討過程で、本発明者らは、有機系スラッジと無機系スラッジとの大きな相違点に注目した。下水汚泥などの有機系スラッジの真比重は、1.05~1.1程度であるのに対して、本発明が処理対象としている、主成分が無機系スラッジである堆積物を水中に含む堆積物混合水や泥土泥水の真比重はこれよりも格段に大きい。本発明者らは、この点について、具体的に、処理が必要な製造工場内の各種堆積物混合水や、海岸の海砂を含む堆積物混合水や、泥土泥水についてサンプリングをして、真比重を測定した。その結果を表Aに示した。表Aにあるように、本発明が処理対象としている堆積物混合水及び泥土泥水の真比重は、下水汚泥のような有機系のスラッジと異なり1.0よりも大きく、例えば、1.3~4.5であり、多くが2.0~4.2の比重の大きいものである。このことから本発明者らは、本発明の処理対象に対しては、余剰汚泥を濃縮・脱水する際に用いられているベルト型ろ過濃縮機を余剰汚泥の場合と同様に適用することはできないとの認識をもち、使用の可能性について検討を行った。
【0035】
【0036】
本発明者らの検討によれば、まず、ベルト型ろ過濃縮機として重力式の単純な機構のものを用い、且つ、堆積物混合水又は泥土泥水がベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面上に供給される直前までに、堆積物混合水又は泥土泥水に高分子凝集剤を添加するという簡便な手段で、通水性のベルト面上に導入された堆積物混合水又は泥土泥水から、水がベルトの下部に速やかに通水して良好な水切りがされ、一方、ベルト面上の残留物である堆積物又は泥土は、本発明が目的とする程度に十分に濃縮され、しかも剥離性が良好な状態になることを見出した。
【0037】
本発明者らの検討によれば、特に、高分子凝集剤が添加された状態の堆積物混合水又は泥土泥水が供給用ポンプで送られて、ベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面上に供給して導入されるようにすることが有効である。本発明者らは、このように構成することで、粒径が0.4μm~800μmの大きさの無機系スラッジを多く含む汚泥状、泥漿状の、大小様々な粒子からなる堆積物や泥土が効果的に凝集し易くなり、ベルト面上の濃縮汚泥(残留物)は水の脱離性が向上して、被処理物である凝集汚泥からの水切りがよくなることを見出した。その具体的な方法として、ベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面上に、堆積物混合水又は泥土泥水を供給する際に、高分子凝集剤が添加された堆積物混合水又は泥土泥水を、前記通水性のベルト面上に広範囲に供給するための投入口を設け、該投入口まで供給用ポンプで送るようにすることがより効果的であることを見出した。このようにすれば、高分子凝集剤が添加された堆積物混合水又は泥土泥水が、上記投入口まで供給用ポンプで送られている間、さらにはベルト面上に供給される際に、堆積物混合水又は泥土泥水と高分子凝集剤が十分に混ざり合う状態(すなわち、均一な状態)になり、その結果、大小様々な大きさの堆積物を構成する金属等の粒子や泥土が、効果的に速やかに凝集するようになる。そして、凝集した堆積物や泥土は、通水性のベルト面上に残留し、残留物からは水が効果的に分離(脱離)して、水切り処理と濃縮処理が効果的になされることを見出した。
【0038】
本発明者らの検討によれば、この際に使用する堆積物混合水又は泥土泥水(濃縮対象物とも呼ぶ)を供給するための供給用のポンプとして、堆積物混合水又は泥土泥水と高分子凝集剤とが均一に混ざり、且つ、これらを移送する際に、せん断力や衝撃が発生しないポンプを用いることが好ましい。さらに、供給用ポンプの吸い込み側のホースラインや配管等の移送管内に高分子凝集剤を添加して、高分子凝集剤が添加された状態の濃縮対象物を、通水性のベルト面に供給するように構成することがより好ましい。例えば、往復運動式のポンプであるダイヤフラムポンプは、吸入と吐出を繰り返し行う有脈動タイプであるので、ダイヤフラムポンプでベルト面に供給する際に、添加した高分子凝集剤を、堆積物混合水中又は泥土泥水中に均一に拡散させることができ、且つ、移送する際にせん断力や衝撃が発生しないため、堆積物や泥土の凝集を効果的に行うことができる。本発明において、ダイヤフラムポンプの吐出側の移送管内に高分子凝集剤を添加することも好ましい形態であるが、上記したように、高分子凝集剤の添加は、ダイヤフラムポンプの吸い込み側の移送管内に行うことがより好ましい。また、上記したいずれの場合も、ダイヤフラムポンプの有脈動を利用して高分子凝集剤の良好な添加状態を得るためには、ダイヤフラムポンプに近い位置で移送管内に高分子凝集剤を添加するように構成することが好ましい。ダイヤフラムポンプ以外に、本発明に利用できる、堆積物混合水又は泥土泥水と高分子凝集剤とが均一に混ざり、且つ、これらを移送する際に、せん断力や衝撃が発生しないポンプとしては、例えば、ねじポンプ及びベーンポンプ等が挙げられる。
【0039】
本発明者らの検討によれば、堆積物や泥土の凝集をより効果的に行って本発明の目的を安定して十分に達成するためには、さらに、上記で説明した供給用のポンプの吸い込み側及び吐出側に配置させるホースラインや配管等の移送管の長さが短すぎないようにすることが好ましい。実際の現場を想定した規模で検討したところ、下記に述べるように、特に吐出側の移送管の長さについて下記の傾向があることを確認した。同じダイヤフラムポンプで、吸い込み側の移送管に高分子凝集剤を同じように添加して、それぞれ同じ条件で濃縮対象物を流量500L/minの速さで移送して通水性のベルト面に供給した。そして、吐出側の移送管として、ホース内径80mm、ホース長さ5mの移送管を用いた場合と、ホース内径80mm、ホース長さ1mの移送管を用いた場合について検討した。その結果、長さ5mの移送管を用いた場合は、ベルト面上に残留物が多く残り、脱離水にSSが流出しなかったのに対し、長さ1mの移送管を用いた場合は、ベルト面上の残留物の量が少なく、脱離水にSSが流出し、さらにベルト面に目詰りが認められた。この結果、高分子凝集剤が添加された濃縮対象物がホースライン等の移送管の中を移送される状態を設けることが、良好な凝集を効果的にさせるために有効な手段であることがわかった。例えば、特に吐出側の移送管の長さを1mよりも長くし、好ましくは3m以上、さらには5m程度とすることがより好ましい。
【0040】
本発明者らの検討によれば、上記したような長さの移送管を用いて高分子凝集剤が添加された濃縮対象物を移送した場合、移送管内で高分子凝集剤が濃縮対象物に十分に混ざり合って均一な状態になることで、濃縮対象物を構成する堆積物や泥土の凝集が良好な状態になるように行われ、その状態でベルト面上に供給されて、高い残留率で残留物として残る。本発明者らの検討によれば、上記した凝集性への影響が大きい移送管の長さの選択に加えて、移送管の内径や、移送管内を流れる濃縮対象物の流量や、移送管の材料を適宜に選択することで、濃縮対象物の凝集性を高めることができる。例えば、内径が大きすぎても凝集性の向上効果が損なわれる傾向があり、流量が多く流速が速すぎると、せっかく凝集したスラッジが崩れてしまって残留物の量が減少する場合があるので留意する必要がある。本発明者らの検討によれば、実際の現場で使用する規模を想定した場合、例えば、下記のように設計することで、ベルト面上に良好な状態の凝集物を得ることができる。例えば、移送管(ホース)として、口径(内径)が80mm程度のポリ塩化ビニル製のホースを用いて、移送管内を流れる濃縮対象物の流量を500L/min~700L/min程度(流速として1.6m/sec~2.3m/sec程度)になるように流量を調整した場合、移送管の長さを少なくとも3~5m程度とする実施形態などが挙げられる。
【0041】
上記したように、本発明では、高分子凝集剤が添加された状態の濃縮対象物を通水性のベルト面上に供給する際に上記した供給用のポンプを用いること、さらに、該供給用ポンプの吸い込み側と吐出側にそれぞれ接続された濃縮対象物を通水性のベルトに送るための移送管を利用することで、濃縮対象物を構成する堆積物や泥土の良好な凝集を行うようにしたことを特徴としている。本発明者らの検討によれば、上記に加えて、濃縮対象物である堆積物混合水又は泥土泥水をベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面上に広範囲に供給するために設けた投入口の構成を、上記で得た良好な凝集状態を崩すことなく通水性のベルト面上に供給できるようにすることが好ましい。
【0042】
具体的には、投入口の構成を、通水性のベルト面上に高分子凝集剤が添加された濃縮対象物を供給するための、前記ベルト面の幅と同様の幅を有する出口と、該出口に向かって前記濃縮対象物が前記ベルト面の幅と同様の幅で前記出口まで緩やかに流れる領域とを有してなる構造のものにすることが好ましい。より具体的には、投入口を構成する上記領域として、例えば、傾斜角0.5~5.0°程度で、出口に向かって流下するように傾斜させた流路を設ければよい。そして、上記した領域に移送管で送られてきた濁水濃度が0.5w/v%以上、20w/v%以下である濃縮対象物を、投入口の出口から自重で流下させ、流下後に通水性のベルト面に向けて流れていく濃縮対象物を前記通水性のベルト面上に供給するように構成することが好ましい。このようにすることで、通水性のベルト面に供給されるまでの間に、濃縮対象物の大小様々な大きさの堆積物を構成する金属等の粒子や泥土を良好な状態に凝集させた凝集物を、凝集したスラッジの状態を崩すことなく良好な状態で通水性のベルト面に供給することができる。この結果、濃縮対象物を構成する堆積物や泥土の殆どすべてを通水性のベルト面上に残留させることができ、脱離水中に懸濁物(SS)が流出しない状態にすることができる。
【0043】
図11に投入口の一例を模式的に示した。本発明を構成する投入口は、通水性のベルト面の幅と同様の幅を有する出口と、該出口に向かって濃縮対象物が、前記ベルト面の幅と同様の幅で前記出口まで緩やか(穏やか)に流れる領域とを有してなる。具体的には、
図11に示したように、該流れる領域は、緩い角度で傾斜した幅広の水路を有してなることで、移送管から移送される凝集したスラッジの状態の濃縮対象物が、崩れることなく水路内を穏やかに流れることを実現している。そして、出口は、上記領域から該出口に向かって流れてくる凝集したスラッジの状態の濃縮対象物を自重で流下させる構造を有してなる。このように構成したことで、凝集したスラッジの状態を崩すことなく良好な状態で通水性のベルト面に供給することが可能になる。
【0044】
本発明の好ましい実施形態としては、
図11に例示したように、例えば、上記出口から自重で流下した凝集したスラッジの状態の濃縮対象物が通水性のベルト面上に供給されるまでの間で、且つ、該ベルト面に至る直前の位置に堰を設けて、投入口から送られてくる凝集したスラッジの状態の濃縮対象物の流れを調節することが挙げられる。上記した位置に堰を設けることで、より好ましくは、例えば、堰の高さを適宜に変更できるように構成することで、凝集したスラッジの状態の濃縮対象物を、通水性のベルト面上に均一な状態で安定して供給することができる。この結果、通水性のベルト面によって行う固液分離を効率よく行うことができるようになる。また、設ける堰の数や、堰を設ける位置は上記した例に限定されない。例えば、本発明を構成する投入口の濃縮対象物がベルト面の幅と同様の幅で出口まで緩やか(穏やか)に流れる領域に堰を設けること(不図示)も好ましい形態である。本発明者らの検討によれば、例えば、領域の長さや傾斜の状態や、移送管から投入口の該領域に移送される凝集したスラッジの状態に応じて、領域内に堰を1箇所以上に設けることで、移送されてきた凝集したスラッジを崩すことなく安定して出口に向けて緩やか(穏やか)に流すことができるように補助することが可能になる。
【0045】
投入口を構成する出口の位置を、ベルト面上から垂直方向に離れた状態に配置することで、凝集したスラッジの状態の濃縮対象物を自重で流下させることができる。流下した凝集したスラッジの状態の濃縮対象物は、その後、通水性のベルト面に、或いは、必要に応じて設けた後述する堰を介して通水性のベルト面に供給される。上記のように構成したことで、濃縮対象物は、大量の水の中に懸濁している無機系スラッジや泥土が効果的に凝集した状態で通水性のベルト面上に供給されることになる。その結果、通水性のベルト面上に供給された濃縮対象物は、微細な無機系スラッジや泥土が、サイズの大きな無機系スラッジや泥土と効果的に凝集して微細な粒子を含む凝集したスラッジの状態でベルト面に残留し、該ベルト面を通水した水は、微細な粒子による濁りが大きく低減した、SSが流出していない清浄(清澄)なものになる。後述するように本発明者らは、本発明の水切り濃縮処理方法で処理した場合、通水性のベルト面上に残留する濃縮汚泥(残留物)は、大量の水の中に懸濁して存在する大小様々な無機系スラッジや泥土が良好な状態に凝集した状態になることを確認した。また、これらの濃縮汚泥がベルト面に供給された場合に極めて良好な水の脱離性(水切り性)を示すことを確認した。本発明によれば、処理対象物である堆積物混合水中又は泥土泥水中の堆積物や泥土がベルト面上に供給された際に、通水性のベルトを通過せず、目詰りを起こし難い状態に凝集した良好なスラッジになり、その状態で、本発明で使用するベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面に導入されるため、本発明の処理方法を構成するベルト型ろ過濃縮機の設計が容易になる。また、多様な形状のベルト面を有する濃縮機が広く利用できるので、この点でも実用上のメリットがある。
【0046】
本発明の処理方法で使用するベルト型ろ過濃縮機は、特に限定されないが、前記したように、高分子凝集剤が添加された堆積物混合水又は泥土泥水を良好な状態に凝集させたスラッジをベルト面に供給して水切り・濃縮処理をした場合に、ベルト面が耐えられる強度と耐久性を有し、且つ、供給される大量の堆積物混合水等を良好な状態に供給させることができ、大量の水の中に存在する大小様々な無機スラッジをできるだけベルト面上に捕獲できるような形状のものであることが好ましい。例えば、ベルト面が、
図6に例示したような、通水性を有し、且つ、微細な凝集汚泥が捕捉されるように緻密な状態に設計されているものであることが好ましい。このようなものとしては、例えば、特開平5-180274号公報に記載されているような構造を利用してなる、無端状スパイラルベルトが挙げられる。通水性のベルトの材質は、ステンレス製(SUS製)であっても、樹脂製であってもよい。
図5に、本発明の処理方法についての、検討試験及び模擬実施例で使用したベルト面の形状及び構造を例示した。具体的な通水性のベルトとしては、例えば、平織や綾織や朱子織等の、形成されたベルト面に規則的な目開きが設けられる織物構造を有するものが好ましい。例えば、目開きが1000μm以下である織物構造を有するものが好ましい。本発明者らの検討によれば、特に樹脂製の朱子織のベルトを用いた場合に、目詰りを生じにくく凝集した堆積物や泥土がベルト面上に良好な状態で残留し、該残留物は剥離しやすく、また、分離水が透明でSSの流出がないものになるので好ましい。
【0047】
本発明の水切り濃縮処理方法で使用する、重力式の高速固液分離装置であるベルト型ろ過濃縮機としては、基本的には、先に述べた余剰汚泥等の有機系スラッジの濃縮・乾燥に用いられている濃縮機を使用することができる。但し、余剰汚泥の濃縮・乾燥に用いられている濃縮機は、処理対象の余剰汚泥は比重が1.1程度と軽く、余剰汚泥をベルト面へ導入する際に、濃縮機の直前に設置された凝集混和槽内で、余剰汚泥と高分子凝集剤を凝集混和槽内の撹拌羽根で緩やかに撹拌混合して形成した凝集物を、ベルト面に越流させるようにして緩やかに流しており、これらの点で本発明と異なる。本発明者らの検討によれば、本発明の水切り濃縮処理方法で対象とする堆積物混合水又は泥土泥水は、余剰汚泥よりも比重が大きく性状が全く異なるため、上記した余剰汚泥の場合に行っていると同様の撹拌混合方法を適用しても良好な水切り濃縮処理を行うことができない。その理由としては、比重の大きい堆積物混合水又は泥土泥水と高分子凝集剤を均一に混合させるためには、余剰汚泥と高分子凝集剤とを混合するときよりも強く撹拌して混合する必要があり、このような強い撹拌によって凝集したスラッジが崩れてしまう点が挙げられる。また、上記に加えて水切り濃縮対象物の比重が大きいことで、ベルト面に流した際に下から上へと越流させることができず、水切りが円滑にできないという問題もある。したがって、本発明の水切り濃縮処理方法に好適に適用できるようにするためには、先に述べたように、通水性のベルト面上に、処理対象となる高分子凝集剤を添加した後の凝集した凝集物(スラッジ)を、崩すことなく広範囲に供給してベルト面上により多くの凝集物(スラッジ)が均一に残留するように設計(構成)する必要がある。このため、重力式の高速固液分離装置であるベルト型ろ過濃縮機を本発明に適用するには、先述したように、通水性のベルト面の構造や構成、堆積物混合水又は泥土泥水と高分子凝集剤の撹拌混合方法、ベルト面への投入口の構造等について変更して使用する必要がある。
【0048】
また、本発明の水切り濃縮処理方法の最大の目的は、濃縮対象物である堆積物混合水又は泥土泥水が生じている現場或いは現場の近傍で、堆積物混合水又は泥土泥水の水切り処理及び濃縮処理を行うこと、さらには様々の場合に適用できる汎用の処理を可能にすることである。このため、小型のベルト型ろ過濃縮機を現場に設置して処理を行う構成としてもよいが、汎用性を高めるためには、ベルト型ろ過濃縮機を可搬式にして移動可能な構成にすることがより好ましい。例えば、ベルト型ろ過濃縮機を、大型トラックやトレーラー或いは特殊な仕様のトラック(自走式キャリヤと呼ばれるもの)等に積載して、簡便に自在に移動できる可搬式とすれば、より利便性が向上する。このように構成すれば、例えば、
図1に示したように、堆積物混合水又は泥土泥水が存在する処理を必要としている地点に上記したベルト型ろ過濃縮機を積載した大型トラックなどで向かい、その地で本発明の水切り処理及び濃縮処理をすれば、水路内等から採取した対象とする堆積物混合水又は泥土泥水から、短時間で清澄な水を分離して、元の水路内等に分離した水を戻し、通水性のベルト面上に、水切りして流動性が低下した、堆積物又は泥土の濃度が高まって濃縮された残留物(濃縮汚泥)が良好な状態で残る。そして、大小様々な粒子が凝集した沈降性が向上したベルト面上の残留物は目詰りを起こしにくく、ベルト面上から剥離し易く、取り出し易く、回収が簡便に行える性状のものであり、回収品を容易に搬送用のダンプカーの荷台に乗せることができる。本発明によれば、短時間に良好な固液分離をして、堆積物や泥土の水切り及び濃縮ができるため、連続して処理することが可能であり、現場の大量の堆積物の水切り濃縮処理を、現場で行うことができる。上記のようにしてベルト面上から回収した水切り及び濃縮された残留物は、ダンプカーで運ばれて、そのまま処理されるか、場合によっては、さらに脱水工程や乾燥工程を経て再利用或いは廃棄される。
【0049】
本発明で使用する高分子凝集剤は、特に限定されず、カチオン性、アニオン性及び両性のいずれかの高分子凝集剤を、単独で又は複数を組み合わせて用いることができる。例えば、特許第6374351号公報に記載されているような高分子凝集剤を使用することができる。また、堆積物混合水又は泥土泥水をベルト型ろ過濃縮機で水切りする際に、より清澄な水を得ることを目的として、上記の高分子凝集剤と、ポリ硫酸第二鉄、PACなどの無機凝集剤を併用してもよい。本発明者らの検討によれば、本発明の処理方法の汎用性を高める目的で、アニオン性とカチオン性の高分子凝集剤を併用することも好ましい実施形態である。例えば、アニオン性の高分子凝集剤:カチオン性の高分子凝集剤を、2:3或いは2:1程度の比率で併用することが挙げられる。高分子凝集剤の添加量も特に限定されないが、堆積物混合水又は泥土泥水中の懸濁物(SS)に対して、例えば、0.1w/w%~1.0w/w%程度の量で添加すればよい。
【0050】
本発明の処理方法において、上記した高分子凝集剤の添加位置は、処理対象物である堆積物混合水又は泥土泥水が、ベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面上に供給される直前までに添加されることが必要である。先に述べたように、例えば、水路内等からポンプ又は吸上車を用いて吸い上げられた堆積物混合水又は泥土泥水を、供給用のポンプで通水性のベルト面に供給ための供給用ポンプに接続された移送管内に添加することが好ましい。特に、供給用のポンプの吸い込み側の移送管内に添加することが好ましい。高分子凝集剤の添加は、一箇所で行っても複数個所で行ってもよい。
【0051】
本発明者らは、本発明が対象としている堆積物混合水又は泥土泥水の水切り・濃縮処理について、下記のような検討試験を行った結果、高分子凝集剤と、ベルト型ろ過濃縮機を構成する通水性のベルト面を用いることで、簡便な方法でありながら、本発明の目的に対して良好な結果が得られることを確認した。
図3に簡易試験装置の概略を示した。簡易試験装置は、通水性のベルト面上に、堆積物混合水を投入する側の開口部を漏斗状にした筒を垂直に立てて、ベルト面の下部の面に接地させて、通水を集めるための漏斗状の集水器を配置し、さらに、該集水器の下部に集めた分離水を貯留するための容器を配置した。また、分離水を貯留する容器を秤の上に置いて、分離水の重量を測定した。通水性のベルトとして、
図6の(A)に示したSUS製のものと、
図6の(B)に示した樹脂製のものの2種類を用いた。そして、ベルト面の残留物についても量を測定して、高分子凝集剤として、市販のアニオン性の高分子凝集剤KEA-750(商品名、日鉄環境社製)、カチオン性の高分子凝集剤KEC-859(商品名、日鉄環境社製)を用いた。
【0052】
試験対象には、製造工場の水路内から採取した金属系スラッジを有する堆積物混合水と、海砂系スラッジを有する堆積物混合水を用いた。そのSS濃度は50000~80000mg/Lであった。確認試験は下記の手順で行った。
図3の簡易試験装置を用い、堆積物混合水を投入する側の開口部から通水性のベルト面へと、高分子凝集剤を添加した堆積物混合水を投入した。投入する前に、堆積物混合水に高分子凝集剤を添加して十分に撹拌して混合して、その状態でベルト面に投入した。投入後、60秒経過した時点で、容器の中の分離水の重さと、ベルト面上に残留した残留物の重さを測定した。また、その濁度で分離の程度を評価した。濃縮性を評価するため、上記試験で得られた残留物の含水率をJIS A1203に準拠して測定した。以下に、堆積物混合水等に高分子凝集剤を添加することによる効果についての確認試験について説明する。なお、SSの測定はJIS K0120に準拠して測定した。
【0053】
まず、採取した泥土泥水をそのまま簡易試験装置に投入したところ、ベルト面から殆どが通水してしまい、簡易試験装置の筒を外すと、ベルト面上に僅かな残留物しか残らないことを確認した。このことは、製造工場から採取した金属系スラッジを有する堆積物混合水をそのまま処理した場合も、海岸で採取した海砂系スラッジを有する堆積物混合水を処理した場合も同様であった。すなわち、採取した堆積物混合水や泥土泥水は、そのままの状態では、重力式のベルト型ろ過濃縮機を用いて堆積物混合水等から水を分離して堆積物を濃縮するはできないことがわかった。そこで、本発明者らは、ベルト面上で、採取した堆積物混合水や泥土泥水中の堆積物や泥土からの水の脱離性を向上させる方法について鋭意検討を行い、本発明に至った。本発明者らは、まず、堆積物混合水や泥土泥水に高分子凝集剤を添加すること、且つ、添加した状態で十分に撹拌されて均一に混合した状態でベルト面上に導入するように構成することで、粒径が0.4μm~800μmの様々な大きさの無機系スラッジを大量に含む堆積物混合水や泥土泥水中の堆積物や泥土が、効果的に凝集してベルト面に残留し、水の脱離性が格段に向上して、本発明が目的とする程度に水切り及び濃縮されることを見出した。具体的には、下記のようにして、高分子凝集剤を堆積物混合水や泥土泥水に添加することの有効性を確認した。
【0054】
高分子凝集剤を添加することについての効果の確認を、まず、海辺で採取した海砂系スラッジを有するSS量が50000mg/Lの堆積物混合水を用いて行った。具体的には、採取した海砂を含む混合水を50mL用いて検討試験を行った。そして、先に挙げた2種類の高分子凝集剤を併用して、SSに対する比で、アニオン性の高分子凝集剤を0.08w/w%、カチオン性の高分子凝集剤を0.12w/w%となる量で添加した。そして、前記した簡易試験装置への投入用の容器の中で十分に撹拌して均一になるように混合させた場合と、簡単に混合した場合を比較した。堆積物混合水と高分子凝集剤を十分に撹拌して均一になるように混合させる方法として、下記の手順を用いた。上記容器を2つ用い、一方の容器に堆積物混合水を50mL入れ、これに高分子凝集剤を添加し、添加後、別の容器に混合体を緩やかに落とし込んで移し、この操作を2つの容器を交互に用いて10回行った。比較する十分な混合を行わない方法として、上記の操作を行うことなく、容器に堆積物混合水を50mL入れ、これに高分子凝集剤を添加して軽く短く撹拌して混合させた。
【0055】
混合した後、容器を静置したところ、特に十分に撹拌して均一になるように混合させた場合に速やかに海砂が沈降して、容器の上澄は透明に近く濁りが殆どない状態になることがわかった。試験では、60秒間容器を静置させた後、水の分離状態を確認した。堆積物混合水に高分子凝集剤を添加して、軽く混合させた容器では、静置後、十分に撹拌した場合と比べ凝集が不十分で、沈降速度は遅く、上澄に濁りが残っており、混合体を十分に撹拌して均一になるようにすることによる効果の確認ができた。
【0056】
次に、製造工場の水路内から採取した、SS量が60000mg/Lの金属系の堆積物混合水と、SS量が80000mg/Lの金属系の堆積物混合水について、高分子凝集剤を添加し、さらに混合体を十分に撹拌して均一になるように混合させることについての効果の確認を行った。なお、堆積物の粒子径の範囲は、0.4μm~750μm程度であった。確認試験は、下記のようにして行った。SS量が80000mg/Lの金属系の堆積物混合水に対しては、SSに対する比でカチオン性の高分子凝集剤を0.56w/w%添加して、SS量が60000mg/Lの金属系の堆積物混合水に対しては、SSに対する比でアニオン性の高分子凝集剤を0.33w/w%となる量で添加した。そして、それぞれの混合体について、簡易試験装置への投入用の容器を2つ用いて、先に説明した2つの容器に交互に10回、混合体を落とし込む方法で十分に撹拌して均一になるように混合させて試験を行った。撹拌後、容器を静置したところ、十分に撹拌して混合させた混合体の場合は、金属系の懸濁物が速やかに凝集し沈降して、容器の上澄は透明に近く、濁りが殆どない状態になることがわかった。また、先に述べたと同様にして、金属系の堆積物混合水に上記した高分子凝集剤を添加して、簡単に混合した混合体についても試験を行った。その結果、十分に撹拌した混合体の場合と比べて金属系の懸濁物の凝集が不十分であり沈降速度が遅く、上澄に濁りが残ることがわかった。このことから、本発明者らは、本発明が処理対象としている堆積物混合水は、活性汚泥等の有機系のスラッジと比較して比重や成分のばらつきが大きく、簡単に撹拌しただけでは添加した高分子凝集剤と堆積物混合水とを均一になるように混合することが難しく、堆積物を良好な状態に凝集させることができないことを見出した。
【0057】
さらに、採取したSS量が50000mg/Lの土砂を含む泥土泥水についても、高分子凝集剤を添加すること及び十分に撹拌して均一になるように混合させることによる効果を確認した。なお、泥土の粒子径の範囲は0.5μm~500μm程度であった。確認試験は、下記のようにして行った。先に挙げた2種類の高分子凝集剤を併用して、SSに対する比で、アニオン性の高分子凝集剤を0.2w/w%、カチオン性の高分子凝集剤を0.1w/w%となる量で添加して効果を確認した。簡易試験装置への投入用の容器を2つ用い、先に説明した2つの容器に交互に10回、混合体を落とし込む方法で十分に撹拌して均一になるように混合させて、撹拌後、容器を静置した。その結果、十分に撹拌して均一になるように混合させた混合体の場合は、速やかに土砂が凝集し沈降して、容器の上澄は透明に近く、濁りが殆どない状態になった。一方、先に述べたと同様にして、泥土泥水に上記した高分子凝集剤を添加して、軽く混合した混合体について試験した結果、十分に撹拌した混合体の場合と比べて泥土の懸濁物の凝集が不十分で沈降速度が遅く、上澄に濁りが残ることがわかった。先に検討試験を行った堆積混合水の場合と同様に、泥土泥水の場合も、簡単に撹拌しただけでは添加した高分子凝集剤と泥土泥水とを均一になるように混合することが難しく、泥土を良好な状態に凝集させることができないことがわかった。
【0058】
本発明者らは、上記した検討試験の結果から、高分子凝集剤を効果的に利用できる構成とすれば、重力式のベルト型ろ過濃縮機を用いることで、現場で、採取した堆積物混合水又は泥土泥水中の堆積物や泥土の水の脱離性を向上させることができ、その結果、本発明が目的としている程度に十分な堆積物混合水や泥土泥水中の堆積物や泥土の濃縮を、簡便に且つ速やかに行うことができるとの認識をもった。そして、このようにできれば、固液分離に用いる重力式のベルト型ろ過濃縮機を小型で簡易な構成のものにでき、その結果、濃縮機の構成を、設置型に限らず、例えば、車載して移動可能にすることもできるとの認識をもった。現地で採取した堆積物混合水又は泥土泥水から、効果的に水を分離して濁りの殆どない状態の水にすることができれば、採取した水路内等に分離した水を容易に戻せるので極めて有用な技術になり得る。また、本発明の処理方法によれば、堆積物混合水や泥土泥水中の堆積物や泥土が速やかに凝集してベルト面上に残留し、且つ、清澄な水が速やかに分離(脱離)し、さらに、残留物は剥離性が高く、ベルト面上から剥がれ易く、回収がし易いので、連続した処理が可能である。このことは、水路内等に大量の堆積物が存在する現場においても、小型で簡易な構成の重力式のベルト型ろ過濃縮機を用いての処理が可能であることを意味している。
【0059】
そこで、先に説明した
図3に示した簡易試験装置を用い、上記のようにして、堆積物混合水又は泥土泥水に高分子凝集剤を添加し、さらに十分に撹拌して均一になるように混合させた各試料を投入口からベルト面上に自重で流下させて、試料中の堆積物や泥土の水切り及び濃縮、さらに濃縮物のベルト面からの剥離がどの程度可能になるかについて確認する試験を行った。
【0060】
検討試験には、海岸で採取した海砂系スラッジを有するSS量が50000mg/Lの堆積物混合水を50mL用いた。含有されている粒子の大きさを確認したところ、1~300μmであった。先述したように、先に挙げた2種類の高分子凝集剤を併用して、SSに対する比で、アニオン性の高分子凝集剤を0.08w/w%、カチオン性の高分子凝集剤を0.12w/w%となる量で添加し、容器内で十分に撹拌して混合して、直ぐに簡易試験装置の投入口からベルト面上に海砂系スラッジを有する堆積物混合水を自重で流下させた。この際に使用したベルトは、
図6の(A)に示したSUS製のベルトである。その結果、
図4aに示したように、SUS製のベルト面上に堆積物が多く残留した。また、
図4aに示したように、分離された水は透明であり、海砂系スラッジは殆ど含まれていなかった。上記試験に用いた堆積物混合水の重さは51.8gであり、ベルト面上の残留物の重さは6.0gで、分離水の重さは45.8gであった。また、残留物について含水率を測定したところ74.9w/w%であった。なお、試験前の採取した状態の堆積物混合水の含水率は、95w/w%であった。上記の値は、試験を3回繰り返した結果の平均値である。表1に、繰り返し3回の結果をまとめて示した。
【0061】
上記したと同様の試験を、
図6の(B)に示した樹脂製のベルト用いて行った。その結果、
図4bに示したように、樹脂製のベルト面上に堆積物が多く残留した。また、
図4bに示したように、分離された容器内の水は透明であり、海砂系スラッジは殆ど含まれていなかった。試験に用いた堆積物混合水の重さは52.3gであり、樹脂製のベルト面上の残留物の重さは6.6gで、分離水の重さは45.7gであり、SUS製のベルトを用いた場合とほぼ同様であった。また、残留物について含水率を測定したところ、74.2w/w%であった。上記の値は、試験を3回繰り返した結果の平均値である。表1に、繰り返し3回の結果をまとめて示した。
【0062】
【0063】
上記した検討試験結果から、堆積物混合水又は泥土泥水に高分子凝集降剤を添加して十分に撹拌して両者を均一になるように混合させて、その後、その状態で混合体を、ベルト型ろ過濃縮機を構成する通水性のベルト面上に供給することで、堆積物混合水中や泥土泥水中の堆積物や泥土が凝集してベルト面上に残り、凝集することで堆積物や泥土の水の脱離性が向上し、水が効果的に分離してベルトを通水することがわかった。本発明者らは、活性汚泥等の有機系の汚泥と比較して比重や成分のばらつきが大きく撹拌や混合が難しい堆積物混合水又は泥土泥水に高分子凝集剤を添加した混合体の状態を、先の試験で行ったように、十分に撹拌されて均一に混合された状態とする方法として、下記が利用できることを確認した。まず、実際の現場で堆積物混合水又は泥土泥水を採取する際には、ポンプで吸い上げる必要がある。また、ベルト型ろ過濃縮機で、採取した大量の水を含む状態の堆積物混合水を処理する場合は、ポンプで吸い上げた後、移送管を通って供給用ポンプを用いてベルト面上に導入する必要がある。いずれの場合も、堆積物等と大量の水は均一に混合された状態になる。先に詳述したように、吸入と吐出を繰り返し行う有脈動タイプのダイヤフラムポンプなどの供給用ポンプと、該供給用ポンプに接続した移送管とを利用することで、均一な状態に混合し難い堆積物等と、大量の水と高分子凝集剤が十分に混合されて、効果的に均一な状態にできる。例えば、堆積物混合水又は泥土泥水を通水性のベルト面に供給する際のポンプの吸引口側(吸い込み側)や吐出側の移送管内に、高分子凝集剤を添加させれば、上記した状態になる。特に供給用のポンプの吸い込み側の移送管内に高分子凝集剤を添加させるようにすることが好ましい。
【0064】
本発明者らの検討によれば、高分子凝集剤を添加した堆積物混合水又は泥土泥水をベルト面上に供給する際には、先のような方法で堆積物等と大量の水とが均一に混合された状態のままで通水性のベルト面上に導入させるようにすることが有効である。有機系の余剰汚泥をベルト型ろ過濃縮機で処理する場合は、高分子凝集剤剤を用いて凝集させた余剰汚泥を何らの工夫をすることなくベルト面に導入させることができるが、本発明が対象とする無機系の堆積物混合水又は泥土泥水の場合は、先に示したように堆積物や泥土の構成成分の比重が水よりも大きく、加えて粒径が大きくばらつく場合が多いため、下記のように構成することで本発明が目的とするベルト型ろ過濃縮機の利用が可能になることを見出した。すなわち、堆積物混合水又は泥土泥水をベルト面上に供給する際に、堆積物等が常に水中に浮遊している状態を保ち、且つ、水中に浮遊している堆積物等と高分子凝集剤とが十分に混合され良好な凝集効果が得られるように撹拌されて、均一に混ざり合った状態になっていることが重要であり、また、凝集した凝集物が崩れることなく、均一に撹拌された状態のままベルト面上に導入されるようにすることが重要である。
【0065】
上記のことから、本発明の水切り濃縮処理方法で使用する「重力式の高速固液分離装置であるベルト型ろ過濃縮機」は、先に述べたように、ベルト型ろ過濃縮機の上流に、濃縮処理対象である堆積物混合水又は泥土泥水に高分子凝集剤が添加した状態の混合体を、凝集物が崩れることなく通水性のベルト面に均一に供給するための投入口が設置された構成のものを用いることが好ましい。さらに、先に述べたように、供給してベルト面上に残留する、凝集した無機スラッジを含む堆積物や泥土の厚みが概略一定になるように堰を設けたものや、導入する混合体の量とベルトの走行速度が制御できるように構成したものなどが挙げられる。このように構成すれば、残留物の回収が容易になり、連続処理をよりし易くできる。
【0066】
本発明の水切り濃縮処理方法で対象とする堆積物混合水又は泥土泥水は、SS量が本発明で規定する濁水濃度が0.5w/v%よりも少なくても処理することは可能であるが、当然のことながら濁水濃度が少ないとベルト面上の残留物は少なくなるので、処理効率が劣る。したがって、このような濃縮対象物の濁水濃度が少ない場合には、ポンプ又は吸上車を用いて採取後、仮設の水槽に一旦受けて、撹拌機を用いて混合するなどして水槽内を適度なSS量である、濁水濃度が0.5w/v%以上、20w/v%以下、好ましくは1.0w/v%以上、15w/v%以下になるように調整して、その後に本発明を適用して堆積物混合水又は泥土泥水を処理することが好ましい。
【0067】
本発明の水切り濃縮処理方法を適用するものとしては、従来技術で対応が求められている、先に説明した、沈澱槽などの水槽内から塊状の堆積物をポンプや、バキューム車等の吸上車で吸い上げた状態の堆積物と水とを含む堆積物混合水が挙げられる。この場合も、堆積物混合水に、本発明の水切り濃縮処理方法を適用することで、良好な状態に凝集させることができ、通水性のベルト面上に集め易く、ベルト面から剥離して回収し易い、取扱い易い残留物が得られる。すなわち、本発明が水切り・濃縮の処理対象とする塊状の堆積物は、粒径が0.4μm~800μm程度の大きさの比重の大きい無機系スラッジを多く含むものであるので取扱いにくく、その状態で移動することや、再利用や廃棄することが難しい場合がある。特に、堆積物混合水等を移動するためには回収作業を行わなければならないので人手を要し、また、処理した場合に粉塵が生じるという問題もある。本発明で実現したように、水路内或いは水槽内或いは池内からポンプ又は吸上車を用いて吸い上げて、さらに供給用ポンプと移送管で良好な凝集状態にして送った堆積物混合水等を、小型で簡易なベルト型ろ過濃縮機を用いることで、凝集した状態の堆積物と、水離れよく脱離した清澄な水に固液分離することができれば、その後の処理が容易になる。堆積物を供給用ポンプ及び移送管を利用して送り、ベルト型ろ過濃縮機に供給して処理する上記の方法は、掘削箇所に堆積して存在している泥土の山についても適用することが可能である。
【0068】
本発明で処理の対象としている堆積物としては、例えば、下記のようなものが挙げられる。水路内等の底に堆積した、主成分を炭酸カルシウムとする無機汚泥、主成分をカーボン及び鉄とする無機汚泥、主成分を鉄及びマンガンとし油分を含む無機汚泥、主成分を亜鉛、鉄、ニッケル等の水酸化物とする無機汚泥、貝殻等の夾雑物を含む無機汚泥、落ち葉や木の枝及び油分等の夾雑物を含む無機汚泥などが挙げられる。また、礫、石、ごみ屑等の夾雑物を含む濁水(油分を含む場合もある)、掘削箇所から発生した、ガラ、礫、石、ごみ屑等の夾雑物を含む建設汚泥、護岸の底に堆積した、貝殻、土砂、ヘドロ等の夾雑物を含む海砂などが挙げられる。対象物の状況によっては、上記した無機汚泥や濁水から、貝殻、礫、石、ごみ屑等の夾雑物をトロンメルや振動篩を用いて分離した後に、本発明の処理方法を適用することも好ましい形態である。
【0069】
本発明の堆積物混合水又は泥土泥水の水切り濃縮処理方法によれば、濁りの少ない清澄な分離水が得られるので、元の水路内等に分離水を戻すことができる。しかし、処理対象の種類や分離水(脱離水)を戻す場所に応じて、分離した水に、さらに高分子凝集剤を添加して分離水をより清澄な水にし、且つ、pH、COD等の水質を監視して放流基準値を満足することを確認した上で、水路や現場周辺の側溝などに戻すようにすることが必要な場合もある。
【実施例0070】
<模擬試験>
次に、先に行った検討試験の結果を踏まえて、本発明の構成で堆積物混合水を処理したと仮定した場合と、同様の堆積物混合水を、従来の2種類の方法で水切り濃縮処理をしたと仮定した場合における処理にかかる時間を算出して比較した。本発明の構成で堆積物混合水を処理した模擬試験を模擬実施例と呼び、従来の方法で堆積物混合水を処理した模擬試験を模擬比較例1及び模擬比較例2と呼ぶ。
図2に、模擬実施例の処理フローを示した。また、
図8に、模擬比較例1の処理フローを示し、
図7に、模擬比較例2の処理フローを示した。
【0071】
[模擬試験に用いた堆積物混合水]
(無機系スラッジ)
海岸で採取した、砂、貝殻片、シルト、粘土(ヘドロを含む)などを含む浜砂は、水との混合水とした後、静置して自然沈降させると、沈降に長時間がかかり、上澄は濁った状態になるものの、水と堆積物に固液分離することから、本発明を構成する無機系スラッジの代表例として試験に用いた。以下、上記のものを海砂系模擬スラッジとも呼ぶ。試験に用いた海砂系模擬スラッジに含まれる粒子の大きさを確認したところ、その粒子径が1~300μm程度の範囲内の集合物であることがわかった。なお、本発明者らの検討によれば、金属製品の製造工場で大量に用いられている冷却水や、自動車工場や金属加工工場などから発生する金属を含んだ水などの工業用水に含まれる微細なスケールやダストの堆積物の粒子径は、0.4μm~800μm程度であった。泥土泥水中の泥土の粒子径は、0.4~500μm程度であった。
【0072】
(模擬試験における堆積物混合水の調製)
上記した海砂系模擬スラッジを用い、固形分が乾燥重量として22.5トンになるように水を加えて調整して、模擬実施例と模擬比較例2に用いる模擬試験用の堆積物混合水を約150m3得たと仮定する。また、同様に、上記した海砂系模擬スラッジを用い、固形分が乾燥重量として22.5トンになるように水を加えて調整して、模擬比較例1に用いる試験用の堆積物混合水を約150m3得たと仮定する。なお、上記試験用の堆積物混合水は、いずれもSSの濃度が150000mg/Lである。
【0073】
[模擬実施例]
図1に、本発明の堆積物混合水の水切り濃縮処理方法の概略を示した。また、
図2に模擬実施例の模擬試験における処理フローを示した。水槽内或いは塞き止めた水路内に、先に調製した、海砂系模擬スラッジを固形分の乾燥重量として22.5トンの量で含む、約150m
3の試験用の堆積物混合水が入っていると仮定する。そして、
図2に示したように、水槽或いは水路の底の部分の堆積物にポンプの先を挿入して、ポンプで堆積物を水と一緒に吸い上げて、稼働している小型のベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面上に堆積物混合水を供給すると仮定する。ベルトはSUS製であり、先に説明した検討試験で用いた
図5aに示した構成のベルトとする。
【0074】
その際、吸引するポンプの吸い込み口の周辺に高分子凝集剤を添加したと仮定する。高分子凝集剤には、先に説明した検討試験で用いたと同様に、下記の2種類の高分子凝集剤を併用して、SSに対する比で、アニオン性の高分子凝集剤を0.08w/w%、カチオン性の高分子凝集剤を0.12w/w%となる量で添加したと仮定する。アニオン性の高分子凝集剤には、KEA-750(商品名、日鉄環境社製)を用い、カチオン性の高分子凝集剤には、KEC-859(商品名、日鉄環境社製)を用いたと仮定する。
【0075】
そして、
図2に示したように、ポンプで吸い上げた高分子凝集剤が添加された状態の堆積物混合水を連続的に、ベルト型ろ過濃縮機のベルト面に供給して導入したとする。さらに、ベルト面上から、濃縮された残留物を剥離して容量10m
3のダンプカーに積載して乾燥場に移送する際に必要になるダンプカーの数を予想した。ダンプカーの数は乾燥場までの距離によっても変動するが、堆積物混合水を採取する水路或いは水槽と、乾燥場が工場内にあると仮定し、連続して堆積物混合水の水切り及び濃縮処理したとする。
【0076】
まず、水槽内から、約150m3の試験用の堆積物混合水の全てをポンプで吸い上げて小型のベルト型ろ過濃縮機で水切り濃縮処理をすると仮定すると、約2時間かかる。そして、先の検討試験の結果によれば、残留物の含水率は、処理前の堆積物混合水の含水率85w/w%から70w/w%程度に低下し、濃縮された堆積物の量は約75m3になる。また、下記の理由で、ダンプカーへの積み込みが簡便にできるので、ダンプカーによる水切り濃縮された残留物の移送作業にかかる時間は、後述する比較例の場合に比べて格段に短縮される。すなわち、ベルト型ろ過濃縮機のベルト面上を送られてくる残留物は、海砂である無機系スラッジが良好な状態に凝集しベルト面に導入された、十分に水切り濃縮されたものであるので、剥離がし易く、ベルト面の端部から容易に剥がれ落ちる。したがって、容量10m3のダンプカーにベルト面上の残留物を積載して乾燥場に移送する場合、ダンプカーを3台程度用意すれば、連続処理を円滑にすることが可能になる。上記したように、模擬実施例の方法で、約150m3の試験用の堆積物混合水の水切り濃縮処理をした場合には、作業工程や作業場を格段に少なくすることができ、半日程度で処理することが可能になる。
【0077】
[模擬比較例1]
図8に、製造工場で行われている従来の堆積物混合水の処理方法の概略を示した。模擬比較例1では、模擬実施例で使用したと同様の試験用の堆積物混合水を、模擬実施例の場合と同様に、約150m
3の堆積物混合水の全量を
図8に示した手順で処理し、処理物の全てを乾燥場に移送するとした。そして、実際に製造工場で行われている各段階の手順における処理時間を考慮して、処理にかかる時間を求めた。
【0078】
以下、
図8を参照して模擬比較例1の処理の手順を説明する。製造工場で行われている処理では水槽内の堆積物混合水をポンプで吸引している。模擬比較例1では、水槽内に約150m
3の試験用の堆積物混合水が堆積しているとし、約2時間かけて上澄を水抜きして塊になっている堆積物の処理を行った。
【0079】
水槽内の塊を高圧水で崩しながら流動性を与えた後、約110m3になった堆積物混合水をポンプで吸い上げて容量10m3のバキューム車に導入した。このように、バキューム車に導入して濃縮場に搬送される堆積物混合水は、水抜きして塊にしたことで水槽内に堆積している状態のものよりも水量が幾分減少する。水量が少し減ったとしても、堆積物の塊全部を高圧水で崩しながら堆積物混合水を吸引してバキューム車に導入する時間は、合計で約6時間かかる。また、バキューム車1台で濃縮場に堆積物混合水を繰り返し搬送した場合、11回程度往復する必要がある。上記した一連の作業を行ってバキューム車で濃縮場に搬送した全堆積物混合水の量は約110m3となる。
【0080】
バキューム車で搬送した堆積物混合水は、濃縮場の沈澱槽に導入する。沈澱槽に導入した後、3日程経つと堆積物が自然沈降して水が分離するので、分離水を沈澱槽の上部から水抜きする。水抜きには1時間程度かかる。水抜き後、沈澱槽の底の濃縮物約75m3を回収して、ダンプカーに積み込み、乾燥場に搬送する。容量が10m3のダンプカー1台で搬送した場合は、10往復する必要がある。濃縮物の回収及びダンプカーへの積み込みには、合計で4時間かかる。
【0081】
上記したように、模擬比較例1の方法で、堆積物混合水を水切り及び濃縮処理をした場合、作業工程が多く、これに伴い作業場や人手を要し、処理期間が少なくとも5日程度でかかる。
【0082】
[模擬比較例2]
図7に、模擬比較例2の堆積物混合水の処理方法の概略を示した。模擬比較例2では、模擬実施例で使用したと同様の試験用の堆積物混合水約150m
3の全量を
図7に示した手順で処理し、模擬実施例の場合と同様に処理物の全てを乾燥場に移送すると仮定した。模擬比較例2では堆積物混合水に、模擬実施例で用いたと同様の2種類の高分子凝集剤を用いて、それぞれ同様の添加量で併用して添加した。
【0083】
具体的には、水路内等からポンプで堆積物と水とを吸引する際に、模擬実施例の場合と同様にポンプの吸い込み口の近傍に2種類の高分子凝集剤を添加した。そして、越流排水ができる構造の処理槽内に、ポンプで吸引した高分子凝集剤を添加した堆積物混合水を供給するとした。その状態で静置すると、高分子凝集剤を添加した状態で激しく撹拌されたことで、海砂系模擬スラッジが凝集・沈降して、約2時間経過すると堆積物が圧密になる。そこで、越流して分離した分離水を水抜きする。水抜きには約1時間かかる。このようにして得られる濃縮された堆積物の量は、約75m3程度となる。この濃縮された堆積物を回収して、容量10m3のダンプカーに積載して乾燥場に運ぶ。全量をこのダンプカーで運ぶには、10往復する必要がある。
【0084】
上記したように、模擬比較例2の方法で、約150m3の試験用の堆積物混合水を水切り及び濃縮処理をした場合、模擬比較例1の方法よりも作業工程が少なくなるが、水中の堆積物を凝集・沈殿させる処理槽の底に沈積した濃縮物を回収する必要があり、これに伴い作業場や人手を要し、処理期間が少なくとも2日程度でかかる。
【0085】
表2に、上記した模擬実施例と、模擬比較例1及び模擬比較例2の処理の概要をまとめて示した。
【0086】
【0087】
<小型の試験設備を用いての検討試験>
(高分子凝集剤の添加方法について)
図10に概略を示した小型の試験設備を用い、試験条件をそれぞれに変えて水切り濃縮処理試験を行った。処理対象の「無機スラッジを含有してなる堆積物混合水」には、製造工場内の雨水排水調整槽内の炭酸カルシウム系の堆積物混合水を用いた。小型の試験設備に用いた装置や部材等として、それぞれ下記のものを用いた。
・下水汚泥などの汚泥処理設備で使用されている、汚泥に凝集剤を添加して連続的にろ過分離するための汎用のベルト型ろ過濃縮機(ベルト濃縮機とも呼ばれている)をベースにして、当該装置の特徴部分である通水性ベルトを変更して、また、通水性ベルト面への処理対象の導入構成なども変更して本発明の専用機に改造して使用した。
・ベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルトの仕様:孔径が670μm×188μm、品種(型番)S5085 樹脂製で朱子織、通気度330cm
3/cm
2/sec(日本フイルコン社製)
・供給用ポンプ:ダイヤフラムポンプ(膜ポンプ)(商品名PROシリーズ ダイヤフラムポンプ、タイヨーインターナショナル社製)
・ホースライン:外径が32mmで口径が25mmの、長さが5mの硬質ポリ塩化ビニル管を、供給用ポンプの吸い込み側と吐出側にそれぞれ繋いだ
・高分子凝集剤:KEC-985(商品名、日鉄環境社製)
【0088】
[実施例1-2、比較例1:高分子凝集剤の添加条件の検討]
濃度が1.0w/v%である総量330L(固形分が乾燥重量で3.3kg)の前記した炭酸カルシウム系の堆積物混合水を対象として、先に説明した小型の試験設備を用いて水切り濃縮を行った。その際、先に説明した高分子凝集剤を85mg/L(対SS比=0.85w/w%)となる量で用いた。そして、高分子凝集剤の添加位置を下記のようにしたこと以外は同様の条件で水切り濃縮処理を行った。実施例1では、供給用ポンプの吸い込み側のホースラインの、供給用ポンプに入る手前0.25mの位置に添加した。実施例2では、供給用ポンプの吐出側のホースラインの、供給用ポンプから出た0.25mの位置に添加した。また、比較例1では、撹拌機能を有する濃度調整槽の中に高分子凝集剤を添加して撹拌して濃度調整を行った堆積物混合水を、実施例で用いたと同様のホースライン及び供給用ポンプを用いて通対性のベルトに供給した。上記した試験の結果を表3にまとめて示した。
【0089】
【0090】
表3に示したように、実施例1では、高分子凝集剤を、供給用ポンプに接続した吸い込み側の5mのホースラインの、供給用ポンプ迄の距離が0.25mである位置に添加した。その結果、通水性のベルト面上に、処理対象である堆積物混合水中の凝集した堆積物が残留物として残った。この残留物は半固形状のスラッジであり、ベルト面から容易に剥離することができる除去処理に良好な状態のものであることを確認した。また、ベルト面の下部に貯溜された脱離水(分離水)は透明であり、SSの流出は見られず、この点でも良好であった。実施例2では、高分子凝集剤を、供給用ポンプに接続した吐出側に配置されている5mのホースラインの、供給用ポンプからの距離が0.25mの位置に添加した。その結果、通水性のベルト面上に凝集した堆積物が残留物として残った。しかし、実施例1における残留物と比較すると実施例2の残留物はやや液状のスラッジであり、ベルト面からの剥離性にもやや劣り、通水性のベルトの一部に目詰りが認められた。また、脱離水へのSSの流出が若干認められた。
【0091】
本発明者らは、上記した効果の違いについて下記のように考えている。実施例1の場合は、添加した高分子凝集剤と堆積物混合水が混合された状態で、吸い込み側のホースラインと、供給用ポンプ(ダイヤフラムポンプ)本体と、吐出側のホースラインを経由して流れることで、処理対象の堆積物混合水と高分子凝集剤が十分に混ざり合った均一な状態で送られて通水性のベルトに供給されることになる。この結果、良好な状態に凝集して崩れることもなかったスラッジが、ベルトの目開きを通過することなく通水性のベルト面上に残留して、半固形状の堆積物である残留物が形成でき、脱離水もSSの流出のない良好な水切り濃縮が実現できたものと考えられる。上記した実施例1における処理と異なり、実施例2の処理では、供給用ポンプ(ダイヤフラムポンプ)の吐出側のホースライン内に高分子凝集剤の添加を行ったため、処理対象である堆積物混合水が、高分子凝集剤が添加されていない状態で吸い込み側のホースラインと、供給用ポンプ(ダイヤフラムポンプ)本体を経由することになっており、堆積物混合水と高分子凝集剤の混ざり合いが実施例1の処理の場合と比較して十分とは言えない状態であったため、堆積物の凝集が十分に行われなかったものと考えられる。このことは、本発明においては、堆積物混合水に高分子凝集剤を添加した状態で供給用ポンプ(ダイヤフラムポンプ)本体を経由させるように構成することが、より効果的であることを示している。なお、実施例2の実施形態の場合でも、例えば、吐出側のホースラインの長さをより長くすれば、混合状態を改善でき凝集性が高まることが予想される。
【0092】
一方、濃縮調整槽内に高分子凝集剤を添加した構成の比較例1では、通水ベルト上に残留物が殆どなく、脱離水にSSが流出した。比較例1の場合は、吸い込み側のホースライン、供給用ポンプ(ダイヤフラムポンプ)本体及び吐出側のホースラインのいずれにおいても、通水性のベルト面に向けて、濃縮調整槽で撹拌混合された状態の高分子凝集剤と堆積物混合水が移送されている。実施例1及び2の結果と、上記構成の比較例1の結果の検討から、本発明において重要なことは、本発明で規定したように「供給用ポンプと、該供給用ポンプに接続された移送管とを用いて、高分子凝集剤が堆積物混合水と混ざり合う状態になるようにすること」であることが確認できた。本発明者らは、比較例1の場合に本発明の効果が得られなかった理由について、濃度調整槽内で、高分子凝集剤と堆積物混合水が撹拌混合された際に形成された凝集スラッジが、濃度調整槽内で、或いは、供給用ポンプでのホースラインを介して移送中に崩れてしまったためと考えている。
【0093】
(処理対象の堆積物混合水について)
[実施例3-4、比較例2~4:堆積物混合水の濃度条件の検討]
先の実施例1-2及び比較例1では、いずれの場合も処理対象として濃度が1.0w/v%である炭酸カルシウム系の堆積物混合水を用いた。本検討では、処理対象を、濃度の異なる炭酸カルシウム系の堆積物混合水とした。具体的には、先に行ったと同様にして得た堆積物混合水について、その濃度を表4に示したように段階的に変更して、
図10に概略を示した小型の試験設備を用いて検討試験を行った。小型の試験設備の構成は、先の実施例1、2の検討試験と同様のものを用いた。高分子凝集剤には先の検討試験と同様のものを用いて、実施例1で行ったと同様に、供給用ポンプの吸い込み側のホースラインの位置に高分子凝集剤を添加した。そして、高分子凝集剤の添加量をそれぞれ、堆積物混合水の濃度に応じてSSとの比が表4に示したようになるようにして処理を行った。
【0094】
【0095】
表4に示した実施例3及び4の結果から明らか通り、ベルト型ろ過濃縮機の通水性のベルト面上に供給する堆積物混合水の濁水濃度が、1.0w/v%~15w/v%の場合に、良好な水切り濃縮処理ができ、連続運転もできることが確認された。具体的には、実施例3及び4のいずれの条件の場合も、ベルト面上に凝集スラッジが残留物として残り、しかも、該残留物は良好に水切りがされた半固形状のスラッジであり、ベルト面上からの剥離も容易であった。また、脱離水にSSの流出は見られなかった。残留物の剥離後にベルト面を目視で観察したところ、目詰りが生じている箇所が殆どなく、残留物の剥離後にひき続き堆積物混合水の水切り濃縮処理ができることが確認できた。本発明者らの検討によれば、本発明の水切り濃縮処理方法では、上記した実施例3及び4の条件に限らず、濁水濃度が0.5w/v%以上、20w/v%以下の堆積物混合水又は泥土泥水であれば、本発明の効果を得ることができる。
【0096】
これに対し、比較例2-1の濁水濃度が0.1w/v%の堆積物混合水を処理した場合は、実施例3の場合と同様に、対SS比が0.85w/w%となる量で高分子凝集剤を添加したにもかかわらず、ベルト面上に残留物が殆ど残らず、良好な効果が得られなかった。本発明者らは、比較例2-1の条件での処理の場合は、処理対象の堆積物混合水中の固形分の量が乾燥重量で0.33kgと少なかったため、高分子凝集剤と均一に混ざりにくく、通水性のベルト面に残留できるような凝集スラッジを形成しにくかったものと考えている。比較例2-2は、濁水濃度が0.1w/v%の堆積物混合水の処理を、高分子凝集剤の添加量を増やして、対SS比が1.0w/w%となる量で添加して処理した例である。比較例2-2の場合は、比較例2-1の場合と異なりベルト面上に凝集スラッジが残った。しかし、比較例2-2の処理で得られた残留物は、実施例の処理で得られた残留物よりも水分が多く、粘性もあり、ベルト面上からの剥離性に劣ったものであった。また、分離した脱離水には粘性があり、この点でも良好な処理とは言い難かった。本発明者らは、比較例2-2の粘性のある脱離水について検討したところ、脱離水中に高分子凝集剤が残留していることを確認した。このことから、比較例2-2の条件の場合は、堆積物混合水中の固形分に対して高分子凝集剤の添加が過剰であったことで、堆積物混合水中の固形分と凝集せずに高分子凝集剤が脱離水中に残り、このことに起因して脱離水が粘性のあるものになったと考えられる。
【0097】
比較例3では、濁水濃度が25w/v%の、固形分が乾燥重量で82.5kgと高い濃度の堆積物混合水に、高分子凝集剤を対SS比が0.2w/w%となる量で添加して処理をした。この結果、表4に示したように、堆積物混合水が良好に流動せず、本発明を構成する供給用ポンプによっては通水性のベルト面に堆積物混合水を供給することができないことが確認された。比較例3の条件の場合は、堆積物混合水中の固形分の量が多過ぎて粘性が高くなってしまい、本発明の水切り濃縮処理方法には適用できないことがわかった。本発明の目的は、「大量の水を含んだ状態の、主成分が無機系スラッジである堆積物混合水又は泥土泥水についての水切り処理及び濃縮処理」を、簡便に、且つ、従来行われている処理に比べて格段に短時間に行うことを実現することにあり、比較例3で処理対象とした堆積物混合水は、固形分の量が多過ぎて本発明の目的に合致するものにはならない。すなわち、本発明では、処理の対象を「濁水濃度が0.5w/v%以上、20w/v%以下である堆積物混合水又は泥土泥水」に限定している。表4に示した評価結果からわかるように、本発明の水切り濃縮処理では、処理する濁水濃度にもよるが、高分子凝集剤の添加量を、対SS(固形分)比で0.1w/w%~1.0w/w%程度とすることが好ましい。本発明者らの検討によれば、本発明の処理は、濁水濃度が1.0w/v%~15w/v%の堆積物混合水又は泥土泥水に対して、高分子凝集剤の添加量を対SS(固形分)比で0.1w/w%~1.0w/w%程度で行うことが好ましい。