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特開2024-146956蒸気タービンのノズル変形量管理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146956
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】蒸気タービンのノズル変形量管理装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20241008BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
F01D25/00 V
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023045671
(22)【出願日】2023-03-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「2020年度~2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電基盤技術開発/石炭火力の負荷変動対応技術開発/タービン発電設備次世代保守技術開発」」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 泰輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 賢一
(72)【発明者】
【氏名】牧野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】宋 澤政
(72)【発明者】
【氏名】竹内 司
(72)【発明者】
【氏名】市川 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰規
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AD05
2G024BA24
2G024CA16
2G024CA17
2G024FA01
(57)【要約】
【課題】運転データに基づいて予測された過去から現在までのクリープ変形量やひずみ量、将来の運転条件に基づいて予測された将来のクリープ変形量やひずみ量を時系列で認識できる蒸気タービンのノズル変形量管理装置を提供する。
【解決手段】実施形態のノズル変形量管理装置18は、計測された情報に基づいて算出された過去から現在までの蒸気タービンのノズルの過去変形量に関する情報を示す過去変形量関連情報と、ユーザインタフェース画面を用いた操作において入力された将来の運転条件および過去変形量関連情報に基づいて算出された将来におけるノズルの将来変形量に関する情報を示す将来変形量関連情報とを表示部に表示させる表示情報を生成する表示情報生成部73を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測された情報に基づいて算出された過去から現在までの蒸気タービンのノズルの過去変形量に関する情報を示す過去変形量関連情報と、ユーザインタフェース画面を用いた操作において入力された将来の運転条件および前記過去変形量関連情報に基づいて算出された将来における前記ノズルの将来変形量に関する情報を示す将来変形量関連情報とを表示部に表示させる表示情報を生成する表示情報生成部を備えることを特徴とする蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項2】
前記表示情報生成部は、
前記過去変形量に関する情報、および前記将来変形量に関する情報の双方を時系列で前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項3】
前記表示情報生成部は、
所定時間おきに、前記過去変形量関連情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項4】
前記表示情報生成部は、
前記将来の運転条件が入力されるごとに、前記将来変形量関連情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項5】
前記表示情報生成部は、
前記将来変形量に基づいて算出された、新たなノズルの準備を開始することが推奨される変形量を示す準備閾値に係る情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項6】
前記表示情報生成部は、
前記将来変形量に基づいて算出された、新たなノズルの準備を開始することが推奨される準備推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項7】
前記表示情報生成部は、
前記将来変形量に基づいて算出された、前記ノズルを交換することが推奨される交換推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項8】
前記表示情報生成部は、
前記将来変形量に基づいて算出された、前記ノズルの点検をすることが推奨される点検推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項9】
前記表示情報生成部は、
ユーザインタフェース画面を用いた操作において入力された第2の将来の運転条件および前記過去変形量関連情報に基づいて算出された将来における前記ノズルの第2の将来変形量に関する情報を示す第2の将来変形量関連情報をさらに前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項10】
前記表示情報生成部は、
前記第2の将来変形量に基づいて算出された、新たなノズルの準備を開始することが推奨される変形量を示す第2の準備閾値に係る情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項9記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項11】
前記表示情報生成部は、
前記第2の将来変形量に基づいて算出された、新たなノズルの準備を開始することが推奨される第2の準備推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項9記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項12】
前記表示情報生成部は、
前記第2の将来変形量に基づいて算出された、前記ノズルを交換することが推奨される第2の交換推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項9記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項13】
前記表示情報生成部は、
前記第2の将来変形量に基づいて算出された、前記ノズルの点検をすることが推奨される第2の点検推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項9記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蒸気タービンのノズル変形量管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンは、静翼翼列と動翼翼列を備えた複数のタービン段落をタービンロータ軸方向に備える。静翼翼列のうち溶接型の静翼翼列は、ダイアフラム外輪とダイアフラム内輪との間に複数のノズル(静翼)が周方向に溶接された溶接構造物を備える。
【0003】
このような構成の静翼翼列は、ノズルとダイアフラム外輪との接合部、ノズルとダイアフラム内輪との接合部を起点とする経年的なクリープ変形のリスクを有する。クリープ変形が進んだ場合、運転中にタービンロータなどの回転体にノズルが接触して、タービン構成部品の損傷などが生じる。従来、ノズルのクリープ変形量は、定期検査において直接計測されている。
【0004】
近年、発電設備において、二酸化炭素(CO)の排出量を削減する対策として再生可能エネルギの導入が加速されている。再生可能エネルギを利用した発電においては、天候などによって発電量が変化する。そのため、近年では、火力発電設備は、再生可能エネルギを利用した発電における不安定な電力供給を補うため、調整火力を中心とした運用に移行している。また、規制緩和により定期検査の間隔が長期化される傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-303014号公報
【特許文献2】特許第4575176号公報
【特許文献3】特開2002-297710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、蒸気タービンを備える火力発電設備では、調整火力運用への移行に伴い、蒸気タービンにおいてノズルのクリープ変形が一層進展するリスクがある。しかしながら、定期検査の間隔の長期化によって、蒸気タービンおけるクリープ変形量を検査する機会が減少する。
【0007】
従来の火力発電設備における蒸気タービンを管理するユーザは、過去の定期検査から現在までのノズルのクリープ変形量を予測した情報や、実機の将来の運転条件に基づいて将来のノズルのクリープ変形量を予測した情報を知ることができない。また、従来の蒸気タービンの管理システムにおいて、ユーザは、定期検査を実施すべき最適な時期を知ることができない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、運転データに基づいて予測された過去から現在までのクリープ変形量やひずみ量および将来の運転条件に基づいて予測された将来のクリープ変形量やひずみ量を時系列で認識することができる蒸気タービンのノズル変形量管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の蒸気タービンのノズル変形量管理装置は、計測された情報に基づいて算出された過去から現在までの蒸気タービンのノズルの過去変形量に関する情報を示す過去変形量関連情報と、ユーザインタフェース画面を用いた操作において入力された将来の運転条件および前記過去変形量関連情報に基づいて算出された将来における前記ノズルの将来変形量に関する情報を示す将来変形量関連情報とを表示部に表示させる表示情報を生成する表示情報生成部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態のノズル変形量管理装置を備えた蒸気タービン設備の構成を模式的に示す系統図である。
図2】第1の実施の形態のノズル変形量管理装置において管理される高圧タービンのノズルの構成の一部を示した高圧タービンの子午断面を示す図である。
図3】第1の実施の形態のノズル変形量管理装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施の形態のノズル変形量管理装置におけるユーザインターフェースに表示させる将来の運転条件の入力画面の一例を示す図である。
図5】第1の実施の形態のノズル変形量管理装置に対してクリープ変形量に関する定期検査結果を入力する入力画面の一例を示す図である。
図6】第1の実施の形態のノズル変形量管理装置の定周期変形量演算部における過去クリープ変形量および過去ひずみ量の演算の流れを説明するためのフローチャートである。
図7】第1の実施の形態のノズル変形量管理装置の将来変形量演算部における将来クリープ変形量および将来ひずみ量の演算の流れを説明するためのフローチャートである。
図8】第1の実施の形態のノズル変形量管理装置の将来変形量演算部における交換推奨時期A、準備推奨時期および準備閾値の算出方法を説明するための図である。
図9】第1の実施の形態のノズル変形量管理装置の将来変形量演算部における交換推奨時期A、準備推奨時期および準備閾値の算出方法を説明するための図である。
図10】第1の実施の形態のノズル変形量管理装置の導入日時点において表示情報が表示された表示画面の一例を示す図である。
図11】第1の実施の形態のノズル変形量管理装置における過去クリープ変形量および過去ひずみ量の演算処理方法を説明するためのフローチャートである。
図12】第1の実施の形態のノズル変形量管理装置における将来クリープ変形量および将来ひずみ量の演算処理方法を説明するためのフローチャートである。
図13】第2の実施の形態のノズル変形量管理装置における将来変形量演算処理方法を説明するためのフローチャートである。
図14】第2の実施の形態のノズル変形量管理装置における将来変形量演算処理方法を説明するためのフローチャートである。
図15】第2の実施の形態のノズル変形量管理装置における表示画面の一例を示す図である。
図16】第2の実施の形態のノズル変形量管理装置におけるユーザインターフェースに表示させる比較演算結果を選択する選択画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態のノズル変形量管理装置18を備えた蒸気タービン設備1の構成を模式的に示す系統図である。
【0013】
図1に示すように、蒸気タービン設備1は、ボイラ10と、高圧タービン11と、再熱器12と、中圧タービン13と、低圧タービン14と、発電機15と、復水器16と、給水ポンプ17と、ノズル変形量管理装置18とを備える。
【0014】
ここで、高圧タービン11および中圧タービン13は、ノズル変形量管理装置18においてクリープ変形量およびひずみ量が管理される蒸気タービンとして機能する。具体的には、高圧タービン11および中圧タービン13の所定のノズル(静翼)は、ノズル変形量管理装置18によって管理される。
【0015】
蒸気タービン設備1は、蒸気タービンにおけるノズルのクリープ変形量およびひずみ量を算出して管理するための管理システムとして、ノズル変形量管理装置18とともに、温度検知器30A、30Bと、圧力検知器31A、31B、31C、31D、出力検知器32とを備える。
【0016】
ボイラ10は、給水を加熱して蒸気を発生させ、その蒸気を主蒸気管20に導出する。高圧タービン11は、主蒸気管20から導入された蒸気によって回動され、その蒸気を低温再熱蒸気管21に排出する。再熱器12は、低温再熱蒸気管21から導入された蒸気を再熱して、その蒸気を高温再熱蒸気管22に導出する。
【0017】
中圧タービン13は、高温再熱蒸気管22から導入された蒸気によって回動され、その蒸気をクロスオーバー管23に排出する。低圧タービン14は、クロスオーバー管23から導入された蒸気によって回動され、その蒸気を排気管24に排出する。発電機15は、高圧タービン11、中圧タービン13および低圧タービン14により駆動されることによって発電を行う。発電機15は、例えば、高圧タービン11、中圧タービン13および低圧タービン14と同一軸上に連結される。
【0018】
復水器16は、排気管24から導入された蒸気を凝縮させて復水とする。給水ポンプ17は、復水器16の復水を給水として給水管25を介してボイラ10に供給する。
【0019】
ノズル変形量管理装置18は、蒸気タービンにおけるノズル(静翼)のクリープ変形量およびひずみ量を算出して管理するための装置である。なお、ノズル変形量管理装置18の詳細については、後述する。
【0020】
温度検知器30Aは、高圧タービン11に導入される蒸気の温度を検知する。温度検知器30Aは、図1に示すように、例えば、主蒸気管20に備えられ、高圧タービン11の入口における温度を検知する。温度検知器30Bは、中圧タービン13に導入される蒸気の温度を検知する。温度検知器30Bは、図1に示すように、例えば、高温再熱蒸気管22に備えられ、中圧タービン13の入口における温度を検知する。温度検知器30A、30Bは、検知信号をノズル変形量管理装置18に出力する。
【0021】
圧力検知器31Aは、高圧タービン11に導入される蒸気の圧力を検知する。圧力検知器31Aは、図1に示すように、例えば、主蒸気管20に備えられ、高圧タービン11の入口における圧力を検知する。圧力検知器31Bは、中圧タービン13に導入される蒸気の圧力を検知する。圧力検知器31Bは、図1に示すように、例えば、高温再熱蒸気管22に備えられ、中圧タービン13の入口における圧力を検知する。
【0022】
なお、上記した高圧タービン11および中圧タービン13の入口とは、初段のタービン段落の入口をいう。
【0023】
圧力検知器31Cは、高圧タービン11における初段のタービン段落の動翼の出口における蒸気圧力を検知する。以下において、動翼の出口における蒸気圧力を動翼出口圧力と称する。なお、圧力検知器31Cは、高圧タービン11における初段のタービン段落のノズルの入口における蒸気圧力を検知してもよい。以下において、ノズルの入口における蒸気圧力をノズル入口圧力と称する。また、ノズルの出口における蒸気圧力をノズル出口圧力と称する。圧力検知器31Dは、中圧タービン13における初段のタービン段落のノズル出口圧力を検知する。
【0024】
圧力検知器31A、31B、31C、31Dは、検知信号をノズル変形量管理装置18に出力する。
【0025】
出力検知器32は、発電機15の電気出力を検知し、その検知信号をノズル変形量管理装置18に出力する。
【0026】
ここで、ノズル変形量管理装置18において、クリープ変形量およびひずみ量が管理されるノズル153の構成について説明する。図2は、第1の実施の形態のノズル変形量管理装置18において管理される高圧タービン11のノズル153の構成の一部を示した高圧タービン11の子午断面を示す図である。ここでは、高圧タービン11のノズル153の構成を例示して説明する。なお、中圧タービン13のノズルの構成も、高圧タービン11のノズル153の構成と同様の構成である。
【0027】
高圧タービン11のケーシング150の内周には、ダイアフラム外輪151が設置され、このダイアフラム外輪151の内側には、ダイアフラム内輪152が設置されている。ダイアフラム外輪151とダイアフラム内輪152との間には、周方向に複数のノズル(静翼)153が配置され、静翼翼列を構成している。静翼翼列の下流には、タービンロータ154のロータホイール155に植設された複数の動翼156を備える。複数の動翼156は、周方向に配置され、動翼翼列を構成している。
【0028】
静翼翼列は、タービンロータ154の軸方向に動翼翼列と交互に複数段備えられている。そして、静翼翼列と、その直下流側に位置する動翼翼列とで一つのタービン段落を構成している。
【0029】
ダイアフラム外輪151とダイアフラム内輪152との間には、蒸気が流れる環状の蒸気通路157が形成されている。なお、図2において、蒸気の流れ方向は、矢印で示されている。タービンロータ154とダイアフラム内輪152との間には、この間を蒸気が下流側へ通過するのを防止するために、シール部158が設けられている。
【0030】
ここで、ノズル変形量管理装置18が管理する変形量には、クリープ変形によるクリープ変形量と、クリープ変形量に基づいて算出されるひずみ量とが含まれる。なお、これらの変形量については、後述する。ここではクリープ変形について、図2を参照して説明する。上記した静翼翼列において、ダイアフラム外輪151を固定端、ダイアフラム内輪152を自由端として、蒸気の流れ方向にダイアフラム内輪152が経年的に変形する。また、この変形に伴ってノズル153も変形する。ここでは、このような変形をクリープ変形と称する。
【0031】
クリープ変形は、金属材料が融点の半分程度の温度環境下で使用される際に顕著になる。ここでは、ノズル変形量管理装置18は、例えば、480℃以上の温度環境下で使用される上記した構成のノズル153のクリープ変形量およびひずみ量を管理する。また、ノズル変形量管理装置18によって管理されるノズル153は、図2に示すようなダイアフラム外輪151とダイアフラム内輪152との間に配置される構成のノズル153である。なお、ノズル変形量管理装置18は、中圧タービン13においても同様に、480℃以上の温度環境下で使用される上記した構成のノズル153を管理する。
【0032】
ノズル変形量管理装置18において管理されるノズルは、ダイアフラム外輪151とダイアフラム内輪152とに溶接によって固定された溶接型のノズル153である。そして、静翼翼列は、ダイアフラム外輪151とダイアフラム内輪152との間に複数のノズル153が周方向に溶接された溶接型の静翼翼列である。また、ノズル変形量管理装置18において管理されるノズルとして、高圧タービン11では、例えば、第2段-第4段のタービン段落のノズル、中圧タービン13では、例えば、第2段のタービン段落のノズルなどが例示される。なお、ノズル変形量管理装置18において管理されるノズルは、これらのノズルに限定されるものではなく、例えば、480℃以上の温度環境下で使用される上記した構成のノズルであれば適用される。
【0033】
次に、ノズル変形量管理装置18について説明する。
【0034】
図3は、第1の実施の形態のノズル変形量管理装置18の機能構成を示すブロック図である。ノズル変形量管理装置18は、例えば、実機の運転データに基づいて過去から現在までのクリープ変形量およびひずみ量、および将来想定する運転条件に基づいて将来のクリープ変形量およびひずみ量を予測して管理する装置である。また、ノズル変形量管理装置18は、例えば、クリープ変形量およびひずみ量などの予測結果を表示部に表示させるための表示情報を生成する。
【0035】
図3に示すように、ノズル変形量管理装置18は、計測データ取得部40と、ユーザインターフェース50と、記憶部60と、演算部70とを備える。
【0036】
計測データ取得部40は、温度検知器30A、30Bから出力された蒸気温度に係る検知信号と、圧力検知器31A、31B、31C、31Dから出力された蒸気圧力に係る検知信号と、出力検知器32から出力された電気出力に係る検知信号とを取得するインターフェースである。計測データ取得部40は、所定時間間隔でこれらの検知信号を取得する。計測データ取得部40は、例えば、1時間間隔で検知信号を取得する。
【0037】
計測データ取得部40は、取得した蒸気温度に係る検知信号、取得した蒸気圧力に係る検知信号および取得した電気出力に係る検知信号に基づいてそれぞれを蒸気温度情報、蒸気圧力情報および電気出力情報に変換する機能を有する。計測データ取得部40は、変換した蒸気温度情報、蒸気圧力情報および電気出力情報を記憶部60の計測データ記憶部62に出力する。
【0038】
ユーザインターフェース50は、各種情報をユーザ(管理者)に対して表示する表示部と、ユーザが各種情報を入力する入力装置とを備える。表示部は、例えば、ディスプレイなどで構成される。また、表示部は、表示用の画面の機能を備えるとともに、画面に直接入力可能な入力装置としての機能を備えるタッチパネルで構成されてもよい。入力装置は、例えば、キーボードやマウスなどで構成される。
【0039】
記憶部60は、入力情報記憶部61と、計測データ記憶部62と、プログラム記憶部63と、演算結果記憶部64と、テンプレート記憶部65と、表示情報記憶部66とを備える。記憶部60は、例えば、ハードディスクドライブ、不揮発性メモリ装置などにより実現される。記憶部60は、ノズル変形量管理装置18と物理的に一体ではなく図示しないネットワークを介して接続される形態とされてもよい。
【0040】
入力情報記憶部61は、ユーザインターフェース50を介して入力された、例えば、将来の運転条件、各種設定条件などを記憶する。また、入力情報記憶部61は、ノズル変形量管理装置18を製造するメーカにおける入力装置から入力された、例えば、各種設定条件、管理対象のノズルの設計情報、クリープ変形量に係る定期検査結果の情報などを記憶する。
【0041】
ここで、将来の運転条件は、将来のクリープ変形量およびひずみ量を予測する演算に使用される。将来の運転条件は、蒸気タービン設備1における将来の運転条件である。将来の運転条件には、区分された各負荷に対する1日(24時間)における運転時間と、年間における稼働率とが含まれる。将来の運転条件として、例えば、予め設定されたデフォルト運転モード、区分負荷ごとの運転時間および年間稼働率をユーザが任意に設定するカスタマイズ運転モードなどが例示される。ここで、区分負荷とは、蒸気タービンの負荷範囲(例えば、0%負荷から100%負荷の範囲)を所定の負荷単位(例えば、10%負荷単位)で区分した負荷をいう。例えば、0%負荷から100%負荷の蒸気タービンの負荷範囲を10%負荷単位で区分した場合、区分負荷は、10%負荷、20%負荷、30%負荷、40%負荷、50%負荷、60%負荷、70%負荷、80%負荷、90%負荷、100%負荷となる。
【0042】
図4は、第1の実施の形態のノズル変形量管理装置18におけるユーザインターフェース50に表示させる将来の運転条件の入力画面80の一例を示す図である。
【0043】
図4において、デフォルト運転モードとして、例えば、過去運用実績モード(Same as specific year)82、ベースロード運用モード(Base load)83と、ピークロード運用モード(Peak load)84とが設定されている。カスタマイズ運転モードとして、詳細運転設定モード(Detailed operation plan setting)85が設定されている。
【0044】
図4に示した入力画面80は、ユーザインターフェース50を介してユーザが選択および入力した画面の一例である。図4の上段の選択パターン81において、ユーザは、年ごとに選択する運用モードの欄の白丸を選択して黒丸とする。図4に示した入力画面80では、2024年に過去運用実績モード82、2025年および2026年にベースロード運用モード83、2027年および2028年にピークロード運用モード84、2029年-2032年に詳細運転設定モード85が選択されている。
【0045】
なお、図4には、2032年までの期間が示されているが、この期間に限られない。期間として、例えば、2040年などのさらに先の期間が設定されてもよい。
【0046】
過去運用実績モード82は、選択された年の運転パターンと同じ運転パターンで運転するモードである。過去運用実績モード82では、選択された年の1月から12月まで運転データから算出された、10%負荷単位の区分負荷および各区分負荷における運転時間に基づいて運転モードが設定される。また、過去運用実績モード82では、選択された年の稼働率(Availability factor)に基づいて運転モードが設定される。なお、図4では、2021年の運転パターンが選択されている。
【0047】
ここで、稼働率は、各年の1年間で蒸気タービン設備1を稼働する日数の割合である。すなわち、稼働率は、1年間で蒸気タービン設備1を稼働する日数を365日で除して100分率で示した値である。
【0048】
ベースロード運用モード83は、例えば、70%負荷から100%負荷の範囲の高負荷で運転するモードである。ベースロード運用モード83では、例えば、70%負荷から100%負荷を10%負荷単位で区分した区分負荷が設定される。また、ベースロード運用モード83では、年ごとに稼働率が設定されている。
【0049】
なお、ベースロード運用モード83は、デフォルト値であるが、例えば、蒸気タービン設備1における過去の運転データを参照して設定される。ベースロード運用モード83は、例えば、年単位で設定される。
【0050】
表1は、ベースロード運用モード83の一例を示している。
【0051】
【表1】
【0052】
表1には、2024年から2032年の各年において、区分負荷ごとに1日(24時間)における運転時間が設定された一例が示されている。表1に示すように、例えば、2024年のベースロード運用モード83として、100%負荷(定格負荷):3時間、90%負荷:10時間、80%負荷:9時間、70%負荷:2時間の設定がされている。また、稼働率は、89%に設定されている。
【0053】
なお、ベースロード運用モード83は、デフォルト値であるが、例えば、蒸気タービン設備1における過去の運転データを参照して設定される。また、ここでは、ベースロード運用モード83として、100%負荷から70%負荷の負荷範囲を10%負荷単位で区分した一例を示しているが、この設定に限られない。ベースロード運用モード83における負荷範囲は、上記した一例の範囲よりも広く設定されてもよいし、狭く設定されてもよい。また、負荷単位は、10%負荷単位よりも広く設定されてもよいし、狭く設定されてもよい。また、設定される年数は、表1に設定された年数よりも少なくてもよいし、多くてもよい。
【0054】
ピークロード運用モード84は、低負荷から定格負荷(100%負荷)の範囲で負荷変動を伴って運転するモードである。ピークロード運用モード84では、例えば、100%負荷から20%負荷を10%負荷単位で区分した区分負荷が設定される。ピークロード運用モード84は、年単位で設定される。表2は、ピークロード運用モード84の一例を示している。
【0055】
【表2】
【0056】
表2には、2024年から2032年の各年において、区分負荷ごとに1日(24時間)における運転時間が設定されている。例えば、2024年のピークロード運用モード84として、100%負荷(定格負荷):1時間、90%負荷:5時間、80%負荷:2時間、70%負荷:1時間、60%負荷:1時間、50%負荷:1時間、40%負荷:4時間、30%負荷:8時間、20%負荷:1時間の設定がされている。また、稼働率は、89%に設定されている。
【0057】
なお、ピークロード運用モード84は、デフォルト値であるが、例えば、蒸気タービン設備1における過去の運転データを参照して設定される。また、ここでは、ピークロード運用モード84として、100%負荷から20%負荷の負荷範囲を10%負荷単位で区分した一例を示しているが、この設定に限られない。ピークロード運用モード84における負荷範囲は、上記した一例の範囲よりも広く設定されてもよいし、狭く設定されてもよい。また、負荷単位は、10%負荷単位よりも広く設定されてもよいし、狭く設定されてもよい。また、設定される年数は、表2に設定された年数よりも少なくてもよいし、多くてもよい。
【0058】
詳細運転設定モード85では、図4の下段のオペレーションデータ86の欄に示された区分負荷ごとに1日(24時間)における運転時間が任意に設定される。また、稼働率も任意に設定される。ユーザは、詳細運転設定モード85の年の欄の区分負荷ごとに運転時間を入力する。図4では、詳細運転設定モード85が設定された2029年-2032年の欄に運転時間が入力されている。
【0059】
また、ここでは、詳細運転設定モード85のオペレーションデータ86として、100%負荷から20%負荷の負荷範囲を10%負荷単位で区分した一例を示しているが、この設定に限られない。詳細運転設定モード85における負荷範囲は、上記した一例の範囲よりも広く設定されてもよいし、狭く設定されてもよい。また、負荷単位は、10%負荷単位よりも広く設定されてもよいし、狭く設定されてもよい。
【0060】
ここで、上記した将来の運転条件を入力したユーザは、図4のSaveボタン87を押す。ユーザインターフェース50は、Saveボタン87からの入力を受け、将来の運転条件に係る情報を入力情報記憶部61に出力する。入力情報記憶部61は、将来の運転条件に係る情報を入力して記憶する。
【0061】
また、入力情報記憶部61は、将来の運転条件における区分負荷に対応させて、ヒートバランスに基づいて設定された、高圧タービン11の入口の蒸気温度情報および蒸気圧力情報、高圧タービン11における管理対象のノズルのノズル入口圧力およびノズル出口圧力に係る蒸気圧力情報、高圧タービン11における管理対象のノズルのノズル入口における蒸気の温度に係る蒸気温度情報、中圧タービン13の入口の蒸気温度情報および蒸気圧力情報、中圧タービン13における管理対象のノズルのノズル入口圧力およびノズル出口圧力に係る蒸気圧力情報、中圧タービン13における管理対象のノズルのノズル入口の蒸気温度に係る蒸気温度情報、発電機15の電気出力情報の対応テーブルを記憶している。なお、以下、ノズル入口の蒸気温度をノズル入口温度と称する。
【0062】
このように、例えば、将来の運転条件の区分負荷ごとに、蒸気温度情報、蒸気圧力情報および電気出力情報が記憶されているため、将来変形量演算部72は、これらの蒸気温度情報、蒸気圧力情報および電気出力情報に基づいて将来のクリープ変形量およびひずみ量を演算できる。
【0063】
また、入力情報記憶部61は、クリープ変形量に係る定期検査結果の情報などを記憶する。ここで、図5は、第1の実施の形態のノズル変形量管理装置18に対してクリープ変形量に関する定期検査結果を入力する入力画面90の一例を示す図である。なお、定期検査結果は、例えば、メーカが入力する。図5に示された入力画面90は、例えば、メーカにおける入力装置の操作画面に表示される。そして、メーカにおける入力装置からの定期検査結果に係る情報を入力情報記憶部61に出力する。入力情報記憶部61は、定期検査結果に係る情報を入力して記憶する。なお、メーカにおける入力装置は、ノズル変形量管理装置18にアクセス可能に設定されている。
【0064】
図5の入力画面90に示された「N:Nozzle Tip Side Axial Clearance」は、ノズルの径方向外側の先端が接するダイアフラム外輪の径方向内周面における軸方向下流端部と、動翼の先端のシュラウドの軸方向上流端部との距離である。「L′:Nozzle Root Side Axial Clearance」は、ノズルの径方向内側の翼根端が接するダイアフラム内輪の径方向外周面における軸方向下流端部と、動翼の翼有効部の翼根端が接するプラットフォームの軸方向上流端部との距離である。「Δ:Deformation」は、L′からNを減じた長さ(L′-N)である。
【0065】
なお、NおよびL′は、ノズルおよび動翼の構成を模式的示した翼構成表示部91に示されている。翼構成表示部91において、左側がノズルであり、右側が動翼である。また、径方向とは、タービンロータの中心軸に垂直な方向である。
【0066】
N、L′の数値欄92、93には、初期値(Design)および定期検査結果に基づいた数値(As-Found)が入力される。N、L′の数値欄92、93に、初期値および定期検査結果に基づいた数値が入力されると、クリープ変形量(Amount of Deformation)が表示される。N、L′の数値の入力後、Δ(Deformation)の数値欄94には、「L′-N」の値であるクリープ変形量の差が表示される。
【0067】
そして、メーカにおける入力装置は、Uploadボタン95からの入力を受け、定期検査結果に係る情報を入力情報記憶部61に出力する。入力情報記憶部61は、定期検査結果に係る情報を入力して記憶する。なお、メーカにおける入力装置は、All Deleteボタン96からの入力を受け、例えば、数値欄92、93、94の数値を削除する。
【0068】
なお、ここでは、定期検査結果をメーカが入力する一例を示したが、ユーザが入力可能に設定してもよい。この場合、図5に示された入力画面90は、ユーザインターフェース50の表示部に表示される。ユーザが定期検査結果を入力する場合、ユーザは、定期検査結果を入力した後、Uploadボタン95を押す。そして、ユーザインターフェース50は、Uploadボタン95からの入力を受け、定期検査結果に係る情報を入力情報記憶部61に出力する。入力情報記憶部61は、定期検査結果に係る情報を入力して記憶する。なお、入力画面90のBackボタン97は、Uploadボタン95を押さずに、後述する表示画面100に戻る場合に押すボタンである。
【0069】
なお、最新の定期検査結果に係る情報は、例えば、定周期変形量演算部71においてクリープ変形量およびひずみ量を演算する際の初期値となる。
【0070】
入力情報記憶部61は、ノズルを交換すべきクリープ変形量である交換閾値A、およびノズルを交換すべきひずみ量である交換閾値Bを記憶する。ここで、クリープ変形量が交換閾値A、またはひずみ量が交換閾値Bに達したノズルは、交換されることが推奨される。交換閾値Aおよび交換閾値Bは、例えば、ノズルの仕様などに基づいて設定されるデフォルト値である。そのため、交換閾値Aおよび交換閾値Bは、入力情報記憶部61に予め記憶されている。
【0071】
なお、メーカは、予め入力情報記憶部61に交換閾値Aおよび交換閾値Bを記憶させる。また、例えば、メーカは、管理値変更などに伴って、交換閾値Aおよび交換閾値Bを変更可能である。
【0072】
入力情報記憶部61は、ノズルを点検すべきクリープ変形量である点検閾値A、およびノズルを点検すべきひずみ量である点検閾値Bを記憶する。ここで、クリープ変形量が点検閾値A、またはひずみ量が点検閾値Bに達したノズルは、点検されることが推奨される。点検閾値Aおよび点検閾値Bは、例えば、ノズルの仕様などに基づいて設定されるデフォルト値である。そのため、点検閾値Aおよび点検閾値Bは、入力情報記憶部61に予め記憶されている。
【0073】
なお、メーカは、予め入力情報記憶部61に点検閾値Aおよび点検閾値Bを記憶させる。また、例えば、メーカは、管理値変更などに伴って、点検閾値Aおよび点検閾値Bを変更可能である。
【0074】
入力情報記憶部61は、ノズル変形量管理装置18の導入時において、後述する準備推奨時期を定めるための準備期間を初期値(例えば3年)として記憶している。準備期間は、新しいノズルを準備するために必要な期間である。なお、ユーザは、メーカに依頼することで準備期間を初期値から所定の期間に変更可能である。この場合、変更された準備期間に係る情報は、メーカにおける入力装置からノズル変形量管理装置18の入力情報記憶部61に出力される。そして、入力情報記憶部61は、変更された準備期間に係る情報を記憶する。
【0075】
計測データ記憶部62は、計測データ取得部40から出力された、蒸気温度情報、蒸気圧力情報および電気出力情報を記憶する。計測データ記憶部62は、例えば、1時間おきに計測データ取得部40から出力される蒸気温度情報、蒸気圧力情報および電気出力情報を記憶する。
【0076】
プログラム記憶部63は、ノズル変形量管理装置18において、クリープ変形量およびひずみ量などの算出やクリープ変形量およびひずみ量の管理を実行するためのプログラム、クリープ変形量およびひずみ量などを算出するための各演算式や各種パラメータなどを記憶する。
【0077】
演算結果記憶部64は、演算部70で演算された結果を記憶する。演算結果記憶部64は、例えば、定周期変形量演算部71で演算された、過去から現在までのクリープ変形量およびひずみ量に関する情報を記憶する。ここで、演算結果記憶部64は、過去から現在までのクリープ変形量およびひずみ量に関する情報として、例えば、過去から現在におけるクリープ変形量およびひずみ量の演算結果などを記憶する。なお、この情報は、過去変形量関連情報として機能する。
【0078】
演算結果記憶部64は、例えば、将来変形量演算部72で演算された、将来のクリープ変形量およびひずみ量に関する情報を記憶する。演算結果記憶部64は、将来変形量演算部72の演算によって算出される将来のクリープ変形量が交換閾値Aに達する交換推奨時期A、およびひずみ量が交換閾値Bに達する交換推奨時期Bを記憶する。なお、交換推奨時期Aおよび交換推奨時期Bは、年月日で特定される。これらの交換推奨時期の算出方法は後述する。
【0079】
ここで、交換推奨時期Aおよび交換推奨時期Bのうちの早い方の時期から所定の準備期間前の時期を準備推奨時期とする。準備推奨時期とは、交換推奨時期が特定されたノズルに対して新しいノズルの準備を始めることを推奨する時期をいう。なお、準備推奨時期も、交換推奨時期と同様に、年月日で特定される。例えば、交換推奨時期Aおよび交換推奨時期Bのうちの早い方の時期が2040年6月1日、準備期間が3年の場合、準備推奨時期は、2037年6月1日となる。準備期間は、前述したように、入力情報記憶部61に記憶されている。
【0080】
演算結果記憶部64は、将来変形量演算部72によって演算された、準備推奨時期における将来のクリープ変形量またはひずみ量を準備閾値として記憶する。すなわち、準備推奨時期におけるクリープ変形量またはひずみ量は、準備閾値である。準備閾値の算出方法は後述する。
【0081】
また、演算結果記憶部64は、将来変形量演算部72の演算によって算出される、将来のクリープ変形量が点検閾値Aに達する点検推奨時期Aおよびひずみ量が点検閾値Bに達する点検推奨時期Bを記憶する。なお、点検推奨時期Aおよび点検推奨時期Bは、年月日で特定される。これらの点検推奨時期の算出方法は後述する。
【0082】
演算結果記憶部64は、将来のクリープ変形量およびひずみ量に関する情報として、例えば、将来のクリープ変形量およびひずみ量、交換推奨時期A、交換推奨時期B、点検推奨時期A、点検推奨時期B、準備閾値、準備推奨時期などの演算結果を記憶する。なお、これらの情報は、将来変形量関連情報として機能する。
【0083】
テンプレート記憶部65は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果を表示する画面の基となるテンプレート画面に係る情報を記憶する。ユーザインターフェース50の表示部に表示させる各種テンプレート画面に係る情報は、予めテンプレート記憶部65に記憶されている。
【0084】
表示情報記憶部66は、演算部70の表示情報生成部73で生成された表示部に表示するための表示情報を記憶する。
【0085】
演算部70は、定周期変形量演算部71と、将来変形量演算部72と、表示情報生成部73とを備える演算ブロックである。演算部70は、ユーザインターフェース50からのユーザの実行開始入力に応じて、プログラム記憶部63からノズル変形量管理装置18を実行するためのプログラムを読み出す。これによって、定周期変形量演算部71、将来変形量演算部72および表示情報生成部73それぞれの機能が実行可能となる。
【0086】
定周期変形量演算部71は、プログラム記憶部63からクリープ変形量およびひずみ量を算出するための演算式やパラメータを読み出し、計測データ記憶部62に記憶された蒸気温度情報、蒸気圧力情報および電気出力情報に基づいて、定周期におけるクリープ変形量およびひずみ量を算出する演算ブロックである。定周期変形量演算部71は、算出したクリープ変形量およびひずみ量に係る情報を演算結果記憶部64に出力する。
【0087】
ここで、定周期とは、過去の所定日から現在までの、例えば、1時間周期をいう。定周期変形量演算部71は、過去の所定日の定期検査において計測されたクリープ変形量を初期値として、蒸気温度情報、蒸気圧力情報および電気出力情報に基づいて、定周期おきに(例えば、1時間おきに)クリープ変形量およびひずみ量を算出する。そして、現在におけるクリープ変形量は、過去の所定日の定期検査において計測されたクリープ変形量に、過去の所定日から現在までに進行したクリープ変形量を加算することで算出される。なお、定周期変形量演算部71によって算出される過去の所定日から現在までに進行したクリープ変形量およびひずみ量は、予測値である。
【0088】
定周期変形量演算部71は、入力情報記憶部61に記憶された交換閾値Aに基づいて、算出したクリープ変形量が交換閾値Aに達しているか否かを判定する。また、定周期変形量演算部71は、入力情報記憶部61に記憶された交換閾値Bに基づいて、算出したひずみ量が交換閾値Bに達しているか否かを判定する。
【0089】
定周期変形量演算部71は、入力情報記憶部61に記憶された点検閾値Aに基づいて、算出したクリープ変形量が点検閾値Aに達しているか否かを判定する。また、定周期変形量演算部71は、入力情報記憶部61に記憶された点検閾値Bに基づいて、算出したひずみ量が点検閾値Bに達しているか否かを判定する。
【0090】
また、定周期変形量演算部71は、入力情報記憶部61に記憶された準備閾値に基づいて、算出したクリープ変形量またはひずみ量が準備閾値に達しているか否かを判定する。なお、定周期変形量演算部71におけるこれらの判定に関する動作については後述する。
【0091】
将来変形量演算部72は、プログラム記憶部63からクリープ変形量およびひずみ量を算出するための演算式やパラメータを読み出し、入力情報記憶部61に記憶された将来の運転条件に基づいて、将来のクリープ変形量およびひずみ量を算出する演算ブロックである。将来変形量演算部72は、算出したクリープ変形量およびひずみ量に係る情報を演算結果記憶部64に出力する。
【0092】
ここで、将来とは、現在から将来の運転条件として設定された将来の年までをいう。将来変形量演算部72は、定周期変形量演算部71において算出された現在のクリープ変形量およびひずみ量を初期値として、入力情報記憶部61に記憶された将来の運転条件に基づいて、所定年ごと(例えば、1年ごと)の将来のクリープ変形量およびひずみ量を算出する。なお、将来変形量演算部72によって算出される将来のクリープ変形量およびひずみ量は、予測値である。
【0093】
将来変形量演算部72は、入力情報記憶部61に記憶された交換閾値Aおよび算出した将来のクリープ変形量に基づいて、将来のクリープ変形量が交換閾値Aに達しているか否かを判定する。将来変形量演算部72は、将来のクリープ変形量が交換閾値Aに達していると判定した場合、将来変形量演算部72は、将来のクリープ変形量が交換閾値Aに達する交換推奨時期Aを算出する。
【0094】
また、将来変形量演算部72は、入力情報記憶部61に記憶された交換閾値Bおよび算出した将来のひずみ量に基づいて、将来のひずみ量が交換閾値Bに達しているか否かを判定する。将来変形量演算部72は、将来のひずみ量が交換閾値Bに達していると判定した場合、将来変形量演算部72は、将来のひずみ量が交換閾値Bに達する交換推奨時期Bを算出する。
【0095】
さらに、将来変形量演算部72は、将来のクリープ変形量が交換閾値Aに達していると判定した場合または将来のひずみ量が交換閾値Bに達していると判定した場合、前述した準備期間に基づいて、準備推奨時期および準備閾値を算出する。
【0096】
ここで、説明の便宜上、定周期変形量演算部71によって演算された過去から現在までのクリープ変形量およびひずみ量それぞれを過去クリープ変形量および過去ひずみ量と称する。将来変形量演算部72によって演算された現在から将来の所定日までのクリープ変形量およびひずみ量それぞれを将来クリープ変形量および将来ひずみ量と称する。
【0097】
表示情報生成部73は、ユーザインターフェース50の表示部に表示させる表示情報を生成する演算ブロックである。表示情報生成部73は、演算結果記憶部64およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する。なお、表示情報生成部73は、例えば、定周期変形量演算部71、将来変形量演算部72の演算結果を直接入力し、テンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成してもよい。
【0098】
表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66に出力する。また、表示情報生成部73は、生成した表示情報をユーザインターフェース50に出力する。
【0099】
ここで、上記したノズル変形量管理装置18は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)、CD(Compact Disc)ドライブ装置などの外部記憶装置、ディスプレイなどの表示装置、キーボードやマウスなどの入力装置などを備えたコンピュータ装置などで構成することが可能である。
【0100】
(定周期変形量演算部71および将来変形量演算部72における演算)
ここで、定周期変形量演算部71および将来変形量演算部72における演算の流れを説明する。
【0101】
図6は、第1の実施の形態のノズル変形量管理装置18の定周期変形量演算部71における過去クリープ変形量および過去ひずみ量の演算の流れを説明するためのフローチャートである。図7は、第1の実施の形態のノズル変形量管理装置18の将来変形量演算部72における将来クリープ変形量および将来ひずみ量の演算の流れを説明するためのフローチャートである。
【0102】
ここでは、高圧タービン11のノズルに係る変形量の演算を例示して説明するが、中圧タービン13のノズルに係る変形量の演算においても同様の工程で演算が実行される。
【0103】
まず、図6を参照して、定周期変形量演算部71における過去クリープ変形量および過去ひずみ量の演算の流れを説明する。
【0104】
図6に示すように、定周期変形量演算部71は、計測データ記憶部62から計測データに係る情報を読み出す(ステップS1)。ここで、定周期変形量演算部71は、計測データに係る情報として、高圧タービン11の入口における蒸気温度情報および蒸気圧力情報、高圧タービン11の初段のタービン段落における動翼出口圧力またはノズル入口圧力に係る蒸気圧力情報、発電機15の電気出力に係る電気出力情報を読み出す。これらの計測データに係る情報は、過去クリープ変形量および過去ひずみ量を演算するための計測された情報として機能する。
【0105】
なお、ステップS1を実行する際には、定周期変形量演算部71は、プログラム記憶部63から過去クリープ変形量および過去ひずみ量の演算を実行するためのプログラム、過去クリープ変形量および過去ひずみ量を算出するための演算式やパラメータ、入力情報記憶部61から管理対象のノズルの設計情報などを読み出している。
【0106】
続いて、定周期変形量演算部71は、読み出した計測データに係る情報に基づいて、管理対象のノズルの運転環境状態量を算出する(ステップS2)。運転環境状態量として、管理対象のノズルが備えられたタービン段落における、蒸気圧力、蒸気流量、蒸気流速、蒸気温度が算出される。
【0107】
続いて、定周期変形量演算部71は、算出した運転環境状態量および管理対象のノズルの設計情報に基づいて、クリープ変形速度Vを算出する(ステップS3)。なお、ここで算出されるクリープ変形速度Vは、高圧タービン11のタービンロータの中心軸に沿う方向成分の変形速度である。
【0108】
続いて、定周期変形量演算部71は、算出したクリープ変形速度Vを運転時間で積分して運転時間において進行したクリープ変形量Dを算出する(ステップS4)。
【0109】
ここで、定周期変形量演算部71は、上記演算によって算出されたクリープ変形量Dに過去の所定日の定期検査において計測されたクリープ変形量Diを加算することで、過去クリープ変形量を算出する。これによって、高圧タービン11の運用が反映された過去クリープ変形量が得られる。
【0110】
続いて、定周期変形量演算部71は、過去クリープ変形量をノズル高さで除することで過去ひずみ量を算出する(ステップS5)。なお、ノズル高さは、ノズル153におけるタービンロータ154の中心軸に垂直な径方向の高さである(図2参照)。換言すれば、ノズル高さは、ダイアフラム外輪151の径方向内側の内壁面とダイアフラム内輪152の径方向外側の外壁面との距離に相当する(図2参照)。
【0111】
なお、定周期変形量演算部71は、演算結果を演算結果記憶部64に出力する。上記した定周期変形量演算部71における過去クリープ変形量および過去ひずみ量の演算は、例えば、1時間おきに実行される。最も直近に算出された過去クリープ変形量および過去ひずみ量は、現在のクリープ変形量およびひずみ量に相当する。
【0112】
次に、図7を参照して、将来変形量演算部72における将来クリープ変形量および将来ひずみ量の演算の流れを説明する。
【0113】
将来変形量演算部72の演算の流れにおいて、図7に示すステップS10およびステップS11以外は、定周期変形量演算部71の演算の流れと基本的に同じである。すなわち、将来変形量演算部72の演算におけるステップS12-ステップS14の処理は、定周期変形量演算部71の演算におけるステップS3-ステップS5の処理と基本的に同じである。そのため、ここでは、将来変形量演算部72の演算におけるステップS10およびステップS11の処理について主に説明する。
【0114】
図7に示すように、将来変形量演算部72は、入力情報記憶部61から将来の運転条件を読み出す(ステップS10)。なお、ステップS10を実行する際には、将来変形量演算部72は、プログラム記憶部63から将来クリープ変形量および将来ひずみ量の演算を実行するためのプログラム、将来クリープ変形量および将来ひずみ量を算出するための演算式やパラメータ、および入力情報記憶部61から管理対象のノズルの設計情報などを読み出している。
【0115】
また、将来変形量演算部72は、将来の運転条件に基づいて、区分負荷に対応させて予め設定された、高圧タービン11の入口における蒸気温度情報および蒸気圧力情報、高圧タービン11における管理対象のノズルのノズル入口圧力およびノズル出口圧力に係る蒸気圧力情報、高圧タービン11における管理対象のノズルのノズル入口温度に係る蒸気温度情報、発電機15の電気出力に係る電気出力情報を入力情報記憶部61から読み出す(ステップS10)。なお、入力情報記憶部61からから読み出された蒸気温度情報、蒸気圧力情報および電気出力情報は、前述した定周期変形量演算部71の演算において計測データ記憶部62から読み出された、高圧タービン11の入口における蒸気温度情報および蒸気圧力情報、高圧タービン11の初段のタービン段落における動翼出口圧力またはノズル入口圧力に係る蒸気圧力情報、発電機15の電気出力に係る電気出力情報と同様に取り扱われる。
【0116】
続いて、将来変形量演算部72は、定周期変形量演算部71の演算と同様に、蒸気温度情報、蒸気圧力情報および電気出力情報に基づいて、管理対象のノズルの運転環境状態量を算出する(ステップS11)。
【0117】
そして、将来変形量演算部72は、ステップS12からステップS14の処理を実行して蒸気タービンプラントの運転時間(現在から将来の所定日まで)に進行するクリープ変形量Dを算出する。なお、ステップS13においてクリープ変形量Dを算出する際、クリープ変形速度Vは、現在から将来の所定日までの運転時間で積分される。
【0118】
将来変形量演算部72は、算出した現在から将来の所定日までに進行するクリープ変形量Dに、定周期変形量演算部71によって算出された最も直近の過去クリープ変形量を加算することで、将来の所定日における将来クリープ変形量を算出する。これによって、高圧タービン11における将来の運用が反映された将来クリープ変形量が得られる。
【0119】
なお、将来変形量演算部72は、演算結果を演算結果記憶部64に出力する。上記した将来変形量演算部72における将来クリープ変形量および将来ひずみ量の演算結果は、将来の運転条件として設定された1年周期ごとに得られる。すなわち、将来変形量演算部72における演算結果は、1年単位で得られる。
【0120】
(交換推奨時期、点検推奨時期、準備推奨時期および準備閾値の算出)
ここで、交換推奨時期、点検推奨時期、準備推奨時期および準備閾値の算出方法について説明する。
【0121】
なお、上記したように、交換推奨時期には、交換推奨時期Aおよび交換推奨時期Bがあり、点検推奨時期には、点検推奨時期Aおよび点検推奨時期Bがある。交換推奨時期および点検推奨時期は、基本的に同じ方法で算出されるため、ここでは、交換推奨時期Aの算出方法を例示して説明する。
【0122】
ここでは、準備推奨時期が交換推奨時期Aに基づいて算出される場合を例示して説明する。また、ここでは、準備期間が3年に設定された場合を例示して説明する。
【0123】
図8および図9は、第1の実施の形態のノズル変形量管理装置18の将来変形量演算部72における交換推奨時期A、準備推奨時期および準備閾値の算出方法を説明するための図である。図8および図9において、横軸は時間(年)を示し、縦軸はクリープ変形量を示す。なお、ここでは、横軸の年における想定月日は、1月1日とする。
【0124】
ここでは、クリープ変形量は、クリープ変形量比として示されている。クリープ変形量比は、交換閾値Aのクリープ変形量を1としたときのクリープ変形量比である。クリープ変形量比が1よりも小さいときは、クリープ変形量は交換閾値Aを下回っている。クリープ変形量比が1よりも大きいときは、クリープ変形量は交換閾値Aを超えている。
【0125】
まず、図8を参照して、準備閾値に到達するときが将来の場合について説明する。
【0126】
図8に示すように、2032年におけるクリープ変形量比は1.0よりも小さく、2033におけるクリープ変形量比は1.0よりも大きい。そのため、クリープ変形量比は、2032年と2033年との間で交換閾値Aである1.0に達している。すなわち、交換推奨時期Aは、2032年と2033年との間に存在する。
【0127】
将来変形量演算部72は、2032年と2033年の間において、時間とクリープ変形量比の関係を1次関数で表す。そして、将来変形量演算部72は、クリープ変形量比が1.0となる月日を算出する。
【0128】
図8に示した一例では、2032年におけるクリープ変形量比は0.95であり、2033年におけるクリープ変形量比は1.05である。将来変形量演算部72は、1次関数に基づいて、クリープ変形量比が1.0となる交換推奨時期Aを算出する。図8に示した一例では、演算の結果、2032年の7月1日が交換推奨時期Aとなる。
【0129】
続いて、将来変形量演算部72は、交換推奨時期Aおよび準備期間に基づいて、準備推奨時期を算出する。ここで、準備期間を3年とした場合、準備推奨時期は、交換推奨時期Aよりも3年前の2029年の7月1日となる。
【0130】
続いて、将来変形量演算部72は、2029年と2030年の間において、時間とクリープ変形量比の関係を1次関数で表す。そして、将来変形量演算部72は、2029年の7月1日におけるクリープ変形量比を算出する。図8に示した一例では、演算の結果、2029年の7月1日におけるクリープ変形量比は0.75となる。この結果から、準備推奨時期におけるクリープ変形量比である準備閾値は0.75となる。
【0131】
そして、将来変形量演算部72は、上記した、交換推奨時期A、準備推奨時期および準備閾値の演算結果を演算結果記憶部64に出力する。演算結果記憶部64は、交換推奨時期A、準備推奨時期および準備閾値の演算結果を入力して記憶する。
【0132】
次に、図9を参照して、準備閾値に到達するときが過去の場合について説明する。
【0133】
図9に示すように、クリープ変形量比が1.0に達するのは、2032年と2033年との間である。すなわち、交換推奨時期Aは、2032年と2033年との間に存在する。そのため、準備推奨時期は、現在(2031年)よりも過去となる。
【0134】
図9に示すように、図8を参照して説明したときと同様に、将来変形量演算部72は、2032年と2033年の間において、時間とクリープ変形量比の関係を1次関数で表してクリープ変形量比が1.0となる月日を算出する。
【0135】
図9に示した一例では、2032年におけるクリープ変形量比は0.95であり、2033年におけるクリープ変形量比は1.05である。図9に示した一例では、演算の結果、2032年の7月1日が交換推奨時期Aとなる。
【0136】
続いて、将来変形量演算部72は、交換推奨時期Aおよび準備期間に基づいて、準備推奨時期を算出する。ここで、準備期間を3年とした場合、準備推奨時期は、交換推奨時期Aよりも3年前の2029年の7月1日となる。
【0137】
続いて、将来変形量演算部72は、演算結果記憶部64から2029年の7月1日におけるクリープ変形量を読み出し、クリープ変形量比を算出する。この算出されたクリープ変形量比は、準備閾値である。
【0138】
ここで、2029年の7月1日におけるクリープ変形量は、定周期変形量演算部71によって演算された結果である。そのため、演算結果記憶部64は、この日の演算結果として、1時間おきの複数のデータを記憶している。そこで、2029年の7月1日におけるクリープ変形量として、将来変形量演算部72は、例えば、2029年の7月1日におけるクリープ変形量のデータの中の最大のクリープ変形量を参照する。
【0139】
そして、将来変形量演算部72は、上記した、交換推奨時期A、準備推奨時期および準備閾値の演算結果を演算結果記憶部64に出力する。演算結果記憶部64は、交換推奨時期A、準備推奨時期および準備閾値の演算結果を入力して記憶する。
【0140】
ここで、将来クリープ変形量の演算の結果、将来の演算指定期間の間においてクリープ変形量比が1.0に達しない場合には、交換推奨時期A、準備推奨時期および準備閾値は得られない。
【0141】
(導入時におけるノズル変形量管理装置18について)
ここで、まず、導入時におけるノズル変形量管理装置18の状態について説明する。
【0142】
ノズル変形量管理装置18の導入時において、表示情報記憶部66は、導入日時点での、過去クリープ変形量および将来クリープ変形量に関する表示情報、および過去ひずみ量および将来ひずみ量に関する表示情報を記憶している。すなわち、導入時におけるノズル変形量管理装置18は、ユーザインターフェース50の表示部に、導入日時点での、過去クリープ変形量、将来クリープ変形量、過去ひずみ量および将来ひずみ量を表示可能な状態である。
【0143】
表示情報記憶部66は、演算結果記憶部64に記憶された定周期変形量演算部71および将来変形量演算部72で演算された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶されたテンプレート画面に係る情報に基づいて、表示情報生成部73によって生成された導入日時点での表示情報を記憶している。
【0144】
なお、メーカは、導入日時点において上記した状態となるようにノズル変形量管理装置18を処理している。
【0145】
ここで、図10は、第1の実施の形態のノズル変形量管理装置18の導入日時点において表示情報が表示された表示画面100の一例を示す図である。
【0146】
図10に示すように、表示画面100には、高圧タービン11の第2段-第4段のタービン段落のノズルおよび中圧タービン13の第2段のタービン段落のノズルにおける、過去クリープ変形量、将来クリープ変形量、過去ひずみ量、将来ひずみ量が時系列で示されている。なお、ここでは、線の表示上の関係から、グラフ101において引き出し線を介してタービン種およびタービン段落を表示しているが、この表示法方法に限られない。グラフ101における結果を示す線をタービン種およびタービン段落ごとに色分けして表示してもよい。この場合、表示画面100に、線の色ごとのインデックスが表示される。また、グラフ101において、引き出し線を介して準備閾値であることを表示しているが、準備閾値を示す線のインデックスを表示してもよい。
【0147】
クリープ変形量およびひずみ量の結果を示すグラフ101では、横軸に時間(年月日)、縦軸にクリープ変形量比およびひずみ量比が示されている。なお、ここでは、2024年1月1日を現在としている。ここでは、クリープ変形量は、クリープ変形量比として示され、ひずみ量は、ひずみ量比として示されている。表示画面100において、クリープ変形量比は、点検閾値Aのクリープ変形量を1としたときのクリープ変形量比である。また、ひずみ量比は、点検閾値Bのひずみ量を1としたときのひずみ量比である。
【0148】
図10では、2014年1月1日から2034年1月1日までの時間軸を示している。この時間軸の範囲は、表示画面100の時間軸設定部102の設定値を選択することで設定される。ここでは、時間軸設定部102の設定値として、5年、10年、15年、20年が設定された一例を示している。なお、図10では、10年が選択されている。
【0149】
時間軸は、現在から設定値分の過去、現在から設定値分の将来が示される。例えば、図10に示すように設定値として10年が選択された場合、現在(2024年1月1日)から2014年1月1日までの過去10年分の時間範囲および現在(2024年1月1日)から2034年1月1日までの将来10年分の時間範囲が時間軸として表示される。
【0150】
このように、ユーザは、時間軸設定部102の設定値を選択することで時間軸の範囲を任意に変更することができる。
【0151】
なお、図10において、クリープ変形量およびひずみ量として、2016年1月1日から2032年1月1日までの演算結果が示されている。この場合、2016年1月1日から2024年1月1日までのクリープ変形量比およびひずみ量比は、過去クリープ変形量および過去ひずみ量に基づくクリープ変形量比およびひずみ量比であり、2024年1月1日から2032年1月1日までのクリープ変形量比およびひずみ量比は、将来クリープ変形量および将来ひずみ量に基づくクリープ変形量比およびひずみ量比である。
【0152】
ここで、2016年1月1日におけるクリープ変形量比およびひずみ量比は、図5に示した入力画面90から入力された定期検査結果に基づいて示されている。表示画面100のグラフ101において、その定期検査結果に基づくクリープ変形量比およびひずみ量比は、黒丸で示されている。なお、例えば、最新の定期検査よりも前の演算結果を有する場合においても、表示画面100には、最新の定期検査以降の演算結果が示され、最新の定期検査よりも前の演算結果は表示されない。
【0153】
また、表示画面100には、交換閾値Aが「Threshold 1」として、交換閾値Bが「Threshold 2」として、点検閾値Aが「Threshold 3」として、点検閾値Bが「Threshold 4」として示されている。なお、表示画面100には、準備閾値も示されている。
【0154】
なお、交換閾値A、交換閾値B、点検閾値Aおよび点検閾値Bは、初期値として入力情報記憶部61に記憶されたデフォルト値であるため、「Threshold 1」-「Threshold 4」は、表示画面100に常に表示されている。
【0155】
表示画面100には、アラーム表示103が表示される。アラーム表示103は、クリープ変形量が交換閾値Aまたは点検閾値Aを超える場合、ひずみ量が交換閾値Bまたは点検閾値Bを超える場合に表示される。これらに該当しない場合には、表示画面100にアラーム表示103は、表示されない。
【0156】
アラーム表示103として、例えば、交換閾値Aおよび交換閾値Bのうち、先に到達した交換閾値に基づく交換推奨時期が示される。また、アラーム表示103として、例えば、点検閾値Aおよび点検閾値Bのうち、先に到達した点検閾値に基づく点検推奨時期が示される。また、アラーム表示103に、準備推奨時期を示してもよい。また、図10に示した一例のように、現在から各推奨時期までの年月日を示してもよい。
【0157】
図10に示すように、ユーザインターフェース50の表示画面100には、過去および将来のクリープ変形量、および過去および将来のひずみ量の時間経過に伴う変化が一つのグラフ101上に表示される。また、交換推奨時期Aまたは交換推奨時期B、点検推奨時期Aまたは点検推奨時期B、準備推奨期間が、表示画面100に表示される。
【0158】
(定周期変形量演算処理)
次に、第1の実施の形態のノズル変形量管理装置18における過去クリープ変形量および過去ひずみ量の演算処理について説明する。
【0159】
図11は、第1の実施の形態のノズル変形量管理装置18における過去クリープ変形量および過去ひずみ量の演算処理方法を説明するためのフローチャートである。
【0160】
なお、定周期変形量演算部71は、各管理対象のノズルそれぞれに対して演算処理を実行する。演算処理方法は、いずれのノズルに対しても同様である。
【0161】
ここでは、高圧タービン11の所定のタービン段におけるノズルに係る定周期変形量演算処理を例示して説明するが、中圧タービン13のノズルに係る定周期変形量演算処理も同様の演算処理が実行される。
【0162】
図11に示すように、定周期変形量演算部71は、例えば、計測データ記憶部62に記憶された情報に基づいて、蒸気タービン設備1が運転している否かを判定する(ステップS20)。定周期変形量演算部71は、例えば、蒸気温度情報、蒸気圧力情報および電気出力情報に基づいて、蒸気タービン設備1が運転している否かを判定する。
【0163】
ステップS20の判定において、蒸気タービン設備1が運転していないと判定した場合(ステップS20のNo)、定周期変形量演算処理を終了する。
【0164】
ステップS20の判定において、蒸気タービン設備1が運転していると判定した場合(ステップS20のYes)、定周期変形量演算部71は、プログラム記憶部63から過去クリープ変形量および過去ひずみ量の演算を実行するためのプログラム、過去クリープ変形量および過去ひずみ量を算出するための演算式やパラメータ、入力情報記憶部61から管理対象のノズルの設計情報、計測データ記憶部62に記憶された計測データ情報を読み出す(ステップS21)。なお、計測データ情報は、高圧タービン11の入口における蒸気温度情報および蒸気圧力情報、高圧タービン11の初段のタービン段落における動翼出口圧力またはノズル入口圧力に係る蒸気圧力情報、および発電機15の電気出力に係る電気出力情報である。
【0165】
続いて、定周期変形量演算部71は、図6を参照して説明した演算方法で、過去クリープ変形量および過去ひずみ量の演算し、演算結果を演算結果記憶部64に出力する(ステップS22)。演算結果記憶部64は、その演算結果を記憶する。
【0166】
表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS23)。そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、その表示情報を記憶する。
【0167】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報を図10に示すように表示部に表示する(ステップS24)。
【0168】
ここで、表示情報生成部73は、1時間おきに、演算結果に基づく表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。そのため、表示部に表示される過去クリープ変形量および過去ひずみ量に関する演算結果を示すグラフ101は、1時間おきに更新される。定周期変形量演算部71は、例えば、過去クリープ変形量および過去ひずみ量の演算後、1時間おきにステップS20-ステップS24の処理を繰り返す。
【0169】
また、定周期変形量演算部71は、ステップS22の処理後、演算結果記憶部64を参照して準備閾値が記憶されているか否かを判定する(ステップS25)。
【0170】
ここで、例えば、ノズル変形量管理装置18の導入日時点における将来クリープ変形量および将来ひずみ量の演算において、将来の演算指定期間内で将来クリープ変形量が交換閾値Aまたは将来ひずみ量が交換閾値Bに達している場合には、演算結果記憶部64に準備閾値が記憶されている。また、ノズル変形量管理装置18の導入後における演算において、将来の演算指定期間内で将来クリープ変形量が交換閾値Aまたは将来ひずみ量が交換閾値Bに達している場合には、演算結果記憶部64に準備閾値が記憶されている。
【0171】
一方、ノズル変形量管理装置18の導入日時点における将来クリープ変形量および将来ひずみ量の演算において、将来の演算指定期間内で将来クリープ変形量が交換閾値Aまたは将来ひずみ量が交換閾値Bに達しない場合には、演算結果記憶部64に準備閾値は記憶されていない。また、ノズル変形量管理装置18の導入後における演算において、将来の演算指定期間内で将来クリープ変形量が交換閾値Aまたは将来ひずみ量が交換閾値Bに達しない場合には、演算結果記憶部64に準備閾値が記憶されていない。
【0172】
ステップS25の判定において、準備閾値が記憶されていないと判定した場合(ステップS25のNo)、定周期変形量演算部71は、ステップS22の演算結果に基づいて、過去クリープ変形量が点検閾値Aまたは過去ひずみ量が点検閾値Bに達したか否かを判定する(ステップS26)。
【0173】
ステップS26の判定において、点検閾値Aまたは点検閾値Bに達していないと判定した場合(ステップS26のNo)、定周期変形量演算部71は、再度ステップS25の処理を実行する。
【0174】
ステップS26の判定において、点検閾値Aまたは点検閾値Bに達していると判定した場合(ステップS26のYes)、定周期変形量演算部71は、点検閾値Aまたは点検閾値Bに達した年月日に関する情報(点検推奨時期に係る情報)を演算結果記憶部64に出力する。演算結果記憶部64は、この情報を記憶する。
【0175】
表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS27)。そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0176】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報に基づいて、表示画面を更新する(ステップS28)。この更新によって、図10に示したアラーム表示103には、点検推奨時期の情報が表示される。なお、ステップS28を実行後、定周期変形量演算部71は、再度ステップS25の処理を実行する。
【0177】
ステップS25の判定において、準備閾値が記憶されていると判定した場合(ステップS25のYes)、定周期変形量演算部71は、ステップS22の演算結果に基づいて、過去クリープ変形量または過去ひずみ量が準備閾値に達しているか否かを判定する(ステップS29)。
【0178】
ここで、過去クリープ変形量または過去ひずみ量が準備閾値に達する場合とは、過去クリープ変形量または過去ひずみ量が、将来変形量演算部72によって算出された将来予測に基づく準備閾値に達することを示している。
【0179】
ステップS29の判定において、過去クリープ変形量または過去ひずみ量が準備閾値に達していないと判定した場合(ステップS29のNo)、定周期変形量演算部71は、上記したステップS26以降の処理を実行する。
【0180】
ステップS29の判定において、過去クリープ変形量または過去ひずみ量が準備閾値に達していると判定した場合(ステップS29のYes)、定周期変形量演算部71は、過去クリープ変形量が交換閾値Aまたは過去ひずみ量が交換閾値Bに達したか否かを判定する(ステップS30)。
【0181】
ステップS30の判定において、交換閾値Aまたは交換閾値Bに達していないと判定した場合(ステップS30のNo)、定周期変形量演算部71は、過去クリープ変形量が点検閾値Aまたは過去ひずみ量が点検閾値Bに達したか否かを判定する(ステップS31)。
【0182】
ステップS31の判定において、点検閾値Aまたは点検閾値Bに達していないと判定した場合(ステップS31のNo)、定周期変形量演算部71は、準備閾値に達した年月日に関する情報(準備推奨時期に係る情報)を演算結果記憶部64に出力する。演算結果記憶部64は、この情報を記憶する。
【0183】
表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS32)。そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0184】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報に基づいて、表示画面を更新する(ステップS33)。この更新によって、図10に示したアラーム表示103には、準備推奨時期の情報が表示される。なお、ステップS33を実行後、定周期変形量演算部71は、再度ステップS25の処理を実行する。
【0185】
ステップS31の判定において、点検閾値Aまたは点検閾値Bに達していると判定した場合(ステップS31のYes)、定周期変形量演算部71は、点検閾値Aまたは点検閾値B、および準備閾値に達した年月日に関する情報(点検推奨時期Aまたは点検推奨時期B、および準備推奨時期に係る情報)を演算結果記憶部64に出力する。演算結果記憶部64は、この情報を記憶する。
【0186】
表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS34)。そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0187】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報に基づいて、表示画面を更新する(ステップS35)。この更新によって、図10に示したアラーム表示103には、点検推奨時期Aまたは点検推奨時期B、および準備推奨時期の情報が表示される。なお、ステップS35を実行後、定周期変形量演算部71は、再度ステップS25の処理を実行する。
【0188】
ステップS30の判定において、交換閾値Aまたは交換閾値Bに達していると判定した場合(ステップS30のYes)、定周期変形量演算部71は、交換閾値Aまたは交換閾値B、点検閾値Aまたは点検閾値B、および準備閾値に達した年月日に関する情報(交換推奨時期Aまたは交換推奨時期B、点検推奨時期Aまたは点検推奨時期B、および準備推奨時期に係る情報)を演算結果記憶部64に出力する。演算結果記憶部64は、この情報を記憶する。
【0189】
表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS36)。そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0190】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報に基づいて、表示画面を更新する(ステップS37)。この更新によって、図10に示したアラーム表示103には、交換推奨時期Aまたは交換推奨時期B、点検推奨時期Aまたは点検推奨時期B、および準備推奨時期の情報が表示される。
【0191】
ここで、定周期変形量演算部71における演算は、例えば、1時間おきに実行される。そのため、表示画面100の過去クリープ変形量および過去ひずみ量に関する情報は、1時間おきに更新される。なお、横軸の時間の範囲が同じ場合、時間の経過に伴って、図10のグラフ101における過去クリープ変形量および過去ひずみ量に関する情報は増加する。
【0192】
上記した定周期変形量演算処理によって、図10に示した表示画面100における過去クリープ変形量および過去ひずみ量に関する情報が更新される。また、過去クリープ変形量および過去ひずみ量がそれぞれ設定された閾値に達している場合には、アラーム表示103における情報が更新される。
【0193】
(将来変形量演算処理)
次に、第1の実施の形態のノズル変形量管理装置18における将来クリープ変形量および将来ひずみ量の演算処理について説明する。
【0194】
図12は、第1の実施の形態のノズル変形量管理装置18における将来クリープ変形量および将来ひずみ量の演算処理方法を説明するためのフローチャートである。
【0195】
なお、将来変形量演算部72は、各管理対象のノズルそれぞれに対して演算処理を実行する。演算処理方法は、いずれのノズルに対しても同様である。
【0196】
ここでは、高圧タービン11の所定のタービン段におけるノズルに係る定周期変形量演算処理を例示して説明するが、中圧タービン13のノズルに係る定周期変形量演算処理も同様の演算処理が実行される。
【0197】
ここで、ノズル変形量管理装置18の導入日時点において、図4に示す将来の運転条件は、初期設定されている。ユーザは、導入後、ユーザインターフェース50における図4に示す入力画面80から将来の運転条件を1年単位で入力する。
【0198】
例えば、図10に示した表示画面100における選択表示部104の選択ボタン105を押すことで、図示されていないが、選択表示部104に将来の運転条件の入力画面80の選択項目が表示される。選択表示部104において入力画面80の選択項目が選択されると、ユーザインターフェース50の表示部の画面は、図4に示す将来の運転条件の入力画面80に切り替わる。この際、表示情報生成部73は、ユーザインターフェース50からの入力画面80の選択に係る情報を入力し、ユーザインターフェース50に入力画面80を表示させるための表示情報を出力する。
【0199】
そして、ユーザは、将来の運転条件を入力後、図4のSaveボタン87を押す。ユーザインターフェース50は、Saveボタン87からの入力を受け、将来の運転条件に係る情報を入力情報記憶部61に出力する。入力情報記憶部61は、将来の運転条件に係る情報を記憶する。なお、入力画面80のBackボタン88は、Saveボタン87を押さずに表示画面100に戻る場合に押すボタンである。
【0200】
また、将来変形量演算部72は、Saveボタン87が押されたことに伴うユーザインターフェース50からの情報を受け、将来の運転条件の入力がされたと判定する。
【0201】
図12に示すように、将来変形量演算部72は、将来の運転条件の入力がされたか否かを判定する(ステップS40)。
【0202】
ステップS40の判定において、将来の運転条件の入力がされていないと判定した場合(ステップS40のNo)、将来変形量演算部72は、再度ステップS40の処理を実行する。
【0203】
ステップS40の判定において、将来の運転条件の入力がされたと判定した場合(ステップS40のYes)、将来変形量演算部72は、プログラム記憶部63から将来クリープ変形量および将来ひずみ量の演算を実行するためのプログラム、将来クリープ変形量および将来ひずみ量を算出するための演算式やパラメータ、入力情報記憶部61から管理対象のノズルの設計情報、入力情報記憶部61に記憶された将来の運転条件を読み出す(ステップS41)。
【0204】
続いて、将来変形量演算部72は、将来の運転条件を参照して詳細運転モード設定があるか否かを判定する(ステップS42)。
【0205】
ステップS42の判定において、詳細運転モード設定があると判定した場合(ステップS42のYes)、将来の運転条件における区分負荷ごとの運転時間および稼働率を読み出す(ステップS43)。
【0206】
続いて、将来変形量演算部72は、ステップS43の処理後、またはステップS42の判定において詳細運転モード設定がないと判定した場合(ステップS42のNo)、図7を参照して説明した演算方法で、将来クリープ変形量および将来ひずみ量を演算し、演算結果を演算結果記憶部64に出力する(ステップS44)。演算結果記憶部64は、演算結果を記憶する。
【0207】
表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS45)。そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0208】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報を図9に示すように表示部に表示する(ステップS46)。
【0209】
ここで、表示情報生成部73は、将来変形量演算部72において演算処理が実行されるごとに、演算結果に基づく表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。そのため、表示部に表示される将来クリープ変形量および将来ひずみ量に関する演算結果を示すグラフ101は、将来変形量演算部72において演算処理が実行されるごとに更新される。換言すると、将来クリープ変形量および将来ひずみ量に関する演算結果を示すグラフ101は、将来の運転条件の入力画面80におけるSaveボタン87が押されたことに伴う情報を受けるごとに更新される。
【0210】
また、将来変形量演算部72は、ステップS44の処理後、ステップS44の演算結果に基づいて、将来クリープ変形量が交換閾値Aまたは将来ひずみ量が交換閾値Bに達しているか否かを判定する(ステップS47)。
【0211】
ステップS47の判定において、交換閾値Aまたは交換閾値Bに達していないと判定した場合(ステップS47のNo)、将来変形量演算部72は、将来クリープ変形量が点検閾値Aまたは将来ひずみ量が点検閾値Bに達しているか否かを判定する(ステップS48)。
【0212】
ステップS48の判定において、点検閾値Aまたは点検閾値Bに達していないと判定した場合(ステップS48のNo)、将来変形量演算部72は、交換推奨時期Aまたは交換推奨時期B、および点検推奨時期Aまたは点検推奨時期Bに関する情報を演算結果記憶部64に出力する。すなわち、将来変形量演算部72は、交換推奨時期Aまたは交換推奨時期Bおよび点検推奨時期Aまたは点検推奨時期Bが無いことに関する情報を演算結果記憶部64に出力する。ここで、演算結果記憶部64において、すでに交換推奨時期Aまたは交換推奨時期B、および点検推奨時期Aまたは点検推奨時期Bが記憶されている場合には、演算結果記憶部64は、それらの情報を新たに入力された、交換推奨時期Aまたは交換推奨時期Bおよび点検推奨時期Aまたは点検推奨時期Bが無いことに関する情報に更新して記憶する。
【0213】
表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS52)。表示情報生成部73は、図10に示した表示画面100からアラーム表示103が削除された表示情報を生成する。また、表示情報生成部73は、図10に示した表示画面100のグラフ101から準備閾値を示すライン(図10の破線)が削除された表示情報を生成する。
【0214】
そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0215】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報に基づいて、表示画面を更新する(ステップS53)。この更新によって、表示画面100からアラーム表示103が削除される。さらに、グラフ101から準備閾値を示すライン(図10の破線)が削除される。
【0216】
ステップS48の判定において、点検閾値Aまたは点検閾値Bに達していると判定した場合(ステップS48のYes)、将来変形量演算部72は、図8および図9を参照して説明した方法によって点検推奨時期を算出して、その結果を演算結果記憶部64に出力する(ステップS49)。演算結果記憶部64は、点検推奨時期を記憶する。また、将来変形量演算部72は、交換推奨時期Aまたは交換推奨時期Bが無いことに関する情報を演算結果記憶部64に出力する。
【0217】
表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS50)。表示情報生成部73は、図10に示した表示画面100において、アラーム表示103に点検推奨時期Aまたは点検推奨時期Bを表示して、交換推奨時期Aまたは交換推奨時期Bを削除するための表示情報を生成する。また、表示情報生成部73は、グラフ101から準備閾値を示すライン(図10の破線)を削除するための表示情報を生成する。
【0218】
そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0219】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報に基づいて、表示画面を更新する(ステップS51)。この更新によって、表示画面100には、今回の計算結果に基づく、点検推奨時期Aまたは点検推奨時期Bを備えるアラーム表示103が表示される。なお、グラフ101には、準備閾値を示すラインは示されない。
【0220】
ステップS47の判定において、交換閾値Aまたは交換閾値Bに達していると判定した場合(ステップS47のYes)、将来変形量演算部72は、図8および図9を参照して説明した方法によって、交換推奨時期Aまたは交換推奨時期B、点検推奨時期Aまたは点検推奨時期Bを算出するとともに、準備推奨時期および準備閾値を算出して、その結果を演算結果記憶部64に出力する(ステップS54)。演算結果記憶部64は、交換推奨時期Aまたは交換推奨時期B、点検推奨時期Aまたは点検推奨時期B、準備推奨時期、準備閾値を記憶する。なお、演算結果が交換閾値Aまたは交換閾値Bに達している場合には、演算結果は、点検閾値Aまたは点検閾値Bに達している。
【0221】
表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS55)。表示情報生成部73は、図10に示した表示画面100において、アラーム表示103に交換推奨時期Aまたは交換推奨時期B、点検推奨時期Aまたは点検推奨時期B、準備推奨時期を表示するための表示情報を生成する。また、表示情報生成部73は、グラフ101に準備閾値のライン(図10の破線)を表示するための表示情報を生成する。
【0222】
そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0223】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報に基づいて、表示画面を更新する(ステップS56)。この更新によって、表示画面100には、今回の計算結果に基づく、交換推奨時期Aまたは交換推奨時期B、点検推奨時期Aまたは点検推奨時期B、準備推奨時期を備えるアラーム表示103が表示される。なお、グラフ101には、今回の計算結果に基づく、準備閾値を示すライン(図10の破線)が示される。
【0224】
上記した将来変形量演算部72における演算結果は、将来の運転条件として設定された1年周期ごとに得られる。すなわち、将来変形量演算部72における演算結果は、1年単位で得られる。
【0225】
将来変形量演算処理では、将来の運転条件の入力画面80におけるSaveボタン87が押されたことに伴う情報を受けるごとにステップS41-ステップS56の処理を繰り返す。そして、表示画面100の将来クリープ変形量および将来ひずみ量に関する情報は、将来の運転条件の入力画面80におけるSaveボタン87が押されたことに伴う情報を受けるごとに更新される。
【0226】
上記した将来変形量演算処理によって、図10に示した表示画面100における将来クリープ変形量および将来ひずみ量に関する情報が更新される。将来の運転条件によって、例えば、グラフ101に示される将来クリープ変形量および将来ひずみ量に関する情報が変化する。また、将来の運転条件によって、交換推奨時期A、交換推奨時期B、点検推奨時期A、点検推奨時期B、準備推奨時期および準備閾値も変化する。
【0227】
上記した第1の実施の形態のノズル変形量管理装置18によれば、ユーザインターフェース50の表示部に、実機の運転データに基づいて予測された過去から現在までの過去クリープ変形量および過去ひずみ量、および将来想定する運転条件に基づいて予測された将来クリープ変形量および将来ひずみ量を時系列でグラフ101に表示することができる。これによって、ユーザは、クリープ変形量やひずみ量の時間に伴う変化を目視で確認することできる。
【0228】
ここで、ノズルにおけるクリープ変形が進行すると、そのノズルの下流側で回転する動翼と接触するリスクがある。この接触リスクの因子(リスク因子)は、タービン段落によって差異がある。例えば、クリープ変形量は、サイズの大きいノズル(翼高さが高いノズル)よりもサイズの小さいノズル(翼高さが低いノズル)にリスク因子として大きな影響を及ぼす。そこで、クリープ変形量をノズル高さで除して無次元化したひずみ量を管理変形量の一つとすることで、ノズルサイズの要素を含む管理変形量を備えることができる。ここで、サイズの小さいノズルにおいては、経年的に、クリープ変形量に比べてひずみ量の増加が早い。一方、サイズの大きいノズルにおいては、経年的に、ひずみ量に比べてクリープ変形量の増加が早い。
【0229】
ノズル変形量管理装置18において、クリープ変形量およびひずみ量を管理変形量とすることで、ノズルのサイズの要素を考慮したノズル変形量管理を実行することができる。これによって、例えば、アラーム表示103として、交換閾値Aおよび交換閾値Bのうち、先に到達した交換閾値に基づく交換推奨時期を示すことができる。また、例えば、アラーム表示103として、点検閾値Aおよび点検閾値Bのうち、先に到達した点検閾値に基づく点検推奨時期を示すことができる。そして、ノズル変形量管理装置18において、ノズルのクリープ変形に伴う動翼との接触リスクを回避するように管理することができる。
【0230】
また、ノズル変形量管理装置18において、表示画面100のグラフ101に、交換閾値A、交換閾値B、点検閾値A、点検閾値Bおよび準備閾値のラインを表示することができる。これによって、ユーザは、交換推奨時期A、交換推奨時期B、点検推奨時期A、点検推奨時期Bおよび準備推奨時期を目視で確認することできる。
【0231】
さらに、ノズル変形量管理装置18において、表示画面100にアラーム表示103として、交換推奨時期A、交換推奨時期B、点検推奨時期A、点検推奨時期Bおよび準備推奨時期を表示することができる。これによって、ユーザは、これらの時期を具体的に認識することができる。そしてユーザは、準備推奨時期を具体的に認識することで、交換するノズルの製作依頼を的確に行うことができる。
【0232】
ノズル変形量管理装置18では、将来の運転条件の入力画面80において入力された運転条件に基づく演算結果を表示することができる。そのため、ユーザは、将来の運転条件の入力画面80において運転条件を変更することで、運転条件による演算結果の違いを表示画面100のグラフ101において目視で確認することできる。
【0233】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、ユーザインターフェース50の表示部に表示される将来クリープ変形量および将来ひずみ量に関する情報の他の一例を説明する。
【0234】
図13および図14は、第2の実施の形態のノズル変形量管理装置18における将来変形量演算処理方法を説明するためのフローチャートである。なお、図面の構成上、フローチャートを一図で示すことができないため、図13のステップS40のNoに続くフローチャートを図14に示す。図15は、第2の実施の形態のノズル変形量管理装置18における表示画面100Aの一例を示す図である。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態のノズル変形量管理装置18の構成をと同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0235】
第2の実施の形態では、演算結果を示す表示画面100Aにおいて、他の将来の運転条件における演算結果を同時に表示できる点が第1の実施の形態におけるノズル変形量管理装置18と異なる。ここでは、この異なる構成について主に説明する。なお、第2の実施の形態においける定周期変形量演算処理は、第1の実施の形態における定周期変形量演算処理と同様である。
【0236】
図13および図14に示す第2の実施の形態における将来変形量演算処理では、第1の実施の形態における将来変形量演算処理に、ステップS60からステップS65の処理が追加されている。
【0237】
ここで、ユーザは、将来の運転条件を入力後、図3のSaveボタン87を押す。第2の実施の形態における将来変形量演算処理において、第1の実施の形態における将来変形量演算処理と同様に、ユーザインターフェース50は、Saveボタン87からの入力を受け、将来の運転条件に係る情報を入力情報記憶部61に出力する。入力情報記憶部61は、将来の運転条件に係る情報を記憶する。
【0238】
また、将来変形量演算部72は、Saveボタン87が押されたことに伴うユーザインターフェース50からの情報を受け、将来の運転条件の入力がされたと判定する。
【0239】
図13に示すように、将来変形量演算部72は、将来の運転条件の入力がされたか否かを判定する(ステップS40)。
【0240】
ステップS40の判定において、将来の運転条件の入力がされたと判定した場合(ステップS40のYes)、前述したように、ステップS41からステップS46の処理が実行される。そして、前述したように、ステップS46の処理の後、ステップS40の処理が実行される。
【0241】
一方、ステップS40の判定において、将来の運転条件の入力がされていないと判定した場合(ステップS40のNo)、図14に示すように、表示情報生成部73は、他の将来の運転条件で演算した結果(比較演算結果)の表示要求があるか否かを判定する(ステップS60)。比較演算結果は、他の将来の運転条件に基づいてすでに予測された演算結果であり、演算結果記憶部64に記憶されている。なお、他の将来の運転条件は、第2の将来の運転条件として機能し、比較演算結果は、第2の将来変形量関連情報として機能する。
【0242】
ここで、図16は、第2の実施の形態のノズル変形量管理装置18におけるユーザインターフェース50に表示させる比較演算結果を選択する選択画面110の一例を示す図である。
【0243】
例えば、図10に示した表示画面100における選択表示部104の選択ボタン105を押すことで、図示されていないが、選択表示部104に選択画面110の選択項目が表示される。そして、選択表示部104において選択画面110の選択項目が選択されると、ユーザインターフェース50の表示部の画面は、図16に示す選択画面110に切り替わる。この際、表示情報生成部73は、ユーザインターフェース50からの選択画面110の選択に係る情報を入力し、ユーザインターフェース50に選択画面110を表示させるための表示情報を出力する。
【0244】
図16の選択画面110には、演算結果記憶部64に記憶されているすでに演算された演算結果のリストがリスト表示部111に表示される。また、ここでは、演算結果記憶部64に記憶された日時も表示するリスト表示部111の一例が示されている。リスト表示部111には、例えば、演算結果記憶部64に記憶された日時の新しい順に5つの演算結果のファイル名が表示される。なお、リスト表示部111に表示される構成は、これに限られない。リスト表示部111には、すでに演算された演算結果のリストが表示されればよい。
【0245】
ここで、図16には、過去1時間以内に将来の運転条件に基づいて演算された比較演算結果の一例が示されている。これらの比較演算結果を表示画面100Aのグラフ101に表示させる場合、最新の将来クリープ変形量および将来ひずみ量が更新されない状態で比較演算結果を比較することができる。すなわち、これらの比較演算結果のいずれをグラフ101に表示させても、比較演算結果における将来のクリープ変形量比および将来のひずみ量比を示すラインの起点は、図15に示すように、最新の将来のクリープ変形量比および将来のひずみ量比を示すラインの起点と一致する。
【0246】
なお、比較演算結果は、1時間よりも前に演算された結果であってもよい。例えば、数日前に演算された比較演算結果を選択する場合、比較演算結果における将来のクリープ変形量比および将来のひずみ量比を示すラインの起点は、最新の将来のクリープ変形量比および将来のひずみ量比を示すラインの起点からずれることになる。このようにそれぞれの起点がずれた場合においても、将来における将来のクリープ変形量比および将来のひずみ量比を示すラインの変化傾向は比較することができる。
【0247】
ユーザは、リスト表示部111に表示されたリストの中から比較演算結果として図10に示した表示画面100に表示させたい演算結果のファイル名を選択する。そして、ユーザは、Loadボタン112を押す。ユーザがLoadボタン112を押すと、画面が図15に示す演算結果を示す表示画面100Aに切り替わる。
【0248】
なお、Backボタン114は、Loadボタン112またはResetボタン113を押さずに表示画面100に戻る場合に押すボタンである。
【0249】
表示情報生成部73は、ユーザインターフェース50からのLoadボタン112が押されたことに基づく信号を受け、ステップS60において比較演算結果の表示要求があると判定する。
【0250】
ステップS60の判定において、比較演算結果の表示要求があると判定した場合(ステップS60のYes)、表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS61)。ここでは、表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された将来の運転条件に基づく演算結果および選択された比較演算結果の双方を読み出す。そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0251】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報を図15に示すように表示部に表示する(ステップS62)。図15に示すように表示画面100Aには、将来クリープ変形量および将来ひずみ量として、将来の運転条件に基づく演算結果および比較演算結果の双方が表示される。
【0252】
具体的には、将来クリープ変形量および将来ひずみ量として、それぞれの演算結果におけるクリープ変形量比およびひずみ量比が時系列で示されるとともに、それぞれの演算結果における準備閾値のラインが示される。
【0253】
なお、比較演算結果は、一点鎖線で示され、比較演算結果における準備閾値のラインは、破線(間隔が狭い方の破線)で示されている。また、アラーム表示103としてそれぞれの演算結果における、交換推奨時期Aまたは交換推奨時期B、点検推奨時期Aまたは点検推奨時期B、および準備推奨時期が表示される。なお、図15に示すように、過去クリープ変形量および過去ひずみ量におけるクリープ変形量およびひずみ量も時系列で示されている。
【0254】
なお、比較演算結果における準備閾値は、第2の準備閾値として機能し、比較演算結果における交換推奨時期Aまたは交換推奨時期Bは、第2の交換推奨時期として機能し、比較演算結果における準備推奨時期は、第2の準備推奨時期として機能し、比較演算結果における点検推奨時期Aまたは点検推奨時期Bは、第2の点検推奨時期として機能する。
【0255】
ステップS60の判定において、比較演算結果の表示要求がないと判定した場合(ステップS60のNo)、表示情報生成部73は、比較演算結果の表示削除要求があるか否かを判定する(ステップS63)。
【0256】
ここで、ユーザは、図16の選択画面110において、Resetボタン113を押すことで、図15の表示画面100Aに示されている比較演算結果を削除することができる。表示情報生成部73は、ユーザインターフェース50からのResetボタン113が押されたことに基づく信号を受け、ステップS63において比較演算結果の表示削除要求があると判定する。なお、ユーザがResetボタン113を押すと、画面が演算結果を示す表示画面に切り替わる。
【0257】
ステップS63の判定において、比較演算結果の表示削除要求があると判定した場合(ステップS63のYes)、表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された演算結果、およびテンプレート記憶部65に記憶された情報に基づいて表示情報を生成する(ステップS64)。ここでは、表示情報生成部73は、演算結果記憶部64に記憶された将来の運転条件に基づく演算結果を読み出す。そして、表示情報生成部73は、生成した表示情報を表示情報記憶部66およびユーザインターフェース50に出力する。表示情報記憶部66は、表示情報を記憶する。
【0258】
ユーザインターフェース50は、表示情報生成部73から出力された表示情報を図10に示すように表示部に表示する(ステップS65)。すなわち、図10に示すように表示画面100には、比較演算結果が削除され、将来の運転条件に基づく演算結果のみが表示される。
【0259】
ステップS63の判定において、比較演算結果の表示削除要求がないと判定した場合(ステップS63のNo)、ステップS40の処理に戻る。
【0260】
また、図13に示すように、将来変形量演算部72は、ステップS44の処理後、前述したように、ステップS44の演算結果に基づいて演算結果が交換閾値Aまたは交換閾値Bに達しているか否かを判定する(ステップS47)。そして、前述したように、ステップS47からステップS56の処理が実行される。
【0261】
表示画面100Aの将来クリープ変形量および将来ひずみ量に関する情報は、将来の運転条件の入力画面80におけるSaveボタン87、および比較演算結果の選択画面110におけるLoadボタン112またはResetボタン113が押されたことに伴う情報を受けるごとに更新される。
【0262】
なお、ここでは、比較演算結果として一つの演算結果を選択する一例を示したが、複数の比較演算結果を選択できるように設定されてもよい。
【0263】
上記した第2の実施の形態のノズル変形量管理装置18によれば、第1の実施の形態のノズル変形量管理装置18における作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0264】
さらに、第2の実施の形態のノズル変形量管理装置18によれば、表示画面100Aに、将来クリープ変形量および将来ひずみ量として、将来の運転条件に基づいて予測された演算結果および比較演算結果の双方を表示することができる。
【0265】
これによって、ユーザは、将来の運転条件に基づく演算結果と比較演算結果との違いを表示画面100Aのグラフ101およびアラーム表示103において目視で確認することできる。
【0266】
以上説明した実施形態によれば、運転データに基づいて予測された過去から現在までのクリープ変形量やひずみ量および将来の運転条件に基づいて予測された将来のクリープ変形量やひずみ量を時系列で認識することが可能となる。
【0267】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0268】
1…蒸気タービン設備、10…ボイラ、11…高圧タービン、12…再熱器、13…中圧タービン、14…低圧タービン、15…発電機、16…復水器、17…給水ポンプ、18…ノズル変形量管理装置、20…主蒸気管、21…低温再熱蒸気管、22…高温再熱蒸気管、23…クロスオーバー管、24…排気管、25…給水管、30A、30B…温度検知器、31A、31B、31C、31D…圧力検知器、32…出力検知器、40…計測データ取得部、153…ノズル、50…ユーザインターフェース、60…記憶部、61…入力情報記憶部、62…計測データ記憶部、63…プログラム記憶部、64…演算結果記憶部、65…テンプレート記憶部、66…表示情報記憶部、70…演算部、71…定周期変形量演算部、72…将来変形量演算部、73…表示情報生成部、80、90…入力画面、81…選択パターン、82…過去運用実績モード、83…ベースロード運用モード、84…ピークロード運用モード、85…詳細運転設定モード、86…オペレーションデータ、87…Saveボタン、88、97、114…Backボタン、91…翼構成表示部、92、93、94…数値欄、95…Uploadボタン、96…Deleteボタン、100、100A…表示画面、101…グラフ、102…時間軸設定部、103…アラーム表示、104…選択表示部、105…選択ボタン、110…選択画面、111…リスト表示部、112…Loadボタン、113…Resetボタン、150…ケーシング、151…ダイアフラム外輪、152…ダイアフラム内輪、154…タービンロータ、155…ロータホイール、156…動翼、157…蒸気通路、158…シール部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-07-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測された情報に基づいて算出された過去から現在までの蒸気タービンのノズルの過去変形量に関する情報を示す過去変形量関連情報と、ユーザインタフェース画面を用いた操作において入力された将来の運転条件および前記過去変形量関連情報に基づいて算出された将来における前記ノズルの将来変形量に関する情報を示す将来変形量関連情報とを表示部に表示させる表示情報を生成する表示情報生成部を備え
前記表示情報生成部は、前記将来の運転条件が入力されるごとに、
前記将来の運転条件が入力された時点における前記過去変形量関連情報と、
前記将来の運転条件が入力された時点からの前記将来変形量関連情報と
を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項2】
前記表示情報生成部は、
前記過去変形量に関する情報、および前記将来変形量に関する情報の双方を時系列で前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項3】
前記表示情報生成部は、
所定時間おきに、前記過去変形量関連情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項4】
前記表示情報生成部は、
前記将来変形量に基づいて算出された、新たなノズルの準備を開始することが推奨される変形量を示す準備閾値に係る情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項5】
前記表示情報生成部は、
前記将来変形量に基づいて算出された、新たなノズルの準備を開始することが推奨される準備推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項6】
前記表示情報生成部は、
前記将来変形量に基づいて算出された、前記ノズルを交換することが推奨される交換推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項7】
前記表示情報生成部は、
前記将来変形量に基づいて算出された、前記ノズルの点検をすることが推奨される点検推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項8】
前記表示情報生成部は、
前記ユーザインタフェース画面を用いた操作において入力された第2の将来の運転条件および前記過去変形量関連情報に基づいて算出された将来における前記ノズルの第2の将来変形量に関する情報を示す第2の将来変形量関連情報をさらに前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項9】
前記表示情報生成部は、
前記第2の将来変形量に基づいて算出された、新たなノズルの準備を開始することが推奨される変形量を示す第2の準備閾値に係る情報を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項8記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項10】
前記表示情報生成部は、
前記第2の将来変形量に基づいて算出された、新たなノズルの準備を開始することが推奨される第2の準備推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項8記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項11】
前記表示情報生成部は、
前記第2の将来変形量に基づいて算出された、前記ノズルを交換することが推奨される第2の交換推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項8記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【請求項12】
前記表示情報生成部は、
前記第2の将来変形量に基づいて算出された、前記ノズルの点検をすることが推奨される第2の点検推奨時期を前記表示部に表示させる前記表示情報を生成することを特徴とする請求項8記載の蒸気タービンのノズル変形量管理装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
実施形態の蒸気タービンのノズル変形量管理装置は、計測された情報に基づいて算出された過去から現在までの蒸気タービンのノズルの過去変形量に関する情報を示す過去変形量関連情報と、ユーザインタフェース画面を用いた操作において入力された将来の運転条件および前記過去変形量関連情報に基づいて算出された将来における前記ノズルの将来変形量に関する情報を示す将来変形量関連情報とを表示部に表示させる表示情報を生成する表示情報生成部を備える。また、前記表示情報生成部は、前記将来の運転条件が入力されるごとに、前記将来の運転条件が入力された時点における前記過去変形量関連情報と、前記将来の運転条件が入力された時点からの前記将来変形量関連情報とを前記表示部に表示させる前記表示情報を生成する。