(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146902
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】発光デバイス
(51)【国際特許分類】
H10K 50/19 20230101AFI20241004BHJP
H10K 71/20 20230101ALI20241004BHJP
【FI】
H10K50/19
H10K71/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056145
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2023059114
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 広美
(72)【発明者】
【氏名】渡部 剛吉
(72)【発明者】
【氏名】大澤 信晴
(72)【発明者】
【氏名】福崎 真也
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB06
3K107BB07
3K107CC12
3K107CC14
3K107CC21
3K107CC35
3K107CC45
3K107DD52
3K107FF04
3K107GG13
(57)【要約】
【課題】高精細な表示装置に好適に適用可能なタンデム型発光デバイスを提供する。
【解決手段】第1の電極と、第1の電極に対向する第2の電極と、第1の電極および第2の電極の間に、第1の発光層と、第2の発光層と、を有し、第1の発光層および第2の発光層の間に、第1の層を有し、第1の層のGSP_slope(mV/nm)は、第1の発光層のGSP_slope(mV/nm)と正負の符号が逆の値を示す発光デバイス。(ただし、GSP_slope(mV/nm)は、膜の表面の電位がV(mV)、膜厚がd(nm)であるときに、V/dで表されるパラメータである。)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
前記第1の電極に対向する第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極の間に、第1の発光層と、第2の発光層と、を有し、
前記第1の発光層および前記第2の発光層の間に、第1の層を有し、
前記第1の層のGSP_slope(mV/nm)は、前記第1の発光層のGSP_slope(mV/nm)と正負の符号が逆の値を示す発光デバイス。(ただし、GSP_slope(mV/nm)は、膜の表面の電位がV(mV)、膜厚がd(nm)であるときに、V/dで表されるパラメータである。)
【請求項2】
基板上に形成された第1の電極と、
前記第1の電極に対向する第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極の間に、第1の発光層と、第2の発光層と、を有し、
前記第1の発光層および前記第2の発光層の間に、第1の層を有し、
前記第1の層のGSP_slope(mV/nm)が負の値を示す発光デバイス。(ただし、GSP_slope(mV/nm)は、膜の表面の電位がV(mV)、膜厚がd(nm)であるときに、V/dで表されるパラメータである。)
【請求項3】
第1の電極と、
前記第1の電極に対向する第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極の間に、第1の発光層と、第2の発光層と、を有し、
前記第1の発光層および前記第2の発光層の間に、電子輸送層と、第1の層と、を有し、
前記第1の層のGSP_slope(mV/nm)は、前記電子輸送層のGSP_slope(mV/nm)と正負の符号が逆の値を示す発光デバイス。(ただし、GSP_slope(mV/nm)は、膜の表面の電位がV(mV)、膜厚がd(nm)であるときに、V/dで表されるパラメータである。)
【請求項4】
基板上に形成された第1の電極と、
前記第1の電極に対向する第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極の間に、第1の発光層と、第2の発光層と、を有し、
前記第1の発光層および前記第2の発光層の間に、電子輸送層と、第1の層と、を有し、
前記電子輸送層のGSP_slope(mV/nm)が正の値を示し、
前記第1の層のGSP_slope(mV/nm)が負の値を示す発光デバイス。(ただし、GSP_slope(mV/nm)は、膜の表面の電位がV(mV)、膜厚がd(nm)であるときに、V/dで表されるパラメータである。)
【請求項5】
基板上に形成された第1の電極と、
前記第1の電極に対向する第2の電極と、
前記第1の電極および前記第2の電極の間に、第1の発光層と、電子輸送層と、中間層と、および第2の発光層と、を第1の電極側からこの順に有し、
前記中間層は、第1の電極側から第1の層と第2の層をこの順に有し、
前記電子輸送層と前記第1の層は接しており、
前記電子輸送層のGSP_slope(mV/nm)が正の値を示し、
前記第1の層のGSP_slope(mV/nm)が負の値を示す発光デバイス。(ただし、GSP_slope(mV/nm)は、膜の表面の電位がV(mV)、膜厚がd(nm)であるときに、V/dで表されるパラメータである。)
【請求項6】
請求項5において、
前記第2の層が、電荷を発生する層である発光デバイス。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、
前記第1の層は、正孔をブロックする機能を有する発光デバイス。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、
前記第1の層の電界強度[V/cm]の平方根が600における正孔移動度が、1×10-8cm2/Vs以下である発光デバイス。
【請求項9】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、
前記第1の層が、ピロリジン骨格、ピペリジン骨格またはヘキサヒドロピリミドピリミジン骨格のいずれか一を有する第1の物質を含む発光デバイス。
【請求項10】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、
前記第1の層が、第1の物質と第2の物質とを有し、
前記第1の物質がピロリジン骨格、ピペリジン骨格またはヘキサヒドロピリミドピリミジン骨格のいずれか一を有する有機化合物であり、
前記第2の物質が、電子輸送性を有する有機化合物である発光デバイス。
【請求項11】
請求項3乃至請求項6のいずれか一項において、
前記電子輸送層のGSP_slope(mV/nm)の値と、前記第1の層のGSP_slope(mV/nm)の値が20(mV/nm)以上異なる発光デバイス。
【請求項12】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、
前記第1の層のスピン密度が1×1017spins/cm3以下である発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、発光デバイスに関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、電子機器、照明装置、入力装置(例えば、タッチセンサ)、入出力装置(例えば、タッチパネル)、それらの駆動方法、またはそれらの製造方法を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
表示装置は、様々な用途への展開がなされている。例えば、大型の表示装置の用途として、家庭用のテレビジョン装置(テレビまたはテレビジョン受信機ともいう)、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、及び、PID(Public Information Display)等が、小型の表示装置の用途として、タッチパネルを備えるスマートフォンまたはタブレット端末などの開発が進められている。
【0004】
また同時に、表示装置はその高精細化も進められている。高精細な表示装置が要求される機器としては、例えば、仮想現実(VR:Virtual Reality)、拡張現実(AR:Augmented Reality)、代替現実(SR:Substitutional Reality)、及び、複合現実(MR:Mixed Reality)向けの機器が開発されている。
【0005】
表示装置に用いられる表示素子としては、発光デバイス(発光素子ともいう)の開発が盛んに進められている。エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence、以下ELと記す)現象を利用した発光デバイス(ELデバイス、EL素子ともいう)、特に有機化合物を主として用いた有機ELデバイスは、薄型軽量化が容易である、入力信号に対し高速に応答可能である、直流定電圧電源を用いて駆動可能である等の特徴を有することから、表示装置に好適である。
【0006】
有機ELデバイスを用い、より高精細な発光装置を得るために、メタルマスクを用いた蒸着法に代わって、フォトレジストなどを用いたフォトリソグラフィ法による有機層のパターニングが研究されている。フォトリソグラフィ法を用いることによって、EL層の間隔が数μmという高精細な表示装置を得ることができる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2018-521459号公報
【特許文献2】国際公開第2021/045178号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以前より有機ELデバイスのEL層は、水、酸素などの大気成分に曝されると初期特性や信頼性に影響が出ることが知られており、その取扱いは真空に近い雰囲気で行われることが常識であった。特に、電子注入層、またはタンデム構造を有する発光デバイスの中間層における電荷発生層には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、もしくはこれらの化合物が用いられるが、これらの金属および化合物は水または酸素との反応性が非常に高く、EL層の表面が大気中に曝されると瞬く間に劣化してしまい、電子注入層、または電荷発生層として機能しなくなってしまう。
【0009】
しかし、上述のようにフォトリソグラフィ法により加工を行う過程においては、どうしてもEL層の表面を大気中に曝す必要がある。
【0010】
ここで、電子注入層に用いることが可能な有機化合物として上記アルカリ金属またはアルカリ土類金属、もしくはこれらの化合物に代わり、1,1’-ピリジン-2,6-ジイル-ビス(1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン)(略称:hpp2Py)が知られている。hpp2Pyは、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属またはこれらの化合物のように、大気に曝されても劣化がしにくいため、工程中に大気曝露が存在するフォトリソグラフィ法により加工を行う工程を経た発光デバイスに用いたとしても、発光デバイスの劣化が起こりにくい。
【0011】
しかし、hpp2Pyは、アルミニウムなどの金属との接触によって電子注入性が誘起されるため、金属汚染または光透過の関係上、タンデム構造を有する発光デバイスにおける中間層には使いにくかった。
【0012】
そこで本発明の一態様は、新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の他の一態様は、良好な効率を有する新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の一態様は、信頼性が良好で新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の他の一態様は、良好な効率および信頼性を有する新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することを目的とする。
【0013】
または、本発明の一態様は、フォトリソグラフィ工程を経て作製された新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の他の一態様は、フォトリソグラフィ工程を経て作製され、且つ良好な効率を有する新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の一態様は、フォトリソグラフィ工程を経て作製された、信頼性が良好で新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の他の一態様は、フォトリソグラフィ工程を経て作製され、且つ良好な発光効率および信頼性を有する新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することを目的とする。
【0014】
または、本発明の一態様は、高精細の表示装置に用いることが可能な新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の他の一態様は、高精細の表示装置に用いることが可能であり、且つ良好な効率を有する新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の一態様は、高精細の表示装置に用いることが可能な、信頼性が良好で新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の他の一態様は、高精細の表示装置に用いることが可能であり、且つ良好な発光効率および信頼性を有する新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することを目的とする。
【0015】
または、本発明の他の一態様では、信頼性の高い表示装置を提供することを目的とする。または、本発明の他の一態様では、高精細な表示装置を提供することを目的とする。または、本発明の他の一態様では、高精細且つ信頼性が良好な表示装置を提供することを目的とする。
【0016】
または、新規な有機化合物、新規な発光デバイス、新規な表示装置、新規な表示モジュール、新規な電子機器を提供することを各々目的とする。
【0017】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様は、第1の電極と、第1の電極に対向する第2の電極と、第1の電極および第2の電極の間に、第1の発光層と、第2の発光層と、を有し、第1の発光層および第2の発光層の間に、第1の層を有し、第1の層のGSP_slope(mV/nm)は、第1の発光層のGSP_slope(mV/nm)と正負の符号が逆の値を示す発光デバイスである。
【0019】
または、本発明の他の一態様は、基板上に形成された第1の電極と、第1の電極に対向する第2の電極と、第1の電極および第2の電極の間に、第1の発光層と、第2の発光層と、を有し、第1の発光層および第2の発光層の間に、第1の層を有し、第1の層のGSP_slope(mV/nm)が負の値を示す発光デバイスである。
【0020】
または、本発明の他の一態様は、第1の電極と、第1の電極に対向する第2の電極と、第1の電極および第2の電極の間に、第1の発光層と、第2の発光層と、を有し、第1の発光層および第2の発光層の間に、電子輸送層と、第1の層と、を有し、第1の層のGSP_slope(mV/nm)は、電子輸送層のGSP_slope(mV/nm)と正負の符号が逆の値を示す発光デバイスである。
【0021】
または、本発明の他の一態様は、基板上に形成された第1の電極と、第1の電極に対向する第2の電極と、第1の電極および第2の電極の間に、第1の発光層と、第2の発光層と、を有し、第1の発光層および第2の発光層の間に、電子輸送層と、第1の層と、を有し、電子輸送層のGSP_slope(mV/nm)が正の値を示し、第1の層のGSP_slope(mV/nm)が負の値を示す発光デバイスである。
【0022】
または、本発明の他の一態様は、基板上に形成された第1の電極と、第1の電極に対向する第2の電極と、第1の電極および第2の電極の間に、第1の発光層と、電子輸送層と、中間層と、および第2の発光層と、を第1の電極側からこの順に有し、中間層は、第1の電極側から第1の層と第2の層をこの順に有し、電子輸送層と第1の層は接しており、電子輸送層のGSP_slope(mV/nm)が正の値を示し、第1の層のGSP_slope(mV/nm)が負の値を示す発光デバイスである。
【0023】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第2の層が、電荷を発生する層である発光デバイスである。
【0024】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第2の層が、正孔輸送性を有する有機化合物と、正孔輸送性を有する有機化合物にアクセプタ性を示す物質を含む層である発光デバイスである。
【0025】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第2の層に含まれる正孔輸送性を有する有機化合物にアクセプタ性を示す物質が有機化合物である発光デバイスである。
【0026】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の層は、正孔をブロックする機能を有する発光デバイスである。
【0027】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の層の正孔移動度は電子輸送層の正孔移動度よりも低い発光デバイスである。
【0028】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の層の電界強度[V/cm]の平方根が600における正孔移動度が、1×10-8cm2/Vs以下である発光デバイスである。
【0029】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の層の電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-8cm2/Vs以上である発光デバイスである。
【0030】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の層が、ピロリジン骨格、ピペリジン骨格またはヘキサヒドロピリミドピリミジン骨格のいずれか一を有する第1の物質を含む発光デバイスである。
【0031】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の層が、第1の物質と第2の物質とを有し、第1の物質がピロリジン骨格、ピペリジン骨格またはヘキサヒドロピリミドピリミジン骨格のいずれか一を有する有機化合物であり、第2の物質が、電子輸送性を有する有機化合物である発光デバイスである。
【0032】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の物質が、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン骨格を有する有機化合物である発光デバイスである。
【0033】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、電子輸送層のGSP_slope(mV/nm)の値と、第1の層のGSP_slope(mV/nm)の値が20(mV/nm)以上異なる発光デバイスである。
【0034】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の層のスピン密度が1×1017spins/cm3以下である発光デバイスである。
【0035】
または、本発明の他の一態様は、上記構成において、第1の電極はトランジスタと電気的に接続している発光デバイスである。
【0036】
または、本発明の他の一態様は、上記の発光デバイスと、コネクタ及び集積回路のうち少なくとも一方と、を有する、表示モジュールである。
【0037】
または、本発明の他の一態様は、上記の発光デバイスと、筐体、バッテリ、カメラ、スピーカ、及びマイクのうち少なくとも一つと、を有する、電子機器である。
【0038】
なお、上記において、GSP_slope(mV/nm)は、膜の表面の電位がV(mV)、膜厚がd(nm)であるときに、V/dで表されるパラメータである。
【発明の効果】
【0039】
本発明の一態様により、新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することができる。または、本発明の他の一態様により、良好な効率を有する新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様により、良好な信頼性を有する新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することができる。または、本発明の他の一態様により、信頼性および効率が良好な新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することができる。
【0040】
または、本発明の一態様により、フォトリソグラフィ工程を経て作製された新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することができる。または、本発明の他の一態様により、フォトリソグラフィ工程を経て作製され、且つ良好な効率を有する新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様により、フォトリソグラフィ工程を経て作製された、良好な信頼性を有する新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することができる。または、本発明の他の一態様により、フォトリソグラフィ工程を経て作製され、且つ良好な信頼性および発光効率を有する新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することができる。
【0041】
または、本発明の一態様により、高精細の表示装置に用いることが可能な新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することができる。または、本発明の他の一態様により、高精細の表示装置に用いることが可能であり、且つ良好な効率を有する新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様により、高精細の表示装置に用いることが可能であり、且つ良好な信頼性を有する新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することができる。または、本発明の他の一態様により、高精細の表示装置に用いることが可能であり、且つ良好な効率および信頼性を有する新規なタンデム構造を有する発光デバイスを提供することができる。
【0042】
また、本発明の一態様により、高精細で発光効率の高い表示装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、高解像度であり且つ表示性能の良好な表示装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、表示品質が良好であり且つ表示性能の良好な表示装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、高精細で、発光効率および信頼性の高い表示装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、高解像度であり且つ表示性能および信頼性の良好な表示装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、表示品質が良好であり且つ表示性能および信頼性の良好な表示装置を提供することができる。
【0043】
または、新規な表示装置、新規な表示モジュール、新規な電子機器を提供することができる。
【0044】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1(A)および
図1(B)は発光デバイスについて表す図である。
【
図2】
図2(A)および
図2(B)は測定用デバイスについて表す図である。
【
図3】
図3は素子10の容量-電圧特性を表す図である。
【
図4】
図4は素子11の容量-電圧特性を表す図である。
【
図5】
図5は測定用デバイスを用いて測定を行った結果について表す図である。
【
図7】
図7は、発光デバイスについて表す図である。
【
図8】
図8(A)および
図8(B)は、表示装置の上面図および断面図である。
【
図9】
図9(A)乃至
図9(E)は、表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
【
図24】
図24は発光デバイス1の輝度-電流密度特性を表す図である。
【
図25】
図25は発光デバイス1の輝度-電圧特性を表す図である。
【
図26】
図26は発光デバイス1の電流効率-輝度特性を表す図である。
【
図27】
図27は発光デバイス1の電流密度-電圧特性を表す図である。
【
図28】
図28は発光デバイス1の電界発光スペクトルを表す図である。
【
図29】
図29は発光デバイス1の電流密度50mA/cm
2における定電流駆動時の駆動時間に対する輝度の変化を表す図である。
【
図30】
図30は測定用デバイスの容量-電圧特性を表す図である。
【
図31】
図31は発光デバイス2の輝度-電流密度特性を表す図である。
【
図32】
図32は発光デバイス2の電流効率-輝度特性を表す図である。
【
図33】
図33は発光デバイス2の輝度-電圧特性を表す図である。
【
図34】
図34は発光デバイス2の電流密度-電圧特性を表す図である。
【
図35】
図35は発光デバイス2の電界発光スペクトルを表す図である。
【
図36】
図36は発光デバイス2の電流密度50mA/cm
2における定電流駆動時の駆動時間に対する輝度の変化を表す図である。
【
図37】
図37(A)及び
図37(B)は測定用デバイスL21および測定用デバイスL22の容量-電圧特性を表す図である。
【
図38】
図38は測定用デバイス3の容量-電圧特性を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0047】
なお、本明細書等において、メタルマスク、またはFMM(ファインメタルマスク、高精細なメタルマスク)を用いて作製されるデバイスをMM(メタルマスク)構造のデバイスと呼称する場合がある。また、本明細書等において、メタルマスク、またはFMMを用いることなく作製されるデバイスをMML(メタルマスクレス)構造のデバイスと呼称する場合がある。
【0048】
(実施の形態1)
タンデム型の有機ELデバイスには、電極間に各々発光層を有する複数の発光ユニットと、当該発光ユニットに挟まれた中間層が設けられており、この中間層には電荷発生層(Charge Generation Layer:CGL)が含まれている。
【0049】
CGLとは、電圧が印加されることによって、電荷分離により電子と正孔が生成する層のことである。CGLとしては、正孔輸送性を有する材料と当該正孔輸送性を有する材料にアクセプタ性を有する材料を積層または混合した層(P型CGL)、および電子輸送性を有する材料と当該電子輸送性を有する材料にドナー性を有する材料を積層または混合した層(N型CGL)が用いられることが一般的である。
【0050】
また、中間層は、P型CGLとN型CGLの両方を備え、P型CGLを陰極側、N型CGLを陽極側に設ける構成を有することが、正孔または電子を各発光ユニットに注入しやすくなり、駆動電圧が低下するため好ましい。これは、P型CGLで発生した正孔がP型CGLの有する正孔輸送性を有する材料を介して中間層の陰極側の表面に接する発光ユニットへ注入され、N型CGLで発生した電子がN型CGLの有する電子輸送性を有する材料を介して中間層の陽極側の表面に接する発光ユニットへ注入されることで、キャリアの注入障壁を低くできるためである。
【0051】
なお、N型CGLはドナー性を有する材料の単膜であっても構わない。この際当該ドナー性を有する材料は、陽極側の発光ユニットにおける電子輸送性を有する材料との間で電荷分離するため、電荷分離した時点で電子は発光ユニットに注入されているとみなすことができる。また同様に、P型CGLはアクセプタ性を有する材料の単膜であっても構わない。この際当該アクセプタ性を有する材料は、陰極側の発光ユニットにおける正孔輸送性を有する材料との間で電荷分離するため、電荷分離した時点で正孔は発光ユニットに注入されているとみなすことができる。
【0052】
ここで、有機半導体膜を所定の形状に形成する方法の一つとして、メタルマスクを用いた真空蒸着法(マスク蒸着)が広く用いられている。しかし、高密度化、高精細化が進む昨今、マスク蒸着は、合わせ精度の問題、基板との配置間隔の問題に代表される種々の理由により、これ以上の高精細化は限界に近付いている。そのため、フォトリソグラフィ法を用いて有機半導体膜の形状を加工することで、より緻密なパターンを有する有機半導体デバイスの実現が期待されている。さらに、フォトリソグラフィ法はマスク蒸着に比べて大面積化も容易であることから、フォトリソグラフィ法を用いた有機半導体膜の加工に関する研究が進められている。
【0053】
しかし、上述のようなフォトリソグラフィ法による加工を行う過程においては、どうしても加工する有機化合物層(具体的にはEL層など)の表面を大気中に曝す必要がある。
【0054】
以前より有機ELデバイスにおけるEL層は、水、酸素などの大気成分に曝されると初期特性または信頼性に影響が出ることが知られており、その取扱いは真空に近い雰囲気で行われることが常識であった。
【0055】
特に、発光デバイスの電子注入層、およびタンデム構造の発光デバイスに用いられる中間層におけるN型CGLには、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、もしくはこれらの化合物(以下Li化合物などともいう)が用いられることが多いため、水、酸素などの大気成分に曝された際の影響が著しい。これらLi化合物などは、水または酸素との反応性が高く、直接大気に触れた際にはもちろんのこと、直接でなくともそれらが含まれるEL層の表面が大気中に曝されるだけで瞬く間に劣化してしまい、電子注入層およびN型CGLとして機能しなくなってしまうことがその原因である。
【0056】
上述のように、フォトリソグラフィ法による加工を行う過程においては、どうしてもEL層の表面を大気に曝す必要がある。このため、Li化合物などを用いた電子注入層およびN型CGLの電子注入性は、フォトリソグラフィ工程を経ることで大きく減少してしまう。電子注入層はフォトリソグラフィ法による加工を行った後に形成することが可能であるためこの特性劣化を回避可能であるが、タンデム型の発光デバイスの場合、中間層の陰極側に位置する発光層をフォトリソグラフィ法で加工しようとすると中間層は必ず加工に曝されることになる。このことから、Li化合物などを用いた(すなわちN型CGLが形成された)中間層を使用したタンデム型の発光デバイスは、フォトリソグラフィ法による加工を行うことが難しかった。
【0057】
なお、N型CGLとP型CGLはどちらも電荷を発生することから、中間層にフォトリソグラフィ工程によって劣化が懸念されるN型CGLを設けず、P型CGLのみで電荷を発生させる構成の中間層を用いることも想定できる。しかしこの場合、P型CGLで発生した電子が中間層の陽極側の表面に接する発光ユニットに注入されにくいことから、駆動電圧の大幅な上昇を招いてしまう。これは、P型CGLのアクセプタ性を有する材料の最低空軌道(Lowest Unoccupied Molecular Orbital:LUMO)準位と、陽極側の発光ユニットにおける電子輸送層を構成する電子輸送性を有する材料のLUMO準位との差が大きいことが原因である。
【0058】
このように、タンデム型の発光デバイスのフォトリソグラフィによる加工は、N型CGLを用いるとフォトリソグラフィ法によって加工を行った際に当該N型CGLが劣化し駆動電圧が上昇してしまうが、中間層にN型CGLを用いないとLUMO準位の差によって駆動電圧が上昇してしまうというジレンマを抱えている。
【0059】
ここで、本発明者らは、陽極を先に形成する、いわゆる順積みのタンデム型発光デバイスの場合、中間層におけるN型CGLの代わりに巨大表面電位(Giant Surface Potential:GSP)の傾きが負となる層を形成することによって、N型CGLを用いずとも駆動電圧の上昇が抑制されたタンデム型の発光デバイスを得ることができることを見出した。
【0060】
GSPは蒸着膜の永久双極子モーメントの配向が膜厚方向に偏ることにより生じる自発分極(Spontaneous Orientation Polarization:SOP)により発生する現象である。
【0061】
このようなGSPを発現する蒸着膜の表面電位は、膜厚の増加に伴って飽和することなく一定の割合で変化する。例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)の蒸着膜は、560nmの膜厚での表面電位が約28Vにもなる。この電界強度は5×105V/cmにも達し、これは一般的な有機薄膜デバイスの駆動中の電界強度と同程度の大きさである。
【0062】
GSPの傾き(GSP_slope)とは、GSPが膜厚に比例して変化する膜において、当該膜表面の電位がV(mV)、膜厚がd(nm)であるときに、V/d(mV/nm)で表されるパラメータである。なお、膜厚の増加に伴って表面電位が増加する場合は正のGSP_slope、膜厚の増加に伴って表面電位が減少する場合は負のGSP_slopeとなり、上記Alq3は正のGSP_slopeを有する材料ということができる。なお、GSP_slopeが負となる層(以下負となる層ともいう)では基板側が高電位、GSP_slopeが正となる層(以下正となる層ともいう)では基板側が低電位となる。
【0063】
このGSPは、前述のように、永久双極子モーメントの配向が膜厚方向に偏ることにより生じるSOPにより発生する現象である。すなわち、GSP_slopeが負となる層では、蒸着開始面側(基板側)に正の、蒸着終了面側(第2の電極側)に負の分極電荷が誘起され、同様にGSP_slopeが正となる層では、蒸着開始面側(基板側)に負の、蒸着終了面側(第2の電極側)に正の分極電荷が誘起されているとみなすことができ、これらがGSPの起源となっている。
【0064】
電子または正孔のEL層への注入電圧は、積層構造を有する有機半導体デバイスにおいては、当該分極電荷にも大きく影響される。本発明の一態様では、この分極電荷および、分極電荷に由来する積層膜における界面電荷を利用してタンデム型発光デバイスの駆動電圧の低減を実現するものである。
【0065】
通常、ほとんどの有機化合物は正のGSP_slopeを有することから、例えば、第2の層上に接して第1の層を成膜する場合、第1の層と第2の層とのGSP_slopeの符号は同じ正の符号となる。この場合、第1の層における分極電荷は、第1の層の下地となる第2の層の分極電荷と相殺され、残った電荷のみが界面電荷(固定電荷)となる。そのため、異なる2層の界面に存在する界面電荷の密度は、分極電荷の密度よりも低くなる。
【0066】
一方、本発明の一態様の発光デバイスでは、
図1のように、N型CGLの代わりにGSP_slopeが負となる第1の層21を形成する。下地となる第2の層22は一般的なGSP_slopeが正となる層を用いることができる。負のGSP_slopeを有する第1の層21は、上述のように第1の層21の基板1000側の界面近傍に正の分極電荷が誘起され、反対側の界面近傍に負の分極電荷が誘起される。また正のGSP_slopeを有する第2の層22は、基板1000側の界面近傍に負の分極電荷、反対側の界面近傍に正の分極電荷が誘起されることから、第2の層22の第1の層21側の界面には正の分極電荷が現れる。
【0067】
このため、本発明の一態様の発光デバイスでは、第1の層21の基板1000側の界面近傍における分極電荷は相殺されず、そのまま界面電荷50となる。さらに、第2の層22における第1の層21側の界面近傍の正の分極電荷もまた界面電荷50となる。すなわち、N型CGLの代わりにGSP_slopeが負となる第1の層21を形成すると、第1の層21とその下地となる第2の層22の界面近傍に正の固定電荷が高い電荷密度で存在することになる。
【0068】
本発明の一態様の発光デバイスでは、この第1の層21と第2の層22との界面付近における密度の高い正の界面電荷50による影響で、P型CGL20で発生した電子を容易に第1の層21に注入することができるようになる。この結果、中間層513にN型CGLを用いなくとも駆動電圧の大幅な上昇無くP型CGL20で発生した電子を陽極101側の第1の発光ユニット501に注入することが可能となり、N型CGLを用いなくとも駆動電圧の上昇が抑制されたタンデム型の発光デバイスを得ることができる。
【0069】
なお、本発明の一態様の発光デバイスでは、中間層513にN型CGLを用いないことから、劣化のしやすいLi化合物などを用いていないため、フォトリソグラフィ法を経ても駆動電圧の上昇などの特性劣化が起きず、良好な特性を維持したタンデム型の発光デバイスを得ることが可能となる。
【0070】
以上のように、N型CGLの代わりにGSP_slopeが負となる第1の層21を形成したタンデム型の発光デバイスは、フォトリソグラフィ法を経ても駆動電圧の上昇などの特性劣化が抑制され、良好な特性を維持したタンデム型の発光デバイスとすることができる。なお、
図1において、102は陰極、502は第2の発光ユニット、113_1は第1の発光ユニット501の発光層、113_2は、第2の発光ユニット502の発光層、114_1は第1の発光ユニット501の電子輸送層である。
【0071】
ここで、有機化合物のGSP_slopeを求める方法について説明する。
【0072】
GSPは前述のように蒸着膜の永久双極子モーメントの配向が膜厚方向に偏ることにより生じるSOPによる現象である。GSPが膜厚に比例して変化する変化量をGSP_slope(mV/nm)と呼ぶ。代表的にはケルビンプローブ測定により測定された蒸着膜の表面電位を膜厚方向にプロットしたときの傾きとして現れることが知られているが、この方法により測定を行う場合、下地膜および測定環境の影響を考慮する必要がある。一方、2つの異なるSOPを持つ膜が積層されている場合は、その界面に蓄積する界面電荷密度(mC/m2)と一方の膜のGSP_slopeから、他方の膜のGSP_slopeを見積もることができる。界面電荷密度は、当該積層された2つの異なる膜のどちらか一方の膜に電荷を蓄積させるような素子構造を用いて、CV測定(IS測定)を行うことにより得ることができる。
【0073】
異なるSOPを持つ膜(薄膜1および薄膜2。ただし薄膜1が陽極側、薄膜2が陰極側に位置する。)を積層させ電流を流す際、キャリアが電子である場合には下式が成り立つ。
【0074】
【0075】
【0076】
式(1)においてσif_eは界面電荷密度、Viは電子注入電圧、Vbiは閾値電圧、d1は薄膜1の膜厚、ε1は薄膜1の誘電率である。Vi、Vbiはデバイスの容量-電圧特性から見積もることができる。また、誘電率は常光屈折率no(633nm)の二乗を用いることができる。このように、容量-電圧特性から見積もったVi、Vbiと、屈折率より算出した薄膜1の誘電率ε1、および薄膜1の膜厚d1より、式(1)を用いて界面電荷密度σif_eを求めることができる。
【0077】
続いて、式(2)において、P1およびP2は薄膜1および薄膜2のSOP、ε2は薄膜2の誘電率、d2は薄膜2の膜厚である。ここで、上記式(1)より界面電荷密度σif_eを求めることができるため、薄膜1としてGSP_slopeが既知の物質を用いることで、薄膜2のGSP_slopeを見積もることができる。
【0078】
そこで、薄膜1としてGSP_slopeが(48(mV/nm))と既知であるAlq3を用い、測定用の素子として素子10と素子11を作製し、素子10ではNBPhen、素子11ではmPPhen2PのGSP_slopeを求めた例を以下に示す。
【0079】
素子10および素子11のデバイス構造は下表および
図2(A)のとおりである。なお、陽極701は基板700上に形成され、正孔注入層702、第1の電子輸送層703、第2の電子輸送層704、電子注入層705および陰極706は、陽極701(基板700)側から順に真空蒸着法により形成した。素子10および素子11形成時、基板温度は室温、成膜レートは0.2nm/sから0.4nm/sとし、一つの層を形成する間は蒸着を止めることなく成膜を行った。素子10および素子11においては、第1の電子輸送層703が薄膜1、第2の電子輸送層704が薄膜2に相当する。
【0080】
また、素子10および素子11の容量-電圧特性を
図3および
図4に示す。
【0081】
【0082】
表2に、各材料の常光屈折率n
o、
図3、
図4より求めた素子10(NBPhen)および素子11(mPPhen2P)の電子注入電圧V
i、閾値電圧V
bi、式(1)より求めた界面電荷密度σ
if_e、式(2)より求めたGSP_slopeを示す。
【0083】
【0084】
このように、GSP_slopeが既知であるAlq3と、GSP_slopeを求めたい有機化合物を積層したデバイスを作製し、容量-電圧特性を測定することで、GSP_slopeを見積もることができる。
【0085】
なお、以上の説明では、キャリアが電子である電子輸送層に用いる有機化合物のGSP_slopeを算出する方法を説明したが、キャリアが正孔である場合、有機化合物のGSP_slopeを用いる際には、
図2(B)に示したような測定用素子を用い、下記式(3)および式(4)を用いて、同様に算出することができる。
図2(B)に示した測定用素子において、陽極801は基板800上に形成され、正孔注入層802、第1の正孔輸送層803、第2の正孔輸送層804、電子注入層805および陰極806は、陽極801(基板800)側から順に真空蒸着法により形成する。なお、下記式(3)および式(4)において、σ
if_hは界面電荷密度である。
【0086】
【0087】
【0088】
なお、「層のGSP_slope」は、当該層を構成する材料の膜のGSP_slopeとして算出できる。また、薄膜1または薄膜2に複数の有機化合物が含まれる場合、主として含まれる(例えば最も多く含まれる)有機化合物のGSP_slopeを「当該層のGSP_slope」とみなすこともできる。あるいは、薄膜1または薄膜2に複数の有機化合物が含まれる場合、各々の有機化合物のGSP_slopeと含有率を算出し、その加重平均(GSP_slope_ave)を、層を構成する有機化合物のGSP_slopeと定義しても良い。
【0089】
以上のようにGSP_slopeは求めることが可能である。
【0090】
蒸着膜が負のGSP_slopeを有する層となる物質としては、トリス(7-プロピル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(III)(略称:Al(7-Prq)3)、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)3])、2,2-ビス[4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(略称:6F-2TRZ)、2,2-ビス[(4-ジフェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(略称:6F-2TPA)、2,2-ビス[9H-カルバゾール-9-(4-フェニル)]ヘキサフルオロプロパン(略称:6F-2Cz)、1-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(略称:2hppSF)などを挙げることができる。第1の層は、上述のような物質を第1の物質として含むことが好ましい。
【0091】
また、第1の層は、第1の物質とその他の物質が混合した層であっても構わない。
【0092】
本発明の一態様では、GSP_slopeが負となる第1の層の正孔移動度が下地となる第2の層の正孔移動度よりも低い場合、好ましくは第1の層の電界強度[V/cm]の平方根が600における正孔移動度が、1×10-8cm2/Vs以下である場合、さらに好ましくは、第1の層が正孔をブロックする機能を有する場合、第1の層と第2の層の界面近傍に、陽極から流れてきた正孔が蓄積され、さらにP型CGLから第1の層への電子の注入を容易とすることができるため好ましい。
【0093】
この際、第1の層は、酸解離定数pKa8以上の塩基性の高い材料を含むことで、正孔移動度を低下させることができる、または正孔をブロックすることができる。そのため、第1の層は、酸解離定数pKa8以上の塩基性の高い材料を含むことが好ましい。すなわち、第1の層は、第1の物質と酸解離定数pKa8以上の塩基性の高い材料とを含むことが好ましい。なお、酸解離定数pKa8以上の塩基性の高い材料の蒸着膜のGSP_slopeが負となる場合、当該酸解離定数pKa8以上の塩基性の高い材料は第1の物質であるとも言うことができるため、当該酸解離定数pKa8以上の塩基性の高い材料が含まれることで、第1の層は、第1の物質と酸解離定数pKa8以上の塩基性の高い材料の両方を含んでいるとみなすことができる。
【0094】
第1の層が酸解離定数pKa8以上の塩基性の高い材料を含むことによって、第1の層は正孔をブロックし、効率的に第2の層との界面付近に正孔を蓄積することが可能となることから、さらに駆動電圧の低いタンデム型の発光デバイスを得ることができる。
【0095】
酸解離定数pKaが大きい材料が正孔をブロックするのは、酸解離定数pKaが大きい材料は大きなダイポールモーメントを有することに由来する。このダイポールモーメントが正孔と相互に作用することにより、酸解離定数pKaが大きい材料を含む第1の層は正孔をブロックすることができる。
【0096】
また、酸解離定数pKaが大きい塩基性の高い材料は求核性が高いことも、第1の層における正孔輸送性を大きく低減できる理由の一つである。求核性が高い材料は、正孔を受け取ってカチオンラジカルになった分子と反応し、新たな分子または中間状態を生成する場合がある。この反応により正孔が消費され、第1の層における正孔輸送性を大きく低減する場合もある。
【0097】
なお、上記酸解離定数pKaが8以上の塩基性の高い材料は、塩基性骨格を有する有機化合物であって、当該塩基性骨格の酸解離定数pKaが10以上の有機化合物であることが好ましい。また、当該塩基性骨格の酸解離定数pKaが12以上の有機化合物であることがより好ましい。
【0098】
なお、上記塩基性骨格の酸解離定数pKaには、当該骨格の一部を水素で置換した有機化合物の値を用いることができる。また、塩基性骨格を有する有機化合物の酸性度の指標として、当該塩基性骨格の酸解離定数pKaを用いることができる。また、複数の塩基性骨格を有する有機化合物は、酸解離定数pKaの最も高い塩基性骨格の酸解離定数pKaを当該有機化合物の酸性度の指標として用いることができる。酸解離定数pKaは水を溶媒として採用し、測定した値を採用する事が好ましい。
【0099】
または、有機化合物の酸解離定数pKaは、以下のような計算によって求めてもよい。
【0100】
まず、計算モデルとなる各分子における分子構造の初期構造は、第一原理計算から得られた最安定構造(一重項基底状態)とする。
【0101】
上記第一原理計算としては、シュレディンガー社製量子化学計算ソフトウェアのJaguarを使用し、一重項基底状態における最安定構造を密度汎関数法(DFT)で計算する。基底関数としては6-31G**を用い、汎関数はB3LYP-D3を用いた。量子化学計算を行う構造は、シュレディンガー社製Maestro GUIを用い、Mixed torsional/Low-mode samplingにて立体配座解析を行い、サンプリングを行う。
【0102】
pKa計算では各分子の1つ以上の原子を塩基性サイトとして指定し、プロトン化した分子の水中での安定構造探索のためMacro Modelを使用し、OPLS2005力場を用いた配座探索を行い、最も低エネルギーの配座異性体を使用する。JaguarのpKa計算モジュールを使用し、B3LYP/6-31G*で構造最適化した後、cc-pVTZ(+)で一点計算し、官能基に対する経験的補正を用いてpKa値を算出することができる。なお、1つ以上の原子を塩基性サイトとして指定している分子では、得られた結果のうち最も大きい値をpKa値として採用する。
【0103】
塩基性の高い材料としては、ピロリジン骨格、ピペリジン骨格またはヘキサヒドロピリミドピリミジン骨格を有する有機化合物が好ましい。また、グアニジン骨格を有する有機化合物が好ましい。具体的には、下記構造式(120)乃至(123)で表される塩基性骨格を有する有機化合物を例として挙げることができる。
【0104】
【0105】
また、上記酸解離定数pKaが8以上の有機化合物は、具体的には、環を構成する原子に2以上の窒素を有するビシクロ環構造と、環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族炭化水素環または環を構成する炭素が6乃至30の芳香族炭化水素環と、を有する有機化合物、より具体的には、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン骨格と、環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族炭化水素環または環を構成する炭素が6乃至30の芳香族炭化水素環と、を有する有機化合物であることが好ましい。なお、環を構成する原子に2以上の窒素を有するビシクロ環構造と、環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族炭化水素環と、を有する有機化合物、より具体的には、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン骨格と、環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族炭化水素環と、を有する有機化合物がより好ましい。
【0106】
また、さらに具体的には、下記一般式(G1)で表される有機化合物であることが好ましい。
【0107】
【0108】
ただし、上記一般式(G1)で表される有機化合物において、Xは下記一般式(G1-1)で表される基、Yは下記一般式(G1-2)で表される基である。また、R1およびR2はそれぞれ独立に水素または重水素を表し、hは1乃至6の整数を表し、Arは置換または無置換の環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族炭化水素環または置換または無置換の環を構成する炭素が6乃至30の芳香族炭化水素環を表す。なお、Arは置換もしくは無置換の環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族炭化水素環が好ましい。
【0109】
【0110】
ただし、上記一般式(G1-1)および(G1-2)において、R3乃至R6はそれぞれ独立に水素または重水素を表し、mは0乃至4の整数を表し、nは1乃至5の整数を表し、且つm+1≧n(m+1はn以上)である。なお、mまたはnが2以上の場合、複数となるR3乃至R6はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0111】
また、上記一般式(G1)で表される有機化合物は、下記一般式(G2-1)乃至(G2-6)のいずれか一であることが好ましい。
【0112】
【0113】
ただし、R11乃至R26はそれぞれ独立に水素または重水素を表し、hは1乃至6の整数を表し、Arは置換または無置換の環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族炭化水素環または置換または無置換の環を構成する炭素が6乃至30の芳香族炭化水素環である。なお、Arは置換もしくは無置換の環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族炭化水素環が好ましい。
【0114】
なお、上記一般式(G1)および一般式(G2-1)乃至(G2-6)において、Arで表される置換または無置換の環を構成する炭素が2乃至30の複素芳香族炭化水素環または置換または無置換の環を構成する炭素が6乃至30の芳香族炭化水素環としては、具体的には、ピリジン環、ビピリジン環、ピリミジン環、ビピリミジン環、ピラジン環、ビピラジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾキノリン環、フェナントロリン環、キノキサリン環、ベンゾキノキサリン環、ジベンゾキノキサリン環、アゾフルオレン環、ジアゾフルオレン環、カルバゾール環、ベンゾカルバゾ-ル環、ジベンゾカルバゾ-ル環、ジベンゾフラン環、ベンゾナフトフラン環、ジナフトフラン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾナフトチオフェン環、ジナフトチオフェン環、ベンゾフロピリジン環、ベンゾフロピリミジン環、ベンゾチオピリジン環、ベンゾチオピリミジン環、ナフトフロピリジン環、ナフトフロピリミジン環、ナフトチオピリジン環、ナフトチオピリミジン環、アクリジン環、キサンテン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、フェナジン環、トリアゾ-ル環、オキサゾ-ル環、オキサジアゾール環、チアゾ-ル環、チアジアゾ-ル環、イミダゾ-ル環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾ-ル環、ピロ-ル環などを挙げることができる。また、上記一般式(G1)および一般式(G2-1)乃至(G2-6)において、Arで表される置換または無置換の環を構成する炭素が6乃至30の複素芳香族炭化水素環としては、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、ジメチルフルオレン環、ジフェニルフルオレン環、スピロフルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環、テトラセン環、クリセン環、ベンゾ[a]アントラセン環などを挙げることができる。また、中でも、下記構造式(Ar-1)乃至(Ar-27)のいずれか一であることが好ましい。
【0115】
【0116】
なお、上記Arが環を構成する原子として窒素を含み、当該Arは、当該窒素または当該窒素に隣接する炭素の結合手によって上記一般式(G1)におけるカッコ内の骨格に結合することが好ましい。
【0117】
上記一般式(G1)および一般式(G2-1)乃至(G2-6)で表される有機化合物としては、具体的には、1,1’-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2,7-ジイル)ビス(1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン)(略称:2,7hpp2SF)(構造式108)、および1-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(略称:2hppSF)(構造式109)など、下記構造式(101)~(117)で表される有機化合物を例として挙げることができる。
【0118】
【0119】
このような有機化合物は、安定であることの他に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、もしくはこれらの化合物と異なり製造ラインの金属汚染に関するおそれが少ないこと、蒸着が容易であることなどから、フォトリソグラフィ工程を使用して作製される発光デバイスに特に好適に用いることができる。もちろん、フォトリソグラフィを用いない工程で作製される発光デバイスにも好適である。
【0120】
なお、pKa8以上の強塩基性を有する材料は、注入された電子とブロックした正孔がpKa8以上の強塩基性を有する材料上で再結合するのを抑制する観点から、電子輸送性の骨格を有さないことが好ましい。
【0121】
また、中でも、2hppSFは、負のGSP_slopeを有し、且つpKa8以上の強塩基性を有する材料であることから、これは第1の物質であるともいえる。2hppSFを用いることで、一材料で負のGSP_slopeを有する層を得られ、同時にホールをブロックすることが可能となることから駆動電圧の低い発光デバイスを提供できるため好ましい。
【0122】
ある材料よりなる層が正孔をブロックするかどうかは、正孔のみを流す電子デバイス(以下ホールオンリーデバイスと称する)を作製し、電流密度と電圧との関係を測定することで判断することが可能である。例えば、表3で示したようなホールオンリーデバイスにおいて対象の層を挟んだ場合に、著しく電流密度が小さい結果が得られた場合、当該対象の層を正孔をブロックする層と判断できる。具体的には、表3で表される測定用デバイスを測定した際、印加電圧10Vで電流密度が0.01mA/cm2以下の結果が得られた場合の層3は、正孔をブロックする層とみなすことができる。
【0123】
【0124】
なお、表3中、ITSOは酸化ケイ素を含むインジウム錫酸化物、PCBBiFはN-(ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン、OCHD-003は分子量672でフッ素を含む電子アクセプタ材料を表している。
【0125】
このようなデバイスを用いて、層3を形成しないときの電流密度と電圧との関係と、対象の層を層3に10nm形成した場合の電流密度と電圧との関係とを比較するとよい。層3に10nmの対象となる層を挟んで測定を行った場合、10Vで電流密度が0.01mA/cm2以下となる層が正孔をブロックする層とみなすことができる。
【0126】
図5に、このようなデバイスを用いて測定を行った結果を示す。
図5は、上記測定用のホールオンリーデバイスの層3に、N-(ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)単独膜、9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)単独膜、1-(2’,7’-ジ-tert-ブチル-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(略称:2’,7’tBu-2hppSF)単独膜、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)単独膜、mPPhen2P:PCBBiF(1:1、重量比)の共蒸着膜、mPPhen2P:βNCCP(1:1、重量比)の共蒸着膜、およびmPPhen2P:2’,7’tBu-2hppSF(1:1、重量比)の共蒸着膜をそれぞれ形成したデバイスの結果である。
【0127】
この図より、PCBBiF、βNCCP、mPPhen2P、mPPhen2P:PCBBiF(1:1、重量比)、およびmPPhen2P:βNCCP(1:1、重量比)で形成した層は正孔をブロックしない層、mPPhen2P:2’,7’tBu-hppSF(1:1、重量比)で形成した層、および2’,7’tBu-2hppSFで形成した層は正孔をブロックする層ということができる。
【0128】
また、測定を行いたい層が材料Aと材料Bの混合層である場合、上記ホールオンリーデバイスの測定対象層に、当該混合層を設置したデバイス(デバイスX)と、材料Aと材料Bのうち、最高被占軌道(Highest Occupied Molecular Orbital:HOMO)準位が深い方の材料を単層で測定対象層として設置したデバイス(デバイスY)とを作製し、1mA/cm2における電圧が、デバイスXの方が1V以上高電圧シフトする場合に、当該混合層は正孔をブロックする層ということができる。
【0129】
また、第1の層は、注入された電子を第2の層まで輸送するために、電子輸送性を有することが好ましい。第1の層の電子移動度は、電界強度[V/cm]の平方根が600において、1×10-8cm2/Vs以上であることが好ましい。そのため、第1の層は、電子輸送性を有する材料を含むことが好ましい。電子輸送性を有する材料としては、電子輸送性の骨格を有する材料であることが好ましい。なお、電子輸送性の骨格は、π電子不足型複素芳香環を有する骨格であることが好ましい。π電子不足型複素芳香環を有する骨格としては、例えばポリアゾール骨格、ピリジン骨格、ジアジン骨格およびトリアジン骨格の少なくともいずれか一を環に含む骨格であることが好ましい。具体的には、ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格、ピリジン骨格、トリアジン骨格、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格などが好ましい。中でもピリミジン骨格、ピラジン骨格、トリアジン骨格、ベンゾフロピリミジン骨格が好ましい。
【0130】
電子輸送性を有する材料としては、例えば、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOS)などのアゾール骨格を有する有機化合物、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、2,9-ジ(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBPhen)、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)、2-[3-(2-トリフェニレニル)フェニル]-1,10-フェナントロリン(略称:mTpPPhen)、2-フェニル-9-(2-トリフェニレニル)-1,10-フェナントロリン(略称:Ph-TpPhen)、2-[4-(9-フェナントレニル)-1-ナフタレニル]-1,10-フェナントロリン(略称:PnNPhen)、2-[4-(2-トリフェニレニル)フェニル]-1,10-フェナントロリン(略称:pTpPPhen)などのピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3-(3’-ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-3,1’-ビフェニル-1-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mpPCBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、6-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq-II)、9-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mDBtBPNfpr)、9-[(3’-ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-4-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9pmDBtBPNfpr)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)、9,9’-[ピリミジン-4,6-ジイルビス(ビフェニル-3,3’-ジイル)]ビス(9H-カルバゾール)(略称:4,6mCzBP2Pm)、8-(ビフェニル-4-イル)-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8BP-4mDBtPBfpm)、3,8-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ベンゾフロ[2,3-b]ピラジン(略称:3,8mDBtP2Bfpr)、4,8-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4,8mDBtP2Bfpm)、8-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)(ビフェニル-3-イル)]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8mDBtBPNfpm)、8-[(2,2’-ビナフタレン)-6-イル]-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8(βN2)-4mDBtPBfpm)、2,2’-(ピリジン-2,6-ジイル)ビス(4-フェニルベンゾ[h]キナゾリン)(略称:2,6(P-Bqn)2Py)、2,2’-(ピリジン-2,6-ジイル)ビス{4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-6-フェニルピリミジン}(略称:2,6(NP-PPm)2Py)、6-(ビフェニル-3-イル)-4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニルピリミジン(略称:6mBP-4Cz2PPm)、2,6-ビス(4-ナフタレン-1-イルフェニル)-4-[4-(3-ピリジル)フェニル]ピリミジン(略称:2,4NP-6PyPPm)、4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニル-6-(ビフェニル-4-イル)ピリミジン(略称:6BP-4Cz2PPm)、7-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)キナゾリン-2-イル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:PC-cgDBCzQz)などのジアジン骨格を有する有機化合物、2-(ビフェニル-4-イル)-4-フェニル-6-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:BP-SFTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn-02)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)、2-[3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mFBPTzn)、5-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-7,7-ジメチル-5H,7H-インデノ[2,1-b]カルバゾール(略称:mINc(II)PTzn)、2-{3-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mDBtBPTzn)、2,4,6-トリス[3’-(ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル]-1,3,5-トリアジン(略称:TmPPPyTz)、2-[3-(2,6-ジメチル-3-ピリジニル)-5-(9-フェナントレニル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mPn-mDMePyPTzn)、11-[4-(ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル]-11,12-ジヒドロ-12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール(略称:BP-Icz(II)Tzn)、2-[3’-(トリフェニレン-2-イル)ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mTpBPTzn)、3-[9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-2-ジベンゾフラニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCDBfTzn)、2-(ビフェニル-3-イル)-4-フェニル-6-{8-[(1,1’:4’,1’’-ターフェニル)-4-イル]-1-ジベンゾフラニル}-1,3,5-トリアジン(略称:mBP-TPDBfTzn)などのトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物が挙げられる。また、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)を有する複素芳香環を含む有機化合物またはピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンまたはピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。また、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格は信頼性が良好なため好ましい。
【0131】
また、電子輸送性を有する材料としては例えば、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体なども用いることができる。π電子不足型複素芳香環骨格を有する有機化合物としては、例えばポリアゾール骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物およびトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物を挙げることができる。
【0132】
中でも、mTpPPhen、PnNPhenおよびmPPhen2Pなどのフェナントロリン骨格を有する有機化合物が好ましく、mPPhen2Pなどのフェナントロリン二量体構造を有する有機化合物が安定性に優れより好ましい。また、ピリジン骨格またはフェナントロリン骨格を有する材料はpKaが高いため、ホールブロック性が高くなり、特に好ましい。
【0133】
また、第1の層における電子輸送性を有する材料のLUMO準位は、-3.00eV以上-2.00eV以下であることが、発光層への電子注入障壁が低下するため好ましい。
【0134】
また、第1の層に、電子輸送性を有する材料と強塩基性を有する材料の両方が含まれる場合、当該強塩基性を有する材料は、電子輸送性を有する材料に対する電子供与性を有さないことが好ましい。強塩基性を有する材料が電子供与性を有さないことで、水および酸素などの大気成分に容易に反応しなくなるため、安定性が向上する。これにより、より水および酸素などの大気成分に安定な中間層およびタンデム型の発光デバイスを作製することができる。このため、第1の層は、電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)で観測されるシグナルが小さい、あるいはシグナルが観測されないことが好ましい。例えば、g値2.00付近に観測されるシグナルに起因するスピン密度が1×1017spins/cm3以下が好ましく、1×1016spins/cm3未満がより好ましい。
【0135】
なお、第1の層の膜厚は薄い方が好ましいが、厚すぎると駆動電圧が上がり、薄すぎると特性、特に信頼性が悪化するため2nm以上13nm以下、好ましくは5nm以上10nm以下であることが好ましい。
【0136】
なお、有機化合物のほとんどは正のGSP_slopeを有する材料であるが、負のGSP_slopeを有する材料である第1の物質と混合して用いることで第1の層を負のGSP_slopeを有する層とすることができる。この際、第1の物質のGSP_slopeの値と電子輸送性を有する材料のGSP_slopeの値によって、第1の層が負のGSP_slopeを有する層となる混合比が変わってくるが、第1の物質の割合を適宜増やすことによって第1の層を負のGSP_slopeを有する層とすることができる。
【0137】
第1の層は第2の層上に接して成膜される。第1の層の下地となる第2の層は、第1の層よりも基板側に位置する層である。すなわち、第2の層が形成された後に第1の層が形成される。当該第2の層は、電子を発光層まで運ぶ役割も担うことから、電子輸送性を有する層であることが好ましい。具体的には、第2の層は、当該中間層の陽極側の表面に接する発光ユニットが有する電子輸送層であることが好ましい。なお、下地となる層は、発光層、または正孔ブロック層であってもよい。
【0138】
第2の層の電子移動度は、電界強度[V/cm]の平方根が600において、1×10-8cm2/Vs以上であることが好ましい。そのため、第2の層は、電子輸送性を有する材料を含むことが好ましい。電子輸送性を有する材料としては、電子輸送性の骨格を有する材料であることが好ましい。なお、電子輸送性の骨格は、π電子不足型複素芳香環を有する骨格であることが好ましい。π電子不足型複素芳香環を有する骨格としては、例えばポリアゾール骨格、ピリジン骨格、ジアジン骨格およびトリアジン骨格の少なくともいずれか一を環に含む骨格であることが好ましい。具体的には、ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格、ピリジン骨格、トリアジン骨格、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格などが好ましい。中でもピリミジン骨格、ピラジン骨格、トリアジン骨格、ベンゾフロピリミジン骨格が好ましい。具体的な材料としては、第1の層に用いることが可能な材料として例示した電子輸送性を有する材料と同様の材料を用いることができる。
【0139】
また、第2の層は、第1の層が正孔ブロック性を有している場合、正孔を蓄積することでより駆動電圧の小さい発光デバイスを提供することが可能であるためバイポーラ性を有する、すなわち比較的高い正孔輸送性を備えた電子輸送性の層であることが好ましい。このことから、第2の層に含まれる有機化合物のHOMO準位は、-5.90eV以上-5.00eV以下、好ましくは-5.80eV以上-5.00eV以下、さらに好ましくは-5.70eV以上-5.15eV以下であることが好ましい。また、第2の層には良好な電子輸送性も必要であることから第2の層に含まれる有機化合物のLUMO準位は、-3.15eV以上-2.50eV以下、好ましくは-3.00eV以上-2.70eV以下であることが好ましい。
【0140】
第2の層は、単独の材料から構成される層であっても、複数の材料から構成される層であってもよい。第2の層に複数の有機化合物が含まれる場合は、最も高いHOMO準位を有する有機化合物のHOMO準位が、上述のような範囲に含まれるものであることが好ましい。また、第2の層に複数の有機化合物が含まれる場合は、最も低いLUMO準位を有する有機化合物のLUMO準位が、上述のような範囲に含まれるものであることが好ましい。また、第2の層が複数の有機化合物から構成される場合、その少なくとも一が電子輸送性を有する有機化合物であり、少なくとも一が正孔輸送性を有する有機化合物であることが好ましい。
【0141】
なお、電子輸送性の有機化合物と正孔輸送性の有機化合物は一の有機化合物であることが好ましい。すなわち、第2の層が、電子輸送性と正孔輸送性の両方を有する有機化合物を含むことが特性の良好な発光デバイスを得やすいためより好ましい。
【0142】
第2の層に用いられる電子輸送性の有機化合物または電子輸送性と正孔輸送性の両方を有する有機化合物は、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-7cm2/Vs以上好ましくは1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。また、正孔輸送性の有機化合物または電子輸送性と正孔輸送性の両方を有する有機化合物は、電界強度[V/cm]の平方根が600における正孔移動度が、1×10-7cm2/Vs以上好ましくは1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質が好ましい。
【0143】
また、第2の層は、酸解離定数pKaが4以下の電子輸送性を有する有機化合物を含むことが好ましい。
【0144】
また、第2の層は、電子輸送性の骨格を有する有機化合物と、正孔輸送性の骨格とを有する有機化合物と、を含むことが好ましい。なお、電子輸送性の骨格を有する有機化合物と正孔輸送性の骨格とを有する有機化合物は一の有機化合物であることが好ましい。すなわち、第2の層が電子輸送性の骨格と正孔輸送性の骨格との両方を有する有機化合物を含むことが特性の良好な発光デバイスを得やすいためより好ましい。
【0145】
なお、電子輸送性の骨格は、π電子不足型複素芳香環を有する骨格であることが好ましい。π電子不足型複素芳香環を有する骨格としては、例えばポリアゾール骨格、ピリジン骨格、ジアジン骨格およびトリアジン骨格の少なくともいずれか一を環に含む骨格であることが好ましい。具体的には、ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格、ピリジン骨格、トリアジン骨格、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格などが好ましい。中でもピリミジン骨格、ピラジン骨格、トリアジン骨格、ベンゾフロピリミジン骨格が好ましい。また、正孔輸送性の骨格は、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格であることが好ましい。π電子過剰型複素芳香環としては、例えばピロール骨格、フラン骨格、およびチオフェン骨格の少なくともいずれか一を環に含む縮合芳香環が好ましい。具体的にはカルバゾール骨格、ジベンゾチオフェン骨格あるいはそれらにさらに芳香環または複素芳香環が縮合した骨格が好ましい。中でもカルバゾール骨格、ビスカルバゾール骨格、インドロカルバゾール骨格が好ましい。また、アミン骨格、特にトリフェニルアミン骨格もまた好ましい。
【0146】
第2の層を構成する有機化合物としては、上述のように電子輸送性の骨格と正孔輸送性の骨格との両方を有する有機化合物が好ましい。当該有機化合物としては、具体的には3,6-ビス(ジフェニルアミノ)-9-[4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DACT-II)、2-{3-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mPCCzPDBq)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)、11-[4-(ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル]-11,12-ジヒドロ-12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール(略称:BP-Icz(II)Tzn)などを挙げることができる。
【0147】
なお、第2の層を構成する有機化合物は熱活性化遅延蛍光(TADF)を発する(TADF性を有する)ことが好ましい。TADF性がある有機化合物は、HOMO準位が高く、LUMO準位が低く、また、シングレットもトリプレットも励起寿命が短いため、第2の層において再結合が起こった場合に、励起状態を速やかに失活させることができ、信頼性の良好な発光デバイスを提供することができる。第2の層を構成するために好ましい有機化合物のなかで、さらにTADF性を有する有機化合物としては、DACT-IIを挙げることができる。
【0148】
また、第2の層を複数種の材料で構成する場合、電子輸送性を有する材料としては、電子輸送性の骨格を有する材料であることが好ましい。なお、電子輸送性の骨格は、π電子不足型複素芳香環を有する骨格であることが好ましい。π電子不足型複素芳香環を有する骨格としては、例えばポリアゾール骨格、ピリジン骨格、ジアジン骨格およびトリアジン骨格の少なくともいずれか一を環に含む骨格であることが好ましい。具体的には、ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格、ピリジン骨格、トリアジン骨格、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格などが好ましい。中でもピリミジン骨格、ピラジン骨格、トリアジン骨格、ベンゾフロピリミジン骨格が好ましい。具体的な材料としては、第1の層に用いることが可能な材料として例示した電子輸送性を有する材料と同様の材料を用いることができる。
【0149】
また、第2の層を複数種の有機化合物で構成する場合、正孔輸送性を有する有機化合物としては、例えば、N-(4-ビフェニル)-6,N-ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BnfABP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)、4,4’-ビス(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:BnfBB1BP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-アミン(略称:BBABnf(6))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf(8))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン-4-アミン(略称:BBABnf(II)(4))、N,N-ビス[4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-4-アミノ-p-ターフェニル(略称:DBfBB1TP)、N-[4-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-N-フェニル-4-ビフェニルアミン(略称:ThBA1BP)、4-(2-ナフチル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)、4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNBi)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7-フェニル)ナフチル-2-イルトリフェニルアミン(略称:BBAPβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(4;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(5;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB-02)、4-(4-ビフェニリル)-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNB)、4-(3-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:mTPBiAβNBi)、4-(4-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNBi)、4-フェニル-4’-(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBA1BP)、4,4’-ビス(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBB1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]トリフェニルアミン(略称:YGTBi1BP)、4’-[4-(3-フェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]トリス(ビフェニル-4-イル)アミン(略称:YGTBi1BP-02)、4-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:YGTBiβNB)、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBNBSF)、N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:BBASF)、N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:BBASF(4))、N-(ビフェニル-2-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:oFBiSF)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ジベンゾフラン-4-アミン(略称:FrBiF)、N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-N-[3-(6-フェニルジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-1-ナフチルアミン(略称:mPDBfBNBN)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-[4-(9-フェニルフルオレン-9-イル)フェニル]トリフェニルアミン(略称:BPAFLBi)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-4-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-3-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-2-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-1-アミン、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、N-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAFLP(2))、N-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-2-アミン(略称:PCAFLP(2)-02)等を挙げることができる。
【0150】
なお、第2の層の膜厚は薄い方が好ましいが、5nm乃至10nmであることが、信頼性が良好な発光デバイスを作製できることから好ましい。
【0151】
P型CGLは、電子のアクセプタ性を有する材料と、正孔輸送性を有する有機化合物とを含む複合材料により形成することが好ましい。
【0152】
また、電子のアクセプタ性を有する材料は、正孔輸送性を有する有機化合物に対する電子受容性を有することが好ましい。電子のアクセプタ性を有する材料が電子受容性を有することで、P型CGLにおいて電荷分離が生じて、電荷発生層として機能することができるため、タンデムの中間層として機能することができる。また、P型CGLは、電子スピン共鳴で観測されるシグナルが観測されることが好ましい。例えば、g値2.00付近に観測されるシグナルに起因するスピン密度が1×1017spins/cm3以上がより好ましく、1×1018spins/cm3以上がより好ましく、1×1019spins/cm3以上がさらに好ましい。
【0153】
アクセプタ性を有する物質としては、電子吸引基(ハロゲン基、シアノ基など)を有する有機化合物を用いることができ、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)、2-(7-ジシアノメチレン-1,3,4,5,6,8,9,10-オクタフルオロ-7H-ピレン-2-イリデン)マロノニトリル等を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基、シアノ基など)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。アクセプタ性を有する物質としては以上で述べた有機化合物以外にも、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の遷移金属酸化物を用いることができる。
【0154】
複合材料に用いる正孔輸送性を有する有機化合物としては、芳香族アミン化合物、複素芳香族化合物、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる正孔輸送性を有する有機化合物としては、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する有機化合物であることが好ましい。複合材料に用いられる正孔輸送性を有する有機化合物は、縮合芳香族炭化水素環、または、π電子過剰型複素芳香環を有する化合物であることが好ましい。縮合芳香族炭化水素環としては、アントラセン環、ナフタレン環等が好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環としては、ピロール骨格、フラン骨格、チオフェン骨格の少なくともいずれか1を環に含む縮合芳香環が好ましく、具体的にはカルバゾール環、ジベンゾチオフェン環あるいはそれらにさらに芳香環または複素芳香環が縮合した環が好ましい。
【0155】
このような正孔輸送性を有する有機化合物としては、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格のいずれかを有していることがより好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであっても良い。なお、これら正孔輸送性を有する有機化合物が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有する物質であると、寿命の良好な発光デバイスを作製することができるため好ましい。
【0156】
以上のような正孔輸送性を有する有機化合物としては、具体的には、第2の層を複数種の有機化合物で構成する場合に、正孔輸送性を有する有機化合物として用いることが可能な材料として挙げた材料を同様に用いることができる。
【0157】
また、正孔輸送性を有する材料としては、その他芳香族アミン化合物として、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を用いることもができる。
【0158】
なお、P型CGLと第1の層との間には、第3の層が設けられていることが好ましい。第3の層は少なくとも電子輸送性を有し、P型CGLと第1の層との相互作用を防いで電子をスムーズに受け渡す機能を有する。第3の層に含まれる電子輸送性を有する物質のLUMO準位は、P型CGLにおけるアクセプタ性物質のLUMO準位と、第1の層に含まれる材料における最も低いLUMO準位との間に位置することが好ましい。第3の層に用いられる電子輸送性を有する物質におけるLUMO準位の具体的なエネルギー準位は-5.00eV以上、好ましくは-4.30eV以上であり、且つ-3.00eV以下好ましくは-3.25eV以下であることが好ましい。より、好ましくは第3の層に用いられる電子輸送性を有する物質におけるLUMO準位が-5.00eV以上-3.00eV以下の材料、さらに好ましくはLUMO準位が-4.30eV以上-3.25eV以下の材料であることが好ましい。このような材料からなる層を第3の層に用いることで、電子の注入性を向上させることができ、駆動電圧の上昇を抑制し、信頼性が向上することから好ましい。なお、第3の層に用いられる電子輸送性を有する物質としてはジキノキサリノ[2,3-a:2’,3’-c]フェナジン(略称:HATNA)、2,3,8,9,14,15-ヘキサフルオロジキノキサリノ[2,3-a:2’,3’-c]フェナジン(略称:HATNA-F6)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシル-ビス-ベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)などのペリレンテトラカルボン酸誘導体、(C60-Ih)[5,6]フラーレン(略称:C60)、(C70-D5h)[5,6]フラーレン(略称:C70)、フタロシアニン(略称:H2Pc)などの有機化合物、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、亜鉛フタロシアニン(略称:ZnPc)、コバルトフタロシアニン(略称:CoPc)、鉄フタロシアニン(略称:FePc)、錫フタロシアニン(略称:SnPc)、酸化錫フタロシアニン(略称:SnOPc)、酸化チタンフタロシアニン(略称:TiOPc)、酸化バナジウムフタロシアニン(略称:VOPc)等の銅、亜鉛、コバルト、鉄、クロム、ニッケル、バナジウム、チタン、錫等を有する金属フタロシアニンおよびその誘導体、などを用いることができる。また、特にCuPcまたはZnPcのような、フタロシアニン系の金属錯体または2,3,8,9,14,15-ヘキサフルオロジキノキサリノ[2,3-a:2’,3’-c]フェナジンが好ましい。中でも、CuPcおよびZnPcは安価で、特性が良好であるため好ましい。さらに、ZnPcはシリコンに対する拡散係数が小さく、半導体への金属の拡散による半導体特性へ影響を与えるおそれが低減されるため、特にシリコン半導体を用いた表示装置への適用に好適である。
【0159】
また、第3の層の膜厚は1nm以上10nm以下、好ましくは2nm以上5nm以下であることが好ましい。
【0160】
以上のような構成を有する本発明の一態様の発光デバイスは、電流効率が高く、駆動電圧の上昇が抑制された発光デバイスとすることが可能となる。
【0161】
なお、本発明の一態様の発光デバイスは、特にフォトリソグラフィ工程を経た発光デバイスに好適であるが、フォトリソグラフィ工程を経ずに作製された発光デバイスにおいても大気に対する安定性が高いことから、歩留まりが向上し、また、作製工程中において雰囲気管理を必要以上に厳密にしなくてもよくなることでコスト削減に貢献する。
【0162】
(実施の形態2)
実施の形態1では、順積み(陽極から積層する作製方法)の構成を主として説明したが、本実施の形態では、逆積み(陰極から積層する作製方法)の構成を有する本発明の一態様の発光デバイスについて説明する。
【0163】
逆積みの発光デバイスの場合、基板上に陰極を形成し、積層順は
図1(A)と逆になるため、
図1(B)のように、第1の層21を形成した後に第2の層22を形成する構成となる。この場合、第1の層21と第2の層22との界面に正の界面電荷50を高い密度で存在させるためには、第1の層21を正のGSP_slope、第2の層22を負のGSP_slopeとなる材料で形成するとよい。このようにすることで、第1の層21をN型CGLとしなくとも、駆動電圧の上昇が抑制されたタンデム型の発光デバイスを得ることができる。当該タンデム型の発光デバイスは、第1の層21にLi化合物などが含まれないことで、フォトリソグラフィ工程を経ても駆動電圧の上昇が抑制された発光デバイスとすることができる。
【0164】
この場合、第2の層22は、実施の形態1において負のGSP_slopeを有する材料として挙げた物質を用いることが可能である。ただし、陽極101から注入された正孔を第2の層22と第1の層21との界面付近において蓄積することでさらに駆動電圧を低下させるためには、第2の層22は正孔輸送性を有することが好ましいことから、第2の層22にはpKa8以上の塩基性の高い材料は含まれないことが好ましい。
【0165】
なお、第2の層22は第1の層21から注入された電子を陽極101側の発光層113_1に輸送する機能が必要であることから、電子輸送性を有することが好ましく、電子輸送性を有する材料を含むことが好ましい。また、上述のように第2の層22は、正孔輸送性を有することが好ましいことから、正孔の輸送性と電子の輸送性の両方を有する材料であることが好ましく、正孔輸送性の骨格と、電子輸送性の骨格を有する材料を含むことが好ましい。また、第2の層22は、電子輸送性を有する材料と、正孔輸送性を有する材料の両方を有していてもよい。
【0166】
一方、第1の層21は正孔のブロック性を有することが好ましいことから第1の層21にはpKa8以上の塩基性の高い材料が含まれることが好ましい。
【0167】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光デバイスについて詳しく説明する。
【0168】
図6は、本発明の一態様の発光デバイスの模式図である。発光デバイスは基板1000上に、陽極101が設けられており、陽極101と、陰極102との間に有機化合物層103を有している。有機化合物層103には、実施の形態1で説明したように、複数の発光ユニット(
図6では第1の発光ユニット501および第2の発光ユニット502)と中間層513が含まれている。
【0169】
第1の発光ユニット501は少なくとも発光層113_1を有しており、第2の発光ユニット502は、少なくとも発光層113_2を有している。発光層113_1および発光層113_2は、発光物質を含む層であり、陽極101と陰極102との間に電圧をかけることによって発光する。
【0170】
第1の発光ユニット501は、
図6に示したように、上述した層の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112_1および電子輸送層114_1などの機能層を有していることが好ましい。また、この他に正孔ブロック層、電子ブロック層、励起子ブロック層、など、上述した機能層以外の機能層が含まれていてもよい。また、逆に、上述した層のいずれかの層が設けられていなくてもよい。
【0171】
第2の発光ユニット502は、
図6に示したように、上述した層の他に、正孔輸送層112_2、電子輸送層114_2、電子注入層115などの機能層を有していることが好ましい。また、この他に正孔ブロック層、電子ブロック層、励起子ブロック層、など、上述した機能層以外の機能層が含まれていてもよい。また、逆に、上述した層のいずれかの層が設けられていなくてもよい。
【0172】
また、中間層513は、少なくとも陽極101側から第1の層21とP型CGL20を有しており、第1の層21とP型CGL20との間に第3の層23を有していてもよい。第1の層21は、実施の形態1で説明したような、GSP_slopeが負となる層である。第1の層21は、さらに電子輸送性を有する有機化合物、および/またはpKa8以上の強塩基性を有する材料を有していてもよい。また、P型CGL20は、電圧が印加されることによって電荷を発生する層である。P型CGL20は、正孔輸送性を有する有機化合物と、当該有機化合物に対してアクセプタ性を有する物質と、を含む層であることが好ましい。第3の層23は第1の層21とP型CGL20との相互作用を防ぎ、信頼性を向上させるために設けられる層である。
【0173】
第1の層21、P型CGL20および第3の層23の具体的な構成は、実施の形態1において、詳しく説明したので繰り返しとなる説明を省略する。
【0174】
陽極101および陰極102は、単層構造または積層構造として形成されていてもよく、積層構造を有する場合、有機化合物層103に触れる層が陽極または陰極として実質的に機能する。電極が積層構造である場合、有機化合物層103に触れる層以外の層に仕事関数に関する制約はなく、抵抗値、加工利便性、反射率、透光性および安定性など要求される特性に応じて材料を選択するとよい。
【0175】
陽極101は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム-酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化スズ(ITSO:Indium Tin Silicon Oxide)、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル-ゲル法などを応用して作製しても構わない。作製方法の例としては、酸化インジウム-酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1~20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成する方法などがある。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5~5wt%、酸化亜鉛を0.1~1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することもできる。この他に、陽極に用いられる材料は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。またこれらを積層した層を陽極としても良い。例えば、Ti上にAl、Ti、ITSOの順に積層した膜は、反射率が良好なため高効率で、数千ppiの高精細化が可能なため、好ましい。又は、陽極に用いられる材料として、グラフェンも用いることができる。なお、後述する正孔注入層111を構成することが可能な複合材料を陽極と接する層(代表的には正孔注入層)として用いることで、仕事関数に関わらず、電極材料を選択することができるようになる。
【0176】
正孔注入層111は、陽極に接して設けられ、正孔を有機化合物層103に注入しやすくする機能を有する。正孔注入層111は、フタロシアニン(略称:H2Pc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物または錯体化合物、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、またはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/(ポリスチレンスルホン酸)(略称:PEDOT/PSS)等の高分子等によって形成することができる。
【0177】
また、正孔注入層111は電子のアクセプタ性を有する物質により形成してもよい。アクセプタ性を有する物質としては、電子吸引基(ハロゲン基、シアノ基など)を有する有機化合物を用いることができ、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)、2-(7-ジシアノメチレン-1,3,4,5,6,8,9,10-オクタフルオロ-7H-ピレン-2-イリデン)マロノニトリル等を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基、シアノ基など)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。アクセプタ性を有する物質としては以上で述べた有機化合物以外にも、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の遷移金属酸化物を用いることができる。
【0178】
また、正孔注入層111は、上記アクセプタ性を有する材料と、正孔輸送性を有する有機化合物とを含む複合材料により形成することが好ましい。複合材料は、実施の形態1においてP型CGLを構成することが可能な材料として例示した複合材料と同様のものを用いることができる。
【0179】
正孔注入層111を形成することによって、正孔の注入性が良好となり、駆動電圧の小さい発光デバイスを得ることができる。
【0180】
なお、アクセプタ性を有する物質の中でもアクセプタ性を有する有機化合物は蒸着が容易で成膜がしやすいため、用いやすい材料である。
【0181】
正孔輸送層112_1、正孔輸送層112_2は、正孔輸送性を有する有機化合物を含んで形成される。正孔輸送性を有する有機化合物としては、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有していることが好ましい。
【0182】
上記正孔輸送性を有する材料としては、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:TPD)、N,N’-ビス(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、9,9’-ジフェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:PCCP)、9,9’-ビス(ビフェニル-4-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:BisBPCz)、9,9’-ビス(ビフェニル-3-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:BismBPCz)、9-(ビフェニル-3-イル)-9’-(ビフェニル-4-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:mBPCCBP)、9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)、9-(3-ビフェニル)-9’-(2-ナフチル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:βNCCmBP)、9-(4-ビフェニル)-9’-(2-ナフチル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:βNCCBP)、9,9’-ジ-2-ナフチル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール(略称:BisβNCz)、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-3-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-3-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-5’-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-フェニル-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール(略称:PCCzTp)、9,9’-ビス(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(4-ビフェニル)-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(トリフェニレン-2-イル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フェナントレン(略称:PCPPn)などのカルバゾール骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。なお、正孔注入層111の複合材料に用いられる正孔輸送性を有する材料として挙げた物質も正孔輸送層112_1および正孔輸送層112_2を構成する材料として好適に用いることができる。
【0183】
発光層113_1、発光層113_2は発光物質を有する層であり、発光物質とホスト材料とを有していることが好ましい。なお、発光層は、その他の材料を同時に含んでいても構わない。また、組成の異なる2層の積層であってもよい。
【0184】
発光物質は蛍光発光物質であっても、りん光発光物質であっても、熱活性化遅延蛍光(TADF)を示す物質であっても、その他の発光物質であっても構わない。
【0185】
発光層において、蛍光発光物質として用いることが可能な材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。また、これ以外の蛍光発光物質も用いることができる。
【0186】
5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス(N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン)(略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、N-[9,10-ビス(ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10-ビス(ビフェニル-2-イル)-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、5,12-ビス(ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、N,N’-ジフェニル-N,N’-(1,6-ピレン-ジイル)ビス[(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-03)、3,10-ビス[N-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)-02)、3,10-ビス[N-(ジベンゾフラン-3-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10FrA2Nbf(IV)-02)などが挙げられる。特に、1,6FLPAPrn、1,6mMemFLPAPrn、1,6BnfAPrn-03のようなピレンジアミン化合物に代表される縮合芳香族ジアミン化合物は、ホールトラップ性が高く、発光効率または信頼性に優れているため好ましい。
【0187】
また、5,9-ジフェニル-5,9-ジアザ-13b-ボラナフト[3,2,1-de]アントラセン(略称:DABNA1)、9-(ビフェニル-3-イル)-N,N,5,11-テトラフェニル-5H,9H-[1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン-3-アミン(略称:DABNA2)、2,12-ジ(tert-ブチル)-5,9-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-N,N-ジフェニル-5H,9H-[1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン-7-アミン(略称:DPhA-tBu4DABNA)、2,12-ジ(tert-ブチル)-N,N,5,9-テトラ(4-tert-ブチルフェニル)-5H,9H-[1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン-7-アミン(略称:tBuDPhA-tBu4DABNA)、2,12-ジ(tert-ブチル)-5,9-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-7-メチル-5H,9H-[1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン(略称:Me-tBu4DABNA)、N7,N7,N13,N13,5,9,11,15-オクタフェニル-5H,9H,11H,15H-[1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl][1,4]ベンズアザボリノ[4’,3’,2’:4,5][1,4]ベンズアザボリノ[3,2-b]フェナザボリン-7,13-ジアミン(略称:ν-DABNA)、2-(4-tert-ブチルフェニル)ベンズ[5,6]インドロ[3,2,1-jk]ベンゾ[b]カルバゾール(略称:tBuPBibc)などの窒素とホウ素を含む縮合複素芳香族化合物、特にジアザ-ボラナフト-アントラセン骨格を有する化合物が発光スペクトルの幅が狭く、色純度の良好な青色発光を得られるため好適に用いることができる。
【0188】
また、これらの他、9,10,11-トリス[3,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-9H-カルバゾリル-9-イル]-2,5,15,18-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)インドロ[3,2,1-de]インドロ[3’,2’,1’:8,1][1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン(略称:BBCz-G)、9,11-ビス[3,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-9H-カルバゾリル-9-イル]-2,5,15,18-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)インドロ[3,2,1-de]インドロ[3’,2’,1’:8,1][1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン(略称:BBCz-Y)などを好適に用いる事ができる。
【0189】
発光層において、発光物質としてりん光発光物質を用いる場合、用いることが可能な材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0190】
トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(mpptz-dmp)3])、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz)3])のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1-mp)3])、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1-Me)3])のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、fac-トリス[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrpim)3])、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmpimpt-Me)3])、トリス(2-{1-[2,6-ビス(1-メチルエチル)フェニル]-1H-イミダゾール-2-イル-κN3}-4-シアノフェニル-κC)(略称:CNImIr)のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス[(6-tert-ブチル-3-フェニル-2H-イミダゾ[4,5-b]ピラジン-1-イル-κC2)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(cb)3])のようなベンズイミダゾリデン骨格を有する有機金属錯体、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CF3ppy)2(pic)])、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。これらは青色のりん光発光を示す化合物であり、450nmから520nmまでの波長域において発光のピークを有する化合物である。
【0191】
また、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)3])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)3])、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[6-(2-ノルボルニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(nbppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpmppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)2(acac)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-Me)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-iPr)2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)3])、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)2(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)2(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)3])、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)3])、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)2(acac)])、[2-d3-メチル-8-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(5-d3-メチル-2-ピリジニル-κN2)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(5mppy-d3)2(mbfpypy-d3))、[2-d3-メチル-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)2(mbfpypy-d3)])、[2-(4-d3-メチル-5-フェニル-2-ピリジニル-κN2)フェニル-κC]ビス[2-(5-d3-メチル-2-ピリジニル-κN2)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mppy-d3)2(mdppy-d3)])、[2-メチル-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)2(mbfpypy)])、[2-(4-メチル-5-フェニル-2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(略称:[Ir(ppy)2(mdppy)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは主に緑色のりん光発光を示す化合物であり、500nmから600nmまでの波長域において発光のピークを有する。なお、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性または発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。
【0192】
また、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dibm)])、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dpm)])、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(d1npm)2(dpm)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(acac)])、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(piq)3])、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)2(acac)])、(3,7-ジエチル-4,6-ノナンジオナト-κO4,κO6)ビス[2,4-ジメチル-6-[7-(1-メチルエチル)-1-イソキノリニル-κN]フェニル-κC]イリジウム(III)、(3,7-ジエチル-4,6-ノナンジオナト-κO4,κO6)ビス[2,4-ジメチル-6-[5-(1-メチルエチル)-2-キノリニル-κN]フェニル-κC]イリジウム(III)のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)3(Phen)])、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは、赤色のりん光発光を示す化合物であり、600nmから700nmまでの波長域において発光のピークを有する。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られる。
【0193】
また、以上で述べたりん光性化合物の他、公知のりん光性化合物を選択し、用いてもよい。
【0194】
TADF材料としてはフラーレン及びその誘導体、アクリジン及びその誘導体、エオシン誘導体等を用いることができる。またマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、以下の構造式に示されるプロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(SnF2(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(PtCl2OEP)等も挙げられる。
【0195】
【0196】
また、以下の構造式に示される2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:PCCzTzn)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)、等のπ電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環の一方または両方を有する複素環化合物も用いることができる。該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が共に高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ピリジン骨格、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、およびトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため好ましい。特に、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格はアクセプタ性が高く、信頼性が良好なため好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の少なくとも一を有することが好ましい。なお、フラン骨格としてはジベンゾフラン骨格が、チオフェン骨格としてはジベンゾチオフェン骨格が、それぞれ好ましい。また、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、インドロカルバゾール骨格、ビカルバゾール骨格、3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格が特に好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環の電子供与性とπ電子不足型複素芳香環の電子受容性が共に強くなり、S1準位とT1準位のエネルギー差が小さくなるため、熱活性化遅延蛍光を効率よく得られることから特に好ましい。なお、π電子不足型複素芳香環の代わりに、シアノ基のような電子吸引基が結合した芳香環を用いても良い。また、π電子過剰型骨格として、芳香族アミン骨格、フェナジン骨格等を用いることができる。また、π電子不足型骨格として、キサンテン骨格、チオキサンテンジオキサイド骨格、オキサジアゾール骨格、トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、アントラキノン骨格、フェニルボラン、ボラントレン等の含ホウ素骨格、ベンゾニトリルまたはシアノベンゼン等のニトリル基またはシアノ基を有する芳香環、複素芳香環、ベンゾフェノン等のカルボニル骨格、ホスフィンオキシド骨格、スルホン骨格等を用いることができる。このように、π電子不足型複素芳香環およびπ電子過剰型複素芳香環の少なくとも一方の代わりにπ電子不足型骨格およびπ電子過剰型骨格を用いることができる。
【0197】
【0198】
なお、TADF材料とは、S1準位とT1準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起エネルギーから一重項励起エネルギーへエネルギーを変換することができる機能を有する材料である。そのため、三重項励起エネルギーをわずかな熱エネルギーによって一重項励起エネルギーにアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態を効率よく生成することができる。また、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる。
【0199】
また、2種類の物質で励起状態を形成する励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスまたはExciplexともいう)は、S1準位とT1準位との差が極めて小さく、三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換することが可能なTADF材料としての機能を有する。
【0200】
なお、T1準位の指標としては、低温(例えば77Kから10K)で観測されるりん光スペクトルを用いればよい。TADF材料としては、その蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS1準位とし、りん光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをT1準位とした際に、そのS1とT1の差が0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以下であることがさらに好ましい。
【0201】
また、TADF材料を発光物質として用いる場合、ホスト材料のS1準位はTADF材料のS1準位より高い方が好ましい。また、ホスト材料のT1準位はTADF材料のT1準位より高いことが好ましい。
【0202】
発光層のホスト材料としては、電子輸送性を有する材料および/または正孔輸送性を有する材料、上記TADF材料など様々なキャリア輸送材料を用いることができる。
【0203】
正孔輸送性を有する材料としては、アミン骨格、π電子過剰型複素芳香環骨格を有する有機化合物などが好ましい。π電子過剰型複素芳香環としては、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格の少なくともいずれか1を環に含む縮合芳香環が好ましく、具体的にはカルバゾール環、ジベンゾチオフェン環あるいはそれらにさらに芳香環または複素芳香環が縮合した環が好ましい。
【0204】
このような正孔輸送性を有する有機化合物としては、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格のいずれかを有していることがより好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであっても良い。なお、これら正孔輸送性を有する有機化合物が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有する物質であると、寿命の良好な発光デバイスを作製することができるため好ましい。
【0205】
このような有機化合物としては、具体的には正孔輸送層における、正孔輸送性を有する材料の例として挙げた有機化合物を挙げることができる。中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物またはカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。また、βNCCPのように、ビカルバゾール骨格を有し、且つ芳香族炭化水素基、中でもナフチル基を有する化合物を用いることで、信頼性が良好な発光デバイスを得ることができるため好ましい。なお当該ナフチル基は、二つのカルバゾール骨格のうち、少なくとも一方の9位の窒素に結合していることが好ましい。
【0206】
電子輸送性を有する材料としては例えば、金属錯体、π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物が好ましい。金属錯体としては、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などを挙げることができる。π電子不足型複素芳香環骨格を有する有機化合物としては、例えばポリアゾール骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物およびトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物を挙げることができる。
【0207】
π電子不足型複素芳香環骨格を有する有機化合物は、その中でも、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)を有する複素芳香環を含む有機化合物またはピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンまたはピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。また、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格はアクセプター性が高く、信頼性が良好なため好ましい。
【0208】
電子輸送性を有する材料としては、具体的には、第1の層に用いることが可能な電子輸送性を有する材料として例示したような材料を用いることが可能である。
【0209】
ホスト材料として用いることが可能なTADF材料としては、先にTADF材料として挙げたものを同様に用いることができる。TADF材料をホスト材料として用いると、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが、逆項間交差によって一重項励起エネルギーに変換され、さらに発光物質へエネルギー移動することで、発光デバイスの発光効率を高めることができる。このとき、TADF材料がエネルギードナーとして機能し、発光物質がエネルギーアクセプターとして機能する。
【0210】
これは、上記発光物質が蛍光発光物質である場合に、非常に有効である。また、このとき、高い発光効率を得るためには、TADF材料のS1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。また、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。したがって、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のT1準位より高いことが好ましい。
【0211】
また、蛍光発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈するTADF材料を用いることが好ましい。そうすることで、TADF材料から蛍光発光物質への励起エネルギーの移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため、好ましい。
【0212】
また、効率良く三重項励起エネルギーから逆項間交差によって一重項励起エネルギーが生成されるためには、TADF材料でキャリア再結合が生じることが好ましい。また、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが蛍光発光物質の三重項励起エネルギーに移動しないことが好ましい。そのためには、蛍光発光物質は、蛍光発光物質が有する発光団(発光の原因となる骨格)の周囲に保護基を有すると好ましい。該保護基としては、π結合を有さない置換基が好ましく、飽和炭化水素が好ましく、具体的には炭素数3以上10以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上10以下のトリアルキルシリル基が挙げられ、保護基が複数あるとさらに好ましい。π結合を有さない置換基は、キャリアを輸送する機能に乏しいため、キャリア輸送またはキャリア再結合に影響をほとんど与えずに、TADF材料と蛍光発光物質の発光団との距離を遠ざけることができる。ここで、発光団とは、蛍光発光物質において発光の原因となる原子団(骨格)を指す。発光団は、π結合を有する骨格が好ましく、芳香環を含むことが好ましく、縮合芳香環または縮合複素芳香環を有すると好ましい。このような発光団としては、例えば、フェナントレン骨格、スチルベン骨格、アクリドン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格等が挙げられる。特にナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格を有する蛍光発光物質は蛍光量子収率が高いため好ましい。
【0213】
蛍光発光物質を発光物質として用いる場合、ホスト材料としては、アントラセン骨格を有する材料が好適である。アントラセン骨格を有する物質を蛍光発光物質のホスト材料として用いると、発光効率、耐久性共に良好な発光層を実現することが可能である。ホスト材料として用いるアントラセン骨格を有する物質としては、ジフェニルアントラセン骨格、特に9,10-ジフェニルアントラセン骨格を有する物質が化学的に安定であるため好ましい。また、ホスト材料がカルバゾール骨格を有する場合、正孔の注入・輸送性が高まるため好ましいが、カルバゾールにベンゼン環がさらに縮合したベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾール骨格よりもHOMO準位が0.1eV程度浅くなり、正孔が入りやすくなるためより好ましい。特に、ホスト材料がジベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾール骨格よりもHOMO準位が0.1eV程度浅くなり、正孔が入りやすくなる上に、正孔輸送性にも優れ、耐熱性も高くなるため好適である。したがって、さらにホスト材料として好ましいのは、9,10-ジフェニルアントラセン骨格およびカルバゾール骨格(あるいはベンゾカルバゾール骨格またはジベンゾカルバゾール骨格)を同時に有する物質である。なお、上記の正孔注入・輸送性の観点から、カルバゾール骨格に換えて、ベンゾフルオレン骨格またはジベンゾフルオレン骨格を用いてもよい。このような物質の例としては、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン(略称:2mBnfPPA)、9-フェニル-10-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)ビフェニル-4’-イル]アントラセン(略称:FLPPA)、9-(1-ナフチル)-10-[4-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN-βNPAnth)、9-(1-ナフチル)-10-(2-ナフチル)アントラセン(略称:α,βADN)、2-(10-フェニルアントラセン-9-イル)ジベンゾフラン、2-(10-フェニル-9-アントラセニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン(略称:Bnf(II)PhA)、9-(2-ナフチル)-10-[3-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:βN-mβNPAnth)、1-{4-[10-(ビフェニル-4-イル)-9-アントラセニル]フェニル}-2-エチル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:EtBImPBPhA)、等が挙げられる。特に、CzPA、cgDBCzPA、2mBnfPPA、PCzPAは非常に良好な特性を示すため、好ましい選択である。
【0214】
なお、ホスト材料は複数種の物質を混合した材料であっても良く、混合したホスト材料を用いる場合は、電子輸送性を有する材料と、正孔輸送性を有する材料とを混合することが好ましい。電子輸送性を有する材料と、正孔輸送性を有する材料を混合することによって、発光層113の輸送性を容易に調整することができ、再結合領域の制御も簡便に行うことができる。正孔輸送性を有する材料と電子輸送性を有する材料の含有量の重量比は、正孔輸送性を有する材料:電子輸送性を有する材料=1:19~19:1とするとよい。
【0215】
なお、上記混合された材料の一部として、りん光発光物質を用いることができる。りん光発光物質は、発光物質として蛍光発光物質を用いる際に蛍光発光物質へ励起エネルギーを供与するエネルギードナーとして用いることができる。
【0216】
また、これら混合された材料同士で励起錯体を形成しても良い。当該励起錯体は発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈する励起錯体を形成するような組み合わせを選択することで、エネルギー移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため好ましい。また、当該構成を用いることで駆動電圧も低下するため好ましい。
【0217】
なお、励起錯体を形成する材料の少なくとも一方は、りん光発光物質であってもよい。そうすることで、三重項励起エネルギーを逆項間交差によって効率よく一重項励起エネルギーへ変換することができる。
【0218】
効率よく励起錯体を形成する材料の組み合わせとしては、正孔輸送性を有する材料のHOMO準位が電子輸送性を有する材料のHOMO準位以上であると好ましい。また、正孔輸送性を有する材料のLUMO準位が電子輸送性を有する材料のLUMO準位以上であると好ましい。なお、材料のLUMO準位およびHOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定される材料の電気化学特性(還元電位および酸化電位)から導出することができる。
【0219】
なお、励起錯体の形成は、例えば正孔輸送性を有する材料の発光スペクトル、電子輸送性を有する材料の発光スペクトル、およびこれら材料を混合した混合膜の発光スペクトルを比較し、混合膜の発光スペクトルが、各材料の発光スペクトルよりも長波長シフトする(あるいは長波長側に新たなピークを持つ)現象を観測することにより確認することができる。あるいは、正孔輸送性を有する材料の過渡フォトルミネッセンス(PL)、電子輸送性を有する材料の過渡PL、及びこれら材料を混合した混合膜の過渡PLを比較し、混合膜の過渡PL寿命が、各材料の過渡PL寿命よりも長寿命成分を有する、あるいは遅延成分の割合が大きくなるなどの過渡応答の違いを観測することにより、確認することができる。また、上述の過渡PLは過渡エレクトロルミネッセンス(EL)と読み替えても構わない。すなわち、正孔輸送性を有する材料の過渡EL、電子輸送性を有する材料の過渡EL及びこれらの混合膜の過渡ELを比較し、過渡応答の違いを観測することによっても、励起錯体の形成を確認することができる。
【0220】
電子輸送層114_1は第2の層22であることから、実施の形態1で詳しく説明したため、繰り返しとなる説明は省略する。
【0221】
電子輸送層114_2は、電子輸送性を有する物質を含む層である。電子輸送性を有する材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-7cm2/Vs以上好ましくは1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性が高い物質であれば、これら以外のものを用いることができる。なお、上記有機化合物としてはπ電子不足型複素芳香環を有する有機化合物が好ましい。π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物としては、例えばポリアゾール骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物およびトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物のいずれかまたは複数であることが好ましい。
【0222】
上記電子輸送層114_2に用いることが可能な電子輸送性を有する有機化合物としては、上記発光層113_1および発光層113_2における電子輸送性を有する有機化合物として用いることが可能な有機化合物を同様に用いることができる。中でも、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物またはピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンまたはピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。中でも、mTpPPhen、PnNPhenおよびmPPhen2Pなどのフェナントロリン骨格を有する有機化合物が好ましく、mPPhen2Pなどのフェナントロリン二量体構造を有する有機化合物が安定性に優れより好ましい。
【0223】
なお、電子輸送層114_1および電子輸送層114_2は積層構造を有していてもよい。電子輸送層114_1が積層構造を有する場合、第1の層21に接する層が第2の層22となり実施の形態1に示したような構成を有する。発光層113_1側の層は、電子輸送層114_2を構成することが可能な材料として述べた材料を用いて形成するとよい。また、電子輸送層114_1および電子輸送層114_2が積層構造を有する場合、発光層113_1、発光層113_2に接する層は、正孔ブロック層として機能してもよい。発光層に接する電子輸送層を正孔ブロック層として機能させる場合には、そのHOMO準位が、発光層に含まれる材料のHOMO準位よりも0.5eV以上深い材料を用いることが好ましい。
【0224】
電子輸送層114_2と陰極102との間に、電子注入層115として、酸化リチウム(Li2O)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)、8-ヒドロキシキノリナト-リチウム(略称:Liq)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含む層を設けても良い。電子注入層115は、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたものまたは、エレクトライドを用いてもよい。エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。また、実施の形態1において塩基性の強い有機化合物として挙げた有機化合物も用いることができる。
【0225】
電子注入層115は、上記物質を単独で使用する場合の他、電子輸送性を有する物質からなる層中にそれらを含有させたものを使用してもよい。
【0226】
なお、電子注入層115として、電子輸送性を有する物質(好ましくはビピリジン骨格を有する有機化合物)に上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物を微結晶状態となる濃度以上(50wt%以上)含ませた層を用いることも可能である。当該層は、屈折率の低い層であることから、より外部量子効率の良好な発光デバイスを提供することが可能となる。
【0227】
陰極102は、積層構造を有していてもよく、その場合、有機化合物層103と接する層が実質的に陰極として機能する。陰極を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、リチウム(Li)またはセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等の元素周期表の第1族または第2族に属する元素、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、化合物(フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)など)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、陰極102と電子輸送層との間に、電子注入層115または上述仕事関数の小さい材料の薄膜を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化スズ等様々な導電性材料を陰極として用いることができる。
【0228】
なお、陰極102を可視光に対し透過性を有する材料で形成した場合、陰極102側から、陽極101を可視光に対し透過性を有する材料で形成した場合、陽極101側から、光を発する発光デバイスとすることができる。
【0229】
これら導電性材料は、真空蒸着法またはスパッタリング法などの乾式法、インクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である。また、ゾル-ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペーストを用いて湿式法で形成してもよい。
【0230】
また、有機化合物層103の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法またはスピンコート法など用いても構わない。
【0231】
また上述した各電極または各層を異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0232】
図6では、2つの発光ユニットを有する発光デバイスについて説明したが、3つ以上の発光ユニットを積層した発光デバイスについても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光デバイスのように、一対の電極間に複数の発光ユニットを中間層513で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さらに長寿命な素子を実現できる。また、低電圧駆動が可能で消費電力が低い発光装置を実現することができる。
【0233】
また、それぞれの発光ユニットの発光色を異なるものにすることで、発光デバイス全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つの発光ユニットを有する発光デバイスにおいて、第1の発光ユニットで赤と緑の発光色、第2の発光ユニットで青の発光色を得ることで、発光デバイス全体として白色発光する発光デバイスを得ることも可能である。
【0234】
また、上述の有機化合物層103、第1の発光ユニット501、第2の発光ユニット502及び中間層513などの各層および電極は、例えば、蒸着法(真空蒸着法を含む)、液滴吐出法(インクジェット法ともいう)、塗布法、グラビア印刷法等の方法を用いて形成することができる。また、それらは低分子材料、中分子材料(オリゴマー、デンドリマーを含む)、または高分子材料を含んでも良い。
【0235】
図7には、フォトリソグラフィ法により作製した、隣り合う二つのタンデム型の発光素子(発光デバイス130c、発光デバイス130d)の図を示した。
【0236】
発光デバイス130cは、基板1000上に陽極101cと陰極102との間に有機化合物層103cを有している。有機化合物層103cは第1の発光ユニット501cと、第2の発光ユニット502cとが、中間層513cを挟んで積層した構成を有する。なお、
図7では2つの発光ユニットが積層する例を示したが、3つ以上の発光ユニットが積層する構成であってもよい。第1の発光ユニット501cは、正孔注入層111c、正孔輸送層112c_1、発光層113c_1、電子輸送層114c_1(第2の層22c)を有する。中間層513cは、P型CGL20c、第3の層23c、第1の層21cを有する。第3の層23cはあっても無くても構わない。第2の発光ユニット502cは、正孔輸送層112c_2、発光層113c_2、電子輸送層114c_2、電子注入層115を有する。
【0237】
発光デバイス130dは、基板1000上に陽極101dと陰極102との間に有機化合物層103dを有している。有機化合物層103dは第1の発光ユニット501dと、第2の発光ユニット502dとが、中間層513dを挟んで積層した構成を有する。なお、
図7では2つの発光ユニットが積層する例を示したが、3つ以上の発光ユニットが積層する構成であってもよい。第1の発光ユニット501dは、正孔注入層111d、正孔輸送層112d_1、発光層113d_1、電子輸送層114d_1(第2の層22d)を有する。中間層513dは、P型CGL20d、第3の層23d、第1の層21dを有する。第3の層23dはあっても無くても構わない。第2の発光ユニット502dは、正孔輸送層112d_2、発光層113d_2、電子輸送層114d_2、電子注入層115を有する。
【0238】
発光デバイス130cおよび発光デバイス130dにおいて、中間層513c並びに中間層513d、および第2の層22c並びに第2の層22dは、実施の形態1で説明したような構成を有することが好ましい。
【0239】
なお、電子注入層115および陰極102は発光デバイス130cおよび発光デバイス130dで一続きの共有された層であることが好ましい。また、電子注入層115以外の有機化合物層103cと有機化合物層103dは、電子輸送層114c_2が形成された後と、電子輸送層114d_2が形成された後に各々フォトリソグラフィ法により加工されているため互いに独立している。また、電子注入層115以外の有機化合物層103cの端部(輪郭)は、フォトリソグラフィ法により加工されているため基板に対して垂直方向に概略一致している。また、電子注入層115以外の有機化合物層103dの端部(輪郭)は、フォトリソグラフィ法により加工されているため基板に対して垂直方向に概略一致している。
【0240】
また、フォトリソグラフィ法により加工されていることから、有機化合物層103cと有機化合物層103dとの間には、間隙dが存在する。また、陽極101cと陽極101dとの間の距離は、有機化合物層をフォトリソグラフィ法により加工することからマスク蒸着を行う際よりも小さくすることができ、2μm以上5μm以下とすることができる。
【0241】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光デバイスを、表示装置の表示素子として用いる形態について説明する。
【0242】
発光デバイス130は
図8(A)および
図8(B)に例示したように、絶縁層175上に複数形成され表示装置を構成する。
【0243】
表示装置は、複数の画素178がマトリクス状に配列された画素部177を有する。画素178は、副画素110R、副画素110G、及び副画素110Bを有する。
【0244】
本明細書等において、例えば副画素110R、副画素110G、及び副画素110Bに共通する事項を説明する場合には、副画素110と呼称して説明する場合がある。アルファベットで区別する他の構成要素についても、これらに共通する事項を説明する場合には、アルファベットを省略した符号を用いて説明する場合がある。
【0245】
副画素110Rは赤色の光を呈し、副画素110Gは緑色の光を呈し、副画素110Bは青色の光を呈する。これにより、画素部177に画像を表示することができる。なお、本実施の形態では、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の副画素を例に挙げて説明するが、その他の色の副画素の組み合わせを用いてもよい。また、副画素は3つに限られず、4つ以上としてもよい。4つの副画素としては、例えば、R、G、B、白色(W)の4色の副画素、R、G、B、黄色(Y)の4色の副画素、及び、R、G、B、赤外光(IR)の4つの副画素、等が挙げられる。
【0246】
本明細書等において、行方向をX方向、列方向をY方向という場合がある。X方向とY方向は交差し、例えば垂直に交差する。
【0247】
図8(A)では、異なる色の副画素がX方向に並べて配置されており、同じ色の副画素が、Y方向に並べて配置されている例を示す。なお、異なる色の副画素がY方向に並べて配置され、同じ色の副画素が、X方向に並べて配置されていてもよい。
【0248】
画素部177の外側には、接続部140が設けられ、領域141が設けられていてもよい。領域141は画素部177と接続部140の間に設けられる。領域141には、有機化合物層103が設けられる。また、接続部140には、導電層151Cが設けられる。
【0249】
図8(A)では、領域141、及び接続部140が画素部177の右側に位置する例を示すが、領域141、及び接続部140の位置は特に限定されない。また、領域141、及び接続部140は、単数であっても複数であってもよい。
【0250】
図8(B)は、
図8(A)における一点鎖線A1-A2間の断面図の例である。
図8(B)に示すように、表示装置は、絶縁層171と、絶縁層171上の導電層172と、絶縁層171上、及び導電層172上の絶縁層173と、絶縁層173上の絶縁層174と、絶縁層174上の絶縁層175と、を有する。絶縁層171は、基板(図示せず)上に設けられる。絶縁層175、絶縁層174、及び絶縁層173には、導電層172に達する開口が設けられ、当該開口を埋め込むようにプラグ176が設けられている。
【0251】
画素部177において、絶縁層175及びプラグ176上に、発光デバイス130が設けられる。また、発光デバイス130を覆うように、保護層131が設けられている。保護層131上には、樹脂層122によって基板120が貼り合わされている。また、隣り合う発光デバイス130の間には、無機絶縁層125と、無機絶縁層125上の絶縁層127と、が設けられていることが好ましい。
【0252】
図8(B)では、無機絶縁層125及び絶縁層127の断面が複数示されているが、表示装置を上面から見た場合、無機絶縁層125及び絶縁層127は、それぞれ1つに繋がっていることが好ましい。つまり、無機絶縁層125及び絶縁層127は、第1の電極上に開口部を有する絶縁層であることが好ましい。
【0253】
図8(B)では、発光デバイス130として、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bを示している。発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bは、互いに異なる色の光を発するものとする。例えば、発光デバイス130Rは赤色の光を発することができ、発光デバイス130Gは緑色の光を発することができ、発光デバイス130Bは青色の光を発することができる。また、発光デバイス130R、発光デバイス130G、又は発光デバイス130Bは、他の可視光又は赤外光を発してもよい。
【0254】
本発明の一態様の表示装置は、例えば発光デバイスが形成されている基板とは反対方向に光を射出する上面射出型(トップエミッション型)とすることができる。なお、本発明の一態様の表示装置は、下面射出型(ボトムエミッション型)であってもよい。
【0255】
発光デバイス130Rは、実施の形態1乃至実施の形態3に示したような構成を有する。導電層151Rと導電層152Rとからなる陽極101R(画素電極)と、陽極101R上の第1のEL層104Rと、第1のEL層104R上の第2のEL層105と、第2のEL層105上の陰極102(共通電極)と、を有する。第2のEL層105は、最も陰極側の発光層よりも陰極102(共通電極)側にあることが好ましく、ホールブロック層、第2の電子輸送層または電子注入層またはこれらの積層であることが好ましい。なお、上記発光デバイス130Rにおいては、第1のEL層104Rと第2のEL層105を合わせた層が有機化合物層103Rとなり、実施の形態1乃至実施の形態3における有機化合物層103に相当する。
【0256】
発光デバイス130Gは、実施の形態1乃至実施の形態3に示したような構成を有する。導電層151Gと導電層152Gとからなる陽極101G(画素電極)と、陽極101G上の第1のEL層104Gと、第1のEL層104G上の第2のEL層105と、第2のEL層105上の陰極102(共通電極)と、を有する。第2のEL層105は、最も陰極側の発光層よりも陰極102(共通電極)側にあることが好ましく、ホールブロック層、第2の電子輸送層または電子注入層またはこれらの積層であることが好ましい。なお、上記発光デバイス130Gにおいては、第1のEL層104Gと第2のEL層105を合わせた層が有機化合物層103Gとなり、実施の形態1乃至実施の形態3における有機化合物層103に相当する。
【0257】
発光デバイス130Bは、実施の形態1乃至実施の形態3に示したような構成を有する。導電層151Bと導電層152Bとからなる陽極101B(画素電極)と、陽極101B上の第1のEL層104Bと、第1のEL層104B上の第2のEL層105と、第2のEL層105上の陰極102(共通電極)と、を有する。第2のEL層105は、最も陰極側の発光層よりも陰極102(共通電極)側にあることが好ましく、ホールブロック層、第2の電子輸送層または電子注入層またはこれらの積層であることが好ましい。なお、上記発光デバイス130Bにおいては、第1のEL層104Bと第2のEL層105を合わせた層が有機化合物層103Bとなり、実施の形態1乃至実施の形態3における有機化合物層103に相当する。
【0258】
発光デバイスが有する画素電極(第1の電極)と共通電極(第2の電極)のうち、一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。本実施の形態では、特に断りが無い場合は、画素電極が陽極として機能し、共通電極が陰極として機能するものとして説明する。
【0259】
第1のEL層104R、第1のEL層104G、及び第1のEL層104Bは、各々または、発光色毎に島状に独立している。なお、第1のEL層104R、第1のEL層104G、及び第1のEL層104Bは、互いに重なりを有さないことが好ましい。第1のEL層104を発光デバイス130ごとに島状に設けることで、高精細な表示装置においても隣接する発光デバイス130間のリーク電流を抑制できる。これにより、クロストークを防ぐことができ、コントラストの極めて高い表示装置を実現できる。特に、低輝度における電流効率の高い表示装置を実現できる。
【0260】
島状の第1のEL層104は、EL膜を成膜し、当該ELをフォトリソグラフィ法を用いて加工することにより形成することができる。本発明の一態様の発光デバイスは、中間層にLi化合物などを使用しないため、フォトリソグラフィ法を用いて加工を行っても特性の良好な発光デバイスを得ることができる。
【0261】
第1のEL層104は、発光デバイス130の陽極101(画素電極)の上面及び側面を覆うように設けられることが好ましい。これにより、第1のEL層104の端部が画素電極の端部よりも内側に位置する構成に比べて、表示装置の開口率を高めることが容易となる。また、発光デバイス130の画素電極の側面を第1のEL層104で覆うことで、画素電極と陰極102とが接することを抑制できるため、発光デバイス130のショートを抑制できる。
【0262】
また、本発明の一態様の表示装置では、発光デバイスの陽極101(画素電極)を、積層構成とすることが好ましい。例えば、
図8(B)に示す例では、発光デバイス130の陽極101を、絶縁層171側に設けられた導電層151と、有機化合物層側に設けられた導電層152と、の積層構成としている。
【0263】
導電層151として、例えば金属材料を用いることができる。具体的には、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)等の金属、及びこれらを適宜組み合わせて含む合金を用いることもできる。
【0264】
導電層152として、インジウム、錫、亜鉛、ガリウム、チタン、アルミニウム、及びシリコンの中から選ばれるいずれか一又は複数を有する酸化物を用いることができる。例えば、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを含む酸化亜鉛、酸化チタン、ガリウムを含むインジウム亜鉛酸化物、アルミニウムを含むインジウム亜鉛酸化物、シリコンを含むインジウム錫酸化物、及びシリコンを含むインジウム亜鉛酸化物等のいずれか一又は複数を含む導電性酸化物を用いることが好ましい。特に、シリコンを含むインジウム錫酸化物は仕事関数が大きい、例えば仕事関数が4.0eV以上であるため、導電層152として好適に用いることができる。
【0265】
導電層151は、異なる材料を有する複数の層の積層構成であってもよく、導電層152は、異なる材料を有する複数の層の積層構成であってもよい。この場合、導電層151が、導電性酸化物等の導電層152に用いることができる材料を用いた層を有してもよく、また、導電層152が、金属材料等の導電層151に用いることができる材料を用いた層を有してもよい。例えば、導電層151が2層以上の積層構成である場合は、導電層152と接する層は、導電層152に用いることができる材料を用いた層とすることができる。
【0266】
なお、導電層151の端部は、テーパ形状を有することが好ましい。具体的には、導電層151の端部は、テーパ角90°未満のテーパ形状を有することが好ましい。この場合、導電層151の側面に沿って設けられる導電層152もテーパ形状を有する。導電層152の側面をテーパ形状とすることで、導電層152の側面に沿って設けられる第1のEL層104の被覆性を高めることができる。
【0267】
本発明の一態様の表示装置は、発光デバイス130が実施の形態1乃至実施の形態3に示したような構成を有することから、駆動電圧の上昇を抑制した特性の良好な表示装置とすることが可能となる。
【0268】
続いて
図8(A)に示す構成を有する表示装置の作製方法例を
図9乃至
図14を用いて説明する。
【0269】
[作製方法例1]
表示装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び、導電膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、又は原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法等を用いて形成できる。
【0270】
また、表示装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び、導電膜等)は、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ法、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、又はナイフコート等の湿式の成膜方法により形成できる。
【0271】
また、表示装置を構成する薄膜を加工する際には、例えばフォトリソグラフィ法を用いて加工できる。
【0272】
フォトリソグラフィ法において、露光に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、又はこれらを混合させた光を用いることができる。そのほか、紫外線、KrFレーザ光、又はArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外(EUV:Extreme Ultra-violet)光、又はX線を用いてもよい。また、露光に用いる光に換えて、電子ビームを用いることもできる。
【0273】
薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、又はサンドブラスト法等を用いることができる。
【0274】
まず、
図9(A)に示すように、基板(図示せず)上に絶縁層171を形成する。続いて、絶縁層171上に導電層172、及び導電層179を形成し、導電層172、及び導電層179を覆うように絶縁層171上に絶縁層173を形成する。続いて、絶縁層173上に絶縁層174を形成し、絶縁層174上に絶縁層175を形成する。
【0275】
基板としては、少なくとも後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有する基板を用いることができる。例えばガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板、又は有機樹脂基板、シリコン又は炭化シリコン等を材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板等の半導体基板を用いることができる。
【0276】
続いて、
図9(A)に示すように、絶縁層175、絶縁層174、及び絶縁層173に、導電層172に達する開口を形成する。続いて、当該開口を埋め込むように、プラグ176を形成する。
【0277】
続いて、
図9(A)に示すように、プラグ176上、及び絶縁層175上に、後に導電層151R、導電層151G、導電層151B、及び導電層151Cとなる導電膜151fを形成する。導電膜151fとして、例えば金属材料を用いることができる。
【0278】
続いて、
図9(A)に示すように、導電膜151f上にレジストマスク191を形成する。レジストマスク191は、感光性材料(フォトレジスト)を塗布し、露光及び現像を行うことで形成できる。
【0279】
続いて、
図9(B)に示すように、例えばレジストマスク191と重ならない領域の導電膜151fを除去する。これにより、導電層151が形成される。
【0280】
続いて、
図9(C)に示すように、レジストマスク191を除去する。レジストマスク191は、例えば、酸素プラズマを用いたアッシングにより除去できる。
【0281】
続いて、
図9(D)に示すように、導電層151R上、導電層151G上、導電層151B上、導電層151C上、及び絶縁層175上に、後に絶縁層156R、絶縁層156G、絶縁層156B、及び絶縁層156Cとなる絶縁膜156fを形成する。
【0282】
絶縁膜156fには、酸化絶縁膜、窒化絶縁膜、酸化窒化絶縁膜、又は窒化酸化絶縁膜等の無機絶縁膜、例えば、酸化窒化シリコンを用いることができる。
【0283】
続いて、
図9(E)に示すように、絶縁膜156fを加工することにより、絶縁層156R、絶縁層156G、絶縁層156B、及び絶縁層156Cを形成する。
【0284】
続いて、
図10(A)に示すように、導電層151R上、導電層151G上、導電層151B上、導電層151C上、絶縁層156R上、絶縁層156G上、絶縁層156B上、絶縁層156C上、及び絶縁層175上に、導電膜152fを形成する。
【0285】
導電膜152fとして、例えば導電性酸化物を用いることができる。導電膜152fは積層であってもよい。
【0286】
続いて、
図10(B)に示すように、導電膜152fを加工し、導電層152R、導電層152G、導電層152B、及び導電層152Cを形成する。
【0287】
続いて、
図10(C)に示すように、有機化合物膜103Rfを、導電層152R上、導電層152G上、導電層152B上、及び絶縁層175上に形成する。なお、
図10(C)に示すように、導電層152C上には、有機化合物膜103Rfを形成していない。
【0288】
続いて、
図10(C)に示すように、犠牲膜158Rf、マスク膜159Rfを形成する。
【0289】
有機化合物膜103Rf上に犠牲膜158Rfを設けることで、表示装置の作製工程中に有機化合物膜103Rfが受けるダメージを低減し、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0290】
犠牲膜158Rfには、有機化合物膜103Rfの加工条件に対する耐性の高い膜、具体的には、有機化合物膜103Rfとのエッチングの選択比が大きい膜を用いる。マスク膜159Rfには、犠牲膜158Rfとのエッチングの選択比が大きい膜を用いる。
【0291】
また、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfは、有機化合物膜103Rfの耐熱温度よりも低い温度で形成する。犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfを形成する際の基板温度としては、それぞれ、代表的には、100℃以上200℃以下、好ましくは100℃以上150℃以下、より好ましくは100℃以上120℃以下である。
【0292】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、ウェットエッチング法またはドライエッチング法により除去できる膜を用いることが好ましい。
【0293】
なお、有機化合物膜103Rf上に接して形成される犠牲膜158Rfは、マスク膜159Rfよりも、有機化合物膜103Rfへのダメージが少ない形成方法を用いて形成されることが好ましい。例えば、スパッタリング法よりも、ALD法又は真空蒸着法が好ましい。
【0294】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfとしては、それぞれ、例えば、金属膜、合金膜、金属酸化物膜、半導体膜、有機絶縁膜、及び、無機絶縁膜等のうち一種又は複数種を用いることができる。
【0295】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、それぞれ、例えば、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、チタン、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、及びタンタル等の金属材料、又は該金属材料を含む合金材料を用いることができる。特に、アルミニウム又は銀等の低融点材料を用いることが好ましい。犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfの一方又は双方に紫外線を遮蔽することが可能な金属材料を用いることで、有機化合物膜103Rfにパターン露光時の紫外線が照射されることを抑制でき、有機化合物膜103Rfの劣化を抑制できるため、好ましい。
【0296】
また、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、それぞれ、In-Ga-Zn酸化物、酸化インジウム、In-Zn酸化物、In-Sn酸化物、インジウムチタン酸化物(In-Ti酸化物)、インジウムスズ亜鉛酸化物(In-Sn-Zn酸化物)、インジウムチタン亜鉛酸化物(In-Ti-Zn酸化物)、インジウムガリウムスズ亜鉛酸化物(In-Ga-Sn-Zn酸化物)、シリコンを含むインジウムスズ酸化物等の金属酸化物を用いることができる。
【0297】
なお、上記金属酸化物においてガリウムに代えて元素M(Mは、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムから選ばれた一種又は複数種)を用いてもよい。
【0298】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfとしては、例えば、シリコン又はゲルマニウム等の半導体材料を用いることが、半導体の製造プロセスと親和性が高いため好ましい。又は、上記半導体材料を含む化合物を用いることができる。
【0299】
また、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfとしては、それぞれ、各種無機絶縁膜を用いることができる。特に、酸化絶縁膜は、窒化絶縁膜に比べて有機化合物膜103Rfとの密着性が高く好ましい。
【0300】
続いて、
図10(C)に示すように、レジストマスク190Rを形成する。レジストマスク190Rは、感光性材料(フォトレジスト)を塗布し、露光及び現像を行うことで形成できる。
【0301】
レジストマスク190Rは、導電層152Rと重なる位置に設ける。レジストマスク190Rは、導電層152Cと重なる位置にも設けることが好ましい。これにより、導電層152Cが表示装置の作製工程中にダメージを受けることを抑制できる。
【0302】
続いて、
図10(D)に示すように、レジストマスク190Rを用いて、マスク膜159Rfの一部を除去し、マスク層159Rを形成する。マスク層159Rは、導電層152R上と、導電層152C上と、に残存する。その後、レジストマスク190Rを除去する。続いて、マスク層159Rをマスク(ハードマスクともいう)に用いて、犠牲膜158Rfの一部を除去し、犠牲層158Rを形成する。
【0303】
ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfの加工時に、有機化合物膜103Rfに加わるダメージを低減できる。ウェットエッチング法を用いる場合、例えば、現像液、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液などのアルカリ水溶液、希フッ酸、シュウ酸、リン酸、酢酸、硝酸、又はこれらの混合液体を用いた薬液等の酸水溶液を用いることが好ましい。
【0304】
また、犠牲膜158Rfの加工においてドライエッチング法を用いる場合は、エッチングガスに酸素を含むガスを用いないことで、有機化合物膜103Rfの劣化を抑制できる。
【0305】
レジストマスク190Rは、レジストマスク191と同様の方法で除去できる。
【0306】
続いて、
図10(D)に示すように、有機化合物膜103Rfを加工して、有機化合物層103Rを形成する。例えば、マスク層159R及び犠牲層158Rをハードマスクに用いて、有機化合物膜103Rfの一部を除去し、有機化合物層103Rを形成する。
【0307】
これにより、
図10(D)に示すように、導電層152R上に、有機化合物層103R、犠牲層158R、及び、マスク層159Rの積層構造が残存する。また、導電層152G及び導電層152Bは露出する。
【0308】
有機化合物膜103Rfの加工は、異方性エッチングにより行うことが好ましい。特に、異方性のドライエッチングが好ましい。又は、ウェットエッチングを用いてもよい。
【0309】
ドライエッチング法を用いる場合は、エッチングガスに酸素を含むガスを用いないことで、有機化合物膜103Rfの劣化を抑制できる。
【0310】
また、エッチングガスに酸素を含むガスを用いてもよい。エッチングガスが酸素を含むことで、エッチングの速度を速めることができる。したがって、エッチング速度を十分な速さに維持しつつ、低パワーの条件でエッチングを行うことができる。このため、有機化合物膜103Rfに与えるダメージを抑制できる。さらに、エッチング時に生じる反応生成物の付着等の不具合を抑制できる。
【0311】
ドライエッチング法を用いる場合、例えば、H2、CF4、C4F8、SF6、CHF3、Cl2、H2O、BCl3、又はHe、Ar等の第18族元素のうち、一種以上を含むガスをエッチングガスに用いることが好ましい。又は、これらの一種以上と、酸素を含むガスをエッチングガスに用いることが好ましい。又は、酸素ガスをエッチングガスに用いてもよい。
【0312】
続いて、
図11(A)に示すように、後に有機化合物層103Gとなる有機化合物膜103Gfを形成する。
【0313】
有機化合物膜103Gfは、有機化合物膜103Rfの形成に用いることができる方法と同様の方法で形成できる。また、有機化合物膜103Gfは、有機化合物膜103Rfと同様の構成とすることができる。
【0314】
続いて、
図11(A)に示すように犠牲膜158Gfとマスク膜159Gfとを順に形成する。その後、レジストマスク190Gを形成する。犠牲膜158Gf及びマスク膜159Gfの材料及び形成方法は、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfに適用できる条件と同様である。レジストマスク190Gの材料及び形成方法は、レジストマスク190Rに適用できる条件と同様である。
【0315】
レジストマスク190Gは、導電層152Gと重なる位置に設ける。
【0316】
続いて、
図11(B)に示すように、レジストマスク190Gを用いて、マスク膜159Gfの一部を除去し、マスク層159Gを形成する。マスク層159Gは、導電層152G上に残存する。その後、レジストマスク190Gを除去する。続いて、マスク層159Gをマスクに用いて、犠牲膜158Gfの一部を除去し、犠牲層158Gを形成する。続いて、有機化合物膜103Gfを加工して、有機化合物層103Gを形成する。これにより、
図11(B)に示すように、導電層152G上に、有機化合物層103G、犠牲層158G、及び、マスク層159Gの積層構造が残存する。また、マスク層159R、及び導電層152Bは露出する。
【0317】
続いて、
図11(C)に示すように、有機化合物膜103Bfを形成する。
【0318】
有機化合物膜103Bfは、有機化合物膜103Rfの形成に用いることができる方法と同様の方法で形成できる。また、有機化合物膜103Bfは、有機化合物膜103Rfと同様の構成とすることができる。
【0319】
続いて、
図11(C)に示すように、犠牲膜158Bfとマスク膜159Bfとを順に形成する。その後、レジストマスク190Bを形成する。犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfの材料及び形成方法は、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfに適用できる条件と同様である。レジストマスク190Bの材料及び形成方法は、レジストマスク190Rに適用できる条件と同様である。
【0320】
レジストマスク190Bは、導電層152Bと重なる位置に設ける。
【0321】
続いて、
図11(D)に示すように、レジストマスク190Bを用いて、マスク膜159Bfの一部を除去し、マスク層159Bを形成する。マスク層159Bは、導電層152B上に残存する。その後、レジストマスク190Bを除去する。続いて、マスク層159Bをマスクに用いて、犠牲膜158Bfの一部を除去し、犠牲層158Bを形成する。続いて、有機化合物膜103Bfを加工して、有機化合物層103Bを形成する。例えば、マスク層159B及び犠牲層158Bをハードマスクに用いて、有機化合物膜103Bfの一部を除去し、有機化合物層103Bを形成する。
【0322】
これにより、
図11(D)に示すように、導電層152B上に、有機化合物層103B、犠牲層158B、及び、マスク層159Bの積層構造が残存する。また、マスク層159R、及びマスク層159Gは露出する。
【0323】
なお、有機化合物層103R、有機化合物層103G、有機化合物層103Bの側面は、それぞれ、被形成面に対して垂直又は概略垂直であることが好ましい。例えば、被形成面と、これらの側面との成す角度を、60度以上90度以下とすることが好ましい。
【0324】
上記のように、フォトリソグラフィ法を用いて形成した有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bのうち隣接する2つの間の距離は、8μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下、又は、1μm以下にまで狭めることができる。ここで、当該距離とは、例えば、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bのうち、隣接する2つの対向する端部の間の距離で規定できる。このように、島状の有機化合物層の間の距離を狭めることで、高い精細度と、大きな開口率を有する表示装置を提供できる。また、隣り合う発光デバイス間における第1の電極同士の距離も、狭めることができ、例えば10μm以下、8μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下とすることができる。なお、隣り合う発光デバイス間における第1の電極同士の距離は2μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0325】
続いて、
図12(A)に示すように、マスク層159R、マスク層159G、及びマスク層159Bを除去することが好ましい。
【0326】
マスク層の除去工程には、マスク層の加工工程と同様の方法を用いることができる。特に、ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、マスク層を除去する際に、有機化合物層103に加わるダメージを低減できる。
【0327】
また、マスク層を、水又はアルコール等の極性溶媒に溶解させることで除去してもよい。アルコールとしては、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、又はグリセリン等が挙げられる。
【0328】
マスク層を除去した後に、表面に吸着する水を除去するため、乾燥処理を行ってもよい。例えば、不活性ガス雰囲気又は減圧雰囲気下における加熱処理を行うことができる。加熱処理は、基板温度として50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上120℃以下の温度で行うことができる。減圧雰囲気とすることで、より低温で乾燥が可能であるため好ましい。
【0329】
続いて、
図12(B)に示すように、無機絶縁膜125fを形成する。
【0330】
続いて、
図12(C)に示すように、無機絶縁膜125f上に、後に絶縁層127となる絶縁膜127fを形成する。
【0331】
無機絶縁膜125f及び絶縁膜127fを形成する際の基板温度としては、それぞれ、60℃以上、80℃以上、100℃以上、又は、120℃以上、かつ、200℃以下、180℃以下、160℃以下、150℃以下、又は140℃以下であることが好ましい。
【0332】
無機絶縁膜125fとしては、上記の基板温度の範囲で、3nm以上、5nm以上、又は、10nm以上、かつ、200nm以下、150nm以下、100nm以下、又は、50nm以下の厚さの絶縁膜を形成することが好ましい。
【0333】
無機絶縁膜125fは、例えば、ALD法を用いて形成することが好ましい。ALD法を用いることで、成膜ダメージを小さくすることができ、また、被覆性の高い膜を成膜可能なため好ましい。無機絶縁膜125fとしては、例えば、ALD法を用いて、酸化アルミニウム膜を形成することが好ましい。
【0334】
絶縁膜127fは、前述の湿式の成膜方法を用いて形成することが好ましい。絶縁膜127fは、例えば、スピンコートにより、感光性材料を用いて形成することが好ましく、より具体的には、アクリル樹脂を含む感光性の樹脂組成物を用いて形成することが好ましい。
【0335】
続いて、露光を行って、絶縁膜127fの一部に、可視光線又は紫外線を感光させる。絶縁層127は、導電層152R、導電層152G、及び導電層152Bのいずれか2つに挟まれる領域、及び、導電層152Cの周囲に形成される。
【0336】
絶縁膜127fへの露光領域によって、後に形成する絶縁層127の幅を制御できる。本実施の形態では、絶縁層127が導電層151の上面と重なる部分を有するように加工する。
【0337】
露光に用いる光は、i線(波長365nm)を含むことが好ましい。また、露光に用いる光は、g線(波長436nm)、及びh線(波長405nm)の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0338】
続いて、
図13(A)に示すように、現像を行って、絶縁膜127fの露光させた領域を除去し、絶縁層127aを形成する。
【0339】
続いて、
図13(B)に示すように、絶縁層127aをマスクとして、エッチング処理を行って、無機絶縁膜125fの一部を除去し、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの一部の膜厚を薄くする。これにより、絶縁層127aの下に、無機絶縁層125が形成される。また、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの膜厚が薄い部分の表面が露出する。なお、以下では、絶縁層127aをマスクに用いたエッチング処理を、第1のエッチング処理ということがある。
【0340】
第1のエッチング処理は、ドライエッチング又はウェットエッチングによって行うことができる。なお、無機絶縁膜125fを、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bと同様の材料を用いて成膜していた場合、第1のエッチング処理を一括で行うことができるため、好ましい。
【0341】
ドライエッチングを行う場合、塩素系のガスを用いることが好ましい。塩素系ガスとしては、Cl2、BCl3、SiCl4、及びCCl4等を、単独又は2以上のガスを混合して用いることができる。また、上記塩素系ガスに、酸素ガス、水素ガス、ヘリウムガス、及びアルゴンガス等を、単独又は2以上のガスを混合して、適宜添加できる。ドライエッチングを用いることにより、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの膜厚が薄い領域を、良好な面内均一性で形成できる。
【0342】
ドライエッチング装置としては、高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置を用いることができる。高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置は、例えば、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。又は、平行平板型電極を有する容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。
【0343】
また、第1のエッチング処理をウェットエッチングで行うことが好ましい。ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに加わるダメージを低減できる。例えば、ウェットエッチングは、アルカリ溶液を用いて行うことができる。例えば、酸化アルミニウム膜のウェットエッチングには、アルカリ溶液であるTMAH水溶液を用いることができる。また、フッ化物を含む酸溶液を用いることもできる。この場合、パドル方式でウェットエッチングを行うことができる。なお、無機絶縁膜125fを、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bと同様の材料を用いて成膜していた場合、上記エッチング処理を一括で行うことができるため、好ましい。
【0344】
第1のエッチング処理では、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを完全に除去せず、膜厚が薄くなった状態でエッチング処理を停止する。このように、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103B上に、対応する犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを残存させておくことで、後の工程の処理で、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bが損傷することを防ぐことができる。
【0345】
続いて、基板全体に露光を行い、可視光線又は紫外線を絶縁層127aに照射することが好ましい。当該露光のエネルギー密度は、0mJ/cm2より大きく、800mJ/cm2以下とすることが好ましく、0mJ/cm2より大きく、500mJ/cm2以下とすることがより好ましい。現像後にこのような露光を行うことで、絶縁層127aの透明度を向上させることができる場合がある。また、後の工程における、絶縁層127aをテーパ形状に変形させる加熱処理に必要とされる基板温度を低下させることができる場合がある。
【0346】
ここで、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bとして、酸素に対するバリア絶縁層(例えば、酸化アルミニウム膜等)が存在することで、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに酸素が拡散することを低減できる。
【0347】
続いて、加熱処理(ポストベークともいう)を行う。加熱処理を行うことで、絶縁層127aを、側面にテーパ形状を有する絶縁層127に変形させることができる(
図13(C))。当該加熱処理は、有機化合物層の耐熱温度よりも低い温度で行う。加熱処理は、基板温度として50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上130℃以下の温度で行うことができる。加熱雰囲気は、大気雰囲気であってもよく、不活性ガス雰囲気であってもよい。また、加熱雰囲気は、大気圧雰囲気であってもよく、減圧雰囲気であってもよい。これにより、絶縁層127と無機絶縁層125との密着性を向上させ、絶縁層127の耐食性も向上させることができる。
【0348】
第1のエッチング処理にて、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを完全に除去せず、膜厚が薄くなった状態の犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを残存させておくことで、当該加熱処理において、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bがダメージを受けて劣化することを防ぐことができる。したがって、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0349】
続いて、
図14(A)に示すように、絶縁層127をマスクとして、エッチング処理を行って、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの一部を除去する。これにより、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bそれぞれに開口が形成され、有機化合物層103R、有機化合物層103G、有機化合物層103B、及び導電層152Cの上面が露出する。なお、以下では、このエッチング処理を、第2のエッチング処理ということがある。
【0350】
無機絶縁層125の端部は絶縁層127で覆われている。また、
図14(A)では、犠牲層158Gの端部の一部(具体的には、第1のエッチング処理により形成されたテーパ形状の部分)を絶縁層127が覆い、第2のエッチング処理により形成されたテーパ形状の部分は露出している例を示す。
【0351】
第2のエッチング処理はウェットエッチングで行う。ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに加わるダメージを低減できる。ウェットエッチングは、例えばアルカリ溶液または酸性溶液を用いて行うことができる。有機化合物層103が溶けないように、水溶液であることが好ましい。
【0352】
続いて、
図14(B)に示すように、有機化合物層103R上、有機化合物層103G上、有機化合物層103B上、導電層152C上、及び絶縁層127上に共通電極155を形成する。共通電極155は、スパッタリング法、又は真空蒸着法等の方法で形成できる。このとき、
図8(B)で示したように、有機化合物層103を第1のEL層104と第2のEL層105の積層構造として形成し、その上に共通電極155を形成しても良い。
【0353】
続いて、
図14(C)に示すように、共通電極155上に保護層131を形成する。保護層131は、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、又はALD法等の方法で形成できる。
【0354】
続いて、樹脂層122を用いて、保護層131上に、基板120を貼り合わせることで、表示装置を作製できる。前述のように、本発明の一態様の表示装置の作製方法では、導電層151の側面と重なる領域を有するように絶縁層156を設け、且つ導電層151及び絶縁層156を覆うように導電層152を形成する。これにより、表示装置の歩留まりを高め、また不良の発生を抑制できる。
【0355】
以上のように、本発明の一態様の表示装置の作製方法では、島状の有機化合物層103R、島状の有機化合物層103G、及び島状の有機化合物層103Bは、ファインメタルマスクを用いて形成されるのではなく、膜を一面に成膜した後に加工することで形成されるため、島状の層を均一の厚さで形成できる。そして、高精細な表示装置又は高開口率の表示装置を実現できる。また、精細度又は開口率が高く、副画素間の距離が極めて短くても、隣接する副画素において、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び、有機化合物層103Bが互いに接することを抑制できる。したがって、副画素間にリーク電流が発生することを抑制できる。これにより、クロストークを防ぐことができ、コントラストの極めて高い表示装置を実現できる。また、フォトリソグラフィ法を用いて作製されたタンデム型の発光デバイスを有する表示装置であっても、良好な特性の表示装置を提供することができる。
【0356】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置について説明する。
【0357】
本実施の形態の表示装置は、高精細な表示装置とすることができる。したがって、本実施の形態の表示装置は、例えば、腕時計型、及び、ブレスレット型等の情報端末機(ウェアラブル機器)の表示部、並びに、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)等のVR向け機器、及び、メガネ型のAR向け機器等の頭部に装着可能なウェアラブル機器の表示部に用いることができる。
【0358】
また、本実施の形態の表示装置は、高解像度な表示装置又は大型な表示装置とすることができる。したがって、本実施の形態の表示装置は、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用等のモニタ、デジタルサイネージ、及び、パチンコ機等の大型ゲーム機等の比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、及び、音響再生装置の表示部に用いることができる。
【0359】
[表示モジュール]
図15(A)に、表示モジュール280の斜視図を示す。表示モジュール280は、表示装置100Aと、FPC290と、を有する。なお、表示モジュール280が有する表示装置は表示装置100Aに限られず、後述する表示装置100Bおよび表示装置100Eのいずれかであってもよい。
【0360】
表示モジュール280は、基板291及び基板292を有する。表示モジュール280は、表示部281を有する。表示部281は、表示モジュール280における画像を表示する領域であり、後述する画素部284に設けられる各画素からの光を視認できる領域である。
【0361】
図15(B)に、基板291側の構成を模式的に示した斜視図を示している。基板291上には、回路部282と、回路部282上の画素回路部283と、画素回路部283上の画素部284と、が積層されている。また、基板291上の画素部284と重ならない部分に、FPC290と接続するための端子部285が設けられている。端子部285と回路部282とは、複数の配線により構成される配線部286により電気的に接続されている。
【0362】
画素部284は、周期的に配列した複数の画素284aを有する。
図15(B)の右側に、1つの画素284aの拡大図を示している。画素284aには、先の実施の形態で説明した各種構成を適用できる。
図15(B)では、画素284aが
図8(A)および
図8(B)に示す画素178と同様の構成を有する場合を例に示す。
【0363】
画素回路部283は、周期的に配列した複数の画素回路283aを有する。
【0364】
1つの画素回路283aは、1つの画素284aが有する複数の素子の駆動を制御する回路である。
【0365】
回路部282は、画素回路部283の各画素回路283aを駆動する回路を有する。例えば、ゲート線駆動回路、及び、ソース線駆動回路の一方又は双方を有することが好ましい。このほか、演算回路、メモリ回路、及び電源回路等の少なくとも一つを有していてもよい。
【0366】
FPC290は、外部から回路部282にビデオ信号又は電源電位等を供給するための配線として機能する。また、FPC290上にIC(集積回路)が実装されていてもよい。
【0367】
表示モジュール280は、画素部284の下側に画素回路部283及び回路部282の一方又は双方が積層された構成とすることができるため、表示部281の開口率(有効表示面積比)を極めて高くすることができる。
【0368】
このような表示モジュール280は、極めて高精細であることから、HMD等のVR向け機器又はメガネ型のAR向け機器に好適に用いることができる。例えば、レンズを通して表示モジュール280の表示部を視認する構成の場合であっても、表示モジュール280は極めて高精細な表示部281を有するためにレンズで表示部を拡大しても画素が視認されず、没入感の高い表示を行うことができる。また、表示モジュール280はこれに限られず、比較的小型の表示部を有する電子機器に好適に用いることができる。
【0369】
[表示装置100A]
図16(A)に示す表示装置100Aは、基板301、発光デバイス130R、発光デバイス130G、発光デバイス130B、容量240、及び、トランジスタ310を有する。
【0370】
基板301は、
図15(A)及び
図15(B)における基板291に相当する。トランジスタ310は、基板301にチャネル形成領域を有するトランジスタである。基板301としては、例えば単結晶シリコン基板等の半導体基板を用いることができる。トランジスタ310は、基板301の一部、導電層311、低抵抗領域312、絶縁層313、及び、絶縁層314を有する。導電層311は、ゲート電極として機能する。絶縁層313は、基板301と導電層311の間に位置し、ゲート絶縁層として機能する。低抵抗領域312は、基板301に不純物がドープされた領域であり、ソース又はドレインとして機能する。絶縁層314は、導電層311の側面を覆って設けられる。
【0371】
また、基板301に埋め込まれるように、隣接する2つのトランジスタ310の間に素子分離層315が設けられている。
【0372】
また、トランジスタ310を覆って絶縁層261が設けられ、絶縁層261上に容量240が設けられている。
【0373】
容量240は、導電層241と、導電層245と、これらの間に位置する絶縁層243を有する。導電層241は、容量240の一方の電極として機能し、導電層245は、容量240の他方の電極として機能し、絶縁層243は、容量240の誘電体として機能する。
【0374】
導電層241は絶縁層261上に設けられ、絶縁層254に埋め込まれている。導電層241は、絶縁層261に埋め込まれたプラグ271によってトランジスタ310のソース又はドレインの一方と電気的に接続されている。絶縁層243は導電層241を覆って設けられる。導電層245は、絶縁層243を介して導電層241と重なる領域に設けられている。
【0375】
容量240を覆って、絶縁層255が設けられ、絶縁層255上に絶縁層174が設けられ、絶縁層174上に絶縁層175が設けられている。絶縁層175上に発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び、発光デバイス130Bが設けられている。隣り合う発光デバイスの間の領域には、絶縁物が設けられる。
【0376】
導電層151Rの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Rが設けられ、導電層151Gの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Gが設けられ、導電層151Bの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Bが設けられる。また、導電層151R及び絶縁層156Rを覆うように導電層152Rが設けられ、導電層151G及び絶縁層156Gを覆うように導電層152Gが設けられ、導電層151B及び絶縁層156Bを覆うように導電層152Bが設けられる。有機化合物層103R上には、犠牲層158Rが位置し、有機化合物層103G上には、犠牲層158Gが位置し、有機化合物層103B上には、犠牲層158Bが位置する。
【0377】
導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bは、絶縁層243、絶縁層255、絶縁層174、及び絶縁層175に埋め込まれたプラグ256、絶縁層254に埋め込まれた導電層241、及び、絶縁層261に埋め込まれたプラグ271によってトランジスタ310のソース又はドレインの一方と電気的に接続されている。プラグには各種導電材料を用いることができる。
【0378】
また、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び、発光デバイス130B上には保護層131が設けられている。保護層131上には、樹脂層122によって基板120が貼り合わされている。発光デバイス130から基板120までの構成要素についての詳細は、実施の形態4を参照できる。基板120は、
図15(A)における基板292に相当する。
【0379】
図16(B)は、
図16(A)に示す表示装置100Aの変形例である。
図16(B)に示す表示装置は、着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを有し、発光デバイス130が着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bのうち一つと重なる領域を有する。
図16(B)に示す表示装置において、発光デバイス130は、例えば白色光を発することができる。また、例えば着色層132Rは赤色の光を透過し、着色層132Gは緑色の光を透過し、着色層132Bは青色の光を透過できる。
【0380】
[表示装置100B]
図17に、表示装置100Bの斜視図を示す。
【0381】
表示装置100Bは、基板352と基板351とが貼り合わされた構成を有する。
図17では、基板352を破線で示している。
【0382】
表示装置100Bは、画素部177、接続部140、回路356、及び配線355等を有する。
図17では表示装置100BにIC354及びFPC353が実装されている例を示している。このため、
図17に示す構成は、表示装置100Bと、ICと、FPCと、を有する表示モジュールということもできる。ここで、表示装置の基板に、FPC等のコネクタが取り付けられたもの、又は当該基板にICが実装されたものを、表示モジュールと呼ぶ。
【0383】
接続部140は、画素部177の外側に設けられる。接続部140は、単数であっても複数であってもよい。接続部140は、発光デバイスの共通電極と、導電層とが電気的に接続されており、共通電極に電位を供給できる。
【0384】
回路356としては、例えば走査線駆動回路を用いることができる。
【0385】
配線355は、画素部177及び回路356に信号及び電力を供給する機能を有する。当該信号及び電力は、FPC353を介して外部から、又はIC354から配線355に入力される。
【0386】
図17では、COG(Chip On Glass)方式又はCOF(Chip on Film)方式等により、基板351にIC354が設けられている例を示す。IC354は、例えば走査線駆動回路又は信号線駆動回路等を有するICを適用できる。なお、表示装置100B及び表示モジュールは、ICを設けない構成としてもよい。また、ICを、例えばCOF方式により、FPCに実装してもよい。
【0387】
[表示装置100C]
図18に、表示装置100Cの、FPC372を含む領域の一部、画素部177の一部、接続部140の一部、及び、端部を含む領域の一部をそれぞれ切断したときの断面の一例を示す。
【0388】
図18に示す表示装置100Cは、基板351と基板352の間に、トランジスタ201、トランジスタ205、赤色の光を発する発光デバイス130R、緑色の光を発する発光デバイス130G、及び、青色の光を発する発光デバイス130B等を有する。
【0389】
発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bの詳細は実施の形態1乃至実施の形態4を参照できる。
【0390】
発光デバイス130Rは、導電層224Rと、導電層224R上の導電層151Rと、導電層151R上の導電層152Rと、を有する。発光デバイス130Gは、導電層224Gと、導電層224G上の導電層151Gと、導電層151G上の導電層152Gと、を有する。発光デバイス130Bは、導電層224Bと、導電層224B上の導電層151Bと、導電層151B上の導電層152Bと、を有する。
【0391】
導電層224Rは、絶縁層214に設けられた開口を介して、トランジスタ205が有する導電層222bと接続されている。導電層224Rの端部よりも外側に導電層151Rの端部が位置している。導電層151Rの側面と接する領域を有するように絶縁層156Rが設けられ、導電層151R及び絶縁層156Rを覆うように導電層152Rが設けられる。
【0392】
発光デバイス130Gにおける導電層224G、導電層151G、導電層152G、絶縁層156G、及び発光デバイス130Bにおける導電層224B、導電層151B、導電層152B、絶縁層156Bについては、発光デバイス130Rにおける導電層224R、導電層151R、導電層152R、絶縁層156Rと同様であるため詳細な説明は省略する。
【0393】
導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bには、絶縁層214に設けられた開口を覆うように凹部が形成される。当該凹部には、層128が埋め込まれている。
【0394】
層128は、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bの凹部を平坦化する機能を有する。導電層224R、導電層224G、及び導電層224B及び層128上には、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bと電気的に接続される導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bが設けられている。したがって、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bの凹部と重なる領域も発光領域として使用でき、画素の開口率を高めることができる。
【0395】
層128は、絶縁層であってもよく、導電層であってもよい。層128には、各種無機絶縁材料、有機絶縁材料、及び導電材料を適宜用いることができる。特に、層128は、絶縁材料を用いて形成されることが好ましく、有機絶縁材料を用いて形成されることが特に好ましい。層128には、例えば前述の絶縁層127に用いることができる有機絶縁材料を適用できる。
【0396】
発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130B上には保護層131が設けられている。保護層131と基板352は接着層142を介して接着されている。基板352には、遮光層157が設けられている。発光デバイス130の封止には、固体封止構造又は中空封止構造等が適用できる。
図18では、基板352と基板351との間の空間が、接着層142で充填されており、固体封止構造が適用されている。又は、当該空間を不活性ガス(窒素又はアルゴン等)で充填し、中空封止構造を適用してもよい。このとき、接着層142は、発光デバイスと重ならないように設けられていてもよい。また、当該空間を、枠状に設けられた接着層142とは異なる樹脂で充填してもよい。
【0397】
図18では、接続部140が、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層224Cと、導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層151Cと、導電層152R、導電層152G、及び導電層152Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層152Cと、を有する例を示している。また、
図18では、導電層151Cの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Cが設けられる例を示している。
【0398】
表示装置100Bは、トップエミッション型である。発光デバイスが発する光は、基板352側に射出される。基板352には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。発光素子が赤外または近赤外の発光をする場合は、それらに対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。画素電極は可視光を反射する材料を含み、対向電極(共通電極155)は可視光を透過する材料を含む。
【0399】
基板351上には、絶縁層211、絶縁層213、絶縁層215、及び絶縁層214がこの順で設けられている。絶縁層211は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層213は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層215は、トランジスタを覆って設けられる。絶縁層214は、トランジスタを覆って設けられ、平坦化層としての機能を有する。なお、ゲート絶縁層の数及びトランジスタを覆う絶縁層の数は限定されず、それぞれ単層であっても2層以上であってもよい。
【0400】
絶縁層211、絶縁層213、及び絶縁層215としては、それぞれ、無機絶縁膜を用いることが好ましい。
【0401】
平坦化層として機能する絶縁層214には、有機絶縁層が好適である。
【0402】
トランジスタ201及びトランジスタ205は、ゲートとして機能する導電層221、ゲート絶縁層として機能する絶縁層211、ソース及びドレインとして機能する導電層222a及び導電層222b、半導体層231、ゲート絶縁層として機能する絶縁層213、並びに、ゲートとして機能する導電層223を有する。
【0403】
基板351の、基板352が重ならない領域には、接続部204が設けられている。接続部204では、トランジスタ201のソース電極またはドレイン電極が導電層166及び接続層242を介してFPC372と電気的に接続されている。導電層166は、導電層224R、導電層224G、及び導電層224Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、導電層151R、導電層151G、及び導電層151Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、導電層152R、導電層152G、及び導電層152Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、の積層構造である例を示す。接続部204の上面では、導電層166が露出している。これにより、接続部204とFPC353とを接続層242を介して電気的に接続できる。
【0404】
基板352の基板351側の面には、遮光層157を設けることが好ましい。遮光層157は、隣り合う発光デバイスの間、接続部140、等に設けることができる。また、基板352の外側には各種光学部材を配置できる。
【0405】
基板351及び基板352としては、それぞれ、基板120に用いることができる材料を適用できる。
【0406】
接着層142としては、樹脂層122に用いることができる材料を適用できる。
【0407】
接続層242としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、又は異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)等を用いることができる。
【0408】
[表示装置100D]
図19に示す表示装置100Dは、ボトムエミッション型の表示装置である点で、
図18に示す表示装置100Cと主に相違する。
【0409】
発光デバイスが発する光は、基板351側に射出される。基板351には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。一方、基板352に用いる材料の透光性は問わない。
【0410】
基板351とトランジスタ201との間、基板351とトランジスタ205との間には、遮光層を形成することが好ましい。
図19では、基板351上に遮光層117が設けられ、遮光層上に絶縁層153が設けられ、絶縁層153上にトランジスタ201、205などが設けられている例を示す。
【0411】
発光デバイス130Rは、導電層112Rと、導電層112R上の導電層126Rと、導電層126R上の導電層129Rと、を有する。
【0412】
発光デバイス130Bは、導電層112Bと、導電層112B上の導電層126Bと、導電層126B上の導電層129Bと、を有する。
【0413】
導電層112R、112B、126R、126B、129R、129Bには、それぞれ、可視光に対する透過性が高い材料を用いる。共通電極155には可視光を反射する材料を用いることが好ましい。
【0414】
なお、
図19では、発光デバイス130Gを図示していないが、発光デバイス130Gも設けられている。
【0415】
また、
図19などでは、層128の上面が平坦部を有する例を示すが、層128の形状は、特に限定されない。
【0416】
[表示装置100E]
図20に示す表示装置100Eは、
図18に示す表示装置100Cの変形例であり、着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを有する点で、表示装置100Cと主に相違する。
【0417】
表示装置100Eにおいて、発光デバイス130は、着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bのうち一つと重なる領域を有する。着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bは、基板352の基板351側の面に設けることができる。着色層132Rの端部、着色層132Gの端部、及び着色層132Bの端部は、遮光層157と重ねることができる。
【0418】
表示装置100Eにおいて、発光デバイス130は、例えば白色光を発することができる。また、例えば着色層132Rは赤色の光を透過し、着色層132Gは緑色の光を透過し、着色層132Bは青色の光を透過できる。なお、表示装置100Eは、保護層131と接着層142の間に着色層132R、着色層132G、及び着色層132Bを設ける構成としてもよい。
【0419】
図18及び
図20等では、層128の上面が平坦部を有する例を示すが、層128の形状は、特に限定されない。
【0420】
本実施の形態は、他の実施の形態、又は実施例と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0421】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器について説明する。
【0422】
本実施の形態の電子機器は、表示部に本発明の一態様の表示装置を有する。本発明の一態様の表示装置は表示性能が高く、また高精細化及び高解像度化が容易である。したがって、様々な電子機器の表示部に用いることができる。
【0423】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用等のモニタ、デジタルサイネージ、パチンコ機等の大型ゲーム機等の比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、等が挙げられる。
【0424】
特に、本発明の一態様の表示装置は、精細度を高めることが可能なため、比較的小さな表示部を有する電子機器に好適に用いることができる。このような電子機器としては、例えば、腕時計型及びブレスレット型の情報端末機(ウェアラブル機器)、並びに、ヘッドマウントディスプレイ等のVR向け機器、メガネ型のAR向け機器、及び、MR向け機器等、頭部に装着可能なウェアラブル機器等が挙げられる。
【0425】
本実施の形態の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0426】
図21(A)乃至
図21(D)を用いて、頭部に装着可能なウェアラブル機器の一例を説明する。
【0427】
図21(A)に示す電子機器700A、及び、
図21(B)に示す電子機器700Bは、それぞれ、一対の表示パネル751と、一対の筐体721と、通信部(図示しない)と、一対の装着部723と、制御部(図示しない)と、撮像部(図示しない)と、一対の光学部材753と、フレーム757と、一対の鼻パッド758と、を有する。
【0428】
表示パネル751には、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0429】
電子機器700A、及び、電子機器700Bは、それぞれ、光学部材753の表示領域756に、表示パネル751で表示した画像を投影できる。光学部材753は透光性を有するため、使用者は光学部材753を通して視認される透過像に重ねて、表示領域に表示された画像を見ることができる。
【0430】
電子機器700A、及び、電子機器700Bには、撮像部として、前方を撮像することのできるカメラが設けられていてもよい。また、電子機器700A、及び、電子機器700Bは、それぞれ、ジャイロセンサ等の加速度センサを備えることで、使用者の頭部の向きを検知して、その向きに応じた画像を表示領域756に表示することもできる。
【0431】
通信部は無線通信機を有し、当該無線通信機により例えば映像信号を供給できる。なお、無線通信機に代えて、又は無線通信機に加えて、映像信号及び電源電位が供給されるケーブルを接続可能なコネクタを備えていてもよい。
【0432】
また、電子機器700A、及び、電子機器700Bには、バッテリが設けられており、無線及び有線の一方又は双方によって充電できる。
【0433】
筐体721には、タッチセンサモジュールが設けられていてもよい。
【0434】
タッチセンサモジュールとしては、様々なタッチセンサを適用できる。例えば、静電容量方式、抵抗膜方式、赤外線方式、電磁誘導方式、表面弾性波方式、又は光学方式等、種々の方式を採用できる。特に、静電容量方式又は光学方式のセンサを、タッチセンサモジュールに適用することが好ましい。
【0435】
図21(C)に示す電子機器800A、及び、
図21(D)に示す電子機器800Bは、それぞれ、一対の表示部820と、筐体821と、通信部822と、一対の装着部823と、制御部824と、一対の撮像部825と、一対のレンズ832と、を有する。
【0436】
表示部820には、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0437】
表示部820は、筐体821の内部の、レンズ832を通して視認できる位置に設けられる。また、一対の表示部820に異なる画像を表示させることで、視差を用いた3次元表示を行うこともできる。
【0438】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、レンズ832及び表示部820が、使用者の目の位置に応じて最適な位置となるように、これらの左右の位置を調整可能な機構を有していることが好ましい。
【0439】
装着部823により、使用者は電子機器800A又は電子機器800Bを頭部に装着できる。
【0440】
撮像部825は、外部の情報を取得する機能を有する。撮像部825が取得したデータは、表示部820に出力できる。撮像部825には、イメージセンサを用いることができる。また、望遠、及び広角等の複数の画角に対応可能なように複数のカメラを設けてもよい。
【0441】
電子機器800Aは、骨伝導イヤフォンとして機能する振動機構を有していてもよい。
【0442】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、入力端子を有していてもよい。入力端子には映像出力機器等からの映像信号、及び、電子機器内に設けられるバッテリを充電するための電力等を供給するケーブルを接続できる。
【0443】
本発明の一態様の電子機器は、イヤフォン750と無線通信を行う機能を有していてもよい。
【0444】
また、電子機器がイヤフォン部を有していてもよい。
図21(B)に示す電子機器700Bは、イヤフォン部727を有する。イヤフォン部727と制御部とをつなぐ配線の一部は、筐体721又は装着部723の内部に配置されていてもよい。
【0445】
同様に、
図21(D)に示す電子機器800Bは、イヤフォン部827を有する。例えば、イヤフォン部827と制御部824とは、互いに有線接続されている構成とすることができる。
【0446】
このように、本発明の一態様の電子機器としては、メガネ型(電子機器700A、及び、電子機器700B等)と、ゴーグル型(電子機器800A、及び、電子機器800B等)と、のどちらも好適である。
【0447】
図22(A)に示す電子機器6500は、スマートフォンとして用いることのできる携帯情報端末機である。
【0448】
電子機器6500は、筐体6501、表示部6502、電源ボタン6503、ボタン6504、スピーカ6505、マイク6506、カメラ6507、及び光源6508等を有する。表示部6502はタッチパネル機能を備える。
【0449】
表示部6502に、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0450】
図22(B)は、筐体6501のマイク6506側の端部を含む断面概略図である。
【0451】
筐体6501の表示面側には透光性を有する保護部材6510が設けられ、筐体6501と保護部材6510に囲まれた空間内に、表示パネル6511、光学部材6512、タッチセンサパネル6513、プリント基板6517、及びバッテリ6518等が配置されている。
【0452】
保護部材6510には、表示パネル6511、光学部材6512、及びタッチセンサパネル6513が接着層(図示しない)により固定されている。
【0453】
表示部6502よりも外側の領域において、表示パネル6511の一部が折り返されており、当該折り返された部分にFPC6515が接続されている。FPC6515には、IC6516が実装されている。FPC6515は、プリント基板6517に設けられた端子に接続されている。
【0454】
表示パネル6511には本発明の一態様の表示装置を適用できる。このため、極めて軽量な電子機器を実現できる。また、表示パネル6511が極めて薄いため、電子機器の厚さを抑えつつ、大容量のバッテリ6518を搭載することもできる。また、表示パネル6511の一部を折り返して、画素部の裏側にFPC6515との接続部を配置することにより、狭額縁の電子機器を実現できる。
【0455】
図22(C)にテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7100は、筐体7171に表示部7000が組み込まれている。ここでは、スタンド7173により筐体7171を支持した構成を示している。
【0456】
表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0457】
図22(C)に示すテレビジョン装置7100の操作は、筐体7171が備える操作スイッチ、及び、別体のリモコン操作機7151により行うことができる。
【0458】
図22(D)に、ノート型パーソナルコンピュータの一例を示す。ノート型パーソナルコンピュータ7200は、筐体7211、キーボード7212、ポインティングデバイス7213、及び外部接続ポート7214等を有する。筐体7211に、表示部7000が組み込まれている。
【0459】
表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0460】
図22(E)及び
図22(F)に、デジタルサイネージの一例を示す。
【0461】
図22(E)に示すデジタルサイネージ7300は、筐体7301、表示部7000、及びスピーカ7303等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子、各種センサ、マイクロフォン等を有することができる。
【0462】
図22(F)は円柱状の柱7401に取り付けられたデジタルサイネージ7400である。デジタルサイネージ7400は、柱7401の曲面に沿って設けられた表示部7000を有する。
【0463】
図22(E)及び
図22(F)において、表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0464】
表示部7000が広いほど、一度に提供できる情報量を増やすことができる。また、表示部7000が広いほど、人の目につきやすく、例えば、広告の宣伝効果を高めることができる。
【0465】
また、
図22(E)及び
図22(F)に示すように、デジタルサイネージ7300又はデジタルサイネージ7400は、使用者が所持するスマートフォン等の情報端末機7311又は情報端末機7411と無線通信により連携可能であることが好ましい。
【0466】
図23(A)乃至
図23(G)に示す電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有する。
【0467】
図23(A)乃至
図23(G)に示す電子機器は、様々な機能を有する。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像等)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻等を表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して処理する機能、等を有することができる。
【0468】
図23(A)乃至
図23(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0469】
図23(A)は、携帯情報端末9171を示す斜視図である。携帯情報端末9171は、例えばスマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9171は、スピーカ9003、接続端子9006、又はセンサ9007等を設けてもよい。また、携帯情報端末9171は、文字及び画像情報をその複数の面に表示できる。
図23(A)では3つのアイコン9050を表示した例を示している。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示することもできる。情報9051の一例としては、電子メール、SNS、電話等の着信の通知、電子メール又はSNS等の題名、送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、電波強度等がある。又は、情報9051が表示されている位置にはアイコン9050等を表示してもよい。
【0470】
図23(B)は、携帯情報端末9172を示す斜視図である。携帯情報端末9172は、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9172を収納した状態で、携帯情報端末9172の上方から観察できる位置に表示された情報9053を確認することもできる。
【0471】
図23(C)は、タブレット端末9173を示す斜視図である。タブレット端末9173は、一例として、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲーム等の種々のアプリケーションの実行が可能である。タブレット端末9173は、筐体9000の正面に表示部9001、カメラ9002、マイクロフォン9008、スピーカ9003を有し、筐体9000の左側面には操作用のボタンとしての操作キー9005、底面には接続端子9006を有する。
【0472】
図23(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9200は、例えばスマートウォッチ(登録商標)として用いることができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006により、他の情報端末と相互にデータ伝送を行うこと、及び、充電を行うこともできる。なお、充電動作は無線給電により行ってもよい。
【0473】
図23(E)乃至
図23(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。また、
図23(E)は携帯情報端末9201を展開した状態、
図23(G)は折り畳んだ状態、
図23(F)は
図23(E)と
図23(G)の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。例えば、表示部9001は、曲率半径0.1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0474】
本実施の形態は、他の実施の形態、又は実施例と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【実施例0475】
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイス1に関して詳細な作製方法、特性について説明する。本実施例において用いた主な化合物の構造式を以下に示す。
【0476】
【0477】
(発光デバイス1の作製方法)
まず、ガラス基板上に、基板側から反射電極として銀とパラジウムと銅の合金(APC:Ag-Pd-Cu)を100nm、透明電極として酸化ケイ素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)を100nm、スパッタリング法により順次積層した。この積層膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングし、陽極101を形成した。なお、透明電極は陽極として機能し、上記反射電極と共に第1の電極ともいう。
【0478】
次に、基板上に発光デバイスを形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0479】
その後、約1×10-4Paまで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で60分間の真空焼成を行った後、基板を約30分放冷した。
【0480】
次に、陽極101が形成された面が下方となるように、基板を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定し、無機絶縁膜および陽極101上に、蒸着法により上記構造式(i)で表されるN-(ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)と分子量672でフッ素を含む電子アクセプタ材料(OCHD-003)とを、重量比で1:0.03(=PCBBiF:OCHD-003)となるように10nm共蒸着して正孔注入層111を形成した。
【0481】
正孔注入層111上に、PCBBiFを60nm蒸着し、第1の正孔輸送層を形成した。
【0482】
続いて、第1の正孔輸送層上に、上記構造式(ii)で表される8-(1,1’:4’,1’’-テルフェニル-3-イル)-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8mpTP-4mDBtPBfpm)と、上記構造式(iii)で表される9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)と、上記構造式(iv)で表される[2-d3-メチル-8-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(5-d3-メチル-2-ピリジニル-κN2)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(5mppy-d3)2(mbfpypy-d3))とを、重量比で0.5:0.5:0.1(=8mpTP-4mDBtPBfpm:βNCCP:Ir(5mppy-d3)2(mbfpypy-d3))となるように40nm共蒸着して第1の発光層を形成した。
【0483】
こののち、上記構造式(v)で表される3,6-ビス(ジフェニルアミノ)-9-[4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DACT-II)を10nmとなるように蒸着し第1の電子輸送層を形成した。
【0484】
第1の電子輸送層の形成後、上記構造式(vi)で表される2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)と上記構造式(vii)で表される1-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(略称:2hppSF)とを重量比で1:1(=mPPhen2P:2hppSF)となるように5nm共蒸着し、上記構造式(viii)で表される銅フタロシアニン(略称:CuPc)を2nmとなるように蒸着し、さらにPCBBiFとOCHD-003とを、重量比で1:0.15(=PCBBiF:OCHD-003)となるように10nm共蒸着して中間層を形成した。
【0485】
中間層上に、PCBBiFを55nm蒸着し、第2の正孔輸送層を形成した。
【0486】
第2の正孔輸送層上に、8mpTP-4mDBtPBfpmと、βNCCPと、Ir(5mppy-d3)2(mbfpypy-d3)とを、重量比で0.5:0.5:0.1(=8mpTP-4mDBtPBfpm:βNCCP:Ir(5mppy-d3)2(mbfpypy-d3))となるように40nm共蒸着して第2の発光層を形成した。
【0487】
その後、上記構造式(ix)で表される2-{3-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mPCCzPDBq)を20nmとなるように蒸着し、さらにmPPhen2Pを20nmとなるように蒸着して第2の電子輸送層を形成した。
【0488】
続いて、フォトリソグラフィ法による加工を行った。試料を真空蒸着装置から取り出し、大気に暴露したのちトリメチルアルミニウム(略称:TMA)をプリカーサーに用い、水蒸気を酸化剤に用いて、ALD法により酸化アルミニウムを30nmとなるように成膜し、第1の犠牲層を形成した。
【0489】
第1の犠牲層上にインジウム、ガリウム、亜鉛および酸素を含む複合酸化物(IGZO)をスパッタリング法により50nmとなるように成膜して、第2の犠牲層を形成した。
【0490】
第2の犠牲層上にフォトレジストを形成し、陽極101から3.5μm離れた位置に3μmの幅のスリットが形成されるよう、リソグラフィ法を用いて第2の犠牲層の加工を行った。
【0491】
具体的には、レジストをマスクとして、CF4、O2、Heを含むエッチングガスを用いて第2の犠牲層を加工し、その後、水酸化テトラメチルアンモニウム(略称:TMAH)を含む溶液を用いて、レジストを取り除いた。
【0492】
次に、第2の犠牲層をハードマスクとして、フルオロホルム(CHF3)とヘリウム(He)を、CHF3:He=1:9(流量比)で含むエッチングガスを用いて第1の犠牲層を加工した。こののち、酸素(O2)を含むエッチングガスを用いて第2の電子輸送層、第2の発光層、第2の正孔輸送層、中間層、第1の電子輸送層、第1の発光層、第1の正孔輸送層、正孔注入層を加工した。
【0493】
加工後、第2の犠牲層をCF4、O2、Heを含むエッチングガスを用いて取り除き、第1の犠牲層を塩基性薬液を用いて取り除き、第2の電子輸送層を露出させた。
【0494】
第2の電子輸送層を露出させた試料を、1×10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、110℃で1時間の真空焼成を行った。その後、試料を30分程度放冷した。
【0495】
続いて、フッ化リチウムとイッテルビウムを重量比で2:1(=LiF:Yb)を1.5nm蒸着して電子注入層115を形成し、その後、銀(Ag)とマグネシウム(Mg)とを体積比1:0.1、膜厚15nmとなるように共蒸着し、陰極102(第2の電極)を形成した。また、陰極102上には、上記構造式(x)で表される4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)をキャップ層として70nm成膜して、光の取り出し効率を向上させている。
【0496】
続いて窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光デバイスが大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(UV硬化性のシール材を素子の周囲への塗布、発光デバイスには照射しないようにシール材のみにUVを照射する処理、および大気圧下で80℃にて1時間熱処理)を行い、発光デバイス1を形成した。発光デバイス1の素子構造を下表に示す。
【0497】
【0498】
このように、発光デバイス1は、第1の電子輸送層にHOMO準位が-5.9eV以上-5.0eV以下の有機化合物が用いられている。また、中間層には、mPPhen2P:2hppSF=1:1である第1の層が形成されているが、この膜は正孔をブロックする膜である。また、2hppSFは、その酸解離定数pKaが13.95であり、pKa8以上の強塩基性を有する有機化合物である。また、第1の層にはLUMO準位が-3.0eV以上-2.0eV以下の電子輸送性を有する材料であるmPPhen2Pが用いられている。
【0499】
ここで、石英基板上にmPPhen2Pと2hppSFとを重量比で1:1(=mPPhen2P:2hppSF)で膜厚が50nmになるよう共蒸着した薄膜の電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、g値が2.00付近にシグナルが観測されず、スピン密度は測定限界である8×1016spins/cm3未満であることが分かった。なお、ESR法による電子スピン共鳴スペクトルの測定は、電子スピン共鳴測定装置 E500型(ブルカー社製)を用いて行った。上記測定は、共振周波数(9.56GHz)、出力(1mW)、変調磁場(50mT)、変調幅(0.5mT)、時定数(0.04s)、掃引時間(1min)、室温下にて行った。このことから、2hppSFはmPPhen2Pに対して電子供与性を示さないといえる。
【0500】
また、P型CGLは、正孔輸送性を有する有機化合物であるPCBBiFと、電子アクセプタ性を示すOCHD-003とを含む層であり、電圧が印加されることで電荷分離する電荷発生層である。
【0501】
ここで、石英基板上にPCBBiFとOCHD-003とを重量比で1:0.1(PCBBiF:OCHD-003)で膜厚が100nmになるよう共蒸着した薄膜の電子スピン共鳴スペクトルを、室温にて測定したところ、g値が2.00付近にシグナルが観測され、スピン密度は5×1019spins/cm3であることが分かった。このことから、OCHD-003とPCBBiFに対して電子受容性を示し、PCBBiFとOCHD-003を有する層は電荷発生層としての機能を有する。
【0502】
発光デバイス1の輝度-電流密度特性を
図24に、輝度-電圧特性を
図25に、電流効率-輝度特性を
図26に、電流密度-電圧特性を
図27に、電界発光スペクトルを
図28に示す。また、1000cd/m
2付近における主な特性を表5に示す。なお、輝度、CIE色度、及び電界発光スペクトルの測定には分光放射計(トプコン社製、SR-UL1R)を用い、常温で測定した。
【0503】
【0504】
図28(スペクトル)より、発光デバイス1は、Ir(5mppy-d
3)
2(mbfpypy-d
3)に由来する緑色の発光を呈することが分かる。また、
図26(電流効率)が高い値を示していることから、発光デバイス1はタンデム型の発光デバイスとして機能していることがわかる。
【0505】
また、
図25(輝度-電圧特性)より、発光デバイス1は、フォトリソグラフィ工程を経て作製されたタンデム型の発光デバイスであっても、真空一貫工程で作製された発光デバイスと同様の駆動電圧を示す発光デバイスであることがわかった。
【0506】
また、発光デバイス1の電流密度50mA/cm
2における定電流駆動時の駆動時間に対する輝度の変化を測定した結果を
図29に示す。
図29より、発光デバイス1は良好な信頼性を有する発光デバイスであることがわかった。
【0507】
このように、本発明の構成を用いることで、発光効率が高く、駆動電圧の低い、良好な特性を有する発光デバイスを提供することができる。
【0508】
続いて、第1の層のGSP_slopeを求めた結果を示す。第1の層のGSP_slopeは下表のような測定用デバイスを作製して求めた。なお、表4における膜厚、および下表の陽極、正孔注入層、電子注入層並びに陰極の膜厚は、設計上の膜厚である。一方下表における電子輸送層1および電子輸送層2の膜厚は、GSP_slopeの算出のために正確な値が必要であるため、分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン社製M-2000U)を用いて測定した値を記載している。
【0509】
【0510】
測定用デバイスに用いた主な有機化合物の構造式を以下に示す。
【0511】
【0512】
測定用デバイスは、基板温度:室温、成膜レート:0.2nm/sから0.4nm/sとし、一つの層を形成する間は蒸着を止めることなく成膜を行った。測定用デバイスにおいては、電子輸送層1が薄膜1、電子輸送層2が薄膜2に相当し、発光デバイス1における第1の層と同じ材料で電子輸送層2を形成している。また、測定用デバイスの容量-電圧特性を
図30に示す。なおAlq
3のGSP_slopeは既知(48(mV/nm))である。
【0513】
表7に、電子輸送層2の常光屈折率n
o、
図30より求めた測定用デバイスの電子注入電圧V
i、閾値電圧V
bi、実施の形態1で示した式(1)より求めた界面電荷密度σ
if_e、式(2)より求めたGSP_slopeを各々示す。
【0514】
【0515】
このように、発光デバイス1における中間層において用いられた第1の層は、負のGSP_slopeを有する層であることがわかった。これにより本発明の一態様の発光デバイスである発光デバイス1は、フォトリソグラフィ工程を経ても駆動電圧の上昇が抑制された、特性の良好な発光デバイスとすることができた。
次に、陽極101が形成された面が下方となるように、基板を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定し、無機絶縁膜および陽極101上に、蒸着法により上記構造式(i)で表されるN-(ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)と分子量672でフッ素を含む電子アクセプタ材料(OCHD-003)とを、重量比で1:0.03(=PCBBiF:OCHD-003)となるように10nm共蒸着して正孔注入層111を形成した。
続いて、第1の正孔輸送層上に、上記構造式(ii)で表される8-(1,1’:4’,1’’-テルフェニル-3-イル)-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8mpTP-4mDBtPBfpm)と、上記構造式(iii)で表される9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)と、上記構造式(iv)で表される[2-d3-メチル-8-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(5-d3-メチル-2-ピリジニル-κN2)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(5mppy-d3)2(mbfpypy-d3))とを、重量比で0.5:0.5:0.1(=8mpTP-4mDBtPBfpm:βNCCP:Ir(5mppy-d3)2(mbfpypy-d3))となるように40nm共蒸着して第1の発光層を形成した。
こののち、上記構造式(ix)で表される2-{3-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mPCCzPDBq)を10nmとなるように蒸着し第1の電子輸送層を形成した。
第1の電子輸送層の形成後、上記構造式(vi)で表される2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)と上記構造式(vii)で表される1-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン(略称:2hppSF)とを重量比で1:1(=mPPhen2P:2hppSF)となるように5nm共蒸着し、上記構造式(viii)で表される銅フタロシアニン(略称:CuPc)を2nmとなるように蒸着し、さらにPCBBiFとOCHD-003とを、重量比で1:0.15(=PCBBiF:OCHD-003)となるように10nm共蒸着して中間層を形成した。
続いて、フッ化リチウムとイッテルビウムを重量比で2:1(=LiF:Yb)を1.5nm蒸着して電子注入層115を形成し、その後、銀(Ag)とマグネシウム(Mg)とを体積比1:0.1、膜厚15nmとなるように共蒸着し、陰極102(第2の電極)を形成した。また、陰極102上には、上記構造式(x)で表される4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)をキャップ層として70nm成膜して、光の取り出し効率を向上させている。
続いて窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光デバイスが大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(UV硬化性のシール材を素子の周囲への塗布、発光デバイスには照射しないようにシール材のみにUVを照射する処理、および大気圧下で80℃にて1時間熱処理)を行い、発光デバイス2を形成した。発光デバイス2の素子構造を下表に示す。
このように、発光デバイス2は、第1の電子輸送層にHOMO準位が-5.9eV以上-5.0eV以下の有機化合物が用いられている。また、中間層には、mPPhen2P:2hppSF=1:1である第1の層が形成されているが、この膜は正孔をブロックする膜である。また、2hppSFは、その酸解離定数pKaが13.95であり、pKa8以上の強塩基性を有する有機化合物である。また、第1の層にはLUMO準位が-3.0eV以上-2.0eV以下の電子輸送性を有する材料であるmPPhen2Pが用いられている。
ここで、石英基板上にmPPhen2Pと2hppSFとを重量比で1:1(=mPPhen2P:2hppSF)で膜厚が50nmになるよう共蒸着した薄膜の電子スピン共鳴スペクトルを測定したところ、g値が2.00付近にシグナルが観測されず、スピン密度は測定限界である8×1016spins/cm3未満であることが分かった。なお、ESR法による電子スピン共鳴スペクトルの測定は、電子スピン共鳴測定装置 E500型(ブルカー社製)を用いて行った。上記測定は、共振周波数(9.56GHz)、出力(1mW)、変調磁場(50mT)、変調幅(0.5mT)、時定数(0.04s)、掃引時間(1min)、室温下にて行った。このことから、2hppSFはmPPhen2Pに対して電子供与性を示さないといえる。
また、P型CGLは、正孔輸送性を有する有機化合物であるPCBBiFと、電子アクセプタ性を示すOCHD-003とを含む層であり、電圧が印加されることで電荷分離する電荷発生層である。
ここで、石英基板上にPCBBiFとOCHD-003とを重量比で1:0.1(PCBBiF:OCHD-003)で膜厚が100nmになるよう共蒸着した薄膜の電子スピン共鳴スペクトルを、室温にて測定したところ、g値が2.00付近にシグナルが観測され、スピン密度は5×1019spins/cm3であることが分かった。このことから、OCHD-003とPCBBiFに対して電子受容性を示し、PCBBiFとOCHD-003を有する層は電荷発生層としての機能を有する。
続いて、第1の層のGSP_slopeを求めた結果を示す。第1の層のGSP_slopeは下表のような測定用デバイスを作製して求めた。なお、表8における膜厚、および下表(表10)の陽極、正孔注入層、電子注入層並びに陰極の膜厚は、設計上の膜厚である。一方、下表における電子輸送層1および電子輸送層2の膜厚は、GSP_slopeの算出のために正確な値が必要であるため、分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン社製M-2000U)を用いて測定した値を記載している。
このように、発光デバイス2における中間層において用いられた第1の層は、負のGSP_slopeを有する層であることがわかった。これにより本発明の一態様の発光デバイスである発光デバイス2は、駆動電圧が低い、特性の良好な発光デバイスとすることができた。また、中間層の第1の層として、Liを用いていないため、本発明の構成を有する発光デバイスは、フォトリソグラフィ工程を経ても駆動電圧の上昇が抑制された、特性の良好な発光デバイスとすることができる。
次に、発光デバイス2における第2の層(第1の電子輸送層)のGSP_slopeを求めた結果を示す。第2の層(第1の電子輸送層)のGSP_slopeは下表のような測定用デバイスを作製して求めた。なお、表12における陽極、正孔注入層、薄膜1および陰極の膜厚は、設計上の膜厚である。一方、下表における薄膜2の膜厚は、GSP_slopeの算出のために正確な値が必要であるため、分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン社製M-2000U)を用いて測定した値を記載している。
測定用デバイスL21および測定用デバイスL22は、基板温度:室温、成膜レート:0.2nm/sから0.4nm/sとし、一つの層を形成する間は蒸着を止めることなく成膜を行った。測定用デバイスL21および測定用デバイスL22は、発光デバイス2における第2の層(第1の電子輸送層)と同じ材料で薄膜1を形成し、薄膜2はAlq3で形成した。また、測定用デバイスL21および測定用デバイスL22のキャリアは正孔、薄膜2にキャリアを蓄積する構造であり、GSP_slopeを算出するための式は、実施の形態1に示した式(3)および式(4)を使用した。
このように、発光デバイス2における第2の層(第1の電子輸送層)は12.4mV/nmと、正のGSP_slopeを有する層であり、第1の層とGSP_slopeの正負が逆の層であることがわかった。また、第1の層のGSP_slopeと第2の層のGSP_slopeとの差は、20mV/nm以上であった。
これにより本発明の一態様の発光デバイスである発光デバイス2は、駆動電圧が低い、特性の良好な発光デバイスとすることができた。また、中間層の第1の層として、Liを用いていないため、本発明の構成を有する発光デバイスは、フォトリソグラフィ工程を経ても駆動電圧の上昇が抑制された、特性の良好な発光デバイスとすることができる。
また、発光デバイス2における第1の発光層のGSP_slopeを求めた結果を示す。第1の発光層のGSP_slopeは下表のような測定用デバイス3を作製して求めた。なお、表14における反射電極、陽極、正孔注入層、電子注入層、陰極およびキャップ層の膜厚は、設計上の膜厚である。一方、下表における薄膜1、薄膜2の膜厚は、分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン社製M-2000U)を用いて測定した値を記載している。
測定用デバイス3は、基板温度:室温、成膜レート:薄膜2以外は0.2nm/sから0.4nm/sとした。薄膜2は、蒸着源を3つ用いた共蒸着により成膜を行い、成膜レートは8mpTP-4mDBtPBfpmおよびβNCCPが0.05nm/s、Ir(5mppy-d3)2(mbfpypy-d3)は0.01nm/sとした。なお、一つの層を形成する間は蒸着を止めることなく成膜を行った。
測定用デバイス3は、発光デバイス2における第1の発光層と同じ材料、同じ成膜レートで薄膜2を形成し、薄膜1は4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)で形成した。また、本測定用デバイスのキャリアは正孔、薄膜2にキャリアを蓄積する構造であり、GSP_slopeを算出するための式は、実施の形態1に示した式(3)および式(4)を使用した。
このように、発光デバイス2における第1の発光層は51.3mV/nmと、正のGSP_slopeを有する層であり、第1の層とGSP_slopeの正負が逆の層であることがわかった。また、第1の層のGSP_slopeと第1の発光層のGSP_slopeとの差は、20mV/nm以上であった。
これにより本発明の一態様の発光デバイスである発光デバイス2は、駆動電圧が低い、特性の良好な発光デバイスとすることができた。また、中間層の第1の層として、Liを用いていないため、本発明の構成を有する発光デバイスは、フォトリソグラフィ工程を経ても駆動電圧の上昇が抑制された、特性の良好な発光デバイスとすることができる。