(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146910
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】転写式硬化性樹脂シート、車両及び車両部品
(51)【国際特許分類】
B44C 1/165 20060101AFI20241004BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241004BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20241004BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20241004BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B44C1/165 A
B32B27/00 E
C09D201/00
C09D175/04
C09D133/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024057104
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2023059633
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】内田 かずほ
【テーマコード(参考)】
3B005
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
3B005EB01
3B005EB09
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3B005GB01
4F100AK01A
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4J038PB07
(57)【要約】
【課題】塗料層を傷つけずに転写層を剥離することができる転写式硬化性樹脂シート、並びにその転写式硬化性樹脂シートを用いて塗装された車両及び車両部品を提供する。
【解決手段】本発明は、熱、活性エネルギー線又は湿気により硬化可能な硬化性樹脂組成物を含む塗料層10と塗料層10の一方の面に設けられ、熱可塑性樹脂を含む転写層20とを備える転写式硬化性樹脂シート1であり、転写式硬化性樹脂シート1は、本体部2と、本体部2から面方向に突出した突起部3とを備え、突起部3の塗料層10が積層方向に転写層20まで切り抜かれた切欠き部4を有し、切欠き部4が少なくとも突起部3の本体部2側に形成されている。車両及び車両部品は、本発明の転写式硬化性樹脂シートを用いて塗装されたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱、活性エネルギー線又は湿気により硬化可能な硬化性樹脂組成物を含む塗料層と、前記塗料層の一方の面に設けられ、熱可塑性樹脂を含む転写層とを備える転写式硬化性樹脂シートであって、
前記転写式硬化性樹脂シートは、本体部と、前記本体部から面方向に突出した突起部とを備え、
前記突起部の塗料層が積層方向に転写層まで切り抜かれた切欠き部を有し、前記切欠き部が少なくとも突起部の本体部側に形成されている、転写式硬化性樹脂シート。
【請求項2】
前記切欠き部が幅方向全体にわたって連続的に形成される請求項1に記載の転写式硬化性樹脂シート。
【請求項3】
前記突起部は前記塗料層を備えない請求項1に記載の転写式硬化性樹脂シート。
【請求項4】
前記突起部は、前記塗料層側に、180°折り曲げられている請求項1に記載の転写式硬化性樹脂シート。
【請求項5】
鋼板試験片と前記塗料層との界面の剥離強度B(N/25mm)に対する前記転写層と前記塗料層との界面の剥離強度A(N/25mm)の比(A/B)が0.5以下である請求項1に記載の転写式硬化性樹脂シート。
【請求項6】
前記転写層と前記塗料層との界面の剥離強度Aが2N/25mm以下である請求項1に記載の転写式硬化性樹脂シート。
【請求項7】
前記塗料層が、着色剤を含まないクリア層と、前記クリア層の前記転写層側とは反対側に設けられ、着色剤を含むカラー層とを含む請求項1に記載の転写式硬化性樹脂シート。
【請求項8】
前記硬化性樹脂組成物が、(メタ)アクリル樹脂(A)とブロックイソシアネート(B)を含む請求項1に記載の転写式硬化性樹脂シート。
【請求項9】
ゲル分率が50%以下である請求項1に記載の転写式硬化性樹脂シート。
【請求項10】
前記転写層が、環状オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む請求項1項に記載の転写式硬化性樹脂シート。
【請求項11】
3次元形状に賦形されている請求項1に記載の転写式硬化性樹脂シート。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の転写式硬化性樹脂シートを用いて塗装された車両。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の転写式硬化性樹脂シートを用いて塗装された車両部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装に使用する転写式硬化性樹脂シート、並びにその転写式硬化性樹脂シートを用いて塗装された車両及び車両部品に関する。
【背景技術】
【0002】
家具や鋼板、車両のボディーなどには、意匠性や耐久性の観点から塗装や装飾が施される。装飾は、例えば、加飾フィルムなどのフィルムを用いて行われることが知られている。加飾フィルムは、一般的に、加飾用の樹脂層を保護するための保護層や、樹脂層を転写する際に基材となる離型層などが設けられ、これら離型層、保護層を剥離しながら、樹脂層を対象物に転写させる。また、意匠性、耐久性を高めるために、樹脂層が、2層以上の多層構造を有することもある。
【0003】
上記の通り、加飾フィルムは、多くの層で構成されるために、保護層や離型層を剥離する際に意図しない界面で剥離され施工が難しいことがある。また、立体形状を有する物品に対して貼り付ける際に、対象物の形状に十分に追従できないことがある。さらには、加飾フィルムは、対象物に対する接着が一般的に粘着層で行われることが多く、対象物からの剥がれや浮き等が発生することも多い。
【0004】
例えば、特許文献1には、加飾フィルムとして、離型性支持体と、転写層と、装飾層と、粘着層と、剥離フィルムとがこの順に積層される転写シートが開示される。この転写シートでは、転写層が、粘着剤と電離放射線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の何れかを含有し、かつ離型性支持体と転写層との間の剥離強度が、剥離フィルムと粘着層との間の剥離強度よりも大きいことが示されている。また、転写フィルムは、離型性支持体が剥離される前に、電離放射線が照射され、又は加熱されることで、離型性支持体と転写層との間の剥離強度が低くされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の加飾フィルムは、離型性支持体と剥離フィルムの剥離強度が上記のように調整されることで、離型性支持体や離型フィルムを剥離する際の意図しない界面での剥離を防止することができる。
しかし、特許文献1の方法によれば、加飾フィルムを被着体に貼り付けた後、離型性支持体と剥離フィルムを剥離する際、装飾層を手で引っ掻いて装飾層を傷つけてしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、塗料層を傷つけずに転写層を剥離することができる転写式硬化性樹脂シート、並びにその転写式硬化性樹脂シートを用いて塗装された車両及び車両部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、転写式硬化性樹脂シートに突起部を設けるとともに、突起部の塗料層を切り欠くことで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]熱、活性エネルギー線又は湿気により硬化可能な硬化性樹脂組成物を含む塗料層と、前記塗料層の一方の面に設けられ、熱可塑性樹脂を含む転写層とを備える転写式硬化性樹脂シートであって、前記転写式硬化性樹脂シートは、本体部と、前記本体部から面方向に突出した突起部とを備え、前記突起部の塗料層が積層方向に転写層まで切り抜かれた切欠き部を有し、前記切欠き部が少なくとも突起部の本体部側に形成されている、転写式硬化性樹脂シート。
[2]前記切欠き部が幅方向全体にわたって連続的に形成される上記[1]に記載の転写式硬化性樹脂シート。
[3]前記突起部は前記塗料層を備えない上記[1]又は[2]に記載の転写式硬化性樹脂シート。
[4]前記突起部は、前記塗料層側に、180°折り曲げられている上記[1]又は[2]に記載の転写式硬化性樹脂シート。
[5]鋼板試験片と前記塗料層との界面の剥離強度B(N/25mm)に対する前記転写層と前記塗料層との界面の剥離強度A(N/25mm)の比(A/B)が0.5以下である上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の転写式硬化性樹脂シート。
[6]前記転写層と前記塗料層との界面の剥離強度Aが2N/25mm以下である上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の転写式硬化性樹脂シート。
[7]前記塗料層が、着色剤を含まないクリア層と、前記クリア層の前記転写層側とは反対側に設けられ、着色剤を含むカラー層とを含む上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の転写式硬化性樹脂シート。
[8]前記硬化性樹脂組成物が、(メタ)アクリル樹脂(A)とブロックイソシアネート(B)を含む上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の転写式硬化性樹脂シート。
[9]ゲル分率が50%以下である上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の転写式硬化性樹脂シート。
[10]前記転写層が、環状オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の転写式硬化性樹脂シート。
[11]3次元形状に賦形されている上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の転写式硬化性樹脂シート。
[12]上記[1]~[11]のいずれか1つに記載の転写式硬化性樹脂シートを用いて塗装された車両。
[13]上記[1]~[11]のいずれか1つに記載の転写式硬化性樹脂シートを用いて塗装された車両部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗料層を傷つけずに転写層を剥離することができる転写式硬化性樹脂シート、並びにその転写式硬化性樹脂シートを用いて塗装された車両及び車両部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1(a)は、本発明の一実施形態の転写式硬化性樹脂シートの平面図であり、
図1(b)は
図1(a)のA-A断面図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の一実施形態の転写式硬化性樹脂シートの変形例の平面図であり、
図2(b)は
図2(a)のA-A断面図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の一実施形態の転写式硬化性樹脂シートのさらに好ましい形態の平面図であり、
図3(b)は
図3(a)のA-A断面図である。
【
図4】
図4(a)及び(b)は、本発明の一実施形態の転写式硬化性樹脂シートを用いた塗装方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態の転写式硬化性樹脂シートの変形例を示す図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の一実施形態の転写式硬化性樹脂シートの変形例の平面図であり、
図6(b)は
図6(a)のA-A断面図である。
【
図7】
図7(a)及び(b)は、本発明の一実施形態の転写式硬化性樹脂シートの変形例の平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態の転写式硬化性樹脂シートの変形例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[転写式硬化性樹脂シート]
以下、
図1を参照して、本発明の一実施形態の転写式硬化性樹脂シートを説明する。本発明の一実施形態の転写式硬化性樹脂シート1は、熱、活性エネルギー線又は湿気により硬化可能な硬化性樹脂組成物を含む塗料層10と、塗料層10の一方の面に設けられ、熱可塑性樹脂を含む転写層20とを備える。そして、転写式硬化性樹脂シート1は、本体部2と、本体部2から面方向に突出した突起部3とを備え、突起部3の塗料層10が積層方向に転写層20まで切り抜かれた切欠き部4を有し、切欠き部4が少なくとも突起部3の本体部2側に形成されている。これにより、塗料層10を傷つけずに転写層20を剥離することができる。
【0012】
(塗料層)
塗料層10は、熱、活性エネルギー線又は湿気により硬化可能な硬化性樹脂組成物を含む。硬化性樹脂組成物は、熱、活性エネルギー線又は湿気により硬化可能な硬化性樹脂を含むとよいが、熱により硬化可能な熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。また、硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線により硬化可能な活性エネルギー線硬化性樹脂を含んでもよいし、湿気により硬化可能な湿気硬化性樹脂を含んでもよい。
硬化性樹脂としては、特に限定されないが、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられ、これらのなか中でも(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0013】
硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂の場合、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、特に限定されないが、イソシアネート化合物が好ましく、中でもブロックイソシアネートが好ましい。一方で、硬化性樹脂が、活性エネルギー線硬化性樹脂又は湿気熱硬化性樹脂の場合には、硬化性樹脂組成物は硬化剤を含まなくてもよい。
したがって、塗料層10用の硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリル樹脂とブロックイソシアネートを含むことが好ましい。塗料層10は、(メタ)アクリル樹脂とブロックイソシアネートを含有することで、所望の柔軟性を有しやすくなり、被塗装物への密着性や接着強度などを良好にしやすくなる。また、加熱硬化による硬化後は高硬度にしやすくなり、硬化後の塗装の耐擦傷性なども良好となる。
【0014】
硬化性樹脂組成物に使用される(メタ)アクリル樹脂としては、複数個の官能基を有する(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。官能基は、熱、活性エネルギー線又は湿気により反応することが可能な基である。
(メタ)アクリル樹脂が、熱硬化性樹脂の場合、官能基としては、好ましくは硬化剤が含有する反応性基(例えば、イソシアネート基)と反応する官能基が挙げられ、具体的には、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などが挙げられる。(メタ)アクリル樹脂は、官能基を1種類のみ有していてもよいし、2種類以上有していてもよい。これらの中では、(メタ)アクリル樹脂は、水酸基を有することが好ましい。したがって、(メタ)アクリル樹脂は、複数個の水酸基を有する(メタ)アクリルポリオールを含むことが好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂が、活性エネルギー線硬化性樹脂の場合、活性エネルギー線により反応することが可能な基としては、(メタ)アクリロイル基などの反応性二重結合を有する基等が挙げられる。
【0015】
(メタ)アクリル樹脂は、熱硬化性樹脂の場合、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などの上記の官能基を有する官能基含有モノマーを含むモノマー混合物を重合することにより得られるアクリル重合体である。また、モノマー混合物は、スチレン誘導体モノマーなどの(メタ)アクリル酸エステルモノマー及び官能基含有モノマー以外を含んでもよい。なお(メタ)アクリルとは、メタクリル又はアクリルを意味し、他の類似する用語も同様である。
【0016】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、上記した官能基を有しない(メタ)アクリル酸エステルモノマーが挙げられ、アルキル基の炭素数が1~18程度のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの芳香族環を有する(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、官能基含有モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、2-アミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリル酸などが挙げられる。
また、(メタ)アクリル樹脂としては、上記したアクリル重合体と、他の単量体又は重合体とをブロックまたはグラフト重合して得た共重合体を用いてもよい。
さらに、(メタ)アクリル樹脂としては、上記したアクリル重合体の官能基に、官能基に反応可能な反応性基と、(メタ)アクリロイル基とを有する(メタ)アクリロイル基含有化合物を反応させて、アクリル重合体に(メタ)アクリロイル基を含有させてもよい。
【0017】
硬化性樹脂組成物は、上記(メタ)アクリル樹脂として、重量平均分子量(Mw)が50,000以上、1,000,000以下で固体状であり、かつ複数個の官能基を有する(メタ)アクリル樹脂(以下、高分子量の(メタ)アクリル樹脂ともいう)を含むことが好ましい。(メタ)アクリル樹脂は、重量平均分子量が上記範囲内のものを含むことで、硬化前であっても塗料層を一定の形状に維持しやすくなり、転写層などの上に適切に形成しやすくなる。また、塗料層にタック性と伸張性なども付与しやすくなる。塗料層は、タック性及び伸張性を有することで、真空成形の際に形状追従性が良好になり、また色むらなども生じ難くなる。さらに、重量平均分子量が上記範囲内であると硬化後の樹脂層の硬度も高くしやすくなる。上記重量平均分子量は、好ましくは100,000以上、500,000以下であり、より好ましくは120,000以上、400,000以下である。
なお、本明細書において重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるものであり、標準ポリスチレン換算値として求められる。また、固体状であるとは、常温(23℃)及び常圧(1気圧)で固体であるものをいう。
【0018】
上記した高分子量の(メタ)アクリル樹脂は、複数個の水酸基を有する(メタ)アクリルポリオールであることが好ましい。(メタ)アクリルポリオールは、上記の通り、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、水酸基含有モノマーを含むモノマー混合物を重合することで得ることができる。
硬化性樹脂組成物において、(メタ)アクリル樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
塗料層10における、塗料層全量に対する、(メタ)アクリル樹脂の含有量は、特に限定されないが、例えば、15質量%以上、好ましくは18質量%以上、より好ましくは22質量%以上である。塗料層10は、(メタ)アクリル樹脂を一定量以上含有することで塗料層10の塗工性、硬化性などを良好にしやすくなり、柔軟性が高くなりすぎたりすることも防止できる。
また、塗料層10における(メタ)アクリル樹脂の含有量は、特に限定されないが、例えば、75質量%以下、好ましくは65質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。(メタ)アクリル樹脂の含有量を上限値以下とすることによって、後述する可塑化樹脂や硬化剤を所定量以上含有させることで、所望の硬化性を付与しやすくなる。
【0020】
硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂として、上記した高分子量の(メタ)アクリル樹脂に加えて、重量平均分子量が50,000未満である樹脂(以下、可塑化樹脂ともいう)を含有してもよい。
硬化性樹脂組成物は、高分子量の(メタ)アクリル樹脂に加えて、重量平均分子量が低い可塑化樹脂を含有することで、塗工性、硬化性、タック性、伸張性などをバランスよく良好にしやすくなる。また、被塗装物に対する濡れ性を向上させて、被塗装物に対する接着強度を高めることができる。
【0021】
可塑化樹脂としては、高分子量の(メタ)アクリル樹脂と相溶可能であり、熱硬化可能、活性エネルギー線硬化可能もしくは湿気硬化可能な官能基を有するものが好ましい。可塑化樹脂に使用される樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂が挙げられ、中でも(メタ)アクリル樹脂あるいはポリカーボネート樹脂が好ましい。
可塑化樹脂として使用される(メタ)アクリル樹脂としては、熱硬化性樹脂の場合、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などの官能基を有するオリゴマーが挙げられる。可塑化樹脂として使用される(メタ)アクリル樹脂としては、例えば上記(メタ)アクリル樹脂で述べたとおりであり、好ましくは複数個の水酸基を有する(メタ)アクリルポリオールが使用される。また、カルボキシル基を有するポリ(メタ)アクリレートも好ましい。また、ポリカーボネート樹脂としては、ポリカーボネートポリオールが好ましい。
一方で、活性エネルギー線硬化性の場合には、可塑化樹脂は、(メタ)アクリロイル基などの反応性二重結合を有する基を有する樹脂(好ましくは(メタ)アクリル樹脂)であるとよい。
可塑化樹脂の重量平均分子量は、好ましくは450以上、30,000以下であり、より好ましくは1000以上、20,000以下である。
また、可塑化樹脂は、常温かつ常圧で液体であることが望ましい。
可塑化樹脂としては、複数個の水酸基を有する(メタ)アクリルポリオール又はポリカーボネートポリオールの少なくともいずれかが好ましい。
【0022】
塗料層10における、塗料層全量に対する、可塑化樹脂の含有量は、特に限定されないが、例えば2質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは6質量%以上であり、また、例えば35質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。塗料層10は、可塑化樹脂を一定量以上含有することで、塗料層10のガラス転移温度を低くしやすくなる。また、可塑化樹脂の含有量を上記下限値以上上限値以下とすることで、各種性能をバランス良く良好にしやすくなる。さらに、被塗装物に対する濡れ性を向上させて、被塗装物に対する剥離強度を高めやすくなる。
【0023】
また、硬化性樹脂が湿気硬化性樹脂である場合には、上記で説明した硬化性樹脂の代わりに、以下の湿気硬化性樹脂を使用してもよい。湿気硬化性樹脂としては、例えば、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーが挙げられる。末端にイソシアネート基を有するプレポリマーは、例えば、ポリイソシアネートと活性水素含有化合物及び/又は活性水素含有ポリマーとを反応させて得られるものが挙げられる。
末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを調製するに際して使用されるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、粗製トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、カーバジイミド化ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が用いられ、好ましくはポリメチレンポリフェニルイソシアネートが用いられる。
【0024】
前記した活性水素含有化合物、活性水素含有ポリマーとしては、例えば、次のようなものが使用される。
エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヒマシ油、ジグリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の活性水素含有化合物、及び上述の活性水素含有化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、テトラハイドロフラン等のアルキレンオキシド類の単独もしくは混合物を付加重合して得られる末端水酸基2個以上を有する平均分子量3,000以下平均官能基数2以上、好ましくは平均分子量200~1,000平均官能基数2~2.5の活性水素含有ポリマーが使用される。その他ポリエステルポリオール、油変性ポリエステルポリオール、ポリε-カプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール、アクリルポリオール、ポリアミン、ポリアミド、尿素樹脂及びメラミン樹脂等の平均分子量3,000以下、平均官能基数1.5以上、好ましくは平均分子量200~1,000で平均官能基数2~2.5の活性水素含有ポリマーも併用することが出来る。
末端イソシアネート基を有するプレポリマーは、例えば有効NCO含有率が1~15質量%、好ましくは8~13質量%である。
【0025】
末端イソシアネート基を有するプレポリマーは上記ポリイソシアネートと上記活性水素含有ポリマーを含めた通常のポリオールを、イソシアネート過剰の条件下で40℃~90℃、好ましくは55℃~75℃の温度で湿気を遮断した系で、ウレタン化反応を行なうことで合成できる。
【0026】
上述のウレタン化反応は、通常有機溶剤中で行われ、かかる溶剤としては、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、その他一般に塗料用溶剤として用いられるものが使用される。ウレタン化反応は、触媒を用いる事もでき、このような触媒としては、例えばトリエチルアミン、ジメチルアニリンなどの3級アミン系触媒、又はスズ、亜鉛などの金属系触媒が用いられる。これらは塗膜形成時に空気中の水分と反応する際の触媒にもなる。
【0027】
硬化剤として使用されるブロックイソシアネートは、イソシアネート基が保護基によりブロックされた化合物であり、高温に曝されると、保護基(ブロック部分)が熱解離して外れ、生じたイソシアネート基と、上記した硬化性樹脂における官能基(典型的には、ポリオールの水酸基)との間で硬化反応が生じる。ブロックイソシアネートは、例えば、一分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物に対してブロック化剤を反応させて得ることができる。
上記一分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、特に制限されないが、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、あるいはこれらの変性体などが挙げられる。
ブロック化剤としては、例えば、ピラゾール、フェノール類、オキシム、ラクタム、マロン酸エステルなどが挙げられる。
硬化性樹脂組成物におけるブロックイソシアネートの含有量は、ブロックイソシアネートにおけるイソシアネート基の数に対する、硬化性樹脂における官能基の数が好ましく0.4以上1.8以下、より好ましくは0.6以上1.5以下となるように調整されるとよい。
【0028】
塗料層10における、塗料層全量に対する、ブロックイソシアネートの含有量は、特に限定されないが、例えば15質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上であり、また、例えば65質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。ブロックイソシアネートの含有量を上記下限値以上とすることで、硬化性を良好にしつつ、ガラス転移温度を低くしやすくなる。また、上記上限値以下とすることで、ガラス転移温度が必要以上に低くなったり、各種物性が低下したりことを防止できる。
【0029】
塗料層10用の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂及び硬化剤以外に、塗料層10から形成される塗装に要求される性能に応じた成分が適宜含有されるとよく、例えば、塗料層10により形成される塗装を着色塗装とする場合には、顔料、染料、光輝材などの着色剤を含有させ塗料層10を着色層とするとよい。また、塗料層10により形成される塗装を遮熱塗装とする場合には、硬化性樹脂組成物に遮熱材料を含有させ、塗料層10を遮熱層とするとよい。さらに、塗料層10は、後述するクリア層からなるものとしてもよい。
これらの中では、硬化性樹脂組成物は、少なくとも着色剤を含有することが好ましい。
【0030】
着色剤に使用される顔料としては、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物顔料、カーボンブラック、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトなどの無機系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、バット系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサン系顔料、インジゴ系顔料などの有機系顔料が挙げられるが、これらには限定されない。
染料としては、公知の染料を使用でき、アゾ系染料、アントラキノン系染料、インジゴイド系染料、スチルベン系染料等が挙げられる。
光輝材は、塗料層10に光輝性を付与することができる化合物であり、多方向から観察して光沢を示す性質を付与することができる化合物である。光輝材としては、特に限定されないが、天然マイカ、合成マイカ、アルミナフレーク、ガラスフレークなどの表面に、酸化チタン層を設けた化合物などが挙げられる。
塗料層10は、着色剤として、顔料又は光輝材の少なくともいずれかを含有することがより好ましく、顔料を含有することがさらに好ましい。また、塗料層10は、顔料と光輝材の両方を含有することも好ましい。
硬化性樹脂組成物における着色剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、固形分基準で、0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、そして好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。
また、硬化性樹脂組成物には、着色剤や遮熱材料以外にも、無機充填剤、硬化触媒、硬化促進剤、表面調整剤、消泡剤、架橋剤、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、防錆剤、難燃剤などの添加剤が適宜含有されてもよい。
【0031】
塗料層10の厚みは、特に限定されないが、例えば10μm以上200μm以下、好ましくは20μm以上100μm以下である。
【0032】
(転写層)
転写式硬化性樹脂シート1における転写層20は、塗料層10を傷つきや異物付着から保護し、また、塗料層10を被塗装物30(
図4参照)に貼り付ける際に支持体となる部材である。転写層20は、樹脂フィルムより形成されることが好ましい。樹脂フィルムに使用される樹脂は、熱可塑性樹脂である。
樹脂フィルムに使用される樹脂としては、具体的には、環状ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、軟質塩化ビニル樹脂などの塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリメチルペンテン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂などが挙げられる。
環状ポリオレフィン樹脂は、環状オレフィンに由来する構造単位を含む重合体である。また、ポリオレフィン樹脂は、環状ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂であり、具体的には、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)などが挙げられる。ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが挙げられる。
これらの樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの樹脂の中で、真空成型性、転写性の観点から環状オレフィン樹脂、PET、PBT、PVC、ABS、PE及びPPが好ましい。
【0033】
転写層20は、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤等の離型剤で、少なくとも一方の表面が離型処理されたものであってもよい。転写層20が離型処理される場合、離型処理面は塗料層10側の表面を構成することが好ましい。ただし、転写層20は、塗料層10から剥離できる限り、離型処理がなされてなくてもよい。
転写層20の厚みは、特に限定されないが、例えば10μm以上1000μm以下、好ましくは20μm以上600μm以下、より好ましくは30μm以上400μm以下である。
【0034】
(保護層)
本発明の一実施形態転写式硬化性樹脂シートは、
図2に示すように、塗料層10の転写層20側の反対側に設けられた保護層40をさらに備えてもよい。保護層40は、塗料層10を傷つきや異物付着から保護する部材である。保護層40は、樹脂フィルムより形成されることが好ましい。保護層40に使用される熱可塑性樹脂の具体例としては、上記転写層20で使用できる樹脂と同じであるが、中でも、ポリエステル樹脂が好ましい。
保護層40を形成する樹脂フィルムは、1層単層からなる単層フィルムでもよいが、2層以上の多層フィルムでもよい。
保護層40に使用される樹脂フィルムは、延伸した樹脂フィルムであってもよいし、延伸していない無延伸の樹脂フィルムであってもよいが、無延伸の樹脂フィルムであることが好ましい。
保護層40は、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤等の離型剤で、少なくとも一方の表面が離型処理されたものであってもよい。保護層40が離型処理される場合、離型処理面は、塗料層10側の表面を構成することが好ましい。保護層40は、離型処理されることで塗料層10からの剥離性を良好にしやすくなる。ただし、保護層40は、塗料層10から剥離できる限り、離型処理がなされてなくてもよい。
保護層40の厚みは、特に限定されないが、例えば10μm以上1000μm以下、好ましくは30μm以上700μm以下、より好ましくは50μm以上500μm以下である。
保護層40は、
図2(b)に示すとおりに、塗料層10とともに、切り欠けられており、本体部2における保護層40と、突起部3における保護層40は、切欠き部4を介して分離しているとよい。このように保護層40が分離すると、本体部2側の保護層40を剥離しても、突起部3における保護層40は、塗料層10の上に残すことができる。そのため、突起部3における保護層40を残したまま転写式硬化性樹脂シートを被塗装物に貼り付けることで、突起部3の塗料層10が誤って被塗装物に貼り付けられたり、剥離する際に塗料層10が指や剥離装置に粘着したりすることを防止できる。
【0035】
(本体部)
本発明の一実施形態における転写式硬化性樹脂シート1の本体部2は、被塗装物に貼り付けられた後、転写層20を剥離することにより、被塗装物を塗装する。
【0036】
(突起部)
本発明の一実施形態における転写式硬化性樹脂シート1は、本体部2から面方向に突出した突起部3を備える。転写式硬化性樹脂シート1が突起部3を備えていないと、転写層20を剥離する際の剥離の起点がないので、転写層20を剥離することが難しい場合がある。さらに、突起部3における塗料層10は、積層方向に転写層20まで切り抜かれた切欠き部4を有し、切欠き部4は、一態様において、突起部3の本体部2側に形成されている。切欠き部4は、より詳細には突起部3の領域のうち、本体部との境界部分5に設けられるとよい。
そして、一態様において、切欠き部4は、
図1に示すように、境界部分5で、突起部3の幅方向全体(すなわち、境界部分5全体)に渡って連続的に形成されているとよい。このような構成により、本体部2における塗料層10と、突起部3における塗料層10は分離する。したがって、突起部3を摘まんで、本体部2における転写層20を剥離するとき、突起部3の塗料層10と一緒に本体部2の塗料層の一部が剥離してしまうことを防止できる。
【0037】
また、転写層20を剥離するとき、塗料層10が本体部2と突起部3で縁切りできていればよく、好ましくは1mm以上のクリアランス、より好ましくは2mm以上であり、更に好ましくは突起部3は塗料層10を備えていない状態である。
ここで、切欠き部4は、少なくとも突起部3の本体部2側に形成されていれば、さらに別の領域まで広がっていてもよく、中でも突起部3の全体に広がっていることが好ましい。すなわち、溶剤のふき取り等の観点から、
図3に示す転写式硬化性樹脂シート1Bのように、突起部3が塗料層10を備えないことがさらに好ましい。
突起部3は、例えば、切削加工、レーザー加工などにより形成することができる。また、突起部3の塗料層10における切欠き部4は、例えば、レーザー加工により形成することができる。
【0038】
本体部から突出する方向の突起部3の長さは、突起部3を指や剥離装置で摘まむことができれば、特に限定されないが、好ましくは5~50mmであり、より好ましくは7~30mmである。また、本体部から突出する方向に対する垂直方向の突起部3の長さ、すなわち、突起部3の幅は、突起部3を指や剥離装置で摘まむことができれば、特に限定されないが、好ましくは5~50mmであり、より好ましくは7~30mmである。
【0039】
(剥離強度)
本発明の一実施形態における転写式硬化性樹脂シート1において、鋼板試験片と塗料層10との界面の剥離強度B(N/25mm)に対する転写層20と塗料層10との界面の剥離強度A(N/25mm)の比(A/B)は、好ましくは0.5以下である。上記剥離強度の比(A/B)が0.5以下であると、転写式硬化性樹脂シート1を被塗装物に貼り付けた後、転写層20を剥離したとき、塗料層10も一緒に剥離することを抑制することができる。このような観点から、上記剥離強度の比(A/B)は、好ましくは0.45以下であり、より好ましくは0.1以下であり、さらに好ましくは0.05以下であり、よりさらに好ましくは0.02以下である。上記剥離強度の比(A/B)の範囲の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.001である。なお、剥離強度は後述の実施例に記載の方法により測定することができる。上記剥離強度の比(A/B)は、例えば、転写層中の樹脂の組成、塗料層中の樹脂の組成などにより適宜調整できる。
【0040】
本発明の一実施形態における転写式硬化性樹脂シート1において、転写層20と塗料層10との界面の剥離強度Aは、好ましくは2N/25mm以下である。転写層20と塗料層10との界面の剥離強度Aが2N/25mm以下であると、転写式硬化性樹脂シート1を被塗装物に貼り付けた後、転写層20を塗料層10から容易に剥離することができる。このような観点から、転写層20と塗料層10との界面の剥離強度Aは、より好ましくは1.5N/25mm以下であり、さらに好ましくは1.0N/25mm以下であり、よりさらに好ましくは0.8N/25mm以下である。転写式硬化性樹脂シート1を被塗装物に貼り付ける前に、転写層20が塗料層10から剥離することを抑制するという観点から、転写層20と塗料層10との界面の剥離強度Aは、好ましくは0.05N/25mm以上であり、より好ましくは0.1N/25mm以上であり、さらに好ましくは0.15N/25mm以上である。なお、剥離強度は後述の実施例に記載の方法により測定することができる。上記剥離強度は、転写層中の樹脂の組成、塗料層中の樹脂の組成などにより適宜調整できる。
【0041】
(ゲル分率)
本発明の一実施形態における転写式硬化性樹脂シートのゲル分率は、好ましくは50%以下である。転写式硬化性樹脂シートのゲル分率が50%以下であると、転写式硬化性樹脂シートの被塗装物に対する密着性がさらに良好となる。このような観点から、本発明の一実施形態における転写式硬化性樹脂シートのゲル分率は、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。本発明の第1の実施形態における転写式硬化性樹脂シートのゲル分率の範囲の下限値は、特に限定されず、0%でもよい。なお、転写式硬化性樹脂シートのゲル分率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。転写式硬化性樹脂シートのゲル分率は、初期硬化における塗料層を硬化させるときの加熱条件や、塗料層の乾燥の条件、活性エネルギー線の照射条件、温度及び湿度の環境条件により調整できる。
【0042】
(転写式硬化性樹脂シートの製造方法)
本発明の一実施形態における転写式硬化性樹脂シートの製造方法は特に限定されないが、まず、塗料層を形成するための硬化性樹脂組成物を用意して、次に、転写層上に、硬化性樹脂組成物から塗料層を形成するとよい。ここで、転写層上に、塗料層を形成する際には、硬化性樹脂組成物を塗布し、必要に応じて乾燥することで樹脂層を形成するとよい。
また、転写層の上に形成した塗料層の上にはさらに保護層を積層してもよい。
ただし、塗料層は転写層の上に直接形成する必要はなく、例えば、保護層上に硬化性樹脂組成物から塗料層を形成して、保護層が形成された塗料層を転写層に貼り合わせてもよい。
【0043】
上記した硬化性樹脂組成物は、塗布性などの作業性を向上させる観点から、溶剤により希釈されることが好ましい。溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエンなどが挙げられる。また、硬化性樹脂組成物を転写層上に塗布した後に行う乾燥は、後述する本乾燥工程を少なくとも含む乾燥であることが好ましく、後述するプレ乾燥工程及び本乾燥工程をこの順に行う乾燥であることがより好ましい。
【0044】
プレ乾燥工程における乾燥温度は、50℃以上、70℃以下が好ましく、55℃以上、65℃以下がより好ましい。プレ乾燥工程における乾燥時間は、好ましくは1分以上、30分以下であり、より好ましくは2分以上、15分以下である。
本乾燥工程における乾燥温度は、85℃以上、130℃以下が好ましく、90℃以上、120℃以下がより好ましい。乾燥温度がこれら下限値以上であると、溶剤が適切に除去されやすくなり、樹脂層を硬化する際に溶剤などが気化して気泡が生じたりすることを防止する。また、上記上限値以下とすることで、乾燥時に硬化性樹脂組成物が必要以上に硬化することを防止することができる。
本乾燥工程における乾燥時間は、好ましくは1分以上30分以下であり、より好ましくは2分以上15分以下である。乾燥時間を上記下限値以上とすることで溶剤が適切に除去されやすくなり、樹脂層を硬化する際などに溶剤が気化して気泡が生じたりすることを防止する。また、上記上限値以下とすることで、乾燥時に硬化性樹脂組成物が必要以上に硬化することを防止することができる。
【0045】
また、乾燥後の樹脂層に対しては必要に応じて初期硬化を行ってもよい。初期硬化とは、樹脂層を構成する硬化性樹脂組成物を半硬化の状態に硬化することをいう。初期硬化は、例えば、加熱により行うことができ、加熱温度90℃以上150℃以下、加熱時間2分以上5分以下程度の条件で行うとよい。
【0046】
転写層の上に、塗料層、又は塗料層及び保護層が積層された積層体は、真空成形、プレス成形、圧空成形などにより、予備成形して、3次元形状に賦形されることが好ましい。
転写式硬化性樹脂シートは、本体部を3次元形状に賦形することで、被塗装物が複雑な形状を有していても、容易に転写式硬化性樹脂シートを被塗装物に密着させて貼り付けることができる。
予備成形は、上記の中では真空成形により行うことが好ましい。予備成形は、真空成形により積層体を治具や金型に圧着させ、治具や金型により積層体を伸張させながら被着体の表面形状に対応した形状に賦形するとよい。
ここで、真空成形は、好ましくはTOM成形である。TOMとは、「Three dimension Overlay Method」であり、TOM成形を適用すると、複雑な形状に賦形することができる。
また、転写式硬化性樹脂シートは、切削加工、レーザー加工などにより、突起部3と本体部2を有する形状に成形するとともに、レーザー加工などにより切欠き部4を形成するとよい。切削加工、レーザー加工などは、賦形成形後に行うとよいが、賦形成形前に行ってもよい。
【0047】
(塗装方法)
本発明の第一の実施形態における転写式硬化性樹脂シートは、各種の物品(被塗装物)に塗装などの装飾体を形成するためのシートであり、被塗装物に貼り付けられて使用される。具体的には、本発明の一実施形態における転写式硬化性樹脂シートは、塗料層を介して被塗装物に貼り付け、被塗装物に貼り付けた転写式硬化性樹脂シートを加熱するとよい。転写式硬化性樹脂シートが加熱されることで塗料層が硬化されて、硬化された塗料層により装飾体が形成される。
また、転写層は、好ましくは、転写式硬化性樹脂シートを、塗料層を介して被塗装物に貼り付けた後に塗料層から剥離するとよい。これにより、転写層は、転写式硬化性樹脂シートを被塗装物に貼り付ける際に塗料層を支持する支持体となる。
さらに、転写層の剥離は、常温又はその付近の温度(15~35℃程度)で行ってもよいが、塗料層を冷却してから行ってもよい。
【0048】
図4に、本発明の一実施形態における転写式硬化性樹脂シートを用いた塗装方法を示す。以下、
図4を用いてより詳細に説明する。
図4(a)に示すように、転写式硬化性樹脂シート1の本体部2は、塗料層10を介して、被塗装物30に貼り付ける。この際、被塗装物30への本体部2の貼り付けは、特に制限されず、スキージーなどを用いた手貼りなどにより行ってもよいし、ラミネート装置を用いて行ってもよい。この際、突起部3の塗料層10は、被塗装物30に貼り付けないようにするとよい。
【0049】
次に、
図4(b)に示すように、突起部2とともに本体部2における転写層20も剥離する。突起部3における塗料層10は、積層方向に転写層20まで切り抜かれた切欠き部4を有し、切欠き部4が少なくとも突起部3の本体部2側に形成されているので、突起部3における塗料層10と一緒に本体部2の塗料層10の一部が剥離するということは起きない。これにより、本体部2の塗料層10を傷つけずに転写層20を剥離することができる。
【0050】
転写層20を剥離する際の温度は、特に限定されず、常温又はその付近の温度で行ってよいが、塗料層10を冷却してから行ってもよい。塗料層10を冷却すると、塗料層10が硬くなり、特に、塗料層10が、ガラス転移温度を下回る温度まで冷却されることで、より一層硬くなり、剥離不良を生じさせずに、転写層20を塗料層10から剥離しやすくなる。
冷却して剥離する際の塗料層10の温度は、少なくともガラス転移温度以下の温度であることが好ましい。具体的には、15℃以下が好ましく、中でも10℃以下がより好ましく、特に5℃以下がさらに好ましい。また、転写層20を冷却して剥離する際の塗料層10の温度は、エネルギーや時間のロスを少なくする観点から一定温度以上であることが好ましく、具体的には、例えば-20℃以上であればよく、好ましくは-10℃以上である。
【0051】
また、被塗装物30に貼り付けられた塗料層10は、加熱により硬化するとよい。硬化は、塗料層10が貼り付けた被塗装物30を不図示の加熱装置により加熱して行うとよい。加熱温度は、例えば90℃以上170℃以下であり、好ましくは100℃以上160℃以下である。また、加熱時間は、例えば5分以上120分以下であり、好ましくは15分以上90分以下である。また、塗料層10の加熱を行う加熱装置は、オーブン、赤外線ヒーターなどでよい。
なお、塗料層10の硬化は、転写層20が剥離される前に行われてもよいし、剥離された後に行われてもよい。
【0052】
塗料層10は、加熱により硬化することで、被塗装物上に積層された装飾体となる。本発明の一実施形態では、上記の通り、塗料層10は、被塗装物30に適切に密着され、かつ転写層20を剥離する際、剥離不良が生じない。そのため、例えば被塗装物30と塗料層10の界面で剥離が生じたり、浮きが生じたりしないので、外観の良好な装飾体を得ることができる。
なお、以上の説明では、被塗装物に貼り付けた塗料層を加熱することで、塗料層を硬化させた。しかし、被塗装物に貼り付けた塗料層に活性エネルギー線を照射することで、塗料層を硬化させてもよいし、被塗装物に貼り付けた塗料層を所定の温度及び湿度の環境下に放置することで、塗料層を硬化させてもよい。
【0053】
本発明の一実施形態の転写式硬化性樹脂シートが貼り付けられる被塗装物としては、特に限定されないが、電化製品、自動車、鉄道等の車両、車両部品、雑貨品、重機、船舶、航空機などの外装材、住宅、建造物などの外壁又は屋根材、橋梁、鉄骨、プラント、風力発電ブレードなどが挙げられる。車両部品には、例えば、車両内装材、車両外装材などが挙げられる。これらの中では、車両及び車両部品が好ましく、車両部品がより好ましく、車両用外装材がさらに好ましい。車両用外装材としては、例えば、エアロパーツ、フード、ルーフ、ドアパネル、バンパー、給油口パネル、トランクリッド、リアゲート等が挙げられる。転写式硬化性樹脂シートは、車両用外装材に貼り付ける場合、車両本体に取り付けられた外装材に貼り付けられてもよいし、車両本体に取り付けられる前の外装材に貼り付けられてもよい。
また、被塗装物の材質は、特に限定されないが、樹脂材料、セラミックなどの無機材料、鋼材などの金属材料のいずれであってもよいが、これらの中では鋼材などの金属材料が好ましい。鋼材などの金属材料は、インサート成形により被塗装物の成形と同時に塗装を施すことが難しく、樹脂シートによる塗装は難しいが、本発明の一実施形態の転写式硬化性樹脂シートを用いることで、そのような材料に対しても容易に塗装することができる。
【0054】
[変形例]
本発明の一実施形態における転写式硬化性樹脂シートは、以下のように変形することができる。
(変形例1)
図5に示す転写式硬化性樹脂シート1Cのように、突起部3は、塗料層側に、180°折り曲げられ、塗料層側の面同士が互いに接着させてもよい。これにより、突起部3を指や剥離装置で摘まむ際、突起部3の塗料層10に指が粘着してしまうことを防止することができ、転写層20を剥離する際の作業効率をさらに向上させることができる。また、塗料層10が誤って被塗装物に貼り付けられることも防止できる。なお、突起部3において180°折り曲げられた部分は、切欠き部4を塞がないことが好ましい。突起部3において180°折り曲げられた部分が切欠き部4を塞がないと、突起部3において180°折り曲げられた部分の塗料層10が本体部2の塗料層10に接着することを防止することができる。突起部3において180°折り曲げられた部分の塗料層10が本体部2の塗料層10に接着すると、突起部3を起点として転写層20を剥離する際、本体部2の塗料層10の一部も剥離してしまうおそれがある。
【0055】
(変形例2)
本発明の一実施形態における転写式硬化性樹脂シートでは、塗料層は単層であった。しかし、塗料層は、2層以上の多層構造を有してもよい。
塗料層10が、多層構造の場合、各層が、上記した硬化性樹脂組成物からなるとよい。また、各層は、着色剤を含有させてカラー層にしてもよいし、遮熱材料を含有させて遮熱層としてもよいし、着色剤を実質的に含有させずにクリア層としてもよい。
【0056】
塗料層10は、多層構造の場合、カラー層と、クリア層を少なくとも有することが好ましい。カラー層及びクリア層を有する場合には、
図6に示す転写式硬化性樹脂シート1Dのように、塗料層10が、着色剤を含まないクリア層11と、クリア層11の転写層20側とは反対側に設けられ、着色剤を含むカラー層12とを含むようにしてもよい。
塗料層10は、カラー層12を有することで、塗料層10により形成される塗装により被塗装物を着色することができる。また、カラー層12に加えてクリア層11が設けることで、カラー層12を保護したり、カラー層12に光沢を付与したりすることができる。カラー層12は、着色剤として顔料を含むことが好ましい。この場合、クリア層11は顔料を含まない層となる。
【0057】
カラー層12及びクリア層11は、いずれも上記した硬化性樹脂組成物からなるとよく、カラー層12用の硬化性樹脂組成物は、上記したとおりに着色剤を含有すればよい。また、カラー層12用の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂として(メタ)アクリル樹脂を使用する場合、少なくとも高分子量の(メタ)アクリル樹脂を含有すればよいが、高分子量の(メタ)アクリル樹脂と可塑化樹脂の両方を含有することが好ましい。
一方で、クリア層11は、透明な層であり、クリア層11を介してカラー層12の色が外部から視認できる程度の透明性を有していればよいが、例えば、波長450nmの光の透過率が80%以上となるとよい。クリア層11は、着色剤を含有しない塗膜であるとよいが、その機能を阻害しない限りは、少量であれば着色剤を含有してもよい。また、クリア層用の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂として(メタ)アクリル樹脂を使用する場合、少なくとも高分子量の(メタ)アクリル樹脂を含有すればよいが、その場合、可塑化樹脂は含有していてもよいし、含有しなくてもよい。
【0058】
もちろん、塗料層10が多層構造の場合、クリア層とカラー層の2層構造に限定されず、様々な積層構造を有することが可能であり、カラー層を2層以上と、クリア層を1層以上設けて3層以上の構造としてもよいし、クリア層を省略して2層のカラー層からなるものとしてもよい。また、クリア層を2層以上設けてもよい。また、クリア層とカラー層の間に遮熱層などが設けられて3層以上の構造にされてもよい。
【0059】
クリア層の厚みは、特に限定されないが、例えば10μm以上100μm以下、好ましくは15μm以上50μm以下である。カラー層の厚みは、特に限定されないが、例えば10μm以上100μm以下、好ましくは15μm以上50μm以下である。
【0060】
塗料層が多層構造の場合、転写層に樹脂層を順次積層して、塗料層を形成してもよい。しかし、塗料層を構成する樹脂層の少なくとも1層を転写層上に形成し、塗料層を構成する樹脂層の少なくとも1層を保護層上に形成し、樹脂層を備えた転写層と、樹脂層を備えた保護層とを貼り合わせて、複数の樹脂層を有する塗料層を形成するようにしてもよい。
【0061】
(変形例3)
本発明の一実施形態における転写式硬化性樹脂シートでは、突起部3の形状は三角形であった。しかし、突起部3の形状は、突起部3を指で摘まむことができる形状であれば、三角形に限定されない。例えば、
図7(a)に示す転写式硬化性樹脂シート1Eのように突起部3の形状が矩形形状であってもよいし、
図7(b)に示す転写式硬化性樹脂シート1Fのように突起部3の形状が半楕円形形状であってもよい。また、突起部の形状が三角形である場合、先端の角度は90°以下であることが好ましい。さらに突起部がR形状である場合、突出方向の先端から突出方向の反対方向に向かって5mmの位置における突起部の幅は7mm以下であることが好ましい。
【0062】
(変形例4)
本発明の一実施形態における転写式硬化性樹脂シートでは、突起部3の位置は本体部2の真ん中の位置であった。しかし、突起部3の位置は、突起部3を指で摘まむことができる位置であれば、本体部2の真ん中の位置に限定されない。例えば、
図8に示す転写式硬化性樹脂シート1Gのように、本体部2の真ん中の位置に対して、端側の位置でもよい。
【0063】
本発明の一実施形態の転写式硬化性樹脂シート及びその変形例1~5の中の2つ以上の実施形態を組み合わせることができる。
【0064】
本発明の一実施形態の転写式硬化性樹脂シート及びその変形例1~5は本発明の転写式硬化性樹脂シートの一例に過ぎないので、本発明の転写式硬化性樹脂シートは、本発明の一実施形態の転写式硬化性樹脂シートに限定されない。
【0065】
[車両、車両部品]
本発明の車両及び車両部品は、本発明の転写式硬化性樹脂シートを用いて塗装されたものである。
【実施例0066】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0067】
本発明における測定方法及び評価方法は以下の通りである。
(剥離強度A)
実施例、比較例で得られた転写式硬化性樹脂シートを25mm幅、長さ100mmに加工した。25mm幅の転写式硬化性樹脂シートの転写層側の面を、両面テープ(製品名「WT♯550TL5B5」、積水化学工業株式会社製、PET基材18μm、両面の粘着剤層12μm)を介して、70mm×150mmの鋼板に貼り付けた。また、転写式硬化性樹脂シートから保護層を剥離した後、カラー層の表面に片面テープ(製品名「3803BS」、積水化学工業株式会社製、PET基材18μm、粘着剤層12μm)を貼り付けた。次いで、剥離角度90°、剥離速度300mm/分の条件で、片面テープを、塗料層(クリア層及びカラー層)とともに、転写層から剥離した際の剥離強度Aを求めた。
【0068】
(剥離強度B)
上記の通り保護層から剥離された、転写式硬化性樹脂シート(転写層、及び塗料層(カラー層及びクリア層)の積層体)を70mm×150mmの塗装鋼板の塗装面に貼り付け、転写層を剥離した。次にクリア層の表面(すなわち、転写層が設けられていた側の塗料の表面)に片面テープ(製品名「3803BS」、積水化学工業株式会社製、PET基材18μm、粘着剤層12μm)を貼り付けた。次いで、剥離角度90°、剥離速度300mm/分の条件で、片面テープを、塗料層(クリア層及びカラー層)とともに、塗装鋼板から剥離した際の剥離強度Bを求めた。なお、塗装鋼板としては、(株)スタンダードテストピース社製、SPCC-SD自動車用塗装試験片(ウレタン白+ウレタンクリア)を使用した。
【0069】
(ゲル分率)
転写式硬化性樹脂シートを50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製する。試験片をトルエン中に23℃にて24時間浸漬した後、トルエンから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式を用いてゲル分率を算出する。なお、試験片には、保護層は積層されていないものとする。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0)
(W0:転写層の重量、W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0070】
(転写層剥離性)
保護層が剥離された転写式硬化性樹脂シートを、スキージーと水を用いて23℃の条件で、厚み1mm×70mm×150mmの塗装鋼板に貼り付けた。その後、23℃環境下、突起部を起点として本体部の転写層を剥離した際の剥離性を以下の評価基準で評価した。
〇:本体部におけるクリア層及びカラー層を剥離しないで転写層を剥離できた。
×:転写層を剥離すると、本体部におけるクリア層及びカラー層の一部も剥離した。
【0071】
実施例、比較例で使用した離型層用フィルム、保護層用フィルム、及び樹脂層の各成分は、以下の通りである。
<転写層用フィルム>
・コンビニPE:無延伸ポリエチレン/EVA多層フィルム(オカモト社製「コンビニPE透明」、厚み300μm)、100℃での引張破断伸度(MD=350%、TD=400%)
<保護層用フィルム>
無延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(A-PET)(中本パックス社製「A-PET」、厚み400μm)、100℃での引張破断伸度(MD=1200%、TD=980%)
【0072】
<(メタ)アクリル樹脂(A1)>
アクリルポリオール(1):重量平均分子量25万、ガラス転移温度(Tg)40℃、水酸基価80mgKOH/g、固形分濃度(NV)=23.3質量%(溶剤:酢酸エチル)
アクリルポリオール(2):重量平均分子量25万、ガラス転移温度(Tg)40℃、水酸基価170mgKOH/g、固形分濃度(NV)=29.6質量%(溶剤:酢酸エチル)
<可塑化樹脂(A2)>
ポリカーボネートジオール:水酸基価204~244mgKOH/g、重量平均分子量500、「PH-50」、UBE株式会社製
【0073】
<ブロックイソシアネート基を有する化合物(B)>
ヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(HDI系)、三井化学社製「タケネートB-882N」、ブロック剤種:2-ブタノンオキシム(MEKO)、NV=70%、溶剤は石油ナフサ、少量のウレタン化触媒を含有
<ウレタン化触媒>
「XK-639」、楠本化成株式会社製
【0074】
<顔料>
日弘ビックス社製「NSP-UP 841B」、有効顔料濃度=9質量%、NV=24質量%
<光輝材>
メルク社製「Xiramic T60-10 WNT Crystal Silver」 アルミナフレークに少なくとも1層の二酸化チタンを含む金属酸化物が被覆された材料
【0075】
[熱硬化樹脂組成物A~Bの作製]
表1に示すとおりの配合で各成分を加え、かつ溶剤として酢酸エチルを加えて、固形分濃度が40質量%となるように硬化性樹脂組成物A~Bの希釈液を作製した。
【0076】
[実施例1]
表2に示す転写層用のフィルムの表面上に、熱硬化樹脂組成物Aをアプリケーターにて塗工した後、プレ乾燥工程を乾燥温度60℃、乾燥時間30分の条件で行った後、本乾燥工程を乾燥温度90℃、乾燥時間30分の条件で行い、転写層上に厚み30μmのクリア層を形成した。
次に、保護層用のフィルムの表面上に、熱硬化樹脂組成物Bをアプリケーターにて塗工した後、プレ乾燥工程を乾燥温度60℃、乾燥時間30分の条件で行った後、本乾燥工程を乾燥温度90℃、乾燥時間30分の条件で行い、保護層上に厚み30μmのカラー層を形成した。
転写層上のクリア層と、保護層上のカラー層とを貼り付け、25℃でラミネートすることにより、転写層、クリア層、カラー層、及び保護層の順に積層された転写式硬化性樹脂シートを得た。
得られた転写式硬化性樹脂シートを真空成型するために、突起部となる部位が所定の角度となるように木型を作り使用した。次に転写式硬化性樹脂シートを真空成型し、超音波カッターにより
図1(a)に示すような本体部及び突起部を備えた転写式硬化性樹脂シートを作製した。このようにして得られた転写式硬化性樹脂シートを用いて、上記評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0077】
[実施例2、比較例1~2]
硬化性樹脂組成物の組成を表1、2に示す通りに変更し、突起部の塗料層の切欠き部の形状を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に実施した。評価結果を表2に示す。
【0078】
【表1】
※表1は、熱硬化樹脂組成物A~Bにおける各成分の固形分基準での量であり、熱硬化性組成物全量の固形分を100質量部とした。
※顔料の有効成分量は、表1の値に9/24を乗じた値である。
【0079】
【0080】
実施例1~2の転写式硬化性樹脂シートは、突起部の塗料層が積層方向に転写層まで切り抜かれた切欠き部を有し、切欠き部が少なくとも突起部の本体部側に形成されているので、転写層の剥離性は良好であった。一方、比較例1の転写式硬化性樹脂シートは、突起部における塗料層が切り欠いていなかったので、転写層の剥離性は悪かった。また、比較例2の転写式硬化性樹脂シートは、切欠き部ではなくミシン目の切れ目だったので、転写層の剥離性は悪かった。