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特開2024-146847情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146847
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20240101AFI20241004BHJP
【FI】
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024050183
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023059544
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】509111744
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【弁理士】
【氏名又は名称】坊野 康博
(72)【発明者】
【氏名】涌井 智子
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】認知症高齢者における認知症周辺症状の発症をより適確に予測する情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】情報処理システムは、活動量計と無線通信可能で、UI制御部を備える介護者用端末と、介護関連データ取得部311、データ分析部312及び支援データ提示部313を備える支援サーバ30を含む。UI制御部は、被介護者の介護に関して介護者が記録した介護記録データを含む支援者視点データを取得し、支援者視点データに基づいて、支援サーバが生成した介護者を支援するための介護者支援データを表示する。介護関連データ取得部は、介護者用端末から送信される支援者視点データを取得する。データ分析部は、支援者視点データに基づいて、被介護者における認知症周辺症状の発症を予測する。支援データ提示部は、データ分析部の予測結果を含む介護者を支援するための介護者支援データを提示する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介護者を介護する介護者によって使用される介護者用端末と、前記介護者を支援する情報を提供する支援サーバとが通信可能に構成された情報処理システムであって、
前記介護者用端末は、
前記被介護者の介護に関して前記介護者が記録した介護記録データを含む支援者視点データを取得する支援者視点データ取得手段と、
前記支援者視点データに基づいて、前記支援サーバが生成した前記介護者を支援するための介護者支援データを表示する支援データ表示手段と、
を備え、
前記支援サーバは、
前記介護者用端末から送信される前記支援者視点データを取得する介護関連データ取得手段と、
前記支援者視点データに基づいて、前記被介護者における認知症周辺症状の発症を予測する発症予測手段と、
前記発症予測手段の予測結果を含む前記介護者を支援するための前記介護者支援データを提示する介護者支援データ提示手段と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記支援者視点データ取得手段は、前記被介護者における認知症周辺症状の発症結果を示す認知症周辺症状発症データをさらに含む前記支援者視点データを取得し、
前記発症予測手段は、前記認知症周辺症状発症データをフィードバックして、前記被介護者における認知症周辺症状の発症を予測することを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記介護関連データ取得手段は、前記支援者視点データとして、前記介護者の表情または音声のデータをさらに取得し、
前記発症予測手段は、前記介護者の表情または音声のデータを含む前記支援者視点データに基づいて、前記被介護者における認知症周辺症状の発症を予測することを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記発症予測手段は、前記支援者視点データを分析して生成された、前記被介護者における認知症周辺症状の発症確率を算出する発症確率算出式に基づいて、前記被介護者における認知症周辺症状の発症を予測することを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記発症予測手段は、前記支援者視点データの要素を入力とし、当該入力に対する認知症周辺症状の発症確率を出力とする機械学習モデルに基づいて、前記被介護者における認知症周辺症状の発症を予測することを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記発症予測手段は、前記被介護者に関する前記支援者視点データを蓄積開始後、設定された期間が経過した場合に、前記被介護者における認知症周辺症状の発症を予測することを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記発症予測手段は、特定の前記被介護者に関する前記支援者視点データと、他の前記被介護者に関する前記支援者視点データとに基づいて、特定の前記被介護者における認知症周辺症状の発症を予測することを特徴とする請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項8】
被介護者を介護する介護者によって使用される介護者用端末と、前記介護者を支援する情報を提供する支援サーバとが通信可能に構成された情報処理システムにおける前記支援サーバを構成する情報処理装置であって、
前記介護者用端末から送信される前記被介護者の介護に関して前記介護者が記録した介護記録データを含む支援者視点データを取得する介護関連データ取得手段と、
前記支援者視点データに基づいて、前記被介護者における認知症周辺症状の発症を予測する発症予測手段と、
前記発症予測手段の予測結果を含む前記介護者を支援するための前記介護者支援データを提示する介護者支援データ提示手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項9】
被介護者を介護する介護者によって使用される介護者用端末と、前記介護者を支援する情報を提供する支援サーバとが通信可能に構成された情報処理システムが実行する情報処理方法であって、
前記介護者用端末が、
前記被介護者の介護に関して前記介護者が記録した介護記録データを含む支援者視点データを取得する支援者視点データ取得ステップと、
前記支援者視点データに基づいて、前記支援サーバが生成した前記介護者を支援するための介護者支援データを表示する支援データ表示ステップと、
を実行し、
前記支援サーバが、
前記介護者用端末から送信される前記支援者視点データを取得する介護関連データ取得ステップと、
前記支援者視点データに基づいて、前記被介護者における認知症周辺症状の発症を予測する発症予測ステップと、
前記発症予測ステップにおける予測結果を含む前記介護者を支援するための前記介護者支援データを提示する介護者支援データ提示ステップと、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項10】
被介護者を介護する介護者によって使用される介護者用端末と、前記介護者を支援する情報を提供する支援サーバとが通信可能に構成された情報処理システムにおける前記支援サーバを構成するコンピュータに、
前記介護者用端末から送信される前記被介護者の介護に関して前記介護者が記録した介護記録データを含む支援者視点データを取得する介護関連データ取得機能と、
前記支援者視点データに基づいて、前記被介護者における認知症周辺症状の発症を予測する発症予測機能と、
前記発症予測機能の予測結果を含む前記介護者を支援するための前記介護者支援データを提示する介護者支援データ提示機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、認知症高齢者が介護を受けながら、在宅で生活を継続するケースが増えつつある。
認知症高齢者が在宅で生活を継続するためには、認知症高齢者本人の認知症の進行度合いや生活自立度等を適切に判断することが必要となる。認知症の進行度合いや生活自立度等は、一般に、医師が認知症高齢者を診断あるいは検査することで個別に判断している。
また、認知症高齢者が在宅で生活を継続する場合、認知症高齢者を支援する支援者(家族や介護士等)の負担が大きく、特に、認知症周辺症状(徘徊、妄想、せん妄、過食、睡眠障害、暴力等)の発症は、支援者にとっての負担が増加する大きな要因となっている。
なお、特許文献1には、被介護者を介護する介護者を支援するための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-203959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
認知症高齢者において、認知症周辺症状がいつ、どのような状況で発症するかは、認知症高齢者を支援する支援者にとって、極めて重要な情報となる。
したがって、何等かの方法で認知症周辺症状の発症を予測することが望まれるが、専門家である医師の診断結果あるいは検査結果は認知症周辺症状の発症を予測する根拠として有力な情報であると考えられる。
しかしながら、認知症高齢者本人を医師が診断等する頻度は高くないため、医師の判断結果が認知症高齢者の実情と合致しなくなったり、認知症高齢者本人から得られる情報が限定的となったりする可能性がある。また、認知症の進行度合いによっては、認知症高齢者本人から適確な情報を得ることができないことも多く、この場合、医師が適切な判断を行うことが困難となる。
即ち、認知症高齢者本人を診断等して得られる情報は、認知症周辺症状を予測するために用いるデータとしては充分でないため、現状では、認知症周辺症状には支援者が対症的に対応せざるを得ないのが実情である。
なお、特許文献1に記載された技術を含め、介護者を支援する従来の技術は、被介護者における認知症周辺症状の発症に関し、介護者の負担を軽減できるものではなかった。
このような状況の下、認知症高齢者における認知症周辺症状の発症を適確に予測することが望まれている。
【0005】
本発明の課題は、認知症高齢者における認知症周辺症状の発症をより適確に予測することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る情報処理システムは、
被介護者を介護する介護者によって使用される介護者用端末と、前記介護者を支援する情報を提供する支援サーバとが通信可能に構成された情報処理システムであって、
前記介護者用端末は、
前記被介護者の介護に関して前記介護者が記録した介護記録データを含む支援者視点データを取得する支援者視点データ取得手段と、
前記支援者視点データに基づいて、前記支援サーバが生成した前記介護者を支援するための介護者支援データを表示する支援データ表示手段と、
を備え、
前記支援サーバは、
前記介護者用端末から送信される前記支援者視点データを取得する介護関連データ取得手段と、
前記支援者視点データに基づいて、前記被介護者における認知症周辺症状の発症を予測する発症予測手段と、
前記発症予測手段の予測結果を含む前記介護者を支援するための前記介護者支援データを提示する介護者支援データ提示手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、認知症高齢者における認知症周辺症状の発症をより適確に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る情報処理システム1全体のシステム構成を示す模式図である。
図2】各装置を構成する情報処理装置800のハードウェア構成を示す図である。
図3】介護者用端末10の機能的構成を示すブロック図である。
図4】支援者視点データ入力画面の一例を示す模式図である。
図5】介護者支援データ出力画面の一例を示す模式図である。
図6】活動量計20の機能的構成を示すブロック図である。
図7】支援サーバ30の機能的構成を示すブロック図である。
図8】情報処理システム1が実行する周辺症状発症予測処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
本実施形態に係る情報処理システムは、被介護者となる認知症高齢者(患者)における認知症周辺症状の発症を予測可能とするものであり、認知症高齢者本人から得られる診断結果や検査結果等の情報(以下、「患者データ」と称する。)のみならず、認知症高齢者を日常的に周囲から観察している支援者(介護者)視点の情報(以下、「支援者視点データ」と称する。)を用いて、認知症高齢者における認知症周辺症状の発症を予測する機能を備えている。
例えば、患者データとして、(1)認知症高齢者の生活状況、ADL(Activities of Daily Living)およびIADL(Instrumental Activities of Daily Living)の依存度等を含む介護基礎データを用いることができ、支援者視点データとして、(2)支援者が日々記録している介護日誌のデータ(介護記録データ)等を含む介護負担等データ、(3)被介護者が発症した認知症の周辺症状等の履歴を含む認知症周辺症状発症データ等を用いることができる。
【0010】
本実施形態に係る情報処理システムでは、介護基礎データ及び介護負担等データと、認知症周辺症状発症データとを対応付けることで、日々の認知症高齢者の状況から、認知症周辺症状が発症する可能性を予測する。
介護基礎データ及び介護負担等データと、認知症周辺症状発症データとを対応付ける方法として、例えば、介護基礎データ及び介護負担等データの要素を変数とし、認知症周辺症状発症データの要素(認知症周辺症状の種類)が生じる確率を算出するための式を生成することができる。一例として、介護基礎データ及び介護負担等データの各要素に乗算する重みを与え、特定の認知症周辺症状(例えば、徘徊等)が発症した複数のケース、発症しなかった複数のケースに適合するように、各要素に乗算する重みを調整することができる。
【0011】
このように生成された式に介護基礎データ及び介護負担等データの要素を代入することで、特定の認知症周辺症状が発症する確率が算出される。なお、認知症周辺症状の種類毎に確率を算出する上記式を生成しておくことで、認知症周辺症状の種類毎の発症確率を容易に算出することができる。
これにより、認知症高齢者の支援者(介護者)がシステムを利用するほど、その認知症高齢者及び支援者に関する情報を対象として認知症周辺症状の適確な確率を出力するシステムとすることができる。
即ち、本実施形態に係る情報処理システムによれば、認知症高齢者における認知症周辺症状の発症をより適確に予測することが可能となる。
以下、本実施形態に係る情報処理システムの構成について、具体的に説明する。
【0012】
[構成]
[システム構成]
図1は、本発明に係る情報処理システム1全体のシステム構成を示す模式図である。
図1に示すように、情報処理システム1は、介護者用端末10と、活動量計20と、支援サーバ30と、を含んで構成され、介護者用端末10と支援サーバ30とは、インターネット等のネットワーク40を介して、互いに通信可能に構成されている。また、介護者用端末10と活動量計20とは、Bluetooth(商標)、BLE(Bluetooth Low Energy)(商標)、あるいは、無線LAN(Local Area Network)等の無線通信手段によって通信可能に構成されている。
本実施形態において、介護者用端末10及び活動量計20は、介護者それぞれが使用するものであり、情報処理システム1には、介護者に対応する数の介護者用端末10及び活動量計20が適宜含まれるものとする。また、情報処理システム1には、医師や介護福祉士等の医療従事者が使用する外部端末から適宜アクセスすることが可能である。
【0013】
介護者用端末10は、例えば、ノート型PC(Personal Computer)、タブレットPCあるいはスマートフォン等の情報処理装置によって構成され、家族等介護者等、特定の被介護者を介護する介護者によって使用される。
また、介護者用端末10は、介護者が情報を入出力するためのユーザインターフェース画面(UI画面)を表示する。介護者用端末10は、UI画面において、被介護者本人の患者データ、被介護者を支援する支援者(介護者)視点の支援者視点データ(介護負担等データ及び認知症周辺症状発症データ)の入力を受け付け、入力されたデータを支援サーバ30に送信する。また、介護者用端末10は、介護者を支援するための介護者支援データ(認知症周辺症状の発症予測結果及び介護者の介護負担の状況分析結果等)を支援サーバ30から受信し、受信した支援データをUI画面に表示する。
【0014】
活動量計20は、介護者が身体に装着して使用する携帯型の測定装置であり、日常的な活動に関する活動量データ(例えば、歩数、消費カロリー、睡眠時間等のデータ、脈拍数、血圧、体温、血糖値、等のデータ)を逐次取得する。本実施形態において、活動量計20は、腕時計型の端末装置として構成することができる。なお、活動量計としては、取得すべき活動量のデータに応じて種々のものを採用可能であるが、例えば、Micro Tag活動量計(MTN-221(BK))(アコーズ社製)等を用いることができる。また、活動量計20は、設定された所定時刻(例えば、午前9時と午後5時等)に、または、設定された時間間隔(例えば、1時間毎等)で、取得した活動量データを介護者用端末10に送信する。なお、活動量計20にネットワーク40を介して通信を行う機能を備えておき、活動量計20が支援サーバ30に活動量データを送信することとしてもよい。本実施形態において、活動量計20によって取得される活動量データは、介護負担等データを補足する目的で用いられ、例えば、活動量データから取得される介護者の介護作業に従事する時間等を介護負担等データとして用いることができる。
【0015】
支援サーバ30は、例えば、サーバコンピュータ等の情報処理装置によって構成され、介護者用端末10等から送信された各種データ(患者データ及び支援者視点データ等)を蓄積する。なお、支援サーバ30は、複数の被介護者及びその介護者における患者データ、支援者視点データ及び介護者支援データを統計データとして蓄積しており、この統計データは、最新の状態に適宜更新される。
【0016】
また、支援サーバ30は、患者データ及び支援者視点データに基づいて、被介護者における認知症周辺症状の発症予測を行い、介護者を支援する介護者支援データとして、予測結果を介護者用端末10に送信する。さらに、支援サーバ30は、介護者の介護負担等データに基づいて、介護者の介護負担の状況を分析し、介護者を支援する介護者支援データとして、介護者の介護負担の状況分析結果を表す情報(介護負担が高まっていることを報知したり、介護者の疲労をケアすることを推奨したりするメッセージ等)を介護者用端末10に送信する。なお、支援サーバ30は、被介護者(患者)及び介護者を識別する情報と対応付けて、介護者支援データを逐次蓄積する。
【0017】
本実施形態において、支援サーバ30は、認知症周辺症状の発症を予測するために、介護基礎データ及び介護負担等データの要素を変数とし、認知症周辺症状発症データの要素(認知症周辺症状の種類)が生じる確率を算出するための式(以下、「発症確率算出式」と称する。)を生成する。このとき、支援サーバ30は、介護基礎データ及び介護負担等データの各要素に乗算する重みを与え、特定の認知症周辺症状(例えば、徘徊等)が発症した複数のケース、発症しなかった複数のケースに適合するように、各要素に乗算する重みを調整して、発症確率算出式を生成する。介護基礎データ及び介護負担等データの各要素として、例えば、認知症高齢者の生活状況(起床時間、睡眠時間、認知症の周辺症状発症の有無、介護保険サービスの利用等)、ADL及びIADLの依存度等を用いることができるが、被介護者本人における認知症周辺症状の発症に関連する可能性がある項目を広く要素として含めることができる。
【0018】
また、支援サーバ30は、認知症周辺症状の種類毎に、発症確率算出式によって発症確率を算出し、その算出結果(認知症周辺症状の発症予測結果)を介護者支援データとして、介護者用端末10に送信する。本実施形態において、介護者支援データは、介護者に対するメッセージ等を表すテキストデータとして出力したり、認知症周辺症状の発症予測結果を視覚的に表すグラフ(例えば、レーダーチャート等)のデータとして出力したりすることができる。
【0019】
[ハードウェア構成]
次に、情報処理システム1における各装置のハードウェア構成を説明する。
情報処理システム1において、各装置はPC、サーバコンピュータ、タブレット端末あるいはウェアラブル端末(例えば、腕時計型端末)等の情報処理装置によって構成され、その基本的構成は同様である。
【0020】
図2は、各装置を構成する情報処理装置800のハードウェア構成を示す図である。
図2に示すように、各装置を構成する情報処理装置800は、プロセッサ811と、ROM(Read Only Memory)812と、RAM(Random Access Memory)813と、バス814と、入力部815と、出力部816と、記憶部817と、通信部818と、ドライブ819と、撮像部820と、を備えている。
【0021】
プロセッサ811は、ROM812に記録されているプログラム、または、記憶部817からRAM813にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM813には、プロセッサ811が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0022】
プロセッサ811、ROM812及びRAM813は、バス814を介して相互に接続されている。バス814には、入力部815、出力部816、記憶部817、通信部818、ドライブ819及び撮像部820が接続されている。
【0023】
入力部815は、各種ボタン、キーボードあるいはポインティングデバイス等で構成され、指示操作に応じて各種情報を入力する。
出力部816は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部817は、ハードディスクあるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各サーバで管理される各種データを記憶する。
通信部818は、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する。
【0024】
ドライブ819には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア831が適宜装着される。ドライブ819によってリムーバブルメディア831から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部817にインストールされる。
撮像部820は、レンズ及び撮像素子等を備えた撮像装置によって構成され、被写体のデジタル画像を撮像する。
【0025】
なお、情報処理装置800が支援サーバ30として構成される場合には、撮像部820を省略した構成とすることも可能である。また、情報処理装置800が活動量計20やタブレット端末として構成される場合には、入力部815をタッチセンサによって構成し、出力部816のディスプレイに重ねて配置することにより、タッチパネルを備える構成とすることも可能である。また、情報処理装置800が活動量計20として構成される場合には、活動量計20において測定される物理量を検出可能な各種センサ(心拍センサ、加速度センサ、測位センサ等)を適宜備える構成とすることも可能である。
【0026】
[機能的構成]
次に、情報処理システム1における各装置の機能的構成について説明する。
[介護者用端末10の機能的構成]
図3は、介護者用端末10の機能的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、介護者用端末10のプロセッサ811においては、UI制御部111と、データ管理部112と、が機能する。また、介護者用端末10の記憶部817には、入力データ記憶部171と、介護者支援データ記憶部172と、が形成される。
【0027】
入力データ記憶部171には、UI制御部111を介して介護者が入力した各種データ(例えば、介護負担等データ及び認知症周辺症状発症データ等の支援者視点データ)や、活動量計20から送信された介護者の活動量データ(例えば、歩数、消費カロリー、睡眠時間等のデータ、脈拍数、血圧、体温、血糖値、等のデータ)が記憶される。
介護者支援データ記憶部172には、支援サーバ30から送信された介護者支援データ(認知症周辺症状の発症予測結果及び介護者の介護負担の状況分析結果等)が記憶される。
【0028】
UI制御部111は、被介護者の介護に関する各種情報を入出力する各種入出力画面(UI画面)の表示を制御する。例えば、UI制御部111は、被介護者の患者データを入力するためのUI画面(以下、「患者データ入力画面」と称する。)、被介護者を支援する支援者(介護者)視点の支援者視点データを入力するためのUI画面(以下、「支援者視点データ入力画面」と称する。)、あるいは、介護者を支援するための介護者支援データを出力するためのUI画面(以下、「介護者支援データ出力画面」と称する。)を表示する。
【0029】
データ管理部112は、UI画面を介して入力された各種データを入力データ記憶部171に記憶したり、入力データ記憶部171に記憶された各種データを支援サーバ30に送信したりする。また、データ管理部112は、支援サーバ30から送信された介護者支援データを介護者支援データ記憶部172に記憶したり、介護者支援データ記憶部172に記憶された介護者支援データをUI制御部111に出力して表示させたりする。
【0030】
図4は、支援者視点データ入力画面の一例を示す模式図である。
図4に示すように、支援者視点データ入力画面には、患者データ入力画面を介して入力された患者データを表示する領域や、介護負担等データ及び認知症周辺症状発症データを入力する領域が表示される。
支援者視点データ入力画面では、介護者が認識した被介護者(患者)の当日の状態に基づいて、患者データ入力画面を介して入力された患者データの更新を受け付けたり、介護負担等データあるいは認知症周辺症状発症データの入力を受け付けたりする。
【0031】
図4に示す例においては、介護日誌を記入する領域として、支援者視点データの要素毎に、被介護者(患者)の通常の状態を基準とした現在(当日)の状態を表す段階的な評価(自立の度合いが「1:低い、2:やや低い、3:変わらず、4:やや高い、5:高い」等)を選択するメニューと、介護者が所見を任意に書き込む自由記入欄とが含まれている。これらメニューの選択や、自由記入欄の記入内容は、介護者が日常的に被介護者に接している感覚から主観的に判断した内容とすることができる。
支援者視点データ入力画面を介して、日々の支援者視点データが入力されることにより、情報処理システム1において、被介護者(患者)の日常的な状態をより正確に把握することができる。
【0032】
また、図5は、介護者支援データ出力画面の一例を示す模式図である。
図5に示すように、介護者支援データ出力画面においては、被介護者(患者)における認知症周辺症状の発症予測結果及び介護者の介護負担の状況分析結果を含む情報が表示される。
図5に示す例では、認知症周辺症状の発症予測結果として、認知症周辺症状の種類毎に発症確率が表されたレーダーチャートが示されている。また、介護者の介護負担の状況分析結果として、「介護負担がやや高まっています。睡眠や休息を充分に取るよう心掛けましょう。」とのメッセージが示されている。
【0033】
図5に示すレーダーチャートでは、中心から放射状に延びる軸がそれぞれ認知症周辺症状の種類(一例としてのせん妄、抑うつ、徘徊、興奮、睡眠障害、妄想、幻覚、過食)を表し、各軸上のプロット位置が各種類の認知症周辺症状の発症確率を表している。
なお、図5に示すレーダーチャートには、今回の予測結果が実線で表されていると共に、参考として、前回(前日等)の予測結果が破線で表されている。
図5に示す介護者支援データ出力画面を表示することで、介護者は、自身の介護負担が高まっていることを客観的に把握したり、被介護者(患者)が認知症周辺症状を発症する可能性を予め把握したりすることができる。そのため、認知症周辺症状に対する支援の準備や、介護者の心構えやスケジュールの調整等、適切な対応策を事前に施すことが可能となる。
即ち、介護者支援データを提示することで、介護者の介護負担を軽減することが可能となる。
【0034】
[活動量計20の機能的構成]
図6は、活動量計20の機能的構成を示すブロック図である。
図6に示すように、活動量計20のプロセッサ811においては、パラメータ設定部211と、測定部212と、記憶制御部213と、表示制御部214と、データ送信部215と、が機能する。また、活動量計20の記憶部817には、設定パラメータ記憶部271と、測定データ記憶部272と、が形成される。
【0035】
設定パラメータ記憶部271には、活動量計20における測定あるいはデータの送信に関する設定データが記憶される。例えば、設定パラメータ記憶部271には、活動量計20において測定するデータの種類(脈拍、血圧、体温、血糖値、消費カロリー、睡眠時間等)や、データの測定条件(測定時間間隔、測定時間帯等)、測定されたデータを介護者用端末10に送信するタイミング(例えば、送信時刻あるいは送信時間間隔)等が記憶される。
【0036】
測定データ記憶部272には、活動量計20において測定された各種データが測定時刻と対応付けて記憶される。
パラメータ設定部211は、ユーザである介護者の操作に応じて、活動量計20において測定するデータの種類を設定したり、データの測定条件を設定したりする。
測定部212は、パラメータ設定部211に設定されている測定対象のデータについて、設定された測定条件に従って測定を実行する。
【0037】
記憶制御部213は、パラメータ設定部211によって設定された測定するデータの種類あるいはデータの測定条件をパラメータ設定部211に記憶したり、測定された各種データを測定時刻と対応付けて測定データ記憶部272に記憶したりする。
表示制御部214は、活動量計20のディスプレイに出力されるUI画面の表示を制御する。
データ送信部215は、測定データ記憶部272に記憶されている各種データを、設定パラメータ記憶部271に記憶された送信タイミングに従って、介護者用端末10に送信する。
【0038】
[支援サーバ30の機能的構成]
図7は、支援サーバ30の機能的構成を示すブロック図である。
図7に示すように、支援サーバ30のプロセッサ811においては、介護関連データ取得部311と、データ分析部312と、支援データ提示部313と、を備えている。また、支援サーバ30の記憶部817には、介護関連データ記憶部371と、介護者支援データ記憶部372と、が形成される。
【0039】
介護関連データ記憶部371には、介護者用端末10等から送信された各種データ(患者データ及び支援者視点データ等)が、被介護者(患者)及び介護者を識別する情報と対応付けて記憶される。また、介護関連データ記憶部371には、複数の被介護者(患者)に対応する各種データ(患者データ及び支援者視点データ等)がそれぞれの被介護者(患者)と対応付けて記憶されており、これらのデータは、一般的な認知症周辺症状の発症を予測する式を生成するための統計データとして利用することができる。
介護者支援データ記憶部372には、患者データ及び支援者視点データに基づいて生成された介護者支援データが、被介護者(患者)及び介護者を識別する情報と対応付けて記憶される。
【0040】
介護関連データ取得部311は、介護者用端末10等の端末装置から患者データ及び支援者視点データを取得する。また、介護関連データ取得部311は、取得した患者データ及び支援者視点データを被介護者(患者)と対応付けて介護関連データ記憶部371に記憶する。
データ分析部312は、患者データ及び支援者視点データに基づいて、被介護者における認知症周辺症状の発症予測を行い、介護者を支援する介護者支援データとして、予測結果を介護者用端末10に送信する。このとき、データ分析部312は、対象となる被介護者(患者)に関する支援者視点データの蓄積を開始してから所定期間(例えば、2週間等)が経過しているか否かを判定し、所定期間経過後に、被介護者における認知症周辺症状の発症予測を開始する。これにより、対象となる被介護者(患者)に関する一定量のデータを蓄積した時点で、信頼性の高い認知症周辺症状の発症予測結果を取得することができる。
【0041】
本実施形態において、データ分析部312は、患者データ及び支援者視点データの要素を変数とし、認知症周辺症状発症データの要素(認知症周辺症状の種類)が生じる確率を算出するための発症確率算出式を生成する。一例として、データ分析部312は、患者データ及び支援者視点データの各要素に乗算する重みを与え、特定の認知症周辺症状(例えば、徘徊等)が発症した複数のケース、発症しなかった複数のケースに適合するように、各要素に乗算する重みを調整する。
即ち、認知症周辺症状の発症を予測する発症確率算出式は、例えば、以下のように表すことができる。
【0042】
=f(Σ(Wn・Ck(En))) (1)
ただし、式(1)において、Pは種類kの認知症周辺症状の発症確率[%]、Enは患者データ及び支援者視点データに含まれる第n番目の要素(nは自然数)、Wnは患者データ及び支援者視点データの要素Enの重み(補正係数)、Ck(En)は当日(または過去の所定期間)に存在する要素Enと種類kの認知症周辺症状の発症との相関性の高さ、fは勘案される全ての要素に関する実データ(総合的な相関性の指標)を種類kの認知症周辺症状の発症確率に換算する関数を表している。
【0043】
データ分析部312は、生成した式に患者データ及び支援者視点データの要素を代入することで、特定の認知症周辺症状が発症する確率を算出する。認知症周辺症状の種類毎に発症を予測する上記発症確率算出式を生成しておくことで、認知症周辺症状の種類毎の発症確率を容易に算出することができる。
【0044】
なお、本実施形態において、認知症周辺症状の発症を予測する上記発症確率算出式は、特定の被介護者(患者)に関するデータが充分に蓄積されていない場合、介護関連データ記憶部371に記憶された複数の被介護者(患者)に対応する各種データ(患者データ及び支援者視点データ等)から統計的に生成することも可能である。また、データ分析部312は、認知症周辺症状の発症を予測する上記発症確率算出式によって導かれた確率に対し、介護者によって入力された実際の認知症周辺症状の発症有無(認知症周辺症状発症データ)をフィードバックすることにより、発症確率算出式(例えば、式(1)の重み等)を逐次更新することが可能である。
これにより、被介護者(患者)の介護者が情報処理システム1を利用するほど、その被介護者及び介護者に対して認知症周辺症状の適確な確率を出力するシステムとすることができる。
【0045】
また、データ分析部312は、介護者の介護負担等データに基づいて、介護者の介護負担の状況を分析する。例えば、データ分析部312は、介護者の介護作業に従事する時間の長さや睡眠時間の長さから、介護者の介護負担の状況を分析する。そして、データ分析部312は、介護者支援データとして、介護者の介護負担の状況分析結果を表す情報(介護負担が高まっていることを報知したり、介護者の疲労をケアすることを推奨したりするメッセージ等)を介護者用端末10に送信する。
データ分析部312によって生成された介護者支援データ(認知症周辺症状の発症予測結果及び介護者の介護負担の状況分析結果等)は、被介護者(患者)及び介護者を識別する情報と対応付けて、介護者支援データ記憶部372に記憶される。
【0046】
支援データ提示部313は、データ分析部312によって生成された介護者支援データ(認知症周辺症状の発症予測結果及び介護者の介護負担の状況分析結果等)を介護者の介護者用端末10に送信する。例えば、支援データ提示部313は、介護者の介護負担の状況分析結果を介護者に対するメッセージ等を表すテキストデータとして送信したり、認知症周辺症状の発症予測結果を視覚的にわかり易い形態で表すグラフのデータとして送信したりする。
【0047】
[動作]
次に、情報処理システム1の動作を説明する。
[周辺症状発症予測処理]
図8は、情報処理システム1が実行する周辺症状発症予測処理の流れを示すフローチャートである。
周辺症状発症予測処理は、支援サーバ30の入力部815または通信部818を介して他の装置から周辺症状発症予測処理の実行が指示入力されることに対応して開始される。
【0048】
周辺症状発症予測処理が開始されると、ステップS1において、支援サーバ30の介護関連データ取得部311は、介護者用端末10等の端末装置から患者データを取得する。
ステップS2において、介護関連データ取得部311は、取得した患者データを被介護者(患者)と対応付けて介護関連データ記憶部371に記憶する。
ステップS3において、介護関連データ取得部311は、介護者用端末10等の端末装置から介護負担等データ及び認知症周辺症状発症データを取得する。このとき、介護関連データ取得部311は、介護負担等データ及び認知症周辺症状発症データの一方のみが介護者用端末10等から送信されている場合、送信されているデータのみを取得する。
【0049】
ステップS4において、介護関連データ取得部311は、取得した介護負担等データ及び認知症周辺症状発症データを介護関連データ記憶部371に記憶する。
ステップS5において、データ分析部312は、介護負担等データ及び認知症周辺症状発症データの取得を開始してから所定期間(例えば、2週間等)が経過したか否かの判定を行う。
介護負担等データ及び認知症周辺症状発症データの取得を開始してから所定期間が経過していない場合、ステップS5においてNOと判定されて、処理はステップS3に移行する。
一方、介護負担等データ及び認知症周辺症状発症データの取得を開始してから所定期間が経過した場合、ステップS5においてYESと判定されて、処理はステップS6に移行する。
【0050】
ステップS6において、データ分析部312は、認知症周辺症状発症データの要素(認知症周辺症状の種類)が生じる確率を算出するための発症確率算出式を生成または更新する。即ち、データ分析部312は、対象となる被介護者について、発症確率算出式が生成されていない場合には新たに生成し、既に生成されている場合には、フィードバックされた認知症周辺症状発症データを基に、発症確率算出式を更新する。
ステップS7において、データ分析部312は、患者データ及び支援者視点データ(介護負担等データ)に基づいて、発症確率算出式に従い被介護者における認知症周辺症状の発症を予測する。
ステップS8において、データ分析部312は、介護者の介護負担等データに基づいて、介護者の介護負担の状況を分析する。
【0051】
ステップS9において、支援データ提示部313は、認知症周辺症状の発症予測結果及び介護者の介護負担の状況分析結果を介護者用端末10等の端末装置に送信する。
ステップS10において、介護関連データ取得部311は、周辺症状発症予測処理の終了が指示されたか否かの判定を行う。
周辺症状発症予測処理の終了が指示されていない場合、ステップS10においてNOと判定されて、処理はステップS3に移行する。
一方、周辺症状発症予測処理の終了が指示された場合、ステップS10において、YESと判定されて、周辺症状発症予測処理は終了する。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る情報処理システム1は、介護基礎データ及び介護負担等データと、認知症周辺症状発症データとを対応付ける発症確率算出式に基づいて、被介護者において認知症周辺症状が発症する可能性を予測する。
そのため、介護者が認識する被介護者の日々の状態を反映した情報(例えば、介護負担等データ)を基に、被介護者が認知症周辺症状を発症する確率を逐次算出することができる
したがって、認知症高齢者における認知症周辺症状の発症をより適確に予測することができる。
【0053】
即ち、在宅で生活を継続する認知症高齢者(被介護者)の支援において重要な役割を担う家族等の支援者(介護者)に対し、認知症高齢者が認知症周辺症状を発症する確率が提示されることで、認知症周辺症状に対する支援の準備や、支援者の心構え等の対応を予め行うことが可能となる。
そのため、認知症高齢者を支援する支援者(家族等介護者)の負担を大きく軽減でき、支援者の自助を支えることができと共に、認知症高齢者の身体の安全を確保できる可能性が高まる。
【0054】
また、本実施形態に係る情報処理システム1は、介護者の介護負担等データに基づいて、介護者の介護負担の状況を分析し、介護者の介護負担の状況分析結果を表す情報を介護者に提示する。
そのため、介護者は、介護負担が高まっていることや、介護者自身の疲労をケアすべきことを客観的な情報として取得することができるため、介護作業における精神的・身体的な疲労を適切に回復することが可能となる。
【0055】
[変形例1]
上述の実施形態において、認知症周辺症状の発症を予測するために、患者データ(介護基礎データ)及び支援者視点データ(介護負担等データ)の要素を変数とし、認知症周辺症状発症データの要素(認知症周辺症状の種類)が生じる確率を算出するための発症確率算出式を生成するものとしたが、認知症周辺症状の発症を予測する手法は、これに限られない。即ち、患者データ及び支援者視点データを基に被介護者における認知症周辺症状の発症を予測できるものであれば、種々の手法を用いることができる。
【0056】
例えば、患者データ(介護基礎データ)及び支援者視点データ(介護負担等データ)の要素を入力とし、各種認知症周辺症状の発症確率を推論する機械学習モデルを用いて、被介護者における認知症周辺症状の発症を予測することとしてもよい。この場合、患者データ(介護基礎データ)及び支援者視点データ(介護負担等データ)の要素を入力とし、各種認知症周辺症状の実際の発症結果を出力とする教師データを機械学習(ディープラーニング等)させた機械学習モデルを構築する。そして、介護者等によって入力される患者データ(介護基礎データ)及び支援者視点データ(介護負担等データ)を機械学習モデルに入力することにより、被介護者における各種認知症周辺症状の発症確率を逐次推論することができる。
【0057】
このとき構築される機械学習モデルは、複数の被介護者における患者データ(介護基礎データ)及び支援者視点データ(介護負担等データ及び認知症周辺症状発症データ)を基に生成することや、対象となる被介護者及びその介護者における患者データ(介護基礎データ)及び支援者視点データ(介護負担等データ及び認知症周辺症状発症データ)を基に生成することが可能である。
これにより、患者データ(介護基礎データ)及び支援者視点データ(介護負担等データ及び認知症周辺症状発症データ)の要素を適確に反映させて、認知症高齢者における認知症周辺症状の発症を予測することができる。
【0058】
[変形例2]
上述の実施形態及び変形例において、支援者視点データ(介護負担等データ)として、支援者が日々記録している介護日誌のデータ(介護記録データ)を取得し、認知症周辺症状が発症する可能性の予測に用いるものとしたが、支援者視点データ(介護負担等データ)には、支援者に依拠する他の情報も用いることが可能である。
例えば、支援者視点データ(介護負担等データ)として、支援者の表情をデータとして取得し、被介護者において、認知症周辺症状が発症する可能性の予測に用いることとしてもよい。
この場合、一例として、介護日誌のデータ(介護記録データ)を介護者用端末10に入力する際の支援者の表情のデータを介護者用端末10の撮像部820等で取得することができる。表情のデータは、顔画像を分析することにより、疲労している、イライラしている、焦っている、あるいは、穏やかである等の状態に分類することができる。
これにより、支援者における同様の条件下の表情(介護日誌のデータを入力する際の表情)のデータを取得することができるため、支援者の日々の状況を表す表情のデータを適切に取得することができる。
このように、認知症周辺症状の発症を予測するための要素に支援者の表情のデータを組み入れることで、被介護者と密接に接触している支援者の表情に現れたストレス等を、被介護者における認知症周辺症状の発症予測に反映させることができる。
特に、被介護者の状態が最も反映される支援者に現れた変化に基づいて、被介護者の認知症周辺症状の発症を予測することができるため、被介護者における認知症周辺症状の発症をより適切に予測することができる。また、より多くのデータによって、被介護者における認知症周辺症状の発症を予測することができるため、より高精度に認知症周辺症状が発症する可能性を予測することが可能となる。
なお、支援者視点データ(介護負担等データ)として、支援者の表情のデータの他、支援者の音声をデータとして取得してもよい。
例えば、支援者が被介護者と会話する際の音声のデータを介護者用端末10に備えられたマイク等で取得することができる。音声のデータは、発話内容、話す速さ、声の大きさあるいは口調等を分析することにより、疲労している、イライラしている、焦っている、あるいは、穏やかである等の状態に分類することができる。
このように、認知症周辺症状の発症を予測するための要素に支援者の音声のデータを組み入れることで、被介護者と密接に接触している支援者の発話内容や語気に現れたストレス等を、被介護者における認知症周辺症状の発症予測に反映させることができる。また、より多くのデータによって、被介護者における認知症周辺症状の発症を予測することができるため、より高精度に認知症周辺症状が発症する可能性を予測することが可能となる。
【0059】
以上のように、本発明の実施形態に係る情報処理システム1は、介護者用端末10と、支援サーバ30と、を備えている。介護者用端末10は、UI制御部111を備え、支援サーバ30は、介護関連データ取得部311と、データ分析部312と、支援データ提示部313と、を備えている。
UI制御部111は、被介護者の介護に関して介護者が記録した介護記録データを含む支援者視点データを取得する。
UI制御部111は、支援者視点データに基づいて、支援サーバ30が生成した介護者を支援するための介護者支援データを表示する。
介護関連データ取得部311は、介護者用端末10から送信される支援者視点データを取得する。
データ分析部312は、支援者視点データに基づいて、被介護者における認知症周辺症状の発症を予測する。
支援データ提示部313は、データ分析部312の予測結果を含む介護者を支援するための介護者支援データを提示する。
これにより、介護者が認識する被介護者の日々の状態を反映した情報(支援者視点データ)を基に、被介護者が認知症周辺症状を発症する確率を逐次算出することができる。
ることができる。
したがって、認知症高齢者における認知症周辺症状の発症をより適確に予測することができる。
【0060】
介護関連データ取得部311は、被介護者における認知症周辺症状の発症結果を示す認知症周辺症状発症データをさらに含む支援者視点データを取得する。
データ分析部312は、認知症周辺症状発症データをフィードバックして、被介護者における認知症周辺症状の発症を予測する。
これにより、被介護者(患者)の介護者が情報処理システム1を利用するほど、その被介護者及び介護者に対して認知症周辺症状の適確な確率を出力するシステムとすることができる。
【0061】
介護関連データ取得部311は、支援者視点データとして、介護者の表情または音声のデータをさらに取得する。
データ分析部312は、介護者の表情または音声のデータを含む支援者視点データに基づいて、被介護者における認知症周辺症状の発症を予測する。
これにより、被介護者と密接に接触している支援者の表情、発話内容あるいは語気に現れたストレス等を、被介護者における認知症周辺症状の発症予測に反映させることができる。
【0062】
データ分析部312は、支援者視点データを分析して生成された、被介護者における認知症周辺症状の発症確率を算出する発症確率算出式に基づいて、被介護者における認知症周辺症状の発症を予測する。
これにより、認知症周辺症状の発症確率を容易に算出することができる。
【0063】
データ分析部312は、支援者視点データの要素を入力とし、当該入力に対する認知症周辺症状の発症確率を出力とする機械学習モデルに基づいて、被介護者における認知症周辺症状の発症を予測する。
これにより、患者データ及び支援者視点データの要素を適確に反映させて、認知症高齢者における認知症周辺症状の発症を予測することができる。
【0064】
データ分析部312は、被介護者に関する支援者視点データを蓄積開始後、設定された期間が経過した場合に、被介護者における認知症周辺症状の発症を予測する。
これにより、対象となる被介護者(患者)に関する一定量のデータを蓄積した時点で、信頼性の高い認知症周辺症状の発症予測結果を取得することが可能となる。
【0065】
データ分析部312は、特定の被介護者に関する支援者視点データと、他の被介護者に関する支援者視点データとに基づいて、特定の被介護者における認知症周辺症状の発症を予測する。
これにより、特定の被介護者に関する支援者視点データが充分に蓄積されていない場合であっても、統計的なデータに基づいて、一定の信頼性を有する認知症周辺症状の発症予測結果を取得することが可能となる。
【0066】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
即ち、上述の実施形態において、認知症周辺症状の発症を予測する場合、特定の被介護者に対する特定の1人の介護者による支援者視点データを用いてもよいし、特定の被介護者に対する複数の介護者による支援者視点データを用いてもよい。
例えば、被介護者を配偶者と子供とで介護している場合に、被介護者本人の配偶者による支援者視点データのみを用いてもよいし、被介護者本人の配偶者及び子供による支援者視点データを用いてもよい。
【0067】
また、上述の実施形態において、認知症周辺症状の発症を予測する際に、患者データ及び支援者視点データを用いる場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。即ち、認知症周辺症状の発症を予測できるデータであれば種々のデータを用いて予測を行うことが可能であり、例えば、支援者視点データのみを用いることや、患者データ、支援者視点データ以外のデータ(被介護者の生体情報等)を用いることが可能である。
【0068】
また、上述の実施形態における情報処理システム1のシステム構成は一例であり、情報処理システム1の機能が全体として実現されていれば、より多くのサーバに機能を分散して実装したり、情報処理システム1における複数の情報処理装置の機能をより少ない数の情報処理装置にまとめて実装したりすることが可能である。例えば、情報処理システム1の主要な機能を単体の情報処理装置に実装することで、スタンドアローン型の装置として実現することができる。
また、上述の実施形態における情報処理システム1は、クラウドサーバを利用してクラウドシステムとして実現することや、オンプレミスサーバを利用してオンプレミスシステムとして実現することが可能であり、これらの組み合わせで実現することも可能である。
【0069】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、上述の実施形態における機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が情報処理システム1を構成するいずれかのコンピュータに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に示した例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0070】
また、上述した一連の処理を実行するためのプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
1 情報処理システム、10 介護者用端末、20 活動量計、30 支援サーバ、40 ネットワーク、800 情報処理装置、811 プロセッサ、812 ROM、813 RAM、814 バス、815 入力部、816 出力部、817 記憶部、818 通信部、819 ドライブ、820 撮像部、831 リムーバブルメディア、111 UI制御部、112 データ管理部、171 入力データ記憶部、172,372 介護者支援データ記憶部、211 パラメータ設定部、212 測定部、213 記憶制御部、214 表示制御部、215 データ送信部、271 設定パラメータ記憶部、272 測定データ記憶部、311 介護関連データ取得部、312 データ分析部、313 支援データ提示部、371 介護関連データ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8