(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146883
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】駆動システム、ターボ圧縮機、冷凍装置
(51)【国際特許分類】
H02P 23/04 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H02P23/04
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024053603
(22)【出願日】2024-03-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2023057532
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 将央
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA06
5H505BB03
5H505BB04
5H505DD03
5H505DD08
5H505JJ26
5H505LL41
5H505LL60
(57)【要約】
【課題】シャフトの回転角の変化を検出するためのセンサの個数を削減する。
【解決手段】回転角検出器(60)は、シャフト(20)の回転角の変化に応じて振幅が変化する信号であり特定周波数成分が重畳され得る第1信号(S1)を出力する。信号処理部(80)は、第1信号(S1)に基づいて、第1信号(S1)に含まれる特定周波数成分を低減するための低減処理を行うことで、第2信号(S2)を生成する。制御部(90)は、第2信号(S2)に基づいてシャフト(20)の回転角を検出する。特定周波数成分の周波数は、直流成分ではない交流の周波数成分であり第1信号(S1)に含まれる周波数成分でありシャフト(20)の回転角の変化に応じた第1周波数成分(C1)の周波数よりも低い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(20)と、
電磁力により前記シャフト(20)を非接触で支持する支持部(11)と、
電磁力により前記シャフト(20)を回転駆動させる駆動部(12)と、
前記シャフト(20)の回転角の変化に応じて振幅が変化する信号であり特定周波数成分が重畳され得る第1信号(S1)を出力する単一の回転角検出器(60)と、
前記回転角検出器(60)から出力される第1信号(S1)に基づいて、前記第1信号(S1)に含まれる前記特定周波数成分を低減するための低減処理を行うことで、第2信号(S2)を生成する信号処理部(80)と、
前記支持部(11)および前記駆動部(12)を制御する制御部(90)とを備え、
制御部(90)は、前記信号処理部(80)により生成された第2信号(S2)に基づいて前記シャフト(20)の回転角を検出し、
前記低減処理において低減される前記特定周波数成分の周波数は、直流成分ではない交流の周波数成分であり前記第1信号(S1)に含まれる周波数成分であり前記シャフト(20)の回転角の変化に応じた第1周波数成分(C1)の周波数よりも低い
駆動システム。
【請求項2】
請求項1の駆動システムにおいて、
前記シャフト(20)は、被測定部(25)を有し、
前記回転角検出器(60)は、前記被測定部(25)との距離に応じて振幅が変化する信号を出力するギャップセンサであり、
前記被測定部(25)は、前記シャフト(20)の回転角の変化に応じて前記回転角検出器(60)との距離が変化するように構成され、
前記第1周波数成分(C1)は、前記駆動部(12)により回転駆動される前記シャフト(20)の回転周波数と、前記被測定部(25)の形状とに応じた周波数である
駆動システム。
【請求項3】
請求項1の駆動システムにおいて、
前記低減処理において低減される前記特定周波数成分は、前記第1周波数成分(C1)の周波数よりも低い周波数成分のうち振幅が最も大きい周波数成分を含む
駆動システム。
【請求項4】
請求項1の駆動システムにおいて、
前記低減処理において低減される前記特定周波数成分は、非接触で支持される前記シャフト(20)の基準位置からの振れに応じた複数の軸振れ成分(CX)のうち振幅が最も大きい軸振れ成分(CX)を含む
駆動システム。
【請求項5】
請求項1の駆動システムにおいて、
前記低減処理は、前記第1信号(S1)に含まれる特定周波数帯域内の周波数成分を低減するための処理であり、
前記特定周波数帯域は、前記特定周波数成分の周波数を含む周波数帯域であり、前記第1周波数成分(C1)の周波数よりも低い周波数帯域である
駆動システム。
【請求項6】
請求項1の駆動システムにおいて、
前記信号処理部(80)は、
前記第1信号(S1)に基づいて前記特定周波数成分に応じた閾値(Th1)を生成する第1処理部(81)と、
前記第1信号(S1)の振幅と前記第1処理部(81)により生成された閾値(Th1)とを比較することで、前記第2信号(S2)を生成する第2処理部(82)とを有する
駆動システム。
【請求項7】
請求項6の駆動システムにおいて、
前記第1処理部(81)は、前記第1信号(S1)に含まれる特定周波数帯域内の周波数成分を抽出することで前記閾値(Th1)を生成し、
前記特定周波数帯域は、前記特定周波数成分の周波数を含む周波数帯域であり、前記第1周波数成分(C1)の周波数よりも低い周波数帯域である
駆動システム。
【請求項8】
請求項6の駆動システムにおいて、
前記第1処理部(81)は、
前記第1信号(S1)に含まれる特定周波数帯域内の周波数成分を抽出することで前記閾値(Th1)を生成する第1抽出処理と、
前記第1信号(S1)から直流成分を抽出することで前記閾値(Th1)を生成する第2抽出処理とを選択的に行い、
前記特定周波数帯域は、前記特定周波数成分の周波数を含む周波数帯域であり、前記第1周波数成分(C1)の周波数よりも低い周波数帯域である
駆動システム。
【請求項9】
請求項6の駆動システムにおいて、
前記第1処理部(81)は、所定期間内における前記第1信号(S1)の振幅に基づいて導出された値を前記閾値(Th1)に設定する処理を繰り返し行うことで前記閾値(Th1)を生成する
駆動システム。
【請求項10】
請求項1の駆動システムにおいて、
前記信号処理部(80)は、
前記第1信号(S1)に含まれる前記特定周波数成分を低減する第1処理部(81)と、
前記第1処理部(81)により得られた信号と閾値(Th1)とを比較することで前記第2信号(S2)を生成する第2処理部(82)とを有する
駆動システム。
【請求項11】
請求項1の駆動システムにおいて、
支持巻線(35)と駆動巻線(36)とを有するベアリングレスモータ(30)を備え、
前記支持巻線(35)は、通電により前記シャフト(20)を非接触で支持するための電磁力を発生させる巻線であり、前記支持部(11)として機能し、
前記駆動巻線(36)は、通電により前記シャフト(20)を回転駆動させるための電磁力を発生させる巻線であり、前記駆動部(12)として機能する
駆動システム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1つの駆動システムを備えるターボ圧縮機。
【請求項13】
請求項12のターボ圧縮機を備える冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動システム、ターボ圧縮機、冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転検出器と軸振れ検出器と信号処理手段とを備えた回転検出装置が開示されている。回転検出器は、回転体の回転を非接触で検出する。軸振れ検出器は、回転体の軸振れを非接触で検出する。信号処理手段は、回転検出器からの回転検出信号と軸振れ検出器からの軸振検出信号とを処理し、回転検出信号の信号成分から軸振れ成分を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、回転体の回転角の変化を検出するために、2つのセンサ(回転検出器と軸振れ検出器)を設ける必要がある。そのため、回転体の回転角の変化を検出するためのセンサの個数を削減することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様は、駆動システムに関し、この駆動システムは、シャフト(20)と、電磁力により前記シャフト(20)を非接触で支持する支持部(11)と、電磁力により前記シャフト(20)を回転駆動させる駆動部(12)と、前記シャフト(20)の回転角の変化に応じて振幅が変化する信号であり特定周波数成分が重畳され得る第1信号(S1)を出力する単一の回転角検出器(60)と、前記回転角検出器(60)から出力される第1信号(S1)に基づいて、前記第1信号(S1)に含まれる前記特定周波数成分を低減するための低減処理を行うことで、第2信号(S2)を生成する信号処理部(80)と、前記支持部(11)および前記駆動部(12)を制御する制御部(90)とを備え、制御部(90)は、前記信号処理部(80)により生成された第2信号(S2)に基づいて前記シャフト(20)の回転角を検出し、前記低減処理において低減される前記特定周波数成分の周波数は、「直流成分ではない交流の周波数成分であり前記第1信号(S1)に含まれる周波数成分であり前記シャフト(20)の回転角の変化に応じた第1周波数成分(C1)」の周波数よりも低い。
【0006】
第1の態様では、シャフト(20)の回転角の変化を検出するために単一の回転角検出器(60)を設けるだけでよいので、シャフト(20)の回転角の変化を検出するためのセンサの個数を削減することができる。
【0007】
本開示の第2の態様は、第1の態様の駆動システムにおいて、前記シャフト(20)は、被測定部(25)を有し、前記回転角検出器(60)は、前記被測定部(25)との距離に応じて振幅が変化する信号を出力するギャップセンサであり、前記被測定部(25)は、前記シャフト(20)の回転角の変化に応じて前記回転角検出器(60)との距離が変化するように構成され、前記第1周波数成分(C1)は、前記駆動部(12)により回転駆動される前記シャフト(20)の回転周波数と、前記被測定部(25)の形状とに応じた周波数である駆動システムである。
【0008】
第2の態様では、シャフト(20)の回転角が変化すると、シャフト(20)の被測定部(25)と回転角検出器(60)との間の距離が変化し、その結果、回転角検出器(60)から出力される第1信号(S1)が変化する。これにより、回転角検出器(60)から出力される第1信号(S1)を「シャフト(20)の回転角の変化に応じて振幅が変化する信号」にすることができる。
【0009】
本開示の第3の態様は、第1または第2の態様の駆動システムにおいて、前記低減処理において低減される前記特定周波数成分は、前記第1周波数成分(C1)の周波数よりも低い周波数成分のうち振幅が最も大きい周波数成分を含む駆動システムである。
【0010】
第3の態様では、第1信号(S1)に重畳され得る「第1周波数成分(C1)の周波数よりも低い周波数成分のうち振幅が最も大きい周波数成分」を、低減処理において低減することができる。これにより、シャフト(20)の回転角の変化に応じて振幅が変化するように第2信号(S2)を精度良く生成することができるので、第2信号(S2)に基づくシャフト(20)の回転角の検出を正確に行うことができる。
【0011】
本開示の第4の態様は、第1または第2の態様の駆動システムにおいて、前記低減処理において低減される前記特定周波数成分は、非接触で支持される前記シャフト(20)の基準位置からの振れに応じた複数の軸振れ成分(CX)のうち振幅が最も大きい軸振れ成分(CX)を含む駆動システムである。
【0012】
第4の態様では、第1信号(S1)に重畳され得る複数の軸振れ成分(CX)のうち「振幅が最も大きい軸振れ成分(CX)」を、低減処理において低減することができる。これにより、シャフト(20)の回転角の変化に応じて振幅が変化するように第2信号(S2)を精度良く生成することができるので、第2信号(S2)に基づくシャフト(20)の回転角の検出を正確に行うことができる。
【0013】
本開示の第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つの駆動システムにおいて、前記低減処理は、前記第1信号(S1)に含まれる特定周波数帯域内の周波数成分を低減するための処理であり、前記特定周波数帯域は、前記特定周波数成分の周波数を含む周波数帯域であり、前記第1周波数成分(C1)の周波数よりも低い周波数帯域である駆動システムである。
【0014】
第5の態様では、第1周波数成分(C1)の周波数以上の周波数の周波数成分(シャフト(20)の回転角の変化を検出するために利用され得る周波数成分)が低減処理において低減されないようにすることができる。これにより、シャフト(20)の回転角の変化に応じて振幅が変化するように第2信号(S2)を精度良く生成することができるので、第2信号(S2)に基づくシャフト(20)の回転角の検出を正確に行うことができる。
【0015】
本開示の第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか1つの駆動システムにおいて、前記信号処理部(80)は、前記第1信号(S1)に基づいて前記特定周波数成分に応じた閾値(Th1)を生成する第1処理部(81)と、前記第1信号(S1)の振幅と前記第1処理部(81)により生成された閾値(Th1)とを比較することで、前記第2信号(S2)を生成する第2処理部(82)とを有する駆動システムである。
【0016】
第6の態様では、第1信号(S1)の振幅と特定周波数成分に応じた閾値(Th1)とを比較することにより、その比較により得られる「特定周波数成分が低減された信号」を第2信号(S2)として利用することができる。
【0017】
本開示の第7の態様は、第6の態様の駆動システムにおいて、前記第1処理部(81)は、前記第1信号(S1)に含まれる特定周波数帯域内の周波数成分を抽出することで前記閾値(Th1)を生成し、前記特定周波数帯域は、前記特定周波数成分の周波数を含む周波数帯域であり、前記第1周波数成分(C1)の周波数よりも低い周波数帯域である駆動システムである。
【0018】
第7の態様では、第1信号(S1)から特定周波数帯域内の周波数成分を抽出することで、その抽出された周波数成分を「特定周波数成分に応じた閾値(Th1)」として利用することができる。
【0019】
本開示の第8の態様は、第6の態様の駆動システムにおいて、前記第1処理部(81)は、前記第1信号(S1)に含まれる前記特定周波数帯域内の周波数成分を抽出することで前記閾値(Th1)を生成する第1抽出処理と、前記第1信号(S1)から直流成分を抽出することで前記閾値(Th1)を生成する第2抽出処理とを選択的に行い、前記特定周波数帯域は、前記特定周波数成分の周波数を含む周波数帯域であり、前記第1周波数成分(C1)の周波数よりも低い周波数帯域である駆動システムである。
【0020】
第8の態様では、駆動システム(10)の運転状況に応じて閾値(Th1)を適切に切り換えることができる。
【0021】
本開示の第9の態様は、第6の態様の駆動システムにおいて、前記第1処理部(81)は、所定期間内における前記第1信号(S1)の振幅に基づいて導出された値を前記閾値(Th1)に設定する処理を繰り返し行うことで、前記閾値(Th1)を生成する駆動システムである。
【0022】
第9の態様では、「所定期間内における第1信号(S1)の振幅に基づいて導出された値を閾値(Th1)に設定する処理」を繰り返し行うことで、特定周波数成分に応じて閾値(Th1)を変化させることができる。これにより、特定周波数成分に応じた閾値(Th1)を生成することができる。
【0023】
本開示の第10の態様は、第1~第5の態様のいずれか1つの駆動システムにおいて、前記信号処理部(80)は、前記第1信号(S1)に含まれる前記特定周波数成分を低減する第1処理部(81)と、前記第1処理部(81)により得られた信号と閾値(Th1)とを比較することで前記第2信号(S2)を生成する第2処理部(82)とを有する駆動システムである。
【0024】
第10の態様では、特定周波数成分が低減された第1信号(S1)の振幅と閾値(Th1)とを比較することにより、その比較により得られる「特定周波数成分が低減された信号」を第2信号(S2)として利用することができる。
【0025】
本開示の第11の態様は、第1~第9のいずれか1つの駆動システムにおいて、支持巻線(35)と駆動巻線(36)とを有するベアリングレスモータ(30)を備え、前記支持巻線(35)は、通電により前記シャフト(20)を非接触で支持するための電磁力を発生させる巻線であり、前記支持部(11)として機能し、前記駆動巻線(36)は、通電により前記シャフト(20)を回転駆動させるための電磁力を発生させる巻線であり、前記駆動部(12)として機能する駆動システムである。
【0026】
本開示の第12の態様は、ターボ圧縮機に関し、このターボ圧縮機は、第1~第11の態様のいずれか1つの駆動システムを備える。
【0027】
本開示の第13の態様は、冷凍装置に関し、この冷凍装置は、第12の態様のターボ圧縮機を備える。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施形態の冷凍装置の構成を例示する概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態のターボ圧縮機の構成を例示する断面図である。
【
図3】
図3は、シャフトの被測定部の第1軸部の構成を例示する断面図である。
【
図4】
図4は、シャフトの被測定部の第2軸部の構成を例示する断面図である。
【
図5】
図5は、ベアリングレスモータの構成を例示する断面図である。
【
図6】
図6は、ラジアル磁気軸受の構成を例示する断面図である。
【
図7】
図7は、シャフト振れに起因する第1信号の変動を例示する波形図である。
【
図8】
図8は、軸振れ成分を例示するグラフである。
【
図9】
図9は、軸振れ成分と第1周波数成分との関係および軸振れ周波数帯域を例示する図である。
【
図10】
図10は、信号処理部の構成を例示するブロック図である。
【
図11】
図11は、信号処理部において処理される各種信号を例示する波形図である。
【
図12】
図12は、回転角検出処理における各種信号の変化を例示する波形図である。
【
図13】
図13は、実施形態の変形例1における信号処理部の構成を例示するブロック図である。
【
図14】
図14は、実施形態の変形例2における信号処理部の構成を例示するブロック図である。
【
図15】
図15は、
図14に示した信号処理部において処理される各種信号を例示する波形図である。
【
図16】
図16は、実施形態の変形例3における信号処理部の構成を例示するブロック図である。
【
図17】
図17は、
図16に示した信号処理部において処理される各種信号を例示する波形図である。
【
図18】
図18は、実施形態の変形例4における信号処理部の構成を例示するブロック図である。
【
図19】
図19は、
図18に示した信号処理部において処理される各種信号を例示する波形図である。
【
図20】
図20は、実施形態の変形例5における信号処理部の構成を例示するブロック図である。
【
図21】
図21は、
図20に示した信号処理部において処理される各種信号を例示する波形図である。
【
図22】
図22は、実施形態の変形例6における信号処理部の構成を例示するブロック図である。
【
図23】
図23は、
図22に示した信号処理部において処理される各種信号を例示する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して実施の形態を詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は繰り返さない。
【0030】
(冷凍装置)
図1は、実施形態の冷凍装置(RR)の構成を例示する。冷凍装置(RR)は、冷媒が充填された冷媒回路(RR1)を有する。冷媒回路(RR1)は、ターボ圧縮機(1)と、放熱器(RR5)と、減圧機構(RR6)と、蒸発器(RR7)とを有する。この例では、減圧機構(RR6)は、膨張弁である。冷媒回路(RR1)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。
【0031】
冷凍サイクルでは、ターボ圧縮機(1)から吐出された冷媒は、放熱器(RR5)において放熱する。放熱器(RR5)から流出した冷媒は、減圧機構(RR6)において減圧され、蒸発器(RR7)において蒸発する。そして、蒸発器(RR7)から流出した冷媒は、ターボ圧縮機(1)に吸入される。
【0032】
この例では、冷凍装置(RR)は、空気調和機である。空気調和機は、冷房専用機であってもよいし、暖房専用機であってもよい。また、空気調和機は、冷房と暖房とを切り換える空気調和機であってもよい。この場合、空気調和機は、冷媒の循環方向を切り換える切換機構(例えば四方切換弁)を有する。また、冷凍装置(RR)は、給湯器、チラーユニット、庫内の空気を冷却する冷却装置などであってもよい。冷却装置は、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの内部の空気を冷却する。
【0033】
(ターボ圧縮機)
図2は、実施形態のターボ圧縮機(1)の構成を例示する。ターボ圧縮機(1)は、流体を吸入して圧縮し、圧縮された流体を吐出する。この例では、ターボ圧縮機(1)は、ケーシング(2)と、インペラ(3)と、駆動システム(10)とを備える。駆動システム(10)は、シャフト(20)と、ベアリングレスモータ(30)と、磁気軸受(40)と、タッチダウン軸受(50)とを備える。
【0034】
以下の説明では、部材の軸線の方向を、その部材の「軸方向」と記載する。部材の軸線と直交する方向を、その部材の「径方向」と記載する。部材の軸線周りの方向を、その部材の「周方向」と記載する。例えば、シャフト(20)の軸方向は、シャフト(20)の回転軸線の方向である。シャフト(20)の径方向は、シャフト(20)の回転軸線と直交する方向である。シャフト(20)の周方向は、シャフト(20)の回転軸線周りの方向である。
【0035】
〔ケーシング〕
ケーシング(2)は、両端が閉塞された円筒状に形成される。ケーシング(2)内の空間は、壁部(2a)により2つの空間に区画され、一方の空間がインペラ室(S21)を構成し、他方の空間がモータ室(S22)を構成する。インペラ室(S21)には、インペラ(3)が収容される。モータ室(S22)には、ベアリングレスモータ(30)と磁気軸受(40)とタッチダウン軸受(50)とが収容され、これらがモータ室(S22)の内周壁に固定される。この例では、ケーシング(2)は、ケーシング(2)の軸線(円筒軸線)が水平向きとなるように配置される。
【0036】
〔シャフト〕
シャフト(20)は、ケーシング(2)内に収容される。シャフト(20)は、インペラ室(S21)から壁部(2a)を貫通してモータ室(S22)まで延びる。シャフト(20)の一端部には、インペラ(3)が固定される。例えば、シャフト(20)は、鉄などの磁性材料により構成される。
【0037】
この例では、シャフト(20)は、円盤部(21)と、凹部(22)と、被測定部(25)とを有する。円盤部(21)は、シャフト(20)の他端部に設けられる。凹部(22)は、シャフト(20)の他端部の近傍に設けられる。凹部(22)は、シャフト(20)の全周にわたって形成される。被測定部(25)は、シャフト(20)の一端部と凹部(22)との間に設けられる。
【0038】
被測定部(25)は、シャフト(20)の回転角の変化に応じて後述する回転角センサ(60)との距離が変化するように構成される。また、この例では、被測定部(25)は、シャフト(20)の回転基準の位置の変化に応じて後述する回転基準センサ(65)との距離が変化するように構成される。被測定部(25)は、軸状に形成される。被測定部(25)には、複数の第1段差部(201)と、第2段差部(202)とが設けられる。
【0039】
複数の第1段差部(201)は、シャフト(20)の周方向に所定間隔で配列される。複数の第1段差部(201)は、シャフト(20)の回転角の変化を検出するために設けられる。
【0040】
図3に示すように、この例では、8つの第1段差部(201)がシャフト(20)の周方向において等間隔に設けられる。第1段差部(201)は、凹部(溝)である。シャフト(20)の被測定部(25)のうち第1段差部(201)が設けられた軸部(以下では「第1軸部」と記載)は、後述する回転角センサ(60)の測定対象となる。
【0041】
第2段差部(202)は、シャフト(20)の軸方向において第1軸部(複数の第1段差部(201)が設けられた軸部)と隣り合う軸部に設けられる。第2段差部(202)は、シャフト(20)の回転基準を検出するために設けられる。
【0042】
図4に示すように、この例では、1つの第2段差部(202)が設けられる。第2段差部(202)は、凹部(溝)である。シャフト(20)の被測定部(25)のうち第2段差部(202)が設けられた軸部(以下では「第2軸部」と記載)は、後述する回転基準センサ(65)の測定対象となる。
【0043】
〔インペラ〕
インペラ(3)は、複数の羽根を有し、外形が略円錐形状となるように形成される。インペラ(3)は、シャフト(20)の一端部に固定された状態で、インペラ室(S21)に収容される。インペラ室(S21)には、吸入管(P1)と吐出管(P2)とが接続される。吸入管(P1)は、流体を外部からインペラ室(S21)に導くために設けられる。吐出管(P2)は、インペラ室(S21)内で圧縮された高圧の流体を外部に導くために設けられる。この例では、インペラ(3)とインペラ室(S21)とが圧縮機構を構成する。
【0044】
〔ベアリングレスモータ〕
ベアリングレスモータ(30)は、ロータ(31)とステータ(32)とを有し、電磁力によりシャフト(20)を非接触で支持し、且つ、シャフト(20)を回転駆動させる。ロータ(31)は、シャフト(20)に固定され、ステータ(32)は、ケーシング(2)の内周壁に固定される。この例では、ベアリングレスモータ(30)は、シャフト(20)の一端部(インペラ(3)が固定された端部)と被測定部(25)との間に配置される。
【0045】
具体的には、ベアリングレスモータ(30)は、支持巻線(35)と駆動巻線(36)とを有する。支持巻線(35)と駆動巻線(36)は、ステータ(32)に設けられる。
【0046】
支持巻線(35)は、通電によりシャフト(20)を非接触で支持するための電磁力を発生させる巻線である。支持巻線(35)は、電磁力によりシャフト(20)を非接触で支持する支持部(11)として機能する。支持巻線(35)は、支持部(11)の一例である。
【0047】
駆動巻線(36)は、通電によりシャフト(20)を回転駆動させるための電磁力を発生させる巻線である。駆動巻線(36)は、電磁力によりシャフト(20)を回転駆動させる駆動部(12)として機能する。駆動巻線(36)は、駆動部(12)の一例である。
【0048】
図5に示すように、この例では、ベアリングレスモータ(30)は、コンセクエントポール型のベアリングレスモータにより構成される。
【0049】
〈ロータ〉
ロータ(31)は、ロータコア(310)と、複数の永久磁石(311)とを有する。ロータコア(310)は、磁性材料により構成され、円柱状に形成される。例えば、ロータコア(310)は、円板状の電磁鋼板が積層された積層コアにより構成される。ロータコア(310)の中央部には、シャフト(20)を挿通するためのシャフト孔が設けられる。複数の永久磁石(311)は、ロータ(31)の周方向において所定の角度ピッチで配置される。
【0050】
この例では、ロータ(31)には、4つの永久磁石(311)が設けられる。4つの永久磁石(311)は、ロータ(31)の周方向において90°の角度ピッチで配置されてロータコア(310)の外周部(外周面の近傍)に埋設される。また、4つの永久磁石(311)は、ロータコア(310)の外周面に沿う円弧状に形成され、外周面側がN極となる。
【0051】
このような構成により、ロータコア(310)の外周部のうちロータ(31)の周方向において4つの永久磁石(311)の間に位置する部分が擬似的にS極となる。なお、4つの永久磁石(311)の外周面側がS極となってもよい。この場合、ロータコア(310)の外周部のうちロータ(31)の周方向において4つの永久磁石(311)の間に位置する部分が擬似的にN極となる。
【0052】
〈ステータ〉
ステータ(32)は、ロータ(31)と所定のエアギャップを隔てて対向する。ステータ(32)は、ステータコア(320)と、支持巻線(35)と、駆動巻線(36)とを有する。ステータコア(320)は、磁性材料により構成される。例えば、ステータコア(320)は、円環状の電磁鋼板が積層された積層コアにより構成される。ステータコア(320)は、円筒状に形成されたバックヨークと、バックヨークの内周面に設けられる複数のティース(図示省略)とを有する。
【0053】
支持巻線(35)は、ステータコア(320)のティースのうち径方向外側の部分に巻回される。この例では、ベアリングレスモータ(30)には、3種類の支持巻線(35)が設けられる。具体的には、
図5において太い実線で囲まれた支持巻線(35)は、U相の支持巻線を構成する。
図5において太い破線で囲まれた支持巻線(35)は、V相の支持巻線を構成する。
図5において細い実線で囲まれた支持巻線(35)は、W相の支持巻線を構成する。
【0054】
駆動巻線(36)は、ステータコア(320)のティースのうち径方向内側の部分に巻回される。この例では、ベアリングレスモータ(30)には、3種類の駆動巻線(36)が設けられる。具体的には、
図5において太い実線で囲まれた駆動巻線(36)は、U相の駆動巻線を構成する。
図5において太い破線で囲まれた駆動巻線(36)は、V相の駆動巻線を構成する。
図5において細い実線で囲まれた駆動巻線(36)は、W相の駆動巻線を構成する。
【0055】
〔磁気軸受〕
磁気軸受(40)は、複数の電磁石を有し、その複数の電磁石の電磁力によりシャフト(20)を非接触で支持する。磁気軸受(40)は、電磁力によりシャフト(20)の位置を制御する。磁気軸受(40)は、電磁力によりシャフト(20)を非接触で支持する支持部(11)として機能する。磁気軸受(40)は、支持部(11)の一例である。この例では、磁気軸受(40)として、ラジアル磁気軸受(41)とスラスト磁気軸受(42)とが設けられる。
【0056】
〈ラジアル磁気軸受〉
ラジアル磁気軸受(41)は、電磁力によりシャフト(20)の径方向位置を非接触で制御する。この例では、ラジアル磁気軸受(41)は、ベアリングレスモータ(30)とシャフト(20)の被測定部(25)との間に配置される。
【0057】
図6に示すように、この例では、ラジアル磁気軸受(41)は、第1ラジアル電磁石(41a)と、第2ラジアル電磁石(41b)と、第3ラジアル電磁石(41c)と、第4ラジアル電磁石(41d)とを有する。第1ラジアル電磁石(41a)と第2ラジアル電磁石(41b)は、シャフト(20)を挟んで互いに対向する。第3ラジアル電磁石(41c)と第4ラジアル電磁石(41d)は、シャフト(20)を挟んで互いに対向する。第3ラジアル電磁石(41c)と第4ラジアル電磁石(41d)との対向方向は、第1ラジアル電磁石(41a)と第2ラジアル電磁石(41b)との対向方向と直交する。
【0058】
具体的には、ラジアル磁気軸受(41)は、コア(410)と、複数の巻線(415)とを有する。コア(410)は、磁性材料により構成され、円筒状に形成される。コア(410)は、円筒状に形成されたバックヨーク(411)と、バックヨーク(411)の内周面に設けられる複数のティース(412)とを有する。複数の巻線(415)は、複数のティース(412)に巻回される。ティース(412)に巻線(415)が巻回されることで、ラジアル電磁石が構成される。
【0059】
第1~第4ラジアル電磁石(41a~41d)の巻線(415)を通電することにより、ラジアル磁気軸受(41)の径方向においてシャフト(20)を非接触で支持するための電磁力が発生する。そして、第1ラジアル電磁石(41a)および第2ラジアル電磁石(41b)の巻線(415)を流れる電流を制御することにより、第1ラジアル電磁石(41a)と第2ラジアル電磁石(41b)との対向方向におけるシャフト(20)の位置が制御される。また、第3ラジアル電磁石(41c)および第4ラジアル電磁石(41d)の巻線(415)を流れる電流を制御することにより、第3ラジアル電磁石(41c)と第4ラジアル電磁石(41d)との対向方向におけるシャフト(20)の位置が制御される。
【0060】
この例では、ラジアル磁気軸受(41)は、ラジアル磁気軸受(41)の軸線がベアリングレスモータ(30)のステータ(32)の軸線と一致するように配置される。
【0061】
〈スラスト磁気軸受〉
スラスト磁気軸受(42)は、電磁力によりシャフト(20)の軸方向位置を非接触で制御する。
図2に示すように、この例では、スラスト磁気軸受(42)は、第1スラスト電磁石(42a)と、第2スラスト電磁石(42b)とを有する。第1スラスト電磁石(42a)と第2スラスト電磁石(42b)は、シャフト(20)の円盤部(21)を挟んで互いに対向する。
【0062】
具体的には、第1スラスト電磁石(42a)は、円環状に形成されたコアと、円環状に巻回された巻線とを有する。例えば、第1スラスト電磁石(42a)のコアには、円環状の溝が形成され、第1スラスト電磁石(42a)のコイルは、第1スラスト電磁石(42a)のコアの溝に収容される。第2スラスト電磁石(42b)の構成は、第1スラスト電磁石(42a)の構成と同様である。
【0063】
第1スラスト電磁石(42a)および第2スラスト電磁石(42b)の巻線を通電することにより、スラスト磁気軸受(42)の軸方向においてシャフト(20)を非接触で支持するための電磁力が発生する。そして、第1スラスト電磁石(42a)および第2スラスト電磁石(42b)の巻線を流れる電流を制御することにより、第1スラスト電磁石(42a)と第2スラスト電磁石(42b)との対向方向におけるシャフト(20)の位置が制御される。
【0064】
〔シャフトの基準位置〕
例えば、ターボ圧縮機(1)の運転中において、シャフト(20)の位置が予め定められた基準位置となるように、支持部(11)が制御される。この例では、基準位置は、シャフト(20)の回転軸線が予め定められた基準軸線と一致し、且つ、シャフト(20)の軸方向位置が予め定められた基準軸方向位置となるときのシャフト(20)の位置である。基準軸線は、ベアリングレスモータ(30)のステータ(32)の軸線である。基準軸方向位置は、シャフト(20)の円盤部(21)がスラスト磁気軸受(42)の第1スラスト電磁石(42a)と第2スラスト電磁石(42b)との間の中心位置となるときのシャフト(20)の軸方向位置である。
【0065】
〔タッチダウン軸受〕
タッチダウン軸受(50)は、支持部(11)によるシャフト(20)の非接触での支持が行われない場合に、シャフト(20)と接触してシャフト(20)を回転可能に支持する。この例では、タッチダウン軸受(50)として、ラジアルタッチダウン軸受(51)とラジアルスラストタッチダウン軸受(52)とが設けられる。
【0066】
〈ラジアルタッチダウン軸受〉
ラジアルタッチダウン軸受(51)は、円環状に形成される。ラジアルタッチダウン軸受(51)には、シャフト(20)が挿通される。この例では、ラジアルタッチダウン軸受(51)は、シャフト(20)の一端部(インペラ(3)が固定された端部)とベアリングレスモータ(30)との間に配置される。具体的には、ラジアルタッチダウン軸受(51)は、ケーシング(2)の壁部(2a)に配置される。
【0067】
ラジアルタッチダウン軸受(51)は、ラジアルタッチダウン軸受(51)の軸線が基準軸線(具体的にはベアリングレスモータ(30)のステータ(32)の軸線およびラジアル磁気軸受(41)の軸線)と一致するように配置される。ラジアルタッチダウン軸受(51)の内径は、ラジアル磁気軸受(41)の内径(ティース(412)の先端と接する仮想の円筒面の径)よりも小さい。
【0068】
シャフト(20)の位置が基準位置である場合、ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)とシャフト(20)との間の隙間は、「ラジアル磁気軸受(41)とシャフト(20)との間の隙間」および「ベアリングレスモータ(30)のロータ(31)とステータ(32)との間の隙間」の各々よりも狭い。
【0069】
この例では、ラジアルタッチダウン軸受(51)は、ラジアルタッチダウン軸受(51)の内周面がラジアルタッチダウン軸受(51)の径方向に移動するシャフト(20)と接触してシャフト(20)を回転可能に支持する。また、シャフト(20)とラジアルタッチダウン軸受(51)の内周面との接触により、「ベアリングレスモータ(30)のロータ(31)とステータ(32)との接触」および「シャフト(20)とラジアル磁気軸受(41)との接触」を回避することができる。
【0070】
〈ラジアルスラストタッチダウン軸受〉
ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)は、円環状に形成される。ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)には、シャフト(20)が挿通される。この例では、ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)は、シャフト(20)の被測定部(25)とスラスト磁気軸受(42)との間に配置される。具体的には、ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)は、シャフト(20)の凹部(22)と対向するように配置される。
【0071】
ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)は、ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)の軸線が基準軸線(具体的にはベアリングレスモータ(30)のステータ(32)の軸線およびラジアル磁気軸受(41)の軸線)と一致するように配置される。
【0072】
この例では、ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)は、シャフト(20)の凹部(22)と対向する。具体的には、ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)の内周面は、シャフト(20)の凹部(22)の底面と対向し、ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)の軸方向の両端面は、シャフト(20)の凹部(22)の両側面と対向する。
【0073】
シャフト(20)の位置が基準位置である場合、ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)とシャフト(20)の凹部(22)の底面との間の隙間は、「ラジアル磁気軸受(41)とシャフト(20)との間の隙間」および「ベアリングレスモータ(30)のロータ(31)とステータ(32)との間の隙間」の各々よりも狭い。
【0074】
また、シャフト(20)の位置が基準位置である場合、ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)とシャフト(20)の凹部(22)の一側面との間の隙間は、スラスト磁気軸受(42)の第1スラスト電磁石(42a)とシャフト(20)の円盤部(21)との間の隙間よりも狭い。ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)とシャフト(20)の凹部(22)の他側面との間の隙間は、スラスト磁気軸受(42)の第2スラスト電磁石(42b)とシャフト(20)の円盤部(21)との間の隙間よりも狭い。
【0075】
この例では、ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)は、ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)の内周面がラジアルスラストタッチダウン軸受(52)の径方向に移動するシャフト(20)の凹部(22)の底面と接触してシャフト(20)を回転可能に支持する。また、シャフト(20)の凹部(22)の底面とラジアルスラストタッチダウン軸受(52)の内周面との接触により、「ベアリングレスモータ(30)のロータ(31)とステータ(32)との接触」および「シャフト(20)とラジアル磁気軸受(41)との接触」を回避することができる。
【0076】
また、この例では、ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)は、ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)の軸方向の端面がラジアルスラストタッチダウン軸受(52)の軸方向に移動するシャフト(20)の凹部(22)の側面と接触してシャフト(20)を回転可能に支持する。また、シャフト(20)の凹部(22)の側面とラジアルスラストタッチダウン軸受(52)との接触により、シャフト(20)の円盤部(21)とスラスト磁気軸受(42)との接触を回避することができる。
【0077】
〔各種センサ〕
また、駆動システム(10)は、回転角センサ(60)、回転基準センサ(65)、位置センサ(70)、電流センサ(図示省略)などの各種センサを備える。回転角センサ(60)は、回転角検出器の一例である。回転基準センサ(65)は、回転基準検出器の一例である。
【0078】
なお、駆動システム(10)に設けられる回転角センサ(60)の個数は、1つである。駆動システム(10)は、単一の回転角センサ(60)を備える。同様に、駆動システム(10)に設けられる回転基準センサ(65)の個数は、1つである。駆動システム(10)は、単一の回転基準センサ(65)を備える。
【0079】
〔回転角センサ〕
回転角センサ(60)は、シャフト(20)の回転角を検出するために設けられる。回転角センサ(60)は、シャフト(20)の被測定部(25)の回転角に応じた信号を出力する。回転角センサ(60)から出力される信号は、シャフト(20)の回転角の変化に応じて振幅が変化する信号である。以下では、回転角センサ(60)から出力される信号を「第1信号(S1)」と記載する。
【0080】
この例では、回転角センサ(60)は、被測定部(25)との距離に応じた信号を出力するギャップセンサである。ギャップセンサと測定対象である被測定部(25)との間の距離が長くなるほど、ギャップセンサから出力される信号のレベル(振幅値)が高くなる。例えば、このギャップセンサは、渦電流式のギャップセンサである。
【0081】
具体的には、回転角センサ(60)は、シャフト(20)の被測定部(25)の第1軸部(第1段差部(201)が設けられた軸部)と対向するように配置され、シャフト(20)の被測定部(25)の第1軸部との距離に応じた信号を出力する。
図3に示すように、シャフト(20)の位置が基準位置である場合、第1軸部のうち第1段差部(201)と回転角センサ(60)との間の距離(D11)は、第1軸部のうち第1段差部(201)を除く残りの部分と回転角センサ(60)との間の距離(D10)よりも長い。したがって、回転角センサ(60)から出力される信号のレベル(振幅値)は、回転角センサ(60)と第1段差部(201)とが対向すると高くなる。
【0082】
〔回転基準センサ〕
回転基準センサ(65)は、シャフト(20)の回転基準の位置を検出するために設けられる。回転基準センサ(65)は、シャフト(20)の被測定部(25)の回転基準の位置に応じた信号を出力する。回転基準センサ(65)から出力される信号は、シャフト(20)の回転基準の位置の変化に応じて振幅が変化する信号である。以下では、回転基準センサ(65)から出力される信号を「第1回転基準信号(SS1)」と記載する。
【0083】
この例では、回転基準センサ(65)は、被測定部(25)との距離に応じた信号を出力するギャップセンサである。ギャップセンサと測定対象である被測定部(25)との間の距離が長くなるほど、ギャップセンサから出力される信号のレベル(振幅値)が高くなる。例えば、このギャップセンサは、渦電流式のギャップセンサである。
【0084】
回転基準センサ(65)は、シャフト(20)の被測定部(25)の第2軸部(第2段差部(202)が設けられた軸部)と対向するように配置され、シャフト(20)の被測定部(25)の第2軸部との距離に応じた信号を出力する。
図4に示すように、シャフト(20)の位置が基準位置である場合、第2軸部のうち第2段差部(202)と回転基準センサ(65)との間の距離(D21)は、第2軸部のうち第2段差部(202)を除く残りの部分と回転基準センサ(65)との間の距離(D20)よりも長い。したがって、回転基準センサ(65)から出力される信号のレベル(振幅値)は、回転基準センサ(65)と第2段差部(202)とが対向すると高くなる。
【0085】
なお、この例では、回転角センサ(60)および回転基準センサ(65)は、シャフト(20)の鉛直下方に配置される。また、回転角センサ(60)および回転基準センサ(65)は、基準軸線を向くように配置される。
【0086】
〔位置センサ〕
位置センサ(70)は、シャフト(20)の位置に応じた信号を出力する。この例では、位置センサ(70)は、シャフト(20)との距離に応じた信号を出力するギャップセンサである。
【0087】
具体的には、この例では、位置センサ(70)として、ラジアル位置センサ(71)とスラスト位置センサ(72)とが設けられる。ラジアル位置センサ(71)およびスラスト位置センサ(72)の各々は、測定対象との間の距離に応じた信号を出力するギャップセンサである。ギャップセンサと測定対象との間の距離が長くなるほど、ギャップセンサから出力される信号のレベル(振幅値)が高くなる。
【0088】
ラジアル位置センサ(71)は、シャフト(20)の径方向位置に応じた信号を出力する。この例では、ラジアル位置センサ(71)は、シャフト(20)の被測定部(25)のうち「第1段差部(201)および第2段差部(202)のどちらも設けられない軸部(以下では「円筒面部分」と記載)」と対向するように配置され、シャフト(20)の被測定部(25)の円筒面部分との距離に応じた信号を出力する。
【0089】
なお、ラジアル位置センサ(71)として、2種類のラジアル位置センサ(第1ラジアル位置センサ(71)と第2ラジアル位置センサ(71))とが設けられる。第1ラジアル位置センサ(71)は、ラジアル磁気軸受(41)の第1ラジアル電磁石(41a)と第2ラジアル電磁石(41b)との対向方向におけるシャフト(20)の位置に応じた信号を出力する。第2ラジアル位置センサ(71)は、ラジアル磁気軸受(41)の第3ラジアル電磁石(41c)と第4ラジアル電磁石(41d)との対向方向におけるシャフト(20)の位置に応じた信号を出力する。また、ラジアル位置センサ(71)は、基準軸線を向くように配置される。
【0090】
スラスト位置センサ(72)は、シャフト(20)の軸方向位置に応じた信号を出力する。この例では、スラスト位置センサ(72)は、シャフト(20)の他端面と対向するように配置され、シャフト(20)の他端面との距離に応じた信号を出力する。
【0091】
〔軸振れ成分〕
回転角センサ(60)の出力である第1信号(S1)には、軸振れ成分(CX)が重畳され得る。軸振れ成分(CX)は、非接触で支持されるシャフト(20)の基準位置からの振れに応じた周波数成分である。例えば、回転角センサ(60)の測定方向(
図3の例における左右方向)にシャフト(20)の振れが発生すると、そのシャフト(20)の振れに応じて第1信号(S1)の振幅が変動する。軸振れ成分(CX)は、特定周波数成分の一例である。
【0092】
図7に示すように、シャフト(20)の振れに応じて第1信号(S1)の振幅が変動する場合、仮に「第1信号(S1)の振幅」と「固定値である閾値(Th)」とを比較することでシャフト(20)の回転角の変化を検出しようとしても、第1信号(S1)の振幅が閾値(Th)を上回るべき期間において第1信号(S1)の振幅が閾値(Th)を上回らなくなる場合がある。そのため、シャフト(20)の回転角の変化を精度良く検出することが困難となる。
【0093】
このようなシャフト(20)の振れは、冷凍装置(RR)において発生するサージングなどの外乱に応じて発生する。言い換えると、軸振れ成分(CX)には、サージングなどの外乱に応じた軸振れ成分(Cs)が含まれる。以下では、サージングに応じた軸振れ成分(Cs)を単に「軸振れ成分(Cs)」と記載する。
【0094】
なお、サージングとは、ターボ圧縮機(1)の負荷の急変化によりターボ圧縮機(1)を含む流路全体において流体の圧力および流量が周期的に変動する現象のことである。例えば、運転中のターボ圧縮機(1)の負荷が高負荷から急に軽負荷になると、ターボ圧縮機(1)を含む流路全体(具体的には冷媒回路(RR1))において流体(具体的には冷媒)の流量が不安定になり、ターボ圧縮機(1)および流路を構成する配管などが共振を引き起こし、その結果、ターボ圧縮機(1)を含む流路全体において流体の圧力および流量が周期的に変動する。サージングは、ターボ圧縮機(1)に設けられたモータの回転が高速回転(例えば100Hz)である場合に発生し得る。
【0095】
なお、この例では、ターボ圧縮機(1)に設けられたモータは、ベアリングレスモータ(30)である。以下では、ターボ圧縮機(1)に設けられたモータを単に「モータ」と記載する。
【0096】
シャフト(20)の基準位置からの振れには、モータの回転周波数に応じた周期で発生するシャフト(20)の振れも存在する。例えば、このシャフト(20)の振れは、モータの回転周波数の整数倍となる周波数で発生する。言い換えると、軸振れ成分(CX)には、モータの回転周波数に応じた軸振れ成分(Cr)が含まれる。以下では、モータの回転周波数に応じた軸振れ成分(Cr)を単に「軸振れ成分(Cr)」と記載する。
【0097】
次に、
図8を参照して、軸振れ成分(Cs)および軸振れ成分(Cr)について説明する。
図8には、5つの軸振れ成分(Cr)(第1番目から第5番目までの軸振れ成分(Cr))が図示されている。第1番目から第5番目までの軸振れ成分(Cr)の周波数は、第1番目の軸振れ成分(Cr)から第5番目の軸振れ成分(Cr)に向かうに連れて次第に高くなる。第k番目の軸振れ成分(Cr)の周波数は、モータの回転周波数(fr)のk倍(kは整数)の周波数である。例えば、第2番目の軸振れ成分(Cr)の周波数は、モータの回転周波数(fr)の2倍の周波数(2fr)である。
【0098】
図8に示すように、軸振れ成分(Cs)の振幅は、軸振れ成分(Cr)の振幅よりも大きくなる傾向にある。
図8の例では、軸振れ成分(Cs)の振幅は、第1番目の軸振れ成分(Cr)の振幅よりも大きい。第1番目から第5番目までの軸振れ成分(Cr)の振幅は、第1番目の軸振れ成分(Cr)から第5番目の軸振れ成分(Cr)に向かうに連れて次第に小さくなる傾向がある。軸振れ成分(Cs)は、複数の軸振れ成分(CX)のうち振幅が最も大きい軸振れ成分(CX)である。
【0099】
また、
図8に示すように、軸振れ成分(Cs)の周波数(fs)は、軸振れ成分(Cr)の周波数よりも低くなる傾向にある。
図8の例では、軸振れ成分(Cs)の周波数(fs)は、第1番目の軸振れ成分(Cr)の周波数(fr)よりも低い。軸振れ成分(Cs)は、複数の軸振れ成分(CX)のうち周波数が最も低い軸振れ成分(CX)である。例えば、軸振れ成分(Cs)の周波数(fs)は、数Hzから数十Hz程度である。モータの回転が高速回転(サージングが発生し得る高速回転)であるときの第1番目の軸振れ成分(Cr)の周波数は、100Hz以上である。
【0100】
次に、
図9を参照して、軸振れ成分(Cs)の周波数(fs)と第1周波数成分(C1)の周波数(f1)との関係について説明する。第1周波数成分(C1)は、第1信号(S1)に含まれる周波数成分であり、シャフト(20)の回転角の変化に応じた周波数成分である。この例では、第1周波数成分(C1)の周波数(f1)は、「モータの回転周波数」に「シャフト(20)の被測定部(25)に設けられた第1段差部(201)の数」を乗算して得られる周波数である。
【0101】
上記の「モータの回転周波数」は、「駆動部(12)により回転駆動されるシャフト(20)の回転周波数」に対応する。上記の「シャフト(20)の被測定部(25)に設けられた第1段差部(201)の数」は、「被測定部(25)の形状」に応じた数である。上記の「第1周波数成分(C1)の周波数(f1)」は、「駆動部(12)により回転駆動されるシャフト(20)の回転周波数」と「被測定部(25)の形状」とに応じた周波数である。
【0102】
なお、
図9の例では、第1周波数成分(C1)の周波数(f1)の変動幅(B1)の下限値を「第1周波数成分(C1)の周波数(f1)」として例示している。言い換えると、第1周波数成分(C1)の周波数(f1)以上の周波数の周波数成分は、シャフト(20)の回転角の変化に応じた周波数成分であり、シャフト(20)の回転角の変化を検出するために利用され得る周波数成分である。
【0103】
図9に示すように、軸振れ成分(Cs)の周波数(fs)は、第1周波数成分(C1)の周波数(f1)よりも小さい。例えば、モータの回転が高速回転(サージングが発生し得る高速回転)であるときのモータの回転周波数が「100Hz」であり、且つ、シャフト(20)の被測定部(25)に設けられた第1段差部(201)の数が「30」である場合、第1周波数成分(C1)の周波数(f1)は、「3000Hz(=100Hz×30)」となる。軸振れ成分(Cs)の周波数(fs)は、数Hzから数十Hz程度である。
【0104】
なお、軸振れ成分(Cs)の周波数は、主に、ターボ圧縮機(1)を含む流路を構成する構成要素(この例では冷媒回路(RR1)を構成するターボ圧縮機(1)と放熱器(RR5)と蒸発器(RR7)と配管など)の共振周波数に応じた周波数となる。この共振周波数は、ターボ圧縮機(1)を含む流路を構成する構成要素の構造、重量、密度、体積、寸法などに応じて決定される。仮に、冷凍装置(RR)が小型化または軽量化されると、共振周波数は高くなる傾向にあるが、動力を確保するために、モータの回転周波数が高くなる傾向にある。したがって、「軸振れ成分(Cs)の周波数(fs)が第1周波数成分(C1)の周波数(f1)よりも低い」という関係が維持される。
【0105】
〔信号処理部〕
また、駆動システム(10)は、信号処理部(80)を備える。信号処理部(80)は、回転角センサ(60)から出力される第1信号(S1)に基づいて低減処理を行うことで、第2信号(S2)を生成する。低減処理は、第1信号(S1)に含まれる軸振れ成分(CX)を低減するための処理である。
【0106】
具体的には、低減処理は、第1信号(S1)に含まれる軸振れ周波数帯域(BX)内の周波数成分を低減するための処理である。
図9に示すように、軸振れ周波数帯域(BX)は、軸振れ成分(CX)を含む周波数帯域であり、第1周波数成分(C1)の周波数(f1)よりも低い周波数帯域である。軸振れ周波数帯域(BX)は、特定周波数成分の周波数を含む特定周波数帯域の一例である。
【0107】
この例では、信号処理部(80)の低減処理において低減される軸振れ成分(CX)は、軸振れ成分(Cs)である。信号処理部(80)による低減処理は、第1信号(S1)に重畳し得る複数の軸振れ成分(CX)のうち少なくとも軸振れ成分(Cs)を低減するための処理である。
図8に示すように、軸振れ成分(Cs)は、複数の軸振れ成分(CX)のうち振幅が最も大きい軸振れ成分(CX)である。また、
図9に示すように、軸振れ周波数帯域(BX)は、軸振れ成分(Cs)の周波数(fs)を含む周波数帯域である。軸振れ周波数帯域(BX)の上限値は、軸振れ成分(Cs)の周波数(fs)の上限値の5倍以上の周波数とすることが望ましい。
【0108】
例えば、モータの回転が高速回転(サージングが発生し得る高速回転)であるときのモータの回転周波数が「100Hz」であり、且つ、シャフト(20)の被測定部(25)に設けられた第1段差部(201)の数が「30」である場合、第1周波数成分(C1)の周波数(f1)は、第1周波数成分(C1)の周波数(f1)は、「3000Hz(=100Hz×30)」である。軸振れ成分(Cs)の周波数(fs)が数Hzから数十Hz程度であるため、軸振れ周波数帯域(BX)は、「500Hz以下」の周波数帯域である。
【0109】
〔信号処理部の内部構成〕
次に、
図10を参照して、信号処理部(80)の構成について説明する。信号処理部(80)は、第1処理部(81)と、第2処理部(82)とを有する。
【0110】
第1処理部(81)は、第1信号(S1)に基づいて、軸振れ成分(CX)に応じた閾値(Th1)を生成する。この例では、第1処理部(81)は、第1信号(S1)に含まれる軸振れ周波数帯域(BX)内の周波数成分を抽出することで、閾値(Th1)を生成する。
【0111】
具体的には、第1処理部(81)は、ローパスフィルタ(810)により構成される。ローパスフィルタ(810)は、第1信号(S1)に含まれる軸振れ周波数帯域(BX)内の周波数成分を通過させ、第1信号(S1)に含まれる軸振れ周波数帯域(BX)を除く他の周波数帯域の周波数成分を低減する。ローパスフィルタ(810)を通過した第1信号(S1)は、軸振れ成分(CX)に応じた閾値(Th1)として出力される。
図11に示すように、閾値(Th1)は、軸振れ成分(CX)の周波数に応じた周波数で変化する。
【0112】
第2処理部(82)は、第1信号(S1)の振幅と第1処理部(81)により生成された閾値(Th1)とを比較することで第2信号(S2)を生成する。具体的には、第2処理部(82)は、第1信号(S1)と閾値(Th1)とを入力する比較器(820)により構成される。比較器(820)の出力信号は、第2信号(S2)として出力される。
【0113】
図11に示すように、比較器(820)は、第1信号(S1)と閾値(Th1)とを比較する。比較器(820)は、第1信号(S1)の振幅が閾値(Th1)を上回ると、第2信号(S2)の信号レベルをローレベルからハイレベルに遷移させ、第1信号(S1)の振幅が閾値(Th1)を下回ると、第2信号(S2)の信号レベルをハイレベルからローレベルに遷移させる。これにより、軸振れ成分(CX)が低減された第2信号(S2)が生成される。この例では、第1信号(S1)は、アナログ信号であり、第2信号(S2)は、パルス信号(矩形波信号)である。
【0114】
〔制御部〕
また、駆動システム(10)は、制御部(90)を備える。制御部(90)は、駆動システム(10)に設けられた各種センサと信号線により接続され、各種センサから出力された信号を受信する。制御部(90)は、駆動システム(10)の構成要素と信号線により接続され、駆動システム(10)の構成要素を制御する。この例では、制御部(90)は、ベアリングレスモータ(30)、ラジアル磁気軸受(41)、スラスト磁気軸受(42)、回転角センサ(60)、回転基準センサ(65)、ラジアル位置センサ(71)、スラスト位置センサ(72)と信号線により接続される。
【0115】
また、制御部(90)は、運転を開始するための起動指示などの各種指示を受ける。そして、制御部(90)は、各種指示および各種センサから出力された信号に基づいて、各種処理を行う。この例では、制御部(90)は、浮上位置制御と、回転駆動制御と、回転角検出処理とを行う。
【0116】
例えば、制御部(90)は、プロセッサ、プロセッサと電気的に接続されてプロセッサを動作させるためのプログラムを記憶するメモリ、プロセッサの指令に応じて電力を供給する電源部などを含む。
【0117】
〔浮上位置制御〕
制御部(90)は、支持部(11)によるシャフト(20)の非接触での支持が行われている場合に、浮上位置制御を行う。浮上位置制御において、制御部(90)は、位置センサ(70)から出力された信号に基づいてシャフト(20)の位置を検出し、シャフト(20)の位置が予め定められた基準位置となるように支持部(11)を制御する。
【0118】
具体的には、制御部(90)は、ラジアル位置センサ(71)から出力された信号に基づいて、シャフト(20)の径方向位置(回転軸線の位置)を検出し、シャフト(20)の径方向位置が予め定められた基準径方向位置(基準軸線の位置)となるように、ベアリングレスモータ(30)の支持巻線(35)に流れる電流と、ラジアル磁気軸受(41)の巻線(415)に流れる電流とを制御する。また、制御部(90)は、スラスト位置センサ(72)から出力された信号に基づいて、シャフト(20)の軸方向位置を検出し、シャフト(20)の軸方向位置が予め定められた基準軸方向位置となるように、スラスト磁気軸受(42)の巻線に流れる電流を制御する。
【0119】
〔回転駆動制御〕
制御部(90)は、支持部(11)によりシャフト(20)が非接触で支持され、且つ、駆動部(12)によりシャフト(20)が回転駆動されている場合に、回転駆動制御を行う。回転駆動制御において、制御部(90)は、シャフト(20)の回転速度が目標回転速度に維持されるように駆動部(12)を制御する。
【0120】
具体的には、制御部(90)は、駆動システム(10)に設けられた各種センサの出力に基づいて、シャフト(20)の回転速度を検出し、シャフト(20)の回転速度目標回転速度となるように、ベアリングレスモータ(30)の駆動巻線(36)に流れる電流を制御する。
【0121】
〔回転角検出処理〕
制御部(90)は、駆動部(12)によりシャフト(20)が回転駆動されている場合に、回転角検出処理を行う。回転角検出処理において、制御部(90)は、信号処理部(80)により生成された第2信号(S2)に基づいて、シャフト(20)の回転角を検出する。この例では、制御部(90)は、回転角検出処理において、信号処理部(80)により生成された第2信号(S2)と、回転基準センサ(65)から出力された第1回転基準信号(SS1)とに基づいて、シャフト(20)の回転角を検出する。
【0122】
例えば、回転角検出処理は、浮上位置制御および回転駆動制御と並行して行われる。回転角検出処理において検出されたシャフト(20)の回転角は、浮上位置制御および回転駆動制御において利用される。制御部(90)は、回転角検出処理において検出されたシャフト(20)の回転角に応じて浮上位置制御および回転駆動制御を行う。
【0123】
次に、
図12を参照して、回転角検出処理について詳しく説明する。
図12では、図示の簡略化のために、第1信号(S1)に軸振れ成分(CX)が重畳されておらず、且つ、閾値(Th1)が一定である場合を例に挙げている。
【0124】
図12に示すように、信号処理部(80)は、第1信号(S1)のレベル(振幅値)と閾値(Th1)とを比較し、その比較の結果に応じて第2信号(S2)を生成する。信号処理部(80)は、第1信号(S1)のレベルが閾値(Th1)を上回ると、第2信号(S2)のレベルをローレベルからハイレベルへ遷移させ、第1信号(S1)のレベルが閾値(Th1)を下回ると、第2信号(S2)のレベルをハイレベルからローレベルへ遷移させる。
【0125】
なお、閾値(Th1)は、シャフト(20)の被測定部(25)の第1軸部のうち第1段差部(201)と回転角センサ(60)とが対向しているときの第1信号(S1)のレベルよりも低く、且つ、シャフト(20)の被測定部(25)の第1軸部のうち第1段差部(201)を除く残りの部分と回転角センサ(60)とが対向しているときの第1信号(S1)のレベルよりも高くなるように設定されることが好ましい。
【0126】
また、制御部(90)は、回転基準センサ(65)から出力された第1回転基準信号(SS1)のレベル(振幅値)と予め定められた回転基準閾値(Th2)とを比較し、その比較の結果に応じて第2回転基準信号(SS2)を生成する。制御部(90)は、第1回転基準信号(SS1)のレベルが回転基準閾値(Th2)を上回ると、第2回転基準信号(SS2)のレベルをローレベルからハイレベルへ遷移させ、第1回転基準信号(SS1)のレベルが回転基準閾値(Th2)を下回ると、第2回転基準信号(SS2)レベルをハイレベルからローレベルへ遷移させる。この例では、第1回転基準信号(SS1)は、アナログ信号であり、第2回転基準信号(SS2)は、パルス信号(矩形波信号)である。
【0127】
なお、回転基準閾値(Th2)は、シャフト(20)の被測定部(25)の第2軸部のうち第2段差部(202)と回転基準センサ(65)とが対向しているときの第1回転基準信号(SS1)のレベルよりも低く、且つ、シャフト(20)の被測定部(25)の第2軸部のうち第2段差部(202)を除く残りの部分と回転基準センサ(65)とが対向しているときの第1回転基準信号(SS1)のレベルよりも高くなるように設定されることが好ましい。
【0128】
そして、制御部(90)は、第2信号(S2)に示された「シャフト(20)の回転角の変化」と、第2回転基準信号(SS2)に示された「シャフト(20)の回転基準の位置の変化」とに基づいて、シャフト(20)の回転角を検出する。
【0129】
具体的には、第2回転基準信号(SS2)のレベルがローレベルからハイレベルに遷移すると、制御部(90)は、シャフト(20)の回転角を「0°」にする。そして、制御部(90)は、第2信号(S2)のレベルがローレベルからハイレベルに遷移する毎に、シャフト(20)の回転角を所定量(この例では45°)だけ増加させる。このようにして、シャフト(20)の回転角が検出される。
【0130】
〔実施形態の効果〕
以上のように、実施形態の駆動システム(10)は、単一の回転角センサ(60)と、信号処理部(80)と、制御部(90)とを備える。回転角センサ(60)は、シャフト(20)の回転角の変化に応じて振幅が変化する信号であり軸振れ成分(CX)(特定周波数成分)が重畳され得る第1信号(S1)を出力する。軸振れ成分(CX)は、非接触で支持されるシャフト(20)の基準位置からの振れに応じた周波数成分である。信号処理部(80)は、回転角センサ(60)から出力される第1信号(S1)に基づいて、第1信号(S1)に含まれる軸振れ成分(CX)(特定周波数成分)を低減するための低減処理を行うことで、第2信号(S2)を生成する。制御部(90)は、支持部(11)および駆動部(12)を制御する。また、制御部(90)は、信号処理部(80)により生成された第2信号(S2)に基づいてシャフト(20)の回転角を検出する。低減処理において低減される軸振れ成分(CX)(特定周波数成分)の周波数は、直流成分ではない交流の周波数成分であり第1信号(S1)に含まれる周波数成分でありシャフト(20)の回転角の変化に応じた第1周波数成分(C1)の周波数よりも低い。
【0131】
上記の構成によれば、シャフト(20)の回転角の変化を検出するために単一の回転角センサ(60)を設けるだけでよいので、シャフト(20)の回転角の変化を検出するためのセンサの個数を削減することができる。
【0132】
また、実施形態の駆動システム(10)では、回転角センサ(60)から出力された第1信号(S1)に基づいて低減処理を行うことにより、軸振れ成分(CX)が低減された信号(シャフト(20)の回転角の変化に応じて振幅が変化する信号)を第2信号(S2)として生成することができる。これにより、第2信号(S2)に基づいてシャフト(20)の回転角の検出を正確に行うことができる。
【0133】
なお、特許文献1の装置では、回転体の回転角の変化を検出するために2つのセンサ(回転検出器と軸振れ検出器)が設けられている。そのため、これらのセンサ間における取付公差の違いや個体差による出力特性の違いにより、回転検出信号の信号成分から軸振れ成分を正確に除去することができない可能性がある。
【0134】
一方、実施形態の駆動システム(10)では、シャフト(20)の回転角の変化を検出するために単一の回転角センサ(60)を設けるだけでよいので、特許文献1のような影響(センサ間における取付公差の違いや個体差による出力特性の違いによる影響)を回避することができる。
【0135】
また、実施形態の駆動システム(10)では、低減処理において低減される軸振れ成分(CX)(特定周波数成分)は、非接触で支持されるシャフト(20)の基準位置からの振れに応じた複数の軸振れ成分(CX)のうち振幅が最も大きい軸振れ成分(CX)を含む。なお、「複数の軸振れ成分(CX)のうち振幅が最も大きい軸振れ成分(CX)」は、「第1周波数成分(C1)の周波数よりも低い周波数成分のうち振幅が最も大きい周波数成分」の一例である。
【0136】
上記の構成によれば、第1信号(S1)に重畳され得る複数の軸振れ成分(CX)のうち「振幅が最も大きい軸振れ成分(CX)」を、低減処理において低減することができる。これにより、シャフト(20)の回転角の変化に応じて振幅が変化するように第2信号(S2)を精度良く生成することができるので、第2信号(S2)に基づくシャフト(20)の回転角の検出を正確に行うことができる。
【0137】
また、実施形態の駆動システム(10)では、低減処理において低減される軸振れ成分(CX)(特定周波数成分)の周波数は、第1信号(S1)に含まれる周波数成分でありシャフト(20)の回転角の変化に応じた第1周波数成分(C1)の周波数よりも低い。
【0138】
上記の構成によれば、第1信号(S1)に重畳され得る複数の軸振れ成分(CX)のうち「第1周波数成分(C1)の周波数よりも低い周波数の軸振れ成分(CX)」を、低減処理において低減することができる。これにより、第1周波数成分(C1)の周波数以上の周波数の周波数成分(シャフト(20)の回転角の変化を検出するために利用され得る周波数成分)が低減処理において低減されないようにすることができる。その結果、シャフト(20)の回転角の変化に応じて振幅が変化するように第2信号(S2)を精度良く生成することができるので、第2信号(S2)に基づくシャフト(20)の回転角の検出を正確に行うことができる。
【0139】
また、実施形態の駆動システム(10)では、低減処理は、第1信号(S1)に含まれる軸振れ周波数帯域(BX)(特定周波数帯域)内の周波数成分を低減するための処理である。軸振れ周波数帯域(BX)(特定周波数帯域)は、軸振れ成分(CX)(特定周波数成分)の周波数を含む周波数帯域であり、第1周波数成分(C1)の周波数よりも低い周波数帯域である。
【0140】
上記の構成によれば、第1周波数成分(C1)の周波数以上の周波数の周波数成分(シャフト(20)の回転角の変化を検出するために利用され得る周波数成分)が低減処理において低減されないようにすることができる。これにより、シャフト(20)の回転角の変化に応じて振幅が変化するように第2信号(S2)を精度良く生成することができるので、第2信号(S2)に基づくシャフト(20)の回転角の検出を正確に行うことができる。
【0141】
また、実施形態の駆動システム(10)では、シャフト(20)は、被測定部(25)を有する。回転角センサ(60)は、被測定部(25)との距離に応じて振幅が変化する信号を出力するギャップセンサである、被測定部(25)は、シャフト(20)の回転角の変化に応じて回転角センサ(60)との距離が変化するように構成される。第1周波数成分(C1)は、駆動部(12)により回転駆動されるシャフト(20)の回転周波数と、被測定部(25)の形状とに応じた周波数である。
【0142】
上記の構成では、シャフト(20)の回転角が変化すると、シャフト(20)の被測定部(25)と回転角検出器(60)との間の距離が変化し、その結果、回転角検出器(60)から出力される第1信号(S1)が変化する。これにより、回転角検出器(60)から出力される第1信号(S1)を「シャフト(20)の回転角の変化に応じて振幅が変化する信号」にすることができる。
【0143】
また、実施形態の駆動システム(10)では、信号処理部(80)は、第1処理部(81)と第2処理部(82)とを有する。第1処理部(81)は、第1信号(S1)に基づいて軸振れ成分(CX)(特定周波数成分)に応じた閾値(Th1)を生成する。第2処理部(82)は、第1信号(S1)の振幅と第1処理部(81)により生成された閾値(Th1)とを比較することで、第2信号(S2)を生成する。
【0144】
上記の構成によれば、第1信号(S1)の振幅と軸振れ成分(CX)に応じた閾値(Th1)とを比較することにより、その比較により得られる「軸振れ成分(CX)が低減された信号」を第2信号(S2)として利用することができる。
【0145】
また、実施形態の駆動システム(10)では、第1処理部(81)は、第1信号(S1)に含まれる軸振れ周波数帯域(BX)(特定周波数帯域)内の周波数成分を抽出することで、閾値(Th1)を生成する。
【0146】
上記の構成によれば、第1信号(S1)から軸振れ周波数帯域(BX)内の周波数成分を抽出することで、その抽出された周波数成分を「軸振れ成分(CX)に応じた閾値(Th1)」として利用することができる。
【0147】
(実施形態の変形例1)
実施形態の変形例1の駆動システム(10)は、信号処理部(80)の構成が実施形態の駆動システム(10)と異なり、その他の構成は、実施形態の駆動システム(10)の構成と同様である。
【0148】
図13は、実施形態の変形例1における信号処理部(80)の構成を例示する。実施形態の変形例1では、第1処理部(81)は、第1抽出処理と第2抽出処理とを選択的に行う。第1抽出処理は、第1信号(S1)に含まれる軸振れ周波数帯域(BX)(特定周波数帯域)内の周波数成分を抽出することで閾値(Th1)を生成する処理である。第2抽出処理は、第1信号(S1)から直流成分を抽出することで閾値(Th1)を生成する処理である。
【0149】
図13に示すように、実施形態の変形例1では、第1処理部(81)は、第1ローパスフィルタ(811)と、第2ローパスフィルタ(812)と、スイッチ(813)とにより構成される。
【0150】
第1ローパスフィルタ(811)は、第1信号(S1)に含まれる軸振れ周波数帯域(BX)内の周波数成分を通過させ、第1信号(S1)に含まれる軸振れ周波数帯域(BX)を除く他の周波数帯域の周波数成分を低減する。第1ローパスフィルタ(811)を通過した第1信号(S1)である第1ローパス信号(SL1)は、軸振れ成分(CX)の周波数に応じた周波数で変化する。第1ローパスフィルタ(811)による処理は、第1抽出処理に対応する。
【0151】
第2ローパスフィルタ(812)は、第1信号(S1)に含まれる直流成分を通過させ、第1信号(S1)に含まれる残りの周波数成分を低減する。第2ローパスフィルタ(812)を通過した第1信号(S1)である第2ローパス信号(SL2)は、一定値(またはほぼ一定値)である。第2ローパスフィルタ(812)による処理は、第2抽出処理に対応する。
【0152】
例えば、第2ローパスフィルタ(812)のカットオフ周波数は、第1ローパスフィルタ(811)のカットオフ周波数よりも低い。第2ローパスフィルタ(812)は、第1信号(S1)に含まれる「軸振れ周波数帯域(BX)の上限周波数よりも低い上限周波数の周波数帯域であり直流成分を含む周波数帯域内の周波数成分」を抽出する。
【0153】
スイッチ(813)は、「第1ローパスフィルタ(811)から出力された第1ローパス信号(SL1)」および「第2ローパスフィルタ(812)から出力された第2ローパスフィルタ(812)」のいずれか1つを選択し、その選択された信号を閾値(Th1)として第2処理部(82)に供給する。スイッチ(813)による信号の選択は、制御部(90)により制御されてもよい。
【0154】
例えば、スイッチ(813)による信号の選択は、ターボ圧縮機(1)に設けられたモータ(この例ではベアリングレスモータ(30))の回転速度などの駆動システム(10)の運転状況に応じて行われる。具体的には、スイッチ(813)は、ターボ圧縮機(1)に設けられたモータの回転が高速回転(例えば回転周波数がサージングが発生し得る100Hzよりも高い回転)である場合に、第1ローパス信号(SL1)を閾値(Th1)として選択し、ターボ圧縮機(1)に設けられたモータの回転が低速回転(例えば回転周波数がサージングが発生しない100Hz以下の回転)である場合に、第2ローパス信号(SL2)を閾値(Th1)として選択する。
【0155】
以上のように、実施形態の変形例1の駆動システム(10)では、駆動システム(10)の運転状況(例えばターボ圧縮機(1)に設けられたモータの回転速度)に応じて閾値(Th1)を適切に切り換えることができる。
【0156】
(実施形態の変形例2)
実施形態の変形例2の駆動システム(10)は、信号処理部(80)の構成が実施形態の駆動システム(10)と異なり、その他の構成は、実施形態の駆動システム(10)の構成と同様である。
【0157】
図14は、実施形態の変形例2における信号処理部(80)の構成を例示する。実施形態の変形例2では、第1処理部(81)は、所定期間内における第1信号(S1)の振幅(具体的には所定期間内における第1信号(S1)の振幅の平均値)に基づいて導出された値を閾値(Th1)に設定する処理を繰り返し行うことで、閾値(Th1)を生成する。
【0158】
図14に示すように、実施形態の変形例2では、第1処理部(81)は、抽出回路(830)により構成される。抽出回路(830)は、第1期間(T1)毎に、その第1期間(T1)の直前の第2期間(T2)における第1信号(S1)の平均値を導出し、その導出された平均値を閾値(Th1)として第2処理部(82)に供給する。
【0159】
図15に示すように、抽出回路(830)は、第k番目の第1期間(T1
(k))において、その第1期間(T1
(k))の直前の第k番目の第2期間(T2
(k))における第1信号(S1)の平均値を導出し、その導出された平均値を第k番目の閾値(Th1
(k))として第2処理部(82)に供給する。第k番目の閾値(Th1
(k))は、第k番目の第1期間(T1
(k))の直後の第k+1番目の第1期間(T1
(k+1))において利用される。このような処理が第1期間(T1)毎に繰り返し行われることで、軸振れ成分(CX)(特定周波数成分)の周波数に対応する周波数で閾値(Th1)が変化する。
【0160】
例えば、第1期間(T1)の時間長さは、第1信号(S1)の1/4周期に対応する時間長さに設定され、第2期間(T2)の時間長さは、第1信号(S1)の1周期に対応する時間長さに設定される。
【0161】
以上のように、実施形態の変形例2の駆動システム(10)では、「所定期間内における第1信号(S1)の振幅に基づいて導出された値を閾値(Th1)に設定する処理」を繰り返し行うことで、軸振れ成分(CX)に応じて閾値(Th1)を変化させることができる。これにより、軸振れ成分(CX)に応じた閾値(Th1)を生成することができる。
【0162】
(実施形態の変形例3)
実施形態の変形例3の駆動システム(10)は、信号処理部(80)の構成が実施形態の駆動システム(10)と異なり、その他の構成は、実施形態の駆動システム(10)の構成と同様である。
【0163】
図16は、実施形態の変形例3における信号処理部(80)の構成を例示する。実施形態の変形例3では、第1処理部(81)は、所定期間内における第1信号(S1)の振幅(具体的には所定期間内における第1信号(S1)の振幅の最大値)に基づいて導出された値を閾値(Th1)に設定する処理を繰り返し行うことで、閾値(Th1)を生成する。
【0164】
図16に示すように、実施形態の変形例3では、第1処理部(81)は、ピークホールド回路(840)と、減算回路(841)とにより構成される。
【0165】
図17に示すように、ピークホールド回路(840)は、所定期間毎に到来する第1信号(S1)の振幅の最大値である「ピーク値」を検出して保持し、その保持されたピーク値を示すピーク信号(SP)を出力する。ピーク信号(SP)のレベル(振幅値)は、ピーク値に対応する。減算回路(841)は、ピークホールド回路(840)から出力されたピーク信号(SP)のレベルを所定量だけ低下させる。例えば、所定量は、軸振れ成分(CX)(特定周波数成分)が重畳されていない第1信号(S1)の振幅の最大値と最小値の差の1/2に設定される。減算回路(841)の出力信号は、閾値(Th1)として第2処理部(82)に供給される。このような処理が所定期間毎に繰り返し行われることで、軸振れ成分(CX)(特定周波数成分)の周波数に対応する周波数で閾値(Th1)が変化する。
【0166】
以上のように、実施形態の変形例3の駆動システム(10)では、実施形態の変形例2の駆動システム(10)と同様に、「所定期間内における第1信号(S1)の振幅に基づいて導出された値を閾値(Th1)に設定する処理」を繰り返し行うことで、軸振れ成分(CX)に応じて閾値(Th1)を変化させることができる。これにより、軸振れ成分(CX)に応じた閾値(Th1)を生成することができる。
【0167】
(実施形態の変形例4)
実施形態の変形例4の駆動システム(10)は、信号処理部(80)の構成が実施形態の駆動システム(10)と異なり、その他の構成は、実施形態の駆動システム(10)の構成と同様である。
【0168】
図18は、実施形態の変形例4における信号処理部(80)の構成を例示する。実施形態の変形例4では、第1処理部(81)は、所定期間内における第1信号(S1)の振幅(具体的には所定期間内における第1信号(S1)の振幅の最小値)に基づいて導出された値を閾値(Th1)に設定する処理を繰り返し行うことで、閾値(Th1)を生成する。
【0169】
図18に示すように、実施形態の変形例4では、第1処理部(81)は、ボトムホールド回路(850)と、加算回路(851)とにより構成される。
【0170】
図19に示すように、ボトムホールド回路(850)は、所定期間毎に到来する第1信号(S1)の振幅の最小値である「ボトム値」を検出して保持し、その保持されたボトム値を示すボトム信号(SB)を出力する。ボトム信号(SB)のレベル(振幅値)は、ボトム値に対応する。加算回路(851)は、ボトムホールド回路(850)から出力されたボトム信号(SB)のレベルを所定量だけ上昇させる。例えば、所定量は、軸振れ成分(CX)(特定周波数成分)が重畳されていない第1信号(S1)の振幅の最大値と最小値の差の1/2に設定される。加算回路(851)の出力信号は、閾値(Th1)として第2処理部(82)に供給される。このような処理が所定期間毎に繰り返し行われることで、軸振れ成分(CX)(特定周波数成分)の周波数に対応する周波数で閾値(Th1)が変化する。
【0171】
以上のように、実施形態の変形例4の駆動システム(10)では、実施形態の変形例2の駆動システム(10)と同様に、「所定期間内における第1信号(S1)の振幅に基づいて導出された値を閾値(Th1)に設定する処理」を繰り返し行うことで、軸振れ成分(CX)に応じて閾値(Th1)を変化させることができる。これにより、軸振れ成分(CX)に応じた閾値(Th1)を生成することができる。
【0172】
(実施形態の変形例5)
実施形態の変形例5の駆動システム(10)は、信号処理部(80)の構成が実施形態の駆動システム(10)と異なり、その他の構成は、実施形態の駆動システム(10)の構成と同様である。
【0173】
図20は、実施形態の変形例5における信号処理部(80)の構成を例示する。実施形態の変形例5では、第1処理部(81)は、所定期間内における第1信号(S1)の振幅(具体的には所定期間内における第1信号(S1)の振幅の最大値および最小値)に基づいて導出された値を閾値(Th1)に設定する処理を繰り返し行うことで、閾値(Th1)を生成する。
【0174】
図20に示すように、実施形態の変形例5では、第1処理部(81)は、ピークホールド回路(840)と、ボトムホールド回路(850)と、平均回路(860)とにより構成される。
【0175】
図21に示すように、平均回路(860)は、「ピークホールド回路(840)から出力されたピーク信号(SP)のレベル」と「ボトムホールド回路(850)から出力されたボトム信号(SB)のレベル」との平均値を導出し、その導出された平均値を閾値(Th1)として第2処理部(82)に供給する。このような処理が所定期間毎に繰り返し行われることで、軸振れ成分(CX)(特定周波数成分)の周波数に対応する周波数で閾値(Th1)が変化する。
【0176】
以上のように、実施形態の変形例5の駆動システム(10)では、実施形態の変形例2の駆動システム(10)と同様に、「所定期間内における第1信号(S1)の振幅に基づいて導出された値を閾値(Th1)に設定する処理」を繰り返し行うことで、軸振れ成分(CX)に応じて閾値(Th1)を変化させることができる。これにより、軸振れ成分(CX)に応じた閾値(Th1)を生成することができる。
【0177】
(実施形態の変形例6)
実施形態の変形例6の駆動システム(10)は、信号処理部(80)の構成が実施形態の駆動システム(10)と異なり、その他の構成は、実施形態の駆動システム(10)の構成と同様である。
【0178】
図22は、実施形態の変形例6における信号処理部(80)の構成を例示する。実施形態の変形例5では、第1処理部(81)は、第1信号(S1)に含まれる軸振れ成分(CX)(特定周波数成分)を低減する。第2処理部(82)は、第1処理部(81)により得られた信号と閾値(Th1)とを比較することで、第2信号(S2)を生成する。
【0179】
図22に示すように、実施形態の変形例6では、第1処理部(81)は、ハイパスフィルタ(870)により構成される。第2処理部(82)は、比較器(820)により構成される。ハイパスフィルタ(870)は、第1信号(S1)に含まれる軸振れ周波数帯域(BX)(特定周波数帯域)内の周波数成分を低減させ、第1信号(S1)に含まれる軸振れ周波数帯域(BX)を除く他の周波数帯域の周波数成分を通過させる。ハイパスフィルタ(870)を通過した第1信号(S1)であるハイパス信号(SH)は、第2処理部(82)に供給される。
【0180】
また、実施形態の変形例6では、第2処理部(82)は、ハイパス信号(SH)と閾値(Th1)とを入力する比較器(820)により構成される。比較器(820)の出力信号は、第2信号(S2)として出力される。閾値(Th1)は、一定値(固定値)である。
【0181】
図23に示すように、比較器(820)は、ハイパス信号(SH)と閾値(Th1)とを比較する。比較器(820)は、ハイパス信号(SH)の振幅が閾値(Th1)を上回ると、第2信号(S2)の信号レベルをローレベルからハイレベルに遷移させ、ハイパス信号(SH)の振幅が閾値(Th1)を下回ると、第2信号(S2)の信号レベルをハイレベルからローレベルに遷移させる。これにより、軸振れ成分(CX)(特定周波数成分)が低減された第2信号(S2)が生成される。この例では、ハイパス信号(SH)は、アナログ信号であり、第2信号(S2)は、パルス信号(矩形波信号)である。
【0182】
以上のように、実施形態の変形例6の駆動システム(10)では、軸振れ成分(CX)が低減された第1信号(S1)の振幅と閾値(Th1)とを比較することにより、その比較により得られる「軸振れ成分(CX)が低減された信号」を第2信号(S2)として利用することができる。
【0183】
(その他の実施形態)
以上の説明では、駆動システム(10)がベアリングレスモータ(30)と磁気軸受(40)(具体的にはラジアル磁気軸受(41)とスラスト磁気軸受(42))とを備える場合を例に挙げたが、これに限定されない。
【0184】
例えば、駆動システム(10)は、ラジアル磁気軸受(41)の代わりに、もう1つのベアリングレスモータ(30)を備えてもよい。このベアリングレスモータ(30)の支持巻線(35)は、支持部(11)として機能する。このベアリングレスモータ(30)の駆動巻線(36)は、駆動部(12)として機能する。
【0185】
または、駆動システム(10)は、ベアリングレスモータ(30)の代わりに、もう1つのラジアル磁気軸受(41)と、シャフト(20)の回転駆動のみを行うモータとを備えてもよい。このラジアル磁気軸受(41)は、支持部(11)として機能する。このモータは、駆動部(12)として機能する。
【0186】
また、以上の説明では、第1段差部(201)が凹部である場合を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、第1段差部(201)は、凸部であってもよい。第2段差部(202)についても同様である。
【0187】
また、以上の説明では、ギャップセンサが渦電流式のギャップセンサである場合を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、ギャップセンサは、超音波式、光学式などの他の方式のギャップセンサであってもよい。また、シャフト(20)の被測定部(25)に磁性体が含まれている場合、回転角センサ(60)は、ホールセンサやMRセンサなどの磁気センサであってもよい。
【0188】
また、実施形態の説明では、シャフト(20)の軸方向において「複数の第1段差部(201)が設けられた第1軸部」と「第2段差部(202)が設けられた第2軸部」とが隣り合う場合を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、第2軸部は、第1軸部から離れた位置に配置されてもよい。
【0189】
また、以上の説明において、スラスト磁気軸受(42)は、前側スラスト磁気軸受と後側スラスト磁気軸受とに分けられてもよい。この場合、前側スラスト磁気軸受は、シャフト(20)の軸方向におけるインペラ側(前側)に配置され、後側スラスト磁気軸受は、シャフト(20)の軸方向におけるインペラ側とは反対側(後側)に配置される。
【0190】
また、以上の説明において、センサレス方式(位置センサ(70)を使用せずにシャフト(20)の位置検出を行う方式)の場合、位置センサ(70)は、省略されてもよい。
【0191】
また、以上の説明では、インペラ(3)がシャフト(20)の軸方向における前側の端部に配置され、インペラ(3)から軸方向における後側に向かって、ラジアルタッチダウン軸受(51)、ベアリングレスモータ(30)、ラジアル磁気軸受(41)、ラジアルスラストタッチダウン軸受(52)、スラスト磁気軸受(42)の順に配置される場合を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、スラスト磁気軸受(42)は、軸方向におけるインペラ側(前側)に配置されてもよい。その他の構成部品も、同様に、任意に配置されてよい。
【0192】
また、以上の説明において、インペラ(3)は、1つに限定されるものではなく、2つ以上あってもよい。また、インペラ(3)の取付位置は、シャフト(20)の前端部に限定されるものではなく、シャフト(20)の後端部や、シャフト(20)の端部以外であってもよい。例えば、2つのインペラ(3)がシャフト(20)の前端部に連続して取り付けられてもよいし、2つのインペラ(3)がシャフト(20)の前端部と後端部とに1つずつ取り付けられてもよい。
【0193】
また、以上の説明において、ベアリングレスモータ(30)は、シャフト(20)に対して2つ以上あってもよい。また、ローパスフィルタやハイパスフィルタは、バンドパスフィルタやノッチフィルタであってもよい。
【0194】
また、以上の説明において、特定周波数成分が軸振れ成分(CX)である場合を例に挙げたが、これに限定されない。特定周波数成分の他の例としては、回転角センサ(60)(例えばギャップセンサ)の外部の磁界や電界の変化に起因して回転角センサ(60)の出力に生じるノイズに対応する周波数成分、支持部(11)や駆動部(12)を駆動するインバータ(図示省略)により生じるノイズ(例えばコモンモードノイズ)に起因して回転角センサ(60)の出力に生じるノイズに対応する周波数成分などが挙げられる。なお、上記のインバータは、例えば、制御部(90)の一部を構成する電源部に含まれる。
【0195】
また、以上の説明において、信号処理部(80)は、専用回路により構成されてもよい。または、信号処理部(80)は、制御部(90)と同様に、プロセッサと、プロセッサと電気的に接続されてプロセッサを動作させるためのプログラムを記憶するメモリとにより構成されてもよい。例えば、信号処理部(80)は、制御部(90)に含まれてもよい。言い換えると、信号処理部(80)は、制御部(90)の機能の一部として実現されてもよい。
【0196】
また、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0197】
以上説明したように、本開示は、駆動システム、ターボ圧縮機、冷凍装置として有用である。
【符号の説明】
【0198】
1 ターボ圧縮機
2 ケーシング
3 インペラ
10 駆動システム
11 支持部
12 駆動部
20 シャフト
25 被測定部
201 第1段差部
202 第2段差部
30 ベアリングレスモータ
31 ロータ
32 ステータ
35 支持巻線
36 駆動巻線
40 磁気軸受
41 ラジアル磁気軸受
42 スラスト磁気軸受
50 タッチダウン軸受
60 回転角センサ(回転角検出器)
65 回転基準センサ
70 位置センサ
71 ラジアル位置センサ
72 スラスト位置センサ
80 信号処理部
81 第1処理部
82 第2処理部
90 制御部