(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146968
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】保護継電器
(51)【国際特許分類】
H02H 3/17 20060101AFI20241008BHJP
H02H 3/347 20060101ALI20241008BHJP
H02H 3/00 20060101ALI20241008BHJP
H02H 3/02 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H02H3/17
H02H3/347 D
H02H3/00 M
H02H3/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059700
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大場 捷平
(72)【発明者】
【氏名】多田羅 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】永安 怜
【テーマコード(参考)】
5G004
5G142
【Fターム(参考)】
5G004AB01
5G004BA01
5G004DA01
5G004DC14
5G142AB05
5G142AC06
5G142BB14
5G142BC02
5G142BD01
(57)【要約】
【課題】ハードウェア構成が簡素で、位相誤差の低減効果が高い保護継電器を提供する。
【解決手段】保護継電器100は、複数の配電線路を有する電力系統1における零相電圧と、各前記配電線路に流れる零相電流とに基づき、前記電力系統1に生じる地絡を検出する制御部50とを備え、前記制御部50は、第1モード時において、前記零相電圧と前記零相電流との第1位相差を調整値として記録し、前記第1モードから切り換えられる第2モード時において、前記零相電圧と前記零相電流との第2位相差を前記調整値により調整して、前記調整後の前記第2位相差に基づいて前記電力系統1の地絡を検出する、ものである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配電線路を有する電力系統における零相電圧と、各前記配電線路に流れる零相電流とに基づき、前記電力系統に生じる地絡を検出する制御部を備えた保護継電器において、
前記制御部は、
第1モード時において、
前記零相電圧と前記零相電流との第1位相差を調整値として記録し、
前記第1モードから切り換えられる第2モード時において、
前記零相電圧と前記零相電流との第2位相差を前記調整値により調整して、前記調整後の前記第2位相差に基づいて前記電力系統の地絡を検出する、
保護継電器。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1モード時において、
前記配電線路に流れる前記零相電流の大きさを複数段変化させて、該複数段変化された前記零相電流のそれぞれに対して前記調整値を記録し、
前記第2位相差を、該第2位相差を導出した前記零相電流の大きさに対応する大きさを有する前記第1モード時の前記零相電流に対応して記録された前記調整値を用いて調整する、
請求項1に記載の保護継電器。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1モード時において前記調整値を前記配電線路毎に求めてそれぞれを記録し、
前記第2モード時において前記配電線路毎に前記第2位相差を導出し、
導出した前記第2位相差を、対応する配電線路の前記調整値により調整する、
請求項1または請求項2に記載の保護継電器。
【請求項4】
前記第1モード時における前記電力系統は、前記配電線路において地絡が生じていない状態が確保されている、
請求項1または請求項2に記載の保護継電器。
【請求項5】
前記第1モードと前記第2モードとの切り換えは、前記電力系統の稼働状態を示す信号に基づき実行される、
請求項1または請求項2に記載の保護継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、保護継電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力系統に設けられて系統に生じる地絡等の異常を検知し、異常が生じた系統を正常な系統から切り離す制御を行う保護継電器は、系統の零相電圧と零相電流との位相差、零相電圧および零相電流の大きさ、に基づき、系統の切り離しを行う遮断器を動作させるトリップを行うか、否かを判断する。異常が生じた系統に対する確実なトリップ実行、異常が生じていない系統に対する不要なトリップの実行の防止のためには、保護継電器が正確な零相電圧と零相電流との位相差を導出することが必要不可欠となる。
【0003】
ここで、零相電流を測定するための零相変流器(ZCT:Zero-phase Current Transformer)は、このZCTが複数台並列に接続された際のインピーダンス特性変化、その個体差、保護継電器とのインピーダンス差、等により、その入力電流と出力電流(零相電流)との間の位相誤差が生じやすい。そこで、帯域阻止濾波器、増幅器、および二台のZCTを用いてZCTの磁心インダクタンス変動を抑制し、位相誤差を減らす方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の位相誤差低減方法では、ZCTを二台使用し、一台目のZCTの出力を二台目のZCTの入力側に貫通させる構成であるため、ハードウェア構成が複雑化するとともに、結合係数の変化、ZCTのバラツキ、ノイズの影響を受けやすいため、検出した零相電流に位相誤差が生じる場合がある。そのため、系統に生じる異常を精度良く検出出来ず、従って正確に系統を保護するための制御を行えない場合が生じるという課題があった。
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、ハードウェア構成を複雑化させることなく、系統に生じる異常を精度良く検出して正確な保護制御を行える保護継電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される保護継電器は、
複数の配電線路を有する電力系統における零相電圧と、各前記配電線路に流れる零相電流とに基づき、前記電力系統に生じる地絡を検出する制御部を備えた保護継電器において、
前記制御部は、
第1モード時において、
前記零相電圧と前記零相電流との第1位相差を調整値として記録し、
前記第1モードから切り換えられる第2モード時において、
前記零相電圧と前記零相電流との第2位相差を前記調整値により調整して、前記調整後の前記第2位相差に基づいて前記電力系統の地絡を検出する、
ものである。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示される保護継電器によれば、ハードウェア構成が簡素でありつつ、零相電圧と零相電流との位相差を精度良く導出できる保護継電器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1による保護継電器の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1による保護継電器の制御部のシステム構成を示す図である。
【
図3】実施の形態1による保護継電器の制御部が行う自動調整制御の流れを示すフロー図である。
【
図4】実施の形態1による保護継電器の制御部が行う自動調整制御を説明するための、試験通電時における零相電圧と零相電流の波形を示す図である。
【
図5】実施の形態2による保護継電器の制御部が行う調整値取得モードにおける制御動作の流れを示すフロー図である。
【
図6】各実施の形態における制御部のハードウェアの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、図面に基づいて実施の形態1について説明する。なお、各図面において、同一符号は、同一あるいは相当部分を示す。
図1は、実施の形態1による保護継電器100の概略構成を示すブロック図である。
保護継電器100は、図示しない配電盤などの受配電設備に設置され、計測要素として主に電力系統1の電圧要素、電流要素を取得して監視し、この監視している電圧要素、電流要素に異常が生じると、正常な系統と異常な系統とを切り離す保護制御を行う。特に保護継電器100の保護要素の一つである地絡保護では、高圧ケーブルの絶縁劣化、断線等に起因する地絡の発生を検出して、保護制御により地絡が生じた系統の切り離しを行う。
【0010】
保護継電器100は、上記電圧要素としての電力系統1の零相電圧、および上記電流要素としての零相電流の取得に加えて、保護制御において地絡が発生していない系統(健全相)であるか、地絡が発生した系統(地絡相)であるか、を判定するため、零相電圧と零相電流との位相差を導出する。地絡相のみを電力系統1から正確に切り離して健全相を保護するためには、この位相差の導出精度が重要となる。
本実施の形態の保護継電器100は、以下に説明するように、零相電流を検出するZCTにおいて生じる入力電流と出力電流(零相電流)との位相誤差の影響が低減された、電力系統1の零相電圧と零相電流との位相差を導出するものである。
【0011】
本実施の形態の保護継電器100について説明する。
図1に示すように、保護継電器100は、零相電圧入力端子10と、零相電流入力端子20と、出力端子30と、電源40と、制御部50と、を備える。
なお、電力系統1は、図示しない複数の配電線路を有して構成されている。
【0012】
零相電圧入力端子10は、EVT(Earthed Voltage Transformer)2に接続され、このEVT2を介して電力系統1の零相電圧が入力される。
零相電流入力端子20は、ZCT3に接続され、このZCT3を介して電力系統1を構成する各配電線路に流れる零相電流が入力される。
出力端子30は、制御部50からの制御指令を遮断器4に対して出力する。
電源40は、制御部50に対して電力を供給する。
制御部50は、入力された零相電圧、零相電流に基づき、電力系統1を構成する各配電線路における地絡の有無を判定し、保護制御を実行するか否かを判断する。
【0013】
保護継電器100の制御部50について説明する。
図2は、保護継電器100の制御部50のシステム構成を示す図である。
図3は、制御部50が行う自動調整制御の流れを示すフロー図である。
図4は、制御部50が行う自動調整制御を説明するための、試験通電時における零相電圧と零相電流の波形を示す図である。
【0014】
図2に示すように、制御部50は、零相電圧計測回路51Aと、零相電流計測回路51Bと、A/D変換部52と、調整部53と、判断部54とを備える。
【0015】
図3に示すように、先ず、制御部50は、第1モードとしての調整値取得モードに自身の動作モードを遷移させる(ステップS001、ステップS002:YES)。この調整値取得モードは、零相電圧と零相電流との位相誤差を調整する調整値Vを取得するための動作モードである。なお、このステップS002におけるYES、NOの判定基準については後述する。
【0016】
この時、電力系統1は実運用開始前であるが、実運用に対応する構成を有した状態であり、リレー試験機などで試験通電を行う。
零相電圧計測回路51A、および零相電流計測回路51Bは、零相電圧入力端子10および零相電流入力端子20を介して、この試験通電における電力系統1の零相電圧、零相電流のアナログデータを取得する(ステップS003)。
この試験通電において各配電線路には地絡が生じていない状態となっている。
そして零相電圧計測回路51A、および零相電流計測回路51Bは、入力された零相電圧、零相電流のアナログデータの増幅及びフィルタ処理を行う。
A/D変換部52は、フィルタ処理が行われたアナログデータをデジタルデータへ変換する。
【0017】
次に、調整部53は、デジタルデータに変換された、この試験通電時における零相電圧と零相電流との位相差である第1位相差θ1を調整値Vとして導出する(ステップS004)。
具体的には、
図4に示す通り、調整部53は、零相電圧、零相電流のそれぞれのゼロクロス点の第1位相差θ1を調整値Vとする。
【0018】
次に、制御部50は、第1モードとしての調整値取得モードから、第2モードとしての誤差調整モードに自身の動作モードを遷移させる(ステップS005、YES)。
なお、このステップS005におけるYES、NOの判定基準については後述する。
この時、電力系統1は、試験通電状態から実運用状態である稼働状態に移行される。
【0019】
零相電圧計測回路51A、および零相電流計測回路51Bは、零相電圧入力端子10および零相電流入力端子20を介して、この稼働状態における電力系統1の零相電圧、零相電流のアナログデータを取得する(ステップS006)。
そして零相電圧計測回路51Aおよび零相電流計測回路51Bは、入力された零相電圧、零相電流のアナログデータの増幅及びフィルタ処理を行う。
A/D変換部52は、フィルタ処理が行われたアナログデータをデジタルデータへ変換する。
【0020】
次に、調整部53は、デジタルデータに変換されたこの稼働状態における零相電圧と零相電流との位相差である第2位相差θ2を導出し、この第2位相差θ2を上記調整値Vにより調整する自動調整制御を行う(ステップS007)。
具体的には、調整部53は、この自動調整制御において、第2位相差θ2から調整値Vを差し引くことにより、ZCTの入力電流と出力電流(零相電流)との間の位相誤差を、第2位相差θ2から取り除く。
【0021】
判断部54は、上記ステップS007により調整された第2位相差θ2に基づき、各配電線路における地絡の有無を検出し、地絡が生じた配電線路を健全な配電線路から切り離す保護制御を行うか否かを判定する。
保護制御を行う場合、判断部54は、制御指令として出力端子30の接点を動作させ、遮断器4をトリップさせる。
【0022】
なお、上記ステップS002、ステップS005におけるYES、NOの判定は、例えば、電力系統1の稼働状態に応じて外部から入力される信号に基づき行うものでもよい。
例えば、外部から入力される信号が電力系統1の稼働前の試験通電状態を示すものであれば、ステップS002の判定はYES、ステップS005の判定はNOとなる。
これに対して、外部から入力される信号が電力系統1が実運用されている稼働状態を示すものであれば、ステップS002の判定はNO、ステップS005の判定はYESとなる。
【0023】
以上のように、実運用状態に対応する構成を有した稼働状態において試験通電を行い調整値Vを取得する。即ち、取得された調整値Vは、電力系統1が稼働された実運用時と同等の構成の電力系統1の構成に基づき取得されている。そのため、調整値Vは、ZCTが複数台並列に接続された際のインピーダンス特性変化、その個体差、ZCTと保護継電器とのインピーダンス差等のZCTの位相誤差等の、ZCTが要因で発生する様々な位相誤差に対応している。
この調整値Vを用いて実運用状態において第2位相差θ2を自動的調整する機能を備えるため、本実施の形態の保護継電器100は、ZCTが要因で発生する様々な位相誤差に対応可能である。結果として本実施の形態の保護継電器100は、電力系統1に生じる異常を精度よく検出でき、異常が生じた配電線路に対する確実なトリップ実行、異常が生じていない配電線路に対する不要なトリップの実行を防止する。
【0024】
上記のように構成される本実施の形態の保護継電器によれば、
複数の配電線路を有する電力系統における零相電圧と、各前記配電線路に流れる零相電流とに基づき、前記電力系統に生じる地絡を検出する制御部を備えた保護継電器において、
前記制御部は、
第1モード時において、
前記零相電圧と前記零相電流との第1位相差を調整値として記録し、
前記第1モードから切り換えられる第2モード時において、
前記零相電圧と前記零相電流との第2位相差を前記調整値により調整して、前記調整後の前記第2位相差に基づいて前記電力系統の地絡を検出する、
ものである。
【0025】
このように、第1モード時において取得される零相電圧と零相電流との第1位相差は、調整値として記録しておく。そしてその後の第2モード時において取得される零相電圧と零相電流との第2位相差は、上記調整値により調整を行う。
よって、第1モード時における電力系統の構成状態を、ZCTにおいて位相誤差が生じ得る種々の要因に対応した構成とすることで、その後の第2モード時における第2位相差の調整が精度良く行える。
【0026】
また、ZCTにおける位相誤差を低減するためにZCTを複数台使用する必要がなく、制御部50における制御により位相誤差を自動調整するため、ハードウェアの構成を簡素化できる。このようにハードウェアの改造が不要のため、既存の保護継電器にも対しても制御部の処理を変更することで対応可能であり、精度の高い系統の異常の検出および正確な保護制御が実現可能となる。
【0027】
なお、制御部50は、調整値取得モードにおいて調整値Vを各配電線路毎にそれぞれを記録しておき、配電線路毎に導出した第2位相差θ2を、対応する配電線路の調整値Vにより調整してもよい。これにより、配電線路毎の誤差を低減した第2位相差θ2の導出が可能になる。
【0028】
実施の形態2.
以下、本願の実施の形態2を、上記実施の形態1と異なる箇所を中心に図を用いて説明する。上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
実施の形態1では、調整値取得モードの試験通電時における電流等の入力値は、定格値などに設定された一定の値であった。しかし、ZCTの位相誤差は入力電流値によっても変動することが知られている。そのため、より正確な保護制御を行うためには、入力電流値に応じて調整値Vを変動させる必要がある。
【0029】
図5は、制御部50が行う調整値取得モードにおける制御動作の流れを示すフロー図である。
本実施の形態では、調整値Vを3種類取得する。具体的には、調整値取得モードにおいて零相電流入力端子20に入力される零相電流の入力値を小、中、大と3段に変動させて3種類の調整値Vを取得してそれぞれを記録しておく(ステップS003A、ステップS004A、ステップS003B、ステップS004B、ステップS003C、ステップS004C)。
この際、零相電圧入力端子へ入力する入力電圧は一定(定格値程度)とする。
なお、ここで零相電流入力端子20に入力する零相電流入力値は、中を定格値、小を定格値以下、大を定格値以上と想定している。
【0030】
調整部53では、電力系統1の稼働状態において実測した第2位相差θ2と調整値Vから位相誤差を調整した調整済の第2位相差θ2を算出する。ここで第2位相差θ2を調整する際に用いる調整値Vは、3種類取得された調整値Vの内、第2位相差を導出した際の零相電流の大きさに対応する大きさの零相電流に対応して記録された調整値Vにより調整する。即ち、第2位相差θ2を導出した際の零相電流の入力値が大である場合、零相電流の入力値が大の場合に取得された調整値Vが用いられる。
【0031】
上記のように構成された本実施の形態の保護継電器によれば、
前記制御部は、
前記第1モード時において、
前記配電線路に流れる前記零相電流の大きさを複数段変化させて、該複数段変化された前記零相電流のそれぞれに対して前記調整値を記録し、
前記第2位相差を、該第2位相差を導出した前記零相電流の大きさに対応する大きさを有する前記第1モード時の前記零相電流に対応して記録された前記調整値を用いて調整する、
ものである。
【0032】
このように、本実施の形態の保護継電器は、設備稼働前の実使用構成に対応した状態で位相誤差調整値を複数取得する。そのため、ZCTの入力値によって変動する位相誤差に対応可能であり、結果として精度良い地絡の有無の検出が可能となる。
【0033】
図6は、制御部50のハードウェアの構成を示す図である。
なお、制御部50としての制御装置は、ハードウェアの一例を
図6に示すように、プロセッサ60と記憶装置70から構成される。記憶装置70は、図示していない、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを備える。
また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を備えてもよい。プロセッサ60は、記憶装置70から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ60にプログラムが入力される。また、プロセッサ60は、演算結果等のデータを記憶装置70の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0034】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0035】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0036】
(付記1)
複数の配電線路を有する電力系統における零相電圧と、各前記配電線路に流れる零相電流とに基づき、前記電力系統に生じる地絡を検出する制御部を備えた保護継電器において、
前記制御部は、
第1モード時において、
前記零相電圧と前記零相電流との第1位相差を調整値として記録し、
前記第1モードから切り換えられる第2モード時において、
前記零相電圧と前記零相電流との第2位相差を前記調整値により調整して、前記補正後の前記第2位相差に基づいて前記電力系統の地絡を検出する、
保護継電器。
(付記2)
前記制御部は、
前記第1モード時において、
前記配電線路に流れる前記零相電流の大きさを複数段変化させて、該複数段変化された前記零相電流のそれぞれに対して前記調整値を記録し、
前記第2位相差を、該第2位相差を導出した前記零相電流の大きさに対応する大きさを有する前記第1モード時の前記零相電流に対応して記録された前記調整値を用いて調整する、
付記1に記載の保護継電器。
(付記3))
前記制御部は、
前記第1モード時において前記調整値を前記配電線路毎に求めてそれぞれを記録し、
前記第2モード時において前記配電線路毎に前記第2位相差を導出し、
導出した前記第2位相差を、対応する配電線路の前記調整値により調整する、
付記1または付記3に記載の保護継電器。
(付記4)
前記第1モード時における前記電力系統は、前記配電線路において地絡が生じていない状態が確保される、
付記1から付記3のいずれか1つに記載の保護継電器。
(付記5)
前記第1モードと前記第2モードとの切り換えは、前記電力系統の稼働状態を示す信号に基づき実行される、
付記1から付記4のいずれか1つに記載の保護継電器。
【符号の説明】
【0037】
1 電力系統、50 制御部、100 保護継電器。