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特開2024-147007ディスクブレーキ用キャリパボディ及びフローティング型ディスクブレーキ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147007
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】ディスクブレーキ用キャリパボディ及びフローティング型ディスクブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/02 20060101AFI20241008BHJP
   F16D 55/226 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
F16D65/02 B
F16D55/226 104F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059764
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 和泉
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA63
3J058AA69
3J058AA73
3J058AA77
3J058AA84
3J058AA87
3J058BA46
3J058CC25
3J058EA03
3J058EA08
3J058FA01
(57)【要約】
【課題】ブリッジ部の周方向外側の端部に接続された爪部に作用する応力を緩和できる、ディスクブレーキ用キャリパボディを提供する。
【解決手段】キャリパボディ3を構成する爪部18a、18b、18cは、ロータの軸方向外側に配置されており、ブリッジ部19の軸方向外側の端部のうち周方向両外側の端部及び周方向中央部のそれぞれに接続されている。ブリッジ部19の外周面には、軸方向中間部の周方向外側の端部に、径方向内側に向けて凹んだ凹部24a、24bを設ける。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの軸方向内側に配置され、かつ、シリンダを有するインナボディ部と、
前記ロータの軸方向外側に配置された複数の爪部と、
略円弧形の断面形状を有し、前記ロータの径方向外側に配置され、かつ、前記インナボディ部と複数の前記爪部とを軸方向に連結するブリッジ部と、
を備え、
複数の前記爪部のうち、2つの前記爪部は、前記ブリッジ部の軸方向外側の端部のうち少なくとも周方向両外側の端部のそれぞれに接続されており、
前記ブリッジ部は、外周面の軸方向中間部の周方向外側の端部に、径方向内側に向けて凹んだ凹部を有する、
ディスクブレーキ用キャリパボディ。
【請求項2】
前記凹部は、底面と、前記底面の周縁部から径方向外側へと延びた内側面とを有し、
前記内側面は、段差のない滑らかな面である、
請求項1に記載したディスクブレーキ用キャリパボディ。
【請求項3】
前記凹部は、前記ブリッジ部の周方向外側の端面に開口している、請求項1に記載したディスクブレーキ用キャリパボディ。
【請求項4】
前記凹部は、前記ブリッジ部の周方向両外側の端部のそれぞれに備えられている、請求項1に記載したディスクブレーキ用キャリパボディ。
【請求項5】
前記ブリッジ部の周方向両外側の端部に備えられた1対の前記凹部は、周方向に関して対称形状を有している、請求項4に記載したディスクブレーキ用キャリパボディ。
【請求項6】
前記凹部の周方向幅は、前記凹部の軸方向両側の端部から前記凹部の軸方向中間部に備えられた頂部に向かうほど大きくなる、請求項1に記載したディスクブレーキ用キャリパボディ。
【請求項7】
前記凹部は、径方向視で略三角形状を有する、請求項6に記載したディスクブレーキ用キャリパボディ。
【請求項8】
前記凹部は、径方向視で略半円形状又は略半楕円形状を有する、請求項6に記載したディスクブレーキ用キャリパボディ。
【請求項9】
前記頂部は、前記ブリッジ部の外周面の軸方向中央部よりも軸方向内側に位置している、請求項6に記載したディスクブレーキ用キャリパボディ。
【請求項10】
前記凹部の径方向深さは、前記凹部を形成する以前の状態での、前記ブリッジ部の周方向外側の端部の径方向厚さの1/5~7/10の範囲内にある、請求項1に記載したディスクブレーキ用キャリパボディ。
【請求項11】
前記凹部の軸方向内側部分における径方向深さは、前記凹部の軸方向外側部分における径方向深さよりも深い、請求項1に記載したディスクブレーキ用キャリパボディ。
【請求項12】
前記凹部は、前記爪部の軸方向内側面と前記ブリッジ部の内周面との接続部に対し、軸方向に重なる位置に配置されている、請求項1に記載したディスクブレーキ用キャリパボディ。
【請求項13】
前記凹部の軸方向外側の端部は、前記爪部の軸方向内側面と前記ブリッジ部の内周面との接続部よりも軸方向外側に位置している、請求項1に記載したディスクブレーキ用キャリパボディ。
【請求項14】
前記爪部を3つ備え、
それぞれの前記爪部は、前記ブリッジ部の周方向両外側の端部及び周方向中央部のそれぞれに接続されている、請求項1に記載したディスクブレーキ用キャリパボディ。
【請求項15】
前記ロータの軸方向内側に配置されるインナパッドと、
前記ロータの軸方向外側に配置されるアウタパッドと、
車体に固定され、前記インナパッド及び前記アウタパッドのそれぞれを軸方向に移動可能に支持するサポートと、
前記サポートに対して軸方向に移動可能に支持されたキャリパボディと、を備え、
前記キャリパボディは、請求項1~14のうちのいずれか1項に記載したディスクブレーキ用キャリパボディである、
フローティング型ディスクブレーキ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキ用キャリパボディ及びフローティング型ディスクブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や自動二輪車の制動を行うために、ディスクブレーキ装置が広く使用されている。ディスクブレーキ装置による制動時には、車輪とともに回転するロータの軸方向両側に配置された1対のパッドを、ピストンによりロータの軸方向両側面に押し付ける。このようなディスクブレーキ装置として、従来から各種構造のものが知られているが、フローティング型のディスクブレーキ装置は、軽量化やコストの低減の面で有利であることから、従来から広く使用されている。
【0003】
フローティング型のディスクブレーキ装置は、車体に固定されるサポートと、サポートに対して軸方向に移動可能に支持されたキャリパボディと、サポートに対し軸方向の移動を可能に支持されたインナパッド及びアウタパッドとを備える。なお、「軸方向」、「径方向」及び「周方向」とは、特に断らない限り、車輪とともに回転する円板状のロータの軸方向、径方向及び周方向をいう。
【0004】
キャリパボディは、ロータの軸方向内側に配置され、かつ、シリンダを有するインナボディ部と、ロータの軸方向外側に配置され、かつ、アウタパッドを軸方向内側に押圧する爪部と、ロータの径方向外側に配置され、かつ、インナボディ部と爪部とを軸方向に連結するブリッジ部とを備える。インナボディ部に備えられたシリンダの内側には、制動時にインナパッドを軸方向外側に押圧するピストンが嵌装されている。
【0005】
フローティング型のディスクブレーキ装置により制動を行う際には、マスタシリンダからシリンダへと圧油を送り込み、ピストンによりインナパッドを、ロータの軸方向内側面に押し付ける。すると、この押し付け力の反作用として、キャリパボディが、サポートに対して軸方向内側へと移動する。これにより、爪部が、アウタパッドをロータの軸方向外側面に押し付ける。この結果、ロータが、インナパッドとアウタパッドとにより軸方向両側から強く挟持されて、制動が行われる。
【0006】
フローティング型のディスクブレーキ装置においては、必要とする制動力の大きさに応じて、シリンダの数及び爪部の数がそれぞれ決定されている。例えば特開2020-46037号公報(特許文献1)には、1つのシリンダと2つの爪部を備えたディスクブレーキ装置が開示されている。また、特開2015-152130号公報(特許文献2)には、2つのシリンダと3つの爪部を備えたディスクブレーキ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-46037号公報
【特許文献2】特開2015-152130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
キャリパボディを構成するブリッジ部は、ロータの外周縁に沿って円弧状に湾曲している。このため、爪部が接続されているブリッジ部の周方向位置によって、爪部とブリッジ部との接続部分から爪部とアウタパッドとの当接部までの径方向に関する距離が異なる。
【0009】
例えば図19に示したキャリパボディ100の断面模式図のように、キャリパボディ100が、3つの爪部101a、101b、101cを備える構造の場合、ブリッジ部102の周方向両外側の端部に接続された爪部101a、101bに関する、ブリッジ部102との接続部分X1からアウタパッドとの当接部Y1までの距離L1は、ブリッジ部102の周方向中央部に接続された爪部101cに関する、ブリッジ部102との接続部分X2からアウタパッドとの当接部Y2までの距離L2よりも短くなる(L1<L2)。
【0010】
ところで、爪部101a、101b、101cは、制動時に、キャリパボディ100を周方向外側から見た模式図を表す図20中に破線で示したように、爪部101a、101b、101c自身が変形する(撓む)ことによって生じる軸方向変位量δ1と、図20中に二点鎖線で示したように、ブリッジ部102が径方向内側に沈むように反ることによって生じる軸方向変位量δ2との合計(δ1+δ2)分だけ、ロータから軸方向外側に離れる。
【0011】
ここで、制動時に、アウタパッドに生じる軸方向変形量は、爪部101a、101bによって押圧されるアウタパッドの周方向外側の端部と、爪部101cによって押圧されるアウタパッドの周方向中央部とで基本的に同じになる。このため、周方向外側の端部に備えられた爪部101a、101bの軸方向変位量(δ1+δ2)と、周方向中央部に備えられた爪部101cの軸方向変位量(δ1+δ2)は、互いに同じになる。
【0012】
また、従来構造のディスクブレーキ装置にあっては、ブリッジ部102の剛性は、周方向外側の端部と周方向中央部とで基本的に同じになるように設計されているため、ブリッジ部102が反ることによる軸方向変位量δ2は、周方向外側の端部に備えられた爪部101a、101bと周方向中央部に備えられた爪部101cとで、同じになる。
【0013】
このため、周方向外側の端部に備えられた爪部101a、101bは、周方向中央部に備えられた爪部101cに比べて、距離L1が短いにもかかわらず、周方向中央部に備えられた爪部101cと同じ分だけ軸方向に変形する。つまり、周方向外側の端部に備えられた爪部101a、101bに生じる軸方向変位量δ1は、周方向中央部に備えられた爪部101cに生じる軸方向変位量δ1と同じになる。
【0014】
したがって、周方向外側の端部に備えられた爪部101a、101bには、周方向中央部に備えられた爪部101cに比べて、大きな荷重が加わることになる。具体的には、周方向外側の端部に備えられた爪部101a、101bには、周方向中央部に備えられた爪部101cに比べて、理論的には距離L2と距離L1との差の3乗分だけ大きな荷重Pが加わることになる。
【0015】
これにより、周方向外側の端部に備えられた爪部101a、101bには、周方向中央部に備えられた爪部101cに比べて大きなモーメントMが加わるため、周方向外側の端部に備えられた爪部101a、101bの軸方向内側面とブリッジ部102の内周面とを接続する隅R部に作用する応力は、周方向中央部に備えられた爪部101cの軸方向内側面とブリッジ部102の内周面とを接続する隅R部に作用する応力よりも高くなる。
【0016】
以上のように、複数の爪部を備えたキャリパボディにおいては、ブリッジ部の周方向外側の端部に接続された爪部に、ブリッジ部のその他の部分に接続された部分に接続された爪部に比べて、制動時に作用する応力が高くなり、変形や損傷を生じやすくなる。
【0017】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ブリッジ部の周方向外側の端部に接続された爪部に作用する応力を緩和できる、ディスクブレーキ用キャリパボディ及びフローティング型ディスクブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様にかかるディスクブレーキ用キャリパボディは、インナボディ部と、複数の爪部と、ブリッジ部とを備える。
前記インナボディ部は、ロータの軸方向内側に配置され、かつ、シリンダを有している。
複数の前記爪部のそれぞれは、前記ロータの軸方向外側に配置されている。
前記ブリッジ部は、略円弧形の断面形状を有し、前記ロータの径方向外側に配置され、かつ、前記インナボディ部と複数の前記爪部とを軸方向に連結している。
前記爪部は、少なくとも2つ以上備えられており、それらのうちの2つの前記爪部は、前記ブリッジ部の軸方向外側の端部のうちの周方向両外側の端部のそれぞれに接続されている。
前記ブリッジ部は、外周面の軸方向中間部の周方向外側の端部に、径方向内側に向けて凹んだ凹部を有している。
【0019】
本発明の一態様にかかるディスクブレーキ用キャリパボディでは、前記凹部を、底面と、前記底面の周縁部から径方向外側へと延びた内側面とを有するものとし、このうちの内側面を、段差のない滑らかな面とすることができる。
【0020】
本発明の一態様にかかるディスクブレーキ用キャリパボディでは、前記凹部を、前記ブリッジ部の周方向外側の端面に開口させることができる。
あるいは、前記凹部を、前記ブリッジ部の周方向外側の端面に開口させずに、前記ブリッジ部の外周面にのみ開口させることもできる。
【0021】
本発明の一態様にかかるディスクブレーキ用キャリパボディでは、前記凹部を、前記ブリッジ部の周方向両外側の側の端部のそれぞれに備えることができる。
あるいは、前記凹部を、前記ブリッジ部のうち、回入側又は回出側の端部にのみ備えることもできる。
【0022】
本発明の一態様にかかるディスクブレーキ用キャリパボディでは、前記ブリッジ部の周方向両外側の端部に備えられた1対の前記凹部を、周方向に関して対称形状にすることができる。
あるいは、前記ブリッジ部の周方向両外側の端部に備えられた1対の前記凹部を、周方向に関して非対称形状にすることもできる。つまり、回入側に備えられた前記凹部と、回出側に備えられた前記凹部とを、周方向に関して非対称形状とすることもできる。
なお、1対の前記凹部が周方向に関して対称形状であるとは、輪郭形状が対称であるだけでなく、径方向深さについても対称(対応する周方向位置において同じ)であることをいう。
【0023】
本発明の一態様にかかるディスクブレーキ用キャリパボディでは、前記凹部の周方向幅を、前記凹部の軸方向両側の端部から前記凹部の軸方向中間部に備えられた頂部に向かうほど大きくすることができる。
この場合、前記凹部を、径方向視で略三角形状にすることもできるし、径方向視で略半円形状又は略半楕円形状にすることもできる。
また、前記頂部を、前記ブリッジ部の外周面の軸方向中央部よりも軸方向内側に位置させることができる。
あるいは、前記頂部を、前記ブリッジ部の外周面の軸方向中央部に位置させる、又は、前記ブリッジ部の軸方向中央部よりも軸方向外側に位置させることもできる。
【0024】
本発明の一態様にかかるディスクブレーキ用キャリパボディでは、前記凹部の径方向深さを、前記凹部を形成する以前の状態での、前記ブリッジ部の周方向外側の端部の径方向厚さの1/5~7/10の範囲内に規制することができる。
【0025】
本発明の一態様にかかるディスクブレーキ用キャリパボディでは、前記凹部の軸方向内側部分における径方向深さを、前記凹部の軸方向外側部分における径方向深さよりも深くすることができる。
あるいは、前記凹部の径方向深さを、前記凹部の全体で一定にすることもできる。
【0026】
本発明の一態様にかかるディスクブレーキ用キャリパボディでは、前記凹部を、前記爪部の軸方向内側面と前記ブリッジ部の内周面との接続部に対し、軸方向に重なる位置に配置することができる。
【0027】
本発明の一態様にかかるディスクブレーキ用キャリパボディでは、前記凹部の軸方向外側の端部を、前記爪部の軸方向内側面と前記ブリッジ部の内周面との接続部よりも軸方向外側に位置させることができる。
あるいは、前記凹部の軸方向外側の端部を、前記爪部の軸方向内側面と前記ブリッジ部の内周面との接続部と同じ軸方向位置、又は、該接続部よりも軸方向内側に位置させることもできる。
【0028】
本発明の一態様にかかるディスクブレーキ用キャリパボディでは、前記爪部を3つ備えることができる。そして、前記爪部を、前記ブリッジ部の周方向両外側の端部及び周方向中央部のそれぞれに接続することができる。
あるいは、前記爪部を2つだけ備えることができる。この場合、前記爪部を、前記ブリッジ部の周方向両外側の端部のそれぞれに接続することができる。
あるいは、前記爪部を4つ備えることができる。この場合、前記爪部を、前記ブリッジ部の周方向両外側の端部のそれぞれに接続し、残りの2つの前記爪部を、前記ブリッジ部の周方向中間部に接続することができる。
【0029】
本発明の一態様にかかるフローティング型ディスクブレーキ装置は、前記ロータの軸方向内側に配置されるインナパッドと、前記ロータの軸方向外側に配置されるアウタパッドと、車体に固定され、前記インナパッド及び前記アウタパッドのそれぞれを軸方向に移動可能に支持するサポートと、前記サポートに対して軸方向に移動可能に支持されたキャリパボディと、を備え、前記キャリパボディが、本発明の一態様にかかるディスクブレーキ用キャリパボディである。
【発明の効果】
【0030】
本発明のディスクブレーキ用キャリパボディ及びフローティング型ディスクブレーキ装置によれば、ブリッジ部の周方向外側の端部に接続された爪部に作用する応力を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、実施の形態の第1例にかかるフローティング型のディスクブレーキ装置を、軸方向外側から見た正面図である。
図2図2は、実施の形態の第1例にかかるフローティング型のディスクブレーキ装置を、軸方向内側から見た背面図である。
図3図3は、実施の形態の第1例にかかるフローティング型のディスクブレーキ装置を、径方向外側から見た平面図である。
図4図4は、実施の形態の第1例にかかるフローティング型のディスクブレーキ装置を、径方向内側から見た底面図である。
図5図5は、実施の形態の第1例にかかるフローティング型のディスクブレーキ装置を、回入側から見た側面図である。
図6図6は、実施の形態の第1例にかかるフローティング型のディスクブレーキ装置を、回出側から見た側面図である。
図7図7は、実施の形態の第1例にかかるキャリパボディを取り出し、軸方向外側から見た正面図である。
図8図8は、実施の形態の第1例にかかるキャリパボディを取り出し、軸方向内側から見た背面図である。
図9図9は、実施の形態の第1例にかかるキャリパボディを取り出し、径方向外側から見た平面図である。
図10図10は、実施の形態の第1例にかかるキャリパボディを取り出し、径方向内側から見た底面図である。
図11図11は、実施の形態の第1例にかかるキャリパボディを取り出し、回入側から見た側面図である。
図12図12は、実施の形態の第1例にかかるキャリパボディを取り出し、回出側から見た側面図である。
図13図13は、実施の形態の第1例にかかるキャリパボディを取り出し、軸方向外側、径方向外側かつ回出側から見た斜視図である。
図14図14は、実施の形態の第1例にかかるキャリパボディを取り出し、軸方向内側、径方向外側かつ回入側から見た斜視図である。
図15図15は、実施の形態の第1例にかかるキャリパボディを取り出し、軸方向内側、径方向内側かつ回出側から見た斜視図である。
図16図16は、図9のA-A線断面図である。
図17図17は、図9のB-B線断面図である。
図18図18は、実施の形態の第1例の変形例を示す、図13に相当する斜視図である。
図19図19は、ブリッジ部との周方向に関する接続位置の違いにより、爪部の径方向距離が異なることを説明するために示す、キャリパボディの断面模式図である。
図20図20は、制動時に、爪部が、爪部自身が撓むことによって生じる軸方向変位量δ1と、ブリッジ部が反ることによって生じる軸方向変位量δ2との合計分だけ、軸方向外側に変位することを説明するために示す、キャリパボディを周方向外側から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、図1図17を用いて説明する。
【0033】
本明細書及び特許請求の範囲全体で、「軸方向」、「径方向」及び「周方向」とは、特に断らない限り、車輪とともに回転する円板状のロータの軸方向、径方向及び周方向をいう。また、ディスクブレーキ装置を車体に取り付けた状態で、車体の幅方向外側を軸方向外側といい、車体の幅方向中央側を軸方向内側という。また、ディスクブレーキ装置の周方向中央側を周方向内側といい、ディスクブレーキ装置の周方向両側を周方向外側という。さらに、回入側とは、周方向外側のうちで、車両の前進時に、キャリパボディに対してロータが入り込む側をいい、回出側とは、周方向外側のうちで、車両の前進時に、キャリパボディからロータが抜け出て行く側をいう。
【0034】
〔ディスクブレーキ装置の構造説明〕
本例のディスクブレーキ装置1は、フローティング型のディスクブレーキ装置であり、サポート2と、ディスクブレーキ用のキャリパボディ3と、インナパッド4と、アウタパッド5とを備える。
【0035】
〈サポート〉
サポート2は、鋳鉄などの鉄系合金製の鋳造品であり、車体に固定される。サポート2は、キャリパボディ3を軸方向に移動可能に支持するとともに、インナパッド4及びアウタパッド5のそれぞれを軸方向に移動可能に支持する。
【0036】
サポート2は、周方向両外側の端部に配置された1対のガイド部7と、ロータ6(図3参照)よりも軸方向内側に配置され、かつ、周方向に伸長したインナ側周方向連結部8と、ロータ6よりも軸方向外側に配置され、かつ、周方向に伸長したアウタ側周方向連結部9とを有する。サポート2は、インナ側周方向連結部8の周方向両外側の端部に備えられた1対の固定孔10を利用して、車体を構成する懸架装置に固定される。なお、本発明を実施する場合には、サポート2からアウタ側周方向連結部9を省略することもできる。
【0037】
1対のガイド部7のそれぞれは、周方向視で逆U字形状を有しており、ロータ6を径方向外側から跨ぐように配置される。1対のガイド部7のそれぞれは、インナパッド4を軸方向に移動可能に支持するためのインナガイド部11と、アウタパッド5を軸方向に移動可能に支持するためのアウタガイド部12と、これらインナガイド部11及びアウタガイド部12のそれぞれの径方向外側の端部を軸方向に連結したキャリパガイド部13とを備える。
【0038】
インナガイド部11は、ロータ6よりも軸方向内側に配置されており、径方向に伸長している。インナガイド部11の径方向内側の端部は、インナ側周方向連結部8の周方向外側の端部に連結されている。インナガイド部11は、周方向内側面に、インナガイド凹溝14を有する。
【0039】
アウタガイド部12は、ロータ6よりも軸方向外側に配置されており、径方向に伸長している。アウタガイド部12の径方向内側の端部は、アウタ側周方向連結部9の周方向外側の端部に連結されている。アウタガイド部12は、周方向内側面に、アウタガイド凹溝15を有する。
【0040】
キャリパガイド部13は、ロータ6の径方向外側に配置されており、軸方向に伸長している。キャリパガイド部13の内部には、軸方向に伸長した図示しない支持孔が備えられている。支持孔には、後述するスライドピン16が摺動可能に挿入されている。
【0041】
〈キャリパボディ〉
本例のキャリパボディ3は、鉄系合金製の鋳造品であり、周方向視で逆U字形状を有している。キャリパボディ3は、2本のスライドピン16を利用して、サポート2に対し軸方向に移動可能に支持されている。
【0042】
キャリパボディ3は、インナボディ部17と、複数の爪部18a、18b、18cと、ブリッジ部19とを有する。インナボディ部17と、複数の爪部18a、18b、18cと、ブリッジ部19とは、互いに一体に構成されている。
【0043】
《インナボディ部》
インナボディ部17は、ロータ6の軸方向内側に配置されている。インナボディ部17は、2つのシリンダ20a、20bと、1対の周方向腕部21a、21bとを有している。なお、本発明を実施する場合に、インナボディ部に設けるシリンダの数は、特に限定されず、1つだけ設けても良いし、3つ以上設けても良い。
【0044】
2つのシリンダ20a、20bは、インナボディ部17の周方向中間部(内側部)に備えられている。2つのシリンダ20a、20bは、それぞれの中心軸をロータ6の中心軸と略平行にした状態で、周方向に並んで配置されている。シリンダ20a、20bのそれぞれは、略円筒形状を有しており、軸方向外側にのみ開口している。シリンダ20a、20bの内側には、ピストン37a、37bが軸方向に移動可能に嵌装されている。
【0045】
1対の周方向腕部21a、21bは、周方向に関して2つのシリンダ20a、20bを挟んで、インナボディ部17の周方向両外側部に備えられている。回入側に配置された周方向腕部21aは、回入側に配置されたシリンダ20aの外周面から回入側に向けて伸長しており、回出側に配置された周方向腕部21bは、回出側に配置されたシリンダ20bの外周面から回出側に向けて伸長している。
【0046】
《爪部》
本例のキャリパボディ3は、3つの爪部18a、18b、18cを有している。爪部18a、18b、18cのそれぞれは、制動時に、アウタパッド5を軸方向内側に向けて押圧するもので、ロータ6の軸方向外側に配置されている。
【0047】
爪部18a、18b、18cのそれぞれは、略矩形板状に構成されており、ブリッジ部19の内周面の軸方向外側の端部から径方向内側に向けて伸長している。このため、爪部18a、18b、18cのそれぞれの径方向外側の端部は、ブリッジ部19の軸方向外側の端部に接続されている。
【0048】
本例では、3つの爪部18a、18b、18cのうち、2つの爪部18a、18bが、ブリッジ部19の周方向両外側の端部に接続されており、残り1つの爪部18cが、ブリッジ部19の周方向中央部に接続されている。
【0049】
爪部18a、18b、18cのそれぞれの軸方向内側面とブリッジ部19の内周面とは、隅R部22a、22b、22cを介して接続されている。隅R部22a、22b、22cのそれぞれは、凹円弧状の断面形状を有している。隅R部22a、22b、22cは、互いに同じ大きさの曲率半径を有している。
【0050】
爪部18a、18b、18cのそれぞれの軸方向外側面は、径方向内側に向かう程軸方向内側に向かう方向に傾斜した傾斜面により構成されている。これに対し、爪部18a、18b、18cのそれぞれの軸方向内側面は、ロータ6の中心軸に直交する仮想平面と略平行な平面により構成されている。このため、爪部18a、18b、18cのそれぞれの軸方向厚さは、径方向内側に向かう程小さくなっている。
【0051】
周方向外側の端部に配置された爪部18a、18bのそれぞれの周方向外側面は、径方向内側に向かう程周方向内側に向かう方向に傾斜した傾斜面により構成されている。これに対し、爪部18a、18bのそれぞれの周方向内側面は、径方向外側半部が、径方向外側に向かう程周方向内側に向かう方向に湾曲した部分凹円筒面(1/4凹円筒面)により構成されており、径方向内側半部が、径方向にわたり周方向位置の変化しない平面により構成されている。このため、爪部18a、18bのそれぞれの周方向幅は、径方向内側に向かう程小さくなる。爪部18a、18bのそれぞれの周方向内側面を構成する部分凹円筒面と平面とは、径方向に滑らかに接続されている。
【0052】
周方向中央部に配置された爪部18cの周方向両外側面は、径方向外側半部が、径方向外側に向かう程周方向外側に向かう方向に湾曲した部分凹円筒面(1/4凹円筒面)により構成されており、径方向内側半部が、径方向にわたり周方向位置の変化しない平面により構成されている。このため、爪部18cの周方向幅は、周方向外側半部よりも径方向内側半部で小さくなっている。爪部18cの周方向外側面を構成する部分凹円筒面と平面とは、径方向に滑らかに接続されている。
【0053】
周方向外側の端部に配置された爪部18a、18bの周方向内側面を構成する部分凹円筒面と、周方向中央部に配置された爪部18cの周方向外側面を構成する部分凹円筒面とは、周方向に滑らかに接続されている。つまり、周方向外側の端部に配置された爪部18a、18bの径方向外側の端部と、周方向中央部に配置された爪部18cの径方向外側の端部とは、周方向に接続されている。
【0054】
周方向中央部に配置された爪部18cは、周方向外側の端部に配置された爪部18a、18bよりも、径方向内側に突出している。また、周方向中央部に配置された爪部18cの周方向幅は、周方向外側の端部に配置された爪部18a、18bの周方向幅よりも大きい。
【0055】
周方向外側の端部に配置された爪部18a、18bは、軸方向内側面の周方向外側の端部に、径方向に伸長した凹溝23a、23bを有している。これに対し、周方向中央部に配置された爪部18cは、軸方向内側面の周方向中央部に、径方向に伸長した凹溝23cを有している。凹溝23a、23b、23cは、爪部18a、18b、18cの軸方向内側面と、アウタパッド5を構成する後述の裏板33bの軸方向外側面(裏面)との接触位置を安定させるために設けられている。
【0056】
本例の場合にも、後述するように、ブリッジ部19は略円弧形の断面形状を有しているため、図17に示すように、ブリッジ部19の周方向外側の端部に接続された爪部18a、18bに関する、ブリッジ部19との接続部分X1からアウタパッド5との当接部Y1までの距離L1は、ブリッジ部19の周方向中央部に接続された爪部18cに関する、ブリッジ部19との接続部分X2からアウタパッド5との当接部Y2までの距離L2よりも短い(L1<L2)。
【0057】
《ブリッジ部》
ブリッジ部19は、ロータ6の径方向外側に配置され、かつ、インナボディ部17と複数の爪部18a、18b、18cとを軸方向に連結している。
【0058】
ブリッジ部19は、ロータ6の外周縁に沿って湾曲しており、部分円筒形状を有している。このため、ブリッジ部19は、図16及び図17に示すように、ロータ6の中心軸に直交する仮想平面に関して、略円弧形の断面形状を有している。
【0059】
ブリッジ部19の軸方向内側の端部は、インナボディ部17を構成する2つのシリンダ20a、20bを径方向外側から覆うようにして、これら2つのシリンダ20a、20bのそれぞれの径方向外側の端部につながっている。これに対し、ブリッジ部19の軸方向外側の端部は、爪部18a、18b、18cのそれぞれの径方向外側の端部につながっている。
【0060】
ブリッジ部19の周方向幅は、回入側に配置されたシリンダ20aの周方向外側の端部から回出側に配置されたシリンダ20bの周方向外側の端部までの周方向長さよりも、少しだけ大きい。ブリッジ部19の周方向両外側の端面は、ロータ6の中心軸と略平行に延びた平面により構成されている。
【0061】
ブリッジ部19の内周面(径方向内側面)は、ロータ6の中心軸を中心とする部分円筒面により構成されている。
【0062】
ブリッジ部19の外周面(径方向外側面)は、軸方向中間部から軸方向内寄り部分にわたる範囲(非制動時の状態で後述する中間点H(図11、12参照)と略一致する軸方向位置よりも軸方向内側部分)が、ロータ6の中心軸からの距離が軸方向内側に向かう程大きくなる略部分円すい筒面により構成されている。これに対し、ブリッジ部19の外周面は、軸方向外側部(非制動時の状態で後述する中間点H(図11、12参照)と略一致する軸方向位置よりも軸方向外側部分)が、略部分円筒面により構成されている。このため、ブリッジ部19の径方向厚さは、軸方向外側部よりも軸方向内側部で大きくなっている。
【0063】
本例のブリッジ部19は、外周面の軸方向中間部の周方向両外側の端部のそれぞれに、径方向内側に向けて凹んだ凹部24a、24bを有する。具体的には、ブリッジ部19は、外周面のうち、軸方向中間部を含む、軸方向外寄り部分(を構成する略部分円筒面)から軸方向内寄り部分(を構成する略部分円すい筒面)までの範囲に、凹部24a、24bを有する。このため、ブリッジ部19の軸方向中間部の周方向両外側の端部は、凹部24a、24bを設けることで薄肉化されており、凹部24a、24bを設けない場合に比べて剛性が低下している。
【0064】
凹部24a、24bのそれぞれは、ブリッジ部19の外周面に開口しているだけでなく、ブリッジ部19の周方向外側の端面にも開口している。
【0065】
1対の凹部24a、24bは、周方向に関して対称形状を有している。すなわち、1対の凹部24a、24bは、径方向視における輪郭形状が周方向に関して対称形状であるとともに、周方向に対応する位置での径方向深さが互いに同じである。これにより、ブリッジ部19の周方向両外側の端部の剛性を、互いに同じにしている。
【0066】
本例では、凹部24a、24bのそれぞれは、径方向視で略三角形状を有している。凹部24a、24bのそれぞれの周方向幅は、凹部24a、24bの軸方向両側の端部から凹部24a、24bの軸方向中間部に向かう程大きくなる。別の言い方をすれば、凹部24a、24bの軸方向幅は、凹部24a、24bの周方向外側の端部から凹部24a、24bの周方向内側の端部に向かう程小さくなる。なお、凹部の径方向視での形状は、三角形状に限定されず、略半円形状又は略半楕円形状などを採用することもできる。
【0067】
凹部24a、24bのそれぞれは、軸方向中間部に頂部25a、25bを有する。頂部25a、25bは、凹部24a、24bのうちで最も周方向内側に位置しており、三角形状の凹部24a、24bの1つの角丸部を構成する。このため、凹部24a、24bのそれぞれの周方向幅は、凹部24a、24bの軸方向両側の端部から頂部25a、25bに向かう程大きくなり、凹部24a、24bのそれぞれの軸方向幅は、周方向外側の端部から頂部25a、25bに向かう程小さくなる。
【0068】
例えば図3に示すように、頂部25a、25bのそれぞれは、ブリッジ部19の外周面のうち、ロータ6の軸方向中央部と軸方向位置が略一致する、軸方向中央部Cよりも軸方向内側に位置している。また、頂部25a、25bのそれぞれは、シリンダ20a、20bの軸方向外側の端面と爪部18a、18b、18cの軸方向内側面との中間点H(図11、12参照)よりも少しだけ軸方向内側に位置している。また、本例では、凹部24a、24bのそれぞれの軸方向外側の端部、具体的には、凹部24a、24bのそれぞれの周方向外側の端部における軸方向外側の端部を、爪部18a、18bの軸方向内側面とブリッジ部19の内周面とを接続する隅R部22a、22bよりも軸方向外側に位置させている。
【0069】
凹部24a、24bのそれぞれは、径方向外側を向いた略三角形状の底面26a、26bと、該底面26a、26bの周縁部から径方向外側へと延びた内側面27a、27bとを有する。底面26a、26bのそれぞれの周縁部と、内側面27a、27bのそれぞれの径方向内側の端部とは、滑らかに接続されている。
【0070】
底面26a、26bのそれぞれは、径方向外側に凸となった凸曲面により構成されている。図示の例では、底面26a、26bは、ロータ6の中心軸に直交する仮想平面における断面の輪郭形状が、ブリッジ部19の内周面と略平行な曲線である。また、底面26a、26bは、シリンダ20a、20bの軸方向外側の端面と爪部18a、18b、18cの軸方向内側面との中間点Hと略一致する軸方向位置に配置された稜線を挟んで、軸方向内側及び軸方向外側に向かう程径方向内側に向かう方向に湾曲している。
【0071】
内側面27a、27bのそれぞれは、周方向外側を向いており、軸方向にわたり段差のない滑らかな面によって構成されている。本例では、内側面27a、27bのそれぞれは、複数(図示の例では3つ)の面を滑らかに接続してなる複合面である。
【0072】
ブリッジ部19の外周面からの凹入量である凹部24a、24bの径方向深さは、凹部24a、24b(底面26a、26b)の位置(軸方向位置及び周方向位置)によって異なっている。
【0073】
本例では、凹部24a、24bの軸方向内側部分における径方向深さは、凹部24a、24bの軸方向外側部分における径方向深さよりも深い。このため、凹部24a、24bの軸方向内側部分における内側面27a、27bの径方向高さは、凹部24a、24bの軸方向外側部分における内側面27a、27bの径方向高さよりも高い。
【0074】
また、凹部24a、24bの軸方向外側部分における径方向深さは、凹部24a、24bの軸方向中間部(頂部25a、25b付近)における径方向深さよりも深い。このため、凹部24a、24bの軸方向外側部分における内側面27a、27bの径方向高さは、凹部24a、24bの軸方向中間部における内側面27a、27bの径方向高さよりも高い。
【0075】
このため、凹部24a、24bの径方向深さは、軸方向中間部、軸方向外側部分、軸方向内側部分の順に深くなっている。
【0076】
また、凹部24a、24bの径方向深さは、凹部24a、24bを形成する以前の状態での、ブリッジ部19の周方向外側の端部の径方向厚さの1/5~7/10の範囲内に規制されている。このため、凹部24a、24bのそれぞれの内側面27a、27bの径方向高さは、ブリッジ部19のうちで凹部24a、24bの内側面27a、27bを含む部分における、ブリッジ部19の径方向厚さの1/5~7/10の範囲内に規制されている。
【0077】
さらに本例では、図16に示すように、凹部24a、24bのうちで最も径方向深さの浅くなった凹部24a、24bの軸方向中間部における径方向深さdを、凹部24a、24bの軸方向中間部における底面26a、26bからブリッジ部19の内周面までの径方向厚さtと、ほぼ同じ大きさとしている(d≒t)。
【0078】
ブリッジ部19は、外周面の周方向中央部に、軸方向に伸長した中央溝28を有する。中央溝28は、ロータ6の中心軸に直交する仮想平面における断面形状が、略矩形状である。中央溝28の軸方向内側部分における径方向深さは、中央溝28の軸方向外側部分における径方向深さよりも深い。
【0079】
ブリッジ部19は、周方向中央部の軸方向内側部分に、径方向に貫通した貫通孔29を有する。貫通孔29は、径方向視で略矩形の開口形状を有する。貫通孔29は、中央溝28の底面及びブリッジ部19の内周面にそれぞれ開口している。貫通孔29は、インナパッド4の摩耗状況を外部から確認可能とするためののぞき窓として機能する。
【0080】
ブリッジ部19は、軸方向外側の端面の周方向両外側の端部のそれぞれに、軸方向外側に向けて突出した、突起部30a、30bを有する。突起部30a、30bのそれぞれは、ブロック形状を有しており、爪部18a、18bの径方向外側に配置されている。
【0081】
また、本例では、ブリッジ部19の軸方向外側の端部の周方向両外側の端面から爪部18a、18bの径方向外側部の周方向外側の端面にわたる範囲に、面取り面31a、31bが形成されている。
【0082】
キャリパボディ3は、サポート2に対し軸方向に関する移動を可能に支持されている。このために、インナボディ部17を構成する周方向腕部21a、21bのそれぞれの周方向外側の端部にスライドピン16の基端部を固定し、該スライドピン16の先半部(軸方向外側半部)を、サポート2を構成するキャリパガイド部13に形成された図示しない支持孔に、軸方向の相対変位(摺動)を可能に挿入している。
【0083】
〈インナパッド及びアウタパッド〉
インナパッド4は、軸方向外側から順に、ライニング32aと、裏板33aと、シム板34aとを有する。
【0084】
裏板33aは、周方向両外側の端部のそれぞれに、周方向外側に向けて突出した耳部35aを有する。インナパッド4は、裏板33aに備えられた耳部35aを、インナガイド部11の周方向内側面に備えられたインナガイド凹溝14に凹凸係合させることで、1対のインナガイド部11同士の間に、軸方向に移動可能に支持されている。
【0085】
アウタパッド5は、軸方向内側から順に、ライニング32bと、裏板33bと、シム板34bとを有する。
【0086】
裏板33bは、周方向両外側の端部のそれぞれに、周方向外側に向けて突出した耳部35bを有する。アウタパッド5は、裏板33bに備えられた耳部35bを、アウタガイド部12の周方向内側面に備えられたアウタガイド凹溝15に凹凸係合させることで、1対のアウタガイド部12同士の間に、軸方向に移動可能に支持されている。
【0087】
インナパッド4を構成する裏板33aの回入側の側面と回入側に配置されたインナガイド部11の周方向内側面との間、及び、アウタパッド5を構成する裏板33bの回入側の側面と回入側に配置されたアウタガイド部12の周方向内側面との間には、パッドクリップ36aが挟持されている。また、インナパッド4を構成する裏板33aの回出側の側面と回出側に配置されたインナガイド部11の周方向内側面との間、及び、アウタパッド5を構成する裏板33bの回出側の側面と回出側に配置されたアウタガイド部12の周方向内側面との間には、パッドクリップ36bが挟持されている。これにより、インナパッド4及びアウタパッド5の円滑な軸方向移動を可能としている。
【0088】
〔ディスクブレーキ装置の動作説明〕
本例のディスクブレーキ装置1により制動を行うには、キャリパボディ3を構成するインナボディ部17に備えられたシリンダ20a、20bにマスタシリンダから圧油を送り込む。これにより、シリンダ20a、20bのそれぞれからピストン37a、37bを軸方向外側に向けて押し出す。そして、2つのピストン37a、37bによりインナパッド4のライニング32aを、ロータ6の軸方向内側面に押し付け、キャリパボディ3をサポート2に対して軸方向内側に移動させる。これにより、キャリパボディ3に備えられた爪部18a、18b、18cのそれぞれの軸方向内側面を、アウタパッド5を構成する裏板33bの裏面にシム板34bを介して押し付ける。また、アウタパッド5のライニング32bをロータ6の軸方向外側面に押し付ける。この結果、ロータ6が、インナパッド4及びアウタパッド5により軸方向両側から強く挟持されて制動が行われる。
【0089】
制動解除時には、インナボディ部17に備えられたシリンダ20a、20bから圧油を排出する。これにより、ピストン37a、37bに外嵌した図示しないピストンシールの弾性復元力によって、ピストン37a、37bをシリンダ20a、20bの奥側(軸方向内側)へと引き戻し(ロールバックし)、インナパッド4のライニング32aとロータ6の軸方向内側面との間のクリアランスを確保する。この結果、キャリパボディ3がサポート2に対して軸方向外側へとわずかに移動し、アウタパッド5のライニング32bとロータ6の軸方向外側面との間にもクリアランスが確保される。
【0090】
以上のような本例のディスクブレーキ装置1によれば、ブリッジ部19の周方向外側の端部に接続された爪部18a、18bに作用する応力を緩和することができる。
【0091】
すなわち、本例では、キャリパボディ3を構成するブリッジ部19の外周面のうち、軸方向中間部の周方向両外側の端部のそれぞれに、凹部24a、24bを設けている。このため、ブリッジ部19の軸方向中間部の周方向両外側の端部を、凹部24a、24bを設けることで薄肉化することができ、凹部24a、24bを設けない場合に比べて剛性を低下させることができる。したがって、制動時に、ブリッジ部19の周方向外側の端部に接続された爪部18a、18bに生じる軸方向変位量(δ1+δ2(図20参照))のうち、ブリッジ部19が反ることによる軸方向変位量δ2(図20参照)を、ブリッジ部19の外周面に凹部24a、24bを設けない場合に比べて、大きくすることができる。
【0092】
このため、爪部18a、18b自身が変形する(撓む)ことによる軸方向変位量δ1(図20参照)を、ブリッジ部19の外周面に凹部24a、24bを設けない場合に比べて、小さくすることができる。これにより、爪部18a、18bに加わる荷重及びモーメントを小さく抑えることができるため、爪部18a、18bの軸方向内側面とブリッジ部19の内周面との接続部である隅R部22a、22bに作用する応力を、ブリッジ部19の外周面に凹部24a、24bを設けない場合に比べて低くすることができる。したがって、本例によれば、周方向外側の端部に備えられた爪部18a、18bに作用する応力を緩和することができ、爪部18a、18bに塑性変形や損傷が生じることを防止できる。
【0093】
また、ブリッジ部19の外周面に凹部24a、24bを設けているため、凹部24a、24bを設けない場合に比べて、キャリパボディ3の軽量化及びディスクブレーキ装置1の軽量化を図れる。
【0094】
また、本例では、凹部24a、24bを構成する内側面27a、27bのそれぞれを、軸方向にわたり段差のない滑らかな面により構成しているため、制動時に、ブリッジ部19が反るように変形した際に、凹部24a、24bの内側面27a、27bに応力が集中することを防止できる。
【0095】
また、本例では、凹部24a、24bのそれぞれの周方向幅を、ブリッジ部19の軸方向中間部に位置する頂部25a、25bで最も大きくしているため、ブリッジ部19の軸方向中間部における断面係数を効果的に小さくすることができる。このため、制動時に、ブリッジ部19の周方向外側の端部に接続された爪部18a、18bに生じる軸方向変位量(δ1+δ2)のうち、ブリッジ部19が反ることによる軸方向変位量δ2を十分に大きくできる。したがって、隅R部22a、22bに作用する応力を十分に低下させることができる。
【0096】
また、本例では、凹部24a、24bを、隅R部22a、22bに対し軸方向に重なる位置に配置しているため、制動時に、ブリッジ部19の周方向外側の端部に接続された爪部18a、18bに生じる軸方向変位量(δ1+δ2)のうち、ブリッジ部19が反ることによる軸方向変位量δ2を十分に大きくできる。したがって、この面からも、隅R部22a、22bに作用する応力を十分に低下させることができる。
【0097】
また、本例では、1対の凹部24a、24bを周方向に関して対称形状としているため、ブリッジ部19の周方向両外側の端部の剛性を互いに同じにできる。このため、回入側に配置された爪部18aとブリッジ部19とを接続する隅R部22aに作用する応力と、回出入側に配置された爪部18bとブリッジ部19とを接続する隅R部22bに作用する応力とを同じように低下させることができる。
【0098】
また、本例では、ブリッジ部19の径方向厚さを、軸方向外側部よりも軸方向中間部から軸方向内側部にわたる範囲で大きくしており、凹部24a、24bのそれぞれの頂部25a、25bを、ブリッジ部19の外周面の軸方向中央部Cよりも軸方向内側に位置させているため、ブリッジ部19bのうちで径方向厚さの大きい部分をより多く薄肉化できる。したがって、ブリッジ部19の周方向外側の端部の剛性を効果的に低下させることができる。
【0099】
また、本例では、凹部24a、24bのそれぞれの軸方向外側の端部を、爪部18a、18bの軸方向内側面とブリッジ部19の内周面とを接続する隅R部22a、22bよりも軸方向外側に位置させているため、爪部18a、18bの根元部(径方向外側の端部)における断面係数を低下させることができる。これにより、爪部18a、18bに加わる荷重及びモーメントを小さく抑えられるため、隅R部22a、22bに作用する応力を低下させることができる。
【0100】
さらに本例では、爪部18a、18bの径方向外側部の周方向外側の端面に、面取り面31a、31bを形成しているため、この面からも、爪部18a、18bの根元部(径方向外側の端部)における断面係数を低下させることができる。したがって、隅R部22a、22bに作用する応力を低下させることができる。
【0101】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、発明の技術思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0102】
本発明を実施する場合に、凹部の形状及び大きさ(底面の面積)は、実施の形態の構造に限定されず、適宜変更することができる。例えば、図18に示すように、キャリパボディ3をアルミニウム合金製とした場合には、凹部24a、24bの大きさ(底面26a、26bの面積)を、鋳鉄製のキャリパボディ3を使用した実施の形態の第1例の場合に比べて小さくすることができる。また、本発明を実施する場合には、凹部の径方向深さについても、実施の形態の構造に限定されず、適宜変更することができる。
【0103】
また、実施の形態では、2つのシリンダと3つの爪部を備えたキャリパボディの構造を示したが、本発明を実施する場合には、キャリパボディは、1つのシリンダと2つの爪部を備える構造でも良いし、3つのシリンダと4つの爪部を備える構造などでも良い。
【符号の説明】
【0104】
1 ディスクブレーキ装置
2 サポート
3 キャリパボディ
4 インナパッド
5 アウタパッド
6 ロータ
7 ガイド部
8 インナ側周方向連結部
9 アウタ側周方向連結部
10 固定孔
11 インナガイド部
12 アウタガイド部
13 キャリパガイド部
14 インナガイド凹溝
15 アウタガイド凹溝
16 スライドピン
17 インナボディ部
18a、18b、18c 爪部
19 ブリッジ部
20a、20b シリンダ
21a、21b 周方向腕部
22a、22b、22c 隅R部
23a、23b、23c 凹溝
24a、24b 凹部
25a、25b 頂部
26a、26b 底面
27a、27b 内側面
28 中央溝
29 貫通孔
30a、30b 突起部
31a、31b 面取り面
32a、32b ライニング
33a、33b 裏板
34a、34b シム板
35a、35b 耳部
36a、36b パッドクリップ
37a、37b ピストン
100 キャリパボディ
101a、101b、101c 爪部
102 ブリッジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20