(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146961
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/20 20110101AFI20241008BHJP
B60R 21/216 20110101ALI20241008BHJP
【FI】
B60R21/20
B60R21/216
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059690
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 瞳
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰士
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA12
3D054AA23
3D054CC04
3D054CC11
3D054CC47
3D054DD14
3D054FF13
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】コンソールボックスに収容されるエアバッグによって、車両の衝突時における乗員の前方への移動を抑制できるエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載されるエアバッグ装置は、第1乗員席と、第1乗員席と隣り合う第2乗員席と、の間に配置されるコンソールボックス内に配置され、ガスを噴射するインフレータと、コンソールボックス内に収納され、インフレータから噴射される前記ガスにより膨張展開するバッグ本体と、を備え、バッグ本体は、第1乗員席の前方に膨張展開する第1バッグ部であって、膨張展開時に、車両内において第1乗員席よりも前方に位置する構造物から反力を受けて車両の幅方向に広がる第1バッグ部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるエアバッグ装置であって、
第1乗員席と、前記第1乗員席と隣り合う第2乗員席と、の間に配置されるコンソールボックス内に配置され、ガスを噴射するインフレータと、
前記コンソールボックス内に収納され、前記インフレータから噴射される前記ガスにより膨張展開するバッグ本体と、
を備え、
前記バッグ本体は、前記第1乗員席の前方に前記膨張展開する第1バッグ部であって、前記膨張展開時に、前記車両内において前記第1乗員席よりも前方に位置する構造物から反力を受けて前記車両の幅方向に広がる第1バッグ部を有する、
エアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアバッグ装置において、
前記バッグ本体は、前記第1バッグ部の端部に連なる第2バッグ部を有し、
前記膨張展開が完了した場合の前記バッグ本体の状態である完了時展開状態は、前記第1バッグ部の長手方向と前記第2バッグ部の長手方向とが前記幅方向で一致する直列状態と、前記第1バッグ部と前記第2バッグ部との境界において折れた折れ状態と、のうちのいずれかであり、
前記第2バッグ部は、
前記完了時展開状態が前記直列状態となる場合に、前記車両内において前記第2乗員席よりも前方に位置する前記構造物から反力を受けて前記幅方向に広がり、
前記完了時展開状態が前記折れ状態となる場合に、前記第1乗員席と前記第2乗員席との間に位置する、
エアバッグ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエアバッグ装置において、
前記第2バッグ部に接続されるテザーと、
前記テザーのテンションを調整するアクチュエータと、
を更に備え、
前記アクチュエータは、前記車両に設けられた衝突検知装置による検知結果に応じて前記テンションを調整することにより、前記完了時展開状態を、前記直列状態と前記折れ状態とのうちから選択的に実現する、
エアバッグ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエアバッグ装置において、
前記アクチュエータは、
前記テンションを予め定められた大きさのテンションに維持することにより、前記完了時展開状態を前記折れ状態とし、
前記テンションを前記予め定められた大きさのテンションから低減させることにより、前記完了時展開状態を前記直列状態とする、
エアバッグ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のエアバッグ装置において、
前記アクチュエータは、
前記衝突検知装置により前記車両の側方からの衝突が検知された場合に、前記テンションを前記予め定められた大きさのテンションに維持し、
前記衝突検知装置により前記車両の前方からの衝突が検知された場合に、前記テンションを前記予め定められた大きさのテンションから低減させる、
エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるエアバッグ装置が種々提案されている。例えば特許文献1は、車両の側面からの衝突(以下、「側突」と呼ぶ)時に乗員を保護するために、車両用シートの間に設けられたコンソールボックスに収容されるエアバッグを備えるエアバッグ装置を開示している。このエアバッグ装置は、側突時にエアバッグが膨張展開することで、乗員を受け止め、乗員の車幅方向の移動を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されているエアバッグでは、車両の衝突時における乗員の前方への移動を抑制することが難しい。このため、コンソールボックスに収容されるエアバッグによって、車両の衝突時における乗員の前方への移動を抑制できる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、車両に搭載されるエアバッグ装置が提供される。このエアバッグ装置は、第1乗員席と、前記第1乗員席と隣り合う第2乗員席と、の間に配置されるコンソールボックス内に配置され、ガスを噴射するインフレータと、前記コンソールボックス内に収納され、前記インフレータから噴射される前記ガスにより膨張展開するバッグ本体と、を備え、前記バッグ本体は、前記第1乗員席の前方に前記膨張展開する第1バッグ部であって、前記膨張展開時に、前記車両内において前記第1乗員席よりも前方に位置する構造物から反力を受けて前記車両の幅方向に広がる第1バッグ部を有する。
このエアバッグ装置によれば、コンソールボックス内に収納されたバッグ本体を備え、バッグ本体は、第1乗員席の前方への膨張展開時に、車両内において第1乗員席よりも前方に位置する構造物から反力を受けて車両の幅方向に広がる第1バッグ部を有するので、衝突が発生または検知された場合に、コンソールボックス内に収納されたバッグ本体により、乗員の車両の前方への移動を抑制できる。また、バッグ本体は、コンソールボックス内に収納されているので、例えばインストルメントパネルやハンドル等の構造物にバッグ本体を収納する構成と比較して、かかる構造物におけるバッグ本体を収納するスペースを省略でき、構造物をより小さく構成できる。これにより、第1乗員席における乗員のためのスペースをより大きくできる。
(2)上記形態のエアバッグ装置において、前記バッグ本体は、前記第1バッグ部の端部に連なる第2バッグ部を有し、前記膨張展開が完了した場合の前記バッグ本体の状態である完了時展開状態は、前記第1バッグ部の長手方向と前記第2バッグ部の長手方向とが前記幅方向で一致する直列状態と、前記第1バッグ部と前記第2バッグ部との境界において折れた折れ状態と、のうちのいずれかであり、前記第2バッグ部は、前記完了時展開状態が前記直列状態となる場合に、前記車両内において前記第2乗員席よりも前方に位置する前記構造物から反力を受けて前記幅方向に広がり、前記完了時展開状態が前記折れ状態となる場合に、前記第1乗員席と前記第2乗員席との間に位置してもよい。
この形態のエアバッグ装置によれば、第2バッグ部は、完了時展開状態が直列状態となる場合に、車両内において第2乗員席よりも前方に位置する構造物から反力を受けて幅方向に広がり、完了時展開状態が折れ状態となる場合に、第1乗員席と第2乗員席との間に位置するので、直列状態においては、衝突発生時に第1乗員席の乗員と第2乗員席の乗員とが前方に移動することを抑制でき、折れ状態においては、衝突発生時に第1乗員席ST1の乗員と第2乗員席ST2の乗員とが車両幅方向に移動することを抑制できる。
(3)上記形態のエアバッグ装置において、第2バッグ部に接続されるテザーと、前記テザーのテンションを調整するアクチュエータと、を更に備え、前記アクチュエータは、前記車両に設けられた衝突検知装置による検知結果に応じて前記テンションを調整することにより、前記完了時展開状態を、前記直列状態と前記折れ状態とのうちから選択的に実現してもよい。
この形態のエアバッグ装置によれば、第2バッグ部に接続されるテザーと、テザーのテンションを調整するアクチュエータとを更に備え、アクチュエータが衝突検知装置による検知結果に応じて、バッグ本体の完了時展開状態を直列状態と折れ状態とのうちから選択的に実現するので、第1乗員席の乗員と第2乗員席の乗員とを、検知結果に応じて、直列状態または折れ状態のバッグ本体により、適切に保護できる。
(4)上記形態のエアバッグ装置において、前記アクチュエータは、前記テンションを予め定められた大きさのテンションに維持することにより、前記完了時展開状態を前記折れ状態とし、前記テンションを前記予め定められた大きさのテンションから低減させることにより、前記完了時展開状態を前記直列状態としてもよい。
この形態のエアバッグ装置によれば、アクチュエータは、テンションを予め定められた大きさのテンションに維持することにより、完了時展開状態を折れ状態とし、テンションを予め定められた大きさのテンションから低減させることにより、完了時展開状態を直列状態とするので、折れ状態と直列状態とをテンションの維持または低減という簡易な制御により実現できる。
(5)上記形態のエアバッグ装置において、前記アクチュエータは、前記衝突検知装置により前記車両の側方からの衝突が検知された場合に、前記テンションを前記予め定められた大きさのテンションに維持し、前記衝突検知装置により前記車両の前方からの衝突が検知された場合に、前記テンションを前記予め定められた大きさのテンションから低減させてもよい。
この形態のエアバッグ装置によれば、アクチュエータは、衝突検知装置により車両の側方からの衝突が検知された場合に、テンションを予め定められた大きさのテンションに維持し、衝突検知装置により車両の前方からの衝突が検知された場合に、テンションを予め定められた大きさのテンションから低減させるので、衝突の方向に応じてバッグ本体の完了時展開状態を折れ状態と直列状態とのうちのいずれかに適切に実現でき、第1乗員席の乗員と第2乗員席の乗員とを衝突の方向に応じてより適切に保護できる。すなわち、1つのバッグ本体により、前突と側突とのいずれにおいても乗員を保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一形態におけるエアバッグ装置の概略構成を示す図である。
【
図2】第2実施形態のエアバッグ装置の概略構成を示す図である。
【
図3】第2実施形態のエアバッグ装置の概略構成を示す図である。
【
図4】第2実施形態のエアバッグ装置の概略構成を示す図である。
【
図5】他の実施形態におけるコンソールボックスを説明するための図である。
【
図6】他の実施形態におけるコンソールボックスを説明するための図である。
【
図7】他の実施形態におけるエアバッグ装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、本開示の一形態におけるエアバッグ装置100の概略構成を示す図である。なお、図面および以下の記載における「前後方向」は、車両の進行方向を「前方」としたときの前後方向を示し、「左右方向」は、車両の左右方向(幅方向)を示し、「上下方向」は、車両の高さ方向を示す。なお、
図1では、バッグ本体10の膨張展開が完了し、バッグ本体10が乗員P1を受け止めている状態を示す。
【0009】
本実施形態におけるエアバッグ装置100は、車両に搭載され、車両に衝突が発生した場合、または衝突が予測された場合に、第1乗員席ST1の乗員P1を衝撃から保護する。エアバッグ装置100は、図示しないインフレータと、バッグ本体10と、を備える。インフレータおよびバッグ本体10は、バッグ本体10が膨張展開する前の状態においてコンソールボックスCB内に収容されている。
【0010】
コンソールボックスCBは、第1乗員席ST1と、第1乗員席ST1と隣り合う第2乗員席(
図1において図示せず)と、の間に配置されている。コンソールボックスCBは、通常時において、乗員の肘置きとして用いられてもよいし、内部にインフレータおよびバッグ本体10とは別の任意の小物を収納可能に構成されていてもよい。
【0011】
インフレータは、コンソールボックスCB内に配置されており、車両に搭載された衝突検知装置により衝突が検知または予測された場合に、バッグ本体10にガスを噴射する。本実施形態における衝突検知装置は、衝突方向を検知できるように構成されている。検知される衝突方向は、例えば前方と、側方と、後方とである。
【0012】
バッグ本体10は、例えばポリアミド製、またはポリエチレンテレフタレート製の織布等により構成される。バッグ本体10は、通常時においてはコンソールボックスCB内に折り畳まれて収納されており、インフレータによりガスが噴射されると、コンソールボックスCBから外部に膨張展開する。バッグ本体10は、導管12と、第1バッグ部11と、を備える。
【0013】
導管12は、管状の外観形状を有している。導管12の一端は、インフレータと接続しており、導管12の他端は、第1バッグ部11と接続している。導管12は、インフレータから噴射されたガスを第1バッグ部11へと供給する。
【0014】
第1バッグ部11は、袋状の外観形状を有する。第1バッグ部11は、インフレータから噴射されたガスにより、第1乗員席ST1の前方へと膨張展開する。第1バッグ部11は、膨張展開時に、車両内において第1乗員席ST1よりも前方に位置する構造物から反力を受けることにより、車両の幅方向に広がる。
図1の太い矢印は、かかる反力の方向を示す。第1バッグ部11は、膨張展開時に構造物と接触するための十分な大きさを有する。本実施形態における構造物は、インストルメントパネル200である。なお、構造物は、インストルメントパネル200に限らず、ハンドル等の第1乗員席ST1の前方に位置する任意の構造物であってもよい。このようにして、第1乗員席ST1よりも前方には膨張展開した第1バッグ部11が存在するので、第1乗員席ST1の乗員P1の前方への移動が抑制される。
【0015】
以上説明した第1実施形態のエアバッグ装置100によれば、コンソールボックスCBに収納されたバッグ本体10を備え、バッグ本体10は、第1乗員席ST1の前方への膨張展開時に、車両内において第1乗員席ST1よりも前方に位置するインストルメントパネル200から反力を受けて車両の幅方向に広がる第1バッグ部11を有するので、衝突が発生または検知された場合に、コンソールボックスCB内に収納されたバッグ本体10により、乗員P1の車両の前方への移動を抑制できる。
【0016】
また、バッグ本体10は、コンソールボックスCB内に収納されているので、例えばインストルメントパネル200やハンドルにバッグ本体10を収納する構成と比較して、インストルメントパネル200やハンドルにおけるバッグ本体10を収納するスペースを省略でき、インストルメントパネル200やハンドルをより小さく構成できる。これにより、第1乗員席ST1における乗員P1のためのスペースをより大きくできる。
【0017】
B.第2実施形態:
図2~
図4は、第2実施形態のエアバッグ装置101の概略構成を示す図である。
図2および
図4は、車両の上方から見たエアバッグ装置101を示す。
図3は、第1乗員席ST1から見たエアバッグ装置101を示す。第2実施形態のエアバッグ装置101は、テザー30とアクチュエータ60とを更に備え、バッグ本体10が第2バッグ部20を更に有する点で、第1実施形態のエアバッグ装置100と異なる。
図2および
図3におけるバッグ本体10は、後述する「折れ状態」であり、
図4におけるバッグ本体10は、後述する「直列状態」である。なお、
図2および
図4ではインフレータ40およびアクチュエータ60が省略されている。第2実施形態のエアバッグ装置101におけるその他の構成については、第1実施形態のエアバッグ装置100と同じなので、同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0018】
図2~
図4に示すように、第2バッグ部20は、第1バッグ部11のコンソールボックスCB側の端部に連なっている。第2バッグ部20は、第1バッグ部11と同様に袋状の外観形状を有し、インフレータ40から供給されるガスにより、第1バッグ部11とともに膨張展開する。
【0019】
テザー30は、膨張展開する第2バッグ部20の位置を拘束する。テザー30は、帯状の外観形状を有する。テザー30は、バッグ本体10と同様に、ポリアミド製、またはポリエチレンテレフタレート製の織布等により構成される。
図3に示すように、テザー30の一端は、第1バッグ部11に接続している。テザー30の他端は、アクチュエータ60に接続している。より具体的には、テザー30の他端には貫通孔31が設けられており、かかる貫通孔31にアクチュエータ60の突起部61が挿入されている。また、テザー30は、第2バッグ部20に設けられたベルトループ22に通されている。したがって、テザー30は、第2バッグ部20に間接的に接続しているとも言える。テザー30は、通常時においてはコンソールボックスCB内に収納されており、バッグ本体10の膨張展開とともにコンソールボックスCBの外部に露出する。
【0020】
アクチュエータ60は、テザー30のテンションを調整する。具体的には、アクチュエータ60は、車両に設けられた衝突検知装置による検知結果に応じてテザー30のテンションを調整する。かかるテンションの調整の詳細については、後述する。アクチュエータ60は、固定部材50により、インフレータ40と共にコンソールボックスCB内に固定されている。固定部材50は、例えば金属材料により構成された板金、ボルト等である。
【0021】
本実施形態におけるバッグ本体10は、膨張展開が完了した完了時展開状態において、「折れ状態」と「直列状態」とのうちのいずれかの状態となる。
【0022】
「折れ状態」は、
図2および
図3に示すように、第1バッグ部11と第2バッグ部20とが、それらの境界B(
図2および
図4における破線)において折れているバッグ本体10の状態を指す。折れ状態における第2バッグ部20は、第1乗員席ST1と第2乗員席ST2との間に位置している。
【0023】
「直列状態」は、
図4に示すように、第1バッグ部11の長手方向と、第2バッグ部20の長手方向とが、車両の幅方向で一致しているバッグ本体10の状態を指す。第2バッグ部20は、直列状態において、第2乗員席ST2の前方に位置しており、第2乗員席ST2よりも前方に位置する構造物から反力を受けて幅方向に広がる。本実施形態における構造物は、第1実施形態における構造物と同様に、インストルメントパネル200である。したがって、第1バッグ部11および第2バッグ部20は、直列状態となる場合に、インストルメントパネル200から反力を受けて幅方向に広がる。なお、
図4中に示す矢印は、かかる反力の方向を示す。
【0024】
「折れ状態」と「直列状態」とは、アクチュエータ60のテンションの調整により選択的に実現される。より具体的には、アクチュエータ60は、車両に設けられた衝突検知装置が車両の側方からの衝突(以下、「側突」とも呼ぶ)を検知した場合に、テザー30のテンションを予め定められたテンションに維持することにより、バッグ本体10の完了時展開状態として「折れ状態」を実現する。このようなテザー30のテンションの維持は、例えば、テザー30の他端に設けられた貫通孔31にアクチュエータ60の突起部61が挿入された状態が維持されることにより、実現される。なお、「予め定められたテンション」は、第2バッグ部20を第1乗員席ST1と第2乗員席ST2との間に位置させるための十分な大きさのテンションである。
【0025】
側突が検知された場合に「折れ状態」が実現されることにより、第1乗員席ST1と第2乗員席ST2との間に第2バッグ部20が位置する。このため、第1乗員席ST1に着座した乗員P1と第2乗員席ST2に着座した乗員P2とが、側突の衝撃により車幅方向に移動し互いに直接衝突することを抑制できる。
【0026】
また、アクチュエータ60は、車両に設けられた衝突検知装置が車両の前方からの衝突(以下、「前突」とも呼ぶ)を検知した場合に、テザー30のテンションを予め定められたテンションから低減させることにより、バッグ本体10の完了時展開状態として「直列状態」を実現する。このようなテザー30のテンションの低減は、例えば、テザー30の他端に設けられた貫通孔31から、アクチュエータ60の突起部61を脱抜することにより、実現される。
【0027】
前突が検知された場合に「直列状態」が実現されることにより、第1乗員席ST1の前方に第1バッグ部11が位置し、第2乗員席ST2の前方に第2バッグ部20が位置する。このため、第1乗員席ST1に着座した乗員P1と第2乗員席ST2に着座した乗員P2とが、前突の衝撃により車両前方に移動することを抑制できる。
【0028】
以上説明した第2実施形態のエアバッグ装置101によれば、第2バッグ部20は、完了時展開状態が「直列状態」となる場合に、車両内において第2乗員席ST2よりも前方に位置するインストルメントパネル200から反力を受けて幅方向に広がり、完了時展開状態が「折れ状態」となる場合に、第1乗員席ST1と第2乗員席ST2との間に位置するので、「直列状態」においては、衝突発生時に第1乗員席ST1の乗員P1と第2乗員席ST2の乗員P2とが前方に移動することを抑制でき、「折れ状態」においては、衝突発生時に第1乗員席ST1の乗員P1と第2乗員席ST2の乗員P2とが車両幅方向に移動することを抑制できる。
【0029】
また、第2実施形態のエアバッグ装置101は、第2バッグ部20に接続されるテザー30と、テザー30のテンションを調整するアクチュエータ60とを備え、アクチュエータ60が衝突検知装置による検知結果に応じて、バッグ本体10の完了時展開状態を「直列状態」と「折れ状態」とのうちから選択的に実現するので、検知結果に応じて、第1乗員席ST1の乗員P1と第2乗員席ST2の乗員P2とを適切に保護できる。
【0030】
また、アクチュエータ60は、テザー30のテンションを予め定められた大きさのテンションに維持することにより、完了時展開状態を「折れ状態」とし、テザー30のテンションを予め定められた大きさのテンションから低減させることにより、完了時展開状態を「直列状態」とするので、「折れ状態」と「直列状態」とをテンションの維持または低減という簡易な制御により実現できる。
【0031】
また、アクチュエータ60は、衝突検知装置により車両の側方からの衝突が検知された場合に、テザー30のテンションを予め定められた大きさのテンションに維持し、衝突検知装置により車両の前方からの衝突が検知された場合に、テザー30のテンションを予め定められた大きさのテンションから低減させるので、衝突の方向に応じてバッグ本体10の完了時展開状態を「折れ状態」と「直列状態」とのうちのいずれかに適切に実現でき、第1乗員席ST1の乗員P1と第2乗員席ST2の乗員P2とを、衝突の方向に応じて適切に保護できる。すなわち、1つのバッグ本体10により、前突と側突とのいずれにおいても乗員を保護できる。
【0032】
C.他の実施形態:
(C1)
図5は、他の実施形態におけるコンソールボックスCB1を説明するための図である。
図5は、車両の左方向から見たコンソールボックスCB1を示す。上記各実施形態において、コンソールボックスCB1は衝突時に変形する構成であってもよい。コンソールボックスCB1は、
図5の左側に示すように、第1上部310および第1下部320から構成される。第1上部310および第1下部320は、それぞれ側面視において台形状の外観形状を有し、通常時においては直方体状のコンソールボックスCB1として一体となっている。衝突検知装置により衝突が検知されると、
図5の左側の第1上部310が太い矢印で示す方向に移動し、
図5の右側に示すようにコンソールボックスCB1が高さ方向に伸長した状態となる。かかる変形は、第1上部310が、例えば第1上部310と第1下部320との境界面330に設けられたレールに沿って移動することで行われる。かかる移動は、コンソールボックスCB1内に設けられた駆動装置によって行われる。また、かかる移動は、衝突時のエネルギーを利用して第1上部310が移動する構成であってもよい。このような第1上部310の移動により、第1上部310の高さ方向の位置が乗員席STに着座した乗員の頭部の位置に在ることにより、衝突時に車両幅方向に移動する乗員を第1上部310で受け止めることができる。なお、第1上部310は乗員の衝撃をより吸収するために、弾力を有する材料により構成されてもよい。
【0033】
(C2)
図6は、他の実施形態におけるコンソールボックスCB2を説明するための図である。
図6は、車両の左方向から見たコンソールボックスCB2を示す。上記第1実施形態および第2実施形態において、コンソールボックスCB2は、衝突時に変形する構成であってもよい。具体的には、コンソールボックスCB2は、第2上部340と第2下部350と伸長部360とから構成される。伸長部360は、第2下部350の中に格納されている。伸長部360は、車両に衝撃が発生すると、高さ方向に伸長するように構成されている。具体的には、伸長部360は、リンク機構として構成されており、リンク部370を備える。伸長部360は、リンク部370が衝突の衝撃により押し込まれることで、
図6の左側に示す通常状態から、
図6の右側に示すように伸長する。かかる伸長により、第2上部340が上方に移動する。このようにして、第2上部340の高さ方向の位置が乗員席STに着座した乗員の頭部の位置に移動する。このため、衝突時に車両幅方向に移動する乗員の頭部を第2上部340で受け止めることができる。
【0034】
(C3)
図7は、他の実施形態におけるエアバッグ装置102の概略構成を示す図である。上記各実施形態において、第1バッグ部11および第2バッグ部20に反力を与える構造物は、インストルメントパネル200であったが、本開示はこれに限定されない。反力を与える構造物は、第1乗員席ST1の前方に位置する第3乗員席ST3と、第2乗員席ST2の前方に位置する第4乗員席ST4と、であってもよい。かかる構成のエアバッグ装置102によれば、車両の前部座席に限らず、車両の後部座席においてもコンソールボックスCB内に収納されたバッグ本体10により、第1乗員席ST1の乗員と、第2乗員席ST2の乗員とを衝突時に保護できる。
【0035】
(C4)上記各実施形態において、テザー30は、第2バッグ部20にベルトループ22を介して間接的に接続され、テザー30の一端は、第1バッグ部11に接続されていたが、本開示はこれに限定されない。テザー30の一端は、第2バッグ部20に直接接続されており、第1バッグ部11に接続されていなくてもよい。かかる構成によっても、テザー30のテンションの調整により、バッグ本体10の「折れ状態」と「直列状態」との切り替えを行うことができる。
【0036】
(C5)上記各実施形態において、導管12は、第1バッグ部11に接続していてもよいし、あるいは第2バッグ部20に接続していてもよい。また、導管12は、第1バッグ部11および第2バッグ部20の両方に接続していてもよい。
【0037】
(C6)上記各実施形態において、テザー30のテンションの低減は、アクチュエータ60の突起部61をテザー30の他端に設けられた貫通孔31から脱抜することで行われていたが、本開示はこれに限定されない。テザー30のテンションの低減は、アクチュエータ60がテザー30を切断することにより行われてもよい。
【0038】
(C7)上記各実施形態において、エアバッグ装置100,101,102が搭載される車両は、ハンドル等の操舵装置を有しない自動運転車両であってもよい。
【0039】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
10…バッグ本体、11…第1バッグ部、12…導管、20…第2バッグ部、22…ベルトループ、30…テザー、31…貫通孔、40…インフレータ、50…固定部材、60…アクチュエータ、61…突起部、100,101,102…エアバッグ装置、200…インストルメントパネル、310…第1上部、320…第1下部、330…境界面、340…第2上部、350…第2下部、360…伸長部、370…リンク部、B…境界、CB,CB1,CB2…コンソールボックス、P1,P2…乗員、ST…乗員席、ST1…第1乗員席、ST2…第2乗員席、ST3…第3乗員席、ST4…第4乗員席