(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146869
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ワーク搬送システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B25J19/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024051933
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2023059183
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】久永 芳暢
(72)【発明者】
【氏名】真弓 聡
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS10
3C707CY36
3C707HS27
3C707KS09
3C707NS02
3C707NS07
(57)【要約】
【課題】システム全体を小型化及び簡素化しつつ、適正な搬送動作を容易に実現できるワーク搬送システムを提供する。
【解決手段】一実施の形態によれば、ワーク搬送システムSは、ワークWを搬送するための力をワークWに付与するロボット10と、ワークWを上下動させる移動装置20と、を備える。移動装置20は、ワークWをロボット10とともに保持する吊り下げ部21、吊り下げ部21を上下動させる駆動部22、吊り下げ部21から駆動部22にかかる荷重の変動量を検出する荷重検出部23、及び駆動部22を制御する制御部24を有する。そして、荷重検出部23は、ロボット10がワークWに付与する上方又は下方への力によって生じる、吊り下げ部21から駆動部22にかかる荷重の変動量を検出する。そして、制御部24は、荷重検出部23が検出する荷重の変動量に基づいて、駆動部22により吊り下げ部21を上下動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送するための力を前記ワークに付与するロボットと、
前記ワークを上下動させる移動装置と、を備え、
前記移動装置は、前記ワークを前記ロボットとともに保持する吊り下げ部、前記吊り下げ部を上下動させる駆動部、前記吊り下げ部から前記駆動部にかかる荷重の変動量を検出する荷重検出部、及び前記駆動部を制御する制御部を有し、
前記荷重検出部は、前記ロボットが前記ワークに付与する上方又は下方への力によって生じる、前記吊り下げ部から前記駆動部にかかる荷重の変動量を検出し、
前記制御部は、前記荷重検出部が検出する前記荷重の変動量に基づいて、前記駆動部により前記吊り下げ部を上下動させる、ワーク搬送システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記荷重の変動量を相殺するように前記駆動部により前記吊り下げ部を上下動させる、請求項1に記載のワーク搬送システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記荷重の変動量を低減するように前記駆動部により前記吊り下げ部を上下動させる、請求項1に記載のワーク搬送システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記吊り下げ部を上下動させた後、前記荷重の変動量が検出されなくなった際には、前記吊り下げ部が上下動しないように前記駆動部を制御する、請求項1乃至3のいずれかに記載のワーク搬送システム。
【請求項5】
前記ワークに接し、前記ワークを保持する治具をさらに備え、
前記治具は、前記ロボット及び前記吊り下げ部のうちの一方に設けられ、
前記ロボット及び前記吊り下げ部のうちの他方は、前記ワークに直接的に接するか又は前記治具を介して前記ワークに接することにより、前記ワークを保持する、請求項1に記載にワーク搬送システム。
【請求項6】
前記ワークは、コアと、前記コアに巻回したフィルム体と、を有し、
前記治具は、前記吊り下げ部の下端に固定される接続部分と、前記接続部分から下方に延びる第1部分及び第2部分と、を有し、
前記治具は、前記第1部分及び前記第2部分において前記ワークを保持し、
前記第1部分及び前記第2部分の間の距離は、前記フィルム体の幅以上であり、且つ前記コアの幅以下である、請求項5に記載のワーク搬送システム。
【請求項7】
前記治具は、凹部又は貫通穴からなる受入れ部および突起部のうちのいずれかを有し、
前記ロボット及び前記吊り下げ部のうちの前記他方は、前記受入れ部に上下方向の遊びをもって挿入されるか又は前記突起部を上下方向の遊びをもって受け入れる係合部を有する、請求項5に記載のワーク搬送システム。
【請求項8】
前記係合部が前記受入れ部に挿入される場合の前記遊びの寸法は、前記受入れ部の上下方向での寸法の20%以下であり、
前記係合部が前記突起部を受け入れる場合の前記遊びの寸法は、前記係合部の上下方向での寸法の20%以下である、請求項7に記載のワーク搬送システム。
【請求項9】
前記治具は、前記吊り下げ部に設けられ、
前記受入れ部および突起部のうちのいずれかは、水平方向において前記吊り下げ部と同一の領域に位置する、請求項7に記載のワーク搬送システム。
【請求項10】
前記治具は、前記受入れ部を有し、
前記ロボット及び前記吊り下げ部のうちの前記他方は、前記受入れ部に上下方向の遊びをもって挿入される係合部を有し、
前記係合部は、前記受入れ部に接する第1係合部分と、前記第1係合部分よりも先端側に位置する第2係合部分と、を有し、
前記第2係合部分は、前記第1係合部分から離れるにしたがって先細りする形状を有する、請求項7に記載のワーク搬送システム。
【請求項11】
前記治具は、前記受入れ部を有し、
前記ロボット及び前記吊り下げ部のうちの前記他方は、上下方向と交わる方向から、前記受入れ部に前記上下方向の遊びをもって挿入される係合部を有し、
前記受入れ部は、第1受入れ部分、及び前記第1受入れ部分と連通する第2受入れ部分を有し、
前記係合部は、前記受入れ部への挿入時に前記第1受入れ部分及び前記第2受入れ部分の順で前記受入れ部を通り、
前記第1受入れ部分の径は、前記第2受入れ部分の方に向かって小さくなる、請求項7に記載のワーク搬送システム。
【請求項12】
治具が、前記吊り下げ部に設けられ、前記吊り下げ部は、前記治具を介して前記ワークを保持し、
前記ロボットは、前記治具に接し、前記治具を介して前記ワークに力を付与する、請求項1に記載のワーク搬送システム。
【請求項13】
前記移動装置を水平方向に移動可能に支持する案内装置をさらに備える、請求項1に記載のワーク搬送システム。
【請求項14】
前記制御部は、前記荷重検出部が検出する前記荷重の変動量が、所定値以上となった際に、前記駆動部による前記吊り下げ部の上下動を開始する、請求項1乃至3のいずれかに記載のワーク搬送システム。
【請求項15】
前記制御部は、前記荷重検出部が検出する前記荷重の変動量が、所定値未満となった際に、前記駆動部による前記吊り下げ部の上下動を停止する、請求項1乃至3のいずれかに記載のワーク搬送システム。
【請求項16】
前記ロボットと前記移動装置とが前記ワークを吊り下げた状態において、前記ロボットは、前記ワークの荷重の0.1%以上50%以下を支持する、請求項1に記載のワーク搬送システム。
【請求項17】
前記移動装置が前記ワークを吊り下げず、前記ワークの荷重を負担しない状態から、前記ロボットが前記ワークに上方向の力を継続して付与することにより、前記移動装置が負担する前記ワークの荷重が次第に増加して、前記移動装置が前記ワークを吊り下げる状態に至る、請求項1に記載のワーク搬送システム。
【請求項18】
ワークを搬送するための力を前記ワークに付与するロボットと、
前記ワークを上下動させる移動装置と、を備え、
前記移動装置は、前記ワークを前記ロボットとともに保持する吊り下げ部、前記吊り下げ部を上下動させる駆動部、前記吊り下げ部から前記駆動部にかかる荷重の変動量を検出する荷重検出部、及び前記駆動部を制御する制御部を有し、
前記ロボットの移動可能範囲と前記吊り下げ部の下端の移動可能範囲とが重なり合うように前記ロボットが配置され、
前記制御部は、前記荷重検出部が検出する前記吊り下げ部から前記駆動部にかかる荷重の変動量に基づいて、前記駆動部により前記吊り下げ部を上下動させる、ワーク搬送システム。
【請求項19】
ワークを搬送するための力を前記ワークに付与するロボットと、前記ワークを上下動させる移動装置と、を使用するワーク搬送方法であって、
前記移動装置は、前記ワークを前記ロボットとともに保持する吊り下げ部と、前記吊り下げ部を上下動させる駆動部とを有し、
前記ロボットが前記ワークに付与する上方又は下方への力によって生じる、前記吊り下げ部から前記駆動部にかかる荷重の変動量に基づいて、前記駆動部により前記吊り下げ部を上下動させる、ワーク搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク搬送システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品搬送用のロボットを導入する工場が増えつつある。例えば、多くの工場ではワークの搬送を多関節ロボットにより行っている。
【0003】
出力が大きい多関節ロボットは、重量の大きいワークを搬送できる。現在、日本の厚生労働省が定める労働安全衛生規則では、定格出力が所定値よりも大きいモータを使用する多関節ロボットは、「産業用ロボット」というカテゴリに分類されている。この産業用ロボットは、人と協働での作業の実施を予定していないロボットとして位置付けられている。
【0004】
上記規則では、産業用ロボットを運転させる場合に、安全柵の設置等の安全対策を講じるよう定めている。安全対策は、産業用ロボットと人との距離を一定以上確保する等の対策であり、例えば産業用ロボットとともに安全柵を設置した場合には、産業用ロボットへの人の接近を抑制して、産業用ロボットを安全に運転できる。そして、出力の大きい産業用ロボットにより、重量の大きいワークを搬送できる。ただし、産業用ロボットと安全柵とが占める占有範囲が大きくなり得るため、産業用ロボットを含むシステム全体の大型化及び複雑化が問題になることがある。
【0005】
一方で、上記規則では、定格出力が所定値以下のモータを使用する多関節ロボットを、「協働ロボット」というカテゴリに分類している。協働ロボットは、人との協働作業を許容されるロボットという位置付けである。この協働ロボットについては、上記規則において安全柵の設置等の安全対策が義務付けられていない。したがって、協働ロボットを含むシステム全体の小型化及び簡素化の観点で、有利になる。ただし、重量の大きいワークの搬送を行うことが困難な点は、デメリットとなる。
【0006】
また、以上に説明したような多関節ロボットは、補助機器とともに使用されることがある。例えば特許文献1は、多関節ロボットと、移動装置とを備える搬送システムを開示する。この搬送システムでは、多関節ロボット及び移動装置のそれぞれがワークの荷重を負担する。これにより、多関節ロボット及び移動装置のうちの一方が他方の負荷を軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のシステムでは、ワークを昇降させる際、多関節ロボット及び移動装置が同期制御されて昇降する。この構成では、適正な動作の実現にあたり、多関節ロボット及び移動装置の両者を制御する制御機器の回路設計、プログラム設計、配線接続等の多くの検討事項が生じる。したがって、特許文献1のシステムの導入は、必ずしも容易ではない。
【0009】
また、特許文献1のシステムでは、安全対策義務によって生じ得るシステム全体の大型化や複雑化についての考慮がなく、これらの問題を改善するための工夫はない。
【0010】
以上に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、システム全体を小型化及び簡素化しつつ、適正な搬送動作を容易に実現できるワーク搬送システム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の[1]~[19]に関連する。
【0012】
[1] ワークを搬送するための力を前記ワークに付与するロボットと、
前記ワークを上下動させる移動装置と、を備え、
前記移動装置は、前記ワークを前記ロボットとともに保持する吊り下げ部、前記吊り下げ部を上下動させる駆動部、前記吊り下げ部から前記駆動部にかかる荷重の変動量を検出する荷重検出部、及び前記駆動部を制御する制御部を有し、
前記荷重検出部は、前記ロボットが前記ワークに付与する上方又は下方への力によって生じる、前記吊り下げ部から前記駆動部にかかる荷重の変動量を検出し、
前記制御部は、前記荷重検出部が検出する前記荷重の変動量に基づいて、前記駆動部により前記吊り下げ部を上下動させる、ワーク搬送システム。
【0013】
[2] 前記制御部は、前記荷重の変動量を相殺するように前記駆動部により前記吊り下げ部を上下動させる、[1]に記載のワーク搬送システム。
【0014】
[3] 前記制御部は、前記荷重の変動量を低減するように前記駆動部により前記吊り下げ部を上下動させる、[1]に記載のワーク搬送システム。
【0015】
[4] 前記制御部は、前記吊り下げ部を上下動させた後、前記荷重の変動量が検出されなくなった際には、前記吊り下げ部が上下動しないように前記駆動部を制御する、[1]乃至[3]のいずれかに記載のワーク搬送システム。
【0016】
[5] 前記ワークに接し、前記ワークを保持する治具をさらに備え、
前記治具は、前記ロボット及び前記吊り下げ部のうちの一方に設けられ、
前記ロボット及び前記吊り下げ部のうちの他方は、前記ワークに直接的に接するか又は前記治具を介して前記ワークに接することにより、前記ワークを保持する、[1]乃至[4]のいずれかに記載にワーク搬送システム。
【0017】
[6] 前記ワークは、コアと、前記コアに巻回したフィルム体と、を有し、
前記治具は、前記吊り下げ部の下端に固定される接続部分と、前記接続部分から下方に延びる第1部分及び第2部分と、を有し、
前記治具は、前記第1部分及び前記第2部分において前記ワークを保持し、
前記第1部分及び前記第2部分の間の距離は、前記フィルム体の幅以上であり、且つ前記コアの幅以下である、[5]に記載のワーク搬送システム。
【0018】
[7] 前記治具は、凹部又は貫通穴からなる受入れ部および突起部のうちのいずれかを有し、
前記ロボット及び前記吊り下げ部のうちの前記他方は、前記受入れ部に上下方向の遊びをもって挿入されるか又は前記突起部を上下方向の遊びをもって受け入れる係合部を有する、[5]又は[6]に記載のワーク搬送システム。
【0019】
[8] 前記係合部が前記受入れ部に挿入される場合の前記遊びの寸法は、前記受入れ部の上下方向での寸法の20%以下であり、
前記係合部が前記突起部を受け入れる場合の前記遊びの寸法は、前記係合部の上下方向での寸法の20%以下である、[7]に記載のワーク搬送システム。
【0020】
[9] 前記治具は、前記吊り下げ部に設けられ、
前記受入れ部および突起部のうちのいずれかは、水平方向において前記吊り下げ部と同一の領域に位置する、[7]又は[8]に記載のワーク搬送システム。
【0021】
[10] 前記治具は、前記受入れ部を有し、
前記ロボット及び前記吊り下げ部のうちの前記他方は、前記受入れ部に上下方向の遊びをもって挿入される係合部を有し、
前記係合部は、前記受入れ部に接する第1係合部分と、前記第1係合部分よりも先端側に位置する第2係合部分と、を有し、
前記第2係合部分は、前記第1係合部分から離れるにしたがって先細りする形状を有する、[5]~[9]のいずれかに記載のワーク搬送システム。
【0022】
[11] 前記治具は、前記受入れ部を有し、
前記ロボット及び前記吊り下げ部のうちの前記他方は、上下方向と交わる方向から、前記受入れ部に前記上下方向の遊びをもって挿入される係合部を有し、
前記受入れ部は、第1受入れ部分、及び前記第1受入れ部と連通する第2受入れ部分を有し、
前記係合部は、前記受入れ部への挿入時に前記第1受入れ部分及び前記第2受入れ部分の順で前記受入れ部を通り、
前記第1受入れ部分の径は、前記第2受入れ部分の方に向かって小さくなる、[5]~[10]のいずれかに記載のワーク搬送システム。
【0023】
[12] 治具が、前記吊り下げ部に設けられ、前記吊り下げ部は、前記治具を介して前記ワークを保持し、
前記ロボットは、前記治具に接し、前記治具を介して前記ワークに力を付与する、[1]に記載のワーク搬送システム。
【0024】
[13] 前記移動装置を水平方向に移動可能に支持する案内装置をさらに備える、[1]乃至[12]のいずれかに記載のワーク搬送システム。
【0025】
[14] 前記制御部は、前記荷重検出部が検出する前記荷重の変動量が、所定値以上となった際に、前記駆動部による前記吊り下げ部の上下動を開始する、[1]乃至[13]のいずれかに記載のワーク搬送システム。
【0026】
[15] 前記制御部は、前記荷重検出部が検出する前記荷重の変動量が、所定値未満となった際に、前記駆動部による前記吊り下げ部の上下動を停止する、[1]乃至[14]のいずれかに記載のワーク搬送システム。
【0027】
[16] 前記ロボットと前記移動装置とが前記ワークを吊り下げた状態において、前記ロボットは、前記ワークの荷重の0.1%以上50%以下を支持する、[1]乃至[15]のいずれかに記載のワーク搬送システム。
【0028】
[17] 前記移動装置が前記ワークを吊り下げず、前記ワークの荷重を負担しない状態から、前記ロボットが前記ワークに上方向の力を継続して付与することにより、前記移動装置が負担する前記ワークの荷重が次第に増加して、前記移動装置が前記ワークを吊り下げる状態に至る、[1]乃至[16]のいずれかに記載のワーク搬送システム。
【0029】
[18] ワークを搬送するための力を前記ワークに付与するロボットと、
前記ワークを上下動させる移動装置と、を備え、
前記移動装置は、前記ワークを前記ロボットとともに保持する吊り下げ部、前記吊り下げ部を上下動させる駆動部、前記吊り下げ部から前記駆動部にかかる荷重の変動量を検出する荷重検出部、及び前記駆動部を制御する制御部を有し、
前記ロボットの移動可能範囲と前記吊り下げ部の下端の移動可能範囲とが重なり合うように前記ロボットが配置され、
前記制御部は、前記荷重検出部が検出する前記吊り下げ部から前記駆動部にかかる荷重の変動量に基づいて、前記駆動部により前記吊り下げ部を上下動させる、ワーク搬送システム。
【0030】
[19] ワークを搬送するための力を前記ワークに付与するロボットと、前記ワークを上下動させる移動装置と、を使用するワーク搬送方法であって、
前記移動装置は、前記ワークを前記ロボットとともに保持する吊り下げ部と、前記吊り下げ部を上下動させる駆動部とを有し、
前記ロボットが前記ワークに付与する上方又は下方への力によって生じる、前記吊り下げ部から前記駆動部にかかる荷重の変動量に基づいて、前記駆動部により前記吊り下げ部を上下動させる、ワーク搬送方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、システム全体を小型化及び簡素化しつつ、適正な搬送動作を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】一実施の形態にかかるワーク搬送システムを概略的に示す図。
【
図2】
図1に示す矢印IIの方向にワーク搬送システムを見た図。
【
図3】
図1に示すワーク搬送システムを構成するロボット及び治具の一部の拡大図。
【
図4】
図1に示すワーク搬送システムを構成するロボット及び移動装置の機能構成を示すブロック図。
【
図5】
図1に示すワーク搬送システムの動作を説明するフローチャート。
【
図6】
図1に示すワーク搬送システムの動作を説明する図。
【
図7】
図1に示すワーク搬送システムの動作を説明する図。
【
図8】
図1に示すワーク搬送システムの動作を説明する図。
【
図9】
図1に示すワーク搬送システムの動作を説明する図。
【
図10】
図1に示すワーク搬送システムを構成するロボットの移動可能範囲と移動装置の移動可能範囲との関係を説明する図。
【
図11】
図1に示すワーク搬送システムの一変形例を概略的に示す図。
【
図12】
図1に示すワーク搬送システムの他の変形例を構成するロボット及び治具の一部の拡大図。
【
図13】
図1に示すワーク搬送システムのさらに他の変形例を構成するロボット及び治具の一部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の図面を参照しつつ、一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜のために、縮尺及び寸法比などが実物のそれらから変更され誇張して示されている場合がある。
【0034】
図1は、一実施の形態にかかるワーク搬送システムSを概略的に示す図である。
図2は、
図1に示す矢印IIの方向にワーク搬送システムSを見た図である。以下、まず、ワーク搬送システムSの全体的な構成について説明する。
【0035】
<ワーク搬送システムの構成>
図1及び
図2に示すワーク搬送システムSは、ロボット10と、移動装置20と、治具30と、案内装置40と、を備えている。ワーク搬送システムSは、ロボット10及び移動装置20により治具30を介してワークWを保持する。そして、ワーク搬送システムSは、保持したワークWを搬送する。
【0036】
ワークWは、一例としてコンベアCvに載せられている。ワーク搬送システムSは、コンベアCv上で停止しているワークWをロボット10及び移動装置20により上昇させ吊り下げた後、水平方向に移動させ、その後、ワークWを降下させる。本実施の形態では、ワークWが巻回体であり、フィルム体WaをコアWbに巻回している。コアWbはフィルム体Waの両端から突出し、ワーク搬送システムSは、コアWbの両端を治具30で引っ掛けるようにして保持する。ただし、ワークWの種類は特に限られない。
【0037】
ロボット10は、ワークWを搬送するための力をワークWに付与する。ロボット10は、床面に固定されるベース部11と、ベース部11に基端を支持された多関節アーム12と、多関節アーム12の先端に保持された係合部13と、コントローラ14と、を有する。
【0038】
ベース部11は、一例として、多関節アーム12が上下方向に延びる回転軸周りに回転可能となるように多関節アーム12の基端を支持している。ベース部11は、多関節アーム12を回転させる電動モータを収容してもよい。なお、ベース部11と多関節アーム12とを回転可能に接続しなくても多関節アーム12が所望の動作を実施可能であれば、ベース部11は多関節アーム12を回転可能に支持しなくてもよい。
【0039】
多関節アーム12は直列に接続される複数のアーム要素を含む。これら複数のアーム要素における各アーム要素は、接続する他のアーム要素に対して相対回転可能となるように接続する。多関節アーム12は先端に係合部13を保持する。多関節アーム12は、係合部13をワークWの搬送経路に沿って上下方向及び/又は水平方向に移動させる。これにより、多関節アーム12は、ワークWを搬送するための力を係合部13からワークWに付与する。
【0040】
多関節アーム12において互いに接続される2つのアーム要素の間には電動モータが設けられ、電動モータが回転することにより互いに接続される2つのアーム要素のうちの一方が他方に対して回転する。本実施の形態では、ロボット10として、日本の厚生労働省が定める労働安全衛生規則で「協働ロボット」に分類されるロボットが使用される。この場合、ロボット10で使用されるアーム要素間の電動モータ及びベース部11と多関節アーム12との間の電動モータの定格出力は、80W以下とされる。したがって、ロボット10は小型となり、その安全性が高い。そして、ロボット10の周囲に安全柵を設置する等の安全対策が必要的でなくなる。
【0041】
多関節アーム12で使用される電動モータの出力は特に限られないが、小型化の観点では、使用する電動モータの定格出力は200W以下でもよいし、150W以下でもよいし、100W以下でもよい。ただし、使用する電動モータの定格出力を80W以下としてロボット10を協働ロボットに分類させる場合には、安全対策の要件緩和によりワーク搬送システムSの小型化や簡素化が図り易くなり、有利になり得る。また、ロボット10の構成は、ワークWの搬送経路に沿って係合部13を移動させることが可能であれば特に限られない。例えば、ロボット10は多関節アーム12とは異なる構成の可動部分を用いるものでもよい。
【0042】
係合部13は、多関節アーム12の動作に伴いワークWに力を付与するとともに、移動装置20とともにワークWを保持する。本実施の形態では、係合部13が棒状であり、治具30に形成された後述の貫通穴からなる受入れ部33に挿入される。そして、係合部13は、受入れ部33の内周面に接した状態で多関節アーム12が動こうとする又は動くことで、ワークWに力を付与するとともに、ワークWの荷重の一部を負担してワークWを保持する。詳しくは、係合部13は、治具30がワークWに下側から接してワークWの荷重を支持する位置よりも上方の位置で治具30に接するように構成されている。
【0043】
また本実施の形態では、上述したようにロボット10がワークWを係合部13により治具30を介して保持する。ただし、ロボット10は、ワークWに直接的に接することにより、ワークWに力を付与し且つワークWを保持してもよい。また、係合部13は棒状であるが、例えば凹部で構成されてもよく、この場合、凹部に治具30の一部(例えば突起)を受け入れてもよい。
【0044】
コントローラ14は、多関節アーム12を制御する。コントローラ14は、詳しくはベース部11に対して多関節アーム12を回転させる電動モータと、多関節アーム12の各アーム要素間に設けられる電動モータ等に駆動信号を出力し、各電動モータを制御する。コントローラ14は、CPU、ROM、RAM等を含むコンピュータで構成されてもよい。また、コントローラ14は、その他のプロセッサや、電気回路で構成されてもよい。
【0045】
移動装置20は、ワークWの搬送経路上でワークWを上下動させる装置である。移動装置20は、上下装置と称呼されてもよく、昇降装置と称呼されてもよい。
図1、
図2、
図6~
図9に示された移動装置20は、ワークWをロボット10とともに保持する吊り下げ部21、吊り下げ部21を上下動させる駆動部22、吊り下げ部21から駆動部22にかかる荷重の変動量を検出する荷重検出部23、及び駆動部22を制御する制御部24を有している。図示された移動装置20は、吊り下げ装置と称呼されてもよい。
【0046】
吊り下げ部21は、駆動部22に上端を接続し、駆動部22から垂れ下がる索状体である。吊り下げ部21の下端は、治具30と接続されている。
図1及び
図2には、吊り下げ部21が治具30を吊り下げた状態が示されている。吊り下げ部21は、ほぼ伸縮しない部材、言い換えると剛体とみなせる部材であり、例えばリンクチェーンでもよいが、特に限られるものではない。
【0047】
駆動部22は、吊り下げ部21を巻き上げる又は巻き出す装置である。駆動部22は、本実施の形態では電動モータを含み、電動モータの回転により吊り下げ部21を巻き上げる又は巻出す。移動装置20は、吊り下げ前のワークWを治具30を介して引っかけた状態で、駆動部22により吊り下げ部21を継続的に巻き上げることでワークWを吊り下げることができる。その後、移動装置20は、駆動部22により吊り下げ部21を巻き上げることで吊り下げ状態のワークWを上方向に移動でき、駆動部22により吊り下げ部21を巻き出すことで吊り下げ状態のワークWを下方向に移動できる。
【0048】
本実施の形態では、駆動部22が電動モータにより吊り下げ部21を巻き上げる又は巻き出すが、駆動部22はこの形態に限られない。例えば、駆動部22は空圧又は液圧により吊り下げ部21を巻き上げる又は巻き出す構成であってもよい。
【0049】
荷重検出部23は、本実施の形態ではロードセルを含み、吊り下げ部21から駆動部22にかかる荷重の変動量を検出して制御部24に提供する。詳しくは、荷重検出部23は、吊り下げ部21から駆動部22にかかる荷重の基準値からの変動量を検出する。基準値は移動装置20の動作状態に応じて更新される値である。吊り下げ部21から駆動部22にかかる荷重は、ワークWを搬送するロボット10によって変動し得る。
【0050】
例えば吊り下げ部21に治具30が接続される前の状態では、駆動部22に、吊り下げ部21のみの荷重がかかる。この場合、荷重検出部23は、吊り下げ部21のみの荷重を基準値として、当該基準値からの変動量を検出する。また、例えば吊り下げ部21に治具30が接続され、吊り下げ部21により治具30が吊り下げられた状態では、駆動部22に、吊り下げ部21及び治具30の荷重がかかる。この場合、荷重検出部23は、吊り下げ部21及び治具30の荷重を基準値として、当該基準値からの変動量を検出する。また、例えば吊り下げ部21に治具30を介してワークWが吊り下げられた状態では、駆動部22に、吊り下げ部21及び治具30及びワークWの荷重がかかる。この場合、荷重検出部23は、吊り下げ部21及び治具30及びワークWの荷重を基準値として、当該基準値からの変動量を検出する。
【0051】
制御部24は、荷重検出部23が検出する吊り下げ部21から駆動部22にかかる荷重の変動量に基づいて、駆動部22により吊り下げ部21を上下動させる。詳しくは、本実施の形態における制御部24は、上記荷重の変動量を低減するように駆動部22により吊り下げ部21を上下動させる。より詳しくは、本実施の形態における制御部24は、上記荷重の変動量を相殺するように駆動部22により吊り下げ部21を上下動させる。上記荷重の変動量を相殺するとは、上記荷重の変動量が検出されなくなるまで変動量を低減させることを意味する。制御部24は、上記荷重の変動量を相殺する場合、荷重の変動量が検出されている間、駆動部22により吊り下げ部21を継続的に上下動させる。
【0052】
また、制御部24は、荷重検出部23が検出する荷重の変動量が、所定値以上となった際に、駆動部22による吊り下げ部21の上下動を開始する。制御部24は、荷重検出部23が検出する荷重の変動量が、所定値未満となった際に、駆動部22による吊り下げ部21の上下動を停止する。所定値は、例えば500g以上でもよいし、1Kg以上でもよいし、1.5Kg以上でもよい。所定値は、上下動の開始と停止で異なる値でもよく、開始の基準となる所定値が、停止の基準となる所定値よりも小さくもよいし、その逆でもよい。
【0053】
また、制御部24は、上述のように荷重検出部23が検出した荷重の変動量に基づいて吊り下げ部21を上下動させた後、荷重の変動量が検出されなくなった際には、吊り下げ部21が上下動しないように駆動部22を制御する。より詳しくは、本実施の形態における制御部24は、荷重検出部23が検出する荷重の変動量が所定値未満となった際に、荷重の変動量が検出されなくなった(相殺された)と判定し、吊り下げ部21が上下動しないように駆動部22を制御する。
【0054】
制御部24による吊り下げ部21の上下動の制御を、具体的に説明すると例えば次のようになる。
例えば吊り下げ部21に治具30が接続される前の状態において、作業者が吊り下げ部21を下方に引いたとする。この場合、荷重検出部23は、吊り下げ部21のみの荷重に対応する基準値が増加する方向の荷重の変動量を検出する。この際、制御部24は、変動量を基準値に戻すために吊り下げ部21を下方向に移動させるように駆動部22を制御する。このような吊り下げ部21の動作は、作業者の意図する操作に沿っており、作業者は制御部24の制御により吊り下げ部21を意図する状態にセットすることができる。
【0055】
また、例えば吊り下げ部21に治具30を介してワークWが吊り下げられた状態においては、荷重検出部23が、吊り下げ部21及び治具30及びワークWの荷重に対応する基準値に対する荷重の変動量を検出する。ここで、荷重検出部23により基準値が増加する方向の変動量が検出された際には、制御部24は、変動量を基準値に戻すために吊り下げ部21を下方向に移動させるように駆動部22を制御する。また、荷重検出部23により基準値が減少する方向の荷重の変動量が検出された際には、制御部24は、変動量を基準値に戻すために吊り下げ部21を上方向に移動させるように駆動部22を制御する。ここで、本実施の形態にかかるワーク搬送システムSは、ロボット10からワークWに付与する力により、荷重検出部23が検出する荷重の変動を発生させ、荷重の変動量に基づいて移動装置を動作させるように構成される。これにより、作業員の手作業無しにワークWを搬送させることが可能となる。これについての詳細は後述する。
【0056】
本実施の形態における移動装置20は、上述の駆動部22、荷重検出部23及び制御部24を収容する筐体20Aを備える。吊り下げ部21は、筐体20Aから垂れ下がるようにして延びる。筐体20Aの下部には複数のローラ25が設けられている。ローラ25は案内装置40に支持されている。移動装置20は、ローラ25を案内装置40上で転動させることにより水平方向に移動する。ワークWを安定して保持する観点から、移動装置20の水平方向への移動速度は、毎秒50mm以下でもよい。
【0057】
治具30は、ワークWを保持するための部材であり、吊り下げ部21の下端に接続される。本実施の形態における治具30は、一例として、吊り下げ部21の下端に固定される接続部分31と、接続部分31から下方に延びる第1部分32L及び第2部分32Rとを有する。接続部分31は、その水平方向の中央の位置で吊り下げ部21の下端と接続している。第1部分32Lは、接続部分31の水平方向における一方の端部に接続し、第2部分32Rは、接続部分31の水平方向における他方の端部に接続している。図示された第1部分32L及び第2部分32Rは、水平方向に距離Dを空けて互いから離れている。
【0058】
第1部分32L及び第2部分32Rはそれぞれ、フック形状又は釣り針形状を有する。第1部分32L及び第2部分32Rはそれぞれ、その開放部分からその内側にワークWのコアWbの端部を受け入れてコアWbの端部に下側から接する。この状態で、治具30が引き上げられることで、治具30がワークWを保持する。
【0059】
図1に示された治具30において、第1部分32L及び第2部分32Rの間の距離Dは、フィルム体Waの幅Ba以上であり、且つコアWbの幅Bb以下となっている。図示された治具30によれば、第1部分32L及び第2部分32Rは、それぞれ、フィルム体Waの両端から突出したコアWbに下側から接することができる。したがって、第1部分32L及び第2部分32Rが互いから離れる方向に、コアWbが突出したワークWを、治具30によって安定して保持できる。
【0060】
上述したように多関節アーム12の先端に保持された係合部13が挿入される受入れ部33は、
図1に示すように、本実施の形態では第2部分32Rのみに設けられる。すなわち、係合部13からワークWへの力は、ワークWの重心位置から水平方向の一方側にずれた位置から付与され、他方側からは付与されない。受入れ部33は、第2部分32RにおけるコアWbとの接触位置よりも上方に形成されている。受入れ部33は、本実施の形態では貫通穴からなるが、第2部分32Rを貫通しない凹部で形成されてもよい。スリットや上下に並ぶ2つの部材の間の空間は、貫通穴又は凹部の概念に含まれる。
【0061】
また、受入れ部33の位置は特に限られないが、比較的上側に設けられることで、係合部13から付与される力に応じて変動する荷重検出部23の検出値(荷重の変動量検出)の感度が良好になり得る。また、受入れ部33は、第1部分32Lのみに設けられてもよいし、第1部分32Lと第2部分32Rとに設けられてもよい。
【0062】
図3は、ロボット10及び治具30の一部の拡大図である。詳しくは、
図3は多関節アーム12の先端に保持された係合部13と、第2部分32Rにおける受入れ部33の断面を示している。
図3に示すように、係合部13は受入れ部33に上下方向の遊びをもって挿入される。本実施の形態では、係合部13の上下方向での寸法をW1とし、受入れ部33の上下方向での寸法W2としたとき、受入れ部33と係合部13との遊びの寸法(W2-W1)で表され、当該遊び(W2-W1)は、受入れ部33の上下方向での寸法W2の20%以下とされる。すなわち、
図3に示すように「W2-W1≦0.2W2」が成り立つ。
【0063】
なお、治具30には、受入れ部33の代わりに突起部が設けられてもよい。例えばロボット10の係合部13は突起部を上下方向の遊びをもって受け入れるように凹部又は貫通穴から構成されてもよい。この場合においても、係合部と突起部との間の遊びの寸法は、凹部又は貫通穴からなる係合部の上下方向での寸法の20%以下であることが好ましい。また、本実施の形態では治具30が吊り下げ部21に接続されるが、治具30は、ロボット10に接続されてもよい。この場合、吊り下げ部21は、ロボット10に接続された治具30を介してワークWを保持してもよい。
【0064】
図1及び
図2に戻り、案内装置40は、移動装置20を水平方向に移動可能に支持する。案内装置40は、水平方向に並ぶように設けられる複数の梁部41と、複数の梁部41に支持される一対のレール部42とを有している。上述した移動装置20のローラ25は、水平方向に延びるレール部42に支持される。
【0065】
すなわち、移動装置20は、案内装置40のレール部42上で水平方向に移動可能となっている。レール部42が延びる方向は、ワークWの搬送経路における水平方向に延びる部分を定める。詳細は後述するが、ワークWの搬送時においては、ロボット10からワークWに付与する水平方向の力により、移動装置20が案内装置40に案内されて、水平方向に移動する。
【0066】
<ロボット及び移動装置の機能構成>
次に、ロボット10及び移動装置20の機能構成について説明する。
図4は、ロボット10及び移動装置20の機能構成を示すブロック図である。詳しくは、
図4はロボット10のコントローラ14の内部構成と、移動装置20における制御部24と他の部分との関連を示している。
【0067】
図4に示すように、ロボット10におけるコントローラ14は、経路記録部101と、移動制御部102と、指令入力部103とを有する。経路記録部101には、ワークWの搬送経路が記録されている。経路記録部101に記録される搬送経路は、作業者によって予め入力されることにより記録される。移動制御部102は、経路記録部101に記録されたワークWの搬送経路に沿って、多関節アーム12の先端の係合部13が移動するように、多関節アーム12を制御する。すなわち、移動制御部102は、ベース部11に対して多関節アーム12を回転させる電動モータと、多関節アーム12の各アーム要素間に設けられる電動モータ等に駆動信号を出力する部分である。
【0068】
また指令入力部103は、移動開始指示を移動制御部102に入力する機能を有する。そして、移動制御部102は、移動開始指示をトリガーとして、多関節アーム12の制御を開始する。指令入力部103は、一例としてコンベアCvの搬送準備位置(
図1及び
図2に示す位置)にワークWが到達し停止したことを検出することにより、上記移動開始指示を生成してもよい。コンベアCvの搬送準備位置にワークWが到達したか否かは、画像認識や、光学センサで検出されてもよい。
【0069】
本実施の形態では、
図1及び
図2に示す係合部13の位置を移動基準点として、ロボット10がワークWの搬送のための移動を開始する。そして、ワークWの搬送が完了した後、係合部13が移動基準点に戻るようにロボット10が制御される。移動制御部102は、係合部13が移動基準点にある状態で指令入力部103から移動開始指示を入力されることにより、次にワークWの搬送のための移動を開始してもよい。このような構成によれば、ロボット10で順次発生する移動開示指示に基づいて、繰り返し搬送動作を行うことができる。
【0070】
移動装置20においては、制御部24と荷重検出部23とが電気的に接続する。荷重検出部23が検出する、上述した吊り下げ部21から駆動部22にかかる荷重の変動量は、制御部24に常時入力される。そして、制御部24は、上述したが、上記荷重の変動量が検出された際に、当該荷重の変動量を低減するように駆動部22により吊り下げ部21を上下動させる。
【0071】
上述したが、制御部24は、詳しくは上記荷重の変動量を相殺するように駆動部22により吊り下げ部21を上下動させる。また、制御部24は、荷重検出部23が検出する荷重の変動量が、所定値以上となった際に、駆動部22による吊り下げ部21の上下動を開始する。また、制御部24は、荷重検出部23が検出する荷重の変動量が所定値未満となった際に、荷重の変動量が検出されなくなった(相殺された)と判定し、吊り下げ部21が上下動しないように駆動部22を制御する。
【0072】
一方で、本実施の形態における制御部24は、手動指令入力部201にも電気的に接続される。手動指令入力部201は、作業者から指定された上昇、下降等の手動指令を制御部24に入力する部分である。作業者は、手動指令入力部201により移動装置20をマニュアル操作することもできる。例えば、作業者が上昇の指示を継続的に行った場合には、移動装置20は吊り下げ部21を継続的に巻き上げる。これにより、例えばワークWを手動で吊り下げ状態にすることもできる。
【0073】
<ワーク搬送システムの動作(搬送方法)>
次に、
図5に示すフローチャートを参照しつつ、ワーク搬送システムSの動作を説明する。
図5には2つのフローチャートが左右に並んで示されている。左側に示すフローチャートはロボット10の動作を示し、右側のフローチャートは移動装置20の動作を示す。
【0074】
まず、ロボット10の動作について説明する。ロボット10は、ステップS11においてワークWがコンベアCvの搬送準備位置(
図1及び
図2に示す位置)に到達したか否かを検出する。ワークWの搬送準備位置への到達が検出されない場合(ステップS11でNOの場合)、ステップS11の処理が繰り返される。一方で、ワークWの搬送準備位置への到達が検出されると(ステップS11でYES)、処理がステップS12に進む。
【0075】
ステップS12においては、ロボット10が指令入力部103により移動開始指示を生成し、当該指示により、移動制御部102が多関節アーム12の先端の係合部13の移動制御を開始する。係合部13は、
図1及び
図2に示した移動基準点から移動を開始し、経路記録部101に記録されたワークWの移動経路に沿って移動する。係合部13は、その移動によりまず治具30に水平方向及び/又は上下方向の力を加えて、治具30がワークWに引っ掛かる位置まで係合部13を移動させる。その後、係合部13が上方向に移動し、治具30を介してワークWを吊り上げる。そして、ワークWを所定の高さまで吊り上げた後、係合部13が水平方向に移動することにより、移動装置20とともにワークWが水平方向に移動する。
【0076】
その後、ロボット10は、ステップS13において係合部13が移動基準点に到達した(戻った)か否かを検出する。そして、ロボット10は、係合部13の移動基準点への到達が検出されない場合(ステップS13でNOの場合)、ステップS13の監視処理を繰り返す。一方で、係合部13の移動基準点への到達が検出されると(ステップS13でYES)、処理がステップS14に進み、係合部13の移動を停止させる。その後、ロボット10は、ステップS11において新たな移動開始指示を待つ。
【0077】
移動装置20においては、ステップS21において、まず荷重検出部23が検出する荷重が所定値以上(荷重の変動量が所定値以上)となったか否かが確認される。荷重検出部23が検出する荷重が所定値未満である場合(ステップS21でNOの場合)、移動装置20は、ステップS22において吊り下げ部21を停止状態に維持する。言い換えると、移動装置20は、吊り下げ部21が上下動しないように駆動部22を制御する。一方で、荷重検出部23が検出する荷重が所定値以上である場合(ステップS21でYES場合)、処理がステップS23に進む。
【0078】
ステップS23においては、移動装置20が、ステップS21で検出された所定値以上の変動量が変動前に対して軽減する方向の変動量か否かを検出する。そして、軽減する方向の変動量であった場合(ステップS23でYESの場合)、移動装置20は、吊り下げ部21を上方向に移動させる、すなわち、巻き上げる。一方で、軽減する方向の変動量でなかった場合(ステップS23でNOの場合、つまり増加する方向の場合)、移動装置20は、吊り下げ部21を下方向に移動させる、すなわち、巻出す。ロボット10及び移動装置20によって保持されたワークWを安定させる観点から、移動装置20が吊り下げ部21を移動させる速度は、毎秒60mm以下でもよい。
【0079】
本実施の形態では、移動装置20が、ロボット10の係合部13からワークWに付与される力に応じて、ステップS21において荷重の変動量を検出できる。これにより、移動装置20は、ロボット10における係合部13の移動に従って上下動を行い、ワークWをロボット10とともに搬送できる。そして、この際、ワークWの荷重を主として移動装置20に負担させることで、ロボット10が小型化であってもワークWの適正な搬送を行うことができる。また、
図5から明らかなように、ロボット10と移動装置20はそれぞれ独立に制御される。これにより、制御機器が複雑化することなく、またプログラム設計等のソフトウェアに関連する作業も複雑化することがない。
【0080】
ロボット10と移動装置20とがワークWを吊り下げた状態において、ロボット10は、ワークWの荷重の0.1%以上50%以下を支持してもよい。本発明者が実際に作成したワーク搬送システムSでは、300KgのワークWを、ロボット10が負担するワークWの荷重を15Kg以下、又は10Kg以下、又は5Kg以下として、ワークWの適正な搬送を実施可能であったことが確認されている。
【0081】
次に、
図2及び
図6乃至
図9を参照しつつワーク搬送システムSによるワークWの搬送の流れの一例を具体的に説明する。以下に説明する例では、コンベアCv上のワークWをロボット10及び移動装置20により吊り上げた後、水平方向に移動させ、その後、ワークWを降下させる
【0082】
上述したように、
図2は、係合部13が移動基準点にある状態を示す。ワークWの搬送を開始する際には、係合部13が、移動基準点から
図6に示す保持開始点まで移動させられる。
図6に示す保持開始点では、治具30の第1部分32L及び第2部分32RがそれぞれワークWのコアWbの下側に回り込む。
【0083】
移動基準点から保持開始点まで治具30を移動させる際、ロボット10は係合部13を主として水平方向と下方向とに移動させる。係合部13が水平方向に移動するとき、治具30は係合部13から水平方向の力を受ける。この係合部13からの水平方向の力は、治具30を介して移動装置20に伝わる。そして、移動装置20が案内装置40に案内されて、水平方向に移動する。また、係合部13が下方向に移動するとき、治具30は係合部13から下方向の力を受ける。この係合部13からの下方向の力は、治具30を介して移動装置20に伝わり、移動装置20は、荷重検出部23により荷重が増加する方向の変動を検出する。この検出に応じて、詳しくは所定値以上の変動量の発生に応じて、移動装置20は制御部24により吊り下げ部21を巻き出す。これにより、係合部13の下方向の移動に追従して、吊り下げ部21が下方向に移動する。
【0084】
次いで、
図7に示すように、ロボット10は、係合部13を
図6に示す移動基準点から上方向へ移動させる。このとき、移動装置20がワークWを吊り下げず、ワークWの荷重を負担しない状態から、ロボット10がワークWに上方向の力を継続して付与する。これにより、移動装置20が負担するワークWの荷重が次第に増加して、移動装置20がワークWを吊り下げる状態に至る。このとき、詳しくは、ロボット10がワークWに上方向の力を付与することで、荷重検出部23で荷重が軽減する方向の荷重の変動量が検出され、吊り下げ部21が上方向に移動する。この後、制御部24は、荷重の変動量が検出されなくなることで、吊り下げ部21が上下動しないように駆動部22を制御する。その後、ロボット10がワークWに付与する上方向の力により、荷重検出部23で荷重が軽減する方向の荷重の変動量が再度検出される。そして、吊り下げ部21が上方向に再度移動する。この動作を繰り返すことにより、移動装置20がワークWを吊り下げる状態に至る。ここで、荷重検出部23は吊り下げ部21から駆動部22にかかる荷重の基準値からの変動量を検出するが、吊り下げ過程においては、制御部24が荷重の変動量が検出されなくなることで吊り下げ部21が上下動しないように駆動部22を制御し、当該制御毎に、基準値が更新される。なお、ワークWの吊り下げは、手動操作により行われてもよい。この場合には、吊り下げ状態の形成の後に、ロボット10の動作を開始させてもよい。
【0085】
次いで、
図8に示すように、ロボット10は、係合部13を
図7に示す位置から水平方向へ移動させる。このとき、ロボット10は、係合部13を水平方向に移動させ、治具30は係合部13から水平方向の力を受ける。これにより、移動装置20が案内装置40に案内されて水平方向に移動する。
【0086】
その後、
図9に示すように、ロボット10は、係合部13を
図8に示す位置から下方向へ移動させる。係合部13が下方向に移動するとき、治具30は係合部13から下方向の力を受ける。この係合部13からの下方向の力は、治具30を介して移動装置20に伝わり、移動装置20は、荷重検出部23により荷重が増加する方向の変動を検出する。この検出に応じて、詳しくは所定値以上の変動量の発生に応じて、移動装置20は制御部24により吊り下げ部21を巻き出す。これにより、係合部13の下方向の移動に追従して、吊り下げ部21が下方向に移動する。そして、ワークWが目標位置にまで到達する。その後は、治具30がワークWから離れるようにロボット10が係合部13を移動させた後、係合部13を
図2に示す移動基準点に戻す。
【0087】
図10は、ロボット10の移動可能範囲と移動装置20の移動可能範囲との関係を説明する図である。
図10においては、詳しくは、符号RRがロボット10の移動可能範囲を示し、符号HRが、移動装置20の吊り下げ部21の下端の移動可能範囲を示す。ロボット10の移動可能範囲RRは、詳しい図示はしないが、本例では上方向に先細りとなる概略円錐状に規定される。
図10においては移動可能範囲RRを上側から見た状態を示している。吊り下げ部21の下端の移動可能範囲HRは、上下方向に立ち上がる矩形によって規定される。本実施の形態では、ロボット10の移動可能範囲RRと吊り下げ部21の移動可能範囲とが重なり合うようにロボット10が配置される。このような配置関係により、ロボット10と移動装置20の協働によるワークWの搬送が可能となる。
【0088】
以上に説明した実施の形態にかかるワーク搬送システムSは、ワークWを搬送するための力をワークWに付与するロボット10と、ワークWを上下動させる移動装置20と、を備える。移動装置20は、ワークWをロボット10とともに保持する吊り下げ部21、吊り下げ部21を上下動させる駆動部22、吊り下げ部21から駆動部22にかかる荷重の変動量を検出する荷重検出部23、及び駆動部22を制御する制御部24を有する。そして、荷重検出部23は、ロボット10がワークWに付与する上方又は下方への力によって生じる、吊り下げ部21から駆動部22にかかる荷重の変動量を検出する。そして、制御部24は、荷重検出部23が検出する荷重の変動量に基づいて、駆動部22により吊り下げ部21を上下動させる。詳しくは、制御部24は、上記荷重の変動量を低減するように、より詳しくは上記荷重の変動量を相殺するように駆動部22により吊り下げ部21を上下動させる。
【0089】
以上のような構成では、ロボット10からワークWに付与する力により、荷重検出部23が検出する荷重を変動させることができ、ロボット10からの力に応じて荷重検出部23が検出する荷重の変動量に基づき、移動装置20を上下動させることが可能となる。これにより、作業員の手作業無しに、ロボット10の動きに従ってロボット10とともに移動装置20でワークWを保持しつつ、ワークWを上下方向に搬送させることが可能となる。そして、ロボット10と移動装置20とでワークWの荷重を負担するため、ロボット10の小型化が図れる。そして、ロボット10と移動装置20との間で情報のやり取りをしなくてもワークWを適正に搬送できる。したがって、システム全体を小型化及び簡素化しつつ、適正な搬送動作を容易に実現できる。
【0090】
特にロボット10として「協働ロボット」を使用した場合、つまり多関節アーム12で使用される電動モータの定格電流を全て80W以下にした場合には、ロボット10の周囲に安全柵を設置する等の安全対策が必要的でなくなる。この場合には、特に効果的に、ワーク搬送システムSの全体を小型化及び簡素化できる。
【0091】
また、制御部24は、吊り下げ部21を上下動させた後、荷重の変動量が検出されなくなった際には、吊り下げ部21が上下動しないように駆動部22を制御する。これにより、特にワークWの吊り上げ時において、吊り下げ部21が安定的に吊り上げ動作を行うことが可能となり、ワークWを安定的に搬送できる。
【0092】
また、制御部24は、荷重検出部23が検出する荷重の変動量が、所定値以上となった際に、駆動部22による吊り下げ部21の上下動を開始する。また、制御部24は、荷重検出部23が検出する荷重の変動量が、所定値未満となった際に、駆動部22による吊り下げ部21の上下動を停止する。このように荷重検出部23の不感帯(変動量が、0~所定値未満)を設定することにより、例えば吊り下げ部21の巻き取りの後に巻出しが急に開始される状況の発生が抑制され、ひいては吊り下げ部21の巻き取りの後に巻出しが急に開始されることに起因して吊り下げ部21が行ったり来たりするような状況の発生が抑制される。これにより、ワークWをスムーズに搬送できる。
【0093】
また、ワーク搬送システムSは、ワークWに接し、ワークWを保持する治具30をさらに備える。治具30は、ロボット10及び吊り下げ部21のうちの一方(本例ではロボット10)に設けられる。そして、ロボット10及び吊り下げ部21のうちの他方(本例では吊り下げ部21)は、ワークWに治具30を介してワークWに接することにより、ワークWを保持する。このように治具30を用いてワークWを保持する場合には、例えばワークWの形状に合わせて治具30の構成を定めることにより、ワークWを安定的に保持できる。
【0094】
特に治具30は、凹部又は貫通穴からなる受入れ部33を有し、ロボット10は受入れ部33に上下方向の遊びをもって挿入される係合部13を有する。そして、受入れ部33と係合部13との間の遊びの寸法は、受入れ部33の上下方向での寸法の20%以下である。このように受入れ部33に遊びをもって係合部13が挿入される場合にも、例えば吊り下げ部21の巻き取りの後に巻出しが急に開始される状況の発生が抑制され、ひいては吊り下げ部21の巻き取りの後に巻出しが急に開始されることに起因して吊り下げ部21が行ったり来たりするような状況の発生が抑制される。これにより、ワークWをスムーズに搬送できる。
【0095】
また、ワーク搬送システムSは、移動装置20を水平方向に移動可能に支持する案内装置40をさらに備える。これにより、ワークWを水平方向に搬送できる。
【0096】
以上、本発明の一実施の形態を説明したが、上記実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0097】
以下、
図11~
図13を参照しながら変形の一例を説明する。以下の説明では、上述の具体例と同様に構成され得る部分の説明が省略される。
図11~
図13において、上述の具体例と対応する部分は、同一の符号によって示される。
【0098】
治具30における受入れ部33の位置は、
図2に示された位置と異なってもよい。受入れ部33は、
図11に示すように、水平方向において吊り下げ部21と同一領域に位置してもよい。言い換えると、図示された受入れ部33は、上下方向に延びる吊り下げ部21の延長線上に配置されている。さらに言い換えると、吊り下げ部21及び受入れ部33を水平面に投影したとき、受入れ部33は、吊り下げ部21と重なる。受入れ部33を
図11に示すように配置することによって、治具30は、ワークWを安定して保持できる。
【0099】
図12に示すように、係合部13は、先端、すなわち多関節アーム12から離れた位置において先細りした棒状の形状を有してもよい。図示された係合部13は、第1係合部分131、及び第1係合部分131に接続した第2係合部分132を含んでいる。図示された第2係合部分132は、第1係合部分131よりも先端側に位置している。第2係合部分132は、第1係合部分131から離れるにしたがって先細りする形状を有している。図示された多関節アーム12がワークWを搬送するための力をワークWに付与するとき、係合部13は、
図12に示された状態からさらに挿入され、第1係合部分131において、下側から受入れ部33に接する。
【0100】
図12に示された係合部13の形状によれば、ロボット10と治具30との間に位置ずれが生じた場合でも、受入れ部33は、第2係合部分132に沿って移動できる。
図12には、受入れ部33に対して上側に位置ずれした状態で挿入される係合部13が示されている。
図12に示された状態から係合部13がさらに挿入されることによって、治具30は、第2係合部分132に沿って上側に移動する。図示された状態から治具30が上側に移動することによって、ロボット10と治具30との間の位置ずれが低減される。したがって、係合部132をこのような形状とすることによって、係合部13は、位置ずれした状態で挿入されても、治具30を安定して保持できる。
【0101】
また、ロボット10と治具30との間の位置ずれを低減できる構成として、
図13に示すように、受入れ部33が、第1受入れ部分331及び第2受入れ部分332を含んでもよい。図示された第1受入れ部331及び第2受入れ部332は、係合部13が挿入される挿入方向において隣り合っている。図示された第2受入れ部332は、第1受入れ部331と連通している。図示された挿入方向は、上下方向と交わる方向である。
【0102】
図13に示された係合部13は、受入れ部33への挿入時に、第1受入れ部331及び第2受入れ部332の順で受入れ部33を通る。図示された状態では、係合部13の先端は、第1受入れ部331に到達している。係合部13の先端は、第1受入れ部331に接している。図示された多関節アーム12がワークWを搬送するための力をワークWに付与するとき、係合部13は、
図13に示された状態からさらに挿入され、下側から第2受入れ部332に接する。
【0103】
図13に示された第1受入れ部分331の径は、第2受入れ部分332の方に向かって小さくなっている。図示された第1受入れ部分331の径は、第2受入れ部分332に近付くにしたがって、次第に小さくなっている。
図13に示された状態から係合部13がさらに受入れ部33に挿入されるとき、第2受入れ部分332の方に向かって小さくなる第1受入れ部331の形状に沿って上側に移動する。図示された状態から治具30が上側に移動することによって、ロボット10と治具30との間の位置ずれが低減される。したがって、受入れ部33をこのような形状とすることによって、係合部13は、位置ずれした状態で挿入されても、治具30を安定して保持できる。
【符号の説明】
【0104】
S…ワーク搬送システム
10…ロボット
11…ベース部
12…多関節アーム
13…係合部
14…コントローラ
101…経路記録部
102…移動制御部
103…指令入力部
20…移動装置
21…吊り下げ部
22…駆動部
23…荷重検出部
24…制御部
201…手動指令入力部
30…治具
31…接続部分
32L…第1部分
32R…第2部分
33…受入れ部
40…案内装置
41…梁部
42…レール部
W…ワーク
Wa…フィルム体
Wb…コア
Cv…コンベア