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特開2024-146925不織布及びそれを含むワイピングシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146925
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】不織布及びそれを含むワイピングシート
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/4391 20120101AFI20241004BHJP
   D04H 1/4382 20120101ALI20241004BHJP
   D04H 1/485 20120101ALI20241004BHJP
   D01F 6/06 20060101ALI20241004BHJP
   D01F 2/00 20060101ALI20241004BHJP
   A47L 13/17 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
D04H1/4391
D04H1/4382
D04H1/485
D01F6/06 A
D01F2/00 Z
A47L13/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024057782
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2023059021
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100107180
【弁理士】
【氏名又は名称】玄番 佐奈恵
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】森田 遼
(72)【発明者】
【氏名】堀 優
(72)【発明者】
【氏名】内海 惠介
【テーマコード(参考)】
3B074
4L035
4L047
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AA08
3B074AB01
3B074CC03
4L035DD02
4L035DD13
4L035DD20
4L035FF05
4L035FF06
4L047AA08
4L047AA12
4L047AA14
4L047AA27
4L047AA28
4L047AA29
4L047AB02
4L047AB07
4L047AB08
4L047AB09
4L047BA04
4L047BA09
4L047BA24
4L047BB01
4L047BB09
4L047CA02
4L047CA05
4L047CC16
(57)【要約】
【課題】 汚れの捕集性能により優れ、ワイピング性のより高い不織布を提供する。
【解決手段】 対象物の表面を清拭するワイピングシートの基材として用いることができ、多葉状断面繊維を20質量%以上含み、多葉状断面繊維は、少なくとも3個の凸部を有する多葉状断面形状の繊維横断面を有し、少なくとも一つの凸部は、先端部分が略曲線状であり得、繊維の中心に向かう根元部分の幅Wbが先端部分の最大幅Wtより小さく、多葉状断面繊維の少なくとも一部は、多葉状断面繊維を構成する少なくとも3個の凸部のうち、少なくとも一つの凸部が分割または剥離して形成される多葉状断面繊維由来繊維を含むことができる不織布である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面を清拭するワイピングシートの基材として用いる不織布であって、
前記不織布は多葉状断面繊維を20質量%以上含み、
前記多葉状断面繊維は、少なくとも3個の凸部を有する多葉状断面形状の繊維横断面を有する繊維であり、
少なくとも一つの凸部は、先端部分が略曲線状であり得、繊維の中心に向かう根元部分の幅Wbが先端部分の最大幅Wtより小さく、
前記多葉状断面繊維の少なくとも一部は、多葉状断面繊維を構成する少なくとも3個の凸部のうち、少なくとも一つの凸部が分割または剥離して形成される多葉状断面繊維由来繊維を含むことができ、
前記多葉状断面繊維に由来する繊維は、多葉断面繊維に含まれる複数の凸部のうち、少なくとも一つの凸部が分割または剥離して形成される極細繊維状であり得る不織布。
【請求項2】
前記多葉状断面繊維は、繊維横断面において凸部の数が3以上8以下である、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記凸部の最大幅Wtは、3.5μm以上20μm以下であり、長さLtは、4μm以上25μm以下である、請求項1に記載の不織布。
【請求項4】
前記凸部は、繊維の中心に向かってくびれた部分を有し、凸部の根元部分の幅Wbが、凸部の最大幅Wtより小さく、
前記凸部の根元部分の幅Wbは2μm以上12μm以下であり、
凸部の長さLtと根元部分の幅Wbの比Lt/Wbが1.0以上3.5以下であり、かつ最大幅Wtと根元部分の幅WbのWt/Wbが1より大きく3.5以下である、請求項1に記載の不織布。
【請求項5】
前記多葉状断面繊維は単一樹脂成分からなる繊維であり、
前記単一樹脂成分はポリプロピレン樹脂を50質量%以上含む樹脂成分であり、
前記多葉状断面繊維の繊度は0.5dtex以上10dtex以下であり、
前記単一樹脂成分には、親水化剤を0.5質量%以上10質量%以下含む、請求項1に記載の不織布。
【請求項6】
前記不織布は多葉状断面繊維に加え、親水性繊維、および熱接着性繊維を含み、
前記不織布は、前記多葉状断面繊維、前記親水性繊維、および前記熱接着性繊維を合わせた質量を100質量%としたときに、前記多葉状断面繊維に由来する繊維を20質量%以上80質量%以下、前記親水性繊維を10質量%以上50質量%以下、および前記熱接着性繊維を10質量%以上40質量%以下含み、
不織布内の構成繊維の交点の少なくとも一部が、前記熱接着性繊維によって熱接着されている、請求項1に記載の不織布。
【請求項7】
前記親水性繊維がセルロース系繊維である、請求項6に記載の不織布。
【請求項8】
前記熱接着性繊維が低融点樹脂成分と高融点樹脂成分から構成される複合繊維であり、前記低融点樹脂成分の融点が145℃以下である、請求項6に記載の不織布。
【請求項9】
前記熱接着性繊維が、低融点樹脂成分を鞘成分とし、高融点樹脂成分を芯成分とする芯鞘型複合繊維である、請求項8に記載の不織布。
【請求項10】
前記熱接着性繊維に含まれる低融点樹脂成分がポリエチレン樹脂を50質量%以上含む樹脂成分である、請求項8に記載の不織布。
【請求項11】
前記不織布は、前記多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層を1又は2以上含む、請求項1に記載の不織布。
【請求項12】
前記多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層を1又は2以上含むことに加えて、前記多葉状断面繊維の含有量が20質量%未満である繊維層を1又は2以上含む、請求項11に記載の不織布。
【請求項13】
前記多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層を2層含み、
前記多葉状断面繊維の含有量が20質量%未満である繊維層を1層含む不織布であって、
前記多葉状断面繊維の含有量が20質量%未満である繊維層の両表面に、前記多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層が積層されている、請求項12に記載の不織布。
【請求項14】
請求項13に記載の不織布であって、多葉状断面繊維の含有量が20%未満である繊維層の両表面に積層されている、多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層は、当該繊維層に含まれる繊維の繊維間が熱接着されていないことを特徴とする不織布。
【請求項15】
前記不織布が、前記多葉状断面繊維、前記親水性繊維、および前記熱接着性繊維のみからなる、単層構造の不織布である請求項6に記載の不織布。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の不織布を基材とし、前記基材100質量部に対して、液体が100質量部以上、1000質量部以下の範囲内にある割合で含浸されている、ウェットワイピングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布に関し、特に、その不織布を含むワイピングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
不織布の用途として、人の身体や物から汚れを拭き取るための各種ワイピングシートがある。そして、ワイピングシートの汚れを拭き取る効果を高めるため、様々な技術が提案されている。その中で、ワイピングシートを構成する繊維として、異形断面の繊維や極細繊維を用いることがある。ワイピングシートに対し、繊維横断面(繊維長さ方向に垂直な繊維断面)の形状が円形ではない、いわゆる異形断面の繊維を使用すると、その形状によってワイピングシートのふき取り性が向上し得ることが報告されている(特許文献1及び2参照)。しかし、異形断面繊維は繊維径が大きくなりやすいため、吸水性や保水性などが不十分となり得ると考えられる。
【0003】
ワイピングシートのふき取り性を向上する別の方法として、ワイピングシートに使用される不織布を構成する繊維として、分割型複合繊維(繊維横断面が、くさび状の2種類の樹脂成分が交互に配置された断面の複合繊維)を使用することも提案されている。ワイピングシートに対し、分割型複合繊維を使用する場合、不織布を製造する工程で高圧水流に繊維ウェブを晒す等の処理を行うことで分割型複合繊維が分割され、各樹脂成分からなる極細繊維を形成することが知られている(例えば、特許文献3及び4など参照)。
【0004】
分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維は繊維横断面が非円形であることから、清拭する対象物表面(肌や床の表面)に存在する各種汚れを除去する効果が高いだけでなく、真円断面の繊維よりも繊維の比表面積が広くなることでワイピングシート自体の嵩もより大きくなる。加えて、除去した汚れを繊維内部またはワイピングシート内部に捕集しやすくなるため、分割型複合繊維を含む不織布を基材としたワイピングシートはワイピング性能に優れる。
【0005】
分割型複合繊維を使用した不織布では、製造工程で繊維ウェブを高圧水流処理や熱処理、機械的交絡処理(ニードルパンチング処理)に付して、分割型複合繊維を樹脂成分毎に分割して、極細繊維を発生させている。得られる不織布において極細繊維が含まれる量を多くするため、分割型複合繊維から極細繊維が発生する割合(分割率)が高いことが好ましい。しかし、分割型複合繊維を用いた不織布において、分割型複合繊維の分割率は、通常高くても60~80%程度であり、少なくとも40~20%程度の未分割型複合繊維が不織布中に存在し得る。この未分割分割型複合繊維は繊維横断面が丸断面であり、繊度も大きい(2.2dtex~)ので、ワイピング性能は必ずしも十分ではない。
【0006】
加えて、各種ワイピングシートには、使用した際の毛羽立ちや繊維脱落をより抑制することが求められており、これらの性能を向上させるための改良が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2-234914号公報
【特許文献2】特開平2-289220号公報
【特許文献3】特開2006-625号公報
【特許文献4】特開2015-277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、汚れの捕集性能により優れ、ワイピング性のより高い不織布を提供することを目的とする。更に、ワイピングシートとして使用した際の毛羽立ちや繊維脱落をより抑制することができる不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定の多葉断面型繊維を使用すると、(i)その繊維は高圧水流によって繊維形状が崩れる(凸部の一部が分割又は剥離する)ことがあること、(ii)高圧水流によって繊維横断面形状に変化が生じない場合も、繊維横断面に適度の凹凸形状を有し得ることを見出した。更に、そのような繊維を含む不織布は、発生し得る極細繊維状の部分によってワイピング性が高められること、繊維横断面に有し得る適度の凹凸形状によってワイピング性が高められることを見出し、各種ワイピングシート用途に好適であることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本明細書は、下記の実施形態を含む。
1.対象物の表面を清拭するワイピングシートの基材として用いる不織布であって、
前記不織布は多葉状断面繊維を20質量%以上含み、
前記多葉状断面繊維は、少なくとも3個の凸部を有する多葉状断面形状の繊維横断面を有する繊維であり、
少なくとも一つの凸部は、先端部分が略曲線状であり得、繊維の中心に向かう根元部分の幅Wbが先端部分の最大幅Wtより小さく、
前記多葉状断面繊維の少なくとも一部は、多葉状断面繊維を構成する少なくとも3個の凸部のうち、少なくとも一つの凸部が分割または剥離して形成される多葉状断面繊維由来繊維を含むことができ、
前記多葉状断面繊維に由来する繊維は、多葉断面繊維に含まれる複数の凸部のうち、少なくとも一つの凸部が分割または剥離して形成される極細繊維状であり得る不織布。
2.前記多葉状断面繊維は、繊維横断面において凸部の数が3以上8以下である、上記1に記載の不織布。
3.前記凸部の最大幅Wtは、3.5μm以上20μm以下であり、長さLtは、4μm以上25μm以下である、上記1又は2に記載の不織布。
4.前記凸部は、繊維の中心に向かってくびれた部分を有し、凸部の根元部分の幅Wbが、凸部の最大幅Wtより小さく、
前記凸部の根元部分の幅Wbは2μm以上12μm以下であり、
凸部の長さLtと根元部分の幅Wbの比Lt/Wbが1.0以上3.5以下であり、かつ最大幅Wtと根元部分の幅WbのWt/Wbが1より大きく3.5以下である、上記1~3のいずれか1つに記載の不織布。
5.前記多葉状断面繊維は単一樹脂成分からなる繊維であり、
前記単一樹脂成分はポリプロピレン樹脂を50質量%以上含む樹脂成分であり、
前記多葉状断面繊維の繊度は0.5dtex以上10dtex以下であり、
前記単一樹脂成分には、親水化剤を0.5質量%以上10質量%以下含む、上記1~4のいずれか1つに記載の不織布。
6.前記不織布は多葉状断面繊維に加え、親水性繊維、および熱接着性繊維を含み、
前記不織布は、前記多葉状断面繊維、前記親水性繊維、および前記熱接着性繊維を合わせた質量を100質量%としたときに、前記多葉状断面繊維に由来する繊維を20質量%以上80質量%以下、前記親水性繊維を10質量%以上50質量%以下、および前記熱接着性繊維を10質量%以上40質量%以下含み、
不織布内の構成繊維の交点の少なくとも一部が、前記熱接着性繊維によって熱接着されている、上記1~5のいずれか1つに記載の不織布。
7.前記親水性繊維がセルロース系繊維である、上記6に記載の不織布。
8.前記熱接着性繊維が低融点樹脂成分と高融点樹脂成分から構成される複合繊維であり、前記低融点樹脂成分の融点が145℃以下である、上記6又は7に記載の不織布。
9.前記熱接着性繊維が、低融点樹脂成分を鞘成分とし、高融点樹脂成分を芯成分とする芯鞘型複合繊維である、上記8に記載の不織布。
10.前記熱接着性繊維に含まれる低融点樹脂成分がポリエチレン樹脂を50質量%以上含む樹脂成分である、上記8又は9に記載の不織布。
11.前記不織布は、前記多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層を1又は2以上含む、上記1~5のいずれか1つに記載の不織布。
12.前記多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層を1または2以上含むことに加えて、前記多葉状断面繊維の含有量が20質量%未満である繊維層を1又は2以上含む、上記11に記載の不織布。
13.前記多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層を2層含み、前記多葉状断面繊維の含有量が20質量%未満である繊維層を1層含む不織布であって、前記多葉状断面繊維の含有量が20質量%未満である繊維層の両表面に、前記多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層が積層されている、上記12に記載の不織布。
14.上記13に記載の不織布であって、多葉状断面繊維の含有量が20%未満である繊維層の両表面に積層されている、多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層は、当該繊維層に含まれる繊維の繊維間が熱接着されていないことを特徴とする不織布。
15.前記不織布が、前記多葉状断面繊維、前記親水性繊維、および前記熱接着性繊維のみからなる、単層構造の不織布である上記6~10のいずれか1つに記載の不織布。
16.上記1~14のいずれか1つに記載の不織布を基材とし、前記基材100質量部に対して、液体が100質量部以上、1000質量部以下の範囲内にある割合で含浸されている、ウェットワイピングシート。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態の不織布は、特定の多葉状断面繊維を20質量%以上含む不織布であり、特定の多葉状断面繊維の断面形状の一部が崩れた場合、すなわち多葉状断面繊維の繊維横断面における凸部の一部が分離、剥離した場合でも、特定の多葉状断面繊維の断面形状の一部が崩れなかった場合、すなわち多葉状断面繊維の繊維横断面における凸部の一部が分離、剥離しなかった場合であっても、汚れの捕集性能により優れることで、当該不織布を各種ワイピングシートとして使用した場合、ワイピング性のより高いワイピングシートが容易に得られる不織布を提供することができる。
また、本発明の不織布のより好ましい実施形態では、特定の多葉状断面繊維に加え、熱接着性繊維を含むので、熱接着成分によって繊維間を熱接着することで繊維の自由度を適度に制御し、ワイピングシートとして使用した際の毛羽立ちや繊維脱落をより抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に関する多葉状断面繊維を模式的に示す。
図2図2は、実施例1、4、7の不織布の表面(100倍と50倍)と断面(400倍)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
図3図3は、比較例3、4、1の不織布の表面(100倍と50倍)と断面(400倍)のSEM写真を示す。
図4図4は実施例1の不織布の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)使用して200倍に拡大して観察した、多葉状断面繊維の繊維横断面形状のSEM写真を示す。
図5図5は実施例4の不織布の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)使用して200倍に拡大して観察した、多葉状断面繊維の繊維横断面形状のSEM写真を示す。
図6図6は比較例4の不織布の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)使用して200倍に拡大して観察した、多葉状断面繊維の繊維横断面形状のSEM写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の不織布は、不織布が使用される種々の用途に使用することができるが、対象物の表面を清拭するワイピングシートの基材として好適に用いることができる。ワイピングシートは、制汗シートやお尻拭き用シートといった主に人の肌を清拭する際に使用する対人ワイピングシート(ただし、本発明において、対人ワイピングシートには、哺乳類等、人以外の生物を拭く際に使用するシートを含むものとする)と、床や窓ガラス、家具、乗用車の車体表面など、物の表面に落下、付着している汚れ、異物を清拭する際に使用する対物ワイピングシートに分けられる。対人ワイピングシート、対物ワイピングシートいずれの場合であっても清拭する面に落下、付着している異物、汚れをふき取るために使用されるため、異物、汚れを対象表面からからめとる性能(ワイピング性能)が重視される。そこで、本発明の不織布において、ワイピング性能の発揮に寄与する多葉状断面繊維の構成およびその作用効果について説明する。
【0014】
(多葉状断面繊維)
本発明の不織布に含まれる多葉状断面繊維は、その繊維横断面において、少なくとも3個の凸部を有する多葉状断面形状の繊維である。前記多葉状断面繊維について、図1を用いて説明する。多葉状断面繊維1は、繊維の横断面の形状が3個以上の凸部2を有する多葉状となっている。そして、多葉状断面繊維の繊維横断面に存在する凸部のうち、少なくとも一つの凸部2は、先端部分が略曲線状であり得、繊維の中心に向かう根元部分の幅Wbが先端部分の最大幅Wtより小さくなっている。凸部2の数は、3個以上8個以下であることが好ましく、3個以上6個以下であることがより好ましく、3個または4個であることが特に好ましい。多葉状断面繊維の繊維横断面に存在する凸部により、多葉状断面繊維を含む不織布は、凸部によって汚れを対象物表面から落とし、からめとるワイピング性能が向上すると考えられる。
【0015】
本発明の不織布に含まれる多葉状断面繊維における、繊維の横断面に存在する凸部2は、凸部の根元部分の幅Wbが先端部分の最大幅Wtより小さくなっていることで変形しやすくなっている。後述するが、不織布を製造する際には製造工程(例えばカード工程や、水流交絡不織布の水流交絡処理工程が挙げられる)において、繊維に対して力が加わるため、加えられた力によって、凸部の少なくとも一部は多葉状断面繊維から、凸部の少なくとも一部が分割または剥離し得る。その結果、多葉状断面繊維の少なくとも一部は、多葉状断面繊維を構成する凸部のうち、少なくとも一つの凸部が分割または剥離して形成され得る多葉状断面繊維由来繊維を含むようになる。前記多葉状断面繊維由来繊維は、多葉状断面繊維の一部(すなわち凸部2)が、本体である多葉状断面繊維から分割、剥離したものであるため、多葉状断面繊維よりも繊維横断面の面積が小さい、極細繊維状の繊維となる。従って、本発明の不織布は、当該不織布に含まれる多葉状断面繊維の少なくとも一部において、当該多葉断面繊維に含まれる複数の凸部のうち、少なくとも一つの凸部が分割または剥離して形成される多葉状断面繊維由来繊維を含むことができ、前記多葉状断面繊維由来繊維のうち少なくとも一部が極細繊維状になり得る。
【0016】
本発明の不織布において、不織布に含まれる多葉状断面繊維の少なくとも一部において、当該多葉状断面繊維の少なくとも一部は、当該多葉状断面繊維を構成する凸部のうち、少なくとも一つの凸部が分割または剥離して形成される多葉状断面繊維由来繊維を含むことができ、前記多葉状断面繊維由来繊維の少なくとも一部が多葉状断面繊維よりも繊維横断面の面積が小さい、極細繊維状の繊維となり得る。繊維横断面が崩れていない多葉状断面繊維は、少なくとも3個有する凸部が、清拭する対象表面から汚れを絡め落とす効果が高いことに加え、凸部と凸部の間に形成される凹部によって、絡め取った汚れを保持する効果が得られやすいことに加え、本発明の不織布を、薬液を含浸させて使用するワイピングシート(いわゆるウェットワイピングシート)として使用する際、凹部に薬液を吸収、保持する効果が高いため、薬液の徐放性に優れるワイピングシートが得られやすくなると考えられる。また、繊維横断面が崩れた多葉状断面繊維は、当該多葉状断面繊維から分割、剥離し得る凸部によって多葉状断面繊維由来繊維を発生させ、当該多葉状断面繊維由来繊維の少なくとも一部は極細繊維状となり得る。多葉状断面繊維由来繊維は、元となった多葉状断面繊維から完全に分離、剥離している、していないにかかわらず元の凸部形状、すなわち扁平な非円形の繊維横断面形状になっているため、清拭する対象表面から汚れを絡め落とす効果を高めることができる。その結果、本発明の不織布は、不織布に含まれる多葉状断面繊維の横断面形状が崩れる、崩れないにかかわらず、ワイピング性能を高める効果がある繊維を含むようになるため、従来の分割型複合繊維を含むことを必須とする不織布よりも高いワイピング性能を発揮しやすい。
【0017】
本発明の不織布に含まれる多葉状断面繊維1の繊維横断面に含まれる凸部2における先端部分の最大幅Wtは3.5μm以上20μm以下であることが好ましく、より好ましくは4.5μm以上16μm以下であり、特に好ましくは5μm以上14μm以下である。凸部2における先端部分の最大幅Wtが前記範囲内にあると、凸部間に形成される凹部3に絡め取った汚れを保持する効果が得られやすいことに加え、本発明の不織布を、薬液を含浸させて使用するワイピングシート(いわゆるウェットワイピングシート)として使用する際、凹部に薬液を吸収、保持する効果が高いため、薬液の徐放性に優れるワイピングシートが得られやすくなる。
【0018】
本発明の不織布に含まれる多葉状断面繊維1の繊維横断面に含まれる凸部2における根元部分の幅Wbは2μm以上12μm以下であることが好ましく、より好ましくは3.0μm以上10μm以下であり、特に好ましくは3.5μm以上8μm以下である。凸部2における根元部分の幅Wbが前記範囲内にあると、不織布の製造工程で繊維に加わる様々な力によって、凸部2がその根元付近から剥離、フィブリル化、または分離し易くなることで多葉状断面繊維由来繊維、特に極細繊維状の多葉状断面繊維由来繊維を発生しやすくなるとことで、得られる不織布のワイピング性能を高めやすくなる。そして、本発明の不織布に含まれる多葉状断面繊維1の繊維横断面に含まれる凸部は、繊維の中心に向かってくびれた部分を有し、凸部の根元部分の幅Wbが、凸部の最大幅Wtより小さくなっている。凸部の根元部分の幅Wbが、凸部の最大幅Wtより小さくなることで、凸部がその根元付近から剥離、フィブリル化、または分離し易くなり、極細繊維状の多葉状断面繊維由来繊維を発生しやすくなる。
【0019】
本発明の不織布に含まれる多葉状断面繊維1の繊維横断面に含まれる凸部2において、前記凸部の先端部分における最大幅(Wt)は、図1においてWtで示しており、具体的には繊維の中心から凸部2の先端部分を結ぶ線を引き、その線から凸部の外形に向けて垂線を引いたときの最大長さをいい、凸部の根元部分の幅(Wb)は、図1において、Wbで示しており、具体的には隣り合う凸部における各々の根元部分の両端を結ぶ長さをいう。前記凸部の先端部分における最大幅Wtと、根元部分の幅Wbとの比(Wt/Wb)が、1より大きく3.5以下であることが好ましい。先端部分における最大幅Wtと、根元部分の幅Wbとの比(Wt/Wb)が前記範囲を満たすことで、凸部2がその根元付近から剥離、フィブリル化、または分離し易いだけでなく、繊維の製造が容易な多葉状断面繊維となる。凸部の先端部分における最大幅Wtと、根元部分の幅Wbとの比(Wt/Wb)は1.2以上3以下であることがより好ましく、1.4以上2.5以下であると特に好ましく、1.4以上2以下であると最も好ましい。凸部の先端部分における最大幅Wtおよび根元部分の幅Wbは、製造した不織布の断面を走査型電子顕微鏡等で拡大して、任意の多葉状断面繊維15本の値を平均して求めることができる。
【0020】
本発明の不織布に含まれる多葉状断面繊維1の繊維横断面に含まれる凸部2の長さLt(凸部の根元部分の中心点から先端までの距離)は、4μm以上25μm以下であることが好ましく、より好ましくは6.5μm以上20μm以下であり、特に好ましくは8.0μm以上16μm以下である。凸部の長さLtが4μm未満であると、凸部2が根元から変形しにくくなる。凸部の長さLtが25μmを超えると、凸部の面積が大きくなりすぎることに加え、多葉状断面繊維そのものの繊度が大きくなりすぎるようになり、それを含む不織布のワイピング性能の低下を引き起こす可能性がある。凸部の長さLtが、4μm以上25μm以下である場合、凸部2が根元からより容易に変形し易く、ワイピング性能にもより優れるので、好ましい。凸部の長さLtは、製造した不織布の断面を走査型電子顕微鏡等で拡大して、任意の多葉状断面繊維15本の値を平均して求めることができる。
【0021】
本発明の不織布に含まれる多葉状断面繊維において、前記凸部2の長さLtと、前記根元部分の幅Wbとの比(Lt/Wb)が1以上3.5以下であることが好ましい。凸部の長さLtと、根元部分の幅Wbとの比(Lt/Wb)が前記範囲を満たすことで、凸部がその根元付近から剥離、フィブリル化、または分離し易いだけでなく、繊維の製造が容易となる。凸部の長さLtと、根元部分の幅Wbとの比(Lt/Wb)は1.2以上3以下であることがより好ましく、1.4以上2.7以下であると特に好ましく、1.5以上2.5以下であると最も好ましい。
【0022】
本発明の不織布に含まれる多葉状断面繊維は、複数の樹脂成分からなる繊維、例えば2種類の樹脂成分からなる複合繊維であってもよいが、単一樹脂成分からなる単一繊維であることが好ましい。多葉状断面繊維が単一樹脂成分からなる単一繊維であると、繊維を製造する際、原料となる熱可塑性樹脂の溶融粘度が調整しやすいことから、所定の繊維横断面形状を満たす多葉状断面繊維をより容易に製造できる。
【0023】
前記樹脂成分、好ましくは単一樹脂成分に含まれる熱可塑性樹脂は特に限定されず、繊維の製造において通常用いられている熱可塑性樹脂から、任意に選択してよい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体およびエチレン-アクリル酸メチル共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂;ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂;ナイロン6およびナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリオキシメチレン(ポリアセタール)樹脂;ポリケトン樹脂;ポリスチレン樹脂;ビニロン樹脂;ならびにアクリル系樹脂からなる群から、1または複数の樹脂を選択して使用してよい。これら前記熱可塑性樹脂の原料は特に限定されず、原料が石油由来の熱可塑性樹脂や、原料の少なくとも一部を植物由来の原料にしたバイオマス由来の熱可塑性樹脂でもよいし、一度使用した熱可塑性樹脂製品を粉砕、溶融、再度ペレット化したリサイクル(再生)熱可塑性樹脂でもよい。本発明の不織布に含まれる多葉状断面繊維を構成する単一樹脂成分は、ポリプロピレン樹脂を50質量%以上含む樹脂成分であることが好ましく、ポリプロピレン樹脂を75質量%以上含む樹脂成分であることがより好ましく、ポリプロピレン樹脂を80質量%以上含む樹脂成分であることが特に好ましい。
【0024】
前記ポリプロピレン樹脂は溶融紡糸が可能なポリプロピレン樹脂であれば特に限定されず使用することができるが、好ましくは、前記ポリプロピレン樹脂のJIS K 7210に準ずるメルトマスフローレート(測定温度230℃、荷重2.16kgf(21.18N) 以下において、単に「MFR230」とも記す。)が5g/10分以上50g/10分以下の範囲であることが好ましく、10g/10分以上45g/10分以下の範囲であることがより好ましく、20g/10分以上35g/10分以下の範囲であると特に好ましい。MFR230が上述した範囲内であると、紡糸時に糸切れが発生しにくいだけでなく、溶融したポリプロピレン樹脂の剪断応力が適度に大きいものとなるため、溶融紡糸直後の繊維横断面形状が維持されやすくなり、所定の横断面形状を有する多葉状断面繊維を得られやすい。
【0025】
本発明の不織布に含まれる多葉状断面繊維の繊度は、特に限定されないがが、0.5dtex以上10dtex以下であることが好ましく、0.8dtex以上5.6dtex以下であることがより好ましく、1.0dtex以上3.5dtex以下であることが特に好ましい。多葉状断面繊維の繊度が10dtexを超えると、当該多葉状断面繊維を含む不織布をワイピングシートとして使用した際、対象物の表面を傷つけたり、ワイピングシートの使用感が低下したりする恐れがある。多葉状断面繊維の繊度が0.5dtex未満であると、当該多葉状断面繊維はカード通過性が低下するため、当該多葉状断面繊維を含む不織布の生産が難しくなる。多葉状断面繊維の繊度が0.5dtex以上10dtex以下である場合、より柔らかい風合いを生じやすく、より心地よい使用感が得られ、更に、生産性により優れる。
【0026】
本発明の不織布に含まれる多葉状断面繊維の繊維長は、特に限定されないが、20mm以上80mm以下であることが好ましく、25mm以上70mm以下であることがより好ましく、30mm以上65mm以下であることが特に好ましい。本発明の不織布に含まれる多葉状断面繊維の繊維長が前記範囲を満たすことで、本発明の不織布は生産性により優れ、繊維脱落のより発生しにくい不織布となる。
【0027】
本発明の不織布に含まれる多葉状断面繊維は単一樹脂成分からなる単一繊維であることが好ましいが、より好ましくは多葉状断面繊維の親水性を高めるため、単一樹脂成分が親水化剤を含んでいることが好ましい。多葉状断面繊維の親水性を高めるため、多葉状断面繊維を構成する単一樹脂成分に対し親水化剤を含ませる方法は特に限定されず、具体的には、単一樹脂成分に対し無機物粒子を混合する方法、単一樹脂成分に対し親水化剤等を混合する方法、単一樹脂成分に対し極性基を有する変性ポリオレフィンを混合する方法等により単一樹脂成分に対し、親水化剤を含ませることができる。前記単一樹脂成分に添加できる親水化剤は特に限定されないが、無機物粒子としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の酸化物、炭酸塩若しくは硫酸塩等が挙げられる。
【0028】
前記単一樹脂成分に添加できる親水化剤としては、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基(カルボキシ基とも称す)、スルホン基などの親水基を有する化合物であればよく特に限定されないが、例えば、脂肪酸グリセライド(モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステル、テトラグリセリン脂肪酸エステルといった、グリセリンの重合度が1から10までのポリグリセリン脂肪酸エステル)、グリセリンの重合度が1から10までのポリグリセリンのアルキレンオキサイド付加物、炭素数が8~18のアルキル基を含むPOEアルキル(C~C18)リン酸塩、炭素数が8~18のアルキル基を含むアルキル(C~C18)リン酸塩、炭素数が8~18のアルキル基を含むアルキル(C~C18)リン酸エステル塩、アルコキシ化アルキルフェノール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、および脂肪酸ジエタノールアミド等が挙げられる。前記単一樹脂成分に添加できる極性基を有する変性ポリオレフィンとしてはポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂に無水マレイン酸をグラフト重合させた樹脂が挙げられる。前記無機物粒子、親水化剤、極性基を有する変性ポリオレフィン等は、可紡性や繊維物性を大きく阻害しない範囲で混合することができ、単一樹脂成分全体の質量(すなわち繊維全体の質量)を100質量%としたとき0.1質量%以上15質量%以下の割合になるように添加することが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下の割合になるように添加することがより好ましく0.8質量%以上8質量%以下の割合になるよう添加することが特に好ましい。
【0029】
本発明の不織布に含まれる多葉状断面繊維の親水性を高める方法として、多葉状断面繊維の表面に界面活性剤を主成分とする繊維処理剤を付着させる方法がある。多葉状断面繊維の表面に付着させる繊維処理剤に含まれる界面活性剤としては特に限定されず、合成繊維の親水性を向上させる目的で使用される通常のもので差し支えなく、例えば、オクチルアルキルホスフェート、デシルアルキルホスフェート、ラウリルアルキルホスフェート、トリデシルアルキルホスフェート、ミリスチルアルキルホスフェート、セチルアルキルホスフェート、ステアリルアルキルホスフェートなどのアルキルホスフェートおよびこれらのナトリウムあるいはカリウム等の金属塩等のリン酸エステル系界面活性剤等が挙げられる。
【0030】
本発明の不織布に含まれる多葉状断面繊維の親水性を高める方法として、多葉状断面繊維に対し、親水性処理によって親水性を向上させてもよい。親水性処理としては、例えば、フッ素ガス処理、プラズマ放電処理及びコロナ放電処理などが挙げられる。コロナ放電処理を実施する場合、特に限定されないが、コロナ放電処理における1回当たりの放電量は、50W・min/m以上であることが好ましく、総放電量は100W・min/m以上5000W・min/m以下であることが好ましい。より好ましい総放電量は、250W・min/m以上5000W・min/m以下である。また、プラズマ処理は、特に限定されないが、常圧プラズマ処理であることが好ましく、電圧50kV以上250kV以下、周波数500pps以上3000pps以下の条件で処理するとよい。常圧プラズマ処理であると、低電圧で処理できるので、繊維の劣化が少なく都合がよい。また、フッ素ガス処理は、特に限定されないが、例えば、フッ素ガスと酸素ガスを含む混合ガス又はフッ素ガスと亜硫酸ガスを含む混合ガスを用いて行うことができる。
【0031】
本発明の不織布は前記多葉状断面繊維を20質量%以上含む不織布である。不織布全体の質量を100質量%としたとき、不織布に対し、所定の繊維横断面形状を有する多葉状断面繊維を20質量%以上含むことで、当該不織布は、多葉状断面繊維そのものが有するワイピング性能(凸部によって対象物表面から汚れ、異物を絡め取る性能)および、多葉状断面繊維から発生し得る多葉状断面繊維由来繊維のもつワイピング性能(特に多葉状断面繊維から発生し得る極細繊維状の繊維が有するワイピング性能)により高いワイピング性能を発揮することができる。本発明の不織布において、多葉状断面繊維が含まれる割合の上限は特に限定されず、多葉状断面繊維のみからなる不織布であってもよいが、他の繊維を含む不織布であるとワイピングシートに求められる、毛羽の発生量や脱落した繊維の量の低減を図ることができる。そこで、本発明の不織布において、当該不織布が多葉状断面繊維以外の繊維を含む不織布であるときの好ましい実施形態である、多葉状断面繊維、親水性繊維および熱接着性繊維を含む不織布について詳細に説明する。
【0032】
本発明の不織布、すなわち、対象物の表面を清拭するワイピングシートの基材として用いる不織布の一形態は、多葉状断面繊維を20質量%以上含む不織布であって、
前記多葉状断面繊維は、少なくとも3個の凸部を有する多葉状断面形状の繊維横断面を有する繊維であり、
少なくとも一つの凸部は、先端部分が略曲線状であり得、繊維の中心に向かう根元部分の幅Wbが先端部分の最大幅Wtより小さく、
前記多葉状断面繊維の少なくとも一部は、多葉状断面繊維を構成する少なくとも3個の凸部のうち、少なくとも一つの凸部が分割または剥離して形成される多葉状断面繊維由来繊維を含むことができ、
前記多葉状断面繊維に由来する繊維は、多葉断面繊維に含まれる複数の凸部のうち、少なくとも一つの凸部が分割または剥離して形成される極細繊維状であり得、
前記不織布は多葉状断面繊維に加え、親水性繊維、および熱接着性繊維を含み、
前記不織布は、前記多葉状断面繊維、前記親水性繊維、および前記熱接着性繊維を合わせた質量を100質量%としたときに、前記多葉状断面繊維に由来する繊維を20質量%以上80質量%以下、前記親水性繊維を10質量%以上50質量%以下、および前記熱接着性繊維を10質量%以上40質量%以下含み、
不織布内の構成繊維の交点の少なくとも一部が、前記熱接着性繊維によって熱接着されている不織布である。
【0033】
本発明はまた、前記不織布を基材とし、前記基材100質量部に対して、液体が100質量部以上、1000質量部以下の範囲内にある割合で含浸されている、対人用ウェットワイピングシートを提供する。
【0034】
本発明のワイピングシートの基材として用いる不織布の一形態は、所定の繊維横断面形状を満たす多葉状断面繊維に加え、親水性繊維および熱接着性繊維を含む不織布であり、前記不織布は、前記多葉状断面繊維、前記親水性繊維、および前記熱接着性繊維を合わせた質量を100質量%としたときに、前記多葉状断面繊維に由来する繊維を20質量%以上80質量%以下、前記親水性繊維を10質量%以上50質量%以下、および前記熱接着性繊維を10質量%以上40質量%以下含み、不織布内の構成繊維の交点の少なくとも一部が、前記熱接着性繊維によって熱接着されている不織布である。多葉状断面繊維を含む不織布に対し、親水性繊維および熱接着性繊維を所定量含む不織布とし、不織布を構成する構成繊維の交点の少なくとも一部を前記熱接着繊維によって熱接着することで、多葉状断面繊維を含む不織布が持つ高いワイピング性能を維持しつつ、不織布の薬液含浸性を高め、繊維脱落量の低減を図ることができ、当該不織布は、得られる不織布に対し、薬液を含浸して使用する各種ウェットワイピング用シートの基材として特に適したものとなる。この不織布に含まれる多葉状断面繊維については説明しているため、親水性繊維および熱接着性繊維並びに不織布の製造方法等について、さらに説明する。
【0035】
(親水性繊維)
親水性繊維は、不織布に含浸される薬液(例えば、液体化粧料)を保持するとともに、保持した液体を対象物に供給する役割をする。本発明において、親水性繊維は公定水分率が5%以上の繊維である。公定水分率は、JIS L0105(2006)に示されている。公定水分率が知られていない場合には、次の式から算出される値を公定水分率とする。
公定水分率(%)=[(W-W’)/W’]×100
ここで、Wは温度20℃、湿度65%RHの環境下における繊維の質量(g)、W’は繊維絶乾時の質量(g)をそれぞれ意味する。なお、温度20℃、湿度65%RHの環境下における繊維の質量は、温度20℃、湿度65%RHの環境下に繊維を放置し、一定の質量になった時の質量を意味し、繊維絶乾時の質量は、105℃に設定した乾燥機中に繊維を放置し、一定の質量になった時の質量を意味する。
【0036】
親水性繊維は、具体的には、パルプ、コットン(木綿、あるいは単に綿繊維とも称す)、麻、シルク、およびウールなどの天然繊維、ビスコースレーヨン、キュプラ、および溶剤紡糸セルロース繊維などの再生繊維、ならびに親水性を有する合成繊維、または疎水性の合成繊維(公定水分率が5%未満の合成繊維)に親水化処理を施したもの等である。親水化処理として、例えば、コロナ放電処理、スルホン化処理、グラフト重合処理、繊維への親水化剤の練り込み、および耐久性油剤の塗布が挙げられる。親水性繊維は、セルロース系繊維であることが好ましい。セルロース系繊維は、例えば、上述の天然繊維及び再生繊維を含み、より具体的には、
1)機械パルプ、再生パルプおよび化学パルプ等のパルプ
2)コットン(木綿、綿繊維)、麻などの植物性天然繊維、ならびに
3)ビスコースレーヨン、キュプラ、および溶剤紡糸セルロース繊維(例えば、レンチングリヨセル(登録商標)およびテンセル(登録商標))等の再生繊維を含む。
【0037】
パルプは、針葉樹木材または広葉樹木材を用いて常套の方法で製造されたものであってよい。一般的に、パルプ繊維の繊度は、1.0dtex以上4.0dtex以下、繊維長は0.8mm以上4.5mm以下であるが、この範囲外の繊度および/または繊維長を有するパルプ繊維を使用してもよい。
【0038】
再生繊維を使用する場合、その繊度は、0.1dtex以上6dtex程度であることが好ましく、0.3dtex以上4.5dtex以下であることがより好ましく、0.5dtex以上3.5dtex以下であることが特に好ましい。この範囲内の繊度の再生繊維は柔軟性を確保するのに適している。再生繊維の繊度が小さすぎると、繊維ウェブを製造する際のカード通過性が悪化し、不織布の生産性が低下することがある。再生繊維の繊度が大きすぎると、不織布が粗いものとなって、触感が低下することがある。
【0039】
親水性繊維は、再生繊維であることがより好ましく、特に、ビスコースレーヨンであることが好ましい。ビスコースレーヨンは、対人用のウェットシートの分野で使用されてきた実績があること、および比較的安価で得やすいことによる。
尚、親水性繊維は、上述の多葉状断面繊維を含まない。
【0040】
(熱接着性繊維)
熱接着性繊維は、熱処理により少なくとも部分的に溶融する繊維を言う。熱処理温度は、熱接着性繊維の成分に応じて適宜選択可能である。かかる熱接着性繊維によって、本発明の不織布を構成する構成繊維同士の交点のうち、少なくとも一部が熱接着(固定)される。不織布が、熱接着された繊維交点(固定点)を多数有することは、最終的に得られる不織布の湿潤状態における取扱性(機械的強度、弾性等、ひいては湿潤状態での展開性および耐伸び性)向上に寄与する。
【0041】
前記熱接着性繊維は、典型的には合成繊維であり、融点が比較的高い(例えば140℃を超える)熱可塑性樹脂の成分(以下、「高融点成分」)と、融点がそれより低い(例えば140℃以下)熱可塑性樹脂の成分(以下、「低融点成分」)とを含み、低融点成分が繊維表面の少なくとも一部を占める複合繊維であることが好ましい。融点は、繊維にした後の樹脂の融点であり、JIS K7121(1987)に準じて測定したDSC曲線より求め得る。かかる複合繊維を、高融点成分の融点未満かつ低融点成分の融点以上の温度で熱処理することにより、高融点成分を残存させつつ低融点成分を溶融させて他の繊維と融着できるので、繊維間をしっかりと接合することができる。
【0042】
前記高融点成分は、前記低融点成分と十分な融点差、好ましくは5℃以上の融点差、より好ましくは10℃以上の融点差を有し、低融点成分を溶融する温度で熱により変形等しないものであることが好ましい。高融点成分は、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂であってよく、低融点成分は、それより低い融点を有するポリオレフィン系樹脂であってよい。高融点成分/低融点成分の具体的な組み合わせとしては、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリプロピレン/エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられる。ポリエチレンには、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が含まれる。
【0043】
より詳細には、前記熱接着性繊維は、芯鞘型複合繊維であってよい。芯鞘型複合繊維は、芯部と鞘部とで異なる2つの成分から成る複合繊維であり、芯部と鞘部の配置は特に限定されない、すなわち、繊維横断面において、芯成分が1箇所に存在する単芯であってもよいし、芯成分が2箇所以上に存在する多芯であってもよい。また、繊維横断面において芯成分と鞘成分の位置関係が、芯成分と鞘成分が同心円状に配置されている同心円型であってもよいし、芯成分が偏って配置されている偏心型であってもよいし、芯成分と鞘成分が並ぶように配置された並列型(サイドバイサイドとも称す)であってもよい。本発明の化粧料含浸皮膚被覆シート用不織布において、より少ない熱接着繊維の含有量で、不織布全体を均一に、ある程度強力に繊維間を熱接着する必要があるため、繊維表面に低融点成分が均一に分布している、同心円型の繊維横断面を有する芯鞘型複合繊維を用いることが好ましい。
【0044】
芯鞘型複合繊維は、例えば、第1のポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂(高融点成分)を含む芯部と、該第1のポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂の融点(高融点成分)より低い融点を有する第2のポリオレフィン系樹脂または低融点のポリエステル系樹脂(低融点成分)を含む鞘部とから構成されていてよい。具体的には、高融点成分はポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸等であってよく、好ましくはポリプロピレンであり、低融点成分は高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン-1、ポリブチレンサクシネート等であってよく、好ましくは高密度ポリエチレンである。
【0045】
前記芯鞘型複合繊維の繊度は、高い透明感を得る観点からは、太いほうが好ましい。繊度が太いと、繊維本数が減り、光の乱反射が低減されると考えられる。しかしながら、繊度が太すぎると、熱接着される繊維交点(固定点)の数が減るため、取扱性の向上効果が低減するおそれがある。加えて、芯鞘型複合繊維の繊度が太すぎると不織布の触感が硬くなったり、不織布を肌に接触させたときに刺激感(例えばチクチクとした触感)が強くなり、対人用ワイピングシートの基布として適さなくなったりするおそれがある。芯鞘型複合繊維の繊度は、0.5dtex以上、6dtex以下であると好ましく、0.8dtex以上、4.5dtex以下であるとより好ましく、1dtex以上3.5dtex以下であると特に好ましい。
【0046】
また、熱接着性繊維は、分割型複合繊維に由来する繊維であってよい。分割型複合繊維は、2以上の成分から成る複合繊維であって、分割により1本の繊維から複数本のより繊度の小さい繊維を形成し得る繊維である。「分割型複合繊維に由来する繊維」とは、分割型複合繊維の分割により形成された、分割前の一つのセクションのみから成る単一繊維、および2以上のセクションから成る繊維のほか、1本の分割型複合繊維の一部が分割されているが、他の部分において全く分割していない繊維を指す。あるいは、不織布中に分割型複合繊維の分割により形成された繊維が含まれる限りにおいて、1本の分割型複合繊維が全く分割されていないことがある場合に、そのような全く分割されていない分割型複合繊維も、分割型複合繊維に由来する繊維に含まれる。
【0047】
分割型複合繊維は、具体的には、繊維横断面において構成成分のうち少なくとも1成分が2個以上に区分されてなり、構成成分の少なくとも一部が繊維表面に露出し、その露出部分が繊維の長さ方向に連続的に形成されている繊維横断面構造を有する。
【0048】
例えば、分割型複合繊維は、第1のポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂(高融点成分)と、該第1のポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂(高融点成分)の融点より低い融点を有する第2のポリオレフィン系樹脂または低融点のポリエステル樹脂(低融点成分)との組み合わせから構成されていてよい。具体的には、高融点成分はポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸等であってよく、好ましくはポリエチレンテレフタレートであり、低融点成分は高密度ポリエチレン低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン-1、ポリブチレンサクシネート等であってよく、好ましくは高密度ポリエチレンである。
【0049】
分割型複合繊維の繊度は、各成分に分割したときに(即ち、各セクションが一本の繊維となったときに)、繊度0.6dtex以下、好ましくは繊度0.5dtex以下の極細繊維を与えるものであれば、特に限定されない。本発明においては、分割型複合繊維に由来する繊維として、低融点成分から成る極細繊維が含まれ、これが繊維同士の交点の少なくとも一部を熱接着している。低融点成分から成る極細繊維の繊度が0.6dtex以下であると、熱接着点が小さいために、不織布が過度に硬くなりにくいため、不織布の風合いが損なわれにくい。
【0050】
そのような極細繊維を発生させるために、分割型複合繊維の繊度は、好ましくは1dtex以上6dtex以下であり、より好ましくは、1.3dtex以上4dtex以下であり、特に好ましくは1.5dtex以上3dtex以下である。また、分割型複合繊維における各成分への分割数(即ち、複合繊維におけるセクションの数)は、4以上、32以下であることが好ましく、4以上、20以下であることがより好ましく、6以上、16以下であることが特に好ましい。分割数が小さいと、繊度0.6dtex以下の極細繊維を形成するために、分割前の繊度を小さくする必要がある。極細繊維の繊度の下限は、特に限定されないが、0.05dtex以上であることが好ましい。
【0051】
セクションの形状は特に限定されない。例えば、分割型複合繊維は、楔形のセクションが菊花状に並べられたものであってよい。あるいは、分割型複合繊維は、繊維横断面において各セクションが層状に並べられたものであってよい。また、分割型複合繊維は繊維横断面を観察したとき長さ方向に連続する空洞部分を有さない、いわゆる中実分割型複合繊維であってよく、あるいは長さ方向に連続する1箇所以上の空洞部分を有する、いわゆる中空分割型複合繊維であってもよい。
【0052】
上記のような芯鞘型複合繊維または分割型複合繊維を構成する低融点成分と高融点成分との容積比は、特に限定されないが、例えば2:8~8:2(低融点成分の容積:高融点成分容積)であることが好ましく、3:7~7:3(低融点成分の容積:高融点成分の容積)であることがより好ましく、35:65~65:35(低融点成分の容積:高融点成分の容積)であることが特に好ましい。
尚、熱接着性繊維は、上述の多葉状断面繊維を含まない。
【0053】
(不織布構成)
本発明の不織布において、不織布が所定の繊維横断面形状を満たす多葉状断面繊維に加え、親水性繊維および熱接着性繊維を含む不織布である場合、不織布に含まれる多葉状断面繊維、親水性繊維、および熱接着性繊維を合わせた質量を100質量%としたときに、前記多葉状断面繊維に由来する繊維を20質量%以上80質量%以下、前記親水性繊維を10質量%以上50質量%以下、および前記熱接着性繊維を10質量%以上40質量%以下含むことが好ましい。本発明の不織布において、不織布を多葉状断面繊維、親水性繊維および熱接着性繊維の3種類の繊維を少なくとも含む不織布とした場合、これらの繊維の含有量が前記範囲を満たすことで、得られる不織布は、当該不織布を各種ワイピングシートの基布として使用した際、対象面から汚れ、異物を絡め取るワイピング性能により優れるだけでなく、薬液の含浸性により優れたものになりやすく、使用した際の繊維脱落量がより少ないものになりやすい。本発明の不織布が多葉状断面繊維、親水性繊維、熱接着性繊維の3種類の繊維を含んでいる場合、その比率は、多葉状断面繊維に由来する繊維を25質量%以上70質量%以下、親水性繊維を15質量%以上45質量%以下、熱接着性繊維を10質量%以上30質量%以下含んでいることがより好ましく、多葉状断面繊維に由来する繊維を40質量%以上60質量%以下、親水性繊維を20質量%以上40質量%以下、熱接着性繊維を15質量%以上25質量%以下含んでいることが更により好ましい。本発明の不織布は多葉状断面繊維、親水性繊維、熱接着性繊維の他に別の繊維、例えば不織布の剛性(コシ感)を高めるため高融点の熱可塑性樹脂のみからなる丸断面の単一繊維を加えたりすることもできるが、生産工程が複雑になることもあり、多葉状断面繊維(多葉状断面繊維由来繊維を含む)、親水性繊維、熱接着性繊維の3種類の繊維からなる不織布であることが好ましい。
【0054】
本発明の不織布は、前記多葉状断面繊維を含み、前記親水性繊維および前記熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層を1又は2以上含む不織布であり得る。
本発明の不織布は、前記多葉状断面繊維を含み、前記親水性繊維および前記熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層を1つ含む場合、単層構造の不織布であり得、上述の繊維層を2つ以上含む場合、2層以上の繊維層を含む不織布であり得る。
本発明の不織布は、前記多葉状断面繊維を含み、前記親水性繊維および前記熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層を2つ以上含む不織布である場合、各々のそれらの繊維層は使用する繊維の種類や各繊維を含む割合等が全く同じでもよいし、各繊維層において使用される繊維の種類や各繊維を含む割合が相違してもよい。
【0055】
本発明の不織布は、前記多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層を1又は2以上含むことに加えて、前記多葉状断面繊維の含有量が20質量%未満の繊維層を1又は2以上含む、不織布であってよい。前記多葉状断面繊維の含有量が20質量%未満の繊維層は、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層であり得る。
【0056】
本発明の不織布は、単層構造の不織布でもよいし、複数の繊維層を積層した積層構造の不織布(積層不織布)であってもよい。本発明の不織布が積層構造の不織布である場合、例えば、前記多葉状断面繊維の含有量が20質量%未満の繊維層として、パルプ、コットン、レーヨン等の親水性繊維を含む繊維層の両表面に、多葉状断面繊維を含む繊維層を重ねた3層積層構造の不織布が例示される。
【0057】
本発明の不織布は、多葉状断面繊維を含む繊維層を含む。多葉状断面繊維を含む繊維層は、他の繊維を含むことができ、親水性繊維及び熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含むことができ、両方を含むことができる。
本発明の不織布は、多葉状断面繊維を含む繊維層、好ましくは多葉状断面繊維の含有量が20質量%以上、より好ましくは多葉状断面繊維の含有量が30%以上である繊維層を複数含んでよいし、多葉状断面繊維の含有量が20質量%未満の他の繊維層を含むことができる。
【0058】
本発明の不織布は、前記多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層からなる単層構造の不織布である場合、多葉状断面繊維、親水性繊維、および熱接着性繊維の合計の質量を100質量%とすると、例えば、前記多葉状断面繊維に由来する繊維を20質量%以上100質量%以下、前記親水性繊維を0質量%以上80質量%以下、および前記熱接着性繊維を0質量%以上80質量%以下含むことができ、前記多葉状断面繊維に由来する繊維を20質量%以上80質量%以下、前記親水性繊維を10質量%以上50質量%以下、および前記熱接着性繊維を10質量%以上40質量%以下含むことが好ましく、多葉状断面繊維に由来する繊維を25質量%以上70質量%以下、親水性繊維を15質量%以上45質量%以下、熱接着性繊維を10質量%以上30質量%以下含むことがより好ましく、多葉状断面繊維に由来する繊維を40質量%以上60質量%以下、親水性繊維を20質量%以上40質量%以下、熱接着性繊維を15質量%以上25質量%以下含むことが更により好ましい。
【0059】
本発明の不織布は、前記多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含んでよい繊維層からなる単層構造の不織布である場合、前記多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層の目付は、例えば、30g/m以上200g/m以下であることが好ましく、30g/m以上100g/m以下であることが好ましい。目付は、35g/m以上であることも好ましく、40g/m以上であることもより好ましい。また、目付は、150g/m以下であることも好ましく、100g/m以下であることもより好ましい。目付の上限と下限は、不織布の用途、使用状況などに応じて、選択することができる。目付が30g/m以上200g/m以下にある不織布を各種ワイピングシートの基布として使用した際、使用感に優れるワイピングシートがより得られやすい。不織布のより好ましい目付は35g/m以上80g/m以下であり、更により好ましい不織布の目付は35g/m以上70g/m以下である。
【0060】
本発明の不織布は、前記多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含んでよい繊維層からなる単層構造の不織布である場合、前記多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層の厚みは特に限定されず、構成繊維の割合、目付および製造条件等によって変化する。不織布の厚み(1cmあたり3gf(2.94cN)の荷重を加えたときの厚さ)は、例えば、0.30mm以上3.00mm以下であることが好ましく、0.50mm以上2.75mm以下であることがより好ましく、0.60mm以上、2.50mm以下であることが特に好ましい。不織布の厚みが小さすぎると、不織布を濡らした状態で折り畳んだときに不織布同士が密着しやすく、ウェットワイピングシートであれば使用感、使いやすさが低下するおそれがある。不織布の厚みが上述の範囲にある場合、不織布を濡らした状態で折り畳んだとしても、不織布同士がより密着し難く、ウェットワイピングシートであれば、使用感、使いやすさにより優れる。
【0061】
本発明の不織布が、前記多葉状断面繊維を含み、好ましくは多葉状断面繊維を20質量%以上含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層を2以上含む積層不織布である場合、或いは、前記多葉状断面繊維を含み、好ましくは多葉状断面繊維を20質量%以上含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層と、多葉状断面繊維の含有量が20質量%未満の繊維層を積層した2層構造の積層不織布である場合、多葉状断面繊維を含む繊維層は、多葉状断面繊維、親水性繊維、および熱接着性繊維の合計の質量を100質量%とすると、例えば、前記多葉状断面繊維に由来する繊維を20質量%以上100質量%以下、前記親水性繊維を0質量%以上80質量%以下、および前記熱接着性繊維を0質量%以上80質量%以下含むことができる。前記、多葉状断面繊維を含む繊維層が多葉状断面繊維、親水性繊維、および熱接着性繊維を含む繊維層である場合、この繊維層は、前記多葉状断面繊維に由来する繊維を20質量%以上80質量%以下、前記親水性繊維を10質量%以上50質量%以下、および前記熱接着性繊維を10質量%以上40質量%以下含むことが好ましい。
【0062】
本発明の不織布が、前記多葉状断面繊維を含み、好ましくは多葉状断面繊維を20質量%以上含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層を2以上含む積層不織布である場合、或いは、前記多葉状断面繊維を含み、好ましくは多葉状断面繊維を20質量%以上含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層と、多葉状断面繊維の含有量が20質量%未満の繊維層を積層した2層構造の積層不織布である場合において、前記多葉状断面繊維を含み、親水性繊維および熱接着性繊維から選択される少なくとも1種を含む繊維層に含まれる繊維層は、不織布の使用用途に応じて、多葉状断面繊維以外にどのような繊維を使用し、どれくらいの含有量とするかを決定すればよい。
【0063】
本発明の不織布が、主にガラス製品の表面を清拭したり、各種車両(例えば一般家庭で使用される乗用車)の車体表面を清拭したり、メイク落とし用シートなど人の肌を清拭したりする用途であれば、清拭する表面に対し、刺激が少ない、清拭する表面を傷付けにくいことが求められる。このような用途に使用するワイピングシートの基布として、本発明の不織布を使用する場合、前記多葉状断面繊維を含む繊維層は、多葉状断面繊維、および熱接着性繊維を含む繊維層とし、当該繊維層において、多葉状断面繊維、親水性繊維、および熱接着性繊維の合計の質量を100質量%とすると、例えば、前記多葉状断面繊維に由来する繊維を20質量%以上80質量%以下、前記親水性繊維を0質量%以上60質量%以下、および前記熱接着性繊維を20質量%以上80質量%以下含むことができる。この時、前記熱接着性繊維は、少なくとも一部は分割型複合繊維であることが好ましく、熱接着性繊維が分割型複合繊維であることがより好ましい。また、この多葉状断面繊維を含む繊維層は、当該繊維層に含まれる繊維同士が熱接着していてもよいし、熱接着していなくてもよいが、対象表面への刺激を抑えるのであれば、当該繊維層に含まれる繊維は熱接着していないことが好ましい。
【0064】
本発明の不織布が、主に家庭の床を清拭するシートや、制汗シート、乳児用・介護用のお尻拭き用シートといった、薬液を十分に含浸し、液枯れすることなく1枚で広い面積をふき取ることが求められるワイピングシートの基布として、本発明の不織布を使用する場合、前記多葉状断面繊維を含む繊維層は、多葉状断面繊維、および親水性繊維を含む繊維層とし、当該繊維層において、多葉状断面繊維、親水性繊維、および熱接着性繊維の合計の質量を100質量%とすると、例えば、前記多葉状断面繊維に由来する繊維を20質量%以上80質量%以下、前記親水性繊維を20質量%以上80質量%以下、および前記熱接着性繊維を0質量%以上60質量%以下含むことができる。
【0065】
本発明の不織布が、主に台所のガスコンロ周辺の焦げ付きや電子レンジ内にこびりついた汚れを清拭するシートや、工場内で使用し、グリスなどで汚れた機械、道具を清拭するシート(工業用ワイパー)といった対象表面を強く擦るワイピングシート、基布に強度が求められるワイピングシートの基布として、本発明の不織布を使用する場合、前記多葉状断面繊維を含む繊維層は、多葉状断面繊維、および熱接着性繊維を含む繊維層とし、当該繊維層において、多葉状断面繊維、親水性繊維、および熱接着性繊維の合計の質量を100質量%とすると、例えば、前記多葉状断面繊維に由来する繊維を20質量%以上80質量%以下、前記親水性繊維を0質量%以上60質量%以下、および前記熱接着性繊維を20質量%以上80質量%以下含むことができる。この時、前記熱接着性繊維は、少なくとも一部は繊維の断面が芯成分と鞘成分からなる芯鞘断面構造の複合繊維(芯鞘型複合繊維)であることが好ましく、熱接着性繊維が芯鞘型複合繊維であることがより好ましい。また、この多葉状断面繊維を含む繊維層は、当該繊維層に含まれる繊維同士が熱接着していてもよいし、熱接着していなくてもよいが、清拭作業に耐える強度が基布に求められることから、当該繊維層に含まれる繊維は熱接着性繊維によって少なくとも一部は繊維同士で熱接着していることが好ましい。
【0066】
本発明の不織布が積層不織布である場合、多葉状断面繊維の含有量が20質量%未満の繊維層の両表面に多葉状断面繊維を含む繊維層を積層した3層構造の積層不織布とすることが好ましい。積層不織布において、積層不織布の両表面を構成しない繊維層、言い換えるならばワイピングシートにおいて、対象表面と接触しない不織布内部を、より液を含浸しやすい繊維層にすることで、不織布の内部は薬液をより多く吸収し、不織布の両表面はワイピングシートの用途に合わせたふき取り性能を有する繊維層にできるためである。本発明の不織布が多葉状断面繊維の含有量が20質量%未満の繊維層の両表面に多葉状断面繊維を含む繊維層を積層した3層構造の積層不織布である場合、多葉状断面繊維の含有量が20質量%未満の繊維層は、より多くの薬液を吸収させるという観点から親水性繊維層を含む繊維層であることが好ましい。当該親水性繊維を含む繊維層は、親水性繊維を50質量%以上100質量%以下、好ましくは親水性繊維を75質量%以上100質量%以下、より好ましくは親水性繊維を80質量%以上100質量%以下含む繊維層であればよい。前記親水性繊維を含む繊維層は、親水性繊維を含み、多葉状断面繊維の含有量が20質量%未満であれば、他に含まれる繊維は特に限定されず、用途や目的に応じて様々な繊維を使用できる。例えば、不織布に強度を持たせるのであれば、熱接着性繊維を含ませることができるし、より嵩高な不織布が求められるのであれば、立体捲縮が発現しうる複合繊維(一例として偏心芯鞘型複合繊維が挙げられる)や、単一の熱可塑性樹脂からなる合成繊維を含ませることができる。
【0067】
本発明の不織布が親水性繊維を含み、多葉状断面繊維の含有量が20質量%以下である繊維層(中間繊維層又は第2繊維層)の両表面に、多葉状断面繊維を含む繊維層(第1繊維層及び第3繊維層)を重ねた3層積層構造の不織布である場合、親水性繊維を含む層(中間繊維層又は第2繊維層)の目付と多葉状断面繊維を含む繊維層(第1繊維層及び第3繊維層)の目付との比(第1繊維層/第2繊維層/第3繊維層)は、例えば、0.1~20/1/0.1~20であってよく、0.3~12/1/0.3~12であってよく、0.5~7/1/0.5~7であってよく、0.5~5.0/1/0.5~5.0であってもよい。目付の比が、0.1~20/1/0.1~20である場合、親水性繊維を含む繊維層(中間繊維層)と多葉状断面繊維を含む繊維層(第1繊維層及び第3繊維層)の目付のバランスが適度なものとなり、例えば、本発明の不織布を、各種薬液を含浸して使用する、対人ウェットワイピングシートや対物ウェットワイピングシートの基布として使用する場合、当該不織布を構成する親水性繊維を含む繊維層(中間繊維層)が十分な量の薬液を吸液することに加え、親水性繊維を含む繊維層(中間繊維層)の両表面に位置する多葉状断面繊維を含む繊維層の目付が適度なものであることで、親水性繊維を含む繊維層(中間繊維層)から不織布表面への薬液の放出量が適度なものとなる、言い換えるならば、親水性繊維を含む繊維層(中間繊維層)から不織布表面への薬液の徐放性に優れるものとなるため、当該不織布を基布として使用した各種ウェットワイピングシートを使用して、対象表面を清拭した際、薬液が徐々に不織布表面に染み出してくるため、1枚のワイピングシートでより広い面積を清拭することを可能にする、という有利な効果を奏し得る。
【0068】
本発明の不織布は、親水性繊維を含み、多葉状断面繊維の含有量が20質量%以下である繊維層(中間繊維層又は第2繊維層)の両表面に、2つの多葉状断面繊維を含む繊維層(第1繊維層及び第3繊維層)を重ねた3層積層構造の不織布である場合、親水性繊維を含む層(中間繊維層又は第2繊維層)の厚みと多葉状断面繊維を含む繊維層(第1繊維層及び第3繊維層)の厚みとの比(第1繊維層/第2繊維層/第3繊維層)は、例えば、0.1~20/1/0.1~20であってよく、0.3~12/1/0.3~12であってよく、0.5~7/1/0.5~7であってよく、0.5~5.0/1/0.5~5.0であってもよい。厚みの比が、0.1~20/1/0.1~20である場合、親水性繊維を含む繊維層(中間繊維層)と多葉状断面繊維を含む繊維層(第1繊維層及び第3繊維層)の厚みのバランスが適度なものとなり、例えば、本発明の不織布を、各種薬液を含浸して使用する、対人ウェットワイピングシートや対物ウェットワイピングシートの基布として使用する場合、親水性繊維を含む繊維層(中間繊維層)から不織布表面までの距離が適度なものとなるため、親水性繊維を含む繊維層(中間繊維層)から不織布表面への薬液の放出量が適度なものとなり、対象表面を清拭した際、薬液が徐々に不織布表面に染み出してくるため、1枚のワイピングシートでより広い面積を清拭することを可能にする、という有利な効果を奏し得る。
【0069】
本発明が目的とする不織布を得られる限り、不織布の目付は特に限定されないが、30g/m以上200g/m以下であることが好ましい。目付がこの範囲内にある不織布を各種ワイピングシートの基布として使用した際、使用感に優れるワイピングシートがより得られやすい。不織布のより好ましい目付は35g/m以上80g/m以下であり、更により好ましい不織布の目付は35g/m以上70g/m以下である。
【0070】
本発明が目的とする不織布を得られる限り、不織布の厚みは特に限定されず、構成繊維の割合、目付および製造条件等によって変化する。不織布の厚み(1cmあたり3gf(2.94cN)の荷重を加えたときの厚さ)は、例えば、0.30mm以上3.00mm以下であることが好ましく、0.50mm以上2.75mm以下であることがより好ましく、0.60mm以上、2.50mm以下であることが特に好ましい。不織布の厚みが小さすぎると、不織布を濡らした状態で折り畳んだときに不織布同士が密着しやすく、ウェットワイピングシートであれば使用感、使いやすさが低下するおそれがある。不織布の厚みが上述の範囲にある場合、不織布を濡らした状態で折り畳んだとしても、不織布同士がより密着し難く、ウェットワイピングシートであれば、使用感、使いやすさにより優れる。
【0071】
(不織布の製造方法)
本発明の不織布は、多葉状断面繊維を含む繊維ウェブを作製し、前記繊維ウェブを構成する繊維同士を交絡することで得られる。不織布は、不織布の使用される用途に応じて他の繊維を混綿してよく、その好ましい一形態として、多葉状断面繊維、親水性繊維および熱接着性繊維を含む不織布がある。多葉状断面繊維、親水性繊維、熱接着性繊維を含む不織布は、多葉状断面繊維、親水性繊維および熱接着性繊維を含む繊維ウェブを作製し、繊維ウェブを繊維交絡処理に付した後、熱接着性繊維(好ましくは、芯鞘型複合繊維の繊維表面を構成する低融点成分)により繊維同士を熱接着させることにより製造される。繊維ウェブは構成繊維を混合して作製する。前記繊維ウェブの形態は、パラレルウェブ、クロスウェブ、セミランダムウェブおよびランダムウェブ等のカードウェブ、エアレイウェブ、湿式抄紙ウェブ、ならびにスパンボンドウェブ等から選択されるいずれの形態であってもよいが、パラレルウェブ、クロスウェブ、セミランダムウェブおよびランダムウェブ等のカードウェブであることが好ましい。
【0072】
カードウェブを作製する場合、構成繊維の繊維長は20mm以上80mm以下とすることが好ましく、25mm以上70mm以下とすることがより好ましく、30mm以上65mm以下とすることが特に好ましい。カードウェブを作製する場合、どの構成繊維も前記繊維長の範囲を満たすことで、カードウェブを製造する工程でネップが発生しにくくなり、不織布を安定して製造することができる。
【0073】
本発明の不織布の製造において、繊維ウェブに施す交絡処理は特に限定されず公知の交絡処理、例えば水流交絡処理(スパンレース処理)やニードルパンチング処理によって交絡処理を行うことができるが、好ましくは水流交絡処理であることが好ましい。水流交絡処理によれば、繊維同士が緻密に交絡し、均一で表面の平坦な不織布を得ることができるとともに、繊維ウェブに含まれる多葉状断面繊維に対して高圧水流を加えることで、多葉状断面繊維の繊維横断面に存在する凸部の一部を多葉状断面繊維から剥離、分割した状態にして、極細繊維状の多葉状断面繊維由来繊維を発生させることができるためである。
【0074】
前記水流交絡処理は、支持体に繊維ウェブ又は積層した繊維ウェブを載せて、柱状水流を噴射することにより実施する。支持体は、不織布表面が平坦となり、かつ凹凸を有しないように、1つあたりの開孔面積が0.2mmを超える開孔を有さず、また、突起またはパターンが形成されていないものであることが好ましい。例えば、支持体は、80メッシュ以上、100メッシュ以下の平織の支持体であることが好ましい。
【0075】
水流交絡処理は、孔径0.05mm以上、0.5mm以下のオリフィスが0.3mm以上1.5mm以下の間隔で設けられたノズルから、水圧1MPa以上15MPa以下の水流を、繊維ウェブの表裏面にそれぞれ1~5回ずつ噴射することにより実施してよい。水圧は、好ましくは、1MPa以上10MPa以下であり、より好ましくは、1MPa以上7MPa以下である。
【0076】
交絡処理後の繊維ウェブは、必要に応じて熱接着処理に付される。熱接着処理は熱接着性繊維(好ましくは、熱接着繊維が2成分以上含む場合、より低融点成分)のみが溶融する温度で実施することが好ましい。交絡処理が水流交絡処理である場合には、熱接着処理が、繊維ウェブから水分を除去する乾燥処理を兼ねてよい。あるいは、熱接着処理と乾燥処理は別々に実施してよい。
【0077】
熱接着処理において、低融点成分以外の繊維成分が溶融すると、接着点が増える又は大きな接着点が形成されて、不織布の柔軟性が損なわれるので、低融点成分のみが溶融するように、温度を選択する。例えば、熱接着性繊維がポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン(ポリエチレンが低融点成分)の組み合わせからなる場合、熱接着処理は、130℃以上150℃以下の温度で実施することが好ましい。また、熱接着性繊維がポリプロピレン/ポリエチレン(ポリエチレンが低融点成分)の組み合わせからなる場合、熱接着処理は、130℃以上145℃以下の温度で実施することが好ましい。熱処理温度を調節することによって、低融点成分による熱接着の度合いを変化させることもできる。熱接着の度合いは不織布の強度、柔軟性、および肌触り等に影響を与える。
【0078】
繊維交絡処理後、熱接着処理の前に、必要に応じて、不織布を拡幅ロールによる拡幅処理に付してよい。拡幅処理を施すことにより、CD方向に向いた繊維の数を増やすことができ、不織布の10%伸長時応力を向上させることができる。
【0079】
熱接着処理により本発明の不織布が完成させてよい。本発明の不織布はこれに液体を含浸させることにより、ウェットシートを構成する。含浸させる液体および含浸量は、用途に応じて適宜選択される。例えば、ウェットシートを、対人用のウェットワイピングシート、または対物用のウェットワイピングシートとして提供する場合には、水、または洗浄成分を含む水性溶液等を不織布100質量部に対して、100質量部以上、1000質量部以下の含浸量で含浸させてよい。対人用のウェットワイピングシートは、より具体的には、例えば、お手拭き、おしり拭き、経血拭き、化粧落とし用シート、洗顔シート、制汗シート、およびネイルリムーバーとして提供される。対物用のウェットワイピングシートは、具体的には、例えば、家庭用の各種ウェットワイピングシート、より具体的には、フローリング用や畳用に分けられる床用ウェットワイピングシートや、ガラス製品用のウェットワイピングシート、一般家電製品を清掃するウェットワイピングシート、洗面台やトイレの便器といった衛生陶器を清拭することを目的としたウェットワイピングシート、油の飛び跳ねや焦げ付きを清拭することを主な目的とした調理器具用のワイピングシート、乗用車を始めとする各種車両の車体を清拭することを目的とした車両用のウェットワイピングシートの他、機械に付着したグリスなどの油汚れを除去する工業用ワイパーとして提供される。
【実施例0080】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例の記載において、特に記載がない限り、溶媒を考慮しない部分を、重量部及び重量%の基準としている。
【0081】
[実施例1]
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)製、SA03(商品名)融点:160℃、MFR230:30g/10分)を準備した。これを、四葉型のノズル孔形状を有する紡糸ノズルを用いて、紡糸温度を270℃で溶融押し出しし、引き取り速度1000m/分で引き取り、繊度4dtexの紡糸フィラメント(未延伸)を製造した。その紡糸フィラメントを、90℃の温水中で、2.7倍に湿式延伸し、繊維処理剤(C12アルキルリン酸エステルカリウム塩を主成分とする繊維処理剤)を繊維処理剤の有効成分が繊維の質量に対し0.3質量%付着するように付着させた後、連続している繊維を繊維長が51mmになるよう切断して、繊度1.7dtex(繊維横断面の面積が同じ面積の丸断面繊維に換算したときの繊維径:約15.5μm)の繊維1-1を得た。
【0082】
繊維1-1は、図1に例示するような、繊維横断面形状が4つの凸部を有する4葉状であり、その凸部は、先端部が略曲線状であり、繊維の中心に向かう根元部分の幅が先端部分の最大幅に比べて小さくなっていた。凸部の先端部分における最大幅Wtは8.6μm、根元部分の幅Wbは4.8μm、凸部の最大幅Wtと根元部分の幅Wbの比であるWt/Wbは1.79、凸部の長さLt(凸部の根元部分の中心点から先端までの長さ)は9.4μm、凸部の長さLtと根元部分の幅Wbの比であるLt/Wbは1.96であった。凸部が根元から変形している箇所もあり、隣接する凸部間の距離は一定ではなく、一部の繊維では、凸部の根元部分の一部は、剥離していた。
【0083】
繊維2として、レーヨン(ダイワボウレーヨン株式会社 製、コロナ(登録商標))を準備した。繊維2の繊度は1.7dtex(繊維横断面の面積が同じ面積の丸断面繊維に換算したときの繊維径:約12μm)であった。
繊維3として、芯がポリプロピレン(融点:160℃)、鞘が高密度ポリエチレン(融点:133℃)の芯鞘型複合繊維(PP/HDPE)(大和紡績株式会社 製、NBF(登録商標)(H)(商品名))を準備した。繊維3の繊度は1.7dtex(繊維径:約15.5μm)であった。
【0084】
50質量%の繊維1-1、30質量%の繊維2、20質量%の繊維3を混合して、パラレルカード機を用いて、ウェブ狙い目付約50g/mでパラレルウェブを製造した。このウェブに、水流交絡処理を施して、繊維同士を交絡させた。水流交絡処理は、孔径0.08mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられたノズルを用いてウェブの一方の面に3.0MPaの柱状水流を1回噴射し、他方の面に3.0MPaの柱状水流を1回噴射して行った。この水流交絡処理の間に、繊維1-1の少なくとも一部(凸部の一部)が、剥離などしたと考えられる。
水流交絡後のウェブを135℃の熱処理に付し、乾燥処理と熱接着処理を同時に行った。熱処理によって、繊維3の高密度ポリエチレンのみを溶融させて、高密度ポリエチレンによって繊維同士を熱接着させて、実施例1の不織布を製造した。
【0085】
[実施例2]
実施例1で記載した溶融紡糸の工程において、引き取り速度900m/分にすることで、繊度4.5dtexの紡糸フィラメント(未延伸)を製造した。その紡糸フィラメントを、90℃の温水中で、2.0倍に湿式延伸したことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて繊度2.6dtex(繊維横断面の面積が同じ面積の丸断面繊維に換算したときの繊維径:約19μm)の繊維1-2を得た。
繊維1-2は、繊維1-1と同様に4葉状であった。凸部の先端部分における最大幅Wtは9.7μm、根元部分の幅Wbは5.4μm、凸部の最大幅Wtと根元部分の幅Wbの比であるWt/Wbは、1.80、凸部の長さLt(凸部の根元部分の中心点から先端までの長さ)は10.2μm、凸部の長さLtと根元部分の幅Wbの比であるLt/Wbは1.89であった。
繊維1-1の代わりに、繊維1-2を用いたことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、実施例2の不織布を製造した。
【0086】
[実施例3]
実施例1で記載した溶融紡糸の工程において、原料のポリプロピレン樹脂の代わりに、ポリプロピレン樹脂の質量と親水化剤の質量の合計を100質量%としたときに、親水化剤の割合が1.0質量%となるように親水化剤(炭素数12のアルキルリン酸エステルカリウム塩)を添加したポリプロピレン樹脂を原料として使用し、引き取り速度1350m/分にすることで、繊度3.5dtexの紡糸フィラメント(未延伸)を製造した。その紡糸フィラメントを、90℃の温水中で、2.6倍に湿式延伸したことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、繊度1.5dtex(繊維横断面の面積が同じ面積となる丸断面繊維に換算したときの繊維径:約14.6μm)の繊維1-3を得た。
繊維1-3は、繊維1-1と同様に4葉状であった。凸部の先端部分における最大幅Wtは8.3μm、根元部分の幅Wbは4.9μm、凸部の最大幅Wtと根元部分の幅Wbの比であるWt/Wbは1.69、凸部の長さLt(凸部の根元部分の中心点から先端までの長さ)は9.6μm、凸部の長さLtと根元部分の幅Wbの比であるLt/Wbは、1.96であった。
繊維1-1の代わりに、繊維1-3を用いたことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、実施例3の不織布を製造した。
【0087】
[実施例4]
実施例1で記載した溶融紡糸の工程において、原料のポリプロピレン樹脂の代わりに、ポリプロピレン樹脂の質量と親水化剤の質量の合計を100質量%としたときに、親水化剤の割合が1.0質量%となるように親水化剤(炭素数12のアルキルリン酸エステルカリウム塩)を添加したポリプロピレン樹脂を原料として使用したことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、繊度1.7dtex(繊維横断面の面積が同じ面積の丸断面繊維に換算したときの繊維径:約15.5μm)の繊維1-4を得た。
繊維1-4は、繊維1-1と同様に4葉状であった。凸部の先端部分における最大幅Wtは8.7μm、根元部分の幅Wbは5.5μm、凸部の最大幅Wtと根元部分の幅Wbの比であるWt/Wbは1.58、凸部の長さLt(凸部の根元部分の中心点から先端までの長さ)は、9.0μm、凸部の長さLtと根元部分の幅Wbの比であるLt/Wbは1.64であった。
繊維1-1の代わりに、繊維1-4を用いたことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、実施例4の不織布を製造した。
【0088】
[実施例5]
実施例1で記載した溶融紡糸の工程において、原料のポリプロピレン樹脂の代わりに、ポリプロピレン樹脂の質量と親水化剤の質量の合計を100質量%としたときに、親水化剤の割合が1.0質量%となるように親水化剤(炭素数12のアルキルリン酸エステルカリウム塩)を添加したポリプロピレン樹脂を原料として使用し、引き取り速度900m/分にすることで、繊度4.5dtexの紡糸フィラメント(未延伸)を製造した。その紡糸フィラメントを、90℃の温水中で、2.3倍に湿式延伸したことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、繊度2.2dtex(繊維横断面の面積が同じ面積の丸断面繊維に換算したときの繊維径:約17.5μm)の繊維1-5を得た。
繊維1-5は、繊維1-1と同様に4葉状であった。凸部の先端部分における最大幅Wtは8.4μm、根元部分の幅Wbは5.0μm、凸部の最大幅Wtと根元部分の幅Wbの比であるWt/Wbは1.68、凸部の長さLt(凸部の根元部分の中心点から先端までの長さ)は10.5μm、凸部の長さLtと根元部分の幅Wbの比であるLt/Wbは2.10であった。
繊維1-1の代わりに、繊維1-5を用いたことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、実施例5の不織布を製造した。
【0089】
[実施例6]
実施例2で記載した溶融紡糸の工程において、原料のポリプロピレン樹脂の代わりに、ポリプロピレン樹脂の質量と親水化剤の質量の合計を100質量%としたときに、親水化剤の割合が1.0質量%となるように親水化剤(炭素数12のアルキルリン酸エステルカリウム塩)を添加したポリプロピレン樹脂を原料として使用したことを除いて、実施例2で記載した方法と同様な方法を用いて、繊度2.6dtex(繊維横断面の面積が同じ面積の丸断面繊維に換算したときの繊維径:約19.0μm)の繊維1-6を得た。
繊維1-6は、繊維1-1と同様に4葉状であった。凸部の先端部分における最大幅Wtは9.3μm、根元部分の幅Wbは6.2μm、凸部の最大幅Wtと根元部分の幅Wbの比であるWt/Wbは、1.50、凸部の長さLt(凸部の根元部分の中心点から先端までの長さ)は11.5μm、凸部の長さLtと根元部分の幅Wbの比であるLt/Wbは1.85であった。
繊維1-1の代わりに、繊維1-6を用いたことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、実施例6の不織布を製造した。
【0090】
[実施例7]
実施例1で記載した溶融紡糸の工程において、原料のポリプロピレン樹脂の代わりに、ポリプロピレン樹脂の質量と親水化剤の質量の合計を100質量%としたときに、親水化剤の割合が6.0質量%となるように親水化剤(炭素数12のアルキルリン酸エステルカリウム塩)を添加したポリプロピレン樹脂を原料として使用したことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、繊度1.7dtex(繊維横断面の面積が同じ面積の丸断面繊維に換算したときの繊維径:約15.5μm)の繊維1-7を得た。
繊維1-7は、繊維1-1と同様に4葉状であった。凸部の先端部分における最大幅Wtは8.6μm、根元部分の幅Wbは4.8μm、凸部の最大幅Wtと根元部分の幅Wbの比であるWt/Wbは1.79、凸部の長さLt(凸部の根元部分の中心点から先端までの長さ)は9.4μm、凸部の長さLtと根元部分の幅Wbの比であるLt/Wbは1.96であった。
繊維1-1の代わりに、繊維1-7を用いたことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、実施例7の不織布を製造した。
【0091】
[実施例8]
実施例5で記載した溶融紡糸の工程において、原料のポリプロピレン樹脂の代わりに、ポリプロピレン樹脂の質量と親水化剤の質量の合計を100質量%としたときに、親水化剤の割合が6.0質量%となるように親水化剤(炭素数12のアルキルリン酸エステルカリウム塩)を添加したポリプロピレン樹脂を原料として使用したことを除いて、実施例5で記載した方法と同様な方法を用いて、繊度2.2dtex(繊維横断面の面積が同じ面積の丸断面繊維に換算したときの繊維径:約17.5μm)の繊維1-8を得た。
繊維1-8は、繊維1-1と同様に4葉状であった。凸部の先端部分における最大幅Wtは8.4μm、根元部分の幅Wbは5.0μm、凸部の最大幅Wtと根元部分の幅Wbの比であるWt/Wbは1.68、凸部の長さLt(凸部の根元部分の中心点から先端までの長さ)は10.5μm、凸部の長さLtと根元部分の幅Wbの比であるLt/Wbは2.10であった。
繊維1-1の代わりに、繊維1-8を用いたことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、実施例8の不織布を製造した。
【0092】
[実施例9]
実施例2で記載した溶融紡糸の工程において、原料のポリプロピレン樹脂の代わりに、ポリプロピレン樹脂の質量と親水化剤の質量の合計を100質量%としたときに、親水化剤の割合が6.0質量%となるように親水化剤(炭素数12のアルキルリン酸エステルカリウム塩)を添加したポリプロピレン樹脂を原料として使用したことを除いて、実施例2で記載した方法と同様な方法を用いて、繊度2.6dtex(繊維横断面の面積が同じ面積の丸断面繊維に換算したときの繊維径:約19.0μm)の繊維1-9を得た。
繊維1-9は、繊維1-1と同様に4葉状であった。凸部の先端部分における最大幅Wtは10.3μm、根元部分の幅Wbは6.2μm、凸部の最大幅Wtと根元部分の幅Wbの比であるWt/Wbは、1.66、凸部の長さLt(凸部の根元部分の中心点から先端までの長さ)は11.0μm、凸部の長さLtと根元部分の幅Wbの比であるLt/Wbは1.77であった。
繊維1-1の代わりに、繊維1-9を用いたことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、実施例9の不織布を製造した。
【0093】
[実施例10]
実施例3で記載した不織布の製造方法において、水流交絡処理を両面とも1.5MPaの柱状水流で行ったことを除いて、実施例3で記載した方法と同様な方法を用いて、実施例10の不織布を製造した。
【0094】
[実施例11]
実施例3で記載した不織布の製造方法において、水流交絡処理を両面とも4.5MPaの柱状水流で行ったことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、実施例11の不織布を製造した。
【0095】
[実施例12]
実施例4で記載した不織布の製造方法において、30質量%の繊維1-4、50質量%の繊維2、20質量%の繊維3を混合してパラレルウェブを製造したことを除いて、実施例4で記載した方法と同様な方法を用いて、実施例12の不織布を製造した。
【0096】
[実施例13]
実施例4で記載した不織布の製造方法において、70質量%の繊維1-4、10質量%の繊維2、20質量%の繊維3を混合してパラレルウェブを製造したことを除いて、実施例4で記載した方法と同様な方法を用いて、実施例13の不織布を製造した。
【0097】
[実施例14]
実施例4で記載した不織布の製造方法において、繊維1-4のみを使用してパラレルウェブを製造したことを除いて、実施例4で記載した方法と同様な方法を用いて、実施例14の不織布を製造した。
【0098】
[比較例1]
繊維1-1の代わりに、扁平PET繊度1.7dtex(繊維径13.0μm)の繊維1’-1(東レ社製T1281(商品名))を用いた。
繊維1-1の代わりに、繊維1’-1を用いたことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、比較例1の不織布を製造した。
【0099】
[比較例2]
丸型のノズル孔形状を有する紡糸ノズルを用いたことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、繊度1.4dtex(繊維径:14.6μm)の繊維1’-2を得た。
繊維1-1の代わりに、繊維1’-2を用いたことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、比較例2の不織布を製造した。
【0100】
[比較例3]
丸型のノズル孔形状を有する紡糸ノズルを用いたことと、乾式延伸後、1.0質量%の親水化剤(炭素数12のアルキルリン酸エステルカリウム塩)を繊維に付着させたことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、繊度1.5dtex(繊維径:14.6μm)の繊維1’-3を得た。
繊維1-1の代わりに、繊維1’-3を用いたことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、比較例3の不織布を製造した。
【0101】
[比較例4]
繊維1-1の代わりに、繊維横断面の形状が手裏剣状であるPET繊維(台南紡社製PZ-FS(商品名)、繊度:1,6dtex、繊維横断面の面積が同じ面積となる丸断面繊維に換算したときの繊維径:約12.5μm、繊維長:38mm)を用意し、これを繊維1’-4として不織布を作製する。
繊維1’-4は、4葉状であるが、手裏剣状であった。凸部の先端部分における最大幅Wtは6.4μm、根元部分の幅Wbは7.9μm、凸部の最大幅Wtと根元部分の幅Wbの比であるWt/Wbは0.81、凸部の長さLt(凸部の根元部分の中心点から先端までの長さ)は、5.8μm、凸部の長さLtと根元部分の幅Wbの比であるLt/Wbは0.73であった。
繊維1-1の代わりに、繊維1’-4を用いたことを除いて、実施例1で記載した方法と同様な方法を用いて、比較例4の不織布を製造した。
【0102】
[比較例5]
比較例1で記載した不織布の製造方法において、繊維1’-1のみを使用してパラレルウェブを製造したことを除いて、比較例1で記載した方法と同様な方法を用いて、比較例5の不織布を製造した。
【0103】
[比較例6]
比較例4で記載した不織布の製造方法において、繊維1’-4のみを使用してパラレルウェブを製造したことを除いて、比較例1で記載した方法と同様な方法を用いて、比較例5の不織布を製造した。
【0104】
[比較例7]
比較例5で記載した不織布の製造方法において、繊維1’-1に代えて、市販されている分割型複合繊維(大和紡績株式会社製 DF-1(商品名) ポリエチレンテレフタレート樹脂とポリプロピレン樹脂を組み合わせ、それぞれ8個、合計16個の樹脂成分が交互に配置されている、丸断面の16分割繊維)のみを使用してパラレルウェブを製造したことを除いて、比較例5で記載した方法と同様な方法を用いて、比較例7の不織布を製造した。
【0105】
上述の実施例1~比較例4の不織布、繊維1-1から1’-4の物性などをまとめて表1から3に示した。
繊維1-1から1’-4の物性の測定方法は、下記の通りである。
【0106】
[単繊維繊度]
単繊維繊度は、JIS L 1015:2021 8.5.2 ISO法による繊度の測定に注記されている附属書JBに記載の振動法による正量繊度の測定に準じて測定した。
【0107】
[単繊維強度および破断伸度]
JIS L 1015に準じて、引張試験機を用いて、試料のつかみ間隔を20mmとしたときの繊維切断時の荷重値及び伸度を測定し、それぞれ単繊維強度及び破断伸度とした。
【0108】
[140℃乾熱収縮率]
得られた多葉状断面繊維を長さ10cmのループ状とし、糸端を結んで得られた試料(複数本の繊維を束ねた試料の合計繊度が55.6dtexになるよう調整した。)に、0.26cN/dtexの初期荷重をかけて、熱応力試験機KE-2LS(カネボウエンジニアリング株式会社 製)を変位測定モードとして、室温から60℃/分の昇温速度で170℃まで昇温させながら、連続的に熱収縮率を測定し、試料の140℃での熱処理収縮率を多葉状断面繊維の140℃乾熱収縮率とした。
【0109】
[多葉状断面繊維の形状測定]
多葉状断面繊維の繊維横断面における、凸部の先端部分における最大幅(Wt)凸部の長さ(Lt)、凸部の先端部分における最大幅(Wt)、および凸部の根元部分の幅(Wb)を以下の手順で測定した。
まず、多葉状断面繊維が含まれる不織布を用意し、当該不織布を、不織布の機械方向(MD方向)に対して垂直な方向に鋭利な刃物で切断する。前記操作で得られた切断面を走査型電子顕微鏡(SEM、加速電圧:5.00kV、倍率:200倍)で観察した。撮影されたSEM画像について、SEM写真1枚中の任意の多葉状断面繊維5本を選定した。その選定した繊維を画像解析ソフトWinROOF(三谷商事 株式会社 製)を用いて、図1の多葉状断面繊維の繊維横断面模式図に示した、凸部の長さ(Lt)、凸部の最大幅(Wt)、および凸部の根元部分の幅(Wb)に該当する部分の距離を測定した。
測定は、合計で3枚のSEM画像について測定を行い、計15本の各箇所の値を平均して求めた。
【0110】
実施例1~比較例4の不織布の物性の測定方法は、下記の通りである。
[厚み]
不織布の厚みは、下記のように測定した。
厚み測定機(株式会社 大栄科学精器製作所製のTHICKNESS GAUGE モデル CR-60A(商品名))を用い、不織布に0.3kPa(1cmあたり3g重)の荷重を加えた状態、および不織布に1.96kPa(1cmあたり20g重)の荷重を加えた状態で不織布の厚さを測定した。
【0111】
[目付]
不織布の目付は、所定寸法の試料片を、化粧料や水等で濡らさない状態で、質量測定して算出した。すなわち、目付を測定する不織布から、縦(МD方向・流れ方向)15cm×横(CD方向・機械方向)15cmの試料を採取し、その質量を測定する。測定した不織布試料の質量および試料の面積(225cm)から不織布の目付を計算した。目付の測定は同一の不織布について、測定する試料を3枚採取し、それぞれの試料について測定した目付の平均値を当該不織布の目付(実測値)とした。
【0112】
[比容積]
比容積は、下記のように測定した。
まず、比容積を測定する不織布について、前記の方法にて目付を算出する。次に、目付の算出に使用した不織布の試料について、前記の方法で厚みを測定する。測定した目付および厚みから不織布の比容積を計算した。比容積の測定は、目付の測定と同様、同一の不織布について、測定する試料を3枚採取し、それぞれの試料について測定した比容積の平均値を当該不織布の比容積(実測値)とした。
【0113】
[嵩密度]
嵩密度は、下記のように測定した。
まず嵩密度を測定する不織布について、前記の方法にて目付を算出する。次に、目付の算出に使用した不織布の試料について、前記の方法で厚みを測定する。測定した目付および厚みから不織布の比容積を計算した。嵩密度の測定は、目付の測定と同様、同一の不織布について、測定する試料を3枚採取し、それぞれの試料について測定した比容積の平均値を当該不織布の嵩密度(実測値)とした。
【0114】
[厚み減少率]
厚み減少率は、下記のように測定した。
まず、厚み減少率を測定する不織布の試料を3枚用意する。
次に、不織布の厚みを測定する際、不織布に対して加える荷重を0.3kPa(1cmあたり3g重)にして測定した厚み(T0.3)を測定する。
次に、厚みを測定する場所を違う場所にし、不織布に対して加える荷重を1.96kPa(1cmあたり20g重)にして厚みを測定する(T1.96)。
不織布に対して加える荷重を0.3kPaにして測定した厚み(T0.3)と不織布に対して加える荷重を1.96kPaにして測定した厚み(T1.96)から、以下の式にて不織布の厚み減少率を算出する。
・厚み減少率(%)=100×(T0.3-T1.96)/T0.3
不織布の厚み減少率は、3回測定し、平均値を、その不織布の厚み減少率とした。
【0115】
[乾燥状態の強伸度]
不織布の乾燥状態における強伸度(破断強度、破断伸度、10%モジュラス強度)は、JIS L 1913:2010 6.3に準じて下記のように測定した。
まず乾燥状態の強伸度を測定する不織布について、測定用の試料を3枚採取する。
次に、定速緊張形引張試験機を用いて、試料片の幅5cm、つかみ間隔10cm、引張速度30±2cm/分の条件で引張試験に付し、切断時の荷重値(引張強さ)、伸び率、ならびに10%モジュラス強度(10%伸長させるのに必要な力。10%伸長時応力とも称す)を測定した。引張試験は、不織布の縦方向(MD方向)および横方向(CD方向)を引張方向として実施した。評価結果はいずれも3点の試料について測定した値の平均値とした。
【0116】
[毛羽抜け量]
毛羽抜け量は、以下の方法によって、不織布から脱落した繊維の量(mg)を測定することにより評価した。
a)ウレタンフォーム(株式会社 イノアックコーポレーション製、商品名モルトフィルター(登録商標)品番:MF-30、エステル系ポリウレタン、セル数30、平均セル径410μm、平均摩擦係数(MIU)0.69、平均摩擦係数の変動(MMD)0.043、厚さ5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を、回転軸が円盤中心から20mmずれた位置となるように回転軸に取り付ける。
b)上記と同じウレタンフォームを敷き、その上に不織布の一方の面が露出面となるように、不織布を台上に固定する。
c)不織布の上に前記円盤を載せる。このとき、不織布に加わる荷重は円盤の自重のみとする。
d)回転軸を回転させて、円盤を不織布上で周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、7 セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。
e)7 セットの周動後、不織布から抜け落ちて、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した繊維を集め、その質量(mg)を測定する。
f)前記a)~e)の操作を3枚の不織布試料について行う。3枚の不織布それぞれについて、抜け落ちた繊維の質量を測定し、その平均値を毛羽抜け量(mg)とする。
【0117】
[捕集性]
不織布を各種ワイピングシートとして使用した際に求められる異物の捕集性(ダスト、ゴマ、ダスト)を下記のようにして評価した。
【0118】
[ダスト捕集性]
まず、白色アクリル板(縦55cm、横65cm)を用意し、その略中央における縦5cm×横15cmの長方形の領域をダスト分散領域とする。
次に、JIS Z 8901に準ずる試験用粉体(7種)を0.20g採取する。そして採取した試験粉体を、前記白色アクリル板のダスト分散領域に対して均一に散らばるよう分散して散布する。
ダスト捕集性を評価する不織布について、縦29cm、横21cmのサイズの試料を採取し、その質量(MD0)を測定する。そして、質量を測定した不織布を用いてダスト分散領域上の試験用粉体を拭き取った。
試験用粉体の拭き取りは、拭き取りに寄与する面積が縦方向26cm、横方向16cmとなり、不織布の上面(水流交絡工程の際に、最後に水流を噴射した面)が拭き取り面となるように、市販のフローリング用ワイパー治具(花王株式会社 製、商品名:クイックルワイパー(登録商標)を使用。治具本体のヘッド部を使用)に取付け、400gfの荷重をかけた状態で行った。拭き取りは、ワイパーを、白色アクリル板の表面で1往復させて実施した。ふき取る際の動作は以下の通り。
・ワイパーの縦方向がダスト分散領域の縦方向と一致するように、ワイパーをダスト分散領域の中央部に置き、
・そこからダスト分散領域の左端に向かう方向に250mmだけワイパーを移動させて、ダスト(白色アクリル板)を擦り、
・それからダスト分散領域の右端に向かう方向にワイパーを500mm移動させた後、
・さらにダスト分散領域の左端に向かう方向にワイパーを250mm移動させてワイパーを1往復させた。
ワイパーを1往復させた後、拭き取りに使用した不織布の質量(M)を測定する。ふき取り前後の不織布の質量(MD0、M)および白色アクリル板に散布した試験用粉体の質量(0.2g)から、以下の計算式にてダスト捕集性(%)を求めた
・ダスト捕集性(%)=100×(M-MD0)/0.2
ダスト捕集性を評価する不織布につき、拭き取りは、不織布の拭き取り面を新しくし、白色アクリル板を水道水で洗浄し、乾燥させた状態にしてから同様の拭き取り試験を3回行い、得られた測定値の平均値を評価した不織布のダスト捕集率とした。
【0119】
[毛髪捕集性(湿潤状態)]
不織布をワイピングシートとして使用した際の性能評価として、毛髪の捕集性を以下の方法で評価した。
まず、市販されているフローリング板(縦14cm、横90cmのフローリング板を3枚連結させて、縦42cm、横90cmのフローリング板とした)の上に、毛髪(長さ約5cm)を横向きに3本、縦向きに2本、合計5本を、間隔を2cm空けて配置する。
次に、湿潤状態の毛髪捕集性を評価する不織布について縦29cm、横21cmのサイズの試料を3枚採取し、採取した不織布片を用いて毛髪を拭き取った。
拭き取りは、不織布100質量部に対して蒸留水300質量部を含浸させた湿潤状態で実施する。
前記フローリング上に落下させた毛髪の拭き取りは、以下の操作で実施する。
まず、拭き取りに寄与する面積が縦方向26cm、横方向16cmとなり、不織布の上面(水流交絡工程の際に、最後に水流を噴射した面)が拭き取り面となるように、市販のフローリング用ワイパー治具(花王株式会社 製、商品名:クイックルワイパー(登録商標)を使用。治具本体のヘッド部を使用)に対して前記の方法で湿潤状態とした不織布を取り付け、400gfの荷重をかけた状態で行った。
拭き取りは、前記ダスト捕集性の評価で採用した方法と同じ操作方法で、ワイパーを毛髪が落としてあるフローリング上に対して1往復させて実施した。
拭き取り後、フローリングから拭き取られた毛髪の本数から捕集率(%)を求めた。
毛髪捕集性(湿潤状態)を評価する不織布につき、拭き取りは、不織布の拭き取り面を新しくし、前記フローリング板の上をきれいに拭き取ってから、同様の拭き取り試験を3回行い、得られた測定値の平均値を、評価した不織布の毛髪捕集率(湿潤状態)とした。
【0120】
[ゴマ捕集性(湿潤状態)]
不織布をワイピングシートとして使用した際の性能評価として、ゴマの捕集性を以下の方法で評価した。
まず、市販されているフローリング板(縦14cm、横90cmのフローリング板を3枚連結させて、縦42cm、横90cmのフローリング板とした)の上に、ゴマ10個を3列に分けて配置する(3個-4個-3個の列を、それぞれ2cmの間隔を設けて配置する)。
次に、湿潤状態のゴマ捕集性を評価する不織布について縦29cm、横21cmのサイズの試料を3枚採取し、採取した不織布片を用いてゴマを拭き取った。
拭き取りは、不織布100質量部に対して蒸留水300質量部を含浸させた湿潤状態で実施する。
前記フローリング上に落下させたゴマの拭き取りは、以下の操作で実施する。
まず、拭き取りに寄与する面積が縦方向26cm、横方向16cmとなり、不織布の上面(水流交絡工程の際に、最後に水流を噴射した面)が拭き取り面となるように、市販のフローリング用ワイパー治具(花王株式会社 製、商品名:クイックルワイパー(登録商標)を使用。治具本体のヘッド部を使用)に対して前記の方法で湿潤状態とした不織布を取り付け、400gfの荷重をかけた状態で行った。拭き取りは、前記ダスト捕集性の評価で採用した方法と同じ操作方法で、ワイパーをゴマが落としてあるフローリング上に対して1往復させて実施した。
拭き取り後、フローリングから拭き取られたゴマの個数から捕集率(%)を求めた。
ゴマ捕集性(湿潤状態)を評価する不織布につき、拭き取りは、不織布の拭き取り面を新しくし、前記フローリング板の上をきれいに拭き取ってから、同様の拭き取り試験を3回行い、得られた測定値の平均値を、評価した不織布のゴマ捕集率(湿潤状態)とした。
【0121】
[徐放性・液残存率]
徐放性は、下記のように測定した。
初期放出量および液残存率は、汚れの捕集性試験と同じサイズの不織布(縦29cm、横21cm)を用意し、乾燥時の不織布重量NWを測定する。
次に、不織布100質量部に対して蒸留水を300質量部含浸させ、液体含浸時の不織布重量NWwを測定した。
次に、拭き取りに寄与する面積が縦方向26cm、横方向16cmとなり、不織布の上面(水流交絡工程の際に、最後に水流を噴射した面)が拭き取り面となるように、市販のフローリング用ワイパー治具(花王株式会社 製、商品名:クイックルワイパー(登録商標)を使用。治具本体のヘッド部を使用)に取付けた。400gfの荷重をかけた状態で、コンベアーの進行方向が不織布の横方向(幅16cmの方向と平行な方向)と一致するようにコンベアー上に載置し、コンベアーを5m/分の速さで運転させた。コンベアーを1周(0.5畳分=0.81m)した際の不織布重量NW0.5を測定し、次式から初期放出量RA1を求めた。
・初期放出量(RA1 (g))=NWw-NW0.5
続けて、同様に不織布をコンベアー上に載置し、コンベアー2、4、6、8周目毎の不織布重量(NW2、NW4、NW6、NW8)を測定し、不織布中の液残存率を求めた。
RR2=100-((NW-NW2)/(NW-NW)×100)
RR4=100-((NW-NW4)/(NW-NW)×100)
RR6=100-((NW-NW6)/(NW-NW)×100)
RR8=100-((NW-NW8)/(NW-NW)×100)
【0122】
[SEM写真]
実施例1、4、7、比較例3、4、1の不織布について、その表面と断面について、SEM写真を撮影して、図2図3に示す。
図2の(A)、(B)、(C)の行は、実施例1、4、7の不織布のSEM写真であることを示す。図2の各行の(1)~(3)の列のSEM写真は、各不織布の3か所の表面の100倍のSEM写真を示す。図2の各行の(4)~(6)の列のSEM写真は、各不織布の3か所の表面の50倍のSEM写真を示す。図2の各行の(7)の列のSEM写真は、各不織布の断面の400倍のSEM写真を示す。実施例1、4、7の不織布には、ちじれた、急カーブの繊維構造が存在することがわかる。更に、一部の繊維が剥離してより極細繊維が生じ得ることがわかる。
図3の(D)、(E)、(F)の行は、比較例3、4、1の不織布のSEM写真であることを示す。図3の各行の(1)~(3)の列のSEM写真は、各不織布の3か所の表面の100倍のSEM写真を示す。図3の各行の(4)~(6)の列のSEM写真は、各不織布の3か所の表面の50倍のSEM写真を示す。図3の各行の(7)の列のSEM写真は、各不織布の断面の400倍のSEM写真を示す。比較例3、4、1の不織布には、ちじれた、急カーブの繊維構造はほとんど存在せず、緩やかな曲線構造が存在することがわかる。更に、一部の繊維が剥離してより極細繊維が生じていないこともわかる。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】
【0127】
実施例1~14の不織布の物性には、特に悪いものがなくて、全体として物性のバランスがよく、優れていた。
一方、比較例1~7の不織布の物性には、いずれかに悪いものがあり、全体として物性のバランスが、実施例より劣っていた。
【0128】
[実施例15]
繊維1として、繊維横断面形状が4つの凸部を有する4葉状であり、繊度1.7dtex、繊維径15.5μmの上述の繊維1-1を使用した。
繊維2は使用しなかった。
繊維3として、ポリエチレンテレフタレート(融点:255℃)と高密度ポリエチレン(融点:133℃)の組み合わせ(PET/PE)からなり、ポリエチレンテレフタレートのセクション(セクションの数:4個)と高密度ポリエチレンのセクション(セクションの数:4個)とが交互に菊花状に配置された断面を有し、かつ全体のセクション数が8個である、中空部分を有さない、丸断面の分割型複合繊維(大和紡績株式会社製DFS(SH)(商品名) 以下、PET/PE分割型複合繊維とも称す)を準備した。繊維3の繊度は2.2dtex、繊維径16.0μmであった。50質量%の繊維1-1と、50質量%のPET/PE分割型複合繊維を混合して、パラレルカード機を用いてウェブ狙い目付約30g/mでパラレルウェブを製造した。このウェブを第1繊維層及び第3繊維層として使用した。
【0129】
一方、親水性繊維として、上述のレーヨン(ダイワボウレーヨン株式会社製、コロナ(登録商標))を準備した。その繊度は1.7dtex、繊維径は12μmであった。この親水性繊維100質量%を用いて、パラレルカード機を用いてウェブ狙い目付約10g/mでパラレルウェブを製造した。このウェブを中層(第2繊維層)として使用した。
【0130】
上述の第1繊維層と第3繊維層との間に中層を挟んで、狙い目付70g/mの積層繊維ウェブを得た。このウェブに、水流交絡処理を施して、繊維同士を交絡させた。水流交絡処理は、孔径0.08mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられたノズルを用いてウェブの一方の面に3.0MPaの柱状水流を2回噴射し、他方の面に3.0MPaの柱状水流を2回噴射して行った。水流交絡処理を行った繊維ウェブに対し、繊維ウェブに含まれる高密度ポリエチレンが溶融しないよう、80℃に設定した乾燥機を使用して乾燥処理を行い、実施例15の不織布を得た。
その評価結果を、表5に示した。
【0131】
[比較例8]
100質量%のPET/PE分割型複合繊維を使用して、パラレルカード機を用いてウェブ狙い目付約30g/mでパラレルウェブを製造した。このウェブを第1繊維層及び第3繊維層として使用したことを除いて、実施例15記載の方法と同様の方法を用いて、比較例8の不織布を得た。
その評価結果を、表5に示した。
【0132】
【表5】
【0133】
実施例15の不織布の物性、特に、不織布をワイピングシートの基布として使用した時に重視される、繊維脱落、異物の捕集性(毛髪、ゴマ、ダスト)、及び含浸させた薬液の徐放性について、極端に性能が低い評価項目がなく、全体として物性のバランスに優れていた。ワイピング性は、分割繊維と多葉状断面繊維を組み合わせることにより、分割繊維および多葉状断面繊維による極細繊維の発現と多葉状断面繊維による繊維間空隙の効果により、毛髪、ゴマ、ダスト等、種類、大きさの異なる異物に対し、より優れた捕集性、特にダストに対する捕集性を示した。更には、多葉状断面繊維を含まない繊維層が両表面に位置する比較例8の不織布と比べて、優れた徐放性を示す結果であった。これは、多葉状断面繊維による繊維間空隙とその形状由来の液保持性による効果であると考えられる。
一方、不織布の両表面に、極細繊維のみで構成され、多葉状断面繊維を含まない繊維層が両表面に配置されている比較例8の不織布をワイピングシートの基布として使用した場合、ふき取り性能を想定した物性において、いずれかに悪いものがあり、全体として物性のバランスが実施例15の不織布よりも劣っていた。これは、比較例8の不織布をワイピングシートの基布として使用した場合、ふき取り面を構成する第1もしくは第3繊維層が分割繊維のみで構成される繊維層であるため、高圧水流による交絡・分割処理で発生した繊維の断面形状が非円形の極細繊維によって、拭き取り性が向上するものの、極細繊維が発生することにより、当該繊維層内部の繊維間空隙が少なくなることにより、実施例15よりも低い性能になってと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の実施形態の不織布は、特定の多葉状断面繊維を20質量%以上含む不織布であり、特定の多葉状断面繊維の断面形状の一部が崩れた場合、すなわち多葉状断面繊維の繊維横断面における凸部の一部が分離、剥離した場合でも、特定の多葉状断面繊維の断面形状の一部が崩れなかった場合、すなわち多葉状断面繊維の繊維横断面における凸部の一部が分離、剥離しなかった場合でも、汚れの捕集性能により優れる。当該不織布を各種ワイピングシートとして使用した場合、ワイピング性のより高いワイピングシートが容易に得られる。
また、不織布が、特定の多葉状断面繊維に加え、熱接着性繊維を含む場合、熱接着成分によって繊維間を熱接着することで繊維の自由度を適度に制御し、ワイピングシートとして使用した際の毛羽立ちや繊維脱落をより抑制することができる。
【符号の説明】
【0135】
1:多葉状断面繊維
2:凸部
Wt:凸部の先端部分の最大幅
Wb:凸部の根元部分の幅
Lt:凸部の長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6