(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146871
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】除染方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/28 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G21F9/28 521
G21F9/28 511C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052168
(22)【出願日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2023057788
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023220852
(32)【優先日】2023-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000204000
【氏名又は名称】太平電業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五嶋 智久
(72)【発明者】
【氏名】五十田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】砂川 武義
(57)【要約】
【課題】除染対象物の表面に付着した放射性物質を低コストで除去することができる新たな除染方法を提供する。
【解決手段】放射性物質が付着した除染対象物の表面にゲル状の除染剤を塗布し、塗布したゲル状の除染剤を乾燥させて固化させ、固化した除染剤を放射性物質とともに除染対象物から剥離する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
除染対象物の表面に付着した放射性物質を除去する除染方法であって、
前記放射性物質が付着した前記除染対象物の表面にゲル状の除染剤を塗布する塗布工程と、
前記塗布したゲル状の除染剤を乾燥させて固化させる固化工程と、
固化した前記除染剤を前記放射性物質とともに前記除染対象物から剥離する剥離工程と、
を含むことを特徴とする除染方法。
【請求項2】
請求項1に記載の除染方法であって、
前記塗布工程と前記固化工程の間に、前記ゲル状の除染剤が塗布された前記除染対象物の表面に超音波を照射する超音波工程を更に含むことを特徴とする除染方法。
【請求項3】
請求項1に記載の除染方法であって、
前記除染剤は、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアガム、タラガム、カラギナン、ゼラチン、セルロース誘導体、トレメルガム及びコンニャク粉の少なくとも1つを含むことを特徴とする除染方法。
【請求項4】
請求項3に記載の除染方法であって、
前記除染剤は、チオグリコール酸塩を更に含むことを特徴とする除染方法。
【請求項5】
請求項4に記載の除染方法であって、
前記除染剤は、界面活性剤を更に含むことを特徴とする除染方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の除染方法であって、
前記除染剤は、βイオノン又はバニリンの少なくとも何れか一方を更に含むことを特徴とする除染方法。
【請求項7】
請求項3乃至5の何れか一項に記載の除染方法であって、
前記除染剤は、酸化コバルト、リン酸コバルト、及び、アルミン酸コバルトの少なくとも1つを更に含むことを特徴とする除染方法。
【請求項8】
請求項1に記載の除染方法であって、
前記除染剤は、
ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアガム、タラガム、カラギナン、ゼラチン、セルロース誘導体、トレメルガム及びコンニャク粉の少なくとも1つと、
チオグリコール酸塩と、
βイオノン又はバニリンの少なくとも何れか一方と、
酸化コバルト、リン酸コバルト、及び、アルミン酸コバルトの少なくとも1つと、
を含むことを特徴とする除染方法。
【請求項9】
請求項8に記載の除染方法であって、
前記除染剤は、界面活性剤を更に含むことを特徴とする除染方法。
【請求項10】
請求項3に記載の除染方法であって、
前記除染剤は、ホウ砂を更に含むことを特徴とする除染方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、除染処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所で発生する廃棄物は、放射能レベルによって、低レベル放射性廃棄物(L1、L2、L3)、放射性物質として扱う必要のないもの(クリアランス物)、放射性廃棄物でない廃棄物(NR)に分類され、放射能レベルに応じて廃棄する必要がある。そして、低レベル放射性廃棄物の中でも放射能レベルが最も低いL3廃棄物については充分に除染してクリアランス物にすることができれば、一般の物と同様に再利用や処分ができる。
【0003】
従来、放射性廃棄物に対する除染方法の一つとしてエアブラスト処理がある。エアブラスト処理は、放射性廃棄物に対してブラスト材を圧縮空気によりノズルから噴射させて放射性廃棄物の表面の放射性物質を削り取る処理であるが、処理作業中に、ブラスト材と放射性物質が空気中に飛散するため作業環境が悪く作業者への悪影響が懸念されている。
【0004】
特許文献1の技術は、除染作業の環境改善を図るべく、ブラストボックス内でブラスト処理をして、ブラスト材を回収するため、ブラスト材を出射するブラストノズルを有するブラストヘッド、ブラスト材を吸引する吸引用のホースを有し、ブラスト材の出射に伴って、外気をブラストボックス内に取り込む制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置は、複雑な上記構成を有するため、装置の生産コスト、維持コストが高額になりやすいという懸念がある。
【0007】
そこで、この発明の目的は、除染対象物の表面に付着した放射性物質を低コストで除去することができる新たな除染方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0009】
請求項1に記載の発明は、除染対象物の表面に付着した放射性物質を除去する除染方法であって、前記放射性物質が付着した前記除染対象物の表面にゲル状の除染剤を塗布する塗布工程と、前記塗布したゲル状の除染剤を乾燥させて固化させる固化工程と、固化した前記除染剤を前記放射性物質とともに前記除染対象物から剥離する剥離工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の除染方法であって、前記塗布工程と前記固化工程の間に、前記ゲル状の除染剤が塗布された前記除染対象物の表面に超音波を照射する超音波工程を更に含むことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の除染方法であって、前記除染剤は、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアガム、タラガム、カラギナン、ゼラチン、セルロース誘導体、トレメルガム及びコンニャク粉の少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の除染方法であって、前記除染剤は、チオグリコール酸塩を更に含むことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の除染方法であって、前記除染剤は、界面活性剤を更に含むことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の除染方法であって、前記除染剤は、βイオノン又はバニリンの少なくとも何れか一方を更に含むことを特徴とする
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項3乃至5の何れか一項に記載の除染方法であって、前記除染剤は、酸化コバルト、リン酸コバルト、及び、アルミン酸コバルトの少なくとも1つを更に含むことを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の除染方法であって、前記除染剤は、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアガム、タラガム、カラギナン、ゼラチン、セルロース誘導体、トレメルガム及びコンニャク粉の少なくとも1つと、チオグリコール酸塩と、βイオノン又はバニリンの少なくとも何れか一方と、酸化コバルト、リン酸コバルト、及び、アルミン酸コバルトの少なくとも1つと、を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の除染方法であって、前記除染剤は、界面活性剤を更に含むことを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項3に記載の除染方法であって、前記除染剤は、ホウ砂を更に含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、除染剤により放射性物質を吸着し、除染剤と放射性物質を除染対象物から剥離するため、ブラスト処理のように放射性物質が飛散することなく除染対象物から放射性物質を除去することができる。これにより、例えば、L3廃棄物をクリアランス物にまでレベルダウンすることができ、再利用もできるし、そのまま廃棄もすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(A)は、除染対象物にゲル状の除染剤を塗布した様子を示す図であり、(B)は、ゲル状の除染剤を塗布した除染対象物の表面に超音波を照射している様子を示す図であり、(C)は、除染対象物から除染剤とともに放射性物質を剥離した様子を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る除染方法のフローチャートを示す図である。
【
図3】本実施形態に係る除染方法の実験に用いた除染剤の成分の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
本実施形態では、表面に放射性物質2が付着した除染対象物1の除染を、
図1(A)に示すように、除染対象物1の表面にゲル状の除染剤11を塗布し、
図1(B)に示すように、ゲル状の除染剤11が塗布された除染対象物1の表面に超音波13を照射し、ゲル状の除染剤11を乾燥させて固化させた後、
図1(C)に示すように、固化した除染剤11を放射性物質2とともに除染対象物1から剥離することにより行う。すなわち、被服の表面に付着したほこりをガムテープで除去するかの如く、除染対象物1の表面に付着した放射性物質2を除染剤11により除去する。これにより、除染対象物1から放射性物質2が分離し、分離した放射性物質2は飛散することなく除染剤11により保持される。
【0023】
ここで、本実施形態の除染剤11について説明する。除染剤11は、除染剤11をゲル化するためのローカストビーンガム、キサンタンガム、グアガム、タラガム、カラギナン、ゼラチン、セルロース誘導体、トレメルガム、コンニャク粉等の増粘剤の少なくとも1
つを含む。
【0024】
なお、除染剤11は、グアガム、タラガム、コンニャク粉等の各種増粘剤の架橋剤としてのホウ砂、又は、還元性単糖・少糖の少なくとも何れか一方を更に含むこととしてもよい。例えば、ホウ砂は、グアガム分子間を繋ぐ架橋反応を促進させて、ゲル状の除染剤11の剛性を高める作用を有している。しかし、グアガムにホウ砂を加えると、ゲル状の除染剤11の剛性は、高まる反面、流動性が低下する。そこで、還元性単糖・少糖をさらに加えることによって、ゲル状の除染剤11の剛性および流動性の両方を向上させることができる。
【0025】
除染剤11は、例えば、水50mlに0.5gのグアガムを添加し、攪拌し、静置して膨潤させる。次いで、ホウ砂糖液(ホウ砂10wt%と果糖13wt%)を添加し、攪拌することによって、製造することができる。
【0026】
このように製造される除染剤11の粘度は、還元性単糖・少糖の添加量を変えることによって調整することができる。
【0027】
また、除染剤11は、除染剤11をゲル状にするための一例として、ローストビーンガムとキサンタンガムを配合したものを含んでも良い。ローストビーンガムとキサンタンガムの配合割合を、ローストビーンガム2:キサンタンガム8~ローストビーンガム7:キサンタンガム3の範囲にすることで、おおよそ、ゲル強度を150g/cm2以上とすることができ、ローストビーンガム5:キサンタンガム5とした場合にはゲル強度をおおよそ300g/cm2とすることができる。このように、除染剤11のゲル強度は、各種増粘剤の組み合わせや配合割合によって調整することができる。除染剤11のゲル強度は、150g/cm2~300g/cm2とするのが好ましい。
【0028】
なお、増粘剤の量は、除染剤11全体に対して、例えば、0.5wt%~1.5wt%とする。
【0029】
ゲル状の除染剤11を放射性物質2が付着した除染対象物1の表面に接着させ、除去することにより除染対象物1を除染することができる。また、放射性物質2をゲルに取り込むことで、放射性物質2が飛散して周囲を汚染することを防止でき、更に、廃棄も容易になる。
【0030】
次に、超音波発生器12について説明する。超音波発生器12は市販のものを用いることができ、例えば、本多電子株式会社のプラスチックウェルダー(SONAC-200)を用いることができる。超音波13の周波数は15kHz~28kHzの範囲で設定することができる。
【0031】
次に、
図2のフローチャートを用いて本実施形態の除染方法について説明する。
【0032】
まず、ゲル状の除染剤11を、表面に放射性物質2が付着した除染対象物1の表面に塗布する(ステップS11:「塗布工程」の一例)。
【0033】
次に、ゲル状の除染剤11が塗布された除染対象物1の表面に超音波13を照射する(ステップS12:「超音波工程」の一例)。これにより、ステップS14において、除染対象物1の表面から放射性物質2が剥離しやすくなる。
【0034】
次に、除染対象物1に塗布したゲル状の除染剤11を乾燥させ、固化させる(ステップS13:「固化工程」の一例)。ゲル状の除染剤11を乾燥・固化させる方法としては、例えば、ヒートガンを当てる方法、マイクロ波を照射する方法、高周波により加熱する方法などが挙げられる。更に乾燥効率の向上を目的に、系内に送風して系内の湿度を下げても良い。
【0035】
次に、固化した除染剤11を放射性物質2とともに除染対象物1から剥離する(ステップS14:「剥離工程」の一例)。例えば、放射性物質2を吸着した除染剤11の一端を器具により摘まんで引っ張ることにより剥離させる。
【0036】
なお、ステップS13において除染剤11を乾燥させる目的は、ステップS14において放射性物質2とともに剥離することにあるので、乾燥によりカチコチに固化させなくてもよい。すなわち、放射性物質2を吸着した除染剤11を摘まんで引っ張る場合に、除染剤11がちぎれない程度に固化されればよい。また、乾燥・固化させる代わりに又はこれに加えて、ゲル状の除染剤11のゲル強度を上昇させる架橋促進剤(ホウ砂、又は、還元性単糖・少糖等)を除染剤11に塗布又は添加することとしてもよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の除染方法は、除染対象物1の表面に付着した放射性物質2を除去する除染方法であって、放射性物質2が付着した除染対象物1の表面にゲル状の除染剤11を塗布するステップS11(「塗布工程」の一例)と、ゲル状の除染剤11が塗布された除染対象物1の表面に超音波13を照射するステップS12(「超音波工程」の一例)と、塗布したゲル状の除染剤11を乾燥させて固化させるステップS13(「固化工程」の一例)と、固化した除染剤11を放射性物質2とともに除染対象物1から剥離するステップS14(「剥離工程」の一例)と、を含む。
【0038】
したがって、本実施形態の除染方法によれば、除染剤11により放射性物質2を吸着し、除染剤11と放射性物質2を除染対象物1から剥離するため、ブラスト処理のように放射性物質2が飛散することなく除染対象物1から放射性物質2を除去することができる。これにより、例えば、L3廃棄物をクリアランス物にまでレベルダウンすることができ、再利用もできるし、そのまま廃棄もすることができる。
【0039】
なお、放射性物質2が親水性である場合など、超音波13の照射無しでも放射性物質2をそのままゲル状の除染剤11に取り込むことができる場合には、ステップS12を飛ばしても良い。一方、放射性物質2が疎水性(油など)である場合には、本実施形態の除染方法のように超音波13の照射によって放射性物質2を除染対象物1から浮き上がらせることにより、ゲル状の除染剤11で取り込むことが好ましい。
【0040】
また、放射性物質2が除染対象物1の表面で錆びた状態である場合や、除染対象物1の表面が放射化物となっている場合には、ゲル状の除染剤11にチオグリコール酸アンモニウムやチオグリコール酸ナトリウム等のチオグリコール酸塩を添加することとしても良い。チオグリコール酸塩の添加量は、除染剤11全体に対して、例えば、0.3mol/L~1mol/Lとする。チオグリコール酸塩により、除染対象物1に付着した放射性物質2や放射化物が還元してゲル状の除染剤11に取り込みやすくなる。
【0041】
また、チオグリコール酸塩とともに、界面活性剤(例えば、ココアンホ酢酸Na(ソフタゾリン(登録商標)CH-R)、コカミドプロピルベタイン(ソフタゾリン(登録商標)CPB-R)、ラウラミドプロピルベタイン等の両性界面活性剤)を更に除染剤11に添加しても良い。界面活性剤の添加量は、除染剤11全体に対して、例えば、0.02wt%~0.05wt%とする。
【0042】
また、チオグリコール酸塩は悪臭と刺激臭を示すため、これを緩和・除去するためにβイオノン又はバニリンの少なくとも何れか一方を更に添加するのが好ましい。βイオノンのみを添加する場合の添加量は、除染剤11全体に対して、例えば、0.08wt%~0.2wt%とする。バニリンのみを添加する場合の添加量は、除染剤11全体に対して、例えば、0.08wt%~0.2wt%とする。βイオノン及びバニリンを添加する場合の添加量は、除染剤11全体に対して、例えば、0.08wt%~0.2wt%とする。
【0043】
また、除染剤11はカビの発生しやすい増粘剤を含むため、除染剤11の防カビを目的として、除染剤11に、酸化コバルト、リン酸コバルト、及び、アルミン酸コバルトの少なくとも1つを添加することとしても良い。酸化コバルトのみを添加する場合の添加量は、除染剤11全体に対して、例えば、0.05wt%~0.2wt%とする。リン酸コバルトのみを添加する場合の添加量は、除染剤11全体に対して、例えば、0.05wt%~0.2wt%とする。アルミン酸コバルトのみを添加する場合の添加量は、除染剤11全体に対して、例えば、0.05wt%~0.2wt%とする。これにより、除染剤11のカビ抵抗性が向上する。
【0044】
また、除染対象物1に付着した放射性物質2にコバルト60が含まれる場合、完全に除染剤11に取り込まれずに除染対象物1の表面に残ってしまうことがある。このとき、除染剤11に、コバルト60に近い構造のコバルト化合物を添加しておくことにより、コバルト化合物が保持担体として働き、コバルト60を除染剤11に取り込むことができる。つまり、酸化コバルト、リン酸コバルト、及び、アルミン酸コバルトの少なくとも何れか1つを添加することで、これらが防カビ剤及び保持担体として働く。
【0045】
次に、
図3に示す、本実施形態の除染方法の実験に用いた除染剤11の一例について説明する。実験例の除染剤11は、増粘剤、除染液及び防カビ剤(保持担体)を混合したものである。
【0046】
増粘剤は、水200gにローカストビーンガム2gを溶かしたものと、水125gにキサンタンガム1.65gを溶かしたものからなる。
【0047】
除染液は、チオグリコール酸アンモニウム55%水溶液49.2gと、水41.0g、ソフタゾリンCPB-R30%水溶液0.4gと、βイオノン0.4gからなる。
【0048】
これらの増粘剤と除染液を混合したものの総質量は419.65gとなる。ここで、各成分の質量パーセント濃度(%)は以下に示す値となる。
ローカストビーンガム:0.48%
キサンタンガム:0.39%
チオグリコール酸アンモニウム:6.4%
ソフタゾリンCPB-R:0.03%
βイオノン:0.10%
なお、チオグリコール酸アンモニウムに代えてチオグリコール酸ナトリウム等の他のチオグリコール酸塩を添加する場合には、モル濃度が0.6mol/Lとなる量のチオグリコール酸塩を添加するのが好ましい。
【0049】
除染剤11は、こうした増粘剤と除染液を混合したものに対して、0.10wt%以下の量の、防カビ剤(保持担体)としての酸化コバルトを添加したものである。
【0050】
上述したように、除染剤11は、増粘剤としてのローカストビーンガム、キサンタンガム、グアガム、タラガム、カラギナン、ゼラチン、セルロース誘導体、トレメルガム、コンニャク粉の少なくとも何れか一つと、チオグリコール酸塩と、界面活性剤と、除臭剤としてのβイオノン又はバニリンの少なくとも何れか一方と、防カビ剤(保持担体)としての酸化コバルト、リン酸コバルト、及び、アルミン酸コバルトの少なくとも何れか一つ、を構成要素とすることができる。ここで、増粘剤を「A」、チオグリコール酸塩を「B」、界面活性剤を「C」、除臭剤を「D」、防カビ剤(保持担体)を「E」として、除染剤11の構成要素の組み合わせの一例を以下に示す。但し、除染剤11の構成要素の組み合わせはこれらに限定されるものではなく、除染剤11として有意なあらゆる組み合わせを採用することができる。
・「Aのみ」
・「A+B」
・「A+B+C」
・「A+B+D」
・「A+B+C+D」
・「A+E」
・「A+B+E」
・「A+B+C+E」
・「A+B+D+E」
・「A+B+C+D+E」
【符号の説明】
【0051】
1 :除染対象物
2 :放射性物質
11 :除染剤
12 :超音波発生器
13 :超音波