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特開2024-146930収穫ハンド、収穫アーム、収穫ロボット及び収穫システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146930
(43)【公開日】2024-10-15
(54)【発明の名称】収穫ハンド、収穫アーム、収穫ロボット及び収穫システム
(51)【国際特許分類】
   A01D 46/30 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
A01D46/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058053
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2023059626
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【弁理士】
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】宮川 大志
(72)【発明者】
【氏名】對馬 千佳子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 芙美
【テーマコード(参考)】
2B075
【Fターム(参考)】
2B075JF05
2B075JF07
2B075JF08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】離層部分が果梗の上部に位置する果実を、離層部分で分離して1個ずつ収穫できる収穫ハンド、収穫アーム、収穫ロボット及び収穫システムを提供する。
【解決手段】収穫ハンドは、第一及び第二把持板を有する果実把持部(12a、12b、15a、15b、16a、16b)と、果実把持部の上方に設けられ、第一及び第二果梗支持棒を有する果梗保持部(13a、13b、14a、14b、13h)と、一面に薄膜を設けた気圧計収納部及び気圧計収納部が構成する密閉空間内に設置された気圧計を含む気圧測定部(20、21)とを備え、第一及び第二把持板並びに薄膜で、果梗を有する果実を把持し、第一及び第二果梗支持棒で果梗を挟み、薄膜に果実が接触したことを気圧計で確認して果実を収穫する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一及び第二把持板を有する果実把持部と、
前記果実把持部の上方に設けられ、第一及び第二果梗支持棒を有する果梗保持部と、
一面に薄膜を設けた気圧計収納部及び前記気圧計収納部が構成する密閉空間内に設置された気圧計を含む気圧測定部と
を備え、前記第一及び第二把持板並びに前記薄膜で、果梗を有する果実を把持し、前記第一及び第二果梗支持棒で前記果梗を挟み、前記薄膜に前記果実が接触したことを前記気圧計で確認して前記果実を収穫することを特徴とする収穫ハンド。
【請求項2】
第一及び第二把持板を有する果実把持部と、前記果実把持部の上方に設けられ、第一及び第二果梗支持棒を有する果梗保持部と、一面に薄膜を設けた気圧計収納部及び前記気圧計収納部が構成する密閉空間内に設置された気圧計を含む気圧測定部とを有し、前記第一及び第二把持板並びに前記薄膜で果梗を有する果実を把持し、前記第一及び第二果梗支持棒で前記果梗を挟む収穫ハンドと、
前記収穫ハンドに接続され複数の関節を有する腕部と、
三軸のそれぞれに沿って前記腕部を並進移動する三つの移動部、及び、前記三つの移動部を回転させる回転台を有する移動回転基部と
を備え、前記薄膜に前記果実が接触したことを前記気圧計で確認して前記果実を収穫することを特徴とする収穫アーム。
【請求項3】
第一及び第二把持板を有する果実把持部と、前記果実把持部の上方に設けられ、第一及び第二果梗支持棒を有する果梗保持部と、一面に薄膜を設けた気圧計収納部及び前記気圧計収納部が構成する密閉空間内に設置された気圧計を含む気圧測定部とを有し、前記第一及び第二把持板並びに前記薄膜で、果梗を有する果実を把持して前記第一及び第二果梗支持棒で前記果梗を挟む収穫ハンドと、
前記収穫ハンドに接続され複数の関節を有する腕部と、
三軸のそれぞれに沿って前記腕部を並進移動する三つの移動部、及び、前記三つの移動部を回転させる回転台を有する移動回転基部と、
前記収穫ハンド、前記腕部及び前記移動回転基部を搭載する無人航空機又は自動車と、
を備え、前記薄膜に前記果実が接触したことを前記気圧計で確認して前記果実を収穫することを特徴とする収穫ロボット。
【請求項4】
第一及び第二把持板を有する果実把持部と、前記果実把持部の上方に設けられ、第一及び第二果梗支持棒を有する果梗保持部と、一面に薄膜を設けた気圧計収納部及び前記気圧計収納部が構成する密閉空間内に設置された気圧計を含む気圧測定部とを有し、前記第一及び第二把持板並びに前記薄膜で、果梗を有する果実を把持して前記第一及び第二果梗支持棒で前記果梗を挟み、前記薄膜に前記果実が接触したことを前記気圧計で確認して前記果実を収穫する収穫ハンドと、
前記収穫ハンドに接続し、複数の関節を有する腕部、三軸のそれぞれに前記腕部を並進移動する三つの移動部及び前記三つの移動部を回転させる回転台を有する移動回転基部を有する収穫アームを搭載する無人航空機又は自動車である収穫ロボットと、
収穫した前記果実を積載し、自動的に指定箇所へ搬送する自動搬送装置と
を備えることを特徴とする収穫システム。
【請求項5】
前記指定箇所において、前記自動搬送装置に積載された前記果実を積み下ろしする搭降載ロボットを更に備えることを特徴とする請求項4に記載の収穫システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実を1個ずつ収穫するための収穫ハンド、この収穫ハンドを有する収穫アーム、この収穫アームを有する収穫ロボット及びこの収穫ロボットを有する収穫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
果実100の収穫は主として手作業である。例えばリンゴについては、収穫期のリンゴを1個ずつ人間が見定め、リンゴの果実を手の平全体で包み込むように保持し、リンゴのつる(果梗)を人差し指等で押さえ、果実を上方に持ち上げるようにして果梗と枝の間の離層部分から分離させる、という作業を行っている。これらをリンゴ1個ずつに対して行うため、大変な労力の必要な作業となる。しかし、農業分野においては作業従事者の高齢化が著しく、労働力不足が問題となっており、果実100の収穫にかける労働力も当然不足しているという現状である。
【0003】
特許文献1には、果菜を保持し、指部で果梗を押さえながら、回転力により果菜を枝から分離させる果菜収穫装置の発明が記載されている。特許文献1に記載の発明では、果梗を押さえることになる指部が、保持した果菜の表面に沿って滑るように果梗まで移動し、果梗に当接したらそれ以上の移動は行われないようにロックされる仕組みである。しかし、特許文献1に記載の発明の仕組みによっては、果梗のうち、果菜との接続部分に近い部分、すなわち果梗の下部しか押さえることができない。例えばリンゴのように、離層部分が果梗の上部に位置する果菜においては、特許文献1に記載の発明を適用すると、つる(果梗)の下部の方により力がかかりやすく、果梗と果実100の接続部分で分離されやすい。リンゴにおいては、収穫時につる(果梗)が分離してしまったものは商品価値が低くなるため、つる(果梗)の上部の離層部分で分離することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6912656号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、離層部分が果梗の上部に位置する果実を、離層部分で分離して1個ずつ収穫できる収穫ハンド、この収穫ハンドを有する収穫アーム、この収穫アームを有する収穫ロボット及びこの収穫ロボットを有する収穫システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、(a)第一及び第二把持板を有する果実把持部と、(b)果実把持部の上方に設けられ、第一及び第二果梗支持棒を有する果梗保持部と、(c)一面に薄膜を設けた気圧計収納部及び気圧計収納部が構成する密閉空間内に設置された気圧計を含む気圧測定部を備え、(d)第一及び第二把持板並びに薄膜で、果梗を有する果実を把持し、第一及び第二果梗支持棒で果梗を挟み、(e)薄膜に果実が接触したことを気圧計で確認して果実を収穫することを特徴とする収穫ハンドであることを要旨とする。
【0007】
本発明の第2の態様は、(a)第一及び第二把持板を有する果実把持部と、果実把持部の上方に設けられ、第一及び第二果梗支持棒を有する果梗保持部と、一面に薄膜を設けた気圧計収納部及び気圧計収納部が構成する密閉空間内に設置された気圧計を含む気圧測定部とを有し、第一及び第二把持板並びに薄膜で果梗を有する果実を把持し、第一及び第二果梗支持棒で果梗を挟む収穫ハンドと、(b)収穫ハンドに接続され複数の関節を有する腕部と、(c)三軸のそれぞれへ腕部を並進移動する三つの移動部、及び、三つの移動部を回転させる回転台を有する移動回転基部を備え、(d)薄膜に果実が接触したことを気圧計で確認して果実を収穫することを特徴とする収穫アームであることを要旨とする。
【0008】
本発明の第3の態様は、(a)第一及び第二把持板を有する果実把持部と、果実把持部の上方に設けられ、第一及び第二果梗支持棒を有する果梗保持部と、一面に薄膜を設けた気圧計収納部及び気圧計収納部が構成する密閉空間内に設置された気圧計を含む気圧測定部とを有し、第一及び第二把持板並びに薄膜で、果梗を有する果実を把持して第一及び第二果梗支持棒で果梗を挟む収穫ハンドと、(b)収穫ハンドに接続され複数の関節を有する腕部と、(c)三軸のそれぞれへ腕部を並進移動する三つの移動部、及び、三つの移動部を回転させる回転台を有する移動回転基部と、(d)収穫ハンド、腕部及び移動回転基部を搭載する無人航空機又は自動車を備え、(e)薄膜に果実が接触したことを気圧計で確認して果実を収穫することを特徴とする収穫ロボットであることを要旨とする。
【0009】
本発明の第4の態様は、(a)第一及び第二把持板を有する果実把持部と、果実把持部の上方に設けられ、第一及び第二果梗支持棒を有する果梗保持部と、一面に薄膜を設けた気圧計収納部及び気圧計収納部が構成する密閉空間内に設置された気圧計を含む気圧測定部とを有し、第一及び第二把持板並びに薄膜で、果梗を有する果実を把持して第一及び第二果梗支持棒で果梗を挟み、薄膜に果実が接触したことを気圧計で確認して果実を収穫する収穫ハンドと、(b)収穫ハンドに接続し、複数の関節を有する腕部、三軸のそれぞれに腕部を並進移動する三つの移動部及び三つの移動部を回転させる回転台を有する移動回転基部を有する収穫アームを搭載する無人航空機又は自動車である収穫ロボットと、(c)収穫した果実を積載し、自動的に指定箇所へ搬送する自動搬送装置とを備えることを特徴とする収穫システムであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、離層部分が果梗の上部に位置する果実を、離層部分で分離して1個ずつ収穫できる収穫ハンド、この収穫ハンドを有する収穫アーム、この収穫アームを有する収穫ロボット及びこの収穫ロボットを有する収穫システムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る収穫アームの斜視図である。
図2】第1実施形態に係る収穫ハンドの斜視図である。
図3】第1実施形態に係る収穫ハンドの一例を示す模式的な右側面図である。
図4】第1実施形態に係る収穫ハンドの平面図である。
図5】第1実施形態に係る収穫ハンドの正面図である。
図6】第1実施形態に係る収穫ハンドで果実を把持した場合の右側面図である。
図7図3のA-A方向から見た断面図である。
図8図6のA-A方向から見た断面図である。
図9】果実の斜視図であり、第1実施形態に係る収穫ハンドの接近角度を説明するための図である。
図10図10(a)は、第1実施形態に係る収穫アームで果実を把持した場合の図であり、図10(b)は、図10(a)の状態から第1実施形態に係る収穫アームの形態を変化させた場合の図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る収穫ハンドの斜視図である。
図12】第2実施形態に係る収穫ハンドの気圧測定部の断面図である。
図13】第2実施形態の第1変形例に係る収穫ハンドの構造の一例を示す模式的な上面図である。
図14】第2実施形態の第1変形例に係る収穫ハンドの一例を示す模式的な右側面図である。
図15】第2実施形態の第1変形例に係る収穫ハンドで果実を把持した場合の上面図である。
図16】第2実施形態の第2変形例に係る収穫ハンドの、果実を把持する前の状態を示す模式的な上面図である。
図17】第2実施形態の第2変形例に係る収穫ハンドの幅低減固定機構と幅低減固定機構を搬送する搬送機構を説明する模式的な前面図である。
図18A図17に対応して、幅低減固定機構が移動する動作と、これによる果実の把持の状態を説明する上面図である。
図18B】第2実施形態の第3変形例に係る収穫ハンドの構造を説明する模式的な上面図である。
図19】第2実施形態の第2変形例に係る収穫ハンドの幅低減固定機構を搬送する搬送機構を説明する模式的な右側面図である。
図20A】第2実施形態の第4変形例に係る収穫ハンドの構造の一例を示す上面図である。
図20B】第2実施形態の第4変形例に係る収穫ハンドの他の例を示す模式的な鳥瞰図である。
図21】第2実施形態の第5変形例に係る収穫ハンドの構造の一例を示す模式的な上面図である。
図22】第2実施形態の第5変形例に係る収穫ハンドで果実を把持した場合の上面図である。
図23】本発明の第3実施形態に係る収穫ハンドの構造の一例を示す模式的な上面図である。
図24A】第3実施形態に係る収穫ハンドで果実を収穫する場合の右側面図である。
図24B】第3実施形態に係る収穫ハンドを操作するロボットアームの移動部や回転関節を模式的に示す鳥瞰図である。
図25A】第3実施形態に係るロボット制御装置の一例を示すブロック図である。
図25B】第3実施形態に係るロボット制御装置に含まれる中央処理制御部について、論理的な機能に着目し、ハードウェア資源を形式的に表現した概略図である。
図26A】第3実施形態に係るロボット制御装置を用いた果実収穫方法の手順の一例を示すフローチャートである。
図26B】第3実施形態に係るロボット制御装置の中央処理制御部の論理的な機能による物体検出方法の一例を示すフローチャートである。
図26C図26Bに示した物体検出方法におけるバウンディングボックスとクラス確率を組み合わせて、物体の位置と種類を推定する手順を説明するフローチャートである。
図27】第3実施形態に係るロボット制御装置の中央処理制御部の論理的な機能で果実を検出した場合の果実識別画像の一例を模式的に示す図である。
図28】第3実施形態の変形例に係る収穫ユニットの構造の概略を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第1~第3実施形態及び関連する変形例等により具体的に説明するが、本発明の技術的思想を具体化するためのシステム及び方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の第1~第3実施形態及び関連する変形例等に特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、様々な変更を加えることができる。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る収穫アーム1は、図1に示す通り、果実を保持する収穫ハンド2aと、収穫ハンド2aに接続する腕部(5a、5b、6a、6b、7a、7b、8)と、腕部(5a、5b、6a、6b、7a、7b、8)に接続する移動回転基部(3、4x、4y、4z)を有する。腕部(5a、5b、6a、6b、7a、7b、8)及び移動回転基部(3、4x、4y、4z)の各部位の回転及び並進移動等の各動作が連動し、収穫ハンド2aが収穫に適切な角度で収穫対象の果実に接近することができる。収穫ハンド2aにおいては、果実及び果梗をほぼ同時に保持することにより、果実全体の保持を実現する。収穫ハンド2aで保持された果実は、腕部(5a、5b、6a、6b、7a、7b、8)及び移動回転基部(3、4x、4y、4z)の各部位の回転及び並進移動等の各動作が連動することで、果梗の保持部分を支点として離層部分で果実を分離することができる。
【0014】
図2に示すように、収穫ハンド2aは、箱状のハンド基部11と、ハンド基部11の左右両側に固定された第一動力部16a及び第二動力部16b、第一動力部16aに接続された第一把持板(12a、15a)、第二動力部16bに接続された第二把持板(12b、15b)を有する。第一動力部16a、第二動力部16b、第一把持板(12a、15a)及び第二把持板(12b、15b)で、果実把持部(12a、12b、15a、15b、16a、16b)を構成する。ハンド基部11は、収穫ハンド2aの母体となるものであり、果実把持部(12a、12b、15a、15b、16a、16b)以外にも、後述する果梗保持部(13a、13b、14a、14b、13h)や気圧測定部(20、21、22)等も固定されている。
【0015】
図2に示す果実把持部(12a、12b、15a、15b、16a、16b)については、三角法の平面図となる図4の紙面に垂直方向から見た場合に、上下対称形である。三角法の正面図となる図5の紙面に垂直方向から見た場合には左右対称形である。第一動力部16a及び第二動力部16bは、第一把持板(12a、15a)及び第二把持板(12b、15b)をそれぞれ駆動させるサーボモータ等の動力源であり、ハンド基部11に内蔵された構造であってもよい。
【0016】
図2等に示すように第一把持板(12a、15a)の主要部は、第一面板15aを両面側から挟む第一クッション部12aからなる三層構造で構成される。図2及び図7の断面図に示すように、三層構造の中心に位置する第一面板15aは曲げ弾性率の大きな材料で構成された板状部材であり、やや湾曲しており、第一動力部16aに一端を直接接続され、他端の広い部分を第一クッション部12aで覆われている。第一クッション部12aはシリコンゴム等の軟質なクッション素材であり、図8に示すように、果実100を把持する際に、果実100に直接接触する部材である。図8に示すように、果実100を把持する際には、第一把持板(12a、15a)が図7に示す状態よりも内側に旋回し、果実100を把持することができる。第二把持板(12b、15b)においても第一把持板(12a、15a)と同様であり、主要部は第二クッション部12bと第二面板15bの三層構造で構成される。図2及び図7の断面図に示すように、第二面板15bは曲げ弾性率の大きな材料で構成された板状部材であり、やや湾曲しており、第二動力部16bに一端を直接接続され、他端の広い部分を第二クッション部12bで覆われている。第二クッション部12bはシリコンゴム等の軟質なクッション素材であり、図8に示すように、果実100を把持する際に、果実100に直接接触する部材である。図8に示すように、果実100を把持する際には、図7に示す状態よりも第二把持板(12b、15b)が内側に旋回し、果実100を把持することができる。
【0017】
第一把持板(12a、15a)及び第二把持板(12b、15b)の動作範囲は、図7及び図8に限られるものではなく、それぞれ図7より外側に開くように旋回したり、図8より内側に閉じるように旋回したり調整することができる。例えば、葉や枝、果実が密集した部分に収穫ハンド2aが入り込む場合、果実等を傷つけないような配置で第一把持板(12a、15a)及び第二把持板(12b、15b)を入り込ませることも可能である。
【0018】
図2に示すように、収穫ハンド2aは、ハンド基部11の内部に固定された第三動力部(図示省略)、第三動力部に接続され、果実把持部(12a、12b、15a、15b、16a、16b)の上方に配置された第一果梗支持棒(13a、14a)及び第二果梗支持棒(13b、14b)を有する果梗保持部(13a、13b、14a、14b、13h)を更に有する。第三動力部は果梗保持部(13a、13b、14a、14b、13h)を動作させるサーボモータ等の動力源となる。第一果梗支持棒(13a、14a)及び第二果梗支持棒(13b、14b)のハサミ様の開閉により果梗を挟む。第一果梗支持棒(13a、14a)及び第二果梗支持棒(13b、14b)が互いに閉じる方向に動作し、果梗を挟んで動作が停止した状態においては、第三動力部は過負荷状態となり、その過負荷の程度で果梗が保持できているかどうかを判定する。第一果梗支持棒(13a、14a)は、第一棒状プレート13a及び第一先端部14aから構成される。第一棒状プレート13aは曲げ弾性率の大きな材料で構成された板状部材であり、要(かなめ)軸13hに一端が接続され、他端の先端内側に、シリコンゴム等の軟質なクッション素材から成る第一先端部14aが固定されている。第二棒状プレート13bにおいても第一棒状プレート13aと同様に曲げ弾性率の大きな材料で構成された板状部材であり、要軸13hに一端が接続され、他端の先端内側に、シリコンゴム等の軟質なクッション素材から成る第二先端部14bが固定されている。果梗を挟む部位は、第一先端部14a及び第二先端部14bとなる。要軸13hを介して、第一果梗支持棒(13a、14a)及び第二果梗支持棒(13b、14b)は第三動力部に接続されている。
【0019】
図7に示すように、収穫ハンド2aは、ハンド基部11に固定されて一面に開放部を有する筒型の気圧計収納部20、開放部に張られた薄膜21、気圧計収納部20及び薄膜21で形成された密閉空間S内に設置された気圧計22を有する気圧測定部(20、21、22)を更に有する。気圧計収納部20は、ハンド基部11に固定された中空の筒状部材であり、ハンド基部11に固定される固定箇所と反対側の一面は開放部である。気圧計収納部20とハンド基部との固定箇所側については開放されていてもいなくてもよく、気圧計収納部20は一方のみ開放され他方には壁面がある構造でもよいし、両側開放された筒状でもよい。図2及び図7等に示す薄膜21は、気圧計収納部20の開放部に張られた薄膜であり、シリコンゴム等の軟質で薄い素材である。薄膜21に何らかの物体が接触することにより、薄膜21は気圧計収納部20の内部側に凹み、図7に示す密閉空間Sの体積が、図8に示す通り減少する。当然密閉空間Sの気圧も変化し、その変化を密閉空間S内に設けられた気圧計22で検出する。第1実施形態に係る収穫ハンド2aにおいては、薄膜21には、図8に示すように、果実100が直接接触することを想定している。気圧計22は、図7に示す通りではハンド基部11に直接固定されているが、密閉空間S内に設けられて気圧を測定できるのであれば、薄膜21近辺以外であればいずれの箇所でも設置可能である。例えば、気圧計収納部20がハンド基部11との固定箇所において開放部がない構造であれば、気圧計22は気圧計収納部20に直接固定されることになる。薄膜21の近辺は、薄膜21での果実100の保持や気圧変化の検出において不具合が生じる可能性があるため、避けることが望ましい。気圧計22において検出した値は、例えば、ハンド基部11に内蔵された果実把持検知回路(図示省略)等において、果実が把持されたかどうかの判断に用いてもよい。気圧計22が検出するのは、気圧であってもよいし、気圧変化であってもよい。
【0020】
図2に示すように、収穫ハンド2aは、ハンド基部11に固定された撮影ユニット17を更に有する。撮影ユニット17は、第1照明18a、第2照明18b及び撮像装置19を有する。第1照明18a、第2照明18b及び撮像装置19により、どのような天候や環境条件においても、果実を適切に判別することができる。例えば、天気や時間帯によっては日が射さずに薄暗い又は暗い場合があり、また、果実周辺には枝葉が多く存在することもある。そのような時でも、第1照明18a及び第2照明18bにより、果実100の判別に有効な照度を確保することができる。果実100の判別にはCCDイメージセンサ等の撮像装置19を用いる。撮像装置19を用いて、果実100の有無のみならず、収穫適期の果実100のみを選別したり、収穫ハンド2aを用いて収穫できるタイプの果梗かどうかを見分けたりすることができてもよい。また、撮像装置19を用いて、収穫ハンド2aにおける収穫が適切に行われているかを判断できてもよい。更に、撮像装置19を、遠隔地にいる作業者が、リアルタイムで収穫ハンド2aにおける収穫の様子を観察する用途に用いてもよい。
【0021】
第1実施形態に係る収穫アーム1は、図1に示すように、収穫ハンド2aに接続された腕部(5a、5b、6a、6b、7a、7b、8)を有する。図1に示すように、腕部(5a、5b、6a、6b、7a、7b、8)は、上腕7b、下腕7a、及び複数の関節6a、6b、8を有する。上腕7b及び下腕7aがロボットアームの「リンク」に相当し、下腕回転関節6a、上腕回転関節6b及びハンド回転関節8がロボットアームの「ジョイント」に相当する。上腕7b及び下腕7aの長さや長さの比は任意であるが、収穫ハンド2a側でより細かな動作を実現するには、上腕7bの方が相対的に短いものであることが好ましい。収穫ハンド2aに直接接続するのがハンド回転関節8であり、収穫ハンド2aの長手方向の中心軸に対して収穫ハンド2aを任意の回転角で回転させることができる。ハンド回転関節8は上腕7bに固定されている。上腕回転関節6bは上腕7b及び下腕7aを接続する回転関節であり、下腕7aに固定されており、上腕7bを任意の回転角で回転させることができる。下腕回転関節6aは移動台(5a、5b)に固定され、下腕7aを任意の回転角で回転させることができる。腕部(5a、5b、6a、6b、7a、7b、8)のみに着目すると「垂直多関節型」のロボットアームに該当する。
【0022】
第1実施形態に係る収穫アーム1は、図1に示すように、移動回転基部(3、4x、4y、4z)を更に有する。三つの移動部4x、4y、4zは、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の三軸それぞれに対し、腕部(5a、5b、6a、6b、7a、7b、8)全体を並進移動する。また、回転台3は、三つの移動部4x、4y、4zを固定し、三つの移動部4x、4y、4z全体を回転させる。
【0023】
回転台3は直接的にはX軸移動部4xを固定し、回転台3自体は他の移動用機器、例えば無人航空機(マルチコプタ型)や自動車(ビークル型)等の移動用機器に備え付けられて用いられてもよい。回転台3は上部に直接固定されているX軸移動部4x以上の構成を任意の回転角で回転させることができる。X軸移動部4xは、X軸移動部4xの上部に接続しているY軸移動部4y以上の構成をX軸方向に移動させる。本明細書における「X軸方向」とは、棒状のX軸移動部4xの長手方向に相当する。「Y軸方向」及び「Z軸方向」についても同様に、それぞれ、棒状のY軸移動部4yの長手方向、棒状のZ軸移動部4zの長手方向に相当する。Y軸移動部4yはX軸移動部4xに対してX軸方向に移動自在に固定され、Y軸移動部4yの上部に接続しているZ軸移動部4z以上の構成をY軸方向に並進移動させる。Z軸移動部4zはY軸移動部4yに対してY軸方向に移動自在に固定され、移動台(5a、5b)を並進移動させる。移動回転基部(3、4x、4y、4z)のみに着目すると、「直交座標型」のロボットアームに該当する。
【0024】
腕部(5a、5b、6a、6b、7a、7b、8)と移動回転基部(3、4x、4y、4z)とを組み合わせることで、「垂直多関節型」と「直交座標型」を組み合わせた動作を実現可能である。収穫アーム1全体での自由度は、腕部(5a、5b、6a、6b、7a、7b、8)での関節数並びに移動回転基部(3、4x、4y、4z)の搬送機構及び回転機構の数から考えると「7自由度」であり、動作先端である収穫ハンド2aにおける細やかで自在な動作が可能である。図示は省略しているが、第1実施形態に係る収穫アーム1においては、ロボットアームの一般的な構成である、アクチュエータ、減速機、エンコーダ及び伝導機構等を、それぞれの関節・搬送機構・回転機構で用いている。
【0025】
第1実施形態に係る収穫アーム1における果実100の収穫については、まず、図6及び図8に示すように、果実把持部(12a、12b、15a、15b、16a、16b)及び薄膜21で果実100を把持する。図6においては果実100と果実100に接続している果梗200のみ図示しているが、果実100は収穫前の段階であり、果梗200には枝が接続されているものとする。果実100を把持する際は、第一動力部16a及び第二動力部16bがそれぞれ駆動し、第一把持板(12a、15a)及び第二把持板(12b、15b)がそれぞれ互いに近づくように動作する。第一把持板(12a、15a)及び第二把持板(12b、15b)で、果実100を左右両側から挟んで包み込むように把持することになる。この時、収穫ハンド2aの中央付近に配置されている気圧測定部(20、21、22)の薄膜21に果実100が接触する。すなわち、第一把持板(12a、15a)、第二把持板(12b、15b)及び薄膜21の3カ所で果実100を把持する格好となる。果実100が接触した薄膜21は気圧計収納部20の内部側に凹み、密閉空間Sの気圧変化が起こり、気圧計22で検出される。一定以上の気圧変化を検出した場合、「果実100の把持」が完了したと判断する。
【0026】
次に、図6で示すように、果梗保持部(13a、13b、14a、14b、13h)で、果梗200の長手方向略中心部分を、第一先端部14a及び第二先端部14bを用いて、両側から挟む。但し、図6においては、第二先端部14bは第二棒状プレート13bの裏側に位置するので、第二棒状プレート13bの陰になっており、符号の表記を省略している。図2等に示す撮像装置19の撮像情報により、果梗200の長手方向略中心部分を保持できるように、収穫ハンド2a全体の位置や角度を調節してもよい。図9において説明すると、果実100がリンゴである場合、角度A~Cのうち、角度Bから図2等に示す収穫ハンド2aが接近していくことが最も好ましい。図9における角度Aから図2等に示す収穫ハンド2aが接近する場合、果梗200の保持は角度面で困難である。図9における角度Cから図2等に示す収穫ハンド2aが接近する場合、角度Aの場合と同様に、果梗200の保持は角度面で困難である。図9における角度Bから図2等に示す収穫ハンド2aが接近する場合は、果梗200が図2等に示す撮像装置19により「10mm以上」と認識しやすくなり、収穫ハンド2aによる果梗200の保持及び固定が可能と判断されやすくなる。
【0027】
図6に示すように、収穫ハンド2aにより果実100を把持して果梗200を保持したまま、保持した部分である保持点Fを支点として、果梗200の上部に位置する枝に対して、D方向に収穫ハンド2aを回転させることで、離層部分で果実100を適切に分離することができる。収穫ハンド2aの回転動作については、一例を図10(a)及び(b)に示す通り、腕部(5a、5b、6a、6b、7a、7b、8)の各関節における回転及び並進移動回転基部(3、4x、4y、4z)における並進移動及び回転が互いに連動して動作することにより実現されている。図10(a)は果実100を把持し、果梗200を保持点Fで保持した段階であり、下腕7aと垂直方向との為す角度はαであり、下腕7aと上腕7bが為す角度はβである。図10(a)の状態から、Y軸方向にY軸移動部4y上をZ軸移動部4z以上の構成が並進移動し、Z軸方向にZ軸移動部4z上を腕部(5a、5b、6a、6b、7a、7b、8)及び収穫ハンド2aが並進移動し、かつ、下腕7aと垂直方向との為す角度がαからαとなるように下腕回転関節6aが回転動作し、下腕7aと上腕7bが為す角度がβからβとなるように上腕回転関節6bが回転動作することで、保持点Fで果梗200を保持して、収穫ハンド2a全体が回転動作をし、図10(b)に示す状態となり、果梗200は離層部分で分離され、収穫ハンド2aは果梗200付きの果実100を収穫できる。なお、図10(a)及び(b)においては、接続部5b及びハンド回転関節8は図示を省略している。図10(a)及び(b)においてはyz平面上で4つの関節及び搬送機構が動作した様子を示したが、例えば図1等に示すハンド回転関節8の回転動作、回転台3の回転動作、X軸移動部4x上での並進移動が加われば、動作の次元は増し、収穫ハンド2aはより細やかな動作が可能となり、収穫ハンド2aにより収穫可能な果実も増えることになる。
【0028】
第1実施形態に係る収穫アーム1によれば、特に果梗の上部側に離層部分がある果実を有効に1個ずつ収穫することができる。図2等に示す果梗保持部(13a、13b、14a、14b、13h)により、より確実に、より適切な位置を両側から挟むことが可能となり、果梗と果実を分離させることなく果実を収穫することができる。
【0029】
第1実施形態に係る収穫アーム1によれば、7自由度を有するロボットアームであるので、6自由度以下のロボットアームより細やかな動作が可能となり、繊細さを要する果実100の収穫において、人間の手の動きの再現がより可能となる。
【0030】
(第2実施形態)
無人航空機(マルチコプタ型)や自動車(ビークル型)等の移動用機器に搭載して果実を収穫する場合、収穫ハンドには軽量化が求められる。既に説明した第1実施形態に係る収穫ハンド2aは、図7に示すように、果実把持部(12a、12b、15a、15b、16a、16b)を構成する第一把持板(12a、15a)及び第二把持板(12b、15b)は、それぞれ曲げ弾性率の大きな金属等の曲げ剛性の大きな材料からなる第一面板15a及び第二面板15bを有する場合の構造を例示した。第1実施形態に係る収穫ハンド2aによれば、曲げ剛性の大きな第一面板15a及び第二面板15bを用いることにより、把持力を高くすることができ、重量の大きい果実等を把持することが可能となる。しかしながら、曲げ弾性率の大きな材料は一般に重量が重いので、収穫ハンドの軽量化のためには課題が残る。
【0031】
第2実施形態に係る収穫ハンド2bは、図11に示すように、第一動力部16aに接続された第一面板15c、第二動力部16bに接続された第二面板15dで構成される果実把持部(15c、15d、16a、16b)を有する。第一面板15c及び第二面板15dは、それぞれ単体で果実(対象物)を把持する把持板として機能する。第一面板15c及び第二面板15dは共に、硬質プラスチック、カーボンファイバ、軽金属合金やチタン(Ti)等の軽量且つ曲げ弾性率の大きな素材が採用される。硬質プラスチックとしては炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等が例示できる。JISK69000では、曲げ弾性率が、700MPaを超えるプラスチックが硬質プラスチックとして定義され、曲げ弾性率が、70~700MPaの間にある半硬質プラスチックと区別される。クロス-CFRPの曲げ弾性率は、40~50GPa程度であるが、軽量化した多孔質CFRPでも6GPa程度の値が知られている。
【0032】
更に軽量化のために、図11に示すように、第2実施形態に係る収穫ハンド2bは、第一面板15c及び第二面板15dには、複数の矩形の貫通孔26が全面に4×8のマトリクス状に配置されている。4×8のマトリクスは例示であり、第一面板15c及び第二面板15dの寸法に応じて適宜選択できる。第一面板15c及び第二面板15dのそれぞれの上側の貫通孔26の貫通面積に対し、第一面板15c及び第二面板15dのそれぞれの下側の貫通孔26の貫通面積を小さくし、第一面板15c及び第二面板15dのそれぞれの下側の曲げ剛性を上側に比して強化してもよい。第一面板15c及び第二面板15dのそれぞれの下側の貫通孔26の貫通個数を上側に比して少なくし、第一面板15c及び第二面板15dのそれぞれの下側の曲げ剛性を上側に比して強化してもよい。貫通孔26は矩形に限定されるものではないが、マトリクス状の配置を鑑みると面積効率の点で好ましいが、矩形に限定されるものではない。貫通孔26の個数が増えると、第一面板15c及び第二面板15の曲げ剛性が低下するので、貫通孔26の個数と第一面板15c及び第二面板15の厚さは、果実100を把持する予備実験において、果実100が落下しない値に選択する必要がある。
【0033】
また、収穫ハンド2bは、第1実施形態と同様に、気圧計収納部20を有する気圧測定部を備える点で第1実施形態と同様である。そして、第2実施形態に係る収穫ハンド2bが備える気圧測定部は、図11及び図12に示すように、気圧計収納部20の一方の開口部に薄膜21aが設けられ、気圧計収納部20と薄膜21aで形成された密閉空間S内に気圧計22が設置されている。第2実施形態に係る収穫ハンド2bが備える気圧測定部(20、21a、22、23)の気圧計収納部20には、圧力調整弁23を有する特徴が、第1実施形態に係る気圧測定部とは異なる。薄膜21aは、気圧計収納部20に対して外側に凸状に膨らんだ形状を有する。図12に示すように、気圧計収納部20に設けられた圧力調整弁23は、ネジ24a、シリコンゴム等の軟質な素材からなるワッシャ24bを有する。気圧測定部(20、21a、22、23)は、凸状の薄膜21aによって感度よく果実100の把持を検出することができる。薄膜21aは、シリコンゴム等の軟質で薄い素材であり、気温が低い場合、密閉空間S内の気圧が低下して薄膜21が萎み、気温が高い場合、密閉領域S内の気圧が上昇して薄膜21が膨らむ。薄膜21aの形状変化により、果実把持の検出感度が変動する。薄膜21の形状変化を防止するため、図12に示すように、気圧計収納部20に設けられた圧力調整弁23のネジ24aの出し入れによって、外気温変化に伴う密閉区間S内の気圧変動を調整することができ、果実把持の検出感度の変動を抑制することが可能となる。
【0034】
第2実施形態に係る収穫ハンド2bにおいては、第一面板15c及び第二面板15dを硬質プラスチックで構成した場合は安価に製造できる利点がある。しかし、第一面板15c及び第二面板15dを硬質プラスチックで構成した場合は、安価且つ軽量ではあるが曲げ剛性が低く、保持力が小さくなり、重量の大きな果実等を捕獲して収穫することが困難となり、果実を落下し易くなる。果実100の落下を防止するためには、硬質プラスチックの厚さを厚くする必要があるが、厚くすると軽量化に障害が発生する。図11に例示した構造は、第一面板15c及び第二面板15dを垂直方向に沿って見たときに直線状になっている。しかし、図11に例示した構造において、第一面板15c及び第二面板15dを垂直方向に沿って見たときに、果実100の外形に沿って湾曲して、果実100の下面側を覆う構造とすれば、果実100の下面側を覆う部分の曲げモーメントに対する反力により果実100の落下を防止できる構造になる。更に、図11の左のやや下の位置に視点をおいて、図11の構造を正面方向から見たときに、第一面板15c及び第二面板15dの下端がそれぞれ内側にL字型に曲がり、第一面板15c及び第二面板15dの下端が互いに近接する構造にしても、落下が防止できる。又、下面側を覆って絞り込む構造にすることにより、果実100をより大きな面積で保持できるので、果実100と第一面板15c及び第二面板15dの摩擦力を増大できる。よって、硬質プラスチックの厚さを厚くしない軽量化の構造において、果実100を落下させないで収穫できる。
【0035】
なお、図11では第一面板15c及び第二面板15dの主面に垂直となる方向に複数の矩形の貫通孔26をマトリクス状に配置した構造を例示した。しかし、第一面板15c及び第二面板15dの主面に平行となる方向に複数の角穴が貫通するように長く開孔しても、第一面板15c及び第二面板15dの軽量化ができる。これは、第一面板15c及び第二面板15dの主面に平行となる方向に伸びる複数の角パイプを縦方向に連続した構造になるので、第一面板15c及び第二面板15dの主面に垂直方向に働く曲げモーメントに対する強い曲げ剛性を、軽量化と共に実現できる。第一面板15c及び第二面板15dの主面に平行となる方向に複数の角穴が貫通する構造は硬質プラスチックの成型により簡単に実現できる。そして、第一面板15c及び第二面板15dを垂直方向に沿って見たときに、湾曲して果実100の下面側を覆う構造に、更に主面に平行となる方向に複数の角穴が貫通する構造を組み合わせれば、果実100の下面側を覆う部分の曲げ剛性を更に強化し、軽量化構造において果実100を落下させないで収穫できる。或いは、第一面板15c及び第二面板15dの主面に平行となる方向に縦長の長方形の角穴を開孔して、第一面板15c及び第二面板15dを中空構造にしてもよい。中空構造にして第一面板15c及び第二面板15dを軽量化した場合であっても、第一面板15c及び第二面板15dの主面に垂直方向の曲げモーメントに対し、大きな曲げ剛性が実現できるので、果実100を落下させないで収穫できる。
【0036】
<第2実施形態の第1変形例>
本発明の第2実施形態の第1変形例に係る収穫ハンド2cは、図13に示すように、第一動力部16aに接続された第一把持板(12c、15c、25ci)、第二動力部16bに接続された第二把持板(12d、15d、25di)を有する(25ci及び25diのi=1~n:nは1以上の正の整数。)。第一動力部16a、第二動力部16b、第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)で、果実把持部(12c、12d、15c、15d、25c、25d、16a、16b)を構成する。第一把持板(12c、15c、25ci)は、第一面板15cと、第一面板15cを挟んで外側の高剛性の3本(n=3)の第一強化材25c1,25c2,25c3及び内側の軟質の第一クッション部12cとの三層構造で構成される。第二把持板(12d、15d、25di)においても第一把持板(12c、15c、25ci)と同様に、第二面板15dと、第二面板15dを挟んで外側の高剛性の3本(n=3)の第二強化材25d1,25d2,25d3及び内側の軟質な第二クッション部12dとの三層構造で構成される。第2実施形態の第1変形例に係る収穫ハンド2cは、第一面板15c及び第二面板15dのそれぞれが、曲げモーメントに対し高い曲げ剛性を有する3本の第一強化材25c1,25c2,25c3及び3本の第二強化材25d1,25d2,25d3で補強される点が第1実施形態と異なる。第2実施形態の第1変形例に係る収穫ハンド2cの他の構成は、図11に示した第2実施形態に係る収穫ハンド2b、更には第1実施形態に係る収穫ハンド2aと同様であるので、重複した説明を省略する。
【0037】
図13等に示すように、第一面板15cは、一端が接続する第一動力部16a側でやや湾曲し、開放端にむかってほぼ直線状に延伸する。第一強化材25c1,25c2,25c3は、カーボンファイバ、軽金属合金やチタン(Ti)等の軽量素材からなる複数の二次元構造材であり、一端が第一動力部16aに接続する。第一クッション部12cは、シリコンゴム等の軟質なクッション素材からなる。同様に、図13及び図14等に示すように、第二面板15dは、一端が接続する第二動力部16b側でやや湾曲し、開放端にむかってほぼ直線状に延伸する。第二強化材25d1,25d2,25d3は、図13及び図14等に示すように、カーボンファイバやTi等からなる軽量の複数の二次元構造材であり、一端が第一動力部16aに接続する。
【0038】
第一強化材25c1,25c2,25c3及び第二強化材25d1,25d2,25d3は、3本(n=3)に限定されず、n=1若しくは、n=2又はn=4以上でも構わない。第一強化材25c1,25c2,25c3及び第二強化材25d1,25d2,25d3を構成する二次元構造材は、断面が矩形の角パイプ、断面が半円の半円パイプ、断面がL字型又はH字型等の強い曲げ剛性を奏する材料力学的構造を有するものでよい。第一強化材25c1,25c2,25c3及び第二強化材25d1,25d2,25d3を曲げ弾性率の大きな硬質プラスチックの角材で構成しても良い。第一強化材25c1,25c2,25c3を硬質プラスチックで構成する場合は、第一強化材25c1,25c2,25c3と同一の硬質プラスチックからなる第一面板15cと第一強化材25c1,25c2,25c3を一体成型してもよい。同様に第二強化材25d1,25d2,25d3を硬質プラスチックで構成する場合は、第二強化材25d1,25d2,25d3同一の硬質プラスチックからなる第二面板15dと第二強化材25d1,25d2,25d3を一体成型してもよい。
【0039】
図14では、3本の第二強化材25d1,25d2,25d3が第二面板15dの長手方向に平行に伸びる構造を例示したが、長手方向に平行に伸びる第二強化材に対して直交する方向の第二強化材を加えてもよい。第二面板15dの長手方向に直交する方向の第二強化材を付加することにより、果実100の下面側における曲げ応力を強化できる。図14には第一強化材25c1,25c2,25c3は図示されていないが、第一強化材に関しても、第二強化材と対称となるように第一面板15cの長手方向に直交する方向の第二強化材を付加することが好ましいことは勿論である。又、図11に関連して第2実施形態の説明の後段に記載した、第一面板15c及び第二面板15dの主面に平行となる方向に複数の角穴が貫通するように長く開孔した内部剛性強化構造に対して、複数の角穴に直交する縦方向に第一強化材及び第二強化材を外部剛性強化構造として付加してもよい。
【0040】
特に、第二面板15dを垂直方向に沿って見たときに、果実100の外形に沿って湾曲した第二面板15dの構造において、長手方向(水平方向)に直交する縦方向の第二強化材を付加すれば、果実100の下面側を覆う部分の曲げモーメントに対する反力が強化する外部剛性強化構造となり、果実100の落下を防止できる。図14には図示されていないが、第一面板15cを、正面方向から垂直方向に沿って見たときに、果実100の外形に沿って縦方向に沿って湾曲した構造とし、第二強化材と対称となるように、第一面板15cに縦方向の第二強化材を付加して外部剛性強化構造を更に追加することが好ましいことは勿論である。更に、正面方向から見たときに、第一面板15c及び第二面板15dの下端がそれぞれ内側にL字型に曲がる構造において、第一面板15c及び第二面板15dにそれぞれ縦方向に沿ってL字型に曲がる第二強化材を付加すれば、L字型部分の曲げ剛性が強化され、果実100の落下が有効に防止できる。
【0041】
第二クッション部12dは、シリコンゴム等の軟質なクッション素材からなる。果実100を捕獲して収穫する際には、図15に示すように、第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)のそれぞれが図13に示す状態より内側に旋回し、第一面板15cと第二面板15dの間の内角が狭くなる。そして、第一クッション部12c及び第二クッション部12dが果実100の表面に直接接触し、第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)によって果実100が保持される。
【0042】
第2実施形態の第1変形例に係る収穫ハンド2cにおいて、第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)は、それぞれ第一強化材25c1,25c2,25c3及び第二強化材25d1,25d2,25d3によって曲げ剛性が補強され、保持力を増強することができる。第一強化材25c1,25c2,25c3及び第二強化材25d1,25d2,25d3によって曲げ剛性が補強されることにより、第一面板15cと第二面板15dのそれぞれの厚さを相対的に薄くできる。このため、第1変形例に係る収穫ハンド2cは、図11に示した収穫ハンド2bと同一重量以下に設定しても、果実100を落下させることなく収穫できる。
【0043】
更に、果実100が直接接触する第一クッション部12c及び第二クッション部12dのそれぞれは軟質なクッション素材であるので、強い押圧力で果実100を捕獲して収穫することができる。このように、第2実施形態の第1変形例に係る収穫ハンド2cによれば、軽量化の実現と共に、果実把持部(12c、12d、15c、15d、25c、25d、16a、16b)の保持力を増強して、表面を傷めることなく果実100の落下を防止することが可能となる。
【0044】
<第2実施形態の第2変形例>
本発明の第2実施形態の第2変形例に係る収穫ハンド2dは、図16及び図17に示すように、第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)を挟み、第一把持板と第二把持板の間に定義される接触幅Wsを低減して固定するU字形状の幅低減固定機構(28c、28d、29)を有する。「接触幅Ws」は、第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)のそれぞれの内面が、果実100の外面に点接触する接触位置で、第一クッション部12c及び第二クッション部12dのそれぞれの内面間の距離として定義される。幅低減固定機構(28c、28d、29)は、第一把持板(12c、15c、25ci)の外側にL字型構造として配置される懸架部28cと、第二把持板(12d、15d、25di)の外側にL字型構造として配置される懸架部28dと、懸架部28c、28dにそれぞれ連続して互いに対向する垂直側壁を構成する懸架側壁部と、対向する懸架側壁部のそれぞれの底部に連続し、第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)の下側を移動する伸縮可能なU字状の帯状弾性体29aを有する。図17に示すように、懸架部28c、28dは、搬送機構30のコの字状の摺動懸架枠を構成する2つの固定側壁部のそれぞれの上端に懸架され固定される。
【0045】
図17及び図18Aに示すように、幅低減固定機構(28c、28d、29)は、第一動力部16a及び第二動力部16b側の点線で示す待機位置から、第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)の先端の位置に摺動移動する。摺動移動は、図19に示すように、搬送機構30の移動ステージの上面を、搬送機構30の摺動懸架枠が摺動移動することによって達成される。搬送機構30の移動ステージの上面を搬送機構30の摺動懸架枠が摺動移動するためには、移動ステージの上面には蟻溝のようなガイド溝が掘られた構造が一例として採用可能である。ガイド溝の中には搬送機構30の摺動懸架枠の底部に設けられた凸部が嵌め込まれ、摺動懸架枠の底部に設けられた凸部にはボールネジナットが開孔されている。そして、ガイド溝の長手方向に伸びるボールネジが、ボールネジナットの中で回転することにより、ステップモータの回転運動が、搬送機構30の摺動懸架枠の並進運動に変換され、摺動懸架枠がリニア駆動される。図17に示すように、帯状弾性体29aは、捕獲して収穫する果実100の底部に接触しないように設けられる。
【0046】
図16に示すように、根元側の待機位置での懸架部28c及び懸架部28dの間の幅を根元幅Wa、第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)の先端における第一クッション部12c及び第二クッション部12dの間の幅を開放端幅Wbとする。図18Aに示すように、果実を把持したときの開放端幅Wbを捕捉幅Wcとする。図16に示す開放端幅Wbは、収穫対象の果実100の直径の最大値Womaxよりも広く設定し、根元幅Waを、収穫対象の果実100の直径の最小値Wominより狭くする。即ち
Womax<Wb ……(1)
Wa<Womin ……(2)
とする。最大値Womaxと最小値Wominは、それぞれ市場の規格で決められる値である。
【0047】
式(1)及び式(2)から、果実100の非把持の状態において、根元幅Waは、開放端幅Wbより狭く、
Wa<Wb ……(3)
である。式(3)は、図16の左方向に、第一面板15cと第二面板15dが定義する内角が拡がるテーパ形状であることを示している。
【0048】
果実100が気圧測定部(20、21a、22、23)の薄膜21に接触すると、図18Aに示すように、搬送機構30によって第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)の先端のロック位置に向かって、幅低減固定機構(28c、28d、29)が左方向に搬送されて移動する。第一クッション部12c及び第二クッション部12dのそれぞれの内面が果実100の外面に点接触する接触位置の少し手前側から、第一クッション部12c及び第二クッション部12dが圧縮され始めると、式(2)から帯状弾性体29aには収縮方向に張力がかかり始める。このため、第一クッション部12c及び第二クッション部12dのそれぞれの内面間で定義される接触幅Wsは、圧縮に伴い果実100の直径Wo以下になるように設定し、
Ws<Wo ……(4)
Womin≦Wo≦Womax ……(5)
となる。圧縮に伴い第一クッション部12c及び第二クッション部12dのそれぞれには凹部が生じる。対向する凹部が構成する実際の曲面ではなく、点接触のタイミングで接触幅Wsを定義する第一クッション部12c及び第二クッション部12dのそれぞれの内面は、それぞれ仮想的な面として平面を維持し、圧縮に伴い果実100の内部に、仮想的な平面が時間と共に侵入する。式(1)~(5)を考慮すると、接触位置から更に内面間隔が拡がる左方向に幅低減固定機構(28c、28d、29)が移動して、左端のロック位置まで到達すると、帯状弾性体29aに更に張力がかかり、果実100を確実に捕獲して収穫することが可能となる。
【0049】
図16に示すように、果実100の把持前のタイミングでは、幅低減固定機構(28c、28d、29)は、第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)の第一動力部16a及び第二動力部16b側の待機位置で待機する。果実100を捕獲して収穫する際には、図18A及び図19に示すように、幅低減固定機構(28c、28d、29)は、搬送機構30によって待機位置から第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)の先端部のロック位置にまで搬送されて移動する。ロック位置においては、幅低減固定機構(28c、28d、29)の帯状弾性体29aで発生する張力によって、第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)が共に内側に狭まり、果実100を強い押圧力で捕獲して収穫することができる。第2実施形態の第2変形例に係る収穫ハンド2dによれば、果実把持部(12c、12d、15c、15d、25c、25d、16a、16b)の保持力が幅低減固定機構(28c、28d、29)によって増強され、果実100の落下を防止することができる。第一動力部16a及び第二動力部16bを構成するサーボモータ等の動力源のトルクが弱い場合であっても、幅低減固定機構(28c、28d、29)の帯状弾性体29aの張力によって、開放端幅Wbを捕捉幅Wcに制限できるので、動力源を小型化できる。したがって、第2変形例に係る収穫ハンド2dを軽量化できる。
【0050】
動力源の軽量化と共に、第2実施形態の第2変形例に係る収穫ハンド2dにおいては、開放端幅Wbを捕捉幅Wcに制限するU字形状の幅低減固定機構(28c、28d、29)を用いて、接触幅Wsを果実100の直径Woより十分小さくなるように低減して、一定の張力でロックできる。よって、第2変形例に係る収穫ハンド2dによれば、搬送機構30の追加による重量の増加を相殺して、第一面板15cと第二面板15dのそれぞれの厚さを相対的に薄くできる。このため、第2変形例に係る収穫ハンド2dは、図11に示した収穫ハンド2bと同一重量以下に設定しても、果実100を落下させることなく、確実に収穫できる。
【0051】
<第2実施形態の第3変形例>
本発明の第2実施形態の第3変形例に係る収穫ハンドは、図18Bに示すように、第一把持板(12c、15c、35c)及び第二把持板(12d、15d、35d)を外側から挟み、第一把持板と第二把持板の間の接触幅Wsを低減して固定するU字形状の幅低減固定機構(29f,30f)を有する点では第2変形例と同様である。しかし、第一把持板(12c、15c、35c)を構成する第一面板15cは穴あき板状部材であり、図18Bの一部断面となる上面図に示すように、果実100の外形に沿って左の先端側が湾曲している点が第2変形例の構造とは異なる。第一面板15cは第一動力部16aに右側の一端を直接接続され、左側の他端に向かう広い部分を第一クッション部12cで覆われている。第一クッション部12cはシリコンゴム等の軟質なクッション素材であり、図18Bに示すように、果実100を保持する際に、果実100の外形に沿って直接接触して摩擦力を強化する部材である。即ち、果実100を保持する際には、第一把持板(12c、15c)が図18Aに示す平板状の構造よりも、果実100の外形に沿って内側に旋回し、果実100をより大きな面積で把持して摩擦力をより強化することができる。なお、図18Bは平面図として見たときに、果実100の外形に沿って内側に湾曲した構造を例示しているが、第一面板15cを垂直方向に沿って見たときに、果実100の外形に沿って湾曲する構造とすれば、果実100をより大きな面積で、三次元的に把持して、摩擦力を更に強化することができる。
【0052】
第二把持板(12d、15d、35d)を構成する第二面板15dの左の先端側は、図18Bの一部断面となる上面図に示すように、果実100の外形に沿って湾曲している穴あき板状部材である。第二動力部16bに右側の一端を直接接続され、左側の他端に向かう広い部分を第二クッション部12bで覆われている。第二クッション部12bはシリコンゴム等の軟質なクッション素材であり、図18Bに示すように、果実100を保持する際に、果実100に直接接触して摩擦力を強化する部材である。図18Bに示すように、果実100を保持する際には、図18Aに示す平板状の構造よりも第二把持板(12b、15b)が左側の先端が内側に旋回した湾曲構造をなし、果実100をより大きな面積で把持して摩擦力をより強化することができる。第一面板15cと同様に、第二面板15dを垂直方向に沿って見たときに、果実100の外形に沿って湾曲する構造とすれば、第二面板15dが果実100をより大きな面積で、三次元的な把持ができるので、摩擦力を更に強化することができる。
【0053】
第一把持板(12c、15c、35c)は、上面方向から見た平面パターンとして湾曲した第一面板15cと、第一面板15cの中央部付近まで第一面板15c外側に接し、中央部付近から先端側が離間する平板となる高剛性の第一強化板35cで分岐構造をなす。第一面板15cを穴あきの硬質プラスチック板とし、第一強化板35cも第一面板15cと同一の材料で穴あき構造とすれば、第一強化板35cも第一面板15cは一体成型できる。中央部付近から左側に向かい平板とする分岐構造により、第一面板15cの左側が湾曲していても式(3)の関係を担保することが可能になる。そして、更に第一面板15cの内側に軟質の第一クッション部12cとの積層構造を有するため、第一把持板(12c、15c、35c)は、先端側が分岐した分岐三層構造になる。
【0054】
第二把持板(12d、15d、35d)も第一把持板(12c、15c、35c)と同様に、上面方向から見た上面方向から見た平面パターンとしては、湾曲した第二面板15dと、第二面板15dの中央部付近まで外側に接し、第二面板15dの中央部付近から先端側が離間する平板となる高剛性の第二強化板35dとの分岐構造を有する。第一面板15cを穴あきの硬質プラスチック板とし、第一強化板35cも第一面板15cと同一の材料で穴あき構造とすれば、第一強化板35cも第一面板15cは一体成型できる。中央部付近から左側に向かい平板とする分岐構造により、第二面板15dの左側が湾曲していても式(3)の関係を担保することが可能になる。この分岐構造に加え、第二面板15dの内側には軟質な第二クッション部12dを有する積層構造となるため、全体では先端側が分岐した分岐三層構造になる。第2実施形態の第3変形例に係る収穫ハンドは、第一面板15c及び第二面板15dのそれぞれの左側の先端側が、曲げモーメントに対し高い曲げ剛性を有する第一強化板35c及び第二強化板35dとの分岐構造で補強されている点が第2実施形態の第2変形例と異なる。
【0055】
第2実施形態の第3変形例に係る収穫ハンドに用いられる幅低減固定機構(29f,30f)は、第一把持板(12c、15c、35c)の外側に配置される第一懸架壁30fと、第二把持板(12d、15d、35d)の外側に配置される第二懸架壁30fと、第一及び第二懸架壁30fに連続して設けられ、第一把持板(12c、15c、35c)及び第二把持板(12d、15d、35d)の下側を移動する伸縮可能なU字状の帯状弾性体29fとを有して、全体としてもU字型をなしている。図17に示した構造と同様に、幅低減固定機構(29f,30f)は、搬送機構の移動ステージの上面を摺動するコの字状の摺動懸架枠を構成する2つの側壁部のそれぞれの上端に、懸架壁30fの上端を外側に向かいL字型に曲げて懸架して固定することが可能である。図17に示した構造を採用する場合は、幅低減固定機構(29f,30f)は、移動台の摺動懸架枠の摺動移動によって移動可能である(図19参照。)。図17に示した構造と同様に、帯状弾性体29fは、捕獲して収穫する果実100の底部に接触しないように設けられる。しかし、図17に示した構造とは異なり、U字状の帯状弾性体29fの懸架壁30fの上端を内側に向かいL字型に曲げて、第一強化板35c及び第二強化板35dのそれぞれの上端に懸架して固定することが可能である。この場合は、第一強化板35c及び第二強化板35dの上端に沿って、幅低減固定機構(29f,30f)の懸架壁30fの上端が摺動移動することになる。
【0056】
図16に示したのと同様に、果実100の把持前のタイミングでは、幅低減固定機構(29f,30f)は、第一把持板(12c、15c、35c)及び第二把持板(12d、15d、35d)の第一動力部16a及び第二動力部16b側の待機位置で待機する。果実100の把持に際しては、幅低減固定機構(29f,30f)は、第一把持板(12c、15c、35c)及び第二把持板(12d、15d、35d)の先端部のロック位置にまで搬送されて移動する。
【0057】
果実100のロック位置においては、幅低減固定機構(29f,30f)の帯状弾性体29fで発生する張力によって、第一把持板(12c、15c、35c)及び第二把持板(12d、15d、35d)が共に内側に狭まる方向に力が働き、果実100を強い押圧力で捕獲して収穫することができる。この際、第一面板15c及び第二面板15dが果実100の外形に沿って湾曲する構造となっているので、第一面板15c及び第二面板15dが果実100をより大きな面積で把持し、摩擦力が強化されている。第2実施形態の第3変形例に係る収穫ハンドによれば、果実把持部(12c、12d、15c、15d、35c、35d、16a、16b)の保持力が幅低減固定機構(29f,30f)によって増強され、果実100の落下を防止することができる。第一動力部16a及び第二動力部16bを構成するサーボモータ等の動力源のトルクが弱い場合であっても、幅低減固定機構(29f,30f)の帯状弾性体29fの張力によって、開放端幅Wbを捕捉幅Wcに制限できるので、動力源を小型化できる。したがって、第3変形例に係る収穫ハンドを軽量化できる。
【0058】
動力源の軽量化と共に、第2実施形態の第3変形例に係る収穫ハンドにおいては、分岐構造をなす第一把持板(12c、15c、35c)と第二把持板(12d、15d、35d)を採用して摩擦力を増大した上で、幅低減固定機構(29f,30f)を用いて果実100を捕獲できる。よって、図11に示した収穫ハンド2bに比し、第一面板15cと第二面板15dのそれぞれの厚さを相対的に薄くできる。このため、第2実施形態の第3変形例に係る収穫ハンドは、図11に示した収穫ハンド2bと同一重量以下に設定しても、果実100を落下させることなく、確実に収穫できる。
【0059】
<第2実施形態の第4変形例>
第2変形例に係る収穫ハンド2dの幅低減固定機構(28c、28d、29)及び第3変形例に係る収穫ハンドの幅低減固定機構(29f,30f)が機能する位置は、左側の先端部に限定されず、果実100の接触幅Wsが定義される接触位置の近傍でも構わない。第3変形例で定義したとおり、接触位置とは、第一クッション部12c及び第二クッション部12dのそれぞれの内面が果実100の外面に点接触する位置である。又、接触幅Wsは、第一クッション部12c及び第二クッション部12dのそれぞれの内面が、平面を維持すると仮定し、この仮想的な平面間で定義される距離である。本発明の第2実施形態の第4変形例に係る収穫ハンド2dは、図20Aに示すように、幅低減固定機構(28c、28d、29a)に代えて、図20Aに示すように、第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)の延伸方向の幅WpのU字形状の落下防止機構(28e、28f、29e)を備えている。幅Wpは果実100の直径Woに近い幅が好ましい。落下防止機構(28e、28f、29e)の底部側にU字型に構成される捕獲帯部29eは、果実100を捕獲して収穫する際には果実100の直下になる捕獲位置に置く。第2変形例及び第3変形例で説明した捕捉幅Wcを制限する目的の幅低減固定機構とは異なり、捕獲帯部29eの張力は弱くてもよいので、果実100の落下を防止する網等で捕獲帯部29eを構成しても構わない。果実100を果梗と枝の間の離層部分で分離したとき、第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)によって果実100の把持が保てない場合でも、直下の落下防止機構(28e、28f、29e)上で落下が停止する。即ち、見かけ上、果実100の重力が低減するので、第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)に緩やかに挟まれた状態で果実100が保持できる。
【0060】
図20Bに示すように、U字状の落下防止機構(28e、28f、29e)の懸架壁30の上端を内側に向かいL字型に曲げ、更にコの字型になるフック構造を用いて、第一面板15c及び第二面板15dのそれぞれの上端に懸架して落下防止機構(28e、28f、29e)を固定することも可能である。果梗と枝の間の離層部分で果実100を分離したとき、第一面板15c及び第二面板15dによって果実100の把持が保てない場合でも、直下の落下防止機構(28e、28f、29e)上で落下が停止する。よって、見かけ上、果実100の重力が低減することにより、第一面板15c及び第二面板15dの果実100に対する押圧力が弱くても、第一面板15c及び第二面板15dに緩やかに挟まれた状態で果実100が保持できる。
【0061】
図20Bに示すように、第一面板15c及び第二面板15dのそれぞれの上端に、フック構造で落下防止機構(28e、28f、29e)が懸架される場合は、第一面板15c及び第二面板15dの上端に沿って、落下防止機構(28e、28f、29e)の懸架壁30の上端のフック構造が摺動移動することになる。図20A及び図20Bに示す構造の収穫ハンド2dによれば、果実100を押圧する押圧力が弱くても、果実100を見かけ上第一把持板(12c、15c、25ci)及び第二把持板(12d、15d、25di)若しくは第一面板15c及び第二面板15dの間に保持することができる。したがって、動力源を小型化して第4変形例に係る収穫ハンド2dを軽量化できる。
【0062】
<第2実施形態の第5変形例>
本発明の第2実施形態の第5変形例に係る収穫ハンド2eは、図21に示すように、第一把持板(12c、15c、25ci)の先端から前方に延伸する第一牽引手段(32a、33a、34a、35a)、及び第二把持板(12d、15d、25di)の先端から前方に延伸する第二牽引手段(32b、33b、34b、35b)を有する。第一牽引手段(32a、33a、34a、35a)は、第一回転部32a、第一連結枝33a、第一締結部34a及び第一連結枝駆動35aを有する。第一回転部32aとして、対向する第二把持板(12d、15d、25di)に向かって90度以上回転可能な蝶番等が用いられる。直線状の第一連結枝33aの先端近傍に第一締結部34aが設けられる。第一連結枝駆動35aは、第一回転部32aを回転させ、第一連結枝33aを第二把持板(12d、15d、25di)に向かうように回転させる。第一牽引手段(32a、33a、34a、35a)と同様に、第二牽引手段(32b、33b、34b、35b)は、第二回転部32b、第二連結枝33b、第二締結部34b及び第二連結枝駆動35bを有する。第二回転部32bとして、対向する第一把持板(12c、15c、25ci)に向かって90度以上回転可能な蝶番等が用いられる。直線状の第二連結枝33bの先端近傍に第二締結部34bが設けられる。第二連結枝駆動35bは、第二回転部32bを回転させ、第二締結部34bを先端に有する第二連結枝33bを第二把持板(12d、15d、25di)に向かうように回転させる。第一連結枝駆動35a及び第二連結枝駆動35bは、第一回転部32a及び第二回転部32bをそれぞれ駆動するサーボモータ等の動力源である。
【0063】
図21に示すように、果実100が気圧測定部(20、21、22)の薄膜21に接触すると、密閉空間Sの気圧変化が気圧計22で検出される。気圧計22での気圧変化の検出に連動して、第一牽引手段(32a、33a、34a、35a)及び第二牽引手段(32b、33b、34b、35b)それぞれの第一連結枝駆動35a及び第二連結枝駆動35bが起動する。図22に示すように、第一連結枝駆動35a及び第二連結枝駆動35bによって、第一回転部32a及び第二回転部32bがそれぞれ互いに対向する方向に回転し、第一締結部34aと第二締結部34bとが締結するように第一連結枝33aの先端と第二連結枝33bの先端が重なりあう。例えば、第一連結枝33aと第二連結枝33bの少なくとも一方の先端に電磁石を設け、他方の先端に鉄製の受け皿を設けておけば、に第一連結枝33aの先端と第二連結枝33bの先端が重なりあったとき、磁力により第一牽引手段(32a、33a、34a、35a)及び第二牽引手段(32b、33b、34b、35b)が固定される。
【0064】
第一牽引手段(32a、33a、34a、35a)及び第二牽引手段(32b、33b、34b、35b)が、互いに固定されると、開放端幅Wbを所望の捕捉幅Wcに制限することができる。よって、第一把持板(12c、15c、25ci)と第二把持板(12d、15d、25di)の果実100に対する押圧力が弱くても、果実100を保持して収穫できる。第一牽引手段(32a、33a、34a、35a)及び第二牽引手段(32b、33b、34b、35b)で果実100が保持されたとき、第一クッション部12c及び第二クッション部12dのそれぞれの内面間で定義される接触幅Wsは、式(4)が要求するように、果実100の直径Wo以下にできる。又、図22に示す捕捉幅Wcを、図21に示した把持するタイミングの前の開放端幅Wbよりも狭くできる。そのため、第2実施形態の第5変形例によれば、第一動力部16a及び第二動力部16bを構成するサーボモータ等の動力源のトルクが弱い場合であっても、第一牽引手段(32a、33a、34a、35a)及び第二牽引手段(32b、33b、34b、35b)によって、開放端幅Wbを捕捉幅Wcに制限できる。即ち、第2実施形態の第5変形例によれば、第一動力部16a及び第二動力部16bを小型化できるので、軽量化が可能になる。そして軽量化と共に、果実100を保持する保持力が、第一牽引手段(32a、33a、34a、35a)及び第二牽引手段(32b、33b、34b、35b)によって実効的に強化されたことと等価になり、果実100の落下を防止することが可能となる。
【0065】
なお、図21及び図22の左方向に視点をおいて、収穫ハンド2eと等価な構造を正面方向から見たときに、第一面板15c及び第二面板15dの下端がそれぞれ内側にL字型に曲がる構造を採用し、第一及び第二牽引手段と同様な機構をL字型の構造の底部に設けてもよい。即ち第一面板15cのL字の水平部分の底部に第一連結枝駆動35aと第一回転部32aを設け、第二面板15dのL字の水平部分の底部に第二連結枝駆動35bと第一回転部32aを設け、第一連結枝33aの先端と第二連結枝33bの先端が、収穫ハンド2eと等価な構造の底部側において重なりあって連結するようにしてもよい。
【0066】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る収穫ハンド2gは、図23に示すように、ハンド基部11と、ハンド基部11に接続固定された収穫器(55、56)とを有する。収穫器(55、56)は、リング状の枠部55と、枠部55に取り付けられたU字状の軟質素材の網等の袋部56からなる。枠部55の直径は収穫対象の果実100の最大直径Womaxよりも大きく設定される。袋部56は、枠部55からの深さが収穫対象の果実100の最小高さとほぼ同じ程度に設定される。収穫ハンド2gは、箱状のハンド基部11の内部に固定された第四動力部(図示省略)、第一果梗切断棒(53a、54a)及び第二果梗切断棒(53b、54b)を有する果梗切断部(53a、53b、54a、54b、53h)を更に有する。第四動力部は、果梗切断部(53a、53b、54a、54b、53h)の第一果梗切断棒(53a、54a)及び第二果梗切断棒(53b、54b)を動作させるサーボモータ等の動力源となる。第一果梗切断棒(53a、54a)は、第一棒状プレート53a及び第一先端部54aから構成される。第一棒状プレート53aは、板状部材であり、要(かなめ)軸53hに一端が接続され、他端の先端内側に、果梗の切断が可能な第一先端部54aが設けられている。第二棒状プレート53bにおいても第一棒状プレート53aと同様に板状部材であり、要軸53hに一端が接続され、他端の先端内側に、果梗の切断が可能な第二先端部54bが設けられている。果梗を切断する部位は、第一先端部54a及び第二先端部54bとなる。要軸13hを介して、第一果梗切断棒(53a、54a)及び第二果梗切断棒(53b、54b)は第四動力部に接続されている。
【0067】
図23に示すように、収穫ハンド2gは、ハンド基部11に近接して設けられた上下移動機構(57、58)、ハンド基部11の上面に固定された撮影ユニット17、及び撮影ユニット17と無線又は有線で接続された物体検出ユニット40を更に有する。上下移動機構(57、58)は、軌道幹57及び第五動力部58からなり、第五動力部58を動力源として軌道幹57に沿ってハンド基部11を上下移動させる。物体検出ユニット40は、図25を参照して後述するロボット制御装置の一部の機能である撮影ユニット17の撮像装置19によって取得した果樹の画像から果実100の識別を行う動作が可能である。
【0068】
第3実施形態に係る収穫ハンド2gによる果実100の収穫においては、図24Aに示すように、収穫器(55、56)、果梗切断部(53a、53b、54a、54b、53h)及び撮像ユニット17等と共にハンド基部11は、まず待機位置に配置される。物体検出ユニット40において果実100の識別が実施された後、収穫ハンド2gは、収穫対象の果実100の位置情報に基づき対象果実100の下に移動する。果実100の下でハンド基部11が上下移動機構(57、58)によって果実100の高さまで上昇する。そして、第一果梗切断棒(53a、54a)及び第二果梗切断棒(53b、54b)がハサミ様の開閉により果梗200を切断し、果実100が収穫器(55、56)にて収穫される。
【0069】
図25に示す第3実施形態に係るロボット制御装置は、図24Aに示した物体検出ユニット40の機能に加え、図24Bに示したロボットアーム(4x,4y,4z;6a、6b、6c;7a,7b,7c)や撮影ユニット17の方向制御等をする機能を備える。ロボットアーム(4x,4y,4z;6a、6b、6c;7a,7b,7c)は、図24Bに示すように、収穫器(55,56)の枠部55に接続された腕部(6a,6b,6c;7a,7b,7c)を有する。図24Bに示すように、腕部(6a,6b,6c;7a,7b,7c)は、第一上腕7c、第二上腕7b、下腕7a、及び複数の関節6a,6b,6cを有する。第一上腕7c、第二上腕7b及び下腕7aがロボットアームの「リンク」に相当し、下腕回転関節6a、上腕回転関節6b及び収穫器回転関節6cがロボットアームの「ジョイント」に相当する。
【0070】
第一上腕7c、第二上腕7b及び下腕7aの長さや長さの比は任意であるが、図24Bに示す収穫器(55,56)側で細かな動作を実現するには、第一上腕7c、第二上腕7bの方が相対的に短いものであることが好ましい。収穫器(55,56)には、第一上腕7cの一方の端部が直接接続される。図示を省略しているが、収穫器(55,56)の枠部55又は第一上腕7cの上には、図23及び図24Aと同様に第一果梗切断棒(53a、54a)及び第二果梗切断棒(53b、54b)を有する果梗切断部が設けられている。収穫器回転関節6cは第一上腕7cの他方の端部に固定されている。収穫器回転関節6cは、収穫器(55,56)の枠部55をなす円の直径方向を中心軸として第一上腕7cを回転させることにより、枠部55を任意の回転角で回転させることができる。上腕回転関節6bは第二上腕7bと下腕7aを接続する回転関節である。上腕回転関節6bは、下腕7aの一方の端部に固定されており、第二上腕7bを任意の回転角で回転させることができる。
【0071】
下腕回転関節6aは移動回転基部(3,4x,4y,4z)のZ軸移動部4zに固定され、Z軸移動部の並進移動に従ってz軸方向に移動すると共に、下腕7aを任意の回転角で回転させることができる。Z軸移動部4zの頂部には撮影ユニット17が設けられている。撮影ユニット17は、方位角θを回転制御する方位角駆動装置と、仰角φを回転制御する仰角駆動装置74と共に配置されている。腕部(6a,6b,6c;7a,7b,7c)のみに着目すると「垂直多関節型」のロボットアームに該当する。移動回転基部(3,4x,4y,4z)の三つの移動部4x、4y、4zは、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の三軸それぞれに対し、腕部(6a,6b,6c;7a,7b,7c)全体を並進移動する。また、移動回転基部(3,4x,4y,4z)の基部をなしている回転台3は、三つの移動部4x、4y、4zを固定し、三つの移動部4x、4y、4z全体を回転させる。回転台3は直接的にはX軸移動部4xを固定し、X軸移動部4x以上の移動回転基部(3,4x,4y,4z)の構成を任意の回転角で回転させることができる。X軸移動部4xは、X軸移動部4xの上部に接続しているY軸移動部4y以上の構成をX軸方向に並進移動させる。Y軸移動部4yはX軸移動部4xに対してX軸方向に並進移動が可能なように固定され、Y軸移動部4yの上部に接続しているZ軸移動部4z以上の構成をY軸方向に並進移動させる。Z軸移動部4zはY軸移動部4yに対してY軸方向に並進移動が可能なように固定され、移動台(5a、5b)を並進移動させる。移動回転基部(3,4x,4y,4z)のみに着目すると、「直交座標型」のロボットアームに該当する。
【0072】
即ち、第3実施形態に係るロボット制御装置は、図24Bに示したロボットアーム(4x,4y,4z;6a、6b、6c)の移動部4x、4y、4zや回転関節6a,6b,6cのそれぞれを独立して駆動・制御が可能なロボットハンドコントローラ77と、撮影ユニット17の方位角を制御する方位角モータドライバ76と、撮影ユニット17の仰角を制御する仰角モータドライバ73を備える。撮影ユニット17は、飛行時間(TOF)方式により、パルス投光したレーザ光が対象物の表面で反射して返ってくるまでの時間を基に距離と2次元画像を同時測定できる距離イメージセンサである。よって、第3実施形態に係るロボット制御装置は、撮影ユニット17のレーザ光のパルス投光を制御する光源駆動回路74と、撮影ユニット17の距離イメージセンサが取得したアナログデータをデジタルデータに変換するAD変換回路75と、AD変換回路75により変換されたデジタルデータを一時保存する第2データメモリ64cを備えている。
【0073】
実際に対象とする現場の果樹園は非常に広い。果樹園の広さを考慮すると、果樹を自動収穫する際には、撮影ユニット17は複数回の撮影が必要である。広い面積に対して複数回の撮影をするためには、撮影ユニット17は方位角(偏角)θと仰角(極角又は天頂角)φを変えて複数の撮影方向から、距離イメージセンサのデータを取得することが必要である。したがって、図25Aに示すように、撮影ユニット17の方位角θを回転制御して変更する方位角駆動装置72と、仰角φを回転制御して変更する仰角駆動装置74が必要である。方位角駆動装置72には方位角駆動モータが備えられ、仰角駆動装置74には仰角駆動モータが備えられている。方位角モータドライバ76は、方位角駆動装置72の方位角駆動モータを駆動する信号と電力を出力し、仰角モータドライバ73は、仰角駆動装置74の方位角駆動モータを駆動する信号と電力を出力する。
【0074】
更に第3実施形態に係るロボット制御装置は、ロボットハンドコントローラ77、仰角モータドライバ73、光源駆動回路74、第2データメモリ64c、方位角モータドライバ76に接続された中央処理制御部61を備える。中央処理制御部61は、ロボットハンドコントローラ77、仰角モータドライバ73、光源駆動回路74、方位角モータドライバ76のそれぞれを駆動する信号を出力し、第2データメモリ64cから第2データメモリ64cに格納されたデータを受け取る。図25Aに示すように、中央処理制御部61には更に表示装置51,入力装置50、プログラムメモリ64a、第1データメモリ64bが接続され、通常のコンピュータシステムと同様な構成になっている。
【0075】
したがって、中央処理制御部61は図25Bに示すように、制御回路611と算術論理回路(ALU)612を備え、通常のコンピュータシステムの中央処理装置(CPU)と等価な機能をなす。算術論理回路612は、θ,φ設定命令回路612a、画像取得命令回路612b、果実識別論理回路612c、画像出力命令回路612d、距離測定論理回路612e、座標決定論理回路612f、収穫順序決定論理回路612g、収穫ハンド制御回路612h及び次画像判断論理回路612iを論理的な構成として含む。制御回路611にはシークエンス回路611aが含まれ、θ,φ設定命令回路612a、画像取得命令回路612b、果実識別論理回路612c、画像出力命令回路612d、距離測定論理回路612e、座標決定論理回路612f、収穫順序決定論理回路612g、収穫ハンド制御回路612h及び次画像判断論理回路612iの処理シークエンスをクロック信号に従って規定する。したがって、シークエンス回路611aは、バス613をかいして、θ,φ設定命令回路612a、画像取得命令回路612b、果実識別論理回路612c、画像出力命令回路612d、距離測定論理回路612e、座標決定論理回路612f、収穫順序決定論理回路612g、収穫ハンド制御回路612h及び次画像判断論理回路612iのそれぞれに接続されている。
【0076】
図25Bに示す算術論理回路612に含まれるθ,φ設定命令回路612aは、撮像ユニット17が複数の撮影方向を選択できるように、撮像ユニット17の方位角θと仰角φを選定して、撮像ユニット17を選択した撮影方向に調整する。又、θ,φ設定命令回路612aは、選択した方位角θと仰角φのデータを第1データメモリ64bに格納する。画像取得命令回路612bは、θ,φ設定命令回路612が選択した方位角θ及び仰角φの撮影方向に撮像ユニット17を向かわせることにより、光源駆動回路74を駆動してレーザ光をパルス投光して、選択された撮影面積に含まれる対象果樹の入力画像Pを取得して、AD変換回路75によるAD変換後、第1データメモリ64bに格納する。算術論理回路612の果実識別論理回路612cは、取得した入力画像Pを、第1データメモリ64bから読み出し図26B及び図26Cに示すアルゴリズムに従い、識別対象である物体が入力画像Pに含まれていることを識別する。果実識別論理回路612cは、物体を識別した果実識別画像を、第1データメモリ64bに格納する。
【0077】
算術論理回路612の画像出力命令回路612dは、果実識別論理回路612cが識別した果実識別画像を第1データメモリ64bから読み出し、図25Aに示す表示装置51に表示する。距離測定論理回路612eは、識別された果実A,A,A,A,……のそれぞれの極座標情報(θ,φ)を基礎とし、距離画像センサのTOFの手法を機能させることにより、識別した果実A,A,A,A,……との距離rを測定し、測定結果を第1データメモリ64bに格納する。座標決定論理回路612fは、第1データメモリ64bから距離rと、グリッドセルに対応して付加されている識別された果実A,A,A,A,……のそれぞれの極座標情報(θ,φ)を用いて、識別された果実A,A,A,A,……のそれぞれの三次元の位置座標(r,θ,φ)を決定する。
【0078】
図25Bに示す算術論理回路612の収穫順序決定論理回路612gは、三次元の位置座標(r,θ,φ)を用いて、収穫対象の果実A,A,A,A,……のそれぞれの収穫順序を、三次元空間における「巡回セールスマン問題」等の組合せ最適化問題により決定する。決定した収穫順序は、位置座標(r,θ,φ)と共に第1データメモリ64bに格納する。収穫ハンド制御回路612hは、収穫順序決定論理回路612gが決定した収穫順序に従い、ロボットハンドコントローラ77に命令を出し、ロボットアーム(4x,4y,4z;6a、6b、6c)の移動部4x、4y、4z及び回転関節6a,6b,6cを駆動する。算術論理回路612の次画像判断論理回路612iは、撮像ユニット17によって撮影すべき次画像が果樹園の他の領域に存在するか判定する。
【0079】
図25Bの算術論理回路612にブロック図として示したθ,φ設定命令回路612a、画像取得命令回路612b、果実識別論理回路612c、画像出力命令回路612d、距離測定論理回路612e、座標決定論理回路612f、収穫順序決定論理回路612g、収穫ハンド制御回路612h及び次画像判断論理回路612iは、ALU612を構成するハードウェア資源を、論理的な機能に着目して形式的に表現したモデル図である。したって、図25の構成は、必ずしも、半導体チップ上に物理的な領域としてそれぞれ独立して存在する機能ブロックを意味するものではない。よって、ALU612の一部の構成又はすべての構成をフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)のようなプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)の「論理ブロック」のような半導体チップ上に実装されたプログラム可能な論理コンポーネント等の現実に存在する構成を否定するものでもない。ALU612の一部の構成又はすべての構成をFPGAのようなPLDで構成した場合は、図25Bに示した制御部611やバス613等は省略可能である。
【0080】
更に、ALU612は、CPUコア風のアレイとPLD風のプログラム可能なコアを同じチップに搭載した構造でもよい。このCPUコア風のアレイは、予めPLD内部に搭載されたハードマクロCPUと、PLDの論理ブロックを用いて構成したソフトマクロCPUを含む。つまりPLDの内部においてソフトウェア処理とハードウェア処理を混在させた構成でもよい。したがって、ALU612を構成するθ,φ設定命令回路612a、画像取得命令回路612b、果実識別論理回路612c、画像出力命令回路612d、距離測定論理回路612e、座標決定論理回路612f、収穫順序決定論理回路612g、収穫ハンド制御回路612h及び次画像判断論理回路612i等はソフトウェアプログラム上の仮想的なハードウェア資源として存在しても、実際のゲートアレイとしてのハードウェア資源としても存在しうる。
【0081】
ALU612の一部の構成又はすべての構成をFPGAのようなPLDで構成した場合は、図25Bに示した第1データメモリ64b等は、PLDを構成する論理ブロックの一部に含まれるメモリブロック等のメモリ要素として構成することができる。即ち、図25Bに示した第1データメモリ64bは、個別の半導体記憶装置の一部を占めるワーキングメモリとして存在してもよく、第1データメモリ64bの一部の記憶領域を利用して存在してもよい。或いは、図示を省略したHDD等の他のメモリを用いた仮想メモリとして存在してもよく、PLDを構成する論理ブロックの一部に含まれるメモリブロック等として存在してもよい。
【0082】
第3実施形態に係るロボット制御装置を用いた果実収穫方法の手順を、図26A図26Cに示すフローチャートを参照しながら説明する。対象果樹の画像は、対象とする果樹園の広さを鑑み、通常は複数の撮影面積、従って複数の撮影方向からの取得が必要である。図26Aに示すフローチャートのステップS1では、算術論理回路612のθ,φ設定命令回路612aが複数の撮影方向の内、任意の撮影方向を選択し、距離画像センサを含む撮像ユニット17の方位角θ、仰角φを選択した撮影方向の撮影面積に合わせる命令を出す。ステップS1で決定した方位角θ、仰角φは、第1データメモリ64bに格納する。続くステップS2では、画像取得命令回路612bがステップS1で決定した方位角θ、仰角φの撮影方向で、選択された撮影面積に含まれる対象果樹の入力画像Pを取得する命令を出す。ステップS2で撮像ユニット17によって撮影された対象果樹の入力画像Pは、ロボット制御装置の中央処理制御部61によって第2データメモリ64cに保存される。
【0083】
ステップS2では更に、ロボット制御装置の画像取得命令回路612bが第2データメモリ64cから撮像ユニット17によって撮影された対象果樹の入力画像Pを読み出す。図26Bに示すフローチャートのステップS31では、果実識別論理回路612cが第1データメモリ64bに格納された方位角θ、仰角φを基準として、入力画像PをN(=S×S)個のグリッド状のグリッドセルに分割する。グリッドセルには、それぞれのサイズおよび位置等のセル情報が含まれる。各グリッドセルのセル番号をi(i=1~N,N=S×S:Sは2以上の正の整数)とする。ステップS32で、セル番号i=1のグリッドセルを選択する。ステップS33で、図26Cに示すように、1つのグリッドセル(正方形)に対して、B個のバウンディングボックスを配置する(Bは2以上の正の整数)。バウンディングボックスは、物体の位置と大きさを表す長方形である。バウンディングボックスは、中心の座標(x, y)、横幅w、縦幅h、信頼度Fの5つの要素を持つ。信頼度Fは、バウンディングボックスが物体を含む確率を表わす。そして、各グリッドセルにC個のクラス確率を割り当てる。クラス確率は、グリッドセルがどの種類の物体を含むかを表す確率である。各グリッドセルにC個のクラス確率を割り当てる。クラス確率は、グリッドセルがどの種類の物体を含むかを表す確率である。
【0084】
即ち、ステップS33では、果実識別論理回路612cがB個のすべてのバウンディングボックスについて、図26Cに示す(a)~(e)の5つの要素を計算し、バウンディングボックスとクラス確率を組み合わせて、物体の位置と種類を推定する。
(a)x:バウンディングボックスの中心のx座標
(b)y:バウンディングボックスの中心のy座標
(c)w:バウンディングボックスの横幅
(d)h:バウンディングボックスの縦幅
(e)F:信頼度、 0≦信頼度≦1
信頼度Fが0に近いほど、バウンディングボックスの中身は「背景」を表し、信頼度Fが1に近いほど、バウンディングボックスの中身は「物体」を表す。
【0085】
このようにして、ステップS33では、グリッドセルに写っている物体を果実識別論理回路612cが検出する。ステップS34で、グリッドセルに写っている物体の属性を果実識別論理回路612cが判定する。属性は、果実、葉、枝、幹、背景等である。判定された物体の属性はセル情報に付属させて第1データメモリ64bに保存する。ステップS35で、セル番号iを第1データメモリ64bから読み出す。セル番号iがNでなければ、ステップS36で、セル番号iを(i+1)と1つ増加させ、ステップS33に戻り、ステップS33~ステップS35のループの処理を繰り返し実行する。ステップS35で、セル番号iがNであれば、ステップS37で、セル番号1~nのセルを組み合わせ、収穫対象としている果実100が識別可能な画像が得られる。
【0086】
ステップS37で、例えば、図27に示すように、果実A,A,A,A,……が表示され、それぞれのグリッドセルに何が映されているかを果実識別論理回路612cが判断する。実際の果実100の収穫の現場では、対象果樹の画像は図27とは異なる。即ち、対象とする果樹園の広さを鑑みると、ステップS37で得られる画像は果樹園の一部を示す画像になるが、図27では簡略化して孤立した樹木でモデル化し、しかも果実100が存在している場合をモデル的に示している。即ち、実際の果実100の収穫の現場では図27とは異なり、果実A,A,A,A,……の少なくとも一部が二次元画像上で重複するように高密度で存在する場合がある。ステップS38で、ステップS37で得られた画像に、識別対象である物体として果実A,A,A,A,……が、入力画像Pに含まれていることを識別し、果実A,A,A,A,……が識別された画像の情報は、第2データメモリ64cに保存する。図26Bに示すステップS4で、画像出力命令回路612dが第2データメモリ64cに保存された果実識別画像を読み出し、図25Aに示す表示装置51に表示し、収穫対象の果実A,A,A,A,……の2次元的な配置が確認できる。
【0087】
図27に示した果実識別画像には、収穫対象の果実A,A,A,A,……のそれぞれの極座標情報(θ,φ)がS×S個のグリッドセルに対応して付加されている。
第1データメモリ64bに格納された方位角θ、仰角φを基準として、入力画像PをN(=S×S)個のグリッド状のグリッドセルに分割する。図26Aに示すステップS6では、距離測定論理回路612eが、距離画像センサのTOFの手法により、収穫対象の果実A,A,A,A,……との距離rをそれぞれ測定させる命令を出し、測定された距離rは、距離測定論理回路612eが第1データメモリ64bに格納する。図26Aに示すステップS7では、ステップS6で取得された距離rを第1データメモリ64bと共に収穫対象の果実A,A,A,A,……のそれぞれに対応する極座標情報(θ,φ)を座標決定論理回路612fが読み出し、収穫対象の果実A,A,A,A,……の三次元の位置座標(r,θ,φ)を座標決定論理回路612fが決定する。ステップS7で決定された三次元の位置座標(r,θ,φ)に対し、ステップS7では、収穫対象の果実A,A,A,A,……のそれぞれの収穫順序を、収穫順序決定論理回路612gが「巡回セールスマン問題」等の組合せ最適化問題により決定する。
【0088】
ステップS7で収穫対象の果実A,A,A,A,……のそれぞれの収穫順序が決定されると、ステップS8では決定された収穫順序に従って、収穫ハンド制御回路612hがロボットアーム(4x,4y,4z;6a、6b、6c)の移動部4x、4y、4z及び回転関節6a,6b,6cを駆動するように、ロボットハンドコントローラ77に命令を出す。ステップS8でロボットハンドコントローラ77が、ロボットアーム(4x,4y,4z;6a、6b、6c)をコントロールすることにより、収穫ハンド(55,56)の位置及び傾きを制御して、収穫器(55、56)のリング状の枠部55が、収穫対象の果実A,A,A,A,……のそれぞれの真下に位置するように、順に制御する。例えば、果実Aが収穫順序の最初に設定されたとすれば、ステップS8で収穫順序に従い、ロボットアーム(4x,4y,4z;6a、6b、6c)を駆動して、枠部55を果実Aの真下に位置させる。
【0089】
更に、ステップS8ではロボットアーム(4x,4y,4z;6a、6b、6c)を駆動し、枠部55が収穫対象の果実Aを通過して、枠部55に取り付けられた袋部56に収納されるように上昇させる。収穫器(55,56)の枠部55、又は図24Bに示した第一上腕7cの上には、果梗切断部が設けられている。枠部55が果実Aを通過し、果実Aが袋部56に収納される位置関係になったら、果梗切断部の第一棒状プレート53a及び第二棒状プレート53bが果梗を切断させるように移動し、果梗を切断することにより、袋部56に果実Aを収穫する。ステップS8では同様に果実A,A,A,……のそれぞれに付いても、ステップS7で決定された順番に従い、順に袋部56に収穫する。そしてステップS9では、次画像判断論理回路612iが、次画像の存在を判定する。
【0090】
果実の収穫が実施される現実の果樹園は広い。したがって、現実の果樹園の広さを考慮すると、現実の果樹園は複数の撮影面積に分割されるのが通常であり、未収穫の果実が存在する新たな画像(次画像)を、新たな撮影方向から取得することが必要である。図26Aに示すフローチャートのステップS9で次画像が存在すると判定された場合は、ステップS1に戻り、新たな方位角θ、仰角φを設定して、次画像の取得と、新たな果実の識別及び収穫をするループになる。ステップS9からステップS1に戻るループは、現実の果樹園の全体から対象とする果実の収穫が全部収穫されるまで繰り返される。
【0091】
対象とする果樹園を一廻りし、すべての領域を撮像した場合であっても、収穫した果実の奥に未収穫の果実が存在する場合がある。したがって、三次元的に奥に存在する未収穫の果実の存在を確認するため、更に一廻りするのが好ましい。又、現実の果樹園には複数の樹木が存在するのが通常であるので、それぞれの樹木を撮影するように、樹木と樹木の間に侵入して、それぞれの樹木を個別に撮影することが望ましい。果樹園の収穫対象の果実が全部収穫されたことが確認されれば、ステップS9で次画像が存在しないと判定し、図26Aに示すフローチャートの処理を終了する。
【0092】
<第3実施形態の変形例>
図25に例示したロボット制御装置の一部の中央処理制御部61,プログラムメモリ64a、第1データメモリ64b、ロボットハンドコントローラ77等は、第1実施形態に係る収穫アーム2a、及び第2実施形態に係る収穫アーム2b~2f等に搭載してもよい。更に、図25に例示したロボット制御装置の一部は、収穫アームとは別個に独立した収穫ユニットの制御装置として配置し、無線通信等で、収穫ユニットや収穫アーム2a~2f等を遠隔制御するようにしてもよい。本発明の第3実施形態の変形例に係る収穫ユニットは、図28に示すように、収穫器搬送部(84,85,86)と、収穫器搬送部(84,85,86)の上部に固定された収穫器配置フレーム(81,82,83)と、収穫器配置フレーム(81,82,83)の端部に設置された収穫器(55、56)を備える自由飛行物体である。よって、第3実施形態の変形例においては、図25Aに例示したロボット制御装置は、図28に示す自由飛行物体としての収穫ユニットとは別個に独立した構成として、果樹園の中に選択された任意の場所に設置できる。
【0093】
第3実施形態の変形例に係る収穫ユニットの収穫器(55、56)は、図28に示すように、リング状の枠部55と、枠部55に取り付けられた網等の軟質素材からなる袋部56を有する。簡略化のため図示を省略しているが、枠部55又は収穫器配置フレーム(81,82,83)の上部には、図23及び図24に示した果梗切断部(53a、53b、54a、54b、53h)と同様な構成の果梗切断部が設けられている。収穫器配置フレーム(81,82,83)は、収穫器搬送部(84,85,86)の上部に固定された第一水平枝部83と、第一水平枝部83に下端を接続し、第一水平枝部83に対し垂直に設けられた垂直枝部82と、垂直枝部82の上端に一端を接続し、第一水平枝部83と平行に設けられた第二水平枝部81を有してコの字型の構造をしている。コの字型の構造の上部となる第二水平枝部81の他端に、果実100を収穫する収穫器(55、56)の枠部55が設置されている。
【0094】
収穫器搬送部(84,85,86)は、図28に示すように、端末制御ユニットを搭載するマルチコプタ85と、端末制御ユニットを搭載したマルチコプタ85の全体を覆う保護フレーム86によって、収穫器搬送部(84,85,86)が構成されている。保護フレーム86の外径は果実100の大きさになるべく近づく大きさとして、収穫器搬送部(84,85,86)をなるべく小型化することが望ましい。マルチコプタ85を保護フレーム86の内部に固定するために、リング状の懸架フレーム84がマルチコプタ85を保護フレーム86に懸架して固定している。第3実施形態の変形例に係る収穫器搬送部(84,85,86)では、保護フレーム86が端末制御ユニットとマルチコプタ85を保護しているので、収穫器搬送部(84,85,86)が樹木の葉等に接触や衝突した場合等において、樹木の葉等を巻き込んで、マルチコプタ85の主要部が破損されないように保護殻として取り付けられている。保護フレーム86の内部に樹木の葉等を巻き込まないように、保護フレーム86の空隙の大きさは、樹木の葉よりも十分小さな開口になるように選択する必要がある。樹木の葉等を巻き込まないように、保護殻としての保護フレーム86を、所定の間隔で離間した二重(二層)の網で構成してもよい。二重の網で保護殻を構成する場合は、懸架フレーム84は二重の網のそれぞれに連結されるように、マルチコプタ85を固定する。
【0095】
マルチコプタ85は、プロペラにより推力を発生するドローンなどの飛行体であるが、図28に示すような4つのプロペラを有するクアッドコプターの他、3つのプロペラを有するトライコプターでも構わない。更にマルチコプタ85は、6つのプロペラを有するヘキサコプターや、8つのプロペラを有するオクトコプターでも構わない。マルチコプタ85に搭載される端末制御ユニットの内容は限定されるものではなく、超音波や電磁波等によって、図25に示したロボット制御装置と等価の機能を有する遠隔制御装置と無線での通信が可能な通信器具を含む構成が好ましい。電磁波にはマイクロ波、テラヘルツ波、赤外線等が含まれる。端末制御ユニットが収穫の命令を指示する情報を受信する通信器具を有することにより、マルチコプタ85は、樹木の近傍の空中を自由に移動し、かつ空中の同じ位置にとどまることが可能である。図示の明示はないが、図28に示したマルチコプタ85には、プロペラのそれぞれを回転さるための複数のモータ等の駆動動力系が備えられている。更に、駆動動力系に命令を送信する指令回路、フライトコントローラ(FC)及び複数のエレクトロニックスピードコントローラ(ESC)等を更に備えることは勿論である。
【0096】
マルチコプタ85の指令回路は、マルチコプタ85の飛行動作(浮遊移動動作)を示す指令信号をFCに出力する電子回路である。浮遊移動動作は、上昇、降下、前進、後進、左移動、右移動、左旋回、右旋回等を含む。指令回路は、例えば、果実収穫者(農業従事者)のロボット制御装置に応じて指令信号を無線送信する送信機から指令信号を受信する受信機を内蔵していてもよい。指令回路又はFCは、複数の航法衛星から受信した信号に基づいて、緯度、経度及び高度を示す位置情報を取得する全地球航法測位システム(GNSS)受信機を備えてもよい。FCは、例えばセンサ部及び制御回路を備える。センサ部は、例えば、加速度センサ、角速度センサ、方位センサ、高度センサ、及び障害物センサ等を備える。制御回路は、指令回路から入力された指令信号及びセンサ部により検出された浮遊移動状態に応じて、ESCを制御する浮遊移動制御部及びライン制御部を機能的又は物理的なハードウェア資源として備える。
【0097】
図27の例に従えば、果実A,A,A,A,……の収穫に際して、ロボット制御装置から第3実施形態の変形例に係る収穫ユニットに収穫対象の果実A,A,A,A,……の収穫順序と収穫順序に伴う収穫ユニットの駆動情報が送信される。駆動情報には、果実A,A,A,A,……の位置情報も含まれている。ロボット制御装置から送信された収穫順序の情報に従って、収穫器搬送部(84,85,86)が収穫ハンド(55,56)の位置及び傾きを制御して、収穫器(55、56)のリング状の枠部55が、収穫の対象となっている果実A,A,A,A,……のそれぞれの真下に到達させる。例えば、果実Aが収穫順序の最初に設定されたとすれば、ロボット制御装置が命令する収穫順序に従い、収穫器搬送部(84,85,86)を駆動して、枠部55を果実Aの真下に位置させる。
【0098】
更に、収穫器搬送部(84,85,86)を無線で駆動し、収穫対象の果実Aを枠部55が通過させ、これにより枠部55に取り付けられた袋部56に果実Aが収納されるように収穫器搬送部(84,85,86)を上昇させる。枠部55が果実Aを通過し、果実Aが袋部56に収納される位置に到達すると、枠部55又は第二水平枝部81の上に設けられた果梗切断部によって果梗を切断し、果実Aを収穫器(55、56)の袋部56に収穫する。果実A,A,A,……のそれぞれに付いても、ロボット制御装置が命令する収穫の順番に従い、順に袋部56に収穫する。このように、第3実施形態の変形例に係る収穫ユニットによれば、ロボット制御装置により収穫対象の果実A,A,A,A,……の識別画像を予め取得して、識別画像に基づいて果実A,A,A,A,……の収穫を行うので、収穫作業を自動化して高効率で実施すことができる。その際、収穫器搬送部(84,85,86)は、保護フレーム86がマルチコプタ85を覆うように保護する構造になっているので、収穫器搬送部(84,85,86)が樹木の葉等に接触や衝突した場合等において、樹木の葉等をマルチコプタ85が巻き込んで、マルチコプタ85が破損されない。よって、第3実施形態の変形例に係る収穫ユニットによれば、高効率で安定した収穫が遠隔操作で自動的に実施できる。
【0099】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1~第3実施形態及び関連する変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。第1~第3実施形態及び関連する変形例で説明したそれぞれの技術的思想の少なくとも一部を選択して、互いに組み合わせることも可能である。例えば第3実施形態で説明した果実識別論理回路612cの機能を、第1及び第2実施形態、更には第2実施形態の第1~第5変形例等で説明した物体検出ユニット40に含ませることも可能である。
【0100】
更に例えば、本発明の第1~第3実施形態に係る収穫アーム1で収穫できる「果実」については、一般的な果物の「果実」のみならず、果菜の「果実」をも含むものである。果菜とは、果実が食用部位となる野菜のことであり、トマト、ナス等も含まれる概念である。
【0101】
また、第1~第3実施形態に係る収穫アーム1を無人航空機(マルチコプタ型)や自動車(ビークル型)等の移動用機器に搭載した場合、収穫した果実100を積載し、自動的に任意の指定箇所へ搬送する自動搬送装置を別個に設けて利用してもよい。更に指定箇所において、自動搬送装置に積載された果実100を積み下ろしする搭降載ロボットを別個に設けて利用してもよい。搭降載ロボットで果実が輸送車両に積載された場合、果実100の収穫から出荷までを全自動で行えることになる。管理システムにおいて、収穫する果実100の量、輸送車両に積載する(出荷する)果実100の量等をあらかじめ設定しておけば、管理システムの制御により、収穫地まで人間が出向かなくとも農作業が完結することになる。
【0102】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当と解釈しうる、特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0103】
1…収穫アーム、2a,2b,2c,2d,2f,2g…収穫ハンド、3…回転台、4x…X軸移動部、4y…Y軸移動部、4z…Z軸移動部、5a…移動ブロック、5b…接続部、6a…下腕回転関節、6b…上腕回転関節、7a…下腕、7b…上腕(第二上腕)、7c…第一上腕、8…ハンド回転関節、11…ハンド基部、12a,12c…第一クッション部、12b,12d…第二クッション部、13a,53a…第一棒状プレート、13b,53b…第二棒状プレート、13h,53h…要軸、14a,54a…第一先端部、14b,54b…第二先端部、15a,15c…第一面板、15b,15d…第二面板、16a…第一動力部、16b…第二動力部、17…撮影ユニット、18a…第1照明、18b…第2照明、19…撮像装置、20…気圧計収納部、21、21a…薄膜、22…気圧計、23…圧力調整弁、24a…ネジ、24b…ワッシャ、25c1,25c2,25c3…第一強化材、25d1,25d2,25d3…第二強化材、26…貫通孔、28c,28d…懸架部、29a…帯状弾性体、29e…捕獲帯部、29f…帯状弾性体、29…ばね部、30…搬送機構、32a,32b…回転部、33a,33b…連結枝、34a,34b…締結部、35a,35b…動力部、35c…第一強化板、35d…第二強化板、40…物体検出ユニット、50…入力装置、51…表示装置、55…枠部、56…かご部、57…軌道幹、58…動力部、61…中央処理制御部、64a…プログラムメモリ、64b…第1データメモリ、64c…第2データメモリ、72…方位角駆動装置、73…仰角モータドライバ、74…仰角駆動装置、74…光源駆動回路、75…AD変換回路、76…方位角モータドライバ、77…ロボットハンドコントローラ、81…第二水平枝部、82…垂直枝部、83…第一水平枝部、84…懸架フレーム、85…マルチコプタ、86…保護フレーム、100…果実、200…果梗、611…制御回路、611…制御部、611a…シークエンス回路、612…算術論理回路(ALU)、612a…θ,φ設定命令回路、612b…画像取得命令回路、612c…果実識別論理回路、612d…画像出力命令回路、612e…距離測定論理回路、612f…座標決定論理回路、612g…収穫順序決定論理回路、612h…収穫ハンド制御回路、612i…次画像判断論理回路、613…バス

図1
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図25B
図26A
図26B
図26C
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図28