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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146911
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20241004BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20241004BHJP
   C08K 3/015 20180101ALI20241004BHJP
   C08K 7/28 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08L71/02
C08K5/17
C08K3/015
C08K7/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024057130
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2023059565
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】河田 円
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CH051
4J002DA067
4J002DJ007
4J002DL008
4J002EN026
4J002FA108
4J002FD090
4J002FD096
4J002FD187
4J002GL00
4J002GL01
4J002HA08
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】 本発明は、優れた抗菌性及び清掃時の耐洗剤性並びに優れた艶消し性及び凹凸感を有する硬化物を生成し且つ硬化前後において色調の変化が低減化された硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 硬化性重合体、融点が25~80℃であるアミン化合物2質量部以下と、粒子径が5~1000μmである粒子と、抗菌剤とを含むことを特徴とするので、優れた抗菌性及び清掃時の耐洗剤性並びに優れた艶消し性及び凹凸感を有する硬化物を生成し且つ硬化前後において色調の変化が低減化されており、硬化性組成物と共に用いられる他の部材のデザイン性や抗菌性を損なうことはない。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性重合体100質量部、融点が25~80℃であるアミン化合物2質量部以下と、粒子径が5~1000μmである粒子と、抗菌剤とを含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
硬化物の光沢度が15以下であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
上記硬化性重合体は、分子中に加水分解性シリル基を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
上記硬化性重合体は、ポリオキシアルキレン構造を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
上記粒子径が5~1000μmである粒子の体積濃度が10体積%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
上記粒子径が5~1000μmである粒子の空隙率が20~80%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
硬化物の表面が、最大高さPzが100μm以上である凹凸形状を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物に高いデザイン性を要求することが増加しており、とりわけ大面積を占める外壁部などの壁部では、樹脂製の壁部材への印刷技術や表面処理加工技術の向上によって、壁部のデザインが多様化されている。
【0003】
また、昨今の社会情勢から建材の清潔性を求める声が大きく、壁部においても上記デザイン性の他に、抗菌性や清掃時の耐洗剤性が求められている。
【0004】
一方、壁部は、所定幅を有する壁部材を上下左右に配設して構成されており、壁部材間に形成される目地部にはシーリング材が充填されている。壁部材において要求されているデザイン性を損なわないために、シーリング材にも艶消し性や凹凸感が要求されている。更に、壁部に要求されている抗菌性及び清掃時の耐洗剤性もシーリング材に要求されている。
【0005】
特許文献1には、反応性ポリマーおよび球状粒子を含有し、(P1)粒径850~1300μmの球状粒子の含有量が組成物に対して0.5~10体積%、(P2)粒径250~600μmの球状粒子の含有量が組成物に対して0.5~10体積%であり、(P3)粒径600~850μmの球状粒子の含有量が粒子(P1)および粒子(P2)の合計に対して45体積%以下である、凹凸外観を有する硬化性組成物が開示されている。
【0006】
特許文献2には、(A)架橋性シリル基を末端に有する変性ポリマーと、(B)融点又は凝固点が50℃以上であり、炭素数20以上のアルキル基を有するアルキルアミンと、(C)トリエトキシシリル基を有するアミン系シランカップリング剤と、(D)平均粒子径が300~450μmである炭酸カルシウムと、(E)平均粒子径が150~250μmである黒色シリカと、(F)充填剤と、(G)可塑剤と、(H)硬化触媒とを含有するシーリング材組成物が開示されている。
【0007】
特許文献3には、オルガノポリシロキサン(A)、加水分解性シラン化合物及び/又はその部分加水分解物(B)、トリアゾリル基含有化合物(C)、無機系抗菌剤(D)を含有してなる、変色の少ない抗菌・防カビ性オルガノポリシロキサン組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-151687号公報
【特許文献2】特開2019-151676号公報
【特許文献3】特開平11-199777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の硬化性組成物に、特許文献3のように抗菌剤を含有させても、硬化性組成物の硬化物に十分な抗菌性を発現させることができないという問題点を有する。また、粒子の種類によっては、硬化性組成物の硬化物が洗剤成分によって変色を生じることがあるという問題点も生じる。
【0010】
また、特許文献2のシーリング材組成物に、特許文献3のように抗菌剤を含有させても、シーリング材組成物の硬化物に十分な抗菌性を発現させることができないという問題点を有する。更に、シーリング材組成物が硬化前後で色調が変化し、壁部の色調を損なうことがあるという問題点を有している。
【0011】
本発明は、優れた抗菌性及び清掃時の耐洗剤性並びに優れた艶消し性及び凹凸感を有する硬化物を生成し且つ硬化前後において色調の変化が低減化された硬化性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の硬化性組成物は、硬化性重合体100質量部、融点が25~80℃であるアミン化合物2質量部以下と、粒子径が5~1000μmである粒子と、抗菌剤とを含む。
【0013】
[硬化性重合体]
硬化性組成物は、硬化性重合体(A)を含有している。硬化性重合体(A)は、使用し易いことから、0~100℃にて硬化することが好ましい。
【0014】
硬化性重合体は、分子中に公知の架橋性反応基を有する重合体を用いることができる。架橋性反応基としては、特に限定されず、例えば、加水分解性シリル基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、水酸基などが挙げられ、反応の安全性及び強度の高い硬化物を生成することができるので、加水分解性シリル基が好ましい。なお、架橋性反応基は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0015】
硬化性重合体を構成する重合体としては、特に限定されず、例えば、ポリエーテル系重合体、シリコーン系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリサルファイド系重合体、アクリル系重合体、ポリイソブチレン系重合体、ゴム系重合体などが挙げられ、硬化性組成物の硬化物の抗菌性が向上するので、ポリエーテル系重合体及びアクリル系重合体が好ましく、ポリエーテル系重合体がより好ましい。
【0016】
硬化性重合体を構成する重合体としては、更に好ましくは、ポリオキシアルキレン構造を有する重合体が好ましく、具体的には、主鎖構造が一般式(1)で表される繰り返し単位を含有すポリオキシアルキレン系重合体が好ましい。
-(R1-O)n- (1)
(式中、R1は炭素数が1~14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)
【0017】
アルキレン基とは、脂肪族飽和炭化水素中の異なる2個の炭素原子に結合する2個の水素原子を除いて生じる2価の原子団であり、直鎖状及び分岐状の双方の原子団を含む。なお、分岐状とは、1個の炭素(メチル基)が側鎖として結合している場合が含まれる。
【0018】
アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基[-CH(CH3)-CH2-]、トリメチレン基[-CH2-CH2-CH2-]、ブチレン基、アミレン基[-(CH25-]、ヘキシレン基などが挙げられる。
【0019】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖は、一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0020】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、及びポリオキシプロピレン-ポリオキシブチレン共重合体などが挙げられ、ポリオキシプロピレンが好ましい。
【0021】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格中における一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上がより好ましく、100質量%がより好ましい。
【0022】
加水分解性シリル基としては、例えば、ケイ素原子と結合した加水分解性基を有するケイ素含有基又はシラノール基のように、湿気又は架橋剤の存在下、必要に応じて触媒などを使用することによって縮合反応を生じる基をいう。なお、シラノール基とは、ケイ素原子にヒドロキシ基(-OH)が直接結合している官能基(≡Si-OH)を意味する。
【0023】
加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。
【0024】
加水分解性シリル基としては、例えば、メトキシシリル基、エトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基、ジメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などのトリアルコキシシリル基、トリクロロシリル基などのハロゲンが結合したハロゲン化シリル基が挙げられ、アルコキシシリル基が好ましく、ジアルコキシシリル基が好ましく、ジメトキシシリル基が好ましい。
【0025】
加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、例えば、末端に水酸基などの官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させ、次いで、得られた反応生成物に加水分解性基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化することによって製造することができる。
【0026】
硬化性重合体(A)の数平均分子量は、8000以上が好ましく、9000以上がより好ましく、10000以上がより好ましく、11000以上がより好ましい。硬化性組成物(A)の数平均分子量は、50000以下が好ましく、40000以下がより好ましく、38000以下がより好ましく、35000以下がより好ましく、32000以下がより好ましく、31000以下がより好ましい。
【0027】
硬化性重合体(A)の分子量分布は、1.6以下が好ましく、1.5以下が好ましく、1.45以下がより好ましい。硬化性重合体(A)の分子量分布が1.6以下であると、硬化性重合体(A)の粘度が下がるため、硬化性組成物の施工性が向上する。
【0028】
なお、本発明において、硬化性重合体の数平均分子量及び重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定された値である。具体的には、硬化性重合体6~7mgを採取し、採取した硬化性重合体を試験管に供給した上で、試験管にテトラヒドロフラン(THF)加えて硬化性重合体の濃度が1mg/mLとなるように希釈した希釈液を測定試料とする。この測定試料を用いてGPC法によって硬化性重合体の数平均分子量及び重量平均分子量を測定することができる。
【0029】
硬化性重合体における数平均分子量及び重量平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置
Waters社製 Waters 2690
測定条件
カラム:shodex LF-804 (8.0×300mm)×2本
カラム温度:40℃
移動相:THF
流量:1mg/mL
注入量:50μL
検出器:UV260nm
【0030】
[アミン化合物]
硬化性組成物は、融点が25~80℃であるアミン化合物(B)[以下、単に「アミン化合物(B)」ということがある]を含有している。硬化性組成物がアミン化合物(B)を含有していることによって、硬化性組成物の硬化物(以下、単に「硬化物」ということがある)において、後述する粒子(C)との相乗効果によって、硬化物表面に形成されるアミン化合物(B)の膜を薄くすることができ、少量のアミン化合物(B)によって硬化物に優れた艶消し性を付与することができると共に、アミン化合物(B)による硬化性組成物の硬化前後の色調の変化を低減化することができ、色調に優れた硬化物を生成し、外壁材との色調の同調性を向上させることができる。硬化性組成物が、黒色、紺色などの濃色を呈している場合、硬化性組成物の硬化前後の色調の変化が生じやすいが、このような場合にあっても、硬化性組成物は、硬化前後における色調の変化が低減されており、色調の変化が概ね防止されている。更に、アミン化合物(B)の膜が薄いので、抗菌剤がアミン化合物(B)の膜を円滑に透過し、硬化物は優れた抗菌性を発現する。また、硬化物表面を極めて薄いアミン化合物(B)の膜で覆っているので、硬化性重合体(A)の硬化物及び粒子(C)を洗剤から保護することができ、洗剤による変色などの色調の変化を略防止することができる。
【0031】
アミン化合物(B)は、一分子中に1個のアミノ基(-NH2)を有しているモノアミン化合物、又は、一分子中に2個のアミノ基(-NH2)を有しているジアミン化合物を含有していることが好ましく、一分子中に1個のアミノ基(-NH2)を有しているモノアミン化合物を含有していることがより好ましい。アミン化合物(B)において、アミノ基が有している水素原子は、アルキル基やアリール基などの有機基によって置換されていてもよい。また、アミン化合物(B)は、珪素原子を含有していないことが好ましい。なお、アミン化合物(B)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0032】
アミン化合物(B)としては、下記式(2)で示されるモノアミン化合物が好ましく挙げられる。
2-NH2 (2)
(式(2)において、R2は、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は、一価の飽和脂環式炭化水素基である。)
【0033】
2における直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、イソドデシル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、n-ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ステアリル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、及びベヘニル基などが挙げられ、ラウリル基、イソドデシル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、パルミチル基、ヘプタデシル基、n-ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ステアリル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ベヘニル基が好ましい。
【0034】
式(2)で示されるアミン化合物(B)において、R2の炭素数は、12個以上が好ましく、16個以上がより好ましく、17個以上がより好ましい。式(2)で示されるアミン化合物(B)において、R2の炭素数は、40個以下が好ましく、30個以下がより好ましく、25個以下がより好ましい。R2の炭素数が上記範囲内であるアミン化合物(B)を用いることにより、粒子(C)との相乗効果により、硬化性組成物の硬化物の硬化前後の色調の変化を低減しつつ、艶消し性の向上を図ることができる。
【0035】
アミン化合物(B)として、ラウリルアミン(C1225-NH2、融点:28℃)、ステアリルアミン(C1837-NH2、融点:50℃)、ミリスチルアミン(融点:38℃)、セチルアミン(n-ヘキサデシルアミン、C1633-NH2、融点:47℃)、ベヘニルアミン(融点:63℃)が好ましい。
【0036】
アミン化合物(B)の融点は、25℃以上が好ましく、26℃以上がより好ましく、27℃以上がより好ましく、35℃以上がより好ましく、40℃以上がより好ましく、45℃以上がより好ましい。アミン化合物(B)の融点が25℃以上であると、硬化性組成物の硬化物の表面にべたつきが生じることを低減し、硬化物の表面に異物が付着することによる硬化物の色調の変化を低減化することができる。アミン化合物(B)の融点は、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下がより好ましく、55℃以下がより好ましく、50℃以下がより好ましい。アミン化合物(B)の融点が80℃以下であると、硬化物の表面に形成するアミン化合物(B)を硬化性組成物全体に均等に混合することで、アミン化合物(B)の膜厚を薄くし、硬化物表面に均等な膜厚を有するアミン化合物(B)の膜を形成することができる。したがって、硬化物に優れた艶消し性を付与しつつ、アミン化合物(B)による硬化性組成物の硬化前後の色調の変化を更に低減化することができ、色調に優れた硬化物を生成し、外壁材との色調の同調性を更に向上させることができる。更に、アミン化合物(B)の膜が薄いので、抗菌剤がアミン化合物(B)の膜を円滑に透過し、硬化物は優れた抗菌性を発現する。
【0037】
なお、本発明において、アミン化合物(B)の融点は、JIS K7121(1987年)に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)によって測定された温度をいう。具体的には、示差走査熱量測定装置(例えば、株式会社島津製作所社製 装置名「DSC-60」など)を用いて、アミン化合物(B)を10℃から150℃まで昇温速度5℃/分で加熱し、この加熱過程におけるDSC曲線の融解ピーク温度を、アミン化合物(B)の融点とする。なお、融解ピークが複数ある場合には、最も吸熱の大きい融解ピークの頂点の温度を融点とする。
【0038】
硬化性組成物中におけるアミン化合物(B)の含有量は、硬化性重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中におけるアミン化合物(B)の含有量は、硬化性重合体(A)100質量部に対して2質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましく、1.3質量部以下がより好ましく、1.1質量部以下がより好ましく、1.0質量部以下がより好ましい。アミン化合物(B)の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物の表面にアミン化合物(B)の薄膜を形成し、硬化性重合体(A)の硬化物及び粒子(C)を洗剤から保護することができ、洗剤による変色などの色調の変化を略防止することができる。アミン化合物(B)の含有量が2質量部以下であると、硬化性組成物の硬化前後の色調の変化を低減化して、外壁材との同調化を図ることができる。
【0039】
[粒子径が5~1000μmの粒子(C)]
硬化性組成物は、粒子径が5~1000μmの粒子(C)(以下、単に「粒子(C)」ということがある)を含有している。硬化性組成物が粒子(C)を含有していることによって、硬化性組成物の硬化物に適度な凹凸感を付与し、硬化物の艶消し性を向上させることができる。更に、粒子(C)の粒子径を5~1000μmとすることによって、硬化物に凹凸を形成して表面積を適度な大きさとし、この適度な表面積を有する凹凸面にアミン化合物(B)をブリードアウトさせることによって、硬化物表面にアミン化合物(B)の薄膜を形成することができる。アミン化合物(B)を薄膜状に形成することによって、粒子(C)によって形成された凹凸がアミン化合物(B)の薄膜によって低減化されることを概ね防止し、凹凸による艶消し効果を効果的に発揮させ、更に、アミン化合物(B)による艶消し効果も作用し、硬化物は、優れた艶消し効果を奏する。アミン化合物(B)の薄膜を粒子(C)の存在によって容易に形成することができ、アミン化合物(B)の含有量の低減化を図ることができる。その結果、硬化性組成物の硬化前後におけるアミン化合物(B)による色調の変化を低減化して外壁材との色調の同調性を向上させることができると共に、抗菌剤をアミン化合物(B)の膜を容易に透過させて硬化物に優れた抗菌性を発現させることができる。
【0040】
粒子(C)は、-40~100℃で固体の粒子であり、粒子径が5~1000μmであれば、特に限定されず、例えば、鉱物、シラス、セラミックス、ガラスなどの無機材料を含む無機粒子、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、フェノール樹脂などの合成樹脂を含む有機粒子、又は、無機材料及び合成樹脂を複合させた複合粒子などが挙げられる。なお、粒子(C)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0041】
粒子(C)の粒子径は、5μm以上であり、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上がより好ましく、35μm以上がより好ましく、40μm以上がより好ましく、45μm以上がより好ましい。粒子(C)の粒子径は、1000μm以下であり、900μm以下が好ましく、800μm以下がより好ましく、700μm以下がより好ましく、650μm以下がより好ましく、600μm以下がより好ましい。粒子(C)の粒子径が5μm以上であると、硬化性組成物の硬化物の表面に適度な凹凸を形成し、硬化物の艶消し性及び凹凸感を向上させることができると共に、硬化物の抗菌性を向上させることができる。粒子(C)の粒子径が1000μm以下であると、硬化物の凹凸を適度な大きさとし、硬化物表面に透過してきた抗菌剤を外部に良好に露出させ、硬化物に優れた抗菌性を付与することができる。なお、粒子(C)の粒子径は、レーザー回折法によって測定された球相当径(同一体積の球に換算したときの直径)をいう。
【0042】
粒子(C)は、所定範囲の粒子径を有する第1粒子と、この第1粒子の粒子径範囲の上限値よりも大きな粒子径を有する第2粒子とを含有していることによって、硬化性組成物の硬化物表面に微細な凹凸を形成することができ、硬化物表面の艶消し性及び凹凸感をより向上させることができる。具体的には、粒子(C)は、粒子径が5μm以上で且つ45μm以下の第1粒子と、粒子径が45μmを超え且つ粒子径が1000μm以下の第2粒子とを含有していることが好ましく、粒子径が5μm以上で且つ45μm以下の第1粒子と、粒子径が46μm以上で且つ粒子径が700μm以下の第2粒子とを含有していることがより好ましく、粒子径が5μm以上で且つ45μm以下の第1粒子と、粒子径が46μm以上で且つ粒子径が650μm以下の第2粒子とを含有していることがより好ましい。
【0043】
粒子(C)において、第1粒子と第2粒子との含有比率(第1粒子の質量/第2粒子の質量)は、0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましく、0.7以上がより好ましく、0.8以上がより好ましい。粒子(C)において、第1粒子と第2粒子との含有比率(第1粒子の質量/第2粒子の質量)は、1.5以下が好ましく、1.4以下がより好ましく、1.3以下がより好ましく、1.2以下がより好ましい。
【0044】
硬化性組成物中において、粒子(C)の体積濃度は、1体積%以上が好ましく、2体積%以上がより好ましく、3体積%以上がより好ましい。硬化性組成物中において、粒子(C)の体積濃度は、10体積%以下が好ましく、9.8体積%以下がより好ましく、9.5体積%以下がより好ましい。粒子(C)の体積濃度が1体積%以上であると、硬化性組成物の硬化物の表面に適度な凹凸を形成し、硬化物の艶消し性及び凹凸感を向上させることができると共に、硬化物の抗菌性を向上させることができる。粒子(C)の体積濃度が10体積%以下であると、硬化物の凹凸を適度な大きさとし、硬化物表面に透過してきた抗菌剤を外部に良好に露出させ、硬化物に優れた抗菌性を付与することができる。
【0045】
なお、粒子(C)の体積濃度は、硬化性組成物の体積中、粒子(C)の全体積の占める百分率をいい、下記式にて示される。
粒子(C)の体積濃度(体積%)
=100×粒子(C)の体積の合計(全体積)/硬化性組成物の全体積
【0046】
粒子(C)は、内部に空隙のない中実状であっても、内部に空隙を有する中空状の何れであってもよいが、硬化性組成物の塗工時において、比重の小さい粒子(C)が硬化性組成物の表面に出やすくして、硬化性組成物の硬化物の表面に凹凸を形成し、硬化物の艶消し性を向上させることができる。
【0047】
粒子(C)が中空状の粒子である場合、粒子(C)の空隙率は、20%以上が好ましく、25%以上がより好ましく、30%以上がより好ましい。粒子(C)の空隙率は、80%以下が好ましく、75%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。粒子(C)の空隙率が上記範囲内であると、粒子(C)が硬化性組成物の表面に出やすくして、硬化性組成物の硬化物の表面に凹凸を形成し、硬化物の艶消し性を向上させることができる。
【0048】
粒子(C)の空隙率は、下記に基づいて算出された値をいう。
粒子(C)の空隙率(%)=100×嵩密度(g/cm3)/真密度(g/cm3
【0049】
なお、嵩密度は、JIS R1628に定義される固め嵩密度をいう。真密度は、JIS Z8807に定義されるゲーリュサック型比重瓶法で測定された粒子自身のみを体積とした密度をいう。
【0050】
硬化性組成物中における粒子(C)の含有量は、硬化性重合体100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、4質量部以上がより好ましく、5質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中における粒子(C)の含有量は、硬化性重合体100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、28質量部以下がより好ましく、25質量部以下がより好ましい。粒子(C)の含有量が3質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物の表面に適度な凹凸を形成し、硬化物の艶消し性及び凹凸感を向上させることができると共に、硬化物の抗菌性を向上させることができる。粒子(C)の含有量が30質量部以下であると、硬化物の凹凸を適度な大きさとし、硬化物表面に透過してきた抗菌剤を外部に良好に露出させ、硬化物に優れた抗菌性を付与することができる。
【0051】
アミン化合物(B)と粒子径が30μm以上である粒子(C)の組み合わせとして最も好ましいのは、アミン化合物(B)としては融点が50℃前後であるアミン化合物が1.2重量部以下であり、粒子(C)としては粒子径が100~300μmの粒子を含むことが最も好ましい。融点が50℃前後であるアミン化合物が1.2重量部以下であり、粒子径が100~300μmの粒子を含んでいる場合、粒子の凹凸により硬化物の表面が拡大し、硬化物表面を被覆するアミン化合物の膜厚を薄くすることができ、抗菌剤成分の硬化物表面への透過を抑制せず、抗菌性を発揮することができる。さらに、粒子の凹凸による光の乱反射による艶消し作用によって艶消し剤としてのアミン化合物の添加量を減少させることができ、アミン化合物の色調への影響を抑えることができる。
【0052】
[抗菌剤]
硬化性組成物は、抗菌剤(D)を含有している。抗菌剤(D)を含有していることによって、硬化性組成物の硬化物に抗菌性を付与することができる。
【0053】
抗菌剤(D)としては、公知の抗菌剤を用いることができ、無機系抗菌剤及び有機系抗菌剤の何れも用いることができ、硬化性重合体中への混合が容易であり且つ硬化性組成物の硬化物表面を洗剤で洗浄した時の流出を低減することができるので、無機系抗菌剤が好ましく、金属系抗菌剤がより好ましい。
【0054】
無機系抗菌剤としては、例えば、金属原子(例えば、銀、銅、亜鉛など)を無機化合物(例えば、鉱物など)に含有させた金属系抗菌剤、酸化チタンなどの光触媒系の抗菌剤が挙げられる。
【0055】
無機化合物に所定の金属原子を含有させる方法としては、特に限定されず、例えば、物理吸着又は化学吸着により無機化合物に金属原子を担持させる方法、無機化合物に含まれる陽イオンをイオン交換反応によって金属イオンで置換させて無機化合物に含有させる方法、金属金、金属銀、金属銅、酸化銀又は酸化銅として無機化合物に担持させる方法、金属錯体(例えば、チオスルファト銀錯体など)として無機化合物に担持させる方法、ガラス成分として金属原子を含有させる方法(例えば、SiO2-B23-Na2O系ガラスなどの溶解性ガラスのガラス成分として金属原子を含有させる方法など)、結合剤を用いて金属原子を含む化合物を無機化合物に担持させる方法、銀化合物又は銅化合物を無機化合物に打ち込むことにより担持させる方法、蒸着、溶解析出反応、スパッタなどの薄膜形成法により無機化合物の表面に金属原子を含む化合物の薄層を形成させることにより担持させる方法などが挙げられる。
【0056】
金属系抗菌剤において、金属原子の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。金属原子の含有量は、10質量%以下が好ましく、9質量%以下がより好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下がより好ましい。金属原子の含有量が0.1質量%以上であると、硬化性組成物の硬化物に優れた抗菌性を付与することができる。金属原子の含有量が10質量%以下であると、硬化性組成物への着色を抑制することができる。
【0057】
抗菌剤(D)において無機系を用いる場合、金属イオン担持の容易性からゼオライトが好ましい。
【0058】
ゼオライトの結晶構造は、特に限定されず、例えば、A型、フェリエライト型、MCM-22型、ZSM-5型、モルデナイト型、L型、Y型、X型、ベータ型などが挙げられ、金属原子の安定した担持性の点から、A型、Y型、X型が好ましく、A型がより好ましい。
【0059】
有機系抗菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸アルキルジ(アミノエチル)グリシン、脂肪酸モノグリセリドなどの界面活性剤系抗菌剤、キトサン系抗菌剤、ヒノキチオール系抗菌剤などの天然物由来の抗菌剤、グルコン酸クロルヘキシジンなどのビグアナイド系抗菌剤、アルコール系抗菌剤、フェノール系抗菌剤、アニリド系抗菌剤、ヨウ素系抗菌剤、イミダゾール系抗菌剤、チアゾール系抗菌剤、イソチアゾロン系抗菌剤、トリアジン系抗菌剤、ニトリル系抗菌剤、フッ素系抗菌剤、有機金属系抗菌剤などが挙げられる。
【0060】
抗菌剤(D)の平均粒子径は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.5μm以上がより好ましい。抗菌剤(D)の平均粒子径は、11μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がより好ましい。抗菌剤(D)の平均粒子径が0.1μm以上であると、抗菌剤(D)を硬化性重合体中に凝集させることなく均一に分散させることができ、硬化物の表面に抗菌剤を均一に透過させて、硬化物の何れにおいても優れた抗菌性を発現させることができる。抗菌剤(D)の平均粒子径が11μm以下であると、抗菌剤(D)の表面積を増加させることによって、硬化物表面の抗菌成分が増加し、硬化物の抗菌性が向上する。
【0061】
なお、抗菌剤(D)の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による画像解析によって測定された値をいう。TEMは、透過型電子顕微鏡(加速電圧200kV、観察倍率3万倍)を用い、乳鉢で軽く粉砕した抗菌剤をアセトン中に超音波分散させ、プラスチック支持膜上に滴下し自然乾燥させたものを検鏡用試料とし、写真を撮影する。写真中の各一次粒子について、最長径R1とその中点において直角方向の径R2の算術平均値を算出し、この算術平均値を一次粒子の粒子径とする。合計300個の一次粒子の粒子径を測定し、一次粒子の粒子径の算術平均値を抗菌剤の平均粒子径とする。なお、TEMは、例えば、日本電子社から商品名「JEM-2100」にて市販されている透過型電子顕微鏡を用いることができる。
【0062】
硬化性組成物中における抗菌剤(D)の含有量は、硬化性重合体(A)100質量部に対して0.0001質量部以上が好ましく、0.0003質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中における抗菌剤(D)の含有量は、硬化性重合体(A)100質量部に対して10質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。抗菌剤(D)の含有量が0.0001質量部以上であると、硬化性組成物の抗菌性が向上する。抗菌剤(D)の含有量が10質量部以下であると、硬化性組成物の効果前後における色調の変化を抑制することができる。
【0063】
[充填材]
硬化性組成物は、その物性を損なわない範囲内において、粒子(C)以外に、粒子径が5μm未満の粒子や粒子径が1000μmを超える粒子が含有されていてもよい。
【0064】
硬化性組成物は、粒子径が5μm未満の炭酸カルシウムを充填剤として含有していてもよい。炭酸カルシウムとしては、例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、コロライド炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0065】
重質炭酸カルシウムは、例えば、天然のチョーク(白亜)、大理石、石灰石などの天然の炭酸カルシウムを微粉状に粉砕することにより得ることができる。
【0066】
沈降性炭酸カルシウムは、例えば、石灰石を原料として用い、化学的反応を経て製造することができる。
【0067】
炭酸カルシウムは、その表面に表面処理が施されていても施されていなくてもどちらでもよい。炭酸カルシウムの表面が処理されている場合、脂肪酸、脂肪酸エステル又は脂肪酸金属塩によって処理されていることが好ましく、脂肪酸によって処理されていることがより好ましい。
【0068】
脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アライン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、オブッシル酸、カルロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、モリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレビン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、ソルビン酸、リノール酸などが挙げられ、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が好ましい。
【0069】
脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ラウリル、パルミチン酸ステアリル、パルミチン酸ラウリルなどが挙げられる。
【0070】
脂肪酸金属塩としては、例えば、上記脂肪酸のナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられ、ラウリン酸のナトリウム塩、ミリスチン酸のナトリウム塩、パルミチン酸のナトリウム塩、ステアリン酸のナトリウム塩又はオレイン酸のナトリウム塩が好ましい。
【0071】
充填材の粒子径は、0.001μm以上が好ましく、0.008μm以上がより好ましく、0.01μm以上がより好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.03μm以上がより好ましい。充填材の粒子径は、0.2μm以下が好ましく、0.008μm以下がより好ましく、0.01μm以下がより好ましく、0.02μm以下がより好ましく、0.03μm以下がより好ましい。
【0072】
なお、充填材の粒子径は、充填材1g当たりの比表面積値を用いて下記式に基づいて算出された値をいい、例えば、島津製作所から商品名「SS-100型」にて市販されている粉体比表面積測定装置を用いることができる。
平均粒子径(μm)=6×10000/(比重×比表面積)
【0073】
硬化性組成物において、充填材の含有量は、硬化性重合体(A)100質量部に対して100質量部以上が好ましい。硬化性組成物において、充填材の含有量は、硬化性重合体(A)100質量部に対して300質量部以下が好ましく、250質量部以下がより好ましい。
【0074】
[シラノール縮合触媒]
硬化性組成物は、シラノール縮合触媒を含有していることが好ましい。シラノール縮合触媒とは、硬化性重合体が加水分解性シリル基を含有する場合、加水分解性シリル基が加水分解することなどにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。
【0075】
シラノール縮合触媒としては、特に限定されず、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫オキシラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジオクチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジオクチル錫ジラウレート、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ-n-ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物;1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカー5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカー5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナー5-エンなどのシクロアミジン系化合物;ジブチルアミン-2-エチルヘキソエートなどが挙げられ、硬化性組成物の硬化性を向上させることができると共に、硬化性組成物の貯蔵安定性を向上させることができるので、有機錫系化合物が好ましい。又、他の酸性触媒や塩基性触媒もシラノール縮合触媒として用いることができる。なお、シラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0076】
硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、硬化性重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、硬化性重合体(A)100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下がより好ましい。
【0077】
[シランカップリング剤]
硬化性組成物は、シランカップリング剤を更に含有していてもよい。
【0078】
シランカップリング剤は、硬化性組成物の硬化物の接着性が向上するので、アミノ基含有シランカップリング剤、又は、エポキシ基含有シランカップリング剤を含有していることが好ましく、アミノ基含有シランカップリング剤を含有していることがより好ましい。
【0079】
アミノ基含有シランカップリング剤は、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、窒素原子を含有する官能基とを含む化合物を意味する。アミノ基含有シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’-ビス-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ビス-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられ、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0080】
エポキシ基含有シランカップリング剤とは、一分子中にアルコキシ基が結合した珪素原子と、エポキシ基を含有する官能基とを含む化合物を意味する。エポキシ基含有シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、及び2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられ、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0081】
硬化性組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、硬化性重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、硬化性重合体(A)100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0082】
[可塑剤]
硬化性組成物は、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤としては、特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシルなどの非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチルなどの脂肪族エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステルなどのポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェートなどのリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン-アクリロニトリル、ポリクロロプレン;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニルなどの炭化水素系油;プロセスオイル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体などのポリエーテル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどのエポキシ系可塑剤類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤類;アクリル系可塑剤を始めとするビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体類などが挙げられる。なお、可塑剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0083】
[他の添加剤]
硬化性組成物は、脱水剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、顔料、染料、沈降防止剤、防カビ剤などの他の添加剤を含有していてもよい。なかでも、酸化防止剤が好ましい。
【0084】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、硬化性重合体(A)100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、硬化性重合体(A)100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0085】
硬化性組成物は、顔料や染料を含むことによって、着色されていてもよい。顔料及び染料は、特に制限されずに用いることができる。顔料が好ましい。顔料は、無機顔料、及び有機顔料のいずれであってもよい。無機顔料として、具体的には、カーボンブラック、チタンブラック、グラファイトなどの黒色顔料;金属の酸化物、窒化物、及び酸窒化物などが挙げられる。金属としては、鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、及びアンチモンのうち少なくとも1種が挙げられる。硬化性組成物中における顔料の含有量は、特に制限されず、硬化性重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、5質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中における顔料の含有量は、硬化性重合体(A)100質量部に対して、80質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0086】
一般的に、硬化性組成物は硬化前後で色調が変化した場合、硬化後に予定していた色調が得られないという問題を生じることがある。このような問題は、顔料や染料(特に、黒色顔料)を用いて硬化性組成物が着色されている場合に発生し易い。しかしながら、本発明の硬化性組成物では、顔料や染料を用いた場合であっても、硬化前後の色調の変化を低減することができ、硬化後に予定していた色調を発揮することができる。従って、本発明による効果を特に発揮し易いことから、硬化性組成物は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を含んでいることが好ましく、黒色顔料を含んでいることがより好ましい。
【0087】
[硬化性組成物]
硬化性組成物は、硬化性重合体(A)、アミン化合物(B)、粒子(C)及び抗菌剤(D)、並びに、必要に応じて含有される他の添加剤を混合することによって製造することができる。なお、混合は、減圧下で行うことが好ましい。
【0088】
硬化性組成物は、空気中の湿気(水分)、壁部材などの部材に含まれている湿気(水分)によって硬化して硬化物を生成する。硬化性組成物を目地構造用シーリング材として用いて目地構造を形成することができる。
【0089】
硬化性組成物を硬化して生成される硬化物は、その表面に艶消し性及び凹凸感が付与されており、光沢度が抑えられている。硬化性組成物の硬化物の光沢度は、15以下が好ましく、13以下がより好ましく、10以下がより好ましく、8以下がより好ましい。
【0090】
硬化物の光沢度は、60度鏡面光沢度計を用いて測定することができる。光沢度計は、例えば、タスコジャパン社から商品名「TMS-724」にて市販されている光沢度計を用いることができる。
【0091】
硬化性組成物を硬化して生成される硬化物は、その表面に、最大高さPzが100μm以上である凹凸形状を有することが好ましい。これにより、硬化物表面の凹凸形状を適度な大きさとし、硬化物表面に透過してきた抗菌剤を外部に良好に露出させ、硬化物に優れた抗菌性を付与することができる。
【0092】
硬化性組成物の硬化物表面における凹凸形状の最大高さPzは、100μm以上が好ましく、120μm以上がより好ましく、145μm以上がより好ましく、500μm以上がより好ましく、1000μm以上がより好ましい。硬化性組成物の硬化物表面における凹凸形状の最大高さPzは、3000μm以下が好ましく、2800μm以下がより好ましく、2500μm以下がより好ましい。凹凸形状の最大高さPzを3000μm以下とすることにより、硬化物表面に透過してきた抗菌剤を外部に良好に露出させ、硬化物の抗菌性を維持することができる。
【0093】
硬化性組成物の硬化物表面における凹凸形状の最大高さPzとは、JIS B0601:2013に準拠した「断面曲線の最大高さPz」である。
【0094】
凹凸形状の最大高さPzの測定には、電子顕微鏡(例えば、キーエンス社製 製品名「マイクロスコープ VHXシリーズ」など)を用いることができる。例えば、電子顕微鏡としてキーエンス社製 製品名「マイクロスコープ VHXシリーズ」を用いる場合、硬化性組成物の硬化物の表面を、電子顕微鏡(倍率20倍)で観察して三次元画像データを得た後、この三次元画像データに対して、「マイクロスコープ VHXシリーズ」に搭載されたD.F.D方式(Depth from Defocus)の解析アプリケーションを用いて解析を行うことにより、硬化性組成物の硬化物表面における凹凸形状の最大高さPzを測定することができる。
【0095】
硬化性組成物を硬化して生成される硬化物の平均厚みは、特に制限されず、硬化性組成物の用途に応じて決定すればよい。硬化性組成物の硬化物の平均厚みは、100μm以上が好ましく、500μm以上がより好ましい。また、硬化性組成物の硬化物の平均厚みは、20000μm以下が好ましく、10000μm以下がより好ましい。なお、硬化性組成物の硬化物の平均厚みは、硬化物の厚みを任意の20箇所において測定し、得られた測定値の算術平均値を算出することにより求めることができる。
【0096】
硬化性組成物を目地部に施工して目地構造を得る方法としては、硬化性組成物を目地部に充填した後に養生させて硬化させる方法が用いられる。得られる目地構造は、建築構造物の壁部を構成している壁部材と、互いに隣接する壁部材間に形成された目地部に充填された、硬化性組成物の硬化物とを有している。建築構造物の壁部としては、例えば、外壁、内壁、天井部などが挙げられる。
【0097】
建築構造物の壁における目地部としては、接合部に形成される目地部が挙げられる。壁部材は、建築構造物の壁を構成しているものであればよく、必ずしも板状である必要はなく、サッシ(窓枠)などのように一部に開閉可能な開口部が形成された部材であってもよく、建築構造物の一面を構成している部材が含まれる。壁部材としては、例えば、モルタル板、コンクリート板、窯業系サイディングボード、金属系サイディングボード、ALC板、金属板、サッシ、合板及びミディアム・デンシティ・ファイバーボード(MDF:Medium Density Fiberboard)などの木質系材料、タイル、塩化ビニル、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、及び石材などが挙げられる。
【0098】
上記硬化性組成物の硬化物は、優れた艶消し性及び凹凸感を有しており且つ硬化前後において色調の変化が低減されているので、壁部材のデザイン性を損なうことはなく、壁部材と共になって優れたデザイン性を有する壁部を構成することができる。
【0099】
また、上記硬化性組成物の硬化物は、優れた抗菌性を有しているので、近年の清潔性の要求に対しても十分に対応することができると共に、壁部を洗剤を用いて洗浄した場合にあっても、洗剤におかされて変色することはなく、壁部の優れたデザイン性を長期間に亘って維持することができる。
【発明の効果】
【0100】
本発明の硬化性組成物は、優れた抗菌性及び清掃時の耐洗剤性並びに優れた艶消し性及び凹凸感を有する硬化物を生成し且つ硬化前後において色調の変化が低減化されており、硬化性組成物と共に用いられる他の部材のデザイン性や抗菌性を損なうことはない。
【発明を実施するための形態】
【0101】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例0102】
実施例及び比較例の硬化性組成物の製造において下記の化合物を使用した。
【0103】
[硬化性重合体(A)]
・加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A1)(ポリオキシアルキレン系重合体(A1)、数平均分子量:18000、分子量分布:1.40、主鎖:-[CH(CH3)-CH2-O]n-、旭硝子社製 製品名「エクセスター3430」)
・加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A2)(ポリオキシアルキレン系重合体(A2)、数平均分子量:30000、分子量分布:1.60、主鎖:-[CH(CH3)-CH2-O]n-、旭化成ワッカーシリコーン社製 商品名「GENIOSIL STP-E35)
【0104】
[アミン化合物(B)]
・モノアミン化合物(B1)(ステアリルアミン、融点:50℃、花王社製 商品名「ファ
ーミン80S」)
・モノアミン化合物(B2)(ラウリルアミン、融点:28℃、日油社製 商品名「ニッサンアミンBB」)
・モノアミン化合物(B3)(ベヘニルアミン、融点:63℃、日油社製 商品名「ニッサンアミンVB-S」)
【0105】
[粒子(C)]
・粒子(C1)(ガラスバルーン、昭和化学工業社製 商品名「ハードライトB04」、粒子径:46~600μm、空隙率:30%)
・粒子(C2)(ガラスバルーン、ポッターズ・バロティーニ社製 商品名「Qセル7040」、粒子径:5~45μm、空隙率:70%)
【0106】
[抗菌剤(D)]
・金属系抗菌剤(金属含有無機化合物、金属原子の含有量:0.1~10質量%、ゼオライトの結晶構造:A型、平均粒子径:2.5μm、シナネンゼオミック社製 製品名「ゼオミックZtype」)
【0107】
[シランカップリング剤]
・アミノシランカップリング剤[N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製 商品名「KBM-603」]
【0108】
[顔料]
・黒顔料(日本ピグメント社製、カーボンブラック)
【0109】
[シラノール縮合触媒]
・ジブチル錫オキシラウレート(日東化成社製 製品名「ネオスタンU-130」)
【0110】
(実施例1~8、比較例1~5)
表1に示した所定量の硬化性重合体(A)、アミン化合物(B)、粒子(C)、金属系抗菌剤(D)、アミノシランカップリング剤、黒顔料及びジブチル錫オキシラウレートを減圧下にて均一に混合して硬化性組成物を作製した。
【0111】
得られた硬化性組成物について、粒子径が5~1000μmである粒子(C)の体積濃度を表1に示した。
【0112】
得られた硬化性組成物を雰囲気温度23℃、相対湿度50%の環境下で1週間硬化養生させて硬化物を得た。
【0113】
得られた硬化物について、光沢度を上述の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0114】
得られた硬化物について、その表面に形成された凹凸形状の最大高さPz(μm)を、上述の要領で測定し、測定結果を表1に示した。なお、得られた硬化物の平均厚みは、3000μmであった。
【0115】
得られた硬化物について、凹凸感、色調、抗菌性及び耐洗剤性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0116】
(凹凸感)
硬化性組成物の硬化物表面に形成された凹凸を目視観察して下記基準に基づいて評価した。
A・・・大きな凹凸が観察された。
B・・・細かな凹凸が観察された。
C・・・凹凸が観察できなかった。
【0117】
(色調)
硬化性組成物を硬化させる前の表面の色調と、硬化性組成物を硬化させて得られた硬化物の表面の色調を、分光測色計(コニカミノルタ社製 商品名「CM-5」、測定方式:SCE方式、視野:10度、光源:D65)を用いて測定した。そして、硬化させる前の硬化性組成物の表面の色調を基準として、硬化後の硬化物表面の色差(ΔL:明暗の差)を算出した。なお、ΔLの数値が大きいほど基準色より硬化物の表面が白っぽくなり、ΔLの数値が小さいほど基準色より硬化物の表面が黒っぽくなったことを意味する。ΔLの数値は、-2.0以上、+2.0以下が好ましい。
【0118】
(抗菌性)
硬化性組成物の硬化物をJIS Z 2801抗菌加工製品の抗菌性試験方法に準拠して抗菌性について観察し、下記基準に基づいて評価した。
A・・・生菌数の対数値が-0.2以下であった。
B・・・生菌数の対数値が-0.2を超え且つ0.5未満であった。
C・・・生菌数の絶対値が0.5以上であった。
【0119】
(耐洗剤性)
硬化性組成物の硬化物に塩素系漂白剤を0.2mL滴下し、ガラスを被せて24時間静置した後に流水で塩素系漂白剤を十分に洗い流した。しかる後、硬化物の表面を、光学顕微鏡及び目視にて観察し、下記基準に基づいて評価した。
A・・・硬化物表面における色の変化が、目視及び光学顕微鏡の双方で観察されなかった。
B・・・硬化物表面における色の変化が、目視では観察されなかったが、光学顕微鏡では観察された。
C・・・硬化物表面における色の変化が、目視及び光学顕微鏡の双方で観察された。
【0120】
硬化物表面における色の変化が、目視及び光学顕微鏡の双方で観察されない場合(上記基準A)、塩素系漂白剤を洗い流してから数ヶ月以上もの長期間経過した後も、依然として硬化物表面における色の変化の発生がない状態を維持することができるため、耐洗剤性が特に優れていると評価することができる。
【0121】
【表1】