(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146972
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電子機器、電子楽器、出力制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G10H 1/00 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
G10H1/00 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059710
(22)【出願日】2023-04-03
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478EA41
5D478EB31
5D478HH02
(57)【要約】
【課題】信号の出力生成タイミングを改善することのできる電子機器、電子楽器、出力制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】電子機器は、出力に係る単位データを含む入力データを受信可能な通信部(14)と、入力データに基づいて出力データを生成するDSP(15)に対して、単位データを出力するタイミングを制御する制御部と、を備える。制御部は、取得した単位データの各々に係る出力タイミングに関する情報を取得し、情報における出力タイミングが直近のタイミングである複数の単位データをまとめて保持し、直近のタイミングで、保持されている単位データをDSP(15)に出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力に係る単位データを含む入力データを受信可能な受信部と、
前記入力データに基づいて出力データを生成する生成部に対して、前記単位データを出力するタイミングを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
取得した前記単位データの各々に係る出力タイミングに関する情報を取得し、
前記情報における前記出力タイミングが同一のタイミングである複数の前記単位データをまとめて保持し、
前記同一のタイミングで、保持されている前記複数の単位データを前記生成部に出力する
電子機器。
【請求項2】
前記受信部が受信した前記入力データに含まれる前記単位データを受信順に記憶して出力可能な第1記憶部と、
前記保持する設定データを記憶する第2記憶部と、
を備え、
前記入力データは、複数の前記単位データが出力タイミングの順番で並んでおり、
前記制御部は、
前記第1記憶部から順番に前記単位データを読み出して、前記同一のタイミングで出力する前記単位データを前記第2記憶部へ移動させて記憶させ、
前記第2記憶部に記憶された前記単位データを前記同一のタイミングで前記生成部へ出力する
請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1記憶部から読み出した前記単位データが前記同一のタイミングで出力するものではない場合には、前記単位データを前記第1記憶部に、最先の記憶データとして戻す、
請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記第2記憶部に同時に記憶可能な前記単位データの最大記憶数が定められており、
前記制御部は、前記第2記憶部に前記最大記憶数の前記単位データが記憶された場合には、記憶された前記単位データが前記同一のタイミングで前記生成部に出力されるまで、前記第1記憶部の前記単位データを読み出さない、
請求項2記載の電子機器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の電子機器と、
ユーザの演奏操作を受け付けて前記入力データを生成する演奏受付部と、
を備える、電子楽器。
【請求項6】
出力に係る単位データを含む入力データを受信可能な受信部を備える電子機器の出力制御方法であって、
取得した前記単位データの各々に係る出力タイミングに関する情報を取得し、
前記情報における前記出力タイミングが同一のタイミングである複数の前記単位データをまとめて保持し、
前記同一のタイミングで、保持されている前記単位データを、前記入力データに基づいて出力データを生成する生成部に出力する
出力制御方法。
【請求項7】
出力に係る単位データを含む入力データを受信可能な受信部を備える電子機器のコンピュータを、
取得した前記単位データの各々に係る出力タイミングに関する情報を取得する取得手段、
前記情報における前記出力タイミングが同一のタイミングである複数の前記単位データをまとめて保持する保持手段、
前記同一のタイミングで、保持されている前記単位データを、前記入力データに基づいて出力データを生成する生成部に出力する出力制御手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器、電子楽器、出力制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
MIDI(Musical Instruments Digital Interface)などの音楽演奏などに係る音出力データに基づいて音信号を生成出力する電子機器がある。特許文献1では、予め2小節前までの音出力データを取得して利用する技術が開示されている。この特許文献1では、実際の音出力よりもある定められた時間先行して実際の音信号の出力生成(音再生)と同一の処理を、音出力をゼロとして行うことで、先行時間を一定に保っている。
【0003】
このような音出力データは、ブルートゥース(登録商標)などの無線通信により、ある電子機器から音信号の生成可能な電子機器へ送信して処理させることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、データの処理速度が遅い場合には、音信号の出力生成を行うタイミングがずれる場合があるという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、信号の出力生成タイミングを改善することのできる電子機器、電子楽器、出力制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
出力に係る単位データを含む入力データを受信可能な受信部と、
前記入力データに基づいて出力データを生成する生成部に対して、前記単位データを出力するタイミングを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
取得した前記単位データの各々に係る出力タイミングに関する情報を取得し、
前記情報における前記出力タイミングが同一のタイミングである複数の前記単位データをまとめて保持し、
前記同一のタイミングで、保持されている前記複数の単位データを前記生成部に出力する
電子機器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、信号の出力生成タイミングを改善できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の電子機器の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】電子機器における音出力に係るデータの流れを説明する図である。
【
図3】出力データ生成処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図4】同時データ追加処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の電子機器1の機能構成を示すブロック図である。
電子機器1は、音源Sから受信する演奏データ(入力データ)、例えばMIDIデータを解析して、楽音及び音声の少なくともいずれか(発する音)に対応するデジタル信号を含む音出力データを生成する。電子機器1は、生成した音出力データをアナログ変換した音出力信号(出力信号)を出力する。音源Sは、一般的なコンピュータ(PC)など(MIDIソフトウェアがインストールされているものなど)であってもよい。あるいは、音源Sは、電子楽器などであって、演奏内容がMIDIデータに変換されて記憶され、出力されるのであってもよい。さらに、電子機器1自身が鍵盤などの演奏受付部17を備えている電子楽器であってもよい。音出力信号の出力先は、例えば、スピーカL、イヤフォン、ヘッドフォンや音出力信号を記録する電子機器などである。
【0011】
電子機器1は、CPU11(Central Processing Unit)(制御部)と、RAM12(Random Access Memory)と、記憶部13と、通信部14(受信部)と、DSP15(Digital Signal Processor)(生成部)と、出力部16と、上記の演奏受付部17などを備える。各構成は、バスを介して互いに電気的に接続されている。
【0012】
CPU11は、演算処理を行い、電子機器1の動作を統括制御するプロセッサである。CPU11は、音出力データの生成制御に好適に設計されたものであってもよい。CPU11は、単一のプロセッサを有していてもよいし、複数のプロセッサが並列に又は用途などに応じて独立に動作するのであってもよい。また、CPU11は、図示略の発振回路が出力するクロック信号に基づいて、現在時刻を計数する。このために、電子機器1は、図示略のRTC(Real Time Clock)を備える。CPU11は、電子機器1が起動されたときにRTCから現在時刻を取得する。
【0013】
RAM12は、CPU11に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。RAM12には、FIFO121(第1記憶部)と、直近データ122(第2記憶部)とが含まれる。FIFO121は、外部からの入力データに含まれる各音データ及び制御データ(これらを単位データと記す)を順番に記憶し、記憶した順に出力する。直近データ122は、FIFO121に記憶した単位データのうち、次に同一のタイミング(直近のタイミング)でDSP15へ出力するものをまとめて記憶(保持)する。FIFO121と直近データ122とは、同一のハードウェア記憶装置における一部ずつであってもよい。FIFO121は、リングバッファであってもよい。直近データ122として同時に記憶可能な単位データの数には上限(最大記憶数Imax)がある。この最大記憶数Imaxは、DSP15が同時に生成可能な音の数以下である。
【0014】
記憶部13は、不揮発性のメモリであり、例えば、フラッシュメモリやHDDである。記憶部13は、音出力データの生成に係るプログラム131及び設定データを記憶している。
【0015】
通信部14は、定められた通信規格に従って外部機器との通信動作を制御する。ここでは、通信に利用可能な通信規格には、ブルートゥース(登録商標)のローエナジー規格(BLE)が含まれる。
【0016】
DSP15は、入力データ(MIDIデータ)を解析して音出力データを生成する専用回路である。生成された音出力データは、出力部16へ出力される。DSP15は、並列に上限数までの単位データを同時に処理して各々音データ(直接出力音に関係ないものも含む)を生成し、これらをミキサにより合成した音出力データを生成することができる。また、DSP15の処理には、出力音に対するエフェクト処理などを含み得る。
【0017】
出力部16は、DSP15により生成されたデジタルの音出力データをアナログ変換するDAC(デジタル/アナログ変換器)と、アナログ変換により得られた音出力信号を外部へ出力するための出力端子(インターフェイス)などを有する。出力部16は、ヘッドフォンへ音出力信号を出力する出力端子を有していてもよい。これに加えて又は代えて、出力部16は、電子機器1自体が有するスピーカLに対して音出力信号を出力してもよい。出力部16は、音出力信号を出力端子及び/又はスピーカLに出力する前に増幅する増幅部(アンプ)などを有していてもよい。電子機器1は、機械的に又はCPU11の制御により、出力端子及びスピーカLのうちいずれに音出力信号を出力するかを切替可能であってもよい。
【0018】
電子機器1は、別途電子楽器の演奏データ(音データ)を受け付ける入力端子を有していてもよい。演奏データは、DSP15に入力されて、MIDIデータに基づく音データと混合されて出力部16へ送られ得る。電子機器1のうち、音出力データの生成出力に係るコンピュータとしての構成には、CPU11、RAM12、記憶部13及び通信部14が含まれる。
【0019】
その他、電子機器1は、電力供給をオンオフするための操作ボタンなどを有する操作受付部や、ステータスなどを表示する表示画面を有する表示部などを備えていてもよい。
【0020】
次にMIDIデータの取得及び音出力について説明する。
以下、入力データはMIDIデータであるものとして説明する。MIDIデータは、出力する音の内容及びその時間経過に伴う変化を示すイベントデータなどの単位データが順番に並んだものである。音の内容には、音程、音色、強度などが含まれ得る。時間経過に伴う変化には、アクセントなどの立ち上がり特性、音量の減衰や周波数スペクトル分布などが含まれ得る。なお、イベントデータに含まれ得るシステムイクスクルーシブデータは、考慮されなくてもよく、本実施形態の単位データに含まれなくてもよい。
【0021】
電子機器1は、MIDIデータを外部機器からBLE(無線通信)により受信(取得)することができる。BLEでは、データは、規定された通信間隔(ある時間間隔)で送信されるパケット単位で送られる。通信間隔は、BLEの規格で定められている範囲内で可変設定可能であるが、しばしば固定されている(例えば、15msec間隔)。通信内容のデータフォーマットは、共通規格(MIDI over Bluetooth Low Energy)に従ったものであってよい。各パケットには、上記単位データと、単位データに対してそれぞれ対応付けられたその出力タイミングの情報(タイムスタンプ)とが、1又は複数組含まれる。
【0022】
MIDIデータが受信されると、従来の電子機器は、単位データを順に解読して、出力タイミングの情報を取得し、その出力タイミングで逐次単位データをDSP15へ出力する。しかしながら、出力タイミングの等しいイベントデータが多くある場合などには、一部のデータの実際の出力が、指定されている出力タイミングに対して無視できない遅れとなり、結果として、出力部16からの一部の音の出力が所望の出力タイミングより遅れてしまう頻度が高くなってしまっていた。
【0023】
図2は、電子機器1における音出力に係るデータの流れを説明する図である。
電子機器1は、通信部14によるBLEでの受信で取得したMIDIデータを単位データに分解してFIFO121に記憶する。電子機器1は、各単位データの出力タイミングを順番に参照、確認して、直近の出力タイミング(同一のタイミング)の単位データを予めまとめて直近データ122として保持しておく。出力タイミングでは、直近データ122に記憶保持されている全ての単位データを遅滞なく出力することが可能となる。
【0024】
単位データは、原則的に出力タイミングの順番で並んでいる。したがって、出力タイミングが直近の出力タイミングではない単位データ以降の全ての単位データは、出力タイミングがいずれも直近の出力タイミングではない。
【0025】
上記単位データの並び順を考慮して、受信したMIDIデータは、単位データの並び順(受信順)でそのままFIFO121に入力、記憶されて、入力順に読み出し、出力される。読み出した単位データの出力タイミングが直近の出力タイミングである場合には、この単位データは、直近データ122に移動されて記憶保持される。読み出した単位データの出力タイミングが直近の出力タイミングではない場合には、この出力タイミングは、直近の出力タイミングよりも後の次のタイミングである。この単位データは、FIFO121の最先位置に戻されて、直近の出力タイミングの単位データが出力された後に改めて読み出される。
【0026】
直近データ122は、直近の出力タイミングでDSP15にまとめて出力される。これにより、DSP15は、同じ出力タイミングの複数のデータを別々の単位データとして順次読み出して処理するよりも速やかに音出力データを生成して出力部16へ出力する。したがって、音出力データに基づく音の出力に係る複数の処理が、指定されたタイミングから大きな遅延なく行われる。
【0027】
図3は、本実施形態の電子機器1で実行される出力データ生成処理のCPU11による制御手順を示すフローチャートである。
図4は、出力データ生成処理内で呼び出される同時データ追加処理の制御手順を示すフローチャートである。本実施形態の出力制御方法を含む出力データ生成処理は、通信部14によりMIDIデータ(入力データ)が受信されると開始される。
【0028】
出力データ生成処理が開始されると、CPU11は、入力データからデータ順に従って最先の単位データを1つ取得して、FIFO121のキューに追加する(ステップS101)。CPU11は、単位データが取得されたか否かを判別する(ステップS102)。単位データが取得されていないと判別された場合には(ステップS102;NO)、CPU11は、出力データ生成処理を終了する。
【0029】
単位データが取得されてキューに追加されたと判別された場合には(ステップS102;YES)、CPU11は、出力データを記憶保持している数を表す変数(記憶数I)に「0」をセットする(ステップS103)。CPU11は、取得した単位データのタイミングに関する情報を参照して、出力タイミングを直近タイミングTnとして設定する(ステップS104;取得手段)。
【0030】
CPU11は、出力タイミング追加処理を実行する(ステップS105;保持手段)。
図4に示すように、出力タイミング追加処理では、CPU11は、記憶数Iが予め定められている最大記憶数Imax以上であるか否かを判別する(ステップS141)。
【0031】
記憶数Iが最大記憶数Imax以上であると判別された場合には(ステップS141;YES)、CPU11は、取得した単位データを直近データ122に記憶保持させずに、出力データの記憶に失敗した旨設定する(ステップS143)。この設定は、例えば、フラグとして設定されてもよいし、あるいは、同時データ追加処理が出力データ生成処理へ戻す関数値、例えば、「-1」などとして設定されてもよい。そして、CPU11は、同時データ追加処理を終了する。
【0032】
記憶数Iが最大記憶数Imax以上ではないと判別された場合には(ステップS141;NO)、CPU11は、取得した単位データを直近データ122に追記記憶させる(ステップS142)。CPU11は、記憶数Iに「1」を加算する(ステップS142)。そして、CPU11は、同時データ追加処理を終了して処理を出力データ生成処理へ戻す。
【0033】
図3に戻って、同時データ追加処理が終了して処理が出力データ生成処理へ戻されると、CPU11は、受信しているMIDIデータから次の単位データを取得する(ステップS106)。CPU11は、単位データが取得されたか否かを判別する(ステップS107)。単位データがなく、単位データが取得されなかったと判別された場合には(ステップS107;NO)、CPU11の処理は、ステップS112へ移行する。
【0034】
単位データが取得されたと判別された場合には(ステップS107;YES)、CPU11は、取得した単位データの出力タイミングを参照し、出力タイミングが直近タイミングTnと等しいか否かを判別する(ステップS108;取得手段)。取得した単位データの出力タイミングが直近タイミングTnと等しくないと判別された場合には(ステップS108;NO)、CPU11の処理は、ステップS111へ移行する。
【0035】
取得した単位データの出力タイミングが直近タイミングTnと等しいと判別された場合には(ステップS108;YES)、CPU11は、同時データ追加処理を呼び出して実行する(ステップS109;保持手段)。
【0036】
CPU11は、同時データ追加処理で単位データを直近データ122へ追加するのに成功したか否かを判別する(ステップS110)。単位データを直近データ122へ追加するのに成功したと判別された場合には(ステップS110;YES)、CPU11の処理は、ステップS106に戻る。上記のように、ステップS141の判別処理で記憶数Iが最大記憶数Imax以上ではない場合には、追加が成功する。同時データ追加処理で単位データを直近データ122へ追加するのに失敗したと判別された場合には(ステップS110;NO)、CPU11の処理は、ステップS111へ移行する。
【0037】
ステップS108で取得した単位データの出力タイミングが直近タイミングTnと等しくないと判別された場合、及びステップS110の処理で単位データを直近データ122へ追加するのに失敗したと判別された場合に、ステップS111の処理へ移行すると、CPU11は、追加されなかった単位データを、キューの先頭データに戻す(ステップS111)。それから、CPU11の処理は、ステップS112へ移行する。
【0038】
ステップS107、S111の処理からステップS112へ移行すると、CPU11は、設定されている直近タイミングTnになるまで待機する(ステップS112)。直近タイミングTnになると、CPU11は、保持している直近データ122をDSP15へ出力する(ステップS113;出力制御手段)。それから、CPU11の処理は、ステップS101へ戻る。
【0039】
以上のように、本実施形態の電子機器1は、音の出力に係る単位データ(イベントデータ)を含むMIDIデータなどの入力データを受信可能な通信部14と、入力データに基づいて発する音に対応する音出力データを生成するDSP15に対して、単位データを出力するタイミングを制御するCPU11と、を備える。CPU11は、取得した単位データの各々に係る音の出力タイミングに関する情報を取得する。CPU11は、出力タイミングが直近のタイミングである複数の単位データを予めまとめて直近データ122として記憶保持する。CPU11は、直近のタイミングで、保持されている単位データをDSP15に出力する。
すなわち、電子機器1は、同一タイミングで音を発するよう指定された複数のイベントをまとめて遅滞なくDSP15に出力して音出力データを生成することができる。したがって、電子機器1は、音の発生タイミングのばらつきなどを低減させ、音信号の出力生成タイミングを改善した音出力データを出力することができる。これにより、電子機器1は、意図しない出力音の質の低下を抑えることができる。
【0040】
また、電子機器1は、RAM12を備える。RAM12は、通信部14が受信した入力データに含まれる単位データを受信順に記憶して出力可能なFIFO121と、保持する単位データを記憶する直近データ122とを有する。入力データは、複数の単位データが出力タイミングの順番で並んでいる。CPU11は、FIFO121から順番に単位データを読み出して、直近のタイミングで出力する単位データを直近データ122へ移動させて記憶させる。CPU11は、直近データ122に記憶された単位データを設定されている直近のタイミングでDSP15へ出力する。
このように、電子機器1は、予め受信データから直近のタイミングで出力する単位データを抽出して別データとしてまとめておく。したがって、電子機器1は、設定された直近のタイミングでは、出力データを選択する必要がなく、速やかにDSP15にこれらのデータを送って音出力データを生成することができる。
【0041】
また、CPU11は、FIFO121から読み出した単位データが直近のタイミングで出力するものではない場合には、この読み出した単位データをFIFO121に、最先の記憶データとして戻す。
FIFO121の単位データは受信順に並んでおり、入力データでは出力順に単位データが並んでいる。したがって、直近のタイミングで出力するものではないと判別された最初の単位データは、直近のタイミングの次のタイミングで出力するものである。この単位データがFIFO121に戻されることで、直近データ122が出力された後、毎回同じ処理で、新たな直近データ122を記憶保持することができる。
【0042】
また、直近データ122に同時に記憶可能な単位データの最大記憶数Imaxは、定められている。CPU11は、直近データ122に最大記憶数Imaxの単位データが記憶された場合には、記憶された単位データが直近のタイミングでDSP15に出力されるまで、FIFO121の単位データを読み出さない。
これにより、電子機器1は、際限なく直近データ122を保持するのを避けることができる。例えば、最大記憶数ImaxをDSP15が同時生成可能な音データの数以下とすることで、音処理ができない以上のデータを保持しない。あるいは、反対に、最大記憶数ImaxをDSP15が同時可能な最大の音データの数よりも多くてもよい。これにより、入力データでは同時出力するように設定された音をDSP15が2回以上に分割して処理せざるを得ない場合でも、2回の処理間隔を短くすることができる。
【0043】
また、本実施形態の電子楽器は、上記電子機器としての構成と、ユーザの演奏操作を受け付けて入力データを生成する演奏受付部17と、を備える。例えば、演奏受付部17が受け付けた演奏に係る音出力と、外部の音源Sから受信した入力データとを統合した音出力データを生成、出力する場合でも、これらのずれを適切に抑えることができる。
【0044】
また、本実施形態の出力制御方法は、以下の工程を含む。取得した単位データの各々に係る音の出力タイミングに関する情報を取得する。出力タイミングが直近のタイミングである複数の単位データを予めまとめて保持する。直近のタイミングで、保持されている単位データをDSP15に出力する。このような出力制御方法によれば、同一タイミングで音を発するように指定された複数の単位データを小さい時間差でDSP15へ出力することができる。したがって、この出力制御方法は、容易な処理で音の発生タイミングのばらつきなどを低減させ、音信号の出力生成をより正確に行わせるように音出力データを出力させることができる。
【0045】
また、上記出力制御方法に係るプログラム131を電子機器1にインストールしてソフトウェア的に実行させることで、容易に音データの出力タイミングのばらつきを抑えた音出力データを得ることができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、一度FIFO121から読み出したデータを戻すのが難しい場合には、他のバッファ領域に記憶させ、直近データ122を出力後に、新たな直近データ122に移動させてもよい。
【0047】
また、FIFO121は、ハードウェアとしてのFIFOである必要はない。通常用いられるDRAMなどであってもよい。
【0048】
また、上記実施の形態では、直近の出力データのみを事前にまとめておく処理を行ったが、これに限られない。データの受信速度を超えず、かつ直前でリアルタイムの演奏データなどが入ってこないなどの条件で、2、3回後の出力タイミングのデータも予めまとめておかれてもよい。また、外部からの無線通信による入力データの取得有無などに応じて、直近データ122の設定有無が切り替えられてもよい。また、入力データが出力順に限られない場合などにも、取得されたデータをできる限り出力タイミングごとに仕分けしておくことが有効である。
【0049】
また、上記実施形態ではBLEでのデータ入力を前提として説明したが、これに限られるものではない。出力タイミングのデータを伴って送受信される演奏データなどであれば、他の通信規格に基づいて入力データが取得されるのであってもよい。
【0050】
また、通信部14は、ここでは、受信さえできればよい。あるいは、電子機器1は、送信機能を有する通信部14を介して音源Sに特定の制御情報や設定情報を送信可能であってもよい。
【0051】
また、以上の説明では、本発明の出力データ生成制御に係るプログラム131を記憶するコンピュータ読み取り可能な媒体としてHDD、SSD、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどからなる記憶部13を例に挙げて説明したが、これらに限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、MRAMなどの他の不揮発性メモリや、CD-ROM、DVDディスクなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを、通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0052】
1 電子機器
11 CPU
12 RAM
121 FIFO
122 直近データ
13 記憶部
131 プログラム
14 通信部
15 DSP
16 出力部
17 演奏受付部
Imax 最大記憶数
I 記憶数
L スピーカ
S 音源
Tn 直近タイミング