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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146977
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】壁面用目地装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20241008BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059715
(22)【出願日】2023-04-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000110365
【氏名又は名称】ドーエイ外装有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英夫
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DH31
2E001FA03
2E001FA71
2E001GA12
2E001PA04
2E001PA07
2E001PA12
(57)【要約】
【課題】 目地プレートや躯体を破損することなく地震による揺れ動きを吸収することができる壁面用目地装置を提供すること。
【解決手段】一方の躯体に設けられたガイド部材と、このガイド部材に前後方向に摺動可能に取り付けられる被ガイド部と、一端部側に前記被ガイド部の外端部が接続し、一方、他端部側の背面が他方の躯体の表面側の壁面に略当接するように設けられた目地プレートと、該目地プレートを常時背面側へ付勢する付勢手段とで構成され、前記目地プレートの幅寸法は、地震時における前記躯体間の離間の幅寸法を考慮して所要の長さに形成され、地震時、両躯体間の目地部が広くなった場合であっても、該目地プレートの他端部側の背面は、前記他方の躯体の表面側の壁面に略当接する壁面用目地装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の躯体に設けられたガイド部材と、このガイド部材に前後方向に摺動可能に取り付けられる被ガイド部と、一端部側に前記被ガイド部の外端部が接続し、一方、他端部側の背面が他方の躯体の表面側の壁面に略当接するように設けられた目地プレートと、該目地プレートを常時背面側へ付勢する付勢手段とで構成され、前記目地プレートの幅寸法は、地震時における前記躯体間の離間の幅寸法を考慮して所要の長さに形成され、地震時、両躯体間の目地部が広くなった場合であっても、該目地プレートの他端部側の背面は、前記他方の躯体の表面側の壁面に略当接する壁面用目地装置。
【請求項2】
前記目地プレートの他端部側の背面には、シール部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の壁面用目地装置。
【請求項3】
前記目地プレートの一端部側には、前記目地プレートと略直交するように設けられ、地震時に前記目地プレートの一端部側と前記一方の躯体の間の隙間を塞ぐカバープレートが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の壁面用目地装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目地部を介して設けられた左右の躯体の壁面間の目地部を塞ぐ壁面用目地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方の躯体と他方の躯体間の壁面部分の目地部を1枚の目地プレートで塞ぎ、かつ、左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた場合でも、その揺れ動きを吸収することができる壁面用目地装置としては、「目地部を介して設けられた左右の建物の一方の目地部側の外側あるいは内側部位の躯体に、先端部が水平方向に回動できるようにヒンジ部材を介して後端部が取付けられた内側パネルと、この内側パネルの外側面に左右方向へスライド移動可能に取付けられた先端部の内側面が傾斜面の外側パネルと、この外側パネルの先端部と対応する部位の、前記左右の建物の他方の目地部側の外側あるいは内側部位の躯体に取付けられた、該外側パネルの傾斜面と当接する傾斜面を有する案内パネルと、前記外側パネルの先端部を常時前記案内パネルに当接するように付勢するスプリングを備える付勢装置とからなることを特徴とする壁面用目地装置」が知られている(特許文献1)。
【0003】
このような壁面用目地装置は、地震による揺れ動きも吸収できるものであるが、地震時に目地プレートの先端部が前方へ斜めに飛び出してしまうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-265821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、目地プレートや躯体を破損することなく、かつ、躯体間の目地部が広くなった場合であっても、目地部が開口することなく地震による揺れ動きを吸収することができる壁面用目地装置を提供することを目的としている。
【0006】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の壁面用目地装置は、一方の躯体に設けられたガイド部材と、このガイド部材に前後方向に摺動可能に取り付けられる被ガイド部と、一端部側に前記被ガイド部の外端部が接続し、一方、他端部側の背面が他方の躯体の表面側の壁面に略当接するように設けられた目地プレートと、該目地プレートを常時背面側へ付勢する付勢手段とで構成され、前記目地プレートの幅寸法は、地震時における前記躯体間の離間の幅寸法を考慮して所要の長さに形成され、地震時、両躯体間の目地部が広くなった場合であっても、該目地プレートの他端部側の背面は、前記他方の躯体の表面側の壁面に略当接することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の壁面用目地装置の前記目地プレートの他端部側の背面には、シール部材が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の壁面用目地装置の前記目地プレートの一端部側には、前記目地プレートと略直交するように設けられ、地震時に前記目地プレートの一端部側と前記一方の躯体の間の隙間を塞ぐカバープレートが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の壁面用目地装置。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、地震により、例えば左右の躯体間の目地部が広くなった場合であっても、目地プレートの幅寸法は、地震時における前記躯体間の離間の幅寸法を考慮して所要の長さに形成されていることから、目地プレートの他端部側の背面は、他方の躯体の表面側の壁面に略当接する。したがって、地震時に目地プレートや躯体を破損することなく、かつ、目地部が開口することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
(2)ガイド部材に前後方向に摺動可能に目地プレートを設けているため、左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた場合には、目地プレートが前方側へ略平行移動するため目地プレートの先端部が前方へ斜めに飛び出すことを防止することができる。
(3)請求項2に記載の発明においても前記(1)~(2)と同様な効果を得られるとともに、防水性能を向上させることができる。
(4)請求項3に記載の発明においても前記(1)~(3)と同様な効果を得られるとともに、カバープレートにより目地部の開口を防止でき、より安全に地震による揺れ動きを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1乃至図8は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図9乃至図12は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図1】第1の実施形態の壁面用目地装置の正面図。
図2図1の2-2線に沿う断面図。
図3】ガイド部材の取付状態の説明図。
図4】目地プレートの説明図。
図5】地震で目地部が狭くなった状態の動作説明図。
図6】地震で目地部が広くなった状態の動作説明図。
図7】地震で左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた状態の動作説明図(1)。
図8】地震で左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた状態の動作説明図(2)。
図9】第2の実施形態の壁面用目地装置の正面図。
図10図9の10-10線に沿う断面図。
図11】目地プレートの説明図。
図12】地震で左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた状態の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書では図1を基準として左右方向、上(図面上方)下(図面下方)方向という。図2を基準として前(図面下方)後(図面上方)方向という。
【0013】
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
【0014】
図1乃至図8に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は一方の躯体3と他方の躯体4間の目地部2を塞ぐ壁面用目地装置である。この壁面用目地装置1の目地プレート7の幅寸法は、地震時における前記躯体3、4間の離間の幅寸法を考慮して所要の長さに形成されている。
【0015】
すなわち、壁面用目地装置1は、一方の躯体3に設けられた単数又は複数のガイド部材5と、一端部側に前記ガイド部材に前後方向に摺動可能に取り付けられる複数の被ガイド部6を有し、他端部7b側の背面が他方の躯体4の表面側の壁面4bに略当接するように設けられた目地プレート7と、該目地プレートを常時背面側へ付勢する単数又は複数の付勢手段8とで構成され、前記目地プレート7の幅寸法は、地震時における前記躯体間3、4の離間の幅寸法を考慮して所要の長さに形成され、地震時、両躯体間3、4の目地部2が広くなった場合であっても、該目地プレート7の他端部7b側の背面は、前記他方の躯体4の表面側の壁面4bに略当接する。
【0016】
付言すると、実施形態の壁面用目地装置1は、例えば図1及び図2で示すように、一方の躯体3と他方の躯体4の間の目地部を塞ぐ壁面用目地装置であって、一方の躯体3の目地部2側の壁面3aに上下方向に略所定間隔を有して設けられた複数個の筒状のガイド部材5(図3参照)と、ガイド部材5に摺動自在に嵌挿された複数の棒状の被ガイド部6と、一端部7a側が前記棒状の被ガイド部6の外端部が接続し、他端部7b側の背面が前記他方の躯体の表面側の壁面4bに略当接する一枚の目地プレート7と、前記目地プレート7を常時背面側へ付勢する複数の付勢手段8とで構成されている。ここで「略当接する」とは、接触している状態だけでなく、わずかな間隙を有して接近している状態も含むものである。
【0017】
一方の躯体3には、目地部2側の壁面3aに複数個の筒状のガイド部材5が上下方向に所定間隔を有して固定されている。
【0018】
このガイド部材5は、図2図3図4図8等で示すように、長板状の取付け基板部5aと、この基板部5aの外面に水平方向に一連に設けられたパイプ状のガイド部5bとから構成されている。そして、前記ガイド部5bの略円形のガイド孔9に摺動自在に嵌挿された棒状の被ガイド部6の外端部が目地プレート7の一端部7aの背面に接続している。なお、棒状の被ガイド部6をガイド部材5の構成要素に含めても、或いは目地プレート7の構成要素に含めても、作用効果は実質的には同一である。
【0019】
目地プレート7は、実施形態では、例えば図4で示すように、正面視において略長方形状の板状部材で、一端部7a側の背面に前記ガイド部材5のパイプ状のガイド部5bに挿入される棒状の被ガイド部6を複数個有している。
【0020】
この被ガイド部6はガイド部材5のガイド孔9の内径よりもやや小さい略円柱状に形成されており、被ガイド部6をガイド部材5に挿入して一方の躯体3に取り付けた場合に、他端部7b側の背面が他方の躯体4の前方側の壁面4b(表面)に略当接するように形成されている。
【0021】
なお、この取付状態において本実施形態では、一端部7a側の背面が一方の躯体3の前方側(表面側)の壁面3bに略当接するように形成されているが、一端部7a側の背面がガイド部材5に当接するように構成してもよい。
【0022】
ところで、目地プレート7の左右方向の寸法としては、地震時に目地部2が開口しないように、目地部2が広くなった場合でも他端部7b側の背面が他方の躯体4の前方側の壁面4bに略当接するような所要の幅寸法に形成されている。
【0023】
この目地プレート7と左右の躯体3、4の前方側の壁面3b、4bとの略当接部位にはゴム板等のシール部材10を設けることが望ましく、さらに目地プレート7の背面側には防水シート11を設けることが望ましい。このようなシール部材10及び防水シート11を設けることにより、防水性能を向上させることができる。
【0024】
ところで、この目地プレート7を屋上用目地カバー装置等が設置されている部位の下方の壁面に取り付ける場合等には、必要に応じて上端部側の寸法を上方に延在させ、屋上用目地カバー前方側又は/及び後方側の側面に固定し、屋上用目地カバーの側壁として用いてもよい。
【0025】
目地プレート7の背面には、目地プレート7をその背面側へ付勢する付勢手段8が設けられている。
【0026】
この付勢手段8は、本実施形態では、一端部が他方の躯体4の目地部側の壁面4aに固定され、他端部がワイヤー12を介して目地プレート7の背面に固定されたスプリング13とで構成されている。なお、ワイヤー12の一端部を一方の躯体3の壁面3aに固定してもよい。
【0027】
この付勢手段8により目地プレート7は常時背面側へ付勢されており、通常時において左右の躯体3、4の前方側の壁面3b、4bと目地プレート7の背面が略当接する。
【0028】
なお、付勢手段8としては、その他の公知の付勢手段8を用いることができ、例えば他端部におもりを固定したワイヤー12を滑車を介して目地プレート7の背面に固定してもよい。
【0029】
ところで、本実施形態では、防水シート11を設けているが、ワイヤー12が防水シート11を貫通するように設ける場合には、ワイヤー12が通過する部位には防水性能が低下しないようなスリット等(図示せず)を設けることが望ましい。
【0030】
地震で目地部2が狭くなるように左右の躯体3、4が揺れ動くと、図5に示すように、目地プレート7の他端部7bと他方の躯体4の前方側の壁面4bとの重なり幅が大きくなるように摺動して揺れ動きを吸収する。
【0031】
地震で目地部2が広くなるように左右の躯体3、4が揺れ動くと、図6に示すように、目地プレート7の他端部7bと他方の躯体4の前方側の壁面4bとの重なり幅が小さくなるように摺動して揺れ動きを吸収する。
【0032】
地震で左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動き、一方の躯体3が前方側へ位置変位した場合には、図7に示すように、目地プレート7は一方の躯体3と同調して前方側へ移動し地震による揺れ動きを吸収する。
【0033】
地震で左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動き、他方の躯体4が前方側へ位置変位した場合には、図8に示すように、目地プレート7は他端部7b側が他方の躯体4の壁面4bに押圧され、他方の躯体4と同調して前方側へ移動し地震による揺れ動きを吸収する。
【0034】
地震による揺れ動きが終了すると、目地プレート7は付勢手段8の付勢力により後方側へ位置変位し、通常状態に復帰する。
【0035】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図9乃至図12に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0036】
図9乃至図12に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、一端部7a側にカバープレート14を備える目地プレート7Aにした点で、このような壁面用目地装置1Aにしても前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られるとともに、地震によって左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動き、一方の躯体3と目地プレート7Aの一端部の間に隙間が生じた場合であっても、その隙間をカバープレート14によって塞ぐことができる。
【0037】
このカバープレート14は、図11に示すように、目地プレート7Aの一端部と被ガイド部6の間に固定的に設けられた略長方形状の板材で、上下方向の寸法は目地プレート7Aの上下方向の寸法と略同一となるように形成されている。
【0038】
また、このカバープレート14の前後方向の寸法は地震による前後方向の揺れ動き幅よりも大きくなるように形成されている。防水シート11は一方の躯体3の壁面3aではなく、このカバープレート14に固定してもよい。
【0039】
本実施形態では、ガイド部材5をカバープレート14に干渉しない程度に後方側に設けるとともに、被ガイド部6をガイド部材5に挿入可能な長さとなるよう長尺に形成している。
【0040】
地震で左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動き、他方の躯体4が前方側へ位置変位した場合には、図8に示すように、目地プレート7Aは他端部7b側が他方の躯体4の壁面4bに押圧され、他方の躯体4と同調して前方側へ移動する。この時、カバープレート14は目地プレート7Aの一端部7aと一方の躯体3の間の隙間を塞ぎ、目地部2が開口することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
【0041】
なお、本発明の実施の形態においては、筒状のガイド部材と棒状の被ガイド部を用いて目地プレートを取り付けたが、例えばチャンネル型でレール状のガイド部にガイド部と前後方向に摺動可能に係合する形状の被ガイド部を係合させて目地プレートを一方の躯体に取り付けてもよいし、棒状のガイド部材を用い、このガイド部材が挿入される筒状の被ガイド部を目地プレートに固定して目地プレートを一方の躯体に取り付けてもよい。
【0042】
また、この目地プレートの表面に、左右の躯体の前方側の壁面と統一性がある質感や模様等を表現した化粧板が設けられていてもよい。化粧板を設ける場合には、浅皿状に形成された目地プレート本体と、この目地プレート本体に充填されたモルタルやコンクリート等の充填部材と、目地プレート本体の表面を覆う化粧板とで目地プレートを構成するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は壁面用目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0044】
1、1A:壁面用目地装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5:ガイド部材、 6:被ガイド部、
7、7A:目地プレート、 8:付勢手段、
9:ガイド孔、 10:シール部材、
11:防水シート、 12:ワイヤー、
13:スプリング、 14:カバープレート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2024-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の躯体に設けられたガイド部材と、このガイド部材に前後方向に摺動可能に取り付けられる被ガイド部と、一端部側に前記被ガイド部の外端部が接続し、一方、他端部側の背面が他方の躯体の表面側の壁面に略当接するように設けられた目地プレートと、該目地プレートを常時背面側へ付勢する付勢手段とで構成され、前記目地プレートの幅寸法は、地震時における前記躯体間の離間の幅寸法を考慮して所要の長さに形成され、地震時、両躯体間の目地部が広くなった場合であっても、該目地プレートの他端部側の背面は、前記他方の躯体の表面側の壁面に略当接し、
前記目地プレートの一端部側には、前記目地プレートと略直交するように設けられ、地震時に前記目地プレートの一端部側と前記一方の躯体の間の隙間を塞ぐカバープレートが設けられている壁面用目地装置。
【請求項2】
前記目地プレートの他端部側の背面には、シール部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の壁面用目地装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目地部を介して設けられた左右の躯体の壁面間の目地部を塞ぐ壁面用目地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方の躯体と他方の躯体間の壁面部分の目地部を1枚の目地プレートで塞ぎ、かつ、左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた場合でも、その揺れ動きを吸収することができる壁面用目地装置としては、「目地部を介して設けられた左右の建物の一方の目地部側の外側あるいは内側部位の躯体に、先端部が水平方向に回動できるようにヒンジ部材を介して後端部が取付けられた内側パネルと、この内側パネルの外側面に左右方向へスライド移動可能に取付けられた先端部の内側面が傾斜面の外側パネルと、この外側パネルの先端部と対応する部位の、前記左右の建物の他方の目地部側の外側あるいは内側部位の躯体に取付けられた、該外側パネルの傾斜面と当接する傾斜面を有する案内パネルと、前記外側パネルの先端部を常時前記案内パネルに当接するように付勢するスプリングを備える付勢装置とからなることを特徴とする壁面用目地装置」が知られている(特許文献1)。
【0003】
このような壁面用目地装置は、地震による揺れ動きも吸収できるものであるが、地震時に目地プレートの先端部が前方へ斜めに飛び出してしまうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-265821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、目地プレートや躯体を破損することなく、かつ、躯体間の目地部が広くなった場合であっても、目地部が開口することなく地震による揺れ動きを吸収することができる壁面用目地装置を提供することを目的としている。
【0006】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の壁面用目地装置は、一方の躯体に設けられたガイド部材と、このガイド部材に前後方向に摺動可能に取り付けられる被ガイド部と、一端部側に前記被ガイド部の外端部が接続し、一方、他端部側の背面が他方の躯体の表面側の壁面に略当接するように設けられた目地プレートと、該目地プレートを常時背面側へ付勢する付勢手段とで構成され、前記目地プレートの幅寸法は、地震時における前記躯体間の離間の幅寸法を考慮して所要の長さに形成され、地震時、両躯体間の目地部が広くなった場合であっても、該目地プレートの他端部側の背面は、前記他方の躯体の表面側の壁面に略当接し、前記目地プレートの一端部側には、前記目地プレートと略直交するように設けられ、地震時に前記目地プレートの一端部側と前記一方の躯体の間の隙間を塞ぐカバープレートが設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の壁面用目地装置の前記目地プレートの他端部側の背面には、シール部材が設けられていることを特徴とする。
【0009】
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、地震により、例えば左右の躯体間の目地部が広くなった場合であっても、目地プレートの幅寸法は、地震時における前記躯体間の離間の幅寸法を考慮して所要の長さに形成されていることから、目地プレートの他端部側の背面は、他方の躯体の表面側の壁面に略当接する。したがって、地震時に目地プレートや躯体を破損することなく、かつ、目地部が開口することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
(2)ガイド部材に前後方向に摺動可能に目地プレートを設けているため、左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた場合には、目地プレートが前方側へ略平行移動するため目地プレートの先端部が前方へ斜めに飛び出すことを防止することができる。
(3)カバープレートにより目地部の開口を防止でき、より安全に地震による揺れ動きを吸収することができる。
(4)請求項2に記載の発明においても前記(1)~(2)と同様な効果を得られるとともに、防水性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1乃至図8は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図9乃至図12は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図1】第1の実施形態の壁面用目地装置の正面図。
図2図1の2-2線に沿う断面図。
図3】ガイド部材の取付状態の説明図。
図4】目地プレートの説明図。
図5】地震で目地部が狭くなった状態の動作説明図。
図6】地震で目地部が広くなった状態の動作説明図。
図7】地震で左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた状態の動作説明図(1)。
図8】地震で左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた状態の動作説明図(2)。
図9】第2の実施形態の壁面用目地装置の正面図。
図10図9の10-10線に沿う断面図。
図11】目地プレートの説明図。
図12】地震で左右の躯体が異なる前後方向に揺れ動いた状態の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書では図1を基準として左右方向、上(図面上方)下(図面下方)方向という。図2を基準として前(図面下方)後(図面上方)方向という。
【0013】
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
【0014】
図1乃至図8に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は一方の躯体3と他方の躯体4間の目地部2を塞ぐ壁面用目地装置である。この壁面用目地装置1の目地プレート7の幅寸法は、地震時における前記躯体3、4間の離間の幅寸法を考慮して所要の長さに形成されている。
【0015】
すなわち、壁面用目地装置1は、一方の躯体3に設けられた単数又は複数のガイド部材5と、一端部側に前記ガイド部材に前後方向に摺動可能に取り付けられる複数の被ガイド部6を有し、他端部7b側の背面が他方の躯体4の表面側の壁面4bに略当接するように設けられた目地プレート7と、該目地プレートを常時背面側へ付勢する単数又は複数の付勢手段8とで構成され、前記目地プレート7の幅寸法は、地震時における前記躯体間3、4の離間の幅寸法を考慮して所要の長さに形成され、地震時、両躯体間3、4の目地部2が広くなった場合であっても、該目地プレート7の他端部7b側の背面は、前記他方の躯体4の表面側の壁面4bに略当接する。
【0016】
付言すると、実施形態の壁面用目地装置1は、例えば図1及び図2で示すように、一方の躯体3と他方の躯体4の間の目地部を塞ぐ壁面用目地装置であって、一方の躯体3の目地部2側の壁面3aに上下方向に略所定間隔を有して設けられた複数個の筒状のガイド部材5(図3参照)と、ガイド部材5に摺動自在に嵌挿された複数の棒状の被ガイド部6と、一端部7a側が前記棒状の被ガイド部6の外端部が接続し、他端部7b側の背面が前記他方の躯体の表面側の壁面4bに略当接する一枚の目地プレート7と、前記目地プレート7を常時背面側へ付勢する複数の付勢手段8とで構成されている。ここで「略当接する」とは、接触している状態だけでなく、わずかな間隙を有して接近している状態も含むものである。
【0017】
一方の躯体3には、目地部2側の壁面3aに複数個の筒状のガイド部材5が上下方向に所定間隔を有して固定されている。
【0018】
このガイド部材5は、図2図3図4図8等で示すように、長板状の取付け基板部5aと、この基板部5aの外面に水平方向に一連に設けられたパイプ状のガイド部5bとから構成されている。そして、前記ガイド部5bの略円形のガイド孔9に摺動自在に嵌挿された棒状の被ガイド部6の外端部が目地プレート7の一端部7aの背面に接続している。なお、棒状の被ガイド部6をガイド部材5の構成要素に含めても、或いは目地プレート7の構成要素に含めても、作用効果は実質的には同一である。
【0019】
目地プレート7は、実施形態では、例えば図4で示すように、正面視において略長方形状の板状部材で、一端部7a側の背面に前記ガイド部材5のパイプ状のガイド部5bに挿入される棒状の被ガイド部6を複数個有している。
【0020】
この被ガイド部6はガイド部材5のガイド孔9の内径よりもやや小さい略円柱状に形成されており、被ガイド部6をガイド部材5に挿入して一方の躯体3に取り付けた場合に、他端部7b側の背面が他方の躯体4の前方側の壁面4b(表面)に略当接するように形成されている。
【0021】
なお、この取付状態において本実施形態では、一端部7a側の背面が一方の躯体3の前方側(表面側)の壁面3bに略当接するように形成されているが、一端部7a側の背面がガイド部材5に当接するように構成してもよい。
【0022】
ところで、目地プレート7の左右方向の寸法としては、地震時に目地部2が開口しないように、目地部2が広くなった場合でも他端部7b側の背面が他方の躯体4の前方側の壁面4bに略当接するような所要の幅寸法に形成されている。
【0023】
この目地プレート7と左右の躯体3、4の前方側の壁面3b、4bとの略当接部位にはゴム板等のシール部材10を設けることが望ましく、さらに目地プレート7の背面側には防水シート11を設けることが望ましい。このようなシール部材10及び防水シート11を設けることにより、防水性能を向上させることができる。
【0024】
ところで、この目地プレート7を屋上用目地カバー装置等が設置されている部位の下方の壁面に取り付ける場合等には、必要に応じて上端部側の寸法を上方に延在させ、屋上用目地カバー前方側又は/及び後方側の側面に固定し、屋上用目地カバーの側壁として用いてもよい。
【0025】
目地プレート7の背面には、目地プレート7をその背面側へ付勢する付勢手段8が設けられている。
【0026】
この付勢手段8は、本実施形態では、一端部が他方の躯体4の目地部側の壁面4aに固定され、他端部がワイヤー12を介して目地プレート7の背面に固定されたスプリング13とで構成されている。なお、ワイヤー12の一端部を一方の躯体3の壁面3aに固定してもよい。
【0027】
この付勢手段8により目地プレート7は常時背面側へ付勢されており、通常時において左右の躯体3、4の前方側の壁面3b、4bと目地プレート7の背面が略当接する。
【0028】
なお、付勢手段8としては、その他の公知の付勢手段8を用いることができ、例えば他端部におもりを固定したワイヤー12を滑車を介して目地プレート7の背面に固定してもよい。
【0029】
ところで、本実施形態では、防水シート11を設けているが、ワイヤー12が防水シート11を貫通するように設ける場合には、ワイヤー12が通過する部位には防水性能が低下しないようなスリット等(図示せず)を設けることが望ましい。
【0030】
地震で目地部2が狭くなるように左右の躯体3、4が揺れ動くと、図5に示すように、目地プレート7の他端部7bと他方の躯体4の前方側の壁面4bとの重なり幅が大きくなるように摺動して揺れ動きを吸収する。
【0031】
地震で目地部2が広くなるように左右の躯体3、4が揺れ動くと、図6に示すように、目地プレート7の他端部7bと他方の躯体4の前方側の壁面4bとの重なり幅が小さくなるように摺動して揺れ動きを吸収する。
【0032】
地震で左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動き、一方の躯体3が前方側へ位置変位した場合には、図7に示すように、目地プレート7は一方の躯体3と同調して前方側へ移動し地震による揺れ動きを吸収する。
【0033】
地震で左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動き、他方の躯体4が前方側へ位置変位した場合には、図8に示すように、目地プレート7は他端部7b側が他方の躯体4の壁面4bに押圧され、他方の躯体4と同調して前方側へ移動し地震による揺れ動きを吸収する。
【0034】
地震による揺れ動きが終了すると、目地プレート7は付勢手段8の付勢力により後方側へ位置変位し、通常状態に復帰する。
【0035】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図9乃至図12に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0036】
図9乃至図12に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、一端部7a側にカバープレート14を備える目地プレート7Aにした点で、このような壁面用目地装置1Aにしても前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られるとともに、地震によって左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動き、一方の躯体3と目地プレート7Aの一端部の間に隙間が生じた場合であっても、その隙間をカバープレート14によって塞ぐことができる。
【0037】
このカバープレート14は、図11に示すように、目地プレート7Aの一端部と被ガイド部6の間に固定的に設けられた略長方形状の板材で、上下方向の寸法は目地プレート7Aの上下方向の寸法と略同一となるように形成されている。
【0038】
また、このカバープレート14の前後方向の寸法は地震による前後方向の揺れ動き幅よりも大きくなるように形成されている。防水シート11は一方の躯体3の壁面3aではなく、このカバープレート14に固定してもよい。
【0039】
本実施形態では、ガイド部材5をカバープレート14に干渉しない程度に後方側に設けるとともに、被ガイド部6をガイド部材5に挿入可能な長さとなるよう長尺に形成している。
【0040】
地震で左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動き、他方の躯体4が前方側へ位置変位した場合には、図8に示すように、目地プレート7Aは他端部7b側が他方の躯体4の壁面4bに押圧され、他方の躯体4と同調して前方側へ移動する。この時、カバープレート14は目地プレート7Aの一端部7aと一方の躯体3の間の隙間を塞ぎ、目地部2が開口することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
【0041】
なお、本発明の実施の形態においては、筒状のガイド部材と棒状の被ガイド部を用いて目地プレートを取り付けたが、例えばチャンネル型でレール状のガイド部にガイド部と前後方向に摺動可能に係合する形状の被ガイド部を係合させて目地プレートを一方の躯体に取り付けてもよいし、棒状のガイド部材を用い、このガイド部材が挿入される筒状の被ガイド部を目地プレートに固定して目地プレートを一方の躯体に取り付けてもよい。
【0042】
また、この目地プレートの表面に、左右の躯体の前方側の壁面と統一性がある質感や模様等を表現した化粧板が設けられていてもよい。化粧板を設ける場合には、浅皿状に形成された目地プレート本体と、この目地プレート本体に充填されたモルタルやコンクリート等の充填部材と、目地プレート本体の表面を覆う化粧板とで目地プレートを構成するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は壁面用目地装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0044】
1、1A:壁面用目地装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5:ガイド部材、 6:被ガイド部、
7、7A:目地プレート、 8:付勢手段、
9:ガイド孔、 10:シール部材、
11:防水シート、 12:ワイヤー、
13:スプリング、 14:カバープレート。