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特開2024-146982きな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法
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  • 特開-きな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法 図1
  • 特開-きな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法 図2
  • 特開-きな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146982
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】きな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/00 20060101AFI20241008BHJP
   A23L 11/00 20210101ALI20241008BHJP
【FI】
A23G3/00
A23L11/00 A
A23L11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059721
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】300090178
【氏名又は名称】みたけ食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076071
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 恵治
(72)【発明者】
【氏名】本田 喜克
(72)【発明者】
【氏名】田島 康行
【テーマコード(参考)】
4B014
4B020
【Fターム(参考)】
4B014GE02
4B014GE06
4B014GG06
4B014GL06
4B014GP01
4B014GP19
4B014GQ02
4B020LB22
4B020LC02
4B020LK03
4B020LP15
4B020LP30
(57)【要約】
【課題】 本発明は、きな粉を主成分とする製菓用トッピングを振りかけた和洋菓子の味覚の向上、美観の維持を確実なものとし、使い勝手の良いきな粉を主成分とする製菓用トッピングの新たな活用分野を創出しようとするものである。
【解決手段】 きな粉に水分を添加する給水工程を実施し、きな粉の水分値を2~10%とするように調整するコントロール工程と、次いでこのきな粉の表面をショ糖脂肪酸エステルの粉末で覆うコーティング工程を経てきな粉の水分値を3~8%とすることを特徴とするきな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法である。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
きな粉に水分を添加する給水工程を実施し、きな粉の水分値を2~10%とするように調整するコントロール工程と、次いでこのきな粉の表面をショ糖脂肪酸エステルの粉末で覆うコーティング工程を経てきな粉の水分値を3~8%とすることを特徴とするきな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法。
【請求項2】
湿度30~90%の環境下にきな粉を静置してコントロール工程を実施することを特徴とする請求項1記載のきな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法。
【請求項3】
きな粉の粉末とショ糖脂肪酸エステルの粉末を直接混合するようにしたコーティング工程を実施することを特徴とする請求項1記載のきな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法。
【請求項4】
きな粉の粉末とショ糖脂肪酸エステルの粉末を直接混合するようにしたコーティング工程を実施することを特徴とする請求項1記載のきな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥油性の高いきな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
揚げパンやドーナツなどの油であげたものやケーキなどの油分が多い和洋菓子(製品)には、味覚の向上や美観維持の目的で製品の完成直前にきな粉を主成分とするトッピングを振りかけることが多い。
このようなきな粉を主成分とする製菓用トッピングは、振りかけ対象である揚げパンやドーナツなどの内部や表面に含まれる水分や油分によっていろいろな影響を受け、味覚の低減や美観の低下をきたすことがある。
【0003】
従来のきな粉を主成分とする製菓用トッピングは、味覚の向上や美観維持の目的を達成するため、振りかけの対象である製品に含まれる水分や油分からの影響を受けにくくするため、いろいろな対策を講じて撥水性や撥油性に優れたきな粉を主成分とする製菓用トッピングを開発してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2629596号公報
【特許文献2】特許第3950705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に示すような撥水性に優れた製菓用トッピングは複数開示されているが、これに対して撥油性に優れた製菓用トッピングはいまだ開示されていないのが現状である。
特許文献2に示すような、「ショ糖脂肪酸エステルで製菓用トッピング素材をコーティングした発明」も存在するが、この特許文献2に係る製菓用トッピングであっても、撥水性は確保されるとしても、撥油性は安定しないものであり、揚げパンやドーナツのような油分を多く含む和洋菓子に振りかけた際には、きな粉を主成分とする製菓用トッピングに油分が浸透してきて味覚や美観を損なうという結果となっていた。
【0006】
本発明は、上記の問題点をすべて解消し、撥油性に優れたきな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法を提供し、その結果撥水性はもちろんのこと、撥油性にも優れたきな粉を主成分とする製菓用トッピングを得ることを目的とし、このきな粉を主成分とする製菓用トッピングを振りかけた和洋菓子の味覚の向上、美観の維持を確実なものとし、使い勝手の良い製菓用トッピングの新たな活用分野を創出しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、きな粉に水分を添加する給水工程を実施し、きな粉の水分値が2~10%となるように調整するコントロール工程と、次いでこのきな粉の表面をショ糖脂肪酸エステルの粉末で覆うコーティング工程を経てきな粉の水分値を3~8%とするようにしたことを特徴とするきな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法である。
【0008】
請求項2の発明は、湿度30~90%の環境下にきな粉を静置してコントロール工程を実施することを特徴とする請求項1記載のきな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法である。
【0009】
請求項3の発明は、きな粉の粉末とショ糖脂肪酸エステルの粉末を直接混合させるコーティング工程を実施することを特徴とする請求項1記載のきな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法である。
【0010】
請求項4の発明は、きな粉の粉末とショ糖脂肪酸エステルの粉末を直接混合させるコーティング工程を実施することを特徴とする請求項2記載のきな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1のきな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法によれば、揚げパンやドーナツなどの油で揚げたものやケーキなどに含まれた油分が製品の表面に染み出すことを防止し、結果として製品の味覚や美観を損なうことがないきな粉を主成分とする製菓用トッピングが得られるという優れた効果を発揮する。
【0012】
さらに請求項2乃至4に係る製菓用トッピングの製造方法によれば、品質が一層向上したきな粉を主成分とする製菓用トッピングが得られるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るきな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法の、原理を示す説明図であって、乳化剤のイメージ図である。
図2】本発明に係るきな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法の、原理を示す説明図であって、きな粉の水分値が低い場合を示したものである。
図3】本発明に係るきな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法の、原理を示す説明図であって、きな粉の水分値が高い場合を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
本発明は、給水工程において、きな粉に水分を添加する。
具体的にはきな粉の量産品を用意し、そこに水分を散布して、給水工程を行う。
通常は給水工程を行う前のきな粉の水分値は1%以下である。
ここできな粉の水分値とは、きな粉に含まれる水分の含有量を%で示した値をいう。
【0016】
給水工程の後、きな粉の水分値を2~10%とするように調整するコントロール工程を行う。
コントロール工程における下限値の2%は下記で述べる沈殿率から判断した値であり、上限値の10%はきな粉をおいしく食することができる官能試験の結果に基づく。
具体的には、コントロール工程におけるきな粉の水分値が2~10%になるように水分を散布するが、コントロール工程の精度を上げるため温風加熱やドラム加熱などの加熱手段を利用して正確な水分値を確保するように水分散布を実施する。
コントロール工程の後、きな粉の表面をショ糖脂肪酸エステルの粉末で覆うコーティング工程を実施してきな粉の水分値を3~8%とする。
乳化剤であるショ糖脂肪酸エステルは、きな粉の表面にミキサーでの撹拌混合でコーティング工程を行う。
【0017】
コントロール工程の前後におけるきな粉の水分値のデータは表1に示すとおりであり、このデータより水分値の下限を2%とし、上限を10%とした。
コントロール工程後のきな粉の水分値は3~8%が最も好ましい範囲であるが、2~10%であればおおよそ本発明の目指す目的を達成できる。
水分値が下限の2%のきな粉に乳化剤のコーティングを行うと、乳化剤に含まれる水分によりコーティング後の水分値が上昇し、水分値が上限の10%のきな粉に乳化剤のコーティングを行うと、水分が気化してコーティング後の水分値が下降する。
このような背景を考慮して、上記の通り水分値が決められる。
【0018】
【表1】
【0019】
表1から、用意したサンプルA~Fにおいて、それぞれのサンプルのコーティング前とコーティング後のきな粉の水分値を計測したが、コーティング前のきな粉の水分値が2~10%であれば、コーティング後のきな粉の水分値が3~8%となることが判明した。
さらにこのきな粉の表面をショ糖脂肪酸エステルの粉末で覆うコーティング工程を経てきな粉の水分値を3~8%とすることは、表2に示すきな粉の沈殿率のデータから、コーティング工程後のきな粉の水分値が3%以上であるときに沈殿率が向上するデータが判明し、表3の官能評価(5段階評価)より水分値が8%以内であるとおいしく食べられるというデータが判明した。
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
水分値と乳化剤コーティングの関係は図1図3に示す通りである。
乳化剤には、親水基1と親油基2が備わっており、親水基1は水との親和性が高い性質があり、親油基2は油との親和性が高い性質がある。(図1参照)
【0023】
図2に示す通り、きな粉の水分値が低い場合は、一粒のきな粉3に乳化剤の親水基1と親油基2が不均一に並ぶ(油に対する膜性が弱い結果である)。
その結果、きな粉の集団5をビーカー6内の油に乗せると、水分値の少ない場合ほど、油中に沈殿する率が高まることとなる。
きな粉の水分値と沈殿率の関係を表1に示す。
【0024】
図3に示す通り、きな粉の水分値が高い場合は、一粒のきな粉3に乳化剤の親水基1と親油基2が均一に並ぶ(油に対する膜性が高い結果である)。
この場合は、きな粉側に親水基が向かい、油側に親油基が向かうこととなる。
その結果、きな粉の集団5をビーカー6内の油に乗せると、水分値の高い場合ほど、油中に沈殿しにくくなる。
きな粉の水分値と沈殿率の関係は表1より容易に理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のきな粉を主成分とする製菓用トッピングの製造方法は、きな粉を主成分とする製菓用トッピングを製造し、その製品を利用する現場において利用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 親水基
2 親油基
3 一粒のきな粉
4 油
5 きな粉の集団
6 ビーカー
図1
図2
図3