(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146978
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】加熱処理用包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20241008BHJP
B65D 33/25 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D33/25 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059716
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】稲吉 仙
(72)【発明者】
【氏名】前本 梨紗
【テーマコード(参考)】
3E013
3E064
【Fターム(参考)】
3E013BA11
3E013BB13
3E013BC04
3E013BC14
3E013BF03
3E013BF25
3E013BF36
3E064AA14
3E064AB25
3E064BA24
3E064BA25
3E064BA26
3E064BA36
3E064BA40
3E064BA54
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC18
3E064HN05
3E064HN12
(57)【要約】
【課題】食材等の内容物を電子レンジで加熱処理した際に、内部圧力の上昇によりチャックシール部が開封することを防止でき、また加熱により熱損傷が発生することを抑制可能な加熱処理用包装体を提供する。
【解決手段】本発明の加熱処理用包装体は、自立させて内容物を加熱処理するための包装体であって、包装体フィルムで構成された自立可能な袋体と、内容物を前記袋体の内部に投入して密封するチャックシール部と、前記袋体の一方の面から外側に向かって突出するように形成され、前記内容物を加熱処理して内部圧力が上昇したときにその圧力を逃がす合掌シール部とを有し、前記チャックシール部は、前記袋体の内側に接合された雄チャック及び雌チャックを有し、前記雄チャック及び前記雌チャックの一方は、前記袋体と接触する接触面の前記袋体内部側の端部から前記袋体外部に向かって前記袋体と接合していない非接合領域を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立させて内容物を加熱処理するための包装体であって、
包装体フィルムで構成された自立可能な袋体と、
内容物を前記袋体の内部に投入して密封するチャックシール部と、
前記袋体の一方の面から外側に向かって突出するように形成され、前記内容物を加熱処理して内部圧力が上昇したときにその圧力を逃がす合掌シール部と
を有し、
前記チャックシール部は、前記袋体の内側に接合された雄チャック及び雌チャックを有し、
前記雄チャック及び前記雌チャックの一方は、前記袋体と接触する接触面の前記袋体内部側の端部から前記袋体外部に向かって前記袋体と接合していない非接合領域を有する
加熱処理用包装体。
【請求項2】
前記非接合領域は、前記袋体の前記合掌シール部が形成されていない面の内側に接合された前記雄チャック又は前記雌チャックが前記袋体と接触する接触面に形成されている
請求項1に記載の加熱処理用包装体。
【請求項3】
前記雄チャック及び前記雌チャックの前記袋体と接触するそれぞれの接触面は、前記非接合領域が設けられた前記接触面の方が前記袋体内部側に向かって長くなっている
請求項1に記載の加熱処理用包装体。
【請求項4】
前記袋体の内部の最下部から下方に延在した脚部を有し、
前記袋体の内部に内容物を投入して自立させたとき、前記内容物は前記袋体の最下端よりも上方に浮いた状態になる
請求項1に記載の加熱処理用包装体。
【請求項5】
前記脚部の最も短い長さが、3~25mmである
請求項4に記載の加熱処理用包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を加熱処理する包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調理済又は半調理済等の食品が耐熱性のプラスチック包装体に充填され、それを食する直前に電子レンジにより加熱調理する包装食品が市場に提供されている。しかし、このような包装食品を電子レンジにより加熱すると、包装体の内部の水蒸気や内部空気の熱膨張によって内部圧力が上昇し、包装体が破裂して内容物が飛散したり、電子レンジ内を汚染したりする欠点があった。
【0003】
電子レンジ調理の前に、あらかじめ包装体に小孔を開けて内部圧力の上昇を抑えることで、包装体の破裂を防止する方法が採られている。しかし、この方法では、発生した水蒸気が直ちに包装体の外へ放出されてしまい、水蒸気による蒸し調理効果が低減してしまうばかりか、包装体内部の食品の乾燥が進行して食味の劣化をきたすこともある。そこで、包装体の内部圧力が上昇した際に通蒸して圧力を逃がすイージーピール部を形成した包装体が知られている。
【0004】
特許文献1には、プラスチックフィルムによりその同一面側を互いに当接させて、所定巾のヒートシールにより合掌状に接合する第一接合部を設けて、その内部に加熱処理用の内容物を密封包装させる包装体にあって、前記第一接合部は、包装体の一方の側部へ片寄せさせて設けて、加熱による包装体の内部圧力が上昇したとき、その逃圧を行なう易開封性シールであることを特徴とする加熱処理用包装体が記載されている。
【0005】
特許文献2には、電子レンジにより加熱するための袋であって、少なくとも片面がシーラント層から構成される複合フィルムを用いて、シーラント面を上面とした下部材と、シーラント面同士を向かい合わせて少なくとも側部をシールしたウィング部を形成し、シーラント面を下面とした上部材とを重ね合わせ、その周縁部をシールして主シール部として密封した包装袋において、前記ウィング部内の中央領域であって、ウィング部上辺シール部または折り返し部と連結してポイントシール部が形成され、このポイントシール部内に少なくとも1個以上の易蒸通手段が施されていることを特徴とする電子レンジ用包装袋が記載されている。
【0006】
特許文献3には、内容物を加熱処理するための包装体であって、前記包装体上から外側に向かって突出するように形成された合掌シール部を有し、前記合掌シール部の中央には、前記内容物を加熱処理して内部圧力が上昇したときに通蒸する通蒸領域が形成されており、前記通蒸領域は、前記合掌シール部の包装体外部側に開口した第一非シール部を有し、前記第一非シール部は、前記合掌シール部の包装体内部側に向かって開口幅が一定の第一領域と、前記第一領域と連続して形成され、前記包装体内部側に向かって開口幅が漸減する第二領域とを有し、前記第一領域の前記開口幅が、20~40mmである加熱処理用包装体が記載されている。この加熱処理用包装体の一辺にはチャックシール部が設けられており、消費者がチャックシール部から食材等の内容物を投入して密封することができるとされている。
【0007】
消費者は、これらの包装体に内容物が充填された状態で販売されている包装食品を買ってきて、単に加熱処理するだけでよく、非常に利便性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9-150864号公報
【特許文献2】特開2003-182779号公報
【特許文献3】特開2021-104813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~2の包装体は、製造元が内容物を充填して密閉することを想定して作られており、消費者は、自ら包装体に内容物を充填することはできない。消費者の中には、調理の負担は減らしたいが手作りしたいという要望もあることから、包装体にチャックシール部(ジッパー)を設けることも検討されており、実際に特許文献3のような包装体も市販されている。しかし、内部圧力が上昇した際にチャックシールが先に開封して、水蒸気による蒸し調理効果が低減してしまうことを避ける必要があった。
【0010】
さらに、これらの包装体は、電子レンジで加熱する際に平置きすることが想定されているが、長時間の加熱処理をすると、包装体における電子レンジの床面との接触面が熱損傷を起こす場合もあった。
【0011】
そこで、本発明は、食材等の内容物を電子レンジで加熱処理した際に、内部圧力の上昇によりチャックシール部が開封することを防止でき、また加熱により熱損傷が発生することを抑制可能な加熱処理用包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る加熱処理用包装体は、自立させて内容物を加熱処理するための包装体であって、
包装体フィルムで構成された自立可能な袋体と、
内容物を前記袋体の内部に投入して密封するチャックシール部と、
前記袋体の一方の面から外側に向かって突出するように形成され、前記内容物を加熱処理して内部圧力が上昇したときにその圧力を逃がす合掌シール部と
を有し、
前記チャックシール部は、前記袋体の内側に接合された雄チャック及び雌チャックを有し、
前記雄チャック及び前記雌チャックの一方は、前記袋体と接触する接触面の前記袋体内部側の端部から前記袋体外部に向かって前記袋体と接合していない非接合領域を有する
加熱処理用包装体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、食材等の内容物を電子レンジで加熱処理した際に、内部圧力の上昇によりチャックシール部が開封することを防止でき、また加熱により熱損傷が発生することを抑制可能な加熱処理用包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る加熱処理用包装体(内容物入り)の構成を示す模式的斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る加熱処理用包装体の構成を示す模式的正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る加熱処理用包装体の構成を示す模式的分解斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る加熱処理用包装体のチャックシール部付近の構成を示す模式的断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る加熱処理用包装体(内容物入り)が膨張した際のチャックシール部の状態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る加熱処理用包装体を、図面を参照しつつ説明する。本発明に係る加熱処理用包装体は、自立させた状態で、電子レンジにより内容物を加熱処理する際に用いるのに好適であり、また食材を加熱処理する際に用いるのに好適である。
【0016】
本発明の一実施形態に係る加熱処理用包装体1の構成例を
図1及び2に示す。この加熱処理用包装体1は、包装体フィルムで構成された自立可能な袋体10と、袋体10の一辺側に設けられたチャックシール部20と、内容物2を加熱処理して内部圧力が上昇したときにその圧力を逃がす合掌シール部30とで構成されている。このような構成を有することで、消費者がチャックシール部20から食材等の内容物2を投入して密封することができ、電子レンジで加熱処理することができる。
【0017】
袋体10を構成する包装体フィルムとしては、電子レンジにより加熱処理がなされることを考慮すると、電子レンジの加熱に対する耐熱性を有するプラスチック素材で形成されていることが好ましい。そのようなプラスチック素材の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン化ポリオレフィン;ポリビニルアルコール;ナイロン6、ナイロン6,6、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル等のポリアクリル酸エステル;及びこれらを形成するモノマーの共重合体などが挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」は、メタクリル又はアクリルを意味する。
【0018】
ポリエチレンの具体例としては、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン系ポリエチレンなどが挙げられる。ポリプロピレンの具体例としては、プロピレンのホモポリマー、プロピレンとエチレンや1-ブテンとのランダム又はブロックコポリマーなどが挙げられる。
【0019】
包装体フィルムは、単層でもよいが、共押出しなどにより2層以上に積層されていてもよい。例えば、包装体フィルムは、基材層とシーラント層からなることが好ましく、さらに基材層とシーラント層の間に他の層を有していてもよい。
【0020】
包装体フィルムの基材層としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル等を用いることができる。シーラント層としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを用いることができる。また、基材層とシーラント層との間に設ける中間層としては、例えば、上記ポリアミド、上記ポリエステル等を用いることができる。
【0021】
なお、包装体フィルムが複数層で構成されている場合、複数層のうちの少なくとも1層が、ポリエステルで構成されているのが好ましく、ポリエチレンテレフタレートで構成されているのがより好ましい。これにより、包装袋フィルムの耐熱性をより高いものとしつつ、包装袋フィルムの硬さをより容易に適度なものとすることができる。
【0022】
また、包装体フィルムは、酸化アルミニウムや酸化ケイ素のような無機酸化薄膜が付与されたガスバリア性の複合フィルムでもよい。この複合フィルムは、酸化アルミニウムや酸化ケイ素の単体又は混合物を真空下で加熱気化させ、上記のフィルムの表面に蒸着することで得ることができる。更に、包装体フィルムは、ポリエポキシ樹脂を主剤とするようなガスバリア性を有する接着剤層や、ポリビニルアルコール系重合体樹脂やセルロースやウレタン系樹脂等をはじめとするガスバリア性を有する層を有していてもよい。
【0023】
加熱処理用包装体1は、内容物2を内部に投入して密封することができる構成であれば、その形態は問わない。すなわち、袋体10は、
図1及び2に示す三方シールの他、四方シール、スティック、ピロー、ガゼット、封筒貼り、スタンディング、合掌貼り等の形態とすることができる。加熱処理用包装体1の外縁の形状は、三角形、四角形、五角形等の多角形、円形、楕円形、及びそれらの組み合わせた形状とすることができるが、一般的には四角形である。
【0024】
上記のような包装体フィルムで構成される袋体10は、自立可能であることが重要である。近年主流であるフラットテーブル式電子レンジでは基本的に下方より加熱されることから、電子レンジの床面に内容物2が接触していると局所的に加熱されてしまい、長時間の加熱処理をすると袋体10における電子レンジの床面との接触面が熱損傷を起こす場合がある。しかし、自立可能な袋体10であれば、内容物2が電子レンジの床面に接触しにくくなるため、袋体10の熱損傷が発生しにくくなる。換言すれば、袋体10の内部に内容物2を投入して加熱処理用包装体1を自立させたとき、内容物2は袋体10の最下端よりも上方に浮いた状態になることが好ましい。そのためには、袋体10の内部の最下部から下方に延在した脚部16(
図5参照)を有する袋体10を用いることが好ましい。
【0025】
袋体10を自立可能なものとするためには、例えば、
図3に示すように、表面上部フィルム11a、表面下部フィルム11b、裏面フィルム12、及び底フィルム13により構成され、所定位置に雄チャック21及び雌チャック22を配置し、かつ合掌シール部30を形成しつつ、これらの周縁(側部及び底部)がシールされた周縁シール部15を有する袋体10とする方法が挙げられる。この場合、袋体10の下部の周縁シール部15が、袋体10の内部の最下部から下方に延在した脚部16となり、袋体10の内部に内容物2を投入して加熱処理用包装体1を自立させたとき、内容物2は袋体10の最下端よりも上方に浮いた状態になる。底フィルム13は、例えば、
図3に示すように、山形に立て上げられた包装体フィルムを用いることができる。
【0026】
底フィルム13の高さH
B(
図2参照)は、内容物2を袋体10の最下端よりも上方に浮いた状態とする観点から、10~60mmとすることが好ましく、10~50mmとすることがより好ましく、10~45mmとすることがさらに好ましい。
【0027】
袋体10の側部及び底部に形成される周縁シール部15のシール幅は、適宜設定することができるが、内容物2が袋体10の最下端よりも上方に浮いた状態とする観点から、袋体10の底部に形成される周縁シール部15における最も短いシール幅Hs(
図2及び
図5参照、脚部16の最も短い長さに相当)は、3~25mmとすることが好ましく、5~20mmとすることがより好ましく、7~15mmとすることがさらに好ましい。周縁シール部15は、側部に形成したシール部が底部に向かって内側に傾斜しているV字の形状、又は側部と底部のコーナーに形成したシール部が丸みをおびたU字の形状に形成されていてもよい。V字又はU字の形状であれば、袋体10の内部に食材等の内容物2を充填する際に底部に形成したシール部の後退及び抜けを効果的に抑制することができ、また側部と底部のコーナーに内容物2が滞留しにくくなり、加熱時に内容物2が焦げることを防止することができる。
【0028】
周縁シール部15は、常温及び90℃雰囲気下において完全シールでもよいが、チャックシール部20及び合掌シール部30よりも強いシール強度であれば、易開封性を有していてもよい。周縁シール部15が易開封性を有する場合の常温及び90℃雰囲気下でのシール強度は、10~50N/15mmが好ましく、12~45N/15mmがより好ましい。なお、常温及び90℃雰囲気下でのシール強度とは、JIS Z0238「密封軟包装袋の試験方法」に従い、それぞれ常温及び90℃雰囲気下で測定された値である。
【0029】
本発明において、袋体10の一方の面(
図2の手前側)には、表面上部フィルム11a及び表面下部フィルム11bを向かい合わせ、必要に応じて易開封性フィルム(不図示)を挟み込んで接合された合掌シール部30が形成されている。こうすることで、内容物2を加熱処理して加熱処理用包装体1の内部圧力が上昇したときに、その圧力を合掌シール部30から逃がすことができる。この合掌シール部30は、袋体10の一方の面から外側に向かって突出するように形成されている。
【0030】
合掌シール部30は、90℃雰囲気下において周縁シール部15及びチャックシール部20よりも弱い易開封性を有していることが好ましい。こうすることで、内容物2を加熱処理して加熱処理用包装体1の内部圧力が上昇した際に、周縁シール部15及びチャックシール部20が開封する前に合掌シール部30が開封して、その圧力を合掌シール部30から逃がすことができる。
【0031】
合掌シール部30の90℃雰囲気下でのヒートシール強度は、12N/15mm以下であることが好ましく、8N/15mm以下であることがより好ましい。合掌シール部30の90℃雰囲気下でのヒートシール強度は、0N/15mmでも構わないが、1N/15mm以上であることが好ましい。なお、合掌シール部30は、常温においては完全シールでもよく、易開封性を有していてもよい。合掌シール部30が易開封性を有する場合の常温でのシール強度は、0.5~30N/15mmが好ましく、1~25N/15mmがより好ましい。
【0032】
なお、常温では完全シール、90℃雰囲気下でのヒートシール強度が12N/15mm以下となる合掌シール部30は、易開封性フィルムとして、ポリオレフィン(例えば、融点120℃以下(好ましくは110℃以下)のポリエチレン、融点140℃以下(好ましくは130℃以下)のポリプロピレンやこれらのブレンド樹脂等を用いることで実現できる。なお、融点は、ASTM2117に基づいて測定した値である。
【0033】
本発明において、
図1及び2に示すように、合掌シール部30の中央に内容物2を加熱処理して内部圧力が上昇したときに通蒸する蒸気口31が形成されていることが好ましい。こうすることで、内部圧力が上昇した際でも破裂しないように逃圧された加熱処理用包装体1となる。蒸気口31は、合掌シール部30の一部を未シールとする方法で形成されてもよく、合掌シール部30の一部を切除する、合掌シール部30の一部に切込みを入れる等の方法で形成されてもよい。
【0034】
また、
図1及び2に示すように、合掌シール部30は、加熱処理用包装体1の一辺と略平行に形成されていることが好ましく、チャックシール部20は、合掌シール部30と加熱処理用包装体1の一辺の間に略平行に形成されていることが好ましい。なお、略平行とは、両者が完全に平行である場合のみならず、少し傾きがあったとしても目的を果たしていればよく、一方に対する他方の傾きが例えば-10°~+10°の場合を含む。
【0035】
加熱処理用包装体1の一辺から対辺までの距離H(
図2参照、加熱処理用包装体1の高さ)は、100~300mmであることが好ましく、115~275mmであることがより好ましく、130~250mmであることがさらに好ましい。加熱処理用包装体1の一辺と、それと略平行に形成された合掌シール部30との間の距離H
P(
図2参照)は、加熱処理用包装体1の一辺から対辺までの距離Hに対して10~50%であることが好ましく、15~50%であることがより好ましい。この範囲であれば、加熱処理用包装体1の破裂強度が低くなり、弱い力でも容易に通蒸するようになる。
【0036】
本発明において、内容物2を袋体10の内部に投入して密封するチャックシール部20は、その詳細な構成例を
図4に示すように、雄チャック21及び雌チャック22を有している。雄チャック21及び雌チャック22は、それぞれ、袋体10の内側に接合されており、雄チャック21の凸部分と雌チャック22の凹部分とを嵌合させることで、シール(密閉)することができる。雄チャック21と雌チャック22の嵌合部は、複数あってもよい。
【0037】
図4において、雄チャック21は、袋体10の合掌シール部30が形成されている面(表面上部フィルム11a)と接触する接触面23において、袋体10の内部側(
図4の下側)と袋体10の外部側(
図4の上側)の両方でヒートシールされた接合部25が形成されている。なお、雄チャック21は、接触面23全面で接合部25を形成してもよい。一方、雌チャック22は、袋体10の合掌シール部30が形成されていない面(裏面フィルム12)と接触する接触面24において、袋体10の外部側(
図4の上側)のみでヒートシールされた接合部26が形成されている。すなわち、雌チャック22が袋体10(裏面フィルム12)と接触する接触面24における袋体10の内部側(
図4の下側)の端部24tから袋体10外部に向かって、袋体10(裏面フィルム12)と接合していない非接合領域27が形成されている。
【0038】
このように、非接合領域27が形成されていると、食材等の内容物2を電子レンジで加熱処理した際に、内部圧力の上昇によりチャックシール部20が開封することを防止することができる。より具体的には、食材等の内容物2を電子レンジで加熱処理した際に、加熱処理用包装体1が膨張した際のチャックシール部の状態を
図5に示すように、内部圧力は、非接合領域27が形成された側の接合部26に集中する(
図5の矢印)。その結果、雄チャック21と雌チャック22との嵌合部分に膨張圧が集中するのを防止することができ、チャックシール部20(雄チャック21と雌チャック22)が開封する前に、合掌シール部30の蒸気口31から通蒸しやすくなる。
【0039】
なお、
図4では、雄チャック21が、袋体10の合掌シール部30が形成されている面(表面上部フィルム11a)の内側に接合されており、雌チャック22が、袋体10の合掌シール部30が形成されていない面(裏面フィルム12)の内側に接合されている実施形態を示しているが、雄チャック21と雌チャック22の配置が逆でもよい。すなわち、雌チャック22が、袋体10の合掌シール部30が形成されている面(表面上部フィルム11a)の内側に接合されており、雄チャック21が、袋体10の合掌シール部30が形成されていない面(裏面フィルム12)の内側に接合されていてもよい。
【0040】
また、
図4では、非接合領域27は、袋体10の合掌シール部30が形成されていない面(裏面フィルム12)の内側に接合された雌チャック22(又は雄チャック21)が袋体10(裏面フィルム12)と接触する接触面に形成されている実施形態を示しているが、袋体10の合掌シール部30が形成されている面(表面上部フィルム11a)の内側に接合された雄チャック21(又は雌チャック22)が袋体10(表面上部フィルム11a)と接触する接触面に形成されていてもよい。ただし、非接合領域27は、
図4に示すように、袋体10の合掌シール部30が形成されていない面(裏面フィルム12)の内側に接合された雌チャック22(又は雄チャック21)が袋体10(裏面フィルム12)と接触する接触面に形成されていることが好ましい。これにより、雄チャック21と雌チャック22の嵌合部分に膨張圧(内部圧力)が集中することを、さらに効果的に防止することができる。
【0041】
非接合領域27が設けられた雌チャック22の袋体10と接触する接触面24の大きさは、雄チャック21の袋体10と接触する接触面23と同じでもよいが、
図4に示すように、接触面24の方が袋体10の内部側(
図4の下側)に向かって長くなっていることが好ましい。これにより、雄チャック21と雌チャック22の嵌合部分に膨張圧(内部圧力)が集中することを、さらに効果的に防止することができる。なお、接触面24の全部又は一部が、袋体10の内部側(
図4の下側)に向かって長くなっていればよい。
【0042】
加熱処理用包装体1の一辺と、それと略平行に形成された合掌シール部30との間のチャックシール部20との間の距離H
Z(
図2参照)は、加熱処理用包装体1の一辺と合掌シール部30との間の距離H
Pに対して10~80%であることが好ましく、20~70%であることがより好ましく、40~60%であることがさらに好ましい。
【0043】
加熱処理が完了した後は、消費者自らが例えばチャックシール部20を開封して、内容物2を取り出すことができる。開封する場所は合掌シール部30でもよく、周縁シール部15から加熱処理用包装体1を裂いて開封してもよい。加熱処理用包装体1を裂けやすくするため、周縁シール部15には開封用ノッチが形成されていてもよい。
【0044】
このような加熱処理用包装体1であれば、消費者自らがチャックシール部20から食材等の内容物2を充填し、密封することができる。そして、密封された内容物2を電子レンジ等で効率よく加熱処理することができる。さらに、合掌シール部30を備えることで、包装体内部の水蒸気や内部空気の熱膨張による包装体内部の圧力の変動を抑制することができる。さらに、自立型の加熱処理用包装体1とすることで、加熱により熱損傷が発生することを抑制することができる。
【0045】
以上、本発明の加熱処理用包装体の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【実施例0046】
<実施例1>
図1~4に示す構成の自立型の加熱処理用包装体を作製した(縦170mm×横195mm、H
P=55mm、H
Z=25mm、H
B=35mm、Hs=10mm)。なお、用いた包装体フィルムの構成は、透明蒸着ポリエチレンテレフタレート(透明蒸着PET#12)//ナイロン(NY#15)//ポリエチレンテレフタレート(PET#12)//無延伸ポリプロピレン(CPP#50)である。また、合掌シール部30は、上部表面フィルム11aと下部表面フィルム11bの間にPP系イージーオープンテープを挿入してヒートシールすることにより形成した。また、
図3に示すように、
図2における袋体10の背面側(合掌シール部30が形成されていない面)に配置された雌チャック22の袋体10(裏面フィルム12)との接触面24は、対向する位置に配置された雄チャック21の袋体10(表面上部フィルム11a)との接触面23よりも袋体10内部側に向かって長くなっており、雌チャック22の接触面24の袋体10内部側の端部24tから袋体10外部に向かって非接合領域27を形成した。
<実施例2>
実施例1で用いた雄チャック21及び雌チャック22を入れ替えて、
図2における袋体10の背面側(合掌シール部30が形成されていない面)に雄チャック21を配置し、その対向する位置に雌チャック22を配置したこと以外は、実施例1と同様にして、自立型の加熱処理用包装体を作製した。なお、袋体10の合掌シール部30が形成された面に配置された雌チャック22の袋体10(表面上部フィルム11a)との接触面24は、対向する位置に配置された雄チャック21の袋体10(裏面フィルム12)との接触面23よりも袋体10内部側に向かって長くなっており、雌チャック22の接触面24の袋体10内部側の端部24tから袋体10外部に向かって非接合領域27を形成した。
【0047】
<比較例1>
底フィルム13を用いずに平置き型としたこと以外は、実施例1と同様にして、平置き型の加熱処理用包装体を作製した。
【0048】
<評価1>
実施例1及び2並びに比較例1で作製した加熱処理用包装体の内部に、豚バラ肉250gと調味液60gを封入し、電子レンジ(600W)で8~11分の加熱処理を行った。加熱処理後の加熱処理用包装体の熱損傷の有無を観察し、以下の基準で評価した。
○:熱損傷なし
△:熱損傷あり(熱損傷部の面積が25mm2未満)
×:熱損傷あり(熱損傷部の面積が25mm2以上)
【0049】
【0050】
この結果より、実施例1及び2で作製した自立型の加熱処理用包装体の方が、比較例1で作製した平置き型の加熱処理用包装体よりも熱損傷の発生が抑制できていることが分かった。
【0051】
<評価2>
実施例1及び2で作製した加熱処理用包装体(各4つ)の内部に水100gを封入し、加熱処理用包装体の内部が通蒸するまで電子レンジ(600W)で加熱処理を行った。その際の通蒸性と通蒸音に関して、以下の基準で評価した。なお、評価2の加熱処理は、評価1の加熱処理(実際の使用形態に近い)よりも包装体の内部圧力が急激に上昇しやすく、蒸気の排出においてはより過酷な条件である。
〔通蒸性〕
○:合掌シール部30より通蒸
△:チャックシール部20より通蒸
〔通蒸音〕
○:通蒸時の音が小さい
△:通蒸時の音が大きい
【0052】
【0053】
この結果より、実施例1で作製した加熱処理用包装体(合掌シール部30が形成されていない面の内側に非接合領域27が配置されている)の方が、実施例2で作製した熱処理用包装体(合掌シール部30が形成されている面の内側に非接合領域27が配置されている)よりも、チャックシールの開封をより防止することができ、通蒸時に発生する音も小さいことが分かった。