(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146908
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】車両の環境センサの汚染を最小化するための装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/02 20120101AFI20241004BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20241004BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241004BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20241004BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241004BHJP
B60S 1/62 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B60W50/02
G01S17/931
B60W60/00
G01C21/26 A
G08G1/00 A
B60S1/62 110B
B60S1/62 120B
B60S1/62 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024057012
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】10 2023 202 976.6
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ショイブレ
(72)【発明者】
【氏名】アラン プフェッツァー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ドゥデク
(72)【発明者】
【氏名】アニシャ ザクセナ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ヴァイラー
(72)【発明者】
【氏名】フーベアト ラム
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン クレーン
(72)【発明者】
【氏名】ヨナス フリック
(72)【発明者】
【氏名】マルセル クニック
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー エンツマン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン レノーア
【テーマコード(参考)】
2F129
3D225
3D241
5H181
5J084
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB19
2F129FF02
2F129FF15
2F129FF80
2F129GG17
2F129GG18
3D225AA11
3D225AC02
3D225AD22
3D241BA60
3D241BA64
3D241CE02
3D241CE07
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF10
5H181MC15
5J084AB01
5J084AC02
5J084EA17
5J084EA22
(57)【要約】
【課題】本発明は、車両(20)の環境センサ(10)の汚染を最小化するための装置に関する。
【解決手段】本装置は、評価ユニット(30)を備え、当該評価ユニット(30)は、環境センサ(10)の視野の領域において環境センサ(10)の汚染を引き起こす可能性のある構成を有する、車両の環境内の対象物(40)に関する情報を算定し、算定された情報に基づいて、環境センサ(10)の汚染を最小化するために保持すべき各対象物(40)までの最小距離を算定し、算定された最小距離を表す信号を生成して供給するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(20)の環境センサ(10)の汚染を最小化するための装置であって、
・評価ユニット(30)
を備え、前記評価ユニット(30)は、
・前記環境センサ(10)の視野の領域において前記環境センサ(10)の汚染を引き起こす可能性のある構成を有する、前記車両(20)の環境内の対象物(40)に関する情報を算定し、
・算定された情報に基づいて、前記環境センサ(10)の汚染を最小化するために保持すべき各対象物(40)までの最小距離を算定し、
・算定された最小距離を表す信号を生成して供給する
ように構成されている、装置。
【請求項2】
前記評価ユニット(30)は、前記車両(20)の環境内の対象物(40)に関する情報を、
・前記環境センサ(10)、及び/又は、
・前記環境センサ(10)とは異なる、前記車両の別のセンサ(50)
に基づいて算定するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記評価ユニット(30)は、前記車両(20)の環境内の対象物(40)に関する情報を無線通信コネクション(60)に基づいて算定するように構成されており、前記無線通信コネクション(60)を介して、前記評価ユニット(30)は、前記車両(20)から離隔した位置にある無線通信加入者(65)から前記対象物(40)に関する情報を受信するように構成されている、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記車両(20)から離隔した位置にある無線通信加入者(65)は、
・他の道路利用者、及び/又は、
・交通情報システム及び/又は交通管理システム、及び/又は、
・気象サービス、及び/又は、
・クラウドサービス
である、
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記評価ユニット(30)は、
・前記車両(20)における前記環境センサ(10)の配置位置及び/又はタイプ及び/又は配向、及び/又は、
・前記対象物(40)の特徴、及び/又は、
・前記車両(20)の車両パラメータ及び/又は動作パラメータ、及び/又は、
・前記車両(20)に対する前記対象物(40)の相対運動の予測及び/又は相対速度の予測、及び/又は、
・前記車両(20)及び/又は前記対象物の位置及び/又は走行方向、及び/又は、
・道路の種類及び/又は走行路(140)の状態、及び/又は、
・前記車両(20)の計画された運転マヌーバ、及び/又は、
・交通量、及び/又は、
・前記車両(20)の能動的な経路ガイド、及び/又は、
・経路パラメータ、及び/又は、
・気象情報
に依存して、前記各対象物(40)までの最小距離を算定するように構成されている、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置はさらに、
前記車両(20)の
・軌道、及び/又は、
・運転マヌーバ、及び/又は、
・経路、及び/又は、
・速度及び/又は加速度
を自動的に調整することによって、及び/又は、
前記車両(20)のための
・走行開始及び/又は走行中断
を提案することによって、前記評価ユニット(30)の信号を受信し、当該信号に基づいて前記各対象物(40)までの最小距離を調整するように構成された制御ユニット(70)を有する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記評価ユニット(30)は、
・前記環境センサ(10)の汚染の程度及び/又は種類を算定し、
・前記各対象物(40)までの最小距離を、付加的に、前記環境センサ(10)の汚染の程度及び/又は種類に依存して算定する
ように構成されている、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置がさらに、洗浄ユニット(80)を備えており、
・前記洗浄ユニット(80)は、少なくとも前記環境センサ(10)の視野に影響を与える構成を有する領域において前記環境センサ(10)を洗浄するように構成されており、
・前記評価ユニット(30)は、前記環境センサ(10)の前記汚染の程度が予め定められた閾値を超えた場合に、及び/又は、前記汚染の種類が1つ又は複数の予め定められたカテゴリに相当する場合に、前記洗浄ユニット(80)の駆動によって前記環境センサ(10)の洗浄を開始するように構成されている、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記評価ユニット(30)は、前記最小距離を付加的に前記洗浄ユニット(80)の既存の洗浄容量を考慮して算定するように構成されている、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記評価ユニット(30)は、
・現在の走行状況と対応する最小距離に関連して予め定められたデータセット(90)内に格納されている走行状況との比較に基づいて、それぞれ適当な最小距離を算定するように、及び/又は、
・前記データセット(90)を、機械学習法に基づいて、及び/又は、前記車両(20)から離隔した位置から提供されたデータに基づいて、更新及び/又は拡張するように
構成されている、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記評価ユニット(30)は、
・予め定められた環境基準が満たされている場合、及び/又は、
・走行安全性が損なわれない場合、及び/又は、
・走行快適性が予め定められた範囲内においてのみ制限される場合
にだけ、汚染を引き起こす前記車両(10)の環境内の対象物(40)に関する情報及び/又は適当な最小距離を算定するように、及び/又は、前記最小距離を表す信号を生成して供給するように構成されている、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、車両の環境センサの汚染を最小化するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、車両の環境を検出する1つ又は複数のセンサを備えた車両が公知である。こうしたセンサに基づいて、例えば運転者支援システム及び/又は車両における(部分)自律運転モード用システムを、特に走行安全性及び/又は快適性を向上させるために実現することができる。
【0003】
環境へと配向されているこのようなセンサは、センサの受信能力を損なうおそれのある潜在的な汚染に曝されているため、従来技術では、例えばワイパエレメント及び/又は洗浄ノズルを含む、センサ用の洗浄装置が使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の開示
本発明は、車両の環境センサの汚染を最小化するための装置を提案する。環境センサは、例えば、カメラとして、及び/又は、LiDARセンサとして、及び/又は、レーダセンサとして、及び/又は、超音波センサとして、及び/又は、これらとは異なるセンサとして構成されている。車両の表面の及び/又は内部の環境センサの配置位置及び/又は配向は、基本的には制限されない。例示的な配置位置は、フロントバンパ及び/又はリアバンパの領域内、及び/又は、車両のキャビン内、例えば、車両のウィンドウガラスの背後、特に、車両のフロントウィンドウガラスの背後、車両のルーフ領域内などである。
【0005】
車両は、例えば、道路車両(例えば、オートバイ、乗用車、トランスポータ、トラック)、又は、鉄道車両又は航空機/飛行機及び/又は船舶である。特に好ましくは、車両は、環境センサによる環境検出に基づいて動作する少なくとも1つの運転者支援システム及び/又は(部分)自律運転モード用システムを有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る装置は、例えば、車両の既存の制御装置のコンポーネント、又は、車両の独立したコンポーネント、又は、車両の複数のコンポーネントにわたって分散された装置である。装置は、例えば、ASIC、FPGA、プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、マイクロコントローラなどとして構成された評価ユニットを有する。
【0007】
評価ユニットは、環境センサの視野の領域において環境センサの汚染を引き起こす可能性のある構成を有する、車両の環境内の対象物に関する情報を算定するように構成されている。「汚染」とは、基本的には、環境センサによって送受される信号(例えば、音波、電磁波など)に(例えば、減衰及び/又は散乱及び/又は回折及び/又は偏向によって)影響を与える構成を有する、環境センサにおける全ての堆積物及び/又は付着物を意味するものと理解されることを指摘しておく。こうした汚染には、例えば、汚染粒子及び/又は水滴及び/又は付着した虫などが含まれる。
【0008】
環境センサの汚染を生じさせ得る対象物とは、例えば、特に濡れた及び/又は汚れた走行路に関連して車両の環境センサの汚染を発生させ得る、車両の環境内の他の道路利用者(例えば、乗用車、トラック、バス、二輪車など)である。代替的に又は付加的に、さらなる意味におけるこうした対象物とは、車両の環境における降水(例えば、雨、雪など)又はこれとは異なる対象物であると理解することができる。
【0009】
評価ユニットはさらに、算定された情報に基づいて、環境センサの汚染を最小化するために保持すべき各対象物までの最小距離を算定するように構成されている。
【0010】
なお、汚染の「最小化」とは、本発明に係る装置を備えていない車両と比較して、環境センサ上の汚染の堆積の低減及び環境センサの汚染の完全な回避に関連付けられることを指摘しておく。
【0011】
このために、評価ユニットは、例えば、算定された各対象物に対して、各対象物の周囲に汚染が引き起こされるゾーンを算定するように構成されており、その拡張及び/又は形状(例えば矩形)は、好ましくは、対象物のそれぞれの種類及び/又は特徴に依存して、及び/又は、その時点での現在の境界条件に依存して調整される。続いて有利には、対象物の汚染が引き起こされる各ゾーンと車両の輪郭及び/又は環境センサの配置位置とが全く又は部分的にしか重ならないようにすることによって、評価ユニットにより算定される最小距離を算定することができる。
【0012】
さらに、評価ユニットは、算定された最小距離を表す信号を生成して供給するように構成されている。ここでの供給は、例えば、車両の車載電源網を介して(例えば、バスシステム及び/又はこれとは異なる車両の通信コネクションを介して)、車両の別のコンポーネントへと行われる。代替的に又は付加的に、信号が、評価ユニット内において、この評価ユニットのソフトウェア部品及び/又はハードウェア部品へと供給されるものとしてもよい。
【0013】
好適には、車両内の信号は、算定された車両環境における対象物までの距離を調整するために使用される。ここでは、評価ユニットによって算定される最小距離とは、他の境界条件とは無関係に又は少なくとも部分的に無関係に算定された保持すべき理想的な距離であって、ゆえに場合によっては完全には直接に調整することができず、ひいては保持することができない距離であることを指摘しておく。これは、距離の調整のために設けられているコンポーネントにより、最小距離を可能な限り保持することによって相応に考慮することができる。
【0014】
代替的に又は付加的に、評価ユニットが、最小距離の算定から最小距離の調整までの間に境界条件が変化する場合を除き、このようにして算定された最小距離が直接に調整可能となるように、その時点での現在の境界条件を最小距離の算定の際に考慮するように構成されることも考えられる。これは、相応に、評価ユニットを用いて、及び/又は、最小距離を調整する車両のコンポーネントを用いて、相応に検査及び保証することができる。
【0015】
本発明に係る装置は、特に、汚染を引き起こす可能性のある対象物までの適当な距離を算定することによって環境センサの汚染を最小化することができるという利点を提供し、これにより、車両が本発明に係る装置を有していない場合と比較して、車両の安全性及び/又は機能をより長く又は持続的に維持することができる。
【0016】
環境センサに対して例えばウォッシャ液に基づく洗浄装置が設けられている場合、本発明に係る装置によってさらにウォッシャ液消費量を低減することができる。なぜなら、環境センサのための洗浄間隔を本発明に係る装置の使用によって拡大することができるからである。
【0017】
各従属請求項には本発明の好ましい発展形態が示されている。
【0018】
本発明の有利な一構成においては、評価ユニットは、車両の環境内の対象物に関する情報を、環境センサ自体に基づいて、及び/又は、環境センサとは異なる車両の別のセンサに基づいて算定するように構成されている。車両の別のセンサは、例えば、カメラとして、及び/又は、LiDARセンサとして、及び/又は、レーダセンサとして、及び/又は、超音波センサとして、及び/又は、これらとは異なるセンサとして構成されている。特に有利には、別のセンサは、環境センサの近傍に(例えば2mまでの距離に、好ましくは1mまでの距離に、特に好ましくは0.5mまでの距離に)配置されており、さらに好ましくは主検出方向に関して環境センサと同様の配向を有するので、環境センサに汚染を引き起こす可能性のある車両の環境内の対象物の影響を、別のセンサを用いた対象物の検出によって十分に正確に推定することができる。ただし、別のセンサのこうした類似の配置及び/又は配向は、本発明に必須の前提条件ではない。
【0019】
本発明の他の有利な一構成においては、評価ユニットは、車両の環境内の対象物に関する情報を無線通信コネクションに基づいて算定するように構成されており、当該無線通信コネクションを介して、評価ユニットは、車両から離隔した位置にある無線通信加入者から対象物に関する情報を受信するように構成されている。無線通信コネクションは、例えば、移動無線コネクション及び/又はWLANコネクション及び/又はBluetoothコネクション及び/又はこれらとは異なる無線通信コネクションである。有利には、評価ユニットは、このために車両の無線通信ユニットに情報技術的に接続されている。
【0020】
対象物に関する情報を受信するための無線通信コネクションを形成する車両から離隔した位置にある無線通信加入者は、例えば、(例えばいわゆる“car2car”通信を用いる)他の道路利用者、及び/又は、交通情報システム及び/又は交通案内システム(特に、道路交通の監視及び/又は制御のために例えば標識台及び/又は信号機などに設けることができる静止システム)、及び/又は、気象サービス、及び/又は、クラウドサービスである。また、相応に、汚染を引き起こす対象物に関する情報を、上述した無線通信加入者の一部又は全部及び場合により他の無線通信加入者によって、(例えばクラウドサービスを介して)中央で統合して提供することも考えられる。
【0021】
特に有利には、評価ユニットは、車両における環境センサの配置位置及び/又はタイプ及び/又は配向、及び/又は、対象物の特徴(例えば、対象物の種類、車両の種類、形状、大きさなど)、及び/又は、車両の車両パラメータ及び/又は動作パラメータ(例えば、駆動部の種類、操作性、性能、車両の装備など)、及び/又は、車両に対する対象物の相対運動の予測及び/又は相対速度の予測、及び/又は、車両及び/又は対象物の位置及び/又は走行方向、及び/又は、道路の種類(例えば、自動車専用道路、街路など)及び/又は道路の特徴(例えば、潜在的な回避の可能性を制限する道路幅、車線数など)及び/又は走行路の状態(例えば、水溜まりが生じる可能性のある損傷状態など)、及び/又は、車両の計画された運転マヌーバ(例えば、追い越しマヌーバ、自律運転モードにおける車両操縦など)、及び/又は、交通量(例えば、交通量が多い場合には汚染の最小化は低減された範囲でしか可能とならない)、及び/又は、車両の能動的な経路ガイド(例えば、能動的な経路ガイドが環境センサの汚染を低く抑制することに適したものであるかどうか、又は、場合により自動的に代替経路を算定すべきかどうかを確認するための経路ガイド)、及び/又は、経路パラメータ(例えば、車両のナビゲーションシステムから提供される及び/又は車両のセンサから検出される、例えば高度の記述、勾配、カーブ数、カーブの曲率半径など)、及び/又は、気象情報(例えば、水しぶきが発生する確率及び水溜まりが発生する確率などを導出することができる現在の降水量に関する記述)に依存して、各対象物までの最小距離を算定するように構成されている。相応に、上述した境界条件及び場合により環境センサの汚染への影響を有し得る他の境界条件を考慮して、環境センサの汚染の、特に所期の通りの特に確実な最小化を達成することができる。
【0022】
さらに有利には、本発明に係る装置は、付加的に、評価ユニットの信号を受信し、当該信号に基づいて各対象物までの最小距離を調整するように構成された制御ユニットを有している。制御ユニット及び評価ユニットは、例えば、別個のコンポーネントとして又は統合されたコンポーネントとして構成されており、この場合、統合された構成としては、制御ユニット及び評価ユニットが同一の制御装置内にある配置であってもよいし、及び/又は、制御装置と評価ユニットとが同一のコンポーネント(例えば、マイクロコントローラ又はASIC)である構成であってもよい。制御ユニットによる最小距離の調整は、好適には、軌道、及び/又は、運転マヌーバ、特に回避マヌーバ、及び/又は、経路、及び/又は、車両の速度及び/又は加速度を自動的に調整することによって行われる。最小距離を調整するために、制御ユニットは、例えば情報技術的に、車両の駆動ユニット、特に車両のエンジン制御装置及び/又は操舵装置、及び/又は、運転者支援システム及び/又は(部分)自律運転モード用システムなどに接続されており、これにより、各制御命令を、最小距離を調整するこれらのコンポーネントへと出力することができる。代替的に又は付加的に、制御ユニットは、車両の運転者に対し、例えば、車両の光学インタフェース及び/又は音響インタフェースを介して、及び/又は、車両に情報技術的に結合されたユーザ端末(例えば、携帯電話機、タブレットコンピュータ、スマートウォッチなど)を介して情報を通知することによって、車両の走行開始及び/又は走行中断を提案するように構成されている。走行開始の変更及び/又は走行中断により、例えば、その時点での現在の交通渋滞状況及び/又は交通量が多い状況及び/又は大きい降水量を回避することができ、これにより、環境センサの汚染の、相応に、より強化された最小化を達成することができる。
【0023】
本発明の他の有利な一構成においては、評価ユニットは、環境センサの汚染の程度及び/又は種類を算定し、各対象物までの最小距離を、付加的に環境センサの汚染の程度及び/又は種類に依存して算定するように構成されている。この場合、最小距離を、より所期の通りに算定することができるようにするために、例えば、固体の汚染物、緩い汚染物、液体の汚染物、ペースト状の汚染物、強い付着性を有する汚染物又はさほど付着しない汚染物、水溶性の汚染物、非水溶性の汚染物を区別することができる。有利には、最小距離は、環境センサの実際の汚染の程度が大きくなるにつれて大きくなるように算定される。
【0024】
好適には、本発明に係る装置はさらに、少なくとも環境センサの視野に影響を与える構成を有する領域において環境センサを洗浄するように構成された洗浄ユニットを備えている。これは例えば、センサと環境との間の界面の領域であり、例えば、各測定信号が環境センサから出射される及び/又は出射可能である窓の領域である。洗浄ユニットは、例えば、圧力発生器(例えばポンプ)に接続されて、環境センサを洗浄するための空気及び/又は液体を環境センサの洗浄すべき領域へと出力し得る当該環境センサに関しての距離及び向きで配置されたノズルを含む。代替的に又は付加的に、洗浄ユニットは、例えば、洗浄すべき領域に接触し、駆動装置を用いて洗浄すべき領域にわたって案内されるように構成されたワイパエレメントを含む。評価ユニットはさらに、環境センサの汚染の程度が予め定められた閾値を超えた場合に、及び/又は、汚染の種類が1つ又は複数の予め定められたカテゴリに相当する場合に、洗浄ユニットの駆動によって環境センサの洗浄を開始するように構成されている。洗浄ユニットは、環境センサの機能を維持するために、現在の境界条件に基づいて(例えば、交通量の多さ及び/又は代替経路の欠如及び/又は降水状況などに基づいて)最小距離ベースの汚染回避ストラテジに基づく環境センサの汚染の最小化が十分でない場合に、特に有利に使用することができる。
【0025】
さらに有利には、評価ユニットは、最小距離を付加的に洗浄ユニットの既存の洗浄容量を考慮して算定するように構成されている。ここでは、特に、洗浄ユニットによって出力されるウォッシャ液の既存の残留量及び/又は洗浄ユニットの洗浄性能などを考慮することができる。
【0026】
本発明の他の有利な構成においては、評価ユニットは、現在の走行状況と対応する最小距離に関連して予め定められたデータセット内に格納されている走行状況との比較に基づいて、それぞれ適当な最小距離を算定するように構成されている。データセットは、例えば、情報技術的に評価ユニットに接続されたメモリユニット内に格納されている。評価ユニットは、例えば、その時点での現在の走行状況に対する最大の類似度を有するデータセット内の走行状況を算定するように構成されている。このために、例えば、各走行状況を十分に記述する特定のパラメータが設定され、算定される。これにより、例えば、従来技術から既知となっている類似度を適用することにより、データセットにおいて最大の類似度を有する走行状況を算定することができる。続いて、データセットにおいて算定された最も類似した走行状況に対して格納されている、走行状況に対応する最小距離が、評価ユニットによって読み出され、使用可能となる。特に有利には、評価ユニットは、より正確なデータ及び/又は時間に関してより新しいデータによって汚染の最小化を改善するために、機械学習法に基づいて、及び/又は、車両から離隔した位置から提供されたデータに基づいて、データセットを更新及び/又は拡張するように構成されている。
【0027】
代替的に又は付加的に、評価ユニットは、予め定められた環境基準が満たされている場合(例えば、現在の降水量、現在の交通量の多さ、現在の水溜まり、駐車場外における車両の使用及び/又は都市交通外における車両の使用など)、及び/又は、走行安全性が損なわれない場合、及び/又は、走行快適性が予め定められた範囲内においてのみ制限される場合にだけ、汚染を引き起こす車両の環境内の対象物に関する情報及び/又は適当な最小距離を算定するように、及び/又は、最小距離を表す信号を生成して供給するように構成されている。
【0028】
以下に、本発明の実施例を添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】車両に関連した、本発明に係る車両の環境センサの汚染を最小化するための装置の一実施形態を示す概略図である。
【
図2】本発明に係る装置を備えた車両の環境における例示的な交通状況を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の実施形態
図1には、車両20に関連した、本発明に係る、車両20の環境センサ10の汚染を最小化するための装置の一実施形態の概略図が示されており、ここでは、環境センサ10はLiDARセンサとして構成されており、車両20は乗用車として構成されている。
【0031】
車両20の環境センサ10の汚染を最小化するための装置は、ASICとして構成された評価ユニット30を有しており、この評価ユニット30は、ここではカメラとして構成されている別のセンサ50と、制御ユニット70と、洗浄ユニット80と、データセット90を含むメモリユニット95と、無線通信ユニット150とに、情報技術的に接続されている。
【0032】
上述したコンフィギュレーションに基づいて、評価ユニット30は、車両20の環境において、環境センサ10の視野の領域において環境センサ10の汚染を引き起こす可能性のある構成を有する対象物40(ここでは他車両)に関する情報を算定するように構成されている。対象物40の算定は、ここでは、環境センサ10自体の測定信号の評価によって、及び、付加的に他のセンサ50の測定信号の評価によって行われ、これにより、車両20の環境内の対象物40の検出及び識別における特に高い信頼性を保証することができる。
【0033】
さらに、評価ユニット30は、無線通信ユニット150を介して、車両として構成されている対象物40への無線通信コネクション60を形成するように構成されており、ここで、当該対象物40は無線通信加入者65として機能している。無線通信コネクション60を介して、評価ユニット30は、対象物40に関する情報及び/又は車両20の環境内の他の対象物40に関する情報を無線通信加入者65から受信し、汚染を引き起こす可能性のある対象物40を算定する際に使用するように構成されている。
【0034】
評価ユニット30はさらに、算定された対象物40に関する情報に基づいて、環境センサ10の汚染を最小化するために保持すべき各対象物40までの最小距離を算定するように構成されている。最小距離を算定する際には、特に車両20が走行している走行路140上に存在する湿分100が考慮されるが、当該湿分100は、車両20の環境内の走行している対象物40に関連して水しぶき110を発生させ、この水しぶきによって環境センサ10が汚染されてその検出能力が損なわれる可能性がある。
【0035】
評価ユニット30はさらに、現在の走行状況とメモリユニット95内のデータセット90内に格納されている複数の走行状況とを比較するように構成されている。比較の際には、類似性の尺度を使用してその時点での現在の走行状況との最大の一致度を有している走行状況が、データセット90において算定される。データセット90において識別された走行状況に対して、当該走行状況に対応する最小距離が格納されており、この最小距離も、評価ユニット30によって同様に、その時点での適当な最小距離を算定する際に考慮される。
【0036】
評価ユニット30は、付加的に、算定された最小距離を表す信号を生成し、この信号を制御ユニット70へ供給するように構成されており、制御ユニット70自体は、車両20の速度及び/又は車両20の軌道を自動的に調整することによって、信号に基づいて最小距離を調整するように構成されている。
【0037】
評価ユニット30はさらに、環境センサ10の汚染の程度を算定し、算定された汚染の程度が予め定められた閾値を超えると直ちに洗浄ユニット80を駆動して環境センサ10の洗浄を動作させるように構成されている。
【0038】
図2には、本発明に係る装置(図示せず)を備えた車両20の環境における例示的な交通状況の概略図が示されている。
【0039】
図1に即して説明したように構成されている本発明に係る装置の評価ユニット30は、この場合、車両20の環境内において評価ユニット30を用いて算定された各対象物40に対して、対象物40の種類及び大きさに対応する汚染ゾーン120を付加的にそれぞれ算定するように構成されている。
【0040】
各汚染ゾーン120は、
図1に即して説明した車両20の環境センサ10に作用し得る対象物40によって汚染が引き起こされ得る、対象物40を取り巻く領域を表現している。
【0041】
したがって、車両20によって各汚染ゾーン120が回避されれば、環境センサ10の汚染が防止される。
【0042】
車両20の周囲にはさらに、第1の車両ゾーン130、第2の車両ゾーン132及び第3の車両ゾーン134が規定されており、これらの車両ゾーン130,132,134は、評価ユニット30により、本発明に従って対象物40までの適当な距離を算定する際に、各汚染ゾーン120に関連して考慮される。
【0043】
評価ユニット30がその時点での現在の境界条件を考慮して車両20から対象物40までの最小距離を算定することができ、この最小距離に基づいて各汚染ゾーン120と第1の車両ゾーン130との交差を回避することができる場合には、環境センサ10の汚染を確実に回避することができる。
【0044】
算定された最小距離によって第2の車両ゾーン132及び第3の車両ゾーン134と各汚染ゾーン120との交差しか回避することができない場合には、相応に、環境センサ10の低度の汚染を想定すべきである。
【0045】
算定された最小距離によって第3の車両ゾーン134と各汚染ゾーン120との交差しか回避することができない場合においては、相応に、環境センサ10の中程度の汚染を想定すべきである。
【0046】
算定された最小距離によって第3の車両ゾーン134と各汚染ゾーン120との交差が回避することができない場合には、相応に、環境センサ10の強い汚染を想定すべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(20)の環境センサ(10)の汚染を最小化するための装置であって、
・評価ユニット(30)
を備え、前記評価ユニット(30)は、
・前記環境センサ(10)の視野の領域において前記環境センサ(10)の汚染を引き起こす可能性のある構成を有する、前記車両(20)の環境内の対象物(40)に関する情報を算定し、
・算定された情報に基づいて、前記環境センサ(10)の汚染を最小化するために保持すべき各対象物(40)までの最小距離を算定し、
・算定された最小距離を表す信号を生成して供給する
ように構成されている、装置。
【請求項2】
前記評価ユニット(30)は、前記車両(20)の環境内の対象物(40)に関する情報を、
・前記環境センサ(10)、及び/又は、
・前記環境センサ(10)とは異なる、前記車両の別のセンサ(50)
に基づいて算定するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記評価ユニット(30)は、前記車両(20)の環境内の対象物(40)に関する情報を無線通信コネクション(60)に基づいて算定するように構成されており、前記無線通信コネクション(60)を介して、前記評価ユニット(30)は、前記車両(20)から離隔した位置にある無線通信加入者(65)から前記対象物(40)に関する情報を受信するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記車両(20)から離隔した位置にある無線通信加入者(65)は、
・他の道路利用者、及び/又は、
・交通情報システム及び/又は交通管理システム、及び/又は、
・気象サービス、及び/又は、
・クラウドサービス
である、
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記評価ユニット(30)は、
・前記車両(20)における前記環境センサ(10)の配置位置及び/又はタイプ及び/又は配向、及び/又は、
・前記対象物(40)の特徴、及び/又は、
・前記車両(20)の車両パラメータ及び/又は動作パラメータ、及び/又は、
・前記車両(20)に対する前記対象物(40)の相対運動の予測及び/又は相対速度の予測、及び/又は、
・前記車両(20)及び/又は前記対象物の位置及び/又は走行方向、及び/又は、
・道路の種類及び/又は走行路(140)の状態、及び/又は、
・前記車両(20)の計画された運転マヌーバ、及び/又は、
・交通量、及び/又は、
・前記車両(20)の能動的な経路ガイド、及び/又は、
・経路パラメータ、及び/又は、
・気象情報
に依存して、前記各対象物(40)までの最小距離を算定するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記装置はさらに、
前記車両(20)の
・軌道、及び/又は、
・運転マヌーバ、及び/又は、
・経路、及び/又は、
・速度及び/又は加速度
を自動的に調整することによって、及び/又は、
前記車両(20)のための
・走行開始及び/又は走行中断
を提案することによって、前記評価ユニット(30)の信号を受信し、当該信号に基づいて前記各対象物(40)までの最小距離を調整するように構成された制御ユニット(70)を有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記評価ユニット(30)は、
・前記環境センサ(10)の汚染の程度及び/又は種類を算定し、
・前記各対象物(40)までの最小距離を、付加的に、前記環境センサ(10)の汚染の程度及び/又は種類に依存して算定する
ように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記装置がさらに、洗浄ユニット(80)を備えており、
・前記洗浄ユニット(80)は、少なくとも前記環境センサ(10)の視野に影響を与える構成を有する領域において前記環境センサ(10)を洗浄するように構成されており、
・前記評価ユニット(30)は、前記環境センサ(10)の前記汚染の程度が予め定められた閾値を超えた場合に、及び/又は、前記汚染の種類が1つ又は複数の予め定められたカテゴリに相当する場合に、前記洗浄ユニット(80)の駆動によって前記環境センサ(10)の洗浄を開始するように構成されている、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記評価ユニット(30)は、前記最小距離を付加的に前記洗浄ユニット(80)の既存の洗浄容量を考慮して算定するように構成されている、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記評価ユニット(30)は、
・現在の走行状況と対応する最小距離に関連して予め定められたデータセット(90)内に格納されている走行状況との比較に基づいて、それぞれ適当な最小距離を算定するように、及び/又は、
・前記データセット(90)を、機械学習法に基づいて、及び/又は、前記車両(20)から離隔した位置から提供されたデータに基づいて、更新及び/又は拡張するように
構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記評価ユニット(30)は、
・予め定められた環境基準が満たされている場合、及び/又は、
・走行安全性が損なわれない場合、及び/又は、
・走行快適性が予め定められた範囲内においてのみ制限される場合
にだけ、汚染を引き起こす前記車両(20)の環境内の対象物(40)に関する情報及び/又は適当な最小距離を算定するように、及び/又は、前記最小距離を表す信号を生成して供給するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【外国語明細書】