(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146973
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】空気噴射式織機における主軸の駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
D03D 51/12 20060101AFI20241008BHJP
D03D 47/30 20060101ALI20241008BHJP
D03D 51/00 20060101ALI20241008BHJP
D03D 51/34 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
D03D51/12
D03D47/30
D03D51/00 G
D03D51/34 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059711
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 邦弘
(72)【発明者】
【氏名】志武 豊
【テーマコード(参考)】
4L050
【Fターム(参考)】
4L050AA15
4L050AB03
4L050AB10
4L050CB84
4L050CB85
4L050EA03
4L050EA07
4L050EB04
4L050EC04
4L050ED01
4L050ED11
4L050EE09
4L050EE13
(57)【要約】
【課題】
供給源から供給される圧縮空気の圧力の低下が頻繁に発生する状況下であっても、織機の運転を継続することにより、織機の生産効率の低下を可及的に抑えると共に、製織される織布の品質の低下を防ぐことができる空気噴射式織機における主軸の駆動制御方法を提供すること。
【解決手段】
供給源から供給される圧縮空気を用いて緯入れが行われると共に、設定されている設定回転数に従って主軸の駆動の制御が行われる空気噴射式織機において、織機運転中に、前記圧縮空気の圧力の検出を行い、検出された圧力に基づく圧力検出値と予め設定された圧力基準値とを比較し、前記圧力検出値が前記圧力基準値を下回ったとき、前記圧力検出値と前記圧力基準値との偏差に応じて前記設定回転数を変更する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給源から供給される圧縮空気を用いて緯入れが行われると共に、設定されている設定回転数に従って主軸の駆動の制御が行われる空気噴射式織機において、
織機運転中に、前記圧縮空気の圧力の検出を行い、
検出された圧力に基づく圧力検出値と予め設定された圧力基準値とを比較し、
前記圧力検出値が前記圧力基準値を下回ったとき、前記圧力検出値と前記圧力基準値との偏差に応じて前記設定回転数を変更する
ことを特徴とする空気噴射式織機における主軸の駆動制御方法。
【請求項2】
前記検出が、前記供給源から織機に至る配管路中で行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の空気噴射式織機における主軸の駆動制御方法。
【請求項3】
前記供給源により複数の織機に対し圧縮空気を供給するために前記配管路が複数に分岐されており、
前記配管路における最初の分岐位置よりも前記供給源側で前記検出が行われる
ことを特徴とする請求項2に記載の空気噴射式織機における主軸の駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給源から供給される圧縮空気を用いて緯入れが行われると共に、設定されている設定回転数に従って主軸の駆動の制御が行われる空気噴射式織機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気噴射式織機において、主軸(より詳しくは、主軸を駆動する原動モータ)は、制御装置等において設定されたかたちとなっている設定回転数に従い、その駆動が制御される。また、その空気噴射式織機において、緯入れに用いられる圧縮空気は、織布工場内に設置されたエアコンプレッサやドライヤー、フィルタ等の関連機器によって構成された供給源から配管を通して各織機に供給されている。そして、その供給された圧縮空気は、各織機に設けられた圧力調整弁によってその圧力が調整された上で、メインノズルやサブノズルといった緯入れノズルに供給される。
【0003】
また、その緯入れノズルに供給される圧縮空気の圧力(緯入れ圧力)について、緯入れされる緯糸の飛走速度は、その圧力に応じた速度となる。その上で、その緯入れ圧力は、前記のように設定回転数に従って主軸の駆動が制御される織機において、緯入れされた緯糸の先端が、予め設定された主軸の回転角度(クランク角度)で、反給糸側の所定の位置に到達するような大きさとされる。
【0004】
なお、織布工場においては、何らかの原因で供給源におけるエアコンプレッサ等に供給される電源の電圧が低下し、それが原因で供給源から各織機に供給される圧縮空気の圧力(供給圧力)が低下してしまうといったことが起きる場合がある。そして、その場合には、各織機において、圧力調整弁を経て緯入れノズルに供給される圧縮空気の緯入れ圧力が、所望の飛走速度が得られるような圧力よりも低い状態となってしまう虞がある。なお、そのように緯入れ圧力が低下すると、緯入れにおいて前記のように予め設定されたクランク角度で緯糸が反給糸側の所定の位置に到達しなくなるため、製織に悪影響が及ぶこととなる。
【0005】
そこで、そのような供給圧力の低下に伴う製織への悪影響を防止するための技術(従来技術)が、特許文献1に提案されている。具体的には、その特許文献1による従来技術は、供給源から織機に至る配管路中に圧縮空気の圧力低下を検出するための圧力検出器を設けると共に、その圧力検出器が各織機の停止制御回路に接続される構成となっている。そして、その従来技術においては、圧力検出器で検出された圧縮空気の圧力の値(検出値)が、予め設定された圧力値(設定値)以下となったときに、織機が停止される停止制御が停止制御回路によって行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電力事情の悪い国や地域では、織布工場において供給源に供給される電源の電圧が安定しないことに起因し、前記のような電圧の低下に伴う供給圧力の低下が頻繁に発生することがある。そして、そのような状況下の織機に対し前記した従来技術を適用すると、圧力検出器による検出値が設定値以下となることが頻繁に発生し、その都度織機が停止する。すなわち、織機の停止が頻繁に発生することとなる。そして、そのように織機が頻繁に停止することで、その織機による生産性(生産効率)の低下を招いてしまう。また、織機の頻繁な停止は、製織される織布の品質を低下させる虞もある。
【0008】
そこで、本発明は、供給圧力の低下が頻繁に発生する状況下であっても、織機の運転を継続することにより、織機の生産効率の低下を可及的に抑えると共に、製織される織布の品質の低下を防ぐことができる空気噴射式織機における主軸の駆動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、供給源から供給される圧縮空気を用いて緯入れが行われると共に、設定されている設定回転数に従って主軸の駆動の制御が行われる空気噴射式織機に適用される。そして、本発明による主軸の駆動制御方法は、その空気噴射式織機において、織機運転中に、前記圧縮空気の圧力の検出を行い、検出された圧力に基づく圧力検出値と予め設定された圧力基準値とを比較し、前記圧力検出値が前記圧力基準値を下回ったとき、前記圧力検出値と前記圧力基準値との偏差に応じて前記設定回転数を変更することを特徴とする。
【0010】
また、その本発明の空気噴射式織機における主軸の駆動制御方法は、前記検出が、供給源から織機に至る配管路中で行われるようにしても良い。その上で、本発明の空気噴射式織機における主軸の駆動制御方法は、前記供給源により複数の織機に対し圧縮空気を供給するために前記配管路が複数に分岐されている場合、前記配管路における最初の分岐位置よりも前記供給源側で前記検出が行われるようにしても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、織機の運転中に供給圧力の検出が行われると共に、その検出された供給圧力に基づく圧力検出値が圧力基準値を下回ったときに、その偏差に応じて設定回転数が変更される。なお、圧力検出値が圧力基準値を下回っており、偏差がマイナスであることから、その偏差に応じて変更される変更後の設定回転数は、変更前の設定回転数に対し低い回転数となる。その結果として、織機の運転速度が低くなり、1製織サイクル(クランク角度0°~360°)が時間的に長くなる。
【0012】
それにより、前記のように供給圧力の低下に伴って緯糸の飛走速度が低下した場合であっても、予め設定されたクランク角度で緯糸を反給糸側の所定の位置に到達させることができるようになる。したがって、本発明では、従来技術のように織機を停止させること無く、織機の運転を継続することができる。そして、その結果として、従来技術と比べ、織機の生産効率の低下を可及的に抑えると共に、製織される織布の品質を低下させることを防ぐことができる。
【0013】
また、供給圧力の検出を、供給源から織機に至る配管路中で行うことにより、前記検出を織機の内部で行う場合と比べ、圧力検出器に対するメンテナンス等や、既設の織機に対する本発明の適用が容易に行えるようになる。より詳しくは、本発明においては、その圧力検出器は、各織機に対しその織機の内部の配管中に設けられていても良い。但し、その場合には、その圧力検出器のメンテナンス等の作業を織機の内部で行わなければならず、その作業が煩雑なものとなる。また、本発明を既設の織機に適用する場合には、圧力検出器を追加するために、織機の内部における配管構造自体を変更する必要が生じる場合がある。
【0014】
それに対し、圧力検出器が供給源から織機に至る配管路中に設けられている場合は、圧力検出器のメンテナンス等の作業を織機の外部で行えるようになるため、織機の内部の配管に対しその作業を行う場合と比べ、その作業が容易に行えるようになる。また、本発明を既設の織機に適用する場合でも、圧力検出器を織機の外部に設けるようにすることで、その設置(追加)が比較的に容易に行えるようになる。
【0015】
また、供給源により複数の織機に対し圧縮空気を供給するために配管路が複数に分岐されている場合において、本発明を、その配管路における最初の分岐位置よりも供給源側の位置(上流側位置)で前記検出が行われるものとする、すなわち、前記上流側位置に圧力検出器が設けられる構成とすることにより、織機側により近い下流側の位置に圧力検出器を設ける場合と比べ、前記検出に用いる圧力検出器の数を減らすことができる。
【0016】
詳しくは、織布工場においては、多数台の織機に対する圧縮空気の供給が、1台の供給装置によって行われている。また、織機は、複数の列に分けられて並設されている。したがって、供給装置に繋がる配管は、織機に至る過程で複数に分岐されており、それによって織機に至る配管路が形成されている。その上で、圧力検出器を設ける位置について、織機により近い位置としても良いが、その場合には、必然的に圧力検出器の数が多くなる。それに対し、圧力検出器をその配管路中における前記上流側位置に設けることにより、圧力検出器の数が供給装置毎に1つとなるため、圧力検出器の数が少なくて済むこととなる。それにより、本発明を実施するための装置のコストを抑えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明が適用される空気噴射式織機の一例を示す説明図である。
【
図2】圧縮空気の圧力と設定回転数との関係を示すデータテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1、2に基づき、本発明による空気噴射式織機における主軸の駆動制御方法の一実施例を説明する。
【0019】
図1に示すように、空気噴射式織機(以下、単に「織機」と言う。)1は、緯糸Yが貯留される貯留ドラム14及び貯留ドラム14に対する緯糸Yの貯留及び解舒を制御する係止ピン15を含む測長貯留装置13、圧縮空気を噴射する緯入れのノズルであって、給糸側に設けられたメインノズル17及び緯入れ方向(織幅方向)に沿って並設された複数のサブノズル18を備える。
【0020】
また、織布工場には、織機1に対し圧縮空気を供給する供給装置41が設置されている。そして、その供給装置41と織機1とは、圧縮空気を供給するための外部配管45を介して接続されている。因みに、その供給装置41は、図示は省略するが、エアコンプレッサーやドライヤー等の関連機器から構成されている。また、織布工場においては、1台の供給装置41によって複数の織機1に対し圧縮空気を供給するようになっている。したがって、外部配管45は、織機1に至る過程において、複数に分岐されている。
【0021】
そして、外部配管45は、管継手57を介し、織機1の内部の内部配管51と接続されている。また、織機1内においては、その内部配管51は、メインノズル17に圧縮空気を供給するメイン側配管51aと、各サブノズル18に圧縮空気を供給するサブ側配管51bとに分岐されている。さらに、メイン側配管51aは、圧力調整弁47、エアタンク53、及び電磁開閉弁37を介してメインノズル17に接続されている。また、サブ側配管51bは、圧力調整弁49を介してエアタンク55に接続された上で、そのエアタンク55から各サブノズル18に向かうかたちで分岐し、電磁開閉弁39を介して各サブノズル18に接続されている。
【0022】
また、織機1は、織機制御装置21を備え、その織機制御装置21は、主軸31の駆動を制御する主軸制御器23、緯入れを制御する緯入制御器27、及び織機1の制御に関する各設定値を記憶する設定記憶器25を備えている。それらのうち、主軸制御装置23は、その入力端において主軸31の回転角度(クランク角度)を検出するエンコーダ35及び設定記憶器25に接続されると共に、その出力端において主軸31を回転駆動する主軸モータ33に接続されている。その上で、主軸制御器23は、設定記憶器25に設定されている設定回転数に基づいて主軸31の駆動を制御するように構成されている。
【0023】
また、緯入制御器27は、その入力端においてエンコーダ35に接続されると共に、その出力端において係止ピン15、電磁開閉弁37、及び各電磁開閉弁39に接続されている。その上で、緯入制御器27は、設定記憶器25に予め設定された解舒タイミング、メインノズル17の噴射タイミング、及び各サブノズルの噴射タイミングに基づいて係止ピン15、電磁開閉弁37、及び各電磁開閉弁39の駆動を制御するように構成されている。
【0024】
そして、そのような織機1においては、予め設定された緯入れ開始タイミングにおいて係止ピン15が後退するように駆動されると共に、電磁開閉弁37が開状態とされることでメインノズル17から圧縮空気の噴射が開始され、それによって経糸Tの開口へ向けた緯糸Yの緯入れ(緯糸Yの飛走)が開始される。そして、その緯糸Yの飛走過程において、予め設定されたタイミングで各電磁開閉弁39が順次開状態とされることで、各サブノズル18が順次圧縮空気を噴射し、緯糸Yの飛走が助勢される。そして、1回の緯入れ長さ分の緯糸Yが貯留ドラム14から解舒されて飛走しきった時点で、1回の緯入れが完了する。
【0025】
なお、緯入れが終了する時点付近で緯糸Yの先端が到達する反給糸側の位置にはフィーラ19が設けられており、織機1は、緯糸Yの先端がその位置に達したときのクランク角度(到達タイミング)を検出するようになっている。また、メインノズル17及び各サブノズル18に供給される圧縮空気の圧力は、緯入れ開始タイミング及び織機1の回転数等に基づき、前記した1回の緯入れが想定したクランク角度で終了するような、具体的には、前記到達タイミングが予め設定されたタイミング(目標到達タイミング)となるような大きさに設定されている。そして、その設定される圧力値は、予め求められた上で設定記憶器25に設定・記憶され、緯入制御器27は、その設定記憶器25に記憶された圧力値に従って圧力調整弁47及び圧力調整弁49を制御する。
【0026】
以上のような織機1において、本発明は、織機運転中に供給源から供給される圧縮空気の圧力の検出を行うと共に、検出された圧力に基づく圧力検出値と予め設定された圧力基準値とを比較し、その圧力検出値が圧力基準値を下回ったとき、圧力検出値と圧力基準値との偏差に応じて設定回転数を変更するように主軸の駆動を制御するものである。その上で、本実施例では、圧縮空気の圧力の検出が、圧縮空気の供給源から織機に至る配管路中において、その配管路における最初の分岐位置よりも供給源側の位置で行われるものとする。そのような主軸の駆動制御が行われる空気噴射式織機について、詳しくは、以下の通りである。
【0027】
前述のように、圧縮空気の供給源である供給装置41と各織機1とは外部配管45によって接続されている。そして、その外部配管45は、供給装置41から各織機1に至る配管路中で複数に分岐するものとなっている。その上で、その外部配管45の配管路における最初の分岐位置45aよりも供給装置41側の位置に、供給装置41が供給する圧縮空気の圧力を検出するための圧力検出器としての圧力センサ43が設けられている。また、その圧力センサ43は、その出力端において、各織機1におけるの織機制御装置21と接続されている。そして、その圧力センサ43は、検出した圧力に応じた信号(検出信号)を織機制御装置21に出力するようになっている。
【0028】
織機制御装置21において、主軸制御器23は、前述のように設定記憶器25に設定されている設定回転数に基づいて主軸31の駆動を制御するように構成されている。その上で、織機制御装置21は、前記検出信号に基づいて圧力検出値を求める圧力算定器26と、その圧力検出値と供給装置41が供給する圧縮空気の圧力の基準値である圧力基準値とを比較して偏差を求める比較器28と、その偏差に基づいて設定回転数を変更する回転数変更器29とを備えている。
【0029】
圧力算定器26は、その入力端において圧力センサ43と接続されると共に、その出力端において比較器28と接続されている。そして、圧力算定器26は、予め定められた周期(例えば、1sec毎)で、圧力センサ43が出力した前記検出信号から、その時点の圧力の検出値(圧力実測値)を求めるように構成されている。なお、本実施例では、その前記検出信号から求められた圧力実測値を、本発明における圧力検出値としてそのまま用いることとする。その上で、圧力算定器26は、その求められた圧力実測値(圧力検出値)に応じた信号(圧力信号)を比較器28に出力するように構成されている。
【0030】
比較器28は、設定記憶器25と接続されると共に、その出力端において回転数変更器29と接続されている。また、設定記憶器25には、前記した圧力基準値が予め設定されて記憶されている。なお、その圧力基準値は、織機1の回転数、緯入れ開始タイミングや目標到達タイミング等の緯入れ条件、緯入れされる緯糸の種類といった製織条件に基づいて予め求められる。その上で、比較器28は、圧力算定器26から前記圧力信号が出力される毎に、前記圧力信号が示す圧力検出値を設定記憶器25に記憶されている圧力基準値と比較して、その偏差を求めるように構成されている。さらに、比較器28は、その求められた前記偏差の大きさに応じた信号(偏差信号)を回転数変更器29に出力するように構成されている。なお、比較器28は、前記偏差が0の場合にも、前記偏差が0であることを示す前記偏差信号を出力するように構成されている。
【0031】
なお、前記偏差について、供給装置41は、予め想定した圧力(織機1に供給される圧縮空気の圧力が前記の圧力基準値と一致するような圧力)の圧縮空気を供給するが、織布工場における電力事情等の問題により、その圧力が変化してしまう場合がある。但し、その変化は、基本的には低下する方向であって、上昇することは無い。したがって、前記偏差も、基本的には0以下のマイナスの偏差となる。
【0032】
回転数変更器29は、設定記憶器25と接続されると共に、その出力端において前記した主軸制御器23と接続されている。そして、回転数変更器29は、比較器28から前記偏差信号が出力されると、その前記偏差信号に基づき、その前記偏差の大きさに応じた回転数を求めるように構成されている。なお、本実施例では、その新たな回転数は、前記偏差の大きさに対応させたかたちで複数の回転数を予め設定しておき、前記偏差信号が示す前記偏差に基づき、その設定された複数の回転数から選択して求められるものとする。
【0033】
また、その予め設定される回転数については、
図2に示すように、0に対しマイナス方向に5段階の前記偏差(-0.02、-0.04、-0.06、-0.08、-0.10)を設定した上で、その設定されている前記偏差(設定偏差)のそれぞれに対し対応付けるかたちで、初期の設定回転数である600rpmに対し20rpmずつ下げる回転数(580、560、540、520、500rpm)が設定されているものとする。因みに、図示の例では、織機1が設定回転数600rpmで運転される際の圧力基準値が0.52MPaに設定されており、圧力検出値が0.52MPaの場合には、前記偏差信号が示す前記偏差(実偏差)は0である。したがって、圧力検出値が0.48MPaであって前記実偏差が-0.04である場合には、新たな設定回転数として560rpmが選択される。
【0034】
なお、前記では求められた前記実偏差が前記設定偏差に一致する場合について述べたが、求められる前記実偏差が前記設定偏差と一致するとは限らず、前記実偏差の変化が生じた場合において、その求められた前記実偏差が前記設定偏差と異なる場合も十分に存在する。但し、その場合には、制御上において、その求められた前記実偏差の前後の前記設定偏差、及びその求められた前記実偏差の変化前の前記実偏差との関係に基づき、その回転数の選択が行われる。
【0035】
具体的には、その求められた前記実偏差が変化前の前記実偏差よりも大きい場合(偏差が大きくなる方向に前記実偏差が変化した場合)には、その前記実偏差に対し小さい側で最も近い前記設定偏差に対応付けられた回転数が選択される。一方で、その求められた前記実偏差が変化前の前記実偏差よりも小さい場合(偏差が小さくなる方向に前記実偏差が変化した場合)には、たとえその前記実偏差が上記場合と同じであっても、その前記実偏差に対し大きい側で最も近い位置前記設定偏差に対応付けられた回転数が選択される。
【0036】
例えば、求められた前記実偏差が-0.05である場合であって、その前記実偏差がそれよりも偏差として小さい前記実偏差(例えば、-0.04)から変化したものである場合には、選択される回転数は、それよりも小さい側で最も近い前記設定偏差である-0.04に対応付けられた回転数560rpmとなる。一方で、同じく前記実偏差が-0.05であっても、その前記実偏差が偏差として大きい前記実偏差(例えば、-0.06)から変化したものである場合には、選択される回転数は、それよりも大きい側で最も近い前記設定偏差である-0.06に対応付けられた回転数540rpmとなる。
【0037】
そして、回転数変更器29は、そのようにして回転数が選択されると、その選択された回転数を設定回転数として設定記憶器25に設定するように構成されている。その結果として、前記実偏差が変化した場合であってもそれまで設定記憶器25に記憶されている設定回転数と異なる設定回転数が選択された場合には、設定記憶器25においては、新たな設定回転数が記憶された状態となる。そして、主軸制御器23は、前述のように設定記憶器25に設定された設定回転数に基づいて主軸31の駆動を制御するように構成されていることから、主軸31の回転制御がその新たな設定回転数に基づいて行われることとなる。
【0038】
以上で説明した本実施例の構成について、その作用は以下の通りである。
【0039】
外部配管45の配管路に設けられた圧力センサ43は、常時、前記検出信号を各織機1における織機制御装置21に対し出力している。そして、織機制御装置21においては、圧力算定器26に対し前記検出信号が入力されることで、その圧力算定器26において前記検出信号から周期的に圧力検出値(圧力実測値)が求められる。その上で、圧力算定器26は、その圧力検出値を求める毎に、その圧力検出値に応じた前記圧力信号を比較器28に出力する。
【0040】
比較器28は、その前記圧力信号が入力されると、前記圧力信号が示す圧力検出値と前記のように設定記憶器25に記憶された圧力基準値とを比較し、その前記偏差を求める。そして、比較器28は、その求められた前記偏差の大きさに応じた前記偏差信号を回転数変更器29に出力する。そして、回転数変更器29は、前記偏差信号が入力されると、前記偏差信号が示す前記実偏差に基づき、その前記実偏差に対応する回転数を選択する。なお、その選択は、前述のようなかたちで行われる。
【0041】
したがって、織機1の運転中において、織機1に圧力基準値と一致する圧力の圧縮空気が供給されている状態から、電力事情等の問題に起因して供給装置41が供給する圧縮空気の圧力が低下して織機1に供給される圧縮空気の圧力が圧力基準値よりも低くなるような状態となった場合には、マイナスの前記実偏差が求められることとなるため、圧力基準値に対応する回転数(600rpm)とは異なる低い回転数が選択されることとなる。なお、前記のような圧力の低下が発生せず、求められる前記実偏差が0である場合には、選択される回転数は、圧力基準値に対応する回転数(600rpm)となる。
【0042】
そして、回転数変更器29は、その選択した回転数を設定回転数として設定記憶器25に設定する。したがって、前記のように圧力の低下が発生した場合には、設定記憶器25には、新たな設定回転数が記憶された状態となる。また、その圧力低下が生じていない状態では、設定記憶器25に記憶されている設定回転数は、圧力基準値に対応する回転数(600rpm)のままで維持される。さらに、その圧力が低下している状態において、さらに圧力が変化した場合(この場合は、圧力が上昇する場合も含む)には、設定記憶器25に記憶されている設定回転数が再び変更されることとなる。そして、その圧力が低下した状態から再び前記実偏差が0となる状態となった場合には、設定記憶器25に記憶される設定回転数は、圧力基準値に対応する回転数(600rpm)に戻ることとなる。
【0043】
そして、そのように設定回転数が選択される結果として、その設定回転数に従って主軸制御器23が主軸31の駆動を制御する織機1においては、その前記実偏差に基づいて求められた設定回転数に従った運転速度(回転数)でその織機1が運転されることとなる。したがって、前記のように圧力低下が発生してマイナスの前記実偏差が発生した場合には、圧力基準値に対応する回転数(600rpm)よりも低い回転数で織機1が運転された状態となる。それにより、織機1においては、前記のような圧力低下に伴って緯糸Yの飛走速度も低下するが、その低下した飛走速度に応じた低い運転速度(回転数)で織機1が運転されることとなる。
【0044】
このように、本実施例の構成によれば、前記のような織布工場における電力事情等の問題に起因して供給装置41が供給する圧縮空気の圧力が圧力基準値よりも低下するといった状況が発生した場合であっても、それに応じて織機1の運転速度(回転数)が変更されるため、その圧力低下によって緯糸Yの飛走速度が低下するが、クランク角度に関しては、設定された目標到達タイミングに対する実際の到達タイミングの変化が可及的に抑えられることとなる。したがって、その構成によれば、従来技術のように織機を停止させること無く、織機1の運転を継続することができる。
【0045】
しかも、本実施例では、前記のように圧力センサ43が外部配管45の配管路に設けられているため、圧力センサを各織機1の内部に設ける場合と比べ、圧力センサ43のメンテナンス作業を比較的に容易に行うことができる。さらに、その圧力センサ43が、その配管路中における最初の分岐位置45aよりも供給装置41側の位置に設けられているため、その分岐位置45aよりも各織機1側の位置や各織機1に圧力センサを設ける場合と比べ、圧縮空気の圧力の検出に用いる圧力センサの数を減らすことができ、その結果として、本発明を実施するための装置のコストを抑えることができるようになる。
【0046】
なお、本発明については、以上で説明した実施例(前記実施例)に限定されるものではなく、以下の(1)~(5)のような変形した実施形態でも実施が可能である。
【0047】
(1)偏差に応じて設定回転数を変更するにあたっての偏差に基づく回転数の求め方について、前記実施例では、予め定められた圧力基準値(0.52MPa)に対しマイナス方向に所定量(0.02)ずつ変化させるかたちで5段階に偏差(設定偏差)を設定した上で、求められた実偏差に基づき、その各設定偏差に対し設定された回転数の中から実偏差に応じた回転数を選択することで、新たな回転数が求められている。なお、その設定偏差に対応させて設定されている回転数については、初期の設定回転数(前記実施例では600rpm)や製織条件等を含むその織機の運転条件を踏まえ、設定偏差に相当する実偏差が発生した場合でも、実際の到達タイミングが目標到達タイミングとなるような回転数として設定されている。すなわち、その回転数は、設定される設定偏差に応じて(基礎として)決定されるものとして設定されている。その上で、その基礎となる設定偏差の設定の仕方は、前記実施例のようなかたちには限られない。
【0048】
具体的には、前記実施例では、設定偏差は、0.02ずつ変化させるかたちで設定されているが、その変化させる大きさは任意であり、その織機の運転条件等を踏まえ、例えば、偏差を0.01ずつ変化させる、あるいは0.03以上ずつ変化させるといったかたちで設定されていても良い。その場合でも、その各設定偏差に対応させて決定される回転数は、その各設定偏差に応じて設定された回転数となる。
【0049】
また、前記実施例では、設定偏差は、前述のようなかたちで5段階に設定されているが、その設定される設定偏差の数についても、それに限られるものではない。詳しくは、本発明は、織機に供給される圧縮空気の圧力(供給圧力)の低下に伴って実偏差が大きくなることに応じて回転数を変更するものである。但し、織機の製織においては、その供給圧力の低下にどこまでも対応できる訳では無く、供給圧力が低くなりすぎると正常に緯糸が飛走しなくなる可能性がある。そのため、前記運転条件に応じて、許容できる圧力の低下、すなわち、許容できる偏差の大きさ(許容偏差)が存在することとなる。そこで、その製織における前記運転条件を踏まえ、前記許容偏差を求めた上で、前述のようにどういったかたちで設定偏差を変化させるかを決めることで、その設定偏差がどういった段階で設定されるかが決定される。
【0050】
具体的には、前記運転条件等を踏まえて求められた前記許容偏差が前記実施例と同じく0.10である場合において、例えば、前記のように設定偏差を0.01ずつ変化させるかたちで設定する場合には、その設定される設定偏差の数は10となる。また、例えば、求められた前記許容偏差が0.06であって、設定偏差を前記実施例と同様に0.02ずつ変化させるかたちで設定する場合には、その設定偏差の数は3となる。
【0051】
(2)偏差に応じて設定回転数を変更するにあたっての偏差に基づく回転数の求め方については、前記実施例では、前記のように各設定偏差に対し設定された回転数の中から実偏差に応じた回転数を選択することにより、その偏差に基づく回転数を求めている。しかし、本発明では、その実偏差に応じて回転数を求める際のその求め方は、そのように選択によって求めるのに限られず、演算によって求めるようなものであっても良い。
【0052】
より詳しくは、前述のように、それぞれの前記運転条件において、供給圧力の低下(実偏差)に対しどの程度回転数を下げれば適切な製織が行えるかは予め求めることができる。すなわち、前記運転条件に対する実偏差と回転数との関係を予め求めることができる。そこで、例えば、想定される前記運転条件毎に複数の実偏差に対応する回転数を求め、その複数の実偏差と回転数との関係から、前記運転条件毎の演算式を求めて設定しておく。その上で、実際の製織においては、その製織の前記運転条件に応じた演算式を用い、実偏差から回転数を求めるようにしても良い。
【0053】
(3)設定回転数を変更するための構成要素の配置に関し、前記実施例では、圧力検出値を求めるための圧力算定器26、実偏差を求める比較器28、及び実偏差に対応する回転数を求めて設定記憶器25に設定する回転数変更器29が、各織機1に設けられている。しかし、本発明は、それらの構成要素の全てが織機に設けられるものに限らず、それらの構成要素が織布工場におけるホストコンピュータに設けられていても良い。
【0054】
より詳しくは、織布工場によっては、設置されている各織機がホストコンピュータに接続されている場合がある。その場合において、圧力検出器がホストコンピュータに対し圧力信号(圧力検出値)を出力するように構成した上で、それらの構成要素のうち、比較器28に相当する構成要素、又はその構成要素と回転数変更器29に相当する構成要素とをホストコンピュータが備えるようにしても良い。
【0055】
なお、その場合において、前記のように実偏差に対応する回転数は前記運転条件に応じたものとなることから、ホストコンピュータに対し、接続されている織機において想定される運転条件に対応させるかたちで、実偏差から回転数を選択又は演算によって求めるための条件プログラムを予め複数設定しておけば良い。そして、ホストコンピュータにおいては、圧力信号が入力されると、接続されている織機毎に、その織機の運転条件に応じた条件プログラムが実行されることにより、各織機の回転数が求められることとなる。
【0056】
(4)圧力検出器が設けられる位置について、前記実施例では、圧力検出器としての圧力センサ43は、供給装置41から各織機1に至る外部配管45の配管路における最初の分岐位置45aよりも供給装置41側の位置に設けられている。しかし、本発明では、その圧力検出器が設けられる位置は、そのような位置に限られない。例えば、圧力検出器が設けられる位置は、外部配管45の配管路中の、最初の分岐位置45aよりも織機1側(下流側)、すなわち、最初の分岐位置45aよりも下流側の分岐路であっても良い。但し、その場合には、圧力検出器は、その下流側の織機1に共通の分岐路毎に設けられることとなる。また、圧力検出器が設けられる位置は、以上のような外部配管の配管路中に限らず、織機の内部であっても良い。
【0057】
なお、圧力検出器が外部配管の配管路中であって最初の分岐位置45aよりも下流側の分岐路に設けられる場合、すなわち、圧力検出器が外部配管の配管路中に複数設けられている場合、各圧力検出器は、自身が設けられているよりも下流側の織機1に接続されることとなる。
【0058】
(5)圧力検出値について、前記実施例では、圧力センサ43が出力した前記検出信号から求められた圧力実測値、すなわち、検出された圧力そのものの値を圧力検出値として用いている。しかし、本発明における圧力検出値は、そのような圧力実測値に限らず、例えば、予め定められた所定の期間中に求められる複数の圧力実測値の平均値であっても良
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 織機 13 測長貯留装置
14 貯留ドラム 15 係止ピン
17 メインノズル 18 サブノズル
19 フィーラ
21 織機制御装置 23 主軸制御器
25 設定記憶器 26 圧力算定器
27 緯入制御器 28 比較器
29 回転数変更器 31 主軸
33 主軸モータ 35 エンコーダ
37、39 電磁開閉弁 41 供給装置
43 圧力センサ 45 外部配管
45a 分岐位置 47、49 圧力調整弁
51 内部配管 51a メイン側配管
51b サブ側配管 53、55 エアタンク
57 管継手
Y 緯糸 T 経糸