(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146851
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】グルテン改質剤
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20241004BHJP
【FI】
A23L7/109 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024050669
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2023058250
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】石田 栄一
(72)【発明者】
【氏名】千葉 啓太
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA05
4B046LB01
4B046LC01
4B046LG02
4B046LG04
4B046LG06
4B046LG29
4B046LG33
4B046LP10
4B046LP15
4B046LP41
4B046LP51
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、グルテンを含有する穀粉生地に配合することにより、グルテンを改質し、穀粉生地の弾力性と伸展性を向上することが可能なグルテン改質剤を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、ルテインを含有することを特徴とする、グルテン改質剤を提供する。本発明のグルテン改質剤をグルテンを含有する穀粉生地に配合することにより、グルテンを改質し、穀粉生地の弾力性と伸展性を向上することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテインを含有することを特徴とする、グルテン改質剤。
【請求項2】
グルテン、及び、請求項1記載のグルテン改質剤を含み、
ルテインの含有量が、前記グルテン1000000質量部に対して0.2~20質量部であることを特徴とする、穀粉生地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルテンを含有する穀粉生地中に配合することでグルテンを改質し、穀粉生地の伸展性と弾力性を向上させることができるグルテン改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
穀粉生地を加熱して製造される食品は、小麦粉などの穀粉に水やその他原料を配合して混ぜ合わせるという共通の製造工程を経て得られる食品である。穀粉生地に含まれるグルテンは、混ぜ合わせる工程でグリアジンとグルテニンという2種類のたんぱく質が結合し形成される。グルテン形成は穀粉生地の物性に影響を及ぼし、グルテン形成が不十分であると穀粉生地の伸展性と弾力性が低下し、穀粉生地を加熱して得られる食品の品質が低下する。そのため、グルテンを改質し、伸展性と弾力性に優れた穀粉生地が望まれる。穀粉生地の物性を改良する方法として、例えば油脂にモノグリセリド及びジアセチル酒石酸モノグリセリドを配合した製パン練込油脂組成物について提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の方法では、ジアセチル酒石酸モノグリセリド等の乳化剤の作用により穀粉生地の伸展性が向上することが記載されているが、その効果は十分ではなく、また弾力性向上効果についても十分な効果は得られない。
【0005】
本発明の課題は、グルテンを含有する穀粉生地に配合することにより、グルテンを改質し、穀粉生地の弾力性と伸展性を向上することが可能なグルテン改質剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、カロチノイドであるルテインがグルテンを含有する穀粉生地においてグルテンを改質し、穀粉生地の伸展性と弾力性を向上させることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は下記[1]~[2]である。
[1]ルテインを含有することを特徴とする、グルテン改質剤。
[2]グルテン、及び、[1]記載のグルテン改質剤を含み、
ルテインの含有量が、前記グルテン1000000質量部に対して0.2~20質量部であることを特徴とする、穀粉生地。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、グルテンを含有する穀粉生地に配合することにより、グルテンを改質し、穀粉生地の弾力性と伸展性を向上することが可能なグルテン改質剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のグルテン改質剤は、ルテインを含有することを特徴とし、グルテンを含有する穀粉生地に配合することにより、グルテンを改質し、穀粉生地の弾力性と伸展性を向上する。
以下、本発明のグルテン改質剤について詳細に説明する。
【0010】
[ルテイン]
ルテインはカロチノイド系色素の1種類であり、生体内で網膜の黄斑部に局在することで、目に進入するエネルギーの高い光を吸収し、光によって生じる活性酸素を除去することで光に対する目の保護に有益な成分として知られている。本発明におけるグルテン改質剤は、フリー体のルテイン又はエステル体のルテインのうち少なくとも1種を含むものである。ルテインは、グルテンを含有する穀粉生地に配合し、混合することで、グルテンにルテインが結合してグルテンを改質し、穀粉生地の伸展性と弾力性を向上させることができる。色素であるルテインに、このようなグルテンの改質効果があることはこれまで知られておらず、本発明は従来技術からは想定できない新たな効果を見出したものである。
【0011】
ルテインは、ケール、パセリ、ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、レタス、かぼちゃの皮などの植物由来、あるいは鶏卵などの動物由来のものいずれも使用することができるが、ルテイン含有量、風味の観点より植物由来のものが好ましく用いられる。
【0012】
本発明におけるグルテン改質剤は、ルテインを含有する食品素材からルテインを喪失しない方法で抽出、ペースト化、乾燥粉末化等の加工処理したものを使用することができるが、グルテン含有穀粉生地に均一に分散できるように、油脂、W/O、O/W、粉末の状態が好ましい。例えば、ルテインは油溶性であることから油脂に溶解した状態で好ましく用いることができる。ルテインを含む動植物の乾燥粉末品と菜種油などの油と混合し緩やかに加熱後、動植物の乾燥粉末品をろ過し、食用油脂中にルテインが溶解したものを得ることができる。本発明のグルテン改質剤にルテインを含有する乾燥粉末を用いる場合、水分含量は10質量%以下であることが好ましい。また、乾燥粉末の粒径(D10%粒径、D90%粒径)は、乾燥粉末中のルテインが穀粉生地中に形成されたグルテンに作用しやすくするため、穀粉の粒径と同等のD10%粒径5μm以上、D90%粒径250μm以下が好ましい。ルテインを含有する乾燥粉末は、そのままもしくは小麦でんぷんなどと混合し所定の濃度に希釈して、本発明のグルテン改質剤とすることができる。なお、本発明において「D10%粒径」(あるいは「D90%粒径」)とは、測定対象の粒子径分布を体積基準で測定し、小さい側の粒子頻度%の累積値が10%(あるいは90%)となる粒子径として定義される。また、グルテン改質剤は、ルテインと乳化剤や多糖類、タンパク質、デキストリン等を配合して乾燥粉末化し、水に溶解可能な形態に加工したルテインを用いてもよく、水に溶解可能な形態に加工されたルイテンは液糖などと混合した状態で好ましく用いることができる。また液糖などに乳化剤を配合し、油溶性のルテインを乳化させてグルテン改質剤として用いてもよい。液糖は、液体状態の糖類、または、粉糖を溶液状態にしたものである。具体的には、グルコース、マント―ス、シュークロース、ラクトース、トレハロース、マルトトリオース、テトラオース、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール等の単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、五糖類、六糖類、澱粉加水分解物及びこれらを還元した糖アルコール、又は、それらの混合物の液状物、例えば、水飴、還元水飴、砂糖混合ぶどう糖果糖液糖なども用いることができる。また、本発明に用いられる液糖の粘度は、B型粘度計にて20℃条件下で0.1~10,000mPa・s以下であることが好ましい。液糖の粘度が10,000mPa・sを超える場合、本発明のグルテン改質剤の穀粉生地への分散性が低下し、その結果、ルテインの穀粉生地への分散性も低下してしまうため、作業時間を短縮できるという効果を十分に発揮することはできない。
本発明のグルテン改質剤における液糖の含有量は、ルテインを含む原料の含有量によって適宜調整される。例えば、下限値としては、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上である。
グルテン改質剤として、液糖にルテインを含有した油を用いる場合、液糖にルテインを含有した油を分散させた際の平均粒径は、0.01μm以上、1000μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.05μm以上、500μm以下であり、最も好ましくは0.1μm以上、100μm以下である。この範囲であれば、ルテインの穀粉生地への分散性が向上し、本発明の効果をより発揮することができる。ルテインを含有した油は液糖に分散していればよく、分散方法は特に限定するものでない。なお、液糖にルテインを含有した油を分散させた際の平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950(株式会社堀場製作所製)にて平均径を測定した。
また、グルテン改質剤として、液糖にルテインを含有した場合のグルテン改質剤の粘度は、B型粘度計にて20℃条件下で0.1~10,000mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは100~8000mPa・sであり、さらに好ましくは500~6000mPa・sである。この範囲であれば穀粉生地へグルテン改質剤が十分に分散することができる。
【0013】
本発明のグルテン改質剤中のルテイン含有量は0.2質量ppm~400質量ppmが好ましい。下限値は、より好ましくは1質量ppm以上であり、特に好ましくは2質量ppm以上である。上限値は、より好ましくは300質量ppm以下であり、特に好ましくは200質量ppm以下である。
ルテイン含有量がこの範囲であれば、穀粉生地中のグルテンと適切な量で混合することができ、本発明の効果をより発揮することができる。
【0014】
本発明のグルテンを含有する穀粉生地中に配合するために用いるグルテン改質剤は、例えばグルテン1000000質量部に対してルテイン0.2~20.0質量部となるように配合することが好ましい。さらに好ましくは0.5~15.0質量部であり、最も好ましくは1.5~10.0質量部である。0.2質量部以上の場合にはルテインのグルテン改質効果を十分に発揮することができる。また20.0質量部以下であれば穀粉生地の伸展性と弾力性をバランスよく向上させることができ、本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0015】
ルテインの原料としては、市販品としては、例えば、「Lyc-O-Lutein 20% in Safflower Oil」(サンブライト株式会社輸入・販売)等が商業的に入手できる。またルテインを含む原料をペースト化もしくは乾燥粉末化し用いてもよいし、ペースト化もしくは粉末化した市販品を使用してもよい。例えば、ケールパウダー(こだま食品株式会社製)、パセリパウダー(こだま食品株式会社社製)小松菜ファインパウダー(三笠産業株式会社製)、CSパセリY42(エスビー食品株式会社製)がルテインを含む野菜の粉末として商業的に入手できる。
【0016】
本発明におけるルテイン含有量の測定方法は、日本農林規格(JAS)0008:2019に準じて測定した。
【0017】
[穀粉生地]
本発明の穀粉生地とは、グルテンを含有する生地を指す。例えば、グルテンを形成する穀粉に水、卵などの水分を含む液体を混ぜ合わせて、穀粉生地中でグルテンを形成してもよいし、事前に形成されたグルテン原料を使用してもよい。穀粉としては、小麦粉、そば粉、ライ麦粉、大麦粉、米粉、トウモロコシ粉、オーツ粉末、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、さつまいも澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、さご澱粉、くず澱粉等を1種類以上混合したものを用いることができる。本発明のグルテン改質剤がグルテンの改質による穀粉生地の伸展性および弾力性を向上するという観点から、穀粉生地には、小麦粉などのグルテンを形成する穀粉を穀粉生地に含む必要があるが、グルテンを形成しない米粉などの穀粉を混合して用いても良い。
本発明の穀粉生地中のグルテン含量は、穀粉生地中の穀粉100質量部に対して好ましくは0.5~100質量部、より好ましくは1~100質量部、最も好ましくは1.5~100質量部である。
なお、本発明におけるグルテン含有量は、ISO 21415-2(2015)およびISO 21415-4(2006)に準じてドライグルテンとして測定した。
【0018】
本発明の穀粉生地は、さらにグルテン改質剤を含有する。グルテン改質剤は、どのように添加してもよいが、例えば、グルテン及び/又はグルテンを形成する穀粉、水、グルテン改質剤を混合し、ミキサー等で十分に練り込むことにより得ることができる。グルテン及び/又はグルテンを形成する穀粉、水、グルテン改質剤を混合する順番は問わない。
【0019】
本発明の穀粉生地中のグルテン改質剤の含有量は、穀粉100質量部に対して0.1~10質量部が好ましい。下限値として、より好ましくは0.5質量部以上である。上限値として、より好ましくは5質量部以下であり、最も好ましくは3質量部以下である。0.1質量部以上とすることにより、穀粉に対するグルテン改質剤の均一混合性に優れ、10質量部以下とすることで作業性良く穀粉生地の弾力性と伸展性を向上することができる。
【0020】
[その他成分]
本発明の穀粉生地は、穀粉の他にイースト、イーストフード、乳化剤、油脂類、水、加工澱粉、乳製品、食塩、糖類、調味料(グルタミン酸ソーダ類や核酸類)、保存料、ビタミン、カルシウム等の強化剤、蛋白質、アミノ酸、化学膨張剤、フレーバー、レーズン等の乾燥果実等を本願発明の効果を損なわない範囲で任意に用いることができる。
【実施例0021】
次に実施例を挙げて本発明を説明する。
【0022】
[グルテン改質剤の製造]
(実施例1-1~1-3、比較例1-1)
表1に示す配合組成をベースに以下の方法により実施例1-1を製造した。すなわちルテイン含有オイル(製品名:Lyc-O-Lutein 20% in Safflower Oil、サンブライト株式会社輸入・販売、ルテイン含有量20g/100g)を用い、ルテイン含有オイル100g、菜種油9900gを混合、攪拌しルテイン含有オイル100倍希釈品(ルテイン含有量2000質量ppm)を得た。さらに、ルテイン含有オイル100倍希釈品125g、菜種油9875gを混合、攪拌して、グルテン改質剤(ルテイン含有量25質量ppm)を得た。
同様に、実施例1-2、1-3、比較例1-1についても表1に示す配合組成にてグルテン改質剤を製造した。
【0023】
(実施例2-1~2-5、比較例2-1)
市販されているパセリおよびレタスを購入し、粉末化しグルテン改質剤に用いた。パセリ、レタスをそれぞれ100g用意し、真空凍結乾燥機(AdVantagePLUSにて水分が1%以下となるまで乾燥させた。その後、高速カッターミキサーにて粉砕をし、パセリおよびレタスの乾燥パウダーを得た。それぞれのルテイン含有量を測定したところ、パセリ乾燥パウダー(900質量ppm)、レタス乾燥パウダー(180質量ppm)であった。また市販されているケールパウダー(こだま食品株式会社製)も同様にルテイン含有量を測定したところ、ケールパウダー(2800質量ppm)であった。
これら乾燥粉末パウダーを使用し、表2に示す配合組成にて実施例2―1を製造した。すなわちパセリ乾燥パウダー3gと小麦でんぷん97gを均一分散させグルテン改質剤(ルテイン含有量27質量ppm)を得た。
同様に実施例2-2~2-5、比較例2-1についても表1に示す配合組成をベースにグルテン改質剤を上記方法で製造した。
【0024】
【0025】
【0026】
(小麦グルテンの穀粉生地(グルテン含有量100質量%)の伸展性、弾力性評価)
実施例1-1~1-3、2-1~2-5、比較例1-1、2-1のグルテン改質剤について以下の方法で穀粉生地の伸展性、弾力性を評価した。すなわち、関東混合機工業(株)製ミキサーボウルに小麦グルテン(株式会社ニップン社製、商品名:粉末状小麦たんぱく グルテン含有量100質量%)1000g、グルテン改質剤100g、水1000gを投入し、ドゥフックにて低速3分間、中低速6分間攪拌後、穀粉生地を製造した。得られた穀粉生地を150gづつ分割し、ブラベンダーエキステンソグラフE(株式会社パーカーコーポレーション社製)のラウンダーにて球状にし、球状となった穀粉生地の底部からの最大高を測定し、弾力性評価に用いた。球状にした際、弾力性が良好であれば穀粉生地がダレることなく球状を維持し、最大高は高くなる。
実測値として最大高は比較例1-1で43mm、比較例1-2で44mmであった。
評価においては、比較例1-1もしくは比較例2-1の最大高をそれぞれ100とし、最大高が105以上の場合を「5」、102以上、105未満の場合を「4」、98以上、102未満の場合を「3」、95以上、98未満の場合を「2」、95未満の場合を「1」として評価した。「5」、「4」のみ穀粉生地の弾力性を合格とした。
次にラウンダーにて球状となった穀粉生地を10センチの長さとなるよう棒状に伸ばし、5分間静置したのち、片方の端を固定し、もう片方を端から1センチのところをつかみ、1cm/10秒の速さで引っ張り試験を実施した。穀粉生地が切れた際の穀粉生地の長さで伸展性を評価した。伸展性が良好なほど穀粉生地の長さが長くなる。
実測値として伸展性は比較例1-1で14.5cm、比較例1-2で13.2cmであった。
評価においては、比較例1-1もしくは比較例2-1の穀粉生地の長さをそれぞれ100とし、穀粉生地の長さが105以上の場合を「5」、102以上、105未満の場合を「4」、98以上、102未満の場合を「3」、95以上、98未満の場合を「2」、95未満の場合を「1」として評価した。「5」、「4」のみ穀粉生地の伸展性を合格とした。
【0027】
(小麦粉の穀粉生地(グルテン含有量10.2質量%)伸展性、弾力性評価)
実施例1-1~1-3、2-1~2-5、比較例1-1、2-1のグルテン改質剤については以下の方法で穀粉生地の伸展性、弾力性を評価した。
関東混合機工業(株)製ミキサーボウルに小麦粉(日本製粉株式会社製、製品名:イーグル)1000g、塩15g、水700gを投入し、ドゥフックにて低速3分間、中低速6分間攪拌した。このときのグルテン含有量は10.2質量%であった。さらに実施例1-1のグルテン改質剤10gを投入し、ドゥフックにて低速3分間、中低速6分間攪拌後、穀粉生地を製造した。得られた穀粉生地を150gづつ分割し、ブラベンダーエキステンソグラフE(株式会社パーカーコーポレーション社製)にて伸展性と弾力性を評価した。穀粉生地をラウンダーにて球状にし、球状の生地をロール状にする生地ローラーにてロール状にした。その後専用ホルダーにて20℃で40分間ねかせ、その後ストレッチング装置で生地を引っ張り測定した。得られたグラフの横軸のカーブ底辺の長さ(生地が伸びた長さ)を伸展性とし、底辺の長さが長いほど伸展性に優れていることを示す。また、得られたグラフの縦軸の最大値を弾力性とし、縦軸の最大値が大きいほど弾力性に優れていることを示す。
実測値として伸展性は比較例1-1で142mm、比較例1-2で138mmであった。弾力性は比較例1-1で450BU、比較例1-2で480BUであった。
比較例1-1もしくは比較例2-1の伸展性をそれぞれ100とし、伸展性が105以上の場合を「5」、102以上、105未満の場合を「4」、98以上、102未満の場合を「3」、95以上、98未満の場合を「2」、95未満の場合を「1」として評価した。「5」、「4」のみ合格とした。
比較例1-1もしくは比較例2-1の弾力性をそれぞれ100とし、弾力性が105以上の場合を「5」、102以上、105未満の場合を「4」、98以上、102未満の場合を「3」、95以上、98未満の場合を「2」、95未満の場合を「1」として評価した。「5」、「4」のみ合格とした。
【0028】
(評価結果)
表1、表2より、グルテン改質剤によって、グルテン含有穀粉生地の伸展性、弾力性が向上することが分かる。
【0029】
[グルテン改質剤の製造]
(実施例3-1~3-3、比較例3-1)
表3に示す配合組成をベースに実施例1-1の記載の方法により実施例3-1~3-3、比較例3-1のグルテン改質剤を製造した。
【0030】
(実施例4-1~4-5、比較例4-1)
表4に示す配合組成をベースに実施例2-1の記載の方法により実施例4-1~4-5、比較例4-1のグルテン改質剤を製造した。
【0031】
実施例3-1~3-3、4-1~4-5、比較例3-1、4-1のグルテン改質剤について、以下の方法で麺用穀粉生地および中華麺を製造し、麺用穀粉生地の生地物性(伸展性)、中華麺の食感(粘り、弾力)を評価した。
【0032】
[麺用穀粉生地の製造]
次の方法により麺用穀粉生地を製造した。具体的には、小麦粉(日清製粉株式会社製、商品名:特飛龍)1kg、食塩10g、かん水10g、グルテン改質剤10g、水350gを麺用横型ピンミキサー(株式会社ソデック製、VM-1)で真空を90kPaで引きながら12分間混錬し麺用穀粉生地を得た。
なお、麺用穀粉生地中のグルテン含量は、小麦粉100gあたり10.1gであった。
【0033】
[中華麺の製造]
麺用穀粉生地をロール式製麺機にて圧延してから切り出し(切り刃:角20番)、麺線の厚みが1.5mmの生麺(中華麺)を製造した。得られた生麺100gを沸騰水2L中で2分半茹で、70℃のお湯300mlに入れて喫食した(ホット中華麺)。また同様に茹でた麺を氷水に1分間浸し、締めた後に喫食した(冷やし中華麺)。以下の方法にて麺用穀粉生地の生地物性(伸展性)および中華麺の食感(弾力、粘り)を評価した。
【0034】
(伸展性の評価方法)
麺用穀粉生地をロール式製麺機にて1.5mmの厚さへ圧延した際に伸展性が低下した麺用穀粉生地では麺帯表面が滑らかではなく、ひび割れや凹凸(おうとつ)といった荒れが生じる。そこで、比較例3-1もしくは比較例4-1のグルテン改質剤を使用した場合の麺用穀粉生地の麺帯表面の荒れを麺用穀粉生地の生地物性(伸展性)の基準とし、荒れが明らかに少ない(5)、荒れが少ない(4)、同等(3)、荒れが多い(2)、荒れが明らかに多い(1)として評価した。これを伸展性の評点とし、4以上を合格とした。
【0035】
(弾力の評価方法)
ホット中華麺および冷やし中華麺を食した際に弾力をパネラー10人にて官能評価にて評価した。比較例3-1もしくは比較例4-1のグルテン改質剤を使用した場合の中華麺の弾力を基準とし、弾力がしっかりと感じる(5)、弾力がやや強く感じる(4)、同等(3)、弾力がやや弱く感じる(2)、弾力が明らかに弱く感じる(1)として評価した。パネラー10人の官能評価の平均値を小数点第一位で四捨五入した点を評点とし、4以上を合格とした。
【0036】
(粘りの評価方法)
ホット中華麺および冷やし中華麺を食した際に粘りをパネラー10人にて官能評価にて評価した。比較例3-1もしくは比較例4-1のグルテン改質剤を使用した場合の中華麺の粘りを基準とし、粘りがしっかりと感じる(5)、粘りがやや強く感じる(4)、同等(3)、粘りがやや弱く感じる(2)、粘りが明らかに弱く感じる(1)として評価した。パネラー10人の官能評価の平均値を小数点第一位で四捨五入した点を評点とし、4以上を合格とした。
【0037】
【0038】
【0039】
[液糖を配合したグルテン改質剤の製造]
(実施例5-1~5-3、比較例5-1)
表5に示す配合組成をベースに以下の方法により実施例5-1のグルテン改質剤を製造した。実施例5-1では、液糖(三菱商事フードテック(株)製、製品名:アマミール)1998.6g、ルテイン(協和発酵バイオ(株)製、製品名:水溶性ルテイン3.5)1.4gを混合、攪拌して、グルテン改質剤(ルテイン含有量24.5質量ppm)を得た。
同様に、実施例5-2、5-3、比較例5-1についても表5に示す配合組成にてグルテン改質剤を製造した。
【0040】
実施例5-1~5-3、比較例5-1のグルテン改質剤について、以下の方法で穀粉生地を製造し、穀粉生地の生地物性(伸展性、弾力性)を評価した。
【0041】
(小麦グルテンの穀粉生地(グルテン含有量100質量%)伸展性、弾力性評価)
実施例5-1~5-3、比較例5-1のグルテン改質剤については以下の方法で穀粉生地の伸展性、弾力性を評価した。
関東混合機工業(株)製ミキサーボウルに小麦グルテン(株式会社ニップン社製、商品名:粉末状小麦たんぱく グルテン含有量100質量%)1000g、グルテン改質剤100g、水1000gを投入し、ドゥフックにて低速3分間、中低速6分間攪拌後、穀粉生地を製造した。得られた穀粉生地を150gづつ分割し、ブラベンダーエキステンソグラフE(株式会社パーカーコーポレーション社製)のラウンダーにて球状にし、球状となった穀粉生地の底部からの最大高を測定し、弾力性評価に用いた。球状にした際、弾力性が良好であれば穀粉生地がダレることなく球状を維持し、最大高は高くなる。
実測値として最大高は比較例5-1で42mmであった。
評価においては、比較例5-1の最大高をそれぞれ100とし、最大高が105以上の場合を「5」、102以上、105未満の場合を「4」、98以上、102未満の場合を「3」、95以上、98未満の場合を「2」、95未満の場合を「1」として評価した。「5」、「4」のみ穀粉生地の弾力性を合格とした。
次にラウンダーにて球状となった穀粉生地を10センチの長さとなるよう棒状に伸ばし、5分間静置したのち、片方の端を固定し、もう片方を端から1センチのところをつかみ、1cm/10秒の速さで引っ張り試験を実施した。穀粉生地が切れた際の穀粉生地の長さで伸展性を評価した。伸展性が良好なほど穀粉生地の長さが長くなる。
実測値として伸展性は比較例5-1で13.8cmであった。
評価においては、比較例5-1の穀粉生地の長さをそれぞれ100とし、穀粉生地の長さが105以上の場合を「5」、102以上、105未満の場合を「4」、98以上、102未満の場合を「3」、95以上、98未満の場合を「2」、95未満の場合を「1」として評価した。「5」、「4」のみ穀粉生地の伸展性を合格とした。
【0042】
(小麦粉の穀粉生地(グルテン含有量10.2質量%)伸展性、弾力性評価)
実施例5-1~5-3、比較例5-1のグルテン改質剤については以下の方法で穀粉生地の伸展性、弾力性を評価した。
関東混合機工業(株)製ミキサーボウルに小麦粉(日本製粉株式会社製、製品名:イーグル)1000g、塩15g、水700gを投入し、ドゥフックにて低速3分間、中低速6分間攪拌した。このときのグルテン含有量は10.2質量%であった。さらに実施例5-1のグルテン改質剤10gを投入し、ドゥフックにて低速3分間、中低速6分間攪拌後、穀粉生地を製造した。得られた穀粉生地を150gづつ分割し、ブラベンダーエキステンソグラフE(株式会社パーカーコーポレーション社製)にて伸展性と弾力性を評価した。穀粉生地をラウンダーにて球状にし、球状の生地をロール状にする生地ローラーにてロール状にした。その後専用ホルダーにて20℃で40分間ねかせ、その後ストレッチング装置で生地を引っ張り測定した。得られたグラフの横軸のカーブ底辺の長さ(生地が伸びた長さ)を伸展性とし、底辺の長さが長いほど伸展性に優れていることを示す。また、得られたグラフの縦軸の最大値を弾力性とし、縦軸の最大値が大きいほど弾力性に優れていることを示す。
実測値として伸展性は比較例5-1で146mmであった。弾力性は比較例5-1で440BUであった。
比較例5-1の伸展性を100とし、伸展性が105以上の場合を「5」、102以上、105未満の場合を「4」、98以上、102未満の場合を「3」、95以上、98未満の場合を「2」、95未満の場合を「1」として評価した。「5」、「4」のみ合格とした。
比較例5-1の弾力性を100とし、弾力性が105以上の場合を「5」、102以上、105未満の場合を「4」、98以上、102未満の場合を「3」、95以上、98未満の場合を「2」、95未満の場合を「1」として評価した。「5」、「4」のみ合格とした。
【0043】
【0044】
(評価結果)
表5より、液糖を配合したグルテン改質剤においても、グルテン含有穀粉生地の伸展性、弾力性が向上することが分かる。