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  • 特開-加飾フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146839
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】加飾フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20241004BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20241004BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B32B27/00 E
C09J7/29
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049248
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023059150
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆太
(72)【発明者】
【氏名】福島 萌未
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK25D
4F100AK41A
4F100AK45A
4F100AK51A
4F100AL01A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA13C
4F100CB00B
4F100CB05D
4F100JK02
4F100JK02A
4F100JK02C
4F100JK07
4F100JK08
4F100JK12C
4F100JK13C
4F100JL00A
4F100JL10C
4F100JL13D
4F100JN28
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA01
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004DB02
4J004EA06
4J004FA01
4J040DF011
4J040DF021
4J040FA011
4J040GA01
4J040GA07
4J040HD43
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA16
4J040KA26
4J040KA42
4J040MB01
4J040NA08
4J040NA16
4J040PA23
4J040PB19
(57)【要約】
【課題】耐候性、貼り施工性、および曲面追従性のいずれもが十分に発現される加飾フィルムを提供する。
【解決手段】加飾フィルム(10)は、着色層(13)と表面保護層(11)とを有する。加飾フィルム(10)は、20℃での上降伏点荷重が13.5N/10mm以上25.0N/10mm以下であり、20℃での応力緩和率が53%以上58%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面保護層と着色層とを含む加飾フィルムであって、
前記表面保護層は、ポリウレタン樹脂を含み、
前記着色層は、アクリル系樹脂と、着色剤とを含み、
前記加飾フィルムの20℃における上降伏点荷重が13.5N/10mm以上25.0N/10mm以下であり、
20℃における応力緩和率が53%以上58%以下である加飾フィルム。
【請求項2】
前記アクリル系樹脂は、硬質アクリル樹脂および軟質アクリル樹脂を含む、請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂およびポリカプロラクトン系ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項4】
前記表面保護層の20℃における上降伏点荷重が3.5N/10mm以上9.0N/10mm以下であり、
前記着色層の20℃における上降伏点荷重が7.1N/10mm以上14.1N/10mm以下である、請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項5】
積算光量1200MJ/mの光の照射前後における色差が3.0以下である、請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項6】
積算光量1350MJ/mの光の照射前後における色差が4.0以下である、請求項1に加飾フィルム。
【請求項7】
接着層をさらに含み、前記接着層は、前記表面保護層と前記着色層との間に配置される、請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項8】
粘着剤層をさらに含み、前記粘着剤層は、前記着色層の前記表面保護層とは反対側の面に配置される、請求項1から7のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、SDGsを意識したCO排出量の低減に伴う溶剤使用量の低減、および工期短縮の観点から、自動車の外装の装飾手段として、塗装に代わり装飾フィルムが使用されている。自動車の外装用加飾フィルムの樹脂材料としては、ポリ塩化ビニルがその高い成形性、耐久性、経済性などの理由から多用されている。しかしながら、ポリ塩化ビニルは経年劣化しやすく、耐候性の対策が求められる。
【0003】
このような対策の一つとして、ポリ塩化ビニルの経年劣化を抑えるために、ポリ塩化ビニルの着色層にフッ素樹脂フィルムの表面保護層を併用する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、上記の対策の一つとして、ポリ塩化ビニルの代わりに柔軟で耐候性に優れるポリウレタンを用いる自動車の外装用加飾フィルムも使用されている。このような加飾フィルムとしては、例えば、ウレタン樹脂からなる表面保護層を有する自動車外装用の装飾層形成フィルムが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-214434号公報
【特許文献2】特開2007-297569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリ塩化ビニルフィルムとフッ素樹脂フィルムとを重ねた加飾フィルムでは、ポリ塩化ビニルの耐候性が大きく改善される反面、フッ素樹脂フィルムが硬いフィルムであるため、加飾フィルム全体も硬いフィルムとなる。したがって、自動車のような曲面を有する被着体面に加飾フィルムを貼り付けると、経時で加飾フィルムが剥がれて浮いてしまうことがある。
【0006】
また、ポリウレタンの表面保護層を有する加飾フィルムでは、ポリウレタンが柔軟であるため、自動車の外表面に貼り付ける際にフィルムが弛んでシワが入りやすい。このように当該加飾フィルムは、貼り施工性に改善の余地がある。
【0007】
このように、従来の自動車の外装用の加飾フィルムでは、耐候性、曲部における浮き難さ、および貼り施工性を同時に満たすことは困難である。
【0008】
上記実情に鑑み、本発明の一態様は、耐候性、貼り施工性、および曲面追従性のいずれもが十分に発現される加飾フィルムを提供することを目的とする。なお、本明細書中、「曲面追従性」とは、凹凸部等の曲部に貼り付けた加飾フィルムが浮き難い性質をいう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る加飾フィルムは、表面保護層と着色層とが積層されてなる加飾フィルムであって、前記表面保護層は、ポリウレタン樹脂を含み、前記着色層は、アクリル系樹脂と着色剤とを含み、前記加飾フィルムの20℃における上降伏点荷重が13.5N/10mm以上25.0N/10mm以下であり、20℃における応力緩和率が53%以上58%以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、耐候性、貼り施工性、および曲面追従性のいずれもが十分に発現される加飾フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る加飾フィルムの層構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、耐候性を有する加飾フィルムが特定の上降伏点荷重および応力緩和率を有することにより前述の課題を解決し得ることを見出した。本発明の一実施形態に係る加飾フィルムは、着色層とそれに重なる表面保護層とを有する。着色層および表面保護層については後に詳述する。
【0013】
〔上降伏点荷重〕
本実施形態の加飾フィルムの20℃における上降伏点荷重は、13.5N/10mm以上25.0N/10mm以下である。
【0014】
加飾フィルムの上降伏点荷重は、加飾フィルムに荷重をかけたときの加飾フィルムの変形が弾性変形から塑性変形に変化する境界の荷重である。当該上降伏点荷重の測定時における加飾フィルムの温度は20℃である。
【0015】
なお、本明細書において、特に言及がない限り、加飾フィルムの上降伏点荷重は、表面保護層と着色層との積層構造(以下、基材フィルムともいう)の上降伏点荷重を意味する。例えば、加飾フィルムが後述する接着層をさらに有する場合には、加飾フィルムの上降伏点荷重は、表面保護層、接着層および着色層がこの順で重なってなる積層体(同様に基材フィルムという)の上降伏点荷重である。また、加飾フィルムが後述の粘着剤層をさらに有する場合では、加飾フィルムの上降伏点荷重は、粘着剤層を含まない積層体の上降伏点荷重である。
【0016】
加飾フィルムの上降伏点荷重が、所定値以上であると、貼り施工時におけるシワの発生を抑制しやすくなる傾向があり、所定値以下であると、貼り施工後における浮きの発生を抑制しやすくなる傾向がある。
加飾フィルムの上降伏点荷重の下限値は、貼り施工性を高める観点から、13.5N/10mm以上であり、13.7N/10mm以上が好ましく、14.1N/10mm以上がより好ましく、14.5N/10mm以上がさらに好ましく、15.0N/10mm以上、16.0N/10mm以上、または17.0N/10mm以上がさらにより好ましい。また、加飾フィルムの上降伏点荷重の上限値は、曲面追従性を高める観点から、25.0N/10mm以下であり、20.9N/10mm以下が好ましく、20.5N/10mm以下がより好ましく、20.0N/10mm以下、19.0N/10mm以下、または18.0N/10mm以下がさらに好ましい。
【0017】
上記の上降伏点荷重は、基材フィルムから作製される10mm幅の試料を用いて、テンシロン万能試験機などの公知の測定装置で測定することによって求めることが可能である。上降伏点荷重は、引張試験にて観察される試料の上降伏点における荷重であり、幅10mmの試料を用いて測定する荷重であることから、その単位は「N/10mm」と表記される。
なお、加飾フィルムの上降伏点荷重は、着色層および表面保護層のそれぞれの上降伏点荷重または材料樹脂および厚みによって調整され得る。
【0018】
表面保護層の20℃における上降伏点荷重が、所定値以上であると、加飾フィルムの貼り付け時におけるシワの発生をより抑制しやすい傾向があり、所定値以下であると、貼り施工後における浮きの発生をより抑制しやすくなる傾向がある。
表面保護層の上降伏点荷重の下限値は、貼り施工性を高める観点から、3.5N/10mm以上が好ましく、4.0N/10mm以上がより好ましく、4.5N/10mm以上、または5.0N/10mm以上がさらに好ましい。また、表面保護層の上降伏点荷重の上限値は、曲面追従性を高める観点から、9.0N/10mm以下が好ましく、7.5N/10mm以下がより好ましく、6.5N/10mm以下、6.0N/10mm以下、または5.9N/10mm以下がさらに好ましい。
なお、表面保護層の上降伏点荷重は、比較的柔軟なポリウレタン樹脂材料を単独で用いてもよく、2種以上を併用することによって調整してもよい。
【0019】
着色層の20℃における上降伏点荷重が、所定値以上であると、加飾フィルムの貼り付け時におけるシワの発生をより抑制しやすい傾向があり、所定値以下であると、貼り施工後における浮きの発生をより抑制しやすくなる傾向がある。
着色層の上降伏点荷重の下限値は、貼り施工性を高める観点から、7.1N/10mm以上が好ましく、7.7N/10mm以上がより好ましく、8.0N/10mm以上、8.3N/10mm以上、または9.5N/10mm以上がさらに好ましい。また、着色層の上降伏点荷重の上限値は、曲面追従性を高める観点から、14.1N/10mm以下が好ましく、13.7N/10mm以下がより好ましく、13.2N/10mm以下、または12.0N/10mm以下がさらに好ましい。
なお、着色層の上降伏点荷重は、例えば上降伏点荷重が異なる2種以上のアクリル系樹脂を適当な量比で併用することによって調整できる。
【0020】
加飾フィルムは、表面保護層の上降伏点荷重に対する着色層の上降伏点荷重の比が、例えば1以上3以下であってよい。当該比の下限値は、好ましくは1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、または1.6以上であってよい。また、当該比の上限値は、好ましくは2.8以下、2.6以下、2.4以下、2.3以下、2.2以下、2以下、または1.8以下であってよい。
【0021】
〔応力緩和率〕
本実施形態の加飾フィルムは、20℃における応力緩和率が53%以上58%以下である。加飾フィルムの応力緩和率は、加飾フィルムを5%延伸させる(105%の長さにする)引張荷重を5分間かけたときの引張前後における引張荷重の変化の割合である。当該応力緩和率の測定時における加飾フィルムの温度は20℃である。加飾フィルムの応力緩和率は、5%延伸直後の引張荷重をx、5%延伸から5分後の引張荷重をyとしたときに、下記式から求められる。
応力緩和率z[%]={(x-y)/x}×100
【0022】
本明細書において、特に言及がない限り、加飾フィルムの応力緩和率は、表面保護層と着色層との積層構造(基材フィルム)の応力緩和率を意味する。例えば、加飾フィルムが後述する接着層をさらに有する場合には、加飾フィルムの応力緩和率は、表面保護層、接着層および着色層がこの順で重なってなる積層体(基材フィルム)の応力緩和率である。また、加飾フィルムが後述の粘着剤層をさらに有する場合では、加飾フィルムの応力緩和率は、粘着剤層を含まない積層体の応力緩和率である。
【0023】
加飾フィルムの応力緩和率は、所定値以上であると加飾フィルムの貼り付け時におけるシワの発生をより抑制しやすい傾向があり、所定値以下であると貼り施工後における浮きの発生をより抑制しやすくなる傾向がある。
加飾フィルムの応力緩和率の下限値は、貼り施工性を高める観点から、53%以上であり、55%以上が好ましく、56%以上がさらに好ましい。また、加飾フィルムの応力緩和率の上限値は、曲面追従性を高める観点から、58%以下であり、57%以下が好ましい。
【0024】
加飾フィルムの応力緩和率は、テンシロン万能試験機などの公知の測定装置で引張荷重を測定することによって求めることが可能である。また、加飾フィルムの応力緩和率は、着色層および表面保護層のそれぞれの材料樹脂または両層の厚みによって調整され得る。
【0025】
〔耐候性〕
本実施形態の加飾フィルムは、耐候性を有する。当該耐候性は、様々な形式で表現することが可能であり、本明細書においては色(L色空間におけるL値、a値及びb値で特定される色)の安定性で評価する。
本実施形態の加飾フィルムにおいては、積算光量1200MJ/mの光の照射前後における色差が3.0以下であってよく、1.5以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。あるいは、本実施形態の加飾フィルムにおいては、積算光量1350MJ/mの光の照射前後における色差は4.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.4以下がさらに好ましい。なお、これらの色差は同程度の耐候性を示す。
加飾フィルムの色差ΔEは、L表色系において、明度をL、L色空間におけるマゼンタと緑との間の位置をa(負の値は緑寄りで正の値はマゼンタ寄り)、L色空間における黄色と青との間の位置をbとしたときに、照射前後の明度の差ΔL、照射前後のaの差Δaおよび照射前後のbの差Δbを用いて、下記式から求められる。
色差ΔE={(ΔL+(Δa+(Δb1/2
【0026】
加飾フィルムの色差は、色彩色差計などの公知の測定装置を用いて測定することが可能である。加飾フィルムの色差は、十分な耐候性を有する樹脂材料を用いること、換言すれば、アクリル樹脂およびウレタン樹脂の少なくともいずれかに十分な耐侯性を有する樹脂材料を用いることによって調整され得る。また、耐候性の試験には、加飾フィルムの使用環境に応じた促進試験を伴ってよい。
【0027】
〔厚み〕
本実施形態の加飾フィルムにおいて、表面保護層の厚みと着色層の厚みとの合計は、加飾フィルムの用途に応じて適宜に決定し得る。例えば表面保護層の厚みと着色層の厚みとの合計は、所定値以上であると貼り施工性および曲面追従性が十分に達成できる傾向があり、所定値以下であると、曲面追従性が十分に達成できる傾向がる。
表面保護層の厚みと着色層の厚みとの合計の下限値は、貼り施工性、および曲面追従性の少なくともいずれかの調整の観点から、80μm以上が好ましく、90μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましく、120μm以上がさらにより好ましい。また、表面保護層の厚みと着色層の厚みとの合計の上限値は、曲面追従性を十分に発現させる観点から、200μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましく、170μm以下、または140μm以下がさらに好ましい。
【0028】
加飾フィルムが表面保護層と着色層の間に接着層を有する場合、それらの厚みの合計である基材フィルムの厚みの下限値は、貼り施工性、および曲面追従性の少なくともいずれかの調整の観点から、例えば100μm以上であってよく、120μm以上が好ましく、140μm以上がより好ましく、150μm以上、または160μm以上がさらに好ましい。
【0029】
一方で、基材フィルムの厚みの上限値は、曲面追従性を十分に発現させる観点から、220μm以下であってよく、200μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましく、170μm以下がさらに好ましい。
【0030】
表面保護層の厚みの下限値は、着色層を十分な厚みをもって保護する観点から、例えば15μm以上であってよく、20μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。表面保護層の厚みの上限値は、上記の観点から適宜に決めることができ、例えば60μm以下であってよく、50μm以下が好ましく、40μm以下、または35μm以下がより好ましい。
【0031】
また、着色層の厚みの下限値は、例えば60μm以上であってよく、70μm以上が好ましく、90μm以上がより好ましい。着色層の厚みの上限値は、例えば150μm以下であってよく、130μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましく、110μm以下がさらに好ましい。
【0032】
加飾フィルムは、着色層の厚みに対する表面保護層の厚みの比が、例えば0.10以上1.00以下であってよい。当該比の下限値は、好ましくは0.15以上、0.20以上、または0.25以上であってよい。また、当該比の上限値は、好ましくは0.80以下、0.60以下、0.50以下、または0.40以下であってよい。
【0033】
〔着色層〕
着色層は、アクリル系樹脂で構成されており、かつ着色剤を含有する。例えば着色層は、アクリル系樹脂のマトリックス樹脂中に着色剤が分散してなる層であってよい。
【0034】
[アクリル系樹脂]
アクリル系樹脂は、加飾フィルムまたは着色層として後述する物性を満足する範囲において公知の樹脂から適宜に選択し得る。アクリル系樹脂は、それ単独で加飾フィルムに十分な耐候性を発現させる樹脂材料であってもよいし、ポリウレタン樹脂との併用(積層構造)によって加飾フィルムに十分な耐候性を発現させる樹脂材料であってもよい。アクリル系樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アクリル系樹脂は、加飾フィルムに要請される機械的強度を達成する観点からも好ましい。
なお、「アクリル系樹脂」とは、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂の総称をいう。
【0035】
アクリル系樹脂は、着色層の20℃における上降伏点荷重を少なくとも、7.1N/10mm以上、14.1N/10mm以下に設計できる樹脂が好ましい。アクリル系樹脂は、加飾フィルムの上降伏点荷重と応力緩和率とに影響する樹脂材料の一つである。アクリル系樹脂は、上降伏点荷重が所定の要件を満たす1種類の樹脂であってもよいし、硬さが互いに異なる2種類以上の樹脂を併用してもよい。硬さが互いに異なる2種類以上の樹脂を併用する場合、比較的硬さが大きい樹脂としては、例えば、溶融押出しにて成形されるフィルム、シート等に用いられるアクリル系樹脂が挙げられる。また、硬さが互いに異なる2種類以上の樹脂を併用する場合、比較的硬さが小さい樹脂としては、例えば、流動性調整用のアクリル系樹脂、及び軟質材料用のアクリル系樹脂が挙げられる。
【0036】
アクリル系樹脂は、加飾フィルムに要請される機械的強度を達成しつつ、前述の物性を実現する観点から、硬質アクリル樹脂および軟質アクリル樹脂を含むことが好ましい。
【0037】
本明細書中、硬質アクリル樹脂とは、アクリル系樹脂のうち、厚み100μmで幅10mmのシート材としたときの20℃での上降伏点荷重が10.0N/10mm以上であるアクリル系樹脂をいう。当該上降伏点荷重は、テンシロン万能試験機などの公知の測定装置で測定することが可能である。
【0038】
硬質アクリル樹脂は、上記上降伏点荷重が、所定値以上であると加飾フィルムの施工性(施工時のシワの発生の抑制)がより向上することがあり、所定値以下であると加飾フィルムの曲面追従性がより向上することがある。
本明細書中、硬質アクリル樹脂の上降伏点荷重の下限値は、加飾フィルムの施工性をより高める観点から、10.0N/10mm以上であってよく、15.0N/10mm以上が好ましく、16.0N/10mm以上、または25.0N/10mm以上がより好ましい。また、本明細書中、硬質アクリル樹脂の上降伏点荷重の上限値は、加飾フィルムの曲面追従性をより高める観点から、35.0N/10mm以下であってよく、30.0N/10mm以下が好ましく、28.0N/10mm以下がより好ましい。
【0039】
硬質アクリル樹脂は、アクリル系樹脂を構成し得る公知のモノマーのラジカル重合によって調製され得る。硬質アクリル樹脂の例としては、ポリメチルメタクリレート、およびメチルメタクリレート-スチレン共重合体等が挙げられる。
【0040】
また、硬質アクリル樹脂は、アクリル系樹脂のうち、ショアA硬度が90より大きい樹脂であり得る。「ショアA硬度」とは、例えば、株式会社テクロック製のデュロメーターGS-706Nを用いて測定され、荷重1KgでタイプAのセンサを測定対象の表面に垂直に押し当てた際の最大値である。
【0041】
硬質アクリル樹脂としては、例えば、ショアA硬度が90より大きいアクリル系樹脂を一先ずの基準として選択し、選択したアクリル系樹脂のうち、そのシート材である成形体の上降伏点荷重が10.0N/10mm以上になる樹脂を選択することが好ましい。硬質アクリル樹脂は、市販品であってもよく、その例として、パラペット(登録商標)GR-F1000P((株)クラレ)、カネエース(登録商標)MC-732((株)カネカ)、ダイヤナールLP-3202、同3207、同3130、同3121(以上、三菱ケミカル(株))、およびデルペット(旭化成(株))が挙げられる。
【0042】
本明細書中、軟質アクリル樹脂とは、アクリル系樹脂のうち、上記のサイズのシート材としたときの20℃での上降伏点荷重が10.0N/10mm未満であるアクリル系樹脂をいう。軟質アクリル樹脂は、当該上降伏点荷重が、所定値以上であると加飾フィルムの施工性(施工時のシワの発生の抑制)がより向上する傾向があり、所定値以下であると加飾フィルムの曲面追従性がより向上する傾向がある。
軟質アクリル樹脂の上降伏点荷重の下限値は、加飾フィルムの施工性をより高める観点から、2.0N/10mm以上であってよく、3.0N/10mm以上が好ましく、3.5N/10mm以上がより好ましい。また、軟質アクリル樹脂の上降伏点荷重の上限値は、加飾フィルムの曲面追従性をより高める観点から、10.0N/10mm未満であってよく、7.0N/10mm以下が好ましく、5.0N/10mm以下、または4.5N/10mm以下がより好ましい。
【0043】
軟質アクリル樹脂は、アクリル系樹脂のうち、ショアA硬度が70以上90以下の樹脂であり得る。軟質アクリル樹脂としては、例えば、ショアA硬度が70以上90以下であるアクリル系樹脂を一先ずの基準として選択し、選択したアクリル系樹脂のうち、その所定のシート材である成形体の上降伏点荷重が10.0N/10mm未満になる樹脂を選択することが好ましい。軟質アクリル樹脂は、市販品であってもよく、その例として、パラペット(登録商標)SA-F1000P((株)クラレ)が挙げられる。
【0044】
アクリル系樹脂として硬質アクリル樹脂と軟質アクリル樹脂を混合して用いる場合、硬質アクリル樹脂に対する軟質アクリル樹脂の質量基準の混合比は、例えば0.4以上1.4以下であってよい。混合比の下限値は、好ましくは0.6以上、または0.9以上であってよい。また、混合比の上限値は、好ましくは1.2以下、または1.1以下であってよい。
【0045】
硬質アクリル樹脂および軟質アクリル樹脂の少なくともいずれかは、ゴム弾性を有するコア粒子をアクリル樹脂が被覆するコアシェル粒子を含む樹脂組成物から形成されてもよい。ゴム弾性を有するコア粒子をアクリル樹脂が被覆するコアシェル粒子は、コア粒子と、アクリル酸エステルと、必要に応じて含まれるこれと共重合可能な多官能性単量体および他の単官能性単量体とを含む単量体混合物の重合によって形成され得る。硬質アクリル樹脂および軟質アクリル樹脂の少なくともいずれかは、熱可塑性エラストマーであり得る。
【0046】
アクリル酸エステルの例としては、アクリル酸と炭素数1から18の飽和脂肪族アルコールとのエステル;アクリル酸と炭素数5または6の脂環式アルコールとのエステル;およびアクリル酸とフェノール類または芳香族アルコールとのエステルが挙げられる。
より具体的には、アクリル酸エステルの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、およびベンジルアクリレートが挙げられる。
【0047】
多官能性単量体の例としては、不飽和モノカルボン酸と不飽和アルコールとのエステル;不飽和モノカルボン酸とグリコールとのジエステル;芳香族ジビニル系単量体;ジカルボン酸と不飽和アルコールとのジエステル;および共役ジエン系単量体が挙げられる。
不飽和モノカルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、および桂皮酸が挙げられる。不飽和アルコールの例としては、アリルアルコール、およびメタリルアルコールが挙げられる。グリコールの例としては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、およびヘキサンジオールが挙げられる。ジカルボン酸の例としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、およびマレイン酸が挙げられる。
共役ジエン系単量体の例としては、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、2-メチル-3-エチルブタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2-メチル-1,3-ヘキサジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、3-メチル-1,3-ヘプタジエン、1,3-オクタジエン、シクロペンタジエン、クロロプレン、およびミルセンが挙げられる。
より具体的には、上記多官能性単量体の例には、アクリル酸アリル、アクリル酸メタリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸メタリル、桂皮酸アリル、桂皮酸メタリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、およびヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称をいい、それらの一方または両方を表す。
【0048】
他の単官能性単量体の例としては、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル系単量体、およびシアン化ビニル系単量体が挙げられる。
【0049】
メタクリル酸エステルの例としては、メタクリル酸と炭素数1から22の飽和脂肪族アルコール;メタクリル酸と炭素数5または6の脂環式アルコール;およびメタクリル酸とフェノール類または芳香族アルコールとのエステルが挙げられる。
より具体的には、メタクリル酸エステルの例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、およびベンジルメタクリレートが挙げられる。
【0050】
芳香族ビニル系単量体の例としては、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、およびハロゲン化スチレンが挙げられる。
【0051】
シアン化ビニル系単量体の例としては、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルが挙げられる。
【0052】
[着色剤]
着色剤は、樹脂フィルム印刷用の塗料に用いられる公知の顔料および染料であってよい。着色剤は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。着色剤は、加飾フィルムにおいて発現させるべき所望の色に応じた量で用いられる。
白色系の着色剤の例としては、酸化チタン、および硫酸バリウムが挙げられる。
黒色系の着色剤の例としては、鉄黒、カーボンブラック、およびアニリンブラックが挙げられる。
黄色系の着色剤の例としては、カドミウムイエロー、およびオイルイエロー2Gが挙げられる。
橙色系の着色剤の例としては、クロムバーミリオン、およびカドミウムオレンジが挙げられる。
赤色系の着色剤の例としては、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、およびオイルレッドが挙げられる。
紫色系の着色剤の例としては、コバルトバイオレッド、およびアンスラキノンバイロレットが挙げられる。
青色系の着色剤の例としては、群青、紺青、およびコバルトブルーが挙げられる。
緑色系の着色剤の例としては、フタロシアニングリーン、およびクロムグリーンが挙げられる。
【0053】
着色層における着色剤の含有量は、アクリル樹脂100質量部に対して、例えば10質量部以上30質量部以下であってよく、好ましくは15質量部以上、または25質量部以下であってよい。
【0054】
〔表面保護層〕
表面保護層は、着色層に重なる層であり、ポリウレタン樹脂を含んで構成される。ポリウレタン樹脂は、表面保護層の20℃における上降伏点荷重を、3.5N/10mm以上、9.0N/10mm以下に設計できる樹脂が好ましい。ポリウレタン樹脂は、加飾フィルムの上降伏点荷重と応力緩和率とに影響する樹脂材料の一つである。ポリウレタン樹脂またはその材料は、好ましくは、フィルム、シート成形に使用される一液型熱可塑性樹脂、または、溶融成形用の、熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性エラストマーから選択され得る。
【0055】
ポリウレタン樹脂は、それ単独で加飾フィルムに十分な耐候性を発現させる樹脂材料であってもよいし、アクリル系樹脂との併用(積層構造)によって加飾フィルムに十分な耐候性を発現させる樹脂材料であってもよい。ポリウレタン樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
このようなポリウレタン樹脂の例としては、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、およびポリカプロラクトン系ウレタン樹脂が挙げられる。これらのポリウレタン樹脂は、ポリカプロラクトンおよびポリカーボネートなどの主鎖と、ウレタン構造とを有する。ここで、当該ウレタン構造は脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネートに由来するウレタン構造であることが好ましい。ポリウレタン樹脂は、市販品であってよく、その例としては、レザミン(登録商標)NE-8836、同NE-8850、同NE-8811(以上、大日精化工業(株))、ミラクトラン(登録商標)E580、同E585、同E590、同E595、同E598、同E980、同E985、同E990、同E995、同E998、(以上、日本ミラクトラン(株))、NY88A10F、NY993-10HB4、NY585N11A(以上、エフ・シー・アイ(株))、およびクリスボン(登録商標)NY-393、同NY-331、同NY-328FTR(以上、DIC(株))が挙げられる。
【0056】
〔他の成分〕
前述した着色層および表面保護層は、本発明の効果が得られる範囲において、前述した樹脂および着色剤以外の他の成分をさらに含有してもよい。各層における他の成分の含有量は、本発明の効果と当該他の成分による効果との両方が得られる範囲において適宜に設定され得る。
他の成分の例としては、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤および体質顔料が挙げられる。体質顔料の例としては、炭酸カルシウムが挙げられる。
【0057】
紫外線吸収剤および光安定剤は、耐候性向上の観点から好ましい。紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、および超微粒子状の酸化亜鉛、超微粒子状の酸化チタン等が挙げられる。光安定剤の例としては、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
【0058】
なお、前述した着色層および表面保護層は、他の成分を含有することなく本発明の効果を発現し得る。例えば、本実施形態では、柔軟なポリウレタン樹脂と、硬さが異なる2種のアクリル系樹脂とを用いることにより、可塑剤を含有しなくても、前述した所望の上降伏点荷重および応力緩和率を達成させることが可能である。このように、本実施形態の加飾フィルムが上降伏点荷重および応力緩和率を調整するための他の成分(可塑剤など)を含有しない態様は、好ましい一態様である。
【0059】
なお、「上降伏点荷重および応力緩和率を調整するための他の成分」は、本発明の構成を満たす範囲において、上降伏点荷重および応力緩和率に影響を及ぼす量で用いてもよい。紫外線吸収剤および光安定剤などのように、所期の機能を発現するが、上降伏点荷重および応力緩和率に実質的な影響を及ぼさない成分は、「上降伏点荷重および応力緩和率を調整するための他の成分」には該当しない。着色層および表面保護層が可塑剤を含有しない態様は、可塑剤のブリードアウトを抑制する観点から、好ましい一態様である。
【0060】
〔他の層〕
本実施形態の加飾フィルムは、本発明の効果が得られる範囲において、前述した着色層および表面保護層以外の他の層をさらに有していてもよい。このような他の層の例としては、接着層および粘着剤層が挙げられる。
【0061】
本実施形態の加飾フィルムは、着色層と表面保護層との間に介在して両層を互いに接着させる接着層をさらに有していてもよい。すなわち、接着層は表面保護層と着色層との間に配置される。また、本実施形態の加飾フィルムは、着色層の表面保護層とは反対側に粘着剤層をさらに有していてもよい。接着層および粘着剤層のそれぞれの厚みは、粘着剤の種類および接着対象に応じて、例えば3μmから70μmの範囲、好ましくは10μmから50μmの範囲、より好ましくは20μmから45μmの範囲、さらに好ましくは25μmから40μmの範囲から適宜に設定してよい。
【0062】
接着層は、例えば第一の粘着剤で構成される。粘着剤層は、加飾フィルムを加飾対象物に貼り付けるための粘着層であり、例えば第二の粘着剤で構成される。第一の粘着剤および第二の粘着剤には、いずれも、ゴム系、アクリル系、シリコーン系およびポリビニルエーテル系などの公知の各種粘着剤を適用可能である。第一の粘着剤および第二の粘着剤は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。第一の粘着剤および第二の粘着剤は、例えばアクリル系粘着剤であってよい。
【0063】
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体または共重合性コモノマーとの共重合体で構成され得る。
【0064】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル;および(メタ)アクリル酸グリシジルエステルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸の「アルキルエステル」の例としては、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、オクチルエステル、およびイソノニルエステルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸の「ヒドロキシアルキルエステル」の例としては、ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシブチルエステル、およびヒドロキシヘキシルエステルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステルの例としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、およびt-ブチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。
【0065】
また、共重合性コモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸N-ヒドロキシメチルアミド、酢酸ビニル、スチレン、およびアクリロニトリルが挙げられる。
【0066】
上記の粘着剤は、必要に応じて架橋剤、粘着付与剤、充填剤、老化防止剤および着色剤などの添加剤をさらに含有していてもよい。
【0067】
架橋剤の例としては、イソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミン、エポキシ化合物、および金属キレート化合物が挙げられる。
【0068】
上記の粘着剤は、重合開始剤をさらに含有する紫外線硬化型粘着剤組成物であってもよい。紫外線硬化型粘着剤組成物は、必要に応じて紫外線硬化成分をさらに含有してもよい。
【0069】
重合開始剤としては、例えば重合反応のきっかけとなり得る適当な波長の紫外線によって開裂してラジカルを生成する物質であってもよい。重合開始剤の例としては、ベンゾインアルキルエーテル類;芳香族ケトン類;芳香族ケタール類;およびチオキサントン類が挙げられる。
ベンゾインアルキルエーテル類の例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾインイソブチルエーテルが挙げられる。
芳香族ケトン類の例としては、ベンジル、ベンゾフェノン、およびα-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。
芳香族ケタール類の例としては、ベンジルジメチルケタールが挙げられる。
チオキサントン類の例としては、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、およびジエチルチオキサントンが挙げられる。
【0070】
紫外線硬化成分は、上記のアクリル系のポリマーの側鎖に炭素-炭素二重結合を付加させる成分である。当該ポリマーが側鎖に炭素-炭素二重結合を有する紫外線硬化型ポリマーである場合には、粘着剤は当該紫外線硬化成分を含有していなくてもよい。
紫外線硬化成分の例としては、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル、およびイソシアヌレート化合物が挙げられる。
【0071】
(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステルの例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0072】
イソシアヌレート化合物の例としては、2-ヒドロキシエチルビス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、およびトリス(2-メタクリロキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0073】
[具体的な一態様]
本発明の一実施形態に係る加飾フィルムの層構成を図1に模式的に示す。加飾フィルム10は、離型シート20における離型面上に配置されている。より具体的には、加飾フィルム10は、表面保護層11、接着層12、着色層13、および粘着剤層14が、離型シート20における離型面上に、粘着剤層14から順に重なって構成されている。
【0074】
表面保護層11は、例えばポリカーボネート系ウレタン樹脂およびポリカプロラクトン系ウレタン樹脂の少なくともいずれかと、紫外線吸収剤と、を含有する樹脂組成物(ポリウレタン樹脂)で構成されてもよい。
【0075】
接着層12および粘着剤層14は、いずれもアクリル系粘着剤の層であってもよい。
【0076】
着色層13は、着色剤である顔料等がマトリックス樹脂中に分散してなる層とし得る。当該マトリックス樹脂としては、例えば硬質アクリル樹脂および軟質アクリル樹脂の少なくともいずれかの樹脂を含有する樹脂組成物(アクリル系樹脂)とし得る。
【0077】
加飾フィルム10は、十分な耐候性を有しており、例えば、照射強度75mW/cmの光を積算光量1200MJ/mで照射した前後における色差が3.0以下となる耐候性を有していることが好ましく、積算光量1350MJ/mで照射した前後における色差が4.0以下となる耐候性を有していることがより好ましい。
【0078】
また、表面保護層11と着色層13との厚みの合計は、80μm以上となっていることが好ましい。表面保護層11と着色層13との厚みの合計と、各層の材料および物性と、を適宜設定することにより、加飾フィルム10の20℃における上降伏点荷重を13.5N/10mm以上25.0N/10mm以下とし、20℃における応力緩和率を53%以上58%以下とし得る。
【0079】
[製造方法]
本実施形態の加飾フィルムは、表面保護層および着色層をこの順で重ねて配置可能な方法によって製造することができる。
【0080】
例えば、本実施形態の加飾フィルムは、着色層を準備する工程と、表面保護層を準備する工程と、着色層に表面保護層を貼り付ける工程と、を含む方法によって製造することが可能である。
【0081】
着色層を準備する工程は、アクリル系樹脂と着色剤とを混合し、得られた混合物のフィルムを成形する工程であってもよい。また、表面保護層を準備する工程は、ポリウレタン樹脂の層を製造する工程であってもよいし、着色層の一方の表面に表面保護層の材料を塗布して塗膜を形成した後、固化または硬化させる工程であってもよい。
【0082】
着色層に表面保護層を貼り付ける工程は、例えば着色層と表面保護層とを熱融着などによって直接接合する工程であってもよい。また、着色層に表面保護層を貼り付ける工程は、予め準備した着色層または表面保護層の一方の表面に他方の層の材料を層状に供給して一方の層上に他方の層を接合させて形成する工程であってもよい。さらに、着色層に表面保護層を貼り付ける工程は、第一の粘着剤を着色層の一方の表面に塗布して得られた接着層に表面保護層を貼り合わせる工程であってもよい。接着層を介して着色層と表面保護層とを貼り合わせることは、両層の材料設計の自由度を高める観点から有利である。
【0083】
また、加飾フィルムの製造では、前述した工程以外の他の工程をさらに含んでもよい。このような他の工程としては、例えば、離型シートに第二の粘着剤を塗布して得られた塗膜に着色層を貼り合わせる工程であってもよい。加飾フィルムが粘着剤層を有することは、離型シートを剥がすことで加飾フィルムを加飾対象物に貼り付けることが可能となることから、加飾フィルムの利便性を高める観点から有利である。
【0084】
〔用途〕
本実施形態の加飾フィルムは、加飾対象物に貼り付けて当該加飾対象物を装飾する用途で好適に用いられる。本実施形態の加飾フィルムは耐候性を有するとともに、曲面追従性と貼り施工性とに優れることから、車両の外装部品に接着する車両外装用フィルムに好適に用いられる。
【0085】
〔まとめ〕
以上の説明から明らかなように、本発明の第一の態様の加飾フィルム(10)は、アクリル系樹脂で構成されており、かつ着色剤を含有する着色層(13)と、ポリウレタン樹脂で構成されており、かつ着色層に重なる表面保護層(11)と、を有し、耐候性を有する加飾フィルムである。本発明の第一の態様の加飾フィルムは、20℃における上降伏点荷重が13.5N/10mm以上25.0N/10mm以下であり、20℃における応力緩和率が53%以上58%以下である。第一の態様によれば、耐候性、貼り施工性(例えば、曲面へ貼り付ける際の貼り施工性)、および曲面追従性のいずれもが十分に発現される加飾フィルムが提供され得る。
【0086】
本発明の第二の態様の加飾フィルムは、第一の態様の加飾フィルムにおいて、表面保護層の20℃における上降伏点荷重が3.5N/10mm以上9.0N/10mm以下であり、着色層の20℃における上降伏点荷重が7.1N/10mm以上14.1N/10mm以下である。第二の態様は、加飾フィルムの貼り施工性および曲面追従性を高める観点からより一層効果的である。
【0087】
本発明の第三の態様の加飾フィルムは、第一の態様または第二の態様において、積算光量1200MJ/mの光の照射前後における色差が3.0以下であるか、あるいは、積算光量1300MJ/mの光の照射前後における色差が4.0以下である。第三の態様は、加飾フィルムの色の安定性を高める観点からより一層効果的である。
【0088】
本発明の第四の態様の加飾フィルムは、第一の態様から第三の態様のいずれかにおいて、表面保護層の厚みと着色層の厚みの合計が80μm以上である。第四の態様は、加飾フィルムの貼り施工性、および曲面追従性の少なくともいずれかを適切に調整する観点からより一層効果的である。
【0089】
本発明の第五の態様の加飾フィルムは、第一の態様から第四の態様のいずれかにおいて、着色層が、硬質アクリル樹脂および軟質アクリル樹脂を含むアクリル系樹脂を含む。第五の態様は、着色層および加飾フィルムの所期の特性を実現させる観点、および、加飾フィルムの耐候性、上降伏点荷重および応力緩和率のいずれをも十分に発現させる観点、から好適である。
【0090】
本発明の第六の態様の加飾フィルムは、第一の態様から第五の態様のいずれかにおいて、表面保護層が、ポリカーボネート系ウレタン樹脂およびポリカプロラクトン系ウレタン樹脂の一方または両方を含むポリウレタン樹脂を含む。第六の態様は、加飾フィルムの耐候性、上降伏点荷重および応力緩和率のいずれをも十分に発現させる観点から好適である。
【0091】
本発明の第七の態様の加飾フィルムは、第一の態様から第六の態様のいずれかにおいて、第一の粘着剤で構成されており、着色層と表面保護層との間に介在して両層を互いに接着させる接着層(12)をさらに有する。すなわち、接着層は表面保護層と着色層との間に配置される。第七の態様は、着色層および表面保護層のそれぞれの樹脂材料の設計の自由度を高める観点からより一層効果的である。
【0092】
本発明の第八の態様の加飾フィルムは、第一の態様から第七の態様のいずれかにおいて、第二の粘着剤で構成されており、着色層の表面保護層とは反対側に重ねられている粘着剤層(14)をさらに有する。すなわち、加飾フィルムが、表面保護層と着色層と粘着剤層とがこの順に積層されてなる。第八の態様は、加飾フィルムの利便性を高める観点からより一層効果的である。
【0093】
本発明の第九の態様の加飾フィルムは、第一の態様から第八の態様のいずれかにおいて、車両の外装部品に接着する車両外装用フィルムである。車両外装用フィルムは、耐候性、曲面追従性および貼り施工性のいずれをも要することから、第九の態様は、そのような車両外装用フィルムの用途として好適である。
【0094】
前記の構成によれば、塗装に比べてより簡易に外装の装飾を実現可能となり、当該装飾におけるCO排出量の低減に寄与することが期待される。このような効果を奏する本発明は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標13「気候変動に具体的な対策を」等の達成に貢献することが期待される。
【0095】
本発明は上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0096】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0097】
〔材料の準備〕
下記材料を準備した。以下において、アクリル樹脂1およびアクリル樹脂3は硬質アクリル樹脂に該当し、アクリル樹脂2は軟質アクリル樹脂に該当する。
[ポリウレタン樹脂]
ポリウレタン樹脂1 レザミン(登録商標)NE-8836(大日精化工業株式会社製、ポリカーボネート系)
ポリウレタン樹脂2 NY88A10F(エフ・シー・アイ株式会社製、ポリエーテル系、溶融温度150℃)
ポリウレタン樹脂3 NY993-10HB4(エフ・シー・アイ株式会社製、ポリカプロラクトン系、溶融温度160℃)
ポリウレタン樹脂4 NY585N11A(エフ・シー・アイ株式会社製、ポリエステル系、溶融温度130℃)
[フッ素樹脂]
フッ素樹脂 デンカDXフィルム(デンカ株式会社製、品番 14S0230)
[アクリル樹脂]
アクリル樹脂1 パラペット(登録商標)GR-F1000P(株式会社クラレ製、膜厚100μmのときの上降伏点荷重は27.1N/10mm、ショアA硬度100)
アクリル樹脂2 パラペット(登録商標)SA-F1000P(株式会社クラレ製、膜厚100μmのときの上降伏点荷重は3.9N/10mm、ショアA硬度70)
アクリル樹脂3 カネエース(登録商標)MC-732(株式会社カネカ製、膜厚100μmのときの上降伏点荷重は16.0N/10mm)
[塩化ビニル樹脂]
塩化ビニル樹脂 カネビニール(登録商標)S1001N(株式会社カネカ製、平均重合度1050)
[粘着剤]
粘着剤 Tg=-37.4℃、BA/AAの組成比が90:10のアクリル樹脂を、アルミキレートA(川研ファインケミカル株式会社製)で架橋させた粘着剤
[添加剤(紫外線吸収剤)]
添加剤1 Tinuvin(登録商標)234(BASFジャパン株式会社製、UVA)
添加剤2 Tinuvin(登録商標)213(BASFジャパン株式会社製、UVA)
【0098】
〔測定方法〕
下記の実施例および比較例における測定方法を説明する。
【0099】
[上降伏点荷重]
幅10mm、長さ150mmの短冊状のサンプルを用意し、TENSILON(登録商標、メーカー:A&D、型式RTG-1310)で引張試験を行った。具体的には、TENSILONのチャック間を100mmに設定し、サンプルをチャックに挟み固定した。20℃において引張速度300mm/minの一定速度でサンプルを延伸させ、延伸時の引張荷重を測定した。フックの弾性限度を超えることでサンプルが非線形で増大し、上降伏点に達し、同時にネッキング現象が起きる。上降伏点における荷重を上降伏点荷重とした。
【0100】
[応力緩和率]
幅10mm、長さ150mmの短冊状のサンプルを用意し、TENSILON(登録商標、メーカー:A&D、型式RTG-1310)を用いて引張試験を行った。より具体的には、TENSILONのチャック間を100mmに設定し、サンプルをチャックに挟み固定した。20℃において引張速度300mm/minでサンプルを5%延伸させ、5%延伸直後の引張荷重x、および5%延伸から5分後の引張荷重yを測定した。そして、下記式から応力緩和率zを求めた。
z[%]={(x-y)/x}×100
【0101】
[耐候性]
ダイプラ・ウィンテス株式会社製のダイプラ・メタルウェザー(型式KW-R7TP-A)を使用して加飾フィルムの耐候性試験Aを行った。加飾フィルムを載置する試料台を傾斜角度15°に設定し、ブラックパネル温度(BPT)を63℃、光の照射強度75mW/cmとし、120分間中2分間シャワーで水を散布して加飾フィルムの表面を水で濡らすサイクルを445時間繰り返した。上記の試験Aの条件における積算光量は1200MJ/mであり、試験Aの条件は、自動車表面での3.0年間の使用期間に相当する。
【0102】
また、ダイプラ・ウィンテス株式会社製のダイプラ・メタルウェザー(型式KW-R7TP-A)を使用して加飾フィルムの耐候性試験Bを行った。加飾フィルムを載置する試料台を傾斜角度15°に設定し、ブラックパネル温度(BPT)を63℃、光の照射強度75mW/cmとし、120分間中2分間シャワーで水を散布して加飾フィルムの表面を水で濡らすサイクルを500時間繰り返した。上記の試験Bおける積算光量は1350MJ/mであり、試験Bの条件の条件は、自動車表面での4.5年間の使用期間に相当する。
【0103】
(1)色差
KONICA MINOLTA製のSPECTRO PHOTO METER CM-3600Aを使用し、耐候性試験前の加飾フィルムのL、a、b値、および耐候性試験後の加飾フィルムのL’、a’、およびb’値を測定し、下記式から色差ΔEを求めた。下記式中、Lは明度、aは赤/マゼンタと緑の間の位置(負の値は緑寄りで正の値はマゼンタ寄り)、bは黄色と青の間の位置(負の値は青寄りで正の値は黄色寄り)を表す。
ΔE={(L’-L+(a’-a+(b’-b1/2
【0104】
(2)光沢
スガ試験機株式会社製のデジタル変角光沢計(型式UGV-5)を使用し、耐候性試験前後の加飾フィルムの60°におけるグロス値の変化を測定した。
【0105】
(3)外観
耐候性試験前後の加飾フィルムを目視にて観察した。傷または変色などの外観の変化の有無を観察した。
【0106】
[施工性]
自動車の外表面における凹凸ラインを含む部分に加飾フィルムを貼り付け、当該部分に貼り付けられた加飾フィルムの様子を観察した。
(4)浮き(曲面追従性)
上記部分に貼り付けた加飾フィルムを10℃の環境下で放置した。別途、同様に上記部分に貼り付けた別の加飾フィルムを23℃の環境下に放置した。そして、放置中における浮きの発生の有無を目視にて観察した。
(5)施工時のシワ(貼り施工性)
上記部分に加飾フィルムを貼り付けるときに、加飾フィルムにおけるシワの発生の有無を目視にて観察した。
【0107】
[実施例1]
<着色フィルム(着色層)の製造>
下記の成分を下記の量でドライブレンドし、次いでヘンシェルミキサーで混練した後、180℃に設定したカレンダー成形機にて厚み100μmのフィルムに成形して着色フィルム1を作製した。下記カーボンブラックは、日弘ビックス株式会社製のカーボンブラック顔料(品名「W-8012-G5」)であり、アクリル樹脂でコートされている。得られた着色フィルム1の上降伏点荷重を測定したところ、着色フィルム1の上降伏点荷重は10.6N/10mmであった。
アクリル樹脂1 50質量部
アクリル樹脂2 50質量部
カーボンブラック 19質量部
添加剤1 0.3質量部
【0108】
<表面保護フィルム(表面保護層)の製造>
IPA:トルエン=1:1溶液中に100質量部のポリウレタン樹脂1が固形分25質量%となるように含有されている分散液に、1.2質量部の添加剤2を混合した後、流延した。次に、80℃で3分間乾燥した後、140℃で3分間乾燥して厚み30μmのフィルムを形成した。こうして表面保護フィルム1を作製した。表面保護フィルム1の上降伏点荷重は5.9N/10mmであった。
【0109】
<両フィルムの接着>
着色フィルム1の一方の表面に粘着剤を塗布して形成した粘着剤の塗膜に表面保護フィルム1を重ねて表面保護フィルム1を着色フィルム1に接着した。こうして、着色層、粘着剤からなる接着層および表面保護層がこの順で重なってなる基材フィルム1を作製した。接着層の厚みは30μmであった。得られた基材フィルム1の上降伏点荷重は17.4N/10mmであり、基材フィルム1の応力緩和率は56%であった。
【0110】
<剥離シートへの接着>
剥離フィルム上に粘着剤を塗布して形成した粘着剤の塗膜に基材フィルム1の着色フィルム1を重ねて貼り合わせた。こうして、剥離フィルム、粘着剤からなる粘着剤層、着色フィルム1、接着層および表面保護フィルム1がこの順で重なってなる加飾フィルム1を作製した。粘着剤層の厚みは40μmであった。
【0111】
[実施例2]
着色フィルムの製造におけるアクリル樹脂1の量を59質量部、アクリル樹脂2の量を41質量部とする以外は実施例1と同様にして着色フィルム2を作製した。着色フィルム2の上降伏点荷重は13.2N/10mmであった。着色フィルム1に代えて着色フィルム2を用いる以外は実施例1と同様にして基材フィルム2および加飾フィルム2を作製した。基材フィルム2の上降伏点荷重は20.0N/10mmであり、応力緩和率は57%であった。
【0112】
[実施例3]
着色フィルムの製造におけるアクリル樹脂1の量を55質量部、アクリル樹脂2の量を45質量部とする以外は実施例1と同様にして着色フィルム3を作製した。着色フィルム3の上降伏点荷重は11.8N/10mmであった。着色フィルム1に代えて着色フィルム3を用いる以外は実施例1と同様にして基材フィルム3および加飾フィルム3を作製した。基材フィルム3の上降伏点荷重は18.6N/10mmであり、応力緩和率は56%であった。
【0113】
[実施例4]
着色フィルムの製造におけるアクリル樹脂1の量を48質量部、アクリル樹脂2の量を52質量部とする以外は実施例1と同様にして着色フィルム4を作製した。着色フィルム4の上降伏点荷重は8.3N/10mmであった。着色フィルム1に代えて着色フィルム4を用いる以外は実施例1と同様にして基材フィルム4および加飾フィルム4を作製した。基材フィルム4の上降伏点荷重は15.1N/10mmであり、応力緩和率は56%であった。
【0114】
[実施例5]
表面保護フィルムの製造において、100質量部のポリウレタン樹脂1に代えて50質量部のポリウレタン樹脂1および50質量部のポリウレタン樹脂3を用いる以外は実施例1と同様にして表面保護フィルム5を作製した。表面保護フィルム5の上降伏点荷重は5.2N/10mmであった。表面保護フィルム1に代えて表面保護フィルム5を用いる以外は実施例1と同様にして基材フィルム5および加飾フィルム5を作製した。基材フィルム5の上降伏点荷重は16.7N/10mmであり、応力緩和率は56%であった。
【0115】
[実施例6]
表面保護フィルムの製造において、ポリウレタン樹脂1に代えてポリウレタン樹脂3を用いる以外は実施例1と同様にして表面保護フィルム6を作製した。表面保護フィルム6の上降伏点荷重は4.5N/10mmであった。表面保護フィルム1に代えて表面保護フィルム6を用いる以外は実施例1と同様にして基材フィルム6および加飾フィルム6を作製した。基材フィルム6の上降伏点荷重は16.0N/10mmであり、応力緩和率は56%であった。
【0116】
[実施例7]
着色フィルムの製造において、30質量部のアクリル樹脂2および70質量部のアクリル樹脂3を用いる以外は実施例1と同様にして着色フィルム7を作製した。着色フィルム7の上降伏点荷重は10.2N/10mmであった。着色フィルム1に代えて着色フィルム7を用いる以外は実施例1と同様にして基材フィルム7および加飾フィルム7を作製した。基材フィルム7の上降伏点荷重は16.6N/10mmであり、応力緩和率は56%であった。
【0117】
[実施例8]
着色フィルムの製造において、着色フィルムの厚みを70μmとする以外は実施例2と同様にして着色フィルム8を作製した。着色フィルム8の上降伏点荷重は9.8N/10mmであった。着色フィルム2に代えて着色フィルム8を用いる以外は実施例2と同様にして基材フィルム8および加飾フィルム8を作製した。基材フィルム8の上降伏点荷重は17.4N/10mmであり、応力緩和率は56%であった。
【0118】
[実施例9から11]
着色フィルムの製造において、カーボンブラックに代えて白色の着色剤である、日弘ビックス株式会社製酸化チタン系顔料(品名「W-0612-G5」)を用いる以外は実施例1と同様にして着色フィルム9を作製した。また、着色フィルムの製造において、19質量部のカーボンブラックに代えて、5質量部の青色の着色剤である、日弘ビックス株式会社製青色顔料(品名「W-6122-G5」)を用いる以外は実施例1と同様にして着色フィルム10を作製した。さらに、着色フィルムの製造において、カーボンブラックに代えて赤色の着色剤である、日弘ビックス株式会社製ジケトピロロピロール系顔料(品名:W-1572-G5)を用いる以外は実施例1と同様にして着色フィルム11を作製した。着色フィルム9から11の上降伏点荷重は、いずれも10.6N/10mmであった。
【0119】
着色フィルム1に代えて着色フィルム9から11のそれぞれを用いる以外は実施例1と同様にして基材フィルム9から11および加飾フィルム9から11のそれぞれを得た。基材フィルム9から10の上降伏点荷重はいずれも17.4N/10mm、基材フィルム11の上降伏点荷重は16.6N/10mmであり、応力緩和率はいずれも56%であった。
【0120】
[比較例1]
着色フィルムの製造において、60質量部のアクリル樹脂1および40質量部のアクリル樹脂2を用いる以外は実施例1と同様にして着色フィルムC1を作製した。着色フィルムC1の上降伏点荷重は14.2N/10mmであった。着色フィルム1に代えて着色フィルムC1を用いる以外は実施例1と同様にして基材フィルムC1および加飾フィルムC1を作製した。基材フィルムC1の上降伏点荷重は21.0N/10mmであり、応力緩和率は59%であった。
【0121】
[比較例2]
着色フィルムの製造において、40質量部のアクリル樹脂1および60質量部のアクリル樹脂2を用いる以外は実施例1と同様にして着色フィルムC2を作製した。着色フィルムC2の上降伏点荷重は6.5N/10mmであった。着色フィルム1に代えて着色フィルムC2を用いる以外は実施例1と同様にして基材フィルムC2および加飾フィルムC2を作製した。基材フィルムC2の上降伏点荷重は13.2N/10mmであり、応力緩和率は54%であった。
【0122】
[比較例3から6]
着色フィルムの製造において、50質量部のアクリル樹脂1および50質量部のアクリル樹脂2に代えて、100質量部のアクリル樹脂1からアクリル樹脂3および塩化ビニル樹脂のそれぞれを用いる以外は実施例1と同様にして着色フィルムC3からC6のそれぞれを作製した。着色フィルムC3の上降伏点荷重は27.1N/10mmであり、着色フィルムC4の上降伏点荷重は3.9N/10mmであり、着色フィルムC5の上降伏点荷重は16.0N/10mmであり、着色フィルムC6の上降伏点荷重は18.3N/10mmであった。そして、着色フィルム1に代えて着色フィルムC3からC6のそれぞれを用いる以外は実施例1と同様にして基材フィルムC3からC6および加飾フィルムC3からC6のそれぞれを作製した。基材フィルムC3の上降伏点荷重は33.9N/10mmであり、応力緩和率は62%であった。基材フィルムC4の上降伏点荷重は10.7N/10mmであり、応力緩和率は51%であった。基材フィルムC5の上降伏点荷重は22.8N/10mmであり、応力緩和率は60%であった。基材フィルムC6の上降伏点荷重は23.9N/10mmであり、応力緩和率は68%であった。
【0123】
[比較例7から9]
100質量部のポリウレタン樹脂4から2のそれぞれに1.2質量部の添加剤2および19質量部のカーボンブラックを混合し、次いで、押出機を用いて160℃にて回転数7rpm、負荷30A、ライン速度1.0m/minの条件で該組成物より厚み160μmのフィルムを形成した。こうして表面保護フィルムC7からC9のそれぞれを作製した。表面保護フィルムC7の上降伏点荷重は9.1N/10mmであり、表面保護フィルムC8の上降伏点荷重は10.6N/10mmであり、表面保護フィルムC9の上降伏点荷重は9.9N/10mmであった。
【0124】
そして、接着層および着色フィルムを用いない以外は実施例1と同様にして基材フィルムC7からC9および加飾フィルムC7からC9のそれぞれを作製した。基材フィルムC7の上降伏点荷重は9.1N/10mmであり、応力緩和率は49%であった。基材フィルムC8の上降伏点荷重は10.6N/10mmであり、応力緩和率は50%であった。基材フィルムC9の上降伏点荷重は9.9N/10mmであり、応力緩和率は50%であった。
【0125】
[比較例10]
IPA:トルエン=1:1溶液中に100質量部のポリウレタン樹脂1が固形分25質量%となるように含有されている分散液に1.2質量部の添加剤2および19質量部のカーボンブラックを混合した後、流延した。次に、80℃で3分間乾燥した後、140℃で3分間乾燥して厚み160μmのフィルムを形成した。こうして表面保護フィルムC10を作製した。表面保護フィルムC10の上降伏点荷重は14.0N/10mmであった。そして、接着層および着色フィルムを用いない以外は実施例1と同様にして基材フィルムC10および加飾フィルムC10を得た。基材フィルムC10の上降伏点荷重は14.0N/10mmであり、応力緩和率は50%であった。
【0126】
[比較例11から14]
着色フィルムの製造において、50質量部のアクリル樹脂1および50質量部のアクリル樹脂2に代えて、100質量部のポリウレタン樹脂1からポリウレタン樹脂4のそれぞれを用いる以外は実施例1と同様にして着色フィルムC11からC14のそれぞれを作製した。着色フィルムC11の上降伏点荷重は7.0N/10mmであり、着色フィルムC12の上降伏点荷重は5.2N/10mmであり、着色フィルムC13の上降伏点荷重は5.3N/10mmであり、着色フィルムC14の上降伏点荷重は5.0N/10mmであった。
【0127】
そして、着色フィルム1に代えて着色フィルムC11からC14のそれぞれを用いる以外は実施例1と同様にして基材フィルムC11からC14および加飾フィルムC11からC14のそれぞれを作製した。基材フィルムC11の上降伏点荷重は13.8N/10mmであり、応力緩和率は50%であった。基材フィルムC12の上降伏点荷重は12.0N/10mmであり、応力緩和率は50%であった。基材フィルムC13の上降伏点荷重は12.1N/10mmであり、応力緩和率は50%であった。基材フィルムC14の上降伏点荷重は11.8N/10mmであり、応力緩和率は50%であった。
【0128】
[比較例15、16]
表面保護フィルムの製造において、ポリウレタン樹脂1に代えてフッ素樹脂を用い、厚みを50μmとする以外は実施例1と同様にして表面保護フィルムC15を作製した。表面保護フィルムC15の上降伏点荷重は19.3N/10mmであった。また、着色フィルムの製造において、50質量部のアクリル樹脂1および50質量部のアクリル樹脂2に代えて、100質量部のポリ塩化ビニルを用いる以外は実施例1と同様にして着色フィルムC15を作製した。着色フィルムC15の上降伏点荷重は22.3N/10mmであった。そして、表面保護フィルム1に代えて表面保護フィルムC15を用い、着色フィルム1に代えて着色フィルムC15を用いる以外は実施例1と同様にして基材フィルムC15および加飾フィルムC15を作製した。基材フィルムC15の上降伏点荷重は48.5N/10mmであり、応力緩和率は64%であった。
【0129】
また、表面保護フィルムの製造において、ポリウレタン樹脂1に代えてフッ素樹脂を用い、厚みを30μmとする以外は実施例1と同様にして表面保護フィルムC16を作製した。表面保護フィルムC16の上降伏点荷重は13.1N/10mmであった。表面保護フィルム1に代えて表面保護フィルムC16を用いる以外は実施例1と同様にして基材フィルムC16および加飾フィルムC16を得た。基材フィルムC16の上降伏点荷重は23.4N/10mmであり、応力緩和率は63%であった。
【0130】
[比較例17]
着色フィルム1の厚みを50μmとする以外は実施例1と同様にして基材フィルムC17および加飾フィルムC17を得た。基材フィルムC17の上降伏点荷重は12.4N/10mmであり、応力緩和率は50%であった。
【0131】
基材フィルム1から11および加飾フィルム1から11の、組成、層構成、上降伏点荷重および応力緩和率を表1および表2に示す。また、基材フィルムC1からC17および加飾フィルムC1からC17の、組成、層構成、上降伏点荷重および応力緩和率を表3および表4に示す。なお、表1から表4中、加飾フィルムの上降伏点荷重および応力緩和率は、それぞれ、基材フィルムの上降伏点荷重および応力緩和率に対応する。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
【表4】
【0136】
[評価]
加飾フィルム1から11およびC1からC17のそれぞれについて、前述した耐候性および施工性の評価を行い、下記の基準に基づいて結果を評価した。上降伏点荷重および応力緩和率の評価では、粘着剤を塗布した剥離フィルムと貼り合わせる前の状態(表面保護層、接着層および着色層の組み合わせによる積層体、すなわち基材フィルム)の引張試験の測定結果を利用した。
<上降伏点荷重>
A 13.5N/10mm以上20.0N/10mm以下であった。
B 20.0N/10mmより大きく25.0N/10mm以下であった。
C A、Bの範囲外(13.5N/10mm未満か、または25.0N/10mmより大きい)であった。
<応力緩和率>
S 55%以上58%以下であった。
A 53%以上55%未満であった。
B 48%以上53%未満であった。
C S、A、Bの範囲以外(48%未満か、または58%より大きい)であった。
<色差ΔE(試験A、積算光量1200MJ/m)>
S ΔE≦1.0
A 1.0<ΔE≦1.5
B 1.5<ΔE≦3.0
C ΔE>3.0
<色差ΔE(試験B、積算光量1350MJ/m)>
S ΔE≦1.0
A 1.0<ΔE≦1.5
B 1.5<ΔE≦4.0
C ΔE>4.0
<光沢変化>
A 耐候性試験前後でグロス値の変化が±5以内であった。
C 耐候性試験前後でグロス値の変化が±5より大きかった。
<外観異常>
A 外観異常は認められなかった。
B 小さな傷などの外観の軽微な異常が認められた。
C 目立つ傷または黄変などの外観の明らかな異常が認められた。
<浮き>
S 10℃および23℃でのいずれの浮き評価で2週間以上経過しても浮きがなかった。
A 10℃での浮き評価において1週間以上2週間以内で浮きが生じた。
B 10℃で3日以内に浮きが生じた。
C 10℃、23℃のいずれの浮き評価でも24時間以内に浮きが生じた。
<施工時のシワ>
無(A) 自動車の凹凸ラインに貼っても施工時にシワが生じなかった。
有(C) 施工時にシワが生じた。
【0137】
<総合評価>
上記の評価結果を、下記の基準に基づいて点数に換算した。
S 2点
A 1点
B 0点
C -1点
【0138】
そして、加飾フィルムごとに点数を集計し、加飾フィルムごとの点数に応じて下記の基準で評価した。
A 計8点以上
B 計3点以上7点以下
C 計2点以下
【0139】
加飾フィルム1から11の耐候性、施工性および総合評価を表5および表6に示す。加飾フィルムC1からC17の耐候性、施工性および総合評価を表7から表9に示す。なお、加飾フィルムC7の外観の観察では黄変が確認された。また、加飾フィルムC9の外観の観察では黄変およびクラックが確認された。
【0140】
【表5】
【0141】
【表6】
【0142】
【表7】
【0143】
【表8】
【0144】
【表9】
【0145】
〔考察〕
加飾フィルム1から11は、いずれも、耐候性、曲面追従性および貼り施工性を十分に有している。これは、表面保護層に耐候性に優れるウレタン樹脂を使用しており、また、加飾フィルムが適当な上降伏点荷重と応力緩和率とを有しているため、と考えられる。より詳しくは、応力緩和率が実施例の範囲内であれば、曲面に貼り付けた際に加飾フィルムが浮いてくることはなく、上降伏点荷重が実施例の範囲内であれば、施工時における加飾フィルムのシワを抑制できる、と考えられる。そして、加飾フィルム1から11が、ポリウレタン樹脂を含む層とアクリル系樹脂を含む層とが積層されたものであることで、耐候性に優れ、かつ、加飾フィルムの浮きの抑制と施工時のシワ抑制とを兼ね備えた物性への調整を可能にしている、と考えられる。
【0146】
加飾フィルムC1からC17では、いずれも、加飾フィルムの上降伏点荷重および応力緩和率の少なくとも一方が特定の範囲から外れており、浮きおよび施工時のシワの少なくとも一方の評価が、実施例の評価よりも低くなっている。
【0147】
また、加飾フィルムC6、C7、C9、C12およびC14では、ΔEがより高い傾向が見られ、光沢の経時的な変化および外観の異常の少なくとも一方が不十分となっている。これらの結果から、ポリウレタン樹脂を含む層とアクリル系樹脂を含む層が積層されていることが耐候性を十分に高めている、と考えらえる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明は、曲面または凹凸面を有してもよい加飾対象物を装飾するための加飾フィルムであって耐候性を要する加飾フィルム、例えば車両外装用フィルム、に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0149】
10 加飾フィルム
11 表面保護層
12 接着層
13 着色層
14 粘着剤層
20 離型シート
図1