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特開2024-146867仮設材吊下げ設置方法、及び樹脂コンクリートパネル変形防止方法
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  • 特開-仮設材吊下げ設置方法、及び樹脂コンクリートパネル変形防止方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146867
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】仮設材吊下げ設置方法、及び樹脂コンクリートパネル変形防止方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20241004BHJP
   E21D 11/40 20060101ALI20241004BHJP
   E21D 11/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
E21D11/08
E21D11/40 Z
E21D11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024051868
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2023057301
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】511272990
【氏名又は名称】株式会社光計画設計事務所
(71)【出願人】
【識別番号】593132814
【氏名又は名称】キザイテクト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】322000410
【氏名又は名称】合同会社アシストワーク
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉村 敏子
(72)【発明者】
【氏名】天井 真未
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155CA03
2D155GB01
2D155GC06
2D155JA00
2D155KA01
2D155LA16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】樹脂コンクリートパネルを用いた既設コンクリート構造水路の内巻補修補強を効率よく行うと共に作業性を損なうこと無く付随する仮設材の設置手段、及び樹脂コンクリートパネルの変形防止方法を提供すること。
【解決手段】鋼製支保工等を既設トンネル覆工面に沿って設置する工程と、鋼製支保工にパネル固定鋼材を設置する工程と、パネル固定鋼材にパネル固定具(第一固定部材20)を使用して樹脂コンクリートパネルを設置する工程と、樹脂コンクリートパネルの背面と既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入する工程と、パネル固定具(第一固定部材20)の頭部ネジ穴部に、さらに、パネル固定具(第二固定部材30)を追加で締め込む工程を備えることを特徴とするパネルライニング工法における仮設材吊下げ設置方法とした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂コンクリートパネルを用いたパネルライニング工法において、
鋼製支保工を既設トンネル覆工面に沿って設置する工程と、
前記鋼製支保工にパネル固定鋼材を設置する工程と、
前記パネル固定鋼材にパネル固定具(第一固定部材)を使用して樹脂コンクリートパネルを設置する工程と、
前記樹脂コンクリートパネルの背面と前記既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入する工程と、
前記パネル固定具(第一固定部材)の頭部皿ネジ穴部に、雌ネジを切り込み雌雄ネジとし、パネル固定具(第二固定部材)を追加で締め込む工程を備えることを特徴とするパネルライニング工法における仮設材吊下げ設置方法。
【請求項2】
樹脂コンクリートパネルを用いたパネルライニング工法において、
パネル固定用コンクリートアンカーを既設トンネル覆工面に沿って設置する工程と、
前記パネル固定用コンクリートアンカーにパネル固定具(第一固定部材)を使用して樹脂コンクリートパネルを設置する工程と、
前記樹脂コンクリートパネルの背面と前記既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入する工程と、
前記パネル固定具(第一固定部材)の頭部皿ネジ穴部に、雌ネジを切り込み雌雄ネジとし、パネル固定具(第二固定部材)を追加で締め込む工程を備えることを特徴とするパネルライニング工法における仮設材吊下げ設置方法。
【請求項3】
前記パネル固定具は、第一固定部材、及び第二固定部材からなる雌雄ネジ皿ボルトであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパネルライニング工法における仮設材吊下げ設置方法。
【請求項4】
樹脂コンクリートパネルを用いたパネルライニング工法において、
鋼製支保工を既設トンネル覆工面に沿って設置する工程と、
前記鋼製支保工にパネル固定鋼材を設置する工程と、
前記パネル固定鋼材にパネル固定具(第一固定部材)を使用して樹脂コンクリートパネルを設置する工程と、
前記樹脂コンクリートパネルの背面と前記既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入する工程と、
(パネル固定鋼材に設置された)前記樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置と、鉛直方向に隣接する前記樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置を、パネル変形防止部材に穿設された位置合わせ穴の位置に合わせて仮設置する工程と、
前記パネル固定具(第一固定部材)の頭部皿ネジ穴部に、雌ネジを切り込み雌雄ネジとし、パネル固定具(第二固定部材)を追加で締め込む工程を備えることを特徴とするパネルライニング工法における樹脂コンクリートパネル変形防止方法。
【請求項5】
樹脂コンクリートパネルを用いたパネルライニング工法において、
パネル固定用コンクリートアンカーを既設トンネル覆工面に沿って設置する工程と、
前記パネル固定用コンクリートアンカーにパネル固定具(第一固定部材)を使用して樹脂コンクリートパネルを設置する工程と、
前記樹脂コンクリートパネルの背面と前記既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入する工程と、
前記樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置と、鉛直方向に隣接する前記樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置を、パネル変形防止部材に穿設された位置合わせ穴の位置に合わせて仮設置する工程と、
前記パネル固定具(第一固定部材)の頭部皿ネジ穴部に、雌ネジを切り込み雌雄ネジとし、パネル固定具(第二固定部材)を追加で締め込む工程を備えることを特徴とするパネルライニング工法における樹脂コンクリートパネル変形防止方法。
【請求項6】
前記パネル固定具は、第一固定部材、及び第二固定部材からなる雌雄ネジ皿ボルトであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のパネルライニング工法における樹脂コンクリートパネル変形防止方法。
【請求項7】
樹脂コンクリートパネルを用いたパネルライニング工法において、
鋼製支保工を既設トンネル覆工面に沿って設置する工程と、
前記鋼製支保工にパネル固定鋼材を設置する工程と、
前記パネル固定鋼材にパネル固定具(第一固定部材)を使用して樹脂コンクリートパネルを設置する工程と、
前記樹脂コンクリートパネルの背面と前記既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入する工程と、
(パネル固定鋼材に設置された)前記樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置と、水平方向に隣接する前記樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置に、連結螺子部材を締め込む工程と、
締め込んだ前記連結螺子部材に、さらに、型枠用金物部材を取り付けた状態で押圧調整部材を仮締め込みし、前記押圧調整部材よりも上側であって、樹脂コンクリートパネルに接する位置に横方向パネル変形防止部材を載置し、前記押圧調整部材を前記型枠用金物部材と一緒に追加で締め込む工程、を備えることを特徴とするパネルライニング工法における樹脂コンクリートパネル変形防止方法。
【請求項8】
樹脂コンクリートパネルを用いたパネルライニング工法において、
パネル固定用コンクリートアンカーを既設トンネル覆工面に沿って設置する工程と、
前記パネル固定用コンクリートアンカーにパネル固定具(第一固定部材)を使用して樹脂コンクリートパネルを設置する工程と、
前記樹脂コンクリートパネルの背面と前記既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入する工程と、
(パネル固定鋼材に設置された)前記樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置と、水平方向に隣接する前記樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置に、連結螺子部材を締め込む工程と、
締め込んだ前記連結螺子部材に、さらに、型枠用金物部材を取り付けた状態で押圧調整部材を仮締め込みし、前記押圧調整部材よりも上側であって、樹脂コンクリートパネルに接する位置に横方向パネル変形防止部材を載置し、前記押圧調整部材を前記型枠用金物部材と一緒に追加で締め込む工程、を備えることを特徴とするパネルライニング工法における樹脂コンクリートパネル変形防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルライニング工法によるコンクリート構造水路の補修・補強工事の際、必要な仮設材を水路側壁面への吊下げ設置方法、及び水路用コンクリート構造水路の補修・補強工事に用いられる(樹脂コンクリートパネルの)背面グラウト注入時における変形防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂コンクリートパネルにて既設コンクリート構造物を内巻補強する際には、仮設材が必要となる。仮設材とは、トンネルの場合坑内の照度を確保するための照明設備、電気工具等の使用を可能とする電力ケーブル配線設備、既設トンネル内の湧水等の流水を施工箇所から排出するための排水設備、コンクリートパネルと既設コンクリート面の間隙に注入する裏込めグラウト材をトンネル坑外に設置したグラウト材製造プラントより坑内に圧送するための配管設備等が該当する。
【0003】
上記の仮設材をトンネルの場合坑内のインバート面に設置すると、樹脂コンクリートパネル施工時における作業スペースを確保するための障害となるばかりか、電力配線等を湿潤面に接して置くことになるので短絡(ショート)の原因となってしまう。このため、(トンネル側壁部にある)締結設置済みの(樹脂コンクリートパネルを固定している)適度な高さにある皿ボルトを、トンネルを縦断する方向に沿って、10mm程度緩めてボルト頭部をトンネル内面側に抜き出しておき、そこに番線、及び被覆番線等を這わせてから仮設材を緊結し吊り下げる処置を施していた。
【0004】
このようなパネル固定皿ボルトを使用した仮設材の処置を施す際、予め緩める箇所のボルトには、抜け易くするための剥離剤等の塗布が必要になる。そして、樹脂コンクリートパネルの裏込めグラウト材の注入前に、樹脂コンクリートパネルのボルト用穴と固定皿ボルトとの隙間に、裏込めグラウト材漏出防止材を擦り付けて目詰め閉塞しておく必要がある。さらに、一旦緩めた皿ボルトは裏込めグラウト材を注入後は固結するため再締結の際障害となり、締め付けが不可能なため、抜き取って新たな長さのボルトを(再度)取り付けなければならなかった。
【0005】
一方、裏込めグラウト材を注入する作業において、(トンネル側面に沿って)パネル底部より数段階に分割して裏込めグラウト材を注入することにより、リフトアップして充填された裏込めグラウト材の自重による荷重が、樹脂コンクリートパネル背面に負荷され、(樹脂コンクリートパネルを)トンネル内側に押し出す応力が働くため、樹脂コンクリートパネルが変形してしまうという問題があった。かかる現状に鑑み出願人らは鋭意開発を進め本発明に至ったのである。
【0006】
特許文献1には、「弱電用のケーブルを吊り下げるケーブル吊り具であって、軸方向に切れ目を備えた筒状部材と、バネ仕掛けのクリップと、磁石と、から構成され、前記切れ目は、筒状部材の表面から内空に亘って設けられ、前記ケーブルは、前記切れ目を通過させて筒状部材に収納され、前記磁石は、前記クリップのつまみ部に具備されることを特徴とする、ケーブル吊り具(特許文献1:請求項1)」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-663582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に係るケーブル吊り具(特許文献1:発明の名称)弱電用のケーブルの延長や、切り替え、切り回しにおいて、弱電用のケーブルを取付けたり、また取り外したりする作業を、磁石の性質を利用して坑内配管に容易に行うことができる。しかしながら、長いトンネルに沿って(特許文献1に記載されたような複雑な構成の吊り具を多数個)設置する場合に、コストを考慮すれば問題があると言えるので好ましく無い。
【0009】
本発明の目的は、樹脂コンクリートパネルを用いたコンクリート構造水路の内面補修補強を効率よく行うと共に作業性を損なうこと無く付随する仮設材の設置手段、及び樹脂コンクリートパネルの変形防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、樹脂コンクリートパネルを用いたパネルライニング工法において、鋼製支保工を既設トンネル覆工面に沿って設置する工程と、前記鋼製支保工にパネル固定鋼材を設置する工程と、前記パネル固定鋼材にパネル固定具(第一固定部材)を使用して樹脂コンクリートパネルを設置する工程と、前記樹脂コンクリートパネルの背面と前記既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入する工程と、前記パネル固定具(第一固定部材)の頭部皿ネジ穴部に、雌ネジを切り込み雌雄ネジとし、パネル固定具(第二固定部材)を追加で締め込む工程を備えることを特徴とするパネルライニング工法における仮設材吊下げ設置方法であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載された発明は、樹脂コンクリートパネルを用いたパネルライニング工法において、パネル固定用コンクリートアンカーを既設トンネル覆工面に沿って設置する工程と、前記パネル固定用コンクリートアンカーにパネル固定具(第一固定部材)を使用して樹脂コンクリートパネルを設置する工程と、前記樹脂コンクリートパネルの背面と前記既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入する工程と、前記パネル固定具(第一固定部材)の頭部皿ネジ穴部に、雌ネジを切り込み雌雄ネジとし、パネル固定具(第二固定部材)を追加で締め込む工程を備えることを特徴とするパネルライニング工法における仮設材吊下げ設置方法であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2に記載された発明において、前記パネル固定具は、第一固定部材、及び第二固定部材からなる雌雄ネジ皿ボルトであるパネルライニング工法における仮設材吊下げ設置方法であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載された発明は、樹脂コンクリートパネルを用いたパネルライニング工法において、鋼製支保工を既設トンネル覆工面に沿って設置する工程と、前記鋼製支保工にパネル固定鋼材を設置する工程と、前記パネル固定鋼材にパネル固定具(第一固定部材)を使用して樹脂コンクリートパネルを設置する工程と、前記樹脂コンクリートパネルの背面と前記既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入する工程と、(パネル固定鋼材に設置された)前記樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置と、鉛直方向に隣接する前記樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置を、パネル変形防止部材に穿設された位置合わせ穴の位置に合わせて仮設置する工程と、前記パネル固定具(第一固定部材)の頭部皿ネジ穴部に、雌ネジを切り込み雌雄ネジとし、パネル固定具(第二固定部材)を追加で締め込む工程を備えることを特徴とするパネルライニング工法における樹脂コンクリートパネル変形防止方法であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に記載された発明は、樹脂コンクリートパネルを用いたパネルライニング工法において、パネル固定用コンクリートアンカーを既設トンネル覆工面に沿って設置する工程と、前記パネル固定用コンクリートアンカーにパネル固定具(第一固定部材)を使用して樹脂コンクリートパネルを設置する工程と、前記樹脂コンクリートパネルの背面と前記既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入する工程と、前記樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置と、鉛直方向に隣接する前記樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置を、パネル変形防止部材に穿設された位置合わせ穴の位置に合わせて仮設置する工程と、前記パネル固定具(第一固定部材)の頭部皿ネジ穴部に、雌ネジを切り込み雌雄ネジとし、パネル固定具(第二固定部材)を追加で締め込む工程を備えることを特徴とするパネルライニング工法における樹脂コンクリートパネル変形防止方法であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に記載された発明は、請求項4または請求項5に記載された発明において、前記パネル固定具は、第一固定部材、及び第二固定部材からなる雌雄ネジ皿ボルトであるパネルライニング工法における樹脂コンクリートパネル変形防止方法であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7に記載された発明は、樹脂コンクリートパネルを用いたパネルライニング工法において、鋼製支保工を既設トンネル覆工面に沿って設置する工程と、前記鋼製支保工にパネル固定鋼材を設置する工程と、前記パネル固定鋼材にパネル固定具(第一固定部材)を使用して樹脂コンクリートパネルを設置する工程と、前記樹脂コンクリートパネルの背面と前記既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入する工程と、(パネル固定鋼材に設置された)前記樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置と、水平方向に隣接する前記樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置に、連結螺子部材を締め込む工程と、締め込んだ前記連結螺子部材に、さらに、型枠用金物部材を取り付けた状態で押圧調整部材を仮締め込みし、前記押圧調整部材よりも上側であって、樹脂コンクリートパネルに接する位置に横方向パネル変形防止部材を載置し、前記押圧調整部材を前記型枠用金物部材と一緒に追加で締め込む工程、を備えるパネルライニング工法における樹脂コンクリートパネル変形防止方法であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項8に記載された発明は、樹脂コンクリートパネルを用いたパネルライニング工法において、パネル固定用コンクリートアンカーを既設トンネル覆工面に沿って設置する工程と、前記パネル固定用コンクリートアンカーにパネル固定具(第一固定部材)を使用して樹脂コンクリートパネルを設置する工程と、前記樹脂コンクリートパネルの背面と前記既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入する工程と、(パネル固定鋼材に設置された)前記樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置と、水平方向に隣接する前記樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置に、連結螺子部材を締め込む工程と、締め込んだ前記連結螺子部材に、さらに、型枠用金物部材を取り付けた状態で押圧調整部材を仮締め込みし、前記押圧調整部材よりも上側であって、樹脂コンクリートパネルに接する位置に横方向パネル変形防止部材を載置し、前記押圧調整部材を前記型枠用金物部材と一緒に追加で締め込む工程、を備えるパネルライニング工法における樹脂コンクリートパネル変形防止方法であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、パネル固定具(第一固定部材)の頭部雌ネジ穴部に、さらに、パネル固定具(第二固定部材)を追加で締め込む工程を備えている。従って、(従来のように)電力ケーブル等の仮設材を設置する際、一旦締め付けたボルトを緩めること無く、追加で第一固定部材の頭部に第二固定部材を締め込むことで、樹脂コンクリートパネル面に凸部が形成され、(凸部をそのまま利用すること、或いは凸部に専用フック等を引っ掛けることで)仮設材を設置することが可能になった。即ち、パネル固定具(第二固定部材)追加締め込み箇所には、仮設材が(ある程度重量物であっても)受け支えることが可能な専用フックを設置することが可能になった。
【0019】
そして、樹脂コンクリートパネルの背面間隙を裏込めグラウト材注入する前に、樹脂コンクリートパネルのボルト用穴とボルトの隙間に裏込めグラウト材漏出防止材を擦り付けて目詰め閉塞しておく必要があったが、パネル固定具(第一固定部材)の頭部雌ネジ穴部に、さらに、パネル固定具(第二固定部材)を追加で締め込む工程を備えることで、注入材漏出防止材を擦り付けて目詰め閉塞しておく必要が無くなった。
【0020】
さらに、本発明は、(パネル固定鋼材に設置された)樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置と、鉛直方向(及び水平方向)に隣接する樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材)の位置を、パネル変形防止部材(及び横方向パネル変形防止部材)に穿設された位置合わせ穴の位置に合わせて仮設置する工程と、パネル固定具(第一固定部材)の頭部ネジ穴部に雌ネジを切り込み雌雄ネジとし、パネル固定具(第二固定部材)を追加で締め込む工程を備えている。従って、裏込めグラウト材の注入により、注入材の自重による荷重が樹脂コンクリートパネル背面に掛かり、(樹脂コンクリートパネルを)トンネル内側に押し出す応力が働いてしまうが(この応力に対抗するために)樹脂コンクリートパネルが変形する応力に対抗させるパネル変形防止部材を鉛直方向に隣接する(樹脂コンクリートパネルの)第一固定部材の位置に跨がるように設置することで、及び横方向パネル変形防止部材を水平方向であってトンネルの延伸方向に連続して隣接する複数の樹脂コンクリートパネルに設置することで、樹脂コンクリートパネルの変形を防止することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】既設トンネル覆工面に樹脂コンクリートパネル、パネル変形防止部材、専用フック等を設置した状態を説明するための図である。
図2】パネル固定具(第一固定部材・第二固定部材)の全体図である
図3】本発明に係る仮設材吊下げ設置方法を説明するための図である。
図4】樹脂コンクリートパネル変形防止方法を説明するための図である。
図5】横方向パネル変形防止部材による樹脂コンクリートパネル変形防止方法を説明するための図である。
図6】横方向パネル変形防止部材の固定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るパネルライニング工法における仮設材吊下げ設置方法、及び樹脂コンクリートパネル変形防止方法を説明する前提として、パネルライニング工法について概略を説明する。
【0023】
<パネルライニング工法の概略>
パネルライニング工法は、既設コンクリート構造水路の補強や補修に際して、覆工用プ
レキャストコンクリートパネル(例えば、樹脂コンクリートパネル)を使用するパネルラ
イニング工法である。樹脂コンクリートパネルで既設トンネル内面を覆い樹脂コンクリー
トパネルと既設トンネル内面の間に裏込めグラウト材を充填し、(樹脂コンクリートパネ
ルにて)トンネル内面を内巻補強するものである。
【0024】
<仮設材吊下げ設置方法、及び樹脂コンクリートパネル変形防止方法の概略>
図1は、既設トンネル覆工面に樹脂コンクリートパネル、パネル変形防止部材、専用フック等を設置した状態を説明するための図である。図1に記載したように、補修・補強の対象である既設トンネル覆工面に沿って(H型)鋼製支保工1(既設トンネル覆工面に対して平行方向の構成部材(フランジ)と直交方向の構成部材(ウェブ)がそれぞれ形成される)を設置し、鋼製支保工1にパネル固定鋼材2をボルト止め等により設置する。パネル固定鋼材2は、山形鋼(アングル)から成り、山形鋼(アングル)の一方の辺にパネル固定穴が設けられ、両端部に固定ボルト穴が設けられた矩形鋼板から形成される。
【0025】
そして、パネル固定鋼材にボルト等を使用して樹脂コンクリートパネル3を設置し、設置された樹脂コンクリートパネル3の背面と既設トンネル覆工面が形成する空隙に裏込めグラウト材を注入することにより、既設コンクリート構造水路等を補強・補修する工法である。尚、パネル固定用コンクリートアンカー(図示しない)を既設トンネル覆工面に沿って設置した後、該パネル固定用コンクリートアンカー(図示しない)にボルト等(本発明においては、パネル固定具(第一固定部材20)を使用して樹脂コンクリートパネル3を設置することもできる。樹脂コンクリートパネル3を設置後、設置された樹脂コンクリートパネル3の背面と既設トンネル覆工面が形成する空隙に裏込めグラウト材を注入することにより、既設コンクリート構造水路等を補強・補修する。
【0026】
仮設材吊下げ設置方法を簡単に言うと、パネル固定具(第一固定部材20)の頭部ネジ穴部40にパネル固定具(第二固定部材30)を締め込み、凸部(パネル固定具(第二固定部材30)による)を形成することにより、専用フック50を掛けるように設置することで(専用フック50により)鋼管等の仮設材を保持することができる(図1図3参照)。更に、樹脂コンクリートパネル変形防止方法を簡単に言うと、樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材20)と、鉛直方向(及び、水平方向)に隣接する樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材20)の頭部ネジ穴部40に、パネル変形防止部材60(及び、横方向パネル変形防止部材80)を介在させた状態でパネル固定具(第二固定部材30)を締め込むものである(図1図4図5参照)。尚、仮設材吊下げ設置方法、及び樹脂コンクリートパネル変形防止方法の詳細については後程説明する。
【0027】
樹脂コンクリートパネル3(パネル1枚の大きさ:1000mm×1000mm×10mm程度、ボルト穴9箇所)は、不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を結合材とし骨材として珪砂、炭酸カルシウム等の細骨材やガラス繊維等を混合し、加熱しながら高圧力にてプレス成形した樹脂コンクリートパネル3である。強度的にも優れ、厚さ10mm程度でも十分に覆工用プレキャストパネルとして使用されているものであり、既設コンクリート構造水路の内巻補強材として好ましいものである。
【0028】
裏込めグラウト材としては、セメントに微粒子混和材を加えた高強度微粒子グラウトモルタルが好ましく用いられる。微粒子グラウトモルタルは長距離圧送性に優れ、特殊添加剤によりブリーディング(コンクリート打設後、コンクリート表面に水が浮き上がる現象)が少なく、長期耐久性にも優れており、好ましく用いられる。
【0029】
<パネル固定具としての雌雄ネジ皿ボルト>
図2は、パネル固定具(第一固定部材20・第二固定部材30)の全体図である。本発明に係る(パネルライニング工法における)仮設材吊下げ設置方法、及び樹脂コンクリートパネル変形防止方法の特徴としては、パネル固定具(第一固定部材20・第二固定部材30)として雌雄ネジ皿ボルト(第一固定部材20の径が第二固定部材30の径よりも大きい径になるように形成されており、第一固定部材20に対して第二固定部材30を追加で締め付けることができる)を使用することに特徴が有る。
【0030】
図2に記載したように、パネル固定具は、第一固定部材20、及び第二固定部材30から構成されている。第一固定部材20の頭部側には頭部ネジ穴部40が形成されており、第一固定部材20の頭部ネジ穴部40に、第二固定部材30が(追加で)螺子込むことにより締め付け可能な径寸法になるように設計されている。仮設材吊下げ設置方法においては、トンネル側壁面に対して、第二固定部材30が10mm~20mm程度突き出るように設置することに技術的特徴が有る。樹脂コンクリートパネル変形防止方法においては、第一固定部材20で樹脂コンクリートパネルを締め付けた位置に、パネル変形防止部材6(図4参照)、及び横方向パネル変形防止部材80(図5参照)の穴部を合わせて、第二固定部材30にて(パネル変形防止部材60(図4参照)、及び横方向パネル変形防止部材80(図5参照))を螺子込むことにより設置することに技術的特徴が有る。
【0031】
<仮設材吊下げ設置方法>
以下、本発明に係る仮設材吊下げ設置方法、及び樹脂コンクリートパネル変形防止方法の一実施形態について、図3図4に基づいて詳細に説明する。
【0032】
本発明に係る仮設材吊下げ設置方法は、パネル固定具(第一固定部材20、第二固定部材30からなる雌雄ネジ皿ボルト)を使用し、第一固定部材20の頭部ネジ穴部40に第二固定部材30を締め込む際、高さ調整して、樹脂コンクリートパネル面に突起(凸部)を形成することで、仮設材を吊り下げ設置可能な状態にするための専用フック50を設置可能にすることに特徴がある。
【0033】
鋼製支保工を既設トンネル覆工面に沿って設置し、鋼製支保工にパネル固定鋼材を設置し、パネル固定鋼材にパネル固定具(第一固定部材20)を使用して樹脂コンクリートパネルを設置し、樹脂コンクリートパネルの背面と既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入した後、樹脂コンクリートパネル面に対して、(第二固定部材30が)10mm~20mm程度突き出すように第二固定部材30を締め込み設置する。
【0034】
樹脂コンクリートパネル面に対して、10mm~20mm程度突き出す様に設置された第二固定部材30(凸部)に、図3に記載したように、そのまま電力ケーブルを引っ掛けることができるし、専用フック50を引っ掛けることで、その他の仮設材を設置するための受け台を形成することができる。即ち、パネル固定具(第二固定部材30)追加締め込み箇所に、そのままで、或いは、専用フック50を設置することにより、電力ケーブル、注入材圧送管、排水管等の仮設材が(ある程度重量物であっても)受け支えることが可能になる(図3参照)。
【0035】
<樹脂コンクリートパネル変形防止方法>
図4は、樹脂コンクリートパネル変形防止方法を説明するための図である。仮設材吊り下げ設置方法と同様に、鋼製支保工を既設トンネル覆工面に沿って設置し、鋼製支保工にパネル固定鋼材を設置し、パネル固定鋼材にパネル固定具(第一固定部材20)を使用して樹脂コンクリートパネル設置し、(或いは、パネル固定用コンクリートアンカーを既設トンネル覆工面に沿って設置し、パネル固定用コンクリートアンカーにパネル固定具(第一固定部材)を使用して樹脂コンクリートパネルを設置し、)樹脂コンクリートパネルの背面と既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入した後、(パネル固定鋼材に設置された)樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材20)の位置と、鉛直方向に隣接する樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材20)の位置を、パネル変形防止部材60に穿設された位置合わせ穴70の位置に合わせて仮設置する。そして、パネル固定具(第一固定部材20)の頭部ネジ穴部40(図2参照)に、さらに、パネル固定具(第二固定部材30:図2参照)を追加で締め込むことでパネル変形防止部材60を設置する(図4参照)。
【0036】
パネル変形防止部材60は、長さ500mm~600mm、厚さ20mm~50mmの加工木材等を使用する。パネル変形防止部材60は、(設置の際、樹脂コンクリートパネルを設置するための第一固定部材20の位置に来るように二箇所)位置合わせ穴70が空いている。位置合わせ穴70は両端付近の二箇所にあり、位置合わせ穴70の形状は寸法調整ができるようにいわゆる長穴(普通の丸い穴を長く伸ばしたもの)であっても良い。パネル変形防止部材60は、既設トンネルの周方向と軸方向に万遍なく設置される(図4参照)。尚、パネル変形防止部材60の材質は軽量な木製であることが望ましいが、木製以外の金属製、又はプラスティック製であっても良い。更に、図4に記載したように、山形鋼(アングル)を使用することで固定強度(パネル変形防止の度合い)を強化することもできる。
【0037】
図5は、横方向パネル変形防止部材110による樹脂コンクリートパネル変形防止方法を説明するための図である。横方向パネル変形防止部材110による樹脂コンクリートパネル変形防止方法による工法は、鋼製支保工を既設トンネル覆工面に沿って設置し、鋼製支保工にパネル固定鋼材を設置し、パネル固定鋼材にパネル固定具(第一固定部材20)を使用して樹脂コンクリートパネル設置し、(或いは、パネル固定用コンクリートアンカーを既設トンネル覆工面に沿って設置し、パネル固定用コンクリートアンカーにパネル固定具(第一固定部材20)を使用して樹脂コンクリートパネルを設置し、)樹脂コンクリートパネルの背面と既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入した後に行う。
【0038】
樹脂コンクリートパネルの背面と既設トンネル覆工面の空隙に裏込めグラウト材を注入した後、(樹脂コンクリートパネルが裏込めグラウト材の自重により発生する応力で変形しないように)図5に記載したように、トンネルの延伸方向に沿って、横方向パネル変形防止部材110を設置(横方向パネル変形防止部材110は、型枠用金物部材90、押圧調整部材100で支える)するものである。尚、図5に記載したように、横方向パネル変形防止部材110は、(トンネルの延伸方向において)連続して隣接する樹脂コンクリートパネルに対して、横方向パネル変形防止部材110を設置することができる。即ち、横方向パネル変形防止部材110の長さは、工事現場に合わせて自由に設定することができる。
【0039】
図6は、横方向パネル変形防止部材110の固定方法を説明するための図である。図6(a)は側面から見た図であり、図6(b)は、部分拡大図(αと記載した部分)である。
横方向パネル変形防止部材110による樹脂コンクリートパネル変形防止方法は、(パネル固定鋼材2に設置された)樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材20)の位置と、(この樹脂コンクリートパネルと)水平方向に隣接する樹脂コンクリートパネルのパネル固定具(第一固定部材20)の位置に、連結螺子部材80(の左半分)を締め込む工程と、締め込んだ連結螺子部材80(の右半分)に、さらに、型枠用金物部材90を取り付けた状態で押圧調整部材100を仮締め込みし、押圧調整部材100よりも上側であって、樹脂コンクリートパネルに接する位置に横方向パネル変形防止部材110を載置した後、押圧調整部材100を型枠用金物部材90と一緒に追加で締め込む工程を備えている。
【0040】
要するに、樹脂コンクリートパネルが変形するのを、樹脂コンクリートパネルと接するように、横方向パネル変形防止部材110を設置し、更に、押圧調整部材100を締め込むことで、型枠用金物部材90も一緒に締め込まれるので(横方向パネル変形部材110に樹脂コンクリートパネルの変形を防止する方向に応力が働くので)横方向パネル変形防止部材110を介して樹脂コンクリートパネルを押し付ける力を発生させることにより(樹脂コンクリートパネルの)変形を防止している。
【0041】
連結螺子部材80は、左右で螺子のピッチと径が異なる構造をした螺子である(図6参照)。連結螺子部材80の右半分をパネル固定具(第一固定部材20)に捻じ込み(締め込み)、左半分を押圧調整部材100に捻じ込む(締め込む)ことで、パネル固定具(第一固定部材20)と押圧調整部材100を連結する。型枠用金物部材90は、本体91とアングルバー92(押圧調整部材100を捻じ込んだ時の締め付け力を本体に伝える)の2つの部材から構成されている(図6参照)。横方向パネル変形防止部材110の樹脂コンクリートパネルを押さえつける応力を大きくする必要がある場合は、型枠用金物部材90のアングルバー92を、圧力(上側から叩いたりすることを含む)を加えて下方向に移動させることで、(樹脂コンクリートパネルの方向に)型枠用金物部材90の本体91を介して横方向パネル変形防止部材110を押さえつける応力を発生させることができる。横方向パネル変形防止部材110としては、角パイプ(60mm×60mm×t2.3mm:長さは工事現場に合わせて自由に選択することができる)を使用することができる。
【0042】
<仮設材吊下げ設置方法、及びコンクリートパネル変形防止方法の効果>
本発明により(従来のように)電力ケーブル等の仮設材を設置する際、一旦締め付けたボルトを緩めること無く、追加で第一固定部材20の頭部に第二固定部材30を締め込むことで、樹脂コンクリートパネル面に凸部が形成され、(凸部をそのまま利用する、或いは凸部に専用フック50等を引っ掛けることで)電力ケーブル、注入材圧送管、排水管等の仮設材を設置することが可能になった。
【0043】
従来の工法では、樹脂コンクリートパネルを固定していた固定具(皿ボルト等)をわざわざ緩めて、樹脂コンクリートパネル面に凸部を形成していた。(本発明に係る)仮設材吊下げ設置方法においては、パネル固定具(第一固定部材20,第二固定部材30からなる二重皿ボルト)を使用することで、第一固定部材20の頭部に設けた頭部ネジ穴部40に第二固定部材30を追加して締め込む工法を採用することにより、樹脂コンクリートパネルを固定していた締め付け済み皿ボルトを緩める必要が無くなった。
【0044】
即ち、樹脂コンクリートパネルを固定していた締め付け済み皿ボルトをわざわざ緩めること無く、樹脂コンクリートパネル面の凸部にそのまま電力ケーブルを設置することができるようになったし、(樹脂コンクリートパネル面の凸部に)注入材圧送管、排水管等を受け支えることが可能な専用フック50を設置することが可能になった。従来の工法では注入材圧送管、排水管等はインバート面に設置していたので、本発明に係る仮設材吊り下げ方法により、工事現場のスペースの有効利用を図ることができるようになった。
【0045】
従来の工法では、樹脂コンクリートパネルを固定していた固定具(皿ボルト)をわざわざ緩める必要があったので、固定具(皿ボルト)に対して剥離剤等の塗布が必要であったが、この作業が不要になったし、樹脂コンクリートパネル背面の裏込めグラウト材漏出防止材の目地詰め処理が不要になった。樹脂コンクリートパネルを固定していた固定具(皿ボルト)を一旦緩めた場合、背面の裏込めグラウト材を注入した後は、ボルト未定着位置が固結してしまうため、緩めた皿ボルトは再度締め付けることができないので、新たな皿ボルトを付け直す必要があったが、本発明によれば、その必要が無くなったので、元の固定具(皿ボルト)や目地詰め材の産業廃棄物処理削減にも繋がるものである。
【0046】
第二固定部材30の形成する凸部を利用して仮設材を設置することにより、樹脂コンクリートパネル背面の裏込めグラウト材注入時に抜き出した固定部材(皿ボルト)周囲よりグラウト材の漏出が無くなり、樹脂コンクリートパネル表面を汚すこと無く容易に設置できるので、清掃時間に割かれる時間を削減することができるようになった。また、グラウト材の流出による汚濁水が減少するので汚泥水の処理量が減少し環境対策にもなる。
【0047】
一般的な工程において、裏込めグラウト材(セメントモルタル等)の注入後、養生(外力に耐えることのできる強度を得るまで保護すること)に費やす時間は、24時間程度とされており、裏込めグラウト材が固結する(養生)まで注入工事を中断する必要があった。即ち、養生中の裏込めグラウト材においては、(養生中の裏込めグラウト材の)トンネル周方向に沿って上側に(更なる)裏込めグラウト材を注入することにより、(更なる)裏込めグラウト材からの自重荷重による圧力が、樹脂コンクリートパネル背面に掛かり、(樹脂コンクリートパネルを)トンネル内側に押し出す応力が働いてしまうためである。本発明に係る樹脂コンクリートパネル変形防止方法により、(この応力に対抗するために)樹脂コンクリートパネルが変形する応力に対抗させるパネル変形防止部材60(加工木材等)、及び横方向パネル変形防止部材110を水平方向であってトンネルの延伸方向に連続して隣接する複数の樹脂コンクリートパネルに設置することで、樹脂コンクリートパネルの変形を防止することができるようになった。
【0048】
パネル変形防止材60(加工木材等)、及び横方向パネル変形防止部材80を鉛直方向(及び水平方向)に設置することで、樹脂コンクリートパネルの変形(ひび割れ破壊する可能性もありうる)を防止することができるようになった。即ち、養生中であっても、トンネル周方向に沿って上部方向に対し空隙充填グラウト材が上載されて荷重が増加されることになっても、更なる裏込めグラウト材の注入充填ができるようになり、工期の短縮に貢献することができるようになった。
【0049】
<仮設材吊下げ固定方法、及びコンクリートパネル変形防止方法の変更例>
本発明に係る仮設材吊下げ固定方法、及びコンクリートパネル変形防止方法は、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、各工程を本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る仮設材吊下げ設置方法、及び樹脂コンクリートパネル変形防止方法は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、パネルライニング工法における仮設材の吊下げ設置工法、及び樹脂コンクリートパネルの変形を防止する工法として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1・・鋼製支保工
2・・パネル固定鋼材
3・・樹脂コンクリートパネル
20・・パネル固定具(第一固定部材)
30・・パネル固定具(第二固定部材)
40・・頭部ネジ穴部
50・・専用フック
60・・パネル変形防止部材
70・・位置合わせ穴
80・・連結螺子部材
90・・型枠用金物部材
91・・型枠用金物部材(本体)
92・・型枠用金物部材(アングルバー)
100・・押圧調整部材
110・・横方向パネル変形防止部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6