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特開2024-146877多孔質粒子およびその製造方法、研磨剤および構造体
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  • 特開-多孔質粒子およびその製造方法、研磨剤および構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146877
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】多孔質粒子およびその製造方法、研磨剤および構造体
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/12 20060101AFI20241004BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20241004BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20241004BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20241004BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C01B33/12 A
C01B33/18 Z
C09K3/14 550D
B24B37/00 H
B24D3/00 320Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052996
(22)【出願日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2023059438
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐土原 功樹
(72)【発明者】
【氏名】江上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】荒金 宏忠
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
【テーマコード(参考)】
3C063
3C158
4G072
【Fターム(参考)】
3C063AA02
3C063BB01
3C063BB04
3C063BB06
3C158AA07
3C158CB01
3C158DA02
3C158EB01
3C158ED08
3C158ED10
3C158ED15
4G072AA25
4G072AA28
4G072AA38
4G072BB05
4G072BB15
4G072CC13
4G072DD04
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH17
4G072JJ02
4G072JJ23
4G072KK03
4G072LL06
4G072MM01
4G072MM02
4G072MM28
4G072MM31
4G072MM36
4G072RR12
4G072TT01
4G072TT08
4G072TT09
4G072TT11
4G072UU30
(57)【要約】
【課題】適度な崩壊性と導電性を兼ね備えた多孔質粒子を提供する。
【解決手段】 鎖状シリカと炭素粒子によって形成された網目構造を持つ多孔質粒子であって、炭素粒子の吸油量[ml/100g]が100~500であり、当該多孔質粒子の炭素含有量が0.5~50重量%、平均粒子径[μm]が0.5~50、平均圧縮強度[N/mm]が0.98以上9.8未満、細孔容積[cm/g]が0.5~5.0、細孔径の最頻値[nm]の±25%以内の大きさの細孔の容積の総和が細孔容積の40%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎖状シリカと炭素粒子によって形成された網目構造を持つ多孔質粒子であって、
前記炭素粒子の吸油量[ml/100g]が100~500であり、
当該多孔質粒子の炭素含有量が0.5~50重量%、平均粒子径[μm]が0.5~50、平均圧縮強度[N/mm]が0.98以上9.8未満、細孔容積[cm/g]が0.5~5.0、細孔径の最頻値[nm]の±25%以内の大きさの細孔の容積の総和が前記細孔容積の40%以上である多孔質粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の多孔質粒子が配合された研磨剤および構造体。
【請求項3】
炭素粒子が水に分散した第一分散液を調製する第一工程と、
鎖状シリカが水に分散した第二分散液にせん断力を加え、粘度8~100mPa・Sの範囲の第三分散液を調製する第二工程と、
前記第一分散液と前記第三分散液の混合液を調製する第三工程と、
前記混合液を8~100mPa・Sの範囲の粘度で噴霧乾燥機に投入して乾燥粒子を造粒する第四工程と、
前記乾燥粒子を不活性ガスの雰囲気中で焼成する第五工程と、を備え、
前記混合液のpHが2~6または10~12の範囲にあることを特徴とする多孔質粒子の製造方法。
【請求項4】
前記第一分散液のpHが7以上の時、前記混合液のpHが10~12になるように前記第二分散液のpHを調製することを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記不活性ガスがNまたはアルゴンである請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記混合液に含まれるシリカ成分と炭素成分の合計が、5~30重量%である請求項3に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨剤等に利用される易崩壊性の多孔質粒子に関し、特に、鎖状シリカと炭素粒子が集まって形成された網目構造の多孔質粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質粒子は、種々の用途に利用されており、精密な研磨を行うために崩壊性の多孔質粒子を研磨剤に用いることが知られている。例えば、球状の一次粒子が複数結合した非球状粒子によって網目構造が形成された崩壊性の多孔質シリカ粒子が提案されている(特許文献1を参照)。この多孔質シリカ粒子は、製造中には崩壊せず研磨時に崩壊するという特性を得るために、細孔容積、細孔径分布、平均圧縮強度が最適化されている。
【0003】
また、シリカ多孔質体に導電性を付与するために、シリカ骨格の内部にまで微粒子状炭素を分散させることが知られている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2のシリカ・炭素複合多孔質体は、比表面積が20~1000m/g、細孔容積が0.3~2.0ml/g、平均細孔径が2~100nmであり、シリカヒドロゾルと炭素微粒子が分散した共分散体をゲル化させることにより多孔質化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2019-131873号公報
【特許文献2】特開2013-56792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の多孔質シリカ粒子は、シリカのみで構成された粒子なので導電性は無い。そのため、この多孔質シリカ粒子を研磨粒子として用いると、研磨時に発生する静電気により被研磨物(ウェハ等)が帯電し、被研磨物に塵が付着する等の課題があった。特許文献2では、シリカヒドロゾルと炭素微粒子が分散した共分散体を作製し、共分散体に含まれるシリカヒドロゾルをゲル化させることにより多孔質化している。多孔度のコントロールがなされていなく、形状が球状でないため、研磨用途で使用する際に、安定した崩壊性が得られない。このように、特許文献2のシリカ・炭素複合多孔質粒子は、導電性を備えるものの安定した崩壊性が得られず、研磨には適していない。仮に、特許文献1の非球状粒子の分散液に炭素微粒子を分散させて造粒すると、導電性は得られるものの、研磨に適した崩壊性が失われる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、製造中には崩壊せずに、使用中に崩壊するという易崩壊特性と、導電性とを兼ね備えた多孔質粒子を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明者らは、鎖状シリカ分散液と、吸油量100~500ml/100gの炭素粒子の分散液との混合液の性状を制御して造粒し、得られた粒子を炭素の酸化を防止する条件で焼成することにより、良好な崩壊性と導電性を持つ多孔質粒子が得られることを見出した。すなわち、本発明による多孔質粒子は、鎖状シリカと炭素粒子によって形成された網目構造を持ち、平均粒子径が0.5~50μm、平均圧縮強度が、0.98以上9.8N/mm未満、細孔容積が0.5~5.0cm/g、細孔径の最頻値の±25%以内の大きさの細孔の容積の総和が細孔容積の40%以上である。また、多孔質粒子の炭素含有量は0.5~50重量%である。これにより、研磨中に均一に崩壊する多孔質粒子に導電性を付与することができる。
【0008】
また、本発明の製造方法は、炭素粒子が水に分散した第一分散液を調製する第一工程と、鎖状シリカが水に分散した第二分散液にせん断力を加え、粘度が8~100mPa・Sの範囲に調整された第三分散液を得る第二工程と、前記第一分散液と前記第三分散液の混合液を調製する第三工程と、前記混合液を8~100mPa・Sの範囲の粘度で噴霧乾燥機に投入して乾燥粒子を造粒する第四工程と、前記乾燥粒子を不活性ガスの雰囲気中で焼成する第五工程と、を備えており、前記混合液のpHが2~6または10~12の範囲になるように制御されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】鎖状粒子の形状の一例を表す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による多孔質粒子は、鎖状シリカと炭素粒子によって形成された網目構造を持っている。炭素粒子の吸油量は100~500ml/100gであり、多孔質粒子には炭素粒子に由来する炭素が0.5~50重量%含まれている。そして、多孔質粒子の集合粉体は、平均粒子径が0.5~50μm、平均圧縮強度が、0.98N/mm以上9.8N/mm未満、細孔容積が0.5~5.0cm/g、細孔径の最頻値の±25%以内の大きさの細孔の容積の総和が細孔容積の40%以上である。これにより、導電性と均一な崩壊性を併せ持つ多孔質粒子が得られる。
【0011】
多孔質粒子の炭素含有量を0.5~50重量%の範囲に調整して、所望の導電性(電気抵抗率)を得ることができる。炭素含有量が0.5重量%未満では、導電パスが形成されず、導電性が得られない。一方、炭素含有量が50重量%を超える多孔質粒子を研磨剤として用いた場合、多孔質粒子の崩壊後には、主に炭素粒子により研磨が行われることになり、微細な凹凸を平坦化することができない。そのため、所望の研磨特性が得られない。
【0012】
そして、導電性と崩壊性を両立させるために、吸油量100~500ml/100gの炭素粒子を用いている。吸油量が100ml/100g未満の炭素粒子を用いると、鎖状シリカと炭素粒子により形成される網目構造の密度が高くなり、細孔容積と細孔径を小さくする。そのため良好な崩壊性が得られない。一方、吸油量が500ml/100gを超える炭素粒子では、分散性の良い水分散液を調製することが困難で、均一な内部構造を持つ多孔質粒子が得られない。仮に分散できたとしても粘度が高く、真球状に造粒することが困難で、安定した崩壊性を実現できない。
【0013】
炭素粒子の吸油量は多孔質粒子の細孔分布に影響を与えるため、適切な吸油量の材料を選ばなければシャープな細孔分布が実現できない。さらに、鎖状シリカと炭素粒子の吸油量のバランスをとることにより、細孔分布をさらにシャープにすることが可能になり、均一な崩壊性を得ることができる。そこで、以下の式で表される吸油量バランスを、75~125の範囲にすることが好ましい。鎖状シリカの吸油量をA[ml/100g]、炭素粒子の吸油量をB[ml/100g]、多孔質粒子に含まれる炭素量をC[重量%]としたとき、吸油量バランス=(A×(100―C)+B×C)/A、で表される。
【0014】
また、細孔容積が0.5cm/g未満では、粒子が硬くなり所望の崩壊性が得られない。一方、5.0cm/gを超えると、製造時に粒子が崩壊しやすく、所望の形状係数が得られない。細孔容積は1.0~4.0cm/gが好ましく、1.2~3.0cm/gがより好ましい。
【0015】
また、細孔径の最頻値(最頻細孔径)は2~50nmが好ましい。最頻細孔径が2nm未満では、粒子が硬くなり崩壊性に影響する。一方、50nmを超えると、製造時に粒子が崩壊しやすく、所望の形状係数が得られない。最頻細孔径は5~45nmが好ましく、10~45nmがより好ましい。
【0016】
最頻細孔径に近い細孔径を持つ細孔の割合が多いほど、細孔径分布がシャープになる。細孔径分布がシャープなほど、粒子が崩壊する際に塊になりにくく、均一に崩壊する。本発明の多孔質粒子では、最頻細孔径の±25%以内の大きさの細孔の容積の総和(合計細孔容積)は、前述の細孔容積(細孔容積全体)の40%以上である。すなわち、細孔容積率(%)[=合計細孔容積(V±25%)/細孔容積(V)×100]は、40%以上である。細孔容積率が40%未満であると、粒子の内部構造が不均一となり、粒子が崩壊する際に不揃いな塊になりやすい。サイズの不揃いな大きな塊は、研磨傷の要因となる。細孔容積率は40~75%がより好ましい。
【0017】
また、平均圧縮強度が0.98N/mm未満では、製造時に崩壊しやすく、所望の粒子形状(形状係数等)が得られない。9.8N/mm以上では、所望の崩壊性が得られない。平均圧縮強度は0.98~6.86N/mmが好ましく、0.98~3.92N/mmがより好ましい。
【0018】
また、多孔質粒子の平均粒子径が50μmを超えると、良好な形状係数の(すなわち、真球度の高い)粒子が得られにくい。一方、0.5μm未満だと、粉体の流動性が低くなり、作業性が悪くなる。平均粒子径は1~20μmが好ましく、2~15μmがより好ましい。このような平均粒子径を持つ粒子は、研磨剤として特に適している。
【0019】
また、平均形状係数は0.8~1.0が好ましい。平均形状係数が0.8未満では、流動性が悪く実用的でない。さらに、荷重方向の強度にばらつきが生じるため、安定した強度が得られない。平均形状係数は0.85~1.0がより好ましく、0.87~1.0がさらに好ましい。
【0020】
さらに、多孔質粒子の比表面積は、30~400m/gが好ましい。比表面積がこの範囲にあれば、易崩壊性と真球度を併せ持った粒子が得られやすい。50~300m/gがより好ましく、70~200m/gがさらに好ましい。
【0021】
さらに、多孔質粒子の空隙率は、50~92%が好ましい。空隙率がこの範囲にあれば、良好な崩壊性が得られる。空隙率は55~90%がより好ましく、60~88%がさらに好ましい。
【0022】
上述した各特性値の測定法については、実施例で説明する。
【0023】
多孔質粒子の網目構造は鎖状シリカと炭素粒子で形成されている。鎖状シリカは球状粒子(一次粒子)が複数結合した構成の鎖状粒子である。鎖状シリカを構成する一次粒子の平均粒子径(平均一次粒子径d)が5~50nmの範囲にあれば、多孔質粒子は、微細な細孔が多く形成されると共に、良好な崩壊性が得られる。平均一次粒子径dは、5~40nmがより好ましい。なお、平均一次粒子径dは、等価球換算式「d=6000/(2.2×SA)」で求められる。ここで、SAは、窒素吸着によるBET法により求めた鎖状シリカ粒子の比表面積[m/g]、6000は係数であり、シリカの密度を2.2g/cmとした。
【0024】
炭素粒子も同様の鎖状粒子であることが好ましい。いずれの鎖状粒子でも、平均粒子径(平均二次粒子径d)は、50~500nmが好ましい。平均粒子径がこの範囲にあると、鎖状粒子が密に充填しないため、所望の細孔容積が得られやすい。平均二次粒子径は50~300nmがより好ましい。ここで、鎖状粒子の平均二次粒子径は、以下のように求めた。走査型電子顕微鏡で粒子を観察し、100個の粒子を任意に選択する。それぞれの粒子について、最長となる径を測定し、その平均値を平均二次粒子径とする。
【0025】
平均二次粒子径dと平均一次粒子径dの比(d/d)は1.6~100が好ましい。この範囲にあると、適度な3次元の網目構造が形成されるため、良好な崩壊性が得られやすい。この比は3~70がより好ましく、4~40がさらに好ましい。
【0026】
鎖状粒子には、一次粒子が特定の方向に伸びるように連結した直鎖状粒子と、分岐構造を持つ分岐状粒子や屈曲構造を持つ屈曲状粒子がある。直鎖状粒子の場合、粒子のアスペクト比(長径/短径)は、1.2以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、1.8~10がさらに好ましい。ここでは、電子顕微鏡写真を用いて任意の100個の粒子のアスペクト比を測定した。その算術平均値を平均アスペクト比とした。
【0027】
また、鎖状粒子には、分岐構造と屈曲構造を併せ持つ粒子も存在する。このような粒子の一例の電子顕微鏡写真を図1に示す。ここでは、このような粒子も分岐状粒子に分類する。鎖状粒子が分岐状粒子や屈曲状粒子を含むことにより、多孔質粒子を構成する鎖状粒子同士の空隙が大きくなる。そのため、多孔質粒子は、より崩壊しやすくなる。多孔質粒子に含まれる分岐状粒子と屈曲状粒子の合計含有量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
【0028】
また、炭素粒子の平均粒子径dと多孔質粒子の平均粒子径d50の比(d/d50)は1.0未満である。これによれば、炭素粒子が多孔質粒子から飛び出すことを防ぐことができる。炭素粒子の平均粒子径dが小さくても、所望の導電性が得られれば良い。炭素粒子の平均粒子径dは、走査型電子顕微鏡の観察下で計測された任意の100個の粒子の最長径の平均値であり、多孔質粒子の平均粒子径d50は、粒度分布を測定して得られるメジアン径である。なお、炭素粒子が鎖状の場合には、平均粒子径dの代わりに平均二次粒子径d2を用いてこの比を算出する。
【0029】
また、多孔質粒子はバインダー成分を含まないことが好ましい。これにより、より崩壊しやすい粒子が得られる。
【0030】
さらに、多孔質粒子には、融着要因(高強度の要因)となるナトリウム、カリウム等のアルカリ金属や、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の不純物が含まれないことが好ましい。それぞれの元素の含有量は、10ppm以下が好ましく、5ppm以下がより好ましい。また、多孔質粒子には、α線放射性物質であるウランやトリウムが含まれないことが好ましい。ウラン含有量およびトリウム含有量はそれぞれ0.5ppb以下が好ましく、0.3ppb以下がより好ましい。
【0031】
上述したような多孔質粒子は、工業製品等を研磨するための研磨剤および構造体として用いることができる。多孔質粒子が配合された研磨剤によれば、多孔質粒子は特定の負荷がかかると崩壊するため、基板(研磨対象)に傷がつきにくい。また、崩壊後の鎖状シリカの平均粒子径や平均一次粒子径d1が小さいため、基板表面の微細な凹凸を磨くことができる。特に、仕上げの乾式研磨に好適であるが、湿式研磨にも用いることができる。また、研磨による基板の帯電を防ぐことができる。そのため、半導体基板、ディスプレイ用基板、金属板、ガラス板等の研磨に好適に用いることができる。実際の研磨では、他の成分と一緒に成型し、砥石として用いたり、粉末のまま、あるいは液体に分散させたスラリーの状態で、布やパッドと共に用いたりする。
【0032】
次に、多孔質粒子の製造方法について説明する。
【0033】
まず、炭素粒子が水に分散した第一分散液を調製する(第一工程)。並行して、鎖状シリカが水に分散した第二分散液を調製する。第二分散液にせん断力を加え、当該分散液の粘度を8~100mPa・Sの範囲に調整する(第二工程)。これにより適正な粘度を持つ第三分散液が得られる。次に、第一分散液と第三分散液の混合液を調製する(第三工程)。この混合液を8~100mPa・Sの範囲の粘度で噴霧乾燥機に投入して乾燥粒子を造粒する(第四工程)。乾燥粒子を不活性ガスの雰囲気中で焼成する(第五工程)。このとき、混合液のpHが2~6または10~12の範囲になるように調整する。すなわち、第一分散液のpHが7以上の時、第二分散液のpHを調整して混合液のpHを10~12の範囲にする。あるいは、第一分散液のpHが7未満の時、第二分散液のpHを調整して混合液のpHを2~6の範囲にする。なお、第二分散液のpHを調整しなくても混合液のpHが2~6または10~12の範囲になるのであれば、調整せずに第一分散液と第三分散液を混合すればよい。
【0034】
なお、上述の工程以外の工程を設けてもよい。例えば、造粒工程と焼成工程との間に分級工程を設けてもよい。
【0035】
このような製造方法により、本発明の多孔質粒子を得ることができる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0036】
[第一工程]
本工程では、炭素粒子が水に分散した第一分散液を調製する。このとき、吸油量[ml/100g]が100~500の炭素粒子を用いる。炭素粒子としてカーボンブラックを例示することができる。炭素粒子の種類、分散液中の炭素粒子濃度により、第一分散液のpHが定まる。炭素粒子は疎水性が高いので、水への分散性を向上させるために、界面活性剤を添加することが好ましい。さらに、分散を促進するために、超音波振動を加えて、第一分散液を調製することが好ましい。添加量は特に指定しないが、過剰に入れると不純分として、多孔質粒子に残存し、所望の導電性が得られにくくなる。界面活性剤の添加量は炭素粒子より少ないことが好ましい。界面活性剤の種類として、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等が例示できる。
【0037】
[第二工程]
まず、鎖状シリカが水に分散した第二分散液を調製する。この第二分散液にせん断力を加え、分散液の粘度を8~100mPa・Sの範囲に調整する。これにより、第三分散液が得られる。通常、鎖状シリカの分散液は、チキソトロピー性を有する。そのため、分散液に連続的または断続的にせん断力を加えて、粘度を低くする必要がある。せん断力を加える際に、鎖状シリカを粉砕しないことが好ましい。粉砕されると破砕片等で粒子が密に充填されて、造粒により得られる乾燥粒子の細孔容積が小さくなる。また、粉砕されると分散液中に含まれる粒子の比表面積が増えるとともに、粒子表面の水酸基も増えるため、一次粒子同士の結合が強まり、多孔質粒子の平均圧縮強度が高くなるおそれがある。
【0038】
分散液にせん断力を加える装置として、ディスパーミル、ホモジナイザー等を例示できる。これらの装置を用いて、分散液の粘度を特定の範囲に維持し、鎖状シリカが一次粒子に粉砕されないように、必要に応じてせん断力を加える条件(回転速度等)を設定すればよい。
【0039】
鎖状シリカは、球状のシリカ粒子を結合することにより得ることができる。例えば、湿式法で調製される鎖状シリカゾルや、乾式法で調製されるフュームドシリカを用いることができる。具体的には、アエロジル-90、アエロジル-130、アエロジル-200(以上、日本アエロジル株式会社)が市販されている。また、鎖状シリカの製造方法は、特開2003-133267号公報、特開2013-032276号公報等に記載されている。
【0040】
[第三工程]
次に、第一分散液と第三分散液を混合する。このとき、この混合液のpHを2~6または10~12の範囲にする必要がある。pHが、「6<pH<10」の場合、混合液はゲル化しやすく、後述する第四工程(乾燥工程)により造粒することは困難である。
【0041】
そこで、第一分散液と第三分散液を混合したときに、pHが2~6または10~12の適正範囲になるように、あらかじめ第二分散液のpHを調整する。すなわち、第二分散液にせん断力を加える前にpHを調整する。せん断力を加えても、分散液のpHはほとんど変わらないので、粘度調整後の第三分散液のpHは第二分散液のpHと同等である。例えば、第一分散液のpHが7以上(アルカリ性)のとき、第二分散液のpHが7未満(酸性)であると、混合液のpHが適正範囲に入らないおそれがある。そこで、第二分散液のpHが高くなるように調整し、混合液のpHを10~12にする。また、例えば、第一分散液のpHが7未満のとき、第二分散液のpHも7未満であると、混合液のpHが2~6の範囲になり得る。その場合には、第二分散液のpHを調整する必要はない。とはいえ、第二分散液のpHをさらに低く(酸性側に)調整してもよい。このように、第二分散液のpH調整は、実際に使用する第一分散液と第二分散液の状況に応じて適宜行えばよい。
【0042】
このとき、アルカリ性の試薬を用いれば、第二分散液のpHを上げることができる。弱アルカリ性の試薬が好ましい。酸性の試薬を用いれば、第二分散液のpHを下げることができる。弱酸性の試薬が好ましい。弱アルカリ性、弱酸性の試薬を用いることにより、目標のpHに調整することが可能になるとともに、急激なpHの変動による鎖状シリカの溶解(pH12以上で生じる)や、装置の腐食による金属成分の混入(pH2以下で生じる)、を防ぐことができる。また、pHの変動を穏やかにするために、添加する試薬の濃度を調整しても良い。
【0043】
[第四工程]
第三工程で得られた混合液を8~100mPa・Sの範囲の粘度で噴霧乾燥機に投入して乾燥粒子を造粒し、乾燥させる(本工程により得られる粒子を、乾燥粒子と称す)。このとき、噴霧乾燥機に投入する混合液の粘度を一定範囲内(8~100mPa・s)にする必要がある。粘度はできる限り低くすることが好ましい。10~90mPa・sがより好ましく、10~80mPa・sがさらに好ましい。混合液の粘度を低くすることにより、乾燥粒子の径のバラつきが小さくなる。同時に、均一な内部構造が実現でき、内部構造のバラつき(個体差)も減少する。そのため、適度な崩壊性を持つ多孔質粒子を得ることができる。さらに、粘度を前述の範囲内に保つことにより、形状係数0.80未満の粒子の含有率を低減できる。
【0044】
粘度がこの適正範囲内にあるなら、せん断力を加えて粘度を調整する必要はない。前述の第二工程でせん断力を加えて粘度を調整しているため、第二工程から第四工程までに経過した時間が短ければ、第四工程でせん断力を加えなくても適切な粘度が維持される。第二工程から第四工程までに2時間以上経過した場合には、せん断力を加えて粘度を低下させることが好ましい。
【0045】
さらに、分散液の粘度の変動を小さくすることが好ましい。具体的には、噴霧乾燥機への投入開始から投入終了までの間、混合液の粘度を±30mPa・s以内に制御することが好ましい。例えば、噴霧乾燥機へ投入開始する時点の混合液の粘度が50mPa・sの場合、噴霧乾燥が終了するまで粘度20~80mPa・sの混合液を噴霧乾燥機に投入する。噴霧乾燥機へ投入開始する時点の混合液の粘度が80mPa・sの場合は、粘度が100mPa・sを越えないように50~100mPa・sの混合液を噴霧乾燥機に投入する。このとき、噴霧乾燥機に投入する混合液の粘度が前述の範囲になるように調整する。粘度の変動幅は±25mPa・s以内がより好ましく、±20mPa・s以内がさらに好ましい。
【0046】
なお、粘度の一定化は、液滴サイズの一定化につながり、結果として、粒子径分布を制御しやすくなる。また、粘度の変動を上記範囲に制御することによっても、粒子径分布の再現性が良くなる。そのため、同等な粒子径分布を持つ多孔質粒子を安定して製造することができる。また、混合液の粘度を前述の範囲に保持して噴霧乾燥機に投入することによって、混合液を噴霧乾燥機まで供給する配管や、噴霧乾燥機のノズル等に混合液が詰まることを防ぐことができ、生産効率が向上する。
【0047】
また、噴霧乾燥機に投入する際の混合液の温度は粘度にも影響するため、10~30℃が好ましく、15~25℃がより好ましい。
【0048】
また、この分散液の濃度は5~30重量%が好ましい。これにより、造粒と乾燥をより効率的に行うことができる。濃度が低すぎると、噴霧乾燥時に造粒が進みにくく、粒子径が小さくなる傾向にある。濃度が高すぎると、粒子径が大きくなり乾燥が不十分となるおそれがある。また、粒子径が大きいと十分な機械的強度が得られず、製造時に粒子が破損するおそれがある。特に、本発明の多孔質粒子は崩壊しやすいので、分散液の濃度が重要となる。
【0049】
この濃度は、10~20重量%がより好ましく、10~15重量%がさらに好ましい。この濃度範囲によれば、低ずり速度では高粘度となり、高ずり速度では低粘度となる。つまり、非ニュートン性の特性を持つ混合液とすることができる。この非ニュートン性の混合液を高ずり速度で粘度を下げた状態のまま噴霧乾燥する。混合液は流動性よくノズルから噴霧(スプレー)される。噴霧された液滴は、低ずり速度となり高粘度化する(凝集構造をとる)ため、きれいな球状の多孔質粒子が得られる。
【0050】
なお、乾燥粒子の水分含有率を1~10重量%まで乾燥させることが好ましい。過剰な乾燥による粒子の崩壊や、水分によって合着したまま焼成されて融着した異形粒子の発生を低減できる。水分含有率が上記範囲内となるよう噴霧乾燥することにより、乾燥粒子全体の形状係数を高くすることができる。
【0051】
噴霧乾燥の方法としては、回転ディスク法、加圧ノズル法、2流体ノズル法等、公知の方法を採用でき、特に、2流体ノズル法が好ましい。乾燥工程における乾燥温度は、出口熱風温度で30~150℃が好ましく、40~100℃がより好ましい。この条件で乾燥することにより、十分な乾燥が可能になると共に、焼成工程での粒子同士の合着や融着を低減することができる。
【0052】
[第五工程]
次に、乾燥粒子を焼成し、水分含有量を少なくする。この工程では、炭素粒子の酸化を防ぐため、乾燥粒子を不活性ガスの雰囲気中で焼成し、多孔質粒子を得る。焼成温度は250~800℃が好ましく、300~600℃がより好ましく、400℃~500℃がさらに好ましい。この範囲で焼成することにより、水分量の少ない多孔質粒子となり、品質の安定性が向上する。また、多孔質粒子を形成する鎖状粒子同士の熱による融着を防ぐことができる。すなわち、強度が高くなることを防げる。不活性ガスとして窒素や希ガス(ヘリウム、アルゴン等)を使用できる。工業的に多用され、コストの安い窒素が最も好ましい。
【0053】
[分級工程]
造粒・乾燥(噴霧乾燥)と焼成の間に、分級処理を行ってもよい。噴霧乾燥により造粒された乾燥粒子が崩壊しない条件で分級処理を行う。造粒・乾燥工程と焼成工程との間に分級工程を設けることにより、粗大粒子が除去される。具体的には、平均粒子径の4倍以上の粒径をもつ粗大粒子を除去する。平均粒子径の4倍以上の粒径をもつ粗大粒子の割合を5重量%以下とすることが好ましく、2重量%以下とすることがより好ましい。分級装置として、ドナルドソン社製のドレセレック、セイシン企業社製のスピンエアシーブ、日清エンジニアリング社製のエアロファインクラシファイア、パウダーシステムズ社製のハイプレック分級機、ホソカワミクロン社製のツインターボプレックス等が例示できる。
【0054】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例0055】
[実施例1]
内容量10Lのタンクに純水2.0kg、非イオン性界面活性剤(花王ケミカル社製:レオドール TW-O120V)0.1kgを加え、撹拌しながら、炭素粒子の粉体(デンカ社製:デンカブラック)0.3kgを投入した。その後、超音波振動を加え、炭素粒子の分散液を得た。この分散液はpH9.2であった。
【0056】
また、純水100Lが入ったタンク(内容積200L)に、鎖状シリカの粉体(日本アエロジル社製アエロジル-90G)14.3kgを撹拌しながら徐々に加えた。目視で粉体の塊がなくなるまで混合した。得られた鎖状シリカ分散液のpHは3.8であった。炭素粒子分散液のpHが9.2なので、鎖状シリカ分散液のpHを上げて、混合液のpHが適正範囲(10~12)になるように調整する必要がある。そこで、この鎖状シリカ分散液に15%アンモニア水をpHが11になるように添加した。このとき、鎖状シリカ分散液の等電点(pH6.0)付近で一度ゲル化するが、撹拌しながら更にアンモニア水を添加すると、pH10以上で再び分散した。pH調整後の鎖状シリカ分散液の粘度は121mPa・sであった。さらに、この鎖状シリカ分散液をタンクからディスパーミル(ホソカワミクロン社製)に供給し、せん断力を加えてから、タンク内に排出する。このように分散液を循環させて粘度を調整し、粘度26mPa・sの鎖状シリカ分散液(シリカ濃度12.5重量%)を得た。なお、アエロジル-90Gは、分岐状粒子や屈曲状粒子を含む鎖状シリカであり、平均二次粒子径dは200nm、平均一次粒子径dは30nmであった。
【0057】
この鎖状シリカ分散液に前述した炭素粒子の分散液を加えて、鎖状シリカと炭素粒子の混合液(pH11)を得た。その混合液を攪拌しながら、噴霧乾燥機の対向式2流体ノズルに供給した。このとき、噴霧乾燥条件を、処理量60L/Hr、空気/液比=2,100、空気流速マッハ1.1、乾燥雰囲気(温度120℃、湿度7.2vol%)とした。これにより、乾燥粒子(水分含有量2重量%)が得られた。なお、東機産業社製B型粘度計(TVB-10、ローターNo.1)を用いて、液温25℃、回転数100rpm、測定時間60秒で混合液の粘度を測定した。供給開始時のタンク内の混合液の粘度は30mPa・sであり、供給終了時点のタンク内の分散液の粘度は71mPa・sであった。乾燥粒子を分級し、粗粒を取り除いた後、この乾燥粒子を400℃で3時間、窒素雰囲気下で静置焼成し、多孔質粒子を得た。
【0058】
この多孔質粒子の物性を以下のように測定、評価した。他の実施例や比較例でも同様に行った。多孔質粒子の調製条件を表1に、多孔質粒子の物性の測定、評価結果を表2に示す。
【0059】
(1)吸油量
(a) 鎖状シリカおよび炭素粒子の吸油量
測定板上に試料(鎖状シリカの粉体または炭素粒子の粉体)を取り、ビュレットを用いて煮あまに油を4滴ずつ試料に滴下し、滴下するたびにパレットナイフで十分に練り合わせた。滴下と練り合わせを繰り返し、全体が硬いパテ状の塊となったら、さらに一滴ごとに練り合わせて、パレットナイフを用いて螺旋状に巻くことができる状態にする。それまでの煮あまに油の総添加量を、試料100gあたりの添加量に換算し、吸油量とした。
【0060】
(b) 多孔質粒子内の炭素粒子の吸油量
多孔質粒子の粉体にフッ化水素酸を添加し、粉体中のシリカを溶解させた。その後、フッ化水素酸に溶解しない成分(炭素)を濾別し、水で洗浄して100℃で乾燥させて、炭素の粉体とした。これを試料として(a)と同様の手法で吸油量を求めた。
【0061】
(2)多孔質粒子の炭素含有率
試料(多孔質粒子の粉体)を0.1g計量し、るつぼに入れ、助燃剤として鉄、タングステン、スズを添加する。そのるつぼを炭素・硫黄分析装置(LECO社製CS844)にセットして、燃焼させ、COおよびCOのガスのピーク強度から含有炭素重量を算出した後、試料の重量に対する比率(含有炭素重量/試料重量)を炭素含有率とした。
【0062】
(3)電気抵抗率
多孔質粒子の粉体を0.05g計量し、円筒状の絶縁体リング内に敷き詰め、RIKEN SEIKI社製油圧器で70kgf/cmまで荷重をかけた。この時の電気抵抗値をAgilennto社製抵抗計で測定し、ノギスを用いて電極間距離を測定した。測定された電極間距離と予め粒子が無い状態で測定した電極間距離から、粉体厚みを算出し、電気抵抗値と粉体厚みから、電気抵抗率を算出した。
【0063】
(4)平均粒子径
(a)炭素粒子の平均粒子径
走査型電子顕微鏡で粒子を観察し、任意の100個の粒子を選択する。それぞれの粒子について、最長となる径を測定し、その平均値を平均粒子径とした。この測定によれば、炭素粒子が鎖状の場合には、平均二次粒子径として測定される。
【0064】
(b)多孔質粒子の平均粒子径
ベックマン・コールター社製の粒度分布測定装置(Multisizer 3)を用いて、多孔質粒子の粉体の粒度分布を測定し、個数統計値のメジアン径d50を平均粒子径とした。
【0065】
(5)細孔容積、最頻細孔径、比表面積、および細孔容積率
試料(多孔質粒子の粉体)10gをルツボに取り、300℃で1時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却した。ガラスセルに0.15g採取し、Belsorpmini II(日本ベル株式会社製)を使用して真空脱気しながら試料に窒素ガスを吸着後、脱着させ、得られた吸着等温線から、相対圧0.990の点での細孔容積(V)を求め、またBJH法により、細孔径の最頻値(ピーク値)を算出した。また、BET法により比表面積を求めた。
【0066】
また、細孔容積率は、最頻細孔径の±25%以内にある細孔の合計細孔容積(V±25%)と、多孔質シリカ粒子の細孔容積(V)とから、次式により求めた。
細孔容積率(%)=V±25%/V×100
【0067】
(6)空隙率
シリカの密度を2.2g/cm(=0.4545cm/g)として、前述の窒素吸着法で求めた細孔容積(V)から次式により求めた。
空隙率(%)=V/(V+0.4545)×100
【0068】
(7)平均形状係数
マルバーン・パナリティカル社製モフォロギ4を用い、約50,000個の粒子について円形度を測定し、その算術平均値を平均形状係数とした。円形度は、投影された物体と同じ面積を持つ円の円周とその物体の周囲長との比率で算出される。
【0069】
(8)平均圧縮強度
島津製作所製の微小圧縮試験機(MCT-W500)を用いて、圧縮強度を測定した。試料とする一つの粒子に負荷(荷重)を与え、試料が破壊した際の荷重を測定し、圧縮強度を算出した。5個の試料を測定し、算術平均値を平均圧縮強度とした。
【0070】
(9)研磨評価
さらに、多孔質粒子の粉体を砥粒とする研磨用砥石を作製した。すなわち、粉体100重量部と、マトリックスとしてゴム粒子(NBR硬化ゴム、平均粒子径120μm)100重量部とを均一に混合し、100kgf/cmの圧力でリング状に圧縮成型した。その後、150℃で10分間圧縮加熱して、外径300mm、内径100mm、厚さ10mmの形状の研磨用砥石を得た。この研磨用砥石と台板を接着して、研磨用砥石の平面部をガラス基板に接触させて、ガラス基板を下記の研磨条件で研磨した。そして、ガラス基板の研磨された表面を超微細欠陥可視化マクロ装置(Vision Psytech社製MICROMAX)を用いて観察し、下記の評価基準でスクラッチの評価を行った。
研磨条件
砥石回転数:30m/sec(周縁部)
砥石加圧 :150g/cm
研磨液 :水
ワーク :ガラス基板(ホウ珪酸ガラス)
研磨時間 :2分30秒
スクラッチの評価基準
表面は平滑で傷は殆ど認められない : ○
表面は平滑であるが傷が僅かに認められる : △
表面は平滑に欠け傷が認められる : ×
【0071】
[実施例2]
炭素粒子の粉体として、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製「EC600JD(ケッチェンブラック)」を使用した。これ以外は実施例1と同様に、多孔質粒子を調製した。
【0072】
[実施例3]
炭素粒子の粉体として、東海カーボン社製「シースト3」を使用した。これ以外は実施例1と同様に、多孔質粒子を調製した。
【0073】
[実施例4]
炭素粒子の分散液を次のように調製した。内容量1Lのタンクに純水0.54kg、非イオン性界面活性剤(花王ケミカル社製レオドール TW-O120V)0.02kgを加え、撹拌しながら、炭素粒子の粉体(デンカ社製デンカブラック)0.08kgを投入した。これ以外は実施例1と同様に、多孔質粒子を調製した。
【0074】
[実施例5]
炭素粒子の分散液を次のように調製した。容量200Lタンクに純水100.0kg、非イオン性界面活性剤(花王ケミカル社製レオドール TW-O120V)4.0kgを加え、撹拌しながら、炭素粒子の粉体(デンカ社製デンカブラック)14.4kgを投入した。これ以外は実施例1と同様に、多孔質粒子を調製した。
【0075】
[実施例6]
炭素粒子の粉体として東海カーボン社製「TOKABLACK♯5500」を使用した。これ以外は実施例1と同様に炭素粒子の分散液を調製した。この分散液はpH5.9であったので、鎖状シリカの分散液のpH調整を行わずに、炭素粒子の分散液と鎖状シリカの分散液を混合した。これ以外は実施例1と同様に、多孔質粒子を調製した。
【0076】
[実施例7]
炭素粒子の粉体として、東海カーボン社製「TOKABLACK♯4400」を使用した。これ以外は実施例1と同様に炭素粒子の分散液を調製した。この分散液はpH6.4であったので、鎖状シリカの分散液に濃度1%の硝酸を添加し、鎖状シリカの分散液のpHが2.5になるように調整した。このようにして得られた炭素粒子の分散液および鎖状シリカの分散液を混合した。これ以外は実施例1と同様に、多孔質粒子を調製した。
【0077】
[比較例1]
実施例1において、鎖状シリカの分散液のpH調整を行わずに、鎖状シリカの分散液と炭素粒子の分散液とを混合した。得られた混合液はpH6.5であった。混合液がゲル化したため、噴霧乾燥機で造粒することができなかった。
【0078】
[比較例2]
炭素粒子の粉体として、東海カーボン社製「シーストS」を使用した。これ以外は実施例1と同様に、多孔質粒子を調製した。
【0079】
[比較例3]
炭素粒子の分散液を次のように調製した。内容量1Lのタンクに純水0.13kg、非イオン性界面活性剤(花王ケミカル社製レオドール TW-O120V)0.01kgを加え、撹拌しながら、炭素粒子の粉体(デンカ社製デンカブラック)0.02kgを投入した。これ以外は実施例1と同様に、多孔質粒子を調製した。
【0080】
[比較例4]
炭素粒子の分散液を次のように調製した。内容量200Lのタンクに純水150kg、非イオン性界面活性剤(花王ケミカル社製レオドール TW-O120V)7.0kgを加え、撹拌しながら、炭素粒子の粉体(デンカ社製デンカブラック)22.0kgを投入した。これ以外は実施例1と同様に、多孔質粒子を調製した。
【0081】
[比較例5]
実施例1において、焼成工程で乾燥粒子を400℃で3時間、大気雰囲気下で静置焼成した。これ以外は実施例1と同様に、多孔質粒子を調製した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
図1