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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146905
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】積層体及び包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20241004BHJP
   B32B 7/02 20190101ALI20241004BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241004BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20241004BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B32B27/32 101
B32B7/02
B32B27/18 D
C08L23/08
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056855
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2023059170
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金 正哲
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 好正
(72)【発明者】
【氏名】上松 正弘
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AA21
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086AD05
3E086AD06
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB05
3E086BB90
3E086CA01
4F100AA02B
4F100AB01A
4F100AB10A
4F100AB33A
4F100AK04B
4F100AK07C
4F100AK62B
4F100AK70B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA22C
4F100CB03
4F100EC18
4F100EH17
4F100EH17B
4F100EH46
4F100EH66A
4F100EJ17B
4F100EJ37C
4F100EJ42B
4F100EJ50
4F100GB15
4F100GB23
4F100JA06B
4F100JA11B
4F100JA13B
4F100JD03A
4F100JJ03
4F100JK06
4F100JK07B
4F100JL08B
4F100JL12
4F100YY00A
4J002BB03Y
4J002BB05W
4J002BB08X
4J002BB09X
4J002BB10X
4J002BB15W
4J002BB23X
4J002GF00
(57)【要約】
【課題】 帯電防止剤を含有する基材を用いた場合であっても、接着性に優れた積層体およびそれを用いた包装材を提供する。
【解決手段】 基材層1(α)、樹脂層(β)及び基材層2(γ)の少なくとも3層を有し、それぞれ下記の特性を満たすことを特徴とする積層体。
基材層1(α):酸素透過度が、20℃、65%RH下において、1300mL/m・day・MPa以下である
樹脂層(β):下記(a)の特性を有する極性エチレン系共重合体(A)及び/又は極性エチレン系共重合体(A)のアイオノマー体(A′)を2~40重量部含有するポリエチレン樹脂組成物(B)を含む
(a)エチレンに由来する構成単位(m)と、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位(n)を必須構成単位として含む。
基材層2(γ):帯電防止剤を含む基材である

【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層1(α)、樹脂層(β)及び基材層2(γ)の少なくとも3層を有し、それぞれ下記の特性を満たすことを特徴とする積層体。
基材層1(α):酸素透過度が、20℃、65%RH下において、1300mL/m・day・MPa以下である。
樹脂層(β):下記(a)の特性を有する極性エチレン系共重合体(A)及び/又は極性エチレン系共重合体(A)のアイオノマー体(A′)を2~40重量部含有するポリエチレン樹脂組成物(B)を含む。
(a)エチレンに由来する構成単位(m)と、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位(n)を必須構成単位として含む。
基材層2(γ):帯電防止剤を含む基材である
【請求項2】
前記ポリエチレン樹脂組成物(B)が、さらに、下記(c-1)~(c-7)の特性を有するポリエチレン樹脂(C)を含有することを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
(c-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が0.1~100g/10分
(c-2)DSCにおいて、融解熱量の総量ΔHmが、30~120J/g
(c-3)結晶化温度Tcが、25~90℃
(c-4)エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を必須の副成分として2~20mol%含み、エチレン及びプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として5mol%以下含んでいてもよい
(ただし、前記第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない)
(c-5)密度が0.88~0.94g/cm
(c-6)ポリエチレン樹脂(C)のビニル、ビニリデンの合計量が0.35(個/total 1000C)以上
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
(c-7)ポリエチレン樹脂(C)のコモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が下記式(1)の関係を満たす。
式(1):(Y)≧ -1157×(X)+1084
(ただし、Yは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
【請求項3】
前記極性エチレン系共重合体(A)のアイオノマー体(A′)は、更に回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δが、50度~75度であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記ポリエチレン樹脂組成物(B)が、さらに、下記(d-1)~(d-2)の特性を有するポリエチレン樹脂(D)を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層体。
(d-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が0.1~100g/10分
(d-2)密度が0.91~0.97g/cm
【請求項5】
前記極性エチレン系共重合体(A)のアイオノマー体(A′)は、前記極性エチレン系共重合体(A)のカルボキシ基の少なくとも一部が周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層体。

【請求項6】
前記極性エチレン系共重合体(A)は、エチレンに由来する構成単位(m)を主成分として70~98mol%、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位(n)を必須の副成分として2~30mol%含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項7】
前記基材層1(α)は金属箔または金属蒸着フィルムであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項8】
前記積層体が、押出コーティング法により形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の積層体を用いてなる包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止剤を含有する基材を用いた場合であっても、接着性に優れた積層体およびそれを用いた包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
PP,PE,LLDPEはガラス転移点が常温より低く、そのため低分子の帯電防止剤(AS剤)を樹脂に練込むと、ガラス転移点以上の温度では非晶部を通ってフィルムの表面や層間に経時によりブリードアウトする。ブリードアウトしたAS剤は樹脂と結合しているわけではなく表面や層間に付着している状態である。このような理由から、AS剤を含むOPPフィルム等はラミネート接着強度が出にくくなる。また、高温条件では、AS剤が更にブリードアウトしやすくなるため使用できない。
国内で使用されるOPPは静電防止タイプ(ASタイプ)が汎用品である。夏季と冬季ではブリードアウトする量に差がある。そのため、夏季においてラミネート接着強度の低下が早くなり、加工後は早期に使用するように先入れ先出しの管理が必要である。また、やむを得ず無静電防止タイプを使用する例もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、帯電防止剤を含む基材とのラミネート接着の場合においても、良好な接着性を示し、高温条件下でも、良好な接着性を有する積層体を提供することにある。
また、本発明は、かかる積層体を用いてなる包装材を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、バリア性基材層1(α)と帯電防止剤を含む基材層2(γ)の間に特定の極性エチレン系共重合体(A)及び/又はそのアイオノマー体(A’)を2~40重量部含む樹脂組成物(B)を含む樹脂層(β)を設けることにより、帯電防止剤のブリードによる接着性の低下が起こらない、特に高温下での接着性の低下が起こりにくい積層体を得ることができることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(発明1)
基材層1(α)、樹脂層(β)及び基材層2(γ)の少なくとも3層を有し、それぞれ下記の特性を満たすことを特徴とする積層体。
基材層1(α):酸素透過度が、20℃、65%RH下において、1300mL/m・day・MPa以下である。
樹脂層(β):下記(a)の特性を有する極性エチレン系共重合体(A)及び/又は極性エチレン系共重合体(A)のアイオノマー体(A′)を2~40重量部含有するポリエチレン樹脂組成物(B)を含む。
(a)エチレンに由来する構成単位(m)と、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位(n)を必須構成単位として含む。
基材層2(γ):帯電防止剤を含む基材である
(発明2)
前記ポリエチレン樹脂組成物(B)が、さらに、下記(c-1)~(c-7)の特性を有するポリエチレン樹脂(C)を含有することを特徴とする、発明1に記載の積層体。
(c-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が0.1~100g/10分
(c-2)DSCにおいて、融解熱量の総量ΔHmが、30~120J/g
(c-3)結晶化温度Tcが、25~90℃
(c-4)エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を必須の副成分として2~20mol%含み、エチレン及びプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として5mol%以下含んでいてもよい
(ただし、前記第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない)
(c-5)密度が0.88~0.94g/cm
(c-6)ポリエチレン樹脂(C)中のビニル、ビニリデンの合計量が0.35(個/total 1000C)以上
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
(c-7)ポリエチレン樹脂(C)中のコモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が下記式(1)の関係を満たす。
式(1):(Y)≧ -1157×(X)+1084
(ただし、Yは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
(発明3)
前記極性エチレン系共重合体(A)のアイオノマー体(A′)は、更に回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δが、50度~75度であることを特徴とする、発明1又は2に記載の積層体。
(発明4)
前記ポリエチレン樹脂組成物(B)が、さらに、下記(d-1)~(d-2)の特性を有するポリエチレン樹脂(D)を含有することを特徴とする、発明1又は2に記載の積層体。
(d-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が0.1~100g/10分
(d-2)密度が0.91~0.97g/cm
(発明5)
前記極性エチレン系共重合体(A)のアイオノマー体(A′)は、前記極性エチレン系共重合体(A)のカルボキシ基の少なくとも一部が周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換されることを特徴とする、発明1又は2に記載の積層体。
(発明6)
前記極性エチレン系共重合体(A)は、エチレンに由来する構成単位(m)を主成分として70~98mol%、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位(n)を必須の副成分として2~30mol%含むことを特徴とする、発明1又は2に記載の積層体。
(発明7)
前記基材層1(α)は金属箔または金属蒸着フィルムであることを特徴とする、発明1又は2に記載の積層体。
(発明8)
前記積層体が、押出コーティング法により形成されていることを特徴とする、発明1又は2に記載の積層体。
(発明9)
発明1又は2に記載の積層体を用いてなる包装材。
【発明の効果】
【0006】
帯電防止剤を含む基材とのラミネート接着の場合においても、良好な接着性を示し、高温条件下でも、良好な接着性を有する積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明において用いられる各成分及び、それらを用いた押出ラミネート用積層体等について詳細に説明する。
本発明は、基材層1(α)、樹脂層(β)及び基材層2(γ)の少なくとも3層を有し、それぞれ下記の特性を満たすことを特徴とする積層体に関する。
【0008】
1.基材層1(α)
本発明の基材層1(α)は、下記特性を有する。
基材層1(α):酸素透過度が、20℃、65%RH下において、1300mL/m・day・MPa以下である。
かかる規定は、酸素や気体に対するバリア性が高い素材で構成されていることを意味する。例えばアルミ等の金属箔または金属蒸着フィルムが挙げられる。又は、紙基材にバリアコーティングを施したバリア性紙基材なども挙げられる。
酸素透過度の測定方法は、例えば、JIS K7126-2に基づき、以下の装置を用いて酸素透過度を評価することができる。
装置:OX-TRAN2/21(MOCON製)
温湿度:23℃、相対湿度0%(Dry)
透過面積:50cm2
【0009】
2.樹脂層(β)
本発明の樹脂層(β)は、下記特性を有する。
下記(a)の特性を有する極性エチレン系共重合体(A)及び/又は上記極性エチレン系共重合体(A)のアイオノマー体(A′)を2~40重量部含有するポリエチレン樹脂組成物(B)を含む。配合量は、好ましくは5~35重量部である。
(a)エチレンに由来する構成単位(m)と、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位(n)を必須構成単位として含む。
【0010】
2.1 極性エチレン系共重合体(A)
極性エチレン系共重合体(A)は、(a)エチレンに由来する構成単位(m)と、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構成単位(n)を必須構成単位として含む共重合体である。
エチレンに由来する構造単位(m)と、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構造単位(n)とを必須構成単位として、さらに場合により分子構造中に炭素-炭素二重結合を1つ以上有する化合物である構造単位(p)を構成単位として含んでもよい。
重合方法の違いにより分子構造が異なる2種類のものがあり、ラジカル重合法により重合した分岐状の分子構造を有する分岐状極性エチレン系共重合体、又は、近年新たに開発されている、触媒重合法により重合した、直鎖状極性エチレン系共重合体がある。いずれも本発明の極性エチレン系共重合体として使用可能であるが、直鎖状極性エチレン系共重合体、およびそのアイオノマーの方が好ましい。
【0011】
(1)構造単位(m)
構造単位(m)は、エチレンに由来する構造単位を必須で含み、必要に応じて1種以上の炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構造単位をさらに含んでも良い。
構造単位(m)中のエチレンに由来する構造単位は、構造単位(m)の全molに対して、65~100mol%であってもよく、70~100mol%であってもよい。
【0012】
(2)構造単位(n)
構造単位(n)は、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構造単位である。
【0013】
カルボキシ基を有するモノマーとしては具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0014】
カルボキシ基を有するモノマーに由来する構造単位として、工業的入手の容易さの点から好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、又は5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物に由来する構造単位が挙げられ、特にアクリル酸に由来する構造単位であってもよい。
【0015】
また、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構造単位は、一種類であってもよいし、複数種であってもよい。
【0016】
(3)構造単位(p)
本発明に用いる共重合体(A)としては、構造単位(m)と構造単位(n)のみからなる二元共重合体と、構造単位(m)と構造単位(n)と、それら以外の構造単位(p)をさらに含む多元共重合体を用いることができる。構造単位(p)を与えるモノマーは、構造単位(m)及び、構造単位(n)を与えるモノマーに包含されるものでなければ、任意のモノマーを使用でき、分子構造中に炭素-炭素二重結合を1つ以上有する化合物であれば限定されない。
【0017】
構造単位(p)を与えるモノマーの一例である非環状モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸エステルが炭素数2~20のエステル基である場合等が挙げられる。
具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
好ましくはアクリル酸エステルが挙げられ、具体的な化合物として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル(nBA)、アクリル酸イソブチル(iBA)、アクリル酸t-ブチル(tBA)、及びアクリル酸2-エチルヘキシルからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、特にアクリル酸n-ブチル(nBA)、及びアクリル酸イソブチル(iBA)からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
また、別の非環状モノマーとしては、例えば、5-ヘキセン-1-オール、アリルメチルエーテル、エチル-4-ペンテノエート、4-クロロ-1-ブテン、メチルビニルエーテル、スチレン、ビニルトリメチルシラン、塩化ビニル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
なお、非環状モノマーは、一種類であってもよいし、複数種であってもよい。
【0018】
2.2 極性エチレン系共重合体(A)の樹脂物性
(1)重合体の炭素1,000個当たりの分岐数
本発明に関わる共重合体においては、弾性率を高くし、充分な機械物性を得る点から、13C-NMRにより算出されるメチル分岐数が、炭素1,000個当たり、上限が50個以下であってもよく、5.0個以下であってもよく、1.0個以下であってもよく、0.5個以下であってもよく、下限は、特に限定されず、少なければ少ないほどよい。またエチル分岐数が炭素1,000個当たり、上限が3.0個以下であってもよく、2.0個以下であってもよく、1.0個以下であってもよく、0.5個以下であってもよく、下限は、特に限定されず、少なければ少ないほどよい。さらにブチル分岐数が炭素1,000個当たり、上限が7.0個以下であってもよく、5.0個以下であってもよく、3.0個以下であってもよく、0.5個以下であってもよく、下限は、特に限定されず、少なければ少ないほどよい。
【0019】
(2)共重合体中のカルボキシ基を有するモノマー、及び非環状モノマーに由来する構造単位量、および分岐数の測定方法
本発明の共重合体中のカルボキシ基を有するモノマー、及び非環状モノマーに由来する構造単位量、および炭素1,000個当たりの分岐数は13C-NMRスペクトルを用いて求められる。13C-NMRは以下の方法によって測定する。
試料200~300mgをo-ジクロロベンゼン(CCl)と重水素化臭化ベンゼン(CBr)の混合溶媒(CCl/CBr=2/1(体積比))2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れて窒素置換した後封管し、加熱溶解して均一な溶液としてNMR測定試料とする。
NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・ジャパン(株)のAV400M型NMR装置を用いて120℃で行う。
13C-NMRは、試料の温度120℃、パルス角を90°、パルス間隔を51.5秒、積算回数を512回以上、逆ゲートデカップリング法で測定する。
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とする。
得られた13C-NMRにおいて、多元共重合体が有するモノマー又は分岐に特有のシグナルを同定し、その強度を比較することで、多元共重合体中の各モノマーの構造単位量、および分岐数を解析することができる。モノマーまたは分岐に特有のシグナルの位置は公知の資料を参照することもできるし、試料に応じて独自に同定することもできる。このような解析手法は、当業者にとって一般的に行いうるものである。
【0020】
(4)共重合体の分子構造
本発明に関わる共重合体の分子鎖末端は、エチレンに由来する構造単位(m)であっても良く、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構造単位(n)であっても良く、非環状モノマーに由来する構造単位(p)であっても良い。
【0021】
また、本発明に関わる共重合体は、エチレンに由来する構造単位(m)、カルボキシ基を有するモノマーに由来する構造単位(n)、及び非環状モノマーに由来する構造単位(p)のランダム共重合体、ブロック共重合体、並びにグラフト共重合体等が挙げられる。
【0022】
(5)直鎖状構造
本発明で好ましく用いる直鎖状極性エチレン系共重合体又は直鎖状アイオノマーとは、これら各構造単位が実質的に直鎖状に共重合、好ましくはランダム共重合していることを特徴とする。「実質的に直鎖状」とは、共重合体が分岐を有していないか又は分岐構造が現れる頻度が小さく、共重合体を直鎖状とみなしうる状態であることを指す。具体的には、後述する条件下で共重合体の位相角δが50度以上である状態を指す
さらに本発明に好ましく用いられる直鎖状の極性エチレン系共重合体とその直鎖状アイオノマー体は、その分子構造を直鎖状とする観点から、遷移金属触媒の存在下で製造されたものが好ましい。
なお、高圧ラジカル重合法プロセスによる重合、金属触媒を用いた重合など、製造方法によって共重合体の分子構造は異なることが知られている。
この分子構造の違いは製造方法を選択する事によって制御が可能であるが、例えば特開2010-150532号公報に記載されている様に、回転式レオメータで測定した複素弾性率によっても、その分子構造を推定する事ができる。
【0023】
(6)複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δ
本発明で好ましく用いられる直鎖状極性エチレン系共重合体においては、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δが、50~75度であることを必須とする。位相角δの下限は51度以上であってもよく、位相角δの上限は64度以下であってもよい。
より具体的には、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δ(G*=0.1MPa)が50度以上である場合、共重合体の分子構造は直鎖状の構造であって、長鎖分岐を全く含まない構造か、機械的強度に影響を与えない程度の少量の長鎖分岐を含む、実質的に直鎖状の構造であることを示す。
また、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δ(G*=0.1MPa)が50度より低い場合、共重合体の分子構造は長鎖分岐を過多に含む構造を示し、機械的強度が劣るものとなる。
回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δは、分子量分布と長鎖分岐の両方の影響を受ける。しかし、Mw/Mn≦4、より好ましくはMw/Mn≦3である共重合体に限れば長鎖分岐の量の指標になり、その分子構造に含まれる長鎖分岐が多いほどδ(G*=0.1MPa)値は小さくなる。なお、共重合体のMw/Mnが1.5以上であれば、当該分子構造が長鎖分岐を含まない構造である場合でもδ(G*=0.1MPa)値が75度を上回ることはない。
【0024】
本発明において、複素弾性率の測定方法は、以下の通りである。
試料を厚さ1.0mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度180℃の熱プレス機中で5分間予熱後、加圧と減圧を繰り返すことで試料中の残留気体を脱気し、更に4.9MPaで加圧し、5分間保持する。その後、試料を表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、厚さが約1.0mmの試料からなるプレス板を作成した。試料からなるプレス板を直径25mm円形に加工したものを測定サンプルとし、動的粘弾性特性の測定装置としてRheometrics社製ARES型回転式レオメータを用い、窒素雰囲気下において以下の条件で動的粘弾性を測定する。
・プレート:φ25mm パラレルプレート
・温度:160℃
・歪み量:10%
・測定角周波数範囲:1.0×10-2~1.0×10 rad/s
・測定間隔:5点/decade
複素弾性率の絶対値G(Pa)の常用対数logGに対して位相角δをプロットし、logG=5.0に相当する点のδ(度)の値をδ(G=0.1MPa)とする。測定点の中にlogG=5.0に相当する点がないときは、logG=5.0前後の2点を用いて、logG=5.0におけるδ値を線形補間で求める。また、測定点がいずれもlogG<5であるときは、logG値が大きい方から3点の値を用いて2次曲線でlogG=5.0におけるδ値を補外して求める。
【0025】
2.3 極性エチレン系共重合体のアイオノマー体(A’)
極性エチレン系共重合体のアイオノマー体とは、上記の極性エチレン系共重合体(A)のカルボキシ基の少なくとも一部が金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換されるものを意味する。好ましくは周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換される。
2.3.1 アイオノマー体の製造方法
本発明に関わるアイオノマー体の製造方法は、前記共重合体(A)の構造単位(n)のカルボキシ基の少なくとも一部を、周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する化合物と反応させることにより、金属含有カルボン酸塩に変換する工程を有する。
【0026】
金属イオンを含有する化合物は、周期表1族、2族、又は12族の金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、酢酸塩、ギ酸塩などであってもよい。
金属イオンを含有する化合物は、粒状あるいは微粉状で反応系に供給してもよく、水や有機溶媒に溶解または分散させた後、反応系に供給してもよく、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体やオレフィン共重合体をベースポリマーとするマスターバッチを作製し、反応系に供給してもよい。反応を円滑に進行させるためにはマスターバッチを作製し、金属イオンを含有する化合物を反応系に供給する方法が好ましい。
【0027】
金属イオンを含有する化合物との反応はベント押出機、バンバリーミキサー、ロールミルの如き種々の型の装置により、溶融混練することによって行ってもよく、反応はバッチ式でも連続法でもよい。反応によって副生する水及び炭酸ガスを脱気装置により排出することにより、円滑に反応を行うことができることからベント押出機のような脱気装置付きの押出機を用い連続的に行うことが好ましい。
金属イオンを含有する化合物との反応に際し、反応を促進させるために、少量の水を注入してもよい。
【0028】
2.4 ポリエチレン樹脂(C)
さらに、本発明の好ましい態様として、ポリエチレン樹脂組成物(B)が、下記(c-1)~(c-7)の特性を有するポリエチレン樹脂(C)を含有することが挙げられる。
(c-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が0.1~100g/10分
(c-2)DSCにおいて、融解熱量の総量ΔHmが、30~120J/g
(c-3)結晶化温度Tcが、25~90℃
(c-4)エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を必須の副成分として2~20mol%含み、エチレン及びプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として5mol%以下含んでいてもよい
(ただし、前記第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない)
(c-5)密度が0.88~0.94g/cm
(c-6)ポリエチレン樹脂(C)中のビニル、ビニリデンの合計量が0.35(個/total 1000C)以上
(ただし、ビニル、ビニリデンの個数は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
(c-7)ポリエチレン樹脂(C)中のコモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が下記式(1)の関係を満たす。
式(1):(Y)≧ -1157×(X)+1084
(ただし、Yは、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数である。)
【0029】
(i)ポリエチレン樹脂(C)の特性
(c-1)MFR
本発明に用いるポリエチレン樹脂(C)は、メルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)が0.1~100g/10分であり、好ましくは1~80g/10分であり、より好ましくは3~70g/10分である。MFRが1g/10分未満であると成形時の延展性が悪くなり、押出機内のモーター負荷が高くなるため好ましくない。一方、MFRが100g/10分を超えると成形時の溶融膜の状態が不安定になるので好ましくない。
【0030】
ポリマーのMFRを調節するには、例えば、重合温度、コモノマー量などを適宜調節する方法がとられる。ポリエチレン樹脂(C)のMFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する。
【0031】
(c-2)DSCにおいて、融解熱量の総量ΔHmが、30~120J/g
本発明に用いるポリエチレン樹脂(C)の融解熱量の総量△Hmは、30~120J/gであり、好ましくは32~118J/gであり、より好ましくは35~115J/gである。ΔHmが30J/g未満であるとブロッキングが不良になるので好ましくない。
一方、ΔHmが120J/gを超えると接着性が不良となり、好ましくない。ポリエチレン樹脂(C)のΔHmを調節するには、例えば、コモノマー含有量、重合温度、触媒量などを適宜調節する方法がとられる。
ここで、ΔHmは、示差熱走査熱量計(DSC)による融解曲線における融解熱量を示す。一般に、結晶性の低いエチレン系樹脂は、結晶性の高いエチレン系樹脂と比較して、融解ピークがブロードとなり、ΔHmは小さくなる傾向にある。
【0032】
(c-3)結晶化温度Tcが、25~90℃
本発明に用いるポリエチレン樹脂(C)の結晶化温度Tcは、25~90℃であり、好ましくは27~88℃であり、より好ましくは30~85℃である。Tcが25℃未満であると結晶性が低すぎるため、ブロッキングが不良となり、好ましくない。一方、Tcが90℃を超えると高結晶成分の存在により、接着性が不良となるため、好ましくない。
ここで、Tcは、示差熱走査熱量計(DSC)による結晶化曲線における結晶化ピークの中で最も大きなピーク温度を示す。
(c-4)モノマー構成
本発明に用いられるポリエチレン樹脂(C)は、エチレンに由来する構成単位を主成分として80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位を副成分として2~20mol%含むことを特徴とする、ポリエチレン樹脂(C)であり、具体例としては触媒重合法により重合してなる共重合体であって、実質的に直鎖状にランダムに重合してなる共重合体である。具体的には、エチレンとプロピレンのランダム共重合体である。好ましくは、エチレンに由来する構成単位が80~98mol%、プロピレンに由来する構成単位が2~20mol%、更に好ましくはエチレンに由来する構成単位が85~95mol%、プロピレンに由来する構成単位が5~15mol%である。ここで、エチレン含有量等のモノマー量は、13C-NMRにより、後述する実施例に記載の条件で測定し、算出した値である。
【0033】
なお、その他のα-オレフィン、特に炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構成単位および他のモノマー成分を全く含まない構成が好ましいが、実質的に微量でかかる構成を含んでいてもよい。本明細書においては、エチレンおよびプロピレン以外のα-オレフィンを第3のα-オレフィンという。本発明のポリエチレン樹脂(C)は、エチレンおよびプロピレン以外の第3のα-オレフィンに由来する構成単位を副成分として、例えば5mol%以下、好ましくは2mol%以下、更に好ましくは1.5mol%以下、一層好ましくは1mol%以下、最も好ましくは0.5mol%以下含んでいてもよい。ここで、本発明のポリエチレン樹脂(C)が第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、エチレンに由来する構成単位とプロピレンに由来する構成単位と第3のα-オレフィンに由来する構成単位の合計が100mol%を超えない。また、この場合、プロピレンに由来する構成単位の含有量は、第3のα-オレフィンに由来する構成単位の含有量より高いことが好ましい。また、本発明のポリエチレン樹脂(C)が第3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む場合は、1種または2種以上の第3のα-オレフィンを使用することができる。
また、ポリエチレン樹脂(C)は、(c-1)~(c-7)を充足する範囲で、1種または2種以上の組み合わせでもよい。
プロピレンを副成分として必須コモノマーとし、特に、後に記載するメタロセン触媒を用いた高圧イオン重合法を採用した場合、特異的にビニル、ビニリデンの合計数が多いエチレン・α-オレフィン共重合体を得ることが可能となる。1-ヘキセン、1-オクテンといったα-オレフィンをコモノマー主成分として重合した場合、この効果は得られにくい。
【0034】
(c-5)密度
本発明に用いるポリエチレン樹脂(C)は、密度が0.88~0.94g/cmであり、好ましくは0.88~0.93g/cmであり、より好ましくは0.88~0.92g/cmである。密度が0.88g/cm未満であると、ブロッキングが不良になるので好ましくない。一方、密度が0.94g/cmを超えると、接着性が不良となるので好ましくない。
【0035】
ポリマーの密度を調節するには、例えばコモノマー含有量、重合温度、触媒量など適宜調節する方法がとられる。なお、ポリエチレン樹脂(C)の密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定する(測定温度23℃)。
【0036】
(c-6)ビニル、ビニリデンの合計数
エチレンとα-オレフィンの1種以上を共重合してなる共重合体においては、積極的なジエンモノマーの添加を行わない場合でも、製造過程のメカニズムの違いに起因して、種々の二重結合(ビニル、ビニリデン、シスービニレン、トランス-ビニレン、三置換オレフィン)を生じる場合があり、その量や種類も様々である。
本発明では、ポリエチレン樹脂(C)に含まれる種々の二重結合のうち、特にビニルとビニリデンが接着強度において重要であることを見出し、かつ、ビニルとビニリデンの合計数が、通常のエチレン・α-オレフィン共重合体よりも多いポリエチレン樹脂(C)を含む樹脂組成物が、低温ラミネート積層用の樹脂組成物として特に好適に本発明の効果を達成することを見出し、完成したものである。
【0037】
本発明で用いるポリエチレン樹脂(C)は、NMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数当たりのビニル、ビニリデンの二重結合の合計数が0.35(個/total 1000C)以上であり、好ましくは0.40~5.0(個/total 1000C)であり、より好ましくは0.45~4.5(個/total 1000C)であり、更に好ましくは0.50~4.0(個/total 1000C)である。
ビニル、ビニリデンの合計数が上記範囲であると、接着強度に優れた樹脂組成物となり、0.35個未満であると、接着強度が十分になりにくい。ビニル、ビニリデンの合計数は、適当なメタロセン触媒の選択、重合温度、コモノマー種、コモノマー量を適宜調節することにより、上記範囲に制御することができる。
なお、これら二重結合の数は、主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数であり、H-NMRスペクトルの特性ピークの積算強度を用いて算出した値であり、後述の実施例に記載の条件で測定し、算出した値である。
更に本発明においては、ポリエチレン樹脂(C)中のビニルの個数は、0.2(個/total 1000C)以上の範囲を満たすことが好ましい。
また、本発明においては、ポリエチレン樹脂(C)中のビニリデンの個数は、0.12(個/total 1000C)以上の範囲を満たすことが好ましい。
【0038】
(c-7)コモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)との関係
本発明で用いるポリエチレン樹脂(C)は、コモノマーによる分岐数(Y)と密度(X)が、下記式(1)を満たすことが好ましい。
式(1):(Y)≧ -1157×(X)+1084
密度と分岐数が上記式(1)の関係を満たすと、コモノマーによる分岐数が十分に確保され、接着強度に優れた樹脂組成物となる。
ここで、コモノマーによる分岐数(Y)は、ポリエチレン樹脂(C)をNMRで測定した主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数(個/total 1000C)である。
また、密度(X)は、ポリエチレン樹脂(C)の密度であり、上記の通り測定される。
なお、コモノマーによる分岐数(Y)は、ポリマー中に含まれる三級炭素の量を示し、NMRで測定した、主鎖、側鎖の合計1000個の炭素数あたりの数であり、例えばE. W. Hansen, R. Blom, and O. M. Bade, Polymer, 36巻 4295頁(1997年)を参考に13C-NMRスペクトルから算出することができる。
密度と分岐数の関係は、共重合するコモノマーの種類と比率、重合温度等の重合条件により調整することができる。
【0039】
(ii)ポリエチレン樹脂(C)の重合触媒および重合方法
本発明で使用されるポリエチレン樹脂(C)の製造に用いられる触媒としては、特に限定されないが、より好ましくはメタロセン触媒を用いる。
メタロセン触媒としては、特に限定されるわけではないが、シクロペンタジエニル骨格を有する基等が配位したジルコニウム化合物などのメタロセン化合物と助触媒とを触媒成分とする触媒が挙げられる。特に、シクロペンタジエニル骨格を有する基等が配位したジルコニウム化合物などのメタロセン化合物を使用するのが好ましい。
製造法としては、特に限定されず、高圧イオン重合法、気相法、溶液法、スラリー法等を用いることができるが、本発明に係る二重結合を調整したポリエチレン樹脂(C)を得るためには150~330℃の高温で重合を行うことが望ましいため、高圧イオン重合法を利用するのが好ましい(「ポリエチレン技術読本」第4章、松浦一雄・三上尚孝 編著、2001年)。
【0040】
(iii)ポリエチレン樹脂(C)の量
当該樹脂組成物(B)中のポリエチレン樹脂(C)が1~90重量%であることが好ましい。好ましくは、5~50重量%、10~40重量%である。
【0041】
2.5 ポリエチレン樹脂(D)
ポリエチレン樹脂組成物(B)は、さらに下記(d-1)~(d-2)の特性を有するポリエチレン樹脂(D)を含有することが好ましい。
(d-1)MFR(190℃、21.18N荷重)が0.1~100g/10分
(d-2)密度が0.91~0.97g/cm
好ましくは低密度ポリエチレンである。
【0042】
2.6 添加剤
本発明に関わる樹脂組成物(B)には、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、従来公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、架橋剤、発泡剤、核剤、難燃剤、導電材、及び、充填材等の添加剤を配合して、アイオノマー樹脂材料として用いても良い。
3.基材層2(γ)
基材層2は、帯電防止剤を含む基材であり、例えば、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエステル(PET)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムなどが挙げられる。
かかる基材層2を構成する樹脂は、低結晶性のものが多い。
帯電防止剤としては、従来より、OPPフィルム等の帯電防止用に用いられている公知の帯電防止剤を用いることができる。
例えば、アジピン酸、グルタミン酸、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、ホスホン酸塩等のアニオン性帯電防止剤;アミン、イミダゾリン、アミン酸化エチレン付加体、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩等のカチオン性帯電防止剤;カチオン基とアニオン基の両方を有する例えばアルキルアミンに無水マレイン酸を作用させたグアニジン塩、ポリエチレンイミンから誘導されるスルホン酸等の両性帯電防止剤;ポリオール、ポリオールと脂肪族カルボン酸とのエステル化合物、エーテル化合物、高級アルコールエチレンオキサイド付加体、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体、脂肪酸アミド及びそのエチレンオキサイド付加物等の非イオン性帯電防止剤等が挙げられる。
【0043】
4.積層体
本発明の積層体は、基材層1(α)、樹脂層(β)、基材層2(γ)の少なくとも3層を有し、基材層1(α)と基材層2(γ)の間に、樹脂層(β)が存することを特徴とする。
基材層1(α)、樹脂層(β)、基材層2(γ)は、互いに隣接してもよいし、離接していてもよいが、全体として積層されている積層体である。 例えば、接着剤層を基材層1(α)と樹脂層(β)の間、又は樹脂層(β)と基材層2(γ)の間に設けてもよい。
本発明の積層体は、上記の構成を有していれば、更なる層を有していてもよく、例えば、基材層1(α)及び/又は基材層2(γ)の外側に、異なる樹脂層及び/または異なる基材層が存在してもよい。
【0044】
積層体の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、基材層に、ポリエチレン樹脂組成物を溶融押出しし積層するいわゆる押出しコーティング法が好ましい。また、上記押出しコーティングは単層、サンドイッチラミネート、共押出ラミネート、タンデムラミネート等の方法により一層以上積層されることが好ましい。本発明によれば、基材との接着が良好であるため、高速成形が可能となる。
【0045】
また、基材層1(α)と樹脂層(β)の接着性を確保する方法としては特に限定されないが、例えば、基材層1(α)の表面へ表面処理、必要に応じて、アンカーコート処理することができる。表面処理の方法としては、コロナ放電処理法、オゾン処理法、フレーム処理法、低温プラズマ処理法等の各種処理法が挙げられる。また溶融樹脂へオゾンを吹きかける方法も挙げられる。
【0046】
本発明の積層体の製造方法の1つの態様は、押出ラミネート成形機を用い、繰出機から、基材層2(γ)を繰り出し、ポリエチレン樹脂組成物(A)を押出成形して所定の厚みとなるように樹脂層(β)を形成し、サンド側から基材層1(α)を繰り出し、樹脂層(β)側の基材層2(γ)面に、好ましくは接着剤層(ハ)を形成して、押出サンドラミネート加工を行うことにより、基材層1(α)、樹脂層(β)、接着剤層(ハ)、及び基材層2(γ)の少なくとも3層又は4層を有する積層体を製造する方法が挙げられる。接着剤層(ハ)に用いられる接着剤としては、公知のものを用いることができる。
【0047】
本発明の積層体は、帯電防止剤を含む基材とのラミネート接着の場合においても、良好な接着性を示し、高温条件下でも、良好な接着性を有する積層体であるので、特に、包装袋用フィルム、食品包装用フィルム、液体紙容器、羊羹、ゼリー等の冷菓、乾燥品食品、油脂、菓子類等の包装用容器、紙結束、紙カップ、紙トレー等として好適に用いることができる。
【実施例0048】
以下に実施例で本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例に用いられる測定方法及び用いた樹脂、接着剤は次の通りである。
【0049】
1.樹脂物性の評価方法
(1)メルトフローレート(MFR)
MFRは、JIS-K6922-2:1997附属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定した。
(2)密度
密度は、JIS-K6922-2:1997附属書(23℃、低密度ポリエチレンの場合)に準拠して測定した。
【0050】
(3)融解熱量の総量ΔHm、結晶化温度Tc
融解熱量の総量ΔHm、結晶化温度Tcは、JIS K7121-1987の方法に準拠して測定した。測定サンプルとして、ペレットを熱プレスでシートとし、パンチで打ち抜いたものを使用した。下記の条件で、第一昇温、降温、第二昇温の手順で実施し、降温時の最大ピーク高さの温度をTcとし、第二昇温時の融解曲線における融解熱量をΔHmとする。
装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー(株) DSC7020
<昇降温条件>
・第一昇温:30℃から200℃までを10℃/分
・降温:200℃から-30℃までを10℃/分
・第二昇温:-30℃から200℃までを10℃/分
・温度保持時間:第一昇温後5分間、降温後5分間
・サンプル量:5mg
・温度の校正:インジウム
・リファレンス:アルミニウム
【0051】
(4)コモノマー量、コモノマーによる分岐数および二重結合数
コモノマー量およびコモノマーによる分岐数(Y)は、13C-NMRにより、二重結合数(ビニル、ビニリデン)は、1H-NMRにより、次の条件で測定し、主鎖および側鎖の合計1000個の炭素あたりの個数で求めた。
装置:ブルカー・バイオスピン(株)AVANCE III cryo-400MHz
溶媒:o-ジクロロベンゼン/重化ブロモベンゼン=8/2混合溶液
<試料量>
試料460mg/溶媒2.3ml
<13C-NMR>
・1Hデカップル、NOEあり
・積算回数:256scan
・フリップ角:90°
・パルス間隔20秒・AQ(取り込み時間)=5.45s D1(待ち時間)=14.55s
<1H-NMR>
・積算回数:1400scan
・フリップ角:1.03°
・AQ(取り込み時間)=1.8s D1(待ち時間)=0.01s
【0052】
(4)接着強度
得られた積層体を、流れ方向に15mm幅の短冊状に切出し、基材層1(α)と樹脂層(β)との層間の界面で剥離し、被検体数5、剥離速度300mm/分、T剥離試験での剥離強度をもって接着強度とした。
【0053】
(5)ヒートシール強度
得られた積層体を2枚重ね、下方シールバーの温度を30℃、上方シールバーの温度は140℃とし、シール時圧力を0.2MPa、1.0秒のシール時間でヒートシールを行い、15mm幅の180°剥離強度を測定した。得られたヒートシール強度の値から、下記の基準によってヒートシール性を評価した。
○:ヒートシール強度が10N/15mm幅以上。
×:ヒートシール強度が10N/15mm幅未満。
【0054】
2.材料
(1)極性エチレン系共重合体(A)又はアイオノマー(A’)
(PE-1)、(PE-4)
特開2022-150804号公報に記載されたアイオノマー1とアイオノマー2の製法方法で(PE―1)と(PE-4)を得られた。得られた樹脂の物性は表1と表2に示す。市販の(PE-2、PE-3、PE-5)を、それぞれ成分(A又はA’)のエチレン系共重合体又はアイオノマーとして用いた。その物性値を表1と表2に示す。
(PE-2):三井・ダウ ポリケミカル社製 ハイミラン1652
(PE-3):日本ポリエチレン社製 レクスパールEB240H
(PE-5):三井・ダウ ポリケミカル社製 ニュクレルN1108C
(2)ポリエチレン樹脂(C)
下記の製造方法により得られた(PE-6)を、ポリエチレン樹脂(C)として用いた。その物性値を表1と表2に示す。
【0055】
<PE-6の製造方法>
(i)触媒の調製
特開平10-218921号公報に記載された方法で調製した錯体「rac-ジメチルシリレンビスインデニルハフニウムジメチル」0.05モルに、等モルの「N,Nジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート」を加え、トルエンで50リットルに希釈して触媒溶液を調製した。
【0056】
(ii)重合方法
内容積5.0リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器を用い、反応器内の圧力を80MPaに保ち、エチレン、プロピレンを適宜調整しながら、40kg/時の割合で原料ガスを連続的に供給した。また、上記「(i)触媒の調整」の項に記載の触媒溶液を連続的に供給し、重合温度は150~250℃の範囲内で適宜調整することでポリエチレン樹脂(C)を得た。
【0057】
(3)ポリエチレン樹脂(D)
表1と表2に示す物性値を有するポリエチレン樹脂(PE-7)を用いた。
【0058】
(4)接着剤層
接着剤層として、以下に記載の(AC-1)を用いた。
(AC-1)東洋モートン社製 オリバインEL420、メタノールを1:6の比率で混合したもの。
【0059】
(5)基材層1(α)
東洋アルミニウム社製 アルミニウム箔(厚さ7μm、酸素透過度は20℃、65%RH下において、略0mL/m・day・MPa)を用いた。以下、(基-1)と記載する。
【0060】
(6)基材層2(γ)
フタムラ化学社製 帯電防止剤を含むOPPフィルムFOR(厚さ20μm)を用いた。以下、(基-2)と記載する。
【0061】
(実施例1)
アイオノマー体(A’)(PE-1)を15重量%と、ポリエチレン樹脂(C)(PE-6)17重量%と、ポリエチレン樹脂(D)(PE-7)68重量%を配合した。これを十分に混合し、40mmφ単軸押出機を用いてポリエチレン樹脂組成物(B)のペレットを得た。
押出ラミネート成形機を用い、繰出機から、基材層2(γ)として幅500mmの(基-2)を繰り出し、上記で得られたペレットを、引取速度100m/分、被覆厚み15μmとなるように調整し、サンド側から基材層1(α)として(基-1)を繰り出し、押出サンドラミネート加工を行った。次に、基材層1(α)の樹脂層(β)側の反対面へ(AC-1)を用いてアンカーコート処理を実施し、LDPE(日本ポリエチレン社製 ノバテックLC600A)を引取速度100m/分、被覆厚み20μmにて押出ラミネート加工を行い、基材層2(γ)、樹脂層(β)、基材層1(α)、LC600A層の積層体を得た。
押出ラミネート成形機は、口径90mmφの押出機に装着したTダイスから押し出される樹脂の温度が310℃になるように設定し、冷却ロール表面温度20℃、ダイス幅560mmで引取加工速度が100m/分の場合に被覆厚みが規定値になるように押出量を調整した。次いで、得られた積層体を用いて、上述の接着強度、ヒートシール強度の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0062】
(実施例2)
実施例1において、アイオノマー体(A’)(PE-1)を7重量%と、ポリエチレン樹脂(C)(PE-6)18.6重量%と、ポリエチレン樹脂(D)(PE-7)74.4重量%を使用した以外は、実施例1と同様に積層体を製造した。評価結果を表1に示す。
【0063】
(実施例3)
実施例1において、アイオノマー体(A’)の代わりにPE-2を使用した以外は、実施例1と同様に積層体を製造した。評価結果を表1に示す。
【0064】
(実施例4)
アイオノマー体(A’)(PE-4)を15重量%と、ポリエチレン樹脂(D)(PE-7)85重量%を配合した。これを十分に混合し、40mmφ単軸押出機を用いてポリエチレン樹脂組成物(B)のペレットを得た。
押出ラミネート成形機を用い、繰出機から、基材層2(γ)として幅500mmの(基-2)を繰り出し、上記で得られたペレットを、引取速度100m/分、被覆厚み15μmとなるように調整し、サンド側から基材層1(α)として(基-1)を繰り出し、押出サンドラミネート加工を行った。このとき、樹脂層(β)側の基材層2(γ)面に、接着剤層として(AC-1)を用い、アンカーコート処理を実施した。次に、基材層1(α)の樹脂層(β)側の反対面へ(AC-1)を用いてアンカーコート処理を実施し、LDPE(日本ポリエチレン社製 ノバテックLC600A)を引取速度100m/分、被覆厚み20μmにて押出ラミネート加工を行い、基材層2(γ)、樹脂層(β)、基材層1(α)、LC600A層の積層体を得た。
押出ラミネート成形機は、口径90mmφの押出機に装着したTダイスから押し出される樹脂の温度が310℃になるように設定し、冷却ロール表面温度20℃、ダイス幅560mmで引取加工速度が100m/分の場合に被覆厚みが規定値になるように押出量を調整した。次いで、得られた積層体を用いて、上述の接着強度、ヒートシール強度の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0065】
(実施例5)
実施例4において、アイオノマー体(A’)(PE-4)を15重量%と、ポリエチレン樹脂(C)(PE-6)17重量%と、ポリエチレン樹脂(D)(PE-7)68重量%を使用した以外は、実施例4と同様に積層体を製造した。評価結果を表2に示す。
【0066】
(実施例6)
実施例4において、極性ポリエチレン樹脂(A)(PE-5)を15重量%と、ポリエチレン樹脂(C)(PE-6)17重量%と、ポリエチレン樹脂(D)(PE-7)68重量%を使用した以外は、実施例4と同様に積層体を製造した。評価結果を表2に示す。
【0067】
(比較例1)
実施例1において、ポリエチレン樹脂(D)(PE-7)100重量%を使用した以外は、実施例1と同様に積層体を製造した。評価結果を表1に示す。
【0068】
(比較例2)
実施例1において、ポリエチレン樹脂(C)(PE-6)20重量%と、ポリエチレン樹脂(D)(PE-7)80重量%を使用した以外は、実施例1と同様に積層体を製造した。評価結果を表1に示す。
【0069】
(比較例3)
実施例1において、極性ポリエチレン樹脂(A)(PE-3)を15重量%と、ポリエチレン樹脂(C)(PE-6)17重量%と、ポリエチレン樹脂(D)(PE-7)68重量%を使用した以外は、実施例1と同様に積層体を製造した。評価結果を表1に示す。
【0070】
(比較例4)
実施例4において、ポリエチレン樹脂(D)(PE-7)100重量%を使用した以外は、実施例4と同様に積層体を製造した。評価結果を表2に示す。
【0071】
(比較例5)
比較例4において、樹脂の温度が325℃に変更した以外は、比較例4と同様に積層体を製造した。評価結果を表2に示す。
【0072】
(比較例6)
実施例4において、ポリエチレン樹脂(C)(PE-6)20重量%と、ポリエチレン樹脂(D)(PE-7)80重量%を使用した以外は、実施例4と同様に積層体を製造した。評価結果を表2に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
(実施例比較例の結果)
上記実施例1~3と比較例1~3の対比により、本発明の極性エチレン系共重合体のアイオノマー体(A’)を用いた積層体は、基材層1(α)と樹脂層(β)との接着強度に優れると共に、ヒートシール強度に優れた積層体であることがわかる。特に高温下で保管後においても接着強度が低下することがない。
更に、実施例1の結果と実施例3の対比により、直鎖状の分子構造を持つ極性エチレン系共重合体又はアイオノマー体(回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δが50度~75度)を用いた積層体である実施例1の方が、分岐構造を有する極性エチレン系共重合体又はアイオノマー体を用いた実施例3よりも、接着強度とヒートシール強度が優れた積層体であることがわかる。
実施例4~6の結果と比較例4~6の対比により、本発明の極性エチレン系共重合体(A)及び/又はそのアイオノマー体(A’)を用いた積層体は、基材層1(α)と樹脂層(β)との接着強度に優れると共に、ヒートシール強度に優れた積層体である。更に実施例5の結果と実施例4の対比により、ポリエチレン樹脂(C)を含む積層体は、接着強度とヒートシール強度が、より優れた積層体であることがわかる。
一方、比較例5の結果と比較例4の対比により、比較例5の325℃加工品の23℃50%1週間保管品では、接着強度とヒートシール強度が良いが、40℃90%1週間保管品で接着強度とヒートシール強度が低下することがわかる。