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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146980
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】電線の保護構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20241008BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20241008BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B60K1/00 ZHV
H02G3/04 087
H02G3/30
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059719
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 郷司
【テーマコード(参考)】
3D235
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB04
3D235BB43
3D235CC13
3D235CC15
3D235CC32
3D235DD17
3D235FF14
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH21
5G357DA06
5G357DA10
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DD05
5G357DE10
5G357DG04
5G363AA07
5G363AA11
5G363AA12
5G363BA02
5G363DA13
5G363DA15
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】簡単な構成により、車両の衝突が生じても電線の制御装置との接続部分を保護できるようにする。
【解決手段】保護部材15の第1の部分15bから第2の部分15cにわたるL型に屈曲した支持箇所が第1の支持部材12により支持され、保護部材15の第1の部分15bの第1の支持部材12による支持箇所と反対側の支持箇所が第2の支持部材13により支持する。これにより、簡単な構成によって、車両の衝突が生じても、エンジンルームの内部の渡り部における高圧ハーネス8の屈曲部分による衝撃吸収効果を保つとともに、高圧ハーネス8の先端部分のPCU(制御装置)の筐体7aへの固定状態を強固に維持する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部のエンジンルームの外部に配置された電池と、前記エンジンルームの内部に配置された制御装置とを接続する電線であって、前記エンジンルームの内部では屈曲して配索される電線を保護する電線の保護構造において、
前記制御装置の筐体の後側面に取り付けられるL型を成す第1の支持部材と、
前記第1の支持部材に対向して前記制御装置の筐体の後側面に取り付けられる第2の支持部材と、
前記第1、第2の支持部材間に配設され内部を前記電線の端部が挿通される保護部材と備え、
前記保護部材は、
前記電線の端部が上下方向に挿通される上下方向の第1の部分と、該第1の部分の下部にL型を成すように左右方向に膨出して形成され前記電線の端部が左右方向に挿通される第2の部分とを有し、
前記第1の部分から前記第2の部分にわたるL状に屈曲した支持箇所が前記第1の支持部材により支持され、前記第1の支持部材による支持箇所と反対側の前記第1の部分の屈曲していない支持箇所が前記第2の支持部材により支持されている
ことを特徴とする電線の保護構造。
【請求項2】
請求項1に記載の電線の保護構造において、
前記第1、第2の支持部材それぞれに係合部が形成され、
前記保護部材に、前記第1、第2の支持部材それぞれの前記係合部が係合する被係合部が形成され、
前記第1、第2の支持部材それぞれの前記係合部が前記保護部材の前記被係合部に係合して前記保護部材が前記第1、第2の支持部材により支持されることを特徴とする電線の保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両前部のエンジンルームの外部に配置された電池と、エンジンルームの内部に配置された制御装置とを接続する電線を保護する電線の保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド(Hybrid Electric Vehicle/以下、HEVという)車のように、ダッシュボードで仕切られた車室のフロア下に高圧のHEVバッテリを配置し、ダッシュボードで仕切られた前部のエンジンルーム内部にパワーコントロールユニットなどの制御装置を配置した車両において、車両に配索された高圧電線によりこれらバッテリと制御装置とを接続することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の高圧電線はエンジンルームの内部で屈曲されて配索され、高圧電線の先端に取り付けられた一方のコネクタが制御装置に設けられた他方のコネクタに嵌合されることにより、バッテリと制御装置とが電気的に接続される。このとき、エンジンルーム内部で高圧電線を屈曲することにより、車両の加減速等による車体の動きに相反する高圧電線の動きを吸収できるようにし、高圧電線のバッテリ及び制御装置との接続部分に余分な荷重がかかることを軽減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-168284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記したように、HEV車ではエンジンルームの内部にパワーコントロールユニットなどの制御装置が配置されるため、車両の衝突が生じると衝突時の衝撃によりエンジンルームを仕切るダッシュボードが変形し、高圧電線の屈曲部分では十分にその衝撃を吸収できず、高圧電線の制御装置との接続部分を衝撃から保護できないおそれがあり、高圧電線の制御装置との接続部分や高圧電線自体に破損等が生じ、接続不良や絶縁不良など法規に反するような事態を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成により、車両の衝突が生じても電線の制御装置との接続部分を保護できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の電線の保護構造は、車両前部のエンジンルームの外部に配置された電池と、前記エンジンルームの内部に配置された制御装置とを接続する電線であって、前記エンジンルームの内部では屈曲して配索される電線を保護する電線の保護構造において、前記制御装置の筐体の後側面に取り付けられるL型を成す第1の支持部材と、前記第1の支持部材に対向して前記制御装置の筐体の後側面に取り付けられる第2の支持部材と、前記第1、第2の支持部材間に配設され内部を前記電線の端部が挿通される保護部材と備え、前記保護部材は、前記電線の端部が上下方向に挿通される上下方向の第1の部分と、該第1の部分の下部にL型を成すように左右方向に膨出して形成され前記電線の端部が左右方向に挿通される第2の部分とを有し、前記第1の部分から前記第2の部分にわたるL状に屈曲した支持箇所が前記第1の支持部材により支持され、前記第1の支持部材による支持箇所と反対側の前記第1の部分の屈曲していない支持箇所が前記第2の支持部材により支持されていることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、保護部材の第1の部分から第2の部分にわたるL状に屈曲した支持箇所が第1の支持部材により支持され、保護部材の第1の部分の第1の支持部材による支持箇所と反対側の支持箇所が第2の支持部材により支持されるため、簡単な構成により、車両の衝突が生じても、エンジンルームの内部の電線の屈曲部分による衝撃吸収効果を保ちつつ、電線の先端部分の制御装置の筐体への固定状態を強固に維持することができ、電線の制御装置との接続部分及び電線自体を保護することができる。
【0009】
また、前記第1、第2の支持部材それぞれに係合部が形成され、前記保護部材に、前記第1、第2の支持部材それぞれの前記係合部が係合する被係合部が形成され、前記第1、第2の支持部材それぞれの前記係合部が前記保護部材の前記被係合部に係合して前記保護部材が前記第1、第2の支持部材により支持されるとしてもよい。
【0010】
このような構成によれば、第1、第2の支持部材それぞれの係合部が保護部材の被係合部に係合して保護部材が第1、第2の支持部材により支持されるため、保護部材を容易に第1、第2の支持部材により制御装置の筐体に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両の衝突が生じても、簡単な構成により、電線の制御装置の筐体への固定状態を強固に維持して、電線の制御装置との接続部分を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る電線の保護構造の一実施形態の車両への組み付け状態を示す概略平面図である。
図2図1の一部の斜視図である。
図3】第1、第2支持部材の斜視図である。
図4】第1、第2支持部材の正面図である。
図5】保護部材を正面側から見た斜視図である。
図6】保護部材を図5と反対側から見た斜視図である。
図7図1の一部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る電線の保護構造をHEV車に適用した場合の一実施形態について、図1ないし図7を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態において前後、左右とは、シートに着座した状態で見た前後、左右を意味する。
【0014】
図1に示すように、HEV車の車体1はダッシュボード2により車室3とその前部のエンジンルーム4とに仕切られ、車室3のフロア下のほぼ中央には、例えば数100VのHEVバッテリ5が配置され、エンジンルーム4の内部では、そのほぼ中央にエンジン6が配置されるとともに、エンジン6の左側に本発明の制御装置に相当するパワーコントロールユニット(以下、PCUという)7が配置さている。このPCU7は、筐体7a内に収容されたインバータやDC-DCコンバータ等で構成され、電圧・電流を制御する。
【0015】
そして、高圧用電線の束である高圧ハーネス(本発明における「電線」に相当)8がエンジンルーム4内においてフロア下でダッシュボード2を貫通して車室3のフロア下に配策され、高圧ハーネス8の一端がコネクタ9によりバッテリ5に接続され、エンジンルーム4の内部において、高圧ハーネス8の他端がPCU7の筐体7aの上面に取り付けられたコネクタ10に接続されてPCU7に電気的に接続されている。
【0016】
このとき、高圧ハーネス8は、ダッシュボード2のほぼ中央を貫通してその前端部分がエンジンルーム4内に配設され、図1に示すように、エンジンルーム4の内部のダッシュボード2とPCU7との間の渡り部11と称される領域において、高圧ハーネス8の前端部分が屈曲されてなる屈曲部分が形成されている。
【0017】
ところで、図3図4に示すように、正面視で平板状を成す金属製の取付け部12a,13aと、両取付け部12a,13aそれぞれに後方に立ち上がって一体形成された金属製の立上げ部12b,13bとを備え、ともに断面L字形状を有する第1、第2の支持部材12,13がPCU7の筐体7aの後側面に取り付けられている。
【0018】
このとき、第1の支持部材12及び第2の支持部材13の立上げ部12b,13bが互いに対向して配置され、両支持部材12,13の取付け部12a,13aにはボルト(図示省略)等の挿通孔12c,13cが形成され、取付け部12a,13aが筐体7aの後側面に当接された状態で、挿通孔12c,13cに挿通されたボルト等が筐体7aの後側面に螺着されることで、第1、第2の支持部材12,13がPCU7の筐体7aの後側面に取り付けられる。
【0019】
第1の支持部材12は、後方から前方を見た正面視でL型を成しており、第1の支持部材12の立上げ部12bの上部と下部の2箇所には、後方に突出した矩形の突出片12d,12eが一体形成され、第2の支持部材13の立上げ部12bの上部には、突出片12d,12eと同様に、後方に突出した矩形の突出片13dが一体形成されている。なお、これらの突出片12d,12e,13dが、本発明における「係合部」に相当し、後述する保護部材に形成された被係合部である係合穴に係合することにより、保護部材が第1、第2の支持部材12,13により支持される。
【0020】
また、図5図6に示すように、樹脂製の保護部材15が、第1、第2の支持部材12,13の立上げ部12b,13b間に挟持されるように配設され、特に図5に示すように保護部材15の内部には高圧ハーネス8が挿通される例えば断面円形の挿通路15aが形成されている。
【0021】
この保護部材15は、高圧ハーネス8の前端部が上下方向に挿通される上下方向の第1の部分15bと、第1の部分15bの下部にL型を成すように左右方向に膨出して形成され高圧ハーネス8の前端部が左右方向に挿通される第2の部分15cとを有する。
【0022】
そして、図6に示すように、保護部材15の前面には、上記した第1、第2の支持部材12,13の突出片12d,12e,13dがそれぞれ係合する係合穴15d,15e,15f(本発明における「被係合部」に相当)が形成され、図7に示すように、第1の支持部材12の突出片12d,12eが保護部材15の係合穴15d,15eに嵌挿して係合し、第2の支持部材13の突出片13dが保護部材15の係合穴15fに係合することにより、第1の部分15bから第2の部分15cにわたるL型に屈曲した支持箇所が第1の支持部材12の立上げ部12bに沿って支持され、第1の部分15bの屈曲していない第1の支持部材12と反対側の支持箇所が、第2の支持部材13により支持されている。
【0023】
ここで、第1、第2の支持部材12,13の各突出片12d,12e,13dの外側面に例えば切り起こし加工による係合凸起を形成し、保護部材15の各係合穴15d,15e,15fにの無い側面これら係合凸起が係合する係合凹部を形成しておき、第1、第2の支持部材12,13の各突出片12d,12e,13dが保護部材15の各係合穴15d,15e,15fそれぞれに嵌挿したときに、各突出片12d,12e,13dの係合凸起が各係合穴15d,15e,15fの係合凹部に嵌まり込むことにより、各突出片12d,12e,13dそれぞれと各係合穴15d,15e,15fそれぞれとの係合状態を強固に維持できる構成とするのが望ましい。
【0024】
したがって、上記した実施形態によれば、保護部材15の第1の部分15bから第2の部分15cにわたるL型に屈曲した支持箇所が第1の支持部材12により支持され、保護部材15の第1の部分15bの第1の支持部材12による支持箇所と反対側の支持箇所が第2の支持部材13により支持されるため、簡単な構成により、車両の衝突が生じても、エンジンルーム4の内部の渡り部11における高圧ハーネス8の屈曲部分による衝撃吸収効果を保つことができるとともに、高圧ハーネス8の先端部分のPCU7の筐体7aへの固定状態を強固に維持することができ、高圧ハーネス8のPCU7との接続部分及び高圧ハーネス8自体を保護することが可能になる。
【0025】
また、第1、第2の支持部材12,13の各突出片12d,12e,13dに保護部材15の各係合穴15d,15e,15fが係合することにより、保護部材15を第1、第2の支持部材12,13により支持できるようにしたため、高圧ハーネス8を挿通した保護部材15を簡単に両支持部材12,13に取り付けることができる。
【0026】
また、さらに、上記した実施形態によれば、保護部材15をL型とし、これを支持する第1の支持部材12も正面視L字状としたため、エンジンルーム4内の高圧ハーネス8の渡り部11において十分な撓みを確保することができる。
【0027】
また、保護部材15をL型にし、その内部に高圧ハーネス8を挿通した状態で保護部材15を両支持部材12,13により支持するため、高圧ハーネス8の長さ等のばらつきを吸収しつつ保護部材15を支持することができる。
【0028】
また、保護部材15をL型にし、第1の支持部材12もL字状にしたため、保護部材15の強度を高くすることができ、車両の衝突時の衝撃により保護部材15が容易に変形するのを未然に防止することができる。
【0029】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。例えば、上記した実施形態では、HEV車に本発明を適用した場合について説明したが、適用可能な車両はHEV車に限定されるものではなく、制御装置も上記したPCU7に限るものではない。
【0030】
また、上記した実施形態では、保護部材15を支持する支持部材を第1、第2の支持部材12,13の2つの部材により構成したが、第1、第2の支持部材12,13を一体化して保護部材15を挟持した状態でPCU7の筐体7aに取り付けできるようにしてもよい。
【0031】
また、上記した実施形態では、第1、第2の支持部材12,13に形成する各突出片12d,12e,13dを矩形状として説明したが、これら突出片の形状は矩形状に限るものではなく、保護部材の係合穴の形状も、矩形状ではない突出片を係合できる形状であればよい。
【0032】
また、上記した実施形態では、第1、第2の支持部材12,13の各突出片12d,12e,13dに係合凸起を形成し、保護部材15の各係合穴15d,15e,15fにこれら係合凸起が係合する係合凹部を形成し、各突出片12d,12e,13dが各係合穴15d,15e,15fそれぞれに嵌挿したときに、各突出片12d,12e,13dそれぞれと各係合穴15d,15e,15fそれぞれとの係合状態を強固に維持できるようにした例を説明したが、各突出片12d,12e,13dそれぞれと各係合穴15d,15e,15fそれぞれとの係合状態を強固に維持する手段は、係合凸起及び係合穴の組み合わせに限るものではなく、要するに各突出片12d,12e,13dそれぞれと各係合穴15d,15e,15fそれぞれとの係合状態を強固に維持できる構成であればよい。
【0033】
また、上記した実施形態では、保護部材15を第1、第2の支持部材12,13により支持するようにしたが、PCU7の筐体7aに両支持部材12,13それぞれに相当するリブを予め形成しておき、これらのリブにより保護部材15を支持するようにしてもよく、こうすると別体の支持部材12,13を準備する必要がなく部品点数を削減できるとともに、リブにより筐体7aの強度を向上することが可能になる。
【0034】
そして、本発明は、車両前部のエンジンルーム外に配置された電池と、エンジンルーム内に配置された制御装置とを接続する電線であって、エンジンルーム内では屈曲して配索される電線を保護する電線の保護構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 車体
3 …車室
4 …エンジンルーム
5 …HEVバッテリ
7 …PCU(制御装置)
8 …高圧ハーネス
12 …第1の支持部材
12d,12e …係合片(係合部)
13 …第2の支持部材
13d …係合片(係合部)
15 …保護部材
15a …挿通路
15b …第1の部分
15c …第2の部分
15d,15e,15f …係合穴(被係合部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7