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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146834
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】スクリュー圧縮機及び冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 28/26 20060101AFI20241004BHJP
   F04C 18/52 20060101ALI20241004BHJP
   F04C 18/16 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F04C28/26 H
F04C18/52
F04C18/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024048687
(22)【出願日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2023058454
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 誠之
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴司
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA03
3H129AA16
3H129AA21
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB43
3H129CC12
(57)【要約】
【課題】スクリュー圧縮機に性能低下が発生することを抑制できるようにする。
【解決手段】スクリュー圧縮機は、スクリューロータ(40)と、複数のゲートロータ(50,60)と、円筒壁(15)を有するケーシング(10)と、調整機構とを備え、前記円筒壁(15)の内側には、前記スクリューロータ(40)と前記ゲート(51,61)とによって複数の圧縮室が形成され、前記複数の圧縮室は、第1圧縮室(21)と、前記第1圧縮室(21)で圧縮された流体が中間圧空間(S)を介して送られる第2圧縮室(22)とを含み、前記調整機構は、2段運転時には前記中間圧空間(S)の流体の圧力である中間圧を調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューロータ(40)と、
前記スクリューロータ(40)に噛み合うゲート(51,61)を有する複数のゲートロータ(50,60)と、
前記スクリューロータ(40)が回転可能に挿入され、前記ゲート(51,61)が貫通する円筒壁(15)を有するケーシング(10)と、
前記ケーシング(10)内の流体の圧力を調整する調整機構と
を備え、
前記円筒壁(15)の内側には、前記スクリューロータ(40)と前記ゲート(51,61)とによって複数の圧縮室が形成され、
前記複数の圧縮室は、前記ケーシング(10)内に導入される吸入圧力の流体を前記吸入圧力よりも高圧の圧力まで圧縮する第1圧縮室(21)と、前記第1圧縮室(21)で圧縮された流体が中間圧空間(S)を介して送られる第2圧縮室(22)とを含み、
前記調整機構は、前記第1圧縮室(21)及び前記第2圧縮室(22)で流体を圧縮する2段運転時に前記中間圧空間(S)の流体の圧力である中間圧を調整可能である、スクリュー圧縮機。
【請求項2】
前記調整機構は、前記ゲートロータ(50,60)と前記スクリューロータ(40)とで囲まれたロータ空間を示す対向領域(V)に移動可能なバルブ(80)を含み、
前記バルブ(80)は、
前記対向領域(V)内での位置を変更することで、前記第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になるタイミングを変更する、請求項1に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項3】
前記バルブ(80)は、前記第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になるタイミングを変更することで、前記第2圧縮室(22)での流体の圧縮工程の開始時の前記第2圧縮室(22)の容積を変更する、請求項2に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項4】
前記バルブ(80)は、前記第1圧縮室(21)及び前記第2圧縮室(22)のうち前記第1圧縮室(21)で流体を圧縮する単段運転と、前記2段運転とのうちのいずれの運転を行うかを切り換える、請求項2又は請求項3に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項5】
前記バルブ(80)は、前記ロータ空間と離間する離間位置(W)に移動可能であり、前記離間位置(W)に位置する場合、前記中間圧空間(S)を機外と通じさせた状態を維持する、請求項4に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項6】
前記ケーシング(10)の内部には、前記中間圧空間(S)に連通する第1通路(91)と第2通路(92)とが設けられ、
前記バルブ(80)は、
前記対向領域(V)に位置する場合、前記第1通路(91)を通じて前記中間圧空間(S)から前記第2圧縮室(22)へ流体を送るとともに、前記第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になることで前記第2圧縮室(22)に入らなかった流体を前記第2通路(92)を通じて前記中間圧空間(S)へ送り、
前記離間位置(W)に位置する場合、前記第1通路(91)を通じて前記中間圧空間(S)の流体を前記機外へ送るとともに、前記第2通路(92)を通じて前記中間圧空間(S)の流体を前記機外へ送る、請求項5に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項7】
前記バルブ(80)が前記対向領域(V)に位置する場合に前記2段運転を行い、
前記バルブ(80)が前記対向領域(V)内での位置を変更することで前記中間圧を調整し、
前記バルブ(80)が前記離間位置(W)に位置する場合に前記単段運転を行う、請求項5に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項8】
前記バルブ(80)は、位置を連続的に変更可能であることで、前記第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になるタイミングを連続的に調整可能である、請求項2又は請求項3に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項9】
前記第1通路(91)及び前記第2通路(92)が、前記離間位置(W)に対して前記バルブ(80)の移動方向(J)の一方向側(J1)に位置し、
前記移動方向(J)の一方向側(J1)は、前記バルブ(80)の移動方向(J)のうち前記離間位置(W)から前記対向領域(V)へ向かう方向側を示す、請求項6に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項10】
前記バルブ(80)は、前記バルブ(80)の移動方向(J)の一方向側(J1)に位置する端面(82)を含み、前記端面(82)に対して、前記第2通路(92)が対向配置され、
前記移動方向(J)の一方向側(J1)は、前記バルブ(80)の移動方向(J)のうち前記離間位置(W)から前記対向領域(V)へ向かう方向側を示す、請求項6に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項11】
前記第1通路(91)は、前記第2圧縮室(22)側へ通じる第1開口部(91a)を含み、
前記第2通路(92)は、前記第2圧縮室(22)側へ通じる第2開口部(92a)を含み、
前記第2開口部(92a)が前記第1開口部(91a)よりも低い場所に位置する、請求項6に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項12】
前記第2通路(92)は、前記バルブ(80)の軸(N)に沿って延びる、請求項6に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか1項に記載のスクリュー圧縮機を備える冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スクリュー圧縮機及び冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スクリュー圧縮機が開示されている。特許文献1のスクリュー圧縮機は、2段スクリュー圧縮機内の高段側スライドバルブを回転軸方向に移動させることで、2段運転と単段運転の切替を行う。高段側の圧縮室の出口は2か所設けられており、スライドバルブが動力源側に位置する際には、第一流体出口を塞ぎ、第二流体出口を通じて圧縮機機外へ冷媒が搬送される。一方で、高段側スライドバルブが反動力源に位置する場合、第一流体出口が開口して、第一流体出口を通じて圧縮機機外へ冷媒が搬送される。つまり、スライドバルブが動力源側に位置する場合は2段圧縮機を行い、反動力源側に位置する場合は高段側の圧縮室では冷媒が圧縮されないため、単段運転が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国公開109667760号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、高圧縮比が必要となる2段運転時には、低段側の圧縮室と高段側の圧縮室の容積比によって高段側圧縮室(第2圧縮室)への吸入圧力(中間圧)が決まる。特許文献1に記載のスクリュー圧縮機は、自機の中間圧と、理想の中間圧とが一致する時にはスクリュー圧縮機が高い性能となるが、設計された内部容積比から運転状態が外れた場合、スクリュー圧縮機の性能低下が発生する。特許文献1に記載のスクリュー圧縮機は、中間圧の調整ができないため、自機の中間圧と理想の中間圧とが異なる場合、スクリュー圧縮機の性能低下を抑制することが困難となる。
【0005】
本開示の目的は、性能低下が発生することを抑制できるスクリュー圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のスクリュー圧縮機は、スクリューロータ(40)と、前記スクリューロータ(40)に噛み合うゲート(51,61)を有する複数のゲートロータ(50,60)と、前記スクリューロータ(40)が回転可能に挿入され、前記ゲート(51,61)が貫通する円筒壁(15)を有するケーシング(10)と、前記ケーシング(10)内の流体の圧力を調整する調整機構とを備え、前記円筒壁(15)の内側には、前記スクリューロータ(40)と前記ゲート(51,61)とによって複数の圧縮室が形成され、前記複数の圧縮室は、前記ケーシング(10)内に導入される吸入圧力の流体を前記吸入圧力よりも高圧の圧力まで圧縮する第1圧縮室(21)と、前記第1圧縮室(21)で圧縮された流体が中間圧空間(S)を介して送られる第2圧縮室(22)とを含み、前記調整機構は、前記第1圧縮室(21)及び前記第2圧縮室(22)で流体を圧縮する2段運転時には前記中間圧空間(S)の流体の圧力である中間圧を調整可能である。
【0007】
第1の態様では、スクリュー圧縮機に性能低下が発生することを抑制できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記調整機構は、前記ゲートロータ(50,60)と前記スクリューロータ(40)とで囲まれたロータ空間を示す対向領域に移動可能なバルブ(80)を含み、前記バルブ(80)は、前記対向領域(V)内での位置を変更することで、前記第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になるタイミングを変更する。
【0009】
第2の態様では、バルブ(80)が対向領域(V)に位置する場合、第2圧縮室(22)を形成することで、第2圧縮室(22)での流体の圧縮を行うことができる。バルブ(80)により第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になるタイミングを変更することで、中間圧を所望の値(理想の値)に調整することができる。
【0010】
第3の態様は、第2の態様において、前記バルブ(80)は、前記第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になるタイミングを変更することで、前記第2圧縮室(22)での流体の圧縮工程の開始時の前記第2圧縮室(22)の容積を変更する。
【0011】
第3の態様では、第2圧縮室(22)の容積を変更することで、中間圧空間(S)から第2圧縮室(22)へ送られる流体の量を閉じ切り状態になった直後の第2圧縮室(22)の容積に応じた量に制限して、中間圧を効果的に調整することができる。
【0012】
第4の態様は、第2の態様又は第3の態様において、前記バルブ(80)は、前記第1圧縮室(21)及び前記第2圧縮室(22)のうち前記第1圧縮室(21)で流体を圧縮する単段運転と、前記2段運転とのうちのいずれの運転を行うかを切り換える。
【0013】
第4の態様では、バルブ(80)により単段運転と2段運転とのうちのいずれの運転を行うかを切り換えることができる。
【0014】
第5の態様は、第4の態様において、前記バルブ(80)は、前記ロータ空間と離間する離間位置(W)に移動可能であり、前記離間位置(W)に位置する場合、前記中間圧空間(S)を機外と通じさせた状態を維持する。
【0015】
第5の態様では、バルブ(80)が離間位置(W)に位置する場合、第2圧縮室(22)と機外とを連通させた状態が維持されることで、第1圧縮室(21)で圧縮した冷媒を、さらに圧縮することなく機外へ排出することが可能となる。
【0016】
第6の態様は、第5の態様において、前記ケーシング(10)の内部には、前記中間圧空間(S)に連通する第1通路(91)と第2通路(92)とが設けられ、前記バルブ(80)は、前記対向領域(V)に位置する場合、前記第1通路(91)を通じて前記中間圧空間(S)から前記第2圧縮室(22)へ流体を送るとともに、前記第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になることで前記第2圧縮室(22)に入らなかった流体を前記第2通路(92)を通じて前記中間圧空間(S)へ送り、前記離間位置(W)に位置する場合、前記第1通路(91)を通じて前記中間圧空間(S)の流体を前記機外へ送るとともに、前記第2通路(92)を通じて前記中間圧空間(S)の流体を前記機外へ送る。
【0017】
第6の態様では、バルブ(80)が対向領域(V)に位置する場合、第1通路(91)を通じて第2通路(92)を通じて前記中間圧空間(S)へ流体を戻すことで、第2圧縮室(22)で圧縮される流体の量を制限して、中間圧を調整することができる。バルブ(80)が離間位置(W)に位置する場合、複数の通路(第1通路(91)及び第2通路(92))を用いて流体を機外へ円滑に送ることができるので、流体に圧損が生じることを抑制できる。
【0018】
第7の態様は、第5の態様又は第6の態様において、前記バルブ(80)が前記対向領域(V)に位置する場合に前記2段運転を行い、前記バルブ(80)が前記対向領域(V)内での位置を変更することで前記中間圧を調整し、前記バルブ(80)が前記離間位置(W)に位置する場合に前記単段運転を行う。
【0019】
第7の態様では、バルブ(80)を移動することで、単段運転及び2段運転のうちいずれの運転を行うかを切り換えることができ、さらに、2段運転時には中間圧を調整できるので、スクリュー圧縮機の運転の切り替え及び中間圧の調整を容易に行うことができる。
【0020】
第8の態様は、第2~第7の態様のいずれか1つの態様において、前記バルブ(80)は、位置を連続的に変更可能であることで、前記第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になるタイミングを連続的に調整可能である。
【0021】
第8の態様では、中間圧を精度よく調整することができる。
【0022】
第9の態様は、第6の態様において、前記第1通路(91)及び前記第2通路(92)が、前記離間位置(W)に対して前記バルブ(80)の移動方向(J)の一方向側(J1)に位置し、前記移動方向(J)の一方向側(J1)は、前記バルブ(80)の移動方向(J)のうち前記離間位置(W)から前記対向領域(V)へ向かう方向側を示す。
【0023】
第9の態様では、第1通路(91)及び第2通路(92)と、バルブ(80)の離間位置(W)とを、バルブ(80)の移動方向(J)に間隔を空けて配置することができる。
【0024】
第10の態様は、第6又は第9の態様において、前記バルブ(80)は、前記バルブ(80)の移動方向(J)の一方向側(J1)に位置する端面(82)を含み、前記端面(82)に対して、前記第2通路(92)が対向配置され、前記移動方向(J)の一方向側(J1)は、前記バルブ(80)の移動方向(J)のうち前記離間位置(W)から前記対向領域(V)へ向かう方向側を示す。
【0025】
第10の態様では、第2通路(92)に対してバルブ(80)を近接又は離間させることで、バルブ(80)の位置を対向領域(V)内の位置又は離間位置(W)に切り換えることができる。
【0026】
第11の態様は、第6、第9及び第10の態様のいずれか1つの態様において、前記第1通路(91)は、前記第2圧縮室(22)側へ通じる第1開口部(91a)を含み、前記第2通路(92)は、前記第2圧縮室(22)側へ通じる第2開口部(92a)を含み、前記第2開口部(92a)が前記第1開口部(91a)よりも低い場所に位置する。
【0027】
第11の態様では、機内に油が溜まることを抑制できる。
【0028】
第12の態様は、第6の態様及び第9~11の態様のいずれか1つの態様において、前記第2通路(92)は、前記バルブ(80)の軸(N)に沿って延びる。
【0029】
第12の態様では、バルブ(80)と第2通路(92)とを一直線上に配置することができる。
【0030】
第13の態様の冷凍装置は、第1~第12のいずれか1つの態様のスクリュー圧縮機を備える。
【0031】
第13の態様では、スクリュー圧縮機に性能低下が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、冷凍装置の構成を示す冷媒回路図である。
図2図2は、スクリュー圧縮機の構成を背面側から見た断面図である。
図3図3は、スクリュー圧縮機の構成を示す側面断面図である。
図4図4は、圧縮機構の構成を示す斜視図である。
図5図5は、低段側の螺旋溝を示す平面図である。
図6図6は、高段側の螺旋溝を示す平面図である。
図7図7は、スクリュー圧縮機の吸入行程を示す平面図である。
図8図8は、スクリュー圧縮機の圧縮行程を示す平面図である。
図9図9は、スクリュー圧縮機の吐出行程を示す平面図である。
図10図10は、スクリュー圧縮機の断面斜視図である。
図11図11は、スクリュー圧縮機の断面斜視図である。
図12図12は、中間圧空間を示す平面図である。
図13図13は、第2スライドバルブを示す斜視図である。
図14図14は、対向領域に位置する第2スライドバルブを示す断面斜視図である。
図15図15は、対向領域に位置する第2スライドバルブを示す断面斜視図である。
図16図16は、離間位置に位置する第2スライドバルブを示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表す場合がある。各実施形態、変形例、及び図中において、同一又は相当部分については同一の参照符号を付し、詳細な説明及びそれに付随する効果等の説明は繰り返さない。
【0034】
-冷凍装置-
図1に示すように、冷凍装置(2)は、冷媒が充填された冷媒回路(2a)を有する。冷媒回路(2a)は、スクリュー圧縮機(1)、放熱器(3)、減圧機構(4)、及び蒸発器(5)を有する。減圧機構(4)は、例えば、膨張弁である。冷媒回路(2a)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。冷凍サイクルでは、スクリュー圧縮機(1)で圧縮した冷媒が、放熱器(3)で空気に放熱する。放熱した冷媒は、減圧機構(4)で減圧され、蒸発器(5)で蒸発する。蒸発した冷媒は、スクリュー圧縮機(1)に吸入される。冷媒中には、スクリュー圧縮機(1)の摺動部を潤滑する潤滑油が含まれる。冷媒は流体の一例である。
【0035】
冷凍装置(2)は、空気調和装置である。空気調和装置は、冷房専用機、暖房専用機、あるいは冷房と暖房とを切り換える空気調和装置であってもよい。この場合、空気調和装置は、冷媒の循環方向を切り換える切換機構(例えば四方切換弁)を有する。冷凍装置(2)は、給湯器、チラーユニット、庫内の空気を冷却する冷却装置などであってもよい。冷却装置は、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの内部の空気を冷却する。
【0036】
-スクリュー圧縮機-
図2及び図3に示すように、スクリュー圧縮機(1)は、ケーシング(10)と、圧縮機構(20)とを備える。ケーシング(10)には、圧縮機構(20)が収容される。圧縮機構(20)は、駆動軸(25)を介して電動機(不図示)と連結される。
【0037】
圧縮機構(20)は、ケーシング(10)に設けられた円筒壁(15)と、1つのスクリューロータ(40)と、第1ロータ(31)と、第2ロータ(32)とを有する。
【0038】
スクリューロータ(40)は、概ね円柱状に形成された金属製の部材である。スクリューロータ(40)の外径は、円筒壁(15)の内径よりも若干小さく設定される。スクリューロータ(40)の外周面は、円筒壁(15)の内周面と近接する。スクリューロータ(40)は、ケーシング(10)に回転可能に挿入される。
【0039】
図3から図6に示すように、スクリューロータ(40)の外周部には、螺旋状に延びる複数の螺旋溝(41)が形成される。螺旋溝(41)は、スクリューロータ(40)の軸方向(J)の一方向側(J1)から他方向側(J2)へ向かって延びる。軸方向(J)は、スクリューロータ(40)の回転軸の延びる方向である。スクリューロータ(40)の軸方向(J)の両端部には、第1端部(42)と、第2端部(43)と、が設けられる。第1端部(42)及び第2端部(43)は、それぞれ、螺旋溝(41)が形成されていない滑らかな円筒状の外周面を有する。スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)は、スクリューロータ(40)の第1端部(42)と第2端部(43)の間に形成される。スクリューロータ(40)には、駆動軸(25)が連結される。駆動軸(25)とスクリューロータ(40)とは、一体に回転する。軸方向(J)は、バルブ(80)の移動方向の一例である。
【0040】
図2及び図5に示すように、第1ロータ(31)は、第1ゲートロータ(50)で構成される。第1ゲートロータ(50)は、放射状に配置された複数の歯である第1ゲート(51)を有する。第1ゲート(51)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に噛み合う。第1ゲートロータ(50)は、第1ゲートロータ室(17)に収容される。第1ゲートロータ室(17)は、ケーシング(10)内に区画形成され、円筒壁(15)に隣接する。
【0041】
図2及び図6に示すように、第2ロータ(32)は、第2ゲートロータ(60)で構成される。第2ゲートロータ(60)は、放射状に配置された複数の歯である第2ゲート(61)を有する。第2ゲート(61)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に噛み合う。第2ゲートロータ(60)は、第2ゲートロータ室(18)に収容される。第2ゲートロータ室(18)は、ケーシング(10)内に区画形成され、円筒壁(15)に隣接する。ゲート(51,61)は、円筒壁(15)を貫通する。
【0042】
図2及び図3に示すように、円筒壁(15)の内側には、スクリューロータ(40)とゲート(51,61)とによって複数の圧縮室が形成される。本実施形態では、円筒壁(15)の内側には、第1圧縮室(21)と第2圧縮室(22)とが形成される。第1圧縮室(21)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と、第1ゲートロータ(50)の第1ゲート(51)とによって囲まれた空間である。第2圧縮室(22)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と、第2ゲートロータ(60)の第2ゲート(61)とによって囲まれた空間である。
【0043】
第1圧縮室(21)の吐出側には、第1吐出管(7)が連通する。ケーシング(10)の内部には中間圧空間(S)が形成される。中間圧空間(S)は、スクリューロータ(40)を回転駆動させる上記電動機が配置された空間である。中間圧空間(S)の吸入側には、吸入管(8)が連通する。第1吐出管(7)と吸入管(8)とが連絡管(不図示)等を介して互いに連通される。中間圧空間(S)は、後述する複数の通路(第1通路(91)及び第2通路(92))を介して第2圧縮室(22)と連通する。第2圧縮室(22)の吐出側には、第2吐出管(9)が連通する。第2吐出管(9)は、機外(スクリュー圧縮機(1)の外部)と連通する。ケーシング(10)の内部には、中間圧空間(S)と、スクリューロータ(40)の設置空間とを仕切る壁部(19)が設けられる。
【0044】
図3に示すように、スクリュー圧縮機(1)には、第1スライドバルブ(70)と第2スライドバルブ(80)とが設けられる。第1スライドバルブ(70)及び第2スライドバルブ(80)の各々は、円筒壁(15)がその周方向の二箇所においてスクリューロータ(40)の径方向の外側に膨出したバルブ収納部(16a,16b)内に収納される(図2参照)。第2スライドバルブ(80)は、調整機構の一例である。
【0045】
第1スライドバルブ(70)及び第2スライドバルブ(80)の各々は、軸方向(J)に沿ってスライド可能に構成される。第1スライドバルブ(70)及び第2スライドバルブ(80)の各々は、バルブ収納部(16)に挿入された状態で、スクリューロータ(40)の外周面と対向する。スクリュー圧縮機(1)には、第1スライドバルブ(70)及び第2スライドバルブ(80)をスライド駆動するための駆動機構(28)が設けられる。
【0046】
駆動機構(28)は、第1スライドバルブ(70)をスライド(移動)させる第1電動機と、第2スライドバルブ(80)をスライドさせる第2電動機とを含む。第1電動機の回転運動がギアにより直線運動に変換されることで、第1スライドバルブ(70)が軸方向(J)に沿って移動する。第1電動機は、例えば、ステッピングモータを含み、回転数を無段階で変更可能である。第1電動機の回転数を無段階で変更可能であることは、第1電動機の回転数(回転角度)を連続的に変更可能(微小間隔で変更可能)であることを示す。第2電動機の回転運動がギアにより直線運動に変換されることで、第2スライドバルブ(80)が軸方向(J)に沿って移動する。第2電動機は、例えば、ステッピングモータを含み、回転数を無段階で変更可能である。第2電動機の回転数を無段階で変更可能であることは、第2電動機の回転数(回転角度)を連続的に変更可能(微小間隔で変更可能)であることを示す。
【0047】
第1スライドバルブ(70)及び第2スライドバルブ(80)の各々は、軸方向(J)の位置を調整することが可能なバルブである。第1スライドバルブ(70)は、第1圧縮室(21)で圧縮途中の冷媒を吸入側へ戻して運転容量を変化させるアンロード機構として用いることができる。第1スライドバルブ(70)は、第1圧縮室(21)から冷媒を吐出するタイミングを調整することにより、第1圧縮室(21)の圧縮比(内部容積比)を調節する圧縮比調節機構として用いることができる。第2スライドバルブ(80)は、第2圧縮室(22)で圧縮途中の冷媒を吸入側へ戻して運転容量を変化させるアンロード機構として用いることができる。第2スライドバルブ(80)は、第2圧縮室(22)から冷媒を吐出するタイミングを調整することにより、第2圧縮室(22)の圧縮比(内部容積比)を調節する圧縮比調節機構として用いることができる。
【0048】
スクリュー圧縮機(1)は、記憶部と制御部とを備える。記憶部は、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)のようなメモリを含み、制御部によって実行される種々のコンピュータープログラムを記憶する。制御部は、CPU及びMPUのようなプロセッサーを含む。制御部は、記憶部に記憶されたコンピュータープログラムを実行することにより、スクリュー圧縮機(1)の各構成要素(上記電動機、第1電動機、第2電動機等)を制御する。
【0049】
-第1圧縮室及び第2圧縮室-
第1圧縮室(21)は、2段圧縮の低段側となる圧縮室であり、ケーシング(10)内に導入される吸入圧力の冷媒を、その吸入圧力よりも高圧の圧力まで圧縮する。第2圧縮室(22)は、2段圧縮の高段側となる圧縮室であり、第1圧縮室(21)で圧縮された冷媒の圧力を、さらに高圧の吐出圧力まで圧縮する。
【0050】
図2及び図3に示すように、第1ゲートロータ室(17)には、低圧冷媒(吸入圧力の流体)が流れる低圧配管(6)が接続される。第1ゲートロータ室(17)は、第1圧縮室(21)の吸入開口に低圧冷媒を供給するように構成される。
【0051】
低圧冷媒は、第1圧縮室(21)で圧縮される。第1圧縮室(21)で圧縮された冷媒は、第1吐出管(7)、及び吸入管(8)を通じて中間圧空間(S)へ供給された後、第2ゲートロータ室(18)から第2圧縮室(22)に供給される。
【0052】
第2圧縮室(22)で圧縮されて高圧となった高圧冷媒は、第2吐出管(9)を通じて機外へ送られる。第2吐出管(9)を通じて機外へ送られた冷媒は、冷媒回路(2a)を循環する。このように、低圧空間(S1)、第1圧縮室(21)、中間圧空間(S)、及び第2圧縮室(22)が、流体の圧力が低い側から高い側へ向かって順に繋がっている。
【0053】
-運転動作-
〈吸込、圧縮、及び吐出の各行程〉
スクリューロータ(40)が回転すると、螺旋溝(41)に噛み合う第1ゲートロータ(50)及び第2ゲートロータ(60)が回転する。これにより、圧縮機構(20)では、第1圧縮室(21)において、吸込行程、圧縮行程、及び吐出行程が連続的に繰り返し行われる。
【0054】
図7に示す吸込行程では、網掛けを付した第1圧縮室(21)が吸入側の空間に連通する。第1圧縮室(21)に対応する螺旋溝(41)は、第1ゲートロータ(50)の第1ゲート(51)と噛み合う。スクリューロータ(40)が回転すると、第1ゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって相対的に移動し、それに伴って、第1圧縮室(21)の容積が拡大する。その結果、冷媒が第1圧縮室(21)へ吸い込まれる。
【0055】
スクリューロータ(40)がさらに回転すると、図8に示す圧縮行程が行われる。圧縮行程では、網掛けを付した第1圧縮室(21)が閉じ切り状態となる。つまり、第1圧縮室(21)に対応する螺旋溝(41)は、第1ゲート(51)によって吸入側の空間から仕切られる。第1スライドバルブ(70)の軸方向(J)の位置が変更されると、第1圧縮室(21)が閉じ切り状態となるタイミングが変更される。スクリューロータ(40)の回転に伴い、第1ゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ近づいていくと、第1圧縮室(21)の容積が徐々に小さくなっていく。その結果、第1圧縮室(21)内の冷媒が圧縮される。
【0056】
スクリューロータ(40)がさらに回転すると、図9に示す吐出行程が行われる。吐出行程では、網掛けを付した第1圧縮室(21)が吐出側の端部(図の右側の端部)を介して第1吐出管(7)と連通する。スクリューロータ(40)の回転に伴い、第1ゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ近づいていくと、圧縮された冷媒が第1圧縮室(21)から第1吐出管(7)を通って押し出されていく。押し出された冷媒は吸入管(8)を通じて中間圧空間(S)へ送られる。
【0057】
なお、高段側の第2圧縮室(22)における吸込行程、圧縮行程、及び吐出行程については後述する。
【0058】
-第2スライドバルブ及びその周辺の構成-
図11及び図12は、スクリュー圧縮機(1)の一部切断断面図である。図11及び図12において、スクリューロータ(40)、第2ゲートロータ(60)、第2スライドバルブ(80)等の図は省略する。図11及び図12に示すように、バルブ収納部(16b)は、円筒壁(15)の外周部に設けられ、軸方向(J)に沿って延びる。バルブ収納部(16b)の内周面は、第2スライドバルブ(80)の外周面に沿った円弧形状を有する。バルブ収納部(16b)は、第2圧縮室(22)と対向する位置から、第2圧縮室(22)と対向しない位置(第2圧縮室(22)と離間する位置)まで亘って設けられる。第2圧縮室(22)と対向することは、詳細には、第2圧縮室(22)に対してスクリューロータ(40)の径方向の外側から対向することを示す。スクリューロータ(40)の径方向は、スクリューロータ(40)の回転軸(回転の中心)を通りつつ、軸方向(J)に対して垂直な方向である。径方向の外側は、径方向のうちスクリューロータ(40)の回転軸から離間する方向である。第2吐出管(9)は、バルブ収納部(16b)の内周面に開口部(9a)を有する。
【0059】
図10から図12に示すように、ケーシング(10)の内部は、第1通路(91)と第2通路(92)とが設けられる。第1通路(91)及び第2通路(92)の各々は、第2ゲートロータ室(18)(第2圧縮室(22))と中間圧空間(S)とに連通する。第1通路(91)は、円筒壁(15)の内周面に開口部(91a)を有する。第1通路(91)の開口部(91a)は、第2圧縮室(22)と対向する場所に位置する。第2通路(92)は、バルブ収納部(16b)のうち軸方向(J)の一方向側(J1)の端面に開口部(92a)を有する。第2通路(92)の開口部(92a)は、第1通路(91)の開口部(91a)よりも低い場所に位置する。低い場所は、鉛直方向の下側を示す。これにより、スクリュー圧縮機(1)の内部に油が溜まることを抑制できる。
【0060】
図14に示すように、第1通路(91)及び第2通路(92)が、離間位置(W)に対して軸方向(J)の一方向側(J1)に位置する。
【0061】
第2スライドバルブ(80)は、軸方向(J)の一方向側(J1)に位置する端面(82)を含む。端面(82)に対しては、第2通路(92)が対向配置される。
【0062】
第2スライドバルブ(80)の軸(N)上には、第2通路(92)が位置する。第2通路(92)は、第2スライドバルブ(80)の軸(N)に沿って延びる。第2スライドバルブ(80)の軸(N)は、第2スライドバルブ(80)の中心を通りつつ第2スライドバルブ(80)の移動方向(軸方向(J))に沿って延びる仮想線である。
【0063】
図13は、中間圧空間(S)を軸方向(J)の一方向側(J1)から見た端面図である。図13に示すように、壁部(19)には、第1通路(91)の開口部(91b)と、第2通路(92)の開口部(92b)とが設けられる。第1通路(91)は、開口部(91a)から開口部(91b)に亘って形成された管状部材の内部通路である。第2通路(92)は、開口部(92a)から開口部(92b)に亘って形成された管状部材の内部通路である。
【0064】
図14は、第2スライドバルブ(80)を示す斜視図である。第2スライドバルブ(80)には、流体通路(81)が設けられる。流体通路(81)は、第2スライドバルブ(80)に形成された切欠きである。
【0065】
図10に示すように、第2スライドバルブ(80)は、対向領域(V)と、離間位置(W)とに移動可能である。
【0066】
-対向領域-
図14及び図15は、対向領域(V)に位置する第2スライドバルブ(80)を示す。図10図14及び図15に示すように、対向領域(V)は、ロータ空間を示す領域であり、第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になるタイミングを変更可能な領域である。ロータ空間は、ゲートロータ(50,60)とスクリューロータ(40)とで囲まれた空間である。ロータ空間は、ゲートロータ(50,60)と、第2圧縮室(22)が形成される側のスクリューロータ(40)の外面とで囲まれた空間である。ロータ空間は、例えば、スクリューロータ(40)の回転方向に沿うようにしてゲートロータ(50,60)で囲まれた空間である。第2スライドバルブ(80)が対向領域(V)に位置する場合、第2スライドバルブ(80)の流体通路(81)(図13参照)が第2吐出管(9)の開口部(9a)と対向する。第2スライドバルブ(80)が対向領域(V)に位置する場合、スクリュー圧縮機(1)は2段運転を行う。2段運転は、第1圧縮室(21)で及び第2圧縮室(22)で冷媒を圧縮する運転である。
【0067】
-2段運転-
第2スライドバルブ(80)が対向領域(V)に位置する場合、吸込行程において、第2圧縮室(22)が第1通路(91)に連通する(図6及び図7参照)。第2圧縮室(22)に対応する螺旋溝(41)は、第2ゲートロータ(60)の第2ゲート(61)と噛み合う。スクリューロータ(40)が回転すると、第2ゲート(61)が螺旋溝(41)の終端へ向かって相対的に移動し、それに伴って、第2圧縮室(22)の容積が拡大する。その結果、中間圧空間(S)内の冷媒(第1圧縮室(21)で圧縮された冷媒)が第1通路(91)を通じて第2圧縮室(22)へ吸い込まれる。
【0068】
スクリューロータ(40)がさらに回転すると、圧縮行程が行われる(図6及び図8参照)。圧縮行程では、第2圧縮室(22)が閉じ切り状態となる。つまり、第2圧縮室(22)に対応する螺旋溝(41)は、第2ゲート(61)によって吸入側の空間から仕切られる。中間圧空間(S)から第1通路(91)を通じて第2圧縮室(22)へ送られた冷媒のうち(図11の矢印Z1参照)、第2圧縮室(22)が閉じ切り状態となることで、第2圧縮室(22)に入らなかった冷媒は、第2通路(92)を通じて中間圧空間(S)へ送られる(図14及び図15の矢印Z2参照)。スクリューロータ(40)の回転に伴い、第2ゲート(61)が螺旋溝(41)の終端へ近づいていくと、第2圧縮室(22)の容積が徐々に小さくなっていく。その結果、第2圧縮室(22)内の冷媒が圧縮されて吐出圧力の冷媒となる。
【0069】
スクリューロータ(40)がさらに回転すると、吐出行程が行われる(図6及び図9参照)。吐出行程では、第2圧縮室(22)が吐出側の端部を介して第2スライドバルブ(80)の流体通路(81)と対向することで、流体通路(81)及び開口部(9a)を介して第2吐出管(9)と通じる。スクリューロータ(40)の回転に伴い、第2ゲート(61)が螺旋溝(41)の終端へ近づいていくと、圧縮された冷媒(吐出圧力の冷媒)が第2圧縮室(22)から流体通路(81)及び第2吐出管(9)を通って機外へ押し出されていく(図14及び図15の矢印Z3参照)。
【0070】
第2スライドバルブ(80)が対向領域(V)に位置する場合、圧縮機構(20)では、第2圧縮室(22)において、上記の吸込行程、圧縮行程、及び吐出行程が連続的に繰り返し行われる。
【0071】
以上のように第2スライドバルブ(80)が対向領域(V)に位置する場合、スクリュー圧縮機(1)からは第1通路(91)で圧縮され、さらに第2圧縮室(22)で圧縮された冷媒が吐出されるので、2段運転が行われる。
【0072】
-2段運転時の第2圧縮室の閉じ切りタイミング-
以下では、中間圧空間(S)の冷媒の圧力を中間圧と記載することがある。
【0073】
図10図14及び図15に示すように、対向領域(V)内での第2スライドバルブ(80)の位置が変更されることで、圧縮行程において、第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になるタイミングが変更される。本実施形態では、対向領域(V)内のうち、第2スライドバルブ(80)が軸方向(J)の一方向側(J1)に位置する程、第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になるタイミングが早くなる。第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になるタイミングが早くなると、第2圧縮室(22)での流体の圧縮工程の開始時の第2圧縮室(22)の容積が大きくなる。第2圧縮室(22)での流体の圧縮工程の開始時の第2圧縮室(22)の容積が大きくなる程、中間圧空間(S)から第1通路(91)を通じて第2圧縮室(22)へ送られた冷媒のうち(図11の矢印Z1参照)、第2通路(92)を通じて中間圧空間(S)へ戻される冷媒の量が少なくなる(図14及び図15の矢印Z2参照)。
【0074】
以上のように、対向領域(V)内での第2スライドバルブ(80)の位置が変更されることで、第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になるタイミングが変更され、これにより、圧縮工程の開始時(第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になった直後)の第2圧縮室(22)の容積が変更される。これにより、圧縮工程の開始時の第2圧縮室(22)の容積を小さくすると、中間圧空間(S)、第2圧縮室(22)及び第2吐出管(9)を通じて冷媒を円滑に吐出することが抑制されるので中間圧が上昇する。これに対し、圧縮工程の開始時の第2圧縮室(22)の容積を大きくすると、中間圧空間(S)、第2圧縮室(22)及び第2吐出管(9)を通じて冷媒を円滑に吐出することで、中間圧の上昇が抑制される。その結果、対向領域(V)内での第2スライドバルブ(80)の位置を変更することで、中間圧が調整される。
【0075】
上記のように、第2電動機の回転数が無段階で変更可能である。これにより、第2スライドバルブ(80)は、軸方向(J)の位置を連続的に変更可能(微小間隔で変更可能)であることで、第2圧縮室(22)を閉じ切り状態にすタイミングを連続的に調整可能(タイミングの微調整が可能)である。
【0076】
-離間位置-
図16は、離間位置(W)に位置する第2スライドバルブ(80)を示す。離間位置(W)は、第2スライドバルブ(80)が上記ロータ空間と離間する位置である。図10及び図16に示すように、第2スライドバルブ(80)が離間位置(W)に位置する場合、スクリュー圧縮機(1)は単段運転を行う。単段運転は、第1圧縮室(21)で及び第2圧縮室(22)のうち第1圧縮室(21)のみで冷媒を圧縮する運転である。
【0077】
-単段運転-
第2スライドバルブ(80)が離間位置(W)に位置する場合、第2スライドバルブ(80)が第2圧縮室(22)から離間していることで、第2圧縮室(22)が第2スライドバルブ(80)により閉じ切り状態になることが回避される。これにより、第2圧縮室(22)により冷媒が圧縮されることが回避される。
【0078】
第2スライドバルブ(80)が離間位置(W)に位置する場合、中間圧空間(S)が第1通路(91)及び第2吐出管(9)を介して機外と通じている状態が維持されるとともに、中間圧空間(S)が第2通路(92)及び第2吐出管(9)を介して機外と通じている状態が維持される。これにより、中間圧空間(S)の流体が第1通路(91)を通じて機外へ送られるとともに(図11の矢印Z1、及び図16の矢印Z5の参照)、第2通路(92)を通じて機外へ送られる(図16の矢印Z4及び矢印Z5の参照)。
【0079】
以上のように第2スライドバルブ(80)が離間位置(W)に位置する場合、スクリュー圧縮機(1)からは第1通路(91)及び第2圧縮室(22)のうち第1通路(91)のみで圧縮された冷媒が吐出されるので、単段運転が行われる。
【0080】
-効果-
以上のように、第2スライドバルブ(80)は、第1圧縮室(21)及び第2圧縮室(22)で流体を圧縮する2段運転時には中間圧空間(S)の流体の圧力である中間圧を調整する。本実施形態では、第2スライドバルブ(80)は、第2圧縮室(22)の閉じ切りタイミング(第2圧縮室(22)を閉じ切り状態にするタイミング)を調整し、第1圧縮室(21)と第2圧縮室(22)との容積比を変化させて中間圧を調整する。これにより、スクリュー圧縮機(1)の使用状況、状態等に応じて、単段運転及び2段運転のうちいずれの運転を行うかを切り換えることができ、さらに、2段運転時には中間圧を調整できるので、スクリュー圧縮機(1)を効率的に運転することができる。また、2段運転時に中間圧を調整することで、自機の中間圧が理想の中間圧に近づくように自機の中間圧を制御できるので、スクリュー圧縮機に性能低下が発生することを抑制できる。
【0081】
また、また、SCOPの運転条件下では、一般空調条件の様な低圧縮比条件も含まれているため2段運転では過圧縮が生じて損失が大きくなるが、本実施形態のスクリュー圧縮機(1)は単段運転と、中間圧を調整可能な2段運転の両方を実現できるため期間効率SCOPを向上させることができる。
【0082】
また、単段運転時には、第1通路(91)のみならず、第2通路(92)も用いて冷媒が機外へ送られるので通路上で生じる冷媒の圧力損失を低減させることができる。その結果、単段運転時の高速運転時においても運転効率が低下することを抑制できる。
【0083】
また、第2圧縮室(22)の閉じ切りタイミングの調整により、中間圧が最適な値となるように調整できる。第2圧縮室(22)に入らない冷媒は第2通路(92)を通じて中間圧空間(S)へ戻すことができる。また、中間圧の制御と、単段運転の切替とが可能となることで、スクリュー圧縮機(1)の期間効率を向上させることができる。また、単段運転又は2段運転による処理後の冷媒の吐出口を1つの吐出口(第2吐出管(9)の吐出口)で構成することで、スクリュー圧縮機(1)の構造を簡素化でき、スクリュー圧縮機(1)を安価に提供することができる。
【0084】
-変形例-
本実施形態では、第2電動機が軸方向(J)に沿って第2スライドバルブ(80)をスライドさせて、第2スライドバルブ(80)の位置を変更する。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、スクリュー圧縮機(1)が油圧シリンダを備え、前記油圧シリンダが軸方向(J)に沿って第2スライドバルブ(80)をスライドさせて、第2スライドバルブ(80)の位置を変更してもよい。前記油圧シリンダは、シリンダと、前記シリンダ内に配置されるピストンと、前記ピストンに接続されるロッドとを備える。前記シリンダ内は、前記ピストンにより第1シリンダ室と第2シリンダ室とに仕切られる。前記ロッドの先端は、前記シリンダの外部へ突出している。前記ロッドの先端には第2スライドバルブ(80)が接続される。前記第1シリンダ室内の作動油の量と前記第2シリンダ室内の作動油の量とが調整されることで、前記ロッドの軸方向(J)のスライド量が連続的に調整され、その結果、第2スライドバルブ(80)の軸方向(J)の位置が連続的に変更される。なお、第1スライドバルブ(70)についても、前記油圧シリンダのような油圧機器により軸方向(J)に沿ってスライドされて、第1スライドバルブ(70)の軸方向(J)の位置が変更されてもよい。
【0085】
本実施形態では、第2スライドバルブ(80)は、第1圧縮室(21)及び第2圧縮室(22)のうち第1圧縮室(21)のみで流体を圧縮する単段運転と、第1圧縮室(21)及び第2圧縮室(22)で流体を圧縮する2段運転とのうちのいずれの運転を行うかを切り換える。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、スクリュー圧縮機(1)が第2スライドバルブ(80)とは異なる切換バルブを備え、前記切換バルブが単段運転と2段運転とのうちのいずれの運転を行うかを切り換えてもよい。この場合、例えば、第1圧縮室(21)の出口側と第2圧縮室(22)の出口側とに接続される冷媒通路が設けられ、前記切換バルブが前記冷媒通路に設けられることで前記冷媒通路を開閉する。前記切換バルブが開状態になると単段運転に切り換えられ、前記切換バルブが閉状態になると2段運転に切り換えられる。この場合、前記切換バルブが単段運転と2段運転とを切り換えるために用いられ、第2スライドバルブ(80)が2段運転時に中間圧空間(S)の流体の圧力である中間圧を調整するために用いられる。
【0086】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0087】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上に説明したように、本開示は、スクリュー圧縮機及び冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0089】
1 スクリュー圧縮機
10 ケーシング
15 円筒壁
21 第1圧縮室
22 第2圧縮室
40 スクリューロータ
50 第1ゲートロータ
51 第1ゲート
60 第2ゲートロータ
61 第2ゲート
80 第2スライドバルブ(バルブ)
J 軸方向(バルブの移動方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューロータ(40)と、
前記スクリューロータ(40)に噛み合うゲート(51,61)を有する複数のゲートロータ(50,60)と、
前記スクリューロータ(40)が回転可能に挿入され、前記ゲート(51,61)が貫通する円筒壁(15)を有するケーシング(10)と、
前記ケーシング(10)内の流体の圧力を調整する調整機構と
を備え、
前記円筒壁(15)の内側には、前記スクリューロータ(40)と前記ゲート(51,61)とによって複数の圧縮室が形成され、
前記複数の圧縮室は、前記ケーシング(10)内に導入される吸入圧力の流体を前記吸入圧力よりも高圧の圧力まで圧縮する第1圧縮室(21)と、前記第1圧縮室(21)で圧縮された流体が中間圧空間(S)を介して送られる第2圧縮室(22)とを含み、
前記調整機構は、前記第1圧縮室(21)及び前記第2圧縮室(22)のうち前記第1圧縮室(21)で流体を圧縮する単段運転と、前記第1圧縮室(21)及び前記第2圧縮室(22)で流体を圧縮する2段運転とのうちのいずれの運転を行うかを切り換え、前記2段運転時に前記中間圧空間(S)の流体の圧力である中間圧を調整可能であり、
前記2段運転では、前記第1圧縮室(21)で圧縮した流体を前記第2圧縮室(22)で圧縮する、スクリュー圧縮機。
【請求項2】
前記調整機構は、前記ゲートロータ(50,60)と前記スクリューロータ(40)とで囲まれたロータ空間を示す対向領域(V)に移動可能なバルブ(80)を含み、
前記バルブ(80)は、
前記対向領域(V)内での位置を変更することで、前記第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になるタイミングを変更する、請求項1に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項3】
前記バルブ(80)は、前記第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になるタイミングを変更することで、前記第2圧縮室(22)での流体の圧縮工程の開始時の前記第2圧縮室(22)の容積を変更する、請求項2に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項4】
前記バルブ(80)は、前記段運転と、前記2段運転とのうちのいずれの運転を行うかを切り換える、請求項2又は請求項3に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項5】
前記バルブ(80)は、前記ロータ空間と離間する離間位置(W)に移動可能であり、前記離間位置(W)に位置する場合、前記中間圧空間(S)を機外と通じさせた状態を維持する、請求項4に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項6】
前記ケーシング(10)の内部には、前記中間圧空間(S)に連通する第1通路(91)と第2通路(92)とが設けられ、
前記バルブ(80)は、
前記対向領域(V)に位置する場合、前記第1通路(91)を通じて前記中間圧空間(S)から前記第2圧縮室(22)へ流体を送るとともに、前記第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になることで前記第2圧縮室(22)に入らなかった流体を前記第2通路(92)を通じて前記中間圧空間(S)へ送り、
前記離間位置(W)に位置する場合、前記第1通路(91)を通じて前記中間圧空間(S)の流体を前記機外へ送るとともに、前記第2通路(92)を通じて前記中間圧空間(S)の流体を前記機外へ送る、請求項5に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項7】
前記バルブ(80)が前記対向領域(V)に位置する場合に前記2段運転を行い、
前記バルブ(80)が前記対向領域(V)内での位置を変更することで前記中間圧を調整し、
前記バルブ(80)が前記離間位置(W)に位置する場合に前記単段運転を行う、請求項5に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項8】
前記バルブ(80)は、位置を連続的に変更可能であることで、前記第2圧縮室(22)が閉じ切り状態になるタイミングを連続的に調整可能である、請求項2又は請求項3に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項9】
前記第1通路(91)及び前記第2通路(92)が、前記離間位置(W)に対して前記バルブ(80)の移動方向(J)の一方向側(J1)に位置し、
前記移動方向(J)の一方向側(J1)は、前記バルブ(80)の移動方向(J)のうち前記離間位置(W)から前記対向領域(V)へ向かう方向側を示す、請求項6に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項10】
前記バルブ(80)は、前記バルブ(80)の移動方向(J)の一方向側(J1)に位置する端面(82)を含み、前記端面(82)に対して、前記第2通路(92)が対向配置され、
前記移動方向(J)の一方向側(J1)は、前記バルブ(80)の移動方向(J)のうち前記離間位置(W)から前記対向領域(V)へ向かう方向側を示す、請求項6に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項11】
前記第1通路(91)は、前記第2圧縮室(22)側へ通じる第1開口部(91a)を含み、
前記第2通路(92)は、前記第2圧縮室(22)側へ通じる第2開口部(92a)を含み、
前記第2開口部(92a)が前記第1開口部(91a)よりも低い場所に位置する、請求項6に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項12】
前記第2通路(92)は、前記バルブ(80)の軸(N)に沿って延びる、請求項6に記載のスクリュー圧縮機。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか1項に記載のスクリュー圧縮機を備える冷凍装置。