(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146892
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】電気化学反応モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04007 20160101AFI20241004BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241004BHJP
C25B 15/021 20210101ALI20241004BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20241004BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20241004BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241004BHJP
C25B 9/77 20210101ALI20241004BHJP
C25B 9/67 20210101ALI20241004BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20241004BHJP
C25B 9/23 20210101ALN20241004BHJP
【FI】
H01M8/04007
H01M8/04 Z
C25B15/021
C25B15/08 302
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/77
C25B9/67
H01M8/12 101
C25B9/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024054067
(22)【出願日】2024-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2023058470
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 健司
(72)【発明者】
【氏名】長田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小代 卓史
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021BC05
4K021CA08
4K021CA12
4K021DB04
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC03
4K021EA06
5H126BB06
5H127AA06
5H127AA07
5H127AC15
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA32
5H127BA36
5H127BA37
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB27
5H127BB37
5H127CC19
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
5H127EE30
(57)【要約】
【課題】反応機器の内側から効率よく加熱可能な電気化学反応モジュールを提供する。
【解決手段】電気化学反応モジュールは、酸化剤となる第1ガスと還元剤となる第2ガスとの電気化学反応により電気エネルギを出力する、若しくは、還元剤となる第1ガスおよび酸化剤となる第2ガスを入力として第2ガスの電気分解により燃料を出力する反応機器(10)を備える。電気化学反応モジュールは、反応機器(10)に第1ガスを導く第1ガス流路(20)と、反応機器(10)に第2ガスを導く第2ガス流路(30)と、反応機器(10)から排出されるオフガスが流れるオフガス流路部(60)と、を備える。
第1ガス流路(20)および第2ガス流路(30)それぞれは、オフガス流路部(60)に隣接して配置されてオフガス流路部(60)の熱を受ける受熱部(33、222)を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学反応モジュールであって、
酸化剤となる第1ガスと還元剤となる第2ガスとの電気化学反応により電気エネルギを出力する、若しくは、還元剤となる第1ガスおよび酸化剤となる第2ガスを入力として第2ガスの電気分解により燃料を出力する反応機器(10、10A)と、
前記反応機器に第1ガスを導く第1ガス流路(20)と、
前記反応機器に第2ガスを導く第2ガス流路(30、40)と、
前記反応機器から排出されるオフガスが流れるオフガス流路部(60、60A)と、を備え、
前記第1ガス流路および前記第2ガス流路それぞれは、前記オフガス流路部に隣接して配置されて前記オフガス流路部の熱を受ける受熱部(33、222、43)を含んでいる、電気化学反応モジュール。
【請求項2】
前記第1ガス流路は、前記受熱部よりも下流側の部位(23)が、前記反応機器と対向するように配置されている、請求項1に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項3】
前記反応機器は、前記電気化学反応により電気エネルギを出力する燃料電池(10)であり、
前記オフガス流路部(60)には、前記反応機器から排出されるオフガスを燃焼させて燃焼ガスを生成し、当該燃焼ガスを燃焼ガス流路(64)に導出させる燃焼部(632)が設けられており、
前記第1ガス流路および前記第2ガス流路それぞれは、前記燃焼部に隣接して配置されて前記燃焼部の熱を受ける前記受熱部(33、222)を含んでいる、請求項1に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項4】
前記反応機器は、前記燃焼部に対して所定の間隔をあけて配置されており、
前記第1ガス流路は、前記反応機器のうち、前記燃焼部の熱を受ける部位以外の他の部位の少なくとも一部を囲むように配置されている、請求項3に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項5】
前記燃焼部と前記反応機器との間には、前記燃焼部の熱が前記反応機器に伝わることを抑える伝熱抑制部(631、SP、PS、24)が設けられている、請求項3に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項6】
前記伝熱抑制部は、前記オフガス流路部(60)の少なくとも一部を含んで構成されており、
前記オフガス流路部の一部(631)は、前記反応機器と前記燃焼部との間に配設されている、請求項5に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項7】
前記オフガス流路部は、前記反応機器から排出されるオフガスを第1ガスおよび第2ガスの一方と熱交換させる熱交換部(69)が含まれている、請求項6に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項8】
前記反応機器と前記燃焼部とは、前記第1ガス流路、前記第2ガス流路、および前記燃焼部のうち互いに隣接する位置での各々の並び方向に直交する直交方向において、互いに重なり合わないように前記並び方向においてずれた位置に配置されている、請求項3に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項9】
前記反応機器は、前記電気分解により燃料を出力する電解装置(10A)である、請求項1に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項10】
前記第1ガス流路に隣接して配置されて前記第1ガス流路を流れる第1ガスの温度を調整する温調ガスが流れる温調ガス流路(65)を備え、
前記温調ガス流路は、前記第1ガス流路を流れる第1ガスと温調ガスとを熱交換可能なように、前記第1ガス流路に隣接して配置されている、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の電気化学反応モジュール。
【請求項11】
前記温調ガス流路は、前記反応機器の周囲に温調ガスが導入されるように、前記反応機器の収容空間(BS)に接続されている、請求項10に記載の電気化学反応モジュール。
【請求項12】
前記反応機器に導入される第1ガスの温度が目標温度に維持されるように、前記温調ガス流路を流れる温調ガスと前記第1ガス流路を流れる第1ガスとの熱交換量を調整する調整部(661、671、68)を備える、請求項11に記載の電気化学反応モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池化学反応モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、起動時に発電可能な所望の温度に昇温させる必要がある。セルスタックを昇温させるための構成として、燃料電池からの排ガスを燃焼させて燃焼部、燃焼部で生じた燃焼ガスによって燃料電池に供給する酸化剤ガスおよび燃料ガスを含む反応ガスを加熱して、燃料電池を内側から加熱するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の燃料電池モジュールは、最も高温となる燃焼部の外側に燃料ガスの流通路が形成され、当該燃料ガスの流通路の外側に酸化剤ガスの流通路が形成されている。このような構成では、燃焼部の熱が、燃料ガス、酸化剤ガスの順に伝わることになり、燃料ガスの加熱が充分だとしても、酸化剤ガスの加熱が不充分となってしまう。この場合、燃料電池の内側からの加熱効率が悪くなることで、燃料電池の昇温に長時間を要する。このような課題は、燃料電池を反応機器として備える燃料電池モジュールに限らず、還元剤となる第1ガスおよび酸化剤となる第2ガスを入力として第2ガスの電気分解により燃料を生成する電解装置を反応機器として備えるモジュールにおいても生ずる。また、反応機器から排出される高温のオフガスの熱を利用して反応機器に供給するガスを昇温させる構成であれば、燃焼部の有無によらず、同様の課題が生じ得る。なお、以下では、燃料電池および電解装置の一方を反応機器として含むモジュールについて、電気化学反応モジュールとも呼ぶ、
【0005】
本開示は、反応機器の内側から効率よく加熱可能な電気化学反応モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
電気化学反応モジュールであって、
酸化剤となる第1ガスと還元剤となる第2ガスとの電気化学反応により電気エネルギを出力する、若しくは、還元剤となる第1ガスおよび酸化剤となる第2ガスを入力として第2ガスの電気分解により燃料を出力する反応機器(10、10A)と、
反応機器に第1ガスを導く第1ガス流路(20)と、
反応機器に第2ガスを導く第2ガス流路(30)と、
反応機器から排出されるオフガスが流れるオフガス流路部(60、60A)と、を備え、
第1ガス流路および第2ガス流路それぞれは、オフガス流路部に隣接して配置されてオフガス流路部の熱を受ける受熱部(33、222、43)を含んでいる。
【0007】
このように、第1ガス流路および第2ガス流路それぞれがオフガス流路部に隣接して配置されていれば、オフガス流路部の熱によって第1ガスおよび第2ガスの双方を充分に加熱することができる。これによると、第1ガスおよび第2ガスそれぞれの熱によって反応機器の内側から効率よく加熱することができる。このことは、反応機器の昇温に要する時間の短縮に寄与する。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る燃料電池モジュールを含むシステムの概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る燃料電池モジュールの模式的な縦断面図である。
【
図3】燃料電池モジュールの容器内でのセルスタックの配置態様を示す模式的な横断面図である。
【
図4】燃料電池の起動時の作動を説明するための説明図である。
【
図5】温調ガスを用いた酸化剤ガスの温度調整を説明するための説明図である。
【
図6】吸熱処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】放熱処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】熱源となるオフガス燃焼器の燃焼部から燃料電池への熱の伝わり方を説明するための説明図である。
【
図9】第2実施形態に係る燃料電池モジュールの縦断面の半分を示す模式的な断面図である。
【
図10】第3実施形態に係る燃料電池モジュールの縦断面の半分を示す模式的な断面図である。
【
図11】第4実施形態に係る燃料電池モジュールの縦断面の半分を示す模式的な断面図である。
【
図12】第5実施形態に係る水電解モジュールの模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0011】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1~
図8を参照して説明する。本実施形態では、
図1に示すように、本開示の電気化学反応モジュールを固体酸化物型の燃料電池10を備える燃料電池モジュール1に適用した例について説明する。
【0012】
燃料電池モジュール1は、燃料処理系統および電池系統を含み、これらを断熱材で覆うことで高温に保持するホットモジュールである。燃料電池モジュール1は、固体酸化物型の燃料電池10、空気予熱器22、改質器33、オフガス燃焼器63、容器70を含んでいる。本実施形態では、燃料電池10が、酸化剤となる第1ガスと還元剤となる第2ガスとの電気化学反応により電気エネルギを出力する“反応機器”に対応している。
【0013】
固体酸化物型の燃料電池10は、一般的にSOFC(Solid Oxide Fuel Cell の略)とも呼ばれ、作動温度が高温(例えば、500℃~1000℃)となるものである。燃料電池10は、還元剤となる燃料ガスおよび酸化剤となる酸化剤ガス(本例では空気中の酸素)の電気化学反応により電気エネルギを出力する燃料電池セルを複数有している。以下、燃料電池セルを単にセルと呼ぶ。なお、本実施形態では、酸化剤ガスが“第1ガス”に対応し、燃料ガスが“第2ガス”に対応している。
【0014】
セルは、電解質体、カソードを構成する空気極、アノードを構成する燃料極、空気流路や燃料流路を形成する図示しないセパレータを含んで構成されている。セルは、水素および一酸化炭素を燃料ガスとしている。この燃料ガスは、改質用原料である都市ガス(すなわち、メタンを主成分とするガス)を改質して生成される。なお、使用する改質用原料は、都市ガス以外の炭化水素系のガスやアンモニア等のように改質により水素を生成するガスが採用されていてもよい。なお、改質原料は、炭化水素系のガスやアンモニアに水素を混合した混合ガスであってもよい。
【0015】
セルは、以下の反応式F1、F2に示す水素および酸素の電気化学反応により外部回路に対して電気エネルギを出力する。
【0016】
(燃料極)2H2+2O2-→2H2O+4e- …(F1)
【0017】
(空気極)O2+4e-→2O2- …(F2)
また、セルは、以下の反応式F3、F4に示す一酸化炭素および酸素の電気化学反応により外部回路に対して電気エネルギを出力する。
【0018】
(燃料極)2CO+2O2-→2CO2+4e- …(F3)
【0019】
(空気極)O2+4e-→2O2- …(F4)
燃料電池10が出力する電力は、インバータINV等の電力変換器を介して負荷機器やバッテリに供給される。燃料電池10は、所定数のセルを積層して構成されるセルスタックCSを複数備える。セルスタックCSは、平板型のセルが所定の積層方向に積層されている。セルスタックCSを構成する所定数のセルは、電気的に直列に接続されている。セルスタックCSは、所定数のセルを一列に積層した積層体である。
【0020】
図1および
図2に示すように、燃料電池10は、空気予熱器22、改質器33、オフガス燃焼器63等とともに断熱性を有する容器70の内側に配置されている。容器70の内側における燃料電池10の配置形態については後述する。
【0021】
燃料電池10には、空気の流通経路である空気経路20が接続されている。空気経路20は、燃料電池10に酸化剤ガスを導く“酸化剤ガス流路”を構成するものであって、配管等によって構成される。空気経路20には、燃料電池10に空気を圧送する圧送ブロワ21、燃料電池10に供給する空気を加熱する空気予熱器22、スタック温調器23が設けられている。
【0022】
圧送ブロワ21は、大気中の空気を吸い込んで燃料電池10に供給する酸化剤ポンプである。圧送ブロワ21は、後述の電子制御部100からの制御信号によって作動が制御される電動式のブロワで構成されている。
【0023】
空気予熱器22は、燃料電池10の発電時に、圧送ブロワ21から圧送された空気をオフガス燃焼器63およびオフガス燃焼器63で生成された燃焼ガスと熱交換させて加熱する熱交換器である。空気予熱器22は、燃料電池10に供給する空気と燃料ガスとの温度差を縮小して、燃料電池10の発電効率の向上を図るために設けられている。
【0024】
具体的には、空気予熱器22は、後述する燃焼ガス経路64およびオフガス燃焼器63に隣接して配置されている。空気予熱器22は、燃焼ガスの熱を受ける上流側予熱器221、上流側予熱器221の下流側に配置されてオフガス燃焼器63の熱を受ける下流側予熱器222を有している。本実施形態では、下流側予熱器222が、オフガス燃焼器63の燃焼部632の熱を受ける“受熱部”を構成している。
【0025】
スタック温調器23は、空気予熱器22を通過した空気が流れるように、空気予熱器22と燃料電池10との間に接続されている。これにより、スタック温調器23は、セルスタックCSに供給される前の酸化剤ガスが流れる。
【0026】
スタック温調器23は、空気経路20における空気予熱器22の下流側予熱器222よりも下流側の部位である。スタック温調器23は、燃料電池10のセルスタックCSと熱交換可能なようにセルスタックCSと所定間隔をあけて対向して配置されている。スタック温調器23およびセルスタックCSは、燃料電池10の起動時にスタック温調器23の熱が輻射伝熱によってセルスタックCS側に伝わる。また、スタック温調器23およびセルスタックCSは、燃料電池10の発電時にセルスタックCSの熱がスタック温調器23側に輻射伝熱によって伝わる。
【0027】
スタック温調器23は、燃料電池10のうち、輻射によって燃焼部632の熱を受ける部位以外の他の部位の少なくとも一部を囲むように配置されている。具体的には、スタック温調器23は、後述の温調経路65と燃料電池10との間に配置される上流温調部231、燃料電池10を介して上流温調部231と向かい合う下流温調部232、上流温調部231と下流温調部232とを接続する中間温調部233を有する。
【0028】
上流温調部231は、空気予熱器22を通過した空気が流入する。中間温調部233は、上流温調部231を通過した空気が流入する。上流温調部231は、燃料電池10における燃焼部632の熱を受ける部位以外の一面と対向するように配置されている。また、上流温調部231は、後述の温調経路65に隣接して配置されている。上流温調部231を流れる空気は、温調経路65を流れる温調ガスと熱交換によって所望の温度に調整される。
【0029】
下流温調部232は、中間温調部233を通過した空気が流入する。下流温調部232は、燃料電池10を挟んで上流温調部231の反対側に配置されている。下流温調部232は、燃料電池10における上流温調部231と対向する上流対向面の裏側となる下流対向面と対向するように配置されている。
【0030】
中間温調部233は、一端部が上流温調部231に接続されて上流温調部231を通過した空気が流入する。中間温調部233は、他端部が下流温調部232に接続されて下流温調部232に空気を導出する。中間温調部233は、燃料電池10における燃焼部632の熱を受ける部位の裏側となる中間対向面と対向するように配置されている。換言すれば、中間温調部233は、燃料電池10を介して燃焼部632と向かい合う位置に配置されている。
【0031】
また、燃料電池10は、改質用原料や燃料ガスの流通経路である燃料経路30が接続されている。燃料経路30は、燃料電池10に燃料ガスを導く“燃料ガス流路”を構成するものであって、配管等によって構成される。燃料経路30には、上流側から順に、燃料ポンプ31、改質器33が設けられている。本実施形態では、燃料経路30が、反応機器に第2ガスを導く“第2ガス流路”を構成している。
【0032】
燃料ポンプ31は、燃料電池10側に向けて改質用原料を供給するためのポンプである。燃料ポンプ31は、後述の電子制御部100からの制御信号によって作動が制御される電動ポンプで構成されている。
【0033】
改質器33は、燃料ポンプ31から供給された改質用原料を、水蒸気を用いて改質して燃料ガスを生成するものである。改質器33は、例えば、ロジウムやルテニウム等の貴金属を含む水蒸気改質触媒を含んで構成されている。
【0034】
具体的には、改質器33は、改質用原料および水蒸気を混合した混合ガスを燃焼ガスと熱交換させて加熱するとともに、以下の反応式F5に示す改質反応、および反応式F6に示すシフト反応により燃料ガス(水素、一酸化炭素)を生成する。
【0035】
CH4+H2O→CO+3H2 …(F5)
CO+H2O→CO2+H2 …(F6)
ここで、改質器33における水蒸気改質は吸熱反応であり、高温となる条件下にて改質率が向上する特性を有している。本実施形態の改質器33は、オフガス燃焼器63およびオフガス燃焼器63で生成された燃焼ガスから受熱可能なように、オフガス燃焼器63および燃焼ガス経路64に隣接して配置されている。本実施形態では、改質器33が、燃料経路30においてオフガス燃焼器63の燃焼部632の熱を受ける“受熱部”を構成している。
【0036】
図示しないが、燃料経路30には、燃料ポンプ31と改質器33との間に水供給経路が接続されている。改質器33には、水供給経路に設けられた気化器で生成される水蒸気が供給されるようになっている。
【0037】
また、燃料電池10には、燃料電池10から排出するオフガスが流れるオフガス経路60が接続されている。具体的には、燃料電池10には、燃料電池10から排出される酸化剤オフガスが流れるオフ空気流路61が接続されるとともに、燃料電池10から排出される燃料オフガスが流れるオフ燃料流路62が接続されている。本実施形態では、オフガス経路60が“オフガス流路部”を構成している。
【0038】
オフガス経路60には、オフガス燃焼器63が接続されている。オフガス燃焼器63は、混合部631および燃焼部632を含んでいる。混合部631は、燃料電池10から排出されるオフガスを混合させるものである。混合部631は、オフガス経路60の一部を構成している。燃焼部632は、燃料電池10から排出されるオフガスを燃焼させて高温の燃焼ガスを生成し、当該燃焼ガスを燃焼ガス経路64に導出させるものである。
【0039】
本実施形態の燃焼部632は、オフ燃焼ガスに含まれる未反応燃料を燃焼させる燃焼触媒を有する触媒燃焼器として構成されている。燃焼触媒としては、例えば、未反応燃料を酸化する酸化触媒等が挙げられる。
【0040】
オフガス燃焼器63には、高温の燃焼ガスを流通させる燃焼ガス経路64が接続されている。燃焼ガス経路64は、オフガス燃焼器63で生成された燃焼ガスが導入される“燃焼ガス流路”を構成している。燃焼ガス経路64は、内部を流れる燃焼ガスの熱を有効活用すべく、改質器33、空気予熱器22等が隣接して配置されている。
【0041】
ここで、燃料電池モジュール1には、空気経路20に隣接して温調経路65が設けられている。温調経路65には、空気経路20を流れる空気の温度を調整するための温調ガスが流通する経路である。本実施形態では、温調経路65が“温調ガス流路”を構成している。
【0042】
温調経路65には、可燃ガス導入路66および低温ガス導入路67が接続されている。また、温調経路65には、可燃ガスを燃焼させて高温の温調ガスを生成するガスバーナ68が配置されている。
【0043】
可燃ガス導入路66は、温調経路65に可燃ガスを導く流路である。可燃ガス導入路66には、可燃ガス導入路66への可燃ガスの供給量を調整するガス調整部661が配置されている。
【0044】
低温ガス導入路67は、温調経路65に低温の温調ガスとして空気を導く流路である。低温ガス導入路67には、低温ガス導入路67への空気の供給量を調整する空気調整部671が配置されている。
【0045】
本実施形態の燃料電池モジュール1は、可燃ガス導入路66から温調経路65へ導入した可燃ガスをガスバーナ68で燃焼させたり、低温ガス導入路67から温調経路65へ空気を導入させたりすることによって適温の温調ガスを生成可能に構成されている。
【0046】
温調経路65は、燃焼部632から受熱した後の空気経路20を流れる空気と温調ガスとを熱交換可能なように、少なくとも一部が、空気経路20における下流側予熱器222の下流側に隣接して配置されている。本実施形態では、ガス調整部661、空気調整部671、ガスバーナ68が、燃料電池10に導入される空気の温度が目標温度に維持されるように、温調経路65を流れる温調ガスと空気経路20を流れる空気との熱交換量を調整する“調整部”を構成している。
【0047】
また、温調経路65は、燃料電池10の周囲に温調ガスが導入されるように、燃料電池10の電池収容空間BSに接続されている。これによると、温調ガスの熱を燃料電池10の温度調整にも有効活用することが可能になっている。
【0048】
燃料電池10、空気予熱器22、改質器33、オフガス燃焼器63は、断熱性を有する容器70の内側に配置されている。容器70は、燃料電池モジュール1の外殻を形成する。以下、容器70および容器70の内側における各種機器の配置態様等について
図2、
図3を参照しつつ説明する。
【0049】
図2に示すように、容器70は、多重の筒構造になっており、その内部に円柱状の空間とドーナツ状の空間が形成されている。具体的には、容器70は、略円形状の上壁部Wu、略円形状の下壁部Wd、筒形状の内筒部Wi、筒形状の外筒部Woを有する。上壁部Wuは、容器70における天板を構成している。下壁部Wdは、容器70における底板を構成している。内筒部Wiおよび外筒部Woは、容器70における側壁を構成している。内筒部Wiおよび外筒部Woは、この順序で筒径(すなわち、外径)が大きくなっている。内筒部Wiおよび外筒部Woは、軸心CLが一致するように配置されている。なお、内筒部Wiは、ガスバーナ68を収容可能な大きさになっている。外筒部Woは、内筒部Wiとの間にセルスタックCSを収容可能な大きさになっている。
【0050】
内筒部Wiの内側には、温調経路65が形成されている。上壁部Wuには、内筒部Wiの内側を覆う部位にガスバーナ68が取り付けられている。内筒部Wiの下方側には、温調経路65を流れる温調ガスを内筒部Wiと外筒部Woとの間に形成される燃料電池10の電池収容空間BSに導くための連通路PGが形成されている。
【0051】
内筒部Wiは、第1内筒壁Wi1と第2内筒壁Wi2とを有する二重壁構造になっている。第1内筒壁Wi1および第2内筒壁Wi2との間に形成される隙間流路は、上方部分が空気予熱器22を構成し、下方部分がスタック温調器23の上流温調部231を構成している。なお、第1内筒壁Wi1および第2内筒壁Wi2との間に形成される隙間流路には、上壁部Wuには、第1内筒壁Wi1および第2内筒壁Wi2との間の隙間流路に対応する位置に、空気経路20を構成する配管が接続されている。
【0052】
下壁部Wdは、第1下壁Wd1と第2下壁Wd2とを有する二重壁構造になっている。第1下壁Wd1および第2下壁Wd2との間に形成される隙間流路は、第1内筒壁Wi1および第2内筒壁Wi2との間に形成される隙間流路に接続されている。第1下壁Wd1および第2下壁Wd2との間に形成される隙間流路は、スタック温調器23の中間温調部233を構成している。
【0053】
外筒部Woは、第1外筒壁Wo1と第2外筒壁Wo2とを有する二重壁構造になっている。第1外筒壁Wo1および第2外筒壁Wo2との間に形成される隙間流路は、スタック温調器23の下流温調部232を構成している。第1外筒壁Wo1および第2外筒壁Wo2との間には、空気が流れる流路を外流路232aと内流路232bに分ける分離板DVが配置されている。下流温調部232は、中間温調部233から流入した空気が、外流路232aを通過した後に内流路232bに流れるように折り返しを有する流路構造になっている。このような流路構造になっていれば、下流温調部232の内流路232bと外流路232aとで空気の流れが向かい合わせとなり、下流温調部232の温度が均一化される。この結果、セルスタックCSの外側部分での温度ムラが抑制される。
【0054】
内筒部Wiと外筒部Woとの間に形成される空間は、下方部分が燃料電池10を収容する電池収容空間BSを構成し、上方部分が改質器33、オフガス燃焼器63等を収容する機器収容空間DSを構成している。電池収容空間BSおよび機器収容空間DSとの間には、仕切板SPが配置されている。
【0055】
電池収容空間BSには、例えば、
図3に示すように、複数のセルスタックCSが容器70の軸心CLを中心に放射状に配置されている。複数のセルスタックCSは、電池収容空間BSにおいて、軸心CLの周方向に等間隔あけて配置されている。なお、複数のセルスタックCS同士の間隔は、一致している必要はなく、一部が異なっていてもよい。
【0056】
複数のセルスタックCSには、それぞれ、空気経路20を構成する配管、燃料経路30を構成する配管、オフ燃料流路62を構成する配管が接続されている。また、複数のセルスタックCSは、電池収容空間BSにオフ空気を排出するようになっている。このため、電池収容空間BSは、オフ空気流路61の一部を構成している。
【0057】
機器収容空間DSには、改質器33、オフガス燃焼器63、燃焼ガス経路64、断熱材HI等が配置されている。具体的には、機器収容空間DSには、内筒部Wiにおける空気予熱器22を構成する部位に隣接してオフガス燃焼器63が配置され、オフガス燃焼器63の外側に改質器33が隣接して配置されている。換言すれば、燃料電池モジュール1は、酸化剤ガスが流れる空気予熱器22および燃料ガスが流れる改質器33それぞれが、オフガス燃焼器63に隣接して配置されている。
【0058】
オフガス燃焼器63は、燃焼部632の熱が燃料電池10に伝わるのを抑えるために、燃焼部632と燃料電池10とを間に混合部631が配置されている。本実施形態では、仕切板SPおよび混合部631が燃焼部632の熱が燃料電池10に伝わることを抑える“伝熱抑制部”として機能している。
【0059】
また、燃料電池10と燃焼部632とは、空気予熱器22、燃焼部632、改質器33の並び方向に直交する直交方向において、互いに重なり合わないように並び方向においてずれた位置に配置されている。
【0060】
本実施形態の空気予熱器22、燃焼部632、改質器33は、容器70の軸心CLが延びる軸方向に直交する方向に配置されている。このため、燃料電池10および燃焼部632は、空気予熱器22、燃焼部632、改質器33の並び方向である軸方向においてずれた位置に配置されている。具体的には、燃料電池10は、燃焼部632よりも容器70の軸心CLから離れた位置にオフセットして配置されている。
【0061】
次に、燃料電池モジュール1を含むシステムの電子制御部100について説明する。電子制御部100は、プロセッサ、メモリを含むマイクロコンピュータと、その周辺回路で構成されている。電子制御部100は、メモリに記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い出力側に接続された各種制御機器の作動を制御する。
【0062】
電子制御部100の入力側には、電池温度センサ、改質温度センサ、火炎検出器を含むセンサ群が接続されており、当該センサ群の検出結果が電子制御部100に入力されるようになっている。また、電子制御部100には、インバータINV、図示しない操作パネル等が接続されている。操作パネルには、燃料電池10の発電をオンオフするためのスタートスイッチ、燃料電池10の作動状態を表示するディスプレイ等が設けられている。インバータINVは、セルから掃引する電池を制御するための電流掃引機器である。
【0063】
一方、電子制御部100の出力側には、制御機器として、圧送ブロワ21、燃料ポンプ31、ガスバーナ68、空気調整部671、ガス調整部661等が接続されている。これら制御機器は、電子制御部100から出力される制御信号に応じて、その作動が制御される。
【0064】
次に、燃料電池モジュール1を含むシステムの全体的な作動について説明する。スタートスイッチがオンされると、電子制御部100は、燃料電池10を含む各種機器を適温に暖機させる起動処理を実行する。
【0065】
例えば、電子制御部100は、起動処理において、圧送ブロワ21および燃料ポンプ31を作動させる。燃料電池10の起動段階では、燃料電池10の温度が低く、燃料ガスおよび酸化剤ガスの電気化学反応が生じ難い。このため、燃料電池10に供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスは燃料電池10をそのまま通過し、オフガス燃焼器63で燃焼される。オフガス燃焼器63では、高温の燃焼ガスが生成される。
【0066】
図4に示すように、燃料電池10は、燃焼部632の熱が輻射伝熱によって、燃料電池10における燃焼部632に近接する部位に伝わることで昇温する。但し、燃料電池10と燃焼部632との間には、混合部631が介在しているので、燃料電池10における燃焼部632に近接する部位が過度に加熱されることは抑制される。
【0067】
燃料経路30を流れる燃料は、改質器33を通過する際に、燃焼ガスおよび燃焼部632の熱が対流伝熱によって伝わることで昇温する。改質器33で昇温した燃料ガスは、燃料電池10に供給される。燃料電池10は、その内側を通過する燃料ガスの熱が対流伝熱によって伝わることで昇温する。
【0068】
空気経路20を流れる空気は、空気予熱器22を通過する際に、燃焼ガスおよび燃焼部632の熱が対流伝熱によって伝わることで昇温する。空気予熱器22で昇温した空気は、スタック温調器23を介して、燃料電池10に供給される。燃料電池10は、その内側を通過する空気の熱が対流伝熱によって伝わることで昇温する。
【0069】
また、燃料電池10は、スタック温調器23を通過する空気の熱が輻射伝熱によって伝わることで昇温する。具体的には、燃料電池10は、燃料電池10における燃焼部632に近接する部位以外の部位が、上流温調部231、中間温調部233、下流温調部232の熱が輻射伝熱として伝わることで昇温する。
【0070】
ここで、燃料電池10は、燃焼部632から受熱する部位とスタック温調器23から受熱する部位との温度差が大きいと、各部位の温度差によって生ずる熱応力によって燃料電池10が破損する虞がある。
【0071】
このことを考慮し、電子制御部100は、燃料電池10の各部位の温度差を抑えるために、
図5に示すように、吸熱処理および放熱処理といった温調ガスによる空気の温度調整を実行するようになっている。
【0072】
吸熱処理は、空気経路20を流れる空気から温調ガスに熱を移動させて、空気経路20を流れる空気の温度上昇を抑える処理である。以下、電子制御部100が実行する吸熱処理の一例について、
図6を参照しつつ説明する。
【0073】
図6に示すように、電子制御部100は、ステップS100にて、電池温度センサ等によって燃料電池10へ流入する空気の温度を検出する。そして、電子制御部100は、ステップS110にて、空気の温度が所定の高温閾値以上であるか否かを判定する。高温閾値は、例えば、燃料電池10における燃焼部632から受熱する部位の温度を基準に設定される。
【0074】
空気の温度が高温閾値未満の場合、空気経路20を流れる空気が過度に高温になっている状態ではないと予測される。このため、空気の温度が高温閾値未満の場合、電子制御部100は、ステップS120にて、温調経路65に供給する空気の流量を維持する。
【0075】
一方、空気の温度が高温閾値以上の場合、空気経路20を流れる空気が過度に高温になっている状態であると予測される。このため、電子制御部100は、ステップS130にて、温調経路65に供給する空気の流量を増加させる。これによると、空気経路20を流れる空気と温調経路65を流れる空気との熱交換が促進され、空気経路20を流れる空気から温調ガスへの熱の移動量が増える。この結果、空気経路20を流れる空気の温度が低下して、空気経路20を流れる空気が過度に高温になっている状態が改善される。
【0076】
また、放熱処理は、温調ガスから空気経路20を流れる空気に熱を移動させて、空気経路20を流れる空気の温度上昇を促す処理である。以下、電子制御部100が実行する放熱処理の一例について、
図7を参照しつつ説明する。
【0077】
図7に示すように、電子制御部100は、ステップS200にて、電池温度センサ等によって燃料電池10へ流入する空気の温度を検出する。そして、電子制御部200は、ステップS210にて、空気の温度が所定の低温閾値未満であるか否かを判定する。低温閾値は、例えば、燃料電池10における燃焼部632から受熱する部位の温度を基準に設定される。なお、制御ハンチングを抑えるために、低温閾値は、高温閾値よりも低い値に設定される。
【0078】
空気の温度が低温閾未満の場合、空気経路20を流れる空気が過度に低温になっている状態であると予測される。このため、電子制御部100は、ステップS220にて、例えば、温調経路65に可燃ガスを供給するとともに当該可燃ガスをガスバーナ68で燃焼させることで、温調ガスの熱源をオンする。これによると、空気経路20を流れる空気と温調経路65を流れる空気との熱交換が促進され、空気経路20を流れる空気から温調ガスから空気経路20への熱の移動量が増える。この結果、空気経路20を流れる空気が昇温して、空気経路20を流れる空気が過度に低温になっている状態が改善される。
【0079】
温調ガスの熱源をオンした後、電子制御部200は、ステップS230にて、空気の温度が所定の低温閾値未満であるか否かを判定する。この結果、空気の温度が低温閾未満の場合はステップS220に戻り、空気経路20を流れる空気の加熱を継続する。
【0080】
一方、空気の温度が低温閾値以上である場合、空気経路20を流れる空気が過度に低温になっている状態ではないと予測される。このため、ステップS210またはステップS230で空気の温度が低温閾値以上と判定されると、電子制御部100は、ステップS240に移行し、温調経路65への可燃ガスの供給を停止して温調ガスの熱源をオフする。
【0081】
本実施形態の燃料電池モジュール1は、吸熱処理および放熱処理といった温調ガスによる空気の温度調整によって、燃焼部632から受熱する部位とスタック温調器23から受熱する部位との温度差が縮小されようになっている。なお、吸熱処理および放熱処理は、燃料電池10の起動時だけでなく、発電時に実行されるようになっていてもよい。
【0082】
このような起動処理によって、セルスタックCSが燃料電池10の発電に適した温度(例えば、500℃以上)に達すると、電子制御部100は、燃料電池10に発電動作を行わせる発電処理を実行する。例えば、電子制御部100は、発電処理時に、燃料電池10に対して発電に適した量の空気および燃料ガスが供給されるように圧送ブロワ21、燃料ポンプ31等を制御する。
【0083】
以上説明した燃料電池モジュール1は、燃料電池10と、酸化剤ガス流路としての空気経路20と、燃料ガス流路としての燃料経路30と、オフガスを燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼部632と、を備える。そして、空気経路20および燃料経路30それぞれは、燃焼部632に隣接して配置されて燃焼部632の熱を受ける“受熱部”を含んでいる。
【0084】
このように、燃料経路30よび空気経路20それぞれが燃焼部632に隣接して配置されていれば、
図4に示すように、燃焼部632の熱を対流伝熱によって、燃料電池10へ導く空気および燃料ガスの双方を充分に加熱することができる。そして、燃焼部632の熱で充分に加熱された燃料ガスおよび酸化剤ガスが燃料電池10に供給されることで、
図8に示すように、燃料ガスおよび酸化剤ガスそれぞれの熱が対流伝熱によって燃料電池10の内側に伝えられる。このように、本実施形態の燃料電池モジュール1は、燃料電池10の内側から効率よく加熱することができるので、燃料電池10を短時間で所望の温度に昇温させることができる。
【0085】
また、本実施形態の燃料電池モジュール1は、以下の特徴を備える。
【0086】
(1)空気経路20は、“受熱部”を構成する空気予熱器22よりも下流側の部位となるスタック温調器23が、燃料電池10と対向するように配置されている。これによると、燃料ガスおよび酸化剤ガスそれぞれの熱によって燃料電池10の内側を加熱するだけでなく、スタック温調器23から燃料電池10への輻射伝熱によって燃料電池10の外側を加熱することができる。特に、空気経路20における燃料電池10に対向するスタック温調器23には、燃焼部632の熱によって充分に加熱された後の空気流れるので、空気経路20から燃料電池10への輻射伝熱によって燃料電池10外側を充分に加熱することができる。このように、燃料電池10の内側および外側を加熱可能になっていれば、燃料電池10の昇温に要する時間を短縮することができる。
【0087】
(2)燃料電池10は、燃焼部632に対して所定の間隔をあけて配置されている。空気経路20は、燃料電池10のうち、燃焼部632の熱を受ける部位以外の他の部位の少なくとも一部を囲むように配置されている。具体的には、空気経路20に設けられたスタック温調器23は、燃料電池10を介して上流温調部231と向かい合う下流温調部232、上流温調部231と下流温調部232とを接続する中間温調部233を有する。中間温調部233は、燃料電池10を介して燃焼部632と向かいう合う位置に配置されている。
【0088】
従来技術の如く、単に、燃焼部632が燃料電池10の上部に配置されている構造になっていると、燃焼部632で生ずる火炎からの輻射伝熱によって燃料電池10の上部が集中して加熱されることで、燃料電池10の上下の温度差が拡大してしまう。このことは、熱応力による燃料電池10の破損を招く要因となることから好ましくない。
【0089】
これに対して、本実施形態の燃料電池モジュール1は、燃料電池10のうち、燃焼部632の熱を受ける部位以外の部位が、空気経路20のうち、燃焼部632の熱によって昇温した後の空気が流れるスタック温調器23で囲まれている。これによると、スタック温調器23の熱を輻射伝熱によって、燃料電池10における燃焼部632の熱を受ける部位以外の部位を昇温させることができる。この結果、燃料電池10における燃焼部632に対向する部位と他の部位との温度差を縮小させることができ、熱応力による燃料電池10の破損を回避することができる。
【0090】
(3)燃焼部632と燃料電池10との間には、燃焼部632の熱が燃料電池10に伝わることを抑える伝熱抑制部が設けられている。これによれば、燃料電池10の一部が燃焼部632の熱によって過度に加熱されることを抑制することができるので、燃料電池10を保護しつつ、燃料電池10を適温に昇温または維持させることができる。
【0091】
(4)上記の伝熱抑制部は、燃料電池10から排出されるオフガスを混合させる混合部631を含んでいる。この混合部631は、オフガス経路60の一部を構成している。そして、混合部631は、燃料電池10と燃焼部632との間に配設されている。このように、オフガス経路60の一部である混合部631を伝熱抑制部として機能するように配置すれば、専用品の追加が必要なく、簡易な態様で、燃料電池10を保護しつつ、燃料電池10を適温に昇温させることができる。
【0092】
(5)燃料電池10と燃焼部632とは、燃料経路30、空気経路20、および燃焼部632のうち各々の並び方向に直交する直交方向において、互いに重なり合わないように前記並び方向においてずれた位置に配置されている。このように、燃料電池10と燃焼部632とのレイアウトを工夫することによっても、燃焼部632の熱によって燃料電池10が偏った温度分布になることを抑えることができる。
【0093】
(6)燃料電池モジュール1は、空気経路20に隣接して配置されて空気経路20を流れる空気の温度を調整する温調ガスが流れる温調経路65が設けられている。そして、温調経路65は、燃焼部632から受熱した後の空気と温調ガスとを熱交換可能なように、少なくとも一部が、空気経路20における空気予熱器22の下流側に隣接して配置されている。これによると、温調ガスとの熱交換によって空気経路20を流れる空気の温度を調整して、燃料電池10へ適温の空気を供給することができる。
【0094】
(7)温調経路65は、燃料電池10の周囲に温調ガスが導入されるように、燃料電池10を収容する電池収容空間BSに接続されている。これによると、空気経路20を流れる空気と熱交換後の温調ガスの熱を対流伝熱によって燃料電池10に伝えて燃料電池10を外側から昇温させることができる。
【0095】
(8)燃料電池モジュール1は、燃料電池10に導入される空気の温度が目標温度に維持されるように、温調経路65を流れる温調ガスと空気経路20を流れる空気との熱交換量を調整する“調整部”を備える。これによると、燃料電池10へ適温の空気を供給して、燃料電池10の内側から燃料電池10の温度を適温に調整することができる。
【0096】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図9を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0097】
図9に示すように、本実施形態のオフガス燃焼器63は、燃焼部632が触媒燃焼によってオフガスを燃焼させるものではなく、点火プラグ633を有し、当該点火プラグ633によってオフガスを燃焼させるように構成されている。本実施形態では、点火プラグ633によってオフガスを燃焼させるオフガス燃焼器63を例示しているが、オフガス燃焼器63は、自己着火によってオフガスを燃焼させるものであってもよい。自己着火型のオフガス燃焼器63については、点火プラグ633は必須ではない。
【0098】
また、オフガス燃焼器63は、混合部631が省略されている。その代わり、燃焼部632と燃料電池10との間には、燃焼部632の熱が燃料電池10に伝わることを抑制するために、燃焼部632と燃料電池10とを離す離隔空間PSが形成されている。この離隔空間PSが設けられていることで、燃焼部632と燃料電池10との間に充分な距離Lが確保されている。本実施形態では離隔空間PSが“伝熱抑制部”を構成している。
【0099】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の燃料電池モジュール1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0100】
また、本実施形態の燃料電池モジュール1は、以下の特徴を備える。
【0101】
(1)本実施形態の伝熱抑制部は、燃料電池10と燃焼部632とを離す離隔空間PSを含んでいる。これによれば、専用品の追加が必要なく、簡易な態様で、燃料電池10を保護しつつ、燃料電池10を適温に昇温させることができる。
【0102】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図10を参照して説明する。本実施形態では、第2実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0103】
図10に示すように、本実施形態の燃料電池モジュール1は、第2実施形態で説明した離隔空間PSに対応する位置に、空気経路20の一部が遮熱部位24として配設されている。
【0104】
燃焼部632の熱は、遮熱部位24を介して燃料電池10に伝わる。このため、遮熱部位24によって、燃焼部632の熱が燃料電池10に伝わることが抑制される。本実施形態では遮熱部位24が“伝熱抑制部”を構成している。
【0105】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の燃料電池モジュール1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0106】
また、本実施形態の燃料電池モジュール1は、以下の特徴を備える。
【0107】
(1)本実施形態の伝熱抑制部は、燃料電池10と燃焼部632との配設された空気経路20の一部によって構成されている。これによれば、専用品の追加が必要なく、簡易な態様で、燃料電池10を保護しつつ、燃料電池10を適温に昇温させることができる。特に、本例の構成は、空気経路20における燃焼部632からの受熱面積を拡大させることができるので、燃焼部632の熱によって空気経路20を流れる空気を充分に昇温させることが可能となる。
【0108】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、
図11を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0109】
図11に示すように、本実施形態の燃料電池モジュール1は、オフガス経路60の一部を構成する混合部631が、燃料電池10とオフガス燃焼器63との間に配置されている。混合部631は、オフガス燃焼器63の熱を受けることで昇温する。混合部631の温度が高くなり過ぎると、オフガスが自着火する虞がある。混合部631でオフガスが自着火すると、その熱が燃料電池10に伝わってしまう。このことは、燃料電池10が偏った温度分布になる要因となることから好ましくない。
【0110】
このことを考慮して、オフガス経路60には、燃料電池10から排出されるオフガスと燃料経路30を流れる燃料ガスと熱交換させる熱交換部69が設けられている。本実施形態の熱交換部69は、混合部631に流入する前のオフガスを低温の燃料ガスと熱交換させて冷却する冷却として機能する。なお、熱交換部69は、混合部631に流入する前のオフガスを低温の酸化剤ガスと熱交換させるように構成されていてもよい。また、熱交換部69は、混合部631に流入して混合されたオフガスを低温の燃料ガスおよび酸化剤ガスの少なくとも一方と熱交換させるように構成されていてもよい。
【0111】
また、本実施形態の下流温調部232は、内流路232bが省略され、外流路232aおよび外流路232aを通過した燃料ガスを燃料電池10に導くガス配管を有する流路構造になっている。これによっても、輻射伝熱によってセルスタックCSの外側部分を昇温させることができる。
【0112】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の燃料電池モジュール1は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0113】
オフガス経路60は、燃料電池10から排出されるオフガスを酸化剤となる空気および還元剤となる燃料ガスの少なくとも一方と熱交換させる熱交換部69が含まれている。これによれば、オフガス経路60を流れるオフガスの温度を適切に調整して、意図しないオフガスの自着火を抑制することができる。熱交換部69は、オフガス経路60における混合部631の上流側に構成されていてもよいし、オフガス経路60における混合部631に構成されていてもよい。
【0114】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、
図12を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0115】
本実施形態では、
図12に示すように、本開示の電気化学反応モジュールを固体酸化物型の電解装置10Aを備える水電解モジュール1Aに適用した例について説明する。
【0116】
水電解モジュール1Aは、固体酸化物型の電解装置10A、空気予熱器22、気化器43、容器70を含んでいる。本実施形態では、電解装置10Aが、還元剤となる第1ガスおよび酸化剤となる第2ガスを入力として燃料を出力する“反応機器”に対応している。
【0117】
固体酸化物型の電解装置10Aは、一般的にSOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell の略)とも呼ばれ、作動温度が高温(例えば、500℃~1000℃)となるものである。電解装置10Aは、還元剤となる空気および酸化剤となる水蒸気を入力として、水蒸気を酸素と水素に分離する電解セルを複数有している。なお、本実施形態では、空気が“第1ガス”に対応し、水蒸気が“第2ガス”に対応している。
【0118】
電解セルは、電解質体、カソード、アノード、空気流路や水蒸気流路を形成する図示しないセパレータを含んで構成されている。電解セルは、電気エネルギによって水蒸気を水素と酸素に分離して、水素を燃料として出力する。
【0119】
具体的には、電解セルは、電源PWから電力が供給されることで、以下の反応式F7~F9に示す水蒸気の電気分解により水素および酸素を分離して出力する。
【0120】
(アノード)2O2-→O2+4e- …(F7)
(カソード)H2O+2e-→H2+O2- …(F8)
(全体)2H2O→2H2+O2 …(F9)
【0121】
電解装置10Aは、所定数の電解セルを積層して構成される。電解装置10Aは、燃料電池10と同様にセルスタックCSとして構成されている。電解装置10Aを構成する所定数の電解セルは、電気的に直列に接続されている。
【0122】
電解装置10Aには、空気の流通経路である空気経路20が接続されている。空気経路20は、電解装置10Aに還元剤となるガスを導く“還元剤ガス流路”を構成する。空気経路20には、電解装置10Aに空気を圧送する圧送ブロワ21、電解装置10Aに供給する空気を加熱する空気予熱器22、スタック温調器23が設けられている。圧送ブロワ21、空気予熱器22、スタック温調器23は、第1実施形態で説明したものと同様に構成されている。本実施形態では、空気経路20が、反応機器に第1ガスを導く“第1ガス流路”を構成している。
【0123】
また、電解装置10Aは、水経路40が接続されている。水経路40は、電解装置10Aに酸化剤となる水蒸気を導く“酸化剤ガス流路”を構成するものであって、配管等によって構成される。水経路40には、上流側から順に、水ポンプ41、気化器43が設けられている。本実施形態では、水経路40が、反応機器に第2ガスを導く“第2ガス流路”を構成している。
【0124】
水ポンプ41は、電解装置10A側に向けて水を供給するためのポンプである。水ポンプ41は、例えば、電動ポンプで構成されている。なお、市水を利用する場合、水ポンプ41は不要である。
【0125】
気化器43は、水ポンプ41から供給された水を気化させるものである。気化器43は、電解装置10Aから排出されるオフガスから受熱可能なように、オフガス経路60に隣接して配置されている。本実施形態では、気化器43が、燃料経路30においてオフガスの熱を受ける“受熱部”を構成している。
【0126】
また、電解装置10Aには、電解装置10Aから排出するオフガスが流れるオフガス経路60Aが接続されている。具体的には、電解装置10Aには、電解装置10Aから排出される高温の酸素が流れる酸素流路61Aが接続されるとともに、電解装置10Aから排出される高温の水素が流れる水素流路62Aが接続されている。本実施形態では、オフガス経路60Aが“オフガス流路部”を構成している。
【0127】
オフガス経路60Aは、電解装置10Aにて昇温された水素および酸素が流れる。オフガス経路60Aは、水素および酸素といったオフガスの熱を有効活用すべく、気化器43、空気予熱器22等が隣接して配置されている。なお、本実施形態のオフガス経路60Aには、第1実施形態で説明したオフガス燃焼器63が設けられていない。
【0128】
ここで、水電解モジュール1Aには、空気経路20に隣接して温調経路65が設けられている。温調経路65には、空気経路20を流れる空気の温度を調整するための温調ガスが流通する経路である。本実施形態では、温調経路65が“温調ガス流路”を構成している。この温調経路65は、可燃ガス導入路66および低温ガス導入路67が接続されている。また、温調経路65には、可燃ガスを燃焼させて高温の温調ガスを生成するガスバーナ68が配置されている。そして、水電解モジュール1Aは、可燃ガス導入路66から温調経路65へ導入した可燃ガスをガスバーナ68で燃焼させたり、低温ガス導入路67から温調経路65へ空気を導入させたりすることによって適温の温調ガスを生成可能に構成されている。
【0129】
可燃ガス導入路66は、温調経路65に可燃ガスを導く流路である。可燃ガス導入路66には、可燃ガス導入路66への可燃ガスの供給量を調整するガス調整部661が配置されている。また、低温ガス導入路67は、温調経路65に低温の温調ガスとして空気を導く流路である。低温ガス導入路67には、低温ガス導入路67への空気の供給量を調整する空気調整部671が配置されている。
【0130】
温調経路65は、空気経路20を流れる空気と温調ガスとを熱交換可能なように、少なくとも一部が、空気経路20における下流側予熱器222の下流側に隣接して配置されている。本実施形態では、ガス調整部661、空気調整部671、ガスバーナ68が、燃料電池10に導入される空気の温度が目標温度に維持されるように、温調経路65を流れる温調ガスと空気経路20を流れる空気との熱交換量を調整する“調整部”を構成している。
【0131】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の水電解モジュール1Aは、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0132】
本実施形態の水電解モジュール1Aは、以下の特徴を備える。
(1)本実施形態の水電解モジュール1Aは、電解装置10Aと、第1ガス流路としての空気経路20と、第2ガス流路としての水経路40と、電解装置10Aから排出されるオフガスが流れるオフガス経路60Aと、を備える。そして、空気経路20および水経路40それぞれは、オフガス経路60Aに隣接して配置されてオフガス経路60Aの熱を受ける“受熱部”を含んでいる。
【0133】
このように、水経路40よび空気経路20それぞれがオフガス経路60Aに隣接して配置されていれば、オフガス経路60Aの熱を対流伝熱によって、電解装置10Aへ導く空気および水蒸気の双方を充分に加熱することができる。そして、オフガス経路60Aの熱で充分に加熱された水蒸気および空気が電解装置10Aに供給されることで、水蒸気および空気それぞれの熱が対流伝熱によって電解装置10Aの内側に伝えられる。このように、本実施形態の水電解モジュール1Aは、電解装置10Aの内側から効率よく加熱することができるので、電解装置10Aを短時間で所望の温度に昇温させることができる。
【0134】
(2)空気経路20は、“受熱部”を構成する空気予熱器22よりも下流側の部位となるスタック温調器23が、電解装置10Aと対向するように配置されている。これによると、水蒸気および酸化剤ガスそれぞれの熱によって電解装置10Aの内側を加熱するだけでなく、スタック温調器23から電解装置10Aへの輻射伝熱によって電解装置10Aの外側を加熱することができる。
【0135】
(3)水電解モジュール1Aは、空気経路20に隣接して配置されて空気経路20を流れる空気の温度を調整する温調ガスが流れる温調経路65が設けられている。そして、温調経路65は、空気経路20を流れる空気と温調ガスとを熱交換可能なように、空気経路20に隣接して配置されている。これによると、温調ガスとの熱交換によって空気経路20を流れる空気の温度を調整して、電解装置10Aへ適温の空気を供給することができる。
【0136】
(4)温調経路65は、電解装置10Aの周囲に温調ガスが導入されるように、電解装置10Aを収容する収容空間BSに接続されている。これによると、空気経路20を流れる空気と熱交換後の温調ガスの熱を対流伝熱によって電解装置10Aに伝えて電解装置10Aを外側から昇温させることができる。
【0137】
(5)水電解モジュール1Aは、電解装置10Aに導入される空気の温度が目標温度に維持されるように、温調経路65を流れる温調ガスと空気経路20を流れる空気との熱交換量を調整する“調整部”を備える。これによると、電解装置10Aへ適温の空気を供給して、電解装置10Aの内側から電解装置10Aの温度を適温に調整することができる。
【0138】
(第4実施形態の変形例)
第4実施形態では、水蒸気を電気分解して水素を燃料として出力する電解装置10Aについて説明したが、電解装置10Aへ供給するガス等は、上述したものに限定されない。電解装置10Aは、例えば、水蒸気および二酸化炭素の混合ガスを電気分解してメタンを燃料として出力するように構成されていてもよい。この場合は、水蒸気および二酸化炭素の混合ガスが“第2ガス”に対応する。
【0139】
第4実施形態では、電解装置10Aに対して還元剤として空気が供給されるようになっているが、電解装置10Aへ供給するガス等は、上述したものに限定されない。電解装置10Aは、例えば、アノードに対して、空気の代わりに窒素がパージガスとして供給されるように構成されていてもよい。この場合は、窒素が“第1ガス”に対応する。
【0140】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0141】
上述の実施形態のスタック温調器23は、燃料電池10のうち、燃焼部632の熱を受ける部位以外の他の部位を囲むために、上流温調部231、下流温調部232、中間温調部233を有しているが、これに限定されない。スタック温調器23は、例えば、下流温調部232および中間温調部233が省略されていてもよい。また、下流温調部232は、外流路232aを通過した空気が折り返して内流路232bに流入する流路構造になっているものを例示したが、これに限らず、例えば、外流路232aだけを有する流路構造になっていてもよい。なお、スタック温調器23は、燃料電池モジュール1に必須の構成ではなく、省略されていてもよい。すなわち、空気経路20は、受熱部を構成する空気予熱器22よりも下流側が、燃料電池10と対向しないように配置されていてもよい。
【0142】
上述の実施形態の如く、燃料電池モジュール1は、燃焼部632と燃料電池10との間に、燃焼部632の熱が燃料電池10に伝わることを抑える伝熱抑制部が設けられていることが望ましいが、そのようになっていなくてもよい。なお、オフガス燃焼器63は、必須ではなく、省略されていてもよい。
【0143】
上述の実施形態の如く、燃料電池10と燃焼部632とは、燃料経路30、空気経路20、および燃焼部632のうち互いに隣接する位置での各々の並び方向においてずれた位置に配置されていることが望ましいが、そのようになっていなくてもよい。
【0144】
上述の如く、燃料電池モジュール1には、空気経路20を流れる空気の温度を調整する温調ガスが流れる温調経路65が設けられていることが望ましいが、温調経路65は省略されていてもよい。なお、温調経路65が設けられている場合、温調経路65は、燃料電池10が収容される電池収容空間BSに接続されていなくてもよい。また、温調経路65は、吸熱処理および放熱処理の一方を実行可能に構成されていてもよい。
【0145】
上述の実施形態の燃料電池モジュール1は、改質器33を備えているが、これに限定されない。燃料ガスは燃料電池10の内部での酸化改質反応等によっても生成可能であるため、改質器33は、燃料電池モジュール1に必須の構成ではなく、省略されていてもよい。なお、燃料電池モジュール1は、改質用燃料原料ではなく、燃料ガスが供給されるようになっていてもよい。この場合も改質器33は不要である。
【0146】
上述の実施形態では、ガスバーナ68で可燃ガスを燃焼させることで、高温の温調ガスを生成するようになっているが、これに限定されず、電気ヒータ等によって高温の温調ガスを生成するようになっていてもよい。
【0147】
上述の実施形態では、複数のセルスタックCSが、電池収容空間BSに放射状に配置されているものを例示したが、セルスタックCSの配置形態は、これに限定されない。複数のセルスタックCSは、例えば、軸心CLに沿って並んで配置されていてもよい。この場合、電池収容空間BSは、セルスタックCSの配置に合わせた形状になっていてもよい。また、電池収容空間BSに配置するセルスタックCSの数は、上述したものに限定されない。例えば、電池収容空間BSに単一のセルスタックCSが配置されていてもよい。
【0148】
上述の実施形態では、本開示の燃料電池モジュール1を固体酸化物型の燃料電池10を備える燃料電池モジュール1を含むシステムに適用した例について説明したが、燃料電池モジュール1の適用対象はこれに限定されない。燃料電池モジュール1は、例えば、固体電解質膜を有する燃料電池(すなわち、PEFC)等の他の燃料電池を備えるシステムに広く適用できる。
【0149】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0150】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0151】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0152】
[本開示の観点]
[第1の観点]
電気化学反応モジュールであって、
酸化剤となる第1ガスと還元剤となる第2ガスとの電気化学反応により電気エネルギを出力する、若しくは、還元剤となる第1ガスおよび酸化剤となる第2ガスを入力として第2ガスの電気分解により燃料を出力する反応機器(10、10A)と、
前記反応機器に第1ガスを導く第1ガス流路(20)と、
前記反応機器に第2ガスを導く第2ガス流路(30、40)と、
前記反応機器から排出されるオフガスが流れるオフガス流路部(60)と、を備え、
前記第1ガス流路および前記第2ガス流路それぞれは、前記オフガス流路部に隣接して配置されて前記オフガス流路部の熱を受ける受熱部(33、222、43)を含んでいる、電気化学反応モジュール。
【0153】
[第2の観点]
前記第1ガス流路は、前記受熱部よりも下流側の部位(23)が、前記反応機器と対向するように配置されている、第1の観点に記載の電気化学反応モジュール。
【0154】
[第3の観点]
前記反応機器は、前記電気化学反応により電気エネルギを出力する燃料電池(10)であり、
前記オフガス流路部(60)には、前記反応機器から排出されるオフガスを燃焼させて燃焼ガスを生成し、当該燃焼ガスを燃焼ガス流路(64)に導出させる燃焼部(632)が設けられており、
前記第1ガス流路および前記第2ガス流路それぞれは、前記燃焼部に隣接して配置されて前記燃焼部の熱を受ける前記受熱部(33、222)を含んでいる、第1または第2の観点に記載の電気化学反応モジュール。
【0155】
[第4の観点]
前記反応機器は、前記燃焼部に対して所定の間隔をあけて配置されており、
前記酸化剤ガス流路は、前記反応機器のうち、前記燃焼部の熱を受ける部位以外の他の部位の少なくとも一部を囲むように配置されている、第3の観点に記載の電気化学反応モジュール。
【0156】
[第5の観点]
前記燃焼部と前記反応機器との間には、前記燃焼部の熱が前記反応機器に伝わることを抑える伝熱抑制部(631、SP、PS、24)が設けられている、第3または第4の観点に記載の電気化学反応モジュール。
【0157】
[第6の観点]
前記伝熱抑制部は、前記オフガス流路部(60、60A)の少なくとも一部を含んで構成されており、
前記オフガス流路部の一部(631)は、前記反応機器と前記燃焼部との間に配設されている、第5の観点に記載の電気化学反応モジュール。
【0158】
[第7の観点]
前記オフガス流路部は、前記反応機器から排出されるオフガスを第1ガスおよび第2ガスの一方と熱交換させる熱交換部(69)が含まれている、第6の観点に記載の電気化学反応モジュール。
【0159】
[第8の観点]
前記反応機器と前記燃焼部とは、前記第1ガス流路、前記第2ガス流路、および前記燃焼部のうち互いに隣接する位置での各々の並び方向に直交する直交方向において、互いに重なり合わないように前記並び方向においてずれた位置に配置されている、第3ないし第7の観点のいずれか1つに記載の電気化学反応モジュール。
【0160】
[第9の観点]
前記反応機器は、前記電気分解により燃料を出力する電解装置(10A)である、第1または第2の観点に記載の電気化学モジュール。
【0161】
[第10の観点]
前記第1ガス流路に隣接して配置されて前記第1ガス流路を流れる第1ガスの温度を調整する温調ガスが流れる温調ガス流路(65)を備え、
前記温調ガス流路は、前記第1ガス流路を流れる第1ガスと温調ガスとを熱交換可能なように、前記第1ガス流路に隣接して配置されている、第1ないし第9の観点のいずれか1つに記載の電気化学モジュール。
【0162】
[第11の観点]
前記温調ガス流路は、前記反応機器の周囲に温調ガスが導入されるように、前記反応機器の収容空間(BS)に接続されている、第10の観点に記載の電気化学反応モジュール。
【0163】
[第12の観点]
前記反応機器に導入される第1ガスの温度が目標温度に維持されるように、前記温調ガス流路を流れる温調ガスと前記第1ガス流路を流れる第1ガスとの熱交換量を調整する調整部(661、671、68)を備える、第11の観点に記載の電気化学反応モジュール。
【符号の説明】
【0164】
1 燃料電池モジュール
1A 水電解モジュール
10 燃料電池
10A 電解装置
20 空気経路(酸化剤ガス流路)
222 下流側予熱器(受熱部)
30 燃料経路(燃料ガス流路)
33 改質器(受熱部)
63 オフガス経路(オフガス流路部)
64 燃焼ガス経路(燃焼ガス流路)