IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧

特開2024-146891回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置
<>
  • 特開-回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置 図1
  • 特開-回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置 図2
  • 特開-回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置 図3
  • 特開-回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置 図4
  • 特開-回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置 図5
  • 特開-回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置 図6
  • 特開-回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置 図7
  • 特開-回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置 図8
  • 特開-回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置 図9
  • 特開-回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置 図10
  • 特開-回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置 図11
  • 特開-回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置 図12
  • 特開-回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146891
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 23/02 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
F04C23/02 J
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054059
(22)【出願日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2023057770
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 光
(72)【発明者】
【氏名】片山 達也
(72)【発明者】
【氏名】外島 隆造
(72)【発明者】
【氏名】川江 ありさ
(72)【発明者】
【氏名】上野 広道
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 僚也
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA04
3H129AA11
3H129AA13
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB24
3H129CC16
(57)【要約】
【課題】回転式圧縮機の高速運転時における振動を低減する。
【解決手段】回転式圧縮機(10)では、モータ(21)が、圧縮機構(30)の上方に配置され、圧縮機構と駆動軸(25)を介して連結される。圧縮機構は、上側に位置する第1シリンダ(40)と、下側に位置する第2シリンダ(50)と、第1シリンダ内に収容された第1偏心部(44)と、第2シリンダ内に収容された第2偏心部(54)とを有する。ロータ(23)の下側端部には第1バランスウエイト(71)、上側端部には第2バランスウエイト(72)がそれぞれ設けられる。第2バランスウエイトの質量および偏心距離の積の値は、第1バランスウエイトの質量および偏心距離の積の値よりも小さい。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を吸入して圧縮する圧縮機構(30)と、該圧縮機構(30)を駆動する駆動軸(25)と、該駆動軸(25)に連結されたロータ(23)を有するモータ(21)と、前記ロータ(23)に設けられたバランサ(70)と、を備え、
前記圧縮機構(30)は、前記駆動軸(25)の軸心(AC)に沿う軸方向に並ぶように前記ロータ(23)側から順に設けられた第1シリンダ(40)および第2シリンダ(50)と、前記第1シリンダ(40)の内部に収容された第1偏心部(44)と、前記第2シリンダ(50)の内部に収容された第2偏心部(54)と、を有し、
前記バランサ(70)は、前記ロータ(23)の軸方向における前記圧縮機構(30)側の一端部に配置された第1バランスウエイト(71)と、前記ロータ(23)の軸方向における他端部に配置された第2バランスウエイト(72)と、を有し、
前記第1偏心部(44)および前記第1バランスウエイト(71)は前記駆動軸(25)の軸心(AC)に対して一側に偏心し、前記第2偏心部(54)および前記第2バランスウエイト(72)は前記駆動軸(25)の軸心(AC)に対して他側に偏心し、
前記駆動軸(25)の回転に連動して、前記第1偏心部(44)が前記第1シリンダ(40)の内部で偏心回転すると共に、前記第2偏心部(54)が前記第2シリンダ(50)の内部で偏心回転する回転式圧縮機であって、
前記第1バランスウエイト(71)の質量をm1、前記第1バランスウエイト(71)の重心(GC1)の前記駆動軸(25)の軸心(AC)からの偏心距離をr1、前記第2バランスウエイト(72)の質量をm2、前記第2バランスウエイト(72)の重心(GC2)の前記駆動軸(25)の軸心(AC)からの偏心距離をr2としたとき、
m1×r1>m2×r2
の関係を満たす、回転式圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転式圧縮機において、
前記駆動軸(25)の最高回転数は、120rps以上である、回転式圧縮機。
【請求項3】
請求項2に記載の回転式圧縮機において、
前記第1偏心部(44)の質量をm3、前記第1偏心部(44)の重心(GC3)の前記駆動軸(25)の軸心(AC)からの偏心距離をr3、前記第2偏心部(54)の質量をm4、前記第2偏心部(54)の重心(GC4)の前記駆動軸(25)の軸心(AC)からの偏心距離をr4、前記駆動軸(25)の最高回転数をNmax[rps]としたとき、
1.2-0.002×Nmax≦(m2×r2+m4×r4)/(m1×r1+m3×r3)≦0.98
の関係を満たす、回転式圧縮機。
【請求項4】
請求項3に記載の回転式圧縮機において、
0.88≦(m2×r2+m4×r4)/(m1×r1+m3×r3)
の関係を満たす、回転式圧縮機。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の回転式圧縮機において、
前記第1シリンダ(40)の内周面と前記第1偏心部(44)との間に形成される第1圧縮室(41s)の容積と、前記第2シリンダ(50)の内周面と前記第2偏心部(54)との間に形成される第2圧縮室(51s)の容積と、の総和をVcc[cc]、前記駆動軸(25)の前記ロータ(23)に連結される主軸部(26)の直径をΦ[mm]としたとき、
Vcc/Φ≧3×10-4
の関係を満たす、回転式圧縮機。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の回転式圧縮機において、
前記駆動軸(25)の前記ロータ(23)に連結される主軸部(26)の直径は、16mm以下であり、
前記第1偏心部(44)の質量をm3[g]、前記第1偏心部(44)の重心(GC3)の前記駆動軸(25)の軸心(AC)からの偏心距離をr3[mm]、前記第2偏心部(54)の質量をm4[g]、前記第2偏心部(54)の重心(GC4)の前記駆動軸(25)の軸心(AC)からの偏心距離をr4[mm]としたとき、
(m3×r3+m4×r4)/2≧600
の関係を満たす、回転式圧縮機。
【請求項7】
冷凍サイクルを行う冷媒回路(1a)を備える冷凍装置であって、
前記冷媒回路(1a)は、請求項1~4のいずれか1項に記載の回転式圧縮機(10)を含む、冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転式圧縮機として、二気筒式のロータリ圧縮機が知られている。二気筒式のロータリ圧縮機は、ケーシングの内部に、モータと、駆動軸と、圧縮機構とを収容し、駆動軸の軸心に沿う軸方向が鉛直方向となるように構成される縦型の圧縮機である。モータは、圧縮機構に対して上方に配置される。駆動軸は、モータを構成するロータと圧縮機構とを連結する。
【0003】
圧縮機構は、上下に並ぶように設けられた2つのシリンダと、各シリンダに収容された偏心部とを有する。2つの偏心部は、駆動軸の軸心に対して周方向に180度の位相差をもって偏心する。各シリンダの内部は、ピストンから径方向における外側に延びるブレードによって高圧室と低圧室とに区画される。各偏心部は、駆動軸の回転に伴い、シリンダの内部で偏心回転する。その動作により、圧縮機構は、低圧室に流体を吸入し、その低圧室を高圧室に遷移させ、高圧室で流体を圧縮する。
【0004】
二気筒式のロータリ圧縮機において、モータを構成するロータには、圧縮機構における偏心回転運動に伴うアンバランスを平衡させるためのバランサが設けられる。バランサは、ロータの上下両面に設けられた2つのバランスウエイトを含んで構成される。このようなバランサ付きのロータリ圧縮機の一例は、特許文献1に開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-180203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したようなバランサ付きのロータリ圧縮機では、静止時のバランスが釣り合う構成とするのが一般的である。具体的には、下側バランスウエイトが上側偏心部と同じ方向に偏心し、上側バランスウエイトが下側偏心部と同じ方向に偏心する構成を採用し、上側偏心部の質量および偏心量の積の値と下側偏心部の質量および偏心量の積の値とが同じになり、上側バランスウエイトの質量および偏心距離の積の値と下側バランスウエイトの質量および偏心距離の積の値とが同じになるように設計される。
【0007】
しかしながら、ロータリ圧縮機の運転時には、シリンダの内部で圧縮された流体の圧力が各偏心部に作用し、それによる圧縮荷重が駆動軸にかかって、駆動軸がわずかに撓む。駆動軸が撓むと、ロータが予め設定された回転中心から外れる。そうなると、ロータの遠心力が上側バランスウエイトに作用する慣性力と合わさるように作用し、駆動軸の撓みを助長する。その結果、高速運転時には、圧縮機構(2つの偏心部)とバランサ(2つのバランスウエイト)との静バランスが大きく崩れて、振動が増大する。
【0008】
本開示の目的は、回転式圧縮機の高速運転時における振動を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様は、回転式圧縮機(10)を対象とする。第1の態様に係る回転式圧縮機(10)は、流体を吸入して圧縮する圧縮機構(30)と、該圧縮機構(30)を駆動する駆動軸(25)と、該駆動軸(25)に連結されたロータ(23)を有するモータ(21)と、前記ロータ(23)に設けられたバランサ(70)とを備える。前記圧縮機構(30)は、前記駆動軸(25)の軸心(AC)に沿う軸方向に並ぶように前記ロータ(23)側から順に設けられた第1シリンダ(40)および第2シリンダ(50)と、前記第1シリンダ(40)の内部に収容された第1偏心部(44)と、前記第2シリンダ(50)の内部に収容された第2偏心部(54)とを有する。前記バランサ(70)は、前記ロータ(23)の軸方向における前記圧縮機構(30)側の一端部に配置された第1バランスウエイト(71)と、前記ロータ(23)の軸方向における他端部に配置された第2バランスウエイト(72)とを有する。前記第1偏心部(44)および前記第1バランスウエイト(71)は前記駆動軸(25)の軸心(AC)に対して一側に偏心し、前記第2偏心部(54)および前記第2バランスウエイト(72)は前記駆動軸(25)の軸心(AC)に対して他側に偏心する。当該回転式圧縮機(10)では、前記駆動軸(25)の回転に連動して、前記第1偏心部(44)が前記第1シリンダ(40)の内部で偏心回転すると共に、前記第2偏心部(54)が前記第2シリンダ(50)の内部で偏心回転する。そして、前記第1バランスウエイト(71)の質量をm1、前記第1バランスウエイト(71)の重心(GC1)の前記駆動軸(25)の軸心(AC)からの偏心距離をr1、前記第2バランスウエイト(72)の質量をm2、前記第2バランスウエイト(72)の重心(GC2)の前記駆動軸(25)の軸心(AC)からの偏心距離をr2としたとき、m1×r1>m2×r2の関係を満たす。
【0010】
第1の態様では、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)が、第1バランスウエイト(71)の質量および偏心距離の積の値(m1×r1)よりも小さい。そのことで、回転式圧縮機(10)の運転時において、駆動軸(25)が撓んだときに、所定の回転中心から外れたロータ(23)の遠心力に合わさるように作用する第2バランスウエイト(72)の慣性力を小さくし、駆動軸(25)の撓みが助長されるのを抑制できる。これにより、回転式圧縮機(10)の高速運転時における振動を低減できる。
【0011】
本開示の第2の態様は、第1の態様の回転式圧縮機(10)において、前記駆動軸(25)の最高回転数が、120rps以上である、回転式圧縮機(10)である。
【0012】
第2の態様では、駆動軸(25)の最高回転数が120rps以上であって比較的高い。駆動軸(25)の回転が高速化するほど、駆動軸(25)の撓みに起因して第1偏心部(44)および第2偏心部(54)と第1バランスウエイト(71)および第2バランスウエイト(72)との静バランスが大きく崩れやすく、回転式圧縮機(10)の振動が大きくなる傾向にある。よって、このように比較的高い回転数で運転される回転式圧縮機(10)において、本開示の技術は有効である。
【0013】
本開示の第3の態様は、第2の態様の回転式圧縮機(10)において、前記第1偏心部(44)の質量をm3、前記第1偏心部(44)の重心(GC3)の前記駆動軸(25)の軸心(AC)からの偏心距離をr3、前記第2偏心部(54)の質量をm4、前記第2偏心部(54)の重心(GC4)の前記駆動軸(25)の軸心(AC)からの偏心距離をr4、前記駆動軸(25)の最高回転数をNmax[rps]としたとき、1.2-0.002×Nmax≦(m2×r2+m4×r4)/(m1×r1+m3×r3)≦0.98の関係を満たす、回転式圧縮機(10)である。
【0014】
第3の態様では、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値と第2偏心部(54)の質量および偏心距離の積の値との合算値(m2×r2+m4×r4)を、第1バランスウエイト(71)の質量および偏心距離の積の値と第1偏心部(44)の質量および偏心距離の積の値との合算値(m1×r1+m3×r3)で除した静バランスの関係値が、1.2-0.002×Nmax(最高回転数)以上且つ0.98以下である。これによれば、駆動軸(25)の最高回転数に応じて、回転式圧縮機(10)の高速運転時における振動を低減できる。
【0015】
本開示の第4の態様は、第3の態様の回転式圧縮機(10)において、0.88≦(m2×r2+m4×r4)/(m1×r1+m3×r3)の関係を満たす、回転式圧縮機(10)である。
【0016】
第4の態様では、静バランスの関係値が0.88以上である。静バランスの関係値が0.88よりも小さいと、回転式圧縮機(10)の高速運転時における振動を低減する効果が、駆動軸(25)の最高回転数に比較的近い側の回転数域でしか期待できない。これに対して、静バランスの関係値が0.88以上であると、駆動軸(25)の最高回転数から比較的広い回転数域に亘って回転式圧縮機(10)の振動を低減できる。
【0017】
本開示の第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つの回転式圧縮機において、前記第1シリンダ(40)の内周面と前記第1偏心部(44)との間に形成される第1圧縮室(41s)の容積と、前記第2シリンダ(50)の内周面と前記第2偏心部(54)との間に形成される第2圧縮室(51s)の容積と、の総和をVcc[cc]、前記駆動軸(25)の前記ロータ(23)に連結される主軸部(26)の直径をΦ[mm]としたとき、Vcc/Φ≧3×10-4の関係を満たす、回転式圧縮機である。
【0018】
第5の態様では、第1圧縮室(41s)の容積と第2圧縮室(51s)の容積との総和Vccを駆動軸(25)の主軸部(26)の直径Φで除した、主軸部(26)の撓み易さを示す指標値が3×10-4以上である。これによれば、回転式圧縮機(10)の運転時において、第1偏心部(44)および第2偏心部(54)と第1バランスウエイト(71)および第2バランスウエイト(72)との静バランスがとれるように主軸部(26)を好適に撓ませることが可能になる。
【0019】
本開示の第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか1つの回転式圧縮機(10)において、前記駆動軸(25)の前記ロータ(23)に連結される主軸部(26)の直径が、16mm以下である、回転式圧縮機(10)である。そして、前記第1偏心部(44)の質量をm3[g]、前記第1偏心部(44)の重心(GC3)の前記駆動軸(25)の軸心(AC)からの偏心距離をr3[mm]、前記第2偏心部(54)の質量をm4[g]、前記第2偏心部(54)の重心(GC4)の前記駆動軸(25)の軸心(AC)からの偏心距離をr4[mm]としたとき、(m3×r3+m4×r4)/2≧600の関係を満たす。
【0020】
第6の態様では、駆動軸(25)の主軸部(26)の直径が16mm以下であって比較的小さく、且つ第1偏心部(44)および第2偏心部(54)における質量および偏心距離の積の値の平均値が600以上であって比較的大きい。
【0021】
駆動軸(25)の撓みに起因する回転式圧縮機(10)の高速運転時における振動を抑制する手立てとしては、主軸部(26)の直径を大きくして駆動軸(25)の剛性を高めたり、第1偏心部(44)および第2偏心部(54)の質量や偏心距離、ロータ(23)を小さくしたりすることが考えられる。しかし、前者の方法を採ると、軸受損失などの機械的損失が増大し、回転式圧縮機(10)の効率が低下する。また、後者の方法を採ると、回転式圧縮機(10)の容量が制限される。
【0022】
これに対して、駆動軸(25)の主軸部(26)の直径が16mm以下であると、軸受損失などの機械的損失を低減でき、回転式圧縮機(10)を高効率化できる。また、第1偏心部(44)および第2偏心部(54)における質量および偏心距離の積の値の平均値が600以上であると、回転式圧縮機(10)の容量を比較的大きく確保できる。よって、高速運転時における振動が小さく、高効率かつ大容量な回転式圧縮機(10)を実現できる。
【0023】
本開示の第7の態様は、冷凍装置(1)を対象とする。第7の態様に係る冷凍装置(1)は、冷凍サイクルを行う冷媒回路(1a)を備える。前記冷媒回路(1a)は、第1~第6の態様のいずれか1つの回転式圧縮機(10)を含む。
【0024】
第7の態様では、本開示の技術に係る回転式圧縮機(10)が冷媒回路(1a)に用いられる。回転式圧縮機(10)では、高速運転時における振動が低減される。当該回転式圧縮機(10)を冷媒回路(1a)に用いると、低振動および低騒音な冷凍サイクルの実行に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施形態の冷凍装置の構成を例示する冷媒回路図である。
図2図2は、実施形態の回転式圧縮機の構成を例示する縦断面図である。
図3図3は、実施形態の圧縮機構の構成を例示する縦断面図である。
図4図4は、実施形態の第1シリンダおよび第1偏心部の構成を例示する横断面図である。
図5図5は、実施形態の第2シリンダおよび第2偏心部の構成を例示する横断面図である。
図6図6は、実施形態の回転式圧縮機の要部(回転系)を例示する縦断面図である。
図7図7は、実施形態のロータおよびバランサの構成を例示する斜視図である。
図8図8は、実施形態のロータおよびバランサの構成を例示する分解斜視図である。
図9図9は、実施形態の回転式圧縮機の要部(回転系)を例示する上面図である。
図10図10は、比較例および実施例1~16の回転式圧縮機の回転系の静バランスに係るパラメータおよび静バランスの関係値を示す表である。
図11図11は、比較例および実施例1~11の回転式圧縮機に生じる振動加速度をシミュレーションした結果を示すグラフである。
図12図12は、比較例および実施例1~16の回転式圧縮機に生じる振動加速度を高速側の回転数でシミュレーションした結果を示す表である。
図13図13は、その他の実施形態の第1シリンダおよび第1偏心部の構成を例示する横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の実施形態では、本開示の技術に係る回転式圧縮機を冷凍装置に適用した場合を例に挙げる。なお、図面は、本開示の技術を概念的に説明するためのものである。よって、図面では、本開示の技術の理解を容易にするために、寸法、比または数を、誇張あるいは簡略化して表す場合がある。
【0027】
以下の実施形態において、回転式圧縮機の駆動軸の軸心に沿う方向を「軸方向」と称し、軸方向に垂直な方向を「径方向」と称し、駆動軸の周囲に沿う方向を「周方向」と称する。また、「第1」、「第2」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられ、その語句の数や何らかの順序までも限定するものではない。
【0028】
《実施形態》
図1に示すように、この実施形態の回転式圧縮機(10)は、冷凍装置(1)に設けられる。
【0029】
-冷凍装置-
冷凍装置(1)は、冷媒回路(1a)を備える。冷媒回路(1a)には、冷媒が充填される。冷媒は、回転式圧縮機(10)によって圧縮される流体の一例である。冷媒回路(1a)は、回転式圧縮機(10)、放熱器(3)、減圧機構(4)、および蒸発器(5)を有する。減圧機構(4)は、例えば膨張弁である。冷媒回路(1a)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。
【0030】
冷凍サイクルでは、回転式圧縮機(10)によって圧縮されたガス冷媒が、放熱器(3)において空気に放熱する。このとき、冷媒は、液化して液冷媒に変化する。放熱した液冷媒は、減圧機構(4)によって減圧される。減圧された液冷媒は、蒸発器(5)において蒸発する。このとき、冷媒は、気化してガス冷媒に変化する。蒸発したガス冷媒は、回転式圧縮機(10)に吸入される。回転式圧縮機(10)は、吸入したガス冷媒を圧縮する。
【0031】
冷凍装置(1)は、例えば空気調和装置である。空気調和装置は、冷房と暖房とを切り換える冷暖房兼用機であってもよい。この場合、空気調和装置は、冷媒の循環方向を切り換える切換機構を有する。切換機構は、例えば四方切換弁である。空気調和装置は、冷房専用機または暖房専用機であってもよい。
【0032】
冷凍装置(1)は、給湯器、チラーユニット、庫内の空気を冷却する冷却装置などであってもよい。冷却装置は、給湯器、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの内部の空気を冷却する装置である。
【0033】
-回転式圧縮機-
図2に示すように、回転式圧縮機(10)は、二気筒式のロータリ圧縮機である。回転式圧縮機(10)の最高回転数は、120rps以上である。ここでいう最高回転数は、モータ(21)の作動による駆動軸(25)の回転数であり、製品の運転範囲の中で出現し得る最高の回転数を意味する。回転式圧縮機(10)の最高回転数を高くすることは、冷媒回路(1a)における冷媒の循環量を増加させ、冷媒の最大循環量を確保するのに好ましい。
【0034】
回転式圧縮機(10)は、ケーシング(11)と、駆動機構(20)と、圧縮機構(30)と、バランサ(70)とを備える。駆動機構(20)、圧縮機構(30)、およびバランサ(70)は、ケーシング(11)の内部に収容される。
【0035】
〈ケーシング〉
ケーシング(11)は、両端が閉塞された縦長の円筒状の密閉容器で構成される。ケーシング(11)は、起立した姿勢に設置される。ケーシング(11)は、胴部(12)と、下部鏡板(13)と、上部鏡板(14)とを有する。胴部(12)は、上下に延びる円筒状に形成される。下部鏡板(13)は、胴部(12)の下端に固定され、その下端開口を閉塞する。上部鏡板(14)は、胴部(12)の上端に固定され、その上端開口を閉塞する。
【0036】
胴部(12)の下側部分には、吸入管(15)が取り付けられる。吸入管(15)は、胴部(12)を貫通し、圧縮機構(30)に接続される。上部鏡板(14)には、吐出管(16)が取り付けられる。吐出管(16)は、上部鏡板(14)を貫通し、ケーシング(11)の内部における上側の空間に開口する。
【0037】
ケーシング(11)の底部には、油溜め部(18)が形成される。油溜め部(18)は、胴部(12)の下部および下部鏡板(13)の各内壁によって構成される。油溜め部(18)には、油が貯留される。油は、圧縮機構(30)や駆動軸(25)の摺動部分を潤滑するためのものである。
【0038】
〈駆動機構〉
駆動機構(20)は、モータ(21)と、駆動軸(25)とを有する。モータ(21)は、圧縮機構(30)の上方に配置される。モータ(21)は、ステータ(22)と、ロータ(23)とを有する。ステータ(22)およびロータ(23)はそれぞれ、円筒状に形成される。ステータ(22)は、ケーシング(11)の胴部(12)に固定される。ロータ(23)は、ステータ(22)の中空部に配置される。
【0039】
ロータ(23)の軸方向における両端にはそれぞれ、有孔円板状の端板(24)が設けられる。駆動軸(25)は、ロータ(23)の中空部に挿通される。ロータ(23)は、駆動軸(25)に固定される。モータ(21)が通電されると、駆動軸(25)がロータ(23)と共に一体に回転する。駆動軸(25)は、圧縮機構(30)を駆動する軸体であり、ケーシング(11)の内部を上下方向に延びる。
【0040】
駆動軸(25)は、主軸部(26)と、第1偏心軸部(27)と、第2偏心軸部(28)とを有する。主軸部(26)の上部は、ロータ(23)に連結される。第1偏心軸部(27)および第2偏心軸部(28)は、主軸部(26)の下端寄りに設けられる。第1偏心軸部(27)は、第2偏心軸部(28)よりも上側に配置される。第1偏心軸部(27)および第2偏心軸部(28)は、主軸部(26)よりも大径に形成される。
【0041】
第1偏心軸部(27)および第2偏心軸部(28)は、駆動軸(25)(主軸部(26))の軸心(AC)から所定距離だけ偏心する。第1偏心軸部(27)と第2偏心軸部(28)とは、駆動軸(25)の軸心(AC)に対して互いに反対側に偏心する。主軸部(26)における第1偏心軸部(27)よりも上部は、フロントヘッド(31)によって回転可能に支持される。主軸部(26)における第2偏心軸部(28)よりも下部は、リアヘッド(33)により回転可能に支持される。
【0042】
駆動軸(25)の内部には、第1油通路(25b)が形成される。第1油通路(25b)は、圧縮機構(30)や駆動軸(25)の摺動部分に延びる。駆動軸(25)の下端には、給油ポンプ(25a)が設けられる。給油ポンプ(25a)は、油溜め部(18)の油に浸漬される。給油ポンプ(25a)は、駆動軸(25)の回転に伴い油を搬送する。搬送された油は、第1油通路(25b)を通って、圧縮機構(30)や駆動軸(25)の摺動部分へ供給される。
【0043】
〈圧縮機構〉
圧縮機構(30)は、冷媒を吸入して圧縮する機構であり、モータ(21)の下方に配置される。圧縮機構(30)は、フロントヘッド(31)と、第1シリンダ(40)と、ミドルプレート(32)と、第2シリンダ(50)と、リアヘッド(33)とを有する。フロントヘッド(31)、第1シリンダ(40)、ミドルプレート(32)、第2シリンダ(50)、およびリアヘッド(33)は、上方から下方に向かって順に重ね合わされた状態で、締結ボルト(35)によって固定される。
【0044】
フロントヘッド(31)は、ケーシング(11)の胴部(12)に固定される。フロントヘッド(31)は、第1シリンダ(40)の上部に積層される。フロントヘッド(31)は、第1シリンダ(40)の中空部(第1シリンダボア(41))を上方から覆うようにして配置される。フロントヘッド(31)の中央部には、駆動軸(25)の主軸部(26)が挿通される。フロントヘッド(31)は、駆動軸(25)を回転可能に支持する。
【0045】
ミドルプレート(32)は、第1シリンダ(40)と、第2シリンダ(50)との間に挟み込まれる。ミドルプレート(32)は、第1シリンダ(40)の中空部(第1シリンダボア(41))を下方から覆うようにして配置される。ミドルプレート(32)は、第2シリンダ(50)の中空部(第2シリンダボア(51))を上方から覆うようにして配置される。
【0046】
リアヘッド(33)は、第2シリンダ(50)の下部に積層される。リアヘッド(31)は、第2シリンダ(50)の中空部(第2シリンダボア(51))を下方から覆うようにして配置される。リアヘッド(31)の中央部には、駆動軸(25)の主軸部(26)が挿通される。リアヘッド(31)は、駆動軸(25)を回転可能に支持する。
【0047】
第1シリンダ(40)は、厚肉な略環状の部材である。第1シリンダ(40)の中央部には、第1シリンダボア(41)が形成される。第1シリンダボア(41)は、第1シリンダ(40)を厚さ方向に貫通する円形状の孔である。第1シリンダボア(41)は、フロントヘッド(31)およびミドルプレート(32)により閉空間とされる。第1シリンダ(40)は、第1シリンダボア(41)の中心線を軸方向(上下方向)に向けた姿勢でケーシング(11)の胴部(12)に固定される。
【0048】
図4に示すように、第1シリンダ(40)には、第1ブッシュ孔(43a)および第1ブレード孔(43b)が形成される。第1ブッシュ孔(43a)および第1ブレード孔(43b)は、第1シリンダ(40)を軸方向(厚さ方向)に貫通する。第1ブッシュ孔(43a)および第1ブレード孔(43b)はそれぞれ、略円形状に形成される。第1ブッシュ孔(43a)は、第1シリンダボア(41)に開口する。第1ブレード孔(43b)は、第1シリンダ(40)の径方向において第1ブッシュ孔(43a)の外側に位置し、第1ブッシュ孔(43a)と連通する。
【0049】
第1ブッシュ孔(43a)には、一対の第1ブッシュ(48)が嵌め込まれる。各第1ブッシュ(48)は、半円柱状の部材である。一対の第1ブッシュ(48)の平坦な面同士は、互いに隙間をあけて対向する。一対の第1ブッシュ(48)は、第1ブッシュ孔(43a)の中心線を軸心として揺動可能である。一対の第1ブッシュ(48)は、後述の第1ブレード(47)を挟み込むことで、第1ピストン(45)の自転を規制する。
【0050】
第1シリンダボア(41)には、第1ピストン(45)が収容される。第1ピストン(45)は、第1ローラ(46)と、第1ブレード(47)とを有する。第1ローラ(46)は、円筒状の部材である。第1ローラ(46)の内部には、駆動軸(25)の第1偏心軸部(27)が嵌め込まれる。第1ローラ(46)の外周面は、第1シリンダ(40)の内周面に摺接する。
【0051】
第1ローラ(46)の外周面と第1シリンダ(40)の内周面との間には、冷媒を圧縮するための空間が形成される。この空間は、第1シリンダボア(41)の一部からなる第1圧縮室(41s)である。第1ローラ(46)は、第1偏心軸部(27)と一体に回転する。第1ローラ(46)および第1偏心軸部(27)は、第1偏心部(44)を構成する。このように、圧縮機構(30)は、第1シリンダ(40)の内部に収容された第1偏心部(44)を備える。そして、第1シリンダ(40)の内周面と第1偏心部(44)との間には、第1圧縮室(41s)が形成される。
【0052】
第1ブレード(47)は、第1ローラ(46)の外周面に設けられ、第1ローラ(46)の径方向における外側へ延びる。第1ブレード(47)は、一対の第1ブッシュ(48)の間に進退自在に挟み込まれる。第1ブレード(47)の先端部は、第1ブレード孔(43b)に収容される。第1ローラ(46)の外周面と第1シリンダ(40)の内周面との間の空間は、第1ブレード(47)によって第1低圧室と第1高圧室とに区画される。
【0053】
第1シリンダ(40)には、第1吸入ポート(42)が形成される。第1吸入ポート(42)は、第1シリンダ(40)を径方向に貫通する。第1吸入ポート(42)の一端は、第1シリンダ(40)の内周面に開口し、第1ブッシュ(48)に隣接した位置(図4で第1ブッシュ(48)の右隣の位置)で第1低圧室に連通する。第1吸入ポート(42)の他端は、第1シリンダ(40)の外周面に開口する。この第1吸入ポート(42)の他端には、吸入管(15)が接続される。
【0054】
フロントヘッド(31)には、第1吐出ポート(49)が形成される。第1吐出ポート(49)は、フロントヘッド(31)を軸方向に貫通する。第1吐出ポート(49)の一端は、フロントヘッド(31)の下面に開口し、第1ブッシュ(48)に対して第1吸入ポート(42)とは逆側の位置(図4で第1ブッシュ(48)の左隣の位置)で第1高圧室に連通する。第1吐出ポート(49)の他端は、フロントヘッド(31)の上面に開口する。
【0055】
フロントヘッド(31)の上面には、第1吐出弁(60)が設けられる。第1吐出弁(60)は、第1吐出ポート(49)を開閉する。第1吐出弁(60)は、例えばリード弁によって構成される。第1吐出弁(60)は、第1高圧室内のガス圧がケーシング(11)内のガス圧(ドーム内圧力)よりも低い間は、第1吐出ポート(49)を閉じる閉状態となる。また、第1吐出弁(60)は、第1高圧室内のガス圧がドーム内圧力を超えると、第1吐出ポート(49)を開ける開状態となる。
【0056】
第2シリンダ(50)は、厚肉な略環状の部材である。第2シリンダ(50)の中央部には、第2シリンダボア(51)が形成される。第2シリンダボア(51)は、第2シリンダ(50)を厚さ方向に貫通する円形状の孔である。第2シリンダボア(51)は、ミドルプレート(32)およびリアヘッド(33)により閉空間とされる。第2シリンダ(50)は、第2シリンダボア(51)の中心線を軸方向(上下方向)に向けた姿勢で設けられる。
【0057】
図5に示すように、第2シリンダ(50)には、第2ブッシュ孔(53a)および第2ブレード孔(53b)が形成される。第2ブッシュ孔(53a)および第2ブレード孔(53b)は、第2シリンダ(50)を軸方向(厚さ方向)に貫通する。第2ブッシュ孔(53a)および第2ブレード孔(53b)はそれぞれ、略円形状に形成される。第2ブッシュ孔(53a)は、第2シリンダボア(51)に開口する。第2ブレード孔(53b)は、第2シリンダ(50)の径方向において第2ブッシュ孔(53a)の外側に位置し、第2ブッシュ孔(53a)に連通する。
【0058】
第2ブッシュ孔(53a)には、一対の第2ブッシュ(58)が嵌め込まれる。各第2ブッシュ(58)は、半円柱状の部材である。一対の第2ブッシュ(58)の平坦な面同士は、互いに隙間をあけて対向する。一対の第2ブッシュ(58)は、第2ブッシュ孔(53a)の中心線を軸心として揺動可能である。一対の第2ブッシュ(58)は、後述の第2ブレード(57)を挟み込むことで、第2ピストン(55)の自転を規制する。
【0059】
第2シリンダボア(51)には、第2ピストン(55)が収容される。第2ピストン(55)は、第2ローラ(56)と、第2ブレード(57)とを有する。第2ローラ(56)は、円筒状の部材である。第2ローラ(56)の内部には、駆動軸(25)の第2偏心軸部(28)が嵌め込まれる。第2ローラ(56)の外周面は、第2シリンダ(50)の内周面に摺接する。
【0060】
第2ローラ(56)の外周面と第2シリンダ(50)の内周面との間には、冷媒を圧縮するための空間が形成される。この空間は、第2シリンダボア(51)の一部からなる第2圧縮室(51s)である。第2ローラ(56)は、第2偏心軸部(28)と一体に回転する。第2ローラ(56)および第2偏心軸部(28)は、第2偏心部(54)を構成する。このように、圧縮機構(30)は、第2シリンダ(50)の内部に収容された第2偏心部(54)を備える。そして、第2シリンダ(50)の内周面と第2偏心部(54)との間には、第2圧縮室(51s)が形成される。
【0061】
第2ブレード(57)は、第2ローラ(56)の外周面に設けられ、第2ローラ(56)の径方向における外側へ延びる。第2ブレード(57)は、一対の第2ブッシュ(58)の間に進退自在に挟み込まれる。第2ブレード(57)の先端部は、第2ブレード孔(53b)に収容される。第2ローラ(56)の外周面と第2シリンダ(50)の内周面との間の空間は、第2ブレード(57)によって第2低圧室と第2高圧室とに区画される。
【0062】
第2シリンダ(50)には、第2吸入ポート(52)が形成される。第2吸入ポート(52)は、第2シリンダ(50)を径方向に貫通する。第2吸入ポート(52)の一端は、第2シリンダ(50)の内周面に開口し、第2ブッシュ(58)に隣接した位置(図5で第2ブッシュ(58)の右隣の位置)で第2低圧室に連通する。第2吸入ポート(52)の他端は、第2シリンダ(50)の外周面に開口する。この第2吸入ポート(52)の他端には、吸入管(15)が接続される。
【0063】
リアヘッド(33)には、第2吐出ポート(59)が形成される。第2吐出ポート(59)は、リアヘッド(33)を軸方向に貫通する。第2吐出ポート(59)の一端は、リアヘッド(33)の上面に開口し、第2ブッシュ(58)に対して第2吸入ポート(52)とは逆側の位置(図5で第2ブッシュ(58)の左側の位置)で第2高圧室に連通する。第2吐出ポート(59)の他端は、リアヘッド(33)の下面に開口する。
【0064】
リアヘッド(33)の下面には、第2吐出弁(61)が設けられる。第2吐出弁(61)は、第2吐出ポート(59)を開閉する。第2吐出弁(61)は、例えばリード弁によって構成される。第2吐出弁(61)は、第2高圧室のガス圧がドーム内圧力よりも低い間は、第2吐出ポート(59)を閉じる閉状態となる。また、第2吐出弁(61)は、第2高圧室内のガス圧がドーム内圧力を超えると、第2吐出ポート(59)を開ける開状態となる。
【0065】
圧縮機構(30)においては、駆動軸(25)の回転に連動して、第1偏心部(44)が第1シリンダ(40)の内部で偏心回転する。第1偏心部(44)の偏心回転に伴い、第1低圧室の容積が徐々に大きくなると、吸入管(15)を流れる冷媒が第1吸入ポート(42)から第1低圧室へ吸入される。引き続き第1偏心部(44)が偏心回転することで、第1低圧室が第1吸入ポート(42)から遮断されると、遮断された空間が第1高圧室を構成する。
【0066】
さらなる第1偏心部(44)の偏心回転により、第1高圧室の容積が徐々に小さくなるに連れて、第1高圧室内のガス圧が上昇していく。そして、第1高圧室内のガス圧がドーム内圧力を上回ると、第1吐出弁(60)が開状態となり、第1高圧室の冷媒が第1吐出ポート(49)を通じて、圧縮機構(30)の外部へ流出する。
【0067】
また、駆動軸(25)の回転に連動して、第1偏心部(44)の偏心回転と共に第2偏心部(54)が第2シリンダ(50)の内部で偏心回転する。第2偏心部(54)の偏心回転に伴い、第2低圧室の容積が徐々に大きくなると、吸入管(15)を流れる冷媒が第2吸入ポート(52)から第2低圧室へ吸入される。引き続き第2偏心部(54)が偏心回転することで、第2低圧室が第2吸入ポート(52)から遮断されると、遮断された空間が第2高圧室を構成する。
【0068】
さらなる第2偏心部(54)の偏心回転により、第2高圧室の容積が徐々に小さくなるに連れて、第2高圧室内のガス圧が上昇していく。そして、第2高圧室内のガス圧がドーム内圧力を上回ると、第2吐出弁(61)が開状態となり、第2高圧室の冷媒が第2吐出ポート(59)を通じて、圧縮機構(30)の外部へ流出する。
【0069】
圧縮機構(30)の外部に流出した高圧冷媒は、ケーシング(11)の内部空間を上方へ流れ、モータ(21)のコアカット(不図示)等を通過する。そして、モータ(21)の上方に流れた高圧冷媒は、吐出管(16)より冷媒回路(1a)へ送られる。
【0070】
図2に示すように、リアヘッド(33)には、サイフォン給油管(36)が接続される。サイフォン給油管(36)の上端は、第2油通路(37)に接続される。第2油通路(37)は、リアヘッド(31)、第2シリンダ(50)、ミドルプレート(32)、第1シリンダ(40)を貫通するように連続して設けられる。サイフォン給油管(36)の下端は、油溜め部(18)の油に浸漬される。サイフォン給油管(36)は、油溜まり部(18)の油を吸い上げて、第2油通路(37)を介して第1ブレード孔(43b)および第2ブレード孔(53b)に供給する。
【0071】
〈アキュムレータ〉
回転式圧縮機(10)の上流側には、アキュムレータ(80)が接続される。アキュムレータ(80)は、回転式圧縮機(10)に吸入される前の冷媒を一時的に貯留すると共に、ガス冷媒に含まれる液冷媒や油を気液分離する。アキュムレータ(80)は、密閉容器(81)と、入口管(82)と、出口管(83)とを有する。
【0072】
密閉容器(81)は、縦長の円筒状の部材で構成される。入口管(82)は、密閉容器(81)に冷媒を流入させる管体である。入口管(82)は、密閉容器(81)の上部に接続される。入口管(82)の下端は、密閉容器(81)の内部空間における上部寄りの位置に開口する。入口管(82)の上端は、冷媒回路(1a)に接続される。
【0073】
出口管(83)は、密閉容器(81)から冷媒を流出させる管体である。出口管(83)は、密閉容器(81)の下部に2つ接続される。各出口管(83)の上端部は、密閉容器(81)内を上下方向に延びて密閉容器(81)の内部空間における上部寄りの位置に開口する。各出口管(83)の下端部は、密閉容器(81)の下端から下方に延びた後に屈曲して、回転式圧縮機(10)の吸入管(15)に接続される。
【0074】
〈バランサ〉
図6図8にも示すように、バランサ(70)は、圧縮機構(30)における偏心回転運動に伴うアンバランスを平衡させるためのものであり、ロータ(23)に設けられる。バランサ(70)は、第1バランスウエイト(71)と、第2バランスウエイト(72)とを有する。
【0075】
第1バランスウエイト(71)は、円弧板状の部材である。第1バランスウエイト(71)は、ロータ(23)の軸方向における圧縮機構(30)側の一端部、つまり下側の端部に配置される。第1バランスウエイト(71)は、円弧形状を周方向に沿わせるようにして、2本のリベット(75)により両端部を下側の端板(24)に固定し、当該端板(24)の下面に取り付けられる。
【0076】
第2バランスウエイト(72)は、円筒状の部材である。第2バランスウエイト(72)は、ロータ(23)の軸方向における圧縮機構(30)とは反対側の他端部、つまり上側の端部に配置される。第2バランスウエイト(72)は、平面視で駆動軸(25)の軸心(AC)を介して第1バランスウエイト(71)と対峙する位置に対応させるようにして、1本のリベット(75)により中央部を上側の端板(24)に固定し、当該端板(24)の上面に取り付けられる。
【0077】
図9にも示すように、第1バランスウエイト(71)と第2バランスウエイト(72)とは、駆動軸(25)の軸心(AC)に対して互いに反対側に偏心し、周方向に180°の位相差を設けて配置される。第1バランスウエイト(71)は、第1偏心部(44)と同一方向に偏心する。第1バランスウエイト(71)および第1偏心部(44)は、互いに同位相にある。第2バランスウエイト(72)は、第2偏心部(54)と同一方向に偏心する。第2バランスウエイト(72)および第2偏心部(54)は、互いに同位相にある。
【0078】
このように、第1バランスウエイト(71)は第1偏心部(44)と共に駆動軸(25)の軸心(AC)に対して一側に偏心し、第2バランスウエイト(72)は第2偏心部(54)と共に駆動軸(25)の軸心(AC)に対して他側に偏心する。第1バランスウエイト(71)および第2バランスウエイト(72)は、第1偏心部(44)および第2偏心部(54)に作用する慣性力に基づいて駆動軸(25)を平行に移動させようとする力をバランスさせて、静バランス(平行移動力の釣り合い)を保持する。
【0079】
〈高速運転時の静バランスに係る構成〉
回転式圧縮機(10)の運転時には、駆動軸(25)が圧縮機構(30)からの圧縮荷重によりわずかに撓み、ロータ(23)が予め設定された回転中心から外れる。そして、ロータ(23)の遠心力が第2バランスウエイト(72)に作用する慣性力と合わさるように作用し、駆動軸(25)の撓みを助長する。その結果、高速運転時には、圧縮機構(30)(第1偏心部(44)および第2偏心部(54))とバランサ(70)(第1バランスウエイト(71)および第2バランスウエイト(72))との静バランスが大きく崩れて、振動が増大する。
【0080】
そこで、本例の回転式圧縮機(10)では、駆動軸(25)に撓みが生じたときに、ロータ(23)の遠心力が第2バランスウエイト(72)に作用する慣性力と合わさるように作用することを考慮して、第2バランスウエイト(72)に作用する遠心力を第1バランスウエイト(71)に作用する遠心力よりも小さくし、高速運転時において静バランスをとるようにした。
【0081】
具体的には、第1バランスウエイト(71)の質量をm1[g]、第1バランスウエイト(71)の重心(GC1)の駆動軸(25)の軸心(AC)からの偏心距離をr1[mm]、第2バランスウエイト(72)の質量をm2[g]、第2バランスウエイト(72)の重心(GC2)の駆動軸(25)の軸心(AC)からの偏心距離をr2[mm]としたとき、第1バランスウエイト(71)および第2バランスウエイト(72)のそれぞれの質量および偏心距離とは、以下の式(1)で示す関係を満たす。
【0082】
m1×r1>m2×r2 ・・・・・(1)
【0083】
そして、駆動機構(20)、圧縮機構(30)およびバランサ(70)を含む回転系全体としての静バランスをとるように、回転式圧縮機(10)の最高回転数に応じて、第1偏心部(44)および第1バランスウエイト(71)に作用する総合的な遠心力と、第2偏心部(54)および第2バランスウエイト(72)に作用する総合的な遠心力との比に対応する静バランスの関係値を調整するようにした。
【0084】
具体的には、第1偏心部(44)の質量をm3[g]、第1偏心部(44)の重心(GC3)の駆動軸(25)の軸心(AC)からの偏心距離をr3[mm]、第2偏心部(54)の質量をm4[g]、第2偏心部(54)の重心(GC4)の駆動軸(25)の軸心(AC)からの偏心距離をr4[mm]、圧縮機構(30)の最高回転数をNmax[rps]としたとき、第1偏心部(44)、第2偏心部(54)、第1バランスウエイト(71)および第2バランスウエイト(72)のそれぞれの質量および偏心距離は、以下の式(2)で示す関係を満たす。
【0085】
1.2-0.002×Nmax≦(m2×r2+m4×r4)/(m1×r1+m3×r3)≦0.98 ・・・・・(2)
【0086】
第1偏心部(44)の質量は、第1偏心軸部(27)の質量と第1ピストン(45)の質量とを加算して算出される。第2偏心部(54)の質量は、第2偏心軸部(28)の質量と第2ピストン(55)の質量とを加算して算出される。第1偏心部(44)、第2偏心部(54)、第1バランスウエイト(71)および第2バランスウエイト(72)のそれぞれの質量および偏心距離はさらに、回転式圧縮機(10)の振動を低減できる回転数域を比較的広く確保する観点から、以下の式(3)で示す関係を満たすことが好ましい。
【0087】
0.88≦(m2×r2+m4×r4)/(m1×r1+m3×r3) ・・・・・(3)
【0088】
本例の回転式圧縮機(10)では、第1偏心部(44)の質量と第2偏心部(54)の質量、第1偏心部(44)の偏心距離と第2偏心部(54)の偏心距離とは、それぞれ互いに同じに設計される。対して、第1バランスウエイト(71)の質量は第2バランスウエイト(72)の質量よりも小さく、第1バランスウエイト(71)の偏心距離は第2バランスウエイト(72)の偏心距離よりも長い。
【0089】
本例の回転式圧縮機(10)では、駆動軸(25)に撓みを生じた状態で静バランスをとるので、駆動軸(25)の主軸部(26)の直径が、撓みを許容するように比較的小さく設計される。図3に示すように、駆動軸(25)の主軸部(26)における直径をΦ[mm]としたとき、当該主軸部(26)の断面二次モーメントIsは、以下の式(4)で表される。この断面二次モーメントは、主軸部(26)の撓み量に関係する。主軸部(26)の撓み量は、その直径Φの4乗に反比例する関係にある。
【0090】
Is=π×Φ/64 ・・・・・(4)
【0091】
また、回転式圧縮機(10)では、第1圧縮室(41s)の容積と第2圧縮室(51s)の容積との総和が大きいほど、第1偏心部(44)の質量と第2偏心部(54)の質量との総和が大きくなる傾向にある。そして、第1偏心部(44)の質量と第2偏心部(54)の質量との総和が大きいほど、圧縮機構(30)より駆動軸(25)の主軸部(26)に作用する遠心力が増す。このため、主軸部(26)の撓み量が大きくなる。
【0092】
以上のことから、第1圧縮室(41s)の容積と第2圧縮室(51s)の容積との総和をVcc[cc]としたとき、以下の式(5)で示す関係を満たすことが好ましい。Vcc/Φの値が3×10-4以上であると、第1圧縮室(41s)および第2圧縮室(51s)の総和容積に対して主軸部(26)が比較的細いので、回転式圧縮機(10)の運転時において、主軸部(26)が圧縮機構(30)の作動による遠心力を受けて撓み易い。このように主軸部(26)が比較的細い場合、従来の回転式圧縮機では、高速運転時に振動が増大するという上述の課題が顕著に生じる。
【0093】
Vcc/Φ≧3×10-4 ・・・・・(5)
【0094】
第1シリンダ(40)の内径面積をSc1、第1シリンダボア(41)の長さをH1、第1ローラ(46)の外径面積をSr1、第1ローラ(46)の厚さをT1としたとき、第1圧縮室(41s)の容積V1は、以下の式(6)で表される。また、第2シリンダ(50)の内径面積をSc2、第2シリンダボア(51)の長さをH2、第2ローラ(56)の外径面積をSr2、第2ローラ(56)の厚さをT2としたとき、第2圧縮室(51s)の容積V2は、以下の式(7)で表される。そして、第1圧縮室(41s)の容積と第2圧縮室(51s)の容積との総和Vccは、以下の式(8)で表される。
【0095】
V1=(Sc1×H1)-(Sr1×T1) ・・・・・(6)
V2=(Sc2×H2)-(Sr2×T2) ・・・・・(7)
Vcc=V1+V2 ・・・・・(8)
【0096】
例えば、主軸部(26)の直径は、16mm以下である。そして、第1圧縮室(41s)の容積と第2圧縮室(51s)の容積との総和は、例えば20cc以上である。また、回転式圧縮機(10)の容量を確保する観点から、第1偏心部(44)および第2偏心部(54)は、それら第1偏心部(44)および第2偏心部(54)に作用する遠心力が比較的大きくなるように設計される。具体的には、第1偏心部(44)および第2偏心部(54)のそれぞれの質量および偏心距離は、以下の式(9)で示す関係を満たす。
【0097】
(m3×r3+m4×r4)/2≧600 ・・・・・(9)
【0098】
以上を踏まえて、具体的な一例を示すと、第1偏心部(44)の質量および第2偏心部(54)の質量はいずれも、187.4gである。第1偏心部(44)の偏心距離および第2偏心部(54)の偏心距離はいずれも、4.95mmである。また、第1バランスウエイト(71)の質量は、10.46gである。第2バランスウエイト(72)の質量は、5.4gである。第1バランスウエイト(71)の偏心距離は、18.63mmである。第2バランスウエイト(72)の偏心距離は、23.5mmである。この一例での静バランスの関係値((m2×r2+m4×r4)/(m1×r1+m3×r3))は、0.939である。
【0099】
-振動抑制効果の評価-
静バランスの関係値((m2×r2+m4×r4)/(m1×r1+m3×r3))が1.0である比較例と、当該静バランスの関係値が0.84~0.99において0.01刻みで異なる値をとる実施例1~16について、回転式圧縮機(10)の運転時に生じる振動加速度をシミュレーションで求めた。
【0100】
図10に示すように、比較例および実施例1~16の回転式圧縮機(10)では、第1バランスウエイト(71)の質量および偏心距離の積の値(m1×r1)、第1偏心部(44)の質量および偏心距離の積の値(m3×r3)、第2偏心部(54)の質量および偏心距離の積の値(m4×r4)が同一であり、第2バランスウエイト(71)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)のみが異なる。
【0101】
比較例および実施例1~16の回転式圧縮機(10)において、第1バランスウエイト(71)の質量および偏心距離の積の値(m1×r1)は、194.9g・mmであり、第1偏心部(44)の質量および偏心距離の積の値(m3×r3)と、第2偏心部(54)の質量および偏心距離の積の値(m4×r4)とは、同一であり、それぞれ927.5g・mmである。
【0102】
比較例の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、195.1g・mmであり、静バランスの関係値は、1.0である。
【0103】
実施例1の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、183.8g・mmであり、静バランスの関係値は、0.99である。実施例2の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、172.5g・mmであり、静バランスの関係値は、0.98である。
【0104】
実施例3の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、161.2g・mmであり、静バランスの関係値は、0.97である。実施例4の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、149.9g・mmであり、静バランスの関係値は、0.96である。
【0105】
実施例5の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、138.7g・mmであり、静バランスの関係値は、0.95である。実施例6の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、127.6g・mmであり、静バランスの関係値は、0.94である。
【0106】
実施例7の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、116.3g・mmであり、静バランスの関係値は、0.93である。実施例8の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、105.0g・mmであり、静バランスの関係値は、0.92である。
【0107】
実施例9の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、94.0g・mmであり、静バランスの関係値は、0.91である。実施例10の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、82.7g・mmであり、静バランスの関係値は、0.90である。
【0108】
実施例11の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、71.4g・mmであり、静バランスの関係値は、0.89である。実施例12の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、60.2g・mmであり、静バランスの関係値は、0.88である。
【0109】
実施例13の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、49.0g・mmであり、静バランスの関係値は、0.87である。実施例14の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、37.8g・mmであり、静バランスの関係値は、0.86である。
【0110】
実施例15の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、26.5g・mmであり、静バランスの関係値は、0.85である。実施例16の回転式圧縮機(10)において、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)は、15.3g・mmであり、静バランスの関係値は、0.84である。
【0111】
比較例および実施例1~11の各回転式圧縮機(10)についてのシミュレーション結果をグラフ化して図11に示す。図11では、便宜上、実施例12~14の各回転式圧縮機(10)についてのシミュレーション結果を省略する。図11に示すように、いずれの回転式圧縮機(10)であっても、回転数を上げるに連れて、振動加速度が一旦上がった後に下がって極小値をとり、極小値から回転数をさらに上げると振動加速度が上昇の一途を辿る傾向にある。
【0112】
そして、振動加速度の極小値は、静バランスの関係値が小さいほど高回転側にシフトする傾向が看て取れる。すなわち、比較例の回転式圧縮機(10)、実施例1の回転式圧縮機(10)、実施例2の回転式圧縮機(10)、実施例3の回転式圧縮機(10)、実施例4の回転式圧縮機(10)、実施例5の回転式圧縮機(10)、実施例6の回転式圧縮機(10)、実施例7の回転式圧縮機(10)、実施例8の回転式圧縮機(10)、実施例9の回転式圧縮機(10)、実施例10の回転式圧縮機(10)、実施例11の回転式圧縮機(10)の順に、振動加速度の極小値をとる回転数が大きくなる。
【0113】
また、比較例および実施例1~17の各回転式圧縮機(10)についてのシミュレーション結果の振動加速度の数値[m/s]を、120rps、130rps、140rps、150rps、160rps、170rps、180rpsの回転数ごとに図12に示す。図12に示すように、実施例1~17の各回転式圧縮機(10)に関し、比較例の回転式圧縮機(10)と比べて、振動加速度が小さくなり、高速運転時における振動の抑制効果が確認された。図12では、振動の抑制効果を示す数値に下線を付す。本シミュレーションによると、静バランスの関係値が小さいほど回転数の高い側でのみ振動の抑制効果が得られ、静バランスの関係値が大きい側(つまり1.0に近い側)では、広い回転数域に亘って振動の抑制効果が得られることが分かった。
【0114】
-実施形態1の特徴-
この実施形態1の回転式圧縮機(10)では、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)が、第1バランスウエイト(71)の質量および偏心距離の積の値(m1×r1)よりも小さい。そのことで、回転式圧縮機(10)の運転時において、駆動軸(25)が撓んだときに、所定の回転中心から外れたロータ(23)の遠心力に合わさるように作用する第2バランスウエイト(72)の慣性力を小さくし、駆動軸(25)の撓みが助長されるのを抑制できる。これにより、回転式圧縮機(10)の高速運転時における振動を低減できる。
【0115】
この実施形態1の回転式圧縮機(10)では、最高回転数が120rps以上であって比較的高い。回転式圧縮機(10)の回転が高速化するほど、駆動軸(25)の撓みに起因して第1偏心部(44)および第2偏心部(54)と第1バランスウエイト(71)および第2バランスウエイト(72)との静バランスが大きく崩れやすく、回転式圧縮機(10)の運転時における振動が大きくなる傾向にある。よって、比較的高い回転数で運転される回転式圧縮機(10)において、本開示の技術は有効である。
【0116】
この実施形態1の回転式圧縮機(10)では、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値と第2偏心部(54)の質量および偏心距離の積の値との合算値(m2×r2+m4×r4)を、第1バランスウエイト(71)の質量および偏心距離の積の値と第1偏心部(44)の質量および偏心距離の積の値との合算値(m1×r1+m3×r3)で除した静バランスの関係値が、1.2-0.002×Nmax(最高回転数)以上且つ0.98以下である。これによれば、回転式圧縮機(10)の最高回転数に応じて、高速運転時における振動を低減できる。
【0117】
この実施形態1の回転式圧縮機(10)では、静バランスの関係値が0.88以上である。静バランスの関係値が0.88よりも小さいと、回転式圧縮機(10)の高速運転時における振動を低減する効果が、圧縮機構(30)の最高回転数に比較的近い側の回転数域でしか期待できない。これに対して、静バランスの関係値が0.88以上であると、圧縮機構(30)の最高回転数から比較的広い回転数域に亘って回転式圧縮機(10)の振動を低減できる。
【0118】
この実施形態1の回転式圧縮機(10)では、第1圧縮室(41s)の容積と第2圧縮室(51s)の容積との総和Vccを駆動軸(25)の主軸部(26)の直径Φで除した、主軸部(26)の撓み易さを示す指標値が3×10-4以上である。これによれば、回転式圧縮機(10)の運転時において、第1偏心部(44)および第2偏心部(54)と第1バランスウエイト(71)および第2バランスウエイト(72)との静バランスがとれるように主軸部(26)を好適に撓ませることが可能になる。
【0119】
この実施形態1の回転式圧縮機(10)では、駆動軸(25)の主軸部(26)の直径が16mm以下であって比較的小さく、且つ第1偏心部(44)および第2偏心部(54)における質量および偏心距離の積の値の平均値が600以上であって比較的大きい。
【0120】
駆動軸(25)の撓みに起因する回転式圧縮機(10)の高速運転時における振動を抑制する手立てとしては、主軸部(26)の直径を大きくして駆動軸(25)の剛性を高めたり、第1偏心部(44)および第2偏心部(54)の質量や偏心距離、ロータを小さくしたりすることが考えられる。しかし、前者の方法を採ると、軸受損失などの機械的損失が増大し、回転式圧縮機(10)の効率が低下する。また、後者の方法を採ると、回転式圧縮機(10)の容量が制限される。
【0121】
これに対して、駆動軸(25)の主軸部(26)の直径が16mm以下であると、軸受損失などの機械的損失を低減でき、回転式圧縮機(10)を高効率化できる。また、第1偏心部(44)および第2偏心部(54)における質量および偏心距離の積の値の平均値が600以上であると、回転式圧縮機(10)の容量を比較的大きく確保できる。よって、高速運転時における振動が小さく、高効率かつ大容量な回転式圧縮機(10)を実現できる。
【0122】
この実施形態1の冷凍装置(1)では、回転式圧縮機(10)が冷媒回路(1a)に用いられる。回転式圧縮機(10)では、高速運転時における振動が低減される。当該回転式圧縮機(10)を冷媒回路(1a)に用いると、低振動および低騒音な冷凍サイクルの実行に寄与する。
【0123】
《その他の実施形態》
図13に示すように、上記実施形態の回転式圧縮機(10)の圧縮機構(30)は、第1ピストン(45)の第1ブレード(47)が第1ローラ(46)と別体に形成されたローリングピストン型に構成されてもよい。この圧縮機構(30)は、平板状の第1ブレード(47)が第1シリンダ(40)の径方向へ延びる第1ブレード溝(90)に進退自在に嵌め込まれ、第1ブッシュ(48)が省略される。第1ブレード(47)は、ばね(91)によって第1ローラ(46)の外周面に押圧される。第1ブレード(47)の先端部は、第1ローラ(46)の外周面と摺接する。これらのことは、第2ピストン(55)においても同様であってもよい。
【0124】
上記実施形態の回転式圧縮機(10)において、第1バランスウエイト(71)の質量および第2バランスウエイト(72)の質量、または第1バランスウエイト(71)の偏心距離と第2バランスウエイト(72)の偏心距離とは、互いに同じでもよい。また、第1バランスウエイト(71)の形状と第2バランスウエイト(72)の形状とは、互いに同じであってもよく、任意の形状を採り得る。要は、第2バランスウエイト(72)の質量および偏心距離の積の値(m2×r2)が第1バランスウエイト(71)の質量および偏心距離の積の値(m1×r1)よりも小さければよい。
【0125】
上記実施形態の回転式圧縮機(10)において、第1偏心部(44)の質量と第2偏心部(54)の質量とは互いに異なってもよく、第1偏心部(44)の偏心距離と第2偏心部(54)の偏心距離とは互いに異なってもよい。要は、回転式圧縮機(10)の運転時に、駆動機構(20)、圧縮機構(30)およびバランサ(70)を含む回転系全体としての静バランスがとれるようになっていればよい。
【0126】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上説明したように、本開示は、回転式圧縮機およびそれを備える冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0128】
AC 軸心
GC1 第1バランスウエイトの重心
GC2 第2バランスウエイトの重心
GC3 第1偏心部の重心
GC4 第2偏心部の重心
1 冷凍装置
1a 冷媒回路
10 回転式圧縮機
21 モータ
23 ロータ
25 駆動軸
30 圧縮機構
40 第1シリンダ
41s 第1圧縮室
44 第1偏心部
50 第2シリンダ
51s 第2圧縮室
54 第1偏心部
70 バランサ
71 第1バランスウエイト
72 第2バランスウエイト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13