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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147050
(43)【公開日】2024-10-16
(54)【発明の名称】レンズ組、およびレンズユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20241008BHJP
【FI】
G02B7/02 B
G02B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023059820
(22)【出願日】2023-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】中島 知昭
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 忠史
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AB02
2H044AB10
2H044AB17
2H044AB26
2H044AJ04
2H044AJ05
(57)【要約】
【課題】第1レンズを第2レンズに組付けた際に、第2レンズに対する第1レンズの位置が良好に位置決めされるレンズ組を提供すること。
【解決手段】レンズ組8は、光軸L方向に空気間隔を形成して隣接するレンズ5およびレンズ6を備える。レンズ5は、環状のフランジ部53を備える。レンズ6は、環状の第2フランジ部と、第2フランジ部の物体側Laに設けられレンズ5を収容する凹部64とを備える。フランジ部53の外周面54は、像側Lbに向かって径方向内側に傾斜する第1テーパー面541を備える。凹部64の内周面65は、物体側Laに向かって径方向外側に傾斜する第2テーパー面651を備える。レンズ5が凹部64に収容された際に、レンズ5は、第1テーパー面541が第2テーパー面651に接することにより、レンズ6に対する光軸L方向の位置および光軸Lに対する中心の位置が位置決めされる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿った光軸方向に空気間隔を形成して隣接する第1レンズおよび第2レンズを備え、
前記光軸方向において、前記第1レンズの位置する方向を第1方向、前記第2レンズの位置する方向を第2方向とすると、
前記第1レンズは、前記第1方向の側の第1レンズ面と、前記第2方向の側の第2レンズ面と、前記第1レンズ面および前記第2レンズ面を囲う環状の第1フランジ部と、を備え、
前記第2レンズは、前記第1方向の側の第3レンズ面と、前記第2方向の側の第4レンズ面と、前記第3レンズ面および前記第4レンズ面を囲う環状の第2フランジ部と、前記第2フランジ部の前記第1方向の側に設けられ前記第1レンズを収容する凹部と、を備え、
前記第1フランジ部の外周面は、前記第2方向に向かって径方向内側に傾斜する第1テーパー面を備え、
前記凹部の内周面は、前記第1方向に向かって径方向外側に傾斜する第2テーパー面を備え、
前記第1レンズが前記凹部に収容された際に、前記第1レンズは、前記第1テーパー面が前記第2テーパー面に接することにより、前記第2レンズに対する前記光軸方向の位置および前記光軸に対する中心の位置が位置決めされることを特徴とするレンズ組。
【請求項2】
前記第2フランジ部は、前記第1レンズが前記凹部に収容された際に、前記第2レンズ面および前記第3レンズ面の間に形成される空間と外部とを連通する孔部を備えることを特徴とする請求項1に記載のレンズ組。
【請求項3】
前記第1レンズは、ガラス製であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ組。
【請求項4】
前記第2フランジ部は、前記凹部の前記第1方向の側の端部を外周側で囲うとともに前記第1方向を向く環状の平面部を備え、
前記第1フランジ部の前記外周面は、前記第1レンズが前記凹部に収容された際に、前記平面部より前記第1方向の側に突出した突出面を備え、
前記突出面と前記平面部との間には、前記第1レンズと前記第2レンズとを固定する接着剤が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ組。
【請求項5】
前記第2フランジ部は、前記平面部の径方向外側を囲うとともに、前記第1方向に突出する環状の壁部を備え、
前記壁部は、前記光軸方向に切り欠かれて前記接着剤が溜められる溝部を備えることを特徴とする請求項4に記載のレンズ組。
【請求項6】
前記第2レンズは、樹脂製であり、
前記第2フランジ部の外周面は、径方向と直交する平面で形成されたDカット面を備え、
前記溝部は、径方向において前記Dカット面と重ならない位置に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のレンズ組。
【請求項7】
前記第2フランジ部は、前記第1レンズが前記凹部に収容された際に、前記第2レンズ面および前記第3レンズ面の間に形成される空間と外部とを連通する孔部を備え、
前記溝部は、3つ設けられ、
前記孔部は、径方向において前記Dカット面と重なる位置に配置され、
3つの前記溝部のうち1つの溝部は、光軸に対して、前記孔部とは反対側の位置に配置
され、
3つの前記溝部は、前記光軸を中心に等角度間隔に配置されていることを特徴とする請求項6に記載のレンズ組。
【請求項8】
請求項1から7のうち何れか一項に記載のレンズ組と、
前記レンズ組を保持する鏡筒と、を備え、
前記鏡筒の内周面は、周方向に複数設けられ前記第2フランジ部の外周面に接する突起部を備え、
前記レンズ組が前記鏡筒に保持された際に、前記突起部は、周方向において、前記第1テーパー面および前記第2テーパー面が接した部分とは重ならない位置で前記第2フランジ部の前記外周面に接することを特徴とするレンズユニット。
【請求項9】
請求項1から7のうち何れか一項に記載のレンズ組と、
前記レンズ組を保持する鏡筒と、を備え、
前記レンズ組は、前記第2レンズの前記第2方向の側に配置されて前記第2レンズに接合される第3レンズを備え、
前記第3レンズは、前記第4レンズ面に接合される第5レンズ面を備え、
前記鏡筒の内周面は、周方向に複数設けられ前記第2フランジ部の外周面に接する突起部を備え、
前記レンズ組が前記鏡筒に保持された際に、前記突起部は、周方向において、前記第1テーパー面および前記第2テーパー面が接した部分と、前記第4レンズ面および前記第5レンズ面が接合された部分とは重ならない位置で前記第2フランジ部の前記外周面に接することを特徴とするレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレンズが一体となったレンズ組、およびレンズユニットに関する。
【0002】
自動車や監視カメラに搭載される撮像装置で使用されるレンズユニットは特許文献1に記載されている。同文献のレンズユニットは、複数のレンズと、複数のレンズを保持する鏡筒とを備える。複数のレンズは、物体側から像側に向かって順に、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、第4レンズ、第5レンズおよび第6レンズを備える。第5レンズは、物体側に向けて開口する凹部を備える。第4レンズは、凹部に嵌合することにより、凹部に固定される。これにより、第4レンズと第5レンズとは、一体となってレンズ組を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-39170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のレンズ組では、凹部は、光軸方向に直線状に延びる内周面を備え、第4レンズは、光軸方向に直線状に延びる外周面を備える。レンズ組を組み立てる際には、第4レンズは、治具等により、凹部に圧入される。
【0005】
ここで、凹部の内周面および第4レンズの外周面は、光軸方向に直線状に延びているので、第4レンズを凹部に圧入した際に、第4レンズの光軸が傾いた状態で凹部に圧入される場合がある。この場合、第4レンズの光軸と第5レンズの光軸とは、一致しないという問題がある。また、第4レンズが光軸方向で第5レンズに当接して位置決めされても、第4レンズが第5レンズに対して傾いていた場合には、第4レンズと第5レンズとの空気間隔が設計上の間隔にならないという問題がある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、第1レンズを第2レンズに組付けた際に、第2レンズに対する第1レンズの光軸方向の位置、および第2レンズの光軸に対する第1レンズの中心の位置が良好に位置決めされるレンズ組、およびレンズユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のレンズ組は、光軸に沿った光軸方向に空気間隔を形成して隣接する第1レンズおよび第2レンズを備え、前記光軸方向において、前記第1レンズの位置する方向を第1方向、前記第2レンズの位置する方向を第2方向とすると、前記第1レンズは、前記第1方向の側の第1レンズ面と、前記第2方向の側の第2レンズ面と、前記第1レンズ面および前記第2レンズ面を囲う環状の第1フランジ部と、を備え、前記第2レンズは、前記第1方向の側の第3レンズ面と、前記第2方向の側の第4レンズ面と、前記第3レンズ面および前記第4レンズ面を囲う環状の第2フランジ部と、前記第2フランジ部の前記第1方向の側に設けられ前記第1レンズを収容する凹部と、を備え、前記第1フランジ部の外周面は、前記第2方向に向かって径方向内側に傾斜する第1テーパー面を備え、前記凹部の内周面は、前記第1方向に向かって径方向外側に傾斜する第2テーパー面を備え、前記第1レンズが前記凹部に収容された際に、前記第1レンズは、前記第1テーパー面が前記第2テーパー面に接することにより、前記第2レンズに対する前記光軸方向の位置および前記光軸に対する中心の位置が位置決めされることを特徴とする
【0008】
本発明によれば、第1レンズの第1テーパー面と第2レンズの第2テーパー面とが互いに接することで、第1レンズは、第2レンズに対して良好に位置決めされる。これにより、レンズ組の光学性能が劣化することを抑制することができる。
【0009】
本発明において、前記第2フランジ部は、前記第1レンズが前記凹部に収容された際に、前記第2レンズ面および前記第3レンズ面の間に形成される空間と外部とを連通する孔部を備えることが好ましい。このようにすれば、第1レンズを凹部に組み付ける際、第1レンズと第2レンズとの間の空間の空気を、レンズ組の外部に排気することができるので、第1レンズを凹部に組み付けることが容易となる。
【0010】
本発明において、前記第1レンズは、ガラス製であることが好ましい。このようにすれば、第1レンズを凹部に組付けた場合であっても、第1レンズが変形しにくいので、レンズ組の光学性能が劣化しにくい。
【0011】
本発明において、前記第2フランジ部は、前記凹部の前記第1方向の側の端部を外周側で囲うとともに前記第1方向を向く環状の平面部を備え、前記第1フランジ部の前記外周面は、前記第1レンズが前記凹部に収容された際に、前記平面部より前記第1方向の側に突出した突出面を備え、前記突出面と前記平面部との間には、前記第1レンズと前記第2レンズとを固定する接着剤が設けられていることが好ましい。このようにすれば、接着剤を塗布した際に、接着剤が第1レンズの第1レンズ面に付着することを抑制することができる。
【0012】
本発明において、前記第2フランジ部は、前記平面部の径方向外側を囲うとともに、前記第1方向に突出する環状の壁部を備え、前記壁部は、前記光軸方向に切り欠かれて前記接着剤が溜められる溝部を備えることが好ましい。このようにすれば、接着剤が塗布される領域を制御しやすい。
【0013】
本発明において、前記第2レンズは、樹脂製であり、前記第2フランジ部の外周面は、径方向と直交する平面で形成されたDカット面を備え、前記溝部は、径方向において前記Dカット面と重ならない位置に配置されていることが好ましい。ここで、ゲート痕が形成されるDカット面を外周面に設けた場合、Dカット面が設けられた部分の壁部は、他の部分の壁部と比較すると、壁部の径方向の厚みが薄くなる。したがって、このようにすれば、溝部を壁部の厚みが厚い部分に設けることができる。
【0014】
本発明において、前記第2フランジ部は、前記第1レンズが前記凹部に収容された際に、前記第2レンズ面および前記第3レンズ面の間に形成される空間と外部とを連通する孔部を備え、前記溝部は、3つ設けられ、前記孔部は、径方向において前記Dカット面と重なる位置に配置され、3つの前記溝部のうち1つの溝部は、光軸に対して、前記孔部とは反対側の位置に配置され、3つの前記溝部は、前記光軸を中心に等角度間隔に配置されていることが好ましい。このようにすれば、第2レンズを成形する際に、第2レンズを良好に成形することができる。
【0015】
本発明のレンズユニットは、上記のレンズ組と、前記レンズ組を保持する鏡筒と、を備え、前記鏡筒の内周面は、周方向に複数設けられ前記第2フランジ部の外周面に接する突起部を備え、前記レンズ組が前記鏡筒に保持された際に、前記突起部は、周方向において、前記第1テーパー面および前記第2テーパー面が接した部分とは重ならない位置で前記第2フランジ部の前記外周面に接することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、レンズ組を鏡筒に圧入した際に、第2フランジ部の外周面に発生する応力が、第1テーパー面および第2テーパー面が接した部分に伝わることを抑制することができる。これにより、第1レンズに歪みが発生することを抑制することができる。
【0017】
本発明のレンズユニットは、上記のレンズ組と、前記レンズ組を保持する鏡筒と、を備え、前記レンズ組は、前記第2レンズの前記第2方向の側に配置されて前記第2レンズに接合される第3レンズを備え、前記第3レンズは、前記第4レンズ面に接合される第5レンズ面を備え、前記鏡筒の内周面は、周方向に複数設けられ前記第2フランジ部の外周面に接する突起部を備え、前記レンズ組が前記鏡筒に保持された際に、前記突起部は、周方向において、前記第1テーパー面および前記第2テーパー面が接した部分と、前記第4レンズ面および前記第5レンズ面が接合された部分とは重ならない位置で前記第2フランジ部の前記外周面に接することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、レンズ組を鏡筒に圧入した際に、第2フランジ部の外周面に発生する応力が、第1テーパー面および第2テーパー面が接した部分、および、第4レンズ面および第5レンズ面が接合された部分に伝わることを抑制することができる。これにより、第1レンズに歪みが発生することを抑制することができる。また、第4レンズ面および第5レンズ面が接合された部分の接合力が低下することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1レンズの第1テーパー面と第2レンズの第2テーパー面とが互いに接することで、第1レンズは、第2レンズに対する光軸方向の位置および光軸に対する中心の位置が位置決めされる。これにより、第1レンズは、第2レンズに対して良好に位置決めされるので、レンズ組の光学性能が劣化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用したレンズユニットの断面図である。
図2】レンズユニットの分解斜視図である。
図3】レンズ組の斜視図である。
図4】レンズ組の分解斜視図である。
図5図3のA-A断面図である。
図6】筒部の断面図の斜視図である。
図7】レンズ組と筒部との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。また、以下の説明では、光軸Lが延在している光軸L方向において、物体側にLaを付し、像側にLbを付して説明する。
【0022】
(レンズユニットの構成)
図1は、本発明を適用したレンズユニットの断面図である。図2は、レンズユニットの分解斜視図である。本形態のレンズユニット1は、自動車や監視カメラに搭載される撮像装置に用いられる。
【0023】
図1および図2に示すように、レンズユニット1は、光軸L方向にレンズが複数枚配置された広角レンズ10と、広角レンズ10を内側に保持する鏡筒9とを有する。鏡筒9の像側Lbには、撮像素子が設けられる。撮像素子は、CMOSなどである。
【0024】
広角レンズ10は、光軸L方向を物体側Laから像側Lbに向かって順に、レンズ2、レンズ3、レンズ4、およびレンズ組8を備える。レンズ組8は、光軸L方向に空気間隔を形成して隣接するレンズ5(第1レンズ)およびレンズ6(第2レンズ)を備える。ま
た、レンズ組8は、レンズ6に接合されるレンズ7を備える。
【0025】
レンズユニット1は、レンズ3とレンズ4との間に配置された円環状の遮光シート11と、レンズ4とレンズ5との間に配置された円環状の絞り12と、を備える。
【0026】
(広角レンズ)
図3は、レンズ組の斜視図である。図4は、レンズ組の分解斜視図である。図5は、図3のA-A断面図である。
【0027】
図1に示すように、レンズ2は、樹脂製またはガラス製である。レンズ2は、メニスカスレンズである。レンズ2は、物体側Laのレンズ面21と、像側Lbのレンズ面22と、レンズ面21およびレンズ面22を外周側で囲う環状のフランジ部23と、を備える。レンズ面21は、物体側Laに突出する凸面形状である。レンズ面22は、物体側Laに凹んだ凹面形状である。
【0028】
図1に示すように、レンズ3は、樹脂製である。レンズ3は、メニスカスレンズである。レンズ3は、物体側Laのレンズ面31と、像側Lbのレンズ面32と、レンズ面31およびレンズ面32を外周側で囲う環状のフランジ部33と、を備える。レンズ面31は、物体側Laに突出する凸面形状である。レンズ面32は、物体側Laに凹んだ凹面形状である。
【0029】
図1に示すように、レンズ4は、樹脂製である。レンズ4は、物体側Laのレンズ面41と、像側Lbのレンズ面42と、レンズ面41およびレンズ面42を外周側で囲う環状のフランジ部43と、を備える。レンズ面41は、物体側Laに突出する凸面形状である。レンズ面42は、物体側Laに突出した凸面形状である。
【0030】
図3~5に示すように、レンズ5は、ガラス製である。レンズ5は、物体側Laのレンズ面51(第1レンズ面)と、像側Lbのレンズ面52(第2レンズ面)と、レンズ面51およびレンズ面52を外周側で囲う環状のフランジ部53(第1フランジ部)と、を備える。レンズ面51は、物体側Laに突出する凸面形状である。レンズ面52は、物体側Laに突出した凸面形状である。フランジ部53の外周面54は、像側Lbから物体側Laに向かって順に、像側Lbに向かって径方向内側に傾斜する第1テーパー面541と、光軸L方向に直線状に延びる直線面542と、を備える。
【0031】
図3~5に示すように、レンズ6は、物体側Laのレンズ面61(第3レンズ面)と、像側Lbのレンズ面62(第4レンズ面)と、レンズ面61およびレンズ面62を外周側で囲う環状のフランジ部63(第2フランジ部)と、フランジ部63の物体側Laに設けられレンズ6を収容する凹部64と、孔部69を備える。凹部64の内周面65は、環状である。凹部64の内周面65は、第1方向に向かって径方向外側に傾斜する第2テーパー面651を備える。第2テーパー面651は、光軸L方向において、第1テーパー面541と対向する。本形態では、第1テーパー面541と第2テーパー面651との傾斜角度は、同じである。図3および図4に示すように、レンズ6の外周面631は、径方向と直交する平面で形成されたDカット面661を備える。Dカット面661には、ゲート痕Gが形成されている。
【0032】
フランジ部63は、凹部64の物体側Laの端部を外周側で囲うとともに物体側Laを向く環状の平面部66と、平面部66の径方向外側を囲うとともに物体側Laに突出する環状の壁部67と、を備える。壁部67は、光軸L方向に切り欠かれて接着剤Bが溜められる溝部68を備える。本形態では、溝部68は、3つ設けられている。溝部68は、接着剤Bを塗布するシリンジの注入口のガイドとしても機能する。接着剤Bは、レンズ5と
レンズ6とを固定する。孔部69は、レンズ5が凹部64に収容された際に、レンズ5のレンズ面52およびレンズ6のレンズ面61の間に形成される空間Sと外部とを連通する。本形態では、孔部69は、凹部64の内周面65を光軸L方向に切り欠く溝部691である。
【0033】
ここで、図3に示すように、溝部68は、径方向においてDカット面661と重ならない位置に配置されている。孔部69は、径方向においてDカット面661と重なる位置に配置されている。3つの溝部68のうち1つの溝部68aは、光軸Lに対して、孔部69とは反対側の位置に配置されている。3つの溝部68は、光軸Lを中心に等角度間隔に配置されている。
【0034】
図3~5に示すように、レンズ7は、物体側Laのレンズ面71(第5レンズ面)と、像側Lbのレンズ面72と、レンズ面71およびレンズ面72を外周側で囲う環状のフランジ部73と、を備える。レンズ6のレンズ面62とレンズ7のレンズ面71とは、接着剤により接合されている。これにより、レンズ6およびレンズ7は、接合レンズ60を形成する。
【0035】
レンズ組8は、レンズ5が凹部64に嵌合することにより、レンズ5とレンズ6が一体となる。図5に示すように、レンズ5が凹部64に収容された際に、レンズ5は、第1テーパー面541が第2テーパー面651に接することにより、レンズ6に対する光軸L方向の位置および光軸Lに対する中心の位置が位置決めされる。この結果、レンズ5とレンズ6との中心が一致するとともに、レンズ5とレンズ6との空気間隔が所定の値となる。
【0036】
ここで、図3および図5に示すように、フランジ部53の外周面54は、レンズ5が凹部64に収容された際に、平面部66より物体側Laに突出した突出面540を備える。本形態では、突出面540は、直線面542と第1テーパー面541の一部とからなる。突出面540と平面部66との間には、レンズ5とレンズ6とを固定する接着剤Bが設けられている。
【0037】
(鏡筒)
図6は、筒部の断面図の斜視図である。鏡筒9は、樹脂製である。鏡筒9の材料は、対候性に優れた結晶性プラスチック(ポリエチレン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン)、吸湿が比較的低い非晶性プラスチック(ポリカーボネート等)などである。図1および図6に示すように、鏡筒9は、レンズ2を保持する第1筒部91と、レンズ3~レンズ7を保持する第2筒部92と、第1筒部91および第2筒部92を繋げる当接面部93と、第2筒部92の内周面から径方向内側に張り出した段部94と、を備える。
【0038】
第1筒部91は、円筒形状であり、レンズ2の外周面を囲む。第1筒部91の物体側Laの端部には、レンズ2を固定するカシメ部911が設けられている。第1筒部91の内径寸法は、レンズ2の外径寸法より僅かに大きい。
【0039】
当接面部93は、物体側Laを向く環状の面部である。当接面部93は、フランジ部23のフランジ面231に像側Lbから接する。当接面部93は、像側Lbに凹んだ環状の溝部931を備える。溝部931には、弾性部材13が配置される。本形態では、弾性部材13は、Oリングである。
【0040】
第2筒部92は、円筒形状である。第2筒部92の内径は、像側Lbに向かって僅かに小さくなっている。第2筒部92は、物体側Laから像側Lbに向かって順に、第1突起部921、第2突起部922および第3突起部923を備える。第1突起部921、第2突起部922および第3突起部923は、それぞれ、周方向に複数個、同じ数設けられて
いる。第2筒部92の物体側Laの端部には、レンズ3を固定するカシメ部924が設けられている。
【0041】
第1突起部921は、径方向内側に突出するとともに、光軸L方向に延在する。第1突起部921は、レンズ3が第2筒部92に圧入された際に、レンズ3を径方向で位置決めする。第2突起部922は、径方向内側に突出するとともに、光軸L方向に延在する。第2突起部922は、レンズ4が第2筒部92に圧入された際に、レンズ4を径方向で位置決めする。第3突起部923は、径方向内側に突出するとともに、光軸L方向に延在する。第3突起部923は、レンズ組8が第2筒部92に圧入された際に、レンズ組8を径方向で位置決めする。
【0042】
段部94は、レンズ6のフランジ部63に像側Lbから接することにより、レンズ組8を光軸L方向に位置決めする。
【0043】
(広角レンズの固定)
レンズ3、レンズ4およびレンズ組8は、像側Lbのレンズ組8から順に第2筒部92に圧入される。レンズ6のフランジ部63は、段部94に物体側Laから接する。レンズ4のフランジ部43は、絞り12介して、レンズ6のフランジ部63に物体側Laから接する。レンズ3のフランジ部33は、遮光シート11を介して、レンズ4のフランジ部43に物体側Laから接する。
【0044】
レンズ3のフランジ部33は、カシメ部924が物体側Laから被さることによってレンズ3の物体側Laへの移動が規制されている。その結果、レンズ3、遮光シート11、レンズ4、絞り12およびレンズ組8は、第2筒部92の内部に保持される。
【0045】
ここで、図7は、レンズ組と筒部との関係を示す図である。図7に示すように、レンズ6の外周面631は、物体側Laから像側Lbに向かって順に、光軸Lと平行に延びる第1外周面631aと、像側Lbに向かって径方向内側に傾斜する第2外周面631bと、を備える。レンズ組8が第2筒部92に保持された際に、第3突起部923は、周方向において、第1テーパー面541および第2テーパー面651が接した部分E1と、レンズ6のレンズ面62およびレンズ7のレンズ面71が接合された部分E2とは重ならない位置でフランジ部63の第1外周面631aに接する。
【0046】
レンズ2は、第1筒部91に圧入される。より具体的には、レンズ2のフランジ部23は、カシメ部911が物体側Laから被さることによって物体側Laへの移動が規制されている。その結果、レンズ2は、第1筒部91の内部に保持される。この際、弾性部材13は、光軸L方向に弾性変形した状態で、レンズ2のフランジ面231および溝部931に密着している。
【0047】
(作用効果)
本形態のレンズ組8は、光軸L方向に空気間隔を形成して隣接するレンズ5およびレンズ6を備える。レンズ5は、物体側Laのレンズ面51と、像側Lbのレンズ面52と、レンズ面51およびレンズ面52を囲う環状のフランジ部53と、を備える。レンズ6は、物体側Laのレンズ面61と、像側Lbのレンズ面62と、レンズ面61およびレンズ面62を囲う環状のフランジ部63と、フランジ部63の物体側Laに設けられレンズ5を収容する凹部64と、を備える。フランジ部53の外周面54は、像側Lbに向かって径方向内側に傾斜する第1テーパー面541を備える。凹部64の内周面65は、物体側Laに向かって径方向外側に傾斜する第2テーパー面651を備える。レンズ5が凹部64に収容された際に、レンズ5は、第1テーパー面541が第2テーパー面651に接することにより、レンズ6に対する光軸L方向の位置および光軸Lに対する中心の位置が位
置決めされる。
【0048】
これにより、レンズ5の第1テーパー面541とレンズ6の第2テーパー面651とが互いに接することで、レンズ5は、レンズ6に対して良好に位置決めされる。この結果、レンズ組8の光学性能が劣化することを抑制することができる。
【0049】
フランジ部63は、レンズ5が凹部64に収容された際に、レンズ面52およびレンズ面61の間に形成される空間Sと外部とを連通する孔部69を備える。これにより、レンズ5を凹部64に組み付ける際、レンズ5とレンズ6との間の空間Sの空気を、レンズ組8の外部に排気することができるので、レンズ5を凹部64に組み付けることが容易となる。
【0050】
レンズ5は、ガラス製である。これにより、レンズ5を凹部64に組付けた場合であっても、レンズ5が変形しにくいので、レンズ組8の光学性能が劣化しにくい。
【0051】
フランジ部63は、凹部64の物体側Laの端部を外周側で囲うとともに物体側Laを向く環状の平面部66を備える。フランジ部53の外周面54は、レンズ5が凹部64に収容された際に、平面部66より物体側Laの突出した突出面540を備える。突出面540と平面部66との間には、レンズ5とレンズ6とを固定する接着剤Bが設けられている。これにより、接着剤Bを塗布した際に、接着剤Bがレンズ5の物体側Laのレンズ面51に付着することを抑制することができる。
【0052】
フランジ部63は、平面部66の径方向外側を囲うとともに、物体側Laに突出する環状の壁部67を備える。壁部67は、光軸L方向に切り欠かれて接着剤Bが溜められる溝部68を備える。これにより、接着剤Bが塗布される領域を制御しやすい。
【0053】
レンズ6は、樹脂製である。フランジ部63の外周面631は、径方向と直交する平面で形成されたDカット面661を備える。溝部68は、径方向においてDカット面661と重ならない位置に配置されている。ここで、ゲート痕Gが形成されるDカット面661を外周面631に設けた場合、Dカット面661が設けられた部分の壁部67は、他の部分の壁部67と比較すると、壁部67の径方向の厚みが薄くなる。したがって、このようにすれば、溝部68を壁部67の厚みが厚い部分に設けることができる。
【0054】
溝部68は、3つ設けられる。孔部69は、径方向においてDカット面661と重なる位置に配置される。3つの溝部68のうち1つの溝部68aは、光軸Lに対して、孔部69とは反対側の位置に配置される。3つの溝部68は、光軸Lを中心に等角度間隔に配置されている。これにより、レンズ6を成形する際に、レンズ6にヒケなどが発生しにくくなるので、レンズ6を良好に成形することができる。
【0055】
本形態のレンズユニット1は、レンズ組8と、レンズ組8を保持する鏡筒9と、を備える。レンズ組8は、レンズ6の像側Lbに配置されてレンズ6に接合されるレンズ7を備える。レンズ7は、レンズ面62に接合されるレンズ面71を備える。鏡筒9の内周面は、周方向に複数設けられフランジ部63の外周面631に接する第3突起部923を備える。レンズ組8が鏡筒9に保持された際に、第3突起部923は、周方向において、第1テーパー面541および第2テーパー面651が接した部分E1と、レンズ面62およびレンズ面71が接合された部分E2とは重ならない位置でフランジ部63の外周面631に接する。これにより、レンズ組8を鏡筒9に圧入した際に、フランジ部63の外周面631に発生する応力が、第1テーパー面541および第2テーパー面651が接した部分E1、および、レンズ面62およびレンズ面71が接合された部分E2に伝わることを抑制することができる。この結果、レンズ5に歪みが発生することを抑制することができる
。また、レンズ面62およびレンズ面71が接合された部分E2の接合力が低下することを抑制することができる。
【0056】
(他の実施形態)
レンズ組は、本発明の第1レンズに相当するレンズが像側Lbに位置し、本発明の第2レンズに相当するレンズが物体側Laに位置するように構成されてもよい。
【0057】
上記形態では、レンズ組8は、接合レンズ60を備えていたが、レンズ組8は、接合レンズ60を備えていなくてもよい。すなわち、レンズ組8は、レンズ5およびレンズ6のみで構成されてもよい。
【0058】
レンズ組8は、レンズ7の像側Lbにレンズ7に接合されるレンズを備えていてもよい。すなわち、レンズ組8は、3枚のレンズからなる接合レンズを備えていてもよい。
【0059】
孔部69は、上記形態に限定されない。孔部69は、空間Sと外部とを連通する形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0060】
上記形態では、突出面540は、上記形態に限定されない。突出面540は、外周面54の一部であって、接着剤Bが設けられる形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0061】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
【0062】
(1)
光軸に沿った光軸方向に空気間隔を形成して隣接する第1レンズおよび第2レンズを備え、
前記光軸方向において、前記第1レンズの位置する方向を第1方向、前記第2レンズの位置する方向を第2方向とすると、
前記第1レンズは、前記第1方向の側の第1レンズ面と、前記第2方向の側の第2レンズ面と、前記第1レンズ面および前記第2レンズ面を囲う環状の第1フランジ部と、を備え、
前記第2レンズは、前記第1方向の側の第3レンズ面と、前記第2方向の側の第4レンズ面と、前記第3レンズ面および前記第4レンズ面を囲う環状の第2フランジ部と、前記第2フランジ部の前記第1方向の側に設けられ前記第1レンズを収容する凹部と、を備え、
前記第1フランジ部の外周面は、前記第2方向に向かって径方向内側に傾斜する第1テーパー面を備え、
前記凹部の内周面は、前記第1方向に向かって径方向外側に傾斜する第2テーパー面を備え、
前記第1レンズが前記凹部に収容された際に、前記第1レンズは、前記第1テーパー面が前記第2テーパー面に接することにより、前記第2レンズに対する前記光軸方向の位置および前記光軸に対する中心の位置が位置決めされることを特徴とするレンズ組。
【0063】
(2)
前記第2フランジ部は、前記第1レンズが前記凹部に収容された際に、前記第2レンズ面および前記第3レンズ面の間に形成される空間と外部とを連通する孔部を備えることを特徴とする(1)に記載のレンズ組。
【0064】
(3)
前記第1レンズは、ガラス製であることを特徴とする(1)または(2)に記載のレン
ズ組。
【0065】
(4)
前記第2フランジ部は、前記凹部の前記第1方向の側の端部を外周側で囲うとともに前記第1方向を向く環状の平面部を備え、
前記第1フランジ部の前記外周面は、前記第1レンズが前記凹部に収容された際に、前記平面部より前記第1方向の側に突出した突出面を備え、
前記突出面と前記平面部との間には、前記第1レンズと前記第2レンズとを固定する接着剤が設けられていることを特徴とする(1)から(3)のうち何れか一項に記載のレンズ組。
【0066】
(5)
前記第2フランジ部は、前記平面部の径方向外側を囲うとともに、前記第1方向に突出する環状の壁部を備え、
前記壁部は、前記光軸方向に切り欠かれて前記接着剤が溜められる溝部を備えることを特徴とする(4)に記載のレンズ組。
【0067】
(6)
前記第2レンズは、樹脂製であり、
前記第2フランジ部の外周面は、径方向と直交する平面で形成されたDカット面を備え、
前記溝部は、径方向において前記Dカット面と重ならない位置に配置されていることを特徴とする(5)に記載のレンズ組。
【0068】
(7)
前記第2フランジ部は、前記第1レンズが前記凹部に収容された際に、前記第2レンズ面および前記第3レンズ面の間に形成される空間と外部とを連通する孔部を備え、
前記溝部は、3つ設けられ、
前記孔部は、径方向において前記Dカット面と重なる位置に配置され、
3つの前記溝部のうち1つの溝部は、光軸に対して、前記孔部とは反対側の位置に配置され、
3つの前記溝部は、前記光軸を中心に等角度間隔に配置されていることを特徴とする(6)に記載のレンズ組。
【0069】
(8)
(1)から(7)のうち何れか一項に記載のレンズ組と、
前記レンズ組を保持する鏡筒と、を備え、
前記鏡筒の内周面は、周方向に複数設けられ前記第2フランジ部の外周面に接する突起部を備え、
前記レンズ組が前記鏡筒に保持された際に、前記突起部は、周方向において、前記第1テーパー面および前記第2テーパー面が接した部分とは重ならない位置で前記第2フランジ部の前記外周面に接することを特徴とするレンズユニット。
【0070】
(9)
(1)から(7)のうち何れか一項に記載のレンズ組と、
前記レンズ組を保持する鏡筒と、を備え、
前記レンズ組は、前記第2レンズの前記第2方向の側に配置されて前記第2レンズに接合される第3レンズを備え、
前記第3レンズは、前記第4レンズ面に接合される第5レンズ面を備え、
前記鏡筒の内周面は、周方向に複数設けられ前記第2フランジ部の外周面に接する突起
部を備え、
前記レンズ組が前記鏡筒に保持された際に、前記突起部は、周方向において、前記第1テーパー面および前記第2テーパー面が接した部分と、前記第4レンズ面および前記第5レンズ面が接合された部分とは重ならない位置で前記第2フランジ部の前記外周面に接することを特徴とするレンズユニット。
【符号の説明】
【0071】
1…レンズユニット、2~7…レンズ、8…レンズ組、9…鏡筒、10…広角レンズ、11…遮光シート、12…絞り、13…弾性部材、21…レンズ面、22…レンズ面、23…フランジ部、31…レンズ面、32…レンズ面、33…フランジ部、41…レンズ面、42…レンズ面、43…フランジ部、51…レンズ面、52…レンズ面、53…フランジ部、54…外周面、60…接合レンズ、61…レンズ面、62…レンズ面、63…フランジ部、64…凹部、65…内周面、66…平面部、67…壁部、68…溝部、69…孔部、71…レンズ面、72…レンズ面、73…フランジ部、91…第1筒部、92…第2筒部、93…当接面部、94…段部、231…フランジ面、540…突出面、541…第1テーパー面、542…直線面、631…外周面、631a…第1外周面、631b…第2外周面、651…第2テーパー面、661…Dカット面、691…溝部、911…カシメ部、921…第1突起部、922…第2突起部、923…第3突起部、924…カシメ部、931…溝部、B…接着剤B…ゲート痕、L…光軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7