(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014704
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/532 20060101AFI20240125BHJP
A61F 13/496 20060101ALI20240125BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61F13/532 200
A61F13/496
A61F13/49 410
A61F13/49 315A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023065555
(22)【出願日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2022116532
(32)【優先日】2022-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英聡
(72)【発明者】
【氏名】木下 葵子
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA12
3B200CA03
3B200CA09
3B200DA21
3B200DB01
3B200DB07
(57)【要約】
【課題】吸収性パッドの装着が容易な吸収性物品を提供する。
【解決手段】着用者の腹部に対向する前身頃領域と、着用者の背部に対向する後身頃領域と、前身頃領域及び後身頃領域の間に位置し、吸収体が配置される股下領域が連接された吸収性物品であって、前身頃領域の非肌面側の外装面を形成する前外装部と、後身頃領域の非肌面側の外装面を形成する後外装部と、を、含み、着用者の胴回りが挿通される胴回り開口部と、着用者の大腿部が挿通される一対の脚回り開口部とを形成する外装体と、前外装部と後外装体に跨って外装体より肌面側に配置され、前外装部および後外装体よりも幅狭の吸収体と、外装体に伸張状態で接着され、一対の脚回り開口部の縁を収縮させる収縮部材と、を、備え、吸収体の肌面側には、収縮部材の収縮により、幅方向に延在する凸部が形成されており、収縮部材は、外装体の肌面側から視認可能である、吸収性物品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹部に対向する前身頃領域と、着用者の背部に対向する後身頃領域と、前記前身頃領域及び前記後身頃領域の間に位置し、吸収体が配置される股下領域が連接された吸収性物品であって、
前記前身頃領域の非肌面側の外装面を形成する前外装部と、
前記後身頃領域の非肌面側の外装面を形成する後外装部と、
を、含み、
着用者の胴回りが挿通される胴回り開口部と、着用者の大腿部が挿通される一対の脚回り開口部とを形成する外装体と、
前記前外装部と前記後外装部に跨って前記外装体より肌面側に配置され、前記前外装部および前記後外装部よりも幅狭の前記吸収体と、
前記外装体に伸張状態で接着され、前記一対の脚回り開口部の縁を収縮させる収縮部材と、
を、備え、
前記吸収体の肌面側には、前記収縮部材の収縮により、幅方向に延在する凸部が形成されており、
前記収縮部材は、前記外装体の肌面側から視認可能である、
吸収性物品。
【請求項2】
着用者の腹部に対向する前身頃領域と、着用者の背部に対向する後身頃領域と、前記前身頃領域及び前記後身頃領域の間に位置し、吸収体が配置される股下領域が連接された吸収性物品であって、
前記前身頃領域の非肌面側の外装面を形成する前外装部と、
前記後身頃領域の非肌面側の外装面を形成する後外装部と、
を、含み、
着用者の胴回りが挿通される胴回り開口部と、着用者の大腿部が挿通される一対の脚回り開口部とを形成する外装体と、
前記前外装部と前記後外装部に跨って前記外装体より肌面側に配置され、前記前外装部および前記後外装部よりも幅狭の前記吸収体と、
前記外装体に伸張状態で接着され、前記一対の脚回り開口部の縁を収縮させる収縮部材と、
を、備え、
前記吸収体および前記外装体の非肌面側には、当該収縮部材の収縮力により、幅方向に延在する溝部が形成されており、
前記溝部は、非肌面側から視認可能である、
吸収性物品。
【請求項3】
前記収縮部材は、非肌面側から視認可能であり、
前記溝部に対応する前記吸収体の肌面側には、凸部が形成されている。
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記溝部は、長手方向に互いに10mm以上20mm以下の幅で離間して複数存在して溝延在部を形成しており、
前記溝延在部の長手方向30mm以下の範囲内には、幅方向に延在する他の溝が形成されていない、
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記溝部の幅方向外側には、前記収縮部材が設けられており、
前記収縮部材は、互いに10mm以上20mm以下の幅で離間して複数存在して収縮部
材群を形成しており、
前記吸収体において、前記収縮部材群の長手方向30mmの範囲内には、幅方向に延在する他の溝が形成されていない、
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記溝部の非肌面側には、前記収縮部材の断片が幅方向に間欠的に配置されている、
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体の幅方向中央部と、前記幅方向中央部から等距離となる幅方向両側のうち少なくともいずれかに、長手方向に延在する溝を有する、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記長手方向に延在する溝は、前記吸収体の肌面側から非肌面側に貫通するスリット溝であるか、または、肌面側が凹となった圧搾溝である、
請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記長手方向に延在する溝は、肌面側が凹となり、非肌面側も凹となったH型の断面を有する圧搾溝である、
請求項8に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記吸収体の幅方向中央部に、前記吸収体の肌面側から非肌面側に貫通し、長手方向に延在するスリット溝を有し、
前記収縮部材の断片は、前記スリット溝を透過して肌面側から視認可能である、
請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記溝部は、前記スリット溝を透過して肌面側から視認可能である、
請求項10に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品である使い捨ておむつが知られている(特許文献1)。また、使い捨ておむつや肌着と肌面との間に配置して使用する吸収性パッドも知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019- 68949号公報
【特許文献2】特開2016-198142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、吸収性物品と吸収性パッドは、併用して使用されることが多い。本発明は、吸収性パッドの装着が容易な吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る吸収性物品は、着用者の腹部に対向する前身頃領域と、着用者の背部に対向する後身頃領域と、前記前身頃領域及び前記後身頃領域の間に位置し、吸収体が配置される股下領域が連接された吸収性物品であって、前記前身頃領域の非肌面側の外装面を形成する前外装部と、前記後身頃領域の非肌面側の外装面を形成する後外装部と、を、含み、着用者の胴回りが挿通される胴回り開口部と、着用者の大腿部が挿通される一対の脚回り開口部とを形成する外装体と、前記前外装部と前記後外装体に跨って前記外装体より肌面側に配置され、前記前外装部および前記後外装体よりも幅狭の吸収体と、前記外装体に伸張状態で接着され、前記一対の脚回り開口部の縁を収縮させる収縮部材と、を、備え、前記吸収体の肌面側には、前記収縮部材の収縮により、幅方向に延在する凸部が形成されており、前記収縮部材は、前記外装体の肌面側から視認可能である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、吸収性パッドの装着が容易な吸収性物品を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係るおむつの外観斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るおむつの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るおむつを展開し、伸長した状態を模式的に示した図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るおむつの幅方向に形成された溝を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るおむつを展開し、伸長した状態を、非肌面側から模式的に示した図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るおむつを展開し、伸張した状態を、肌面側から模式的に示した図である。
【
図7】
図7は、変形例に係るおむつを展開し、伸長した状態を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係るおむつについて説明する。なお、以下
の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0009】
<実施形態>
図1は、実施形態に係る大人用のパンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」という)の斜視図である。おむつにおいて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、おむつが着用者に着用された状態において、着用者の肌に向かう側を肌面側とし、肌面側の反対側を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。おむつ1は、長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有し、着用者の股下に装着される。また、本願で用いる方向に関する用語は、おむつ1が着用者に着用された状態において該着用者の前後左右に一致する方向を意味するものとする。例えば、本願で左右方向という場合、おむつ1の着用者に着用された状態において該着用者の左右に一致する方向を意味する。
【0010】
本実施形態では、吸収性物品の一例として、着用者の腹囲が入る胴開口部と、着用者の左下肢及び右下肢が挿通される左右一対の脚開口部とを有する筒状構造のパンツ型使い捨ておむつを例示するが、本願でいう「吸収性物品」は、大人用のパンツ型使い捨ておむつに限定されるものでない。本願でいう「吸収性物品」には、子供用のパンツ型使い捨ておむつが含まれる。また、着用者の股下(陰部)を前身頃から後身頃にかけて覆うシート状の部材の一端部付近に固定されたテープを、該シート状の部材の他端部付近に貼り付けることで筒状構造を形成するテープ型使い捨ておむつ等、腹囲と股下を包み得る各種形態の吸収性物品が含まれる。
【0011】
おむつ1は、着用状態において着用者の陰部(股下)を覆う股下領域に対応する部位である股下領域1Bと、着用者の胴周りにおける前身頃に対応する部位であって着用者の腹部側を覆うための前身頃領域1Fと、着用者の胴周りにおける後身頃に対応する部位であって着用者の背部側を覆うための後身頃領域1Rとを有する。ここで、前身頃領域1Fは股下領域1Bの前側に位置し、後身頃領域1Rは股下領域1Bの後側に位置する。おむつ1の前身頃領域1Fと、股下領域1Bは連接しており、後身頃領域1Rと股下領域1Bは連接している。
【0012】
本実施形態におけるおむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつであるため、前身頃領域1Fの左側の縁と後身頃領域1Rの左側の縁は互いに接合され、前身頃領域1Fの右側の縁と後身頃領域1Rの右側の縁は互いに接合されている。よって、おむつ1には、前身頃領域1Fの上側の縁と後身頃領域1Rの上側の縁とによって胴回り開口部である胴開口部2Tが形成されている。また、おむつ1には、上記接合が施されない股下領域1Bの左側の部位に左下肢開口部2Lが形成され、股下領域1Bの右側の部位に右下肢開口部2Rが形成されて、一対の脚回り開口部が形成されている。そして、おむつ1は、着用者の左下肢が左下肢開口部2Lに挿通され、着用者の右下肢が右下肢開口部2Rに挿通され、着用者の胴部が胴開口部2Tに入るように着用されると、前身頃領域1Fが着用者の腹部側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背部側に配置され、左下肢開口部2Lと右下肢開口部2Rが着用者の大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で自由に行動することができる。
【0013】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が、主に股下領域1B付近
を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の左下肢の大腿部を取り巻く左下肢開口部2Lに立体ギャザー3BLが設けられ、着用者の右下肢の大腿部を取り巻く右下肢開口部2Rに立体ギャザー3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。また、着用者の脚の付け根を取り巻く位置には、レグギャザー3LL,3LRが設けられている。立体ギャザー3BL,3BRとウェストギャザー3Rは、糸ゴムの弾性力で着用者の肌に密着する。また、レグギャザー3LL,3LRは、着用者の脚の付け根とおむつ1との間に隙間が生まれるのを防ぐ。よって、着用者の陰部から排出される排出液は、おむつ1から殆ど漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。
【0014】
おむつ1は、図示しないインナーパッドと組み合わせて使用することができる。インナーパッドは、吸収体を備える略長方形の吸収性物品であり、排出液を吸収する。おむつ1とインナーパッドとを組み合わせて使用する場合、おむつ1の肌面側に、着用者の排出孔と当接するようにインナーパッドを置く。排出液は、まずインナーパッドに吸収され、インナーパッドで吸収できなかった排出液のみがおむつ1の吸収体に到達し、更に吸収される。このため、排出液の量が多い場合でも、排出液がおむつ1から漏出するのを防ぐことができる。また、排出液の量が少なく、インナーパッドで全て吸収できる場合には、排出液が発生してもインナーパッドのみを交換すればよいので、介助コストを軽減できる。また、おむつ1を長時間使用できる。
【0015】
図2は、実施形態に係るおむつ1の分解斜視図である。おむつ1の前身頃領域1F側には、最も非肌面側に設けられるカバーシート4と、それに貼り合わされるインナーカバーシート5Fを有している。また、おむつ1の後身頃領域1R側には、最も非肌面側に設けられるカバーシート4と、それに貼り合わされるインナーカバーシート5Rを有している。インナーカバーシート5F,5Rは、前身頃領域1Fおよび後身頃領域1Rにおいて、カバーシート4を補強しており、これらのシートはおむつ1の内部構造を外部から保護している。
【0016】
着用者が着用している状態において、カバーシート4は着用者の非肌面側に設けられておむつ1の外装面を形成しており、インナーカバーシート5F,5Rは着用者の肌面側に積層され、おむつ1の外装体を形成している。カバーシート4とインナーカバーシート5F,5Rの間には、ウェストギャザー3Rとレグギャザー3LL,3LRを形成するための糸ゴムが設けられている。なお、糸ゴムに代えて帯状のゴム等の伸縮部材を適宜選択できる。
【0017】
カバーシート4とインナーカバーシート5F,5Rは、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。ここで、液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。カバーシート4,インナーカバーシート5Fは、おむつ1の前身頃領域の非肌面側を覆う前外装部の一例であり、カバーシート4,インナーカバーシート5Rは、おむつ1の後身頃領域の非肌面側を覆う後外装部の一例である。
【0018】
なお、カバーシート4に代えて、前身頃領域1Fにおいてインナーカバーシート5Fと対応する部分を覆うカバーシート4Fと、後身頃領域1Rにおいてインナーカバーシート5Rと対応する部分を覆うカバーシート4Rを独立に設けることもできる。この場合、カバーシート4Fとインナーカバーシート5Fの配置領域が前外装部となり、カバーシート4Rとインナーカバーシート5Rの配置領域が後外装部となる。
【0019】
前身頃領域1Fに設けるカバーシート4Fと、後身頃領域1Rに設けるカバーシート4
Rを別体として設ける場合、股下領域1Bには、パッドカバーシート4Bを設けることができる。本実施形態に係るおむつ1は、股下領域1Bにパッドカバーシート4Bを設けることで、カバーシート4Fと4Rを別体として設ける場合にも、内部構造を保護することができる。
【0020】
以下、吸収体8および吸収体8にバックシート6、トップシート9、サイドシート10L,10Rを組み合わせたものに対応する概念として、前身頃領域1Fに設けられたカバーシート4と、それに付随して糸ゴムが配置されるインナーカバーシート5F、後身頃領域1Rに設けられたカバーシート4と、それに付随して糸ゴムが配置されるインナーカバーシート5Rを合わせて、外装シートと表現することがある。外装シートは、前身頃領域1Fから後身頃領域Rに渡って、おむつ1の外装体を形成している。
【0021】
カバーシート4を、前身頃領域1Fと後身頃領域1Rに分割してカバーシート4Fとカバーシート4Rとし、股下領域1Bを保護するパッドカバーシート4Bを設ける場合、これらのシートが外装シートとなる。
【0022】
おむつ1は、おむつ1の外装体を形成する各シート、すなわちカバーシート4とインナーカバーシート5F,5Rの着用者側の面において、順に積層されるバックシート6と、吸収体8と、トップシート9とを有する。バックシート6は、着用者の前身頃から股下を経由して後身頃へ届く長さを長手方向に有し、当該長手方向に対し直交する幅方向に所定の横幅を有する略長方形のシートである。吸収体8、トップシート9は、何れもバックシート6と同様に略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がバックシート6の長手方向と一致する状態で、バックシート6に対して順に積層されている。バックシート6は、吸収体8に流入した排出液の漏れを抑制するためにポリエチレンフィルム等の熱可塑性の液体不透過性の樹脂を材料として形成されたシートである。バックシート6は、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を有する材料で構成されていてもよい。
【0023】
トップシート9は、吸収体8から見て着用者の肌面側に、吸収体8の吸水面を被覆するように配置されるシート状の部材である。このトップシート9は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が着用された状態において、着用者から排出された排出物は、着用者の肌に接触し得るトップシート9を通って吸収体8に浸入し、そこで吸収される。トップシート9を構成する液透過性のシートの一例としては、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムが挙げられる。また、トップシート9は親水性を有していていてもよい。
【0024】
吸収体8は、1又は複数のマットからなる吸収コア8cと、吸収コア8cを包み込むコアラップシート7とを有する。吸収コア8cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるあるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂(高分子吸水材)を保持させた構造を有する。吸収コア8cは、着用者から排泄された液体を吸収すると、短繊維内の隙間に保持された吸収性樹脂を膨潤させて該液体を短繊維内に保持する。吸収コア8cは、目的に応じた適宜の形状を取ることができ、例えば、矩形状、楕円形状、その他各種の形状を取ることができる。本実施形態では、吸収体8は、股下領域1Bを中心として、前外装部と後外装部に跨って配置されており、前外装部、後外装部よりも幅狭である。なお、吸収コア8cは股下領域1B付近が括れた砂時計型である。また、本実施形態では、吸収体8は、後身頃領域1R側の端部が長手方向端部により接近するように、やや偏って配置されている。
【0025】
本実施形態に係る吸収コア8cには、股下領域1Bの幅方向中央部に、長手方向に延在する溝である、溝8Hが設けられている。溝8Hは、吸収コア8cの肌面側と非肌面側とを貫通する貫通溝であってよいし、吸収コア8cの幅方向中央部を長手方向に平行に圧縮した圧搾溝であってもよい。溝8Hの延在範囲には、尿道口に対応する位置が含まれている。このため、着用者から発生した尿は、溝8Hに流れ込んで長手方向に広がり、吸収コア8cの広範囲で効率的に吸収される。なお、溝8Hは必須ではなく、これを設けない構成としてもよい。
【0026】
コアラップシート7は、薄い液透過性のシートであり、吸収コア8cを包み込んでいる。吸収コア8cをコアラップシート7で包むことにより、吸収コア8cの型崩れが抑制され、吸収コア8c内部のSAP粒子が他の構造に混入しにくくなる。コアラップシート7は、パルプ繊維で形成することができ、一例としてはティッシュペーパーを用いることができる。コアラップシート7は、1枚のシートでもよいが、着用者の肌側に配置された上側シートと、着用者の非肌面側に配置され、吸収コアの側面と肌面側に回り込む下側シートの2枚のシートで構成されていてもよい。コアラップシート7が2枚のシートで構成されている場合、上側シートの幅方向端部が他のシート(例えば、後述するサイドシート10L,10R、バックシート6、トップシート9)に包まれる構造になっていてもよい。なお、吸収体8はバックシート6とトップシート9に包まれており、これらのシートによっても型崩れを抑制できるため、コアラップシート7を設けないこともできる。本実施形態では、コアラップシート7は矩形状に形成されている。
【0027】
バックシート6、吸収体8、トップシート9は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート6、吸収体8、トップシート9を積層して着用者の陰部(股下)を覆うと、バックシート6、吸収体8、トップシート9の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体8に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート9を介して吸収体8に接触することになる。
【0028】
また、おむつ1は、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート10L,10Rを有する。サイドシート10L,10Rは、トップシート9の長辺の部分に設けられる。そして、サイドシート10L,10Rには糸ゴム10L1,10R1が長手方向に沿って接着されている。よって、前身頃領域1Fのカバーシート4の左側の縁となる縁4F4と、後身頃領域1Rのカバーシート4の左側の縁となる縁4R4とが互いに接合され、且つ、前身頃領域1Fの、カバーシート4の右側の縁となる縁4F5と、後身頃領域1Rの、カバーシート4の右側の縁となる縁4R5とが互いに接合されることにより、
図1に示したような完成状態のおむつ1になると、サイドシート10L,10Rは、糸ゴム10L1,10R1の収縮力で長手方向に引き寄せられて折り返し線10L2,10R2に沿ってトップシート9から立ち上がる。その結果、左下肢開口部2L及び右下肢開口部2Rからの液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRが形成される。なお、縁4F4及び縁4R4、縁4F5及び縁4R5の接合方法は特に限定されないが、例えば、ヒートシール、高周波シール、超音波シール等によって行うことができる。
【0029】
バックシート6、コアラップシート7、トップシート9、サイドシート10L,10Rは、前身頃領域1Fおよび後身頃領域1Rにおいて、吸収コア8cよりも長手方向により長く形成されている。このため、剛性の高い吸収コア8cの長手方向端部の更に長手方向一定領域には、上述のシートが積層されることで形成された、中程度の剛性を持つ積層部分が続いている。当該積層部分には、ウェストギャザー3Rを構成する糸ゴム4F2,4R2の一部が重畳し、幅方向内側に付勢されている。
【0030】
更に、おむつ1は、バックシート6、吸収体8、トップシート9、サイドシート10L,10Rを挟んで、カバーシート4の前身頃領域1F側における着用者側の面に積層されるエンドシート11Fと、カバーシート4の後身頃領域1R側における着用者側の面に積層されるエンドシート11Rと、を有する。エンドシート11F,11Rは、トップシート9の長手方向における一端側においてカバーシート4、インナーカバーシート5F,5Rに重ねられる短冊状のシートである。エンドシート11F,11Rは非透水性の不織布であり、主におむつ1の胴回り当接部分においてカバーシート4とインナーカバーシート5F,5Rを補強する。また、エンドシート11F,11Rには接着剤が塗布されており、当該接着剤によりインナーカバーシート5F,5Rと接着している。エンドシート11F,11Rは、バックシート6、吸収体8、トップシート9、サイドシート10L,10Rにより形成される積層体より肌面側に配置され、積層体の長手方向端部が肌面に直接触れて着用者に違和感を与えるのを防ぐ。
【0031】
図3は、実施形態に係るおむつ1を展開し、伸長した状態を模式的に示した図である。
図3(A)は、展開及び伸長した状態のおむつ1を左側から見た場合の内部構造を模式的に示している。
図3(B)は、展開及び伸長した状態のおむつ1の平面図を模式的に示している。なお、
図3(B)では、サイドシート10L,10Rの図示は省略する。カバーシート4は、前身頃領域1F端部における
図2に記載の折り返し線4FFにおいて肌面側に折り返されており、後身頃領域1R端部における
図2に記載の折り返し線4FRにおいて、肌面側に折り返されている。上述したウェストギャザー3Rは、前身頃領域1Fにおけるカバーシート4に糸ゴム(糸状のゴム)4F1,4F2が伸張状態で接着され、後身頃領域1Rにおけるカバーシート4に糸ゴム(糸状のゴム)4R1,4R2が伸張状態で接着されることで形成される。糸ゴム4F1,4F2は、折り返されると前身頃領域1Fの上側の縁を形成することになる折り返し線4FF沿いに、折り返し線4FF側から糸ゴム4F1、糸ゴム4F2の順に設けられている。糸ゴム4R1,4R2も、糸ゴム4F1,4F2と同様、折り返されると後身頃領域1Rの上側の縁を形成することになる折り返し線4RF沿いに、折り返し線4RF側から糸ゴム4R1、糸ゴム4R2の順に設けられている。
【0032】
このため、糸ゴム4F1,4F2は、前身頃領域1Fにおいて、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4に設けられることになる。また、糸ゴム4R1,4R2は、後身頃領域1Rにおいて、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでカバーシート4Rに設けられることになる。よって、縁4F4と縁4R4が互いに接合され、縁4F5と縁4R5が互いに接合されると、糸ゴム4F1,4F2と糸ゴム4R1,4R2は、着用者の胴回りを挿通可能な、
図1に示す胴回り開口部である胴開口部2Tに沿って周回する実質的に環状の伸縮部材を形成し、当該胴開口部2Tを胴周り方向に収縮させる機能を発揮する。すなわち、糸ゴム4F1,4F2と糸ゴム4R1,4R2は、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。糸ゴム4F2,糸ゴム4R2は、その股下領域1B側の一部において、吸収体8のコアラップシート7と重畳する。糸ゴム4F1と糸ゴム4F2、および糸ゴム4R1と糸ゴム4R2の1本あたりの収縮力は、幅方向に一定であってよい。
【0033】
糸ゴム4F1,4R1は、
図1に示した前身頃領域1F,後身頃領域1Rの上側の縁となる部分に沿って、一定の間隔を空けて離間して平行に、幅方向に延在するように設けられている。糸ゴム4F2,4R2は、所定の間隔を空けて離間して平行に、幅方向に延在するように設けられている。糸ゴム4F1,4R1の間隔は狭くなっており、糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1が着用された状態において、着用者の腹囲を糸ゴム4F2,4R2よりも上側で比較的強く締め付ける。糸ゴム4F1,4R1は、おむつ1を着用者に密
着させて着用位置がずれるのを防止し、腹部や背部から排出液が漏出するのを防ぐ機能を有している。
【0034】
糸ゴム4F2,4R2の間隔は、糸ゴム4F1,4F2よりも広く、糸ゴム4F1,4R1の収縮力に起因する着用者への圧迫感を緩和する。また、インナーパッドを用いる場合には、インナーパッドのずれを抑制する。すなわち、糸ゴム4F1,4R1による収縮力は、糸ゴム4F2,4R2の収縮力よりも大きい。
【0035】
更に、前身頃領域1Fにおいて、カバーシート4には、糸ゴム4F3が伸張状態で接着されており、後身頃領域1Rにおいて、カバーシート4には、糸ゴム4R3が伸張状態で接着されている。糸ゴム4F3は、カバーシート4の糸ゴム4F2の更に股下領域1B側に設けられる伸縮部材である。糸ゴム4R3は、カバーシート4の糸ゴム4R2の更に股下領域1B側に設けられる伸縮部材である。ただし、糸ゴム4F3,4R3は、カバーシート4の左端から右端まで途切れることなく接着される他の糸ゴムとは異なり、股下領域1Bの方向に湾曲して配置され、砂時計型の吸収コアの括れ部分で、コアラップシート7の一部と重畳している。このように構成することで、糸ゴム4F3,4R3の配置領域を、左下肢開口部2L、右下肢開口部2Rを包み込むレグギャザー3LL,3LRとして機能させることができる。
【0036】
前身頃領域1Fにおいて、カバーシート4は、折り返し線4FFで折り返されて糸ゴム4F1の配置領域まで延在し、その折り返された部分で糸ゴム4F1の配置領域を補強している。後身頃領域1Rにおいて、カバーシート4は、折り返し線4FRで折り返されて糸ゴム4R1の配置領域まで延在し、その折り返された部分で糸ゴム4R1の配置領域を補強している。エンドシート11Fは、折り返し線4FFで折り返されたカバーシート4が延在していない糸ゴム4F2の配置領域に設けられ、糸ゴム4F2の配置領域を補強している。エンドシート11Rは、折り返し線4FRで折り返されたカバーシート4が延在していない糸ゴム4R2の配置領域に設けられて、糸ゴム4R2の配置領域を補強している。糸ゴム4F2,4R2およびエンドシート11F,11Rは、股下領域1B側の一部が吸収体8と重畳しているが、吸収コア8cの延在領域には重畳していない。
【0037】
なお、本願においてシートが重なる状態とは、重ね合わされるシート同士が互いに全面的に接触する状態で重なる形態に限定されるものでなく、シートの一部分同士が重なる形態を含む概念である。例えば、エンドシート11Fは、バックシート6の長手方向における一端側の一部分が、カバーシート4の一部分に触れる状態で重ねられる。おむつ1は、吸収体8を間に挟んだバックシート6及びトップシート9の他、カバーシート4、エンドシート11F,11R、インナーカバーシート5F,5R、サイドシート10L,10Rが積み重なって形成されているため、これら複数のシートを積み重ねた積層体を有していると言える。
【0038】
本開示におけるおむつ1のようなパンツ型の使い捨ておむつは、テープ型の使い捨ておむつと比較すると被装着者自身の運動に追従しやすいため、活動可能な着用者に適している。しかし、パンツ型の使い捨ておむつは、止着テープを操作するだけで着用可能なテープ型に比べると着脱に手間が発生する。そこで、おむつ1と着用者の肌面との間に吸収性パッドを配置し、排出物が発生した際に吸収性パッドを交換することでおむつ1の着脱回数を減らし、この手間を軽減することができる。
【0039】
吸収性パッドを併用しておむつ1の着脱回数を減らすためには、吸収性パッドを着用者の股下に正しく配置する必要がある。吸収性パッドを着用者の股下部に正しく当接させるためには一定の熟練が必要である。吸収性パッドの配置位置が正しくない場合、吸収性パッド自体が有している立体ギャザー等の防漏手段が正常に機能せず、おむつ1の吸収体8
に排出物が流入しやすくなることがある。また、着用者が運動を行った場合に、吸収性パッドが着用者の股下部分から外れてしまい、適切に機能しなくなることも考えられる。吸収性パッドが適切に機能せず、おむつ1の吸収体8に排出物が流入すると、おむつ1の交換頻度を多くする必要が生じる。
【0040】
本実施形態では、おむつ1を吸収性パッドと併用した場合に、熟練を要さずに吸収性パッドを着用者の股下部に正しく当接させることができ、かつ、着用者が運動を行っても吸収性パッドが着用者の股下部からずれにくいおむつ1を提供することを目的とする。
【0041】
図4は、実施形態に係るおむつの幅方向に形成された溝を示す図である。
図4は、おむつ1の外装面を後身頃領域側から見た図である。以下、おむつ1の後身頃領域1Rを例として説明するが、前身頃領域1Fにおいて同様の構成を採用してもよい。おむつ1の吸収体8延在領域の後身頃領域1R側では、外装体であるカバーシート4および吸収体8が屈曲し、幅方向に延在する溝部である溝8Gが長手方向に平行に複数形成されている。溝8Gは、糸ゴム4R3が、幅方向内側で吸収体8の幅方向外側の一部に重畳し、糸ゴム4R3の付勢力が吸収体8の幅方向両側から間接的に伝わることで、吸収体8の糸ゴム4R3の幅方向内側の仮想延長領域に複数形成されている。
【0042】
溝8Gは、長手方向に互いに10mm以上20mm以下の幅で離間して複数設けられて溝延在部20を形成している。介助者等にとって、溝8Gは、おむつ1に吸収性パッドを配置するための目印として機能する。介助者等が溝8Gを目印として吸収性パッドを配置すると、吸収性パッドを着用者の股下に適切に装着可能となる。
【0043】
溝延在部20の長手方向両側30mm以下の範囲内には、幅方向に延在する他の溝が形成されていない。このため、着用者や介助者は、溝8Gおよび溝延在部20の領域を明確に識別可能である。
【0044】
溝8G側から見た場合、溝延在部20の幅方向外側には、複数の糸ゴム4R3が設けられている。糸ゴム4R3は、吸収体8の幅方向外側端部において、互いに10mm以上20mm以下の幅で離間して複数存在して収縮部材群を形成しており、収縮部材群の長手方向30mm以下の範囲内において、吸収体8には、幅方向に延在する他の溝が形成されていない。
【0045】
溝8Gの肌面側には、溝8Gに対応する位置に、幅方向に延在する複数の凸部が形成されている。溝8Gがおむつ1の非肌面側に形成されている状態において、溝8Gによって吸収体8に形成された屈曲は、おむつ1の肌面側には凸部として現れる。おむつ1の肌面側に吸収性パッドを配置した際、当該凸部は吸収性パッドを着用者の肌面に密着させる滑り止めとして機能する。
【0046】
なお、カバーシート4およびインナーカバーシート5F,5Rは半透明である。このため、レグギャザー3LL,3LRに収縮力を付与しつつ吸収体8の幅方向外側に達している弾性部材である糸ゴム4F3,4R3は、おむつ1の肌面側と非肌面側の両方から視認可能である。着用者や介助者は、吸収性パッドを、おむつ1の肌面側、非肌面側から糸ゴム4F3,4R3を視認してその位置に収まるように配置することもできる。糸ゴム4F3,4R3の延在領域の幅方向内側に対応する吸収体8およびカバーシート4には、非肌面側に溝8Gが形成されており、肌面側には凸部が形成されている。着用者や介助者が、糸ゴム4F3,4R3を視認して、吸収性パッドをその位置に収まるように配置することで、吸収性パッドは、非肌面側に形成された溝8Gおよび肌面側に形成された凸部に対応する。このため、吸収性パッドはその機能を正しく発揮可能となり、おむつ1が装着可能な期間を延ばすことができる。
【0047】
図5は、実施形態に係るおむつを展開し、伸長した状態を、非肌面側から模式的に示した図である。糸ゴム4F3,4R3は、吸収体8の幅方向外側端部にまで延在しており、吸収コア8cの延在領域には連続した形で存在していない。本実施形態では、吸収コア8cと繋がっている糸ゴム4F3,4R3の仮想延在領域には、糸ゴムの断片4F3F,4R3Fが存在しており、当該糸ゴムの断片4F3F,4R3Fは、幅方向に間欠的に配置されている。このような糸ゴムの断片4F3F,4R3Fは、糸ゴム4F3,4R3を、股下領域1B側で吸収コア8cを幅方向に横断するように形成した後、吸収コア8cの延在領域に対応する複数箇所において切断しておくことで形成できる。
【0048】
糸ゴムの断片4F3F,4R3Fは、おむつ1完成後にも残存している。糸ゴムの断片4F3F,4R3Fは、糸ゴム4F3,4R3とは連続しておらず、吸収体8に与える付勢力は糸ゴム4F3,4R3よりも弱くなっている。しかし、糸ゴムの断片4F3F,4R3Fは依然として幅方向に間欠的に配置されており、配置範囲に弱い付勢力を与える。
【0049】
本実施形態では、吸収体8の幅方向端部の一部に重畳する糸ゴム4F3,4R3の付勢力が吸収コア8cに伝わることにより、おむつ1の吸収体8およびカバーシート4には、幅方向に平行に延在する溝8Gが複数形成されている。加えて、溝8Gが吸収コア8cと重畳している部位には、糸ゴム4F3,4R3の幅方向内側端部同士を結んだ仮想延長線上にもあたり、当該仮想延長線上には、糸ゴムの断片4F3F,4R3Fが間欠的に配置されている。
【0050】
糸ゴムの断片4F3F,4R3Fは、溝8Gの底部分で、外装体から吸収体8に対して弱い付勢力を与え続けるため、本実施形態に係るおむつ1は、糸ゴム4F3,4R3の付勢力により形成された溝8Gを確実に保持可能である。
【0051】
既に述べた通り、吸収コア8cには、長手方向に延在する溝である溝8Hが設けられている。また、吸収コア8cの非肌面側には、幅方向に延在する幅方向溝である溝8Gが設けられており、溝8Hと溝8Gは、溝延在部20における吸収コア8cの幅方向中央部において直交している。着用者または介助者は、溝8Gを目標として、おむつ1に吸収性パッドを配置できるが、更に、吸収コア8cの幅方向中央に溝8Hが設けられていることにより、吸収性パッドの左右方向の位置合わせを適正な位置において行うことができる。
【0052】
なお、吸収コア8cに設けられた溝8Hを肌面側から見て凹になる圧搾溝とする場合、排出液を流す導流溝として用いることができるが、溝8Hを、吸収コア8cを貫通するスリット溝とすることで、導流溝としての効果をより高めることができると共に、溝8Hはおむつ1の非肌面側からも容易に識別可能となる。このため、吸収性パッドの左右方向の位置合わせがより容易になる。
【0053】
また、吸収コア8cに、肌面側から見て凹となる圧搾溝を設けるとともに、非肌面側から見ても凹となる圧搾溝を設けて、幅方向中央部において、吸収コア8cの断面形状をH型とすることもできる。この形態では、溝8Hは、おむつ1の肌面側では導流溝としての機能と果たすと共に、非肌面側からも視認可能である。このため、吸収性パッドの左右方向の位置合わせが容易となる。
【0054】
図6は、実施形態に係るおむつを展開し、伸張した状態を、肌面側から模式的に示した図である。
図6に示す溝8Hは、吸収コア8cを貫通するスリット溝であり、おむつ1を肌面側から見た場合にも、溝8Hによって非肌面側の構造が透けて見えるように構成されている。そして、吸収コア8cの非肌面側には、糸ゴムの断片4F3F,4R3Fが間欠的に配置されているため、溝8Hを通しておむつ1の肌面側から糸ゴムの断片4F3F,
4R3Fを視認可能である。また、糸ゴムの断片4F3F,4R3Fによってカバーシート4に形成される溝8Gも、溝8Hを通しておむつ1の肌面側から視認可能となる。
【0055】
吸収性パッドの左右方向の位置合わせを行う際、溝8Hを透過する糸ゴムの断片4F3F,4R3Fは、おむつ1の幅方向中央部を示す目印として機能する。このため、おむつ1を非肌面側から見た場合に加えて、おむつ1を肌面側から見た場合にも、吸収性パッドの左右方向の位置合わせは容易となる。介助者または着用者がおむつ1に吸収性パッドを配置する際、おむつ1を非肌面側から見た場合には、糸ゴムの断片4F3F,4R3Fによって形成された溝8Gおよび、吸収コア8cの幅方向中央部において溝8Gと直交し、非肌面側からも視認可能な溝8Hによって、長手方向および幅方向における吸収性パッドの配置位置を判断できる。
【0056】
そして、おむつ1を肌面側から見た場合には、吸収コア8cを貫通するスリット溝である溝8Hおよび、溝8Hを介して肌面側から視認可能な糸ゴムの断片4F3F,4R3Fが視認可能である。また、おむつ1を肌面側から見た場合、更に、糸ゴムの断片4F3F,4R3Fによって非肌面側に形成された溝8Gも視認可能となる。
【0057】
また、溝8Gがおむつ1の非肌面側に形成されている状態において、溝8Gによって吸収体8に形成された屈曲は、おむつ1の肌面側では幅方向に延在する凸部として現れる。当該凸部は、吸収性パッドの滑り止めとして機能するが、吸収性パッドをおむつ1に配置する際の目印としても機能する。このため、おむつ1を肌面側から見た場合にも、着用者または介助者は、吸収性パッドの配置位置を示す複数の構造が視認可能であり、適切な位置に吸収性パッドを配置可能である。
【0058】
このように、本実施形態に係るおむつ1は、肌面側から見た場合にも非肌面側から見た場合にも、肌面側に吸収性パッドを適切に配置するための構造および目印を有している。このため、着用者または介助者は、吸収性パッドの配置位置を適切に判断可能である。
【0059】
(変形例)
図7は、変形例に係るおむつを展開し、伸長した状態を模式的に示した図である。本変形例では、吸収コア8cの長手方向に延在する2本の平行な溝8HL,8HRが、吸収コア8cの幅方向中央部の左右等距離に設けられている。溝8HL,8HRが2本設けられていることにより、おむつ1は、導流溝としての機能をより発揮しやすくなる。また、吸収性パッドを併用することを考えた場合には、吸収性パッドの左右方向の位置合わせがより容易になる。
【0060】
以上、本発明の特徴について実施の形態を説明したが、本発明の内容は上記実施の形態に限られるものではない。例えば、溝8H、または、溝を2本設ける場合の溝8HL,8HRの長手方向端部側は、幅方向外側に向けて屈曲していてもよい。溝8HL,8HRが屈曲していると、導流溝となっている溝8HL,8HRを勢いよく流れてきた排出液が屈曲部で減速して吸収コア8cの長手方向端部に達しにくくなるため、背漏れや腹漏れの発生を防ぐことができる。また、溝8HL,8HRが屈曲していることで、吸収コア8cの広範囲で排出液を吸収できる。吸収性パッドを併用する場合に、屈曲した溝8HL,8HRが左右方向の位置合わせに活用できることは上述の形態と同様である。
【0061】
以上で開示した各実施形態に含まれる特徴は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0062】
1・・おむつ
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
3LL,3LR・・レグギャザー
3BL,3BR・・立体ギャザー
4,4F,4R・・カバーシート
4B・・パッドカバーシート
4F1,4F2,4F3,4R1,4R2,4R3・・糸ゴム
4F3F,4R3F・・糸ゴムの断片
5F,5R・・インナーカバーシート
6・・バックシート
7・・コアラップシート
8c・・吸収コア
8・・吸収体
8G,8H,8HL,8HR・・溝
9・・トップシート
10L,10R・・サイドシート
11F,11R・・エンドシート
20・・溝延在部