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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146860
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】プラズマ発生器
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/30 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H05H1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024051471
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2023059135
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】納富 隼人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 豊
(72)【発明者】
【氏名】天立 茂樹
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA18
2G084CC13
2G084CC34
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD55
2G084FF32
2G084FF33
2G084GG02
2G084GG18
2G084GG26
(57)【要約】
【課題】ガスの分解効率を高めることができるプラズマ発生器を提供する。
【解決手段】プラズマ発生器20は、放電管22と、コイル24と、放電管22の一方の開口部22bを覆い、放電管22の内部にガスを導入する複数のガス導入孔28が形成された被覆体26Aと、を備える。コイル24は、少なくとも一部の巻線部分24aに、RF帯域の周波数の高周波電流が流れるように構成されている。複数のガス導入孔28から導入されたガスにより、放電管22の内部において、旋回流F1が形成されるように、各ガス導入孔28には、中心軸CLに沿った方向から視たときに中心軸CLを中心とした同じ回りに、ガスが放出される放出流路28bが形成されている。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを内部に導入し、内部においてプラズマを発生させるプラズマ発生器であって、
円筒形状を有した絶縁性の放電管と、
前記放電管の中心軸を中心に前記放電管の外周に巻かれた導電性のコイルと、
前記放電管の一方の開口部を覆い、前記放電管の内部にガスを導入する複数のガス導入孔が形成された被覆体と、を少なくとも備え、
前記コイルは、少なくとも一部の巻線部分に、RF帯域の周波数の高周波電流が流れるように構成されており、
前記複数のガス導入孔から導入されたガスにより、前記放電管の内部において、旋回流が形成されるように、前記各ガス導入孔には、前記中心軸に沿った方向から視たときに前記中心軸を中心とした同じ回りに、前記ガスが放出される放出流路が形成されていることを特徴とするプラズマ発生器。
【請求項2】
前記中心軸に沿った方向から視たときに、前記放出流路から放出されるガスの放出方向に沿った仮想線と、前記仮想線が前記放電管の内周面に接した接点を通過する前記内周面の円周の接線とが成す角度が、45°以下であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生器。
【請求項3】
前記中心軸に沿った方向から視たときに、前記放出流路の放出口は、前記中心と前記内周面とを結ぶ半径方向において、前記中心と前記内周面との間の中央よりも前記内周面寄りに形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生器。
【請求項4】
前記中心軸に沿った方向から視たときに、前記複数のガス導入孔は、前記中心軸を中心とした同じ円周上に沿って等間隔に形成され、前記各ガス導入孔の前記放出流路から放出されるガスの放出方向に沿った仮想線と、前記放出流路の放出口を通過する前記円周の接線との成す角度は、同じ角度であり、
前記仮想線は、前記中心軸に沿った方向に対して、同じ角度に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生器。
【請求項5】
前記仮想線は、前記中心軸に沿った方向に対して、傾斜する角度は、60°以上であることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ発生器。
【請求項6】
前記被覆体は、
前記放電管の前記一方の開口部から外挿され、前記放電管に連結された連結筒と、
前記連結筒の開口部を覆い、前記複数のガス導入孔が形成された蓋体と、
を有しており、
前記連結筒が前記放電管に連結された状態で、前記蓋体は、前記中心軸に沿った方向において、前記一方の開口部に対して間隔を空けて配置されており、
前記各ガス導入孔の前記放出流路は、前記放電管の内周面に向かってガスが放出されるように、前記中心軸に沿った方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは、誘導性結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)(以下、ICP)を発生させ、そのICPを利用して各種の処理(クリーニング等)を行う場合がある。特許文献1および特許文献2には、ICPを発生させるプラズマ発生器が記載されている。
【0003】
ICPは、放電管の外周にコイルを巻いたプラズマ発生器を用いて発生させる。この際、コイルには高周波電流が流れるように高周波電源から高周波電圧を出力するとともに、放電管の内部にプロセスガス(以下、ガス)を導入する。そして、コイルに流れる高周波電流による誘導磁界によってガスを電離させてプラズマを発生させる。なお、初期の段階では、容量性結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)と呼ばれるプラズマが発生し、その後、コイルに流れる高周波電流を増加させていく段階でICPが発生すると考えられている。
【0004】
放電管の内部のガスが電離してプラズマが発生すると、電離により得られたプラズマ中の電子がガスに衝突し、ガスが分解する。例えば、NF(三フッ化窒素)であれば、N(窒素)と3F(フッ素)とに分解する。分解したガスは、例えば、プラズマ発生器の下流にあるプラズマ処理室に送出され、プラズマ処理室内のクリーニング等の処理が行われる。
【0005】
このように、ICPを発生させることによってガスが分解する。分解したガスを用いてクリーニング等の処理が行われる。そのため、ガスの分解効率を高めることが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-161319号公報
【特許文献2】特開2020-057464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ガスの分解効率を高めることができるプラズマ発生器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を鑑みて、本発明に係るプラズマ発生器は、ガスを内部に導入し、内部においてプラズマを発生させるプラズマ発生器であって、円筒形状を有した絶縁性の放電管と、前記放電管の中心軸を中心に前記放電管の外周に巻かれた導電性のコイルと、前記放電管の一方の開口部を覆い、前記放電管の内部にガスを導入する複数のガス導入孔が形成された被覆体と、を少なくとも備え、前記コイルは、少なくとも一部の巻線部分に、RF帯域の周波数の高周波電流が流れるように構成されており、前記複数のガス導入孔から導入されたガスにより、前記放電管の内部において、旋回流が形成されるように、前記各ガス導入孔には、前記中心軸に沿った方向から視たときに前記中心軸を中心とした同じ回りに、前記ガスが放出される放出流路が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、各ガス導入孔には、放電管の中心軸に沿った方向から視たときに中心軸を中心とした同じ回りに(例えば、時計回りに)、ガスが放出される放出流路が形成されている。これにより、複数のガス導入孔から導入されたガスにより、放電管の内部に、螺旋状の旋回流を形成することができる。その結果、本発明のプラズマ発生器では、放電管に導入するガスの流量が同じ場合であっても、ガスが放電管の中心軸に沿って直線的に流れる場合に比べて、放電管の中心軸に沿った速度成分を低下させることができる。そのため、高周波電流が流れるコイルの巻線部分に対応した放電管の内部の巻線部分に近い領域(以下、プラズマ発生領域)において、ガスの滞在時間を増加させることができるため、ガスの分解効率を高めることができる。
【0010】
ここで、放電管の内部に、導入されたがガスにより、旋回流を形成することができるのであれば、放出流路の放出方向は、特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記中心軸に沿った方向から視たときに、前記放出流路から放出されるガスの放出方向に沿った仮想線と、前記仮想線が前記放電管の内周面に接した接点を通過する前記内周面の円周の接線とが成す角度が、45°以下である。
【0011】
この態様によれば、ガスの放出方向に沿った仮想線と、内周面の円周の接線とが成す角度を、45°以下とすることにより、放電管の内周面に衝突したガスの流れが、旋回流が形成される方向と、反対方向に流れることを抑えることができる。これにより、ガス導入孔から噴出されたガスを、概略的には放電管の内周面に沿って螺旋状に流すことができる。
【0012】
さらに好ましい態様としては、前記中心軸に沿った方向から視たときに、前記放出流路の放出口は、前記中心と前記内周面とを結ぶ半径方向において、前記中心と前記内周面との間の中央よりも前記内周面寄りに形成されている。この態様によれば、放出口を中心と内周面との間の中央よりも内周面寄りに形成することにより、ガスの放出方向に沿った仮想線と、内周面の円周の接線とが成す角度を、より小さく設定することができる。これにより、ガス導入孔から放出されたガスを、概略的には放電管の内周面に沿って螺旋状に流すことができる。
【0013】
また、放電管の内部に、導入されたガスにより、旋回流を形成することができるのであれば、複数のガス導入孔の位置およびその形状は、特に限定されるものではない。しかしながら、より好ましい態様としては、前記中心軸に沿った方向から視たときに、前記複数のガス導入孔は、前記中心軸を中心とした同じ円周上に沿って等間隔に形成され、前記各ガス導入孔の前記放出流路から放出されるガスの放出方向に沿った仮想線と、前記放出流路の放出口を通過する前記円周の接線との成す角度は、同じ角度であり、前記仮想線は、前記中心軸に沿った方向に対して、同じ角度に傾斜している。ここで、旋回流を形成することができるのであれば、仮想線が傾斜する角度は特に限定されるものではないが、前記仮想線は、前記中心軸に沿った方向に対して、傾斜する角度は、60°以上であることがより好ましい。
【0014】
この態様によれば、中心軸に沿った方向から視たときに、複数のガス導入孔は、等間隔に形成され、ガスの放出方向に沿った仮想線と、円周の接線との成す角度は、同じ角度であり、仮想線は、中心軸に沿った方向に対して、同じ角度に傾斜しているので、中心軸に沿って、螺旋状の旋回流を安定して形成することができる。そのため、誘導結合プラズマ(ICP)の発生・維持に関する安定性を向上させることができる。
【0015】
なお、ガス導入孔が放電管の中心軸を中心とする円周上に沿って等間隔に形成されていない場合は、放電管内部の円周方向におけるガス密度の不均一性が高まる。これに対して、上記のようにすると、プラズマ発生領域において、放電管内部の円周方向におけるガス密度の均一性を高めることができるので、誘導結合プラズマ(ICP)の発生・維持に関する安定性を向上させることができる。すなわち、ガス流量等の条件が同じであれば、同じ結果を得られ易くなる。後述する発明者らの実験結果からも明らかなように、仮想線を、前記中心軸に沿った方向に対して、60°以上の角度に傾斜させることにより、ガスの分解効率を一層高めることができる。
【0016】
より好ましい態様としては、前記被覆体は、前記放電管の前記一方の開口部から外挿され、前記放電管に連結される連結筒と、前記連結筒の開口部を覆い、前記複数のガス導入孔が形成された蓋体と、を有しており、前記連結筒が前記放電管に連結された状態で、前記蓋体は、前記中心軸に沿った方向において、前記一方の開口部に対して間隔を空けて配置されており、前記各ガス導入孔の前記放出流路は、前記放電管の内周面に向かってガスが放出されるように、前記中心軸に沿った方向に対して傾斜している。
【0017】
この態様によれば、蓋体は、中心軸に沿った方向において、一方の開口部に対して間隔を空けて配置されているので、蓋体に形成されたガス導入孔から、放電管の開口部の端面を超え、放電管の内周面の方向に向かって、ガスが放出される。これにより、放電管の一方の開口部の端面において、ガスの流れに乱れが発生し難くなり、放電管の内部において、螺旋状の安定した旋回流を形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るプラズマ発生器によれば、ガスの分解効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る実施形態に係るプラズマ発生装置の構成を示す図である。
図2図1に示す実施形態に係るプラズマ発生器の外観を示す斜視図である。
図3図2に示す実施形態に係るプラズマ発生器の断面図である。
図4A】(a)は、図3に示す蓋体の平面図であり、(b)は、(a)のA-A線に沿った断面図である。
図4B】変形例に係る蓋体を説明するための図であり、(a)は、変形例に係る蓋体の平面図であり、(b)は、別の変形例に係る蓋体の断面図である。
図5図3に示すプラズマ発生器におけるガスの流れを説明するための模式的斜視図である。
図6図3に示すプラズマ発生器における旋回流を説明するための断面図である。
図7】比較例1に係るプラズマ発生器の断面図である。
図8】実施例1、2および比較例1に係るプラズマ発生器において、放電管に導入されるガスの流量と、導入されたガスの分解効率との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、実施形態に係るプラズマ発生器20を備えたプラズマ発生装置10を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0021】
1.プラズマ発生装置10とプラズマ発生器20の全体構成について
図1は、実施形態に係るプラズマ発生装置10の構成を示す図である。実施形態に係るプラズマ発生装置10は、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を発生させる装置である。
【0022】
実施形態に係るプラズマ発生装置10は、高周波電源12と、インピーダンス整合回路14と、プラズマ発生器20と、を備える。
【0023】
高周波電源12は、RF(Radio Frequency)帯域の周波数の高周波電圧を出力することにより、インピーダンス整合回路14を介して、高周波電力をプラズマ発生器20に供給する。インピーダンス整合回路14は、高周波電源12から出力された高周波電力をインピーダンス整合してプラズマ発生器20へと供給する。
【0024】
プラズマ発生器20は、ガスが内部に導入し、内部においてプラズマを発生する。プラズマ発生器20により発生されたプラズマは、例えばプラズマ処理室へと送出され、エッチング等の各種の処理に用いられる。
【0025】
プラズマ発生器20は、放電管22と、コイル24と、被覆体26Aとを、少なくとも備える。放電管22は、円筒形状を有しており、石英、アルミナ等の絶縁性の材料からなる。
【0026】
コイル24は、銅合金などの導電性の材料からなり、放電管22の中心軸CLを中心に、放電管22の外周に巻かれる。コイル24には、高周波電源12からインピーダンス整合回路14を介して高周波電力が供給される。具体的には、コイル24は、少なくとも一部の巻線部分に、RF帯域の周波数の高周波電流が流れるように構成されている。
【0027】
被覆体26Aは、アルミニウム等の金属で構成されており、後述するように、放電管22の一方の開口部22bを覆っており、放電管22の一方の開口部22bを塞いている。被覆体26Aは、放電管22の一方の開口部22bから外挿された状態で、放電管22に連結される上側連結筒44と、上側連結筒44の開口部44aを覆い、放電管22の内部にガスを導入する複数のガス導入孔28が形成された蓋体26と、を備えている。
【0028】
このようなプラズマ発生器20は、放電管22の内部が高真空状態に保たれ、複数のガス導入孔28からガスが内部に導入される。プラズマ発生器20は、コイル24に流れるRF帯域の周波数の高周波電流により発生する変動磁場との誘導結合によって放電管22の内部のガスを電離させてプラズマ化し、誘導結合プラズマ(ICP)を発生する。発生したプラズマは、放電管22における、ガス導入孔28とは反対側の開口部(他方の開口部22c)から、プラズマ処理室等へと送出される。
【0029】
放電管22の内部のガスが電離してプラズマが発生する際には、ガスが分解する。例えば、ガスがNF(三フッ化窒素)であれば、N(窒素)と3F(フッ素)とに分解される。分解されたN(窒素)と3F(フッ素)とは、例えば、プラズマ発生器20の下流にあるプラズマ処理室(図示せず)に送出され、プラズマ処理室内のクリーニング等の処理が行われる。例えば、クリーニングを行う場合、プラズマ処理室内に残留しているSi膜とF(フッ素)との化学反応により気体のSiFが発生するので、それらを真空ポンプで排出することにより、Si膜を除去することができる。
【0030】
もちろん、本実施形態のプラズマ発生器20が適用されるのは、上記のようなプラズマ処理室内のクリーニングに限定されない。例えば、有害ガスの除害処理等に適用することができる。有害ガスの除害処理に適用する場合は、上流から流れてくる有害ガスを電離させて、プラズマ化させる。この際に、有害ガスを分解し、無害化を図ることになる。また、使用するガスは、NFに限定されず、用途(クリーニング、除害処理等)によって、様々なガスが用いられる。例えば、O等が用いられる。
【0031】
2.放電管22と冷却および接続の構造について
図2は、図1に示す実施形態に係るプラズマ発生器20の外観を示す斜視図である。図3は、図2に示す実施形態に係るプラズマ発生器20の断面図である。
【0032】
プラズマ発生器20は、図中上側からガスが導入され、図中下側からプラズマを送出する。プラズマ発生器20に流れるガスの上流側を上側、ガスの下流側を下側としている。ただし、この上側および下側は、説明の便宜上、特定したものであり、プラズマ発生器20を構成する各部材および部位は、これに限定されるものではない。なお、本実施形態では、プラズマ発生器20は、流れるガスの上流側を上側、ガスの下流側を下側としたが、例えば、流れるガスの上流側を下側、ガスの下流側を上側となるように、図3に示すプラズマ発生器20に対して上下を反転させて、プラズマ発生装置を配置してもよい。また、ガスの上流側と下流側が水平方向に沿うように、図3に示すプラズマ発生器20を横置きにしてもよい。このように、プラズマ発生器20により、後述する効果を奏することができるのであれば、プラズマ発生器20の配置される姿勢は特に限定されるものではない。
【0033】
上述した如く、プラズマ発生器20の放電管22は、円筒形状を有しており、放電管22は内部に、プラズマの材料となるガスが通過する。放電管22には、円板状の上側フランジ42を、放電管22に外挿した状態で、取り付けられている。上側フランジ42は、アルミニウム等の金属で構成されており、中心軸CLに沿った放電管22の外周面のうち、コイル24が巻かれた領域と、一方側の開口部22bとの間において、放電管22に外挿されている。
【0034】
さらに、放電管22には、円板状の下側フランジ72と、下側連結筒74とが、放電管22に外挿された状態で、取り付けられている。下側フランジ72は、アルミニウム等の金属で構成されており、中心軸CLに沿った放電管22の外周面のうち、コイル24が巻かれた領域と、他方側の開口部22cとの間において、放電管22に外挿されている。
【0035】
下側連結筒74は、アルミニウム等の金属で構成されており、放電管22の下端を含む位置に取り付けられている。下側連結筒74は、略円筒形状であって、内周が放電管22の外周と一致しており、内部に放電管22が挿入される。下側連結筒74には、下側フランジ72と対向した位置に、フランジ部76が形成されており、下側フランジ72とフランジ部76が当接している。下側連結筒74には、下部位置において、下側フランジ部78が形成されている。
【0036】
さらに、放電管22には、冷却管支持体82が、放電管22に外挿された状態で、取り付けられており、冷却管支持体82には、下側冷却管84の一部が収容されている。冷却管支持体82は、アルミニウム等の金属で構成されており、コイル24と下側フランジ72との間に配置されている。
【0037】
冷却管支持体82の下端位置の内側(放電管22側)には溝が形成されており、この溝には、Oリング92が挿入される。冷却管支持体82と下側フランジ72とをボルト等で固定することによって、Oリング92が冷却管支持体82と下側フランジ72との間に挟み込まれる状態となっている。これにより、Oリング92が変形するので、放電管22と冷却管支持体82との間が塞がれ、放電管22の下方における気密性が保たれる。
【0038】
下側冷却管84は、下側フランジ72の上側部分の放電管22の外周に略1周巻かれる。下側冷却管84は、一方の端部に第3接続部86が設けられ、他方の端部に第4接続部88が設けられている。第3接続部86および第4接続部88の一方は、冷媒を下側冷却管84に導入するための接続治具であり、その他方が、冷媒を下側冷却管84から送出させるための接続治具である。これにより、下側冷却管84は、放電管22を冷却することができる。
【0039】
3.コイル24について
プラズマ発生器20のコイル24は、放電管22における中心軸CL方向における中央領域に設けられている。コイル24は、断面の外周形状が矩形、例えば正方形である。コイル24は、線状の導電体であって、放電管22の外周に、放電管22の中心軸CLを中心に所定のピッチで、所定の周回数分巻かれる。これにより、コイル24は、放電管22の外周に、放電管22の中心軸CLを中心に巻かれた状態となる。
【0040】
コイル24は、内部が中空であって、内部に冷媒が流れる冷却流路52が形成されている。コイル24は、一方の端部に第1接続部54が設けられ、他方の端部に第2接続部56が設けられている。第1接続部54および第2接続部56のうち一方は、冷媒をコイル24の内部の冷却流路52に導入するための接続治具であり、その他方が冷媒をコイル24の冷却流路52から送出させるための接続治具である。これにより、コイル24内の冷却流路52は、一方の端部から他方の端部まで、内部に冷媒を流し、コイル24および放電管22を冷却することができる。コイル24は、このような冷却流路52を含むことにより、コイル24による発熱を効率良く冷却することができる。
【0041】
コイル24は、少なくとも通電される巻線部分24aを有している。巻線部分24aは、コイル24の一方の端部から他方の端部までの間の途中に設けられており、巻線部分24aの両端には、第1電極62および第2電極64が設けられている。第1電極62および第2電極64には、インピーダンス整合回路14から高周波電力が供給される。これにより、コイル24は、第1電極62と第2電極64との間に高周波電力に応じた電流が流され、高周波磁界を発生させることができる。なお、コイル24の一方の端部から他方の端部に、第1および第2電極62、64を設け、コイル24全体に通電してもよい。
【0042】
4.被覆体26Aについて
被覆体26Aは、放電管22の一方の開口部22bを覆うカバ部材であり、被覆体26Aには、放電管22の内部にガスを導入する複数(ここでは8つ)のガス導入孔28が形成されている。被覆体26Aは、上側連結筒(連結筒)44と蓋体26とを有している。なお、本実施形態では、被覆体26Aは、上側連結筒44と蓋体26とで構成されるが、放電管22の一方の開口部22bを蓋体26で覆うように、蓋体26を配置することができるのであれば、被覆体26Aは蓋体26のみで構成されていてもよい。
【0043】
上側連結筒44は、円筒状であり、アルミニウム等の金属で構成されている。放電管22の一方の開口部22bから外挿され、上側フランジ42を介して放電管22に連結されている。放電管22の中心軸CLと、上側連結筒44の(円筒の)軸心とは、一致している。上側連結筒44は、略円筒形状であって、内周が放電管22の外周と一致しており、内部に放電管22が挿入されている。上側連結筒44には、上側フランジ42と対向する位置に、フランジ部46が形成されている。上側連結筒44は、上部位置において、ガス供給源(図示せず)に接続されるフランジ部48が形成されている。
【0044】
上側連結筒44の下端位置の内側(放電管22側)には溝が形成されており、Oリング49が挿入されている。フランジ部46と上側フランジ42とをボルト等で固定することによって、Oリング49がフランジ部46と上側フランジ42との間に挟み込まれる状態となる。これにより、Oリング49が変形するので、放電管22とフランジ部46との間が塞がれ、放電管22の上方における気密性が保たれる。
【0045】
蓋体26は、円板形状であり、上側連結筒44に形成された開口部44aを覆うように配置されている。蓋体26は、上側連結筒44に形成されたフランジ部48の上に載置された状態で、上側連結筒44に固定されている。これにより、蓋体26は、放電管22の一方の開口部22bを塞ぐことができる。また、上側連結筒44が放電管22に連結された状態で、蓋体26は、放電管22の中心軸CLに沿った方向において、放電管22の一方の開口部22bの端面22eに対して間隔を空けて配置されている。なお、蓋体26とフランジ部48とを一体形成してもよい。このようにすれば、コストを低減することができる。
【0046】
ところで、一般的に知られているように、ガスを電離させてプラズマを発生させることに適したガス密度がある。ガスの電離は、主に放電管22の内部のプラズマ発生領域PR(図6参照)において生じるので、このプラズマ発生領域PRにおけるガス密度が重要となる。このガス密度は、ガスの種類、ガス流量、コイルの電圧、コイルに流れる電流、高周波電源12から出力する高周波電圧の周波数、放電管の内径等の様々な条件によって異なる。また、プラズマ処理プロセスの進行状況によっても異なる。そのため、実験等を行って、ガスの種類毎に、ガス流量等の条件を見出していくことが必要である。例えば、プラズマ発生前の段階では、CCPを発生させるために適した条件を見出す必要があり、その後は、ICPを発生させ、また維持するのに適した条件を見出す必要がある。また、ICPの発生・維持段階では、ガスの分解効率を高めることが重要になる。ただし、ガスの分解効率は、放電管22の内部のプラズマ発生領域PRにおけるガス密度が大きな要因となるが、従来のプラズマ発生器では、その調整が困難であった。このような観点から、本実施形態では、蓋体26に、以下に示す複数のガス導入孔28を設けている。
【0047】
5.ガス導入孔28について
本実施形態では、蓋体26は、ガス供給源(図示せず)に面した円形状の第1面26aと、放電管22に面した円形状の第2面26bを有した円板状の部材である。本実施形態では、図4A(b)に示すように、蓋体26には、第1面26aと第2面26bを貫通するように、複数のガス導入孔28が形成されている。ガス導入孔28は、蓋体26を貫通するように形成された直線状の孔であり、第1面26aには、ガス導入孔28にガスを供給する供給口28aが形成され、第2面26bには、ガス導入孔28からガスを排出する放出口28cが形成されている。なお、図3に示す蓋体26にガス導入孔28は、説明上、便宜的に、その形状を記載しているが、実際のガス導入孔28の配置および形状は、図4A図5を参照して詳細に説明する。
【0048】
ガス導入孔28には、ガスが放出される放出流路28bが形成されている。放出流路28bの端部には、放出口28cが形成されており、放出流路28bは、放出口28cから放出されるガスの放出方向に沿った直線状の経路であり、本実施形態では、ガス導入孔28は、直線状の孔であることから、放出流路28bが延在する方向と、ガス導入孔28が延在する方向は、一致する。
【0049】
なお、図4B(b)に示すように、ガス導入孔28は、屈曲した流路であってもよい。この場合には、放出流路28bは、放出口28cから第2面26bに対して、蓋体26の厚さ方向に対して、傾斜した流路となる。本実施形態およびこの変形例では、ガス導入孔28は、円形状の同じ孔径を有しており、放出流路28bの流路断面の円形状である。
【0050】
本実施形態では、複数のガス導入孔28は、複数のガス導入孔28から、放電管22の内部に導入されたガス(具体的には放出口28cから放出されたガス)により、放電管22の内部において、旋回流F1が形成されるように、配置されている。具体的には、各ガス導入孔28には、放電管22の中心軸CLに沿った方向から視たときに、放電管22の中心軸CLを中心Cとした同じ回りに(図4A、4Bでは時計回り)、ガスが放出される放出流路28bが形成されている。なお、本実施形態では、その一例として、旋回流F1が時計回りとなるように、放出流路28bが形成されているが、旋回流F1が反時計回りとなるように、放出流路28bが形成されてもよい。
【0051】
本実施形態では、図4A(a)に示すように、中心軸CLに沿った方向から視たときに、複数のガス導入孔28は、中心軸CLを中心Cとした同じ円周C1上に沿って等間隔に形成されている。本実施形態では、複数のガス導入孔28は、同じ形状であり、供給口28aは、円周C1上に形成されている。放出口28cは、円周C1よりもわずかに大きい半径を有した円周C3上に形成されている。図4A(a)では、便宜上、円周C1と円周C3は、便宜上、同じ円周として示している。
【0052】
本実施形態では、放電管22の中心軸CLに沿った方向から視たときに、放出流路28bから放出されるガスの放出方向に沿った仮想線L1は、円周C3の接線に相当する。したがって、本実施形態では、各ガス導入孔28の放出流路28bから放出されるガスの放出方向に沿った仮想線L1と、放出流路28bの放出口28cを通過する円周C3の接線L3とは略一致している。なお、図4B(b)に示すように、仮想線L1と接線L3とが角度θ2を成すように、供給口28aを、円周C1上に形成し、放出口28cを、円周C1よりも大きい半径を有した円周C3上に形成してもよい。
【0053】
図4A(a)の例では、この仮想線L1と、仮想線L1が放電管22の内周面22aに接した接点P1を通過する内周面22aの円周C2の接線L2とが成す角度θ1が、45°以下となる位置に、複数のガス導入孔28が形成されている。
【0054】
さらに、図4A(b)に示すように、各ガス導入孔28の放出流路28bにより、その放出方向は、異なるものの、各ガス導入孔28の放出方向に沿った仮想線L1は、中心軸CLに沿った方向CDに対して、同じ角度に傾斜している。
【0055】
本実施形態では、図4A(a)に示すように、中心軸CLに沿った方向から視たときに、放出流路28bの放出口28cは、中心Cと、放電管22の内周面22aとを結ぶ半径方向において、中心Cと内周面22aとの間の中央よりも内周面22a寄りに形成されている。ここで、「中央」とは、この半径方向において、中心Cと内周面22aとの区間の中点である。具体的には、中心Cと放電管22の内周面22aとの距離(円周C2の半径)Rは、中心Cから放出口28cまでの距離R1と、放出口28cから内周面22aまでの距離R2との合計であり、距離R1は、距離R2よりも長いこれにより、放出方向に沿ったガスが、放電管22の内周面22aまたは上側連結筒44の内周面に衝突する。放出方向に沿ったガスが放電管22の内周面22aに衝突する場合、より安定した旋回流F1を形成するには、距離Rに対して、距離R1は、0.5を超えていること好ましく、後述する実施例1および実施例2に示すように、0.6以上であることがより好ましい。放出方向に沿ったガスが上側連結筒44の内周面に衝突する場合も同様に考えることができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、図3に示すように、上側連結筒44が放電管22に連結された状態で、蓋体26は、中心軸CLに沿った方向において、放電管22の一方の開口部22bを形成する端面22eに対して間隔を空けて配置されている。また、図5に示すように、各ガス導入孔28の放出流路28bは、放電管22の内周面22aに向かってガスが放出されるように、中心軸CLに沿った方向に対して傾斜している。
【0057】
このような構成のプラズマ発生器20は、ガス導入孔28からプラズマの材料となるガスが内部に導入されるとともに、コイル24に高周波電力を供給される。まず、プラズマ発生器20は、コイル24の電圧により、真空状態とされた放電管22の内部でガスを電離させて容量性結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)を発生させる。そして、プラズマ発生器20は、コイル24に流れる電流が増加されると、誘導磁界を発生させ、誘導結合プラズマ(ICP)を発生させる。本実施形態に係るプラズマ発生器20は、誘導結合プラズマ(ICP)を安定的に発生させ、発生を維持させることができる。
【0058】
本実施形態によれば、各ガス導入孔28には、放電管22の中心軸CLに沿った方向から視たときに中心軸CLを中心Cとした同じ回りに(時計回りに)、ガスが放出される放出流路28bが形成されている。これにより、複数のガス導入孔28から導入されたガスにより、放電管22の内部に、螺旋状の旋回流F1を形成することができる。その結果、放電管22に導入するガスの流量が同じ場合であっても、ガスが放電管22の中心軸CLに沿って直線的に流れる場合に比べて、放電管22の中心軸CLに沿った速度成分を低下させることができる。そのため、高周波電流が流れるコイル24の巻線部分24aに対応した放電管22の内部の巻線部分24aに近い領域(以下、プラズマ発生領域PR)において、ガスの滞在時間を増加させることができるため、ガスの分解効率を高めることができる。
【0059】
さらに、ガスの放出方向に沿った仮想線L1と、内周面22aの円周C2の接線L2とが成す角度θ1を、45°以下とすることにより、放電管22の内周面22aに衝突したガスの流れが、旋回流F1が形成される方向と、反対方向に流れることを抑え、ガス流れの乱れを抑えることができる。これにより、ガス導入孔28から噴出されたガスを、概略的には放電管22の内周面22aに沿って、螺旋状の旋回流F1で安定して流すことができる。
【0060】
さらに、図4A(a)、図4B(a)に示すように、ガス導入孔28の放出口28cを中心Cよりも内周面22a寄りに形成することにより、ガスの放出方向に沿った仮想線L1と、内周面22aの円周C2の接線L2とが成す角度θ1を、より小さく設定することができる。これにより、ガス導入孔28から噴出されたガスを、概略的には放電管22の内周面22aに沿って螺旋状に流すことができる。
【0061】
本実施形態では、中心軸CLに沿った方向から視たときに、複数のガス導入孔28は、等間隔に形成され、ガス導入孔28のそれぞれに対して、図4A(a)では、ガスの放出方向に沿った仮想線L1と、円周C1の接線L3と、が一致し(これらの成す角度は0°で同じあり)、図4A(b)では、仮想線L1と接線L3との成す角度θ2は、同じ角度である。さらに、仮想線L1は、中心軸CLに沿った方向CDに対して、同じ角度θ3に傾斜している。したがって、放電管22の中心軸CLに沿って、螺旋状の旋回流F1を安定して形成することができる。そのため、誘導結合プラズマ(ICP)の発生・維持に関する安定性を向上させることができる。ガスの放出方向に沿った仮想線L1が、中心軸CLに沿った方向CDに対して、傾斜する角度θ3の大きさは、螺旋状の旋回流F1が形成されるのでれば、特に限定されるものではない。なお、本実施形態では、方向CDは、平面状の蓋体26の表面(平面)の法線の方向と一致し、中心線CLは、方向CDと平行な位置関係にある。発明者らの実験によれば、角度θ3は、45°以上であることが好ましく、より好ましくは、角度θ3は、60°以上である。螺旋状の旋回流F1によるガスの分解効率を高めることができる。ガス導入孔28を有した蓋体26の製造上の観点から、角度θ3は、80°以下であることが好ましい。
【0062】
さらに、図3に示すように、蓋体26は、中心軸CLに沿った方向において、放電管22の一方の開口部22b(具体的には端面22e)に対して間隔を空けて配置されている。このような場合であっても、図5に示すように、蓋体26に形成されたガス導入孔28から、放電管22の開口部22bの端面22eを超え、放電管22の内周面22aの方向に向かって、ガスが放出される。これにより、放電管22の開口部22bの端面22eにおいて、ガスの流れに乱れが発生し難くなり、放電管22の内部において、螺旋状の安定した旋回流F1を形成することができる。
【実施例0063】
以下に、本発明の実施例を以下に示す。
〔実施例1〕
図4Aに示す蓋体26を有したプラズマ発生器を準備した。具体的には、厚さ4mmの蓋体に、直径50mmの円周上に、平面視において(中心軸CLに沿った方向から視て)、接線方向にガスが放出され、かつ、中心軸CLに沿った方向CDに対して、45°で傾斜した孔径1.5mmのガス導入孔を等間隔で、8個設けた。すなわち、実施例1では、ガス導入孔28のガスの放出方向に沿った仮想線L1が、中心軸CLに沿った方向CDに対して傾斜する角度θ3を45°にした。なお、放電管22の内径は、73mmであり、上述した距離R1/距離Rは、0.68である。このプラズマ発生器に対して、NFのガスを導入し、導入したガスの流量と、NFのガス分解効率を測定した。この結果を表1および図8に示す。
【0064】
〔実施例2〕
実施例1と同様のプラズマ発生器を準備した。実施例2のプラズマ発生器が、実施例1のものと相違する点は、実施例2では、ガス導入孔28のガスの放出方向に沿った仮想線L1が、中心軸CLに沿った方向CDに対して傾斜する角度θ3を60°にした点である。すなわち、実施例2では、ガス導入孔28は、平板状の蓋体26の表面(平面)に対して30°の角度で、蓋体26に穿設されている。このプラズマ発生器に対して、NFのガスを導入し、導入したガスの流量と、NFのガス分解効率を測定した。この結果を表1および図8に示す。
【0065】
〔比較例1〕
図7に示す蓋体26Cを有したプラズマ発生器20Cを準備した。実施例1と相違する点は、厚さ4mmの蓋体26Cに対して、放電管22の中心軸CLに沿った蓋体26Cの中央に、孔径4.0mmのガス導入孔28Cを1つ設けた点である。このプラズマ発生器20Cに対して、実施例1と同様に、NFのガスを導入し、導入したガスの流量と、NFのガス分解効率を測定した。この結果を表1および図8に示す。
【0066】
〔比較例2〕
実施例1と相違する点は、蓋体を取り外したプラズマ発生器を準備した点である。実施例1と同様に、NFのガスを導入し、導入したガスの最大流量を測定した。この結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
比較例1の蓋体を用いた場合、プラズマを発生させることができるガス流量は、最大2.5slmであった。これに対して、実施例1および実施例2の蓋体26では、プラズマを発生させることができるガス流量は、最大5.0slmであった。このように、実施例1および実施例2の蓋体26を用いた方が、比較例1の蓋体を用いるよりも、プラズマを発生させることができるガス流量を多くできることを確認できた。なお、比較例1の場合には、コイルに供給する電力を、5.5kWにして実験をしたところ、ガスの流量を増加させ、2.5slmを超えたときに、放電管22が破損した。一方、実施例1および実施例2の場合には、コイル24に供給する電力を、4.5kWにし制限したにもかかわらず、比較例1よりも、ガスの流量を増加させ、最大5.0slmまで増加させることができた。
【0069】
図8に示すように、比較例1(▲)では、導入ガスの流量を1.5slmからさらに増やしていくと、ガスの分解効率が急激に低下して、2.5slmで70%以下まで低下した。一方で、実施例1(●)では、コイル24に供給された電力が4.5kWにあるにもかかわらず、2.0slmでも90%以上のガスの分解効率を維持しており、3.0slmでも分解効率が80%程度確保されていた。さらに、実施例2(■)では、コイル24に供給された電力が4.5kWにあるにもかかわらず、2.0slmでも94%以上のガスの分解効率を維持しており、3.0slmでもガスの分解効率が85%程度確保されていた。このことから、実施例2のプラズマ発生器20の如く、ガスの放出方向に沿った仮想線L1を、中心軸CLに沿った方向CDに対して、角度θ3を大きくすれば(すなわち、平板状の蓋体26に対して小さく傾斜させれば)、プラズマ発生領域PRにおいて、ガスの滞在時間を増加させることができるため、ガスの分解効率を高めることができるといえる。実施例1および実施例2の結果から、角度θ3は、45°以上であることが好ましく、より好ましくは、角度θ3が60°以上であるといえる。
【0070】
比較例1では、図7に示すように、放電管22の内部に導入されたガスは、放電管22の中心軸CLの方向に下方に向かって直線的に流れる。ガスが下方に向かう過程で、ガスは、徐々に放電管22の内部を拡散していく。しかし、ガスの多くは、放電管22の中心軸CL周辺を流れる。そのため、実施例1および実施例2のプラズマ発生器20よりも、高周波電流が流れるコイルの巻線部分24aに近い、放電管22の内部のプラズマ発生領域PRを通過するガス流量が少ない。この結果、比較例1のプラズマ発生器20Cは、実施例1のものに比べて、ガスの分解量が少なく、ガスの分解効率も低くなったと考えられる。
【0071】
比較例2では、蓋体が無いため、放電管22の内部に導入されたガスは、放電管22の中心軸CLに下方に向かっていく。ただし、放電管22の一方の開口部22bの全体からガスが放電管22の内部に導入される。比較例1と同様に、比較例2のプラズマ発生器は、放電管22の内部の巻線部分24aに近いプラズマ発生領域PRを通過するガス流量は少ない。この結果、比較例2のプラズマ発生器は、実施例1および実施例2のものに比べて、ガスの分解量が少なく、ガスの分解効率も低くなったと考えられる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0073】
20:プラズマ発生器、22:放電管、24;コイル、26A:被覆部、26:蓋体、28:ガス導入孔、28b:放出流路、28c:放出口、44:上側連結筒(連結筒)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8