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特開2024-146856モルタル製或いはコンクリート製の成形体と、該成形体を備えた積層構造体、これらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146856
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】モルタル製或いはコンクリート製の成形体と、該成形体を備えた積層構造体、これらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/52 20060101AFI20241004BHJP
   B28B 23/02 20060101ALI20241004BHJP
   E04C 2/06 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B28B1/52
B28B23/02 A
E04C2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024050991
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2023058769
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599093524
【氏名又は名称】旭ビルウォール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直明
(72)【発明者】
【氏名】宮本 方演
(72)【発明者】
【氏名】テンナクン ヤパムディヤン セラーゲ ディルサン チャマラ
(72)【発明者】
【氏名】上野 裕亮
【テーマコード(参考)】
2E162
4G052
【Fターム(参考)】
2E162CA01
2E162CA31
2E162CA32
2E162CA33
2E162CA34
2E162FA14
2E162FC02
2E162FD04
4G052GA02
4G052GA12
4G052GB03
4G052GB07
4G052GC06
(57)【要約】
【課題】製品厚さを薄くして形成することができるモルタル製或いはコンクリート製の成形体を提供する。
【解決手段】板状部10を備えたモルタル製或いはコンクリート製の成形体1であって、板状部10は、シート状に形成された第一繊維補強材120と、シート状に形成された第二繊維補強材120とが厚さ方向に離して埋め込まれており、さらに板状部10の厚さt′が5mm以上20mm以下である。第一繊維補強材110と第二繊維補強材120とをモルタル或いはコンクリート中に厚さ方向に離して設けることで、板状部10の厚さt′を薄くすることができる。板状部10は、例えば補強用繊維を混入した繊維混入モルタル或いは繊維補強コンクリートで構成されている。補強用繊維は好ましくはジルコニアを16%以上含む耐アルカリ性のガラス繊維を束ねて構成されている。また、繊維が混入していることで、一層厚さt′を薄くすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部を備えたモルタル製或いはコンクリート製の成形体であって、
前記板状部は、シート状に形成された第一繊維補強材と、シート状に形成された第二繊維補強材とが厚さ方向に離して埋め込まれており、
さらに前記板状部の厚さが5mm以上20mm以下であることを特徴とする、成形体。
【請求項2】
少なくとも前記第一繊維補強材を含む前記板状部の第一面側、及び/又は該第一面とは反対に位置し更に前記第二繊維補強材を含む前記板状部の第二面側が、補強用繊維を混入した繊維混入モルタル或いは繊維補強コンクリートで構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記補強用繊維が耐アルカリ性のガラス繊維を束ねて構成されたチョップドストランドであることを特徴とする、請求項2に記載の成形体。
【請求項4】
複数の前記板状部と、前記板状部同士をつなぐ接続部と、を備え、
前記接続部では、一方の前記板状部と他方の前記板状部の前記第一繊維補強材同士が重ねられており、又は/及び一方の前記板状部と他方の前記板状部の前記第二繊維補強材同士が重ねられていることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の成形体。
【請求項5】
シート状に形成された第一繊維補強材とシート状に形成された第二繊維補強材とを厚さ方向に離して埋め込んだ板状部を備えたモルタル製或いはコンクリート製の成形体の製造方法であって、
前記板状部を成形する板成形工程を備え、
前記板成形工程は、
前記板状部の第一面側を成形するための第一面側材料と、中間部を成形するための中間材料と、前記板状部の前記第一面とは反対に位置する第二面側を成形するための第二面側材料とを型枠或いは躯体に順番に堆積させる堆積工程と、
前記型枠或いは前記躯体に堆積させた前記第一面側材料と前記中間材料と前記第二面側材料の養生を行う養生工程と、を備え、
前記第一面側材料は、前記第一繊維補強材が埋め込まれた前記モルタル或いは前記生コンクリートからなり、
前記中間材料は、スペーサが埋め込まれた前記モルタル或いは前記生コンクリートからなり、
前記第二面側材料は、前記第二繊維補強材が埋め込まれた前記モルタル或いは前記生コンクリートからなり、
前記養生工程では、前記スペーサによって前記第一繊維補強材と前記第二繊維補強材とが前記型枠或いは前記躯体の前記モルタル或いは前記生コンクリートの中で厚さ方向に離した状態を保持することを特徴とする、成形体の製造方法。
【請求項6】
前記堆積工程は、前記第一面側材料を前記型枠或いは前記躯体に入れる第一堆積工程と、前記中間材料を前記第一面側材料の上に堆積させる第二堆積工程と、前記第二面側材料を前記中間材料の上に堆積させる第三堆積工程と、を備え、
前記第一堆積工程は、前記第一繊維補強材を載せるための下地となる前記モルタル或いは前記生コンクリートを前記型枠或いは前記躯体に手積みする第一手積工程と、前記下地の上に前記第一繊維補強材を手積みする第二手積工程と、該第二手積工程の後に前記第一繊維補強材に前記モルタル或いは前記生コンクリートを手積みして前記第一繊維補強材を前記モルタル或いは前記生コンクリートで覆う第三手積工程と、を備えていることを特徴とする、請求項5に記載の成形体の製造方法。
【請求項7】
前記第二堆積工程は、前記第一面側材料の上にスペーサを手積みする第四手積工程と、該第四手積工程の後にスペーサに前記モルタル或いは前記生コンクリートを手積みして前記スペーサを前記モルタル或いは前記生コンクリートで覆う第五手積工程と、を備え、
前記第三堆積工程は、前記中間材料の上に、前記第二繊維補強材を手積みする第六手積工程と、該第六手積工程の後に前記第二繊維補強材に前記モルタル或いは前記生コンクリートを手積みして前記第二繊維補強材を前記モルタル或いは前記生コンクリートで覆う第七手積工程と、を備えたことを特徴とする、請求項6に記載の成形体の製造方法。
【請求項8】
少なくとも前記第一面側材料の前記モルタル或いは前記生コンクリート、及び/又は前記第二面側材料の前記モルタル或いは前記生コンクリートが、補強用繊維を混入した繊維混入モルタル又は繊維混入生コンクリートであることを特徴とする、請求項5から請求項7のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項9】
モルタル製或いはコンクリート製の基部と、
前記基部に積層された発泡体と、
前記発泡体に積層されており、板状部を備えたモルタル製或いはコンクリート製の成形体と、を備え、
前記板状部は、シート状に形成された第一繊維補強材と、シート状に形成された第二繊維補強材とが厚さ方向に離して埋め込まれ、且つ厚さが5mm以上40mm以下であることを特徴とする、積層構造体。
【請求項10】
前記吹付発泡体は、前記成形体側が厚さを不均一とした凹凸状に形成された吹付発泡体であり、
前記板状部は、前記第一繊維補強材と前記第二繊維補強材とが厚さ方向に離して埋め込まれ、且つ厚さが5mm以上40mm以下である本体と、該本体の吹付発泡体側に形成されていて増厚する複数の部分増厚部と、を備えて、前記吹付発泡体の形状に追随して凹凸状に形成されていることを特徴とする、請求項9に記載の積層構造体。
【請求項11】
前記成形体の前記板状部に積層された仕上層を備え、
アンカーボルトが前記基部から前記板状部の中或いは前記仕上層の中まで厚さ方向に埋め込まれており、
押さえ部材が前記アンカーボルトの仕上層側の端部に取り付けられていることを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載の積層構造体。
【請求項12】
シート状に形成された第一繊維補強材とシート状に形成された第二繊維補強材とを厚さ方向に離して埋め込んだ板状部を備えたモルタル製或いはコンクリート製の成形体を備えた積層構造体の製造方法であって、
モルタル或いはコンクリートからなる基部に発泡体材料を吹き付けて、厚さが不均一の凹凸状の吹付発泡体を形成する発泡体形成工程と、
前記吹付発泡体に積層された前記板状部を成形する板成形工程と、を備え、
前記板成形工程は、
前記板状部の吹付発泡体側を成形するための第一面側材料と、中間部を成形するための中間材料と、前記板状部の吹付発泡体側とは反対側を成形するための第二面側材料とを前記吹付発泡体に順番に堆積させる堆積工程と、
前記吹付発泡体に堆積させた前記第一面側材料と前記中間材料と前記第二面側材料の養生を行う養生工程と、を備え、
前記第一面側材料は、前記第一繊維補強材が埋め込まれた前記モルタル或いは前記生コンクリートからなり、
前記中間材料は、スペーサが埋め込まれた前記モルタル或いは前記生コンクリートからなり、
前記第二面側材料は、前記第二繊維補強材が埋め込まれた前記モルタル或いは前記生コンクリートからなり、
前記堆積工程は前記第一面側材料の前記モルタル或いは前記生コンクリートを前記吹付発泡体に塗り付けてならした面に形成し、
前記養生工程では、前記スペーサによって前記第一繊維補強材と前記第二繊維補強材とが前記モルタル或いは前記生コンクリートの中で厚さ方向に離した状態を保持し、
前記基部が型枠或いは躯体であることを特徴とする、積層構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタル製或いはコンクリート製の成形体と、該成形体を備えた積層構造体、これらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラス繊維補強セメント(Glass fiber Reinforced Cement)の成形体(以下、GRC成形体と称す。)が建築、土木関係に使用されている。
GRC成形体は、ジルコニアを16%以上含む耐アルカリ性のガラス繊維で補強したモルタルやコンクリートからなる。このGRC成形体の成形方法として、主にダイレクトスプレー(以下、DSと称す。)法とプレミックス(以下、PMと称す。)法とが知られている。
【0003】
DS法では耐アルカリ性ガラス繊維を束ねたロービングを吹付ガンのチョッパーで例えば20mm以上40mm以下の長さに切断しながら、ポンプから吐出したモルタルや生コンクリートと共に型枠上に吹き付けて成形体を成形する。
【0004】
一方、PM法では、予め5mm以上20mm以下の長さに切断した耐アルカリ性のガラス繊維をミキサー内でモルタルや生コンクリートと混ぜて、型枠に流し込み成形する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-262713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、三次元方向に耐アルカリ性のガラス繊維が配位するPM法によるGRC成形体では、厚さが50mm以上100mm以下であり、大型で板状に形成された成形体の製造に用いられている。
このPM法に比べてDS法では耐アルカリ性のガラス繊維が二次元にランダム方向に並ぶことから、厚さを薄くすることができ、例えば厚さは20mm以上50mm以下である。しかし、複雑な形状を持つ成形体の製造では、DS法のスプレーガンを型枠内に入れて、ガラス繊維混入のモルタルを吹き付けることができない恐れあり、他の成形法が求められている。
【0007】
複雑な形状を持つ成形体を一層薄くして形成すること、板状の成形体としても、製品として問題がない程度まで薄くすることが望ましい。ガラス繊維等の補強用繊維を含まないモルタル製或いはコンクリート製の成形体としても厚さを薄くすることが望ましい。
【0008】
そこで、本発明はモルタル製或いはコンクリート製の成形体と、該成形体を備えた積層構造体と、これらの製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、板状部を備えたモルタル製或いはコンクリート製の成形体であって、前記板状部は、シート状に形成された第一繊維補強材と、シート状に形成された第二繊維補強材とが厚さ方向に離して埋め込まれており、さらに前記板状部の厚さが5mm以上20mm以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明では、第一繊維補強材と第二繊維補強材とを厚さ方向に離して埋め込むことで補強され、板状部の厚さを5mm以上20mm以下に薄くすることができる。
【0011】
本発明のモルタル製或いはコンクリート製の成形体は、好ましくは、少なくとも前記第一繊維補強材を含む前記板状部の第一面側、及び/又は該第一面とは反対に位置し更に前記第二繊維補強材を含む前記板状部の第二面側が、補強用繊維が混入した繊維混入モルタル或いは繊維補強コンクリートで構成されている。
【0012】
補強用繊維を混入させることで、モルタルやコンクリートを補強することができる。
【0013】
本発明のモルタル製或いはコンクリート製の成形体は、好ましくは、前記補強用繊維として、耐アルカリ性のガラス繊維を束ねて構成されたチョップドストランドを混入したものである。
【0014】
耐アルカリ性の前記チョップドストランドを用いることで、高い強度を好適に維持することができる。
【0015】
本発明のモルタル製或いはコンクリート製の成形体は前記板状部を複数備えてもよい。この場合、好ましくは、前記板状部同士をつなぐ接続部を備え、前記接続部では、一方の前記板状部と他方の前記板状部の前記第一繊維補強材同士が重ねられており、又は/及び一方の前記板状部と他方の前記板状部の前記第二繊維補強材同士が重ねられている。
【0016】
前記板状部同士をつなぐ接続部で、一方の前記板状部と他方の前記板状部の前記第一繊維補強材同士が、或いは一方の前記板状部と他方の前記板状部の前記第二繊維補強材同士が重ねられていることで、強度を維持することができる。
【0017】
本発明は、シート状に形成された第一繊維補強材とシート状に形成された第二繊維補強材とを厚さ方向に離して埋め込んだ板状部を備えたモルタル製或いはコンクリート製の成形体の製造方法であって、前記板状部を成形する板成形工程を備え、前記板状部の第一面側を成形するための第一面側材料と、中間部を成形するための中間材料と、前記板状部の前記第一面とは反対に位置する第二面側を成形するための第二面側材料とを型枠或いは躯体に順番に堆積させる堆積工程と、前記型枠或いは躯体に堆積させた前記第一面側材料と前記中間材料と前記第二面側材料の養生を行う養生工程と、を備え、前記第一面側材料は、前記第一繊維補強材が埋め込まれた前記モルタル或いは前記生コンクリートからなり、前記中間材料は、スペーサが埋め込まれた前記モルタル或いは前記生コンクリートからなり、前記第二面側材料は、前記第二繊維補強材が埋め込まれた前記モルタル或いは前記生コンクリートからなり、前記養生工程では、前記スペーサによって前記第一繊維補強材と前記第二繊維補強材とが前記型枠或いは躯体の前記モルタル或いは前記生コンクリートの中で厚さ方向に離した状態を保持することを特徴とする。
【0018】
本発明の製造方法では、養生の際にスペーサで第一繊維補強材と第二繊維補強材との間隔を保持することで、第一繊維補強材と第二繊維補強材を厚さ方向に離して埋め込むことができ、これにより板状部の厚さを薄くして成形することができる。
本発明では、第一面側で第一繊維補強材をモルタルや生コンクリートに埋めることで、成形した状態で第一繊維補強材が露出することを防止できる。第二面側でも、第二繊維補強材をモルタルや生コンクリートに埋めることで、成形した状態で第二繊維補強材が露出することを防止できる。
【0019】
本発明の成形体の製造方法は、好ましくは、前記堆積工程は、前記第一面側材料を前記型枠或いは躯体に入れる第一堆積工程と、前記中間材料を前記第一面側材料の上に堆積させる第二堆積工程と、前記第二面側材料を前記中間材料の上に堆積させる第三堆積工程と、を備え、前記第一堆積工程が、前記第一繊維補強材を載せる下地となる前記モルタル或いは前記生コンクリートを前記型枠或いは躯体に手積みする第一手積工程と、前記型枠内或いは躯体の前記モルタル或いは前記生コンクリートの上に、前記第一繊維補強材を手積みする第二手積工程と、前記第二手積工程の後に前記第一繊維補強材に前記モルタル或いは前記生コンクリートを手積みして前記第一繊維補強材を前記モルタル或いは前記生コンクリートで覆う第三手積工程と、を備えている。
また、前記第二堆積工程が、前記第一面側材料の上に前記スペーサを手積みする第四手積工程と、前記第四手積工程の後に前記スペーサに前記モルタル或いは前記生コンクリートを手積みして前記スペーサを前記モルタル或いは前記生コンクリートで覆う第五手積工程と、を備えている。
さらに前記第三堆積工程が、前記中間材料の上に、前記第二繊維補強材を手積みする第六手積工程と、前記第六手積工程の後に前記第二繊維補強材に前記モルタル或いは前記生コンクリートを手積みして前記第二繊維補強材を前記モルタル或いは前記生コンクリートで覆う第七手積工程と、を備えている。
板状部の成形を、ハンドレイアップ法として、モルタル或いは生コンクリート、第一繊維補強材、スペーサ、第二繊維補強材を手作業で型枠或いは躯体に堆積させることで、例えば板状部を複数備えていて、DS法のスプレーガンを入れることができない複雑な形状の成形にも対応することかできる。
【0020】
本発明のモルタル製或いはコンクリート製の成形体の製造方法は、好ましくは前記第一面側材料の前記モルタル或いは前記生コンクリート、及び/又は前記第二面側材料の前記モルタル或いは前記生コンクリートが補強用繊維が混入した繊維混入モルタル或いは繊維混入生コンクリートであることを特徴とする。
【0021】
補強用繊維を混入させることで、モルタルやコンクリートを補強することができる。これにより、第一面や第二面でのひび割れなどの発生を一層防止できる。
【0022】
本発明の積層構造体は、モルタル製或いはコンクリート製の基部と、前記基部に積層された発泡体と、前記発泡体に積層されており、板状部を備えたモルタル製或いはコンクリート製の成形体と、を備え、前記板状部は、シート状に形成された第一繊維補強材と、シート状に形成された第二繊維補強材とが厚さ方向に離して埋め込まれ、且つ厚さが5mm以上40mm以下であることを特徴とする。
【0023】
発泡体は、例えば吹付発泡体、又はポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォームの板状物である。
【0024】
本発明では、第一繊維補強材と第二繊維補強材とを厚さ方向に離して埋め込むことで補強され、板状部の厚さを5mm以上40mm以下に薄くすることができる。
【0025】
本発明の積層構造体は、好ましくは、板状部が、前記補強用繊維(短繊維)を混入した繊維混入モルタル或いは繊維補強コンクリートで構成され、補強用繊維(短繊維)として、例えば耐アルカリ性のガラス繊維を束ねて構成されたチョップドストランドを用いることが望ましい。
【0026】
本発明の積層構造体は、好ましくは、前記吹付発泡体が、前記成形体側が厚さを不均一とした凹凸状に形成された吹付発泡体であり、前記板状部は、前記第一繊維補強材と前記第二繊維補強材とが厚さ方向に離して埋め込まれ、且つ厚さが5mm以上40mm以下である本体と、該本体の吹付発泡体側に形成されていて増厚する複数の部分増厚部と、を備えて、前記吹付発泡体の形状に追随して凹凸状に形成されている。
【0027】
吹付発泡体はポリウレタンフォーム(例えば、建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームJISA9526:2017)などである。
【0028】
成形体が、吹付発泡体の形状に追随する複数の部分増厚部を設けていることで、吹付発泡体が成形体に掛かり、基部と成形体の間で安定して配置される。成形体が複雑な形状を有する場合も、成形体は、吹付発泡体の形状に追随する部分増厚部の分、重量が増すだけであるので、重量の大幅な増加を抑えることができる。
【0029】
本発明の積層構造体は、好ましくは、前記成形体の前記板状部に積層され前記成形体とは異なる材料からなる仕上層を備え、アンカーボルトが前記基部から前記板状部の中或いは前記仕上層の中まで厚さ方向に埋め込まれており、押さえ部材が前記アンカーボルトの仕上層側の端部に取り付けられている。
【0030】
押さえ部材は例えばナットなどである。アンカーボルト及び押さえ部材によって成形体を基部に固定することができる。これにより成形体の剥離を防止できる。
【0031】
仕上層は、前記板状部とは異なる材料からなり、例えば補強用繊維を含まないモルタル、ポリマーセメントモルタル、或いは合成樹脂からなる塗料などである。仕上層は、補修仕上などのモルタル層を厚塗りした単層或いは合成樹脂の塗料だけの単層で構成されてもよいし、下地を補強用繊維を含まないモルタル層と、このモルタル層をコーティングした合成樹脂の皮膜層との積層構造としてもよい。仕上層により積層構造体の見映えを向上させることができる。
【0032】
本発明は、シート状に形成された第一繊維補強材とシート状に形成された第二繊維補強材とを厚さ方向に離して埋め込んだ板状部を備えたモルタル製或いはコンクリート製の成形体を備えた積層構造体の製造方法であって、モルタル或いはコンクリートからなる基部に発泡体材料を吹き付けて、厚さが不均一の凹凸状の吹付発泡体を形成する発泡体形成工程と、前記吹付発泡体に積層された前記板状部を成形する板成形工程と、を備えている。前記板成形工程は、前記板状部の吹付発泡体側を成形するための第一面側材料と、中間部を成形するための中間材料と、前記板状部の吹付発泡体側とは反対側を成形するための第二面側材料とを前記吹付発泡体に順番に堆積させる堆積工程と、前記吹付発泡体に堆積させた前記第一面側材料と前記中間材料と前記第二面側材料の養生を行う養生工程と、を備え、前記第一面側材料は、前記第一繊維補強材が埋め込まれた前記モルタル或いは前記生コンクリートからなり、前記中間材料は、スペーサが埋め込まれた前記モルタル或いは前記生コンクリートからなり、前記第二面側材料は、前記第二繊維補強材が埋め込まれた前記モルタル或いは前記生コンクリートからなり、前記堆積工程は前記第一面側材料の前記モルタル或いは前記生コンクリートを前記吹付発泡体に塗り付けてならした面に形成し、前記養生工程では、前記スペーサによって前記第一繊維補強材と前記第二繊維補強材とが前記モルタル或いは前記生コンクリートの中で厚さ方向に離した状態を保持し、前記基部が型枠或いは躯体である。
【0033】
塗り付けた第一面側材料をならした状態で、中間材料と第二面側材料とを順番に堆積させていて、凹凸状の吹付発泡体に対応する箇所だけ増厚させて成形するので、成形体を大幅の重量の増加を抑えることができる。またハンドレイアップ法により複雑な形状の成形体を吹付発泡体上に成形できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の成形体によれば、板状部を薄く成形することができる。さらに、第一面側や第二面側に第一繊維補強材や第二繊維補強材が埋め込まれることで、第一面や第二面の設計されたデザイン形状や強度を好適に維持することができる。
本発明の成形体の製造方法によれば、スペーサで第一繊維補強材と第二繊維補強材との間隔を保持して養生することで、第一繊維補強材と第二繊維補強材とを厚さ方向に離して埋め込むことができる。これにより、曲げなどに対して好適な強度を有して薄い板状部を成形することができる。また、複数の板状部を備えた複雑な形状の成形体の製造は、DS法ではスプレーガンが型枠内に入らないことで製造することができない事態が生じ得るが、本発明の製造方法では、各板状部を板成形工程で成形することで、複雑な形状の成形体の製造を容易に行える。これにより、成形体の造形性を打ち出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態に係る成形体の部分断面図である。
図2図1の板状部の製造方法を説明するための図である。
図3】(a)~(g)は図2の製造方法の各工程を説明するための図である。
図4図2の製造方法の工程を説明するための図である。
図5】本発明の実施形態に係る積層構造体の断面図である。
図6】(a)~(f)は図5の積層構造体の製造方法を説明するための図である。
図7】(a)は本発明の実施形態に係る成形体の他の構成例を示す斜視図であり、(b)は(a)の成形体の接続部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る成形体を説明する。
図1に示すように、成形体1は平板状に形成されていて、さらに成形体1は一枚の板状部10からなる。板状部10は、モルタル或いはコンクリートからなり、好ましくは、補強用繊維が混入した繊維混入モルタル或いは繊維補強コンクリートで構成される。補強用繊維は、例えばガラス繊維、炭素繊維、鋼繊維であり、好ましくは繊維を複数本束ねたチョップドストランドを用いる。チョップドストランドは、例えばロービングを6mm、13mm、19mm等の所定の長さに切断したものであり、好ましくはジルコニアを16%以上含む耐アルカリ性のARガラスからなる繊維(JISR3410)からなる。
以下、板状部10が、ジルコニアを16%以上含む耐アルカリ性のARガラスからなる繊維束を所定の長さに切断されたガラス繊維製のチョップドストランドを混入したモルタル、つまりガラス繊維補強セメント(Glass fiber Reinforced Cement:以下、GRCと称す。)で構成される場合を前提に説明するが、コンクリートの場合もモルタルと同様である。
【0037】
さらに板状部10は、図1に示すように、第一面11とこの第一面11とは反対側に位置する第二面12とを有して板状に形成されていて、さらに板状部10は、内部に厚み方向に離れて埋め込まれた格子状に形成された第一繊維補強材110及び第二繊維補強材120を備えている。
【0038】
(第一繊維補強材110と第二繊維補強材120)
第一繊維補強材110と第二繊維補強材120は、繊維を織って或いは編んで連続繊維補強材として構成されている。繊維は、例えばガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などのヤーン或いはロービングからなり、好ましくはジルコニアを16%以上含む耐アルカリ性のARガラスの繊維を束ねたヤーン或いはロービングを織った格子状のシートを用いるとよい。ヤーンはモノフィラメントにバインダーをつけて収束して構成され、ロービングはヤーンを束ねて構成されており、前記のチョップドストランドは、通常ロービングを所定の長さにチョップして構成されている。第一繊維補強材110や第二繊維補強材120は、平織りなどによって後述の図4に示すように複数の開口111,121を有するシートとして形成されており、開口111,121の大きさは限定されるものではないが、例えば5mm角や10mm角の大きさに形成されていて、板状部10の製造の際にモルタルの骨材や生コンクリート用の粗骨材、補強用繊維が少なくとも一部が入り込んで部分的に第一繊維補強材110や第二繊維補強材120を貫通でき、好ましくは全体が通過できる大きさに形成されている。
第一繊維補強材110や第二繊維補強材120の開口111,121には、モルタルが入り込んでいる。モルタル中のチョップドストランドも開口111,121に入り込んでいる。
第一繊維補強材110は、複数枚を重ねて構成されてもよい。この場合、第一面11側に配置される第一繊維補強材110と、第二面12側に配置される第一繊維補強材110とは、開口111のサイズが同じもの同士を重ねて或いは開口111のサイズが異なるものを重ねてもよい。
第二繊維補強材120も、第一繊維補強材110と同様に、複数枚重ねて構成されてもよい。第二繊維補強材120を複数重ねる場合も、開口121のサイズが同じもの同士を重ねて或いはサイズが異なるものを重ねてもよく、第二繊維補強材120の各開口121には、モルタルやチョップドストランドが入り込んでいる。
以下、板状部10では、第一面11側に一枚の第一繊維補強材110が埋め込まれ、第二面12側に一枚の第二繊維補強材120が埋め込まれている場合を前提に、説明する。
第一繊維補強材110や第二繊維補強材120としては、例えば開口が5mm角や10mm角の大きさに形成された日本電気硝子株式会社製の耐アルカリ性ガラス繊維ネット(ARGファイバ-ネット)や開口が5mm角に形成された吉野株式会社製の炭素繊維メッシュロールなどを用いることができる。
また、耐アルカリ性はさほど高くないが、土木用に開発されたバサルトファイバー(玄武岩繊維)で構成された5mm角の開口を有する格子状に形成された第一繊維補強材110や第二繊維補強材120として用いることが考えられる。
さらに、第一繊維補強材110や第二繊維補強材120としては、所謂コンティニュアスストランドマットやチョップドストランドマットとして厚さが薄いものを用いてもよい。チョップドストランドマット及びコンティニュアスストランドマットを構成する繊維は例えばアルカリ(NaO,KO)が0.8%以下のガラス繊維(JISK7010:Eガラス)或いはジルコニアを16%以上含む耐アルカリ性のARガラスの繊維を束ねたヤーン、ロービング或いはチョップドストランドからなる。チョップドストランドマットは、複数のチョップドストランドが二次元に配向されていると共に結合剤でシート状に保持されて構成されものを用いることができ、コンティニュアスストランドマットは連続したヤーン或いはロービングを厚さ方向に重ねて結合剤でシート形状に保持されているものでもよい。
これらの第一繊維補強材110や第二繊維補強材120は、いずれも板状部10の製造の際にモルタルの骨材や生コンクリート用の粗骨材、補強用繊維が通過できるように形成されたものを用いる。
【0039】
板状部10は、第一面11から第一繊維補強材110までの厚さt1(第一被覆部)が、例えば1mm以上3mm以下である。厚さt1は第一繊維補強材110の厚みは含まない。
また、板状部10は、第二面12から第二繊維補強材120までの厚さt2(第二被覆部)が、例えば1mm以上3mm以下である。厚さt2は第一繊維補強材110の厚みは含まない。
さらに、板状部10は、第一繊維補強材110から第二繊維補強材120までの厚さt3が、例えば3mm以上18mm以下である。厚さt3は第一繊維補強材110、第二繊維補強材120の厚みは含まない。以下、板状部10の第一面11から第二面12への厚さ方向で第一繊維補強材110と第二繊維補強材120との間に配置される箇所を中間部130と称す。
板状部10は、第一面11から第二面12までの厚みt′が例えば5mm以上20mm以下である。5mmより薄いと製品としての強度が弱くなり、また20mmより厚くなると重量が増して好ましくない。
また、板状部10を第一面11側から見た場合に、その輪郭形状は限定されるものではないが、例えば細長い矩形状に形成されている。
【0040】
このように構成された板状部10からなる成形体1は、構造物に設けられて内外装等として使用される。成形体1を使用する状態で、板状部10の第一面11側が室内を臨むように配置され、第二面12側は構造部を臨むように配置される。
なお、成形体1の使用状態で露出側に配置される第一面11は、例えば美的に設計された形状を有する。
図示例では、板状部10の第一面11を平らに表しているが、これに限るものではなく、例えば窪んだ箇所や突き出る箇所を設けてもよい。また、第一面11はその全体が凹や凸に外部に曲がった面などとして形成されてもよい。このように第一面11が曲面である場合も、第二面12は第一面11と同様にその全体が同じように曲がった曲面として形成される。
これらの場合も第一面11側の第一繊維補強材110や第二面12側の第二繊維補強材120はいずれもモルタル内に埋め込まれ、外部に露出させないものとする。
また、図示することを省略するが、第一面11や第二面12は、塗装などが施されてもよい。
【0041】
(製造方法)
成形体1の製造方法は、板状部10を成形する板成形工程を備えている。
板成形工程は、図2に示すように、板状部10の第一面11側を成形するための第一面側材料M1と、板状部10の第一繊維補強材110と第二繊維補強材120との間に配置される中間部130を成形するための中間材料M2と、板状部10の第一面11とは反対に位置する第二面12側を成形するための第二面側材料M3とを型枠20に順番に堆積させる堆積工程と、型枠20に堆積させた第一面側材料M1と中間材料M2と第二面側材料M3の養生を行う養生工程と、を備えている。
また、堆積工程は、セメント、水、骨材等を混ぜた固化していないモルタル(以下、固化していないモルタルをモルタル材料30と称す。)と第一繊維補強材110とを含んでおり板状部10の第一面11側を成形するための第一面側材料M1を型枠に入れる第一堆積工程と、スペーサ140とモルタル材料30とを含んでおり板状部10の第一繊維補強材110と第二繊維補強材120との間に配置される中間部130を成形するための中間材料M2を、第一面側材料M1の上に堆積させる第二堆積工程と、第二繊維補強材120とモルタル材料30とを含んでおり板状部10の第一面11とは反対に位置する第二面12側を成形するための第二面側材料M3を、中間材料M2の上に堆積させる第三堆積工程と、を備えている。
【0042】
A.第一堆積工程
第一堆積工程は、第一繊維補強材110を型枠20に入れる前に第一繊維補強材110を載せるための下地となるモルタル材料30を型枠20の底部21に手積みする第一手積工程と、型枠20内のモルタル材料30の上に、第一繊維補強材110を手積みする第二手積工程と、第二手積工程の後に第一繊維補強材110にモルタル材料30を手積みして第一繊維補強材110をモルタル材料30で覆う第三手積工程と、を備えている。
【0043】
(第一手積工程)
第一手積工程は、図3(a)に示すように、型枠20に、モルタル材料30をバケットなどから打ち込む。モルタル材料30は、セメント、水、骨材、耐アルカリ性チョップドストランドを練り混ぜてなる。コンクリート用であれば粗骨材を併せて練り混ぜて生コンクリートとする。
セメントは、JISR5210に示す、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント(低アルカリ形)早強ポルトランドセメント(低アルカリ形)超早強ポルトランドセメント(低アルカリ形)を用いることができる。また、JISR5210以外の低アルカリ形のセメントを用いてもよい。
骨材は、珪砂に加えて、スラグ、フライアッシュ、ドロマイトなどを含んでもよい。モルタルの骨材や生コンクリート用の粗骨材は、好ましくは、第一繊維補強材110の開口111や第二繊維補強材120の開口121を好適に埋めるように、開口111,121を通過できる大きさのものがよい。
また、モルタル材料30は、添加剤としてシリカフューム、減水剤としてナフタリンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩系やポリカルボン酸エーテル系化合物系、収縮低減材として低級アルコールのアルキレンオキシド化合物を含んでもよい。
以下、モルタル材料30が普通ポルトランドセメント、珪砂、添加剤、減水剤、収縮低減材、チョップドストランド(ARガラス)、水を混ぜて成る場合を前提に説明する。
モルタル材料30を型枠20に打ち込んだ後、例えばコテ等でモルタル材料30の表面をならし更に広げて、底部21を覆う。下地となるモルタル材料30の厚さは例えば1mm以上3mm以下である。第一繊維補強材110を型枠20に入れる前に、型枠20にモルタル材料30を入れることで、第一繊維補強材110が型枠面に寄ることを防止し、さらに後述の工程で第一繊維補強材110の開口111の中にモルタル材料30を浸透させつつ第一繊維補強材110の全体をモルタル材料30に埋めることができる。
なお、型枠20は板状部10の第一面11を成形するための底部21を備えており、図示することを省略するが、底部21には、板状部10の第一面11をかたどる形状に構成されており、例えば窪んだ箇所、型枠内に突き出る箇所等が存在する。この底部21によって、板状部10の第一面11が美的に設計された形状に成形される。
【0044】
(第二手積工程)
第二手積工程は、図3(b)に示すように、型枠20の中のモルタル材料30の上に第一繊維補強材110を載せる。第二手積工程は、第一手積工程で型枠20に入れたモルタル材料30がモルタルとしての強度や耐久性を発現する前に、行う。
【0045】
(第三手積工程)
第三手積工程は、図3(c)に示すように、モルタル材料30を第一繊維補強材110に塗布して、第一繊維補強材110をモルタル材料30に埋める。第三手積工程は、第一手積工程で型枠20に入れたモルタル材料30がモルタルとしての強度や耐久性を発現する前に、行う。
このように、板状部10の第一面11側を成形するための第一面側材料M1(モルタル材料30と第一繊維補強材110)が型枠20の底部21に堆積される。
【0046】
B.第二堆積工程
第二堆積工程は、第三手積工程でモルタル材料30が塗布された第一繊維補強材120の上にスペーサ140を手積みする第四手積工程と、第四手積工程の後にスペーサ140にモルタル材料30を手積みしてスペーサ140をモルタル材料30で覆う第五手積工程と、を備えている。
【0047】
(第四手積工程)
第四手積工程は、図3(d)に示すように、モルタル材料30が塗布された第一繊維補強材110の上に、スペーサ140を載せる。第四手積工程は、第一手積工程、第三手積工程で型枠20に入れたモルタル材料30がモルタルとしての強度や耐久性を発現する前に、行う。
【0048】
(スペーサ140)
スペーサ140は、板状部10を成形する過程で、第一繊維補強材110と第二繊維補強材120とを、成形予定の板状部10の厚み方向で所定の間隔に保持するためのものである。
スペーサ140は、厚さ方向に貫通する直線的に延びたと直線孔、直線的ではないが一方の面からその反対側の面まで屈曲しながら連通した連続孔、一方の面や他方の面から厚さ方向の途中まで延びた直線的或いは屈曲しながら連通した非貫通孔その反対側の面まで延びた孔などの少なくとも何れかを複数含むように構成されており、これらの孔(直線孔、連続孔、非貫通孔)によってモルタル材料が含侵する空隙部が構成されている。また、スペーサ140は、好ましくは、一方の面から他方の面にモルタル材料30、特に空隙部が好適に埋められるように骨材が通過することできるものがよい。このようなスペーサ140としては、例えばガラス繊維、中空繊維などのシートを用いることができる。シートは、例えばコンティニュアスストランドマットやチョップドストランドマットであり、これらを構成する繊維は例えばアルカリ(NaO,KO)が0.8%以下のガラス繊維(JISK7010:Eガラス)或いはジルコニアを16%以上含む耐アルカリ性のARガラスの繊維を束ねたヤーン、ロービング或いはチョップドストランドからなり、コンティニュアスストランドマットは連続したヤーン或いはロービングを厚さ方向に重ねて結合剤でシート形状に保持されて構成されており、チョップドストランドマットは複数のチョップドストランドが二次元に配向されていると共に結合剤でシート形状に保持されて構成されている。これらのスペーサ140は、板状部10を成形する際にモルタル材料30が含侵し、一方の面から他方の面にモルタル材料30が通過することができるように構成されている。モルタル材料30が通過することができるものであばれ、不織布を用いてもよい。また、スペーサ140としては、熱可塑性三次元網状繊維構造体(JISL4500)のうち、モルタル材料30が含侵し、一方の面から他方の面にモルタル材料30が通過することができるものも用いることもできる。
以下、Eガラスのヤーン或いはロービングからなるコンティニュアスストランドマットをスペーサ140に使用した場合を例に説明を進める。
スペーサ140の厚さt4は限定されるものではないが、第一繊維補強材110や第二繊維補強材120よりも厚さ方向の寸法が大きいものを用いることが好ましく、例えば中間層の厚さt3に相当の3mm以上18mm以下である。厚みが薄いシートであれば、複数枚を重ねて、厚さt3相当にしてもよい。
【0049】
(第五手積工程)
第五手積工程は、モルタル材料30をスペーサ140に塗布して、図3(e)に示すように、スペーサ140をモルタル材料30に埋める。第五手積工程では、モルタル材料30をコンティニュアスストランドマット(スペーサ140)に含侵させて、その空隙部を埋める。また、第五手積工程は、第一手積工程、第三手積工程で型枠20に入れたモルタル材料30がモルタルとしての強度や耐久性を発現する前に、行う。
このように、板状部10の中間部130を成形するための中間材料M2(モルタル材料30とスペーサ140)が第一面側材料M1に堆積される。
【0050】
C.第三堆積工程
第三堆積工程は、第五手積工程でモルタル材料30が塗布されたスペーサ140(中間材料)の上に、第二繊維補強材120を手積みする第六手積工程と、第六手積工程の後に第二繊維補強材120にモルタル材料30を手積みして第二繊維補強材120をモルタル材料30で覆う第七手積工程と、を備えている。
【0051】
(第六手積工程)
第六手積工程は、図3(f)に示すように、モルタル材料30が塗布されたスペーサ140の上に、第二繊維補強材120を載せる。第六手積工程は、第一手積工程、第三手積工程、第五手積工程で型枠20に入れたモルタル材料30がモルタルとしての強度や耐久性を発現する前に、行う。
【0052】
(第七手積工程)
第七手積工程は、モルタル材料30を第二繊維補強材120に塗布して、図3(g)に示すように、第二繊維補強材120をモルタル材料30に埋める。モルタル材料30の表面をコテなどでならして仕上げるとよい。第七手積工程は、第一手積工程、第三手積工程、第五手積工程で型枠20に入れたモルタル材料30がモルタルとしての強度や耐久性を発現する前に、行う。
このように、板状部10の第二面側12を成形するための第二面側材料M3(モルタル材料30と第二繊維補強材120)が中間材料M2に堆積される。
【0053】
D.養生工程
養生工程では、第一繊維補強材110、スペーサ140、第二繊維補強材120が型枠20のモルタル材料30の中に埋まった状態で、さらにモルタル材料30を固化させてモルタルとして強度や耐久性を有する板状部10(成形体1)にする。なお、図4の成形材料の分解斜視図に示すように、スペーサ140が第一繊維補強材110と第二繊維補強材120の間に配置されていることで、第二繊維補強材120がスペーサ140に支持されて第一繊維補強材110から厚さ方向に離れた位置に保持された状態で養生を行う。
養生工程を経て、板状部10が成形され、固化したモルタル中で、第一繊維補強材110と第二繊維補強材120とが厚さ方向に離れて配置される。また、強度や耐久性を発現したモルタルには、スペーサ140が第一繊維補強材110と第二繊維補強材120の間に配置されている。
【0054】
このように成形された板状部10は、構造部に設けられて第一面11側が室内を臨むように構造部に設けられて使用され、見映えの良い外観を呈する。
【0055】
本発明の実施形態の成形体1の板状部10では、第一繊維補強材110と第二繊維補強材120とをモルタル中に厚さ方向に離して設けることで、板状部10を好適に補強して、板状部10の厚さt′を薄くすることができる。これにより、従来のDS法で製造した場合に比べて、重量を低減することができ、取り扱いも容易になる。
【0056】
チョップドストランドがモルタルに混入していることで、第一面11側のひび割れを一層防止することができる。
なお、第二面12側もチョップドストランドで、ひび割れを防止することができる。
【0057】
(積層構造体)
本発明の実施形態に係る成形体は、複数の材料が積層した構造体の一部として設けられてもよい。図5に示す積層構造体2は、モルタル製或いはコンクリート製の基部40と、基部40に積層された吹付発泡体50と、吹付発泡体50に積層された成形体3と、成形体3の板状部100に積層された仕上層60と、を備えている。前記の実施形態と同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0058】
基部40は、型枠或いは躯体である。型枠は吹付発泡体50や成形体3を構成する材料を成形する際に利用され、さらに型枠は成形終了後も成形体3や吹付発泡体50と共に一体になって、積層構造体2に強度を持たせる一部として機能する。基部40は、補強用の繊維や鉄筋などの補強材を含んでもよい。
【0059】
吹付発泡体50は、例えばポリウレタンフォーム(例えば、建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォーム JISA9526:2017)であり、基部40とは反対側の面が、厚さが不均一であることから凹凸状に形成されている。吹付発泡体50に代えて、発泡体として、ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、フェノールフォームの板状物を用いることもできるが、吹付発泡体50は板状物よりも、成形体3を曲面に形成するなど、ハンドレイアップ法により成形体3を複雑な形状に形成する際に好適である。
【0060】
成形体3は、板状部100を備え、この板状部100は、後述するする基本の厚さt5で形成されていて第一繊維補強材110と第二繊維補強材120とをモルタル中に厚さ方向に離して設けた本体100Aと、本体100Aの吹付発泡体50側に形成されていて増厚する複数の部分増厚部100Bと、を備えている。
【0061】
本体100Aでは、第一繊維補強材110から第二繊維補強材120までの中間部130の厚さが、後述する押さえ部材80を埋め込むために例えば3mm以上38mm以下である。また本体100Aでは、図5の破線から第一繊維補強材110までの第一繊維補強材110を覆う第一被覆部150の最小の厚さが例えば1mm以上3mm以下であり、第一被覆部150とは反対に位置する第二面102から第二繊維補強材120までの第二繊維補強材120を覆う第二被覆部160の最小の厚さが例えば1mm以上3mm以下である。よって、図5に示す吹付発泡体側の破線から第二面102までの本体100Aの厚さt5が、例えば5mm以上40mm以下として形成されている。また押さえ部材80の埋込位置を第一繊維補強材110と第二繊維補強材120との間に代えて、第二被覆部160にする場合は、第一繊維補強材110から第二繊維補強材120までの厚さを例えば3mm以上18mm以下とし、第二被覆部160の厚さを例えば3mm以上38mm以下として、本体100Aの厚さt5を例えば5mm以上40mmとする。なお、押さえ部材80を本体100Aに埋め込まない場合、第一繊維補強材110から第二繊維補強材120までの厚さを例えば3mm以上18mm以下とし、第二被覆部160の厚さを例えば1mm以上3mm以下として、本体100Aの厚さt5を5mm以上20mm以下にするとよい。
【0062】
部分増厚部100Bは板状部100Aの第一被覆部150から基部40や吹付発泡体50に向けて増厚された箇所であり、部分増厚部100Bは、吹付発泡体50の凹となる箇所や凸となる箇所に当たるように形成されていて、これら部分増厚部100Bを備えることで、板状部100の第一面101は吹付発泡体50に追随して凹凸状に形成されている。
【0063】
部分増厚部100Bは、吹付発泡体50の窪みの深いところまで入り込んでいる。例えば図5に示す吹付発泡体50に形成されたオーバーハング部510の下の凹部511は、その奥までチョップドストランド(補強用繊維)を含有した繊維混入モルタル(部分増厚部100B)が充填されている。
【0064】
仕上層60は、板状部100とは異なる材料からなり、例えば補強用繊維を含まないモルタル、ポリマーセメントモルタル、或いはウレタンなどの合成樹脂からなる塗料などである。仕上層60は、単層で構成されてもよいし、モルタルなどの下地層と、合成樹脂の皮膜層との積層構造としてもよい。仕上層60の厚さは例えば1mm以上10mm以下である。仕上層により積層構造体2の見映えを向上させることができる。
【0065】
さらに積層構造体2は、基部40から立設した複数のアンカーボルト70と、アンカーボルト70の先端部に取り付けられていて成形体3を押さえる押さえ部材80と、を備えている。
【0066】
アンカーボルト70は、板状部100の中まで厚さ方向に埋め込まれている。アンカーボルト70の先端は、板状部100の第二繊維補強材120よりも仕上層60へ向けて突き出ていて、板状部100の第二被覆部160で被覆される。
【0067】
押さえ部材80は、板状部100の中間部130に設けられており、具体的には厚さ方向で、第一繊維補強材110と第二繊維補強材120との間に配置されている。押さえ部材80は、例えばナット81とこのナット81に溶接したワッシャ82とからなる。押さえ部材80は、ワッシャ82を省いて構成されてもよいし、ワッシャ82に代えてその他の板状に形成されたもので、ナット81に溶接して用いてもよい。また押さえ部材80の上下の向きを反転させて、ナット81からつば状に広がるワッシャ82を下にして板状部100を押さえてもよい。
【0068】
図示することを省略するが、押さえ部材80の位置は、中間部130に代えて、第二被覆部160或いは仕上層60の位置でもよい。押さえ部材80の一部やアンカーボルト70の先端が板状部100より突き出る場合は、仕上層60は、例えば補強用繊維を含有しない厚さが10mm以上の厚塗りのモルタルで構成する。
【0069】
(積層構造体2の製造方法)
積層構造体2の製造方法は、基部40に発泡体材料を吹き付けて、厚さが不均一により表面が凹凸状の吹付発泡体50を形成する発泡体形成工程と、吹付発泡体50に積層された板状部100を成形する板成形工程と、板状部100に積層された仕上層60を形成する仕上工程と、を備えている。
【0070】
発泡体形成工程は、図6(a)に示すように、発泡ウレタンなどの発泡材料を基部40に吹き付けて吹付発泡体50を形成する。また発泡体形成工程は、複数のアンカーボルト70を基部40から立設させ、且つ吹付発泡体50を貫通させる。
【0071】
板成形工程は、板状部100の第一面101側を成形するための第一面側材料M1と、中間部130を成形するための中間材料M2と、板状部100の第二面102側の第二被覆部160を成形するための第二面側材料M3とを吹付発泡体50に順番に堆積させる堆積工程と、吹付発泡体50に堆積させた第一面側材料M1と中間材料M2と第二面側材料M3の養生を行う養生工程と、を備えている。
【0072】
第一面側材料M1は、板状部10の製造に用いる第一面側材料M1と同様であり、第一繊維補強材110が埋め込まれたモルタル或いは生コンクリートからなる。中間材料M2は、板状部10の製造に用いる中間材料M2と同様であり、スペーサが埋め込まれたモルタル或いは生コンクリートからなる。第二面側材料M3は、板状部10の製造に用いる第二面側材料M3と同様であり、第二繊維補強材120が埋め込まれたモルタル或いは生コンクリートからなる。以下、モルタルとして、板状部10の製造に用いたモルタル材料30を用いる場合を例に説明する。
【0073】
堆積工程は、先ず第一面側材料M1を吹付発泡体50に積み重ねる。図6(b)に示すように、モルタル材料30を吹付発泡体50の凹凸の箇所に塗り込み、ならした面に形成する。そして、第一繊維補強材110をモルタル材料30の上に載せ、さらにモルタル材料30を塗り込んで第一繊維補強材110をモルタル材料30に埋める。これらのモルタル材料30の吹付発泡体50や第一繊維補強材110への塗り込みは手積みで行う。
【0074】
次に堆積工程は、中間材料M2を第一面側材料M1のならした面に積み重ねる。図6(c)に示すように、押さえ部材80のアンカーボルト70への取付と、中間材料M2のスペーサ140のモルタル材料30(第一面側材料M1)上への載置とを行う。そして、図6(d)に示すように、スペーサ140の空隙部にモルタル材料30を含侵させる。モルタル材料30のスペーサ140への塗り込みも手積みで行う。
【0075】
さらに堆積工程は、第二面側材料M3を中間材料M2に積み重ねる。図6(e)に示すように、第二繊維補強材120をスペーサ140の上に載せ、さらに図6(f)に示すように、モルタル材料30を塗り込んで第二繊維補強材120をモルタル材料30に埋める。モルタル材料30の第二繊維補強材120への塗り込みも手積みで行う。
【0076】
仕上工程は、第一面側材料M1、中間材料M2及び第二面側材料M3がモルタルとしての強度を発現していない養生工程の前、或いは養生工程の後に行うことができる。仕上工程を養生工程の前に行う場合、仕上用のモルタルなどの材料を第二面側材料M3の上に積み重ね、第一面側材料M1、中間材料M2及び第二面側材料M3とともに、強度が発現するように養生を行う。仕上工程を養生工程の後に行う場合、仕上用のモルタルなどの材料を成形体3に塗り、養生を行う。
【0077】
このように製造された積層構造体2は、断熱用の部材として用いることができる。また基部が型枠であれば、例えば積層構造体2は型枠を一体に備えた状態で建造物の構造部に取り付けて使用できる。また基部が構造部の躯体であれば、躯体と一体に構成されて断熱用の外壁などして施工できる。
【0078】
成形体3の板状部100では、第一繊維補強材110と第二繊維補強材120とをモルタル中に厚さ方向に離して設けることで、板状部100を好適に補強して、板状部100の本体100Aの厚さt5を薄くすることができる。また成形体3は、吹付発泡体50の形状に追随する部分増厚部100Bの分、重量が増すだけであるので、成形体3の重量の大幅な増加を抑えることができる。
【0079】
また成形体3が、吹付発泡体50の形状に追随する複数の部分増厚部100Bを設けていることで、吹付発泡体50が成形体3に掛かり、基部40と成形体3の間で安定して配置される。さらに、オーバーハング部510に部分増厚部100Bが掛かることで、吹付発泡体50と成形体3との接合強度を一層高めることができ、例えば成形体3の吹付発泡体50からの剥離を防止できる。
【0080】
本発明の成形体は、前記の説明や図示例に限定されずに実施をすることができる。
【0081】
本発明は、前記の板状部10を複数備えたモルタル製或いはコンクリート製の成形体として構成されてもよい。例えば図7(a)に示す成形体1Aは二つの板状部10(図7(a)では一方に符号10A、他方に符号10Bを付している。)を備えて、
L字型に構成されている。一方の板状部10Aを成形した後に、一方の板状部10Aを垂直に立てた状態で一方の板状部10Aの端部につながるように他方の板状部10Bの成形を行うことで、成形体1を製造することができる。
【0082】
板状部10Aと板状部10Bとがつながる接続部10Cは、図7(b)に示すように、板状部10Aと板状部10Bと同様に、モルタル中に、第一繊維補強材110と、この第一繊維補強材110から厚さ方向に離れて配置される第二繊維補強材120と、を備え、さらに隣接する板状部10A,10Bの第一繊維補強材110同士が重なるように配置され、さらに隣接する板状部10A,10Bの第二繊維補強材110同士が重なっている。なお、図7(b)では、第一繊維補強材110と第二繊維補強材120の断面を〇で表しており、板状部10Aの第一繊維補強材110及び第二繊維補強材120の各断面を一点鎖線でつないで表しており、板状部10Bの第一繊維補強材110及び第二繊維補強材120の各断面を破線でつないで表している。接続部10Cでは、全体厚みtc1が20mmを越えてもよいが、好ましくは例えば24mm以下とする。
【0083】
成形体に設けられる板状部10の数は二つに限るものではなく、また成形体の形状は前記の説明や図示例に限らず、板状部を複数備えた複雑な形状の成形体であってもよい。このような複雑形状の成形体の製造をDS法で行うと、スプレーガンを型枠内などに入れることができない事態が生じ得るが、本発明によれば、各板状部を前記の製造方法で成形することで、複雑形状の成形体の製造を容易に行うことができる。本発明の製造方法は、複雑な形状に対応でき、成形体の造形性を打ち出すことができる。板状部10同士がつながる箇所は接続部10Cとして構成されてもよい。
【0084】
成形体は、図1に示す一枚の板状に形成される場合、又は複数の板状部10がつながって構成される場合に限らず、少なくとも一部に板状部10を備えて構成することもできる。例えば、図7(a)に示す成形体1Aにおいて、他方の板状部10Bの長さLを短い場合には、板状部10Bの箇所を突出部として構成してもよい。突出部は、図1に示す板状部10の断面構造と異なり、一方の板状部10Aの端部から延びる第一繊維補強材110及び/又は第二繊維補強材120を折り畳んだ状態で埋め込んで構成され、これらの第一繊維補強材110及び/又は第二繊維補強材120で補強されている。この突出部では、第一繊維補強材110及び/又は第二繊維補強材120の開口111、121にもモルタルが入り込んでいる。
【0085】
成形体は、第一面に代えて、第二面を美的にデザイン設計された形状としてもよい。
成形体の用途は内外装に限られるものではない。
成形体の製造において、各板状部の成形は、前記のハンドレイアップ法のように手積みの作業で行う場合に限らず、機械を用いて積み重ね、さらにモルタルや生コンクリートを打ち込むようにしてもよい。
【0086】
図示例では、スペーサ140を第一繊維補強材110の全体を覆うように敷いているが、第一繊維補強材110と第二繊維補強材120の間隔を保持することができるものであれば、スペーサ140を第一繊維補強材110上に離して複数配置させてもよい。またスペーサ140として、樹脂製等の複数のブロックを第一連続シート上に離間して配置してもよい。ブロックはモルタル材料が入り込む空隙部を有するもの、または空隙部を設けていないものでもよい。
【0087】
また、前記の実施形態のスペーサ140は、第一繊維補強材と比べると、線径が細く、モルタルやコンクリートの強度に貢献しないものを例示したが、モルタルやコンクリートの補強用を兼ねてスペーサを用いてもよい。この場合、スペーサ140は繊維補強プラスチック(fiber reinforced plastics)などの繊維補強複合材料からなる格子状のシートを用いてもよい。
【0088】
積層構造体においても板状部の強度の向上用のスペーサを用いることができ、さらに中間部に埋めるナットなどの押さえ部材にスペーサを絡めておくと、成形体を一層強固にアンカーボルトに固定することができる。
【0089】
チョップドストランドなどの繊維を混入したモルタル材料30を用いて成形する場合を説明したが、モルタル材料30にはモルタルやコンクリートを補強用の繊維を省いたもので成形体を構成してもよい。この場合も、シート状の第一繊維補強材が第一面側に埋め込まれ、第二繊維補強材が第二面側に埋め込まれることで、成形体を好適に補強して、厚みt1を20mm以下にすることができる。
また、前記の実施形態では補強用繊維が中間部のスペーサの孔の空隙部にも入り込む形態を説明したが、中間部での補強用繊維の混入を省いて、少なくとも第一繊維補強材を含む板状部の第一面側、及び/又は第一面とは反対に位置し更に第二繊維補強材を含む板状部の第二面側が、補強用繊維を混入した繊維混入モルタル或いは繊維補強コンクリートで構成されてもよい。
コンクリートの場合、本発明では粗骨材としては小さいものを使用して、厚みt′を5mm以上20mm以下に成形する。
【0090】
成形体1,1A,3も、躯体に積層されてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1,1A,3 成形体
2 積層構造体
10,10A,10B,100 板状部
11,101 第一面
12,102 第一面
10C 接続部
100A 本体
100B 部分増厚部
110 第一繊維補強材
111 開口
120 第二繊維補強材
121 開口
130 中間部
140 スペーサ
20 型枠
21 底部
40 基部
50 吹付発泡体
60 仕上層
70 アンカーボルト
80 押さえ部材
81 ナット
82 ワッシャ
M1 第一面側材料
M2 中間材料
M3 第二面側材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7