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  • 特開-加飾フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146838
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】加飾フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241004BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20241004BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/29
C09J133/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049239
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023059152
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(74)【代理人】
【識別番号】100227916
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 麻理奈
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆太
(72)【発明者】
【氏名】福島 萌未
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA01
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004DA01
4J004DB02
4J004EA06
4J004FA01
4J040DF011
4J040DF021
4J040EC002
4J040GA05
4J040GA07
4J040GA11
4J040HD43
4J040JA02
4J040JB09
4J040KA16
4J040LA08
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA08
4J040NA16
4J040PA23
4J040PB19
(57)【要約】
【課題】柔軟な基材フィルムを用いた場合であっても、貼り直し作業が容易であり、貼り施工後の浮きを防ぐことができる加飾フィルムを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル系樹脂を含む基材フィルムと、基材フィルムに積層された粘着剤層とを含む加飾フィルムであって、粘着剤層は、酸性官能基を有する単量体に由来の構成単位(a1)を含み、ガラス転移温度が-30~-15℃の(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部と、酸性官能基以外の極性基を有する単量体に由来の構成単位(b1)を含み、ガラス転移温度が100℃以上の(メタ)アクリル系共重合体(B)3~14質量部と、エポキシ系架橋剤および金属キレート系架橋剤の少なくともいずれかの架橋剤と、を含む粘着剤組成物から形成され、共重合体(A)の全構成単位に対する構成単位(a1)の含有率は4.5~15.0質量%であり、共重合体(B)の全構成単位に対する構成単位(b1)の含有率は3.0~15.0質量%である、加飾フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルムに積層された粘着剤層とを含む加飾フィルムであって、
前記基材フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂を含み、
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系共重合体(A)、(メタ)アクリル系共重合体(B)および架橋剤を含む粘着剤組成物から形成される層であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、前記架橋剤と架橋反応する酸性官能基を有する単量体に由来する構成単位(a1)を含み、
前記構成単位(a1)の含有率は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)に含まれる全構成単位に対して、4.5質量%以上15.0質量%以下であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度は-30℃以上-15℃以下であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)は、前記酸性官能基以外の極性基を有する単量体に由来する構成単位(b1)を含み、
前記構成単位(b1)の含有率は、前記(メタ)アクリル系共重合体(B)に含まれる全構成単位に対して、3.0質量%以上15.0質量%以下であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度は、100℃以上であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、3質量部以上14質量部以下であり、
前記架橋剤は、エポキシ系架橋剤および金属キレート系架橋剤の少なくともいずれかである、加飾フィルム。
【請求項2】
前記極性基が水酸基である、請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項3】
前記基材フィルムの20℃における応力緩和率が50%以上63%以下である、請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項4】
前記基材フィルムの20℃における上降伏点荷重が10.0N/10mm以上45.0N/10mm以下である、請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量が20万以上180万以下である、請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量が0.3万以上1万以下である、請求項1に記載の加飾フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、SDGsを意識したCO排出量の低減に伴う溶剤使用量の低減、および工期短縮の観点から、自動車の外装の装飾手段として、塗装に代わり装飾フィルムが使用されている。自動車の外装用加飾フィルムの樹脂材料としては、ポリ塩化ビニルがその高い成形性、耐久性、経済性などの理由から多用されている。しかしながら、ポリ塩化ビニルは経年劣化しやすく、耐候性の対策が求められる。
【0003】
このような対策の一つとして、ポリ塩化ビニルの経年劣化を抑えるために、ポリ塩化ビニルの着色層にフッ素樹脂フィルムの表面保護層を併用する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、上記の対策の一つとして、ポリ塩化ビニルの代わりに柔軟で耐候性に優れるポリウレタンを用いる自動車の外装用加飾フィルムも使用されている。このような加飾フィルムとしては、例えば、ウレタン樹脂からなる表面保護層を有する自動車外装用の装飾層形成フィルムが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-214434号公報
【特許文献2】特開2021-143269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリ塩化ビニルフィルムとフッ素樹脂フィルムとを重ねた加飾フィルムは、ポリ塩化ビニルの耐候性が大きく改善される反面、フッ素樹脂フィルムが硬いフィルムであるため、加飾フィルム全体も硬いフィルムとなる。したがって、自動車のような曲面を有する被着体面に加飾フィルムを貼り付けると、経時で加飾フィルムが剥がれて浮いてしまうことがある。
【0006】
ポリ塩化ビニルの代わりにウレタン樹脂を使用した加飾フィルムは、ポリウレタンが柔軟であるため、曲面または凹凸を有する面に追従させることができるが、フィルムが過度に弛んでシワが入りやすい。また、被着体に対する加飾フィルムの貼り付け位置を調整するために、当該被着体に加飾フィルムを貼り付け直す作業において、加飾フィルムにショックラインが発生することがある。したがって、ウレタン樹脂のみを使用した加飾フィルムは、貼り施工性に改善の余地がある。
【0007】
このため、柔軟な基材フィルムを用いた場合であっても、貼り直し作業が容易であり、貼り施工後の浮きを防ぐことができる加飾フィルムが求められている。
【0008】
したがって、本発明は、柔軟な基材フィルムを用いた場合であっても、貼り施工後の浮きを防ぐことができ、貼り直し作業が容易である加飾フィルム、およびその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の態様を提供するものである。
【0010】
[1]
基材フィルムと、前記基材フィルムに積層された粘着剤層とを含む加飾フィルムであって、
前記基材フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂を含み、
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系共重合体(A)、(メタ)アクリル系共重合体(B)および架橋剤を含む粘着剤組成物から形成される層であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、前記架橋剤と架橋反応する酸性官能基を有する単量体に由来する構成単位(a1)を含み、
前記構成単位(a1)の含有率は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)に含まれる全構成単位に対して、4.5質量%以上15.0質量%以下であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度は-30℃以上-15℃以下であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)は、前記酸性官能基以外の極性基を有する単量体に由来する構成単位(b1)を含み、
前記構成単位(b1)の含有率は、前記(メタ)アクリル系共重合体(B)に含まれる全構成単位に対して、3.0質量%以上15.0質量%以下であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度は、100℃以上であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、3質量部以上14質量部以下であり、
前記架橋剤は、エポキシ系架橋剤および金属キレート系架橋剤の少なくともいずれかである、加飾フィルム。
[2]
前記極性基が水酸基である、[1]に記載の加飾フィルム。
[3]
前記基材フィルムの20℃における応力緩和率が50%以上63%以下である、[1]または[2]に記載の加飾フィルム。
[4]
前記基材フィルムの20℃における上降伏点荷重が10.0N/10mm以上45.0N/10mm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の加飾フィルム。
[5]
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量が20万以上180万以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の加飾フィルム。
[6]
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量が0.3万以上1万以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の加飾フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、柔軟な基材フィルムを用いた場合であっても、貼り直し作業が容易であり、貼り施工後の浮きを防ぐことができる加飾フィルム、およびその関連技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一態様に係る加飾フィルムの層構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の一態様に係る加飾フィルムの浮き評価の手順の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。また、特定のパラメータ等について複数の上限値および下限値が記載されている場合、これらの上限値および下限値のうち任意の上限値と下限値とを組合せて好適な数値範囲とすることができる。
【0014】
〔加飾フィルム〕
本発明の加飾フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂を含む基材フィルムと、基材フィルムに積層された粘着剤層とを含む。
【0015】
<粘着剤層>
粘着剤層(以下、「第1の粘着剤層」ともいう)は、本発明の加飾フィルムを、加飾する対象である被着体に貼り付けるための層である。
粘着剤層は、(メタ)アクリル系共重合体(A)、(メタ)アクリル系共重合体(B)および架橋剤を含む粘着剤組成物から形成される層である。
【0016】
本明細書において、(メタ)アクリル系共重合体(A)、(メタ)アクリル系共重合体(B)、(メタ)アクリル系樹脂とは、主たる単量体として(メタ)アクリレートが重合した樹脂(共重合体)のことを意味する。ここで、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタクリレート」の何れか一方または両方の意味を含んでいる。また、(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸エステルのことを意味している。
【0017】
(粘着剤組成物)
1.(メタ)アクリル系共重合体(A)
粘着剤組成物は(メタ)アクリル系共重合体(A)を含む。(メタ)アクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリレートと、架橋剤と架橋反応する酸性官能基(以下、単に「酸性官能基」ともいう)を有する単量体とが重合した(メタ)アクリル系共重合体である。したがって、(メタ)アクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a2)と、酸性官能基を有する単量体に由来する構成単位(a1)とを含む。(メタ)アクリル系共重合体(A)は、これら構成単位のほかに、他の単量体に由来する構成単位(a3)を含んでいてもよい。
【0018】
(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a2)
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a2)を含む。(メタ)アクリレートとは、アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである。アルコールとしては、直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキルアルコール、アルコキシアルキルアルコール、芳香族環を有するアルコール等が挙げられる。アルキルアルコールにおける炭素数は、1~18が好ましく、1~12がより好ましく、1~8がさらに好ましい。
【0019】
(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0020】
これらの(メタ)アクリレートのなかでも、構成単位(a2)を構成する(メタ)アクリレートとしては、アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、メチルアクリレート(MA)、n-ブチルアクリレート(n-BA)、および2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、n-BAおよび2EHAの少なくともいずれかと、MAとの組合せがさらに好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、構成単位(a2)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。(メタ)アクリル系共重合体(A)が、例えば2種以上の構成単位(a2)を含む場合、(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度を後述の範囲に調整しやすい。
【0022】
(メタ)アクリル系共重合体(A)において、構成単位(a2)の含有率は、(メタ)アクリル系共重合体(A)に含まれる全構成単位(100.0質量%)に対して、例えば50.0質量%以上95.5質量%以下であってよい。
構成単位(a2)の含有率の下限は、好ましくは70.0質量%以上であり、より好ましくは80.0質量%以上であり、さらに好ましくは85.0質量%以上である。構成単位(a2)の含有率の上限は、好ましくは95.0質量%以下であり、より好ましくは93.0質量%以下であり、さらに好ましくは92.0質量%以下である。
【0023】
酸性官能基を有する単量体に由来する構成単位(a1)
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、架橋剤と架橋反応する酸性官能基を有する単量体に由来する構成単位(a1)を含む。アクリル系共重合体(A)が構成単位(a1)を含むことにより、当該酸性官能基が架橋剤と架橋反応できる。これにより、加飾フィルムの貼り施工時において、粘着剤組成物から形成される粘着剤層の接着力が過度に高まることを防止できる。また、粘着剤層の初期の接着力が過度に高まらないことにより、貼り直し作業時において加飾フィルムにショックラインが発生することを防止できる。
【0024】
酸性官能基としては、例えばカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。酸性官能基を有する単量体は、酸性官能基と、不飽和二重結合基とを有する単量体であればよい。
カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート〔例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート〕、コハク酸エステル〔例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸〕等が挙げられる。
スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
リン酸基を有する単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等が挙げられる。
これらのなかでも、酸性官能基を有する単量体は、カルボキシ基を有する単量体が好ましく、アクリル酸(AA)およびメタクリル酸(MAA)の少なくともいずれかがより好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、構成単位(a1)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0026】
(メタ)アクリル系共重合体(A)において、構成単位(a1)の含有率は、(メタ)アクリル系共重合体(A)に含まれる全構成単位(100.0質量%)に対して、4.5質量%以上15.0質量%以下である。
構成単位(a1)の含有率の下限は、好ましくは5.0質量%以上であり、より好ましくは5.5質量%以上であり、さらに好ましくは6.0質量%以上であり、特に好ましくは6.5質量%以上である。構成単位(a1)の含有率の上限は、好ましくは14.0質量%以下であり、より好ましくは13.0質量%以下であり、さらに好ましくは12.0質量%以下である。構成単位(a1)の含有率が下限以上であると、被着体に対して高い接着力を発現でき、貼り施工後の浮きを防止できる。また、構成単位(a1)の含有率が上限以下であると、貼り直し作業時にジッピング、ショックライン等の発生を抑制できる。
構成単位(a1)の含有率が上記範囲内、特に構成単位(a2)の含有率が下限以上(例えば85.0質量%以上)であり、かつ、構成単位(a1)の含有率が上記範囲内(例えば4.5質量%以上15.0質量%以下)であると、(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度を好適に調整しつつ、架橋剤への架橋反応性が高められる。
【0027】
他の単量体に由来する構成単位(a3)
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリレートおよび酸性官能基を有する単量体以外の単量体(他の単量体)に由来する構成単位(a3)を含んでいてもよい。
【0028】
他の単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、およびビニルトルエン等の芳香族モノビニル;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル等のシアン化ビニル;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、およびバーサチック酸ビニル等のビニルエステル、並びにこれらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
【0029】
(メタ)アクリル系共重合体(A)における構成単位(a3)の含有率は、本発明の効果が損なわれない範囲であれば特に制限されない。本発明の一態様では、(メタ)アクリル系共重合体(A)は構成単位(a3)を含まなくてもよい。
(メタ)アクリル系共重合体(A)が構成単位(a3)を含む場合、構成単位(a3)の含有率は、(メタ)アクリル系共重合体(A)に含まれる全構成単位(100.0質量%)に対して、例えば0.010質量%以上10.0質量%以下であってよく、好ましくは0.010質量%以上5.0質量%以下であり、より好ましくは0.010質量%以上3.0質量%以下である。
【0030】
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度は、-30℃以上-15℃以下である。
ガラス転移温度の下限は、好ましくは-28℃以上であり、より好ましくは-26℃以上であり、さらに好ましくは-25℃以上である。また、ガラス転移温度の上限は、好ましくは-17℃以下であり、より好ましくは-18℃以下であり、さらに好ましくは-20℃以下である。(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が下限以上であることにより、加飾フィルムの貼り施工時において、粘着剤層の初期の接着力が過度に高まることを抑制でき、加飾フィルム、特に(メタ)アクリル系樹脂を含む基材フィルムにショックラインが発生することを回避しつつ、貼り直し作業性が高められる。また、(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が上限以下であることにより、被着体からの加飾フィルムの浮きを防止できる。
【0031】
(メタ)アクリル系重合体(A)および後述の(メタ)アクリル系重合体(B)等のアクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は、下記の式1から計算により求められるガラス転移温度であって、絶対温度(単位:K;以下、同じ。)をセルシウス温度(単位:℃;以下、同じ。)に換算した値である。
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2+・・・+m(k-1)/Tg(k-1)+mk/Tgk(式1)
【0032】
式1中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k-1)、およびTgkは、(メタ)アクリル系共重合体を構成する各単量体を単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度をそれぞれ表す。m1、m2、・・・、m(k-1)、およびmkは、(メタ)アクリル系共重合体を構成する各単量体のモル分率をそれぞれ表し、m1+m2+・・・+m(k-1)+mk=1である。
【0033】
単独重合体のガラス転移温度は、ポリマーハンドブックに記載された値を参照でき、記載されていない単独重合体に関しては、示差走査熱量測定装置(DSC)〔型番:EXSTAR6000、セイコーインスツル(株)〕を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のガラス転移温度としたものである。ただし、本明細書において、下記に示す単量体のガラス転移温度については、下記の値を参照するものとする。
【0034】
上記式1により(メタ)アクリル共重合体のガラス転移温度を算出するための代表的な単量体のガラス転移温度は、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が-70℃、2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)が-10℃、n-ブチルアクリレート(n-BA)が-54℃、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)が20℃、t-ブチルアクリレート(t-BA)が43℃、t-ブチルメタクリレート(t-BMA)が118℃、i-ブチルメタクリレート(i-BMA)が53℃、メチルアクリレート(MA)が10℃、メチルメタクリレート(MMA)が105℃、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)が180℃、イソボルニルアクリレート(IBXA)が94℃、エチルアクリレート(EA)が-22℃、メタクリル酸が228℃、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)が-80℃、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)が-15℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)が85℃、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(2HPA)が-7℃、アクリル酸(AA)が106℃、i-オクチルアクリレート(i-OA)が-65℃、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)が18℃、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートが-30℃、および2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸が-40℃である。
【0035】
(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。例えば、ガラス転移温度が高い単量体(高Tg単量体)とガラス転移温度が低い単量体(低Tg単量体)とを組み合わせて重合体とすることにより、重合体のガラス転移温度を、用いた高Tg単量体のガラス転移温度と、低Tg単量体のガラス転移温度との間に調整できる。
【0036】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(「Mw」ともいう。)は、例えば20万以上180万以下であってよく、好ましくは30万以上100万以下であり、より好ましくは35万以上80万以下であり、さらに好ましくは40万以上60万以下である。
(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリスチレンで換算した値である。より詳細には、実施例に記載の方法で測定した値である。
【0037】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の製造方法
(メタ)アクリル系共重合体(A)の製造方法は特に制限されず、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、(メタ)アクリル系共重合体(A)の各構成単位に対応する単量体を重合することにより製造できる。重合方法としては、製造後に粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合法が好ましい。
【0038】
2.(メタ)アクリル系共重合体(B)
粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(B)を含む。(メタ)アクリル系共重合体(B)は、(メタ)アクリレートが重合した(メタ)アクリル系共重合体であって、酸性官能基以外の極性基(以下、単に「極性基」ともいう)を有する単量体に由来する構成単位(b1)を含む。また、(メタ)アクリル系共重合体(B)は、酸性官能基を有する単量体に由来する構成単位は含まない。したがって、粘着剤組成物が実質的に架橋剤と架橋反応しない(メタ)アクリル系共重合体(B)を含むことによって、粘着剤層の凝集力が高められ、加飾フィルムの浮きを防止できる。
【0039】
極性基を有する構成単位(b1)
(メタ)アクリル系共重合体(B)は、構成単位(b1)を含む。極性基を有する単量体は、特に制限されないが、相溶性の観点からは、極性基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。極性基は、酸性官能基以外の極性基であれば、特に限定されない。極性基の具体例としては、メチロール基を含む水酸基、およびアミド基等が挙げられる。これらの中でも、極性基としては、水酸基が好ましく、アルコール性水酸基がより好ましい。極性基が水酸基であることによって、粘着剤層の被着体への親和性がより高められ、加飾フィルムの浮きをより防止できる。
【0040】
水酸基を有する単量体として、例えば、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
これらの水酸基を有する単量体のなかでも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が1~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)、および4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)からなる群より選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)が特に好ましい。
【0042】
(メタ)アクリル系共重合体(B)は、構成単位(b1)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0043】
(メタ)アクリル系共重合体(B)において、構成単位(b1)の含有率は、(メタ)アクリル系共重合体(B)に含まれる全構成単位(100.0質量%)に対して、3.0質量%以上15.0質量%以下である。
構成単位(b1)の含有率の下限は、好ましくは4.0質量%以上であり、より好ましくは5.0質量%以上であり、さらに好ましくは6.0質量%以上である。また、構成単位(b1)の含有率の上限は、好ましくは14.5質量%以下であり、より好ましくは14.0質量%以下であり、さらに好ましくは13.0質量%以下である。
構成単位(b1)の含有率が上記範囲内であると、粘着剤層の被着体への親和性が高められ、加飾フィルムの浮きを防止できる。
【0044】
極性基を有さない(メタ)アクリレートに由来する構成単位(b2)
(メタ)アクリル系共重合体(B)は、構成単位(b1)に加えて、極性基を有さない(メタ)アクリレートに由来する構成単位(b2)を含むことが好ましい。(メタ)アクリル系共重合体(B)が構成単位(b2)をさらに含むことにより、極性を有する被着体に対して粘着剤層を貼付した際、経時での接着力上昇を緩和させることができる。
【0045】
極性基を有さない(メタ)アクリレートとしては、例えば、「1.(メタ)アクリル系共重合体(A)」の項に記載のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのなかでも、アルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである(メタ)アルキルアクリレートが好ましい。アルキルアルコールにおける炭素数は、1~18が好ましく、1~12がより好ましく、1~8がさらに好ましい。
極性基を有さない(メタ)アクリレートは、アルキル(メタ)アクリレートのなかでも、MA、n-BAおよびt-ブチル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、t-ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0046】
(メタ)アクリル系共重合体(B)は、構成単位(b2)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0047】
(メタ)アクリル系共重合体(B)において、構成単位(b2)の含有率は、(メタ)アクリル系共重合体(B)に含まれる全構成単位(100.0質量%)に対して、例えば60.0質量%以上97.0質量%以下であってよく、好ましくは70.0質量%以上95.0質量%以下であり、より好ましくは80.0質量%以上94.0質量%以下である。
【0048】
他の単量体に由来する構成単位(b3)
(メタ)アクリル系共重合体(B)は、極性基を有する単量体および極性基を有さない(メタ)アクリレート以外の単量体(他の単量体)に由来する構成単位(b3)を含んでいてもよい。(メタ)アクリル系共重合体(B)における他の単量体としては、例えば(メタ)アクリル系共重合体(A)における他の単量体と同様の単量体が挙げられる。
【0049】
(メタ)アクリル系共重合体(B)における構成単位(b3)の含有率は、本発明の効果が損なわれない範囲であれば特に制限されない。本発明の一態様では、(メタ)アクリル系共重合体(B)は構成単位(b3)を含まなくてもよい。
(メタ)アクリル系共重合体(B)が構成単位(b3)を含む場合、構成単位(b3)の含有率は、(メタ)アクリル系共重合体(B)に含まれる全構成単位(100.0質量%)に対して、例えば0.010質量%以上10.0質量%以下であってよく、好ましくは0.010質量%以上5.0質量%以下であり、より好ましくは0.010質量%以上3.0質量%以下である。
【0050】
(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度は、100℃以上であり、例えば100℃以上150℃以下であってよい。
ガラス転移温度の下限は、好ましくは105℃以上であり、より好ましくは108℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上である。また、ガラス転移温度の上限は、好ましくは140℃以下であり、より好ましくは130℃以下であり、さらに好ましくは120℃以下である。(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度が100℃以上であることにより、粘着剤層が曲部を有する被着体から浮くことを防止できる。また、(メタ)アクリル系共重合体(A)よりもガラス転移温度が高い(メタ)アクリル系共重合体(B)が架橋剤と実質的に架橋反応しないことにより、粘着剤組成物から形成される粘着剤層が過度に凝集することを防止でき、加飾フィルムが曲面を有する被着体から浮くことを抑制できる。さらに、貼り直し作業時において加飾フィルムにショックラインが発生することを防止できる。
【0051】
(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量(「Mw」ともいう。)は、例えば0.3万以上1万以下であってよく、好ましくは0.3万以上0.9万以下であり、より好ましくは0.3万以上0.8万以下であり、さらに好ましくは0.4万以上0.7万以下であり、特に好ましくは0.4万以上0.6万以下である。(メタ)アクリル系共重合体(B)のMwは、(メタ)アクリル系共重合体(A)のMwと同様に測定できる。
【0052】
粘着剤組成物における(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、3質量部以上14質量部以下である。
(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量の下限は、好ましくは4質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上である。また、(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量の上限は、好ましくは13質量部以下であり、より好ましくは12質量部以下であり、さらに好ましくは11質量部以下である。
構成単位(b1)を含み、実質的に架橋剤と架橋反応しない(メタ)アクリル系共重合体(B)を上記範囲内で含んでいることによって、粘着剤層の凝集力が高められ、加飾フィルムの浮きを防止できる。
【0053】
3.架橋剤
粘着剤組成物は、架橋剤を含む。架橋剤は、酸性官能基と反応することで(メタ)アクリル系共重合体(A)を架橋する架橋剤である。架橋剤は、酸性官能基と優先的に架橋反応するという観点から、イソシアネート系架橋剤でなく、エポキシ系架橋剤および金属キレート系架橋剤の少なくともいずれかの架橋剤である。架橋剤としてエポキシ系架橋剤および金属キレート系架橋剤の少なくともいずれかを用いることにより、(メタ)アクリル系共重合体(A)を優先的に架橋させることができる。これにより、粘着剤組成物から形成される粘着剤層を備える加飾フィルムの貼り施工時における接着力が過度に高まることを防止しつつ、貼り施工後において、十分に粘着剤層の粘着力を高められる。したがって、アクリル系樹脂を基材フィルムとする加飾フィルムの貼り施工後、経時的に生じ得る加飾フィルムの浮きを防止できる。
【0054】
エポキシ系架橋剤は、2つ以上のエポキシ基を有する化合物であればよい。エポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル等の2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリス(グリシジル)イソシアヌレート、トリス(グリシドキシエチル)イソシアヌレート、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、およびN,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)等の3つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が挙げられる。これらのなかでも、3つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が好ましい。
【0055】
エポキシ系架橋剤の市販品の例としては、「TETRAD(登録商標)-X」および「TETRAD(登録商標)-C」〔以上、三菱ガス化学(株)製〕、並びに、「デナコール(登録商標)EX-201」および「デナコール(登録商標)EX-931」〔以上、ナガセケムテックス(株)製〕が挙げられる。
【0056】
金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、およびアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)に代表されるアルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、コバルトキレート化合物等が挙げられる。金属キレート系架橋剤としては、例えば、架橋速度の観点から、アルミニウムキレート化合物が好ましい。
【0057】
金属キレート系架橋剤の市販品の例としては、アルミキレートA〔商品名、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、川研ファインケミカル(株)〕、アルミキレートD〔商品名、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、川研ファインケミカル(株)〕、およびALCH-TR〔商品名、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、川研ファインケミカル(株)〕が挙げられる。
【0058】
架橋剤の含有量は、架橋剤の種類に応じて設計すればよく、限定されない。架橋剤の含有量は、100質量部の(メタ)アクリル系共重合体(A)に対して、例えば0.01質量部以上4質量部以下であってよく、好ましくは0.05質量部以上3質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上3質量部以下であり、さらに好ましくは0.1質量部以上2質量部以下であり、特に好ましくは0.1質量部以上1質量部以下である。架橋剤の含有量が、下限以上(例えば、100質量部の(メタ)アクリル系共重合体(A)に対して0.01質量部以上)であることにより、粘着剤組成物から形成される粘着剤層の接着力を十分に高められる。また、架橋剤の含有量が、上限以下(例えば、100質量部の(メタ)アクリル系共重合体(A)に対して4質量部以下)であることにより、貼り施工時における粘着剤層の接着力が過度に高まることを防止できる。
【0059】
4.添加剤
粘着剤組成物は、本発明の効果が損なわれない範囲において、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などの添加剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
添加剤を含む場合、添加剤の含有量は、100質量部の(メタ)アクリル系共重合体(A)に対して、例えば0.01質量部以上5質量部以下であってよく、好ましくは0.01質量部以上3質量部以下であり、より好ましくは0.01質量部以上1質量部以下であり、さらに好ましくは0.01質量部以上0.1質量部以下である。
【0060】
(粘着剤層)
粘着剤層は、(メタ)アクリル系共重合体(A)、(メタ)アクリル系共重合体(B)および架橋剤を含む粘着剤組成物から形成される層である。すなわち、粘着剤層は、(メタ)アクリル系共重合体(A)、(メタ)アクリル系共重合体(B)および架橋剤を含む粘着剤組成物に由来する層である。粘着剤層は(メタ)アクリル系共重合体(A)に由来する構成成分および(メタ)アクリル系共重合体(B)に由来する構成成分を含み、(メタ)アクリル系共重合体(A)に由来する構成成分の少なくとも一部は架橋剤に由来する部分構造により連結されている。
【0061】
粘着剤層の厚みは、好ましくは20μm以上60μm以下であり、より好ましくは22μm以上55μm以下であり、さらに好ましくは25μm以上50μm以下である。粘着剤層の厚みが下限以上(例えば、25μm以上)であると、貼り直し作業性、および接着性がより向上しやすい。粘着剤層の厚みが上限以下(例えば、60μm以下)であると、着色層の熱収縮を抑制しやすい。
粘着剤層の厚みは、マイクロメータにより測定し、5点の測定値の平均値として算出する。粘着剤層の厚みは、粘着剤層を直接マイクロメータで測定して算出しても、厚みが特定された2枚のフィルムに挟んだ状態の総厚から、2枚のフィルムの厚みを引くことで算出してもよい。
【0062】
加飾フィルムの被着体に対する接着力は、基材フィルムの剛性の影響を受ける。したがって、柔軟な加飾フィルムを得るために基材フィルムの剛性を低く設計すると、加飾フィルム全体の剛性も低下して、接着力が低下する傾向がある。しかし、剛性の低い基材フィルム、すなわち柔軟な基材フィルムを使用する場合であっても、ある程度剛性の高い粘着剤層と組み合わせて使用することで、加飾フィルム全体の剛性を維持できるため、十分な接着力を有する加飾フィルムを得ることができる。
よって、本発明の一態様では、粘着剤層の20℃における貯蔵弾性率は、好ましくは0.10MPa以上0.60MPa以下であり、より好ましくは0.12MPa以上0.55MPa以下であり、さらに好ましくは0.15MPa以上0.50MPa以下である。粘着剤層の貯蔵弾性率が上限以下であると、被着体に対する粘着剤層の濡れ性が向上して浮きをより防止できる。また、粘着剤層の貯蔵弾性率が下限以上であると、粘着剤層を含む加飾フィルム全体の剛性を維持できるため、十分な接着力を有する加飾フィルムを得ることが出来る。
【0063】
粘着剤層の損失正接(20℃における損失弾性率/20℃における貯蔵弾性率)は、好ましくは0.20以上1.5以下であり、より好ましくは0.30以上1.2以下であり、さらに好ましくは0.50以上1.1以下である。粘着剤層の損失正接が上限以下であると、粘着剤層を含む加飾フィルム全体の剛性を維持できるため十分な接着力を有する加飾フィルムを得ることが出来る。また、粘着剤層の損失正接が下限以上であると、被着体に対する粘着剤層の濡れ性が向上する。したがって、粘着剤層の損失正接が上記記載の範囲内であれば、柔軟な基材フィルムであっても十分な接着力と濡れ性を有し、浮きを防止できる。
【0064】
粘着剤層の20℃における貯蔵弾性率および損失弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて測定できる。より具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0065】
粘着剤層の形成方法は特に制限されず、通常用いられる方法を採用できる。本発明の加飾フィルムにおいて、粘着剤層は、基材フィルムに積層されている。
基材フィルム上に粘着剤層を形成する一の方法として、以下の方法が挙げられる。粘着剤組成物を、そのままの状態で、又は、必要に応じて溶媒で希釈した状態で、基材フィルム上に塗布し、塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、基材フィルム上に粘着膜を形成する。その後、基材フィルム上に形成した粘着膜を養生することにより、基材フィルム上に粘着剤層を形成することができる。
また、基材フィルム上に粘着剤層を形成する他の方法として、以下の方法も挙げられる。粘着剤組成物を、そのままの状態で、又は、必要に応じて溶媒で希釈した状態で、剥離剤による表面処理が施された紙、樹脂フィルム等の剥離フィルム上に塗布し、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離フィルム上に粘着膜を形成する。その後、形成した粘着膜の露出した面を基材フィルムに接触させて加圧し、粘着膜を基材に転写することにより、基材フィルム上に粘着膜を形成する。最後に、形成した粘着膜を養生させることにより、基材フィルム上に粘着剤層を形成することができる。
【0066】
粘着剤組成物を希釈する溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素化合物;n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油等の脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノン等のケトン化合物;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル化合物;並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコール等のアルコール化合物が挙げられる。希釈溶媒は、1種のみ、または2種以上組み合わせて使用してよい。
【0067】
これらの溶媒のなかでも、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物が好ましく、(メタ)アクリル系共重合体の溶解性の観点から、酢酸エチルがより好ましい。
【0068】
粘着剤組成物を溶媒で希釈する場合、希釈後の粘着剤組成物の固形分濃度は、塗工性の観点から、希釈後の粘着剤組成物の総量に対して、好ましくは3質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは8質量%以上13質量%以下である。なお、粘着剤組成物の固形分とは、希釈後の粘着剤組成物から溶媒等の液状媒体を除いた全ての成分を表す。
【0069】
剥離フィルムとしては、粘着剤層からの剥離を容易に行えるものであれば、特に限定されず、例えば、片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された樹脂フィルムが挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。
剥離処理剤としては、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン、長鎖アルキル基化合物等が挙げられる。
本発明の加飾フィルムにおいて、露出した粘着剤層は、剥離フィルムによって保護されていてもよい。粘着剤層が剥離フィルムによって保護されている場合、剥離フィルムは加飾フィルムの施工時に剥離される。
【0070】
基材上又は剥離フィルム上に、粘着剤組成物を塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
基材上又は剥離フィルム上への粘着剤組成物の塗布量は、形成する粘着剤層の厚みに応じて、適宜設定される。
【0071】
基材上又は剥離フィルム上に形成した塗布膜を乾燥させる方法としては、特に限定されず、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、塗布膜の厚み、塗布膜中の有機溶媒の量等に応じて、適宜設定される。乾燥条件の一例としては、熱風乾燥機を用いて、70℃~120℃で1分間~3分間乾燥させる条件が挙げられる。
【0072】
養生は、例えば、20℃~35℃の環境下で、4日間~7日間行ってよい。養生により、粘着剤組成物の架橋反応が終了して粘着剤層が形成される。
【0073】
<基材フィルム>
基材フィルムは(メタ)アクリル系樹脂を含む。基材フィルムが(メタ)アクリル系樹脂を含むことにより、ウレタン単層に比べて基材フィルム全体の剛性を保持でき、応力緩和率が上昇してフィルムが弛むことによるシワの発生を抑制できる。
基材フィルムが複数の層を含む場合、基材フィルムに含まれる少なくとも1層が(メタ)アクリル系樹脂を含んでいればよい。「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂の総称である。
【0074】
基材フィルムは、2層以上の層を含んでいてよく、表面保護層と着色層とを含むことが好ましい。基材フィルムが表面保護層および着色層を含む場合、着色層が表面保護層によって保護されるため、加飾フィルムの劣化を防ぐことができ、また、摩擦による着色層の色落ちを防ぐことができる。基材フィルムが表面保護層および着色層を含む場合、耐候性および耐溶剤性を確保する観点から、(メタ)アクリル系樹脂は着色層に含まれていることが好ましい。
【0075】
(着色層)
着色層は(メタ)アクリル系樹脂を含むことが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂は、耐候性の観点から、それ単独で加飾フィルムに十分な耐候性を発現させる樹脂材料であってもよいし、ポリウレタン樹脂等の(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂との併用(積層構造)によって加飾フィルムに十分な耐候性を発現させる樹脂材料であってもよい。
着色層に含まれる(メタ)アクリル系樹脂は、1種類の樹脂であってよく、例えば硬さが互いに異なる2種類以上の樹脂の併用系であってもよい。併用系における比較的硬度が大きい硬質樹脂には、例えば、溶融押出しにて成形されるフィルム、シート等に用いられる硬質(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。また、併用系における比較的硬度が小さい軟質(メタ)アクリル系樹脂には、流動性調整用の樹脂、および軟質材料用の樹脂等が挙げられる。
基材フィルムおよび基材フィルムを含む加飾フィルムの機械的特性を調整し、後述の物性を実現する観点から、(メタ)アクリル系樹脂は、硬質(メタ)アクリル系樹脂および軟質(メタ)アクリル系樹脂を含むことが好ましい。
【0076】
硬質(メタ)アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル系樹脂のうち、厚み100μmで幅10mmのシート材としたときの20℃での上降伏点荷重が10.0N/10mm以上である(メタ)アクリル系樹脂をいう。
軟質(メタ)アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル系樹脂のうち、厚み100μmで幅10mmのシート材としたときの20℃での上降伏点荷重が10.0N/10mm未満である(メタ)アクリル系樹脂をいう。
【0077】
(メタ)アクリル系樹脂の上降伏点荷重は、10mm幅の試料を用いて、テンシロン万能試験機などの公知の測定装置で測定することによって求めることが可能である。上降伏点荷重は、引張試験にて観察される試料の上降伏点における荷重であり、幅10mmの試料を用いて測定する荷重であることから、その単位は「N/10mm」と表記する。
【0078】
硬質(メタ)アクリル系樹脂の20℃での上降伏点荷重は、十分な加飾フィルムの施工性(施工時のシワの発生の抑制)および曲面追従性を得る観点から、例えば10.0N/10mm以上35N/10mm以下であってよい。
硬質(メタ)アクリル系樹脂の20℃での上降伏点荷重の下限は、加飾フィルムの施工性を高める観点から、好ましくは15.0N/10mm以上であり、より好ましくは20.0N/10mm以上である。硬質(メタ)アクリル系樹脂の20℃での上降伏点荷重の上限は、加飾フィルムの曲面追従性を高める観点から、好ましくは30.0N/10mm以下であり、より好ましくは28.0N/10mm以下である。
【0079】
硬質(メタ)アクリル系樹脂は、ショアA硬度が90より大きい(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。ショアA硬度は、例えば、90より大きく150以下であってよく、好ましくは95以上130以下であり、より好ましくは98以上120以下である。
なお、「ショアA硬度」とは、例えば、株式会社テクロック製のデュロメーターGS-706Nを用いて測定でき、荷重1KgでタイプAのセンサを測定対象の表面に垂直に押し当てた際の最大値をいう。
【0080】
硬質(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂を構成し得る公知の単量体のラジカル重合によって調製され得る。硬質(メタ)アクリル系樹脂の例としては、ポリメチルメタクリレート、およびメチルメタクリレート-スチレン共重合体が挙げられる。
【0081】
硬質(メタ)アクリル系樹脂は、ショアA硬度が90より大きく、かつ、その成形体の20℃での上降伏点荷重が10.0N/10mm以上になる樹脂が好ましい。硬質(メタ)アクリル系樹脂は市販品であってよく、その例としては、パラペット(登録商標)GR-F1000P((株)クラレ)、カネエース(登録商標)MC-732((株)カネカ)、ダイヤナールLP-3202、同3207、同3130、同3121(以上、三菱ケミカル(株))、およびデルペット(旭化成(株))が挙げられる。
【0082】
軟質(メタ)アクリル系樹脂の20℃での上降伏点荷重は、十分な加飾フィルムの施工性(施工時のシワの発生の抑制)および曲面追従性を得る観点から、例えば2.0N/10mm以上10.0N/10mm未満であってよい。
軟質(メタ)アクリル系樹脂の20℃での上降伏点荷重の下限は、加飾フィルムの施工性を高める観点から、好ましくは3.0N/10mm以上であり、より好ましくは3.5N/10mm以上である。軟質(メタ)アクリル系樹脂の20℃での上降伏点荷重の上限は、加飾フィルムの曲面追従性を高める観点から、好ましくは7.0N/10mm以下であり、より好ましくは5.0N/10mm以下である。
【0083】
軟質(メタ)アクリル系樹脂は、ショアA硬度が50以上90以下の樹脂であってもよい。ショアA硬度は、好ましくは60以上85以下であり、より好ましくは65以上80以下であり、さらに好ましくは70以上75以下である。
【0084】
軟質(メタ)アクリル系樹脂は、ショアA硬度が50以上90以下であり、かつ、その成形体の20℃での上降伏点荷重が10.0N/10mm未満になる樹脂が好ましい。軟質(メタ)アクリル系樹脂は市販品であってよく、その例としては、パラペット(登録商標)SA-F1000P((株)クラレ)が挙げられる。
【0085】
硬質(メタ)アクリル系樹脂、および軟質(メタ)アクリル系樹脂の少なくともいずれかは、ゴム弾性を有するコア粒子をアクリル樹脂が被覆するコアシェル粒子を含む樹脂組成物であってもよい。コアシェル粒子を含む樹脂組成物の市販品の例としては、パラペット(登録商標)GR-F1000PおよびSA-F1000P((株)クラレ)が挙げられる。コアシェル粒子を含む樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステルと、これと共重合可能な多官能性単量体および他の単官能性単量体と、からなる単量体混合物の重合によって形成され得る。硬質(メタ)アクリル系樹脂および軟質(メタ)アクリル系樹脂の少なくともいずれかは、熱可塑性エラストマーであり得る。
【0086】
(メタ)アクリル酸エステルのうち、アクリル酸エステルの例としては、アクリル酸と炭素数1~18の飽和脂肪族アルコールとのエステル、アクリル酸と炭素数5または6の脂環式アルコールとのエステル、アクリル酸とフェノール類または芳香族アルコールとのエステルが挙げられる。
アクリル酸エステルの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、およびベンジルアクリレートが挙げられる。
【0087】
(メタ)アクリル酸エステルのうち、メタクリル酸エステルの例としては、メタクリル酸と炭素数1~22の飽和脂肪族アルコールとのエステル、メタクリル酸と炭素数5または6の脂環式アルコールとのエステル、メタクリル酸とフェノール類または芳香族アルコールとのエステルが挙げられる。
メタクリル酸エステルの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、およびベンジルメタクリレートが挙げられる。
【0088】
多官能性単量体の例としては、不飽和モノカルボン酸と不飽和アルコールとのエステル、不飽和モノカルボン酸とグリコールとのジエステル、およびジカルボン酸と不飽和アルコールとのエステル、芳香族ジビニル系単量体、共役ジエン系単量体が挙げられる。
不飽和モノカルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、および桂皮酸が挙げられる。
不飽和アルコールの例としては、アリルアルコール、およびメタリルアルコールが挙げられる。
グリコールの例としては、エチレングリコール、ブタンジオール、およびヘキサンジオールが挙げられる。
ジカルボン酸の例としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、およびマレイン酸が挙げられる。
共役ジエン系単量体の例としては、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、2-メチル-3-エチルブタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2-メチル-1,3-ヘキサジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、3-メチル-1,3-ヘプタジエン、1,3-オクタジエン、シクロペンタジエン、クロロプレン、およびミルセンが挙げられる。
多官能性単量体の具体例としては、アクリル酸アリル、アクリル酸メタリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸メタリル、桂皮酸アリル、桂皮酸メタリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、およびヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの総称であり、それらの一方または両方を表す。
【0089】
単官能性単量体の例としては、芳香族ビニル系単量体、およびシアン化ビニル系単量体が挙げられる。
【0090】
芳香族ビニル系単量体の例としては、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、およびハロゲン化スチレンが挙げられる。
【0091】
シアン化ビニル系単量体の例としては、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルが挙げられる。
【0092】
着色層の20℃における上降伏点荷重は、例えば、8.3N/10mm以上13.2N/10mm以下が好ましい。
着色層の20℃における上降伏点荷重の下限は、貼り施工性を高める観点から、好ましくは8.3N/10mm以上であり、より好ましくは9.0N/10mm以上であり、さらに好ましくは10.0N/10mm以上である。着色層の20℃における上降伏点荷重の上限は、曲面追従性を高める観点から、好ましくは13.2N/10mm以下であり、より好ましくは12.0N/10mm以下であり、さらに好ましくは11.0N/10mm以下である。着色層の20℃における上降伏点荷重が下限以上であると、加飾フィルムの貼り付け時にシワの発生を抑制しやすい傾向がある。また、着色層の20℃における上降伏点荷重が上限以下であると、貼り施工後に浮きの発生を抑制しやすい傾向がある。着色層の上降伏点荷重は、上降伏点荷重が異なる(メタ)アクリル系樹脂を適当な量比で併用することによって調整可能である。
【0093】
着色層は、好ましくは(メタ)アクリル系樹脂および着色剤を含有する。例えば、着色層は、(メタ)アクリル系樹脂の連続相中に着色剤が分散してなる層であってよい。
【0094】
着色層に含まれ得る着色剤は、樹脂フィルム印刷用の塗料に用いられる公知の顔料および染料であってよい。着色剤は、1種でもよく、2種以上組み合わせてもよい。着色剤は、加飾フィルムにおいて発現させるべき所望の色に応じた量で用いられる。
白色系の着色剤の例としては、酸化チタン、および硫酸バリウムが挙げられる。
黒色系の着色剤の例としては、鉄黒、カーボンブラック、およびアニリンブラックが挙げられる。
黄色系の着色剤の例としては、カドミウムイエロー、およびオイルイエロー2Gが挙げられる。
橙色系の着色剤の例としては、クロムバーミリオン、およびカドミウムオレンジが挙げられる。
赤色系の着色剤の例としては、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、およびオイルレッドが挙げられる。
紫色系の着色剤の例としては、コバルトバイオレッド、およびアンスラキノンバイロレットが挙げられる。
青色系の着色剤の例としては、群青、紺青、およびコバルトブルーが挙げられる。
緑色系の着色剤の例としては、フタロシアニングリーン、およびクロムグリーンが挙げられる。
【0095】
着色層の厚みは、例えば60μm以上150μm以下であってよい。
着色層の厚みの下限は、所望の色度を十分に発現させる観点から、好ましくは60μm以上であり、より好ましくは80μm以上であり、さらに好ましくは100μm以上である。着色層の厚みの上限は、上記の観点から適宜に決めることができ、例えば150μm以下であってよく、130μm以下であってよく、あるいは110μm以下であってもよい。
着色層の厚みは、マイクロメータにより測定し、5点の測定値の平均値として算出する。
【0096】
(表面保護層)
表面保護層は、着色層に重なる層である。表面保護層の20℃における上降伏点荷重は、例えば4.5N/10mm以上6.0N/10mm以下が好ましい。
表面保護層の20℃における上降伏点荷重の下限は、貼り施工性を高める観点から、好ましくは4.5N/10mm以上であり、より好ましくは5.0N/10mm以上であり、さらに好ましくは5.2N/10mm以上である。表面保護層の20℃における上降伏点荷重の上限は、曲面追従性を高める観点から、好ましくは6.0N/10mm以下であり、より好ましくは5.9N/10mm以下である。上降伏点荷重が下限以上であると、加飾フィルムの貼り付け時にシワの発生を抑制しやすい傾向がある。上降伏点荷重が上限以下であると、貼り施工後に浮きの発生を抑制しやすい傾向がある。
表面保護層の上降伏点荷重は、比較的柔軟な樹脂材料を1種単独で用いること、または2種以上を併用することによって調整可能である。
【0097】
表面保護層は、ポリウレタン樹脂を含むことが好ましい。
ポリウレタン樹脂は、表面保護層の20℃における上降伏点荷重を、少なくとも4.5N/10mm以上に設計できる樹脂が好ましく、4.5N/10mm以上6.0N/10mm以下に設計できる樹脂がより好ましく、4.5N/10mm以上5.9N/10mm以下に設計できる樹脂がさらに好ましい。
ポリウレタン樹脂は、後述の加飾フィルムの上降伏点荷重と応力緩和率とを実現し得る樹脂材料であることが好ましい。ポリウレタン樹脂またはその材料は、好ましくは、フィルム、シート成形に使用される一液型熱可塑性樹脂、または、溶融成形用の、熱可塑性樹脂若しくは熱可塑性エラストマーから選択され得る。
【0098】
ポリウレタン樹脂は、それ単独で加飾フィルムに十分な耐候性を発現させる樹脂材料であってもよいし、(メタ)アクリル系樹脂との併用(積層構造)によって加飾フィルムに十分な耐候性を発現させる樹脂材料であってもよい。ポリウレタン樹脂は、1種でもよく、2種以上組み合わせてもよい。
ポリウレタン樹脂の例としては、ポリカーボネート系ウレタン樹脂およびポリカプロラクトン系ウレタン樹脂が挙げられる。これらのウレタン樹脂は、ポリカプロラクトンまたはポリカーボネートなどの主鎖と、ウレタン構造とを備える。当該ウレタン構造は脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネートに由来するウレタン構造が好ましい。
ウレタン樹脂は市販品であってよく、その例としては、レザミン(登録商標)NE(大日精化工業(株))、ミラクトラン(登録商標)E(日本ミラクトラン(株))およびクリスボン(登録商標)NY(DIC(株))が挙げられる。
【0099】
表面保護層の厚みは、例えば15μm以上60μm以下であってよい。
表面保護層の厚みの下限は、着色層を十分な厚みをもって保護する観点から、好ましくは15μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、さらに好ましくは30μm以上である。表面保護層の厚みの上限は、上記の観点から適宜に決めることができ、例えば60μm以下であってよく、50μm以下であってよく、あるいは40μm以下であってもよい。
表面保護層の厚みは、マクロメータにより測定し、5点の測定値の平均値として算出する。
【0100】
前述した着色層および表面保護層は、本発明の効果が得られる範囲において、樹脂および着色剤以外の他の成分をさらに含有してもよい。このような他の成分の例としては、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤および体質顔料が含まれる。体質顔料の例としては、炭酸カルシウムが挙げられる。各層における他の成分の含有量は、本発明の効果と当該他の成分による効果との両方が得られる範囲において適宜に設定され得る。
【0101】
前述した着色層および表面保護層は、耐候性向上の観点から、紫外線吸収剤および光安定剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノアクリレート系化合物;超微粒子状の酸化亜鉛、酸化チタン等が挙げられる。光安定剤の例としては、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
【0102】
なお、前述した着色層および表面保護層は、他の成分を含有することなく本発明の効果を発現し得る。例えば、本実施形態では、柔軟なポリウレタン樹脂と、硬さが異なる2種の(メタ)アクリル系樹脂とを用いることにより、可塑剤を含有しなくても、後述の上降伏点荷重および応力緩和率を達成させることが可能である。このように、本実施形態の加飾フィルムが上降伏点荷重および応力緩和率を調整するための他の成分(可塑剤など)を含有しない態様は、好ましい一態様である。
【0103】
なお、「上降伏点荷重および応力緩和率を調整するための他の成分」は、上降伏点荷重および応力緩和率に影響を及ぼす量で用いてもよい。紫外線吸収剤および光安定剤などのように、所期の機能を発現するが、上降伏点荷重および応力緩和率に実質的な影響を及ぼさない成分は、「上降伏点荷重および応力緩和率を調整するための他の成分」には該当しない。着色層および表面保護層が可塑剤を含有しない態様は、可塑剤のブリードアウトを抑制する観点から、好ましい一態様である。
【0104】
(他の層)
基材フィルムは、着色層および表面保護層以外の他の層をさらに有していてもよい。このような他の層の例としては、上述の第1の粘着剤層以外の第2の粘着剤層が含まれる。基材フィルムが複数の層(例えば、表面保護層および着色層)を備える場合、第2の粘着剤層が複数の層同士の層間を接着する。
【0105】
例えば、基材フィルムは着色層と表面保護層との間に介在して両層を互いに接着させる第2の粘着剤層をさらに有していてもよい。
第2の粘着剤層の厚みは、粘着剤層の種類および接着対象に応じて、例えば3μm以上70μm以下であり、好ましくは10μm以上50μm以下であり、より好ましくは15μm以上45μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上40μm以下の範囲から適宜に設定してよい。
第2の粘着剤層の厚みは、マイクロメータにより測定し、5点の測定値の平均値として算出する。
【0106】
第2の粘着剤層には、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、およびポリビニルエーテル系粘着剤などの公知の各種粘着剤を適用可能である。また、本発明の加飾フィルムを構成する粘着剤層を形成するための粘着剤組成物を用いて、第2の粘着剤層を形成してもよい。
【0107】
(基材フィルム)
基材フィルムの20℃における上降伏点荷重は、例えば10.0N/10mm以上45.0N/10mm以下であってよい。
基材フィルムの20℃における上降伏点荷重の下限は、貼り施工性を高める観点から、好ましくは13.7N/10mm以上であり、より好ましくは15.0N/10mm以上であり、さらに好ましくは17.0N/10mm以上である。基材フィルムの20℃における上降伏点荷重の上限は、曲面追従性を高める観点から、好ましくは30.0N/10mm以下であり、より好ましくは25.0N/10mm以下であり、さらに好ましくは20.0N/10mm以下であり、さらにより好ましくは19.0N/10mm以下であり、特に好ましくは18.0N/10mm以下である。上降伏点荷重が下限以上であると、貼り施工時にシワの発生を抑制しやすくなる傾向がある。また、上降伏点荷重が上限以下であると貼り施工後の浮きの発生を抑制しやすくなる傾向がある。
基材フィルムの上降伏点荷重は、基材フィルムに荷重をかけたときの基材フィルムの変形が弾性変形から塑性変形に変化する境界の荷重である。上降伏点荷重の測定時における基材フィルムの温度は20℃である。基材フィルムの上降伏点荷重は、着色層および表面保護層のそれぞれの上降伏点荷重または材料樹脂によって調整され得る。
【0108】
なお、本明細書において、特に言及がない限り、基材フィルムが積層構造を有する積層体である場合、基材フィルムの上降伏点荷重は、積層体の上降伏点荷重を意味する。例えば、基材フィルムが表面保護層と着色層とを有する積層体である場合、基材フィルムの上降伏点荷重は、表面保護層と着色層との積層体の上降伏点荷重を意味する。また、基材フィルムが第2の粘着剤層をさらに有する積層体である場合、基材フィルムの上降伏点荷重は、表面保護層、第2の粘着剤層、および着色層がこの順で重なって構成された積層体の上降伏点荷重を意味する。
【0109】
基材フィルムの20℃における応力緩和率は、例えば50%以上63%以下が好ましい。基材フィルムの応力緩和率は、基材フィルムを5%延伸させる(105%の長さにする)引張荷重を5分間かけたときの引張前後における引張荷重の変化の割合である。当該応力緩和率の測定時における基材フィルムの温度は20℃である。基材フィルムの応力緩和率は、5%延伸直後の引張荷重をx、5%延伸から5分後の引張荷重をyとしたときに、下記式から求められる。
応力緩和率z[%]={(x-y)/x}×100
【0110】
基材フィルムの応力緩和率の下限は、貼り施工性を高める観点から、好ましくは51%以上であり、より好ましくは53%以上であり、さらに好ましくは55%以上である。また、基材フィルムの応力緩和率の上限は、曲面追従性を高める観点から、好ましくは60%以下であり、より好ましくは58%以下であり、さらに好ましくは57%以下である。基材フィルムの応力緩和率が下限以上であると、加飾フィルムの貼り付け時にシワの発生を抑制しやすい傾向がある。基材フィルムの応力緩和率が上限以下であると、貼り施工後の浮き発生を抑制しやすくなる傾向がある。
【0111】
基材フィルムの応力緩和率は、テンシロン万能試験機などの公知の測定装置で引張荷重を測定することによって求めることが可能である。また、基材フィルムの応力緩和率は、着色層および表面保護層のそれぞれの材料樹脂または両層の厚みによって調整され得る。
【0112】
なお、本明細書において、特に言及がない限り、基材フィルムが積層構造を有する積層体である場合、基材フィルムの応力緩和率は、積層体の応力緩和率を意味する。例えば、基材フィルムが表面保護層と着色層とを有する積層体である場合、基材フィルムの応力緩和率は、表面保護層と着色層との積層体の応力緩和率を意味する。また、基材フィルムが第2の粘着剤層をさらに有する積層体である場合、基材フィルムの上降伏点荷重は、表面保護層、第2の粘着剤層および着色層がこの順で重なって構成された積層体の応力緩和率を意味する。
【0113】
本実施形態の基材フィルムの厚みは、例えば表面保護層の厚みと着色層の厚みと第2の粘着剤層の厚みとの合計で表される。基材フィルムの厚みは、加飾フィルムの用途に応じて適宜に決定し得る。基材フィルムの厚みは、例えば100μm以上200μm以下であってよい。
基材フィルムの厚みの下限は、貼り施工性、および曲面追従性の少なくともいずれかの調整の観点から、好ましくは100μm以上であり、より好ましくは120μm以上であり、さらに好ましくは140μm以上であり、さらにより好ましくは150μm以上であり、特に好ましくは160μm以上である。基材フィルムの厚みの上限は、曲面追従性を十分に発現させる観点から、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは180μm以下であり、さらに好ましくは170μm以下である。基材フィルムの厚みが下限以上であると、十分な貼り施工性および曲面追従性が得られる。また、基材フィルムの厚みが上限以下であると、十分な曲面追従性を得ることができる。
【0114】
(基材フィルムの製造方法)
基材フィルムは、例えば表面保護層および着色層をこの順で重ねて配置可能な方法によって製造することができる。
【0115】
例えば、基材フィルムは、着色層を準備する工程と、表面保護層を準備する工程と、着色層に表面保護層を貼り付ける工程と、を含む方法によって製造することができる。
【0116】
着色層を準備する工程は、(メタ)アクリル系樹脂と着色剤とを混合し、得られた混合物のフィルムを成形する工程であってもよい。着色層のフィルム成形は、例えば押出成形やカレンダー成形により行ってよい。また、表面保護層を準備する工程は、ウレタン樹脂の層を製造する工程であってもよいし、着色層の一方の表面に表面保護層の材料を塗布して塗膜を形成した後、固化または硬化させる工程であってもよい。
【0117】
着色層に表面保護層を貼り付ける工程は、例えば着色層と表面保護層とを熱融着などによって直接接合する工程であってもよい。また、着色層に表面保護層を貼り付ける工程は、予め準備した着色層または表面保護層の一方の表面に他方の層の材料を層状に供給して一方の層上に他方の層を接合させて形成する工程であってもよい。さらに、着色層に表面保護層を貼り付ける工程は、第2の粘着剤層を着色層の一方の表面に塗布して得られた第2の粘着剤層に表面保護層を貼り合わせる工程であってもよい。第2の粘着剤層を介して着色層と表面保護層とを貼り合わせることは、両層の材料設計の自由度を高める観点から有利である。
【0118】
<加飾フィルム>
本発明の加飾フィルムは、基材フィルムと粘着剤層とを含み、基材フィルムおよび粘着剤層は既述した特定の基材フィルムおよび粘着剤層である。したがって、本発明の加飾フィルムは、柔軟な基材フィルムを用いた場合であっても、貼り施工後の浮きを防ぐことができ、さらには貼り直し作業時にショックラインおよびジッピングの発生を抑制できるため、貼り直し作業が容易である。本発明の一態様の加飾フィルムは、柔軟で曲面追従性が高く、貼り施工後の浮きを防ぐことができ、さらには貼り直し作業時にショックラインおよびジッピングの発生を抑制できるため、貼り直し作業が容易である。
【0119】
加飾フィルムは、加飾フィルムの粘着剤層を被着体に貼り合わせたときから1時間経過時における接着力が、4.0N/10mm以上6.0N/10mm以下であることが好ましい。
1時間経過時における接着力の下限は、貼り施工後の浮きを防ぐ観点から、好ましくは4.2N/10mm以上であり、より好ましくは4.4N/10mm以上である。1時間経過時における接着力の上限は、ショックラインおよびジッピングの発生を抑制する観点から、好ましくは5.5N/10mm以下であり、より好ましくは5.0N/10mm以下である。1時間経過時における接着力が上限以下であると、加飾フィルムの貼り直し作業性が高められる。
また、加飾フィルムは、加飾フィルムの粘着剤層を被着体に貼り合わせたときから168時間経過時における接着力が、例えば5.0N/10mm以上20.0N/10mm以下であることが好ましい。
168時間経過時における接着力の下限は、貼り施工後の浮きを防止する観点から、好ましくは5.5N/10mm以上であり、より好ましくは6.0N/10mm以上である。168時間経過時における接着力の上限は、経年劣化による貼り替え性の観点から、好ましくは15.0N/10mm以下であり、より好ましくは10.0N/10mm以下である。
【0120】
加飾フィルムの被着体に対する接着力は、基材フィルムの剛性および粘着剤層の剛性の影響を受ける。したがって、柔軟な加飾フィルムを得るために基材フィルムの剛性を低くする場合、粘着剤層の剛性を高くすることにより、柔軟であり、かつ、被着体に対して高い接着力を有する加飾フィルムを得ることができる。
したがって、本発明の一態様において、加飾フィルムは、20℃における上降伏点荷重が10.0N/10mm以上45.0N/10mm以下である基材フィルムと、20℃における貯蔵弾性率が0.10MPa以上0.60MPa以下である粘着剤層とを含むことが好ましく、20℃における上降伏点荷重が13.7N/10mm以上30.0N/10mm以下である基材フィルムと、20℃における貯蔵弾性率が0.12MPa以上0.55MPa以下である粘着剤層とを含むことがより好ましく、20℃における上降伏点荷重が15.0N/10mm以上20.0N/10mm以下である基材フィルムと、20℃における貯蔵弾性率が0.15MPa以上0.50MPa以下である粘着剤層とを含むことがさらに好ましい。
本発明の一態様において、加飾フィルムは、20℃における上降伏点荷重が10.0N/10mm以上45.0N/10mm以下である基材フィルムと、20℃における損失正接が0.20以上1.5以下である粘着剤層とを含むことが好ましく、20℃における上降伏点荷重が13.7N/10mm以上30.0N/10mm以下である基材フィルムと、20℃における損失正接が0.30以上1.2以下である粘着剤層とを含むことがより好ましく、20℃における上降伏点荷重が15.0N/10mm以上20.0N/10mm以下である基材フィルムと、20℃における損失正接が0.50以上1.1以下である粘着剤層とを含むことがさらに好ましい。
【0121】
加飾フィルムの厚みは、基材フィルムの厚みと粘着剤層の厚みとの合計で表される。加飾フィルムの厚みは、好ましくは100μm以上300μm以下であり、より好ましくは150μm以上250μm以下であり、さらに好ましくは180μm以上220μm以下である。
【0122】
〔加飾フィルムの製造方法〕
本発明の加飾フィルムは、上述の方法により基材フィルムに粘着剤層を形成することにより製造できる。基材フィルムが表面保護層と着色層とを含む場合、粘着剤層は基材フィルムの着色層側に形成される。
【0123】
〔具体的な一態様〕
本発明の一実施形態に係る加飾フィルムの層構成を図1に模式的に示す。加飾フィルム10は、離型シート20における離型性の表面上に配置されている。加飾フィルム10は、表面保護層11、第2の粘着剤層12、着色層13および第1の粘着剤層14が、離型シート20とは反対側(図中の上)からこの順で重なって構成されている。
【0124】
表面保護層11は、例えば、ポリカーボネート系ウレタン樹脂およびポリカプロラクトン系ウレタン樹脂の両ウレタン樹脂を含有する樹脂組成物(ウレタン樹脂)で構成されている。
【0125】
第2の粘着剤層12は、例えば、アクリル系粘着剤から形成されている。
【0126】
第1の粘着剤層14は、本発明の一態様に係る粘着剤組成物から形成されている。
【0127】
着色層13は、例えば、着色剤である顔料が樹脂中に分散してなる層である。当該樹脂は、例えば、硬質(メタ)アクリル系樹脂および軟質(メタ)アクリル系樹脂の両樹脂を含有する樹脂組成物である。
【0128】
また、表面保護層11と着色層13との厚みの合計は、例えば、100μm以上とし得る。このような層の厚みならびに層の材料および物性を調整することにより、加飾フィルム10は、例えば、20℃における上降伏点荷重を10.0N/10mm以上45.0N/10mm以下とし、応力緩和率を51%以上63%以下とし得る。
【0129】
〔用途〕
本実施形態の加飾フィルムは、加飾対象物に貼り付けて当該加飾対象物を装飾する用途で好適に用いられる。本実施形態の加飾フィルムは、耐候性を有するとともに、曲面追従性と貼り施工性とに優れることから、車両の外装部品に接着する車両外装用フィルムに好適に用いられる。
【0130】
本発明の加飾フィルムを貼り付ける被着体としては、ウレタン塗装板、メラミン塗装板、アルミ板、SUS板等が挙げられる。
【実施例0131】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0132】
実施例及び比較例で使用した各材料、並びに得られた基材フィルム及び加飾フィルムの特性を以下のようにして測定した。
【0133】
〔ガラス転移温度(Tg)〕
(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度は、(式1)から算出した。
各単量体単位のガラス転移温度としては、本明細書の「(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)」の項に記載の単量体のガラス転移温度の値を使用した。
【0134】
〔重量平均分子量(Mw)〕
(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、下記の(1)~(3)に従って測定した。
(1)(メタ)アクリル系共重合体の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥してフィルム状の(メタ)アクリル系共重合体を得た。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の(メタ)アクリル系共重合体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得た。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める(メタ)アクリル系共重合体の質量割合を意味する。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量を測定した。
【0135】
(測定条件)
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)〕
カラム:TSK-GEL GMHXL〔東ソー(株)〕を直列に4本接続
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0136】
〔上降伏点荷重〕
表面保護フィルム、着色フィルム、および基材フィルムのそれぞれにおける上降伏点荷重は次のようにして測定した。
幅10mm、長さ150mmの短冊状のサンプルを用意し、テンシロン(登録商標、メーカー:株式会社エーアンドデイ、型式RTG-1310)のチャック間を100mmに設定し、サンプルをチャックに挟み固定した。20℃において引張速度300mm/minの一定速度でサンプルを延伸させ、延伸時の引張荷重を測定し、ネッキングが開始した際(引張荷重のグラフにおいて変曲点が観測された際)の荷重を上降伏点荷重とした。
【0137】
〔応力緩和率〕
基材フィルムの応力緩和率は以下のように測定した。
幅10mm、長さ150mmの短冊状のサンプルを用意し、テンシロン(登録商標、メーカー:株式会社エーアンドデイ、型式RTG-1310)のチャック間を100mmに設定し、サンプルをチャックに挟み固定した。20℃において引張速度300mm/minに設定し、サンプルを5%延伸させ、5%延伸直後の引張荷重x、および5%延伸から5分後の引張荷重yを測定した。そして、下記式から応力緩和率zを算出した。
z[%]={(x-y)/x}×100
【0138】
〔貯蔵弾性率、損失弾性率、損失正接〕
粘着剤層の貯蔵弾性率、損失弾性率及び損失正接は、以下のように動的粘弾性測定を行うことにより求めた。厚み40μmの粘着剤層を300μm以上600μm以下になるまで積層させ、直径10mmの円状に裁断した。動的粘弾性装置(登録商標、メーカー:株式会社アントンパール、型式;MCR301)を用いて、測定温度-15℃~+130℃、周波数1Hz、昇温速度2℃/minの条件で動的粘弾性を測定することにより、貯蔵弾性率、損失弾性率及び損失正接を求めた。
【0139】
〔厚み〕
各層の厚みは、マイクロメータにより測定し、5点の測定値の平均値として算出した。
なお、表面保護フィルム、着色フィルム、および基材フィルムはそれぞれの厚みとして測定し、粘着剤層は、厚みが特定された2枚のフィルムに挟んだ状態の総厚から、2枚のフィルムの厚みを引くことで求めた。
【0140】
〔基材フィルムの作製〕
基材フィルムの作製に使用した材料を以下に示す。
(ウレタン樹脂)
ウレタン樹脂1:レザミン(登録商標)(大日精化株式会社製)
品番 NE-8836(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)
ウレタン樹脂2:NY585-N11A(エフ・シー・アイ株式会社製、ポリカプロラクトン系ポリウレタン樹脂、溶融温度130℃)
(フッ素樹脂)
フッ素樹脂1:デンカDXフィルム(デンカ株式会社製)
品番 14S0230
((メタ)アクリル系樹脂)
(硬質(メタ)アクリル系樹脂)
硬質(メタ)アクリル系樹脂1:カネエース(登録商標)MC-732(株式会社カネカ製、膜厚100μmのときの上降伏点荷重は16.0N/10mm)
硬質(メタ)アクリル系樹脂2:パラペット(登録商標)GR-F1000P(株式会社クラレ製、膜厚100μmのときの上降伏点荷重は27.1N/10mm、ショアA硬度は100)
(軟質(メタ)アクリル系樹脂)
軟質(メタ)アクリル系樹脂1:パラペット(登録商標)SA―F1000P(株式会社クラレ製、膜厚100μmのときの上降伏点荷重は3.9N/10mm、ショアA硬度は70)
(塩化ビニル樹脂)
塩化ビニル樹脂:カネビニール(登録商標)S1001N(株式会社カネカ製、平均重合度1050)
(着色料)
カーボンブラック:W8012-G5(登録商標)カーボンブラック(日弘ビックス株式会社製)
(添加剤)
添加剤1:Tinuvin(登録商標)213(BASFジャパン株式会社製)
添加剤2:Tinuvin(登録商標)243(BASFジャパン株式会社製)
【0141】
<表面保護フィルム(表面保護層)の製造)>
(表面保護フィルム1)
イソプロパノール(IPA)とトルエンとを1:1の質量比で混合した希釈溶媒により、100質量部のウレタン樹脂1を、固形分25質量%となるよう希釈した後、1.2質量部の添加剤1を混合して、表面保護層用組成物1を得た。厚み75μmのポリエステル製剥離フィルムに当該組成物1を流延した後、80℃にて3分間、引き続いて140℃にて3分間の条件で乾燥して、厚み30μmの表面保護フィルム1を作製した。表面保護フィルム1の上降伏点荷重は5.9N/10mmであった。
【0142】
(表面保護フィルム2)
厚み30μmのフィルム状のフッ素樹脂1をそのまま用い、表面保護フィルム2とした。表面保護フィルム2の上降伏点荷重は13.1N/10mmであった。
【0143】
(表面保護フィルム3)
イソプロパノール(IPA)とトルエンとを1:1の質量比で混合した希釈溶媒により、100質量部のウレタン樹脂2を、固形分25質量%となるよう希釈した後、1.2質量部の添加剤1を配合して、表面保護層用組成物2を得た。厚み75μmのポリエステル製剥離フィルムに当該組成物2を流延した後、80℃にて3分間、引き続いて140℃にて3分間の条件で乾燥して、厚み30μmの表面保護フィルム3を作製した。表面保護フィルム3の上降伏点荷重は4.5N/10mmであった。
【0144】
<着色フィルム(着色層)の製造>
(着色フィルム1)
70質量部の硬質(メタ)アクリル系樹脂1、30質量部の軟質(メタ)アクリル系樹脂1、19質量部のカーボンブラック、および0.3質量部の添加剤2をヘンシェルミキサーにて溶融混錬し、180℃に設定したカレンダー成形機により、厚み100μmの着色フィルム1を成形した。着色フィルム1の上降伏点荷重は10.2N/10mmであった。
【0145】
(着色フィルム2)
70質量部の硬質(メタ)アクリル系樹脂1を48質量部の硬質(メタ)アクリル系樹脂2に変更したこと、軟質(メタ)アクリル系樹脂1を52質量部使用したこと以外は、着色フィルム1と同じ条件で、厚み100μmの着色フィルム2を成形した。着色フィルム2の上降伏点荷重は8.3N/10mmであった。
【0146】
(着色フィルム3)
硬質(メタ)アクリル系樹脂2を59質量部、軟質(メタ)アクリル系樹脂1を41質量部に使用したこと以外は、着色フィルム2と同じ条件で、厚み100μmの着色フィルム3を成形した。着色フィルム3の上降伏点荷重は13.2N/10mmであった。
【0147】
(着色フィルム4)
70質量部の硬質(メタ)アクリル系樹脂1、30質量部の軟質(メタ)アクリル系樹脂1に代えて、100質量部の塩化ビニル樹脂を用いたこと以外は着色フィルム1と同様にして着色フィルム4を成形した。着色フィルム4の上降伏点荷重は10.6N/10mmであった。
【0148】
<粘着剤組成物0の調製>
アクリル系樹脂(Tg:-37.4℃、BA/AA=90/10)の溶液にアルミキレートA(川研ファインケミカル株式会社製)を配合し、表面保護フィルムと着色フィルムとを貼り合わせるための粘着剤組成物0を調製した。
【0149】
<基材フィルムの作製>
基材フィルムBF1~7を以下に示すように作製した。
【0150】
(基材フィルムBF1)
剥離フィルム上に作製した表面保護フィルム1の表面に粘着剤組成物0を乾燥後の厚みが30μmになるように塗工し、100℃雰囲気にて1分間の加熱乾燥を行った後、着色フィルム1と貼り合わせることで加飾フィルム用の基材フィルムBF1を作製した。作製した基材フィルムBF1は、表面保護層1、粘着剤層0、着色層1がこの順で重なって積層した積層体である。
【0151】
(基材フィルムBF2)
剥離フィルム上に作製した表面保護フィルム1の表面に、着色フィルム1に代えて着色フィルム2を貼り合わせたこと以外は、基材フィルムBF1と同じ条件で加飾フィルム用の基材フィルムBF2を作製した。作製した基材フィルムBF2は、表面保護層1、粘着剤層0、着色層2がこの順で重なって積層した積層体である。
【0152】
(基材フィルムBF3)
剥離フィルム上に作製した表面保護フィルム1の表面に、着色フィルム1に代えて着色フィルム3を貼り合わせたこと以外は、基材フィルムBF1と同じ条件で加飾フィルム用の基材フィルムBF3を作製した。作製した基材フィルムBF3は、表面保護層1、粘着剤層0、着色層3がこの順で重なって積層した積層体である。
【0153】
(基材フィルムBF4)
イソプロパノール(IPA)とトルエンとを1:1の質量比で混合した希釈溶媒により、100質量部のウレタン樹脂1を、固形分25質量%となるよう希釈した後、1.2質量部の添加剤1を混合して、基材フィルム用組成物10を得た。厚み75μmのポリエステル製剥離フィルムに当該組成物10を流延した後、80℃にて3分間、引き続いて140℃にて3分間の条件で乾燥して、厚み160μmの基材フィルムBF4を作製した。
【0154】
(基材フィルムBF5)
100質量部のウレタン樹脂2と、1.2質量部の添加剤1を配合し、基材フィルム用組成物11を得た。次いで、押出機を用いて160℃、回転数7rpm、負荷30A、ライン速度1.0m/minの条件により、該組成物11から厚み160μmの基材フィルムBF5を作製した。
【0155】
(基材フィルムBF6)
剥離フィルム上に作製した表面保護フィルム2の表面に、着色フィルム1に代えて着色フィルム4を貼り合わせたこと以外は、基材フィルムBF1と同じ条件で加飾フィルム用の基材フィルムBF6を作製した。作製した基材フィルムBF6は、表面保護層2、粘着剤層0、着色層4がこの順で重なって積層した積層体である。
【0156】
(基材フィルムBF7)
剥離フィルム上に作製した表面保護フィルム3の表面に、着色フィルム1に代えて着色フィルム2を貼り合わせたこと以外は、基材フィルムBF1と同じ条件で加飾フィルム用の基材フィルムBF7を作製した。作製した基材フィルムBF7は、表面保護層3、粘着剤層0、着色層2がこの順で重なって積層した積層体である。
【0157】
以下の表1に、基材フィルムの構成、並びに各フィルムの上降伏点荷重、および応力緩和率を示す。
【0158】
【表1】
【0159】
〔粘着剤層の作製〕
<(メタ)アクリル系共重合体の合成>
以下のように、(メタ)アクリル系共重合体(A1)~(A12)、および(メタ)アクリル系共重合体(B1)~(B11)を合成した。
【0160】
各(メタ)アクリル系共重合体の合成は、溶液重合法により行なった。溶媒として酢酸エチルを用い、還流温度条件下において、20質量部のモノマー混合物に対し、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN;重合開始剤〕0.026質量部となるように添加した。続いて120分間かけて80質量部のモノマー混合物に逐次滴下し、滴下終了後に、更に30分間反応させた。その後、固形分濃度が35.0質量%となるように酢酸エチルを用いて希釈し、各(メタ)アクリル系共重合体の溶液を得た。
【0161】
得られた(メタ)アクリル系共重合体(A)および(メタ)アクリル系共重合体(B)における各構成単位の組成、構成単位(a1)の含有率、構成単位(b1)の含有率、TgおよびMwを以下の表2に示す。
【0162】
【表2】
【0163】
表2中、BAはn-ブチルアクリレート、2EHAは2-エチルへキシルアクリレート、MAはメチルアクリレート、AAはアクリル酸を意味する。また、tBMAはtert-ブチルメタクリレート、2EHMAは2-エチルへキシルメタクリレート、MMAはメチルメタクリレート、2HEMAは2-ヒドロキシエチルメタクリレート、EAはエチルアクリレート、DMはジメチルアミノエチルメタクリレート、シリコーンはポリジメチルシロキサンを意味する。
【0164】
<粘着剤組成物の調製>
粘着剤組成物に使用した架橋剤は以下に示す通りである。
(架橋剤)
EP:TETRAD-X(エポキシ系架橋剤、三菱ガス化学株式会社製)
MC:アルミキレートA(金属キレート系架橋剤、川研ファインケミカル株式会社製)
ICN:コロネート(登録商標)L45E(イソシアネート系架橋剤、東ソー株式会社製)
【0165】
(粘着剤組成物AD1)
表2に示す100質量部の(メタ)アクリル系共重合体(A1)に対し、10質量部の(メタ)アクリル系共重合体(B1)、0.1質量部のEP(架橋剤)を添加し、酢酸エチルを希釈溶剤として固形分27質量%となるよう粘着剤組成物AD1を調製した。
(メタ)アクリル系共重合体(A1)は固形分として表2に示す組成の(メタ)アクリル系共重合体を35質量%含有しており、当該固形分を100質量部として、(メタ)アクリル系共重合体(B1)の固形分が10質量部になるように、(メタ)アクリル系共重合体(B1)を配合した。
【0166】
(粘着剤組成物AD2~AD33)
表3および表4に示す組成に沿って、(メタ)アクリル系共重合体(A)に、(メタ)アクリル系共重合体(B)および架橋剤を添加することで、粘着剤組成物AD1と同様に、粘着剤組成物AD2~AD33を調製した。
【0167】
<粘着剤層の作製>
(粘着剤層AD1)
粘着剤組成物AD1を、乾燥後の厚みが40μmになるように、剥離処理が施された剥離フィルム(離型シート)に当該組成物AD1を流延し、100℃雰囲気、1分間の加熱乾燥条件で希釈溶媒を除去した。40℃環境下で1週間養生して、粘着剤組成物AD1からなる粘着剤層AD1を作製した。
【0168】
(粘着剤層AD2~AD33)
表3および表4に示す厚みとなるように、粘着剤層AD1と同様に、粘着剤組成物AD2~AD33を離型シートに流延及び加熱乾燥することにより、各粘着剤層を作製した。
【0169】
〔加飾フィルムの作製〕
<実施例1>
基材フィルムBF1の着色フィルム1側に粘着剤組成物AD1からなる粘着剤層AD1を重ねることで、加飾フィルムを作製した。こうして、表面保護層1、粘着剤層0、着色層1、および粘着剤層AD1がこの順で重なってなる加飾フィルムが得られた。
【0170】
<実施例2~18、及び比較例1~21>
表3および表4に示す、基材フィルムおよび粘着剤層の組合せ、ならびに厚みにて、それぞれ加飾フィルムを作製した。
【0171】
実施例及び比較例で得られた加飾フィルムを以下の方法で評価した。
【0172】
〔接着性評価〕
実施例及び比較例で得られた加飾フィルムの接着性は、接着力の測定及び接着力測定時のジッピング発生の有無により評価した。なお、ジッピングの有無は目視により確認した。
【0173】
(接着力測定)
実施例及び比較例で得られた加飾フィルムを切断し、幅10mm、引張長さ100mmのサンプル片を準備した。次いで、サンプル片の粘着剤層の面を、被着体として準備したウレタン塗装板(金属板にウレタン塗装を施したもの)に貼り付け、2kgのローラーを用い2往復の荷重をかけて、サンプルを当該ウレタン塗装板に貼り付けた。ウレタン塗装板に貼り付けたサンプルを23℃、湿度50%の環境に、貼付け後、1時間および168時間保管した。
1時間および168時間保管後のウレタン塗装板に貼り付けたサンプルについて、テンシロン(登録商標)(株式会社エーアンドデイ製)を使用して剥離速度200mm/min、剥離角度180°、測定温度23℃の条件でサンプルのウレタン塗装板に対する接着力を測定した。
【0174】
加飾フィルムの接着性を以下の基準で評価した。
(接着性の評価基準)
A:ジッピングがなく、かつ168hr後の接着力が6.0N/10mm以上であった。
B:ジッピングがなく、かつ168hr後の接着力が5.0N/10mm以上6.0N/10mm未満であり、1hr後の接着力が4.0N/10mm以上であった。
C:ジッピングがあった、または168hr後の接着力が5.0N/10mm未満であった。
加飾フィルムの接着力、ジッピングの有無、及び接着性の評価結果を表3及び表4に示す。
【0175】
〔浮き評価〕
実施例及び比較例で得られた加飾フィルムの浮き評価を以下のように行った。
まず、図2の(I)に模式的に示すように、浮き評価用の冶具として、高さ6.5mm、幅20.6mmの凸形状を付与したウレタン塗装板100を準備した。ついで、図2の(II)から(III)に示す手順に沿って、ウレタン塗装板100に加飾フィルムのサンプルSを貼り付けた。具体的には、まず、ウレタン塗装板100の凸形状の頂部と、当該凸形状の裾から、10mm離れた箇所に加飾フィルム10(幅10mm)のサンプルSをたるみがないように貼り付けた(図2の(II))。ついで、凸形状の傾斜部から当該凸形状の裾に向かって貼り付けた(図2の(III))。そして、23℃および10℃環境のそれぞれにおいて保管を行い、経時で図2の(IV)に示すような浮きが発生するか目視にて判断し、浮き評価を行った。
(浮きの評価基準)
A:10℃、23℃のそれぞれにおける浮き評価において2週間以上経過した後に、浮きが確認されなかった。
B:10℃において2週間以内に浮きが確認された。
C:23℃において24時間以内に浮きが確認された。
加飾フィルムの浮きの評価結果を表3および表4に併せて示す。
【0176】
〔貼り直し作業性評価〕
実施例及び比較例で得られた加飾フィルムの貼り直し作業性を以下のように評価した。
スキージを用いて自動車外装(ウレタン塗装板)に加飾フィルムを貼り付けた後、剥離角度120°で加飾フィルムを剥がしたときに、当該加飾フィルムの表面にショックラインが発生するか否かを目視評価した。以下に評価基準を示す。
(貼り直し作業性の評価基準)
A:ショックラインの発生なく貼り直し可能であった。
C:加飾フィルムにショックラインが生じた。
貼り剥がし性の評価結果を表3および表4に併せて示す。
【0177】
〔総合評価〕
接着性評価、浮き評価および貼り直し作業性評価の結果を、以下の基準に基づいて点数に換算した。
A 2点
B 1点
C 0点
【0178】
加飾フィルムごとに点数を集計し、加飾フィルムごとの点数に応じて下記の基準で操業評価を行った。総合評価を上記表3および表4に併せて示す。
A 計5点以上
B 計3点以上4点以下
C 計2点以下
【0179】
【表3】
【0180】
【表4】
【0181】
上記表3および表4に示すように、剛性の低い基材フィルムに対して、(メタ)アクリル系共重合体(A)および(B)をブレンドした粘着剤層を使用することによって粘着剤層の保持力が高まり、貼り付け時における加飾フィルムの貼付け面からの浮きが防げたものと考えられる。また、異なる(メタ)アクリル系共重合体(A)および(B)をブレンドしたことにより初期の接着力が抑制され、フィルムを貼り直す際の貼り直し作業が容易になったと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明は、曲面または凹凸面を有してもよい加飾対象物を装飾するための加飾フィルムであり、例えば車両外装用フィルムに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0183】
10 加飾フィルム
11 表面保護層
12 第2の粘着剤層
13 着色層
14 第1の粘着剤層
20 離型シート
図1
図2