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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146837
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】樹脂シートおよび生地積層体
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20241004BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20241004BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241004BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20241004BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20241004BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241004BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241004BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20241004BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20241004BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20241004BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08J5/18
B32B27/12
C08L101/00
C08L23/02
A41D31/00 502F
A41D31/00 502G
B32B27/32 103
B32B27/30 B
B32B27/36
B32B27/40
B32B27/34
C08J9/04 CES
C08J9/04 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049048
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023057506
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504300103
【氏名又は名称】三井化学ファイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】野田 泰登
(72)【発明者】
【氏名】又吉 智也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 光希
(72)【発明者】
【氏名】野間 賢士
【テーマコード(参考)】
4F071
4F074
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA12X
4F071AA15X
4F071AA20X
4F071AA21
4F071AA22X
4F071AA43
4F071AA51X
4F071AA53
4F071AA54X
4F071AA75
4F071AA78
4F071AA82
4F071AA84
4F071AF19Y
4F071AF20Y
4F071AF25Y
4F071AF45
4F071AH19
4F071BC01
4F071BC12
4F074AA25
4F074AA26
4F074AA98
4F074AB03
4F074BA02
4F074CA22
4F074DA02
4F074DA23
4F074DA38
4F074DA54
4F100AH02B
4F100AH03A
4F100AH04A
4F100AH05A
4F100AK03A
4F100AK08A
4F100AK12A
4F100AK41A
4F100AK46A
4F100AK51A
4F100AK64A
4F100AK66
4F100AL09A
4F100BA02
4F100CA30A
4F100DG11B
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100GB72
4F100JA04A
4F100JA13B
4F100JB16A
4F100JK06
4F100JK07A
4F100JK12A
4F100YY00A
4J002AA011
4J002BB012
4J002BB151
4J002BC021
4J002CF001
4J002CH001
4J002CK021
4J002GB00
4J002GC00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生地への接着性と耐熱性を両立できる樹脂シートを提供する。
【解決手段】本発明の樹脂シートは、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、融点が130~180℃の熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成され、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含み、周波数1.59Hz、歪量0.1%、昇温速度4℃/分、引張モードの条件で温度範囲-60℃~200℃として動的粘弾性を測定したときの100℃における貯蔵弾性率E’が0.55MPa以上、7.0MPaである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、融点が130~180℃の熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成された樹脂シートであって、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含み、
周波数1.59Hz、歪量0.1%、昇温速度4℃/分、引張モードの条件で温度範囲-60℃~200℃として動的粘弾性を測定したときの100℃における貯蔵弾性率E’が0.55MPa以上、7.0MPa以下である、樹脂シート。
【請求項2】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、融点が130~180℃の熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成された樹脂シートであって、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含み、
以下の手順で測定される接着力が4N/25mm以上、30N/25mm以下となる、樹脂シート。
[手順]
まず、当該樹脂シートと生地x(厚さ;0.28mm、目付;100g/m、素材;ポリエステル89質量%、ポリウレタン11質量%)を、当該樹脂シートのMD方向と生地xの伸縮性が最も大きい方向が平行になるように重ね合わせ、圧力0.1MPa、時間10秒、温度190℃の条件で接着し、積層体を作製する。前記積層体の当該樹脂シートのMD方向を長さ方向とし、幅25mmとなるように、前記積層体を裁断し、試験片を得る。
つぎに、当該試験片について、恒温槽付きの引張試験機を用いて、試験温度100℃、引張速度300mm/min、剥離角度180°、剥離方向を当該MD方向として、生地xから当該樹脂シートを剥離したときの接着力[N/25mm]を測定する。
【請求項3】
JIS K6253に準拠して23℃で測定される、当該樹脂シートの少なくとも一方の表面の測定直後のショアA硬度をHS0としたとき、HS0が30以上、90以下である、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
JIS K6253に準拠して23℃で測定される、当該樹脂シートの少なくとも一方の表面の測定直後のショアA硬度をHS0とし、測定15秒後のショアA硬度をHS1としたとき、(HS0-HS1)で示されるΔHSが3以上、30以下である、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項5】
前記樹脂シートの厚さが0.1mm以上、3mm以下である、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項6】
前記樹脂シートの密度が0.30g/cm以上、1.5g/cm以下である、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項7】
前記熱可塑性エラストマー(B)のショアA硬度が30以上、90以下である、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項8】
前記熱可塑性エラストマー(B)が、酸素、硫黄、窒素、およびハロゲンからなる群から選ばれる原子を1つまたは2つ以上含む官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)を含む、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項9】
前記熱可塑性エラストマー(B)が、熱可塑性ポリアミド系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、および熱可塑性ポリエステル系エラストマーの中から選ばれる1種または2種以上の熱可塑性エラストマー(b2)を含む、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項10】
前記樹脂組成物が相容化材(C)をさらに含む、請求項8に記載の樹脂シート。
【請求項11】
前記相容化材(C)がスチレン系熱可塑性エラストマーの変性物またはポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの変性物を含む、請求項10に記載の樹脂シート。
【請求項12】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し、20~60質量%であり、
前記熱可塑性エラストマー(B)の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し20~80質量%であり、
前記相容化材(C)の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し5~20質量%である、請求項10に記載の樹脂シート。
【請求項13】
前記熱可塑性エラストマー(B)がプロピレン単位と炭素数2または4~20のα-オレフィン単位とを含むプロピレン・α-オレフィン共重合からなる熱可塑性エラストマー(b3)を含む、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項14】
前記熱可塑性エラストマー(B)が、熱可塑性オレフィン系エラストマー、熱可塑性スチレン系エラストマー、及びこれらのコンパウンドの中から選ばれる1または2以上からなる熱可塑性エラストマー(b4)を含む、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項15】
衣料品の素材として用いられる、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項16】
請求項1または2に記載の樹脂シートの少なくとも一方の面に生地が貼り合わされた、生地積層体。
【請求項17】
前記生地の目付が75g/m~300g/mである、請求項16に記載の生地積層体。
【請求項18】
前記生地積層体の少なくとも一部が曲面を有し、当該曲面の曲率半径が50mm~150mmの範囲である、請求項16に記載の生地積層体。
【請求項19】
請求項16に記載の生地積層体を用いた衣料品。
【請求項20】
前記樹脂シート側の面がヒトに接する面となるように構成された、請求項19に記載の衣料品。
【請求項21】
請求項1または2に記載の樹脂シートの少なくとも一方の面上に生地を重ね、140℃~190℃、0.1MPa~2.0MPaの条件でヒートシールして生地積層体を得る工程を含む、生地積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートに関する。より詳細には、樹脂シート、樹脂シートを用いた生地積層体および衣料品、ならびに生地積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4-メチル-1-ペンテンを主たる構成モノマーとする4-メチル-1-ペンテン系重合体を用いた樹脂シートは、優れた柔軟性や伸縮性を有し、良好な肌触りが得られること等から、衛生材料、衣料用材料、医療用材料等、各種用途に広く使用されることが期待されている。
【0003】
例えば、特許文献1(国際公開第2018/143411号)には、4-メチル-1-ペンテン系重合体を発泡させたシートをそのまま着圧サポーターに用いる例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/143411号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、4-メチル-1-ペンテン系重合体を用いた樹脂シートの新たな用途として、樹脂シートと生地とを直接積層した新素材の衣料品に着目した。しかしながら、特許文献1に開示されるような従来の樹脂シートを熱圧着により生地と接着させようとしても、樹脂シートと生地素材とが馴染まず、良好な接着性を得る点で改善の余地があることが判明した。また、高温で接着すると接着性は向上できるものの生地の風合いを阻害してしまう問題が生じた。さらに、樹脂シートを自動車などのモビリティ用椅子向けの背面や座面として使用する場合、夏場の高温環境が想定される車室内での耐熱性を求められたり、樹脂シートを衣料品として使用する場合には、洗濯乾燥やアイロンがけに対する耐熱性も求められた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、4-メチル-1-ペンテン系重合体を用いた樹脂シート特有の柔軟性、伸縮性、良好な肌触りを保持しつつも、生地に対する接着性と耐熱性の改善に着目し検討を進めたところ、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む樹脂シートであっても、良好な接着性および耐熱性が得られるものとそうではないものとがあることを判明した。そして、両者を区別すべく鋭意検討を行った結果、接着力に関する新たな指標を考案しこれを制御すること、および所定の条件における貯蔵弾性率を制御することが有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下に示す樹脂シートおよびこれに関する技術が提供される。
【0008】
[1] 4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、融点が130~180℃の熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成された樹脂シートであって、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含み、
周波数1.59Hz、歪量0.1%、昇温速度4℃/分、引張モードの条件で温度範囲-60℃~200℃として動的粘弾性を測定したときの100℃における貯蔵弾性率E’が0.55MPa以上、7.0MPa以下である、樹脂シート。
[2] 4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、融点が130~180℃の熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成された樹脂シートであって、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含み、
以下の手順で測定される接着力が4N/25mm以上、30N/25mm以下となる、樹脂シート。
[手順]
まず、当該樹脂シートと生地x(厚さ;0.28mm、目付;100g/m、素材;ポリエステル89質量%、ポリウレタン11質量%)を、当該樹脂シートのMD方向と生地xの伸縮性が最も大きい方向が平行になるように重ね合わせ、圧力0.1MPa、時間10秒、温度190℃の条件で接着し、積層体を作製する。前記積層体の当該樹脂シートのMD方向を長さ方向とし、幅25mmとなるように、前記積層体を裁断し、試験片を得る。
つぎに、当該試験片について、恒温槽付きの引張試験機を用いて、試験温度100℃、引張速度300mm/min、剥離角度180°、剥離方向を当該MD方向として、生地xから当該樹脂シートを剥離したときの接着力[N/25mm]を測定する。
[3] JIS K6253に準拠して23℃で測定される、当該樹脂シートの少なくとも一方の表面の測定直後のショアA硬度をHS0としたとき、HS0が30以上、90以下である、[1]または[2]に記載の樹脂シート。
[4] JIS K6253に準拠して23℃で測定される、当該樹脂シートの少なくとも一方の表面の測定直後のショアA硬度をHS0とし、測定15秒後のショアA硬度をHS1としたとき、(HS0-HS1)で示されるΔHSが3以上、30以下である、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[5] 前記樹脂シートの厚さが0.1mm以上、3mm以下である、[1]乃至[4]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[6] 前記樹脂シートの密度が0.30g/cm以上、1.5g/cm以下である、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[7] 前記熱可塑性エラストマー(B)のショアA硬度が30以上、90以下である、[1]乃至[6]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[8] 前記熱可塑性エラストマー(B)が、酸素、硫黄、窒素、およびハロゲンからなる群から選ばれる原子を1つまたは2つ以上含む官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)を含む、[1]乃至[7]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[9] 前記熱可塑性エラストマー(B)が、熱可塑性ポリアミド系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、および熱可塑性ポリエステル系エラストマーの中から選ばれる1種または2種以上の熱可塑性エラストマー(b2)を含む、[1]乃至[8]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[10] 前記樹脂組成物が相容化材(C)をさらに含む、[1]乃至[9]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[11] 前記相容化材(C)がスチレン系熱可塑性エラストマーの変性物またはポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの変性物を含む、[10]に記載の樹脂シート。
[12] 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し、20~60質量%であり、
前記熱可塑性エラストマー(B)の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し20~80質量%であり、
前記相容化材(C)の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し5~20質量%である、[10]または[11]に記載の樹脂シート。
[13] 前記熱可塑性エラストマー(B)がプロピレン単位と炭素数2または4~20のα-オレフィン単位とを含むプロピレン・α-オレフィン共重合からなる熱可塑性エラストマー(b3)を含む、[1]乃至[12]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[14] 前記熱可塑性エラストマー(B)が、熱可塑性オレフィン系エラストマー、熱可塑性スチレン系エラストマー、及びこれらのコンパウンドの中から選ばれる1または2以上からなる熱可塑性エラストマー(b4)を含む、[1]乃至[13]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[15] 衣料品の素材として用いられる、[1]乃至[14]いずれか一つに記載の樹脂シート。
[16] [1]乃至[15]いずれか一つに記載の樹脂シートの少なくとも一方の面に生地が貼り合わされた、生地積層体。
[17] 前記生地の目付が75g/m~300g/mである、[16]に記載の生地積層体。
[18] 前記生地積層体の少なくとも一部が曲面を有し、当該曲面の曲率半径が50mm~150mmの範囲である、[16]または[17]に記載の生地積層体。
[19] [16]乃至[18]いずれか一つに記載の生地積層体を用いた衣料品。
[20] 前記樹脂シート側の面がヒトに接する面となるように構成された、[19]に記載の衣料品。
[21] [1]乃至[15]いずれか一つに記載の樹脂シートの少なくとも一方の面上に生地を重ね、140℃~190℃、0.1MPa~2.0MPaの条件でヒートシールして生地積層体を得る工程を含む、生地積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生地に対する接着性と耐熱性を両立できる樹脂シート、およびこれに関する技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0011】
本明細書中、MD方向とはMachine Directionを表し、樹脂シートの成形加工時の流れ方向を意図し、TD方向とは、Transverse Directionを表し、MD方向に対して直交する方向を意図する。
【0012】
<樹脂シート>
本実施形態の樹脂シートは、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、融点が130~180℃の熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成され、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含み、
周波数1.59Hz、歪量0.1%、昇温速度4℃/分、引張モードの条件で温度範囲-60℃~200℃として動的粘弾性を測定したときの100℃における貯蔵弾性率E’が0.55MPa以上、7.0MPa以下である。
【0013】
当該貯蔵弾性率E’を制御することにより、樹脂シートは、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を用いた樹脂シート特有の柔軟性、伸縮性、良好な肌触りを保持しつつ、生地に対する接着性と耐熱性を高水準で両立できる。
【0014】
当該貯蔵弾性率E’は、好ましくは0.55MPa~6.0MPaであり、より好ましくは0.57MPa~5.0MPaである。当該貯蔵弾性率E’を前記数値範囲とすることで、より効果的に接着性と耐熱性を両立できる。
【0015】
また、本実施形態の樹脂シートは、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、融点が130~180℃の熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成され、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含むものであり、以下の手順で測定される接着力が4N/25mm以上、30N/25mm以下となるように構成されてもよい。
【0016】
[手順]
まず、当該樹脂シートと生地x(厚さ;0.28mm、目付;100g/m、素材;ポリエステル89質量%、ポリウレタン11質量%)を、当該樹脂シートのMD方向と生地xの伸縮性が最も大きい方向とが平行になるように重ね合わせ、圧力0.1MPa、時間10秒、温度190℃の条件で接着し、積層体を作製する。前記積層体の当該樹脂シートのMD方向を長さ方向とし、幅25mmとなるように、前記積層体を裁断し、試験片を得る。
つぎに、当該試験片について、恒温槽付きの引張試験機を用いて、試験温度100℃、引張速度300mm/min、剥離角度180°、剥離方向を当該MD方向として、生地xから当該樹脂シートを剥離したときの接着力[N/25mm]を測定する。
【0017】
当該接着力を制御することにより、本実施形態の樹脂シートは、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を用いた樹脂シート特有の柔軟性、伸縮性、応力緩和性、良好な肌触りを保持しつつ、生地に対する接着性と耐熱性を高水準で両立できる。
【0018】
当該接着力は、生地に対する良好な接着性を得る点から、好ましくは5N/25mm以上であり、より好ましくは6N/25mm以上である。
当該接着力は、耐熱性を保持しつつ、生地に対する良好な接着性を得る点から、好ましくは25N/25mm以下であり、より好ましくは15N/25mm以下であり、さらに好ましくは12N/25mm以下である。
【0019】
このような作用効果が得られるメカニズムの詳細は明らかではないが、次のように推測される。まず、樹脂シートを生地に対して加熱圧着する際、溶融した樹脂シートの一部が生地の織目に入り込むことで樹脂シートと生地が接着されることとなる。このとき、樹脂の熱に対する特性や溶融した樹脂の生地へのなじみ、含浸のし易さが適切であることが重要となる。
そこで、熱に対する挙動として所定の貯蔵弾性率または生地xに対する所定の接着力を指標とすることで、樹脂の熱特性や生地へのなじみ、含浸のし易さを効果的に制御できる結果、樹脂シートの生地に対する接着性と耐熱性を向上できると推測される。
【0020】
前記の手順において、生地xの伸縮性は、JIS L 1096織物及び編物の生地試験方法のB法に基づいて規定される伸び率に基づき算出される。
【0021】
また、本実施形態の樹脂シートは、樹脂シートを構成する材料の選択、配合量の調整や公知の方法を組み合わせた樹脂シートの製造方法の工夫等によって実現することができる。例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)の選択および組み合わせを調整したり、樹脂シートの原料を二軸押出成形機を用いて十分に混練する方法等が挙げられる。
【0022】
次に、樹脂シートの物性について説明する。
【0023】
[損失正接(tanδ)]
樹脂シートの昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる、損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上100℃以下の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.1以上3.5以下であることが好ましい。
【0024】
動的粘弾性の損失正接(tanδ)の極大値を示す温度は、好ましくは10℃以上40℃以下の範囲に1つ以上あり、より好ましくは15℃以上38℃以下の範囲に1つ以上あり、さらに好ましくは15℃以上38℃以下の範囲に1つ以上である。
また、動的粘弾性の損失正接(tanδ)の極大値は、好ましくは0.2以上3.0以下であり、より好ましくは0.2以上2.5以下であり、さらに好ましくは0.5以上2.0以下である。
【0025】
また、本実施形態において、4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)の前記損失正接の極大値は0.8以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましい。そして本実施形態において、前記損失正接の極大値は3.0以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましい。
【0026】
なお、動的粘弾性測定は、例えば、本実施形態の樹脂シートから縦30mm×幅10mmの試験片を作成し、周波数1.59Hz、昇温速度4℃/分、測定温度範囲0℃~110℃、歪量0.1%、チャック間距離20mm、引張モードの条件で、レオメータを用いて行うことができる。
【0027】
[ショアA硬度]
本実施形態において、JIS K6253に準拠して23℃で測定される、当該樹脂シートの少なくとも一方の表面の測定直後のショアA硬度をHS0としたとき、HS0が30~90であることが好ましく、35~87であることがより好ましく、38~85であることがさらに好ましい。
HS0を前記下限値以上とすることにより、樹脂シートの機械的特性を向上できるようになる。一方、HS0を前記上限値以下とすることにより、樹脂シートが本来有する柔軟性、応力緩和性を良好にできる。
【0028】
本実施形態において、JIS K6253に準拠して23℃で測定される、当該樹脂シートの少なくとも一方の表面の測定直後のショアA硬度をHS0とし、測定15秒後のショアA硬度をHS1としたとき、(HS0-HS1)で示されるΔHSが3~30であることが好ましく、5~30であることがより好ましく、5~25であることがさらに好ましい。
ΔHSを前記数値範囲とすることにより、耐熱性および接着性を両立しつつ、樹脂シートが本来有する柔軟性、形状保持性、形状追従性、及び応力緩和性の性能バランス向上しやすくなる。また、ΔHSが大きいほど、応力緩和性が優れていることを意味する。
【0029】
樹脂シートの前記損失正接およびショアA硬度は、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の種類や配合割合、架橋の有無、組成物の混練方法等を適切に調節することにより、前記範囲内に制御することが可能である。
【0030】
[MFR]
樹脂シートのASTM D1238に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定されるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは3~50g/10分である。
樹脂シートのMFRを前記下限値以上とすることにより、樹脂シートが溶融状態で生地に含浸し易くなり、生地と接着し易くなる。
一方、樹脂シートのMFRを前記上限値以下とすることにより、熱撓み量が小さくなり、クリープ変形しにくく、耐熱性を付与し易くなる。
樹脂シートのMFRは、樹脂シートの材料の選択、および配合量の調整により実現できる。
【0031】
[厚さ]
樹脂シートの平均厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上3mm以下の範囲であり、より好ましくは0.2mm以上2mm以下の範囲であり、さらに好ましくは0.3mm以上1mm以下の範囲である。
樹脂シートの平均厚さを、前記下限値以上とすることにより、生地に対する接着性を得つつ、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を用いた樹脂シート特有の柔軟性、伸縮性、応力緩和性、良好な肌触りをより保持しやすくなる。
一方、樹脂シートの平均厚さを、前記上限値以下とすることにより、良好な耐熱性を保持しつつ、生地に対する接着性を向上できる。
【0032】
[密度]
樹脂シートのASTM D 1505(水中置換法)に従って測定された密度は、好ましくは0.3~1.5g/cmであり、好ましくは0.4~1.4g/cmであり、より好ましくは0.5~1.2g/cmであり、さらに好ましくは0.6~1.2g/cmである。
樹脂シートの密度を前記下限値以上とすることにより、接着性および耐熱性を高めつつ、機械的強度も高くすることができる。一方、樹脂シートの密度を前記上限値以下とすることにより、柔軟性の付与、および軽量化を図りやすくなる。
樹脂シートの密度は、樹脂組成物の材料の選択の他、樹脂シートの発泡の有無、発泡の程度によって調整することができる。
【0033】
[形態]
本実施形態の樹脂シートの形態は、気泡を含んだ発泡体であってもよく、発泡されていないものであってもよい。発泡体とすることで、樹脂シートの柔軟性やクッション性を高めやすくなる。
発泡倍率は特に限定されず、樹脂シートの用途等を考慮して適宜決定することができる。
本実施形態において、樹脂シートが発泡体であることは、例えば、気泡(空洞)が樹脂シート内に多数ある多孔質体の場合を意図する。
【0034】
[樹脂組成物]
次に、樹脂シートを構成する樹脂組成物について説明する。
樹脂シートを構成する樹脂組成物は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、融点が130~180℃の熱可塑性エラストマー(B)と、を含む。
【0035】
[4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)]
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、例えば、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と、4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~3のα-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含む。
【0036】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、樹脂シートの柔軟性をより向上させる観点から、構成単位(a1)と構成単位(a2)との合計を100モル%としたとき、構成単位(a1)の含有量が10モル%以上90モル%以下であり、構成単位(a2)の含有量が10モル%以上90モル%以下であることが好ましい。
また、本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、樹脂シートの柔軟性や機械的特性等をより良好にする観点から、構成単位(a1)と構成単位(a2)との合計を100モル%としたとき、構成単位(a1)の含有量が30モル%以上90モル%以下であり、構成単位(a2)の含有量が10モル%以上70モル%以下であることがより好ましく、構成単位(a1)の含有量が50モル%以上90モル%以下であり、構成単位(a2)の含有量が10モル%以上50モル%以下であることがさらに好ましく、構成単位(a1)の含有量が60モル%以上90モル%以下であり、構成単位(a2)の含有量が10モル%以上40モル%以下であることがさらにより好ましく、構成単位(a1)の含有量が65モル%以上90モル%以下であり、構成単位(a2)の含有量が10モル%以上35モル%以下であることが特に好ましい。
【0037】
炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)としては、エチレン、およびプロピレンを挙げることができ、なかでも機械的強度を保持しつつ、柔軟性、応力緩和性等が得られる点から、プロピレンが好ましい。
【0038】
なお、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、本発明の目的を損なわない範囲で、構成単位(a1)と構成単位(a2)以外の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成としては、非共役ポリエン由来の構成単位が挙げられる。
非共役ポリエンとしては、炭素原子数が好ましくは5~20、より好ましくは5~10の直鎖状、分岐状又は環状のジエン、各種のノルボルネン、ノルボルナジエン等が挙げられる。これらの中でも、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネンが好ましい。
【0039】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の135℃のデカリン中での極限粘度[η]は、樹脂シートの機械的強度、成形加工性をより良好にする観点から、0.01~5.0dL/gであることが好ましく、0.1~4.0dL/gであることがより好ましく、0.5~3.0dL/gであることがさらに好ましく、1.0~2.8dL/gであることが特に好ましい。
【0040】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)のASTM D 1505(水中置換法)に従って測定された密度は、好ましくは0.810~0.850g/cm、より好ましくは0.820~0.850g/cm、さらに好ましくは0.830~0.850g/cmである。
【0041】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は種々の方法により製造することができる。例えば、マグネシウム担持型チタン触媒;国際公開第01/53369号、国際公開第01/027124号、特開平3-193796号公報、および特開平02-41303号公報等に記載のメタロセン触媒;国際公開第2011/055803号に記載されるメタロセン化合物を含有するオレフィン重合触媒等の公知の触媒を用いて製造することができる。
【0042】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは10~80質量%であり、より好ましくは15~70質量%であり、さらに好ましくは20~60質量%である。これにより、耐熱性と接着性のバランスにより優れた樹脂シートを得ることができる。
【0043】
[熱可塑性エラストマー(B)]
熱可塑性エラストマー(B)は、融点が130~180℃であって、熱可塑性エラストマー(B)は4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)に対する相容性が良好であるため、接着性を向上しやすくなると推測される。
【0044】
熱可塑性エラストマー(B)の融点は、JIS K7121に準拠してDSCを用いて測定することができる。
【0045】
熱可塑性エラストマー(B)のショアA硬度は30~90であることが好ましい。熱可塑性エラストマー(B)のショアA硬度を前記数値範囲とすることで、柔軟性、応力緩和性を付与しやすくなる。
【0046】
熱可塑性エラストマー(B)のショアA硬度は、JIS K6253に準拠して測定することができる。
【0047】
(熱可塑性エラストマー(b1))
熱可塑性エラストマー(B)は、極性基を有する熱可塑性エラストマー(b1)を含んでもよい。
前記の極性基としては、例えば、酸素、硫黄、窒素、およびハロゲンからなる群から選ばれる原子を1つまたは2つ以上含んでいる官能基が挙げられる。具体的には、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、エポキシ基、アミド結合、ニトリル基、シアノ基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基、アセチル基、チオール基、アルコキシ基、チオエーテル基、スルホン基、ホスホン基、ニトロ基、ウレタン結合、メトキシカルボニル基、アセトキシ基、およびハロゲン原子が挙げられる。なかでも、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、アミド結合、ニトリル基、アミノ基、スルホン基、ウレタン結合、およびハロゲン原子が好ましく、カルボン酸エステル基、アミド結合、およびウレタン結合がより好ましい。
【0048】
(熱可塑性エラストマー(b2))
熱可塑性エラストマー(B)は、例えば、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、熱可塑性ポリアミド系エラストマー、熱可塑性ポリエステル系エラストマーの中から選ばれる1種または2種以上を含む熱可塑性エラストマー(b2)を含んでもよい。また、熱可塑性エラストマー(b2)は、極性基を有していてもよい。
【0049】
また、熱可塑性エラストマー(b2)としては市販品を用いてもよく、具体的には、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーとしては、BASF社製のエラストラン、ディーアイシー コベストロ ポリマー社製のバンテックス、三井化学社製のフォルティモ等;熱可塑性ポリアミド系エラストマーとしては、アルケマ社製のペバックス、宇部興産社製のUBESTA XPA、ポリプラ・エボニック社製のダイアミド等;熱可塑性ポリエステル系エラストマーとしては、東洋紡社製のペルプレン、デュポン社製のハイトレル、DSM社製のアーニテル等が挙げられる。
【0050】
(熱可塑性エラストマー(b3))
熱可塑性エラストマー(B)としては、例えば、プロピレン単位と炭素数2または4~20のα-オレフィン単位とを含むプロピレン・α-オレフィン共重合からなる熱可塑性エラストマー(b3)(ただし、熱可塑性エラストマー(b1)および(b2)は除く)を含んでもよい。
【0051】
炭素数2または4~20のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン等が挙げられる。これらの中で、柔軟性付与の観点から、炭素数2または4~12のα-オレフィンが好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンがより好ましい。
また、プロピレン・α-オレフィン共重合は、必要に応じて、さらに不飽和結合を有する単量体を共重合させることができる。不飽和結合を有する単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン、1、4-ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン;ジシクロペンタジエン、ノルボルネン誘導体等の環状ジエン化合物;及びアセチレン類の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0052】
(熱可塑性エラストマー(b4))
熱可塑性エラストマー(B)は、熱可塑性オレフィン系エラストマー(ただし熱可塑性エラストマー(b1)、(b3)は除く)、熱可塑性スチレン系エラストマー、およびこれらのコンパウンドの中から選ばれる1または2以上からなる熱可塑性エラストマー(b4)をさらに含んでもよい。また、熱可塑性エラストマー(b4)は、部分架橋であってもよい。
熱可塑性エラストマー(b4)と、熱可塑性エラストマー(b1)~(b3)の中から選ばれる1または2以上とを併用することで、良好な耐熱性を維持しつつ、柔軟性が得られやすくなる。なかでも、本実施形態の樹脂シートに接触した直後において柔軟性を感じやすくなる。
熱可塑エラストマー(b4)は、熱可塑性オレフィン系エラストマー(ただし熱可塑性エラストマー(b1)、(b3)は除く)、および、熱可塑性スチレン系エラストマーのコンパウンドとすることが好ましい。
【0053】
熱可塑性エラストマー(B)の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは20~90質量%であり、より好ましくは30~85質量%であり、さらに好ましくは40~80質量%である。これにより、接着性および耐熱性により優れた樹脂シートを得ることができる。
また、熱可塑性エラストマー(b1)~(b4)の合計量は、熱可塑性エラストマー(B)全量に対して、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%としてもよい。
また、熱可塑性エラストマー(b4)と、熱可塑性エラストマー(b1)~(b3)の少なくとも1種とを併用する場合、熱可塑性エラストマー(b4)の含有量は、熱可塑性エラストマー(b1)~(b3)の全量に対して、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、また、室温での接着性をより高める点からは、好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上である。一方、熱可塑性エラストマー(b4)の含有量は、熱可塑性エラストマー(b1)~(b3)の全量に対して、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、耐熱性をより高める点からは、好ましくは30質量%以下である。
【0054】
また、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と熱可塑性エラストマー(B)との合計の含有量は、樹脂組成物全量に対して、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、ことさらに好ましくは95質量%以上であり、100質量%としてもよい。これにより、接着性、柔軟性、応力緩和性、および耐熱性により優れた樹脂シートを得ることができる。
【0055】
本実施形態に係る樹脂シートは、さらに相容化材(C)を含んでもよい。
【0056】
[相容化材(C)]
相容化材(C)は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)および熱可塑性エラストマー(B)の相容性を向上し、接着性を向上させる点から、用いられる。すなわち、相容化材(C)は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)および熱可塑性エラストマー(B)それぞれに親和する部位を有するものであり、これにより、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)および熱可塑性エラストマー(B)がより均一に微分散できる。
【0057】
相容化材(C)としては、スチレン系熱可塑性エラストマーの変性物、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー変性物等の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0058】
前記のスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、水添スチレン・イソプレンブロック共重合体の水添物(SEPS)、水添スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SEBS)、水添スチレン・イソプレン・ブタジエンブロック共重合体(SEEPS)等が挙げられる。
スチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレン含有量が40質量%以下であることが好ましく、15~35質量%であることがより好ましい。
【0059】
前記のポリオレフィン熱可塑性エラストマーとしては、ショアA硬度が30~80の範囲にあるプロピレン系共重合体が挙げられる。このようなプロピレン系共重合体の市販品としては、例えば、エクソンモービルケミカル社製Vistamaxx 6202を好適に用いることができる。
【0060】
前記の変性物は、不飽和カルボン酸またはその誘導体のグラフト反応による化学変性によって得られるものが挙げられる。
グラフト反応する不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えばマレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、ならびにその誘導体、例えば、前記不飽和カルボン酸の酸無水物、イミド、アミド、およびエステル等を挙げることができる。前記の変性物としては、としては市販品を用いてもよく、具体的には、スチレン系熱可塑性エラストマーの変性物としては、旭化成社製タフテックM1943(無水マレイン酸グラフト変性SEBS)、旭化成社製タフテックMP10(アミン変性SEBS)を好ましく用いることができる。
【0061】
相容化材(C)の含有量は、前記樹脂組成物全量に対して、好ましくは5~20質量%であり、より好ましくは7~15質量%であり、さらに好ましくは10~12質量%である。
【0062】
また、本実施形態において、相容化材(C)を用いる場合、好ましくは、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し、40~75質量%であり、熱可塑性エラストマー(B)の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し20~60質量%であり、相容化材(C)の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し5~20質量%である。より好ましくは、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し、40~55質量%であり、熱可塑性エラストマー(B)の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し40~60質量%であり、相容化材(C)の含有量が、前記樹脂組成物全量に対し5~15質量%である。
【0063】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、熱可塑性エラストマー(b1)と、相容化材(C)との組み合わせは、相容性をより向上でき、接着性向上の観点からより好ましい。
【0064】
[その他の成分]
本実施形態に係る樹脂シートは、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)、熱可塑性エラストマー(B)および相容化材(C)以外の成分を含んでもよい。
本実施形態に係る樹脂シートは、例えば、発泡剤、発泡性改質剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、可塑剤、造核剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤、着色剤、滑剤、天然油、合成油、ワックス等の添加剤を配合してもよい。
【0065】
前記発泡剤としては、化学発泡剤、物理発泡剤が挙げられる。
化学発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、各種カルボン酸塩、水素化ホウ素ナトリウム、アゾジカルボアミド、N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジッド)、アゾビスイソブチロニトリル、パラトルエンスルホニルヒドラジッド、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
物理発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、または二酸化炭素と窒素の混合物等が挙げられ、いずれもガス状、液状または超臨界状態のいずれでも供給することが可能である。
【0066】
前記発泡改質剤としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0067】
[樹脂シートの製造方法]
本実施形態の樹脂シートは、原料となる4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、融点が130~180℃の熱可塑性エラストマー(B)、その他任意の各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、及び熱ロール等の公知の方法により混合または溶融・混練して樹脂組成物を調製し、公知の方法で、シート状に押出成形することで製造できる。押し出されたシートは、冷却ロールで冷却して、引取機を用いて引き取る。
【0068】
また、樹脂シートを発泡させる方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
化学発泡剤を用いる場合は、化学発泡剤以外の樹脂組成物を、化学発泡剤とともに押出成形機に投入して、均一に混合したのち、シート状に押出成形しながら発泡する方法が挙げられる。
また、物理発泡剤として二酸化炭素を使用する場合は、樹脂組成物を押出成形機に投入し、押出成形機内で混練され、可塑化された状態になった後、押出成形機内へ二酸化炭素を直接注入し、シート状に押出成形しながら発泡する方法が挙げられる。
【0069】
<生地積層体>
本実施形態の生地積層体は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、融点が130~180℃の熱可塑性エラストマー(B)と、を含む樹脂組成物により構成された樹脂シートであって、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と炭素原子数2~3の直鎖状α-オレフィン由来の構成単位(a2)とを含み、前記の手順で測定される接着力が4N/25mm以上、30N/25mm以下となる樹脂シートの少なくとも一方の面に生地が貼り合わされたものである。これにより、生地が有する柔軟性および風合いを活かしつつ、本実施形態の樹脂シートが有する柔軟性、応力緩和性といった新たな機能が得られる生地積層体を実現できる。
【0070】
生地としては、天然繊維、合成繊維、化学繊維といった繊維類を薄く加工したものであり、生地帛等の織物、および不織布などが挙げられる。具体的には、天竺、フライス、スムース、ダブルニット等の緯編組織を有する編物、トリコット、ラッセル等の経編組織を有する編物、平織、綾織、サテン等の組織を有する織物が挙げられる。
【0071】
生地の厚さは、樹脂シートとの接着性や樹脂シートの特性を保持する等の点から、0.2~1.0mmであることが好ましく、0.2~0.8mmであることがより好ましく、0.2~0.6mmであることがさらに好ましい。
【0072】
生地の目付は、接着性および耐熱性の観点からは特に限定されないが、例えば、取扱い性等の点から、75~300g/mであることが好ましく、90~250g/mであることがより好ましく、100~200g/mであることがさらに好ましい。
【0073】
また、生地は伸縮性をもつことが好ましい。具体的には、生地の最も大きい伸縮方向の伸びが10~300%であることが好ましい。
【0074】
生地の素材としては、綿、麻、ウール、シルク等の天然繊維;レーヨン、キュプラ等の再生繊維、アセテート・トリアセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、レーヨン等の合成繊維、ならびにこれら合成繊維の混合繊維からなる化学繊維製品が挙げられる。
なかでも、合成繊維であることが好ましく、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル、およびレーヨンのなかから選ばれる1種または2種以上であることがより好ましい。
【0075】
また、生地積層体は、樹脂シートの両面に生地が貼り合わされたものでもよい。この場合、樹脂シートの一方の面側の生地と、樹脂シートの他方の面側の生地とは、同じ素材の生地であってもよく、異なる素材の生地であってもよい。
【0076】
また、本実施形態の生地積層体は、少なくとも一部が曲面を有しその曲面の曲率半径が50mm~150mmの範囲とすることもできる。これにより、湾曲した面に対して、本実施形態の生地積層体を追従させやすくなる。湾曲した面としてはヒトの身体の丸みを帯びた部分が挙げられ、例えば、頭部、胸部、肘、膝等が挙げられる。また、湾曲した面に装着される衣料品としては、例えば、帽子、フード、ブラジャー、肌着、サポーター等が挙げられる。
【0077】
また、本実施形態の生地積層体の厚さは、柔軟性、加工性、縫いやすさ等を考慮して、適宜調整される。
【0078】
[生地積層体の製造方法]
生地積層体の製造方法は、以下の工程を含む。
(工程)前記樹脂シートの少なくとも一方の面上に生地を重ね、140℃~190℃、0.1MPa~2.0MPaの条件でヒートシールして生地積層体を得る。
これにより、本実施形態の樹脂シートの特性を保持したまま、生地積層体を得ることができる。
【0079】
加圧時間は1秒~10分であると生産効率が良い。
また、熱接着にあたり、温度・圧力・時間の要素を考慮することが重要であり、これを実現する熱接着法として、例えば、熱プレス法を用いることができる。さらに、芯地接着プレス機を用いて、連続的に生地と樹脂シートとを熱接着する手法を用いることがより好ましい。これらの熱接着用プレス機の市販品の例としては、株式会社ハシマ製平板プレスや直線式芯地接着プレス装置が挙げられる。
【0080】
なお、本実施形態の樹脂シートは、生地の伸縮方向等の特性によらず、生地に対してどのような方向で接着させても、良好な接着性および耐熱性が得られる。
【0081】
<用途>
本実施形態に係る樹脂シートおよび生地積層体は、分野を問わず、広く利用される例えば、自動車部品、鉄道部品、航空機部品、船舶部品、自転車部品等のモビリティ用品;電子機器;家庭用電気機器;オーディオ機器;カメラ用品;精密機器;ゲーム機器;VR機器;土木部品、建築部品、建築材等の土木・建築用品;家具、寝具等の家財道具;台所用品、トイレタリー、文具等の日用品;アウトドア用品、リュック等のレジャー用品;園芸等の農業用品;アパレル用品(服、肌着、下着類(例えば、ブラジャー、肩パッド、補正用下着等)の芯材、帽子、ベルト、ランドセルのライニング、名刺入れ、メガネ等)、シューズ用品(各種インソール、靴の内張り材、各種機材、靴、靴ひも等)、アクセサリー・携帯用小物雑貨等の装飾製品;医療用品、ヘルスケア用品等の医療関係用品;スポーツ品等のスポーツ分野の用品;書籍、玩具等の教育・玩具用品;包装用品等の包装関係用品;洗顔・メイク用品等の化粧品関係の用品;LED照明等の電灯用品;水産用品等の養殖用品;チャイルドシート等の安全用品;音楽用品;ペット用品;釣用品等に用いることができる。
【0082】
なかでも、樹脂シートおよび生地積層体は、衣料品、衣料品の素材、および衣料品部材として用いられることが好ましい。この場合、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を用いた樹脂シート特有の良好な肌触りを発揮する点から、樹脂シート側の面がヒトの肌に直接、接するように構成されることが好ましい。
衣料品としては、衣服全般、肌着、下着類、帽子、シューズ用品などの生地を用いたものに対してより好適に用いられる。また衣料品部材としては、かかる衣料品の一部を構成しうるものを意図する。たとえば、下着の芯材、シューズの中敷きなどが挙げられる。
なかでもヒトの身体の丸みを帯びた部分に装着される部材としての使用にも適している。例えば、帽子、フード、ブラジャー、肌着、サポーター等を構成する部材が挙げられる。
樹脂シートおよび生地積層体を衣料品に適用した場合、樹脂シートおよび生地積層体は、ヒトの動きや体の形状適切に追従でき、引張等に対しても良好な強度が得られる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、前記以外の様々な構成を採用することもできる。また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0084】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0085】
(1)測定方法
・4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の組成
4-メチル-1-ペンテン系重合体中の4-メチル-1-ペンテンおよびα-オレフィンの含有量は13C-NMRにより定量した。
【0086】
(2)原料
[4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)]
・4-メチル-1-ペンテンとプロピレンとの共重合体(4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)の含有量:72モル%、プロピレン由来の構成単位(a2)の含有量:28モル%)ガラス転移温度30℃、135℃のデカリン中での極限粘度[η]1.5dL/g、MFR10g/10min
【0087】
[熱可塑性エラストマー(B)]
・熱可塑性エラストマー(B)-1:「ハイブラー 7311F」水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(SEEPS)、クラレ社製、極性基なし、融点なし、ショアA硬度41
(熱可塑性エラストマー(b1)または(b2))
・熱可塑性エラストマー(B)-2:「ペルプレン P-30B」熱可塑性ポリエステル系エラストマー(TPEE)、東洋紡社製、極性結合=エステル結合、融点160℃、ショアA硬度71
・熱可塑性エラストマー(B)-3:「フォルティモ XET-T1085」熱可塑性ポリウレタン系エラストマー(TPU)、三井化学社製、極性結合=ウレタン結合、融点149℃、ショアA硬度85
・熱可塑性エラストマー(B)-4:「ペバックス 2533」熱可塑性ポリエーテルブロックアミド共重合体(TPAE)、アルケマ社製、極性結合=アミド結合、融点134℃、ショアA硬度75
(熱可塑性エラストマー(b3))
・熱可塑性エラストマー(B)-5:以下の合成例1で合成したプロピレン・エチレン系共重合体、1-ブテン単位(19.0mol/%)、エチレン単位(13.0mol%)、プロピレン単位(68.0mol%)、融点160℃、ショアA硬度72
(熱可塑性エラストマー(b4))
・熱可塑性エラストマー(B)-6:「ミラストマー 5020NS」部分架橋熱可塑性エラストマー、三井化学社製、極性基なし、融点160℃、ショアA硬度53
・熱可塑性エラストマー(B)-7:「アーネストン JH28NS」鉱油含有スチレン系エラストマーコンパウンド、クラレプラスチックス社製、極性基なし、融点なし、ショアA硬度30
【0088】
<合成例1>
熱可塑性エラストマー(B)-5の合成
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、917mlの乾燥ヘキサン、1-ブテン85gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を65℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.77MPaになるように加圧した後に、エチレンで、系内圧力を0.78MPaに調整した。次いで、ジメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリドと、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(東ソー・ファインケム社製)とを混合して、アルミニウム原子およびジルコニウム原子が、アルミニウム原子/ジルコニウム原子=300/1(モル比)の割合で含まれるトルエン溶液を調製し、次いで、当該トルエン溶液の内の、ジルコニウム原子が0.002mmol含まれる量(従ってアルミニウム原子が0.6mmol含まれる量)を採取して重合器内に添加し、内温65℃、系内圧力を0.78MPaにエチレンで保ちながら20分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥させて、60.4gの粉末状の共重合体を得た。
次いで、前記工程をスケールアップして実施し十分な量の共重合体を得た。得られた共重合体は、酸化防止剤イルガノックス1076を500ppm、イルガフォス168を500ppm配合し、単軸押出機を用い、シリンダー温度210℃で押し出し、丸孔ダイスから吐出された溶融ストランドを水槽にて冷却固化させたのち、ストランドカッターにて切断することによりペレットを得た。当該ペレットを熱可塑性エラストマー(B)-5として用いた。
【0089】
[相容化材(C)]
・相容化材(C);アミン変性SEBS 旭化成社製「タフテックMP10」、スチレン含有率30%
【0090】
[その他]
・無機系発泡剤:ポリスレン 永和化成工業社製「EE275F」
【0091】
[生地]
・生地x:厚さ;0.28mm、目付;100g/m、素材;ポリエステル89質量%、ポリウレタン11質量%
・生地y:厚さ;0.42mm、目付;160g/m、素材;ポリエステル39質量%、アクリル32質量%、レーヨン21質量%、ポリウレタン8質量%
・生地z:厚さ;0.50mm、目付;190g/m、素材;綿52質量%、アクリル41質量%、ポリウレタン7質量%
【0092】
(3)樹脂シートの作製
<実施例1~4>
成形機としては、単軸押出成形機(シリンダー内径D:20mm、フルフライトスクリュー、スクリュー有効長をLとしたときL/D:28mm)、Tダイ(ダイ幅:300mm、リップ開度:0.4~1.0mm)、冷却ロール(外径200mm、鏡面仕上げ硬質クロムメッキ表面処理付のスチール製、水冷式)、及び引取機、を備える装置を用いた。
まず、各原料を表1に示す配合(表中の単位は質量部)でドライブレンドし、得られた混合物をホッパーに投入した。シリンダー各部の温度160~230℃、スクリュー回転数60~100rpmの条件で各成分原料を溶融・混練し、押出量1.5~3.5kg/hrとなるようにTダイから押出した。押し出されたシート状の混合物は、冷却ロール(ロール内部通水温度20℃)で冷却して、引取機を用いて引き取り(引取速度0.4~0.6m/分)、シート幅約270mm、厚さ0.5mmの樹脂シート(無発泡シート)を得た。
【0093】
<実施例5~7>
二軸押出成形機(シリンダー内径D:30mm、ニーディングスクリュー)、ストランドダイ(ダイ穴:4mm、穴数:2コ)、主原料フィーダー(形式:ウェービングフィーダー)、冷却方法(水槽冷却)、およびペレタイザーを備える装置を用いた。
まず、各原料を表1に示す配合(表中の単位は質量部)でドライブレンドし、得られたドライブレンド物をフィーダーに投入した。シリンダー各部の温度140~200℃、スクリュー回転数60~90rpmの条件で各成分原料を溶融・混練し、押出量6.0~11.0kg/hrとなるようにペレット化した。
次いで、樹脂シートを成形するため、前記の実施例1~4で用いたものと同じTダイ、冷却ロール、および引取機を備えた単軸押出成形機を用いた。
前記の二軸押出成形機で得られたペレットを、当該単軸押出成形機のホッパーに投入した。単軸押出成形機のシリンダー各部の温度160~230℃、スクリュー回転数60~100rpmの条件で各成分原料を溶融・混練し、押出量1.5~3.5kg/hrとなるようにTダイから押出した。押し出されたシート状の混合物は、冷却ロール(ロール内部通水温度20℃)で冷却して、引取機を用いて引き取り(引取速度0.4~0.6m/分)、シート幅約270mm、厚さ0.5mmの樹脂シート(無発泡シート)を得た。
【0094】
<実施例8、9、13~16>
実施例1~4で用いたものと同じ、Tダイ、冷却ロール、および引取機を備えた単軸押出成形機を用いて、表1に示す配合(表中の単位は質量部)で原料をドライブレンドし、得られた混合物を単軸押出成形機のホッパーに投入した。シリンダー各部の温度150~240℃、スクリュー回転数60~80rpmの条件で各成分原料を溶融・混練し、押出量2.0~2.5kg/hrとなるようにTダイから押出した。押し出されたシート状の混合物は、冷却ロール(ロール内部通水温度20℃)で冷却して、引取機を用いて引き取り(引取速度0.4~0.6m/分)、シート幅約270mm、厚さ0.5mmの樹脂シート(発泡シート)を得た。
【0095】
<実施例10~12>
表1に示した無機系発泡剤も含めてドライブレンドし、得られた混合物を実施例1~4で用いたものと同じTダイ、冷却ロール、および引取機を備えた単軸押出成形機のホッパーに投入した。単軸押出成形機のシリンダー各部の温度140~220℃、スクリュー回転数60~80rpmの条件で各成分原料を溶融・混練し、押出量1.5~2.5kg/hrとなるようにTダイから押出した。押し出されたシート状の混合物は、冷却ロール(ロール内部通水温度20℃)で冷却して、引取機を用いて引き取り(引取速度0.4~0.6m/分)、シート幅約270mm、厚さ0.5mmの樹脂シート(発泡シート)を得た。
【0096】
<比較例1、2>
各原料を表1に示す配合(表中の単位は質量部)で用いて実施例1と同条件でシート幅約270mm、厚さ0.5mmの樹脂シートを得た。
【0097】
(4)物性の測定
前記(3)で得られた各樹脂シートを用いて、以下の測定を行った。結果を、表1に示した。
【0098】
[固体粘弾性]
得られた樹脂シートを、短冊状(縦30mm×幅10mm)に切り出し、試験片とした。次いで、得られた試験片に対して、TA Instuments社製RSA-IIIを用いて、チャック間距離20mm、周波数1.59Hz、歪量0.1%、昇温速度4℃/分、引張モードの条件で温度範囲-60℃~200℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定した。30℃における損失正接(tanδ)の値、および、100℃における貯蔵弾性率E’(MPa)の値をそれぞれ求めた。
【0099】
[接着力]
まず、当該樹脂シートと生地x(厚さ;0.28mm、目付;100g/m、素材;ポリエステル89質量%、ポリウレタン11質量%)を、当該樹脂シートのMD方向と生地xの伸縮性が最も大きい方向とが平行になるように、生地x/樹脂シート/生地xの順に重ね合わせ、ヒートシール試験機(テスター産業株式会社製、熱傾斜ヒートシールテスター、型番TP-701-G)を用いて、ヒートシールされる面積部分が、樹脂シートのMD方向に10mm、樹脂シートのTD方向に50mmの長方形となるように、圧力0.1MPa、時間10秒、ヒートシール試験機の上下両方のヒートシールバー温度190℃とした条件でヒートシールし、積層体を得た。接着力測定用試験片としては、前記積層体の当該樹脂シートのMD方向が当該試験片の長さ方向となるように試験片幅25mmとして、前記積層体を裁断し、試験片を得た。
当該試験片について、引張試験機を用いて、環境温度(i)23℃、(ii)100℃、引張速度300mm/min、剥離角度180°、剥離方向を当該試験片のMD方向として、ヒートシール試験機の上方ヒートシールバーと当接していた側の生地xから当該樹脂シートを剥離したときの接着力[N/25mm]を測定した。さらに、生地xに変え、生地yまたは生地zを用いた場合の接着力についても同様の手順で測定した。
(条件)
試験片形状:短冊状、幅25mm(共通)
試験片方向:樹脂シート;MD方向、生地;伸縮性が最も大きくなる方向(共通)
チャック間距離:30mm(共通)
引張試験機:恒温槽付きテンシロン万能試験機
引張速度:300mm/分(共通)
試験温度:(i)23℃、(ii)100℃(設定温度になってから10分保持)
測定点数:n=1
【0100】
[表面硬度測定]
得られた樹脂シートを用いて、以下の条件で、試験片を作成して、ショアA硬度を測定した。
・試験規格:JIS K6253
・試験温度:23℃
・試験片の厚さ:7mm
・装置:ショアA硬度計
トータル積層厚さが7mmとなるように複数のシートを重ね合わせ試験片として用いた。試験片を用いて、ショアA硬度計の押針接触開始直後の値(HS0)と、押針接触開始から15秒後の値(HS1)を読み取った。さらに次式(1)で定義されるショアA硬度の値の変化ΔHSを求めた。
ΔHS=(HS0)-(HS1) ・・・(1)
【0101】
[密度]
ASTM D 1505(水中置換法)に従って、ALFA MIRAGE社電子比重計MD-300Sを用い、水中と空気中で測定された各樹脂シートの質量から密度(g/cm)を算出した。
【0102】
[メルトフローレート(MFR)]
ASTM D1238に準拠して230℃、2.16kg荷重にて、樹脂シートのメルトフローレート(MFR)を測定した。
【0103】
(5)評価
前記(3)で得られた各樹脂シートを用いて、以下の評価を行った。結果を、表1に示した。
【0104】
[耐熱性(熱撓み試験)]
樹脂シートをサイズが幅50mm、長さ340mm、試験片の長手方向がMD方向となるように試験片を切り出した。得られた試験片を、ステンレス鋼製容器(内側サイズ深さ86mm、横320mm、縦320mm、正方形型)縁部の対向する一方の辺から他方の辺まで、試験片が自重により弛まないように橋渡し、当該容器縁部と試験片の両端の各端部からの長さ10mm部分とを耐熱性接着テープを用いて固定させた。次いで、試験片が固定された容器を、100℃の熱風循環式乾燥機(ISUZU社製そよかぜ)内に15分間置いて熱処理した。その後、乾燥機から試験片が固定された容器を取出し室温にて1時間放置したのち、試験片の熱撓み量について以下のようにして評価した。
試験片の中央部(容器の縁部から160mmの地点)から容器底部までの鉛直方向の距離について、100℃、15分で熱処理する直前の距離をD0(mm)とし、所定の熱処理後、室温で1時間放置した直後の距離をD1としたとき、D0(mm)、及びD1(mm)をそれぞれ測定し、次式(2)より、熱撓み量ΔD(mm)を求めた。
ΔD=D0-D1 ・・・(2)
なお、熱撓み量ΔD(mm)が小さいほど樹脂シートの耐熱性が良好であることを意味する。
【0105】
また実施例の各樹脂シートと前記の生地xを、当該樹脂シートのMD方向と生地xの伸縮性が最も大きくなる方向とが平行になるように重ね合わせ、圧力0.1MPa、時間10秒、温度190℃の条件でヒートシールし、生地積層体を得たのち、外観、接着性、触感の検証を行なった。その結果、生地の触感、色味は保持され、生地と樹脂シートとの界面に乖離は見られず良好に接着されていた。また、生地積層体を洗濯や乾燥したり、引張り等の負荷を加えても、生地と樹脂シートの間で剥離することなく、良好に接着されていた。さらに、手で引張った直後、手で生地積層体を引張り把持した状態では、経時で張力が低下していく感触があり、応力緩和性を保持していた。
一方、比較例の樹脂シートを用いた積層体は、生地と樹脂シートとの界面に乖離などが見られる場合があった。
【0106】
【表1】