(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146849
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ポリ乳酸系樹脂発泡シート、成形品、及び発泡板
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CEQ
C08J9/04 CEY
C08J9/04 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024050324
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023057026
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】村上 大祐
(72)【発明者】
【氏名】川守田 祥介
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA09
4F074AA48
4F074AA66
4F074AA68
4F074AA98
4F074BA02
4F074BA12
4F074BA37
4F074BA38
4F074CA22
4F074CC04X
4F074CC05Z
4F074CC22X
4F074CD08
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA08
4F074DA12
4F074DA23
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA34
(57)【要約】
【課題】本発明は、環境負荷を低減でき、脆性を改善し、高い機械的強度と成形性とを両立するポリ乳酸系樹脂発泡シート、成形品、及び発泡板を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリ乳酸系樹脂と、ブタジエン系ゴム等の脆性改質剤とを含むポリ乳酸系樹脂発泡シートであって、脆性改質剤がブタジエン系ゴムの場合、ゴム分の含有量が前記ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して0.3質量部以上4.0質量部以下であり、緩衝係数が10以下となる時の圧縮応力が、0.20MPa以上0.70MPa以下であり、各方向における平均気泡径の関係が下記式(1)及び式(2)をいずれも満足することを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡シート。
0.20<DVD/{0.5×(DMD+DTD)}<0.50・・・(1)
400<(DMD×DTD×DVD)1/3<900・・・(2)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系樹脂と、脆性改質剤とを含むポリ乳酸系樹脂発泡シートであって、
JIS Z 0235:2002に準拠して求められる緩衝係数が10以下となる時のJIS K 6400-2:2012に準拠して求められる圧縮応力が、0.20MPa以上0.70MPa以下であり、
下記測定方法で測定される各方向における平均気泡径の関係が下記式(1)及び式(2)をいずれも満足する、ポリ乳酸系樹脂発泡シート。
0.20<DVD/{0.5×(DMD+DTD)}<0.50・・・(1)
400<(DMD×DTD×DVD)1/3<900・・・(2)
(但し、式(1)及び式(2)中、DMD、DTD、DVDはそれぞれ、発泡シートの押出方向(MD方向)、幅方向(TD方向)、厚み方向(VD方向)における平均気泡径であり、その単位はμmである。)
<ポリ乳酸系樹脂発泡シートの各方向における平均気泡径>
発泡シートの幅方向中央部から断面観察用試料を切り出し、走査電子顕微鏡を用いて押出方向(MD方向)、押出方向に直交する方向(TD断面)、各方向に直行する厚み方向(VD方向)における平均気泡径をそれぞれ測定し、DMD、DTD、DVDとする。
【請求項2】
前記脆性改質剤がブタジエン系ゴムであり、ゴム分の含有量が、前記ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して0.30質量部以上4.0質量部以下である、請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
【請求項3】
前記脆性改質剤がアクリル系ゴムであり、前記アクリル系ゴムの含有量は、前記ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して1.0質量部以上8.0質量部以下である、請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
【請求項4】
前記脆性改質剤が生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂であり、前記生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂の含有量は、前記ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部以下である、請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
【請求項5】
前記生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂がポリブチレンサクシネートである、請求項4に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
【請求項6】
フィルムインパクトテスターにより測定した打ち抜き必要エネルギーが0.30J以上である、請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
【請求項7】
見掛け密度が83kg/m3~310kg/m3である、請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
【請求項8】
連続気泡率が25%以下である、請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
【請求項9】
さらに気泡調整剤を含み、前記気泡調整剤の含有量が、前記ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して0.50質量部以上3.0質量部以下である、請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
【請求項10】
厚みが、0.50~5.0mmである、請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シートが熱成形されてなる成形品。
【請求項12】
食品用の容器である、請求項11に記載の成形品。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シートが板状に成形されてなる発泡板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂発泡シート、成形品、及び発泡板に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性発泡シート(発泡シート)を成形してなる容器は、食品等の容器として汎用されている。例えば、発泡層を有する発泡シートを成形した容器は、熱湯を注いで調理する即席麺等の食品の容器として、広く使用されている。
【0003】
近年、地球環境に配慮して、環境負荷を低減できる樹脂の使用が望まれている。環境負荷を低減できる樹脂としては、例えば、ポリ乳酸系樹脂等の生分解性樹脂や植物由来樹脂等が知られている。
例えば、特許文献1には、生分解性樹脂であるポリ乳酸系樹脂発泡シート、及びこれを用いたポリ乳酸系樹脂発泡成形体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリ乳酸系樹脂は、脆性において他の樹脂に劣る面があり耐衝撃性に劣る(靭性に劣る)という問題がある。
また、ポリ乳酸系樹脂発泡シートは、柔軟性に劣るため、モールドの曲面に対する追従性に劣り、且つ発泡シートが延伸し難く、成形性にも劣るという問題がある。成形性を高めるためにシートに柔軟性を付与しようとすると、機械的強度が悪くなる。これらの性質はトレードオフの関係にあるため両立することが困難である。
特許文献1においては、成形性及び耐熱性については検討されているが、脆性の改善について検討されておらず、且つ高い機械的強度と成形性とを両立することについても検討されていない。
【0006】
そこで、本発明は、環境負荷を低減でき、脆性を改善し、高い機械的強度と成形性とを両立するポリ乳酸系樹脂発泡シート、成形品、及び発泡板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を有する。
[1] ポリ乳酸系樹脂と、脆性改質剤とを含むポリ乳酸系樹脂発泡シートであって、
JIS Z 0235:2002に準拠して求められる緩衝係数が10以下となる時のJIS K 6400-2:2012に準拠して求められる圧縮応力が、0.20MPa以上0.70MPa以下であり、
下記測定方法で測定される各方向における平均気泡径の関係が下記式(1)及び式(2)をいずれも満足する、ポリ乳酸系樹脂発泡シート。
0.20<DVD/{0.5×(DMD+DTD)}<0.50・・・(1)
400<(DMD×DTD×DVD)1/3<900・・・(2)
(但し、式(1)及び式(2)中、DMD、DTD、DVDはそれぞれ、発泡シートの押出方向(MD方向)、幅方向(TD方向)、厚み方向(VD方向)における平均気泡径であり、その単位はμmである。)
<ポリ乳酸系樹脂発泡シートの各方向における平均気泡径>
発泡シートの幅方向中央部から断面観察用試料を切り出し、走査電子顕微鏡を用いて押出方向(MD方向)、押出方向に直交する方向(TD断面)、各方向に直行する厚み方向(VD方向)における平均気泡径をそれぞれ測定し、DMD、DTD、DVDとする。
[2] 前記脆性改質剤がブタジエン系ゴムであり、ゴム分の含有量が、前記ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して0.30質量部以上4.0質量部以下である、[1]に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
[3] 前記脆性改質剤がアクリル系ゴムであり、前記アクリル系ゴムの含有量は、前記ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して1.0質量部以上8.0質量部以下である、[1]に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
[4] 前記脆性改質剤が生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂であり、前記生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂の含有量は、前記ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部以下である、[1]に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
[5] 前記生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂がポリブチレンサクシネートである、[4]に記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
[6] フィルムインパクトテスターにより測定した打ち抜き必要エネルギーが0.30J以上である、[1]~[5]のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
[7] 見掛け密度が83kg/m3~310kg/m3である、[1]~[6]のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
[8] 連続気泡率が25%以下である、[1]~[7]のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
[9] さらに気泡調整剤を含み、前記気泡調整剤の含有量が、前記ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して0.50質量部以上3.0質量部以下である、[1]~[8]のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
[10] 厚みが、0.50~5.0mmである、[1]~[9]のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂発泡シート。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂発泡シートが熱成形されてなる成形品。
[12] 食品用の容器である、[11]に記載の成形品。
[13] [1]~[10]のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂発泡シートが板状に成形されてなる発泡板。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡シート、成形品、及び発泡板によれば、環境負荷を低減でき、脆性を改善し、高い機械的強度と成形性とを両立する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】発泡シートの製造装置の一例を示す模式図である。
【
図3】本発明に係る成形体の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
樹脂を構成する「単位」とはモノマーの重合により直接形成された原子団を意味する。また、モノマーに由来する単位を、モノマーの名称に単位を付して称する場合がある。例えば、「ブタジエン単位」は、ブタジエンに由来する単位である。
【0011】
≪ポリ乳酸系樹脂組成物≫
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ともいう。)を得るためのポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂と脆性改質剤を含有する。ポリ乳酸系樹脂組成物は、さらに、気泡調整剤を含むことが好ましい。
【0012】
<ポリ乳酸系樹脂>
ポリ乳酸系樹脂組成物に含まれるポリ乳酸系樹脂は、乳酸の単独重合体であっても乳酸と他のモノマーとの共重合体であってもよい。
前記共重合体を構成する他のモノマーとしては、乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価アルコール、脂肪族多価カルボン酸などが挙げられる。
前記モノマーは、例えば、多官能多糖類などであってもよい。
【0013】
ポリ乳酸系樹脂を構成する乳酸は、L-体とD-体とのいずれか一方でも両方であってもよい。
前記単独重合体であるポリ乳酸系樹脂は、ポリ(L-乳酸)樹脂、ポリ(D-乳酸)樹脂、及び、ポリ(DL-乳酸)樹脂の内のいずれであってもよい。
ポリ乳酸系樹脂は、発泡層に優れた強度を発揮させる上においてD-体に由来する単位に比べてL-体に由来する単位が多く含まれていることが好ましい。
但し、L-体が実質的に100質量%の割合で含まれているポリ(L-乳酸)樹脂は、機械的強度に優れるものの発泡層の脆性を顕在化させ易い。
そこで、本実施形態のポリ乳酸系樹脂組成物に含まれるポリ乳酸系樹脂は、D-体に由来する単位とL-体に由来する単位との合計に占めるD-体に由来する単位の割合(質量割合)が0.10質量%以上であることが好ましい。
該質量割合は、0.20質量%以上であることがより好ましく、0.30質量%以上であることが特に好ましい。
尚、D-体に由来する単位の割合が高くなると、発泡層に優れた強度が発揮されないことにもなり得る。
そこで、D-体に由来する単位とL-体に由来する単位との合計に占めるD-体に由来する単位の割合は、4.0質量%以下であることが好ましく、3.5質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることが特に好ましい。
即ち、D-体に由来する単位とL-体に由来する単位との質量比率(D-体/L-体)は、0.10/99.9~4/96の範囲内であることが好ましい。
このようなD-体に由来する単位とL-体に由来する単位との質量比率が好ましいのは、共重合体においても同じである。
【0014】
前記共重合体を構成する他のモノマーの内、脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸が挙げられる。
脂肪族多価カルボン酸は、無水物であってもよい。
【0015】
前記脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0016】
前記共重合体を構成する乳酸以外の脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。
【0017】
前記多官能多糖類としては、例えば、セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロイド、ビスコースレーヨン、再生セルロース、セロハン、キュプラ、銅アンモニアレーヨン、キュプロファン、ベンベルグ、ヘミセルロース、デンプン、アクロペクチン、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、ペクチン、キチン、キトサン、アラビアガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アカシアガムなどが挙げられる。
【0018】
前記共重合体においては、全単位中に乳酸(L-体及びD-体)に由来する単位が60質量%以上の割合で含有されていることが好ましい。
乳酸単位(L-体及びD-体)の含有量は、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0019】
ポリ乳酸系樹脂には、架橋された状態のポリ乳酸系樹脂(架橋ポリ乳酸系樹脂)を含有させることが好ましく、前記単独重合体を架橋された状態の架橋ポリ乳酸系樹脂として含有させることが好ましい。
特にポリ乳酸系樹脂には、有機過酸化物で架橋された架橋ポリ乳酸系樹脂を含有させることが好ましい。
ポリ乳酸系樹脂に含まれる前記ポリ乳酸系樹脂の少なくとも一部を有機過酸化物で架橋された架橋ポリ乳酸系樹脂とすることで発泡に適した溶融特性をポリ乳酸系樹脂に賦与できる。
【0020】
前記ポリ乳酸系樹脂を架橋するための有機過酸化物としては、例えば、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、及び、ケトンパーオキサイド等が挙げられる。
【0021】
前記パーオキシエステルとしては、例えば、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシアセテート、2,5-ジメチル2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、及び、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等が挙げられる。
【0022】
前記ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、パーメタンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、及び、t-ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0023】
前記ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、及び、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3等が挙げられる。
【0024】
前記ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、ジベンゾイルパーキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、及び、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド等が挙げられる。
【0025】
前記パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0026】
前記パーオキシケタールとしては、例えば、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ブタン、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルパーオキシ)バレレート、及び、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
前記ケトンパーオキサイドとしては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等が挙げられる。
【0027】
前記有機過酸化物による架橋では、架橋ポリ乳酸系樹脂に熱溶融時にゲルとなるような分子量が過大な成分を混在させたり、当該有機過酸化物の分解残渣による臭気の問題を発生させたりするおそれを有する。
このような問題を生じさせるおそれを抑制でき、樹脂組成物を発泡に適した状態にすることが容易である点において、前記有機過酸化物は、パーオキシエステルであることが好ましい。
また、パーオキシエステルの中でもポリ乳酸系樹脂の架橋に用いられる有機過酸化物は、パーオキシモノカーボネートやパーオキシジカーボネートなどのパーオキシカーボネート系有機過酸化物であることが好ましい。
本実施形態においてポリ乳酸系樹脂の架橋に用いられる有機過酸化物は、パーオキシカーボネート系有機過酸化物の中でもパーオキシモノカーボネート系有機過酸化物であることが好ましく、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートであることが特に好ましい。
【0028】
有機過酸化物は、通常、架橋する前のポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、0.10質量部以上であることが好ましく、0.20質量部以上であることがより好ましく、0.30質量部以上であることがさらに好ましい。
有機過酸化物の使用量が上記下限値以上であると、ポリ乳酸系樹脂を充分に架橋させ発泡しやすくなる。
有機過酸化物の使用量は、2.0質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以下であることがさらに好ましい。
有機過酸化物の使用量が上記上限値以下であると、架橋後のポリ乳酸系樹脂にゲルが混在することを抑制しやすくなる。
【0029】
前記ポリ乳酸系樹脂組成物に含有させるポリ乳酸系樹脂のメルトマスフローレイト(MFR)は0.10g/10min以上であることが好ましい。
該ポリ乳酸系樹脂のメルトマスフローレイトは、0.50g/10min以上であることがより好ましく、1.0g/10min以上であることがさらに好ましい。
該ポリ乳酸系樹脂のメルトマスフローレイトは、10g/10min以下であることが好ましく、8.0g/10min以下であることがより好ましく、5.0g/10min以下であることがさらに好ましい。
【0030】
ポリ乳酸系樹脂やポリ乳酸系樹脂組成物のメルトマスフローレイト(MFR)は、下記のようにして求めることができる。
【0031】
(ポリ乳酸系樹脂やポリ乳酸系樹脂組成物のメルトマスフローレイト(MFR)の求め方)
ポリ乳酸系樹脂やポリ乳酸系樹脂組成物のメルトマスフローレイト(MFR)はJIS K 7210:1999に準拠し測定することができる。メルトマスフローレイト(MFR)は同規格のB法記載の「b)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法」により測定することができる。メルトマスフローレイト(MFR)は(株)安田精機製作所製「メルトフローインデックステスター(自動)120-SAS」を用いて測定することができる。試料は70℃、5時間真空乾燥後、測定直前まで密封してデシケータ内で保存したものを用いる。測定条件は次の通りとする。
試料:3~8g
予熱(1):200秒
予熱(2):30秒
試験温度:190℃
試験荷重:21.18N
ピストン移動距離(インターバル):25mm
試料の試験回数は3回とし、その平均をメルトマスフローレイト(g/10min)の値とする。
【0032】
前記ポリ乳酸系樹脂は、質量平均分子量(Mw)が20万以上40万以下であることが好ましく、25万以上35万以下であることがより好ましい。
ポリ乳酸系樹脂の分子量は、下記のようにして求めることができる。
【0033】
(ポリ乳酸系樹脂の平均分子量の求め方)
ポリ乳酸系樹脂の数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)のそれぞれは、次のようにして求めることができる。
分子量を測定する試料20mgをクロロホルム6mLに溶解させ(浸漬時間:6±1.0h(一部不溶))、(株)島津ジーエルシー製非水系0.45μmシリンジフィルターにて濾過した上で次の測定条件にてクロマトグラフを用いて測定し、予め作成しておいた標準ポリスチレン検量線から試料の平均分子量を求める。
使用装置=東ソー(株)製「HLC-8320GPCEcoSEC」ゲル浸透クロマトグラフ(RI検出器・UV検出器内蔵)
【0034】
<GPC測定条件>
サンプル側
ガードカラム=東ソー(株)製TSKguardcolumnHXL-H(6.0
mm×4.0cm)×1本
測定カラム=東ソー(株)製TSKgelGMHXL(7.8mmI.D.×30cm)×2本直列
リファレンス側=抵抗管(内径0.1mm×2m)×2本直列
カラム温度=40℃
移動相=クロロホルム
移動相流量
リファレンス側ポンプ=0.5mL/min
サンプル側ポンプ=1.0mL/min
検出器=RI検出器
注入量=50μL
測定時間=25min
サンプリングピッチ=500msec
【0035】
検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工(株)製の製品名「STANDARDSM-105」及び「STANDARDSH-75」で質量平均分子量が5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、151,000、53,500、17,000、7,660、2,900、1,320のものを用いる。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、151,000、17,000、2,900)及びB(3,120,000、442,000、53,500、7,660、1,320)にグループ分けした後、Aを上記質量平均分子量の大きい順に、それぞれ2mg、3mg、4mg、4mg、4mgを秤量し、クロロホルム30mLに溶解させ、Bも同様に、上記質量平均分子量の大きい順に、それぞれ3mg、4mg、4mg、4mg、4mgを秤量し、クロロホルム30mLに溶解させる。 標準ポリスチレン検量線は、作製した各A及びB溶解液を50μL注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)を作成することにより得、その検量線を用いて平均分子量を算出する。
【0036】
これらのポリ乳酸系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 ポリ乳酸系樹脂の含有量は、ポリ乳酸系樹脂組成物に含まれる樹脂成分(ただし、脆性改質剤を除く)の総質量に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上100質量%以下がより好ましく、85質量%以上100質量%以下がさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
ポリ乳酸系樹脂の含有量が上記下限値以上であると、発泡シートの生分解性を高めやすくなり環境負荷を低減しやすくなる。
ポリ乳酸系樹脂の含有量が上記上限値以下であると、発泡シートの成形性及び機械的強度を向上しやすくなる。
【0037】
<脆性改質剤>
前記脆性改質剤は、樹脂に配合することにより、脆性を改善することができる樹脂である。 脆性改質剤としては、ブタジエン系ゴム、アクリル系ゴム、生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂が挙げられる。
【0038】
前記脆性改質剤のガラス転移温度Tgは、0℃以下である。前記脆性改質剤のガラス転移温度Tgは、-30℃以下であることが好ましく、-40℃以下であることがより好ましい。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定法」に規定されているガラス転移温度のうち「中間点ガラス転移温度:Tmg」である。
【0039】
[ブタジエン系ゴム]
前記ブタジエン系ゴムは、ブタジエンの単独重合体の状態でポリ乳酸系樹脂組成物に含まれてもよく、ブタジエンと、ブタジエンと共重合可能な他のモノマーで構成された共重合体ゴムとなってポリ乳酸系樹脂組成物に含まれてもよい。前記共重合体ゴムは、ブタジエンとは異なるモノマーで構成された共重合ブロックとポリブタジエンブロックとを備えたブロックポリマーであってもよく、ポリブタジエンと他のポリマーとのグラフト共重合体であってもよく、ブタジエンと他のモノマーとのランダム共重合体であってもよい。
【0040】
本実施形態のブタジエン系ゴムは、共重合体ゴムの状態でポリ乳酸系樹脂組成物に含まれることが好ましく、グラフト共重合体ゴムの状態でポリ乳酸系樹脂組成物に含まれることが好ましい。該共重合体ゴムは、ブタジエンとスチレンなどとの共重合体ゴム(スチレン-ブタジエンゴム)であってもよい。前記共重合体ゴムは、3種類以上のモノマーで構成された多元共重合体ゴムであってもよい。スチレン以外の共重合可能なモノマーを挙げると、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチルなどのアクリル系モノマーが挙げられる。
【0041】
前記共重合体ゴムは、コアシェル型ゴムであることが好ましい。前記コアシェル型ゴムは、コアと、該コアを覆うシェル層とを備え、前記コアがブタジエンに由来する単位を有する重合体で構成され、前記シェル層がメタクリル酸メチルの重合体で構成されていることが好ましい。
【0042】
前記共重合体ゴムとしては、ブタジエン以外にスチレンとアクリル系モノマーとを含む多元共重合体ゴムを採用することが好ましい。スチレン(St)とアクリル系モノマー(Aa)とは、0.8:1~1:0.8(St:Aa)のモル比で多元共重合体ゴムに含まれることが好ましい。前記アクリル系モノマーとしては、メタクリル酸メチルが好適である。即ち、共重合体ゴムとしては、MBSポリマー(メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体)が好適である。MBSポリマーは、さらにアクリル酸ブチルを少量(例えば、0.5質量%~2質量%)含んでいてもよい。
【0043】
ブタジエン系ゴムが共重合体ゴムである場合、共重合体ゴムを構成する全単位に対して、ブタジエン単位を35質量%以上含有していることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましい。
ブタジエン系ゴムが共重合体ゴムである場合、共重合体ゴムを構成する全単位に対して、ブタジエン単位を60質量%以下の割合で含有していることが好ましい。
【0044】
ブタジエン系ゴムがブタジエンの単独重合体である場合、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して0.30質量部以上4.0質量部以下の割合で含まれることが好ましく、0.50質量部以上3.5質量部以下の割合で含まれることがより好ましい。
ブタジエン系ゴムが共重合体ゴムである場合、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して8.0質量部以下で含まれることが好ましく、7.0質量部以下で含まれることがより好ましく、6.0質量部以下で含まれることがさらに好ましい。また、0.50質量部以上で含まれることが好ましく、1.0質量部以上で含まれることがより好ましく、2.0質量部以上で含まれることがさらに好ましい。
【0045】
[アクリル系ゴム]
前記アクリル系ゴムは、アクリル系モノマーの単独重合体の状態でポリ乳酸系樹脂組成物に含まれてもよく、2種以上のアクリル系モノマーで構成された共重合体ゴムとなってポリ乳酸系樹脂組成物に含まれてもよく、アクリル系モノマーと、アクリル系モノマーと共重合可能な他のモノマーで構成された共重合体ゴムとなってポリ乳酸系樹脂組成物に含まれてもよい。前記共重合体ゴムは、ブロックポリマーであっても、グラフト共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよい。
【0046】
本実施形態のアクリル系ゴムは、共重合体ゴムの状態でポリ乳酸系樹脂組成物に含まれることが好ましく、グラフト共重合体ゴムの状態でポリ乳酸系樹脂組成物に含まれることが好ましい。
グラフト共重合体ゴムとしては、例えば、アクリル系ゴムの存在下において、1種または2種以上のビニル系単量体を、アクリル系ゴムにグラフト重合させることにより得られたコアシェル型ゴムであることが好ましい。
【0047】
アクリル系ゴムがアクリル系モノマー単位以外の単位を含む共重合体ゴムである場合、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して8.0質量部以下で含まれることが好ましく、7.0質量部以下で含まれることがより好ましく、6.0質量部以下で含まれることがさらに好ましい。また、0.50質量部以上で含まれることが好ましく、1.0質量部以上で含まれることがより好ましく、2.0質量部以上で含まれることがさらに好ましい。
【0048】
[生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂]
生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂としては、グリコールと脂肪族ジカルボン酸との重縮合などにより得られるポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンオキザレート、ポリブチレンオキザレート、ポリネオペンチルオキザレート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケートなどが挙げられる。これらのなかでもポリブチレンサクシネートが特に好ましい。
【0049】
<気泡調整剤>
気泡調整剤としては、例えば、タルク、シリカ、マイカ、雲母等の無機粉末、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂粉末、多価カルボン酸等の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムとの混合物などが挙げられる。これらの気泡調整剤は、発泡層の独立気泡率を高め、発泡層を形成しやすい。
気泡調整剤は1種でよく2種以上併用してもよい。
【0050】
ポリ乳酸系樹脂組成物が気泡調整剤を含有する場合、気泡調整剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、例えば、0.50質量部以上3.0質量部以下が好ましく、0.80質量部以上2.8質量部以下がより好ましく、1.5質量部以上2.5質量部以下がさらに好ましい。
気泡調整剤の含有量が上記下限値以上であると、発泡シートの気泡が大きくなり過ぎることによる連続気泡率の上昇を抑制しやすくなり、機械的強度を高めやすくなる。気泡調整剤の含有量が上記上限値以下であると、発泡シートの気泡が小さくなり過ぎることによる連続気泡率の上昇を抑制しやすくなり、機械的強度を高めやすくなるとともに、ダイ等への目詰まりをより良好に防止し、発泡シートの外観をより良好にしやすくなる。
【0051】
<その他の樹脂>
ポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂及び脆性改質剤に加えて、さらにポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、「その他の樹脂」ともいう。)を含んでもよい。その他の樹脂としては、例えば、ポリ乳酸系樹脂以外の植物由来樹脂;ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の石油由来樹脂等が挙げられる。
なお、本明細書において、ガラス転移温度Tgが0℃以下である樹脂については脆性改質剤に分類し、その他の樹脂としては扱わない。
【0052】
植物由来樹脂としては、例えば、サトウキビ、トウモロコシ等の植物原料を由来とするポリマーが挙げられる。「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたポリマーが挙げられる。また、例えば、「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたモノマーが重合されたポリマーが挙げられる。「植物原料から合成され又は抽出されたモノマー」には、植物原料から合成され又は抽出された化合物を原料とし合成されたモノマーが含まれる。植物由来樹脂は、モノマーの一部が「植物原料を由来とする」ものを含む。
植物由来樹脂としては、いわゆるバイオPET、バイオPP等、植物由来のポリエステル系樹脂、植物由来のポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
【0053】
ポリ乳酸系樹脂組成物がその他の樹脂として植物由来樹脂を含む場合、植物由来であるその他の樹脂の含有量の合計は、ポリ乳酸系樹脂組成物の総質量に対して、3~30質量%が好ましく、4~25質量%がより好ましく、5~20質量%がさらに好ましい。
植物由来であるその他の樹脂の含有量の合計が上記下限値以上であると、環境負荷をより低減しやすい。植物由来であるその他の樹脂の含有量の合計が上記上限値以下であると、本発明の効果をより高めやすくなる。
【0054】
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体;スチレン系モノマーを主成分(50質量%以上)とし、スチレン系モノマーとこれに重合可能なビニルモノマーとの共重合体や、スチレン系モノマーの単独重合体もしくはこれらの共重合体もしくはスチレン系モノマーとビニルモノマーとの共重合体とジエン系のゴム状重合体との混合物又は重合体である、いわゆるハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS);等が挙げられる。
スチレン系モノマーと重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能性モノマー等が挙げられる。これらのビニルモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」と「メタクリレート」の一方又は双方を表し、「(メタ)アクリロニトリル」は、「アクリロニトリル」と「メタクリロニトリル」の一方又は双方を表す。
これらのポリスチレン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
ポリスチレン系樹脂は、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)、市販されているポリスチレン系樹脂、懸濁重合法等の方法で新たに調製されたポリスチレン系樹脂等、リサイクル原料でないポリスチレン系樹脂でもよいし、リサイクル原料のポリスチレン系樹脂でもよい。
リサイクル原料は、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体である。リサイクル原料は、食品用の容器、魚箱、家電緩衝材等を回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したもの等である。また、使用できるリサイクル原料は、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等)や事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等)から分別回収された非発泡のポリスチレン系樹脂成形体を粉砕し、溶融混練してリペレット化したものでもよい。
【0056】
ポリスチレン系樹脂のZ平均分子量は、例えば、80万以下が好ましく、10万~65万がより好ましく、15万~60万がさらに好ましく、15万~55万が特に好ましい。ポリスチレン系樹脂のZ平均分子量が上記数値範囲内であると、流動性が高まり、ポリ乳酸系樹脂をより均一に分散できる。ポリ乳酸系樹脂をより均一に分散するためには、ポリスチレン系樹脂のZ平均分子量は、ポリ乳酸系樹脂のZ平均分子量よりも大きいことがより好ましい。
【0057】
ポリ乳酸系樹脂組成物がポリスチレン系樹脂を含む場合、ポリスチレン系樹脂の含有量は、ポリ乳酸系樹脂組成物の総質量に対して、0~10質量%が好ましく、0~3.0質量%がより好ましく、0~1.0質量%がさらに好ましい。ポリスチレン系樹脂の含有量が上記下限値以上であると、発泡シートの成形性をより高められる。ポリスチレン系樹脂の含有量が上記上限値以下であると、より多くのポリ乳酸系樹脂を配合でき、環境負荷をより低減しやすい。
【0058】
石油由来ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンフラノエート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、テレフタル酸とエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールの共重合体、及びこれらの混合物並びにこれらとこれら以外の樹脂との混合物等が挙げられる。これらの石油由来ポリエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
ポリ乳酸系樹脂組成物がその他の樹脂として石油由来ポリエステルを含む場合、石油由来ポリエステルであるその他の樹脂の含有量の合計は、ポリ乳酸系樹脂組成物の総質量に対して、3~30質量%が好ましく、4~25質量%がより好ましく、5~20質量%がさらに好ましい。
石油由来ポリエステルであるその他の樹脂の含有量の合計が上記下限値以上であると、発泡シートの成形性をより高められる。石油由来ポリエステルであるその他の樹脂の含有量の合計が上記上限値以下であると、より多くのポリ乳酸系樹脂を配合でき、環境負荷をより低減しやすい。
【0060】
ポリ乳酸系樹脂組成物がその他の樹脂を含む場合、発泡シートの成形性や成形体の耐衝撃性をより高められる観点から、その他の樹脂としては、汎用ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂等のポリスチレン系樹脂が好ましく、ハイインパクトポリスチレン樹脂がより好ましい。
【0061】
その他の樹脂は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
ポリ乳酸系樹脂組成物がその他の樹脂を含有する場合、その他の樹脂の含有量の合計は、ポリ乳酸系樹脂組成物の総質量に対して、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、3質量%以下が特に好ましい。その他の樹脂の含有量の合計が上記範囲内であると、本発明の効果をより高めやすくなる。
【0062】
<その他の成分>
ポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂、脆性改質剤、気泡調整剤、その他の樹脂以外の他の成分(以下、任意成分ともいう。)を含有してもよい。任意成分としては、例えば、界面活性剤、架橋剤、充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、消臭剤、滑剤(炭化水素、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石鹸、シリコーン油、低分子ポリエチレン等のワックス等)、難燃剤、難燃助剤、展着剤(流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ポリブテン等)、帯電防止剤等が挙げられる。
【0063】
任意成分の種類は、発泡シートに求められる物性等を勘案して決定される。
任意成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリ乳酸系樹脂組成物に含まれる任意成分の総量は、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、0.010~5.0質量部が好ましい。
【0064】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸(炭素数8~23)塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル(炭素数8~18)硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキル(炭素数10~15)ベンゼンスルホン酸塩、β-テトラヒドロキシナフタレンスルホン酸塩等が挙げられる。塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、リチウム、亜鉛、アルミニウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸トリグリセリド、12-ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールジステアレート等の多価アルコール脂肪酸(炭素数8~18)エステル、エチレンビスステアリン酸アミド等の高級脂肪酸(炭素数8~23)アミド、高級脂肪酸(炭素数8~23)ビスアミド、硬化ヒマシ油のアルキレン(炭素数1~4)オキシド付加体、硬化油等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキル(炭素数8~18)アンモニウム酢酸塩類、アルキル(炭素数8~18)ジメチルベンジルアンモニウム塩類、アルキル(炭素数8~18)トリメチルアンモニウム塩類、ジアルキル(炭素数8~18)ジメチルアンモニウム塩類、アルキル(炭素数8~18)ピリジニウム塩類、オキシアルキレン(炭素数1~4)アルキル(炭素数8~18)アミン類、ポリオキシアルキレン(炭素数1~4)アルキル(炭素数8~18)アミン類等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、アルキル(炭素数8~23)ベタイン類、脂肪酸(炭素数8~18)アミドプロピルベタイン類、アルキル(炭素数8~23)イミダゾール類、アミノ酸類、アミンオキシド類等が挙げられる。
【0065】
界面活性剤としては、ポリ乳酸系樹脂の分解を抑制でき、ポリ乳酸系樹脂との相溶性が良好なことから、ノニオン界面活性剤が好ましく、多価アルコール脂肪酸エステルがより好ましい。ポリ乳酸系樹脂の分解を抑制できないと、ポリ乳酸系樹脂のZ平均分子量が低下し、発泡シートの成形性や成形体の耐衝撃性が低下する。
【0066】
ポリ乳酸系樹脂組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して0.010~2.0質量部が好ましく、0.050~1.5質量部がより好ましく、0.10~1.0質量部がさらに好ましい。
界面活性剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、0.010~10質量部が好ましく、0.010~7.0質量部がより好ましく、0.30~5.0質量部がさらに好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であると、本発明の効果をより高めやすくなる。
【0067】
安定剤としては、例えば、カルシウム亜鉛系熱安定剤、スズ系熱安定剤、鉛系熱安定剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セシウム系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化セリウム/ジルコニア固溶体、水酸化セリウム、カーボン、カーボンナノチューブ、酸化チタン、及びフラーレン等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、亜鉛華、沈降性シリカ、カドミウム赤等が挙げられる。
消臭剤としては、例えば、シリカ、ゼオライト、リン酸ジルコニウム、ハイドロタルサイト焼成物等が挙げられる。
【0068】
ポリ乳酸系樹脂組成物が任意成分を含有する場合、任意成分の含有量は、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して、例えば、0.050~20質量部が好ましく、0.10~10質量部がより好ましく、0.30~5.0質量部がさらに好ましい。任意成分の含有量が上記下限値以上であると、任意成分に由来する効果を発揮できる。任意成分の含有量が上記上限値以下であると、ダイ等への目詰まりをより良好に防止し、発泡シートの外観をより良好にできる。
【0069】
≪ポリ乳酸系樹脂発泡シート≫
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ともいう。)は、上記ポリ乳酸系樹脂組成物を発泡させて得られるシートである。
したがって、上記ポリ乳酸系樹脂組成物に由来するポリ乳酸系樹脂と、脆性改質剤とを含む。また、必要に応じて、気泡調整剤、その他の樹脂、及び任意成分を含む。
【0070】
ポリ乳酸系樹脂組成物における脆性改質剤がブタジエン系ゴムである場合、ポリ乳酸系樹脂発泡シートにおけるゴム分の含有量は、前記ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して0.30質量部以上4.0質量部以下であることが好ましく、0.50質量部以上3.5質量部以下であることがより好ましく、0.70質量部以上3.0質量部以下であることがさらに好ましい。
【0071】
なお、ゴム分の含有量とは、ブタジエン系ゴムを構成するブタジエン単位の含有量に対応する。
ゴム分の含有量は、発泡シートの分解物中のブタジエンモノマーの量をガスクロマトグラフで分析することによって測定する。ブタジエンモノマーのピークは、ポリ乳酸由来の分解物のピークと重なり直接定量できないが、ブタジエンと共重合していた他のモノマーのピークから間接的に定量することができる。
分解物中のブタジエンモノマーの量(ゴム分の含有量)は、ポリ乳酸系樹脂と混合する前のブタンジエン系ゴムを標準試料として作成した検量線に基づき、他のモノマーのピークから算出できる。具体的な測定方法は、実施例で詳述する。
【0072】
発泡シートの発泡倍率(以下、単に「倍率」ともいう。)は、4.0~15倍であることが好ましく、4.5~12倍であることがより好ましく、5.0~8.0倍であることがさらに好ましい。発泡シートの倍率が上記数値範囲内であると、機械的強度に優れ、且つ熱成形性をより向上しやすい。
本明細書において倍率は、実施例に記載された方法で測定できる。
【0073】
発泡シートの密度(見掛け密度)は、例えば、83kg/m3以上310kg/m3以下が好ましく、100kg/m3以上280kg/m3以下がより好ましく、150kg/m3以上250kg/m3以下がさらに好ましい。見掛け密度が上記下限値以上であると連続気泡率が高くなり過ぎず機械的強度を高めやすくなる。見掛け密度が上記上限値以下であると柔軟性、及び軽量性を向上しやすくなる。
本明細書において見掛け密度は、実施例に記載された方法で測定できる。
【0074】
発泡シートの厚みは、例えば0.50~5.0mmが好ましく、1.0~3.0mmがより好ましい。発泡シートの厚みが上記下限値以上であれば、十分な機械的強度を得られやすい。上記上限値以下であれば、柔軟性に優れ、成形加工が容易である。
本明細書において厚みは、実施例に記載された方法で測定できる。
【0075】
発泡シートの坪量は、例えば200~600g/m2が好ましく、300~500g/m2がより好ましい。上記下限値以上であると成形性を確保しやすく、上記上限値以下であると成形品の軽量性を確保しやすい。
本明細書において坪量は、実施例に記載された方法で測定できる。
【0076】
発泡シートの独立気泡率は、70%以上が好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。上限値は特に限定されず、例えば、99%以下が好ましい。発泡シートの独立気泡率が上記数値範囲内であると、機械的強度に優れ、且つ熱成形性をより向上しやすい。
発泡シートの独立気泡率は、JIS K7138:2006「硬質発泡プラスチック-連続気泡率及び独立気泡率の求め方」に記載の方法により測定される。
【0077】
発泡シートの連続気泡率は、25%以下が好ましく、23%以下がより好ましい。連続気泡率上記上限値以下であると、機械的強度を高めやすくなる。
本明細書において連続気泡率は、実施例に記載された方法で測定できる。
【0078】
ポリ乳酸系樹脂発泡シートにおいて、下記測定方法で測定される各方向における平均気泡径の関係は、下記式(1)及び式(2)をいずれも満足する。
0.20<DVD/{0.5×(DMD+DTD)}<0.50・・・(1)
400<(DMD×DTD×DVD)1/3<900・・・(2)
(但し、式(1)及び式(2)中、DMD、DTD、DVDはそれぞれ、発泡シートの押出方向(MD方向)、幅方向(TD方向)、厚み方向(VD方向)における平均気泡径であり、その単位はμmである。)
【0079】
式(1)において、DVD/{0.5×(DMD+DTD)}で算出される値は、0.20超0.50未満であり、0.25以上0.45以下が好ましく、0.30以上0.42以下がより好ましい。
DVD/{0.5×(DMD+DTD)}で算出される値が上記下限値以上であると、VD方向に気泡が適度に大きくなることによりMD方向とTD方向とにのみ気泡が大きくなるのを抑えて機械的強度を改善しやすくなる。
DVD/{0.5×(DMD+DTD)}で算出される値が上記上限値以下であると、VD方向に気泡が大きくなり過ぎるのを抑えることにより適度な柔軟性が得られるため成形性を向上しやすくなる。
式(2)において、(DMD×DTD×DVD)1/3で算出される値は、400超900未満であり、480以上800以下が好ましく、450以上700以下がより好ましい。
(DMD×DTD×DVD)1/3で算出される値が上記下限値以上であると、気泡が小さ過ぎることなく適度な大きさであるため、発泡シートの表面におけるコルゲートの発生を抑制しやすくなる。
(DMD×DTD×DVD)1/3で算出される値が上記上限値以下であると、気泡が大き過ぎることなく適度な気泡の大きさであるため、気泡が割れて連続気泡率が高くなることによる機械的強度の低下を抑制しやすくなる。
本明細書において平均気泡径は、実施例に記載された方法で測定できる。
【0080】
ポリ乳酸系樹脂発泡シートにおける、倍率、見掛け密度、厚み、坪量、独立気泡率、連続気泡率、及び平均気泡径は、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造条件、並びにポリ乳酸系樹脂発泡シートを構成するポリ乳酸系樹脂及びその他の樹脂の種類、組成、発泡剤、任意成分及びこれらの組合せにより調節できる。
【0081】
ポリ乳酸系樹脂発泡シートにおける、JIS Z 0235:2002に準拠して求められる緩衝係数(以下、単に「緩衝係数」ともいう。)が10以下となる時のJIS K 6400-2:2012に準拠して求められる圧縮応力(以下、単に「圧縮応力」ともいう。)が、0.20MPa以上0.70MPa以下である。
【0082】
前記測定方法で測定される圧縮応力は、0.25MPa以上0.60MPa以下であることが好ましく、0.28MPa以上0.55MPa以下であることがより好ましく、0.30MPa以上0.50MPa以下であることがさらに好ましい。
前記圧縮応力が上記下限値以上であると、機械的強度を高めやすくなる。
前記圧縮応力が上記上限値以下であると、適度な柔軟性が得られるため成形性を向上しやすくなる。
圧縮応力は、実施例に記載された方法で測定できる。
【0083】
ポリ乳酸系樹脂発泡シートにおける、フィルムインパクトテスターにより測定した打ち抜き必要エネルギーは、0.30J以上であることが好ましく、0.35J以上であることがより好ましく、0.40J以上であることが特に好ましい。
打ち抜き必要エネルギーが上記下限値以上であると、脆性を改善することができ、耐衝撃性を高めることができる。
【0084】
ポリ乳酸系樹脂発泡シートにおける、圧縮応力、緩衝係数は、ポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造条件、並びにポリ乳酸系樹脂発泡シートを構成するポリ乳酸系樹脂及びその他の樹脂の種類、組成、発泡剤、任意成分及びこれらの組合せにより調節できる。
【0085】
≪ポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法≫
本発明の発泡シートは、従来公知の製造方法に準拠して製造される。
発泡シートの製造方法としては、ポリ乳酸系樹脂組成物を調製し、ポリ乳酸系樹脂組成物をシート状に押し出し、発泡(一次発泡)する方法が挙げられる(押出発泡法)。
【0086】
<押出発泡法>
樹脂組成物を押出して発泡させる工程は、公知の手法を用いて行うことができる。
例えば、ダイ(フラットダイやサーキュラーダイ)を装着した押出機に、発泡シートの原料(ポリ乳酸系樹脂組成物と発泡剤)を供給すると、前記ダイに向かって移送されながら溶融混合されて発泡剤が混合されたポリ乳酸系樹脂組成物(以下「混合原料」という。)となる。混合原料はダイから押出され、発泡剤が発泡して発泡シートとなる。
【0087】
発泡シートの原料のうち発泡剤以外の成分、すなわち、ポリ乳酸系樹脂組成物を、予めドライブレンド法又はフルコンパウンド法等により混合し、前記押出機に供給してもよい。
なお、発泡シートにおける見掛け密度や連続気泡率は、発泡剤や気泡調整剤の量、押出時の樹脂温度等によって調整できる。押出時の樹脂温度は、樹脂が溶融し且つ任意成分が変性しない範囲で設定できる。
【0088】
押出発泡法による発泡シートの製造方法の一例について、
図2を用いて説明する。
図2の発泡シートの製造装置200は、押出発泡成形により発泡シートを得る装置であり、押出機202と、発泡剤供給源208と、サーキュラーダイ210と、マンドレル220と、2つの巻取機240とを備える。
押出機202は、いわゆるタンデム型押出機であり、押出機A202aと押出機B202bとが配管206で接続された構成とされている。第一の押出部202aはホッパー204を備え、押出機A202aには、発泡剤供給源208が接続されている。
押出機B202bには、サーキュラーダイ210が接続され、サーキュラーダイ210の下流には、マンドレル220が設けられている。マンドレル220は、カッター222を備える。
【0089】
まず、ポリ乳酸系樹脂組成物をホッパー204から押出機A202aに投入する。
押出機A202aでは、ポリ乳酸系樹脂組成物を任意の温度に加熱しながら混合して樹脂溶融物とし、発泡剤供給源208から発泡剤を押出機A202aに供給し、樹脂溶融物に発泡剤を混合して樹脂組成物とする。
加熱温度は、樹脂の種類等を勘案して、樹脂が溶融し且つ添加剤が変性しない範囲で適宜決定される。
【0090】
発泡剤が混合されたポリ乳酸系樹脂組成物(混合原料)は、押出機A202aから配管206を経て押出機B202bに供給され、さらに混合され、任意の温度に冷却された後、サーキュラーダイ210へ供給される。サーキュラーダイ210から押し出す際の混合原料の温度は140~190℃であり、より好ましくは150~190℃である。
【0091】
混合原料は、サーキュラーダイ210から押し出され、発泡剤が発泡して円筒状の発泡シート101aとなる。サーキュラーダイ210から押し出された発泡シート101aは、冷却空気211を吹き付けられた後、マンドレル220に供給される。この冷却空気211の温度、量、吹き付け位置との組み合わせにより、発泡シート101aの冷却速度を調節できる。
【0092】
円筒状の発泡シート101aは、マンドレル220で任意の温度にされ、サイジングされ、カッター222によって2枚に切り裂かれて発泡シート101となる。発泡シート101は、各々ガイドロール242とガイドロール244とに掛け回され、巻取機240に巻き取られて発泡シートロール102となる。
発泡シートの発泡倍数は、例えば、2~20倍とされる。
なお、発泡シートは、押出発泡成形以外の方法により製造されてもよい。
【0093】
<発泡剤>
発泡剤としては、公知の発泡剤を用いることができる。
発泡剤としては、例えば、重曹-クエン酸系発泡剤、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、カルシウムアジド、ナトリウムアジド、ホウ水素化ナトリウム等の無機系分解性発泡剤;アゾジカルボンアミド、アゾビススルホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物;N,N’-ジニトロソペンタンメチレンテトラミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’-オキシビスベンゼスルホニルセミカルバジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、バリウムアゾジカルボキシレート等が挙げられる。
【0094】
気体の発泡剤としては、空気、窒素、炭酸ガス、プロパン、ネオペンタン、メチルエーテル、二塩化フッ化メタン、n-ブタン、イソブタン等が挙げられる。なお、ここで気体とは、常温(15℃~25℃)で気体であることを意味する。一方、揮発性の発泡剤としては、エーテル、石油エーテル、アセトン、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。発泡剤は1種でもよく2種以上併用してもよい。
【0095】
混合原料中の発泡剤の含有量は、発泡剤の種類や、比重等を勘案して適宜決定され、例えば、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対して0.50~20質量部が好ましく、0.80~5.5質量部がより好ましい。
【0096】
≪成形体≫
本発明の成形体は、本発明の発泡シートを成形してなる。成形体としては、食品用の容器、工業用部品搬送トレー等の容器、緩衝材、梱包材、断熱材、電気製品又は自動車等の工業部材、建築部材等が挙げられる。
本実施形態の成形体は、耐衝撃性に優れることから、例えば、食品用の容器、搬送トレー、自動車等の車載部材、建築部材等に好適である。
【0097】
発泡シートを成形する方法としては、公知の熱成形の手法を用いることができる。例えば、以下の工程を有する方法で熱成形できる。
(1)発泡シートを加熱して熱成形可能な状態に軟化させる加熱工程、
(2)軟化した発泡シートを成形型の表面形状に追従するように変形させて製品形状を形成する成形工程、及び
(3)製品形状を形成した発泡シートの不要部分を切断して、目的の成形体を発泡シートから切り出すトリミング工程。
【0098】
前記(1)加熱工程は、例えば、輻射式加熱ヒーターなどを備えた加熱炉内を、発泡シートが一定時間かけて通過する方法で実施できる。
前記(2)成形工程は、加熱されて軟化した発泡シートを、成形型の表面に接触させて冷却する方法で実施できる。成形型としては、真空成形型、圧空成形型、真空圧空成形型、マッチモールド成形型など、一般的な成形型を使用できる。比較的大きな成形体を形成する場合は、雄雌一対となった成形型が好ましく、プラグアシスト真空成形型やマッチモールド成形型などを用いることが好ましい。深絞り成形においては、成形時に発泡シートが急激に冷却されて破れや薄肉化が生じる場合があるため、必要に応じて温度調整することが好ましい。
前記(3)トリミング工程は、トムソン刃型やパンチャー(打ち抜きパンチ)を用いた一般的手法を用いて実施できる。
【0099】
図3に示すように、成形体300は、平面視形状が真円形の丼形状の容器である。成形体300は、円形の底壁310と、底壁310の周縁から立ち上がる側壁320とを有する。成形体300には、側壁320の上端で囲まれた開口部330が形成されている。側壁320は上端に向かうに従い、外側に広がっている。側壁320の上端で囲まれた開口部330は、平面視真円形である。底壁310は、開口部330の方向に凸となる平面視真円形の凸部312と、凸部312を囲む円環状の凹部314とから形成されている。
【0100】
成形体の底壁部及び側壁部の厚さ(以下、「壁厚」ということがある。)は、用途等を勘案して決定され、例えば、20~1000μmが好ましく、40~800μmがより好ましく、60~600μmがさらに好ましい。成形体の壁厚が上記下限値以上であると、成形体の耐衝撃性をより高められる。成形体の壁厚が上記上限値以下であると、成形体をより軽量にできる。
成形体300は、食品用の容器として、好適に用いられる。
【0101】
なお、本実施形態の成形体300は、平面視で真円形であるが、本発明はこれに限定されない。成形体の平面視形状は、楕円形でもよいし多角形でもよい。
【0102】
≪用途≫
本実施形態の成形体は、食品容器、電気製品又は自動車等の工業部材に用いる緩衝材、梱包材、構造部材、断熱材等に使用することができる。
【0103】
≪発泡板≫
本実施形態での発泡板は、上記のようなポリ乳酸系樹脂で構成された発泡層を備えた、厚さ1.0mm以上の板状体である。ポリ乳酸系樹脂発泡板(以下、単に「発泡板」ともいう)の厚さは、2.0mm以上であってもよい。発泡板の厚さは、例えば、10mm以下とされる。発泡板の厚さは、8.0mm以下であってもよく、6.0mm以下であってもよい。本実施形態の発泡板が発泡層単独ではなく非発泡層などの他の層を備える場合、全体的な厚さについても上記のような値とすることができる。本実施形態での発泡板の厚さは、無作為に選択した複数箇所(例えば、10箇所)での厚さの測定値の算術平均値として求められ、シックネスゲージによる測定値の算術平均値として求められる。
【0104】
本実施形態の発泡板は、押出発泡法によって作製された押出発泡シートなどであってもよい。本実施形態の発泡板は、発泡層の見掛け密度が300kg/m3以下であることが好ましい。発泡層の見掛け密度は、250kg/m3以下であってもよく、200kg/m3以下であってもよい。発泡層の見掛け密度は、例えば、70kg/m3以上とすることができる。
【0105】
本実施形態の発泡板は、前記発泡層での前記ポリ乳酸系樹脂の結晶化度が25%以上である。該結晶化度は、30%以上であってもよく、35%以上であってもよい。ポリ乳酸系樹脂が結晶化度の高い状態で発泡層に含まれている本実施形態の発泡板は、強度と靱性とに優れる。前記結晶化度は、例えば、60%以下とされる。
【0106】
押出発泡シートの場合、通常、ポリ乳酸系樹脂が十分に結晶化する前にポリ乳酸系樹脂が冷え固まってしまう。特に、架橋された改質ポリ乳酸系樹脂を含む場合、ポリ乳酸系樹脂の分子運動が架橋によって制限されることから十分な結晶化が難しい。そのため、本実施形態では、押出機などで溶融混練されて加熱溶融状態になったポリ乳酸系樹脂を大気中に押出発泡して一旦発泡層の結晶化度が25%未満の押出発泡シートを作製した後に該押出発泡シートを加熱して結晶化度を上記のような値に向上させて発泡板を作製することが好ましい。
【0107】
このようにして結晶化度の向上された発泡板は、強度と靱性とに優れるばかりでなく、熱による歪みも生じ難くなる(寸法安定性に優れる)。熱による歪みの生じ難い本実施形態の発泡板は、例えば、炊き立ての米飯や加熱調理直後の総菜などが収容される弁当用の折箱の周側枠として適していると言える。発泡板は、90℃の温度で加熱した時の寸法変化率が5%以下であることが好ましい。寸法変化率は、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
【0108】
≪発泡板の製造方法≫
発泡板の製造方法としては、例えば、上記方法で得られたポリ乳酸系樹脂発泡シートをコンベア式加熱機に通すことで加熱・冷却した後、裁断機で裁断することで発泡板を製造する方法が挙げられる。加熱ゾーンの温度は、例えば、100℃~140℃が好ましく、110℃~130℃がより好ましい。加熱ゾーンの温度が上記範囲内であると、発泡板の結晶化が促進しやすくなり、また過発泡を抑えることができ、表面平滑性をより高められる。
【実施例0109】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
本実施例において使用した原料は下記の通りである。
【0110】
≪使用原料≫
<ポリ乳酸系樹脂>
・Biopolymer Ingeo 6202D:ポリ乳酸樹脂、Nature Works社製、MFR=10.1g/10min、密度=1.24g/cm3)。
<ブタジエン系ゴム>
・メタブレンC-223A:三菱ケミカル株式会社製、ブタジエン系の共重合体ゴム、Tg=-90℃~-70℃。
<アクリル系ゴム>
・メタブレン W-600A:三菱ケミカル株式会社製、アクリル系共重合体ゴム、Tg=-75℃~-45℃。
<ポリブチレンサクシネート>
・BioPBS FZ91PM:PTT MCC Biochem社製、ポリブチレンサクシネート樹脂、Tg=-40℃~-30℃。
<気泡調整剤>
・クラウンタルク:タルク、松村産業株式会社製。
【0111】
≪ポリ乳酸系樹脂の前処理≫
ポリ乳酸系樹脂(Nature Works社製「Biopolymer Ingeo6202D」)100質量部と、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(化薬アクゾ社製「カヤカルボンBIC-75」、1分間半減期温度T1:158.8℃)0.5質量部とをリボンブレンダーにて攪拌混合して、混合物を得た。
得られた混合物を、口径が57mmの二軸押出機(L/D=31.5)に供給した。フィード部の設定温度を170℃、それ以降の温度を230℃に設定し、回転数150rpmの条件にて二軸押出機中で前記混合物を溶融混練させ、押出機の先端に取り付けた口径3mm、孔数18個のダイから、50kg/hの吐出量で、混練物をストランド状に押し出した。次いで、押し出されたストランド状の混練物を、30℃の水を収容した長さ2mの冷却水槽中を通過させて、冷却した。
冷却されたストランドを、ペレタイザーでカットして、架橋された改質ポリ乳酸系樹脂のペレットを得た。得られた改質ポリ乳酸系樹脂のメルトマスフローレイト(MFR)は1.5g/10min、質量平均分子量(Mw)は33万であった。
【0112】
≪発泡シートの製造≫
<実施例1>
口径φ75mmの二軸押出機に設けられた混合スクリューに上記の方法で作製した改質ポリ乳酸系樹脂100質量部と気泡調整剤(松村産業(株)製「クラウンタルク」)2.4質量部と、ブタジエン系ゴム(三菱ケミカル(株)製「メタブレンC-223A」)2.9質量部とを供給して混合し、ポリ乳酸系樹脂組成物を得た。次いでポリ乳酸系樹脂組成物を押出機内に供給して加熱溶融させた。この溶融物に所定の位置でブタンガスを圧入し、混練させた。
次いで、口径125mmのサーキュラーダイから吐出量100kg/hで押出発泡させて、円筒状発泡体を得た。
得られた円筒状発泡体を内部が約5℃の水で冷却されているφ339mmのマンドレル上を沿わせ、またその外面をその径よりも大きいエアリングによりエアーを吹き付けることにより冷却成形し、円周上の1点でカッターにより切開して、帯状の発泡シートを得た。
【0113】
<実施例2~11、比較例1~7>
ポリ乳酸系樹脂組成物の配合を表1~3に示すように変更したこと、巻取機の引き速、エアリングからの風量を変更させてシートスペック(気泡径、倍率、連気率等)を調整したこと以外は、実施例1と同様にして発泡シートを得た。
【0114】
≪発泡シートの測定と評価≫
各例で得られた発泡シートについて、厚み、坪量、倍率(発泡倍率)、見掛け密度、連続気泡率、各方向における平均気泡径を以下の方法で測定した。実施例1~7、比較例1~5については、ゴム分の含有量も測定した。
また、以下の方法で、緩衝係数が10以下になるときの圧縮応力、打ち抜き必要エネルギー、及び成形性を評価した。結果を表1~3に示す。
【0115】
<ゴム分含有量>
ゴム分の含有量は次のようにして測定した。
各例で得られた発泡シートの約0.1gをクロロホルム約20mLに溶解し、ホットプレート上でフィルムを作製した。
フィルム化した試料を約0.1~0.5mg精秤した。
キューリー点が590℃の日本分析工業(株)製「パイロホイル」強磁性金属体で試料を包んで試験体を作製した。
試験体は強磁性金属体が試料に圧着するように作製した。
日本分析工業(株)製「JPS-700型」キューリーポイントパイロライザー装置にて試験体を加熱し、試料を分解させた。
分解によって生成した4-ビニルシクロヘキセンをアジレント・テクノロジー(株)製「GC7820A」ガスクロマトグラフ(検出器=FID)を用いて測定し、ピーク面積を求めた。
試料に含まれるブタジエン成分量は、予め作成しておいた検量線より算出した。
(熱分解条件)
測定装置=日本分析工業(株)製「JPS-700型」PYROFOIL SAMPLER
加熱温度=590℃
加熱時間=5sec
オーブン温度=300℃
ニードル温度=300℃
(GC測定条件)
測定装置=アジレントテクノロジー(株)製「7820A」ガスクロマトグラフ装置 検出器=FID
カラム=AgilentTechnologies社製「DB-5」キャピラリーカラム
(0.25μm×0.25mmφ×30m)
(GCオーブン昇温条件)
初期温度=50℃(0.5min保持)
第1段階昇温速度=10℃/min(200℃まで、0min保持)
第2段階昇温速度=20℃/min(320℃まで)
最終温度=320℃(0.5min保持)
キャリアーガス=He
He流量=63.736mL/min
注入口圧力=100kPa
カラム入口圧力=100kPa
注入口温度=300℃
検出器温度=300℃
スプリット比=1/50
検量線作成用標準試料は、三菱ケミカル(株)社製 メタブレンC-223Aを使用した。
【0116】
<厚み>
幅方向(押出流れ方向に直交する方向)における任意の21箇所の位置を測定点とした。この測定点を厚み測定器(株式会社テクロック社製、型式:SM-125)で、0.01mm単位で測定した。この測定値の相加平均を各例で得られた発泡シートの厚みとした。
【0117】
<坪量>
各例で得られた発泡シートから幅方向(押出流れ方向に直交する方向)の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片10個を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定した。各切片の質量(g)の平均値を1m2当たりの質量に換算した値を、坪量(g/m2)とした。
【0118】
<倍率>
後述の測定方法により見掛け密度を求め、次いで、ポリ乳酸系樹脂の密度を求め、該ポリ乳酸系樹脂の密度を見掛け密度の値で割って得られた値を、各例で得られた発泡シートの倍率(発泡倍率)とした。
【0119】
<見掛け密度>
各例で得られた発泡シートから、気泡構造を変えないように、50cm3のシートを切り出して試験片とし、この試験片の質量と体積を測定し、下記式により全体の見掛け密度を算出した。ただし、試験片は、製造後72時間以上経過(最大90日間)した発泡シートから切り出され、23℃±2℃、50RH%±5RH%の雰囲気条件に24時間放置されたものとした。
見掛け密度(kg/m3)=試験片の質量(kg)÷試験片の体積(m3)
【0120】
<連続気泡率>
各例で得られた発泡シートから、縦25mm×横25mmのシート状サンプルを複数枚切り出した。切り出したサンプルを空間があかないよう重ね合わせて厚み25mmとして試験片とした。得られた試験片の見掛けの体積(cm3)を求めた。見掛けの体積(cm3)は試験片の外寸を1/100mmまで測定して求めた。測定には(株)ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」ノギスを用いた。
次に、東京サイエンス(株)製「1000型」空気比較式比重計を用いて、1-1/2-1気圧法により試験片の体積(cm3)を求めた。
【0121】
下記式により連続気泡率(%)を計算した。連続気泡率は5つの試験片の平均値として求めた。試験片は予め、JIS K7100:1999 記号23/50、2級の環境下で16時間かけて状態を調節し、測定に用いた。測定は同環境下において実施した。なお、空気比較式比重計は、標準球(大28.96cm3 小8.58cm3)にて補正を行った。
連続気泡率(%)=(見掛け体積-空気比較式比重計で測定した体積)/見掛け体積×100
【0122】
<平均気泡径>
各例で得られた発泡シートの幅方向中央部から断面観察用試料1を切り出した。試料の断面は走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製走査電子顕微鏡「TM3030Plus」等)を用いて、50倍に拡大して撮影した。観察する断面の一つは、押出方向(MD方向)に平行し発泡シートの表面に垂直となる平面(
図1の矢印1)で試料を切断した際の断面(以下「MD断面」という)とした。観察する断面のもう一つは、押出方向に直交する平面(
図1の矢印2)での試料を切断した際の断面(以下「TD断面」という)とした。
走査電子顕微鏡で、MD断面、及び、TD断面のそれぞれに対し、2視野ずつ合計4視野の顕微鏡画像を撮影した。
【0123】
撮影した画像をA4用紙1枚に印刷し、印刷した画像上に押出方向(MD方向)、幅方向(TD方向)に平行になるように、画像の両端を結ぶ直線を任意の位置に3本描き、各方向に直行する厚み方向(VD方向)に平行になるように、シートの裏表面を結ぶ直線を任意の位置に3本描いた。
なお、任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにした。そしてこの直線が通過する気泡の数を数えた。気泡が接点のみで接してしまう場合には、この気泡も数に加えた。
【0124】
描いた直線の長さと、画像上のスケールバーを計測し、計測したスケールバーの長さとスケールバーの表示値から画像倍率を算出し次の式から平均弦長を算出した。
平均弦長 t(μm)=直線の実測値/(気泡数×画像倍率)
そして次式により各方向における気泡径を算出した。
気泡径D(μm)=t/0.616
さらにそれらの積の3乗根を平均気泡径とした。
平均気泡径(μm)=(DMD×DTD×DVD)1/3
DMD:MD方向の気泡径(μm)
DTD:TD方向の気泡径(μm)
DVD:VD方向の気泡径(μm)
【0125】
<緩衝係数が10以下となる時の圧縮応力の評価>
圧縮応力は、JIS K 6400-2:2012又はISO3386-1に記載の圧縮応力-ひずみ特性の測定方法に準拠して求めた。緩衝係数は、JIS Z 0235:2002又はISO4651に準拠して求めた。緩衝係数は、一実施形態に係る発泡シートが衝撃エネルギーを吸収する性能を表すものであり、圧縮試験により求めた圧縮応力を単位体積当たりの圧縮エネルギーで除した値(緩衝係数=圧縮応力/単位体積当たりの圧縮エネルギー)として算出した。
【0126】
圧縮応力は、各例で得られた発泡シートの複数箇所(3箇所)を測定し、それぞれの圧縮応力を圧縮エネルギーで除することで求めた緩衝係数の平均値を、各例で得られた発泡シートの緩衝係数とした。
【0127】
前記圧縮応力は、具体的には以下のように測定した。
即ち、圧縮応力の測定装置としては、A&D社製、型式 RTG-1310、及び5kNの校正されたロードセルを使用した。
各例で得られた発泡シートから均等に直径50mmの円を、打ち抜き又は切り取りを実施した。シートが薄い場合は、シートを複数枚重ねた場合に25mm~35mm(万能試験機に加圧板と固定した支持板の間に試料を挟み、2.9N~3.0Nの力を加えた場合)となるように必要な枚数を打ち抜き又は切り取りを実施した。シートを加圧板と支持板の間に挟み、速度(100±20)mm/分で試験片の厚さの(40±1)%まで加圧した。応力が0.30MPaまで到達しない場合は、圧縮量を厚さの70%まで変更してもよいこととした。
また、その時の1回目の圧縮の測定値を元に緩衝係数をJIS Z 0235:2002及びISO4651に準拠して求めた。上記を3回繰り返し、3回の平均値を元に緩衝係数を求めた。
【0128】
<打ち抜き必要エネルギーの評価>
フィルムインパクトテスター(安田精機製作所社製、商品名「No.181フィルムインパクトテスター」)により、衝撃吸収エネルギーを測定した。
各例で得られた発泡シートから100mm×90mmの評価試料を採取し、温度22℃、相対湿度40%となるように調整された環境下で、衝撃球サイズ6.35mmR、振子角度90度での試料の打ち抜き必要エネルギー(単位:J)を求めた。
具体的には、打ち抜き必要エネルギーを求める評価試料を試料板と試料押さえとの間にセットし、指針を1.5Jの線上に置き、振り子止めハンドルを倒して振り子を落下させた。そして、これにより評価試料が破れて振り子が指針を押して示した目盛りを読み取った。以上の操作を発泡シートの表裏5回ずつ行い、その平均値を求めた。
【0129】
<成形性の評価>
各例で得られた発泡シートを270℃のヒーター槽で15秒間加熱した後、クリアランス2mmに設計した雄型のプラグ型と雌型のキャビ型とにシートを密着させた。次に、プラグ型とキャビ型とを3秒間閉じて真空圧空成形し、開口部寸法φ190mm、底面寸法φ170mm、高さ50mmの平面視円形状の成形体を得た。
【0130】
得られた成形体の外観を目視で観察し、下記評価基準に基づいて、成形性を評価した。
(評価基準)
〇:問題なく成形できている。
×:成形体の開口部の直下に裂け又は引き込み皺がある。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
本発明を適用した実施例1~11は、脆性が改善され、機械的強度及び成形性に優れていた。
一方、脆性改質剤を含まない比較例1は、実施例1~11よりも脆性が高く、耐衝撃性において劣っていた。
平均気泡径の関係が前記式(1)の関係を満たさない比較例2は、緩衝係数が10以下となる時の圧縮応力が0.70MPa超であり、機械的強度に優れるが、実施例1~11よりも、柔軟性が低く成形性において劣っていた。
平均気泡径の関係が前記式(2)の関係を満たさない比較例4,5は、柔軟性が高く成形性に優れるが、実施例1~11よりも、機械的強度において劣っていた。
緩衝係数が10以下となる時の圧縮応力が0.20MPa未満である比較例3~7は、柔軟性が高く成形性に優れるが、実施例1~11よりも、機械的強度において劣っていた。
【0135】
これらの結果から、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡シート、成形品、及び発泡板によれば、環境負荷を低減でき、脆性を改善し、高い機械的強度と成形性とを両立できることが分かった。