(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024146983
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】超音波振動スクレーパ
(51)【国際特許分類】
B08B 1/00 20240101AFI20241008BHJP
B06B 1/02 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B08B1/00
B06B1/02 K
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059725
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】391008537
【氏名又は名称】ASTI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092842
【弁理士】
【氏名又は名称】島野 美伊智
(74)【代理人】
【識別番号】100166578
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 芳光
(72)【発明者】
【氏名】飯田 健弥
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隆文
(72)【発明者】
【氏名】結城 駿也
【テーマコード(参考)】
3B116
5D107
【Fターム(参考)】
3B116AB52
3B116BA03
3B116BC05
5D107AA11
5D107BB01
5D107FF03
5D107FF08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】刃をホーンに締結具によって着脱可能に締結・固定するものにおいてその締結力を高めることができる超音波振動スクレーパを提供すること。
【解決手段】超音波振動子に連結されたホーン5と、上記ホーン5の先端に設けられたスリット31と、上記スリット31にその一部が挿し込まれ締結具により締結・固定される刃41と、を具備し、上記ホーン5に超音波振動を付与しながら上記刃41を対象部位に当てることにより、上記対象部位に付着している汚れを剥離・除去する超音波振動スクレーパ1において、上記スリット31と上記刃41の締結面には一定の面粗さが施されているもの。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動子に連結されたホーンと、
上記ホーンの先端に設けられたスリットと、
上記スリットにその一部が挿し込まれ締結具により締結・固定される刃と、
を具備し、
上記ホーンに超音波振動を付与しながら上記刃を対象部位に当てることにより、上記対象部位に付着している汚れを剥離・除去する超音波振動スクレーパにおいて、
上記スリットと上記刃の締結面には一定の面粗さが施されていることを特徴とする超音波振動スクレーパ。
【請求項2】
請求項1記載の超音波振動スクレーパにおいて、
上記一定の表面粗さはRa(算術平均粗さ)が4~12の範囲又はRz(十点平均粗さ)が8~20の範囲で設定されるものであることを特徴とする超音波振動スクレーパ。
【請求項3】
請求項1記載の超音波振動スクレーパにおいて、
上記締結具はボルトとナットであることを特徴とする超音波振動スクレーパ。
【請求項4】
請求項3記載の超音波振動スクレーパにおいて、
上記ホーンには上記ボルトが貫通する貫通孔が穿孔されていて、
上記貫通孔の両端には上記ボルトのボルト頭及び上記ナットが埋設される座ぐり穴が設けられていることを特徴とする超音波振動スクレーパ。
【請求項5】
請求項4記載の超音波振動スクレーパにおいて、
上記座ぐり穴の底面にはボルト或いはナットの締結方向の回転のみを許容する凹凸部が設けられていることを特徴とする超音波振動スクレーパ。
【請求項6】
請求項1記載の超音波振動スクレーパにおいて、
上記スリットの奥には弾性付与を目的とした中空部が設けられていて、上記中空部を挟んで上記ホーンの表裏両面にはフィンガ突設されていることを特徴とする超音波振動スクレーパ。
【請求項7】
請求項1記載の超音波振動スクレーパにおいて、
上記刃の長さは横振れが発生し難い長さに設定されていることを特徴とする超音波振動スクレーパ。
【請求項8】
請求項7記載の超音波振動スクレーパにおいて、
上記刃の長さは20mm~40mmの範囲で設定されていることを特徴とする超音波振動スクレーパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、床面(例えば、浴室の床面)、建物の窓ガラス、厨房設備の焼き用鉄板、等において付着・堆積した汚れを剥離・除去する際に使用する超音波振動スクレーパに係り、特に、刃をホーンに締結具によって着脱可能に締結・固定するものにおいて、その締結力を高めることができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、床面に付着・堆積した汚れを剥離・除去する場合には、汚れた部位に水、洗浄用洗剤(例えば、アルカリ性洗剤)を吹き付けながら、金属製スクレーパ(金属製ヘラ)を使用して、付着・堆積している汚れを削り落とす。
【0003】
しかしながら、それらの作業は全て手作業であり、面倒な作業を余儀なくされることはもとより、衝撃を加える等の力が必要であったり、作業効率が悪いという問題があった。
【0004】
そこで、そのような課題を解決するものとして、超音波振動を利用した超音波振動スクレーパが提案されている。その種の超音波振動スクレーパの構成を開示するものとして、例えば、特許文献1、等がある。
【0005】
上記特許文献1に記載された発明による超音波剥離ツールの場合には、超音波剥離ツールが連結ネジを介して超音波振動子に着脱可能に締結・固定されている。上記超音波剥離ツールには一定幅の幅狭部があり、その幅狭部の先端が鋭利に形成されていて刃部となっている。上記幅狭部に超音波振動子を介して超音波振動を付与することにより、上記刃部を介して床面に付着・堆積している汚れを剥離・除去する。
【0006】
上記構成の超音波剥離ツールを使用することにより、面倒な手作業をなくして作業効率を向上させることができる。反面、先端の刃部が経年変化等によって破損した場合には、超音波剥離ツール全体を新規のものに交換しなければならず、保守・管理に多大なコストが掛かってしまうという問題があった。
【0007】
そこで、先端の刃部を別体として超音波剥離ツールに締結具により着脱可能に締結・固定する構成が考えられている。そのような構成を開示するものとして、例えば、特許文献2がある。この特許文献2に記載されているのは超音波カッター装置であるが、工具ホーンの先端にカッター刃が固定ネジによって着脱可能に締結・固定される構成になっている。
【0008】
詳しく説明すると、上記工具ホーンの先端にはスリットが形成されていて、そのスリット内にカッター刃が挿し込まれていて、固定ネジをスリットの片側から挿し込んで上記カッター刃の貫通孔を通してスリットの反対側に螺合させることにより、カッター刃をスリット内に締結・固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】登録実用新案第3025720号公報
【特許文献2】特開2011-125972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来の構成によると、次のような問題があった。
すなわち、固定ネジを工具ホーンに直接螺合させる構成では締結力が足りず、工具ホーンとカッター刃との間に滑りが発生してしまい、それに起因して過剰な発熱が発生し、超音波振動の伝達が損なわれてしまうという問題があった。
【0011】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、刃をホーンに締結具によって着脱可能に締結・固定するものにおいて、その締結力を高めることができる超音波振動スクレーパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するべく本願発明の請求項1による超音波振動スクレーパは、超音波振動子に連結されたホーンと、上記ホーンの先端に設けられたスリットと、上記スリットにその一部が挿し込まれ締結具により締結・固定される刃と、を具備し、上記ホーンに超音波振動を付与しながら上記刃を対象部位に当てることにより、上記対象部位に付着している汚れを剥離・除去する超音波振動スクレーパにおいて、上記スリットと上記刃の締結面には一定の面粗さが施されていることを特徴とするものである。
又、請求項2による超音波振動スクレーパは、請求項1記載の超音波振動スクレーパにおいて、上記一定の表面粗さはRa(算術平均粗さ)が4~12の範囲又はRz(十点平均粗さ)が8~20の範囲で設定されるものであることを特徴とするものである。
又、請求項3による超音波振動スクレーパは、請求項1記載の超音波振動スクレーパにおいて、上記締結具はボルトとナットであることを特徴とするものである。
又、請求項4による超音波振動スクレーパは、請求項3記載の超音波振動スクレーパにおいて、上記ホーンには上記ボルトが貫通する貫通孔が穿孔されていて、上記貫通孔の両端には上記ボルトのボルト頭及び上記ナットが埋設される座ぐり穴が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項5による超音波振動スクレーパは、請求項4記載の超音波振動スクレーパにおいて、上記座ぐり穴の底面にはボルト或いはナットの締結方向の回転のみを許容する凹凸部が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項6による超音波振動スクレーパは、請求項1記載の超音波振動スクレーパにおいて、上記スリットの奥には弾性付与を目的とした中空部が設けられていて、上記中空部を挟んで上記ホーンの表裏両面にはフィンガ突設されていることを特徴とするものである。
又、請求項7による超音波振動スクレーパは、請求項1記載の超音波振動スクレーパにおいて、上記刃の長さは横振れが発生し難い長さに設定されていることを特徴とするものである。
又、請求項8による超音波振動スクレーパは、請求項7記載の超音波振動スクレーパにおいて、上記刃の長さ(l)は20mm~40mmの範囲で設定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように本願発明の請求項1による超音波振動スクレーパによると、超音波振動子に連結されたホーンと、上記ホーンの先端に設けられたスリットと、上記スリットにその一部が挿し込まれ締結具により締結・固定される刃と、を具備し、上記ホーンに超音波振動を付与しながら上記刃を対象部位に当てることにより、上記対象部位に付着している汚れを剥離・除去する超音波振動スクレーパにおいて、上記スリットと上記刃の締結面には一定の面粗さが施されているので、締結力を高めることができ、ホーンと刃との間の滑りの発生を防止し、滑りに起因した過剰な発熱、超音波振動の伝達の棄損を防止することができる。
又、請求項2による超音波振動スクレーパによると、請求項1記載の超音波振動スクレーパにおいて、上記一定の表面粗さはRa(算術平均粗さ)が4~12の範囲又はRz(十点平均粗さ)が8~20の範囲で設定されるものであるので、締結力を高めることができ、ホーンと刃との間の滑りの発生を防止し、滑りに起因した過剰な発熱、超音波振動の伝達の棄損を防止することができる。
又、請求項3による超音波振動スクレーパによると、請求項1記載の超音波振動スクレーパにおいて、上記締結具はボルトとナットであるので、ボルトをホーンに直接螺合させる場合に比べて、横振れを抑制して超音波振動の縦振動の棄損を防止することができる。
又、請求項4による超音波振動スクレーパによると、請求項3記載の超音波振動スクレーパにおいて、上記ホーンには上記ボルトが貫通する貫通孔が穿孔されていて、上記貫通孔の両端には上記ボルトのボルト頭及び上記ナットが埋設される座ぐり穴が設けられているので、ボルト頭、ナットのホーンの外周面からの突出をなくすことができ、横振れを抑制して超音波振動の縦振動の棄損を防止することができる。
又、請求項5による超音波振動スクレーパによると、請求項4記載の超音波振動スクレーパにおいて、上記座ぐり穴の底面にはボルト或いはナットの締結方向の回転のみを許容する凹凸部が設けられているので、ボルト、ナットの不用意な緩みを防止することができる。
又、請求項6による超音波振動スクレーパによると、請求項1記載の超音波振動スクレーパにおいて、上記スリットの奥には弾性付与を目的とした中空部が設けられていて、上記中空部を挟んで上記ホーンの表裏両面にはフィンガ突設されているので、横振れを抑制して超音波振動の縦振動の棄損を防止することができる。
又、請求項7による超音波振動スクレーパによると、請求項1記載の超音波振動スクレーパにおいて、上記刃の長さは横振れが発生し難い長さに設定されているので、横振れ発生による超音波振動の縦振動の棄損を防止することができる。
又、請求項8による超音波振動スクレーパによると、請求項7記載の超音波振動スクレーパにおいて、上記刃の長さは20mm~40mmの範囲で設定されているので、横振れ発生による超音波振動の縦振動の棄損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一の実施の形態を示す図で、超音波振動スクレーパの斜視図である。
【
図2】本発明の一の実施の形態を示す図で、超音波振動スクレーパの要部を上から視た斜視図である。
【
図3】本発明の一実施の形態を示す図で、刃をホーンに固定しているボルト・ナットを示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施の形態を示す図で、超音波振動スクレーパの要部を下から(ナット側から)視た斜視図である。
【
図5】本発明の一実施の形態を示す図で、ホーンの側面図である。
【
図6】本発明の一実施の形態を示す図で、ホーンの平面図である。
【
図7】本発明の一実施の形態を示す図で、ホーンの底面図である。
【
図8】本発明の一実施の形態を示す図で、刃の斜視図である。
【
図9】本発明の一実施の形態を示す図で、刃の平面図である。
【
図10】本発明の一実施の形態を示す図で、作用を説明するためのホーンの側面図である。
【
図11】本発明の一実施の形態を示す図で、作用を説明するためのホーンの一部平面図である。
【
図12】本発明の一実施の形態を示す図で、作用を説明するためのホーンの一部平面図である。
【
図13】本発明の一実施の形態を示す図で、
図13(a)はホーンの先端部を表側から視た一部平面図、
図13(b)はホーンの先端部を裏面側から視た一部平面図、
図13(c)は
図13(a)のc-c断面図、
図13(d)は
図13(a)のd-d断面図である。
【
図14】本発明の一実施の形態を示す図で、超音波振動スクレーパによって対象物の表面から付着・堆積している汚れを剥離させていく様子を順次示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1乃至
図14を参照して本発明の一の実施の形態について説明する。
図1は本実施の形態による超音波振動スクレーパ1の全体の構成を示す斜視図である。まず、ケース3があり、このケース3内には、
図2に示すように、ホーン5と超音波振動子7が一体化されたものが内装されている。上記ホーン5と超音波振動子7は図示しないボルトジョイントを介して一体化されている。
【0016】
上記超音波振動子7にはケーブル9が接続されていて、このケーブル9は上記ケース3の外側に引き出されていて、その先端には出力プラグ11が取り付けられている。又、電源ユニット13が設置されていて、この電源ユニット13には出力コネクタ15が設けられている。上記出力プラグ11は上記出力コネクタ15に挿し込まれる。
【0017】
上記ホーン5は、後部21と、前部23と、上記後部21と前部23を結ぶ絞り部25と、から構成されている。上記後部21は厚肉に形成されているのに対して上記前部23は上記後部21に対して略半分程度の薄肉に形成されている。上記絞り部25は上記前部23に対してさらに薄肉に形成されている。上記絞り部25と上記前部23の境界部の表裏両面にはフィン27、27が突設されている。
【0018】
上記前部23にはスリット31が形成されていて、このスリット31の奥には横断面形状が長穴形状をなす中空部33が形成されている。この中空部33はスリット31において必要な弾性を得るために設けられている。上記フィン27、27は上記中空部33を挟むような位置に設けられている。これは上記中空部33を設けることにより超音波共振が成立し難くなる欠点をなくすためであり、且つ、作用時における横振れを防止するためである。
【0019】
上記スリット31には刃41が挿し込まれていて、後述する締結具によって着脱可能に締結・固定されている。上記刃41は横揺れし難い長さ(l)に設定されており、それによって、対象物に当接した場合に金属音や刃折れが発生し難いようにしている。具体的には、長さ(l)は、20mm~40mmの範囲で設定している。
【0020】
上記ホーン5の前部23には貫通孔51、51が穿孔されている。上記ホーン5の表側であって上記貫通孔51の縁には、
図6に示すように、座ぐり穴53、53が設けられている。同様に、上記ホーン5の裏側であって上記貫通孔51の縁には、
図7に示すように、座ぐり穴55、55が設けられている。
【0021】
上記刃41には、
図8、
図9に示すように、貫通孔61、61が穿孔されている。又、
図3に示すように、2組の締結具71、71が設けられていて、上記締結具71はボルト73と六角ナット75とから構成されている。上記刃41を上記スリット31内に挿し込んで、表側からボルト71、71を挿し込む。上記ボルトはホーン5の貫通孔51、51、刃41の貫通孔61、61、ホーン5の貫通孔51、51を通って裏側に突出され、そこに六角ナット75、75が螺合される。それによって、上記刃41はホーン5のスリット31内に締結・固定される。
【0022】
図10に示すように、本実施の形態による超音波振動スクレーパ1の場合には、縦振動(
図10中矢印aで示す)が基本となる。その際、従来のようにホーンの孔に雌ネジ部を設けてボルトを直接螺合させる構成を採用した場合には、横揺れが発生して上記縦振動が棄損されてしまう。そこで、本実施の形態の場合には、ボルト73、73と六角ナット75、75からなる締結具71、71を使用した締結構造を採用している。それによって、上記横揺れの発生それに起因した縦振動の棄損を防止している。
【0023】
上記ボルト73、73のボルト頭は上記座ぐり穴53、53内に埋没し上記ホーン5の外側に突出することはない。上記六角ナット75、75も上記座ぐり穴55、55内に埋没し上記ホーン5の外側に突出することはない。それによっても、上記横揺れの発生それに起因した縦振動の棄損を防止している。又、上記ホーン5の外周面の外側への突出部をなくして作業性を向上させるようにしている。
【0024】
上記スリット31の上下両内面には一定の面粗さが設けられている。又、上記刃41の表裏両面であって上記スリット31内に挿し込まれる部分にも一定の面粗さが設けられている。上記一定の面粗さを設ける手段としては、例えば、ワイヤー放電加工、ブラストショット加工、等がある。上記一定の面粗さは、例えば、Ra(算術平均粗さ)が4~12の範囲又はRz(十点平均粗さ)が8~20の範囲で設定される。
尚、
図9では刃41の表側における面粗さ部を点々で示しているが、実際には、肉眼での視認が難しい程度の面粗さである。
【0025】
このような構成とすることにより、上記スリット31の締結面の面粗さの微小凹凸と刃41の締結面の面粗さの微小凹凸が係合し、上記締結具71、71によって締結・固定した場合の締結力を高めることができる。面粗さが小さ過ぎる場合、超音波振動を加えた場合締結力が維持できず滑りが発生し、振動伝達が棄損し過剰な発熱に繋がってしまう。逆に面粗さが大き過ぎる場合、超音波振動の伝達が接地面不足でロスしてしまい伝達の棄損が生じてしまう。ゆえに、それによって、ホーン5と刃41との間の滑りの発生を防止し、滑りに起因した過剰な発熱をなくし、超音波振動の伝達の棄損をなくすことができる。
【0026】
上記六角ナット75、75側の座ぐり穴55、55であるが、
図12にも示すように、一対の直線部55a、55aが縦振動の方向に対して平行な方向に指向している。これも超音波振動スクレーパ1における縦振動の棄損を防止するためであり、又、刃折れや発熱を抑えるためである。
因みに、
図11に示すように、一対の直線部55a、55aが縦振動の方向に対して直交する方向に指向していた場合には、超音波振動スクレーパ1における縦振動を棄損してしまうことになり、且つ、発熱が懸念されることになる。
【0027】
ボルト73、73側の座ぐり穴53、53、六角ナット75、75側の座ぐり穴55、55の底面の構造について説明する。
図13(a)に示すように、座ぐり穴53、53の底面は左側半分と右側半分では異なる凹凸部81、83が設けられている。凹凸部81は
図13(c)に示すような向きの凹凸形状になっていて、例えば、ボルト73が反時計方向(緩む方向)に回転しようとした場合それを規制するように作用する。これに対して、凹凸部83は
図13(d)に示すような向きの凹凸形状になっていて、例えば、ボルト73が時計方向(締める方向)に回転しようとした場合それを許容するように作用する。このような作用は超音波振動による縦振動が発生した場合に効果的に機能する。縦振動の伸縮によりボルト73が時計方向に回転しようとした場合にはこれを許容し、反時計方向に回転しようとした場合にはこれを規制する。結果的に、ボルト73の不用意な緩みを防止することができる。
【0028】
これは、
図13(b)に示すように、座ぐり穴55、55の底面の場合も同様であり、座ぐり穴55、55の底面は左側半分と右側半分では異なる凹凸部85、87が設けられている。凹凸部85は
図13(c)に示すような向きの凹凸形状になっていて、例えば、六角ナット75が反時計方向(緩む方向)に回転しようとした場合それを規制するように作用する。これに対して、凹凸部87は
図13(d)に示すような向きの凹凸形状になっていて、例えば、六角ナット75が時計方向(締める方向)に回転しようとした場合それを許容するように作用する。このような作用は超音波振動による縦振動が発生した場合に効果的に機能する。縦振動の伸縮により六角ナット75が時計方向に回転しようとした場合にはこれを許容し、反時計方向に回転しようとした場合にはこれを規制する。結果的に、ナット75の不用意な緩みを防止することができる。
【0029】
以上の構成を基にその作用を説明する。
図14に示すように、本実施の形態による超音波振動スクレーパ1を手90によって把持した状態で、刃41を対象物91に対して所定の傾斜角度で押し当てる。その状態で超音波振動を付与しながら、
図14(a)、
図14(b)、
図14(c)に示すように、前方に徐々に移動させていく。それによって、対象物91に付着・堆積している汚れ93を剥離・除去させていく。
【0030】
以上、本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、ホーン5の先端に刃41を着脱可能に設ける構成を採用しているので、仮に、経年変化等によって刃41が損傷してもその刃41のみを外して新規の刃41と交換すればよく、保守・管理に要するコストを低減させることができる。
又、対象物91の種類、材質、付着物の付着・堆積の状態に応じて適切な刃41を選択することになるが、その際も、先端の刃41のみを適宜交換すればよく、保守・管理に要するコストを低減させることができる。
又、刃41はホーン5のスリット31内に挿し込まれて2組の締結具71、71によって締結・固定される構成になっていて、その際、スリット31の上下両面、刃41の表裏両面には一定の面粗さが設けられているので、強固な締結状態を得ることができる。それによって、ホーン5と刃41との間の滑りの発生を防止し、滑りに起因した過剰な発熱や超音波振動の伝達の棄損を防止することができる。
又、上記面粗さはRa(算術平均粗さ)が4~12の範囲又はRz(十点平均粗さ)が8~20の範囲で設定されているので、上記効果を確実に得ることができる。
又、刃41は横揺れし難い長さ(l)、特に、20mm~40mmの範囲で設定されているので、対象物91に当接した場合にも金属音や刃折れは発生し難いものとなっている。、
又、刃41のボルト73、73が通る部分は貫通孔61、61となっているので、仮に、締結が緩むようなことがあっても刃41が飛び出るようなことはない。
因みに、ボルト73、73が通る部分がU字形状の切欠部であった場合には、締結が緩むようなことがあると刃41が飛び出てしまうことが懸念される。
又、ボルト73の頭部は座ぐり穴53から突出することなく、六角ナット75も座ぐり穴55から突出することはないので、超音波振動の縦振動特性に歪が発生することを防止することができる。
又、又、ボルト73の頭部は座ぐり穴53から突出することなく、六角ナット75も座ぐり穴55から突出することはないので、作業性の向上を図ることもできる。
又、スリット31において必要な弾性を得るためにスリット31の奥に中空部33を設けているので、スリット31において必要な弾性を得て、それによって、刃41を挟持することができる。
又、上記中空部33の表裏両側にフィン27、27を設けているので、中空部33を設けることにより超音波共振が成立し難くなる欠点をなくすことができ、且つ、作用時における横振れを防止することができる。
又、座ぐり穴53、53の底面には向きが異なる凹凸部81、83が設けられているので、ボルト73の不用意な緩みを防止することができる。同様に、座ぐり穴55、55の底面にも向きが異なる凹凸部85、87が設けられているので、六角ナット75の不用意な緩みを防止することができる。これは超音波振動による縦振動が発生した場合に効果的に機能し、縦振動により伸縮に起因したボルト73、ナット75の不用意な緩みを防止することができる。
【0031】
尚、本発明は前記一実施の形態に限定されるものではない。
まず、ホーンの形状は前記一実施の形態に示すものに限定されるものではなく様々な形状が考えられる。
又、前記一実施の形態では2組の締結具を使用した例を挙げて説明したが、3組以上の場合も考えられる。
その他、図示した構成はあくまで一例である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、例えば、床面(例えば、浴室の床面)、建物の窓ガラス、厨房設備の焼き用鉄板、等において付着・堆積した汚れを剥離・除去する際に使用する超音波振動スクレーパに係り、特に、刃をホーンに締結具によって着脱可能に締結・固定するものにおいて、その締結力を高めることができるように工夫したものに関し、例えば、浴室の床面に付着・堆積した汚れを剥離・除去させる作業に好適である。
【符号の説明】
【0033】
1 超音波振動スクレーパ
5 ホーン
7 超音波振動子
27 フィン
31 スリット
33 中空部
41 刃
53 座ぐり穴
55 座ぐり穴
71 締結具
73 ボルト
75 六角ナット(ナット)